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特開2024-94138自立走行用地図作成方法及び自立走行装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094138
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】自立走行用地図作成方法及び自立走行装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240702BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210911
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】盛合(森山) 湧志
(72)【発明者】
【氏名】関原 弦
(72)【発明者】
【氏名】沖田 欣文
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301BB03
5H301BB11
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301DD01
5H301DD15
5H301FF13
5H301FF15
5H301GG08
5H301HH01
(57)【要約】
【課題】制限された領域において旋回不可能な領域を除外する自立走行用地図の作成方法、又は自立走行装置を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る自立走行用地図の作成方法は、第1のマーカ及び第2のマーカを含む複数の登録されたマーカが配置された領域において、演算処理部を含む自立走行装置が自立走行用地図を作成する方法であって、演算処理部が、自立走行装置に対向する第1のマーカ及び第2のマーカのそれぞれに対して第1の進入禁止区域を生成し、演算処理部が、第1の進入禁止区域の境界を決定し、演算処理部が、隣接する第1のマーカの第1の進入禁止区域の境界と、第2のマーカの第1の進入禁止区域の境界と、に第1の接線を生成し、演算処理部が、第1の接線と、第1のマーカと、第2のマーカと、によって囲まれた領域を、自立走行装置に対する第2の進入禁止領域として生成することを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のマーカ及び第2のマーカを含む複数の登録されたマーカが配置された領域において、演算処理部を含む自立走行装置が自立走行用地図を作成する方法であって、
前記演算処理部が、前記自立走行装置に対向する前記第1のマーカ及び前記第2のマーカのそれぞれに対して第1の進入禁止区域を生成し、
前記演算処理部が、前記第1の進入禁止区域の境界を決定し、
前記演算処理部が、隣接する前記第1のマーカの前記第1の進入禁止区域の境界と、前記第2のマーカの前記第1の進入禁止区域の境界と、に第1の接線を生成し、
前記演算処理部が、前記第1の接線と、前記第1のマーカと、前記第2のマーカと、によって囲まれた領域を、前記自立走行装置に対する第2の進入禁止領域として生成する、ことを含む、自立走行用地図の作成方法。
【請求項2】
前記複数の登録されたマーカは第3のマーカをさらに含み、
前記演算処理部が、前記自立走行装置に対向する前記第3のマーカに対して第1の進入禁止区域をさらに生成し、
前記演算処理部が、前記第3のマーカの前記第1の進入禁止区域の境界を決定し、
前記演算処理部が、隣接する前記第2のマーカの前記第1の進入禁止区域の境界と、前記第3のマーカの前記第1の進入禁止区域の境界と、に第2の接線を生成し、
前記演算処理部が、前記第2の接線と、前記第2のマーカと、前記第3のマーカと、によって囲まれた領域を、前記第2の進入禁止領域に接続し、前記第2の進入禁止領域を拡張する、請求項1に記載の自立走行用地図の作成方法。
【請求項3】
前記自立走行装置に配置されたセンサが、前記複数のマーカの位置及び形状を測定し、
前記演算処理部が、測定された前記複数のマーカの位置及び形状に基づいて、前記第1の進入禁止区域をそれぞれ生成する、請求項1に記載の自立走行用地図の作成方法。
【請求項4】
前記センサは、飛行時間、点群及び深度から選択される1つ以上の情報を取得可能なセンサである、請求項3に記載の自立走行用地図の作成方法。
【請求項5】
前記複数の登録されたマーカは、前記自立走行装置に対向する曲面を有し、
前記演算処理部が、前記複数の登録されたマーカについて、前記曲面をそれぞれ認識し、
認識した曲面について中心をそれぞれ決定し、
決定された前記中心に基づいて、前記第1の進入禁止区域をそれぞれ生成する、請求項1に記載の自立走行用地図の作成方法。
【請求項6】
隣接する前記第1のマーカの前記第1の進入禁止区域と第2のマーカの前記第1の進入禁止区域との一部が重複する場合は、前記演算処理部が前記第1の接線を生成して、前記第2の進入禁止領域として生成し、
隣接する前記第1のマーカの前記第1の進入禁止区域と前記第2のマーカの前記第1の進入禁止区域との一部が重複せず、前記第1のマーカの前記第1の進入禁止区域と前記第2のマーカの前記第1の進入禁止区域との間に前記自立走行装置の幅以上の距離が検出された場合に、前記第1のマーカの前記第1の進入禁止区域と前記第2のマーカの前記第1の進入禁止区域との間に前記第2の進入禁止領域を生成しない、請求項1に記載の自立走行用地図の作成方法。
【請求項7】
前記演算処理部は、前記第2の進入禁止領域によって実質的に囲まれた領域を、前記自立走行装置が走行可能な第3の領域に設定する、請求項1に記載の自立走行用地図の作成方法。
【請求項8】
前記演算処理部は、前記第3の領域に前記第2の進入禁止領域で構成された第4の領域を検出した場合、前記第3の領域の内部であり、且つ前記第4の領域の外部を前記自立走行装置が走行可能な第5の領域に設定する、請求項7に記載の自立走行用地図の作成方法。
【請求項9】
制御部と、前記演算処理部と、センサと、駆動部と、を備える、自立走行装置であって、
前記演算処理部が、請求項1乃至8の何れか一項に記載の自立走行用地図の作成方法を実行する、自立走行装置。
【請求項10】
前記自立走行装置は、ゴミ収集部を更に備え、
前記自立走行装置は、前記第2の進入禁止領域以外の領域を走行して、前記ゴミ収集部がゴミを収集する、請求項9に記載の自立走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立走行用地図作成方法、又は自立走行装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
近年は、様々な分野において、自律走行型のロボットの導入や、車両の自動運転技術に関する研究開発が進められている。自律走行型のロボットは、労働者の省力化に期待される技術の一つである。例えば、作業工程の種類や数が多い建築や土木工事の分野においては、人手不足が深刻な問題となっており、自律走行型のロボットの導入は、この問題の解決手段の一つとして期待される。
【0003】
自律走行型ロボットは、壁や段差をセンサにより認識して、走行を実行する領域を決定するとともに、センサにより障害物等を認識して、障害物等を回避しながら、走行を実行する。自律走行型のロボットが移動可能な領域を決定する方法として、例えば、特許文献1には、センサからの検出結果により生成された地図に対して、占有率情報に基づいて障害物を推定するための境界表現による1以上の領域を生成し、自己位置推定やSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を実現することが記載されている。
【0004】
一方、建設現場での自律走行型ロボットの導入には、問題が存在する。例えば、自律走行型ロボットを建設現場で使用する場合、走行を実行する空間(例えば、フロア)には、現に建設作業をしている区域や資材を保管している区域が共存する場合多く、作業の状況に応じて、走行を実行する領域を制限する必要がある。建設現場では、領域を制限する手段として、カラーコーン(登録商標)等を配置する方法が一般的に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-012540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カラーコーン(登録商標)等を配置する方法を用いた場合、後で詳述するように、従来の方法により作成される地図においては、二次元的に凹んだ形状の領域が作成される。自律走行型の掃除ロボットが、この二次元的に凹んだ形状の領域に侵入した場合、自律走行型ロボットが旋回できずに、走行が中断される問題があることに、本発明者らは着目した。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、制限された領域において旋回不可能な領域を除外する自立走行用地図の作成方法を提供することを課題の一つとする。また、制限された領域において旋回不可能な領域を除外する自立走行用地図作成プログラムを実装した自立走行装置を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る自立走行用地図の作成方法は、第1のマーカ及び第2のマーカを含む複数の登録されたマーカが配置された領域において、演算処理部を含む自立走行装置が自立走行用地図を作成する方法であって、演算処理部が、自立走行装置に対向する第1のマーカ及び第2のマーカのそれぞれに対して第1の進入禁止区域を生成し、演算処理部が、第1の進入禁止区域の境界を決定し、演算処理部が、隣接する第1のマーカの第1の進入禁止区域の境界と、第2のマーカの前記第1の進入禁止区域の境界と、に第1の接線を生成し、演算処理部が、第1の接線と、第1のマーカと、第2のマーカと、によって囲まれた領域を、自立走行装置に対する第2の進入禁止領域として生成する、ことを含む。
【0009】
前記複数の登録されたマーカは第3のマーカをさらに含み、演算処理部が、自立走行装置に対向する第3のマーカに対して第1の進入禁止区域をさらに生成し、演算処理部が、第3のマーカの第1の進入禁止区域の境界を決定し、演算処理部が、隣接する第2のマーカの第1の進入禁止区域の境界と、第3のマーカの第1の進入禁止区域の境界と、に第2の接線を生成し、演算処理部が、第2の接線と、第2のマーカと、第3のマーカと、によって囲まれた領域を、第2の進入禁止領域に接続し、第2の進入禁止領域を拡張してもよい。
【0010】
自立走行装置に配置されたセンサが、複数のマーカの位置及び形状を測定し、演算処理部が、測定された複数のマーカの位置及び形状に基づいて、第1の進入禁止区域をそれぞれ生成してもよい。
【0011】
センサは、飛行時間、点群及び深度から選択される1つ以上の情報を取得可能なセンサであってもよい。
【0012】
前記複数の登録されたマーカは、自立走行装置に対向する曲面を有し、演算処理部が、複数の登録されたマーカについて、曲面をそれぞれ認識し、認識した曲面について中心をそれぞれ決定し、決定された中心に基づいて、第1の進入禁止区域をそれぞれ生成してもよい。
【0013】
隣接する第1のマーカの第1の進入禁止区域と第2のマーカの第1の進入禁止区域との一部が重複する場合は、演算処理部が第1の接線を生成して、第2の進入禁止領域として生成し、隣接する第1のマーカの第1の進入禁止区域と第2のマーカの第1の進入禁止区域との一部が重複せず、第1のマーカの第1の進入禁止区域と第2のマーカの第1の進入禁止区域との間に自立走行装置の幅以上の距離が検出された場合に、第1のマーカの第1の進入禁止区域と第2のマーカの第1の進入禁止区域との間に第2の進入禁止領域を生成してもよい。
【0014】
演算処理部は、第2の進入禁止領域によって実質的に囲まれた領域を、自立走行装置が走行可能な第3の領域に設定してもよい。
【0015】
演算処理部は、第3の領域に第2の進入禁止領域で構成された第4の領域を検出した場合、第3の領域の内部であり、且つ第4の領域の外部を自立走行装置が走行可能な第5の領域に設定してもよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係る自立走行用地図の自立走行装置は、制御部と、演算処理部と、センサと、駆動部と、を備え、演算処理部が、上記の何れか自立走行用地図の作成方法を実行する。
【0017】
自立走行装置は、ゴミ収集部を更に備え、自立走行装置は、進入禁止領域以外の領域を走行して、ゴミ収集部がゴミを収集してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態によると、制限された領域において旋回不可能な領域を除外する自立走行用地図の作成方法を提供することができる。また、本発明の一実施形態によると、制限された領域において旋回不可能な領域を除外する自立走行用地図作成プログラムを実装した自立走行装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来の自立走行装置90が、領域900を自立走行する模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る自立走行用地図の作成方法を説明する模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る自立走行装置100を含む、自立走行用地図の作成システム1000を示すブロック構成図である。
図4】本発明の一実施形態に係る自立走行用地図の作成方法を説明するフロー図である。
図5】本発明の一実施形態に係る自立走行用地図の作成方法を説明するフロー図である。
図6A】本発明の一実施形態に係る走行可能な第3の領域600を決定する方法を説明する模式図である。
図6B】本発明の一実施形態に係る走行可能な第3の領域600を決定する方法を説明する模式図である。
図7A】本発明の一実施形態に係る走行可能な第3の領域600を決定する方法を説明する模式図である。
図7B】本発明の一実施形態に係る走行可能な第3の領域600を決定する方法を説明する模式図である。
図8】走行可能な領域の設定方法の変形例を説明するフロー図である。
図9】走行可能な領域の設定方法の変形例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、実施形態はあくまで一例にすぎず、当業者が、発明の主旨を保ちつつ適宜変更することによって容易に想到し得るものについても、当然に本発明の範囲に含有される。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0021】
本明細書において、説明の便宜上、「上」、「上方」、または「上部」もしくは「下」、「下方」、または「下部」という語句を用いて説明するが、各構成の上下関係を説明しているに過ぎない。例えば、構造物(例えば、自立走行装置など)の構成の位置関係を説明する場合、自立走行装置の通常使用する態様を基準とし、自立走行装置が設置される面側(例えば、床面側)を「下」、「下方」、または「下部」とすることがある。
【0022】
本明細書において、各構成に付記される「第1」、「第2」などの文字は、各構成を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限り、それ以上の意味を有さない。
【0023】
本明細書および図面において、同一又は類似する複数の構成を総じて表記する際には同一の符号を用い、これら複数の構成のそれぞれを区別して表記する際には、大文字又は小文字のアルファベットを添えて表記する場合がある。また、一つの構成のうちの複数の部分を区別して表記する際には、ハイフンと自然数を用いる場合がある。
【0024】
また、以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0025】
[従来技術の問題点]
図1は、従来の自立走行装置90が、複数の登録されたマーカ(図1においては、カラーコーン(登録商標))1が配置された領域900を自立走行する模式図である。領域900は、複数のマーカ1により囲まれた領域であり、例えば、矩形の領域である。従来の自立走行装置90は、自立走行装置90に配置されたセンサ40により、自立走行装置90と対向する複数のマーカ1を認識し、それぞれのマーカ1(図1においては、説明のため、1a~1cも記載している。)に対して、マーカ1を中心とした円形の第1の進入禁止区域3(図1においては、説明のため、3a~3cも記載している。)を生成する。従来の自立走行装置90は、それぞれの第1の進入禁止区域3について、自立走行装置90と対向する円弧状の境界5(図1においては、説明のため、5a~5cも記載している。)をそれぞれ決定し、隣接する境界5と境界5aを接続する演算処理を行い、境界5b及び境界5cをさらに接続する演算処理を行う。このような演算処理を配置された全てのマーカ1に対して繰り返すことにより、進入禁止境界線801を生成する。
【0026】
進入禁止境界線801に対して、自立走行装置90が、存在する領域900は、走行可能な領域として設定され、自立走行装置90に対して、進入禁止境界線801の外側の領域が進入禁止領域800として設定される。従来の自立走行装置90は、走行可能な領域900において進入禁止境界線801の近傍まで走行することが許容される。
【0027】
従来の自立走行装置90が、生成した進入禁止境界線801は、図1に示したように、円弧が連続的に接続された形状を有するため、境界5aと境界5bとの接続部に凹部Cが配置される。従来の自立走行装置90が、凹部Cに入り込むような位置にある場合、従来の自立走行装置90が旋回するときに、進入禁止領域800に侵入しなければ、従来の自立走行装置90が旋回できない場合がある。このような場合、従来の自立走行装置90は、進入禁止領域800には侵入できないため、旋回することができず、立ち往生してしまう。
【0028】
[自立走行用地図の作成システム]
図2は、本発明の一実施形態に係る自立走行用地図の作成方法を説明する模式図である。また、図3は、本発明の一実施形態に係る自立走行用地図の作成システム1000を示すブロック構成図である。本実施形態に係る自立走行用地図の作成システム1000は、自立走行装置100を含む。本実施形態において、自立走行用地図の作成システム1000は、自立走行装置100によって構成されてもよいが、一実施形態において、自立走行用地図の作成システム1000は、通信回線を介して自立走行装置100に接続可能なサーバ1001を含んでもよい。
【0029】
[自立走行装置100]
一実施形態において、自立走行装置100は、例えば、制御部10、演算処理部20、記憶部30、センサ40及び駆動部50を備える。また、一実施形態において、自立走行装置100は、機能部60及び通信部70を更に備えてもよく、必要に応じて、追加的な構成を更に備えてもよい。
【0030】
制御部10は、自立走行装置100を制御する装置であって、例えば、中央処理装置(CPU)と、制御プログラムを含む。制御プログラムは、記憶部30に格納され、中央処理装置で実行される。制御プログラムは、自立走行装置100を制御するためのオペレーティングシステム(OS)と、自立走行装置100を制御するために機能するアプリケーションプログラム又はモジュールを含んでもよい。
【0031】
演算処理部20は、例えば、自立走行用地図を作成するための地図生成部21及びコストマップ生成部23を備える。地図生成部21は、自立走行用地図の作成システム1000において、センサ40が取得した情報に基づいて、地図を作成するためのアプリケーションプログラム又はモジュールを含む。地図を作成ためのアプリケーションプログラム又はモジュールは、CPUで実行される。なお、演算処理部20は、グラフィックス・プロセシング・ユニット(GPU)を含んでもよく、地図を作成ためのアプリケーションプログラム又はモジュールは、GPUで実行されてよい。コストマップ生成部23は、自立走行用地図の作成システム1000において、センサ40が取得した情報に基づいて、コストマップを生成するアプリケーションプログラム又はモジュールを含む。コストマップを生成するアプリケーションプログラム又はモジュール、CPUで実行される。なお、コストマップを生成するアプリケーションプログラム又はモジュールは、GPUで実行されてよい。
【0032】
図3においては、自立走行装置100が演算処理部20を備える例を示したが、本発明に係る自立走行用地図の作成システム1000は、これに限定されない。一実施形態において、自立走行用地図の作成システム1000に含まれるサーバ1001が、演算処理部20を備えてもよい。演算処理部20における、地図の作成及びコストマップの生成は、CPU及び/又はGPUにおける演算処理の負荷が大きい。このため、自立走行装置100と通信可能なサーバ1001が、演算処理部20を備えることにより、自立走行装置100における演算処理の負荷を低減することができる。
【0033】
記憶部30は、主記憶装置であるメモリと、補助記憶装置であるハードディスクドライブ(HDD)又はソリッドステートドライブ(SSD)とを含む。上述したOSは、記憶部30の補助記憶装置に格納され、主記憶装置に読み込まれて、CPUで実行される。また、各アプリケーションプログラム又はモジュールは、記憶部30の補助記憶装置に格納され、主記憶装置に読み込まれて、CPU及び/又はGPUで実行される。
【0034】
センサ40は、自立走行装置100の周囲に位置する複数の登録されたマーカ1(図2においては、説明のため、1a~1cも記載している。)の位置(センサ40から距離と方向)及びマーカ1を検出するための装置である。センサ40として、例えば、飛行時間(ToF)、点群及び深度から選択される1つ以上の情報を取得可能なセンサから選択される1つ以上の公知のセンサを用いることができるが、これらに限定されるものではない。ToFセンサは、レーザ又はLEDを光源として用いてもよい。
【0035】
駆動部50は、自立走行装置100を走行させるための、モータ又はエンジンと、車輪とを含む。自立走行装置100は、三輪又は4輪で走行可能な構造を有してもよく、キャタピラを有する構造を有してもよい。
【0036】
機能部60は、自立走行装置100に所定の機能を付与するための構成である。例えば、一実施形態において、自立走行装置100がゴミ収集機能を有する場合、機能部60はゴミ収集部であり、ゴミ吸い取り部と、ゴミ収容部を有してもよい。また、一実施形態において、自立走行装置100が資材の搬送機能を有する場合、機能部60は、荷台と、荷台を昇降させる装置、荷台を傾斜させる装置又は荷台を回転させる装置を有してもよい。また、一実施形態において、自立走行装置100が巡回監視機能を有する場合、上述したセンサ40に加えて、注意喚起のための、音声出力部や、ディスプレイなどの表示部を有してもよい。
【0037】
通信部70は、例えば、サーバ1001と通信回線を介した通信を行うための通信機器である。通信部70は、無線通信ネットワークを介した通信が可能な通信機器であることが好ましく、例えば、IEEE 802.11規格に適合した無線LAN(Wifi(登録商標))や、IEEE 802.15.1規格に適合した無線通信(Bluetooth(登録商標))、及び携帯電話等の移動体通信ネットワークから選択される1つ以上の無線通信機器を含む。なお、自立走行装置100が屋外で使用される場合には、通信部70が衛星通信を用いる全球測位衛星システム(GNSS)を利用可能な通信機器であってもよい。
【0038】
[自立走行用地図の作成方法]
図4及び図5は、本発明の一実施形態に係る自立走行用地図の作成方法を説明するフロー図である。自立走行装置100に自立走行をさせる第3の領域600には、複数の登録されたマーカ1(図2においては、説明のため、1a~1cも記載している。)が配置される。地図生成部21は、センサ40により、周囲の空間に配置されたマーカ1や壁などを検出し、周囲の空間の地図を生成する(S100)。
【0039】
地図生成部21が生成する地図は、センサ40により取得した飛行時間、点群及び深度から選択される1つ以上の情報に基づいて、生成することができる。例えば、公知の技術であるSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)、Visual SLAM、LiDAR SLAM、Depth SLAMを利用することができるが、これらに限定されるものではない。なお、SLAMを用いた地図の作成技術は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0040】
また、センサ40により取得された情報から、コストマップ生成部23は、マーカ1の位置と形状を検出する。マーカ1は、例えば、建設現場等で汎用されるカラーコーン(登録商標)であってもよく、特には限定されない。マーカ1の形状は、記憶部30に予め格納されており、コストマップ生成部23は、センサ40により取得された情報と、記憶部30に格納されたマーカ1の情報を比較することにより、マーカ1の位置と形状を検出することができる。
【0041】
本実施形態において、複数のマーカ1は所定の間隔で配置されることにより、コストマップ生成部23に第1の進入禁止区域3を決定させる。このため、これらのマーカ1は、自立走行装置100が通り抜けることができない間隔で配置される。後述するように、2つの第1の進入禁止区域3の間に自立走行装置100が通り抜けることができる幅が存在する場合には、コストマップ生成部23は、その位置に第2の進入禁止領域500を設定しない。本実施形態においては、複数のマーカ1は、それぞれの第1の進入禁止区域3の一部が互いに重複する間隔で配置されることが好ましい。例えば、自立走行装置100の幅の80%となる間隔で、複数のマーカ1が配置されることが好ましい。
【0042】
コストマップ生成部23は、複数のマーカ1が配置された領域において、センサ40と対向する(自立走行装置100と対向する)複数のマーカ1に基づいて、複数のマーカ1に対応した第1の進入禁止区域3(図2においては、説明のため、3a~3cも記載している。)をそれぞれ決定する(S200)。
【0043】
ここで、図6A図7Bを参照する。図6A及び図6Bは、本発明の一実施形態に係る走行可能な第3の領域600を決定する方法を説明する模式図である。また、図7A及び図7Bは、本発明の一実施形態に係る走行可能な第3の領域600を決定する方法を説明する模式図である。図6Aに示すように、マーカ1がカラーコーン(登録商標)である場合、センサ40によって検出されるマーカ1は、自立走行装置100が走行する面に対する平面視において、センサ40に対向する円弧状となる曲面を有する構造物として検出される。コストマップ生成部23は、センサ40により検出された円弧状となる曲面を有する構造物と、記憶部30に格納されたマーカ1の情報を比較することにより、マーカ1の位置と形状を検出することができる。
【0044】
マーカ1に対して設定される第1の進入禁止区域3は、自立走行装置100が走行する面に対するマーカ1の表面からの距離として、記憶部30に格納されている。コストマップ生成部23は、検出された円弧からこの距離となる区域を第1の進入禁止区域3として決定する。なお、図6Aにおいて、円弧から所定の距離となる区域として、半円形の形状の第1の進入禁止区域3が決定され、自立走行装置100から円弧の後ろ側となる領域は、不確定領域となる。
【0045】
一実施形態において、コストマップ生成部23は、検出された円弧からマーカ1の中心を決定することができる。コストマップ生成部23は、決定されたマーカ1の中心に基づいて、所定の距離の区域を第1の進入禁止区域3として生成することもできる。この場合、図6Aに示すように、コストマップ生成部23は、マーカ1の中心と一致する中心を有する円として第1の進入禁止区域3を生成することができる。
【0046】
コストマップ生成部23は、隣接する少なくとも2つマーカ1(第1のマーカ)とマーカ1a(第2のマーカ)のそれぞれに対して第1の進入禁止区域3及び3aを生成し、自立走行装置100と対向する側の区域について、境界5及び5aを決定する(S300)。なお、図6Aにおいては、説明のため、第1の進入禁止区域3b~3c及び境界5b~5cも記載している。
【0047】
図6Bに示すように、コストマップ生成部23は、隣接する2つの境界5と5aについて、接線7(第1の接線)を生成する(S400)。
【0048】
図7Aに示すように、コストマップ生成部23は、第1の接線7と、第1のマーカ1と、第2のマーカ1aと、によって囲まれた領域を、自立走行装置に対する第2の進入禁止領域500として生成する(S400)。
【0049】
図7Bに示すように、コストマップ生成部23は、同様に、第3のマーカ1bに対して第1の進入禁止区域3bをさらに生成する。コストマップ生成部23は、第3のマーカ1bの第1の進入禁止区域3bの境界5bを決定する。コストマップ生成部23は、隣接する第2のマーカ1aの第1の進入禁止区域3aの境界5aと、第3のマーカ1bの第1の進入禁止区域3bの境界5bと、に第2の接線7aを生成する。コストマップ生成部23は、第2の接線7aと、第2のマーカ1aと、第3のマーカ1bと、によって囲まれた領域を、第2の進入禁止領域500aとして生成する。コストマップ生成部23は、第2の進入禁止領域500に、隣接する第2の進入禁止領域500aを接続し、第2の進入禁止領域を拡張することができる。
【0050】
このように、コストマップ生成部23は、第1の進入禁止区域3の一部が互いに重複する間隔で配置された全てのマーカ1の境界5について、同様の演算処理を実行する。
【0051】
図7Bに示すように、コストマップ生成部23は、得られた複数の接線7を隣接する位置で接続し、進入禁止境界線501を生成する。本実施形態において、複数のマーカ1が正確に直線状に配置されている場合には、進入禁止境界線501も直線状になる。一方、実際の建設現場等では、複数のマーカ1を正確に直線状に配置するには労力が必要となるため、多少の位置のズレが生じる。この場合、進入禁止境界線501は線分がジグザグな形状に接続した形状となるが、隣接する2つの接線7がなす角が鋭角とならなければ、そのような位置のズレは許容される。
【0052】
図5を参照する。コストマップ生成部23は、自立走行装置100に対して、得られた進入禁止境界線501の外側に位置する第2の進入禁止領域500を生成する(S600)。
【0053】
その結果、コストマップ生成部23は、進入禁止境界線501の内側の領域を、自立走行装置100に自立走行させる第3の領域600として決定する。
【0054】
本実施形態において、自立走行させる第3の領域600を決定するために、自立走行装置100は、自立走行しながら、マーカ1を検出してもよい。または、自立走行装置100が最初に配置された位置において、センサ40を360°回転させることにより、マーカ1を検出してもよい。
【0055】
[走行可能な領域の設定方法の変形例]
上述したように、2つのマーカ1を第1の進入禁止区域3の一部が互いに重複する間隔で配置することにより、自立走行装置100に対して、第2の進入禁止領域500と自立走行させる第3の領域600を生成する。したがって、2つのマーカ1を第1の進入禁止区域3の一部が互いに重複しない間隔で配置することにより、その部分を走行可能な領域として設定することができる。
【0056】
図8は、走行可能な領域の設定方法の変形例を説明するフロー図である。上述したS200の処理に続いて、コストマップ生成部23は、隣接する2つの第1の進入禁止区域3の一部が互いに重複しているか否かを判断する(S210)。第1の進入禁止区域3の一部が互いに重複している場合は、第2の進入禁止領域500が設定される領域であるため、S300以下の演算処理が実行される。第1の進入禁止区域3の一部が互いに重複している領域は、第2の進入禁止領域500として生成される。
【0057】
一方、隣接する2つの第1の進入禁止区域3の一部が互いに重複していない場合、コストマップ生成部23は、2つの第1の進入禁止区域3の間に自立走行装置100が通り抜けることができる幅が存在するか、判断する(S230)。隣接する2つの第1の進入禁止区域3の距離が、自立走行装置の幅よりも小さい場合は、第2の進入禁止領域500が設定される領域であるため、S300以下の演算処理が実行される。本変形例においては、隣接する2つのマーカ1の配置により決定される第1の進入禁止区域3の一部が互いに重複しない場合でも、第2の進入禁止領域500が設定される。このため、隣接する2つのマーカ1を配置する間隔を大きくすることができるため、配置するマーカ1の数を削減することができる。
【0058】
隣接する2つの第1の進入禁止区域3の距離が、自立走行装置100の幅以上であることが検出された場合には、コストマップ生成部23は、第1のマーカの第1の進入禁止区域と第2のマーカの第1の進入禁止区域との間の領域を走行可能な領域700に設定する。
【0059】
[走行可能な領域の設定方法の変形例2]
自立走行させる第3の領域600の内部に、自立走行装置100の走行に支障を来す障害物が存在することもある。このような場合、マーカで障害物を取り囲むことにより、自立走行させる第3の領域600の内部に第2の進入禁止領域を設定することもできる。図9は、走行可能な領域の設定方法の変形例を説明する模式図である。
【0060】
コストマップ生成部23は、第3の領域600の内部に第2の進入禁止領域で構成された第4の領域550を検出した場合、第3の領域600の内部であり、且つ第4の領域550の外部を自立走行装置が走行可能な第5の領域650に設定することができる。
【0061】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0062】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0063】
1 マーカ、3 第1の進入禁止区域、5 境界、5a 境界、5b 境界、5c 境界、7 接線、7a 接線、10 制御部、20 演算処理部、21 地図生成部、23 コストマップ生成部、30 記憶部、40 センサ、50 駆動部、60 機能部、70 通信部、90 自立走行装置、100 自立走行装置、100a 自立走行装置、500 第2の進入禁止領域、500a 第2の進入禁止領域、501 進入禁止境界線、501a 進入禁止境界線、550 第4の領域、600a 領域、650 第5の領域、700 領域、800 進入禁止領域、801 進入禁止境界線、900 領域、1000 自立走行用地図の作成システム、1001 サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9