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特開2024-94178加硫ゴム用離型剤、加硫ゴム用離型剤水希釈液、加硫ゴム及び加硫ゴムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094178
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】加硫ゴム用離型剤、加硫ゴム用離型剤水希釈液、加硫ゴム及び加硫ゴムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/60 20060101AFI20240702BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20240702BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20240702BHJP
   B29K 105/24 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
B29C33/60
B29C35/02
C08L71/00 Y
B29K21:00
B29K105:24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210975
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】下原 宗一
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
4J002
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AB03
4F202AG08
4F202AR15
4F202AR20
4F202CA27
4F202CB01
4F202CM43
4F203AA45
4F203AB03
4F203AG08
4F203DA11
4F203DL10
4F203DN24
4J002CH051
4J002GC00
4J002GG00
4J002GM00
(57)【要約】
【課題】 挿入性、離型性及び洗浄性の全てに優れた加硫ゴム用離型剤を提供する。
【解決手段】 前記目的を達成するために、本発明の加硫ゴム用離型剤は、下記成分(A)及び(B)を含むことを特徴とする。

(A)アミンのポリオキシアルキレン付加物であって、重量平均分子量が5000未満である付加物
(B)アルコールのポリオキシアルキレン付加物
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)及び(B)を含むことを特徴とする加硫ゴム用離型剤。

(A)アミンのポリオキシアルキレン付加物であって、重量平均分子量が5000未満である付加物
(B)アルコールのポリオキシアルキレン付加物
【請求項2】
前記成分(A)の質量を前記成分(B)の質量で割った質量比((A)/(B))が0.05~30である請求項1記載の加硫ゴム用離型剤。
【請求項3】
前記成分(B)であるアルコールのオキシアルキレン付加物において、オキシアルキレン基全体の質量を100質量%として、前記オキシアルキレン中のオキシエチレン基の含有率が5~50質量%である、請求項1記載の加硫ゴム用離型剤。
【請求項4】
前記成分(A)であるアミンのオキシアルキレン付加物において、オキシアルキレン基全体の質量を100質量%として、前記オキシアルキレン中のオキシエチレン基の含有率が5~50質量%である、請求項1記載の加硫ゴム用離型剤。
【請求項5】
前記成分(A)であるアミンのオキシアルキレン付加物が、エチレンジアミンポリオキシアルキレン付加物である、請求項1記載の加硫ゴム用離型剤。
【請求項6】
請求項1記載の加硫ゴム用離型剤を水で希釈した加硫ゴム用離型剤水希釈液。
【請求項7】
未加硫ゴムと型との界面に請求項1記載の加硫ゴム用離型剤又は請求項6記載の加硫ゴム用離型剤水希釈液を付着させ、加硫してなることを特徴とする加硫ゴム。
【請求項8】
前記型が、成形型である請求項7記載の加硫ゴム。
【請求項9】
前記加硫ゴムがゴムホースである請求項7記載の加硫ゴム。
【請求項10】
未加硫ゴムと型との界面に請求項1記載の加硫ゴム用離型剤又は請求項6記載の加硫ゴム用離型剤水希釈液が付着した状態で、前記未加硫ゴムを加硫する加硫工程を含むことを特徴とする、加硫ゴムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫ゴム用離型剤、加硫ゴム用離型剤水希釈液、加硫ゴム及び加硫ゴムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車及びその他の分野において、ゴムホースなどの加硫ゴム成形品が多く使用されている。これらの加硫ゴム成形品の製造では、例えば、所定の形状に成形されたマンドレル等の金型に未加硫ゴムを挿入し、加硫成形した後、加硫されたゴム成形品を金型から引き離す。
【0003】
前記金型への未加硫ゴムの挿入及び引き離し作業を容易にするために、加硫ゴム用離型剤が用いられる。例えば、特許文献1では、成形時の挿入性、引抜き性及び洗浄性を同時に満足し、かつゴム製品の寸法安定性に優れる加硫ゴム用離型剤として、炭素数3~10の脂肪族アルコールにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをランダム状に共重合(平均付加モル数30~180)した化合物が提案されている(同文献請求項1、段落0025等)。また、特許文献2では、分子量が2000~4000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーで、オキシエチレン基の全分子中に占める割合が20~40%未満であるホース製造用マンドレル離型剤が提案されている(同文献請求項1、段落0015等)。また、特許文献3では、ジアミンのAO(アルキレンオキサイド)付加物を使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-114472号公報
【特許文献2】特開2004-306409号公報
【特許文献3】特開平7-292236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加硫ゴム用離型剤には、成形型(例えばマンドレル等の金型)への未加硫ゴムの挿入作業の容易さ(挿入性)、加硫ゴム成形品の金型からの引き離し作業の容易さ(離型性)、及び、引き離した加硫ゴム成形品の表面に付着している離型剤の除去の容易さ(洗浄性)が必要である。
【0006】
特許文献1~3に記載の加硫ゴム用離型剤は、多価アルコール類にアルキレンオキシドを付加した高分子活性剤を配合することで性能を発現する。しかし、高分子活性剤は高濃度では高粘性体になる為、洗浄しにくく加硫ゴムの外観を損ねるおそれがある。一方で、洗浄性確保のために多価アルコール類の配合量を抑えると、加硫ゴムへの付着量の減少により離型性が損なわれるおそれがある。そのため、加硫ゴムにおける高い密着防止性能と滑り性を発現しつつ、洗浄性の高い、製品外観を損なうことのない加硫ゴム用離型剤が必要である。
【0007】
そこで、本発明は、挿入性、離型性及び洗浄性の全てに優れた加硫ゴム用離型剤、加硫ゴム用離型剤水希釈液、加硫ゴム及び加硫ゴムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の加硫ゴム用離型剤は、下記成分(A)及び(B)を含むことを特徴とする。

(A)アミンのポリオキシアルキレン付加物であって、重量平均分子量が5000未満である付加物
(B)アルコールのポリオキシアルキレン付加物
【0009】
本発明の加硫ゴム用離型剤水希釈液は、前記本発明の加硫ゴム用離型剤を水で希釈した加硫ゴム用離型剤水希釈液である。
【0010】
本発明の第1の加硫ゴムは、未加硫ゴムと成形型との界面に前記本発明の加硫ゴム用離型剤又は前記本発明の加硫ゴム用離型剤水希釈液を付着させ、加硫してなることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の加硫ゴムは、前記本発明の加硫ゴム用離型剤における前記成分(A)及び前記成分(B)が表面に付着していることを特徴とする。
【0012】
本発明の加硫ゴムの製造方法は、未加硫ゴムと型との界面に前記本発明の加硫ゴム用離型剤又は前記本発明の加硫ゴム用離型剤水希釈液が付着した状態で、前記未加硫ゴムを加硫する加硫工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、挿入性、離型性及び洗浄性の全てに優れた加硫ゴム用離型剤、加硫ゴム用離型剤水希釈液、加硫ゴム及び加硫ゴムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0015】
[1.加硫ゴム用離型剤]
本発明の加硫ゴム用離型剤は、前述のとおり、下記成分(A)及び(B)を含むことを特徴とする。

(A)アミンのポリオキシアルキレン付加物であって、重量平均分子量が5000未満である付加物
(B)アルコールのポリオキシアルキレン付加物
【0016】
[1-1.ポリオキシアルキレン付加物]
本発明の加硫ゴム用離型剤の前記成分(A)及び前記成分(B)は、前述のとおり、ポリオキシアルキレン付加物である。本発明において、ポリオキシアルキレン付加物のポリオキシアルキレンは、特に限定されないが、例えば、前記ポリオキシアルキレンが、炭素数2~4のオキシアルキレン基の重合体であっても良い。また、前記ポリオキシアルキレンは、例えば、オキシエチレン基を含んでいても含んでいなくても良く、例えば、オキシプロピレン基を含んでいても含んでいなくても良い。なお、本発明において、前記ポリオキシアルキレンは、1種類のみのオキシアルキレン基の重合体でも良いし、複数種類のオキシアルキレン基の共重合体でも良い。また、本発明において、アルキル基、アルキレン基等の鎖状の基は、特に断らない限り、直鎖状でも分枝状でも良い。また、本発明において、重合体(例えば、ポリオキシアルキレン)が共重合体である場合は、特に断らない限り、ブロック共重合体でもランダム共重合体でも良い。
【0017】
本発明において、オキシエチレン基(以下「EO」ということがある。)は、下記化学式(1)で表される原子団である。
【化1】
【0018】
本発明において、オキシプロピレン基(以下「PO」ということがある。)は、下記化学式(2)で表される原子団である。
【化2】
【0019】
本発明の加硫ゴム用離型剤の前記成分(A)及び前記成分(B)において、前記ポリオキシアルキレンは、例えば、EOのみからなっていても、POのみからなっていても良いが、加硫ゴム用離型剤の離型性及び洗浄性の両立という観点から、EO及びPOの両方を含むことが好ましく、EO及びPOのみからなることがさらに好ましい。前記ポリオキシアルキレン中、EOの数は、加硫ゴム用離型剤の洗浄性の観点から、オキシアルキレン基の総数の20%以上、30%以上、又は40%以上が好ましい。また、EOの数は、加硫ゴム用離型剤の離型性(潤滑性)の観点から、オキシアルキレン基の総数の80%以下、70%以下、又は60%以下が好ましい。前記ポリオキシアルキレン中、POの数は、加硫ゴム用離型剤の離型性(潤滑性)の観点から、オキシアルキレン基の総数の20%以上、30%以上、又は40%以上が好ましい。また、POの数は、加硫ゴム用離型剤の洗浄性の観点から、オキシアルキレン基の総数の80%以下、70%以下、又は60%以下が好ましい。
【0020】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記成分(A)の質量を前記成分(B)の質量で割った質量比((A)/(B))は、特に限定されないが、0.05~30であることが好ましい。洗浄性の観点からは、前記質量比(A)/(B)が小さすぎないことが好ましい。離型性の観点からは、前記質量比(A)/(B)が大きすぎないことが好ましい。前記質量比(A)/(B)は、例えば、0.05以上、0.1以上、又は0.2以上であってもよく、例えば、15以下、10以下、又は5以下であってもよい。
【0021】
[1-2.アミンのポリオキシアルキレン付加物(A)]
本発明の加硫ゴム用離型剤における前記成分(A)(アミンのポリオキシアルキレン付加物)は、特に限定されないが、例えば、下記化学式(I)で表されるポリオキシアルキレン誘導体であっても良い。
【0022】
【化I】
【0023】
前記化学式(I)中、各Rは、それぞれ、任意の原子又は原子団であり、例えば、水素原子、アルキル基(例えば、炭素数1~18のアルキル基)、又は下記化学式(I-2)で表される基であり、同一でも異なっていても良く、ただし、少なくとも一つのRは、下記化学式(I-2)で表される基である。
【0024】
【化I-2】
【0025】
前記化学式(I-2)中、R41は、アルキレン基(例えば、炭素数2~4のアルキレン基)であり、n41は、正の整数であり、重合度を表し、各R41は、同一でも異なっていても良い。前記化学式(I)中、-R41-O-で表される重合単位(オキシアルキレン)は、例えば、EOでも良いし、POでも良いし、EO及びPOでも良い。また、重合度n41は、例えば、1以上でも良く、100以下でも良い。
【0026】
また、前記アミンのポリオキシアルキレン付加物は、例えば、ポリアミン(ジアミン、トリアミン等)のポリオキシアルキレン付加物であっても良い。前記ジアミンのポリオキシアルキレン付加物は、例えば、下記化学式(II)で表されるポリオキシアルキレン誘導体であっても良い。
【0027】
【化II】
【0028】
前記化学式(II)中、R50は、アルキレン基(例えば、炭素数1~18のアルキル基)であり、各Rは、それぞれ、任意の原子又は原子団であり、例えば、水素原子、アルキル基(例えば、炭素数1~18のアルキル基)、又は下記化学式(II-2)で表される基であり、同一でも異なっていても良く、ただし、少なくとも一つのRは、下記化学式(II-2)で表される基である。
【0029】
【化II-2】
【0030】
前記化学式(II-2)中、R51は、アルキレン基(例えば、炭素数2~4のアルキレン基)であり、n51は、正の整数であり、重合度を表し、各R51は、同一でも異なっていても良い。前記化学式(I)中、-R51-O-で表される重合単位(オキシアルキレン)は、例えば、EOでも良いし、POでも良いし、EO及びPOでも良い。また、重合度n51は、例えば、1以上でも良く、100以下でも良い。
【0031】
前記化学式(II)で表されるポリオキシアルキレン誘導体は、例えば、下記化学式(II-3)で表されるポリオキシアルキレン誘導体であっても良い。
【化II-3】
【0032】
前記化学式(II-3)において、Aは、2~6であり、a1、b1、c1、d1、m1、a2、b2、c2、d2、m2、a3、b3、c3、d3、m3、a4、b4、c4、d4、m4は、それぞれ、正の整数である。
【0033】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記成分(A)であるアミンのポリオキシアルキレン付加物は、1種類のみ用いてもよいし複数種類併用してもよい。
【0034】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記成分(A)であるアミンのポリオキシアルキレン付加物は、例えば、エチレンジアミンポリオキシアルキレン付加物であってもよい。
【0035】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記成分(A)であるアミンのポリオキシアルキレン付加物は、前述のとおり、重量平均分子量が5000未満である。前記成分(A)の重量平均分子量が5000以上であると、離型剤の洗浄性を低下させるという問題があるので、前記成分(A)の重量平均分子量が5000未満である必要がある。前記成分(A)の重量平均分子量は、例えば、4500以下、4000以下、又は3500以下であってもよい。前記成分(A)の重量平均分子量の下限値は特に限定されないが、例えば、500以上、1000以上、1500以上、又は2000以上であってもよい。離型性の点から、前記成分(A)の重量平均分子量が小さすぎないことが好ましい。
【0036】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記成分(A)であるアミンのポリオキシアルキレン付加物の含有率は、特に限定されないが、例えば、前記加硫ゴム用離型剤における水以外の成分の全質量に対し0.5~95質量%であってもよい。前記成分(A)の含有率は、例えば、前記加硫ゴム用離型剤の水以外の成分の全質量に対し93質量%以下、90質量%以下、88質量%以下、又は85質量%以下であってもよく、例えば、1.0質量%以上、5.0質量%以上、10.0質量%以上、又は20.0質量%以上であってもよい。洗浄性の観点からは、前記成分(A)の含有率が低すぎないことが好ましい。離型性の観点からは、前記成分(A)の含有率が高すぎないことが好ましい。
【0037】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記成分(A)であるアミンのポリオキシアルキレン付加物の含有率は、特に限定されないが、例えば、前記加硫ゴム用離型剤の全質量に対し0.5~80質量%であってもよい。前記成分(A)の含有率は、例えば、前記加硫ゴム用離型剤の全質量に対し70質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下であってもよく、例えば、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、又は5.0質量%以上であってもよい。
【0038】
なお、本発明において、物質の重量平均分子量の測定方法は特に限定されないが、前記成分(A)に限らず、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、下記の分析条件で重量平均分子量を測定することができる。

(分析条件)
装置:Waters社製 e2695
検出器:示差屈折率検出器 Waters社製 2414
カラム:Waters社製 HSPgel MB-H、RT2.0、RT4.0の計3本を直列に接続した。
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
温度:40℃
【0039】
前記成分(A)であるアミンのオキシアルキレン付加物において、オキシアルキレン基は、例えば、前述のとおり、オキシエチレン基を含んでいてもよい。その場合、オキシエチレン基の含有率は特に限定されないが、例えば、前記オキシアルキレン基全体の質量を100質量%として、前記オキシアルキレン中のオキシエチレン基の含有率が5~50質量%であることが好ましい。前記成分(A)における前記オキシアルキレン中のオキシエチレン基の含有率は、例えば、前記オキシアルキレン基全体の質量を100質量%として、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下であってもよく、例えば、8質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、又は15質量%以上であってもよい。洗浄性の観点からは、前記オキシエチレン基の含有率が低すぎないことが好ましい。離型性の観点からは、前記オキシエチレン基の含有率が高すぎないことが好ましい。
【0040】
[1-3.アルコールのポリオキシアルキレン付加物(B)]
本発明の加硫ゴム用離型剤における前記成分(B)(アルコールのポリオキシアルキレン付加物)は、特に限定されないが、例えば、1価アルコール(モノオール)のポリオキシアルキレン付加物でも良いし、多価アルコール(例えば、ジオール、トリオール等)のポリオキシアルキレン付加物でも良い。前記1価アルコール(モノオール)としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、ラウリルアルコール、トリデカノールが挙げられる。前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールが挙げられる。
【0041】
前記1価アルコール(モノオール)のポリオキシアルキレン付加物は、例えば、下記化学式(III)で表されるポリオキシアルキレン誘導体であっても良い。
【0042】
【化III】
【0043】
前記化学式(III)中、Rは、アルキル基(例えば、炭素数1~18のアルキル基)であり、R11は、アルキレン基(例えば、炭素数2~4のアルキレン基)であり、n11は、正の整数であり、重合度を表し、各R11は、同一でも異なっていても良い。前記化学式(III)中、-R11-O-で表される重合単位(オキシアルキレン)は、例えば、EOでも良いし、POでも良いし、EO及びPOでも良い。また、重合度n11は、例えば、1以上でも良く、500以下でも良い。
【0044】
前記多価アルコールのうち、2価アルコール(ジオール)のポリオキシアルキレン付加物は、例えば、下記化学式(IV)で表されるポリオキシアルキレン誘導体であっても良い。
【0045】
【化IV】
【0046】
前記化学式(IV)中、Rは、アルキレン基(例えば、炭素数1~4のアルキル基)であり、R21は、アルキレン基(例えば、炭素数2~4のアルキレン基)であり、n21は、正の整数であり、重合度を表し、各R21は、同一でも異なっていても良い。R22は、アルキレン基(例えば、炭素数2~4のアルキレン基)であり、n22は、正の整数であり、重合度を表し、各R22は、同一でも異なっていても良い。前記化学式(IV)中、-R21-O-及びO-R22-で表される重合単位(オキシアルキレン)は、それぞれ、例えば、EOでも良いし、POでも良いし、EO及びPOでも良い。また、重合度n21及びn22は、それぞれ、例えば、1以上でも良く、400以下でも良い。
【0047】
前記多価アルコールのうち、3価アルコール(トリオール)のポリオキシアルキレン付加物は、例えば、下記化学式(V)で表されるポリオキシアルキレン誘導体であっても良い。
【0048】
【化V】
【0049】
前記化学式(V)中、Rは、飽和炭化水素基(例えば、炭素数1~4の飽和炭化水素基)であり、R31は、アルキレン基(例えば、炭素数2~4のアルキレン基)であり、n31は、正の整数であり、重合度を表し、各R31は、同一でも異なっていても良い。R32は、アルキレン基(例えば、炭素数2~4のアルキレン基)であり、n32は、正の整数であり、重合度を表し、各R32は、同一でも異なっていても良い。R33は、アルキレン基(例えば、炭素数2~4のアルキレン基)であり、n33は、正の整数であり、重合度を表し、各R33は、同一でも異なっていても良い。前記化学式(IV)中、-R31-O-、-O-R32-及びO-R33-で表される重合単位(オキシアルキレン)は、それぞれ、例えば、EOでも良いし、POでも良いし、EO及びPOでも良い。また、重合度n31、n32及びn33は、それぞれ、例えば、1以上でも良く、300以下でも良い。
【0050】
前記アルコールのポリオキシアルキレン付加物のうち、モノオールのポリオキシアルキレン付加物としては、例えば、アデカカーポールMH-1000等が挙げられる。ジオールのポリオキシアルキレン付加物としては、例えば、アデカカーポールPH-2000、アデカカーポールPH-800、ブラウノンP-178、エパンU-108、エパン785、レオコン2105E等が挙げられる。トリオールのポリオキシアルキレン付加物としては、例えば、アデカカーポールGH-10、アデカカーポールGH-5、ブラウノンCW-200等が挙げられる。なお、上記「アデカカーポール」を含む名称は、全て、株式会社ADEKAの商品名である。また、上記「ブラウノン」を含む名称は、全て、青木油脂工業株式会社の商品名であり、上記「エパン」を含む名称は、全て、第一工業製薬株式会社の商品名であり、上記「レオコン」を含む名称は、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社の商品名である。
【0051】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記成分(B)であるアルコールのポリオキシアルキレン付加物は、1種類のみ用いてもよいし複数種類併用してもよい。
【0052】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記成分(B)であるアルコールのポリオキシアルキレン付加物の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、30000以下、20000以下、10000以下、8000以下、又は6000以下であってもよい。洗浄性の観点から、前記成分(B)の重量平均分子量が大きすぎないことが好ましい。前記成分(B)の重量平均分子量の下限値は特に限定されないが、例えば、500以上、1000以上、1500以上、又は2000以上であってもよい。離型性の観点から、前記成分(B)の重量平均分子量が小さすぎないことが好ましい。
【0053】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記成分(B)であるアルコールのポリオキシアルキレン付加物の含有率は、特に限定されないが、例えば、前記加硫ゴム用離型剤における水以外の成分の全質量に対し0.5~95質量%であってもよい。前記成分(A)の含有率は、例えば、前記加硫ゴム用離型剤の水以外の成分の全質量に対し93質量%以下、90質量%以下、88質量%以下、又は85質量%以下であってもよく、例えば、1.0質量%以上、5.0質量%以上、10.0質量%以上、又は20.0質量%以上であってもよい。洗浄性の観点からは、前記成分(B)の含有率が低すぎないことが好ましい。離型性の観点からは、前記成分(B)の含有率が高すぎないことが好ましい。
【0054】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記成分(B)であるアルコールのポリオキシアルキレン付加物の含有率は、特に限定されないが、例えば、前記加硫ゴム用離型剤の全質量に対し0.5~80質量%であってもよい。前記成分(A)の含有率は、例えば、前記加硫ゴム用離型剤の全質量に対し40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下であってもよく、例えば、0.8質量%以上、1.0質量%以上、1.2質量%以上、又は1.5質量%以上であってもよい。
【0055】
前記成分(B)であるアルコールのポリオキシアルキレン付加物において、オキシアルキレン基は、例えば、前述のとおり、オキシエチレン基を含んでいてもよい。その場合、オキシエチレン基の含有率は特に限定されないが、例えば、前記オキシアルキレン基全体の質量を100質量%として、前記オキシアルキレン中のオキシエチレン基の含有率が5~50質量%であることが好ましい。前記成分(B)における前記オキシアルキレン中のオキシエチレン基の含有率は、例えば、前記オキシアルキレン基全体の質量を100質量%として、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、又は30質量%以下であってもよく、例えば、8質量%以上、10質量%以上、13質量%以上、又は15質量%以上であってもよい。洗浄性の観点からは、前記オキシエチレン基の含有率が低すぎないことが好ましい。離型性の観点からは、前記オキシエチレン基の含有率が高すぎないことが好ましい。
【0056】
[1-4.任意成分]
本発明の加硫ゴム用離型剤は、前記成分(A)及び前記成分(B)以外の任意成分を、含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0057】
[1-4-1.希釈溶媒]
本発明の加硫ゴム用離型剤は、例えば、希釈溶媒を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記希釈溶媒としては、特に限定されないが、コスト、取扱い易さ、離型剤の耐ソルベントクラック性等の観点から、水が好ましい。水としては、特に限定されないが、例えば、水道水、イオン交換水等が挙げられる。前記水の含有率は、特に限定されないが、例えば、前記加硫ゴム用離型剤の全質量に対し98質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、又は90質量%以下であってもよく、例えば、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、又は40質量%以上であってもよい。洗浄性の観点からは、前記水の含有率が低すぎないことが好ましい。離型性の観点からは、前記水の含有率が高すぎないことが好ましい。
【0058】
本発明の加硫ゴム用離型剤は、前記希釈溶媒として、水以外の希釈溶媒を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記水以外の希釈溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールを、単独で、又は水と併用して用いることもできる。
【0059】
[1-4-2.非イオン界面活性剤]
前記任意成分は、例えば、非イオン界面活性剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。例えば、離型成分として、前記成分(A)及び前記成分(B)以外に、さらに、非イオン界面活性剤を含むことにより、洗浄性がさらに向上するため好ましい。この理由は必ずしも明らかではないが、非イオン界面活性剤を加えることで、高温の加硫工程で希釈溶媒が蒸発した後の離型剤の粘度が適度に低くなるため、短時間で洗浄できる(洗浄性が高い)と考えられる。
【0060】
非イオン界面活性剤は、特に限定されないが、例えば、一般的な加硫ゴム用離型剤に離型成分として含まれている非イオン界面活性剤と同様でも良い。より具体的には、例えば、一般的なマンドレル用離型剤(加硫ゴム用離型剤)に離型成分として含まれている非イオン界面活性剤と同様でも良い。前記非イオン界面活性剤は、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等であっても良い。これらの中で、下記化学式(3)で表される非イオン界面活性剤が好ましい。

RO-(AO)-R (3)
【0061】
前記化学式(3)中、各Rは、それぞれ、水素原子、脂肪族炭化水素基、又はアシル基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。ただし、各Rのうち少なくとも一方は、脂肪族炭化水素基又はアシル基である。前記肪族炭化水素基は、例えば、炭素数が8~18の脂肪族炭化水素基であってもよい。前記アシル基は、例えば、炭素数が8~18のアシル基であってもよい。を示す。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、また、飽和、不飽和のいずれであってもよい。前記アシル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、また、飽和、不飽和のいずれであってもよい。Rの炭素数は、成分(A)の分散性に優れる点から、好ましくは12~16であり、12~14がさらに好ましい。
AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を示し、nはAOの平均付加モル数である。
nは、1~30が好ましく、3~25がより好ましい。具体的には、界面活性能が低下し、成分(A)の分散性が低下することを防止する観点からは、nは、1以上である(すなわち、0ではない)ことが好ましい。また、親水性が高くなりすぎることによる付着性低下を防止する観点からは、nは、30を超えないことが好ましく、25を超えないことがより好ましい。
【0062】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記非イオン界面活性剤は、1種類のみ用いても良いし、複数種類併用しても良い。
【0063】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記非イオン界面活性剤の重量平均分子量は特に限定されないが、例えば、5,000未満であってもよい。前記非イオン界面活性剤の重量平均分子量は、例えば、4,500以下、4,000以下、又は3,500以下であってもよい。洗浄性の観点から、前記非イオン界面活性剤の重量平均分子量が大きすぎないことが好ましい。前記非イオン界面活性剤の重量平均分子量の下限値は特に限定されないが、例えば、500以上、1000以上、1500以上、又は2000以上であってもよい。離型性の観点から、前記非イオン界面活性剤の重量平均分子量が小さすぎないことが好ましい。
【0064】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記非イオン界面活性剤の配合量(含有率)は、低濃度での離型性及び洗浄性の両立の観点から、多すぎないことが好ましい。前記非イオン界面活性剤の配合量(含有率)が多すぎる場合、離型剤がゴムと成形型との界面に保持されにくく、離型性が低くなるおそれがある。本発明の加硫ゴム用離型剤が前記非イオン界面活性剤を含む場合、配合量(含有率)は、例えば、前記加硫ゴム用離型剤における水以外の成分の全質量に対し20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は2質量%以下であってもよく、例えば、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であってもよい。
【0065】
[1-4-3.粘度調整剤]
本発明の加硫ゴム用離型剤は、例えば、前記任意成分として、粘度調整剤を含んでいても良いし、含んでいなくてもよい。例えば、増粘剤を粘度調整剤として加えることで、加硫ゴム用離型剤の粘度を適度に増加させ、離型性をさらに高めることができる。前記増粘剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコールのモノ又はジ脂肪酸エステル、キサンタンガム、タマリンドガム、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、アクリルポリマー等が挙げられる。
【0066】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記粘度調整剤は、1種類のみ用いても良いし、複数種類併用しても良い。
【0067】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記粘度調整剤の配合量(含有率)は、加硫ゴム用離型剤全体の1~15重量%が好ましく、3~10重量%がより好ましい。また、前記粘度調整剤の配合量(含有率)は、加硫ゴム用離型剤から希釈溶媒(例えば水)を除いた成分全体の重量に対し、10~25重量%が好ましい。
【0068】
[1-4-4.溶解補助剤]
本発明の加硫ゴム用離型剤は、例えば、溶解補助剤を含んでいても良い。前記溶解補助剤は、特に限定されないが、例えば、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤等が挙げられる。なお、前記非イオン界面活性剤は、例えば、前述の非イオン界面活性剤を含んでいてもよい。
【0069】
前記陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。前記非イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテルEOPO付加物、アルキルアミンEOPO付加物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型の非イオン界面活性剤等が挙げられる。また、前記非イオン界面活性剤としては、例えば、前述の非イオン界面活性剤として例示した非イオン界面活性剤も挙げられる。また、前記陰イオン界面活性剤としては、例えば、下記(1)~(4)等が挙げられる。

(1)高級脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸塩、アルキル(又はアルケニル)アミドエーテルカルボン酸塩、アシルアミノカルボン酸塩等のカルボン酸型アニオン界面活性剤
(2)高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノ硫酸エステル塩等の硫酸エステル型アニオン界面活性剤
(3)アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のスルホン酸型アニオン界面活性剤
(4)アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノリン酸エステル塩等のリン酸エステル型アニオン界面活性剤
【0070】
アニオン界面活性剤の対イオンは、特に限定されないが、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミンが好ましい。これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
アニオン界面活性剤としては、未加硫ゴムの表面との濡れ性により優れる防着剤懸濁液が得られることから、ジアルキルスルホコハク酸塩(アルキルスルホサクシネート塩)が好ましく、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩がより好ましい。
【0072】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記溶解補助剤は、1種類のみ用いても良いし、複数種類併用しても良い。
【0073】
本発明の加硫ゴム用離型剤において、前記溶解補助剤の配合量(含有率)は、加硫ゴム用離型剤全体の0.3~8重量%が好ましく、0.3~6重量%がより好ましい。また、前記溶解補助剤の配合量(含有率)は、加硫ゴム用離型剤から希釈溶媒(例えば水)を除いた成分全体の重量に対し、3~20重量%が好ましく、3~15重量%がより好ましい。
【0074】
[1-4-5.抗菌剤等]
本発明の加硫ゴム用離型剤は、前記任意成分として、例えば、抗菌剤、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、シリコーン類等の公知の離型性成分、油(鉱物油、植物油、鉱油等)、防腐剤、防錆剤等を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記抗菌剤としては、特に限定されないが、例えば、環状窒素系抗菌剤等が挙げられる。
【0075】
[2.加硫ゴム用離型剤の製造方法]
本発明の加硫ゴム用離型剤の製造方法は特に限定されないが、例えば、各成分を単に混合するのみで良い。例えば、取扱い易さの観点から、各成分を希釈溶媒に溶解又は分散させて本発明の加硫ゴム用離型剤としても良い。このとき、希釈溶媒以外の成分の重量を、例えば、加硫ゴム用離型剤全体の10~80重量%としても良い。前記希釈溶媒としては、特に限定されないが、前述のとおり、コスト、取扱い易さ、離型剤の耐ソルベントクラック性等の観点から、水が好ましい。水としては、特に限定されないが、例えば、前述のとおり、水道水、イオン交換水等が挙げられる。水以外には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールを、単独で、又は水と併用して用いることもできる。
【0076】
前記各成分を希釈溶媒に溶解又は分散させる際に、必要に応じ、加熱、攪拌等を行なっても良い。加熱時の温度は、例えば、20~90℃であっても良い。加熱時間は、例えば、0.2~5時間等であっても良い。
【0077】
[3.加硫ゴム用離型剤の使用方法、加硫ゴムの製造方法等]
本発明の加硫ゴム用離型剤の使用方法は、特に限定されず、例えば、一般的な加硫ゴム用離型剤の使用方法と同様にして使用することができる。具体的には、例えば、前述のとおり、未加硫ゴムと型との界面に前記本発明の加硫ゴム用離型剤又は前記本発明の水希釈液が付着した状態で、前記未加硫ゴムを加硫する。前述のとおり、この加硫工程を含む本発明の加硫ゴムの製造方法により、加硫ゴムを製造することができる。
【0078】
本発明の加硫ゴム用離型剤は、希釈せずにそのまま使用してもよいし、使用する前(未加硫ゴムと型との界面に付着される前)に、あらかじめ、水で希釈して本発明の水希釈液としてもよい。本発明の水希釈液のうち、水以外の成分の重量は、例えば、本発明の水希釈液全体の7~36重量%、又は10~30重量%としても良い。
【0079】
前記型は、例えば成形型であってもよい。前記成形型は、特に限定されないが、例えば金型であり、例えばマンドレル等であっても良い。前記加硫ゴムは、例えば、加硫ゴム成形品であってもよい。前記加硫ゴム成形品は、特に限定されないが、例えば、ゴムホース等であってもよい。未加硫ゴムと型との界面に前記本発明の加硫ゴム用離型剤又は前記本発明の水希釈液を付着させる方法は、特に限定されず、一般的な方法又はそれに準じた方法を用いることができる。具体的には、例えば、離型剤に未加硫ゴム(例えば未加硫ゴムホース)の先端を浸漬させる方法、前記界面に予め離型剤をハケやスプレーなどで塗布する方法等が挙げられる。このとき、例えば、未加硫ゴムと型との一方又は両方に前記本発明の加硫ゴム用離型剤又は前記本発明の水希釈液を付着させる。例えば、型がマンドレルで未加硫ゴムが未加硫ゴムホースである場合、マンドレル外面及びホース内面の一方又は両方に前記本発明の加硫ゴム用離型剤又は前記本発明の水希釈液を、例えば塗布、浸漬等により付着させてもよい。
【0080】
前記未加硫ゴムを加硫する加硫工程は、例えば、前記未加硫ゴムを加硫成形する加硫成形工程であってもよい。前記加硫工程も、特に限定されず、例えば、一般的な未加硫ゴムの加硫工程又は加硫成形工程と同様に行うことができる。具体的には、例えば、蒸気加硫、熱風加硫等を用いることが出来る。なお、未加硫ホースを挿入したマンドレルを加硫缶(装置内に蒸気あるいは熱風を充満させて未加硫ホースを加硫する装置)、蒸気で加硫させる方法を「蒸気加硫」といい、熱風で加硫させる方法を「熱風加硫」という。
【0081】
本発明の加硫ゴムの製造方法で製造できる加硫ゴムの種類は、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)、NBRとポリ塩化ビニルのブレンドポリマー(NBR/PVC)等の加硫成形可能なゴム等が挙げられる。また、本発明の加硫ゴムの製造方法により製造できる加硫ゴムも、特に限定されないが、例えば、ゴムホース、ゴムシール等のゴム成形品が挙げられる。
【0082】
本発明の加硫ゴム用離型剤によれば、例えば、挿入性に優れることで、型(例えばマンドレル)への未加硫ゴム(例えば未加硫ゴムホース)挿入時の変形やしわを防止できる。また、例えば、離型皮膜の滑り性が高く離型性に優れることで、加硫後の引き抜き時の作業性に優れる。また、例えば、洗浄性に優れることで、洗浄工程で簡便に洗い落とすことができて、加硫ゴム製品の外観に優れる。
【0083】
例えば、ホースとマンドレルとの界面が本発明の加硫ゴム用離型剤によって被覆し、マンドレルとゴムホースとの接触を防止することで、加硫時の密着を防止し、かつ抜き差し時の滑り性能を付与できる。これにより、ゴムホース製造工程での作業性を確保し、製品であるゴムホースの変形などの不良を防止できる。
【0084】
本発明では、前記成分(A)(アミンのポリオキシアルキレン付加物であって、重量平均分子量が5000未満である付加物)と前記成分(B)(アルコールのポリオキシアルキレン付加物)とを併用する。前述のとおり、アルコールのポリオキシアルキレン付加物には高濃度で高粘性体になる問題があった。これに対し、本発明の加硫ゴム用離型剤は、前記成分(A)として低分子量であるアミンのポリオキシアルキレン付加物を併用することで、高濃度でも低粘度を保つことができる。本発明の加硫ゴム用離型剤によれば、例えば、高い密着防止性能及び滑り性能を発揮しつつ、加硫ゴム製品から簡便に除去可能な高い洗浄性をも発揮し、かつ、加硫ゴム製品の外観も損なわないことが可能である。本発明の加硫ゴム用離型剤は、例えば、ホールとマンドレルとの密着防止性及び挿入性を保ちながら、容易に洗浄可能なため、製品外観を損なうことがなく、良質なゴムホースを製造・提供することが可能となる。さらに、本発明の加硫ゴム用離型剤は、前述のとおり、ゴムホース及びマンドレルに限定されず、どのようなゴム製品及び型に適用してもよい。
【実施例0085】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0086】
[実施例1~11及び比較例1~4]
下記表1及び表2に記載の各成分を、下記表1及び表2中に記載された質量比で混合することにより、実施例1~11(表1)及び比較例1~4(表2)の加硫ゴム用離型剤を製造した。下記表1及び表2中の各成分の数値は、加硫ゴム用離型剤の全質量を100質量%とした場合における各成分の含有率(質量%)である。また、下記表1及び表2において、(A)は、本発明の前記成分(A)を表し、(B)は、本発明の前記成分(B)を表す。
【0087】
[重量平均分子量の測定方法]
下記表1及び表2において、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、下記の分析条件で測定した。
(分析条件)
装置:Waters社製 e2695
検出器:示差屈折率検出器 Waters社製 2414
カラム:Waters社製 HSPgel MB-H、RT2.0、RT4.0の計3本を直列に接続した。
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
温度:40℃
【0088】
[加硫ゴム用離型剤の特性の評価方法]
実施例及び比較例で製造した各加硫ゴム用離型剤の特性(挿入性、離型性及び洗浄性)を、下記の方法で測定し、評価した。これらの評価結果を、下記表1及び表2に併せて示す。
【0089】
(1)挿入性及び離型性の評価方法
離型剤に浸漬したアクリルゴム製の未加硫ゴムホースを、離型剤を塗布した成形ホース用マンドレルに挿入した。なお、このとき、離型剤は、水で希釈せずにそのまま用いた。この挿入するときの作業性を挿入性とし、下記の基準で5~1の5段階で評価した。

5:挿入時に抵抗なく容易に挿入できる
4:挿入時にわずかに抵抗があるが、容易に挿入できる
3:挿入時に若干の抵抗があるが挿入できる
2:挿入時に大きな抵抗があるが、挿入できる
1:挿入時に抵抗があり挿入できない
【0090】
つぎに、前記マンドレルに挿入した前記未加硫ゴムホースを、150℃で30分間加熱することにより、加硫処理を行い、加硫ゴムホースとした。その後、前記マンドレルから前記加硫ゴムホースを引き抜いた。この引き抜く(離型する)ときの作業性を離型性とし、挿入性と同様に下記の基準で5~1の5段階で評価した。

5:離型時に抵抗なく容易に抜ける
4:離型時にわずかに抵抗があるが、容易に抜ける
3:離型時に若干の抵抗があるが抜ける
2:離型時に大きな抵抗があるが、抜ける
1:離型時に抵抗があり抜けない
【0091】

(2)洗浄性の評価方法
上記挿入性及び離型性の評価で得られた加硫ゴムホースを、40℃の水に2分間浸漬して取り出した。その後、前記加硫ゴムホースの表面を目視で観察し、下記の基準で○△×の3段階で評価した。

○:2分間浸漬後に加硫ゴムホースの表面に離型剤が全く残っていない
△:2分間浸漬後に加硫ゴムホースの表面に離型剤が若干残っている
×:2分間浸漬後も加硫ゴムホースの表面に離型剤が多く残っている
【0092】
【表1】
【0093】
前記表1中の各成分(使用原料)は、下記の成分を用いた。下記表2においても同様である。なお、下記の「EO比」とは、オキシアルキレン基全体を100質量%とした場合のオキシエチレン基の質量割合を示す。

使用原料
(A)成分
A-1:エチレンジアミンポリオキシアルキレン付加物(重量平均分子量4650、EO比40%)、合成品。
A-2:エチレンジアミンポリオキシアルキレン付加物(重量平均分子量3500、EO比20%)、合成品。
A-3:エチレンジアミンポリオキシアルキレン付加物(重量平均分子量3100、EO比10%)、合成品。
A-4:プロパンジアミンポリオキシアルキレン付加物(重量平均分子量3200、EO比10%)、合成品。
A-5:ペンタンジアミンポリオキシアルキレン付加物(重量平均分子量3100、EO比10%)、合成品。

(B)成分
B-1:ポリオキシアルキレンアルコール(重量平均分子量4800、EO比50%)、合成品。
B-2:ポリオキシアルキレングリコール(重量平均分子量3100、EO比10%)、合成品。
B-3:ポリオキシアルキレングリコール(重量平均分子量2600、EO比20%)、合成品。
B-4:ポリオキシアルキレングリセロール(重量平均分子量2600、EO比50%)、合成品。

その他の成分
ジステアリン酸PEGエステル、合成品。
抗菌剤:環状窒素系抗菌剤。
【0094】
【表2】
【0095】
表1に示したとおり、本発明の成分(A)及び(B)を含む実施例1~11の加硫ゴム用離型剤は、挿入性、離型性及び洗浄性の全てに優れていた。これに対し、本発明の前記成分(A)のみを含み前記成分(B)を含まない比較例1~2の加硫ゴム用離型剤は、洗浄性には優れていたが挿入性及び離型性が実施例よりも劣っていた。一方、本発明の前記成分(B)のみを含み前記成分(A)を含まない比較例3~4の加硫ゴム用離型剤は、挿入性及び離型性には優れていたが洗浄性が実施例よりも劣っていた。
【0096】
<付記>
上記実施形態及び実施例の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載し得るが、以下には限定されない。

(付記1)
下記成分(A)及び(B)を含むことを特徴とする加硫ゴム用離型剤。

(A)アミンのポリオキシアルキレン付加物であって、重量平均分子量が5000未満である付加物
(B)アルコールのポリオキシアルキレン付加物
(付記2)
前記成分(A)であるアミンのポリオキシアルキレン付加物の含有率が、前記加硫ゴム用離型剤における水以外の成分の全質量に対し0.5~95質量%である、付記1記載の加硫ゴム用離型剤。
(付記3)
前記成分(A)であるアミンのポリオキシアルキレン付加物の含有率が、前記加硫ゴム用離型剤の全質量に対し0.5~80質量%である、付記1又は2記載の加硫ゴム用離型剤。
(付記4)
前記成分(B)であるアルコールのポリオキシアルキレン付加物の含有率が、前記加硫ゴム用離型剤における水以外の成分の全質量に対し0.5~95質量%である、付記1から3のいずれかに記載の加硫ゴム用離型剤。
(付記5)
前記成分(B)であるアルコールのポリオキシアルキレン付加物の含有率が、前記加硫ゴム用離型剤の全質量に対し0.5~80質量%である、付記1から4のいずれかに記載の加硫ゴム用離型剤。
(付記6)
前記成分(A)の質量を前記成分(B)の質量で割った質量比((A)/(B))が0.05~30である付記1から5のいずれかに記載の加硫ゴム用離型剤。
(付記7)
前記成分(B)であるアルコールのオキシアルキレン付加物において、オキシアルキレン基全体の質量を100質量%として、前記オキシアルキレン中のオキシエチレン基の含有率が5~50質量%である、付記1から6のいずれかに記載の加硫ゴム用離型剤。
(付記8)
前記成分(A)であるアミンのオキシアルキレン付加物において、オキシアルキレン基全体の質量を100質量%として、前記オキシアルキレン中のオキシエチレン基の含有率が5~50質量%である、付記1から7のいずれかに記載の加硫ゴム用離型剤。
(付記9)
前記成分(A)であるアミンのオキシアルキレン付加物が、エチレンジアミンポリオキシアルキレン付加物である、付記1から8のいずれかに記載の加硫ゴム用離型剤。
(付記10)
付記1から9のいずれかに記載の加硫ゴム用離型剤を水で希釈した加硫ゴム用離型剤水希釈液。
(付記11)
未加硫ゴムと型との界面に付記1から9のいずれかに記載の加硫ゴム用離型剤又は付記10記載の加硫ゴム用離型剤水希釈液を付着させ、加硫してなることを特徴とする加硫ゴム。
(付記12)
前記型が、成形型である付記11記載の加硫ゴム。
(付記13)
前記成形型が、マンドレルである付記12記載の加硫ゴム。
(付記14)
付記1から9のいずれかに記載の加硫ゴム用離型剤における前記成分(A)及び前記成分(B)が表面に付着していることを特徴とする加硫ゴム。
(付記15)
前記加硫ゴムがゴムホースである付記11から14のいずれかに記載の加硫ゴム。
(付記16)
未加硫ゴムと型との界面に付記1から9のいずれかに記載の加硫ゴム用離型剤又は付記10記載の加硫ゴム用離型剤水希釈液が付着した状態で、前記未加硫ゴムを加硫する加硫工程を含むことを特徴とする、加硫ゴムの製造方法。
(付記17)
前記型が、成形型である付記16記載の製造方法。
(付記18)
前記成形型が、マンドレルである付記17記載の製造方法。
(付記19)
前記加硫ゴムが、ゴムホースである付記16から18のいずれかに記載の製造方法。