IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ紡織株式会社の特許一覧 ▶ 関東冶金工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-熱処理炉及び熱処理方法 図1
  • 特開-熱処理炉及び熱処理方法 図2A
  • 特開-熱処理炉及び熱処理方法 図2B
  • 特開-熱処理炉及び熱処理方法 図3
  • 特開-熱処理炉及び熱処理方法 図4
  • 特開-熱処理炉及び熱処理方法 図5
  • 特開-熱処理炉及び熱処理方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094187
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】熱処理炉及び熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/04 20060101AFI20240702BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20240702BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20240702BHJP
   F27D 9/00 20060101ALI20240702BHJP
   F27B 9/40 20060101ALN20240702BHJP
   F27D 19/00 20060101ALN20240702BHJP
   H05K 7/20 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
F27B9/04
C21D9/00 S
F27D7/02
F27D9/00
F27B9/40
F27D19/00 A
H05K7/20 H
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210986
(22)【出願日】2022-12-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000157072
【氏名又は名称】関東冶金工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154357
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 愼一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 謙介
(72)【発明者】
【氏名】神田 輝一
(72)【発明者】
【氏名】高原 康輔
(72)【発明者】
【氏名】舟田 宗生
(72)【発明者】
【氏名】大下 浩
【テーマコード(参考)】
4K042
4K050
4K056
4K063
5E322
【Fターム(参考)】
4K042AA25
4K042BA10
4K042CA15
4K042DA03
4K042DB07
4K042DC02
4K042DD05
4K042DE05
4K042DE06
4K042DF01
4K042EA02
4K050AA02
4K050BA02
4K050BA16
4K050CA05
4K050CA12
4K050CC08
4K050CC09
4K050CG04
4K050CG09
4K050EA04
4K050EA05
4K056AA09
4K056BA02
4K056CA02
4K056CA18
4K056FA02
4K063AA05
4K063BA02
4K063BA12
4K063CA03
4K063CA06
4K063DA02
4K063DA06
4K063DA08
4K063DA12
4K063DA34
4K063EA05
5E322BB03
(57)【要約】
【課題】モーターコアなどの被熱処理物の歪取り焼鈍において、被熱処理物の特性又は処理内容に柔軟に対応することを可能にする構成を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る熱処理炉10は、被熱処理物を加熱するように構成された加熱室19と、前記加熱室を通過した前記被熱処理物を冷却するように構成された第1冷却室20、20Aと、前記第1冷却室を通過した前記被熱処理物を冷却するように構成された第2冷却室22と、前記第1冷却室20、20A及び前記第2冷却室22のそれぞれに発熱型変成ガスを炉内雰囲気ガスとして供給するように構成された雰囲気ガス供給装置44であって、発熱型変成ガスである第1ガスG1と、発熱型変成ガスでありかつ前記第1ガスの露点よりも低い露点を有する第2ガスG2とを選択的に供給する雰囲気ガス供給装置44とを備える。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被熱処理物の焼鈍用の熱処理炉であって、
前記被熱処理物を加熱するように構成された加熱室と、
前記加熱室を通過した前記被熱処理物を冷却するように構成された第1冷却室と、
前記被熱処理物の搬送方向において前記第1冷却室の下流側に位置して、前記第1冷却室を通過した前記被熱処理物を冷却するように構成された第2冷却室と、
前記第1冷却室及び前記第2冷却室のそれぞれに発熱型変成ガスを炉内雰囲気ガスとして供給するように構成された雰囲気ガス供給装置であって、発熱型変成ガスである第1ガスと、発熱型変成ガスでありかつ前記第1ガスの露点よりも低い露点を有する第2ガスとを選択的に供給する、雰囲気ガス供給装置と
を備える、熱処理炉。
【請求項2】
前記雰囲気ガス供給装置は、前記被熱処理物にブルーイング処理を施すとき、前記第1冷却室及び前記第2冷却室の少なくともいずれか一方に前記第1ガスを供給するように作動される、
請求項1に記載の熱処理炉。
【請求項3】
前記雰囲気ガス供給装置は、前記被熱処理物に疑似ブルーイング処理を施すとき、前記第1冷却室及び前記第2冷却室の少なくともいずれか一方に前記第2ガスを供給するように作動される、
請求項1に記載の熱処理炉。
【請求項4】
前記第1冷却室は、第1冷媒を用いて冷却する第1冷却状態と、前記第1冷媒を用いずに前記第1冷媒とは異なる第2冷媒を用いて冷却する第2冷却状態とを有するように構成されていて、
前記第2冷却室は、第3冷媒を用いて冷却する第3冷却状態と、前記第3冷媒を用いずに前記第3冷媒とは異なる第4冷媒を用いて冷却する第4冷却状態とを有するように構成されている、
請求項1に記載の熱処理炉。
【請求項5】
前記第3冷媒は前記第1冷媒であり、前記第4冷媒は前記第2冷媒である、
請求項4に記載の熱処理炉。
【請求項6】
前記被熱処理物は、モーターコアである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項7】
被熱処理物の焼鈍における熱処理方法であって、
前記被熱処理物を加熱する工程と、
加熱された前記被熱処理物を、炉内雰囲気ガスとして発熱型変成ガスである第1ガスと、発熱型変成ガスでありかつ前記第1ガスの露点よりも低い露点を有する第2ガスとを選択的に供給して冷却する工程であって、ブルーイング処理を施すとき炉内雰囲気ガスとして前記第1ガスを供給し、疑似ブルーイング処理を施すとき炉内雰囲気ガスとして前記第2ガスを供給する工程と
を含む、熱処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱処理炉に関し、特に電磁鋼板を使用したモーターコアの歪取り焼鈍に用いられ得る熱処理炉及び熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器、例えば、変圧器等の静止器又はモーター等の回転器において、電磁鋼板が使用されている。例えば、モーターの鉄心(コア)は、所定の厚さの無方向性電磁鋼板を、金型を用いてステータ形状又はロータ形状に打ち抜き、積層させることにより製造される。
【0003】
しかしながら、打ち抜き加工では、コア材の端部及びカシメ積層の場合はそのカシメ部を中心に、塑性歪みや弾性歪みといったような所謂歪みが残留する場合がある。そのため、これらの歪みを除去する目的で、モーターコアを、窒素ガス、アルゴンガス又はブタンガスなどを不完全燃焼させ発生させた一酸化炭素などの非酸化性雰囲気ガス中で750℃~850℃程度の温度まで加熱した後に、25℃/時程度の冷却速度での冷却つまり徐冷するという歪取り焼鈍が従来から行われている。この徐冷は、鉄損を改善するべくその冷却時にモーターコアに歪みが生じることを避けるために、及び、その寸法精度悪化を防ぐために、行われる。
【0004】
また、モーターコアは導電体であることから、交流が流れた際に、巻き線が短絡した形で渦電流が流れる。この渦電流は、結果的に熱に変わり渦電流損となるため、出来るほど小さくすることが好ましい。この過電流を減少させるためには、打ち抜き加工後の積層体を互いに絶縁させることが好ましい。絶縁させる方法としては、歪取り焼鈍後にブルーイング処理することで、切断/打ち抜き端面を酸化する方法等が挙げられる(例えば特許文献1参照)。ブルーイング処理は、歪取り焼鈍後に、炉内の露点を引き上げることで、鋼板表面に酸化鉄(II)(FeO)や四酸化三鉄(Fe34)等の酸化被膜を形成させる処理である。このブルーイング処理により、鋼板表面を絶縁処理すると共に、切断/打ち抜き端面の耐食性、防錆性を向上させることができる。
【0005】
一方、本発明者らによる特許文献2は、モーターコアの歪取り焼鈍において、ブルーイング処理を行うことなく、ブルーイング処理を施した際と同等レベルの特性を得ることを可能にする熱処理方法及び熱処理炉を開示する。この熱処理炉での熱処理方法は、炉内雰囲気ガスとして発熱型変成ガスを用いてモーターコアを加熱するつまり焼鈍する焼鈍工程と、この焼鈍工程で得られたモーターコアを、炉内雰囲気ガスとして発熱型変成ガスを用いて、焼鈍工程における温度乃至500℃の温度帯において、1時間当たり600℃を超えた冷却速度で冷却する冷却工程とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-42015号公報
【特許文献2】特許第6944146号公報
【特許文献3】特開2017-166721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、熱処理炉で熱処理される被熱処理物は、様々な寸法を有し得る。例えば薄い被熱処理物と厚い被熱処理物とでは、同じ冷却条件での冷却速度に違いがある。
【0008】
本開示の目的は、モーターコアなどの被熱処理物の歪取り焼鈍において、被熱処理物の特性又は処理内容に柔軟に対応することを可能にする構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示に係る第1様態は、
被熱処理物の焼鈍用の熱処理炉であって、
前記被熱処理物を加熱するように構成された加熱室と、
前記加熱室を通過した前記被熱処理物を冷却するように構成された第1冷却室と、
前記被熱処理物の搬送方向において前記第1冷却室の下流側に位置して、前記第1冷却室を通過した前記被熱処理物を冷却するように構成された第2冷却室と、
前記第1冷却室及び前記第2冷却室のそれぞれに発熱型変成ガスを炉内雰囲気ガスとして供給するように構成された雰囲気ガス供給装置であって、発熱型変成ガスである第1ガスと、発熱型変成ガスでありかつ前記第1ガスの露点よりも低い露点を有する第2ガスとを選択的に供給する、雰囲気ガス供給装置と
を備える、熱処理炉
を提供する。
【0010】
好ましくは、前記雰囲気ガス供給装置は、前記被熱処理物にブルーイング処理を施すとき、前記第1冷却室及び前記第2冷却室の少なくともいずれか一方に前記第1ガスを供給するように作動される。
【0011】
好ましくは、前記雰囲気ガス供給装置は、前記被熱処理物に疑似ブルーイング処理を施すとき、前記第1冷却室及び前記第2冷却室の少なくともいずれか一方に前記第2ガスを供給するように作動される。
【0012】
好ましくは、前記第1冷却室は、第1冷媒を用いて冷却する第1冷却状態と、前記第1冷媒を用いずに前記第1冷媒とは異なる第2冷媒を用いて冷却する第2冷却状態とを有するように構成されていて、前記第2冷却室は、第3冷媒を用いて冷却する第3冷却状態と、前記第3冷媒を用いずに前記第3冷媒とは異なる第4冷媒を用いて冷却する第4冷却状態とを有するように構成されている。
【0013】
好ましくは、前記第3冷媒は前記第1冷媒であり、前記第4冷媒は前記第2冷媒である。
【0014】
好ましくは、前記被熱処理物は、モーターコアである。
【0015】
また、本開示に係る第2態様は、
被熱処理物の焼鈍における熱処理方法であって、
前記被熱処理物を加熱する工程と、
加熱された前記被熱処理物を、炉内雰囲気ガスとして発熱型変成ガスである第1ガスと、発熱型変成ガスでありかつ前記第1ガスの露点よりも低い露点を有する第2ガスとを選択的に供給して冷却する工程であって、ブルーイング処理を施すとき炉内雰囲気ガスとして前記第1ガスを供給し、疑似ブルーイング処理を施すとき炉内雰囲気ガスとして前記第2ガスを供給する工程と
を含む、熱処理方法
を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本開示の上記第1様態及び上記第2態様によれば、モーターコアなどの被熱処理物の歪取り焼鈍において、被熱処理物の特性又は処理内容に柔軟に対応することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の一実施形態に係る熱処理炉の構成を示す概略図である。
図2A図1の熱処理炉の第1冷却室の断面模式図である。
図2B図2Aの第1冷却室の変形例の断面模式図である。
図3】空気と燃料ガスとの混合割合と、それを燃焼したときに発生する変成ガスの 成分割合との関係を示すグラフである。
図4図1の熱処理炉における、雰囲気ガス供給装置からの変成ガスの流れ及びそのための構成を示す構成図である。
図5図1の熱処理炉における熱処理の流れを示すフローチャートである。
図6図1の熱処理炉の冷却室において用いられる炉内雰囲気ガスと冷却機構の選択に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本開示の一実施形態に係る熱処理炉及びその熱処理炉での熱処理方法について、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に、本開示の一実施形態に係る熱処理炉10の概略構成図を示す。熱処理炉10は、バーンオフ炉12と、予熱室14と、加熱室16と、保持室18と、第1冷却室20と、第2冷却室22と、第3冷却室24とを備える。これらは、被熱処理物Wの搬送方向Dに並ぶ。バーンオフ炉12と、予熱室14と、加熱室16と、保持室18と、第1冷却室20と、第2冷却室22と、第3冷却室24とに亘って、搬送装置25ここでは図示しないモーターで駆動されるメッシュベルト26で被熱処理物Wが搬送される搬送路であるトンネル28が連続して延びている。なお、トンネル28は、上流端入口28iと下流側出口28oとのそれぞれで外部に開くが、その途中、例えばバーンオフ炉12と予熱室14との間で外部に開かれてもよい。メッシュベルト26はハースローラーであってもよい。
【0020】
バーンオフ炉12は、例えばバーンオフ室又は脱脂室と称されることもでき、被熱処理物Wの表面に付着している油分等を取り除くために設けられている。ここでは、被熱処理物Wはモーターの鉄心(モーターコア)であるが、モーターコア以外であってもよい。バーンオフ炉12は、加熱手段としてヒーター30を備え、それにより油分等を燃焼又は揮発させようとする。複数のヒーター30がバーンオフ炉12に設けられているが、ヒーター30の数は1つ以上いくつであってもよい。なお、ヒーター30に代えてあるいはそれに加えて、ファンなどがバーンオフ炉12に設けられてもよい。
【0021】
予熱室14と、加熱室16とは、それぞれ、被熱処理物Wを加熱するように構成されている。予熱室14及び加熱室16には、それぞれ、複数のヒーター30が設けられているが、ヒーター30の数は1つ以上いくつであってもよい。保持室18も、被熱処理物Wを加熱するように構成されていて、複数のヒーター30が設けられているが、ヒーター30の数は1つ以上いくつであってもよい。予熱室14と加熱室16とは直接連通し、加熱室16と保持室18とは直接連通している。したがって、予熱室14から保持室18までを1つの加熱室19とみなすこともできる。なお、保持室18は、複数のヒーター30の作動状態を調整することで、被熱処理物Wの等温保持を可能にするが、被熱処理物Wの更なる加熱も可能であり、あるいは、複数のヒーター30の一部又は全てを非作動状態つまりOFFにすることで加熱室16を通過した被熱処理物Wの冷却を行うことも可能である。なお、各ヒーター30は、ON-OFFされるが、設置された部屋14、16、18の温度が対応する目標温度になるように制御されるとよい。
【0022】
第1冷却室20の断面模式図を図2Aに示す。図2Aは、搬送方向Dに直交する仮想面での第1冷却室20の断面図である。第1冷却室20は、加熱室19を通過した被熱処理物W、ここではより具体的には加熱室16及び保持室18を通過した被熱処理物Wを冷却する構成を備える。したがって、第1冷却室20は加熱源を有さない。第1冷却室20は、切換可能な冷却機構を備える。第1冷却室20は、第1冷媒C1を用いて冷却する第1冷却状態と、その第1冷媒C1を用いずに第1冷媒C1とは異なる第2冷媒C2を用いて冷却する第2冷却状態とを有するように構成されている。第1冷却室20は、第1冷媒C1を用いる第1冷却機構32と、第2冷媒C2を用いる第2冷却機構34とを有する。後述する炉内雰囲気ガスが供給される搬送路つまりトンネル28の周囲に、冷却媒体(冷媒)が供給される冷媒通路33が区画形成されている。雰囲気ガスが供給されるトンネル28内を内室とすると、冷媒通路33は外室と称されてもよい。冷媒通路33は、外壁36と、トンネル28の炉隔壁38との間に区画形成されている。図2Aに示すように、トンネル28の炉隔壁38は矩形断面を有し、外壁36は炉隔壁38の外側において矩形断面を有する。外壁36は、トンネル28の炉隔壁38から離れ、トンネル28の炉隔壁38の全周を覆うように設けられているが、炉隔壁38の外側の少なくとも一部に炉隔壁38との間に冷媒通路33を区画形成するように種々の断面形状を有して設けられてもよい。外壁36及び炉隔壁38はそれぞれ、ステンレス鋼製であり、例えばその材料としてSUS316L又はSUS304Lが用いられる。これに限定されず、外壁36及び炉隔壁38は、他の材料製であってもよい。
【0023】
第1冷却機構32は、冷媒通路33内に延びる冷却配管32aと、冷却配管32aに第1冷媒C1を循環させるポンプ32bと、第1冷媒C1を冷却する冷却装置32cとを備える。ポンプ32b及び冷却装置32cは外壁36の外側に設けられ、冷却配管32aの外壁36の外側に延びる箇所に設けられている。冷却配管32aには、第1冷媒C1が循環されずに、流通されてもよい。冷却装置32cは、種々の既知の冷却構成を有し得る。なお、図2Aでは、1本の冷却配管32aを示すが、冷媒通路33内に延びる冷却配管32aの数は、2本以上であってもよい。なお、冷却配管32aは、第1冷媒C1を流す第1冷媒通路に相当する。
【0024】
第2冷却機構34は、冷媒通路33に冷媒入口(以下、第2冷媒入口)34bから第2冷媒C2を入れ、冷媒通路33から冷媒出口(以下、第2冷媒出口)34cを介して第2冷媒C2を送り出すように、冷媒入口34bの上流側に設けられた第2冷媒C2を圧送するためのポンプ40を備える。第2冷媒入口34bは冷媒通路33の鉛直方向下方の部分から第2冷媒C2を入れるように外壁36に設けられ、第2冷媒出口34cは冷媒通路33の鉛直方向上方の部分から第2冷媒C2を出すように外壁36に設けられているが、それらはそれらの場所に設けることに限定されない。例えば、それらの第2冷媒入口34b及び第2冷媒出口34cはともに冷媒通路33の鉛直方向上方側に設けられることも、冷媒通路33の鉛直方向下方側に設けられることも可能である。なお、冷媒通路33は、第2冷媒C2を流す第2冷媒通路に相当する。
【0025】
具体的には、ここでは、第1冷媒C1は水であり、第2冷媒C2は空気である。したがって、第1冷却機構32を作動させる第1冷媒C1を用いた第1冷却状態と、第1冷却機構32を作動させずにつまり第1冷媒C1を用いずに少なくとも第2冷却機構34を作動させる第2冷媒C2を用いた第2冷却状態とは異なる。そして、第1冷却機構32と第2冷却機構34とは無関係に作動され得る。例えば、第1冷却機構32を作動させずに第2冷却機構34を作動させること、第2冷却機構34を作動させずに第1冷却機構32を作動させることが可能である。さらに加えて、第1冷却機構32及び第2冷却機構34を共に作動させること、第1冷却機構32及び第2冷却機構34を共に作動させないことも可能である。なお、第1冷媒C1及び第2冷媒C2は、それぞれ、水又は空気以外であってもよい。
【0026】
更に、第1冷却室20には、冷却ファン42が設けられている。冷却ファン42は、トンネル28の炉隔壁38内に設けられている。冷却ファン42はモーター43で回転駆動され、第1冷却機構32及び第2冷却機構34の作動の如何に関わらず、ここでは作動されるが、作動されなくてもよい。
【0027】
なお、図2Aでは、第1冷却機構32において冷媒通路33内に冷却配管32aを延ばし、そこに第1冷媒C1を流す。しかし、冷媒通路33に第2冷媒C2を直接流してもよい。図2Bに第1冷却室20の変形例の第1冷却室20Aの断面模式図を示す。図2Bに示すように、第1冷却室20Aの第1冷却機構32Aでは、冷媒通路33に、第1冷媒C1の冷媒入口(以下、第1冷媒入口)32dと、第1冷媒C1の冷媒出口(以下、第1冷媒出口)32eとがつながれていて、第1冷媒入口32dの上流側に第1冷媒C1の圧送のためのポンプ32bが設けられている。第1冷却室20Aでは、第1冷媒入口32dは冷媒通路33の鉛直方向下方の部分から第1冷媒C1を入れるように外壁36に設けられ、第1冷媒出口32eは冷媒通路33の鉛直方向上方の部分から第1冷媒C1を出すように外壁36に設けられているが、それらはそれらの場所に設けることに限定されない。例えば、それらの第1冷媒入口32d及び第1冷媒出口32eはともに鉛直方向上方側に設けられることも、鉛直方向下方側に設けられることも可能である。また、第1冷却室20Aの第2冷却機構34Aでは、冷媒通路33に、第2冷媒C2の第2冷媒入口34bと、第2冷媒C2の第2冷媒出口34cとがつながれていて、第2冷媒入口34bの上流側に第2冷媒C2の圧送のためのポンプ40が設けられている。第1冷却室20Aでは、第2冷媒入口34b及び第2冷媒出口34cはともに冷媒通路33の鉛直方向上方の外壁36の部分に設けられているが、それらはそれらの場所に設けることに限定されない。例えば、第2冷媒入口34b及び第2冷媒出口34cはともに冷媒通路33の鉛直方向下方側に設けられることも、いずれか一方を冷媒通路33の鉛直方向下方側に設け、残りの他方を冷媒通路33の鉛直方向上方側に設けることも可能である。この場合も、第1冷媒C1は水であり、第2冷媒C2は空気であるが、これら以外であってもよい。したがって、第1冷媒C1を用いた第1冷却状態と、第2冷媒C2を用いた第2冷却状態とは異なる。そして、第1冷却室20Aでは、第1冷却機構32Aと、第2冷却機構34Aとは同時には作動されない。これは、冷媒通路33が第1冷媒C1を流す冷媒通路でもあり、第2冷媒C2を流す冷媒通路でもあり、第1冷媒C1を流す冷媒通路は第2冷媒C2を流す冷媒通路と共通部分を有する冷媒通路33であるからである。ただし、冷媒通路33には、そこを流れる冷媒を切り替えるために、冷媒通路33の鉛直方向下端に位置する部分に、図示しない冷媒抜き孔つまり水抜き孔が設けられている。なお、第1冷却機構32Aも第2冷却機構34Aも、それぞれ、対応する冷媒C1、C2を循環させるように構成されてもよく、また更なる冷却装置を備えてもよい。更に、第1冷却室20Aにおいても、第1冷却室20(図2A参照)と同じく、モーター43で回転駆動される冷却ファン42が設けられている。この冷却ファン42も、第1冷却機構32A及び第2冷却機構34Aの作動の如何に関わらず、ここでは作動されるが、作動されなくてもよい。
【0028】
第2冷却室22は、第1冷却室20を通過した被熱処理物Wを更に冷却する構成を備える。第2冷却室22は、図2Aに示す第1冷却室20と同じ構成を備え、第1冷却機構32、第2冷却機構34、及び、冷却ファン42を備える。第2冷却室22は、第1冷却室20と同じ構成を備え、前述の変更が同様に可能であるので、ここでの更なる説明は省略する。ただし、第2冷却室22は、第1冷却室20と異なる冷却機構を有してもよい。ここでは、第2冷却室22の第1冷却機構32で用いられる冷媒(第3冷媒)は第1冷媒C1と同じであり、また、第2冷却室22の第2冷却機構34で用いられる冷媒(第4冷媒)は第2冷媒C2と同じである。したがって、第2冷却室22は、第3冷媒つまり第1冷媒C1を用いて冷却する第3冷却状態である第1冷却状態と、その第1冷媒C1を用いずに第1冷媒C1とは異なる第4冷媒つまり第2冷媒C2を用いて冷却する第4冷却状態つまり第2冷却状態とを有するように構成されている。なお、第3冷媒は、第1冷媒C1と異なってもよく、第4冷媒は、第2冷媒C2と異なってもよい。
【0029】
第2冷却室22も、図2Bに示す第1冷却室20Aの上記構成を備えてもよい。第2冷却室22が図2Bに示す第1冷却室20Aの上記構成を備える場合、冷媒通路33は第3冷媒を流す冷媒通路でもあり、第4冷媒を流す冷媒通路でもあり、第3冷媒を流す冷媒通路は第4冷媒を流す冷媒通路と共通部分を有する。ここでは、第3冷媒は第1冷媒C1と同じ水であり、第4冷媒は第2冷媒C2と同じ空気であるが、これら以外であってもよい。つまり、第2冷却室22が図2Bに示す第1冷却室20Aの上記構成を備える場合、第2冷却室22の第1冷却機構32Aで用いられる冷媒(第3冷媒)は第1冷媒C1と同じであり、また、第2冷却室22の第2冷却機構34Aで用いられる冷媒(第4冷媒)は第2冷媒C2と同じであるが、それぞれその対応する冷媒と異なってもよい。
【0030】
第3冷却室24は、第2冷却室22を通過した被熱処理物Wを更に冷却する構成を備える。第3冷却室24は、前述の冷却ファン42を備える。しかし、第3冷却室24は、前述の第1冷却機構32及び第2冷却機構34を有しない。第3冷却室24は、図2Aに基づいて説明した第1冷却機構32及び第2冷却機構34のいずれか一方又は両方を有してもよく、それら以外の冷却機構を更に有してもよい。第3冷却室22も、図2Bに示す第1冷却室20Aの上記構成、具体的には第1冷却機構32A及び第2冷却機構34Aを備えてもよい。なお、第3冷却室24そのものを省くことも可能である。
【0031】
熱処理炉10は、雰囲気ガス供給装置(以下、ガス供給装置)44を備えている。図1に示すように、ガス供給装置44は、発熱型変成ガスを発生するように構成されていて、ここでは燃料ガスと空気とが供給されて変成ガスを発生させる変成炉としての燃焼装置44aを備える。燃焼装置44aに供給される空気と燃料ガスとの混合割合は、所定割合に制御される。燃料ガスとしては、メタン(CH)、プロパン(C)、ブタン(C10)等の炭化水素ガスが用いられるとよい。このようにして生成された変成ガスは、ここでは発熱型変成ガスであるDXガスであり、CO、CO、H、N、HOを含んでいる。図3に、ガス供給装置44の変成炉つまり燃焼装置44aに供給される空気と燃料ガスとの混合割合つまり空燃比と、それを燃焼したときに発生する変成ガスの成分割合との関係を示す。図3に示されるように、DXガスは水分(HO)を含む。このDXガス由来の水分を用いて、本開示の技術の一側面は、ブルーイング処理又は後述する疑似ブルーイング処理を被熱処理物Wに生じさせることに向けられている。
【0032】
燃焼装置44aで生成された変成ガスは、そのまま、又は、必要に応じて冷却及び/又は脱水されて、雰囲気ガスとして熱処理炉10の炉内に供給される。ここでは、こうしたガスは、予熱室14と、加熱室16と、保持室18と、第1冷却室20と、第2冷却室22と、第3冷却室24のそれぞれに供給される。ガス供給装置44の変成炉としての燃焼装置44aは、ここでは、予熱室14に内蔵されるように設けられている。これにより、燃焼装置44aでの排熱が予熱室14の加熱に用いられ、予熱室14の加熱効率を高めることができる。この燃焼装置44aの構成、配置及びその排熱を用いた加熱は、例えば特許文献3に開示されているので、ここでの更なる説明は省略する。
【0033】
熱処理炉10には種々のセンサが設けられる。酸素分圧を測定可能な酸素センサが設けられているとよいが、他にも温度を測定する温度センサなど種々のセンサが設けられ得る。例えば、水素分圧を測定する水素センサ、熱処理炉10内の露点を測定する露点センサ、一酸化炭素分圧を測定可能なCOセンサ、二酸化炭素分圧を測定可能なCOセンサ等が設けられていてもよい。これらのセンサからの出力つまり検出値は制御装置に入力されて、その制御装置は、それらのセンサからの出力に基づいて、上記ヒーター30、ポンプ32b、ポンプ40及びモーター43の少なくとも1つを制御するとよい。例えばバーンオフ炉12と、予熱室14と、加熱室16と、保持室18とのそれぞれに温度センサが設けられて、それぞれの温度センサに基づいて各部屋12、14、16、18のヒーター30の作動が制御されるとよい。また、第1冷却室20と、第2冷却室22と、第3冷却室24とのそれぞれに温度センサが設けられて、それぞれの温度センサに基づいて各部屋20、22、24のポンプ32b、ポンプ40及びモーター43の少なくとも1つが制御されるとよい。なお、制御装置は、処理部(例えばCPU)及び、記憶部つまりメモリ(例えばROM、RAM)を備えて構成され、所謂コンピュータとしての構成を備える。
【0034】
ここで、ガス供給装置44における変成ガスの供給について更に説明する。図1には、ガス供給装置44の雰囲気ガスの供給口50(50a、50b、50c、50d、50e、50f、50g、50h、50i、50j)を示す。第1から第4供給口50a~50dは、予熱室14、加熱室16及び保持室18へ変成ガスを供給するように設けられる。第5供給口50eは保持室18と第1冷却室20との間に設けられ、例えば加熱室19と第1冷却室20との間のガスの混合を供給する変成ガスで防ぐことを可能にするように設けられる。第6供給口50fは、第1冷却室20に変成ガスを供給するように設けられる。第7供給口50gは第1冷却室20と第2冷却室22との間に設けられ、例えば第1冷却室20と第2冷却室22との間のガスの混合を供給する変成ガスで防ぐことを可能にするように設けられる。第8供給口50hは、第2冷却室22に変成ガスを供給するように設けられる。第9供給口50iは第2冷却室22と第3冷却室24との間に設けられ、例えば第2冷却室22と第3冷却室24との間のガスの混合を供給する変成ガスで防ぐことを可能にするように設けられる。第10供給口50jは、例えば第3冷却室24に変成ガスを供給するように設けられる。
【0035】
図4に、ガス供給装置44における燃焼装置44aから各供給口50までの変成ガスの流れを示す。なお、図4に示すガス供給装置44のガス供給路52、及び、ガス供給路52に配置される冷凍脱水機54及び除湿器56については、図1での図示を省略している。
【0036】
燃焼装置44aで発生した変成ガスはガス供給路52の第1支流路52aを流れ、そのまま第6供給口50fを介して第1冷却室20に供給することができ、また、第8供給口50hを介して第2冷却室22に供給することができる。この変成ガスは、例えば露点+40℃前後のDXガスであり、第1ガスである高露点ガスG1である。
【0037】
燃焼装置44aで発生した変成ガスは、冷凍脱水機54を介して水分がある程度除かれ、ガス供給路52の第2支流路52bを流れ、第1供給口50aから第4供給口50dを介して加熱室19につまり、予熱室14、加熱室16及び保持室18のそれぞれに供給することができ、第6供給口50fを介して第1冷却室20に供給することができ、第8供給口50hを介して第2冷却室22に供給することができ、第10供給口50jを介して第3冷却室24に供給することができる。この変成ガスは、高露点ガスG1よりも低い露点を有し、例えば露点5℃前後のDXガスであり、第2ガスである低露点ガスG2である。
【0038】
燃焼装置44aで発生した変成ガスは、冷凍脱水機54に加えて除湿器56を介して更に水分が除かれ、ガス供給路52の第3支流路52cを流れ、第5供給口50e、第7供給口50g、第9供給口50iに供給することができる。この変成ガスは、低露点ガスG2の露点よりも更に低い露点を有し、例えば露点-40℃前後のDXガスであり、極低露点ガスG3である。
【0039】
第1バルブ58が、高露点ガスG1が流れ得る第1支流路52aの第6供給口50fに向けて延びる部分に設けられている。第1支流路52aの上流端は、燃焼装置44aで発生した変成ガスがそのまま流れるガス供給路52の部分、具体的には燃焼装置44aと冷凍脱水機54との間に延びる通路部分につながれている。この第1バルブ58の開度を調整することで、例えば開閉することで、第6供給口50fへの高露点ガスG1の流れを調整することができる。また、第2バルブ59が、高露点ガスG1が流れ得る第1支流路52aの第8供給口50hに向けて延びる部分に設けられている。この第2バルブ59の開度を調整することで、例えば開閉することで、第8供給口50hへの高露点ガスG1の流れを調整することができる。なお、第1バルブ58の開度及び第2バルブ59の開度はここでは手動で調整されるが、前述の制御装置により制御されてもよい。
【0040】
第3バルブ60が、低露点ガスG2が流れる得る第2支流路52bの第6供給口50fに向けて延びる部分に設けられている。第2支流路52bの上流端は、ここでは、冷凍脱水機54につなげられているが、冷凍脱水機54のすぐ下流側の通路部分又は、冷凍脱水機54と除湿器56との間に延びる通路部分につなげられてもよい。この第3バルブ60の開度を調整することで、例えば開閉することで、第6供給口50fへの低露点ガスG2の流れを調整することができる。更に、第4バルブ62が低露点ガスG2が流れる得る第2支流路52bの第8供給口50hに向けて延びる部分に設けられていて、この第4バルブ62の開度を調整することで、例えば開閉することで、第8供給口50hへの低露点ガスG2の流れを調整することができる。なお、第3バルブ60の開度及び第4バルブ62の開度はここでは手動で調整されるが、前述の制御装置により制御されてもよい。
【0041】
更に、第5バルブ64が、冷凍脱水機54と除湿器56との間に設けられている。この第5バルブ64の開度を調整することで、例えば開閉することで、第5供給口50e、第7供給口50g及び第9供給口50iへの極低露点ガスG3の流れを調整することができる。第5バルブ64は、極低露点ガスG3が流れる得る第3支流路52cに設けられてもよい。第3支流路52cは除湿器56の下流側につなげられていて、第5供給口50e、第7供給口50g及び第9供給口50iのそれぞれに向けて延びる。なお、第5バルブ64の開度はここでは手動で調整されるが、前述の制御装置により制御されてもよい。
【0042】
以下では、上記構成の熱処理炉10での熱処理について説明する。
【0043】
まず、ここで、被熱処理物Wについて説明する。既に述べたように、ここでは被熱処理物Wはモーターの鉄心(モーターコア)である。被熱処理物Wの出発原料は、電磁鋼板であり、より具体的な実施例においては、モーターコア等に使用される無方向性電磁鋼板である。その出発原料は、変圧器の鉄心等に使用される方向性電磁鋼鈑のときもあり得る。電磁鋼板は、軟磁性材料であり、磁気特性に優れていること、特に、鉄損が低いことが求められる。
【0044】
無方向性電磁鋼鈑は、一般的に、製銑、製鋼、熱間圧延、冷間圧延と続いた後、連続焼鈍による一次再結晶、結晶粒成長処理が施されて製造される。製造された無方向性電磁鋼板は、所定の打ち抜き加工が行われ、例えばその型内で複数枚積層されて、積層材を形成する。電磁鋼板は、溶接、接着及び/又はカシメ等の方法により積層される。これにより、熱処理炉10で歪取り焼鈍処理が施される被熱処理物としての低鉄損のモーターコアを得ることができる。しかし、被熱処理物は、この方法で製造されるものに限定されない。また、後述するように熱処理されるモーターコアは、このように積層されたものに限定されず、積層されていないものであってもよい。
【0045】
なお、本開示に係る熱処理炉で熱処理される及び/又は本開示に係る熱処理方法を供する電磁鋼板の組成については、特に制限はない。例えば、JIS C 2552で規定される鋼板、JIS C 2553で規定される鋼板、JIS C 2555で規定される鋼板等が好ましく使用することができる。また、使用する電磁鋼鈑の板厚については、特に限定されない。
【0046】
この被熱処理物Wつまりモーターコアは、歪取り焼鈍の後、酸化鉄(II)(FeO)や四酸化三鉄(Fe34)等の酸化被膜をその表面に形成させることが望まれる。このような酸化被膜を形成する処理はブルーイング処理であり、ここでは第1ガスである前述の高露点ガスG1が用いられる。なお、ブルーイング処理とは、焼鈍炉の降温時に水蒸気等の高露点ガスを吹込み、鋼板表面に酸化膜を生成させる処理である。より具体的には、350℃~550℃の処理室で高露点ガスを投入し、被熱処理物の表面に酸化鉄(II)(FeO)や四酸化三鉄(Fe34)等の酸化被膜を生成させる処理をいう。なお、ブルーイング処理は、打ち抜き端面の耐食性や防錆性を上げるため等を目的に施され得る。
【0047】
前述のように高露点ガスG1は水分(HO)を含むので、高露点ガスG1を第1冷却室20及び第2冷却室22の少なくともいずれか一方に供給することで、第1冷却室20及び第2冷却室22の少なくともいずれか一方で、被熱処理物Wにブルーイング処理を施すことができる。ブルーイング処理を施すとき、保持室18又は第1冷却室20は、その加熱又は冷却能力を調整されて、被熱処理物Wをブルーイング処理に適した温度(ブルーイング処理用温度)、例えば500℃に冷却するように作用する。
【0048】
また、被熱処理物Wの歪取り焼鈍の加熱後の冷却中に、第2ガスである低露点ガスG2を供給することで、ブルーイング処理を実施することなく、ブルーイング処理を施した際と同等レベルの特性を得ることができる(特許文献2参照)。この処理を、ここでは「疑似ブルーイング処理」という。疑似ブルーイング処理では、まず、加熱室19で加熱された被熱処理物Wを、第1から第3冷却室20、22、24の少なくともいずれか1つで、例えば第1冷却室20で1時間当たり600℃を超える冷却速度で冷却する。その冷却速度は、1時間当たり600℃を超えかつ1時間当たり700℃以下の範囲の速度(すなわち、600℃/時<冷却速度≦700℃/時)であるとよく、好ましくは、1時間当たり650℃以上700℃以下の範囲の速度である。1時間当たり600℃を超える冷却速度にすることで、従来の冷却速度つまり25℃/時程度の徐冷よりも当該処理に要する時間を短くすることができる。
【0049】
そして、この疑似ブルーイング処理での、冷却室20、22、24におけるその冷却速度でのモーターコアの冷却は、少なくとも、加熱室19での処理(加熱工程又は焼鈍工程)における温度、好ましくは均熱温度(例えば850℃)乃至500℃の温度帯において実行される。ただし、上記冷却速度は、このような温度帯における平均の冷却速度である。なお、600℃/時を超える冷却速度でのモーターコアの冷却は、加熱工程における温度乃至300℃の温度帯で行われてもよい。
【0050】
ただし、第1冷却室20から第3冷却室24での冷却時、特に第1冷却室20及び第2冷却室22の冷却時には、冷却室20、22、24における系内の冷却雰囲気の酸素分圧を、
3/2Fe+O=1/2Feの酸素平衡分圧及び2Fe+O=2FeOの酸素平衡分圧のうち、低い方の酸素平衡分圧以上、
4/3Fe+O=2/3Feの酸素平衡分圧以下、
とすることが好ましい。これは、モーターコアの酸化を好適にコントロールするためであり、酸化鉄の標準生成自由エネルギーを表したエリンガム図から理解できよう。この雰囲気を実現するように、ガス供給装置44の加熱装置44aの作動、加熱装置44aに供給される空気との燃料ガスとの混合割合、及び/又は、加熱装置44aで生成された変成ガスの冷却及び/又は脱水などは制御されるとよい。
【0051】
上記構成を備える熱処理炉10において歪取り焼鈍及び酸化膜生成処理を行う作動例を次に説明する。
【0052】
(第1例)
まず、所定枚数以上の電磁鋼板が積層されたモーターコアである被熱処理物Wを、ブルーイング処理するときについて説明する。このとき、被熱処理物Wは、上記予熱室14で均熱温度(例えば850℃)まで加熱され、その後加熱室16でその温度に維持される。その後、保持室18でのヒーター30は非作動にされているので徐冷が実質的に開始され、第1冷却室20、20Aでも、空気である第2冷媒C2を冷媒通路33に流すように、第1冷却機構32、32Aが作動されずに第2冷却機構34、34Aが作動されて徐冷が継続される。つまり、第1冷却室20では、第1冷媒である水を用いずに第2冷媒である空気を用いて冷却する第2冷却状態が実現される。このとき、第1冷却室20、20A内には極低露点ガスG3が供給されるように、かつ、第1冷却室20、20Aと第2冷却室22との間の雰囲気ガスの混合を抑制するように、第5バルブ64が開かれる。これにより、被熱処理物Wは、第1冷却室20、20Aを通過することで、所定温度(例えば550℃)にまで冷却される。そして、第2冷却室22では、被熱処理物Wにブルーイング処理を施すように、第2バルブ59が開かれて高露点ガスG1が炉内雰囲気ガスとして供給される。このとき、第2冷却室22でも、第1冷却機構32、32Aが作動されずに第2冷却機構34、34Aが作動され、これにより第3冷媒である水を用いずに第4冷媒である空気を用いて冷却する第4冷却状態が実現される。
【0053】
(第2例)
次に、第1例と同じく、所定枚数以上の電磁鋼板が積層されたモーターコアである被熱処理物Wを、疑似ブルーイング処理するときについて説明する。このとき、被熱処理物Wは、上記予熱室14で均熱温度(例えば850℃)まで加熱され、その後加熱室16及び保持室18でその温度に維持される。保持室18を通過した被熱処理物Wは、第1冷却室20、20Aで、水である第1冷媒C1を用いる第1冷却機構32、32Aが作動されているので、第1冷却機構32、32Aを作動させずに第2冷却機構34、34Aを作動させるときの冷却速度よりも速い冷却速度で冷却され、具体的には600℃/時を超える冷却速度で冷却される。なお、第1冷却室20が図2Aに示す上記構成を備えるとき、ここでは、第1冷却機構32の作動の際、第2冷却機構34も作動され、これにより第1冷媒である水を用いて冷却する第1冷却状態が実現される。これは、以下の説明でも同様に適用される。そして、第1冷却室20では、その中に低露点ガスG2が供給されるように、第3バルブ60が開かれる。これにより、被熱処理物Wは、第1冷却室20、20Aを通過することで、疑似ブルーイング処理が施される。そして、第2冷却室22でも、第1冷却室20と同様に、第1冷却機構32、32Aの作動及び、第4バルブ62の開弁による低露点ガスG2の供給が継続され、疑似ブルーイング処理が更に施される。このとき、第2冷却室22では、第3冷媒である水を用いて冷却する第3冷却状態が実現される。
【0054】
(第3例)
まず、所定枚数未満の電磁鋼板が積層された又は1枚の電磁鋼板からなるモーターコアである被熱処理物Wを、ブルーイング処理するときについて説明する。このとき、被熱処理物Wは、上記予熱室14で均熱温度(例えば850℃)まで加熱され、その後加熱室16及び保持室18でその温度に維持される。第1冷却室20、20Aでは、空気である第2冷媒C2を冷媒通路33に流すように、第1冷却機構32、32Aが作動されずに第2冷却機構34、34Aが作動されて徐冷が行われる。第1冷却室20、20Aでは、第1冷媒である水を用いずに第2冷媒である空気を用いて冷却する第2冷却状態が実現される。このとき、第1冷却室20内には極低露点ガスG3が供給され、特に第1冷却室20と第2冷却室22との間の雰囲気ガスの混合を抑制するように、第5バルブ64が開かれる。これにより、被熱処理物Wは、第1冷却室20、20Aを通過することで、所定温度(例えば550℃)にまで冷却される。そして、第2冷却室22では、被熱処理物Wにブルーイング処理を施すように、第2バルブ59が開かれて高露点ガスG1が炉内雰囲気ガスとして供給される。このとき、第2冷却室22でも、第1冷却機構32、32Aが作動されずに第2冷却機構34、34Aが作動される。これにより、第2冷却室22では、第3冷媒である水を用いずに第4冷媒である空気を用いて冷却する第4冷却状態が実現される。
【0055】
(第4例)
次に、第3例と同じく、所定枚数未満の電磁鋼板が積層された又は1枚の電磁鋼板からなるモーターコアである被熱処理物Wを、疑似ブルーイング処理するときについて説明する。このとき、被熱処理物Wは、上記予熱室14で均熱温度(例えば850℃)まで加熱され、その後加熱室16及び保持室18でその温度に維持される。保持室18を通過した被熱処理物Wは、第1冷却室20、20Aで、水である第1冷媒C1を用いる第1冷却機構32、32Aが作動されているので、第1冷却機構32、32Aを作動させずに第2冷却機構34、34Aを作動させるときの冷却速度よりも速い冷却速度で冷却され、具体的には600℃/時を超える冷却速度で冷却される。これにより、第1冷媒である水を用いて冷却する第1冷却状態が実現される。そして、第1冷却室20、20Aでは、その中に低露点ガスG2が供給されるように、第3バルブ60が開かれる。これにより、被熱処理物Wは、第1冷却室20を通過することで、疑似ブルーイング処理が施される。そして、ここでは、第2冷却室22での冷却は停止される、つまり第1冷却機構32、32A及び第2冷却機構34、34Aの全作動は停止される。しかし、第2冷却室22で、第1冷却室20、20Aと同様に、第1冷却機構32の作動及び、第4バルブ62の開弁による低露点ガスG2の供給が継続され、疑似ブルーイング処理が更に施されてもよい。このとき、第2冷却室22では、第3冷媒である水を用いて冷却する第3冷却状態が実現されるとよい。
【0056】
ここで、熱処理炉10における熱処理の流れを図5のフローチャートに示す。上記第1例から第4例においても説明したように、まず、加熱工程つまり焼鈍工程が行われる(ステップS501)。そして、その後に、加熱された被熱処理物Wに対して、その被熱処理物Wの特性又は処理内容に応じて、ブルーイング処理又は疑似ブルーイング処理が行われる(ステップS503)。
【0057】
そして、上記第1例から第4例では、被熱処理物Wであるモーターコアの積層された電磁鋼板の枚数に応じて、保持室18、第1冷却室20、20A及び第2冷却室22の使用態様を調整した。このように柔軟に使用態様を変えることにより、熱処理炉10で熱処理される被熱処理物Wの種類などの幅をより広げることができる。その上で、上記第1例から第4例において具体的に説明したように、加熱された被熱処理物Wに対して、ブルーイング処理又は疑似ブルーイング処理が行われる(図5のステップS503)。ブルーイング処理に関しては、前述のように、まず冷却して、その後にブルーイング処理という流れで行われる。このブルーイング処理又は疑似ブルーイング処理の選択的な実施に関して、図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0058】
図6に、冷却室20、20A、22において用いられる炉内雰囲気ガスと冷却機構の選択に関するフローチャートを示す。まず、ブルーイング処理を行うのか否かが判定される(ステップS601)。より具体的には、このステップS601は、ブルーイング処理を行うのか、疑似ブルーイング処理を行うのかを判別することに相当する。ここでは、ブルーイング処理又は疑似ブルーイング処理が選択的に実施されるからである。そして、ブルーイング処理を行うとき(ステップS601で肯定判定)、ブルーイング処理を行うべく、遅い冷却速度で高露点ガスG1を用いた冷却が更に行われる(ステップS603)。一方、疑似ブルーイング処理を行うとき(ステップS601で否定判定)、疑似ブルーイング処理を行うべく、速い冷却速度で低露点ガスG2を用いて冷却が行われる(ステップS605)。なお、ステップS603での「遅い冷却速度」及びステップS605での「速い冷却速度」は、ステップS603での第2冷却機構34、34Aの作動による冷却速度(第1冷却速度に対応)がステップS605での第1冷却機構32、32Aの作動による600℃/時を超える冷却速度(第2冷却速度に対応)に比べて相対的に遅いということに対応している。
【0059】
上記構成を備える熱処理炉10における特徴的な構成とそれによる効果について以下説明する。ただし、本熱処理炉10が備える特徴的な構成は以下の記載に限定されない。
【0060】
上記熱処理炉10は、被熱処理物Wの焼鈍用の構成を備える。熱処理炉10は、被熱処理物Wを加熱するように構成された加熱室14、16、18、19と、加熱室14、16、18、19を通過した被熱処理物Wを冷却するように構成された第1冷却室20、20Aと、被熱処理物Wの搬送方向Dにおいて第1冷却室20、20Aの下流側に位置して、第1冷却室20、20Aを通過した被熱処理物Wを冷却するように構成された第2冷却室22と、第1冷却室20、20A及び第2冷却室22のそれぞれに発熱型変成ガスを炉内雰囲気ガスとして供給するように構成されたガス供給装置44とを備える。ガス供給装置44は、発熱型変成ガスである第1ガスである高露点ガスG1と、発熱型変成ガスでありかつ高露点ガスG1の露点よりも低い露点を有する第2ガスである低露点ガスG2とを選択的に供給するように構成されている。したがって、加熱室14、16、18、19を通過した被熱処理物Wが第1冷却室20、20A又は第2冷却室22にあるときに、その被熱処理物Wを高露点ガスG1又は低露点ガスG2を炉内雰囲気ガスとして冷却することができ、例えばその過程でブルーイング処理又は疑似ブルーイング処理を被熱処理物Wに施すことができる。したがって、ここではモーターコアである被熱処理物の歪取り焼鈍において、熱処理炉10は、被熱処理物Wの特性又は処理内容に柔軟に対応することが可能になる。
【0061】
例えば、ガス供給装置44は、被熱処理物Wにブルーイング処理を施すとき、第1冷却室20、20A及び第2冷却室22の少なくともいずれか一方に第1ガスである高露点ガスG1が供給されるように作動され得る。あるいは、ガス供給装置44は、被熱処理物Wに疑似ブルーイング処理を施すとき、第1冷却室20、20A及び第2冷却室22の少なくともいずれか一方に第2ガスである低露点ガスG2を供給するように作動され得る。
【0062】
そして、前述のように、第1冷却室20、20Aは、第1冷媒C1を用いて冷却する第1冷却状態と、第1冷媒C1を用いずに第1冷媒C1とは異なる第2冷媒C2を用いて冷却する第2冷却状態とを有するように構成されている。また、第2冷却室22は、第3冷媒ここでは第1冷媒C1を用いて冷却する第3冷却状態ここでは第1冷却状態と、第1冷媒C1を用いずに第1冷媒C1とは異なる第4冷媒ここでは第2冷媒C2を用いて冷却する第4冷却状態ここでは第2冷却状態とを有するように構成されている。したがって、ここではモーターコアである被熱処理物Wの歪取り焼鈍において、熱処理炉10は、上述のように、被熱処理物Wの特性又は処理内容に更に柔軟に対応することが可能になる。
【0063】
また、図2Bに示す変形例の第1冷却室20Aは、切換可能な冷却機構32A、34Aを備え、冷却機構32A、34Aは共通の冷媒通路33を備え、この冷媒通路33は、第1冷媒C1を流す第1冷媒通路でもあり、第2冷媒C2を流す第2冷媒通路でもあった。同様に、第2冷却室22が、第1冷却室20Aと同じ構成を備える場合、第2冷却室22は、切換可能な冷却機構32A、34Aを備え、冷却機構32A、34Aは共通の冷媒通路33を備え、この冷媒通路33は、第3冷媒を流す第3冷媒通路でもあり、第4冷媒を流す第4冷媒通路でもあった。そして、第3冷媒は、第1冷媒C1であり、第4冷媒は、第2冷媒C2であった。このとき、共通の冷媒通路33へのそこを流れる冷媒の切り替えは、冷却機構32A、34Aのポンプ32b、40の一方の作動及び他方の非作動で実質的に行われた。この構成は、図2Aに示す第1冷却室20の冷却構成32、34よりも簡易であり、より安価にその冷却機構32A、34Aでの冷却速度を切り替えることを可能にする。
【0064】
更に、熱処理炉10での被熱処理物Wの焼鈍における熱処理方法は、被熱処理物Wを加熱する工程(図5のステップS501)と、加熱された被熱処理物Wを、炉内雰囲気ガスとして第1ガスである高露点ガスG1と、低露点ガスG2とを選択的に供給して冷却する工程(図5のステップS503)とを含む。この冷却する工程(図5のステップS503)には、ブルーイング処理を施すとき炉内雰囲気ガスとして高露点ガスG1を供給するときと(図6のステップS603)、疑似ブルーイング処理を施すとき炉内雰囲気ガスとして低露点ガスG2を供給するときと(図6のステップS605)を含む。これらのステップS603及びステップS605を実現するように、高露点ガスG1と低露点ガスG2とを選択的に供給する雰囲気ガス供給装置44が備えている。よって、熱処理炉10での被熱処理物Wの歪取り焼鈍の熱処理方法は、被熱処理物Wの特性又は処理内容に柔軟に対応することが可能になる。そして、これは、切り替え可能な冷却機構32、32A、34、34Aを第1冷却室20、20A及び第2冷却室22のそれぞれが備えていることでより顕著になる。
【0065】
以上、本開示の代表的な実施形態等について説明したが、本開示はそれらに限定されず、種々の変更が可能である。本願の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神および範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 熱処理炉
12 バーンオフ炉
14 予熱室
16 加熱室
18 保持室
20、20A 第1冷却室
22 第2冷却室
24 第3冷却室
32 第1冷却機構
34 第2冷却機構
44 雰囲気ガス供給装置
44a 燃焼装置
50、50a、50b、50c、50d、50e、50f、50g、50h、50i、50j 供給口
54 冷凍脱水機
56 除湿器
58 第1バルブ
59 第2バルブ
60 第3バルブ
62 第4バルブ
64 第5バルブ

図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被熱処理物の焼鈍用の熱処理炉であって、
前記被熱処理物を加熱するように構成された加熱室と、
前記加熱室を通過した前記被熱処理物を冷却するように構成された第1冷却室と、
前記被熱処理物の搬送方向において前記第1冷却室の下流側に位置して、前記第1冷却室を通過した前記被熱処理物を冷却するように構成された第2冷却室と、
前記第1冷却室及び前記第2冷却室のそれぞれに発熱型変成ガスを炉内雰囲気ガスとして供給するように構成された雰囲気ガス供給装置であって、発熱型変成ガスである第1ガスと、発熱型変成ガスでありかつ前記第1ガスの露点よりも低い露点を有する第2ガスとを選択的に供給する、雰囲気ガス供給装置と
を備え
前記雰囲気ガス供給装置は、前記被熱処理物にブルーイング処理を施すとき、前記第1冷却室及び前記第2冷却室の少なくともいずれか一方に前記第1ガスを供給するように作動される、
熱処理炉。
【請求項2】
被熱処理物の焼鈍用の熱処理炉であって、
前記被熱処理物を加熱するように構成された加熱室と、
前記加熱室を通過した前記被熱処理物を冷却するように構成された第1冷却室と、
前記被熱処理物の搬送方向において前記第1冷却室の下流側に位置して、前記第1冷却室を通過した前記被熱処理物を冷却するように構成された第2冷却室と、
前記第1冷却室及び前記第2冷却室のそれぞれに発熱型変成ガスを炉内雰囲気ガスとして供給するように構成された雰囲気ガス供給装置であって、発熱型変成ガスである第1ガスと、発熱型変成ガスでありかつ前記第1ガスの露点よりも低い露点を有する第2ガスとを選択的に供給する、雰囲気ガス供給装置と
を備え、
前記雰囲気ガス供給装置は、前記被熱処理物に疑似ブルーイング処理を施すとき、前記第1冷却室及び前記第2冷却室の少なくともいずれか一方に前記第2ガスを供給するように作動される、
熱処理炉。
【請求項3】
前記雰囲気ガス供給装置は、前記被熱処理物に疑似ブルーイング処理を施すとき、前記第1冷却室及び前記第2冷却室の少なくともいずれか一方に前記第2ガスを供給するように作動される、
請求項1に記載の熱処理炉。
【請求項4】
前記第1冷却室は、第1冷媒を用いて冷却する第1冷却状態と、前記第1冷媒を用いずに前記第1冷媒とは異なる第2冷媒を用いて冷却する第2冷却状態とを有するように構成されていて、
前記第2冷却室は、第3冷媒を用いて冷却する第3冷却状態と、前記第3冷媒を用いずに前記第3冷媒とは異なる第4冷媒を用いて冷却する第4冷却状態とを有するように構成されている、
請求項1に記載の熱処理炉。
【請求項5】
前記第1冷却室は、第1冷媒を用いて冷却する第1冷却状態と、前記第1冷媒を用いずに前記第1冷媒とは異なる第2冷媒を用いて冷却する第2冷却状態とを有するように構成されていて、
前記第2冷却室は、第3冷媒を用いて冷却する第3冷却状態と、前記第3冷媒を用いずに前記第3冷媒とは異なる第4冷媒を用いて冷却する第4冷却状態とを有するように構成されている、
請求項2に記載の熱処理炉。
【請求項6】
前記第3冷媒は前記第1冷媒であり、前記第4冷媒は前記第2冷媒である、
請求項4又は5に記載の熱処理炉。
【請求項7】
前記被熱処理物は、モーターコアである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項8】
被熱処理物の焼鈍における熱処理方法であって、
前記被熱処理物を加熱する工程と、
加熱された前記被熱処理物を、炉内雰囲気ガスとして発熱型変成ガスである第1ガスと、発熱型変成ガスでありかつ前記第1ガスの露点よりも低い露点を有する第2ガスとを選択的に供給して冷却する工程であって、ブルーイング処理を施すとき炉内雰囲気ガスとして前記第1ガスを供給し、疑似ブルーイング処理を施すとき炉内雰囲気ガスとして前記第2ガスを供給する工程と
を含む、熱処理方法。