(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094194
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】鉱物採取具
(51)【国際特許分類】
E21C 25/64 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
E21C25/64
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008591
(22)【出願日】2023-01-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2022210684
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513175859
【氏名又は名称】出澤 收
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】出澤 收
【テーマコード(参考)】
2D065
【Fターム(参考)】
2D065DA01
(57)【要約】
【課題】 海岸の波打ち際に打ち寄せられたヒスイの如き鉱物を採取する、長尺状の棒の先端に捕捉部を固定した鉱物採取具であって、採取動作をより簡易ならしめる鉱物採取具の提供。
【解決手段】 海岸の波打ち際において水中の鉱物を岩石と選別して採取するための長尺状の棒の先端に略矩形の金属平板からなる捕捉部を固定した鉱物採取具である。金属平板の矩形両側辺に沿って帯状の側壁を設けられているとともに、側壁の間では金属平板を貫通する複数の貫通孔を設けられている。側壁を上側に向けて金属平板の矩形下端辺から金属平板を斜めに水中に沈めたときに、金属平板へ向けた水流が貫通孔を通過するとともに、貫通孔に鉱物等の一部を侵入させ貫通孔の一部を閉塞させて水流を変化させる。これにより、水流の向きを金属平板に沿って矩形上端辺に向けて変更せしめて鉱物等を金属平板の上で転動させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海岸の波打ち際において水中の鉱物を岩石と選別して採取するための長尺状の棒の先端に略矩形の金属平板からなる捕捉部を固定した鉱物採取具であって、
前記金属平板の矩形両側辺に沿って帯状の側壁を設けられているとともに、前記側壁の間では前記金属平板を貫通する複数の貫通孔を設けられており、
前記側壁を上側に向けて前記金属平板の矩形下端辺から前記金属平板を斜めに前記水中に沈めたときに、前記金属平板へ向けた水流が前記貫通孔を通過するとともに、前記貫通孔に前記鉱物及び/又は岩石の一部を侵入させ前記貫通孔の一部を閉塞させて前記水流を変化させることで前記水流の向きを前記金属平板に沿って矩形上端辺に向けて変更せしめて前記鉱物及び/又は岩石を前記金属平板の上で転動させることを特徴とする鉱物採取具。
【請求項2】
前記貫通孔は前記金属平板の主面上に前記矩形下端辺から前記矩形上端辺の方向に間隔を空けて複数配置されていることを特徴とする請求項1記載の鉱物採取具。
【請求項3】
前記貫通孔は前記金属平板の主面に幅5mm以上の略長方形の開口を有するとともに前記側壁に沿って長辺を配して設けられていることを特徴とする請求項2記載の鉱物採取具。
【請求項4】
前記貫通孔は前記金属平板の主面に径5mm以上の円形の開口を有して設けられていることを特徴とする請求項2記載の鉱物採取具。
【請求項5】
前記金属平板の前記側壁の間を着色し金属光沢を失わせておくことを特徴とする請求項2記載の鉱物採取具。
【請求項6】
前記側壁は前記矩形両側辺の中央部にスリットを有することを特徴とする請求項1乃至5のうちの1つに記載の鉱物採取具。
【請求項7】
前記金属平板の前記矩形上端辺の中央部には前記金属平板の主面と略垂直となるように前記棒を取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至6のうちの1つに記載の鉱物採取具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海岸の波打ち際に打ち寄せられたヒスイの如き鉱物を採取する鉱物採取具に関する。
【背景技術】
【0002】
海岸の波打ち際に打ち寄せられたヒスイの如き鉱物を採取するには、熊手やスコップなどを使用して目的とする鉱物を多くの岩石の中から選別する作業が必要となる。希少な鉱物であれば、選別動作を多数回繰り返さなければならないことはもとより、波打ち際でかがんだまま作業することとなり、かなりの重労働である。そこで、この作業を立ったままなし得るよう、長尺状の棒の先端に料理で使う穴付きお玉やざるなどの「かご部」を固定した、いわゆる「ヒスイ棒」と呼ばれる自作道具が用いられている。これによれば、選別作業を立ったまま効率的に行い得る。
【0003】
ところで、上記したような長尺状の棒の先端にカゴ部を取り付けた道具では、砂や岩石の間にカゴ部を差し込みそして掻き上げようとするときにカゴ部及び棒には相当の力が加わる。また、カゴ部には、岩石を水中から取り上げるときに相当の重量が加わるため、道具には比較的高い剛性が求められる。このような剛性の比較的高い、長尺状の棒にカゴ部を取り付けた道具としては、側溝のゴミをすくい上げる清掃具や農具などが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1では、側溝に溜まっている汚泥やゴミ等の汚物をすくい取って清掃する際に用いられる側溝用清掃具であって、長尺状の金属製パイプからなる握柄体の下端部に、板を曲げ加工して剛性を確保したちりとり状のすくい取体の基部を固定した清掃具を開示している。すくい取体に複数個の通水孔を形成しておくことで、すくい取体内にすくい取られた汚物の水分を通水孔から排水できて、可及的に固形分を回収できるとしている。
【0005】
また、特許文献2では、長尺状の棒の先端に網状のカゴ部を取り付けた側溝の清掃具が開示されている。網状のカゴ部からなる底部材の先端縁や上端縁には、金属製の板材を折り返し形成した刃部が取り付けられていて補強枠を与えられている。これによれば、板状部材に通水孔を設けたカゴ部よりも、排水性に優れる網状のカゴ部でありながら強度を高め得る。
【0006】
更に、特許文献3では、特許文献1に類似する形状の農具であって、長尺状の棒の先端に金属板を折り曲げた側部囲い面を有する鍬部の底板に篩い孔を設けた鍬鋤兼用農具を開示している。鍬部は、強度的な耐久性を高める観点からステンレス製の板材によるとし、土壌を耕す鍬としての用途に適した一定の強度を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-213784号公報
【特許文献2】特開2002-322625号公報
【特許文献3】実用新案登録第3171853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
長尺状の棒の先端にかご部を固定したヒスイ棒によれば、使用者(鉱物採取者)の手元から離れた位置にある鉱物も捕捉できるようになる。そのため、他の鉱物採取者が探索していない海岸の波打ち際よりも若干沖側の水中にある鉱物までを探索できるようになる。一方で、波打ち際よりも水深が数十センチほどあって、水の抵抗が急激に大きくなって、かご部への負荷が大きくなるとともに、水から鉱物を持ち上げる動作もより重労働となった。
【0009】
本発明は以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、海岸の波打ち際に打ち寄せられたヒスイの如き鉱物を採取する、長尺状の棒の先端に捕捉部を固定した鉱物採取具であって、採取動作をより簡易ならしめる鉱物採取具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による鉱物採取具は、海岸の波打ち際において水中の鉱物を岩石と選別して採取するための長尺状の棒の先端に略矩形の金属平板からなる捕捉部を固定した鉱物採取具であって、前記金属平板の矩形両側辺に沿って帯状の側壁を設けられているとともに、前記側壁の間では前記金属平板を貫通する複数の貫通孔を設けられており、前記側壁を上側に向けて前記金属平板の矩形下端辺から前記金属平板を斜めに前記水中に沈めたときに、前記金属平板へ向けた水流が前記貫通孔を通過するとともに、前記貫通孔に前記鉱物及び/又は岩石の一部を侵入させ前記貫通孔の一部を閉塞させて前記水流を変化させることで前記水流の向きを前記金属平板に沿って矩形上端辺に向けて変更せしめて前記鉱物及び/又は岩石を前記金属平板の上で転動させることを特徴とする。
【0011】
かかる特徴によれば、金属平板の上で鉱物及び/又は岩石を転動させることができて、水中からこれらを取り出さずとも、光反射性の高いヒスイの如きを含むかどうかを判別でき、採取動作をより簡易ならしめるのである。
【0012】
上記した発明において、前記金属平板の前記側壁の間を着色し金属光沢を失わせておくことを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、光反射性の高いヒスイの如きを含むかどうかをより容易に判別でき、採取動作をより簡易ならしめるのである。
【0013】
上記した発明において、前記貫通孔は前記金属平板の主面上に前記矩形下端辺から前記矩形上端辺の方向に間隔を空けて複数配置されていることを特徴としてもよい。また、前記貫通孔は前記金属平板の主面に幅5mm以上の略長方形の開口を有するとともに前記側壁に沿って長辺を配して設けられていることを特徴としても良い。また、前記貫通孔は前記金属平板の主面に径5mm以上の円形の開口を有して設けられていることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、金属平板上で鉱物及び/又は岩石を安定して転動させることができて、光反射性の高いヒスイの如きを含むかどうかをより容易に判別でき、採取動作をより簡易ならしめるのである。
【0014】
上記した発明において、前記金属平板の前記側壁の間を着色し金属光沢を失わせておくことを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、光反射性の高いヒスイの如きを含むかどうかをより容易に判別でき、採取動作をより簡易ならしめるのである。
【0015】
上記した発明において、前記側壁は前記矩形両側辺の中央部にスリットを有することを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、水流の変化を大きくでき、金属平板上で鉱物及び/又は岩石を転動させることができるから、採取動作をより簡易ならしめるのである。
【0016】
上記した発明において、前記金属平板の前記矩形上端辺の中央部には前記金属平板の主面と略垂直となるように前記棒を取り付けられていることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、長尺の棒により金属平板の矩形下端辺から金属平板を斜めに水中に沈めることができて、採取動作をより簡易ならしめるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による1実施例における鉱物採取具の斜視図である。
【
図2】本発明による1実施例における鉱物採取具の要部の斜視図である。
【
図3】本発明による1実施例における鉱物採取具の要部の図である。
【
図4】本発明による他の実施例における鉱物採取具の要部の斜視図である。
【
図5】鉱物採取具による鉱物及び/又は岩石の採取時の水流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の代表的な一例としての鉱物採取具について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0019】
ここで、本願発明者らは、ヒスイは光輝性を有すること、ヒスイの硬さは通常の岩石などと比較して高いため角張った形状で存在すること、を経験的に確認し、これを利用し、従来の液体(例えば、海水)と固体(鉱物や岩石)とを篩い分ける網状構造とは類似するものの、これを全く異なる観点から変更して本願発明に至ったものである。
【0020】
図1に示すように、鉱物採取具10は、継ぎ手2aにて伸縮可能な長尺状の棒からなる柄2と、柄2の先端に捕捉部1を固定したものである。捕捉部1は金属平板11からなり、金属平板11の後端にその主面と略垂直な方向に延びるよう上方に柄2を固定している。鉱物採取具10は、海岸の波打ち際に打ち上げられた鉱物、特に、波打ち際の水の中の鉱物を採取するために用いられる。つまり、鉱物採取具10は、使用者(鉱物採取者)によって把持された柄2を斜め下に向けて捕捉部1の先端突起15を水底に突き立てられるようにして用いられる。このとき、捕捉部1では、礫状の鉱物及び/又は岩石(以降、鉱物等と称する)を上に載せて捕捉することができ、特に比較的角張った形状の鉱物等を捕捉することができるが、その詳細については後述する。
【0021】
図2に示すように、捕捉部1は、略矩形の金属平板11を備え、金属平板11の両側辺11a及び11bに沿って前後に延びる帯状の側壁12a~12dを設けている。側壁12a~12dは、例えば、2つの平板部を直交させて断面略L字とするように金属板を折り曲げた仕切り板を用いて形成することができる。仕切り板の一方の平板部の主面を金属平板11の上方の面に当接させるように固定して、他方の平板部を側壁12aとして金属平板11の上方に向けて立設させるのである。その他、金属平板11の端部を折り曲げて一体成型としてもよい。なお、側壁12aと12b、側壁12cと12dとの間はそれぞれ離間しており、矩形の金属平板11の両側辺11a及び11bのそれぞれの中央部にスリット13を有するように配置される。
【0022】
捕捉部1は、金属平板11の先端にさらに先端に向かって延びる複数の先端突起15を備える。先端突起15は、捕捉部1の先端を水底に突き立てたときに鉱物等の間に入りやすく、側壁12a及び12bと、側壁12c及び12dとの間に鉱物等の移動を促すことができる。これにより、金属平板11の先端を鉱物等の間に導くこともできる。なお、図面では、2つの先端突起15を備えているが、3つ以上としてもよい。
【0023】
金属平板11は、側壁12a及び12bと、側壁12c及び12dとの間において、その矩形下端辺から矩形上端辺の方向に間隔を空けて複数の貫通孔14を設けられている。貫通孔14は、目的とする鉱物等を捕捉できるよう、大きさの上限が定められるととともに、後述する、鉱物等による貫通孔14の閉塞によって水流を変化させ得るよう、貫通孔の形状や配置、開口率や数を選択される。貫通孔14は、その配置を金属平板11の主面上の千鳥格子位置に配置してもよく(
図3(a))、格子位置に配置してもよい(
図3(b))。1の貫通孔14に配置された鉱物等、特に角張った鉱物等は金属平板11の上の流れにより、該1つの貫通孔14から浮き上がるが、他の貫通孔14が流れに沿って配置されていることにより、該他の貫通孔14に移動して捕捉されやすい。また、貫通孔14の長辺端部に突起を設け、鉱物等を捕捉されやすくしておくことも好ましい。そして、長手方向に並ぶ貫通孔14の中心線を横1列ごとに貫通孔14の長手半分ほどずらした千鳥格子位置とした場合、格子位置に比べて開口部面積が減る一方で、水流の変化がより起こりやすくなり鉱物等の金属平板11上での転動も生じやすくなる。
【0024】
なお、鉱物等を採取する場所によって鉱物等の標準的な大きさや、水流、そして、使用者によって一度に捕捉する鉱物等の数の傾向が異なり、更に、使用者の身長などで柄2の角度が変化しその結果として金属平板11の垂直面からの角度も異なる。そのため、貫通孔14の閉塞及び開放の繰り返しのしやすさが変化するため、一概に、貫通孔14の大きさなどは決定できないが、概ね、以下のようなものである。
【0025】
例えば、貫通孔14は、金属平板11の主面に略長方形(なお、角部に面取りRを設けても良い。)の開口を有する、断面略長方形であり、側壁12a~12dに沿って長辺を配して複数を設けられている。この場合、貫通孔14の幅(短辺長さ、
図3(a)のW)は3mm以上10mm以下、長さ(長辺長さ、
図3(a)のL)を10mm以上20mm以下、特に幅を角張った鉱物等の一部を収容できるように5mm以上とすることが好ましい。金属平板11の面積に対する貫通孔14の面積比である開口率は任意だが、小さすぎると金属平板11が水流によって大きな抵抗を受けて、使用者の柄2を握る力が必要になる。一方、鉱物等によって貫通孔14を閉塞しやすく、適度な水流であれば、その変化による鉱物等の回転が比較的容易に得られる。逆に、開口率が大きすぎると、鉱物等による貫通孔14の閉塞が十分に起きず、水流の変化が少なくなるから、回転も得られない。そこで概ね、開口率を20~70%、好ましくは20~50%程度とする。
【0026】
また、
図4に示すように、貫通孔14は、金属平板11の主面に略円形の開口を有する、断面略円形の孔としてもよく、その直径を3mm以上10mm以下、特に幅を角張った鉱物等の一部を収容できるように5mm以上とする。但し、採取すべき鉱物等の大きさが揃っている場合には好ましいが、鉱物等の大きさが不揃いの場合にあっては、断面略長方形の貫通孔14の方が鉱物等を転動させながらも安定して捕捉し得る。なお、この例においては、貫通孔14は、その配置を金属平板11の主面上の格子位置としているが、千鳥格子位置でもよい。また、貫通孔14の長手方向端部の短辺に沿ってフランジ状にわずかに1mm程度凸壁を設けることで、鉱物等の捕捉をより良好になし得る。かかるフランジ状部は貫通孔14の加工時のバリであり得て、貫通孔14の周縁全体に形成されるバリの一部のみを残して他を除去して形成し得る。
【0027】
側壁12a~12dは、金属平板11の面上から側部へ鉱物等を散逸させることを防止するとともに、側壁12a~12dの延びる方向へ沿った水流を形成させ得るように設けられる。ここで、側壁12aと12b、側壁12cと12dをそれぞれ独立した側壁として設けてそれぞれの間に間隙を与えることで、上記した水流により鉱物等が一気に金属平板11の上から流れ出してしまうことを防止し、金属平板11の上での鉱物等の回転をより得られるようになる。
【0028】
さらに、側壁12a~12dのそれぞれにも側部貫通孔16を備えていてもよい。側壁12a~12dは、鉱物及び/又は岩石の側方への移動を制限して捕捉部1からの脱落を抑制しつつ、スリット13及び側部貫通孔16によって金属平板11上の水を側方へ流すことができる。
【0029】
鉱物採取具10の使用方法について、
図5を用いて説明する。なお、説明の都合上、同図において側壁12a~12dは省略する。
【0030】
図5(a)に示すように、まず、捕捉部1は、その先端突起15を波打ち際の水底に突き当てられるように配置される。このとき、使用者は柄2を握り、引き波の方向、つまり海岸から海に向かう方向を前方として立っている。そして、捕捉部1を前方(紙面左方向)斜め下に位置させる。つまり、側壁12a~12d(
図2又は
図3参照)を上側に向けて、金属平板11の矩形下端辺から金属平板11を斜めにして水中に沈める。このとき、継ぎ手2aにて柄2の長さを変化させることで、金属平板11の斜め角度を変化させることができて、作業が楽に行い得る。
【0031】
そして、引き波が生じると水Wが捕捉部1に対して前方へ移動することになる。このとき、金属平板11に向けた水流は、貫通孔14(
図2参照)を前方へ向けて通過する。すると、水底の鉱物等Mは水流とともに側壁12a及び12bと、側壁12c及び12dとの間(
図1及び
図2参照)かつ金属平板11の上に引き込まれる。そして、鉱物等Mは金属平板11の上面に押し付けられるような力を水流に付与されながら貫通孔14の内部にその一部を侵入させるようにして金属平板11の上に並ぶ。つまり、比較的角張った鉱物等が貫通孔14に捕捉され、比較的丸い鉱物等は金属平板11の上を流れていきやすい。なお、使用者は柄2を操作して鉱物等Mを貫通孔14の上に引き込みやすくするよう、継ぎ手2aにて柄2の長さを変化させることと併せて、捕捉部1の傾きを小さくしたり、捕捉部1を引き寄せたりしてもよい。
【0032】
図5(b)に示すように、鉱物等Mが金属平板11の上面に並ぶとともに、貫通孔14を閉塞する。なお、ここで言う閉塞は、完全な閉塞でなくともよく、少なくとも貫通孔14を通過する水の流路を狭め該水流の方向を変化させることである。すると、引き波による水Wの移動は、側壁12a~12dの延びる方向である金属平板11の上面に沿った向きに水流の向きを変更させる。これにより、鉱物等Mは金属平板11の上面に押し付けられる力を減じられて転動しやすい状態となりつつ、金属平板11の上面に沿った方向の力を水流によって付与される。
【0033】
すると、
図5(c)に示すように、上記した水流によって鉱物等Mを金属平板11の上で転動させることができる。鉱物等Mが転動することで、水中からこれらを取り出さずとも、光反射性の高いヒスイの如きを含むかどうかを判別できる。このとき金属平板11の平面部を着色させて少なくとも金属光沢を失わせておくと光反射をより確認しやすく出来る。着色は、暗色系の黒や灰色などが好適である。また、鉱物等Mを転動させることで、鉱物等Mの使用者へ向く面の面積部分を多くすることができ、採取目的とするひすいの如きが岩石の表面の一部にしか露出していないひすいを含む岩石であってもその判別を容易にし得る。これらによって、目的の鉱物等を他の岩石と選別でき、目的の鉱物等の採取動作を簡易にすることができる。
【0034】
鉱物等Mが転動すると、上記した閉塞を緩めて金属平板11の貫通孔14を通過する水流を生じさせる。そして、再度、鉱物等Mを金属平板11の上に並ばせ、転動させる。このように、引き波によって、鉱物等Mを並ばせ、転動させる動作を繰り返させることができる。なお、使用者が捕捉部1を後方へ移動させて、相対的に前方へむけた水流を生じさせて、同様の動作をさせてもよい。
【0035】
ここまで本発明による実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれらの例に限定されるものではない。また、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0036】
1 捕捉部
2 柄
10 鉱物採取具
11 金属平板
14 貫通孔
【手続補正書】
【提出日】2023-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海岸の波打ち際において水中の鉱物を岩石と選別して採取するための長尺状の棒の先端に略矩形の金属平板からなる捕捉部を固定した鉱物採取具であって、
前記金属平板の矩形両側辺に沿って帯状の側壁を設けられているとともに、前記側壁の間では前記金属平板を貫通する複数の貫通孔を設けられており、前記貫通孔が前記金属平板の主面上に矩形下端辺から矩形上端辺の方向に間隔を空けて複数配置され、
前記側壁を上側に向けて前記金属平板の前記矩形下端辺から前記金属平板を斜めに前記水中に沈めたときに、前記金属平板へ向けた水流が前記貫通孔を通過するとともに、前記貫通孔に前記鉱物及び/又は岩石の一部を侵入させ前記貫通孔の一部を閉塞させて前記水流を変化させることで前記水流の向きを前記金属平板に沿って前記矩形上端辺に向けて変更せしめて前記鉱物及び/又は岩石を前記金属平板の上で転動させることを特徴とする鉱物採取具。
【請求項2】
前記貫通孔は前記金属平板の主面に幅5mm以上の略長方形の開口を有するとともに前記側壁に沿って長辺を配して設けられていることを特徴とする請求項1記載の鉱物採取具。
【請求項3】
前記貫通孔は前記金属平板の主面に径5mm以上の円形の開口を有して設けられていることを特徴とする請求項1記載の鉱物採取具。
【請求項4】
前記金属平板の前記側壁の間を着色し金属光沢を失わせておくことを特徴とする請求項1記載の鉱物採取具。
【請求項5】
前記側壁は前記矩形両側辺の中央部にスリットを有することを特徴とする請求項1記載の鉱物採取具。
【請求項6】
前記金属平板の前記矩形上端辺の中央部には前記金属平板の主面と略垂直となるように前記棒を取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至5記載の鉱物採取具。