(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094137
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】マイクロレンズアレイ及び照明装置
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20240702BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240702BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240702BHJP
G02B 5/02 20060101ALN20240702BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240702BHJP
【FI】
G02B3/00 A
F21S2/00 100
F21V5/04 350
F21V5/04 400
F21V5/04 450
G02B5/02 C
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210910
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】514052472
【氏名又は名称】日精テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129883
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 稔
(72)【発明者】
【氏名】山川 明郎
(72)【発明者】
【氏名】泉 永記
【テーマコード(参考)】
2H042
【Fターム(参考)】
2H042BA04
2H042BA14
2H042BA18
(57)【要約】
【課題】加工精度や組み立て精度に影響を受けにくく、均一且つ所望の配光特性を得られるマイクロレンズアレイ及び照明装置を提供すること。
【解決手段】頂部、底部及び側部で仮想的に定義される円錐台又は楕円推台の一部分からなる単位ユニットを、その単位ユニットの円形又は楕円形の頂部の中心が2次元平面内で六方格子状に配列し、前記頂部側から前記底部側に向かってコーン形状に広がる前記単位ユニットの側部は、1の単位ユニットと、その周囲を取り囲む6つの単位ユニットが尾根線又は谷線により各境界が区画され、前記単位ユニットの平面視が前記単位ユニットを区画する尾根線又は谷線により六角形状となる程度に、隣接する前記各単位ユニット同士が密に配置されてなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部、底部及び側部で仮想的に定義される円錐台又は楕円推台の一部分からなる単位ユニットを、その単位ユニットの円形又は楕円形の頂部の中心が2次元平面内で六方格子状に配列し、
前記頂部側から前記底部側に向かってコーン形状に広がる前記単位ユニットの側部は、1の単位ユニットと、その周囲を取り囲む6つの単位ユニットが尾根線又は谷線により各境界が区画され、前記単位ユニットの平面視が前記単位ユニットを区画する尾根線又は谷線により六角形状となる程度に、隣接する前記各単位ユニット同士が密に配置されてなることを特徴とするマイクロレンズアレイ。
【請求項2】
前記単位ユニットは、底部側に開放された凹ディンプル形状である請求項1に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項3】
前記単位ユニットは、頂部側に突出する凸レンズ形状である請求項1に記載のマイクロレンズアレイ。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載のマイクロレンズアレイを備えた照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズアレイ及びこれを備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンに搭載されたLED(発光ダイオード)光源等を用いたフラッシュライトには、所定の照射距離及び照射範囲を均一に照射することが求められることから、配光を制御するための光学レンズ(フラッシュライトレンズ)が用いられている。このようなフラッシュライトレンズは、薄いスマートフォンの筐体に組み込まれることから、光学レンズに対しても光軸方向の薄さが求められ、従来からフレネルレンズが用いられている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5275557号公報
【特許文献2】米国特許第7983552号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のフレネルレンズを用いたフラッシュライトは、指向性が高いLED光源からの照射光を均一化するには十分でなく、また、所定の配光を得るには、フレネルレンズ自体の加工性精度やLED光源とフレネルレンズの位置合わせに高い精度が要求されることから、製造時や組み立て時のばらつきによるこれらの位置ずれにより、所望の配光特性が得られないという問題があった。
【0005】
本発明は上記従来における問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、加工精度や組み立て精度に影響を受けにくく、均一且つ所望の配光特性を得られるマイクロレンズアレイ及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、本発明のマイクロレンズアレイは、頂部、底部及び側部で仮想的に定義される円錐台又は楕円推台の一部分からなる単位ユニットを、その単位ユニットの円形又は楕円形の頂部の中心が2次元平面内で六方格子状に配列し、前記頂部側から前記底部側に向かってコーン形状に広がる前記単位ユニットの側部は、1の単位ユニットと、その周囲を取り囲む6つの単位ユニットが尾根線又は谷線により各境界が区画され、前記単位ユニットの平面視が前記単位ユニットを区画する尾根線又は谷線により六角形状となる程度に、隣接する前記各単位ユニット同士が密に配置されてなることを特徴とする。
【0007】
また、上記発明において、前記単位ユニットは、底部側が開放された凹ディンプル形状でもよい。
【0008】
また、上記発明において、前記単位ユニットは、頂部側に突出する凸レンズ形状でもよい。
【0009】
また、本発明の照明装置は、前記マイクロレンズアレイを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加工精度や組み立て精度に影響を受けにくく、均一且つ所望の配光特性を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るマイクロレンズアレイ及び照明装置の(A)正面図、(B)マイクロレンズアレイを示す拡大図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係るマイクロレンズアレイ及び照明装置のX―X線断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る(A)マイクロレンズアレイを説明する斜視図、(B)マイクロレンズアレイを構成する単位ユニットの配列を説明する図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係るマイクロレンズアレイの配列を示す正面図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態に係る(A)マイクロレンズアレイ及び照明装置を説明する斜視図、(B)マイクロレンズアレイを示す拡大図、(C)マイクロレンズアレイの配列を説明する正面図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係るマイクロレンズアレイ及び照明装置のX―X線断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態に係るマイクロレンズアレイを説明する拡大図である。
【
図8】従来のフラッシュライトレンズの正面図である。
【
図9】従来のフラッシュライトレンズのX―X線断面図である。
【
図10】(A)及び(B)は、本発明の照明装置の出射面での照射パターンを示す図である。また、(C)及び(D)は、従来のフラッシュライトレンズを用いた照明装置の照射面での照射パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施の形態において、同一部分については同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるマイクロレンズアレイ及び照明装置の(A)正面図、(B)マイクロレンズアレイを示す拡大図である。
図2は、本発明の第1の実施の形態にかかるマイクロレンズアレイ及び照明装置のX―X線断面図である。
図3は、本発明の第1の実施の形態にかかるマイクロレンズアレイを説明する(A)斜視図、(B)マイクロレンズアレイを構成する単位ユニットの配列を示す図である。
図4は、本発明の第1の実施の形態にかかるマイクロレンズアレイの配列を示す正面図である。
【0013】
図1に示す本発明の第1の実施の形態にかかる照明装置1は、円形の中心部分に投射面での投射パターンの配光を制御するためのマイクロレンズアレイ100を備えている。照明装置1は、少なくともマイクロレンズアレイ100が形成された円形の中心部分が光透過性の透明樹脂などの部材で構成される。マイクロレンズアレイ100は、
図1(B)に示すように、光透過性の多数の光学素子からなる単位ユニット10が2次平面内で六方格子状に配列されている。なお、照明装置1は、中央部分以外の周辺部も含めて全体が光透過性の透明樹脂で一体的に形成されてもよい。この場合、周辺部の所望部分は、適宜、遮光性の黒塗りなどが施工されることが好ましい。
【0014】
また、本発明の第1の実施の形態にかかる照明装置1は、
図2のX―X線断面図に示すように、マイクロレンズアレイ100の形成面側が窪み形状とされ、その中心部分の所定位置にLED光源(図示せず)が配置される。
【0015】
マイクロレンズアレイ100を構成する単位ユニット10は、
図3(A)に示すように、頂部11、底部12及び側部13の仮想線により仮想的に定義される円錐台又は楕円推台形の一部分からなる。即ち、各単位ユニット10は、頂部11側から前記底部12側に向かってコーン形状に広がる側部13と頂部11とで区画され、底部12側に解放された凹ディンプル形状とされる。
【0016】
また、単位ユニット10は、
図3(B)に示すように、中心の単位ユニット10に対して、それを2次平面内で六方格子状に取り囲む各単位ユニット10(a)~10(f)が、お互いの仮想的な底部12及び側部13が重なり合う程度に、各単位ユニット10の頂部11の中心が密接に配置される。これにより
図3(A)に示すように、各単位ユニット10は、中心部分の単位ユニット10と、その周囲を取り囲む6つの単位ユニット10(a)~10(f)との各境界が尾根線20を含む側部13により区画される。
【0017】
また、各単位ユニット10は、
図4に示すように、底部12側からの見た平面視で頂部11が楕円形状であり、尾根線20で区画される底部12側の開放部が六角形状をなす凹ディンプル形状とされる。
【0018】
本実施の形態では、頂部11と、尾根線20で区画される底部12側の六角形状の開放部の開口比が1:1.73とされる。
【0019】
なお、本実施の形態に係るマイクロレンズアレイ100は、頂部11が楕円形状に限られず円形でもよい。
【0020】
本発明の第1の実施の形態にかかる照明装置1は、円形のマイクロレンズアレイ100の中心部分に配置されたLED光源からの光が、マイクロレンズアレイ100を構成する各単位ユニット10の開放部側からマイクロレンズアレイ100に入射し、各単位ユニット10で適宜配光が制御されて、マイクロレンズアレイ形成面の対面側(窪み側と反対側面)の出射面から照射面に向けて照射される。
【0021】
〔第2の実施の形態〕
図5は、本発明の第2の実施の形態にかかるマイクロレンズアレイ及び照明装置の(A)斜視図、(B)マイクロレンズアレイを示す拡大図、(C)マイクロレンズアレイの配列を示す正面図である。
図6は、本発明の第2の実施の形態にかかるマイクロレンズアレイ及び照明装置のX―X線断面図である。また、
図7は、本発明の第2の実施の形態に係るマイクロレンズアレイを説明する拡大図である。
【0022】
図5に示す本発明の第2の実施の形態にかかる照明装置1は中心部分に投射面での投射パターンの配光を制御するための円形のマイクロレンズアレイ100を備えている。本発明の第2の実施の形態にかかるマイクロレンズアレイ100を構成する単位ユニット10は、第1の実施の形態にかかるマイクロレンズアレイと同様に、頂部11、底部12及び側部13の仮想線により仮想的に定義される円錐台又は楕円推台形の一部分からなる。即ち、
図5(B)に示すように、各単位ユニット10は、頂部11と、頂部11側から底部12側に向かってコーン形状に広がる側部13とで形成され、頂部11側に突出する凸レンズ形状である。照明装置1は、少なくともマイクロレンズアレイ100が形成された円形の中心部分が光透過性の透明樹脂などの部材で構成される。また、マイクロレンズアレイ100は、
図5(C)に示すように、光透過性の多数の光学素子からなる単位ユニット10が2次平面内で六方格子状に配列されている。
【0023】
また、本発明の第2の実施の形態にかかる照明装置1は、
図6のX―X線断面図に示すように、マイクロレンズアレイ100の形成面側が窪み形状とされ、その中心部分の所定位置にLED光源(図示せず)が配置される。
【0024】
また、単位ユニット10は、
図5(C)及び
図7に示すように、中心の単位ユニット10に対して、それを2次平面内で六方格子状に取り囲む各単位ユニット10が、お互いの仮想的な底部(図示せず)及び側部13が重なり合う程度に、各単位ユニット10の頂部11の中心が密接に配置される。これにより
図7に示すように、各単位ユニット10は、中心部分の単位ユニット10と、その周囲を取り囲む単位ユニット10との各境界が谷線20を含む側部13により区画される。
【0025】
また、各単位ユニット10は、
図5(C)に示すように、頂部11側からの見た平面視において頂部11が楕円形状であり、谷線20で区画される底部側が六角形状をなし、頂部11側に突出する凸レンズ形状とされる。
【0026】
なお、本実施の形態に係るマイクロレンズアレイ100は、頂部11が楕円形状に限られず円形でもよい。
【0027】
本発明の第2の実施の形態にかかる照明装置1は、照明装置1の中心部分に配置されたLED光源からの光が、マイクロレンズアレイ100を構成する各単位ユニット10の頂部11側からマイクロレンズアレイ100に入射し、各単位ユニット10で適宜配光が制御されて、マイクロレンズアレイ形成面の対面側(窪み側と反対側面)の出射面から照射面に向けて照射される。
【0028】
以上説明した本発明の第1及び第2の実施の形態にかかる照明装置1は、各単位ユニット10の頂部11間の間隔(ピッチ)、頂部11側から底部12側に向かってコーン形状に広がる側部13の広がり角度、単位ユニット10の厚みを適宜設定することにより、被投射基準面(投射面)で所望の配光特性を得ることができる。即ち、各単位ユニット10に入射した光が側部13においてスネルの法則に従って、所定の角度で屈折し、照明装置1の出射面側から所定の出射角度で出射し、投射面を投射する。この時に、隣接する単位ユニット10が、十分近接して配置されているので、各単位ユニット10からの出射光が投射面においてお互いに重複して、投射面上での均一な配光特性を得る事が可能となる。
【0029】
本発明の実施の形態にかかる照明装置1は、PMMAなどの光透過性樹脂から射出成型により成型されることが好ましい。
【0030】
図10(A)~(D)のグラフは、本発明の第1の実施の形態にかかる照明装置1から出射する光の配光特性を、光源(図示せず)より光軸上に1m離れた位置を原点とする光軸(Z軸)に直交する仮想平面(投射面)であるXY平面上(位置空間)で、スクリーンサイズ1052mm×1403mmでの光の照度(単位lx)を、その照度に応じた照度分布(グラフ上に示す濃淡)によって示すシミュレーション図である。
【0031】
本発明の第1の実施の形態にかかる照明装置1のマイクロレンズアレイ100は、楕円形状の頂部11の長手方向が0.182mmで短手方向が0.117mmとされる。そして、隣接する単位ユニット10同士が、楕円形状の頂部11における長手方向が0.263mmピッチで配列され、短手方向が0.122mmピッチで配列される。
【0032】
図10(A)は、本発明の第1の実施の形態にかかる照明装置1において、LED光源を本発明の第1の実施の形態にかかるマイクロレンズアレイ100の光学設計上の光源中心位置(XYZ)に配置した場合の投射面での照度分布を示す図である。
図10(B)は、本発明の第1の実施の形態にかかる照明装置1において、LED光源の配置を
図10(A)の光源中心位置に対して、X及びY方向にそれぞれ0.35mm、Z方向に0.077mmシフトさせた位置における投射面での照度分布を示す図である。
【0033】
また、
図10(C)は、
図8及び
図9に示す一般的なフレネルレンズ200を備える従来の照明装置において、LED光源をフレネルレンズ200の光学設計上の光源中心位置(XYZ)にLED光源を配置した場合の投射面での照度分布を示す図である。
図10(D)は、従来の照明装置において、LED光源の配置を
図10(C)の光源中心位置に対して、X及びY方向にそれぞれ0.35mm、Z方向に0.077mmシフトさせた位置における投射面での照度分布を示す図である。
【0034】
図10(A)及び
図10(B)に示す通り、本発明の第1の実施の形態にかかるマイクロレンズアレイ100を通過した光は、投射面上で配光特性が制御され、投射面の中心から所望範囲の四隅における照度が十分確保されると共に、LED光源の配置が、光学設計上の光源中心位置からX、Y、及びZ方向にシフトした場合であっても照度分布の均一性に影響をない事がわかる。
【0035】
一方で、従来のフレネルレンズを用いた照明装置では、
図10(C)及び
図10(D)に示す通り、フレネルレンズ200を通過した光の投射面上で配光特性は、LED光源の配置が、光学設計上の光源中心位置からシフトすると、照度分布が不均一になり、所望の配光特性を確保することができていないことがわかる。
【0036】
本発明の照明装置は、指向性が高いLED光源を用いた場合であっても、LED光源とマイクロレンズアレイとの位置決めに高い精度が要求されることがなく、製造時や組み立て時のばらつきによるこれらの位置ずれがあっても、所望の配光制御や照射光の均一化を得ることができる。
【0037】
本発明の照明装置1では、LED光源などの半導体発光素子を用いることができるが、発光ダイオードの数や配置などは特に限定されず、例えば、複数のLED光源を所定の位置に配置した面状光源としてもよく、単一のLED光源を用いてもよい。
【0038】
また、本発明の照明装置1は、マイクロレンズアレイ100形成面の対面側(窪み側と反対側面)の出射面側の形状は、特に限定されることはなく、平面やシボなどが形成さえていてもよい。
【0039】
本発明の照明装置1は、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)やポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂(EP)などの光透過性樹脂を用いて射出成型により成型される。
【0040】
本発明にかかる照明装置1は、光源から出射される光を、矩形配光特性とすることが出来るので、カメラフラッシュ等の特定の矩形領域を照明する用途に特に好適である。
【符号の説明】
【0041】
1 照明装置
10 単位ユニット
11 頂部
12 底部
13 側部
20 尾根線又は谷線
100 マイクロレンズアレイ
200 フレネルレンズ(従来技術)