(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094163
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240702BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210944
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】三浦 敦
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 誠
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003BA01
2D003BA06
2D003BA07
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB03
2D003DB04
2D003DB05
(57)【要約】
【課題】利便性の向上を実現できる。
【解決手段】本発明の一態様に係るショベルは、受け付けた操作を示した操作信号を出力可能な操作部と、前記操作信号に基づいて当該ショベルの駆動制御を行うように構成されている制御装置と、操作を受け付け可能に構成されているスイッチと、前記制御装置は、前記ショベルの駆動制御を切り替えるための3つ以上のモードから、前記スイッチに対する操作で選択されたモードに従って、前記ショベルの駆動制御を行うように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け付けた操作を示した操作信号を出力可能な操作部と、
前記操作信号に基づいて当該ショベルの駆動制御を行うように構成されている制御装置と、
操作を受け付け可能に構成されているスイッチと、を備え、
前記制御装置は、前記ショベルの駆動制御を切り替えるための3つ以上のモードから、前記スイッチに対する操作で選択されたモードに従って、前記ショベルの駆動制御を行うように構成されている、
ショベル。
【請求項2】
3つ以上の前記モードのうち一つは、前記操作信号に対応するアクチュエータの出力を所定の閾値以下に制限するモードである、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
3つ以上の前記モードのうち一つは、異常が検出されたために前記ショベルの動作が停止した場合に、前記異常が検出された部品を用いた駆動制御を抑制し、前記異常が検出された部品以外を用いた駆動制御を可能とするモードである、
請求項1に記載のショベル。
【請求項4】
情報処理装置に接続可能なインターフェースをさらに備え、
3つ以上の前記モードのうち一つは、前記インターフェースを介して接続された情報処理装置からの信号に応じて前記ショベルの駆動制御を行うモードである、
請求項1に記載のショベル。
【請求項5】
前記スイッチは、選択可能な前記モードに対応して複数設けられ、
複数の前記スイッチのうち2つ以上に対して前記モードをオンにする操作が行われた場合に、どちらの前記モードを優先するか予め定められている、
請求項1に記載のショベル。
【請求項6】
前記スイッチは、ユーザが前記操作部に操作している場合に、当該ユーザの部位が届かない位置に設けられている、
請求項1に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からショベルでは、操作手法として油圧操作が用いられている。油圧操作では、操作レバーを押し倒した方向に応じて流れる作業油の油圧によって、ショベルのアクチュエータの駆動制御が行われている。
【0003】
近年、ショベルにおいては、電気式の操作装置を搭載する傾向にある。当該ショベルでは、操作装置から出力される操作信号に応じて、アクチュエータの駆動制御が行われる(例えば特許文献1)。特許文献1に記載された技術では、アクチュエータの操作系の装置に異常が発生した場合に、アクチュエータを停止させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気式の操作装置を用いた場合、特許文献1に記載された技術のようなアクチュエータの停止制御等が必要となり、操作系のシステムとして制御又は部品点数が複雑になる傾向にある。
【0006】
つまり、電気式の操作装置を用いた場合には、様々な状況に対処するための手段を設ける必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るショベルは、受け付けた操作を示した操作信号を出力可能な操作部と、前記操作信号に基づいて当該ショベルの駆動制御を行うように構成されている制御装置と、操作を受け付け可能に構成されているスイッチと、前記制御装置は、前記ショベルの駆動制御を切り替えるための3つ以上のモードから、前記スイッチに対する操作で選択されたモードに従って、前記ショベルの駆動制御を行うように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、選択されたモードに従ってショベルの駆動制御を行うことができるので、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るショベル(掘削機)を示す側面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るショベルの駆動制御系の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るショベルのキャビン内の後側を表した図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るショベルのキャビン内の後側に設けられたカバーが開けられた状態を表した図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係るショベルのコントローラの構成例を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るショベルにおける、スイッチの設定と、選択されるモードと、の対応関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0011】
図1は、実施形態に係る建設機械としてのショベル100を示している。ショベル100の下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。
【0012】
ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例である掘削アタッチメントを構成している。ブーム4はブームシリンダ7により駆動され、アーム5はアームシリンダ8により駆動され、バケット6はバケットシリンダ9により駆動される。
【0013】
ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケットリンクにはバケット角度センサS3が取り付けられている。上部旋回体3には、旋回角速度センサS4が取り付けられている。
【0014】
ブーム角度センサS1は、姿勢検出センサの1つであり、ブーム4の回動角度を検出するように構成されている。本実施形態では、ブーム角度センサS1は、ブームシリンダ7のストローク量を検出するストロークセンサであり、ブームシリンダ7のストローク量に基づいて上部旋回体3とブーム4とを連結するブームフートピン回りのブーム4の回動角度を導き出す。
【0015】
アーム角度センサS2は、姿勢検出センサの1つであり、アーム5の回動角度を検出するように構成されている。本実施形態では、アーム角度センサS2は、アームシリンダ8のストローク量を検出するストロークセンサであり、アームシリンダ8のストローク量に基づいてブーム4とアーム5とを連結する連結ピン回りのアーム5の回動角度を導き出す。
【0016】
バケット角度センサS3は、姿勢検出センサの1つであり、バケット6の回動角度を検出するように構成されている。本実施形態では、バケット角度センサS3は、バケットシリンダ9のストローク量を検出するストロークセンサであり、バケットシリンダ9のストローク量に基づいてアーム5とバケット6とを連結する連結ピン回りのバケット6の回動角度を導き出す。
【0017】
なお、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3のそれぞれは、ロータリエンコーダ、加速度センサ、ポテンショメータ(可変抵抗器)、傾斜センサ、又は、慣性計測装置等であってもよい。慣性計測装置は、例えば、加速度センサとジャイロセンサとの組み合わせで構成されていてもよい。
【0018】
旋回角速度センサS4は、上部旋回体3の旋回角速度を検出するように構成されている。本実施形態では、旋回角速度センサS4は、ジャイロセンサである。旋回角速度センサS4は、旋回角速度に基づいて旋回角度を算出するように構成されていてもよい。旋回角速度センサS4は、ロータリエンコーダ等の他のセンサで構成されていてもよい。
【0019】
上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10、エンジン11、測位装置S5、及び通信装置T1等が搭載されている。また、キャビン10内には、コントローラ30が搭載されている。また、キャビン10内には、運転席及び操作装置等が設置されている。
【0020】
エンジン11は、ショベル100の駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、ディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの入力軸に連結されている。
【0021】
測位装置S5は、ショベル100の位置を測定するように構成されている。本実施形態では、測位装置S5は、GNSSコンパスであり、上部旋回体3の位置及び向きを測定できるように構成されている。
【0022】
通信装置T1は、ショベル100の外部にある機器との通信を制御するように構成されている。本実施形態では、通信装置T1は、無線通信網を介し、通信装置T1とショベル100の外部にある機器との間の無線通信を制御するように構成されている。通信装置T1は、例えば、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応する移動体通信モジュールや衛星通信網に接続するための衛星通信モジュール等を含む。
【0023】
コントローラ30は、各種演算を実行する演算装置である。コントローラ30は、例えば、キャビン10内に設けられ、ショベル100の駆動制御を行う。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは、その組み合わせにより実現されてよい。例えば、コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性の補助記憶装置、及び各種入出力用のインターフェース装置等を含むマイクロコンピュータを中心に構成される。コントローラ30は、例えば、不揮発性の補助記憶装置にインストールされる各種プログラムをCPU上で実行することにより各種機能を実現する。
【0024】
図2は、
図1のショベル100の駆動制御系の構成例を示す図である。
図2において、機械的動力伝達系は二重線、作動油ラインは太実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は点線でそれぞれ示される。
【0025】
本実施形態に係るショベル100の駆動系は、エンジン11と、レギュレータ13と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17を含む。また、本実施形態に係るショベル100の油圧駆動系は、上述の如く、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ1L,1R、旋回用油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の油圧アクチュエータを含む。
【0026】
エンジン11は、油圧駆動系におけるメイン動力源であり、例えば、上部旋回体3の後部に搭載される。具体的には、エンジン11は、後述するコントローラ30による直接或いは間接的な制御下で、予め設定される目標回転数で一定回転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。
【0027】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。例えば、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じて、メインポンプ14の斜板の角度(傾転角)を調節する。
【0028】
メインポンプ14は、例えば、エンジン11と同様、上部旋回体3の後部に搭載され、高圧油圧ラインを通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、上述の如く、エンジン11により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、上述の如く、コントローラ30による制御下で、レギュレータ13により斜板の傾転角が調節されることでピストンのストローク長が調整され、吐出流量(吐出圧)が制御される。
【0029】
コントロールバルブ17は、ショベル100における油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブ17は、制御弁171~176を含む。コントロールバルブ17は、制御弁171~176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できるように構成されている。制御弁171~176は、例えば、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行油圧モータ1L、1R、及び旋回用油圧モータ2Aを含む。より具体的には、制御弁171は、左側走行油圧モータ1Lに対応し、制御弁172は、右側走行油圧モータ1Rに対応し、制御弁173は、旋回用油圧モータ2Aに対応する。また、制御弁174は、バケットシリンダ9に対応し、制御弁175は、ブームシリンダ7に対応し、制御弁176は、アームシリンダ8に対応する。
【0030】
パイロットポンプ15は、パイロット圧生成装置の一例であり、パイロットラインを介して油圧制御機器に作動油を供給できるように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロット圧生成装置は、メインポンプ14によって実現されてもよい。すなわち、メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給する機能に加え、パイロットラインを介して各種油圧制御機器に作動油を供給する機能を備えていてもよい。この場合、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。
【0031】
操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも一方を含む。
【0032】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出するように構成されている。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0033】
操作センサ29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出するように構成されている。本実施形態は、操作装置26と操作センサ29との組み合わせを操作部の一例として説明する。
【0034】
本実施形態では、操作センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を検出し、検出した値を電気信号として示した操作信号をコントローラ30に対して出力可能とする。本実施形態では、電気式の操作装置26を用いることで、操作センサ29が電気信号(制御信号)として示した操作信号をコントローラ30に出力する例とする。電気信号(制御信号)は、デジタル信号でもよいし、アナログ信号であってもよい。本実施形態では、コントローラ30は、操作センサ29から入力された操作信号(で示される操作方向及び操作量)に応じて比例弁31の開口面積を制御する。そして、コントローラ30は、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、原則として、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力である。このように、操作装置26は、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できるように構成されている。
【0035】
マシンコントロール用制御弁として機能する比例弁31は、パイロットポンプ15とコントロールバルブ17内の制御弁のパイロットポートとを接続する管路に配置され、その管路の流路面積を変更できるように構成されている。本実施形態では、比例弁31は、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。
【0036】
本実施形態では、コントローラ30は、複数の電磁弁のそれぞれの開口面積を個別に制御することで、各制御弁のパイロットポートに作用するパイロット圧を制御することができる。そのため、コントローラ30は、各油圧アクチュエータに流入する作動油の流量、及び、各油圧アクチュエータから流出する作動油の流量を制御することができ、ひいては、各油圧アクチュエータの動きを制御することができる。
【0037】
コントローラ30は、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、比例弁31を介し、コントロールバルブ17内の制御弁のパイロットポートに供給できる。つまり、コントローラ30は、操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。
【0038】
従って、コントローラ30は、操作装置26からの操作に応じて、又は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、ブーム4の上げ下げ、アーム5の開閉、バケット6の開閉、上部旋回体3の旋回、及び下部走行体1の走行等を実現できる。さらには、コントローラ30は、外部の通信端末から受信した操作信号に応じて、ブーム4の上げ下げ、アーム5の開閉、バケット6の開閉、上部旋回体3の旋回、及び下部走行体1の走行等を実現できる。
【0039】
また、コントローラ30は、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。
【0040】
本実施形態では、ショベル100において、様々な状況に対処するための手段として、コントローラ30による比例弁31の制御手法を切り替えるためのモードが3つ以上設けられている。本実施形態においては、当該モードを選択するためのスイッチとして、緊急移動モードスイッチSW1と、メンテナンスモードスイッチSW2と、製造モードスイッチSW3とが、設けられている。
【0041】
緊急移動モードスイッチSW1、メンテナンスモードスイッチSW2、及び、製造モードスイッチSW3は、例えば、トグルスイッチであって、操作レバーが倒されている方向に従って"オン"と"オフ"とを切り替え可能とする。そして、緊急移動モードスイッチSW1、メンテナンスモードスイッチSW2、及び、製造モードスイッチSW3は、操作レバーが倒されている方向に応じて、"オン"又は"オフ"を示した切替信号をコントローラ30に対して出力する。
【0042】
さらに、コントローラ30には、入力装置D1と表示装置D2とが接続されている。表示装置D2は、キャビン10内に設けられている。表示装置D2は、コントローラ30から入力された情報を表示する。入力装置D1は、オペレータ等から操作を入力する装置であればよく、例えば、表示装置D2に設けられたタッチパネル等でもよい。入力装置D1は、入力された操作を示す操作信号を、コントローラ30に出力する。
【0043】
さらに、コントローラ30には、外部の装置と接続するための接続インターフェースD3が接続されている。
【0044】
<モード切替用のスイッチ>
図3は、本実施形態に係るショベル100のキャビン10内の後側(-X軸方向側)を表した図である。
図3に示されるように、キャビン10内においては、オペレータ用の座席OPよりも後部に、荷物を置くためのスペース60が設けられている。さらに当該スペース60の側方には開閉可能なカバー61が設けられている。当該カバー61は通常は閉じた状態となっている。
【0045】
図4は、本実施形態に係るショベル100のキャビン10内の後側に設けられたカバー61が開けられた状態を表した図である。
図4に示されるように、カバー61が開けられた場合、カバー61内部に存在していた面61Aに、緊急移動モードスイッチSW1、メンテナンスモードスイッチSW2、及び、製造モードスイッチSW3が設けられている。
【0046】
緊急移動モードスイッチSW1、メンテナンスモードスイッチSW2、及び、製造モードスイッチSW3において切り替えられるモードは、ショベル100の状況に応じて、コントローラ30が比例弁31の開口面積の制御等を切り替えるためのモードである。つまり、緊急移動モードスイッチSW1、メンテナンスモードスイッチSW2、及び、製造モードスイッチSW3は、ショベル100の通常動作において、切り替える必要のないスイッチである。このため、緊急移動モードスイッチSW1、メンテナンスモードスイッチSW2、及び、製造モードスイッチSW3は、座席OPよりも後部に設けられた上に、カバー61で覆われている。このように、本実施形態に係る、緊急移動モードスイッチSW1、メンテナンスモードスイッチSW2、及び、製造モードスイッチSW3は、オペレータが操作装置26を操作している場合に、オペレータの手又は足(部位の例)が届かない場所に設けられている。これにより、オペレータによる誤操作を抑止し、安全性の向上を図ることができる。
【0047】
そして、ショベル100の現在の状況に応じて、モードを切り替える必要が生じた場合には、ユーザは、通常の操作を停止して、座席OPから側後方に振り返り、カバー61を開けた上で、緊急移動モードスイッチSW1、メンテナンスモードスイッチSW2、及び、製造モードスイッチSW3に対する操作で、モードの切り替えを可能としている。本実施形態においてモードを切り替えるユーザは、オペレータの他に、例えば、メンテナンスを行う保守員、及び、工場の作業員等が含まれる。
【0048】
緊急移動モードスイッチSW1、メンテナンスモードスイッチSW2、及び、製造モードスイッチSW3は、通常"オフ"に設定されている。そして、緊急移動モードスイッチSW1、メンテナンスモードスイッチSW2、及び、製造モードスイッチSW3は、ユーザから操作レバーを切り替える操作を受け付けた場合に"オン"に設定される。
【0049】
緊急移動モードスイッチSW1、メンテナンスモードスイッチSW2、及び、製造モードスイッチSW3の各々は、操作レバーが受け付けた設定に従って、"オフ"又は"オン"を示す切替信号を、コントローラ30に出力する。
【0050】
緊急移動モードスイッチSW1は、緊急移動モードであるか否かを切り替えるためのスイッチとする。本実施形態に係るショベル100の操作装置26は、上述したように電気式の操作レバーであって、操作センサ29から入力される操作信号に応じて、コントローラ30がショベル100のアクチュエータ等の駆動制御を行う。
【0051】
ところで、従来、油圧操作を適用したショベルでは、操作レバーとコントロールバルブの制御弁との間の連携は比較的単純であった。このため、油圧操作が適用されたショベルでは、部品が故障した場合に、故障した部品が動かなくなるだけであり、他の箇所に影響を及ぼすことが少なかった。これに対して、電気式の操作レバーを適用したショベルでは、異常が生じた場合に、どの制御に影響を及ぼすのか判断するのが難しくなる傾向にある。
【0052】
そこで、電気式の操作レバー等を適用したショベルでは、異常が生じた場合、ショベル全体の安全性を確保するために、異常が生じた箇所にかかわらず、コントローラが、ショベル全体の動作を抑制する傾向にある。
【0053】
これにより、ショベルでは、操作信号に基づいた誤動作を抑制して、安全性を確保している。しかしながら、ショベルの異常が生じた場合であっても、ショベルを動作させたい場合もある。例えば、ショベルが作業現場で異常が生じたときに、他のショベルで作業を継続させるために、移動させたい場合がある。
【0054】
このため、本実施形態に係るショベル100では、緊急移動モードが設けられている。緊急移動モードは、異常が検出されたためにショベル100の動作が停止した場合に、異常が検出された部品(例えばモータ又はシリンダ)を用いた駆動制御を抑制し、異常が検出された部品(例えばモータ又はシリンダ)以外を用いた駆動制御を可能とするモードである。
【0055】
緊急移動モードが"オン"に設定された場合、コントローラ30は、ショベル100で異常が検出されたアクチュエータ以外に対する操作信号を取得した場合、操作信号に対応するアクチュエータを用いた駆動制御を行い、異常が検出されたアクチュエータに対する操作信号を取得した場合、当該操作信号に対応するアクチュエータを用いた駆動制御を抑制する。例えば、走行油圧モータ1L、1Rに異常が検出されていない場合、走行油圧モータ1L、1Rを用いた駆動制御ができるので、ショベル100の緊急移動が可能となる。本実施形態においては、緊急移動モードを設定可能にすることで、利便性の向上を実現できる。
【0056】
メンテナンスモードスイッチSW2は、メンテナンスモードであるか否かを切り替えるためのスイッチとする。本実施形態に係るショベル100の操作装置26では上述したように電気式の操作レバーのため、コントローラ30は、操作センサ29からの操作信号にかかわらず、ショベル100のアクチュエータ等の駆動制御を行ことができる。
【0057】
ところで電気式の操作レバー等が適用されたショベルでは、油圧式の操作レバーと比べて、電気部品の点数が増加する傾向にある。このため、保守員が、電気式の操作レバーが搭載されたショベルのメンテナンスを行うために、メンテナンス項目が増加する傾向にある。これにより、保守員の作業工数が増大する可能性がある。
【0058】
このため、本実施形態に係るショベル100では、メンテナンスモードが設けられている。メンテナンスモードは、接続インターフェースD3を介して接続された情報処理装置からの操作信号に応じてショベル100の駆動制御を行うモードである。
【0059】
メンテナンスモードが"オン"に設定された場合、コントローラ30は、接続インターフェースD3から入力された操作信号に従って、ショベル100の駆動制御を行う。
【0060】
つまり、ショベル100の保守員は、メンテナンスを行う場合に、情報処理装置を、接続インターフェースD3に接続する。情報処理装置には、メンテナンスツールがインストールされている。そこで、保守員が、メンテナンスツールを実行することで、情報処理装置が、操作信号をコントローラ30に送信できる。これにより、コントローラ30は、情報処理装置からの操作信号に応じて、ショベル100の駆動制御を行う。換言すれば、情報処理装置からの操作信号で比例弁31の開口制御が可能となる。そして、保守員は、現在のメンテナンス項目に対応する動作がショベル100で行われているか否かを確認することで、ショベル100で異常が生じている箇所を判断できる。その際、メンテナンスツールは、コントローラ30から各種センサの検知結果を示した信号を取得し、検知結果を表示してもよい。これにより、保守員は、センサの検知結果を確認した上で異常が生じている箇所を判断できる。
【0061】
つまり、メンテナンスモードでは、ショベル100において異常が生じた場合に、どの部品に異常が生じているか探ることができる。メンテナンスモードでは、操作装置26による操作と、比例弁の開口と、が切り分けられている。このため、操作が行われた際に当該操作に対応する比例弁31が開口しない場合に、メンテナンスツールを用いて検査を行うことで、操作装置26の異常か、比例弁31の異常かを特定できる。
【0062】
メンテナンスモードでは、保守員は、ショベル100が適切に動作しているか否か、ショベル100の部品の組付けに問題あるか否か、又はセンサの検知結果が適切か否かを判定できる。本実施形態においては、操作装置26に対して操作を行わずに、ショベル100の動作の確認を行うことができる。
【0063】
上述したように、メンテナンスモードは、ショベル100の異常を確認するためのモードであるため、ショベル100に異常が生じている場合でも、コントローラ30は、情報処理装置からの操作信号に応じて、ショベル100の駆動制御を行う。
【0064】
電気式の操作レバーが搭載されたショベルでは、上述したように、ショベルで異常が検出された場合、コントローラは、操作装置から操作を受け付けた場合でも、当該操作に対応する駆動制御を抑制される傾向にある。
【0065】
これに対して、本実施形態に係るショベル100では、メンテナンスモードが"オン"に設定されている場合に限り、情報処理装置からの操作信号に応じて、ショベル100の駆動制御を行うことを可能としている。本実施形態においては、メンテナンスモードを設定可能にすることで、ショベル100について点検を行う際に作業効率の向上を実現できる。さらには、異常が生じた箇所の特定が容易になるので、作業効率の向上を実現できる。
【0066】
メンテナンスモードは、保守員にのみ利用されることが許容されるモードとする。そこで、本実施形態では、メンテナンスモードスイッチSW2を操作が行われないように、メンテナンスモードスイッチSW2を、カバー61の内部に設けた。
【0067】
製造モードスイッチSW3は、製造モードであるか否かを切り替えるためのスイッチとする。製造モードは、ショベル100の製造時に、点検を行うために設けられたモードである。ショベル100では操作装置26として電気式の操作レバーが搭載されているので、信号線の誤接続等によっては、操作方向とショベル100の動作が一致しない状況が生じる。このため、製造段階では、作業員が、操作装置26による操作信号と、当該操作信号に対応して制御される比例弁31の開口と、の対応関係が適切か確認を行う必要がある。
【0068】
確認を行う際、操作信号と、当該操作信号に対応して動作するアタッチメント(換言すれば開口する比例弁31)等と、の対応関係が一致していればよく、当該アタッチメントを通常の作業と同様な程度に、大きな動作を行わせる必要はない。
【0069】
このため、本実施形態に係るショベル100では、製造モードが設けられている。製造モードは、操作信号に対応するアクチュエータの出力を所定の閾値以下に制限するモードである。所定の閾値は、ショベル100が作業を行う場合の出力と比べて小さい値であればよく、実施形態に応じて定められる。出力が制限されるアクチュエータは、ショベル100において油圧駆動するアクチュエータであればよく、例えば、走行油圧モータ1L、1R、旋回用油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9(以下、シリンダ及びモータとも称する)とする。
【0070】
製造モードが"オン"に設定された場合、コントローラ30は、操作センサ29から操作信号を取得した場合に、比例弁31の開口面積を制限し、パイロット圧の出力を制限する。当該パイロット圧の出力の制限によって、シリンダ及びモータのうち一つの出力が所定の閾値以下に制限される。シリンダ及びモータの一つの出力が所定の閾値以下に制限されることで、ショベル100のアタッチメント等が微妙に動く程度となる。
【0071】
比例弁31の開口の制限は、実施態様に応じて定められれば良い。例えば、ショベル100のアタッチメントの下げ方向(重力方向)の移動であれば動くが、上げ方向(重力と反対方向)の移動ではほぼ動かない程度になるように比例弁31の開口面積を調整してもよい。具体的な比例弁31の開口面積は、ショベル100の種類に応じて定められれば良く、例えば、開口面積を通常の10%に制限する等でもよい。
【0072】
本実施形態では、製造モードが設定された場合に、作業者は、操作装置26に対して操作を行った場合に、当該操作に対応する動作が微妙に行われたか否かを確認できる。これにより、誤接続等が生じているか否かを確認が容易になる。例えば、ショベル100の製造時における電気的、又は油圧的な誤接続が生じているため、ショベル100の誤動作が生じた場合でも、ショベル100の動作が大きくなることを抑制できる。したがって、ショベル100の点検を行う際の安全性を向上させることができる。
【0073】
製造モードは、通常のショベル100の作業時には利用されないモードである。そこで、本実施形態では、作業時には製造モードスイッチSW3の操作が行われないように、製造モードスイッチSW3を、カバー61の内部に設けた。
【0074】
本実施形態は、緊急移動モードスイッチSW1、メンテナンスモードスイッチSW2、及び、製造モードスイッチSW3について配置の一例を示したものであって、上述した配置に制限するものではない。少なくとも、オペレータがショベル100の操作中に、オペレータの手又は足(部位の例)が届かない場所に設けられればよい。さらには、オペレータ等が不要に操作するのを抑制するために、カバー61内部など、視認できない箇所に設けられるのが好ましい。
【0075】
<コントローラのブロック構成>
ショベル100に搭載されているコントローラ30が有する機能について説明する。
図5は、本実施形態に係るショベル100のコントローラ30の構成例を示す機能ブロック図である。
【0076】
コントローラ30の各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、コントローラ30のCPUにて実行されるプログラムにて実現される。または各機能ブロックをワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。
図3に示すように、コントローラ30は、取得部301と、判定部302と、駆動制御部303と、出力部304と、を備える。
【0077】
取得部301は、ショベル100内の各種構成の信号を取得する。例えば、取得部301は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3の各々から角度の測定結果を取得する。さらには、取得部301は、旋回角速度センサS4から上部旋回体3の旋回角の測定結果を取得する。
【0078】
取得部301は、操作センサ29から、操作装置26の操作方向及び操作量の検出値を示した操作信号を取得する。
【0079】
さらに、取得部301は、緊急移動モードスイッチSW1、メンテナンスモードスイッチSW2、及び、製造モードスイッチSW3の各々から、"オフ"又は"オン"を示す切替信号を取得する。
【0080】
判定部302は、取得部301が取得した各種センサの測定結果から、ショベル100において異常が発生したか否かを判定する。さらには、判定部302は、異常が発生したと判定した場合に、ショベル100において異常が発生した部品等の特定も行う。異常か否かを判定するためには、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3による測定結果に制限するものではなく、例えば、シリンダの圧力センサ、パイロット圧の圧力センサによる測定結果を用いてもよい。
【0081】
駆動制御部303は、製造モード制御部3031と、緊急移動モード制御部3032と、メンテナンスモード制御部3033と、を備え、操作センサ29から取得した操作信号に基づいて比例弁31の開口面積を制御して、ショベル100のアタッチメント等の駆動制御を行う。
【0082】
本実施形態においては、駆動制御部303がショベル100の駆動制御を行うためのモードとして、通常モード、製造モード、緊急移動モード、及びメンテナンスモードの4つのモードが存在する。本実施形態は、駆動制御を行うためのモードとして4つのモードが存在する例について説明するが、4つのモードに制限するものではなく、3つのモード、又は5つ以上のモードであってもよい。つまり、駆動制御を行うためのモードとして、3つ以上のモードが存在すればよい。
【0083】
そして、駆動制御部303は、4種類のモードから、上述したスイッチSW1~SW3から出力された信号に基づいて選択されたモードに従って、ショベル100の駆動制御を行う。
【0084】
例えば、スイッチSW1~SW3の全てが"オフ"に設定されている場合、駆動制御部303は通常モードとして動作する。
【0085】
通常モードは、ショベル100の通常の動作を行うためのモードとする。通常モードが設定されている場合、駆動制御部303は、操作センサ29から取得した操作信号に基づいて比例弁31の開口面積を制御して、ショベル100のアタッチメント等の駆動制御を行う。
【0086】
通常モードが設定されている場合、駆動制御部303は、判定部302によってショベル100において異常が発生したと判定された場合に、操作センサ29から操作信号を取得した場合でも、比例弁31の開口面積の制御を抑止して、ショベル100のアタッチメント等の駆動制御を停止させる。これにより、本実施形態に係るショベル100では安全性を確保することができる。その後、ショベル100を動作させたい場合には、必要に応じてモードの設定を行えばよい。設定可能なモードは上述した通りとして説明を省略する。
【0087】
本実施形態においては、上述したように、スイッチSW1~SW3が独立して設けられている。このため、スイッチSW1~SW3のうち2つ以上のスイッチを"オン"に設定することができる。
【0088】
このため、駆動制御部303では、複数のスイッチSW1~SW3のうち2つ以上に対してモードのオンにする操作が行われた場合に、どちらのモードを優先するか予め定められている。
【0089】
図6は、第1の実施形態に係るショベルにおける、スイッチSW1~SW3の設定と、選択されるモードと、の対応関係を示した図である。
図6に示されるように、製造モードスイッチSW3と、緊急移動モードスイッチSW1と、メンテナンスモードスイッチSW2と、の全てについて"オフ"が設定されている場合に、駆動制御部303は、通常モードが選択されたものとして、当該通常モードに従った駆動制御を行う。
【0090】
本実施形態においては、製造モード、緊急移動モード、メンテナンスモードの順に優先順位が設定されている。当該優先順位は、モードの安全性に基づいて設定されている。
【0091】
製造モードスイッチSW3が"オン"に設定された場合、緊急移動モードスイッチSW1及びメンテナンスモードスイッチSW2の設定にかかわらず、駆動制御部303は、製造モードが選択されたものとして、製造モード制御部3031が、当該製造モードに従った駆動制御を行う。
【0092】
製造モード制御部3031は、製造モードが設定されている間、操作センサ29から操作信号を取得した際に、当該操作信号に対応する比例弁31の開口を制限し、アクチュエータ(例えば、モータ又はシリンダ)の出力を所定の閾値以下に制限した上で、駆動制御を行う。
【0093】
製造モードスイッチSW3が"オフ"に設定され、且つ、緊急移動モードスイッチSW1が"オン"に設定された場合、メンテナンスモードスイッチSW2の設定にかかわらず、駆動制御部303は、緊急移動モードが選択されたものとして、緊急移動モード制御部3032が、当該緊急移動モードに従った駆動制御を行う。
【0094】
緊急移動モード制御部3032は、緊急移動モードが設定されている間、判定部302によって異常と判定された部品(例えば、モータ又はシリンダ)以外に対する操作信号を取得した場合、操作信号に対応する駆動制御を行い、異常が検出された部品(例えば、モータ又はシリンダ)に対する操作信号を取得した場合、当該操作信号に対応する駆動制御を抑制する。
【0095】
製造モードスイッチSW3及び緊急移動モードスイッチSW1が"オフ"に設定され、且つ、メンテナンスモードスイッチSW2が"オン"に設定された場合、駆動制御部303は、メンテナンスモードが選択されたものとして、メンテナンスモード制御部3033が、当該メンテナンスモードに従った駆動制御を行う。
【0096】
メンテナンスモード制御部3033は、メンテナンスモードが設定されている間、接続インターフェースD3から入力された操作信号に従って、ショベル100の駆動制御を行う。
【0097】
本実施形態においては、モード毎に、当該モードの安全性を考慮して優先度が設定されている。そして、コントローラ30は、複数のモードが"オン"にする設定が行われた場合に、より安全性が高いモードが有効になるように設定を行うことで、安全性の向上を実現できる。
【0098】
出力部304は、表示装置D2に対して情報の出力制御を行う。出力部304は、ショベル100の状況に応じた情報の出力を行う。
【0099】
例えば、出力部304は、判定部302によりショベル100の異常が検出された場合に、異常が生じた部品に対応する情報(例えば、トラブルシュート番号)と共に、「部品が故障しています」と、表示装置D2に表示する。これにより、オペレータは、ショベル100に異常が生じたことを認識できる。
【0100】
異常が検出された場合に、通常モードが設定されている場合、ショベル100の駆動制御が制限される。オペレータは、ショベル100を移動させる必要がある場合には、カバー61を開けて、緊急移動モードスイッチSW1を"オン"に切り替える。
【0101】
この場合、出力部304は、緊急移動モードが設定された旨を、表示装置D2に出力する。これにより、オペレータは、緊急移動モードに切り替わったことを確認できる。
【0102】
緊急移動モードに切り替わった場合に、オペレータは、表示装置D2に表示されているトラブルシュート番号等によって、動かすことができない部品を認識した上で、動かすことが可能な部品をうまく利用して、ショベル100について緊急動作させることができる。
【0103】
そして、緊急移動モード制御部3032が、故障が生じた部品以外に対する操作信号に従って、ショベル100の駆動制御を行う。
【0104】
本実施形態においては、コントローラ30が、設定されたモードに基づいて、ショベル100の駆動制御を行うことで、ショベル100の現在の状況に応じた動作を可能としている。したがって、ショベル100の利便性の向上を実現できる。
【0105】
本実施形態においては、モードを切り替えるためのスイッチSW1~SW3を設ける例について説明した。しかしながら、本実施形態においては、モードを切り替えるためのスイッチを、モード毎のトグルスイッチを設ける手法に制限するものではない。つまり、本実施形態は、モードを切り替えるためのスイッチの一例を示したもので、他の態様のスイッチを用いてもよい。例えば、ダイアル式のスイッチによってモードを選択可能にしてもよい。
【0106】
(変形例)
上述した実施形態では、電気式の操作装置26を、油圧駆動のショベル100に搭載した例について説明した。しかしながら、上述した実施形態では、電気式の操作装置26を搭載するショベルを油圧駆動式のショベルに制限するものではない。
【0107】
そこで、本変形例では、電気式の操作装置26で電動シリンダの駆動制御を行うショベルに適応した場合とする。当該変形例のショベルでは、コントローラが電動シリンダを駆動させることで、ブーム、アーム、又はバケットを動作させる例とする。電動シリンダは、従来と同様の構成として説明を省略する。電動シリンダは、ブーム、アーム、及びバケットを駆動するために設けられている。また、当該変形例のショベルでは、上部旋回体の回転動作、及びショベルの走行動作を行うために、電動モータを搭載してもよい。
【0108】
このようなショベルにおいても、上述した実施形態と同様に、部品点数が増加によって制御が複雑になる傾向にある。そこで、本変形例のショベルでは、上述した実施形態と同様に、製造モード、緊急移動モード、及びメンテナンスモードを設定可能とする。製造モード、緊急移動モード、及びメンテナンスモードのうちいずれか一つが設定された場合には、コントローラが、設定されたモードに従って、電動シリンダ及び電動モータのうち少なくとも一つ以上の駆動制御を行う。
【0109】
製造モードでは、電動シリンダ及び電動モータの出力が所定の閾値以下に制限される。所定の閾値は実施態様に応じて定められる。
【0110】
緊急移動モードでは、本変形例のショベルにおいて異常が検出されて動作が停止した場合に、異常が検出された部品(例えば電動シリンダ又は電動モータ)を用いた駆動制御を抑制し、異常が検出された部品(例えば電動シリンダ又は電動モータ)以外を用いた駆動制御を可能とする。
【0111】
メンテナンスモードでは、接続インターフェースから入力された操作信号に従って、本変形例のショベルの駆動制御が行われる。
【0112】
このように、本変形例では、ショベルに電動モータ及び電動シリンダが搭載された場合でも、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0113】
<作用>
上述した実施形態及び変形例においては、コントローラ30が、3種類以上のモードから、スイッチSW1~SW3に対する操作で選択されたモードに従って、ショベル100の駆動制御を行うように構成されている。つまり、上述した実施形態においては、ショベル100の部品点数が増加して制御が複雑になった場合でも、ショベル100の状況に対応するモードを選択することで、ショベル100の状況に応じた駆動制御を行うことができる。したがって、利便性の向上を実現できる。
【0114】
以上、建設機械の一例としてショベルを用いた場合の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0115】
100 ショベル
1 下部走行体
1L 左側走行油圧モータ
1R 右側走行油圧モータ
2 旋回機構
2A 旋回用油圧モータ
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10 キャビン
11 エンジン
26 操作装置
29 操作センサ
30 コントローラ
301 取得部
302 判定部
303 駆動制御部
3031 製造モード制御部
3032 緊急移動モード制御部
3033 メンテナンスモード制御部
304 出力部
31 比例弁
D1 入力装置
D2 表示装置
D3 接続インターフェース
SW1 緊急移動モードスイッチ
SW2 メンテナンスモードスイッチ
SW3 製造モードスイッチ