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特開2024-94175アロファネート結合を有する重合性単量体を含む3Dプリンタ用光重合性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094175
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】アロファネート結合を有する重合性単量体を含む3Dプリンタ用光重合性組成物
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20240702BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20240702BHJP
   C08G 18/78 20060101ALI20240702BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20240702BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20240702BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240702BHJP
   A61K 6/62 20200101ALI20240702BHJP
   A61C 5/70 20170101ALI20240702BHJP
   A61C 13/003 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B29C64/314
C08G18/67
C08G18/78 037
C08F299/06
B29C64/124
B33Y80/00
A61K6/62
A61C5/70
A61C13/003
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210968
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(74)【代理人】
【識別番号】100173657
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬沼 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】細川 護
(72)【発明者】
【氏名】今堀 文生
(72)【発明者】
【氏名】藤村 英史
【テーマコード(参考)】
4C089
4C159
4F213
4J034
4J127
【Fターム(参考)】
4C089AA03
4C089BD03
4C089BD08
4C089CA04
4C159DD01
4C159DD08
4C159RR15
4C159SS04
4C159TT10
4F213AA21
4F213AA44
4F213AB04
4F213AB12
4F213AR06
4F213AR15
4F213AR17
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL96
4J034AA01
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4J034CA05
4J034CB01
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4J034CB04
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4J034DC50
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4J034DF20
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4J034HA08
4J034HA09
4J034HB12
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4J034HC08
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC22
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4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC64
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4J127BB032
4J127BB221
4J127BB222
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4J127BD061
4J127BD411
4J127BD422
4J127BE241
4J127BE242
4J127BE24Y
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4J127BF62X
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4J127BG221
4J127BG22X
4J127BG22Y
4J127BG22Z
4J127BG271
4J127BG272
4J127BG27Z
4J127BG312
4J127EA13
4J127FA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】3Dプリンタでの造形性に優れ、光学的立体造形法(光造形法)を用いて、靭性に優れた立体造形物を得ることができる光重合性組成物を提供する。
【解決手段】3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物を、(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物と、(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体と、(c)光重合開始剤と、を含むものとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物と、
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体と、
(c)光重合開始剤と、
を含む3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物。
【請求項2】
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物を30~99重量%、
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体を1~70重量%含み、
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物と(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体の合計100重量部に対して(c)光重合開始剤を0.01~5重量部含む、請求項1に記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物。
【請求項3】
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物が、温度:23℃、回転数:20rpmの条件で回転式レオメーターにより測定した粘度が60000mPa・s以下である、請求項1に記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物。
【請求項4】
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物は、硬化物のガラス転移点が120℃以下である、請求項1に記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物。
【請求項5】
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物が、3つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する、請求項1に記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物。
【請求項6】
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体がウレタン構造を含まない、請求項1に記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物。
【請求項7】
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体が、2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体を、少なくとも1種類含む、請求項1に記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物。
【請求項8】
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物と(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体の合計100重量部に対して、1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体を1~25重量部含む、請求項1に記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物。
【請求項9】
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体が、水酸基及びカルボン酸基からなる群より選択される1以上の反応性基を含有する(メタ)アクリル系重合体を含む、請求項1に記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物。
【請求項10】
(c)光重合開始剤が、アルキルフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物及びアシルフォスフィンオキサイド系化合物からなる群より選択される1以上である、請求項1に記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物。
【請求項11】
温度:23℃、回転数:20rpmの条件で回転式レオメーターにより測定した粘度が10000mPa・s以下である、請求項1に記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物。
【請求項12】
硬化体のガラス転移点が30~100℃である、請求項1に記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物。
【請求項13】
添加剤をさらに含む、請求項1に記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物。
【請求項14】
添加剤が着色剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤及び蛍光剤からなる群より選択される1種類以上を含む、請求項13に記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物。
【請求項15】
添加剤を、添加剤を除いた3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物100重量部に対して、0.0001~2重量部含む、請求項13に記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物を用いて、光造形型の3Dプリンタによって作製した、歯科用製品。
【請求項17】
請求項1~15のいずれかに記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物を用いて、光造形型の3Dプリンタによって作製した、歯科用アライナー材料。
【請求項18】
請求項1~15のいずれかに記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物を用いて、光造形型の3Dプリンタによって作製した、義歯床材料。
【請求項19】
請求項1~15のいずれかに記載の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物を用いて、光造形型の3Dプリンタによって作製した、歯科用マウスピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合性組成物、特に3Dプリンタでの造形性に優れ、靭性に優れた立体造形物を得ることができる光重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液状の光硬化性樹脂に必要量の制御された光エネルギーを供給して、薄膜状に硬化させる工程を繰り返すことで、立体造形物を製造する方法、いわゆる光学的立体造形法(光造形法)は、基本的な実用方法が提案されて以来、多数の提案がなされている。
【0003】
光造形物を光学的に製造する代表的な方法として、次のものがある。容器に入れた光重合性組成物に、所望のパターンが得られるようにコンピューターで制御された光を選択的に照射して所定の厚みに硬化させる。次にその硬化層上もしくは下面に1層分の光重合性組成物を供給して、同様に光を照射して硬化させる。この操作を繰り返すことによって積層体を形成し、最終的な形状を有する立体造形物を製造する方法が一般的である。
【0004】
この方法は、造形物の形状が複雑な場合であっても、簡単にかつ比較的短時間で目的とする立体造形物を製造することができるため、近年様々な産業で活用されている。
【0005】
とりわけ、歯科材料分野においては、例えばインレー、クラウンやブリッジなどの補綴装置は、症例ごとに形状が異なり、かつその形状が複雑であることから、光造形法の応用が進んでいる。
【0006】
光造形法により作製される立体造形は、過去は主にプロトタイプを作製するために使用されていたが、技術発展に伴いその精度が向上しており、近年ではプロトタイプのみならず最終製品の作製へと用途が展開されるようになってきている。そのため、造形精度のみならず強度特性に優れたものが求められている。
【0007】
このような光造形法で作製される代表的な補綴装置としては、歯科用マウスピース及び義歯床材料がある。歯科用マウスピースは、歯科矯正用アライナーと呼ばれる歯並びを矯正するために歯列に装着するもの、歯科用スプリントと呼ばれる顎位を矯正するために使用するもの、コンタクトスポーツにおいて競技中に歯牙や顎骨に発生する外傷を低減するために使用するもの、また、就寝中に睡眠時無呼吸症候群の治療や歯ぎしりによる歯の摩耗を抑制するために装着するものなどいくつかの種類がある。この中で、歯科矯正用アライナーや睡眠時無呼吸症候群の治療の分野で、近年急速に歯科用マウスピースの利用が進んでいる。
【0008】
義歯床材料とは、義歯の歯肉部分に使用される材料である。近年、少子高齢化に伴い義歯の需要が増加している。
【0009】
これら歯科用アライナー材料及び義歯床材料には、形状回復性や靭性が必要とされる。形状回復性が損なわれると矯正力あるいは衝撃吸収性を喪失し、目的の機能を果たさない材料となる。また、靭性が損なわれると、破壊しやすくなり、頻繁に作り直す必要が生じてしまう。
【0010】
光学的立体造形法(光造形法)で造形できる材料粘度には制限がある。一般に粘度が低い材料ほど造形性に優れているが、形状回復性や靭性を発現する材料は高分子量、高粘度の物が多く造形性が低下するという問題があった。そのため、光学的立体造形法で使用する樹脂組成物全体として、造形性に優れ、硬化物が優れた形状回復性や靭性を備えるものを得ることが困難であった。
【0011】
このような背景の中、造形精度に優れ所望の硬化物を得ることができる技術として、例えば特許文献1には、単官能性(メタ)アクリレートモノマーとウレタンアクリレートを配合した光学的立体造形用樹脂組成物が提案されている。しかし特許文献1では、ウレタンアクリレートを使用しているため材料粘度が高く、材料を加温し粘度を下げた上で光学的立体造形を実施しており、造形性に優れる材料として改良の余地が残されていた。特許文献2及び3には、光硬化性樹脂組成物の硬化性を損なわず低粘度化する技術として、芳香環を有する単官能モノマーを配合し、低粘度化した組成物が提案されている。しかし、特許文献2及び3では硬質材料を想定しており柔軟性について改良の余地が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2021-523247号公報
【特許文献2】国際公開2010/113600号
【特許文献3】特開2017-128688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、3Dプリンタでの造形性に優れ、光学的立体造形法(光造形法)を用いて、靭性に優れた立体造形物を得ることができる光重合性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち本発明は、
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物と、
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体と、
(c)光重合開始剤と、
を含む3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光重合性組成物は、光学的立体造形法(光造形法)によって造形した場合、3Dプリンタでの造形性に優れ、靭性に優れた立体造形物を得ることができる。そのため、本発明の立体造形物は歯科材料(例えば、歯科用アライナー、義歯床、マウスピース)として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明について詳細に説明する。本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物は、
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物と、
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体と、
(c)光重合開始剤と、を含む。
【0017】
本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物においては、(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物を30~99重量%、(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体を1~70重量%含み、(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物と(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体の合計100重量部に対して(c)光重合開始剤を0.01~5重量部含むことができる。
【0018】
本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物においては、(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物が、温度:23℃、回転数:20rpmの条件で回転式レオメーターにより測定した粘度が60000mPa・s以下であることができる。
【0019】
本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物においては、(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物は、硬化物のガラス転移点が120℃以下であることができる。
【0020】
本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物においては、(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物が、3つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有することができる。
【0021】
本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物においては、(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体がウレタン構造を含まないことができる。
【0022】
本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物においては、(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体が、2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体を、少なくとも1種類含むことができる。
【0023】
本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物においては、(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物と(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体の合計100重量部に対して、1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体を1~25重量部含むことができる。
【0024】
本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物においては、(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体が、水酸基及びカルボン酸基からなる群より選択される1以上の反応性基を含有する(メタ)アクリル系重合体を含むことができる。
【0025】
本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物においては、(c)光重合開始剤が、アルキルフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物及びアシルフォスフィンオキサイド系化合物からなる群より選択される1以上であることができる。
【0026】
本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物は、温度:23℃、回転数:20rpmの条件で回転式レオメーターにより測定した粘度が10000mPa・s以下であることができる。
【0027】
本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物は、硬化体のガラス転移点が30~100℃であることができる。
【0028】
本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物は、添加剤をさらに含むことができる。
【0029】
本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物は、添加剤が着色剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤及び蛍光剤からなる群より選択される1種類以上を含むことができる。
【0030】
本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物は、添加剤を、添加剤を除いた3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物100重量部に対して、0.0001~2重量部含むことができる。
【0031】
本発明は、本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物を用いて、光造形型の3Dプリンタによって作製した歯科用製品を提供する。
【0032】
本発明は、本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物を用いて、光造形型の3Dプリンタによって作製した歯科用アライナー材料を提供する。
【0033】
本発明は、本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物を用いて、光造形型の3Dプリンタによって作製した義歯床材料を提供する。
【0034】
本発明は、本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物を用いて、光造形型の3Dプリンタによって作製した、歯科用マウスピースを提供する。
【0035】
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物は、分子内にアロファネート基を有することで、分子内水素結合を形成する特徴がある。その結果、ウレタン結合由来の分子間相互作用を抑制し、従来のウレタン(メタ)アクリレートと比べて低粘度化することができる。すなわち、粘度の上昇を抑え、造形性に優れた組成物とすることができる。さらに、(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物が、3Dプリンタ用材料として使用した際に、透明性に優れ、外力からの変形に対する回復力が大きく、耐衝撃性に優れた効果を発揮することを見出した。すなわち、造形物に靭性と透明性を付与することができる。また、この(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物は、(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体と組み合わせることで、さらに粘度の上昇を抑え、造形性に優れた組成物とすることができることを見出した。本明細書において「アロファネート基」とは、構造「-NH-CO-N-CO2-」のことである。分子内にアロファネート基を有することで、粘度の上昇を抑え、造形性に優れた組成物とすることができる。また造形物に靭性と透明性を付与することができる。
【0036】
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物は光重合性組成物中に、30~99重量%含まれてもよく、35~90重量%含まれてもよく、40~80重量%含まれてもよい。(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物が30重量%に満たない場合には、造形物に靭性を付与しにくくなるという問題が生じる場合がある。(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物が99重量%を超える場合には、粘度が高く造形しくいという問題が生じる場合がある。
【0037】
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体は、光重合性組成物中に1~70重量%含まれてもよく、10~65重量%含まれてもよく、20~60重量%含まれてもよい。(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体が1重量%に満たない場合には、粘度が高く造形しにくいという問題が生じる場合がある。(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体が70重量%を超える場合には、靭性を付与することが難しいという問題が生じる場合がある。
【0038】
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物と(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体の合計100重量部に対して(c)光重合開始剤が0.01~5重量部含まれてもよく、0.5~5重量部含まれてもよく、1.0~4重量部含まれてもよい。(c)光重合開始剤が0.01重量部に満たない場合には、組成物が硬化しにくく、造形性に問題が生じる可能性があり、5重量部を超える場合には、造形物の透明性が悪くなる可能性がある。
【0039】
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物は、温度:23℃、回転数:20rpmの条件で回転式レオメーターにより測定した粘度が60000mPa・s以下であることが望ましく、50000mPa・s以下であることがより好ましく、40000mPa・s以下であることが最も好ましい。これにより、重合性組成物の粘度上昇を抑え、造形性に優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0040】
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物は、硬化物のガラス転移点が120℃以下であってもよい。ガラス転移点を適切に選択することで、造形物に最適な靭性を付与することができる。
【0041】
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物は、3つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有することができる。これにより、造形物に適切な靭性と強さを付与することができる。
【0042】
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体はウレタン構造を含まない(メタ)アクリレート系重合性単量体により構成することができる。本明細書において「ウレタン結合」とは、構造「-NH-CO-O-」のことである。ウレタン構造を含まない(メタ)アクリレートを用いることで、重合性組成物の粘度上昇を抑え、造形物に靭性と透明性を付与することができる。
【0043】
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体が、2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体を、少なくとも1種類含むことができる。2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体を含まない場合、造形物が柔らかくなる問題を生じる可能性がある。
【0044】
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体が、1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体を1~25重量部含むことができる。1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体が(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物と(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体の合計100重量部に対して、25重量部を超える場合には、造形物が柔らかくなり、問題を生じる可能性がある。1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体が1重量部未満の場合には、靭性が向上しにくく、柔らかさを付与することが難しいという問題を生じる可能性がある。
【0045】
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体が水酸基及びカルボン酸基からなる群より選択される1以上の反応性基を含有する(メタ)アクリル系重合体を含むことができる。重合性組成物中の分子間相互作用により、粘度を調整し、造形物に靭性と強さを付与することができる。
【0046】
(c)光重合開始剤が、アルキルフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物及びアシルフォスフィンオキサイド系化合物からなる群より選択される1以上とすることができる。重合性組成物の造形性や物性を考慮し、複数の光重合開始剤を組み合わせることができる。
【0047】
光重合性組成物は、温度:23℃、回転数:20rpmの条件で回転式レオメーターにより測定した粘度が10000mPa・s以下とすることができる。粘度が高すぎると、造形性に問題を生じる可能性がある。
【0048】
光重合性組成物は、硬化体のガラス転移点が30~100℃とすることができる。本範囲とすることで、造形物に靭性と強さを付与することができる。
【0049】
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物としては、特に指定するものではなく、公知の方法で合成された材料を使用することができる。より具体的には、ジイソシアネートとアルコールとの反応により形成され、ウレタン基にジイソシアネートを付加することにより形成される。ポリアルコールの水酸基当量分子量とポリイソシアネートの分子量を変更することで、その構造を制御することができる。
【0050】
例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートと32~900の分子量を有する一価~六価アルコール又はこのようなアルコールの混合物を反応させることで形成される。
その他のイソシアネートの例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ウンデカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4’-ビス-(イソシアナトシクロヘキシル)メタン等が挙げられる。
【0051】
また、好適な一価アルコールの例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、メトキシプロパノール及び異性体ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール及びオクタデカノールのような飽和一価アルコールが挙げられる。多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール-1,4、ヘキサンジオール-1,6、ネオペンチルグリコール、2-メチルプロパンジオール-1,3、2,2,4-トリメチルペンタンジオール-1,3、二量体脂肪族アルコール、三量体脂肪族アルコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、異性体ヘキサントリオール、ペンタエリトリトール及びソルビトールが挙げられる。アリルアルコール、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ブテンジオール、及び不飽和合成及び天然脂肪酸の対応する酸及び酸混合物から誘導される単官能アルコールのような不飽和アルコールも好適である。
【0052】
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物の具体例として、アロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂がある。アロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂は、樹脂骨格中に、「-N(COOR)-CO-NH-」の式で表されるアロファネート基からなる構造を含み、さらに「-NH-COOR-O-CO-C(=CH)-R」の式で表される構造を含むものとすることができる。これらの構造を有するアロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂は、アロファネート基含有ポリイソシアネート樹脂と、分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリレート基を有する活性水素化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0053】
ここで、「-N(COOR)-CO-NH-」の式中、Rは、総炭素数1~40の脂肪族、脂環族、又は芳香族炭化水素基を示す。ただし、これら炭化水素基は分岐を有していてもよく、あるいは置換基を有していてもよい。)
【0054】
また、「-NH-COOR-O-CO-C(=CH)-R」の式中、Rは総炭素数1~50までの有機基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。ただし、有機基R2は分岐を有していてもよく、あるいは側鎖を有していてもよい。
【0055】
<アロファネート基含有ポリイソシアネート樹脂>
アロファネート基含有ポリイソシアネート樹脂は、モノアルコールと有機ポリイソシアネートプレポリマーとを特定の条件で反応させることによって製造することができる。
【0056】
<<有機ポリイソシアネートプレポリマーの製造>>
有機ポリイソシアネートプレポリマーとは、イソシアネート基を有するプレポリマーを意味するものであり、通常、イソシアネート化合物と水酸基含有化合物とを反応させることにより製造することができる。
【0057】
有機ポリイソシアネートプレポリマーの製造反応に用いるイソシアネート化合物は、通常、ジイソシアネート化合物、及びポリイソシアネート化合物に分けることができる。ポリイソシアネート化合物とは、イソシアネート基を3個以上有するイソシアネート化合物を意味するものである。
【0058】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、
トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;
1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(H6 XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などの脂環族ジイソシアネート化合物;
1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート、前記2種の化合物の混合物、ω,ω'-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン、前記2種の化合物の混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート化合物;及び
m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4'-トルイジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)などの芳香族ジイソシアネート化合物;
などが挙げられる。
【0059】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、
リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8-トリイソシアネートオクタン、1,6,11-トリイソシアネートウンデカン、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアネートヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアネートメチルオクタンなどの脂肪族ポリイソシアネート化合物;
1,3,5-トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、2-(3-イソシアネートプロピル)-2,5-ジ(イソシアネートメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアネートプロピル)-2,6-ジ(イソシアネートメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアネートプロピル)-2,5-ジ(イソシアネートメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族ポリイソシアネート化合物;
1,3,5-トリイソシアネートメチルベンゼンなどの芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物;及び
トリフェニルメタン-4,4',4''-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、4,4'-ジフェニルメタン-2,2',5,5'-テトライソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート化合物;
などが挙げられる。
【0060】
これらイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、これらイソシアネート化合物の中では、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,3-ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が好ましい。
【0061】
有機ポリイソシアネートプレポリマーの製造反応に用いる上記水酸基含有化合物としては、例えば、
メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、炭素数が5~38のアルカノール、炭素数が3~36のアルケニルアルコール(例えば、2-プロペン-1-オール等)、炭素数が6~8のアルカジエノール(例えば3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オ-ル等)、前記以外の炭素数が9~24の脂肪族不飽和アルコールなどのモノアルコール(一価アルコール);
エチレングリコール、プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3,3-ジメチロールヘプタン、炭素数が7~22のアルカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、炭素数が17~20のアルカン-1,2-ジオール、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールAなどのジアルコール(二価アルコール);
グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-ブタノール、その他の炭素数が8~24の脂肪族トリオールなどのトリアルコール(三価アルコール);
テトラメチロールメタン、D-ソルビトール、キシリトール、D-マンニトール、D-マンニットなどの四価以上のアルコール;
ピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルなどのポリエステルポリオール;
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリエーテルポリオール;及び
ポリヘキサメチレンカーボネートグリコールなどのポリカーボネートポリオール;
などが挙げられる。
【0062】
これら水酸基を有する化合物の中では、モノアルコール、又はジアルコールが好ましい。また、これら水酸基を有する化合物は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0063】
有機ポリイソシアネートプレポリマーは、上記水酸基化合物がモノアルコールの場合は、上記モノアルコールと、該モノアルコールの水酸基当量の2倍当量に対し過剰のイソシアネート基当量となる量の上記イソシアネート化合物とを反応させ、上記水酸基化合物がモノアルコール以外の場合は、上記水酸基含有化合物と、該水酸基含有化合物の水酸基当量に対し過剰のイソシアネート基当量となる量の上記イソシアネート化合物とを反応させ、さらに必要に応じて、未反応のイソシアネート化合物を除去することによって得ることができる。
【0064】
<<アロファネート基含有ポリイソシアネート樹脂の製造≫
アロファネート基含有ポリイソシアネート樹脂は、有機ポリイソシアネートプレポリマーとモノアルコールとを特定の反応条件で反応させることにより得ることができ、該アロファネート基含有ポリイソシアネート樹脂の製造方法は、例えば特開平5-209038号公報、及び特開平8-188566号公報に詳しく開示されている方法を採用することができる。
【0065】
すなわち、アロファネート基含有ポリイソシアネート樹脂は、モノアルコールと、該モノアルコール中の水酸基当量に対し過剰のイソシアネート基当量となる量の上記有機ポリイソシアネートプレポリマーとを、触媒の存在下、アロファネート化反応させ、さらに、未反応の有機ポリイソシアネートプレポリマーを除去することにより得ることができる。
【0066】
これら反応により、アロファネート基を介して、有機ポリイソシアネートプレポリマーに、モノアルコールを結合させることができ、アクリル樹脂やポリエステル樹脂への溶解性を飛躍的に向上させることができる。しかも、モノアルコールに由来する骨格により、上記樹脂を用いて得られる硬化物に柔軟性を付与することができ、可撓性と耐傷性を両立することできる。
【0067】
上記製造過程で使用するモノアルコールは、不飽和結合、エーテル基、エステル基などの極性基を有していてもよい。また、上記モノアルコールは、相溶させたい他樹脂に応じて適宜選択して使用することができる。
【0068】
これらモノアルコールの中でも、炭素数が1~40のモノアルコールが好ましい。上記範囲内の炭素数のモノアルコールを用いることにより、硬化塗膜の可撓性と耐傷性とを両立することができる。
【0069】
これらモノアルコールとしては、
メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール異性体類、アリルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、n-オクタノール、ノナノール、n-デカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、フルフリルアルコール、ベンジルアルコールなどの脂肪族、脂環族、芳香脂肪族アルコール;
上記モノアルコールとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとの付加重合体(2種以上のアルキレンオキサイドのランダム及び/又はブロック共重合体)であるエーテル基含有モノアルコール;
低分子量モノアルコールとε-カプロラクトン、δ-バレロラクトンなどのラクトンとの付加重合体であるエステル基含有モノアルコール;及び
酢酸、プロピオン酸、安息香酸などのモノカルボン酸とアルキレンオキサイドとの付加物であるエステル基含有モノアルコール;
などを例示することができる。
【0070】
また、上述した炭素数1~40のモノアルコールに加えて少量のジアルコール、トリアルコールなどの多官能アルコールを併用することができる。さらに、これら以外にも、チオール類、オキシム類、ラクタム類、フエノール類、β-ジケトン類などの活性水素化合物も、必要に応じて併用することができる。
【0071】
また、有機ポリイソシアネートプレポリマーとモノアルコールとによるアロファネート化反応を行う前に、モノアルコール中に存在する水酸基の一部又は全部と有機ポリイソシアネート化合物中に存在するイソシアネート基の一部とを予備反応して、ウレタン基を生成させておいてもよい。
【0072】
有機ポリイソシアネートプレポリマーとモノアルコールとの使用割合は、有機ポリイソシアネートプレポリマー中に存在するイソシアネート基とモノアルコール中に存在する水酸基とのモル比(〔プレポリマー中のイソシアネート基〕/〔モノアルコール中の水酸基〕)で換算して、通常5~100、好ましくは10~50となる範囲である。イソシアネート基と水酸基とのモル比が前記範囲内にあると、アロファネート基の含有量が適量となり、他樹脂との高い溶解性を有する樹脂を得ることができる。
【0073】
モノアルコールと有機ポリイソシアネート化合物との反応には、溶剤を用いても、また用いなくてもよい。溶剤を用いる場合は、イソシアネート基に対して反応活性をもたない溶剤を用いることが必要である。
【0074】
モノアルコールと有機ポリイソシアネートプレポリマーとの反応に用いる触媒としては、反応の制御が容易であり、最終生成物の着色が少なく、熱安定性に劣る二量体の生成が少ない触媒が用いられる。これら触媒としては、例えば、
テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド及びその有機弱酸塩;
トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウムなどのトリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド及びその有機弱酸塩;
酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸などのアルキルカルボン酸とアルカリ金属とのアルキルカルボン酸塩;
上記アルキルカルボン酸とスズ、亜鉛、鉛等の金属とのアルキルカルボン酸金属塩;
アルミニウムアセチルアセトン、リチウムアセチルアセトンなどのβ-ジケトンと金属とのキレート化合物;
塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素などのフリーデル・クラフツ触媒;
チタンテトラブチレート、トリブチルアンチモン酸化物などの種々の有機金属化合物;及び
ヘキサメチルシラザンなどのアミノシリル基含有化合物;
などを挙げることができる。
【0075】
これら触媒のなかでは、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド及びその有機弱酸塩、トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド及びその有機弱酸塩などのような第4級アンモニウム化合物が好ましく用いられる。
【0076】
触媒は、その種類や反応温度などによって異なるが、通常、有機ポリイソシアネートに対して、0.0001~1重量%の範囲で用いられる。アロファネート化反応は、通常、20~160℃、好ましくは、40~100℃の温度範囲で行なわれる。
【0077】
所望のポリイソシアネート樹脂は、残存NCO量が所望の量に達した時点で、例えば、リン酸、塩化ベンゾイル、モノクロロ酢酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの酸性物質を触媒失活剤として反応混合物に加え、触媒を失活させた後、例えば、薄膜蒸留等の手段によって、未反応の有機ポリイソシアネートプレポリマーを除去することによって得られる。
【0078】
このようにして得られたアロファネート基を有するポリイソシアネート樹脂は、原料であるモノアルコールを適宜選択することによって、他樹脂と任意の割合で混合できる樹脂とすることができ、室温以下においても白濁しない樹脂を提供することが可能となる。
【0079】
なお、上記アロファネート基含有ポリイソシアネート樹脂は、上述した有機ポリイソシアネートプレポリマーの製造に用いるイソシアネート化合物と水酸基を有する化合物であるモノアルコールとをイソシアネート化合物が大過剰となる条件で反応させることによっても得られる。
【0080】
<アロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂の製造>
アロファネート基含有(メタ)アクリレート樹脂は、上記アロファネート基含有ポリイソシアネート樹脂と、分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリレート基を有する活性水素化合物とを反応させることによって得られる。この反応に用いる(メタ)アクリレート基を有する活性水素化合物としては、(メタ)アクリレート基と水酸基とを含有する化合物を好適に用いることができる。
【0081】
(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物としては、特に指定するものではなく、公知の方法で合成された材料を使用することができる。例えば、ヘキサン,1,6-ジイソシアネート,ホモポリマー,2-ヒドロキシエチルアクリレートブロック、ヘキサン,1,6-ジイソシアネート,ホモポリマー,2-ヒドロキシエチルアクリレート,プロピレングリコールモノアクリレートブロック等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してよい。
【0082】
また(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物としては、一般式「RN(COOR)CONHCOR」で表される化合物であって、
式中のRがトリフルオロメチルベンゼン基、Rがメチルベンゼン基、Rがモルホリン基である化合物、
式中のRがトリフルオロメチルベンゼン基、Rがメチルベンゼン基、Rがメトキシ基である化合物、
式中のRがトリフルオロメチルベンゼン基、Rがメチルベンゼン基、Rがヘキサノール基である化合物、
式中のRがトリフルオロメチルベンゼン基、Rがベンゼン基、Rがモルホリン基である化合物、
式中のRがトリフルオロメチルベンゼン基、Rがクロロベンゼン基、Rがデカノール基である化合物、及び、
式中のRがジクロロベンゼン基、Rがベンゼン基、Rがトルイジン基である化合物、
などが挙げられる。
【0083】
3つ以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物の具体例としては、本明細書の実施例で使用される化合物がある。
【0084】
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体で、2つの(メタ)アクリロイルオキシ基及を有する(メタ)アクリル系重合体としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、2,2-ビス[4-(メタクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリルオキシプロパン、等があげられる。これらの中でも、トリエチレングリコールジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0085】
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体で、1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体としては、例えばo-ベンジル(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、p-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、2-(o-フェノキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(m-フェノキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(p-フェノキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、3-(o-フェノキシフェニル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(m-フェノキシフェニル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(p-フェノキシフェニル)プロピル(メタ)アクリレート、4-(o-フェノキフェニル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(m-フェノキフェニル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(p-フェノキフェニル)ブチル(メタ)アクリレート、5-(o-フェノキフェニル)ペンチル(メタ)アクリレート、5-(m-フェノキフェニル)ペンチル(メタ)アクリレート、5-(p-フェノキフェニル)ペンチル(メタ)アクリレート、6-(o-フェノキフェニル)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(m-フェノキフェニル)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(p-フェノキフェニル)ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリエート、tert-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、アルキルメタクリレート、n-ステアリルメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸、グリシジルメタクリレート等があげられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してよい。
【0086】
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体は、ウレタン構造を含まない(メタ)アクリレート系重合性単量体とすることができる。ウレタン構造を含まない(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体の具体例としては、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、イソボニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、2-フェノキシエチルメタクリレート、3-フェノキシベンジルアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、がある。
【0087】
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体で、水酸基及びカルボン酸基からなる群より選択される1以上の反応性基を含有する(メタ)アクリル系重合体の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルコハク酸、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ直鎖アルキル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ分岐アルキル(メタ)アクリレート、二価カルボン酸(フタル酸など)と二価アルコール(プロピレングリコールなど)とから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸などのモノカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸4-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]などのトリカルボン酸などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してよい。
【0088】
(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してよい。
【0089】
(c)光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、α-アシロキシムエステル系化合物、フェニルグリオキシレート系化合物、ベンジル系化合物、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、有機色素系化合物、鉄-フタロシアニン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、アントラキノン系化合物、α-ジケトン類、ケタール類、クマリン類、α-アミノケトン系化合物等が挙げられる。これらのうち、反応性等の観点から、アルキルフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物が好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してよい。
【0090】
光重合開始剤として用いられるアルキルフェノン系化合物を具体的に例示すると、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等が挙げられる。
【0091】
光重合開始剤として用いられるアセトフェノン系化合物を具体的に例示すると、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-エトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-イソプロポキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-i-ブトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0092】
光重合開始剤として用いられるアシルフォスフィンオキサイド系化合物を具体的に例示すると、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ-(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネートなどが挙げられる。ビスアシルフォスフィンオキサイド類としては、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0093】
また、本発明の光造形用組成物には、公知の添加材を配合することができる。色調あるいはペースト性状の調整を目的として、これら添加材としては、色調あるいはペースト性状の調整を目的とする場合、例えば着色剤としての顔料や染料、有機溶剤、増粘剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、蛍光剤、無機フィラー等が挙げられ、この場合の添加剤は組成物の全重量に対し、0.0001~30重量部添加することができる。特に、着色剤、紫外線吸収剤重合禁止剤及び蛍光剤から選択される1以上の添加材を組成物の全重量に対し、0.0001~2重量部含んでいることが好ましい。本発明においては、顔料や染料、有機溶剤、増粘剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、蛍光剤、無機フィラー以外の添加材を含まないものとすることができる。
【0094】
粘度調整などを目的とする場合には、添加材として、アロファネート基を含まない(メタ)アクリル系重合性化合物、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、オレフィン樹脂などを用いることができる。本発明においては、(メタ)アクリル基を有する化合物、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、オレフィン樹脂以外の添加材を含まないものとすることができる。
【0095】
このような(メタ)アクリル基を有する化合物の具体例としては、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロキシエチル)ビスフェノールA、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、これら(メタ)アクリレート化合物の一部をアルキル基、ε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0096】
さらには、フタル酸、アジピン酸などの多塩基酸と、エチレングリコール、ブタンジオール等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸化合物との反応で得られるポリエステルポリ(メタ)アクリレート;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸化合物との反応で得られるエポキシポリ(メタ)アクリレート;ポリシロキサンと(メタ)アクリル酸化合物との反応によって得られるポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート;ポリアミドと(メタ)アクリル酸化合物との反応によって得られるポリアミドポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0097】
さらに本発明においては、有機溶剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、黄変防止剤、染料、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤、防曇剤、はじき防止剤、湿潤剤、分散剤、だれ防止剤、カップリング剤などの各種添加材を含有することができる。本発明においては、本明細書の記載の添加材以外の添加材を含まないものとすることができる。
【0098】
本発明の3Dプリンタ用歯科用光重合性組成物は、例えば歯科用製品、歯科用アライナー材料、義歯床材料及び歯科用マウスピースの作製に用いることができるが、これらに限定されない。
【実施例0099】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0100】
[(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物]
(a1)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物1
1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートと1,3-ブタンジオールからポリイソシアネート樹脂を製造した。具体的には、特開平6-41270号公報の比較例1に開示されている方法で製造した。製造されたポリイソシアネート樹脂は、NCO含有量20.8wt%であった。またNMR分析ではウレタン基はほとんど確認されず、アロファネート基が5mol%、イソシアヌレート基が95mol%であった。次にこのポリイソシアネート樹脂600g、2-ヒドロキシエチルメタアクリレート149g、ペンタエリスリトールトリアクリレート127g、及び、メチルヒドロキノン2gを反応容器に仕込み、空気気流下、80℃で4時間反応させた。これにジブチルスズラウレート0.6gを添加し、更に80℃で4時間反応させることで、(a1)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合体1を得た。また、d6-DMSOを溶媒としてH1-NMR測定より求めたアロファネート基の含有量は、0.2mmol/gであった。さらに、回転式レオメーターを用いて測定した粘度は、9000mPa・sであった。ガラス転移点は47℃であった。得られた樹脂が3官能以上の官能基数であることを確認した。
【0101】
(a2)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物2
1,3-ジイソシアナトメチルシクロヘキサンとイソブタノールからポリイソシアネート樹脂を製造した。具体的には、特開平6-41270号公報の実施例1に開示されている方法で製造した。製造されたポリイソシアネート樹脂は、NCO含有量18.2wt%であった。またNMR分析ではウレタン基はほとんど確認されず、アロファネート基が35mol%、イソシアヌレート基が75mol%であった。次にこのポリイソシアネート樹脂600g、2-ヒドロキシエチルアクリレート241g、ペンタエリスリトールトリアクリレート206g、及び、メチルヒドロキノン2gを反応容器に仕込み、空気気流下、80℃で4時間反応させた。これにジブチルスズラウレート0.6gを添加し、更に80℃で4時間反応させることで、(a2)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合体2を得た。また、d6-DMSOを溶媒としてH1-NMR測定より求めたアロファネート基の含有量は、1.0mmol/gであった。さらに、回転式レオメーターを用いて測定した粘度は、60000mPa・sであった。ガラス転移点は98℃であった。得られた樹脂が3官能以上の官能基数であることを確認した。
【0102】
(a3)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物3
イソホロンジイソシアネートとイソブタノールからポリイソシアネート樹脂を製造した。具体的には、特開平6-41270号公報の実施例4に開示されている方法で製造した。製造されたポリイソシアネート樹脂は、NCO含有量11.6wt%であった。またNMR分析ではウレタン基はほとんど確認されず、アロファネート基が60mol%、イソシアヌレート基が40mol%であった。次にこのポリイソシアネート樹脂600g、2-ヒドロキシエチルアクリレート149g、ペンタエリスリトールトリアクリレート127g、及び、メチルヒドロキノン2gを反応容器に仕込み、空気気流下、80℃で4時間反応させた。これにジブチルスズラウレート0.6gを添加し、更に80℃で4時間反応させることで、(a3)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合体3を得た。また、d6-DMSOを溶媒としてH1-NMR測定より求めたアロファネート基の含有量は、0.5mmol/gであった。さらに、回転式レオメーターを用いて測定した粘度は、32000mPa・sであった。ガラス転移点は120℃であった。得られた樹脂が3官能以上の官能基数であることを確認した。
【0103】
(a4)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物4
ヘキサン,1,6-ジイソシアネート,ホモポリマー,2-ヒドロキシエチルアクリレートブロックを使用した。回転式レオメーターを用いて測定した粘度は、60000mPa・sである。ガラス転移点は98℃、4官能を有するアロファネート基含有アクリレート樹脂である。
【0104】
(a5)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物5
ヘキサン,1,6-ジイソシアネート,ホモポリマー,2-ヒドロキシエチルアクリレート,プロピレングリコールモノアクリレートブロックを使用した。回転式レオメーターを用いて測定した粘度は、30000mPa・sである。ガラス転移点は118℃、3官能を有するアロファネート基含有アクリレート樹脂である。
【0105】
[(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体]
<ウレタン構造を含まない1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体>
(b1)モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルコハク酸
(b2)3-フェノキシベンジルアクリレート
【0106】
<ウレタン構造を含まない2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体>
(b3)トリエチレングリコールジメタクリレ―ト
【0107】
<ウレタン構造を有する2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体>
(b4):ジ(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタン
【0108】
[3つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体]
トリメチロールプロパントリメタクリレート
【0109】
[(c)光重合開始剤]
<アシルフォスフィンオキサイド系化合物>
(c1)モノアシルフォスフィンオキサイド
【0110】
<アセトフェノン系化合物>
(c2)2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン
【0111】
[(d)アロファネート基を含まない(メタ)アクリル系重合性化合物]
(d1)ジ(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジウレタン
【0112】
[光造形用組成物の作製]
実施例表に記載の通り、(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物、(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体、及び、(c)光重合開始剤を含む各成分を容器中に所定量加え、自転・公転ミキサーARV-310(シンキー社製)を用いて混合することで、光重合性組成物を作製した。
【0113】
[粘度測定方法]
回転式レオメーター(Physica MCR301, Anton Paar社製) を用い、温度:23℃、回転数:20rpmの条件で、光重合性組成物の粘度を測定した。
【0114】
[ガラス転移点測定方法]
DMA Q800(TA Instruments社製)を用い、試料長さ20mmに対し、引張モードで測定を行った。金型(幅10mm×厚さ1mm×長さ50mm)に光造形用組成物を注ぎ、光重合器(ソリディライトLED、松風製)を用いて重合硬化したものを試料とした。損失正接(tanδ)のピークトップ温度から、試料のガラス転移点(Tg)を測定した。
【0115】
[造形性]
上記[光造形用組成物の作製]で得られた光重合性組成物を、歯科用3DプリンターDWP-80S(DG SHAPE社製)にて各種試験体の形状に造形した。造形後、造形物をエタノールにて10分間洗浄し、乾燥した。24時間保管後、光重合器(ソリディライトLED、松風製)て10分間の後重合を行った。試験体表面を目視で確認し、造形不良が無いものを良好としてA、僅かな表面荒れ等が生じたが造形できたものを造形可能としてB、造形物表面が著しく荒れたり、造形物が得られにくかった場合をCとして評価した。
【0116】
[耐衝撃性]
金型(幅4mm×厚さ6mm×長さ50mm)に光造形用組成物を注ぎ、光重合器(ソリディライトLED、松風製)を用いて重合硬化し、フライス盤を用いて深さ1.2mm狙いのV字型ノッチを加工し、試験体とした。衝撃試験機IMPACT TESTER(東洋精機製)を用いて、ハンマーのひょう量0.5Jにて、試験体が破折した時の荷重を測定した。測定値をJ/m2の単位に換算し、その平均値を耐衝撃性として算出した。測定値が0.8 J/m2以上のものを耐衝撃性に優れると判断した。
【0117】
[色調]
上記[造形性]の試験方法に準じて、φ15×t1.0mmの板状試験体を作製した。作製後14日間室温にて保管し、試験体とした。分光測色機(CM-3500d:コニカミノルタ)により、白バックでのL*a*b値を測定した。得られたb*値が4以下であるものを黄変が極めて少なく透明性に極めて優れるため良好とし、10以下であるものを、黄変が少なく透明性に優れるため使用可と判断し、10を超えるものを不適合とした。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
[各種組成の詳細]
表中の実施例1~17及び25~27は、耐衝撃性が高く、良好な靭性が認められた。また色調(b*値)も5.5以下の値を示し、透明性に優れることが認められた。
【0122】
表中の実施例18は、(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物が少ないため、耐衝撃性が低く、わずかに靭性が低下した。また、高いガラス転移点を示したが、全体としては良好な物性を示すことがみとめられた。
【0123】
表中の実施例19は、(c)光重合開始剤が少ないため、硬化しにくくなり、わずかに造形性が低下したが、全体としては良好な物性を示すことがみとめられた。
【0124】
表中の実施例20は、(c)光重合開始剤が多いため、色調(b*値)が高くなる傾向を示したが、全体としては良好な物性を示すことがみとめられた。
【0125】
表中の実施例21は、(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物が120℃のガラス転移点を持つ場合である。耐衝撃性が低く、わずかに靭性が低下し、また色調(b*値)が高くなる傾向を示したが、全体としては良好な物性を示すことがみとめられた。
【0126】
表中の実施例22は、(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基及を有する(メタ)アクリル系重合体がウレタン構造を含む場合である。光造形用組成物の粘度が高くなり、わずかに造形性が低下したが、全体としては良好な物性を示すことがみとめられた。
【0127】
表中の実施例23は、(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基及を有する(メタ)アクリル系重合体が1つの(メタ)アクリロイルオキシ基及を有する(メタ)アクリル系重合体のみで構成されており、多量に含まれる場合である。造形物が柔らかくなり、わずかに造形性が低下したが、全体としては良好な物性を示すことがみとめられた。
【0128】
表中の実施例24は、光造形用組成物の粘度が高い場合である。造形性が低下したが、全体としては良好な物性を示すことがみとめられた。
【0129】
比較例1は、(a)アロファネート基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物が含まれない場合である。耐衝撃性が低く、靭性を付与することができなかった。また色調(b*値)が高くなり、透明性が悪く、全体として良好な物性を得ることができなかった。
【0130】
比較例2は、(b)1つ又は2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体が含まれず、多官能の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体のみを含む場合である。耐衝撃性が低く、靭性を付与することができなかった。また色調(b*値)が高くなり、透明性が悪く、全体として良好な物性を得ることができなかった。
【0131】
なお、各実施例は、成分中に0.1重量部の着色剤と紫外線吸収剤をさらに含んだ場合においても、同様の結果が得られることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、光重合性組成物を用いて、3Dプリンタにて歯科用修復物を製造する産業で利用される。