(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094170
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】炭化珪素ウェハの製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20240702BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240702BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/455
C23C16/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210956
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤林 裕明
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA13
4K030AA17
4K030BA27
4K030BA29
4K030BA37
4K030BB02
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA04
4K030EA06
4K030KA05
4K030LA12
5F045AA03
5F045AB06
5F045AC01
5F045AC07
5F045AC12
5F045AC13
5F045AC16
5F045AC17
5F045AC19
5F045AD18
5F045AF02
5F045BB08
5F045DP03
5F045DP28
5F045EE14
5F045EF05
5F045EJ04
5F045EJ09
5F045EK07
5F045EM10
(57)【要約】
【課題】シャワーヘッドの構成の簡略化を図ることができるSiCウェハの製造装置を提供する。
【解決手段】冷却部40は、分離空間201を400℃以下に冷却可能とされ、供給管51~53は、反応ガスに含まれるアンモニア系ガスが供給されるドーパントガス用供給管51と、反応ガスに含まれるシラン系ガスおよび塩素系ガスを含む成長ガスが供給される成長ガス用供給管53と、分離空間201のうちの、アンモニア系ガスが供給される部分と、塩素系ガスが供給される部分との間に、反応ガスに含まれる不活性ガスを供給する不活性ガス用供給管52と、を有する構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素ウェハの製造装置であって、
反応ガスが供給され、炭化珪素で構成される種基板(10)の表面(10a)側に、炭化珪素で構成されたエピタキシャル層(11)を成長させる反応室(200)を構成し、上部(21)および下部(22)を有する筒状とされたチャンバ(20)と、
前記チャンバ内の下部側に配置され、前記種基板が配置されるサセプタ(70)と、
前記チャンバの上部に連結され、前記反応室に前記反応ガスを供給する供給管(51~53)と、
前記反応室を、前記下部側の成長空間(202)と、前記上部側の分離空間(201)とに区画するように配置されると共に、前記成長空間と前記分離空間とを連通させる複数の貫通孔(31)が形成されたシャワーヘッド(30)と、
前記分離空間を冷却する冷却部(40)と、を備え、
前記冷却部は、前記分離空間を400℃以下に冷却可能とされ、
前記供給管は、前記反応ガスに含まれるアンモニア系ガスが供給されるドーパントガス用供給管(51)と、前記反応ガスに含まれるシラン系ガスおよび塩素系ガスを含む成長ガスが供給される成長ガス用供給管(53)と、前記分離空間のうちの、前記アンモニア系ガスが供給される部分と、前記塩素系ガスが供給される部分との間に、前記反応ガスに含まれる不活性ガスを供給する不活性ガス用供給管(52)と、を有している炭化珪素ウェハの製造装置。
【請求項2】
前記ドーパントガス用供給管、前記成長ガス用供給管、および前記不活性ガス用供給管は、前記チャンバの軸方向において、前記ドーパントガス用供給管と前記成長ガス用供給管との間に前記不活性ガス用供給管が配置されている請求項1に記載の炭化珪素ウェハの製造装置。
【請求項3】
前記シャワーヘッドには、前記不活性ガス用供給管と対向する位置に、前記分離空間側に突き出す凸部(32)が備えられている請求項1に記載の炭化珪素ウェハの製造装置。
【請求項4】
前記ドーパントガス用供給管、前記成長ガス用供給管、および前記不活性ガス用供給管は、前記ドーパントガス用供給管および前記成長ガス用供給管の一方の供給管が筒状とされ、前記不活性ガス用供給管が前記ドーパントガス用供給管を囲む枠筒状とされ、前記ドーパントガス用供給管および前記成長ガス用供給管の他方の供給管が前記不活性ガス用供給管を囲む枠筒状とされている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の炭化珪素ウェハの製造装置。
【請求項5】
前記ドーパントガス用供給管、前記成長ガス用供給管、および前記不活性ガス用供給管は、それぞれ筒状とされて点在されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の炭化珪素ウェハの製造装置。
【請求項6】
前記ドーパントガス用供給管、前記成長ガス用供給管、および前記不活性ガス用供給管は、同心円状に点在されている請求項5に記載の炭化珪素ウェハの製造装置。
【請求項7】
前記ドーパントガス用供給管、前記成長ガス用供給管、および前記不活性ガス用供給管は、前記上部の面方向の一方向における第1方向および前記第1方向と交差する第2方向に沿って点在されている請求項5に記載の炭化珪素ウェハの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(以下では、単にSiCともいう)で構成されるSiCウェハの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、原料ガスを含む反応ガスが導入される反応室において、種基板をサセプタに載置した状態で回転させながら加熱して当該種基板の表面に半導体層であるエピタキシャル層を成長させるSiCウェハの製造装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、このSiCウェハの製造装置では、反応室を反応ガスが始めに供給される分離空間と、種基板が配置される成長空間とに略区画するシャワーヘッドが備えられている。シャワーヘッドには、分離空間と成長空間とを連通させる複数の貫通孔が形成されている。そして、このSiC半導体装置では、分離空間に供給された反応ガスが複数の貫通孔を通じて成長空間に供給されるようにすることにより、種基板上に反応ガスが均一に供給され易くなるようにしている。
【0004】
なお、反応ガスは、エピタキシャル層を成長させるための塩素系ガスと、ドーパントガスとしてのアンモニア系ガス等を含んで構成される。このため、分離空間で塩素系ガスとアンモニア系ガスとが反応して固体の塩化アンモニウムが生成される可能性があり、この塩化アンモニウムによってシャワーヘッドの貫通孔が根詰まりする可能性がある。
【0005】
したがって、このSiCウェハの製造装置では、分離空間を複数の空間に分割するための仕切壁が備えられている。そして、このSiC半導体装置では、塩素系ガスとアンモニア系ガスとを別々の空間に供給することにより、分離空間で固体の塩化アンモニウムが生成され難くなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようなSiC半導体装置では、壁部を備えるためにシャワーヘッドの構成が複雑になり易い。
【0008】
本発明は上記点に鑑み、シャワーヘッドの構成の簡略化を図ることができるSiCウェハの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、SiCウェハの製造装置であって、反応ガスが供給され、SiCで構成される種基板(10)の表面(10a)側に、SiCで構成されたエピタキシャル層(11)を成長させる反応室(200)を構成し、上部(21)および下部(22)を有する筒状とされたチャンバ(20)と、チャンバ内の下部側に配置され、種基板が配置されるサセプタ(70)と、チャンバの上部に連結され、反応室に反応ガスを供給する供給管(51~53)と、反応室を、下部側の成長空間(202)と、上部側の分離空間(201)とに区画するように配置されると共に、成長空間と分離空間とを連通させる複数の貫通孔(31)が形成されたシャワーヘッド(30)と、分離空間を冷却する冷却部(40)と、を備え、冷却部は、分離空間を400℃以下に冷却可能とされ、供給管は、反応ガスに含まれるアンモニア系ガスが供給されるドーパントガス用供給管(51)と、反応ガスに含まれるシラン系ガスおよび塩素系ガスを含む成長ガスが供給される成長ガス用供給管(53)と、分離空間のうちの、アンモニア系ガスが供給される部分と、塩素系ガスが供給される部分との間に、反応ガスに含まれる不活性ガスを供給する不活性ガス用供給管(52)と、を有している。
【0010】
これによれば、冷却部にて分離空間が400℃以下となるように冷却されるため、分離空間でシランガスが分解して固体のシリコンが生成されることを抑制でき、シャワーヘッドの貫通孔で根詰まりが発生することを抑制できる。また、不活性ガス用供給管は、分離空間のうちの、アンモニア系ガスが供給される部分と、塩素系ガスが供給される部分との間に、不活性ガスを供給するように配置されている。このため、分離空間では、分離空間に仕切壁等を配置しなくても、アンモニア系ガスと塩素系ガスとが反応することを抑制でき、シャワーヘッドの貫通孔で根詰まりが発生することを抑制できる。したがって、このSiCウェハの製造装置では、分離空間内を複数の空間に仕切る仕切壁等を配置しなくてもシャワーヘッドの貫通孔で根詰まりが発生することを抑制でき、シャワーヘッドの構成の簡略化を図ることができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態におけるSiCウェハの製造装置を示す模式図である。
【
図2】
図1中のII-II線に沿った断面図である。
【
図3】第2実施形態におけるSiCウェハの製造装置を示す模式図である。
【
図4】第3実施形態におけるチャンバの上面図である。
【
図5】第4実施形態におけるSiCウェハの製造装置を示す模式図である。
【
図6】
図5中のVI-VI線に沿った断面図である。
【
図7】第5実施形態におけるSiCウェハの製造装置を示す模式図である。
【
図8】
図7中のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図9】第6実施形態におけるチャンバの上面図である。
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態のSiCウェハの製造装置(以下では、単に製造装置ともいう)1について、
図1および
図2を参照しつつ説明する。なお、
図1は、
図2中のI-I線に沿った断面図である。
【0016】
製造装置1は、
図1に示されるように、種基板10の表面10a側に半導体層としてのエピタキシャル層11を成長させてSiCウェハ12を製造する反応室200を構成するチャンバ20を有する。
【0017】
チャンバ20は、上部21、下部22、および上部21と下部22とを繋ぐ側部23を有する略円筒状とされている。そして、チャンバ20には、反応室200を上部21側の分離空間201と、下部22側の成長空間202とに略区画するようにシャワーヘッド30が備えられている。シャワーヘッド30は、例えば、SUS等の金属によって構成されており、分離空間201と成長空間202とを連通させる複数の貫通孔31が形成されている。
【0018】
なお、後述するように、種基板10は、成長空間202に配置される。そして、シャワーヘッド30は、種基板10の上方に配置され、貫通孔31が種基板10の表面10aに対向する位置を含むように形成される。このため、分離空間201に供給された反応ガスは、貫通孔31を通じて種基板10の表面10aに交差する方向(すなわち、表面10aと略直交する方向)から種基板10の表面10aに向けて供給される。したがって、本実施形態の製造装置1は、種基板10の表面10aに向けて反応ガスを吹き降ろすダウンフロー型のガス供給構造であるといえる。
【0019】
チャンバ20のうちの分離空間201の周囲には、分離空間201を冷却するための冷却部40が備えられている。冷却部40は、例えば、冷却通路41を冷却水42が循環する構成とされている。なお、実際には、冷却部40は、図示しない流水入口と流水出口が形成されており、流水入口から冷却水42が導入され、冷却水42が流水出口より排出されることで分離空間201を冷却できるように構成されている。本実施形態では、後述するように、反応ガスとしてのシランガスが分離空間201に供給される。そして、冷却部40は、分離空間201でシランガスが分解しないように、分離空間201が400℃以下となるように制御される。なお、ここでは、分離空間201の周囲に冷却部40が備えられる構成を説明したが、冷却部40は、例えば、チャンバ20の側部23に所定の空間が構成され、当該空間を冷却通路41として冷却水42が循環する構成とされていてもよい。
【0020】
そして、チャンバ20には、分離空間201側に、エピタキシャル層11を成長させるための反応ガスを供給する第1~第3供給管51~53が備えられている。本実施形態では、チャンバ20が円筒状とされており、上部21も平面円状とされている。そして、第1供給管51は、筒状とされて上部21の略中央部に備えられ、第2供給管52は、円環筒状(すなわち、枠筒状)とされて第1供給管51を囲むように備えられている。第3供給管53は、円環筒状(すなわち、枠筒状)とされて第2供給管52を囲むように備えられている。なお、本実施形態では、第2供給管52および第3供給管53が円環筒状とされている例を説明するが、第2供給管52および第3供給管53は、多角形枠状とされていてもよい。
【0021】
反応ガスは、例えば、シラン(SiH4)ガスおよびプロパン(C3H8)ガスを含む成長用ガスとしての原料ガス、塩化水素(HCl)ガスを含む成長用ガスとしてのエッチングガスを含んでいる。また、反応ガスは、アンモニア(NH3)ガスを含むドーパントガス、および水素ガスを含むキャリーガスを含んでいる。
【0022】
なお、キャリーガスは、シランガスやアンモニアガスと反応し難いガスであり、不活性ガスであるともいえる。言い換えると、不活性ガスは、シランガスに対してアンモニアガスよりも反応し難いガスであると共に、アンモニアガスに対してシランガスよりも反応し難いガスであるともいえる。また、本実施形態では、キャリーガスとして水素ガスを例に挙げて説明するが、キャリーガスは、アルゴン(Ar)ガスやヘリウム(He)ガスであってもよい。本実施形態では、アンモニアガスがアンモニア系ガスに相当し、塩化水素ガスが塩素系ガスに相当し、シランガスがシラン系ガスに相当する。
【0023】
そして、本実施形態では、第1供給管51からドーパントガス(すなわち、アンモニアガス)が供給される。第3供給管53から原料ガス(すなわち、シランガスおよびプロパンガス)、およびエッチングガス(すなわち、塩化水素ガス)が供給される。第1~第3供給管51~53からキャリーガス(すなわち、水素ガス)が供給される。つまり、本実施形態では、チャンバ20の軸方向において(以下では、単に軸方向ともいう)、アンモニアガスが供給される第1供給管51と、塩化水素ガスが供給される第3供給管53との間に、アンモニアガスおよび塩化水素ガスと反応し難い水素ガスが供給される第2供給管52が配置されている。なお、チャンバ20の軸方向においてとは、言い換えると、上部21の面方向に対する法線方向においてともいうことができ、上部21の面方向に対する法線方向から視たときということもできる。また、本実施形態では、第1供給管51がドーパントガス用供給管に相当し、第2供給管52が不活性ガス用供給管に相当し、第3供給管53が成長ガス用供給管に相当する。
【0024】
そして、反応ガスは、第1~第3供給管51~53から分離空間201に供給された後、貫通孔31を通じて成長空間202に供給される。この際、軸方向において第1供給管51と第3供給管53との間に第2供給管52が配置されている。このため、分離空間201では、第1供給管51から供給されるアンモニアガスと、第3供給管53から供給される塩化水素ガスとの間に、第2供給管52から供給される水素ガスが存在する状態となる。したがって、第2供給管52は、分離空間201のうちの、アンモニアガスが供給される部分と、塩化水素ガスが供給される部分との間に、不活性ガスを供給するように配置されているともいえる。そして、分離空間201では、アンモニアガスと塩化水素ガスとの間に水素ガスが存在するため、分離空間201に仕切壁等を配置しなくても、アンモニアガスと塩化水素ガスとが反応することを抑制できる。また、分離空間201から貫通孔31を通じて成長空間202へと供給される各ガスは、第2供給管52を配置しない場合と比較して、第2供給管52からもキャリーガスが供給されているため、チャンバ20の軸方向に対する径方向での流量の差が小さくなる。したがって、貫通孔31から供給されるガスに対流が発生することを抑制できる。
【0025】
チャンバ20には、下方側に、種基板10が配置される回転装置60が配置されている。本実施形態では、種基板10は、回転装置60に配置されたサセプタ70上に配置される。
【0026】
回転装置60は、筒部61、回転軸62、および駆動部63等を有する構成とされている。筒部61は、有底円筒形状の部材であって中空室61aを構成するものであり、開口端部側の端部にサセプタ70が配置されるようになっている。そして、筒部61は、開口端部側がチャンバ20の上方側(すなわち、上部21側)に向けられて配置されている。
【0027】
回転軸62は、駆動部63の出力によって回転する軸であり、筒部61と一体的に回転可能なように筒部61に連結されている。駆動部63は、回転力を出力するモータ等で構成されており、回転軸62を回転させるものである。そして、このように構成される回転装置60では、駆動部63の出力によって回転軸62が回転し、筒部61およびサセプタ70が一体的に回転する。
【0028】
サセプタ70は、筒部61の開口端部に合わせた外形とされており、筒部61の開口端部に配置されることで筒部61を略閉塞する。これにより、筒部61の中空室61aが略閉塞される。
【0029】
具体的には、サセプタ70は、一面70aおよび他面70bを有する板状とされており、一面70a側の中央部に、種基板10を収容するための凹部71が形成されている。また、サセプタ70は、他面70b側の外縁部に、筒部61の開口端部と嵌合されるための段差部72が形成されている。そして、サセプタ70は、段差部72が筒部61の開口端部に嵌合されることにより、筒部61に配置される。
【0030】
種基板10は、サセプタ70における凹部71の底面71aを載置面とし、裏面10b側が底面71aと対向するようにサセプタ70に載置されている。
【0031】
中空室61aには、種基板10(すなわち、反応室200)を加熱する加熱装置としてのヒータ80が配置されている。ヒータ80は、例えば、カーボン製の抵抗加熱ヒータが用いられ、図示を省略しているが、制御部等と接続されて所定温度に加熱される。
【0032】
さらに、チャンバ20には、下方側に反応後のガスや未反応ガスを排気するための排気管90が設けられている。排気管90は、チャンバ20側と反対側の部分が図示しない真空ポンプと接続されている。これにより、反応室200は、所定圧力に維持される。
【0033】
なお、特に図示しないが、中空室61aには、搬送用ロボットによる反応室200への種基板10が載置されたサセプタ70の搬入や、反応室200からのサセプタ70の搬出を補助するための昇降機器が配置されている。この昇降機器は、例えば、サセプタ70の搬出時にサセプタ70を上昇させて筒部61から引き離すことで搬送用ロボットにサセプタ70を受け渡す機能を有するものが用いられる。但し、製造装置1は、種基板10が載置されたサセプタ70の搬入および搬出を行うものではなく、サセプタ70を移動させずに種基板10のみの搬入および搬出を行うようなものであってもよい。
【0034】
以上が本実施形態における製造装置1の構成である。次に、上記の製造装置1を用いて種基板10の表面10a上にエピタキシャル層11を成長させる方法について説明する。
【0035】
まず、上記のような製造装置1では、種基板10が載置されたサセプタ70を回転装置60によって例えば200rpmで回転させつつ、ヒータ80を駆動して成長空間202を約1600~1750℃にする。また、冷却部40を駆動して分離空間201が400℃以下となるようにする。
【0036】
そして、第1~第3供給管51~53から分離空間201に向けて反応ガスを供給することにより、シャワーヘッド30の各貫通孔31から各ガスが成長空間202に供給される。例えば、第1供給管51から供給されるアンモニアガスの流量が30sccmとされる。第3供給管53から供給されるシランガスの流量が500sccmとされ、プロパンガスの流量が150sccmとされ、塩化水素ガスの流量が5000sccmとされる。第1~第3供給管51~53から供給される水素ガスの流量が全体で100slmとされる。
【0037】
そして、成長空間202では、シランガスとプロパンガスとが反応しつつアンモニアガスが取り込まれ、種基板10上にn型のSiCで構成されるエピタキシャル層11が成長してSiCウェハ12が製造される。
【0038】
この際、冷却部40にて分離空間201が400℃以下となるように冷却されるため、分離空間201でシランガスが分解して固体のシリコンが生成されることを抑制できる。このため、シャワーヘッド30の貫通孔31が根詰まりすることを抑制できる。
【0039】
また、冷却部40にて分離空間201が400℃以下となるように冷却されるため、分離空間201では、アンモニアガスとシランガスとが反応して固体の塩化アンモニウムが生成される可能性がある。しかしながら、本実施形態では、上記のように、軸方向において第1供給管51と第3供給管53との間に第2供給管52が配置されているため、分離空間201では、アンモニアガスと、塩化水素ガスとの間に水素ガスが存在する状態となる。このため、分離空間201では、分離空間201に仕切壁等を配置しなくても、アンモニアガスと塩化水素ガスとが反応することを抑制でき、シャワーヘッド30の貫通孔31が根詰まりすることを抑制できる。したがって、本実施形態では、分離空間201内を複数の空間に仕切る仕切壁等を配置しなくても貫通孔31が根詰まりすることを抑制でき、シャワーヘッド30の構成の簡略化を図ることができる。
【0040】
さらに、分離空間201から貫通孔31を通じて成長空間202へと供給される各ガスは、第2供給管52を配置しない場合と比較して、第2供給管52からもキャリーガスが供給されているため、チャンバ20の軸方向に対する径方向での流量の差が小さくなる。したがって、貫通孔31から供給されるガスに対流が発生することを抑制できる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態では、冷却部40にて分離空間201が400℃以下となるように冷却されるため、分離空間201でシランガスが分解して固体のシリコンが生成されることを抑制でき、シャワーヘッド30の貫通孔31が根詰まりすることを抑制できる。
【0042】
また、第2供給管52は、分離空間201のうちの、アンモニアガスが供給される部分と、塩化水素ガスが供給される部分との間に、不活性ガスを供給するように配置されている。このため、分離空間201では、分離空間201に仕切壁等を配置しなくても、アンモニアガスと塩化水素ガスとが反応することを抑制でき、シャワーヘッド30の貫通孔31が根詰まりすることを抑制できる。
【0043】
さらに、分離空間201から貫通孔31を通じて成長空間202へと供給される各ガスは、第2供給管52を配置しない場合と比較して、第2供給管52からもキャリーガスが供給されているため、チャンバ20の軸方向に対する径方向での流量の差が小さくなる。したがって、貫通孔31から供給されるガスに対流が発生することを抑制できる。
【0044】
(1)本実施形態では、軸方向において第1供給管51と第3供給管53との間に第2供給管52が配置されている。このため、分離空間201のうちの、アンモニアガスが供給される部分と、塩化水素ガスが供給される部分との間に、不活性ガスを供給し易くなり、さらにアンモニアガスと塩化水素ガスとが反応することを抑制できる。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、シャワーヘッド30に凸部を形成したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0046】
本実施形態のシャワーヘッド30は、
図3に示されるように、第2供給管52と対向する部分に、分離空間201側に突出する凸部32が設けられている。言い換えると、シャワーヘッド30には、第2供給管52から分離空間201に供給されるキャリーガスの流路を狭くする凸部32が形成されている。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、分離空間201のうちのアンモニアガスが供給される部分と、塩化水素ガスが供給される部分との間に、不活性ガスを供給する第2供給管52が配置されている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
(1)本実施形態では、シャワーヘッド30は、第2供給管52と対向する部分に、分離空間201側に突出する凸部32が設けられている。このため、第2供給管52から供給される水素ガス(すなわち、キャリーガス)は、分離空間201のうちの、凸部32上の部分から、第1供給管51との連結部分側および第3供給管53との連結部分側に流れ出る際に流速が増加する。したがって、第1供給管51から供給されるアンモニアガスが凸部32上の部分を通じて第3供給管53側へ流れることを抑制できると共に、第3供給管53から供給される塩化水素ガスが凸部32上の部分を通じて第1供給管51側へ流れることを抑制できる。これにより、分離空間201でアンモニアガスとシランガスとが反応することをさらに抑制できる。
【0049】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、第2、第3供給管52、53の構成を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0050】
本実施形態の第2供給管52および第3供給管53は、
図4に示されるように、上記第1実施形態と比較すると、軸方向を基準とした周方向に分離した構成とされている。言い換えると、第2供給管52および第3供給管53は、同心円状に複数備えられている。なお、本実施形態では、第2供給管52および第3供給管53は、それぞれ円筒状とされているが、それぞれ多角柱状とされていてもよいし、円筒状と多角柱状とが混合していてもよい。
【0051】
以上説明した本実施形態によれば、分離空間201のうちのアンモニアガスが供給される部分と、塩化水素ガスが供給される部分との間に、不活性ガスを供給する第2供給管52が配置されている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
(1)本実施形態では、第2供給管52および第3供給管53は、それぞれ同心円状に複数備えられている。このため、第2供給管52および第3供給管53を円環枠状に備える場合と比較して、各供給管51~53を加工し易くできる。
【0053】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第3実施形態に対し、第1~第3供給管51~53の配置箇所を変更したものである。その他に関しては、第3実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0054】
本実施形態の第1~第3供給管51~53は、
図5および
図6に示されるように、軸方向において、それぞれ点在するように配置されている。但し、第1~第3供給管51~53は、軸方向において、同心円状に配置されていると共に、第1供給管51と第3供給管53との間に第2供給管52が位置するように配置されている。本実施形態では、第2供給管52が上部21の略中央部に配置され、この第2供給管52囲むように、第1~第3供給管51~53が同心円状に配置されている。なお、
図5は、
図6中のV-V線に沿った断面図である。
【0055】
以上説明した本実施形態によれば、分離空間201のうちのアンモニアガスが供給される部分と、塩化水素ガスが供給される部分との間に、不活性ガスを供給する第2供給管52が配置されている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
(1)本実施形態では、第1~第3供給管51~53が点在して配置されている。このため、種基板10上にさらに均一に成長ガスおよびドーパントガスを供給でき、エピタキシャル層11の品質の向上を図ることができる。
【0057】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第4実施形態に対し、第1~第3供給管51~53の配置箇所を変更したものである。その他に関しては、第4実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0058】
本実施形態の第1~第3供給管51~53は、
図7および
図8に示されるように、上部21の面方向における第1方向および第1方向と交差する第2方向に沿って点在されている。そして、第1~第3供給管51~53は、軸方向において、第1供給管51と第3供給管53との間に第2供給管52が位置するように配置されている。なお、本実施形態では、第3供給管53が上部21の略中央部に位置するように配置されている。なお、
図7は、
図8中のVII-VII線に沿った断面図である。
【0059】
以上説明した本実施形態によれば、分離空間201のうちのアンモニアガスが供給される部分と、塩化水素ガスが供給される部分との間に、不活性ガスを供給する第2供給管52が配置されている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
(1)本実施形態のように、第1~第3供給管51~53を第1方向および第2方向に沿って点在させても、軸方向において第1供給管51と第3供給管53との間に第2供給管52が位置するように配置されていれば、上記第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態と4実施形態とを組み合わせたものである。その他に関しては、第2、4実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0062】
本実施形態では、
図9に示されるように、シャワーヘッド30のうちの第2供給管52と対向する部分に凸部32が設けられている。なお、第1~第3供給管51~53は、点在するように配置されているが、上記第2実施形態と比較すると、凸部32を設けやすいように配置場所が適宜変更されている。但し、第1~第3供給管51~53は、軸方向において第1供給管51と第3供給管53の間に第2供給管52が位置するように配置されている。
【0063】
以上説明した本実施形態によれば、分離空間201のうちのアンモニアガスが供給される部分と、塩化水素ガスが供給される部分との間に、不活性ガスを供給する第2供給管52が配置されている。このため、上記第2、4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0065】
例えば、上記各実施形態において、成長ガスは、三塩化シランガスを含むガスとされていてもよい。この場合、塩化水素ガスは含まれていなくてもよい。このような構成では、三塩化シランガスがシラン系ガスおよび塩素系ガスに相当する。
【0066】
さらに、上記各実施形態において、第3供給管53が複数備えられ、シランガスと塩化水素ガスとが別々の供給管から供給されるようにしてもよい。この場合、例えば、上記第3実施形態等では、複数の第3供給管53のうちの一部からシランガスが供給され、残部から塩化水素ガスが供給されるようにしてもよい。
【0067】
そして、上記各実施形態において、水素ガス(すなわち、不活性ガス)は、少なくとも第2供給管52から供給されていればよい。
【0068】
また、上記第3~第6実施形態において、第1~第3供給管51~53の配置箇所は適宜変更可能である。
【0069】
そして、上記各実施形態を組み合わせることもできる。例えば、上記第2実施形態を上記第3実施形態や上記第5実施形態に組み合わせてシャワーヘッド30に凸部32を備えるようにしてもよい。
【0070】
(本発明の特徴)
【0071】
[請求項1]
炭化珪素ウェハの製造装置であって、
反応ガスが供給され、炭化珪素で構成される種基板(10)の表面(10a)側に、炭化珪素で構成されたエピタキシャル層(11)を成長させる反応室(200)を構成し、上部(21)および下部(22)を有する筒状とされたチャンバ(20)と、
前記チャンバ内の下部側に配置され、前記種基板が配置されるサセプタ(70)と、
前記チャンバの上部に連結され、前記反応室に前記反応ガスを供給する供給管(51~53)と、
前記反応室を、前記下部側の成長空間(202)と、前記上部側の分離空間(201)とに区画するように配置されると共に、前記成長空間と前記分離空間とを連通させる複数の貫通孔(31)が形成されたシャワーヘッド(30)と、
前記分離空間を冷却する冷却部(40)と、を備え、
前記冷却部は、前記分離空間を400℃以下に冷却可能とされ、
前記供給管は、前記反応ガスに含まれるアンモニア系ガスが供給されるドーパントガス用供給管(51)と、前記反応ガスに含まれるシラン系ガスおよび塩素系ガスを含む成長ガスが供給される成長ガス用供給管(53)と、前記分離空間のうちの、前記アンモニア系ガスが供給される部分と、前記塩素系ガスが供給される部分との間に、前記反応ガスに含まれる不活性ガスを供給する不活性ガス用供給管(52)と、を有している炭化珪素ウェハの製造装置。
【0072】
[請求項2]
前記ドーパントガス用供給管、前記成長ガス用供給管、および前記不活性ガス用供給管は、前記チャンバの軸方向において、前記ドーパントガス用供給管と前記成長ガス用供給管との間に前記不活性ガス用供給管が配置されている請求項1に記載の炭化珪素ウェハの製造装置。
【0073】
[請求項3]
前記シャワーヘッドには、前記不活性ガス用供給管と対向する位置に、前記分離空間側に突き出す凸部(32)が備えられている請求項1または2に記載の炭化珪素ウェハの製造装置。
【0074】
[請求項4]
前記ドーパントガス用供給管、前記成長ガス用供給管、および前記不活性ガス用供給管は、前記ドーパントガス用供給管および前記成長ガス用供給管の一方の供給管が筒状とされ、前記不活性ガス用供給管が前記ドーパントガス用供給管を囲む枠筒状とされ、前記ドーパントガス用供給管および前記成長ガス用供給管の他方の供給管が前記不活性ガス用供給管を囲む枠筒状とされている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の炭化珪素ウェハの製造装置。
【0075】
[請求項5]
前記ドーパントガス用供給管、前記成長ガス用供給管、および前記不活性ガス用供給管は、それぞれ筒状とされて点在されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の炭化珪素ウェハの製造装置。
【0076】
[請求項6]
前記ドーパントガス用供給管、前記成長ガス用供給管、および前記不活性ガス用供給管は、同心円状に点在されている請求項5に記載の炭化珪素ウェハの製造装置。
【0077】
[請求項7]
前記ドーパントガス用供給管、前記成長ガス用供給管、および前記不活性ガス用供給管は、前記上部の面方向の一方向における第1方向および前記第1方向と交差する第2方向に沿って点在されている請求項5に記載の炭化珪素ウェハの製造装置。
【符号の説明】
【0078】
10 種基板
10a 表面
11 エピタキシャル層
20 チャンバ
21 上部
22 下部
30 シャワーヘッド
31 貫通孔
40 冷却部
51 第1供給管(ドーパントガス用供給管)
52 第2供給管(不活性ガス用供給管)
53 第3供給管(成長ガス用供給管)
70 サセプタ
200 反応室
201 分離空間
202 成長空間