(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094134
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
G06T 3/08 20240101AFI20240702BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240702BHJP
B60R 1/28 20220101ALI20240702BHJP
【FI】
G06T3/00 735
G06T1/00 330Z
B60R1/28 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210906
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100183760
【弁理士】
【氏名又は名称】山鹿 宗貴
(72)【発明者】
【氏名】村上 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】坂田 直人
(72)【発明者】
【氏名】古賀 昌史
【テーマコード(参考)】
5B057
【Fターム(参考)】
5B057AA16
5B057BA15
5B057CA01
5B057CA12
5B057CB01
5B057CB12
5B057CD05
5B057CD11
5B057DA16
(57)【要約】
【課題】移動体の外界画像を非平面な画面に表示させる際の処理負荷を抑えること。
【解決手段】画像処理装置は、画面が非平面の表示装置に接続される装置であり、表示対象画像を生成するためのパラメータを、目の位置の情報に応じて生成し、生成されたパラメータに基づいて外界画像から表示対象画像を生成し、生成された表示対象画像を表示装置に出力する。このパラメータは、外界画像の座標を、実空間に対応する第1座標系から外界画像の座標系(第2座標系)に変換する射影変換行列の要素と、基準面のうち画面に表示される範囲内の、外界画像の座標を、画面の座標に変換する射影変換行列の要素と、を含む。後者の変換は、第1座標系における目の位置と、画面の形状及び位置を示す画面データに基づいて第1座標系に配置される画面上の座標と、を結ぶ線分の延長線が、第1座標系で設定される基準面と交わる、基準面上の座標を特定することにより行われる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に配置され且つ画面の少なくとも一部が非平面の表示装置に接続される画像処理装置であって、
前記移動体の乗員の目の位置の情報を取得する視点情報取得部と、
前記移動体の外界を写す外界画像を取得する画像取得部と、
前記外界画像から前記表示装置に表示させる表示対象画像を生成するためのパラメータを、前記目の位置の情報に応じて生成するパラメータ生成部と、
前記パラメータ生成部で生成されたパラメータに基づいて前記外界画像から前記表示対象画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部で生成された表示対象画像を前記表示装置に出力する画像出力部と、を備え、
前記パラメータは、
実空間上で設定される基準面上の座標を、前記実空間に対応する第1座標系から前記外界画像の座標系である第2座標系に変換する射影変換行列の要素と、
前記第1座標系における前記目の位置と、前記画面の形状及び位置を示す画面データに基づいて前記第1座標系に配置される前記画面上の座標と、を結ぶ線分の延長線が、前記第1座標系で設定される基準面と交わる、前記基準面上の座標を特定することにより、前記画面の座標を、前記基準面のうち前記画面に表示される範囲内の、前記外界画像の座標に変換する射影変換行列の要素と、を少なくとも含む、
画像処理装置。
【請求項2】
前記パラメータは、前記画面の一部の画素を対象として、前記外界画像の座標を前記第1座標系から前記第2座標系に変換し且つ前記範囲内の座標を前記画面の座標に変換するものであり、
前記画像生成部は、前記パラメータに基づいて生成された前記表示対象画像に含まれる前記一部の画素の情報をもとに補間処理を行うことにより、前記表示対象画像の全ての画素の情報を取得する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画面は、第1方向でカーブする曲面状に形成された略矩形の画面であり、
前記画面データは、前記第1方向の曲線形状、前記第1方向と直交する第2方向の直線形状及び前記画面の設置角度の情報を含む、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記表示装置は、前記移動体のピラー部に設置される、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記外界画像は、広角レンズを備える撮影装置により撮影された画像であり、
前記パラメータは、前記外界画像の座標を前記第1座標系から前記第2座標系に変換するに際して前記外界画像の樽型収差を除去する要素を更に含む、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記移動体に設置された複数の前記表示装置に接続され、
前記パラメータ生成部は、前記目の位置の情報に応じて、前記複数の表示装置のそれぞれに対応するパラメータを生成し、
前記画像生成部は、前記パラメータ生成部で生成された各前記パラメータに基づいて、前記複数の表示装置のそれぞれに対応する前記表示対象画像を生成する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記表示装置が前記移動体内で動くことができるように設置されており、
前記表示装置の動きに応じて前記パラメータが更新される、
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
移動体に配置され且つ画面の少なくとも一部が非平面の表示装置に接続される画像処理装置で実行される画像処理方法であって、
前記移動体の乗員の目の位置の情報を取得するステップと、
前記移動体の外界を写す外界画像を取得するステップと、
前記外界画像から前記表示装置に表示させる表示対象画像を生成するためのパラメータを、前記目の位置の情報に応じて生成するステップと、
前記生成されたパラメータに基づいて前記外界画像から前記表示対象画像を生成するステップと、
前記生成された表示対象画像を前記表示装置に出力するステップと、を含み、
前記パラメータは、
実空間上で設定される基準面上の座標を、前記実空間に対応する第1座標系から前記外界画像の座標系である第2座標系に変換する射影変換行列の要素と、
前記第1座標系における前記目の位置と、前記画面の形状及び位置を示す画面データに基づいて前記第1座標系に配置される前記画面上の座標と、を結ぶ線分の延長線が、前記第1座標系で設定される基準面と交わる、前記基準面上の座標を特定することにより、前記画面の座標を、前記基準面のうち前記画面に表示される範囲内の、前記外界画像の座標に変換する射影変換行列の要素と、を少なくとも含む、
画像処理方法。
【請求項9】
前記パラメータは、前記画面の一部の画素を対象として、前記外界画像の座標を前記第1座標系から前記第2座標系に変換し且つ前記範囲内の座標を前記画面の座標に変換するものであり、
前記表示対象画像を生成するステップにおいて、前記パラメータに基づいて生成された前記表示対象画像に含まれる前記一部の画素の情報をもとに補間処理を行うことにより、前記表示対象画像の全ての画素の情報を取得する、
請求項8に記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記画面は、第1方向でカーブする曲面状に形成された略矩形の画面であり、
前記画面データは、前記第1方向の曲線形状、前記第1方向と直交する第2方向の直線形状及び前記画面の設置角度の情報を含む、
請求項8に記載の画像処理方法。
【請求項11】
前記表示装置は、前記移動体のピラー部に設置される、
請求項8に記載の画像処理方法。
【請求項12】
前記外界画像は、広角レンズを備える撮影装置により撮影された画像であり、
前記パラメータは、前記外界画像の座標を前記第1座標系から前記第2座標系に変換するに際して前記外界画像の樽型収差を除去する要素を更に含む、
請求項8に記載の画像処理方法。
【請求項13】
前記移動体に設置された複数の前記表示装置に接続され、
前記パラメータを生成するステップにおいて、前記目の位置の情報に応じて、前記複数の表示装置のそれぞれに対応するパラメータを生成し、
前記表示対象画像を生成するステップにおいて、前記パラメータを生成するステップで生成された各前記パラメータに基づいて、前記複数の表示装置のそれぞれに対応する前記表示対象画像を生成する、
請求項8に記載の画像処理方法。
【請求項14】
前記表示装置が前記移動体内で動くことができるように設置されており、
前記表示装置の動きに応じて前記パラメータが更新される、
請求項8から請求項13の何れか一項に記載の画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運転手の視界を拡張させる画像を表示可能な画像処理装置が知られている。この種の画像処理装置の具体的構成が、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の画像処理装置は、運転手の視点から表示装置の設置領域が透過して車外が見えた場合と同等の画像が表示装置の画面に表示されるように、撮影装置による車外の撮影画像を座標変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、車室内のピラー部に設置される表示装置には、形状に柔軟性のあるフレキシブルディスプレイ等を使用し、画面が曲面になっているものがある。このような複雑な形状の画面に対し、乗員から見て自然な車外画像を描画するのに必要な演算量は、膨大である。このため、処理能力の高い画像処理装置が必要であり、コストが高くなる。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑み、移動体の外界画像を非平面な画面に表示させる際の処理負荷を抑えることができる画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る画像処理装置は、移動体に配置され且つ画面の少なくとも一部が非平面の表示装置に接続される装置である。この画像処理装置は、移動体の乗員の目の位置の情報を取得する視点情報取得部と、移動体の外界を写す外界画像を取得する画像取得部と、外界画像から表示装置に表示させる表示対象画像を生成するためのパラメータを、目の位置の情報に応じて生成するパラメータ生成部と、パラメータ生成部で生成されたパラメータに基づいて外界画像から表示対象画像を生成する画像生成部と、画像生成部で生成された表示対象画像を表示装置に出力する画像出力部と、を備える。パラメータは、少なくとも、次の2つの要素を含む。一つ目は、実空間上で設定される基準面上の座標を、実空間に対応する第1座標系から外界画像の座標系である第2座標系に変換する射影変換行列の要素である。二つ目は、画面の座標を、基準面のうち画面に表示される範囲内の、外界画像の座標に変換する射影変換行列の要素である。後者の変換は、第1座標系における目の位置と、画面の形状及び位置を示す画面データに基づいて第1座標系に配置される画面上の座標と、を結ぶ線分の延長線が、第1座標系で設定される基準面と交わる、基準面上の座標を特定することにより行われる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、移動体の外界画像を非平面な画面に表示させる際の処理負荷を抑えることができる画像処理装置及び画像処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表示制御システムの構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る表示制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る表示制御システムが組み込まれた車両の運転席周りを示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るプロセッサによる画像処理の説明を補足する図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るプロセッサによる画像処理の説明を補足する図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るプロセッサによる画像処理の説明を補足する図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る表示装置の画面データの一例を説明する概念的な説明図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る表示装置の画面データの一例を説明する概念的な説明図である。
【
図9】本発明の一実施形態において実行される補間処理の一例を示す概念図である。
【
図10】本発明の一実施形態においてプロセッサにより実行される画像処理を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の変形例1に係る表示制御システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラムに関する。なお、共通の又は対応する要素については、同一又は類似の符号を付して、重複する説明を適宜簡略又は省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る表示制御システム1の構成を示す概略図である。
図2は、表示制御システム1の構成を示すブロック図である。
【0012】
表示制御システム1は、ECU(Electronic Control Unit)10、車内カメラ20、DMS(Driver Monitoring System)30、車外カメラ40、HMI(Human Machine Interface)50、表示装置60
R及び60
Lを備える。なお、
図1及び
図2では、本実施形態の説明に必要な主たる構成要素を図示しており、例えば筐体など、一部の構成要素については、その図示を適宜省略する。
【0013】
表示制御システム1は、道路を走行する車両(移動体の一例)に組み込まれたシステムである。なお、
図1及び
図2に示される構成は一例に過ぎない。例えば、DMS30がECU10に組み込まれてもよい。すなわち、表示制御システム1の態様には自由度があり、各種の設計変更が可能である。
【0014】
ECU10は、画像処理装置の一例であり、プロセッサ100及び記憶装置200を有する。なお、ECU10は、ナビゲーション装置やIVI(In-Vehicle Infotainment)の一部をなす装置であってもよい。また、画像処理装置は、ECU10のような車載型の装置に限らない。画像処理装置は、スマートフォン、フィーチャフォン、タブレット端末、PC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistant)、PND(Portable Navigation Device)、携帯ゲーム機等の他の形態の装置であってもよい。
【0015】
プロセッサ100は、記憶装置200に記憶された画像処理プログラム200Aを実行する。すなわち、プロセッサ100は、画像処理プログラム200Aを実行するコンピュータの一例である。
【0016】
プロセッサ100は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュROM(Read Only Memory)等を備えており、表示制御システム1全体を制御する。例えば、プロセッサ100は、記憶装置200に記憶された画像処理プログラム200Aをはじめとする各種プログラムをワークエリアであるRAM上に展開し、展開されたプログラムに従って表示制御システム1を制御する。
【0017】
プロセッサ100は、例えばシングルプロセッサ又はマルチプロセッサであり、少なくとも1つのプロセッサを含む。複数のプロセッサを含む構成とした場合、プロセッサ100は、単一の装置としてパッケージ化されたものであってもよく、ECU10内で物理的に分離した複数の装置で構成されてもよい。
【0018】
記憶装置200に記憶された画像処理プログラム200Aは、移動体である車両に配置され且つ画面の少なくとも一部が非平面の表示装置60R及び60Lに接続された、コンピュータの一例であるプロセッサ100に実行させるプログラムである。画像処理プログラム200Aは、移動体の乗員の視点(本明細書では、目の位置を「視点」という。)の情報を取得し、移動体の外界を写す外界画像を取得し、外界画像から表示装置60R及び60Lに表示させる表示対象画像を生成するためのパラメータを、目の位置の情報に応じて生成し、生成されたパラメータに基づいて外界画像から表示対象画像を生成し、生成された表示対象画像を表示装置60R及び60Lに出力する、という一連の処理を、プロセッサ100に実行させる。上記パラメータは、少なくとも、次の2つの要素を含む。一つ目は、実空間に対応する第1座標系から外界画像の座標を、外界画像の座標系である第2座標系に変換する射影変換行列の要素である。二つ目は、画面の座標を、基準面のうち画面に表示される範囲内の、外界画像の座標に変換する射影変換行列の要素である。後者の変換は、第1座標系における目の位置と、画面の形状及び位置を示す画面データに基づいて第1座標系に配置される画面上の座標と、を結ぶ線分の延長線が、第1座標系で設定される基準面と交わる、基準面上の座標を特定することにより行われる。
【0019】
言い換えると、画像処理プログラム200Aは、上記一連の処理を含む画像処理方法をプロセッサ100に実行させる。
【0020】
画像処理プログラム200Aを用いて画像処理を実行することにより、移動体の外界画像を非平面な画面に表示させる際の処理負荷を抑えることが可能となる。
【0021】
図3は、表示制御システム1が組み込まれた車両の運転席周りを示す図である。
図3は、車両の後部座席から斜め前方を見た図である。
図3の車室内には、車内カメラ20、表示装置60
C及び60
R並びにフロントウインドウ300が含まれる。表示装置60
Rは、フロントウインドウ300の右側の右フロントピラー部に埋設される。フロントウインドウ300の左側の左フロントピラー部には、表示装置60
Lが埋設される。
【0022】
車内カメラ20は、例えば表示装置60C近傍に設置される。車内カメラ20は、例えば運転席に着座した乗員2を撮影する。
【0023】
DMS30は、車内カメラ20により撮影された車内画像P20を用いて乗員2の顔認識と視点検出を行う。例示的には、DMS30は、公知の画像認識技術を利用して乗員2の顔の位置、顔の向き、目を含む顔の各パーツ、顔に関する乗員2の動作等を認識する処理を行う。顔に関する乗員2の動作とは、例えば、ウインク、うなずく等の動作である。
【0024】
DMS30は、顔認識の結果を用いて乗員2の目の位置である視点座標PVを検出して、プロセッサ100に出力する。視点座標PVは、乗員2の利き目(右又は左)の座標であってもよく、また、左右の瞳孔を結ぶ線分の中点であってもよい。乗員2は、例えばHMI50を操作して自身の利き目を予め入力することができる。なお、DMS30は、顔認識の結果を用いず、車内画像P20から乗員2の視点座標PVを直接検出してもよい。それとは逆に、DMS30は、目の位置以外の乗員の部位の座標や顔の輪郭を検出することにより、それらに対する標準的な目の位置を乗員2の視点座標PVと推定してもよい。
【0025】
車外カメラ40は、車両の外界を撮影する。例示的には、車外カメラ40は、車両前方と車両側方を撮影する。車外カメラ40の撮影視野は、乗員2の目の位置(例えば運転席のヘッドレストのやや前方位置)を視点として右フロントピラー部で死角となる範囲及び左フロントピラー部で死角となる範囲を含む。車外カメラ40は、撮影した車外画像P40をプロセッサ100に出力する。
【0026】
撮影装置の一例である車外カメラ40は、広範囲を撮影するため、広角レンズを備えた、広い画角を撮影可能なカメラであってもよい。車外カメラ40に備えられる広角レンズは、例えば、魚眼レンズである。そのため、車外カメラ40による車外画像P40は、歪み(樽型収差)のある画像となる。
【0027】
車外カメラ40は、1台のカメラで構成されてもよく、また、複数台のカメラを含む構成としてもよい。車外画像P40は、例えば、車両前方を撮影するフロントカメラ、車両側方を撮影する左右の一対のサイドカメラの各撮影画像を組み合わせたものであってもよい。
【0028】
HMI50には、ハードウェア又はソフトウェア若しくはこれらを組み合わせた種々のユーザインタフェースが想定される。例示的には、HMI50は、ダッシュボードに設置されたメカニカルスイッチキー、リモートコントローラ等である。表示装置60Cがタッチパネルを搭載する場合、タッチパネル環境下で提供されるGUI(Graphical User Interface)も、HMI50をなす。乗員2は、HMI50を通じて表示制御システム1を操作することができる。
【0029】
表示装置60Cは、例えば、タッチパネルを搭載するLCD(Liquid Crystal Display)であり、ダッシュボードに設置される。表示装置60R、60LもLCDであり、それぞれ、右フロントピラー部、左フロントピラー部に設置される。これらの表示装置は、LCDに限らず、例えば有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなど、別の形態の表示装置であってもよい。
【0030】
図3の例示では、直線状に延びる物体OJが車外にある。この例示では、乗員2の視点に合わせた高精度な出力画像PR
IMGが右フロントピラー部に設置された表示装置60
Rの画面60A
Rに表示される。そのため、
図3に示されるように、フロントウインドウ300を介して視認される物体OJの一部と、画面60A
Rに表示される物体OJの一部(便宜上符号OJ’で示す。)と、が一直線に並ぶ。乗員2は、死角となる直視できない領域を、画面60A
Rを通じて視認することができる。
【0031】
図3では、物体OJの中心線に、符号LCが付される。
図3に示されるように、物体OJの中心線LCは、画面60A
Rに表示される物体OJ’の中心線と一致する。物体OJと物体OJ’とが一続きの直線状の物体に見えるため、画面60A
Rに写る出力画像PR
IMGを自然な画像として乗員2に知覚させることができる。
【0032】
このように、乗員2の視点から画面60ARの設置領域が透過して車外が見えた場合と同等の出力画像PRIMGが画面60ARに表示される。表示装置60Lの画面60ALにも、乗員2の視点から画面60ALの設置領域が透過して車外が見えた場合と同等の出力画像PLIMGが表示される。
【0033】
以下、便宜上、表示装置60Rと表示装置60Lを総称して「表示装置60」と記す場合がある。画面60ARと画面60ALを総称して「画面60A」と記す場合がある。出力画像PRIMGと出力画像PLIMGを総称して「出力画像PIMG」と記す場合がある。
【0034】
本実施形態では、画面60Aに写る車外の風景を現実の風景の一部として乗員2に知覚させることができる。フロントピラー部越しの風景が見えるため、フロントピラー部が透明であるかのように乗員2に知覚させることができる。
【0035】
ここで、表示装置60は、画面が曲面になっている曲面ディスプレイである。すなわち、表示装置60は、車両(移動体の一例)に配置され且つ画面の少なくとも一部が非平面の表示装置の一例である。
【0036】
従来、曲面ディスプレイのような複雑な画面形状を持つ表示装置に自然な車外画像を描画するのに必要な演算量は膨大である。このため、処理能力の高い画像処理装置が必要であり、コストが高くなる。
【0037】
そこで、乗員2の視点に合わせた高精度な出力画像PIMGを表示装置60に表示させる際のプロセッサ100の処理負荷を抑えるべく、本実施形態に係るECU10は、以下のように構成される。
【0038】
プロセッサ100は、機能ブロックとして、視点情報取得部100A、画像取得部100B、パラメータ生成部100C、画像生成部100D及び画像出力部100Eを含む。各機能ブロックは、プロセッサ100が実行する画像処理プログラム200Aにより実現される。各機能ブロックは、一部又は全部が専用の論理回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0039】
視点情報取得部100Aは、乗員2の視点の情報を取得する。例示的には、視点情報取得部100Aは、視点座標PVをDMS30より取得する。なお、視点座標PVは、例えば乗員2によるHMI50に対する操作によって設定されてもよい。この場合、表示制御システム1からDMS30を省くことが可能となる。
【0040】
画像取得部100Bは、車外カメラ40で撮影された車外画像P40(移動体の外界を写す外界画像の一例)を取得する。
【0041】
パラメータ生成部100Cは、車外画像P40から、表示装置60に表示させる出力画像PIMG(表示対象画像の一例)を生成するためのパラメータPMTを、視点座標PV(視点の情報の一例)に応じて生成する。より詳細には、パラメータPMTは、車外画像P40から、表示装置60Rに表示させる出力画像PRIMGを生成するための第1のパラメータPMTを生成するとともに、表示装置60Lに表示させる出力画像PLIMGを生成するための第2のパラメータPMTを生成する。
【0042】
画像生成部100Dは、パラメータ生成部100Cで生成された第1、第2の各パラメータPMTに基づいて、車外画像P40から、出力画像PRIMG、PLIMGを生成する。
【0043】
画像出力部100Eは、画像生成部100Dで生成された出力画像PRIMG、PLIMGを、それぞれ、表示装置60R、60Lに出力する。
【0044】
これにより、
図3に例示される出力画像PR
IMGが表示装置60
Rの画面60A
Rに表示される。
図3では図示外ではあるが、表示装置60
Lの画面60A
Lにも、画面60A
Rと同様に、乗員2の視点から画面60A
Lの設置領域が透過して車外が見えた場合と同等の出力画像PL
IMGが表示される。
【0045】
詳しくは後述するが、パラメータPMTは、少なくとも、次の2つの要素を含む。一つ目は、実空間上で設定される基準面上の座標を、実空間に対応する第1座標系から車外画像P40の座標系である第2座標系に変換する射影変換行列の要素である。二つ目は、画面60AR(又は画面60AL)の座標を、基準面のうち画面60AR(又は画面60AL)に表示される範囲内の、車外画像P40の座標に変換する射影変換行列の要素である。後者の変換は、第1座標系における視点座標PVと、画面60AR(又は画面60AL)の形状及び位置を示す画面データに基づいて第1座標系に配置される画面60AR(又は画面60AL)上の座標と、を結ぶ線分の延長線が、第1座標系で設定される基準面と交わる、基準面上の座標を特定することにより行われる。
【0046】
すなわち、プロセッサ100は、射影変換行列の要素を含む上記の如きパラメータPMTを視点座標PVに応じてリアルタイムに生成する。このようなパラメータPMTを用いることにより、乗員2の視点に応じてリアルタイムに変化する精度の高い出力画像PIMGを、従来よりも少ない演算コストで、曲面ディスプレイである表示装置60R、60Lの画面60AR、画面60ALに表示させることができる。
【0047】
図4~
図6は、プロセッサ100(特に、パラメータ生成部100C及び画像生成部100D)による画像処理の説明を補足する図である。これらの図を用いて、表示装置60
Rに出力する出力画像PR
IMGの生成方法について説明する。重複説明を避けるため、出力画像PL
IMGの生成方法については省略する。
【0048】
車両座標系は、実空間に対応する第1座標系の一例であり、例えば
図4に示されるように、X
V,Y
V,Z
Vの3軸で示される。車両座標系は、表示制御システム1を組み込む車両を基準とした座標系であり、車両のある位置を原点Oとする3次元座標系である。軸X
Vは、車幅方向に延びる。軸Y
Vは、車両上下方向に延びる。軸Z
Vは、車両前後方向に延びる。各軸の単位は、ミリメートル(mm)である。
【0049】
画像座標系は、外界画像の座標系である第2座標系の一例であり、例えば
図4に示されるように、横軸X
C、縦軸Y
Cの2軸で示される。画像座標系は、車外画像P
40を基準とする座標系であり、車外画像P
40の左上隅を原点Oとする2次元座標系である。各軸の単位は、ピクセル(px)である。
【0050】
基準面SMは、車両座標系に設定される仮想面であり、例えば
図4に示されるように、軸Y
Vと平行な垂直面である。例示的には、車両から前方に所定距離離れた垂直面が基準面SMに設定される。また、例えばプロセッサ100が画像認識処理を行い、この処理で認識された垂直面(壁面等)の位置に基準面SMに設定されてもよい。基準面SMは、垂直面に限らない。水平面(地面等)が基準面SMに設定されてもよく、また、斜めに傾いた面が基準面SMに設定されてもよい。
【0051】
図5に示される画面60A
Rは、出力画像PR
IMGの投影面であり、車両座標系に配置される。
【0052】
ここで、ECU10の記憶装置200に、画面データDB200Bが記憶される。画面データDB200Bには、画面60A
R、60A
L等の各画面の画面データが格納される。この画面データは、車両座標系における画面の形状及び位置の情報を含む。
図5に示される画面60A
Rは、画面60A
Rの画面データに基づいて車両座標系内に定義される。
【0053】
車両座標系における画面60ARの座標は、例えば、曲面を定義するのに必要な最小限の情報に基づいて幾何計算で求められる。画面60ARの座標は、車両座標系における座標配列要素を参照することによって得られてもよい。何れにしても、画面60ARの座標は、画面60ARの画面データから得られる。
【0054】
表示装置の形状(サイズを含む。)は、例えば製品毎に異なる。また、表示装置の設置位置は車種毎に異なる。そこで、画面データDB200Bには、種々の形状の表示装置及び設置位置に対応する複数種類の画面データが格納されてもよい。各種画面データを予め格納することにより、プロセッサ100による画像処理で適用する画面データ(言い換えると、画面データに基づいて車両座標系に配置される画面)を、製品毎及び車種毎に応じて簡単に切り替えることができる。
【0055】
このように、画面データDB200Bは、複数種類の画像データを格納する記憶部の一例である。
【0056】
画面データは、例えばローカルでなくネットワーク上に配置されてもよい。この場合、プロセッサ100は、図示しない移動体無線通信部を通じてネットワーク上の画面データDBにアクセスして画面データをダウンロードする。
【0057】
図7及び
図8は、画面60A
Rの画面データD1の一例を説明する概念的な説明図である。
【0058】
図7に概念的に示されるように、画面60A
Rの画面データD1は、少なくとも、画面60A
Rの垂直辺を定義する2つの点データP1及びP2(3次元座標データ)、曲面を定義する曲線データC1(例えば2次元空間又は3次元空間で描かれるベジェ曲線のデータ)及び曲線に対する回転角度データR1を含む。
【0059】
図7の例では、点データP1及びP2を用いて、車両座標系における画面60A
Rの一方の垂直辺の位置及び長さが定義される。便宜上、点データP1と点データP2とを結ぶ線分は符号LAで示される。曲線データC1を用いて、垂直辺と直交する曲線状の上下辺の形状及び長さが定義される。便宜上、曲線データC1で定義される曲線は符号C2で示される。回転角度データR1を用いて、曲線状の上下辺の向きが定義される。曲線データC1の終点P3とP4とを接続することにより、画面60A
Rの形状及び位置の情報が得られる。
【0060】
このように、上下辺方向(第1方向の一例)でカーブする曲面状に形成された略矩形の画面60ARの画面データは、上下辺方向の曲線形状、上下辺方向と直交する垂直辺方向(第2方向の一例)の直線形状及び設置角度の情報(すなわち、曲線データC1、点データP1及びP2及び回転角度データR1)を含む。
【0061】
より正確な曲面形状を定義するため、
図8に概念的に示されるように、画面60A
Rの形状及び位置は、曲線データC1、点データP1及びP2及び回転角度データR1に基づいて幾何計算で求められる。
【0062】
この幾何計算では、画面60A
R(言い換えると、画面データD1で定義される曲面)上の格子点の座標配列が求められる。処理負荷の軽減のため、全画素に対応する格子点ではなく、一定間隔で離散的に並ぶ一部の画素に対応する格子点の座標配列が求められる。ここで求められる格子点の座標配列は、
図6に示される出力画像PR
IMG上の各格子点で示される座標群Dに対応する。
【0063】
図8に示されるように、曲線データC1で定義される曲線C2がn等分される。このnは、垂直辺方向の格子点の数から1を減算した値である。曲線C2の両端点及びn等分された曲線C2の各分割点の座標が計算される。
【0064】
上記で計算された曲線C2上の分割点群CV1が複製される。複製元の分割点群CV1は、複製元の分割点群CV1の一端点が点データP1に配置されるよう移動され、複製された分割点群CV1は、複製された分割点群CV1の一端点が点データP2に配置されるよう移動される。なお、点データP1と点データP2とを結ぶ線分LAが、分割点群CV1がなす曲線C2と直交するように、複製元の分割点群CV1の向きが決められる。複製された分割点群CV2は、複製元の分割点群CV1と同じ向きにされる。
【0065】
線分LAがm等分される。このmは、上下辺方向の格子点の数から1を減算した値である。線分LAの両端点及びm等分された線分LAの各分割点の座標が計算される。
【0066】
上記で計算された線分LA上の分割点群CV2が複製される。より具体的には、一方の分割点群CV1の他端点に点データP1が位置し且つ他方の分割点群CV1の他端点に点データP2が位置するように、分割点群CV2が複製される。
【0067】
一対の分割点群CV1の対向配置点を結ぶ上下辺沿いの線分LBが定義される。一対の分割点群CV2の対向配置点を結ぶ垂直辺沿いの線分LDが定義される。
【0068】
各線分LBと各線分LDとが交わる全ての格子点の座標、すなわち格子点の座標配列が計算される。
【0069】
格子点の座標配列は、回転角度データR1に応じて車両座標系内で回転される。これにより、画面60ARの形状及び位置の情報を含む画面データD1として、格子点の座標配列が求まる。
【0070】
プロセッサ100による画像処理では、次式を用いて、車外画像P40から出力画像PRIMGが生成される。附言するに、次式(1)を成立させる、出力画像PRIMGの格子点群(座標群D)に対応する車外画像P40の座標群D’が計算される。
【0071】
式(1)
D’=f(HD)
D:出力画像PRIMG上の画素を示す座標群
H:射影変換行列M×射影変換行列N
f:樽型収差除去後の車外画像P40上の座標から対応する樽型収差除去前の車外画像P40上の座標に変換する関数
D’:座標群Dに対応する車外画像P40上の座標群
【0072】
上記式(1)について具体的に説明する。
【0073】
座標群Dは、2次元に展開された画面60ARの座標系(第3座標系の一例)の座標を横に並べた行列である。画面60ARの座標系は、横軸XD、縦軸YDの2軸で示される。画面60ARの座標系は、画面60ARを基準とする座標系であり、画面60ARの左上隅を原点Oとする2次元座標系である。各軸の単位は、ピクセル(px)である。
【0074】
なお、座標群Dは、全画素の座標群でなく、画面データD1(すなわち、一定間隔で離散的に並ぶ一部の画素に対応する格子点の座標配列)に対応する一部の画素の座標群を示す。附言するに、プロセッサ100は、座標群Dを示す各格子点の座標と、車両座標系における対応座標GP(言い換えると、画面データD1で定義される画面60AR上の格子点)と、の対応関係を予め保持している。
【0075】
射影変換行列Hは、射影変換行列Mと射影変換行列Nとの積である。
【0076】
射影変換行列Nを用いて、画面データD1で定義される画面60AR上の格子点(言い換えると、座標群Dを示す各格子点の座標)が、車両座標系内に設定された基準面SM上の各座標に変換される。
【0077】
ここで、
図5中、投影中心Tは、画面60A
Rに投影される出力画像PR
IMGの投影中心を示す。本実施形態では、車両座標系における乗員2の視点座標PVが投影中心Tに設定される。
【0078】
プロセッサ100は、投影中心Tを基準にして、車両座標系で設定された基準面SM上のどの範囲が、投影面である画面60ARに投影されるかを特定する。具体的には、プロセッサ100は、画面60ARの座標を示す格子点GPの1つと投影中心Tとを結ぶ線分L1を求める。プロセッサ100は、線分L1の延長線L1’が交わる、基準面SM上の座標CPを求める。各格子点GPに対応する基準面SM上の座標CPが求まることにより、画面60ARに対応する範囲HCが特定される。
【0079】
なお、
図5に示される基準面SM及び範囲HCのかたちは概念的に示したにすぎず、正確なものではない。
【0080】
すなわち、射影変換行列Nは、画面60AR上の格子点GPを基準面SM上の座標CPに射影変換する要素である。射影変換行列Nの係数は、投影中心T(視点座標PV)に応じて決まる。基準面SMが車両座標系内の規定位置でなく車外画像P40に写る物体に応じて動的に変化する場合、射影変換行列Nの係数は、投影中心T(視点座標PV)及び基準面SMに応じて決まる。
【0081】
このように、プロセッサ100は、射影変換行列Nを用いて、各格子点GPを各座標CPに射影変換する。
【0082】
ここで、車両座標系の基準面SM上の座標(xV,yV)を表す同次座標は符号PVで示される。座標(xV,yV)に対応する、画面60ARの座標(xD,yD)を表す同次座標は符号PDで示される。同次座標PVとPDの関係は、次式(2)で示される。
【0083】
【0084】
投影中心T(視点座標PV)を投影の中心とし、基準面SMを投影面とした際の、画面60AR上の格子点GPの点を投影する投影変換行列を算出し、これを射影変換行列Nとする。なお、値λV,λDは、各同次座標PV,PDにおける倍率を示す。値λV,λDが値0を除くどのような値でも、各同次座標は、各座標系上で同一の座標を表す。
【0085】
射影変換行列Nを用いた上記式(2)により、各格子点GP(言い換えると、座標群Dの各座標)が基準面SM上の座標CPに変換される。
【0086】
射影変換行列Mを用いて、基準面SM上の各座標CPが、樽型収差を除去した車外画像P40上の座標CP’(言い換えると、画像座標系の座標)に変換される。
【0087】
ここで、車両座標系の基準面SM上の座標(xV,yV)を表す同次座標は符号PVで示される。座標(xV,yV)に対応する、画像座標系の座標(xC,yC)を表す同次座標は符号PCで示される。同次座標PVとPCの関係は、次式(3)で示される。
【0088】
【0089】
複数対の、対応する点PVと点PCとが実測により特定され、これらの特定された座標が上記式(3)に代入されて、射影変換行列Mの各要素を含む連立方程式が解かれることにより、射影変換行列Mが算出される。なお、値λV,λCは、各同次座標PV,PCにおける倍率を示す。値λV,λCが値0を除くどのような値でも、各同次座標は、各座標系上で同一の座標を表す。射影変換行列Mの算出時には、値λV,λCを1とみなす。
【0090】
射影変換行列Mを用いた上記式(3)により、車両座標系に設定された基準面SM上の各座標CPが画像座標系の座標CP’に変換される。
【0091】
射影変換行列Mと射影変換行列Nとの積H(=MN)は、画像座標系の座標(xC,yC)を、画面60ARの座標(xD,yD)に変換する射影変換行列となる。この射影変換行列Hを用いた関係式は、次式(4)に示される通りである。射影変換行列Hを予め求めておくことにより、画像座標系の座標と画面60ARの座標との間の座標変換が容易に行われる。
【0092】
【0093】
更に、予め求められた関数fにより、樽型収差除去後の車外画像P40から樽型収差除去前の車外画像P40、すなわち、車外カメラ40によるオリジナルの撮影画像に変換される。これにより、出力画像PRIMGの格子点群(座標群D)に対応する車外画像P40の座標群D’が計算される。すなわち、上記式(1)を用いて、出力画像PRIMGの格子点群(座標群D)に対応する車外画像P40の座標群D’が計算される。
【0094】
このように、本実施形態では、射影変換行列Hを用いることにより、画像座標系、車両座標系、及び画面60A
Rの座標系の間で高精度な座標変換が行われる。そのため、車外画像P
40から、乗員2の視点に合わせた高精度な出力画像PR
IMGが生成される。これにより、例えば、
図3に示されるように、乗員2がフロントウインドウ300を介して視認する風景と、画面60A
Rに表示される出力画像PR
IMGと、を連続的に表示させることができる。この結果、画面60A
Rに写る出力画像PR
IMGを自然な画像として乗員2に知覚させることができる。
【0095】
上記式(1)に含まれる、出力画像PRIMGの格子点群(座標群D)に対応する車外画像P40の座標群D’を計算するための要素が、パラメータ生成部100Cで生成されるパラメータPMTである。
【0096】
すなわち、パラメータPMTは、少なくとも、次の2つの要素を含む。一つ目は、実空間上で設定される基準面上の座標を、実空間に対応する第1座標系から車外画像P40の座標系である第2座標系に変換する射影変換行列の要素(射影変換行列M)である。二つ目は、画面60ARの座標を、基準面SMのうち画面60ARに表示される範囲HC内の、車外画像P40の座標に変換する射影変換行列の要素(射影変換行列N)である。後者の変換は、第1座標系における視点座標PVと、画面60ARの形状及び位置を示す画面データに基づいて第1座標系に配置される画面60AR上の座標と、を結ぶ線分L1の延長線L1’が、第1座標系で設定される基準面SMと交わる、基準面SM上の座標を特定することにより行われる。附言するに、パラメータPMTは、車外画像P40の座標を第2座標系から第1座標系に変換するに際して車外画像P40の樽型収差を除去する要素(関数f)を更に含む。
【0097】
本実施形態では、このようなパラメータPMTを用いることにより、各座標系間で高精度な座標変換を行いつつ、例えば画面60ARのような複雑な形状を持つ画面(非平面)に現実の風景を再現した自然な車外画像を表示させる際の演算コストが抑えられる。そのため、プロセッサ100の処理負荷が大幅に軽減される。
【0098】
上述したように、パラメータPMTは、一定間隔で離散的に並ぶ一部の画素を対象として、車外画像P40の座標を画像座標系から車両座標系に変換し且つ範囲HC内の座標を画面60ARの座標に変換するものである。
【0099】
画像生成部100Dは、パラメータPMTに基づいて生成された、出力画像PRIMGの格子点群(座標群D)に対応する車外画像P40の座標群D’の情報(表示対象画像に含まれる一部の画素の情報の一例)をもとに補間処理を行うことにより、表示対象画像の全ての画素の情報を取得する。
【0100】
図9は、画像生成部100Dによる補間処理の一例を示す概念図である。
図9に概念的に示されるように、画像生成部100Dは、出力画像PR
IMGの格子点群(座標群D)に対応する車外画像P
40の座標群D’の情報をもとに補間処理を行う。
【0101】
画像生成部100Dは、例えば周知の方法で画素座標の補間を行う。例示的には、画像生成部100Dは、最近傍補間、バイリニア補間、バイキュビック補間等を用いて、不足する画素の情報を補間する。これにより、画面60ARに表示すべき全画素の情報が得られる。
【0102】
本実施形態では、一部の画素のみを対象として、高精度な座標変換を伴う処理が実行される。そのため、全画素を対象として座標変換処理等を実行する場合と比べて、プロセッサ100の処理負荷が大幅に軽減される。
【0103】
図10は、プロセッサ100により実行される画像処理を示すフローチャートである。例えば、表示制御システム1が起動すると、
図10に示される画像処理の実行が開始される。この画像処理は、例えば表示制御システム1が停止するまでの間、所定のレートで(例えば毎秒複数回)繰り返し実行される。
【0104】
なお、フローチャートの処理単位の分割の仕方や名称によって実施形態が制限されることはない。また、フローチャートの処理順序も図示される例に限らない。
【0105】
図10に示されるように、プロセッサ100は、DMS30で検出された乗員2の視点座標PVを取得する(ステップS101)。
【0106】
このように、ステップS101において、プロセッサ100は、乗員2の視点座標PV(乗員の眼の位置の情報の一例)を取得する視点情報取得部100Aとして動作する。
【0107】
プロセッサ100は、車外カメラ40で撮影された車外画像P40を取得する(ステップS102)。
【0108】
このように、ステップS102において、プロセッサ100は、車両(移動体の一例)の外界を写す車外画像P40(外界画像の一例)を取得する画像取得部100Bとして動作する。
【0109】
プロセッサ100は、パラメータPMTを、ステップS101で取得された視点座標PVに応じて生成する(ステップS103)。
【0110】
このように、ステップS103において、プロセッサ100は、車外画像P40から表示装置60R、60Lに表示させる出力画像PRIMG、PLIMGを生成するためのパラメータPMTを、視点座標PVに応じて生成するパラメータ生成部100Cとして動作する。
【0111】
プロセッサ100は、ステップS103で生成されたパラメータPMTに基づいて車外画像P40から出力画像PRIMG、PLIMGを生成する(ステップS104)。上述した画素補間処理は、例えばステップS104で実行される。
【0112】
このように、ステップS104において、プロセッサ100は、パラメータ生成部100Cで生成されたパラメータPMTに基づいて車外画像P40から出力画像PRIMG、PLIMGを生成する画像生成部100Dとして動作する。
【0113】
プロセッサ100は、ステップS104で生成された出力画像PRIMG、PLIMGを表示装置60R、60Lに出力する(ステップS105)。
【0114】
このように、ステップS105において、プロセッサ100は、画像生成部100Dで生成された出力画像PRIMG、PLIMGを表示装置60R、60Lに出力する画像出力部100Eとして動作する。
【0115】
図10に示される画像処理の実行中、例えば乗員2が身体を動かすことによって視点座標PVが移動すると、視点座標PVの移動に応じて、画面60A
R及び画面60A
Lに写る車外の風景(出力画像PR
IMG及び出力画像PL
IMG)がリアルタイムに変わる。そのため、乗員2は、透明なフロントピラー部から車外を視認する状態を体験できる。
【0116】
図10に示される画像処理では、パラメータPMTを用いて出力画像PR
IMG、PL
IMGが生成される。そのため、各座標系間で高精度な座標変換を行いつつ、例えば画面60A
Rのような複雑な形状を持つ画面(非平面)に現実の風景を再現した自然な車外画像を表示させる際の演算コストが抑えられる。そのため、プロセッサ100の処理負荷が大幅に軽減される。
【0117】
図11は、本発明の変形例1に係る表示制御システム1の構成を示すブロック図である。
図11に示されるように、変形例1に係る表示制御システム1は、センサ70を備える。
【0118】
変形例1では、表示装置60R及び60Lは、車室内で動くことができるように設置される。例示的には、表示装置60R、60Lは、チルト、パン、スライド等できるように、右フロントピラー部、左フロントピラー部のそれぞれに、周知のメカニカルな機構を介して設置される。
【0119】
例えば乗員2がHMI50を操作すると、表示装置60R、60Lが駆動して、チルト、パン、スライド等の動作を行う。センサ70は、右フロントピラー部、左フロントピラー部のそれぞれに対する表示装置60R、60Lの動きを検知する。表示装置60R、60Lが動くことにより、車両座標系に配置すべき画面60AR、画面60ALの位置も変わる。
【0120】
そこで、プロセッサ100は、センサ70により検知された表示装置60R、60Lの動きに応じて画面データD1を更新する。具体的には、プロセッサ100は、画面データD1に含まれる表示装置60R、60Lの位置の情報を更新する。画面データD1の更新に伴い、パラメータPMTも更新される。
【0121】
このように、表示装置60R、60Lの動きに応じてパラメータPMTが更新される。そのため、画面60AR、画面60ALが動いた場合にも、演算コストを抑えつつ、現実の風景を再現した自然な車外画像を表示させることができる。
【0122】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0123】
上記の実施形態では、単一のECU10が各種処理を実行しているが、本発明の構成はこれに限らない。別の実施形態では、複数のECUが各種処理を分担して実行する構成としてもよい。複数のECUによる分散処理の実行により、例えば処理速度が向上する。
【0124】
例えば、表示制御システム1は、各種処理の大部分を実行するメインECUと、画面データDBを保持し且つメインECUと表示装置60R及び60Lとの通信を仲介するサブECUと、を含む構成としてもよい。
【0125】
上記のサブECUは、表示装置毎に備えられてもよい。すなわち、表示制御システム1は、メインECUと表示装置60Rとの通信を仲介するサブECUと、メインECUと表示装置60Lとの通信を仲介するサブECUと、を含む構成としてもよい。
【0126】
複数の表示装置に対して単一のサブECUが備えられてもよい。すなわち、表示制御システム1は、メインECUと表示装置60R及び60Lとの通信を仲介するサブECUを含む構成としてもよい。
【0127】
本実施形態に係る画像処理は、表示装置60R及び60Lだけでなく、ダッシュボードに設置された表示装置60Cに対しても適用することができる。表示装置60Cが例えば曲面ディスプレイである場合にも、出力画像PIMGを表示させる際の処理負荷が従来と比べて抑えられる。
【0128】
車外画像P40は、リアルタイムの撮影画像に限らず、例えば過去の撮影画像であってもよい。
【0129】
出力画像PIMGを表示させる画面は、画面60Aに例示される曲面ディスプレイに限らず、より複雑な3次元形状を持つものであってもよい。また、出力画像PIMGを表示させる画面は、LCDや有機ELディスプレイ等の画面でなく、プロジェクタで投影される投影面(例えば凹凸を含む構造物の表面)であってもよい。
【符号の説明】
【0130】
1 :表示制御システム
10 :ECU
20 :車内カメラ
30 :DMS
40 :車外カメラ
50 :HMI
60AR、60AL :画面
60R、60L :表示装置
100 :プロセッサ
100A :視点情報取得部
100B :画像取得部
100C :パラメータ生成部
100D :画像生成部
100E :画像出力部
200 :記憶装置
200A :画像処理プログラム
200B :画面データDB