(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094167
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】尿取りパッド
(51)【国際特許分類】
A61F 13/514 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
A61F13/514 320
A61F13/514 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210949
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】591108248
【氏名又は名称】カミ商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】石川 俊昇
(72)【発明者】
【氏名】守時 亜衣
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA09
3B200BA13
3B200BB03
3B200CA11
3B200DA12
3B200DD01
3B200DD02
3B200DD07
(57)【要約】
【課題】通気性を有しないバックシートを用いた尿取りパッドの製造時に、バックシートを破損しにくくする。尿取りパッドの使用時に、尿取りパッドをずれにくくする。
【解決手段】尿取りパッド11は、使用者の身体に直接接触する側に配置されるトップシート31と、使用者の身体と反対側に配置されるバックシート51との間に、包み込むようにして吸収体71を設けている。トップシート31は、液透過性を有する材料、例えば不織布によって成形され、バックシート51は、液不透過性及び非通気性を有する材料、例えばポリエチレン(PE)やポリエステル(PEs)などの樹脂フィルムによって成形されている。バックシート51には、不織布を材料とする補強部材52が貼り付けられている。補強部材52は、使用者が身に着けたおむつや下着(パンツ)の内表面に接触する位置に配置されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の身体に直接接触する側に配置される液透過性のトップシートと、
使用者の身体と反対側に配置される液不透過性及び非通気性のバックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、
を備え、
前記バックシートの外表面には、不織布の補強部材が貼り付けられている、
尿取りパッド。
【請求項2】
前記補強部材は、前記尿取りパッドの長さ方向の両端を結ぶ中心線上、幅方向の中央位置に配置されている、
請求項1に記載の尿取りパッド。
【請求項3】
前記補強部材の長さは、前記尿取りパッドの全長と一致している、
請求項2に記載の尿取りパッド。
【請求項4】
前記補強部材の幅は、前記バックシートの幅の30~55%である、
請求項1ないし3のいずれか一に記載の尿取りパッド。
【請求項5】
前記補強部材の幅は、前記バックシートの幅の40~50%である、
請求項1ないし3のいずれか一に記載の尿取りパッド。
【請求項6】
前記補強部材の両端部は、前記バックシートに貼り付けられずに自由状態に維持されている、
請求項1ないし3のいずれか一に記載の尿取りパッド。
【請求項7】
前記バックシートに貼り付けられずに自由状態に維持されている前記補強部材の両端部の幅は、5~10mmである、
請求項6に記載の尿取りパッド。
【請求項8】
前記バックシートの坪量は、15~25g/m2である。
請求項1ないし3のいずれか一に記載の尿取りパッド。
【請求項9】
前記補強部材の坪量は、7~13g/m2である。
請求項1ないし3のいずれか一に記載の尿取りパッド。
【請求項10】
前記補強部材の材料である前記不織布は、スパンボンド不織布である、
請求項1ないし3のいずれか一に記載の尿取りパッド。
【請求項11】
前記補強部材の材料である前記不織布は、エアスルー不織布である、
請求項1ないし3のいずれか一に記載の尿取りパッド。
【請求項12】
前記補強部材の材料である前記不織布は、SMSである、
請求項1ないし3のいずれか一に記載の尿取りパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、尿取りパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
尿取りパッドは、おむつや下着(パンツ)の中に入れて使用される。尿漏れパッドという名称で呼ばれることもあるように、漏らしてしまった尿を吸収することを目的としている。
【0003】
尿取りパッドは、トップシートとバックシートとの間に吸収体を包み込むようにして配置した構造を有している。トップシートは、使用者の身体に直接接触する側に配置される液透過性のシート状部材である。バックシートは、使用者の身体と反対側に配置されるシート状部材である。吸収体は、トップシートとバックシートとの間に配置され、トップシートを通り抜けた尿を吸収する。
【0004】
バックシートの役割りは、吸収体を通り抜けたり、吸収体の周囲から回ってきたりした尿を外部に漏れ出さないようにすることである。このような役割りを果たすために、バックシートは、液不透過性を有していなければならない。
【0005】
例えば特許文献1は、バックシートに液不透過性をもたせるために、「非透液性フィルムで組成」したバックシートを開示している(特許文献1の段落[0075]参照)。このバックシートは、非通気性のものであると推定される(特許文献1の段落[0075]、[0065]-[0066]参照)。
【0006】
特許文献2は、「……バックシートは、吸収された体液等の水分が裏抜けしないように液バリア性を有するシート状又はフィルム状のものであれば特に制限されないが、透湿性及び通気性を有するものであることが好ましい。このような……(中略)……疎水性の素材であることが望ましい」と述べ、ポリエチレンやポリエステルなどの疎水性の素材を例示している(特許文献2の段落[0032]参照)。また特許文献2は、例示した疎水性の素材で構成された不織布をバックシートに用いることも開示している(特許文献2の段落[0033]-[0034]参照)。
【0007】
特許文献3は、バックシート(裏面シート130)として、「例えば液不透過性の不織布や合成樹脂フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート、SMS不織布など」を例示している(特許文献3の段落[0026]参照)。このような特許文献3の尿取りパッドは、バックシート(裏面シート130)を外装シート170で覆っているため、外装シート170がバックシートに相当すると考えることも可能である。外装シート170の材料としては、「裏面シート130の材料」が挙げられている(特許文献3の段落[0027]参照)。
【0008】
このように尿取りパッドを構成するバックシートには、非通気性のものと通気性のものとがある。特許文献1に開示されている非透液性フィルム、特許文献3に開示されている合成樹脂フィルムで組成したものは、非通気性のバックシートである。特許文献2、3に開示されている不織布(SMS不織布)を用いたものは、通気性のバックシートである。
【0009】
特許文献3に記載されている「不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート」は、その出願日(平成28年6月3日)の技術常識から判断して、炭酸カルシウムを練り込んで通気性をもたせた液不透過性の合成樹脂フィルムに、不織布を貼り合わせたものであると推定される。この種の通気性を有する合成樹脂フィルムは比較的強度が弱く、単体で使用すると傷がついたり破れたりすることから、不織布を貼り合わせて補強することが一般的に行なわれているからである。したがって特許文献3に記載された「不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート」を用いたバックシートは、通気性を有するものの範疇に分類される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004-181105号公報
【特許文献2】特開2007-181662号公報
【特許文献3】特許第6117408号明細書
【特許文献4】特開2005-348790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この出願の発明者等は、二種類のバックシートのうち、通気性を有しないものを用いた尿取りパッドに関して、二つの課題に着目している。
【0012】
一つ目は、バックシートの破損の問題である。
【0013】
尿取りパッドの製造に際しては、例えば300~350m/分の速度でラインを流す。このとき連続的にバックシートに傷が入ったり破れてしまったりすることがある。適宜のタイミングで傷や破れを発見できなければ、不良品が大量に発生してしまう。また数十枚に一枚、あるいは百枚に一枚程度の割合でバックシートに傷や破れが生ずることもある。この場合には全品検品が必要になり、煩に堪えない。
【0014】
このように通気性を有しないバックシートを用いた尿取りパッドには、バックシートに破損が生じやすいという課題がある。
【0015】
二つ目は、バックシートに取り付けるずれ止め用の粘着テープの問題である。
【0016】
通気性を有しないバックシートは、フィルム状をしているがゆえに平滑性が高く、おむつや下着の中で位置ずれしやすい。このため実際の製品では、例えば特許文献4に符号16として示されているような粘着テープをずれ止めテープとしてバックシートに取り付けておき(特許文献4の段落[0016]、
図9参照)、おむつの内部に尿取りパッドを固定できるようにすることが行なわれている。このときずれ止めテープの粘着面には剥離テープが貼られているので、使用時には、ずれ止めテープから剥離テープを剥がす必要がある。
【0017】
ところが一日のうちにおむつの替え作業を何度も行なわなければならない介護施設や病院などでは、ずれ止めテープから剥離テープをその都度剥がすようなことはせず、剥離テープをつけたままの尿取りパッドを介護対象者の身につけることが一般化している。この場合には剥離テープの平滑性により、むしろおむつや下着の中で尿取りパッドがずれやすくなってしまうという課題がある。
【0018】
その他ずれ止めテープには、剥離テープが廃棄物になってしまうという地球環境上の課題もある。
【0019】
本開示の課題は、製造時にバックシートを破損しにくくし、使用時に尿取りパッドをずれにくくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
尿取りパッドの一態様は、使用者の身体に直接接触する側に配置される液透過性のトップシートと、使用者の身体と反対側に配置される液不透過性及び非通気性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を備え、前記バックシートの外表面には、不織布の補強部材が貼り付けられている。
【発明の効果】
【0021】
製造時にバックシートを破損しにくくし、使用時に尿取りパッドをずれにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施の形態の尿取りパッドの模式的な分解斜視図。
【
図4】補強部材を隠れ線で示すインナー側から見た尿取りパッドの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
尿取りパッドの実施の形態を図面に基づいて説明する。説明は、つぎの項目に沿って行なう。
1.構成
(1)尿取りパッド
(2)補強部材
(3)各部の寸法関係
2.作用効果
(1)バックシートの補強
(2)ずれ防止
(3)その他
3.変形例
【0024】
1.構成
(1)尿取りパッド
図1及び
図5に示すように、尿取りパッド11は、ともに矩形形状をしたトップシート31とバックシート51との間に、吸収体71を包み込むようにして全体が構成されている。本実施の形態では、バックシート51に非通気性のものを用いることを前提としている。
【0025】
図2及び
図4に示すように、インナー側から尿取りパッド11を見ると、直接視認可能なのは、トップシート31のみである。トップシート31は、矩形形状をしたトップシート本体32の両側部に、一対のギャザー33を接着によって固定している。
【0026】
トップシート31の幅はW1、トップシート本体32の幅はW2、ギャザー33の幅はW3である。トップシート31の長さはL1である。トップシート本体32とギャザー33とは、僅かな接着代をもって接着されており、接着代からギャザー33の内縁部分までの領域は、自由に変形できる領域とされている。
【0027】
トップシート31のうちトップシート本体32は、液透過性を有する材料、例えば液透過性の不織布を材料として成形されており、ギャザー33は、非透液性の不織布などによって成形されている。トップシート本体32及びギャザー33は、ともに半透光性を有している。このためインナー側から尿取りパッド11を見ると、両側部分にバックシート51、中央部分に吸収体71が透けて見える。
【0028】
吸収体71は、幅がW4で長さがL2の矩形形状をしている。吸収体71の幅W4は、トップシート本体32の幅W2よりも僅かに狭い。吸収体71の長さL2は、トップシート31の全長L1よりも短い。したがって吸収体71は、トップシート31の外縁内に収まる大きさを有している。
【0029】
図1及び
図5に示すように、吸収体71は、カバーティッシュ72とキャリアティッシュ73との間に、パルプ層74を介在させている。パルプ層74は、SAP75を含んでいる。SAP75は、Superabsorbent Polymerの略称であり、架構構造をもつ親水性のポリマーを意味する。
【0030】
図3に示すように、アウター側から尿取りパッド11を見ると、直接視認可能なのは、バックシート51及び補強部材52である。補強部材52については後述する。
【0031】
バックシート51は、幅がW5で長さがL3の矩形形状に成形されている。バックシート51の全幅W5は、トップシート31の全幅W1とほぼ一致している。バックシート51の全長L3は、トップシート31の全長L1と一致している。
【0032】
バックシート51は、液不透過性及び非通気性を有する材料によって成形されている。バックシート51の材料として用いられるのは、例えばポリエチレン(PE)やポリエステル(PEs)などの樹脂フィルムである。バックシート51はほとんど透光性を有していないため、アウター側から尿取りパッド11を見ると、バックシート51を透過して、トップシート31や吸収体71を視認することはできない。
【0033】
バックシート51の坪量は、例えば15~25g/m2、一例として20g/m2である。
【0034】
(2)補強部材
図1、
図3~
図5に示すように、本実施の形態の尿取りパッド11は、バックシート51に補強部材52を接着剤53によって貼り付けている。補強部材52は、不織布を材料としており、一例としてスパンボンド不織布、別の一例としてエアスルー不織布、さらに別の一例としてSMSが用いられる。
【0035】
補強部材52は、幅がW6で長さがL4の矩形形状をしており、尿取りパッド11の長さ方向(バックシート51の長さL3の方向)の両端を結ぶ中心線C上、幅方向(バックシート51の幅W5の方向)の中央位置に配置されている。このような補強部材52の配置位置は、使用者が身に着けたおむつや下着の内表面(いずれも図示せず)に接触する位置である。
【0036】
補強部材52の幅W6は、バックシート51の幅W5よりも狭く、例えばバックシート51の幅W5の30~55%、あるいは40~50%である。一例として、本実施の形態の補強部材52の幅W6は、バックシート51の幅W5の45%である。補強部材52の長さL4は、トップシート31の全長L1及びバックシート51の全長L3と一致している。
【0037】
補強部材52は、バックシート51の外表面に接着剤53によって貼り付けられているが、両端部52Eだけはバックシート51に貼り付けられておらず、自由状態に維持されている。バックシート51に貼り付けられずに自由状態に維持されている補強部材52の両端部52Eの幅W7は、例えば5~10mmである。
【0038】
補強部材52の坪量は、例えば7~13g/m2、一例として10g/m2である。
【0039】
(3)各部の寸法関係
図4は、補強部材52を隠れ線で示すインナー側から見た尿取りパッド11の模式図である。
図4を参照して、各部の寸法関係を整理する。
【0040】
各部の幅は、つぎの通りである。
W1:トップシート31の幅
W2:トップシート本体32の幅
W3:ギャザー33の幅
W4:吸収体71の幅
W5:バックシート51の幅
W6:補強部材52の幅
W7:補強部材52の両端部52Eの幅
【0041】
各部の幅寸法の関係を整理すると、つぎの通りである。
(イ)トップシート31とバックシート51とは、幅W1、W5がほぼ一致している。
(ロ)トップシート本体32の幅W2は、吸収体71の幅W4よりも僅かに広い。
(ハ)補強部材52の幅W6は、バックシート51の幅W5よりも狭い。
バックシート51の幅W5に対する補強部材52の幅W6の比率については、上記例示した通りである。
【0042】
各部の長さは、つぎの通りである。
L1:トップシート31の長さ
L2:吸収体71の長さ
L3:バックシート51の長さ
L4:補強部材52の長さ
【0043】
各部の幅寸法の関係を整理すると、つぎの通りである。
(イ)トップシート31とバックシート51と補強部材52とは、長さL1、L3、L4が一致している。
(ロ)トップシート31、バックシート51及び吸収体71の長さL1、L3、L4に対して、吸収体71は長さL2が短い。
【0044】
2.作用効果
尿取りパッド11は、ギャザー33のついたインナー側のトップシート31を使用者の肌にあてがうようにして、おむつや下着(パンツ)の中に入れて使用する。使用者が尿漏れをしたとき、尿はトップシート31を通り抜けて吸収体71のパルプ層74に吸収される。このとき尿取りパッド11の両側方への尿の回り込みをギャザー33が抑制する。
【0045】
吸収体71が吸収しきれなくなった尿、あるいは吸収体71の両側方から回り込んだ尿は、液不透過性及び非通気性を有するバックシート51によって堰き止められ、尿取りパッド11のアウター側、つまりおむつや下着の中への漏れ出しが抑制される。
【0046】
(1)バックシートの補強
尿取りパッドの製造に際しては、例えば300~350m/分の速度でラインが流れ、とくにポリエチレン(PE)やポリエステル(PEs)などの樹脂フィルムによって生成されたバックシート51には負担が大きい。ともすればバックシート51に傷や破れなどの破損が生じてしまう。バックシート51に連続的に破損が生じた場合、これを適宜のタイミングで発見できなければ、不良品の大量発生を見逃してしまうことになる。また数十枚に一枚、あるいは百枚に一枚程度の割合でバックシートに傷や破れが発生することもある。この場合には全品検品が必要になり、煩に堪えない。
【0047】
本実施の形態の尿取りパッド11は、バックシート51に補強部材52を貼り付けている。補強部材52は不織布であり、強度に優れるため、製造ラインを流れるバックシート51に傷や破れなどの破損を発生しにくくすることができる。
【0048】
とりわけ補強部材52は、尿取りパッド11の長さ方向の両端を結ぶ中心線C上、幅方向の中央位置に配置されているので、バックシート51に対する破損の危険性をより確実に抑制することが可能である。製造ラインを流れるバックシート51に生ずる破損は、尿取りパッド11の幅方向中央位置に生じやすいからである。
【0049】
(2)ずれ防止
補強部材52の材料である不織布は、バックシート51の材料であるポリエチレン(PE)やポリエステル(PEs)などの樹脂フィルムと比較して、摺動抵抗が大きい。このため本実施の形態の尿取りパッド11は、おむつや下着の中で位置ずれしにくくすることができる。
【0050】
しかも補強部材52は、尿取りパッド11の長さ方向の両端を結ぶ中心線C上、幅方向の中央位置に配置されているので、おむつや下着に対する摺動抵抗という面で、左右のバランスに優れている。この面からも、おむつや下着の中での位置ずれ防止作用を高めることができる。
【0051】
このように本実施の形態では、不織布である補強部材52が位置ずれ防止作用を奏することから、バックシート51として非通気性のものを用いた場合には必須であると考えられているずれ止めテープ(図示せず)をバックシート51に設ける必要がなくなる。このため本実施の形態の尿取りパッド11によれば、ずれ止めテープから剥離テープを剥がさない場合に生ずる尿取りパッドがかえってずれやすくなってしまうという課題も、ずれ止めテープの剥離テープが廃棄物になってしまうという地球環境上の課題も解決することができる。
【0052】
(3)その他
補強部材52の長さは、尿取りパッド11の全長と一致している。
【0053】
このため上記したバックシート51の補強作用及び位置ずれ防止作用を一層確実にすることが可能である。
【0054】
また製造ライン上で製造されたカット前の半製品をカットする工程によって、トップシート31及びバックシート51とともに補強部材52も製造される。このためバックシート51となるべき帯状の長尺体に、補強部材52となるべき帯状の長尺体を貼り付けるだけで、それ以上の工程を要することなく補強部材52をバックシート51に設けることができ、製造の容易化に貢献する。
【0055】
補強部材52の幅は、バックシート51の幅の30~55%、または40~50%、あるいは45%である。
【0056】
このため上記したバックシート51の補強作用及び位置ずれ防止作用を得ながら、補強部材52の面積を小さくすることができ、材料コストの低減を図ることが可能である。
【0057】
補強部材52の両端部52Eは、バックシート51に貼り付けられずに自由状態に維持されている。バックシート51に貼り付けられずに自由状態に維持されている補強部材52の両端部52Eの幅は、5~10mmである。
【0058】
バックシート51に貼り付けられずに自由状態に維持されている補強部材52の両端部52Eは、バックシート51に貼り付けられた個所以上に、おむつや下着に対する摺動抵抗が高い。したがっておむつや下着の中での尿取りパッド11の位置ずれ防止効果をより一層高めることができる。しかも両端部52Eは補強部材52の両側に設けられているので、左右の摺動抵抗のバランスが均等になり、この面からも位置ずれ防止効果の向上を期待することができる。
【0059】
3.変形例
実施に際しては、各種の変形や変更が可能である。
【0060】
例えば実施に際しては、バックシート51の全幅W5は、トップシート31の全幅W1よりもやや狭くてもよい。この場合には、アウター側から尿取りパッド11を見たとき、バックシート51の両側縁からトップシート31の両側縁が僅かに覗く状態になる。
【0061】
本実施の形態では、バックシート51の幅W5と補強部材52の幅W6との間の幅の比率について言及したが、これは例示にすぎない。バックシート51の幅W5に対する補強部材52の幅W6の比率は、30~55%の範囲にとどまらず、より小さくても大きくてもよい。
【0062】
本実施の形態では、トップシート本体32とギャザー33とを合わせてトップシート31という概念で説明したが、概念上、トップシート本体32のみをもってトップシート31と呼ぶことは差し支えない。
【0063】
このときトップシート31とバックシート51との間に吸収体71を包み込むという形態は、必ずしもトップシート31と観念されるトップシート本体32とバックシート51とが接合していることは要さず、本実施の形態のように、ギャザー33のような他の介在物を介してトップシート本体32とバックシート51とが接合されていればよい。
【0064】
つまりトップシート31の実態はトップシート本体32なのであって、ギャザー33まで含むからトップシート31であるという議論や、バックシート51に直接接合しているからトップシート31なのであるという議論などは成り立たない。
【0065】
その他にも実施に際しては、あらゆる変形や変更が許容される。
【実施例0066】
この出願の発明者等は、上記実施の形態の位置ずれ防止という作用効果を検証するために実験を行なった。実験は、JIS P 8147の紙及び板紙-静及び動摩擦係数の測定方法に準じた水平法によって行なった。
【0067】
水平板に固定した本体側の試験片に対して、鉛直にぶら下げたおもりに固定したおもり用の試験片を載せ、おもりを約50mm移動させる。このときの摩擦力を取得し、記録するという試験である。おもりを移動させたときの摩擦力は、細い金属線や合成繊維の糸の一端をおもりに固定し、他端を引張試験機のロードセルの可動端に固定し、ロードセルの出力を取りだして計測する。このときおもりが移動し始める瞬間にロードセルが示す最初のピーク値を静摩擦力の値とし、引き続きおもりが移動している間に示すロードセルの出力値を動摩擦力の値とする。
【0068】
本体用の試験片は、尿取りパッド11のアウター側に接触するおむつや下着(パンツ)の内表面を想定しており、おもり用の試験片は、尿取りパッド11のバックシート51に貼り付けた補強部材52を想定している。
【0069】
実験結果を表1に示す。表1では、本体用の試験片(試料)をAグループ、おもり用の試験片(試料)をBグループとして示している。
【表1】
【0070】
本体側の試験片としては、試料A1~A3の三種類を用意した。いずれも大きさは長さ25cm×幅10cmであり、水平板の上に粘着テープで固定した。三種類の試料A1~A3は、つぎの通りである。
(試料A1)親水スパンボンド不織布、坪量15g/m2
(試料A2)SMS、坪量10g/m2
(試料A3)エアスルー不織布、坪量17g/m2
【0071】
おもり用の試験片としては、試料B1~B5の五種類を用意した。いずれも大きさは長さ10cm×幅8cmである。五種類の試料B1~B5は、つぎの通りである。
(試料B1)親水スパンボンド不織布、坪量15g/m2
(試料B2)SMS、坪量10g/m2
(試料B3)エアスルー不織布、坪量17g/m2
(試料B4)ずれ止めテープ
(試料B5)バックシート(実施の形態のバックシート51)
【0072】
実験6~8、10~12中の括弧内の数字2mm、4mm、6mmは、試料B5のバックシートに対して、試料B1又はB3(親水スパンボンド不織布、エアスルー不織布)を貼り合わせた幅、つまり不織布側の幅を示している。
【0073】
実験2及び3は、尿取りパッド11のアウター側にずれ止めテープと同じ材料のものを用いた場合を想定している。実験5及び9は、尿取りパッド11のアウター側をバックシートのみにした想定である。他の実験例と比較して、静摩擦荷重(N)及び静摩擦係数にしても、動摩擦荷重(N)及び動摩擦係数にしても、値が低いことがわかる。
【0074】
実験1及び4は、尿取りパッド11のアウター側の全体に不織布を用いた場合を想定している。静摩擦荷重(N)及び静摩擦係数、並びに動摩擦荷重(N)及び動摩擦係数のいずれをとっても、実験2、3、5及び9よりも摩擦力が高くなっていることがわかる。特に実験1のSMSをおもり用の試験片(試料)に用いた例は、他のすべての実験2~12と比較して、すべての数値が摩擦力の高さを示している。
【0075】
実験6~8、10~12は、非通気性のバックシート51を用いた尿取りパッド11のアウター側に、不織布を材料とする補強部材52を用いた場合を想定している。実験1及び4と同様に、静摩擦荷重(N)及び静摩擦係数、並びに動摩擦荷重(N)及び動摩擦係数のいずれをとっても、実験2、3、5及び9よりも摩擦力が高くなっていることがわかる。なかでも実験例12のバックシートと幅6mmのエアスルー不織布とを組み合わせた例は、最も高い摩擦力を示した実験1に肉薄した値を示している。
【0076】
以上の実験結果から、おむつや下着(パンツ)の中での位置ずれ防止について、本実施の形態の尿取りパッド11が一定の作用効果を有することが検証された。