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  • 特開-粘着シートロールおよび粘着シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094208
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】粘着シートロールおよび粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240702BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102007
(22)【出願日】2023-06-21
(62)【分割の表示】P 2022210112の分割
【原出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100124936
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 恵子
(72)【発明者】
【氏名】石 智文
(72)【発明者】
【氏名】白井 篤美
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004DB02
4J004EA01
4J004EA06
4J004FA08
4J040DF001
4J040JA09
4J040JB09
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】品質の優れたフレキシブルディスプレイ用の粘着シートロールを提供する。
【解決手段】粘着シートロールは巻芯に長尺状の粘着シート3が巻回された粘着シートロール10である。粘着シート3は、軽剥離シート8と重剥離シート6に挟持された、厚みが5~150μmの粘着層7を有し、粘着シートロール10から巻出した粘着シート3において、粘着層7から軽剥離シート8を剥離した際の剥離力Plが0.02~0.30N/25mmであり、露出した粘着層7に50μmのPETフィルムを貼り付け、粘着層7から更に重剥離シート6を剥離した際の剥離力Phが0.10~0.80N/25mmであり、Ph/Plを2~6、軽剥離シートの厚みTl、重剥離シートの厚みThを特定範囲とし、ロールの巻外側を軽剥離シートとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯に長尺状の粘着シートが巻回された粘着シートロールであって、
前記粘着シートは、軽剥離シートと重剥離シートに挟持された、厚みが5~150μmの粘着層を有し、
前記粘着シートロールから巻出した前記粘着シートにおいて、前記粘着層から前記軽剥離シートを23℃、相対湿度50%の環境下、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で剥離した際の剥離力Plが0.02~0.30N/25mmであり、
前記粘着層から前記軽剥離シートを剥離した後に、露出した前記粘着層に50μmのPETフィルムを貼り付け、当該粘着層から更に前記重剥離シートを23℃、相対湿度50%の環境下、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で剥離した際の剥離力Phが0.10~0.80N/25mmであり、
Ph/Plが2~6であり、
前記軽剥離シートの厚みTlが25~100μm、
前記重剥離シートの厚みThが50~188μmであり、
且つ、前記Tl<前記Thであり、
前記軽剥離シートを巻外側に設けるフレキシブルディスプレイ用の粘着シートロール。
【請求項2】
前記粘着シートの厚みの標準偏差σが、層厚に対して10%以下であることを特徴とする請求項1記載の粘着シートロール。
【請求項3】
前記粘着層は、
ゲル分率が50~90%、且つ-30℃での貯蔵弾性率が10MPa以下であって、
重量平均分子量が50万以上の粘着剤樹脂を含有する粘着層であり、
前記粘着剤樹脂は、(メタ)アクリル共重合体(a)を含み、
(メタ)アクリル共重合体(a)は、脂環式(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位および/又はアルキル基の炭素数が8~20の直鎖状または分鎖状のアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位を有する共重合体である請求項1記載の粘着シートロール。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか記載の粘着シートロールから巻出して打抜き加工したフレキシブルディスプレイ用の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基材レスの両面粘着層を有する粘着シートロールおよび粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
基材レスの両面粘着シートが知られている。このような両面粘着シートは、被着体同士を接合する用途に用いられ、通常、剥離シート間に粘着層が挟持せしめられている。このような粘着シートは、シート状で生産する他、生産性を高めるために、巻芯に巻回された粘着シートロールとして製造される場合がある。
【0003】
特許文献1、2には、糊のはみ出しおよびトンネル状の浮きの発生が抑制された粘着シートロールの提供を課題として、第1剥離シート/120℃における剪断貯蔵弾性率が特定範囲の粘着層/第2剥離シートの積層シートをロール状に巻回してなり、巻硬さが特定範囲にあるロール状粘着シートが開示されている。
【0004】
近年、機器のサイズを維持しながらディスプレイの大画面化を実現する技術の開発が盛んにすすめられている。例えば、フォルダブルディスプレイ(Foldable display)、ローラブルディスプレイ(Rollable display)がある。前者は開閉自在な折りたたみ式ディスプレイであり、後者はパネルが巻き取れるディスプレイである。このようなフレキシブルディスプレイ用の粘着層においては、従来から求められる粘着層の特性に加えて、屈曲性、復元性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-1272号公報
【特許文献2】特開2021-1273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基材レスの両面粘着シートは、生産性の観点から、粘着シートロールの形態が市場で求められている。しかし、ロール形態とすると、粘着シートに張力がかかるので、塵や埃などの異物の混入により粘着層が変形したり、粘着層に微小凹凸(デント)が生じたりする問題がある。また、ロール形態での粘着シートの張力により、或いはロールからの巻出しの際に、剥離シートと粘着層の間に剥がれや浮き(気泡)が生じるトンネリング現象が生じ、粘着層に剥離跡が残るという問題がある。
【0007】
粘着層の変形、デント若しくはトンネリングが生じることにより、粘着層と被着体の密着性が低下する場合がある。また、粘着層をディスプレイ用部材の貼付に用いる場合には画質が低下する場合がある。このような問題は、フレキシブルデバイスに適用するために柔軟性および復元性を考慮して設計した粘着層において特に深刻な問題となる。
【0008】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、品質の優れたフレキシブルディスプレイ用の粘着シートロールおよび粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、以下の粘着シートロールおよび粘着シートを提供する。
[1]: 巻芯に長尺状の粘着シートが巻回された粘着シートロールであって、
前記粘着シートは、軽剥離シートと重剥離シートに挟持された、厚みが5~150μmの粘着層を有し、
前記粘着シートロールから巻出した前記粘着シートにおいて、前記粘着層から前記軽剥離シートを23℃、相対湿度50%の環境下、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で剥離した際の剥離力Plが0.02~0.30N/25mmであり、
前記粘着層から前記軽剥離シートを剥離した後に、露出した前記粘着層に50μmのPETフィルムを貼り付け、当該粘着層から更に前記重剥離シートを23℃、相対湿度50%の環境下、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で剥離した際の剥離力Phが0.10~0.80N/25mmであり、
Ph/Plが2~6であり、
前記軽剥離シートの厚みTlが25~100μm、
前記重剥離シートの厚みThが50~188μmであり、
且つ、前記Tl<前記Thであり、
前記軽剥離シートを巻外側に設けるフレキシブルディスプレイ用の粘着シートロール。
[2]: 前記粘着シートの厚みの標準偏差σが、層厚に対して10%以下であることを特徴とする[1]記載の粘着シートロール。
[3]: 前記粘着層は、
ゲル分率が50~90%、且つ-30℃での貯蔵弾性率が10MPa以下であって、
重量平均分子量が50万以上の粘着剤樹脂を含有する粘着層であり、
前記粘着剤樹脂は、(メタ)アクリル共重合体(a)を含み、
(メタ)アクリル共重合体(a)は、脂環式(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位および/又はアルキル基の炭素数が8~20の直鎖状または分鎖状のアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位を有する共重合体である[1]または[2]記載の粘着シートロール。
[4]: [1]~[3]のいずれか記載の粘着シートロールから巻きだして打抜き加工したフレキシブルディスプレイ用の粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、品質の優れたフレキシブルディスプレイ用の粘着シートロール、および粘着シートを提供できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る粘着シートロールの一例を示す模式的斜視図。
図2図1のII-II切断部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示について詳細に説明する。なお、本開示の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本開示の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。また、本明細書において「フィルム」、「シート」および「テープ」は同義であり、厚みや形状によって区別されないものとする。(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味する。また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。本明細書で特定する数値は、実施例に記載の方法により求められる値をいう。
【0013】
1.粘着シートロール
本開示の粘着シートロール(以下、本粘着シートロールともいう)は、巻芯に長尺状の粘着シート(以下、本粘着シートともいう)が巻回されたロールシートである。本粘着シートは、軽剥離シート/粘着層/重剥離シートがこの順で積層された、基材レスの両面粘着積層体である。本粘着シートロールは、フレキシブルディスプレイ用途に好適である。但し、前記用途以外に用いることを排除するものではない。
【0014】
本粘着シートロールは、粘着シートを巻出し、必要に応じて切断、打抜き加工する。そして、軽剥離シートを剥離除去した後に、露出した粘着層を被着体に貼付し、次いで、重剥離シートを剥離除去し、それにより露出した粘着層を他の被着体に貼付する。このような工程を経て被着体同士が接合せしめられる。
【0015】
本粘着シートロールは、以下の(i)~(v)を満たす粘着シートを有する。
(i)粘着層の厚みを5~150μmとする。
(ii)本粘着シートロールから巻出した粘着シートにおいて、粘着層から軽剥離シートを23℃、相対湿度50%の環境下、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で剥離した際の剥離力Plが0.02~0.30N/25mmである。
(iii)粘着層から軽剥離シートを剥離した後に、露出した前記粘着層に50μmのPETフィルムを貼り付け、当該粘着層から更に重剥離シートを23℃、相対湿度50%の環境下、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で剥離した際の剥離力Phが0.10~0.80N/25mmである。
(iv)剥離力Plに対する剥離力Phの比、Ph/Plが2~6である。
(v)軽剥離シートの厚みTlが25~100μm、前記重剥離シートの厚みThが50~188μmであり、且つ、前記Tl<前記Thであり、前記軽剥離シートを巻外側に設ける。
【0016】
軽剥離シートの剥離力Pl、重剥離シートの剥離力Phは、各剥離シートの粘着層との貼付面の離型処理により調整できる。例えば、シートの種類、基材表面に塗工する離型剤の種類により剥離力を調整できる。また、離型剤の塗布量により剥離力を調整できる。更に、離型層の表面粗さにより調整してもよい。また、粘着層を形成する粘着剤組成物によって調整してもよい。剥離力の値を小さくしたい場合には、表面粗さを粗くする、離型剤の塗布量を多くする等の処理が有効であり、剥離力の値を大きくしたい場合には、その逆に調整すればよい。
本開示における軽剥離シートの剥離力Plおよび重剥離シートの剥離力Phは、後述する実施例記載の方法で測定した。なお、後述する実施例に示すように、軽剥離シート/粘着層/PETフィルム50μm(G2L、東洋紡社製)の構成の剥離力の測定値と、軽剥離シート/粘着層/重剥離シート(50μm以上)の構成で測定した軽剥離シートの測定値は実質的に同等の剥離力となる。
【0017】
粘着シートロールは、巻取ることにより粘着層に張力がかかる。これにより、粘着層に微小凹凸および変形を引き起こすことがある。また、粘着シートに付着した塵や埃などの異物が、重剥離シートあるいは軽剥離シートを介して粘着層の変形を引き起こすことがある。更に、粘着シートロールの製造時、保管時、輸送時等に、粘着層と剥離シートとの間に浮き(気泡)および部分剥離などのトンネリング現象を生じることがある。
【0018】
粘着層の変形、デント若しくはトンネリング現象は、例えば粘着シートにライトを照射してスクリーンに投影することにより確認できる。偏光板、帯電防止フィルムなどの機能層を粘着層により貼付したディスプレイでは、このようなデント等が視認性に影響を与え、高精細化の妨げとなる。
【0019】
本発明者が鋭意検討を重ねた結果、上記(i)~(v)を満たす粘着シートにより、ロール体とした場合であっても軽剥離シート/粘着層/重剥離シートの積層バランスを保つことができ、粘着層と剥離シートの浮き、部分剥離を効果的に抑制し、粘着層の変形、微小凹凸を抑制できることがわかった。また、折り曲げを繰り返し行っても効果的に気泡を抑制できることがわかった。本粘着シートによれば、フレキシブルディスプレイ用として用いる場合であっても高品質の粘着シートロールが得られる。
【0020】
粘着層Taの厚みを5~150μmとし、剥離力Plが0.02~0.30N/25mm、剥離力Phが0.10~0.80N/25mmであって、且つPh/Plが2~6を満たし、更に、軽剥離シートの厚みTlが25~100μm、重剥離シートの厚みThが50~188μmであり、軽剥離シートを巻外側に設ける組合せにより、トンネリングを効果的に防止し、剥離跡を抑制できる。また、粘着層を上記特定範囲とすることにより、粘着力を発揮しながら、光透過性、屈曲性を良好に保つことができる。
【0021】
軽剥離シートの厚みTlを25~100μm、重剥離シートの厚みThを50~188μmの範囲とし、且つ、Tl<Thの関係とし、本粘着シートロールにおいて軽剥離シートを巻外側に設けることにより、重剥離シートにクッション性を付与し、異物由来あるいは輸送時の揺れによるデントの発生を抑制できる。また、重剥離シートに比べて厚みの薄い、前記軽剥離シートを巻外側に設けることにより軽剥離シートと粘着層の浮きを効果的に防止すると同時に、粘着層に対する追従性を高め、粘着層の表面凹凸、もしくは本粘着シートの外部にある異物に由来する粘着層の微小突起に対する追従性を効果的に高めることができる。また、重剥離シートと軽剥離シートを組み合わせることにより、粘着層の変形を抑制できる。
【0022】
更に、剥離力Plを0.02~0.30N/25mmとすることにより、軽剥離シートと粘着層の浮き、部分剥離などのトンネリング現象を効果的に抑制できる。また、剥離力Phが剥離力Plとの関係において、Ph/Plを2~6の範囲を満たす範囲においてPhを0.10~0.80N/25mmとすることにより、粘着層と重剥離シートのナキワカレの現象を効果的に抑制できる。なお、この外径は後述する発泡体層等の部材を含む場合には、発泡体層等を含んだときの外径である。
【0023】
図1に、本粘着シートロールの模式図の一例を示す。粘着シートロール10は、巻芯1に長尺状の粘着シート3が巻回されている。巻芯1は円筒状、或いは円柱状とすることができる。巻芯1の外径(直径)は、例えば100~1000mm程度である。粘着シートロールの幅は、例えば100~3000mm程度、粘着シートの巻き長は、例えば10~3000m程度である。
【0024】
図2は、図1のII-II切断部断面図である。粘着シートロール10より巻出された粘着シート3は、図2に示すように、軽剥離シート8と重剥離シート6に挟持された、粘着層7を有する。本粘着シート3は、基材レスの積層体であり、軽剥離シート8の剥離面が粘着層7側に、重剥離シート6の剥離面が粘着層7側に配置されている。図2に示すように、軽剥離シート8と重剥離シート6の幅方向両端部に、粘着層非形成領域を有することが好ましい。粘着層非形成領域の剥離シート間にスペーサを配置してもよい。スペーサは、例えば、端部の長手方向に沿ってライン状、ドット状などの任意の形態で配置できる。スペーサを設けることにより、対向距離を保持したり、粘着層のはみ出しを抑制したりすることができる。非対向領域Waは例えば20mm越え、30mm以下とすることができる。
【0025】
巻芯1は、外周面に発泡体層2が設けられていることが好ましい。この発泡体層2は、JIS K 6254に準拠して測定される25%圧縮荷重が10~1000kPaであることが好ましい。前記範囲とすることにより、本粘着シートロールの歩留まりを高め、生産性を高めることができる。更に、粘着層の変形をより効果的に抑制できる。より好ましい範囲は30~300kPaであり、更に好ましい範囲は50~200kPaである。
【0026】
両面粘着シートは、ロール状態でエージングすることにより生産性を高めることができる。その一方で、ロール状態でエージングすると、粘着シートの厚みバラツキが大きくなるという問題がある。これは、エージングプロセスにおいて剥離シートが熱収縮により凹凸が生じることが一因である。
本発明者が鋭意検討を重ねた結果、本粘着シートの厚みTtの標準偏差σを、粘着シートの層厚の10%以下とすることにより、デントの発生を顕著に抑制できることがわかった。本粘着シートの厚みTtの標準偏差σが粘着シートの層厚の10%以下の場合、粘着層の厚みばらつきが小さいため、粘着層と剥離シートの密着面積が大きくなる。エージングプロセスにおいて剥離シートの熱収縮によって生じた凹凸に対して、細密に密着している粘着層が追従し、粘着シートのデントを防ぐと考えられる。一方、10%より大きい場合、粘着層と剥離シートの密着が低下するため、剥離シートの凹凸に粘着層が追従する際に、微小な剥がれが生じ、デントの発生に繋がると考えられる。前記標準偏差σは8%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましい。
【0027】
粘着シートの厚みTtの標準偏差σを10%以下とする方法として、本粘着シートにおいて特定する軽剥離シートおよび重剥離シートそれぞれの厚み、剥離力を組み合わせた粘着シートロールにおいて、軽剥離シートを巻外側にする方法が挙げられる。また、本粘着シートにおいて、特定する粘着層の厚みにより調整する方法、本粘着シートにおいて特定する軽剥離シートおよび重剥離シートそれぞれの厚みにより調整する方法等がある。
【0028】
2.粘着層
粘着層は、厚みが5~150μmの両面粘着層であり、被着体同士を接合する役割を担う。粘着層は、粘着シートロールの段階では軽剥離シートと重剥離シートに挟持されている。粘着層の厚みTaのより好適な範囲は8~100μmであり、更に好適な範囲は25~75μmである。なお、粘着層の厚みTaは後述する実施例の方法により求めることができる。
【0029】
繰り返しの屈曲に耐え、屈曲状態から元の状態に戻るときに優れた復元力を発揮する観点、および粘着シートロールの状態における粘着層の変形をより効果的に防止する観点からは、粘着層の23℃における周波数1Hzにおける貯蔵弾性率は、1×10~100×10Paであることが好ましい。また、前記範囲の粘着層を用いることで、軽剥離シートおよび重剥離シートとの剥離力のバランスを容易に設計できる。貯蔵弾性率が1×10以上であることにより、被着体への粘着力を有し、上記(ii)、(iii)の剥離力を調整しやすくなる。また、粘着層の屈曲性を優れたものとすることができる。前記貯蔵弾性率は、例えばTAインスツルメント社製、DHR-2により測定できる。貯蔵弾性率はモノマー組成、樹脂の分子量、硬化剤の配合量、乾燥条件などにより調整できる。上記範囲とすることにより、フレキシブル性が良好になる。
【0030】
粘着層の粘着力は、25℃条件下、ポリイミド基材に対して10~40N/25mmであることが好ましい。前記範囲とすることにより、軽剥離シートおよび重剥離シートとの剥離力を上記範囲に調整しやすくなる。また、フレキシブル性を効果的に発揮することができる。より好ましい範囲は15~35N/25mmであり、更に好ましい範囲は20~30N/25mmである。粘着層の粘着力は、後述する粘着剤組成物を構成する粘着剤樹脂の組成、粘着剤樹脂のTg、粘着剤組成物中の硬化剤の量などにより制御できる。粘着剤樹脂としてアクリル共重合体を用いる場合には、アクリル酸等のカルボキシ基含有単量体由来の高極性なアクリルモノマーを含むことにより粘着力を高めることができる。また、粘着剤樹脂のTgが低いほど粘着力が高くなる傾向にある。更に、粘着剤組成物中の硬化剤の量が少ないほど粘着力が高くなる傾向にある。
【0031】
粘着層7は、粘着剤組成物から形成された層である。粘着剤組成物は、架橋型粘着剤または非架橋型粘着剤であり、エマルション型、溶剤型、無溶剤型のいずれでもよい。
【0032】
粘着剤組成物には主成分として粘着剤樹脂を含む。なお、ここでいう主成分とは、不揮発分の中で最も含有量(質量)の多い成分をいう。粘着剤樹脂は、例えば、アクリル共重合体、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂が例示できる。これらの樹脂は一種単独でも二種以上を併用してもよい。粘着性に加えて、透明性に優れる観点からはアクリル共重合体が好適である。
【0033】
本粘着剤組成物は、必要に応じて硬化剤を含むことができる。硬化剤として、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、金属キレート等が挙げられる。硬化剤は低分子化合物でも高分子化合物でもよい。これらの中でも、イソシアネート化合物が高い凝集力と密着性を両立できる観点から好ましい。
【0034】
好適な粘着層として、ゲル分率が50~90%、且つ-30℃での貯蔵弾性率が10MPa以下であって、(メタ)アクリル共重合体を含有する粘着剤組成物を架橋してなる粘着層が挙げられる。(メタ)アクリル共重合体の好適例として、脂環式(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位および/又はアルキル基の炭素数が8~20の直鎖状または分鎖状のアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位を有する(メタ)アクリル共重合体(a)が例示できる。
さらに好適な(メタ)アクリル共重合体(a)の例として、脂環式(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位および/又はアルキル基の炭素数が10~20の直鎖状のアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位と、炭素数が8~20の分鎖状のアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位とを有する(メタ)アクリル共重合体(a)が例示できる。
脂環式(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位および/又はアルキル基の炭素数が10~20の直鎖状のアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位を含むことで、粘着層を繰り返し屈曲した際にかかる応力を緩和し、粘着層のズレを防ぐことができる。また、炭素数が8~20の分鎖状のアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位を含むことで、粘着層の凝集力が高まり、屈曲部の白化を防ぐことができ、実施例に記載の気泡の評価が良好となる。
【0035】
ゲル分率のより好適な範囲は55~85%であり、更に好適な範囲は60~80%である。また、粘着層の-30℃の貯蔵弾性率のより好ましい範囲は8MPa以下であり、更に好ましい範囲は5MPa以下である。ゲル分率を上記範囲とすることで、折り曲げ箇所の気泡が良化する。
粘着層のゲル分率は、エージング時間、エージング温度の調整、硬化剤の量によって調整できる。(メタ)アクリル共重合体(a)において、ヒドロキシ基含有モノマーの割合を調整することにより、ゲル分率を上記範囲に制御できる。ヒドロキシ基含有モノマーの割合を多くすることにより、ゲル分率は高くなる傾向にある。粘着層の-30℃の貯蔵弾性率の下限値は、折り曲げ個所の気泡の観点から、0.5MPaとすることが好ましい。上記貯蔵弾性率は(メタ)アクリル共重合体(a)に、アルキル基の炭素数が8~20の直鎖状および/又は分鎖状のアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位を用いることで調整できる。アルキル(メタ)アクリレート単量体のアルキル基の炭素数が多い、または、分鎖部分が多いほど、嵩高いアルキル基が粘着層内で絡まり合うため、貯蔵弾性率は低くなる傾向にある。
【0036】
2-1.粘着剤樹脂
粘着剤樹脂の重量平均分子量(Mw)は、強度と抜き加工性を両立する観点から50万以上であり、80万~180万であることが好ましく、90万~170万であることがより好ましく、100万~150万であることが更に好ましい。また、粘着剤樹脂のTgは、粘着層の柔軟性を優れたものとする観点から、粘着層を示唆走査熱量分析(DSC)した結果得られる値が-30℃以下であることが好ましく、より好ましくは-32℃以下であり、更に好ましくは-35℃以下である。粘着剤樹脂のTgの下限は特に限定されないが、耐熱性の観点から、-50℃以上であることが好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル共重合体は、例えば、官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して得られる。(メタ)アクリル酸エステルの好適例として(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基のいずれであってもよい。アルキル基は炭素数1~20のアルキル基が好ましい。
屈曲性を高める観点から、少なくとも環状のアルキル基(脂環式)および/又はアルキル基の炭素数が8~20の直鎖状または分鎖状のアルキル(メタ)アクリレート単量体を含む単量体を共重合して得られる(メタ)アクリル共重合体(a)が好ましい。単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-n-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。これらの中でも特に、屈曲性、粘着力の観点から(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましく、2-エチルヘキシルアクリレート、(メタ)アクリル酸ドデシル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸イソボルニルを用いることが特に好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、ホモポリマーのTgが-80~110℃であることが好ましい。また、直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを併用することが好ましい。
なお、ホモポリマーのTgは、以下のフォックス式に従って、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単独で重合したポリマーのTgnから計算できる。
フォックス式:100/Tg=Σ(Wn/Tgn)
Tg:重合体の計算Tg(K)
Wn:モノマーnの質量分率(%)
Tgn:モノマーnのホモポリマーのガラス転移温度(K)
モノマーnのホモポリマーのTg値(Tgn)は、例えば、株式会社日本触媒、三菱化学株式会社、東亜合成株式会社などのモノマーメーカーの技術資料や高分子データハンドブック(培風館発行、高分子学会編(基礎編)、昭和61年1月初版)、Polymer Handbook 4th edition(J.Brandrup、E.H.Immergut、E.A.Grulke、1999年発行、Wiley-Interscience)に記載されている。例えば、各モノマーのホモポリマーTgは、メチルメタクリレート(105℃)、ドデシルアクリレート(-10℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(-70℃)、ブチルアクリレート(-54℃)、イソボルニルアクリレート(94℃)、シクロヘキシルアクリレート(19℃)4-ヒドロキシブチルアクリレート(-40℃)である。
【0040】
(メタ)アクリル共重合体の中でも、上述した(メタ)アクリル共重合体(a)が特に好ましい。(メタ)アクリル共重合体(a)100質量%に対して、アルキル基の炭素数が8~20の直鎖状または分鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位は10~100質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましく、30~85質量%であることが更に好ましい。
さらに、(メタ)アクリル共重合体(a)100質量%に対して、脂環式(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位および/又はアルキル基の炭素数が10~20の直鎖状のアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位を10~90質量%とすることが好ましく、10~75質量%がより好ましく、15~50質量%が更に好ましい。
また、(メタ)アクリル共重合体(a)100質量%に対して、炭素数が8~20の分鎖状のアルキル(メタ)アクリレート単量体由来の構成単位を10~90質量%とすることが好ましく、20~85質量%がより好ましく、40~85質量%が更に好ましい。
【0041】
(メタ)アクリル共重合体(a)は官能基モノマーを含むことができる。官能基含有モノマーとしては、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマーが例示できる。官能基含有モノマーを含有することにより粘着剤の凝集力が向上し、強靱な粘着層が得られる。
【0042】
カルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、アクリル酸β-カルボキシエチル、アクリル酸p-カルボキシベンジル、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸およびイソクロトン酸が例示できる。これらの中でも、特に、(メタ)アクリル酸が凝集力、粘着力の観点から好ましい。
【0043】
水酸基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレートが例示できる。これらの中でも、凝集力および粘着力の観点から、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルがより好ましい。
【0044】
エポキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルが例示できる。
【0045】
アミノ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステルが例示できる。
【0046】
(メタ)アクリル共重合体(a)100質量%に対し、官能基含有モノマー由来の構造単位の合計は、1~20質量%であることが好ましい。前記範囲とすることにより、硬化剤との反応で凝集力を調整することができ、屈曲性および復元力を高めることができる。
(メタ)アクリル共重合体(a)100質量%に対し、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位は1~10質量%であることが好ましい。前記範囲にあることで粘着層の凝集力と緩和性を両立できる。また、(メタ)アクリル共重合体(a)100質量%に対し、水酸基含有モノマー由来の構成単位は1~10質量%であることが好ましい。前記範囲にあることで粘着層の密着力と緩和性を両立できる。
【0047】
(メタ)アクリル共重合体(a)は、上述した単量体と共重合可能なその他のモノマーに由来する構造単位が含まれていてもよい。例えば、アルキレンオキシ基を有するモノマー、その他ビニルモノマーが挙げられる。例えば、メトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルが例示できる。前記その他のモノマーに由来する構造単位は、(メタ)アクリル共重合体(a)100質量%中、0.1~20質量%であることが好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル共重合体(a)は、モノマー混合物を重合することにより得られる。重合時には、必要に応じて重合開始剤を用いることができる。重合開始剤の含有量は、モノマー混合物100質量部に対して例えば0.01~10質量部とする。重合方法は限定されない。例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合が例示できる。溶液重合で用いる溶媒は、例えば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンが例示できる。重合温度は例えば60~120℃、重合時間は5~12時間程度である。
【0049】
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、過酸化物およびアゾ化合物が好適である。アゾ化合物は、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などの2,2’-アゾビスブチロニトリル;2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などの2,2’-アゾビスバレロニトリル;2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’-アゾビスプロピオニトリル;1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)などの1,1’-アゾビス-1-アルカンニトリルが挙げられる。過酸化物は、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3などのジアルキルパーオキサイド;t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレート、などのパーオキシケタール;クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルシクロヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネートが挙げられる。
【0050】
2-2.硬化剤
本粘着剤組成物は、必要に応じて硬化剤を含有することができる。架橋構造を有することにより、粘着力および凝集力に優れる粘着層を提供できる。硬化剤の好適例は、粘着剤樹脂の官能基に応じて設計できる。好適な硬化剤として、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、または金属キレート等が挙げられる。官能基がヒドロキシ基、カルボキシ基の場合には、イソシアネート化合物、エポキシ化合物が好ましく、これらのうちでもイソシアネート化合物が高い凝集力と密着性を両立できる観点から好ましい。好適例として、(メタ)アクリル共重合体(a)を粘着剤樹脂とし、イソシアネート化合物を硬化剤とした粘着剤組成物が挙げられる。
【0051】
イソシアネート化合物は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートである。イソシアネート化合物は、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体が好ましい。
【0052】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。
【0053】
脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0054】
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0055】
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0056】
前記ビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物である。ビュレット体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体が挙げられる。
【0057】
前記ヌレート体は、イソシアネートモノマーの3量体である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
【0058】
前記アダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物である。アダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6-ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物が挙げられる。
【0059】
イソシアネート化合物は、充分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体、及びヌレート体がより好ましい。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体がより好ましい。
【0060】
エポキシ化合物は、例えばグリセリンジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1、3-ビス(N、N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタンが挙げられる。
【0061】
アジリジン化合物は、例えばN,N’-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタンが挙げられる。
【0062】
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが好ましい。前記高分子量ポリカルボジイミドの市販品は、日清紡績社のカルボジライトシリーズが好ましい。その中でもカルボジライトV-03、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0063】
金属キレートは、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物が好ましい。金属キレートは、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレートが挙げられる。
【0064】
硬化剤は、粘着剤樹脂100質量部に対して0.001~1質量部含むことが好ましく、0.01~0.1質量部含むことがより好ましい。含有量が0.01質量部以上になると凝集力がより向上し、1質量部以下になると凝集力と柔軟性を両立しやすくなるために好ましい。
【0065】
2-3.その他の添加剤
本粘着剤組成物は、必要に応じて溶媒、粘着付与剤、シランカップリング剤、充填剤、粘着付与樹脂、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等をさらに含んでいてもよい。
【0066】
溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトンが挙げられる。また、トルエン、キシレン、ベンゼン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタン、α-ピネン、ターピノーレン、リモネン等の脂肪族炭化水素挙げられる。溶媒は単独で若しくは組み合わせて用いられる。
【0067】
シランカップリング剤は、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;
3-クロロプロピルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、分子内にアルコキシシリル基を有するシリコーンレジンなどが挙げられる。
【0068】
シランカップリング剤は、粘着剤樹脂100質量部に対して、0.01~10質量部を使用することが好ましく、0.05~5質量部がより好ましい。
【0069】
充填剤を添加することにより光学特性、機械特性を調整できる。充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、二酸化チタン等の無機系白色顔料が例示できる。
【0070】
粘着付与樹脂は、例えば、ロジン系樹脂、重合ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、重合ロジンエステル系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。粘着剤樹脂としてアクリル共重合体を用いる場合、相溶性がよく粘着性能がより向上できる点から、ロジン系樹脂、重合ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂および重合ロジンエステル系樹脂が好ましく、ロジンエステル系樹脂および重合ロジンエステル系樹脂がより好ましい。粘着付与樹脂は、(メタ)アクリル共重合体(a)100質量部に対して0.01~10質量部用いることが好ましく、0.5~7質量部がより好ましい。粘着付与樹脂を0.01~10質量部用いると高い粘着力を得ることができる。
【0071】
3.軽剥離シートおよび重剥離シート
軽剥離シートおよび重剥離シートは、粘着層を保護する役割を担う。軽剥離シートおよび重剥離シートは、上記(ii)~(v)を満たすものを用いる。Tlのより好適な範囲は25~75μmであり、更に好適な範囲は25~50μmである。また、Thのより好適な範囲は50~150μmであり、更に好適な範囲は75~125μmである。生産性を高める観点からは、軽剥離シートと重剥離シートを厚みの異なる同一材料において構成してもよい。
【0072】
膜厚差(Th-Tl)は、15μm以上とすることが好ましく、25μm以上とすることが更に好ましい。上限は140μm以下が好ましく、95μm以下がより好ましい。膜厚差を15μm以上とすることで、軽剥離シートの剥離時に粘着剤にかかる応力が重剥離シートに分散され、剥離時の粘着剤の凝集破壊を防ぐことができる。膜厚差を140μm以下とすることで、軽剥離シートの剥離時に粘着剤にかかる応力が重剥離シートに分散され、軽剥離シートを滑らか剥がしやすくなり、ジッピングを防ぐことができる。
【0073】
Ph/Plのより好適な範囲は2.5~5である。また、Plのより好適な範囲は0.02~0.2N/25mmであり、更に好適な範囲は0.02~0.1N/25mmである。Phのより好適な範囲は0.15~0.6N/25mmであり、更に好適な範囲は0.2~0.5N/25mmである。
【0074】
軽剥離シートおよび重剥離シート(以下、まとめて「剥離シート」ともいう)は、例えば、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリブテンシート、ポリブタジエンシート、ポリメチルペンテンシート、ポリ塩化ビニルシート、塩化ビニル共重合体シート、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシート、ポリブチレンテレフタレートシート、ポリウレタンシート、エチレン酢酸ビニルシート、アイオノマー樹脂シート、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体シート、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体シート、ポリスチレンシート、ポリカーボネートシート、ポリイミドシート、フッ素樹脂シートが例示できる。剥離シートは、単層でも積層体であってもよい。
【0075】
剥離シート自体に離型性を有するシートを用いる他、基材に離型剤を塗工した剥離シートを用いてもよい。粘着層との接合面に離型剤を塗工することにより離型性を付与できる。剥離シートは、基材/離型層の他に他の機能層を有していてもよい。他の機能層を有する剥離層として、帯電防止層/基材/離型層、基材/帯電防止層/離型層が例示できる。
【0076】
離型剤の具体例として、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系が例示できる。離型剤の種類により、上記(ii)~(iv)を調整できる。(ii)~(iv)の別の調整方法として、後述するように軽剥離シートと重剥離シートの厚みを調整する方法がある。
【0077】
離型剤は、剥離強度の設計しやすさの観点からはシリコーン系が好適である。好適な例として、直鎖シリコーンを主成分とし、分岐シリコーンを更に含有する離型剤が例示できる。
【0078】
シリコーン系離型剤は、主鎖にシロキサン結合を有するシリコーンを含む。シリコーンとしては、例えば、ケイ素に有機置換基が3個結合し、酸素原子を1個有するタイプ(M単位)、ケイ素に有機置換基が2個結合し、酸素原子を2個有するタイプ(D単位)、ケイ素に有機置換基が1個結合し、酸素原子を3個有するタイプ(T単位)、ケイ素に有機置換基が結合しておらず、酸素原子を4個有するタイプ(Q単位)を組合せることで剥離性能の異なる種々のシリコーンを得ることができ、これらの比率により、剥離強度の大小を制御できる。多くはM単位やD単位で構成される直鎖シリコーンにより剥離を軽くする方向へ、直鎖シリコーンの構造にT単位やQ単位を含めた分岐シリコーンにより剥離を重くする方向へ調整が可能である。
【0079】
直鎖シリコーンとしては、D単位を主成分としながら分子量調整のため適宜M単位を有する組成が好ましい。有機置換基は、水素原子、水酸基またはアルキル基を表し、有機溶剤に溶解しやすい観点からアルキル基、具体的にはメチル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0080】
直鎖シリコーンは各種耐性を付与するため、架橋構造をとることができる。直鎖シリコーンは架橋点として、その末端および/又は側鎖にビニル基を2つ以上備えることが好ましい。硬化剤としてはハイドロジェン変性シリコーンなどがあり、1分子中に2つ以上のSiH基を有することが必要である。直鎖シリコーン100質量部に対して、ハイドロジェン変性シリコーンを0.1~20質量部含むことが好ましい。
【0081】
分岐シリコーンとしては、T単位および/又はQ単位を有することが好ましく、分岐シリコーン100質量%中、T単位および/又はQ単位が70質量%以上であることが好ましい。分岐シリコーンは、T単位および/又はQ単位の他に、M単位、D単位を有してもよい。
【0082】
離型層は、離型剤から形成される。本発明に係る離型剤は、直鎖シリコーンおよび分岐シリコーンを、直鎖シリコーン:分岐シリコーン=100:0~99:1(質量比)の比率で含有する。分岐シリコーンを、離型剤(直鎖シリコーン、ハイドロジェン変性シリコーンおよび分岐シリコーン)の総質量に対して1質量%以下の含有とすることで、防塵性や耐巻きズレ性を向上させる。分岐シリコーンの比率は0.5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましい。
【0083】
直鎖シリコーン、ハイドロジェン変性シリコーンおよび分岐シリコーンを合計した含有率は、離型剤の総質量100質量%中、50~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、90~100質量%であることがさらに好ましい。
【0084】
シリコーン系離型剤の合成方法としては付加反応、過酸化物縮合反応、紫外線架橋反応があるが、付加反応により形成されることが好ましい。付加反応は直鎖シリコーン中に含まれるビニル基と、ハイドロジェン変性シリコーン中に含まれるSiH基の架橋である。
【0085】
離型剤を付加反応により合成する場合、触媒を含む。触媒としては、特に限定されるものではないが、白金系触媒が好ましく、塩化第一白金酸、塩化第二白金酸などの塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物あるいは塩化白金酸と各種オレフィンとの錯体などがより好ましい。触媒の添加量は、離型剤の総質量100質量%中、0.01~10質量%が好ましく、0.2~2質量%であることがより好ましい。
【0086】
離型剤は、本開示の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含有させてもよい。例えば、反応抑制剤、無機充填剤、有機充填剤、着色剤(染料や顔料等)、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0087】
離型層の形成方法は、剥離基材上に離型剤組成物を塗布することで形成されることが好ましい。離型剤は、塗工する際に溶剤を含むことができる。溶剤の種類は限定されないが、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタンなどの炭化水素系溶剤;トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤; 酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤などの有機溶剤が例示できる。
【0088】
離型剤は、マイクログラビアコーター、グラビアコーター等により基材上に塗工できる。離型剤は、固形分質量で例えば0.1~2.0g/m、好ましくは0.5~1.2g/m程度になるように塗布し、硬化により離型層を設けることができる。
【0089】
離型剤の塗工膜の硬化は、熱硬化であることが好ましい。熱硬化により付加反応を効率的に促進できる。硬化温度は限定されないが、80~130℃が好適である。80℃以上とすることにより、硬化反応を効率的に行うことが可能となり生産性を高めることができる。また、130℃以下とすることにより、基材の劣化(熱による皺の発生等)を低減したり、基材の選択肢を増やすことができる。離型層の厚みは限定されないが、例えば0.1~2μm程度である。
【0090】
4.粘着シートロールの製造
本開示の粘着シートロールの製造方法は、公知の方法により製造できる。例えば、重剥離シート上に粘着剤組成物を塗工して塗膜することにより、硬化させて粘着層を形成する工程と、粘着層の一方の露出面に軽剥離シートを貼付して、粘着シートを得る。そして、得られた粘着シートをロール状に巻き取ることにより得られる。
【0091】
塗工は、例えば、マイクログラビアコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、ダイコーター、カーテンコーターにより行うことができる。粘着剤組成物に溶剤が含まれている場合には、塗工後、乾燥工程により溶剤を除去する。硬化は、例えばエージングにより硬化せしめる。光硬化性粘着剤組成物の場合には、UV等を照射することにより硬化せしめる。
【0092】
粘着シートを製造後、または粘着シートを製造しながら、巻芯に粘着シートをロール状に巻回することにより粘着シートロールが得られる。巻き取りの長さは用途により設計し得る。また、粘着シートの長さにより適宜設計できるが、生産性を高める観点からは50m以上であることが好ましく、100m以上であることがさらに好ましい。巻き取りの長さは、製造歩留まりの観点から2500m以下とすることが好ましい。
【0093】
また、軽剥離シート、重剥離シートの剥離面に、粘着層を乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように塗工して、2つの粘着層をそれぞれ形成した後、各粘着層を貼付する方法により製造してもよい。
【0094】
5.フレキシブルディスプレイ
フレキシブルディスプレイは、液晶素子、有機EL素子等の光学素子と、本粘着シートロールから巻出された粘着シートから形成された粘着層とを備える。フレキシブルディスプレイは、屈曲可能なディスプレイであり、折り曲げを含む繰り返しの屈曲が可能なディスプレイであることが好ましい。例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電気泳動方式のディスプレイ(電子ペーパー)、基板としてプラスチック基板(フィルム)を用いた液晶ディスプレイ、フォルダブルディスプレイが例示できる。
【0095】
本粘着シートから形成された粘着層は、屈曲可能な部材同士の接合に好適である。例えば、液晶ポリマーシート、発光ポリマーシート、シート状液晶モジュール、有機ELモジュール(有機ELシート)、電子ペーパーモジュール、透明導電性シート、金属メッシュシート、シートセンサー、カバーシート、バリアフィルム、偏光フィルム、偏光子、位相差フィルム、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、電極フィルムの任意の組合せの部材同士の貼付に好適である。
【実施例0096】
以下、実施例に基づき本開示を更に詳しく説明する。但し、本開示は、これらによって限定されるものではない。特に断りのない限り、実施例中の「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。表中の空欄は配合していないことを表す。
【0097】
(a)測定方法
本実施例で求めた数値は、以下の方法により得られた値である。粘着シートロールの各測定箇所(膜厚、剥離力等)は、粘着シートロールの巻き取り長さの50%の位置で行った。
【0098】
a-1.ガラス転移温度
(メタ)アクリル共重合体(a)および粘着層のガラス転移温度(Tg)をロボットDSC(示差走査熱量計、セイコーインスツルメンツ社製「RDC220」)により測定した。試料約2mgをアルミニウムパンに入れ、秤量して示差走査熱量計にセットし、試料を入れない同タイプのアルミニウムパンをリファレンスとした。100℃の温度で5分間保持した後、液体窒素を用いて-120℃まで急冷し、その後、昇温速度5℃/分で昇温し、得られたDSCチャートからTg(℃)を決定した。
【0099】
a-2.樹脂のMw
島津製作所社製GPC「LC-GPCシステム」を用い、分子量既知のポリスチレンを標準物質として換算することによりMwを求めた。
装置名:島津製作所社製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を連結した。
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
【0100】
a-3.膜厚
粘着シートロールの幅方向の端部から他端部まで等間隔となる10箇所を決め、その10箇所の厚みを測定し、その平均値を粘着シートの厚みTtとした。なお、ここでいう端部とは、軽剥離シート/粘着層/重剥離シートが積層されている端部をいう。次いで、粘着シートロールから軽剥離シートを剥離し、前述と同じ位置に対応する10箇所の剥離した軽剥離シートの厚みを測定した。その平均値を軽剥離シートの厚みTlとする。その後、更に、粘着層から重剥離シートを剥離し、前述と同じ位置に対応する10箇所の剥離した重剥離シートの厚みを測定した。その平均値を重剥離シートの厚みThとする。粘着層の厚みTaは、Tt-Tl-Thより求めた。
【0101】
a-4.粘着シートの厚みの標準偏差
上記「a-3」より、粘着シートの厚みTtの面内厚みの標準偏差σを求めた。即ち、粘着シートロールの幅方向の端部から他端部まで等間隔となる10箇所の膜厚から標準偏差σを求めた。
【0102】
a-5.粘着層の貯蔵弾性率G’(-30℃の貯蔵弾性率)
粘着シートロールの軽剥離シートを剥がした粘着シートを2組用意し、粘着層同士をラミネータで貼り合わせ、重剥離シート/粘着層/重剥離シートの積層体を作製した。前記積層体から一方面の重剥離シートを剥離して、軽剥離シートを剥離した粘着シートを繰り返し貼り合わせることで、厚さ1mmの粘着層の積層物を形成した。この積層物に対し、レオメータ(TAインスツルメント社製、DHR-2)にてφ8mmの測定プローブを用いて、歪み0.1%、周波数1Hz、-70℃から200℃まで昇温速度10℃/分の条件で貯蔵弾性率G’を測定し、-30℃の貯蔵弾性率G’を求めた。
【0103】
a-6.粘着層に対する軽剥離シートの剥離力Pl
粘着シートを後述の方法で製造した後、23℃、相対湿度50%の環境で24時間経過した後、当該環境下で剥離角度180°、剥離速度300mm/分で軽剥離シートを剥離し、粘着層に対する軽剥離シートの剥離力Plを求めた。
【0104】
a-7.粘着層に対する重剥離シートの剥離力Ph
上記a-6で軽剥離シートの剥離力Plを求めたサンプルに対し、粘着層の露出面にPETフィルム50μm(G2L、東洋紡社製)を貼り合わせた後、剥離角度180°、剥離速度300mm/分によって、重剥離シートを剥離し、粘着層に対する重剥離シートの剥離力Phを求めた。
【0105】
a-8.粘着層のゲル分率
粘着シートを30mm×100mmの大きさに裁断し、軽剥離シートを剥離して露出した粘着層を、秤量した300メッシュのステンレス製金網(質量W0)に貼り付けた。次いで、重剥離シートを剥離してステンレス製金網/粘着層の試料を得た。前記試料を秤量した質量をW1とし、試料を酢酸エチル中で24時間静置後、試料を取り出して100℃で1時間乾燥させ秤量した質量をW2とし、下記式で算出した。
ゲル分率(%)={(W2-W0)/(W1-W0)}×100
【0106】
(b)粘着剤樹脂の製造例
b-1.粘着剤樹脂R1
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に、酢酸エチル100部、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)83部、アクリル酸イソボルニル(IBXA)15部、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(4HAB)2部、開始剤として、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(以下、単に「AIBN」と記述する。)0.1部を仕込み、この反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、65℃まで加熱し、反応溶液を65℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分30%の粘着剤樹脂((メタ)アクリル共重合体(a))R1溶液(Mw:120万、Tg:-48℃)を得た。
【0107】
b-2.粘着剤樹脂R2、R3
モノマーおよび配合量を表1に変更した以外は粘着剤樹脂R1と同様の方法により、粘着剤樹脂((メタ)アクリル共重合体(a))R2,R3をそれぞれ得た。Mw、Tgを表1に示す。
表1中の記号は以下の通りである。
MA:アクリル酸メチル(直鎖状のアルキル基の炭素数1)
BA:アクリル酸ブチル(直鎖状のアルキル基の炭素数4)
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル(分鎖状のアルキル基の炭素数8)
DOA:アクリル酸ドデシル(直鎖状のアルキル基の炭素数12)
IBXA:アクリル酸イソボルニル(脂環式アルキル基)
CHA:シクロヘキシルアクリレート(脂環式アルキル基)
4HBA:4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート
AA:アクリル酸
【0108】
【表1】
【0109】
(c)粘着剤組成物の調製
c-1.粘着剤組成物C1の製造
粘着剤樹脂R1不揮発分100部に対して、硬化剤として芳香族イソシアネートD-110Nを0.5部、さらに不揮発分が20%となるように酢酸エチルを配合し撹拌して粘着剤組成物C1を得た(表2参照)。
【0110】
c-2.粘着剤組成物C2、C3の製造
粘着剤樹脂R1をR2、R3に変更した以外は、粘着剤組成物C1と同様の方法により、粘着剤組成物C2、C3を得た(表2参照)。
【0111】
【表2】
【0112】
(d)剥離シートの製造
d-1.剥離シートRS1
シリコーンAを100部、白金系触媒を1部、トルエンを200部配合し、充分に混合攪拌することにより離型剤を調製した。得られた離型剤を乾燥後の膜厚が1μmとなるように、グラビア塗工機で膜厚が49μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗工し、120℃で2分間乾燥して離型層を有する50μmの剥離シートRS1を得た。剥離シートRS1の離型層上に、粘着剤組成物C1を、乾燥後の厚みTaが50μmとなるように塗工した。塗工後、100℃で3分間乾燥することで粘着層を形成した。次いで、粘着層の露出面にPETフィルム50μm(G2L、東洋紡社製)を貼り合わせ、剥離シートRS1/粘着層L1/PETフィルムの構成をした試験片を得た。そして、粘着層から剥離シートRS1を23℃、相対湿度50%の環境下、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で剥離した際の剥離力を求めた。
【0113】
d-2.剥離シートRS2~RS24
離型剤の配合成分、離型剤の基材への乾燥後の厚み、基材の種類・厚みを表3に示す通りに変更した以外は、剥離シートRS1と同様の方法により剥離シートRS2~RS24を得た。そして、剥離シートRS1と同様の方法により、各剥離シートの粘着層L1に対する剥離力を表3に合わせて示す。
表3中の記号は以下の通りである。
シリコーンA:KS-847(信越シリコーン社製)
シリコーンB:DOWSIL(登録商標)LTC755Coating(ダウ・東レ社製)
シリコーンC:KS-841(信越シリコーン社製)
シリコーンD:KS-830E(信越シリコーン社製)
シリコーンE:DOWSIL LTC 759 Coating(ダウ・東レ社製)
白金触媒:白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体 溶液(シグマアルドリッチ社製)
【0114】
【表3】
【0115】
(e)粘着シートロールの製造例
e-1.実施例1
粘着シートロールの製造には、重剥離シート供給部、ダイコーターヘッド、乾燥炉、軽剥離シートおよび貼合機を備えた塗工機を用いた。まず、重剥離シート供給部に重剥離シートロール(剥離シートRS3、サイズ幅1100mm×100m)をセットし、この重剥離シートの離型層上に、粘着剤組成物C1を、乾燥後の厚みTaが25μmとなるように塗工した。塗工後、100℃で3分間乾燥することで粘着層を形成した。塗工層は、重剥離シートの幅方向両端部において25mmの粘着層非形成部を設けた。
【0116】
次いで、軽剥離シート供給部に、軽剥離シートロール(剥離シートRS11、サイズ幅1100mm×長さ100m)をセットし、この軽剥離シートの離型層面を、前述の粘着層の露出面に貼り合わせ、「重剥離シート/粘着層/軽剥離シート」の構成を有する粘着シートS1を得た。その後、直径3インチ、長さ120cmの巻芯に粘着シートS1を巻回した後、温度25℃相対湿度50%の条件で1週間熟成させることにより、幅方向1.1m、長さ100mの粘着層を有する粘着シートロールを得た。膜厚、剥離力等の測定は、粘着シートロール長の50%の位置(50m巻き出した位置)で行った。
【0117】
e-2.実施例2~26、比較例1~8
粘着剤組成物、軽剥離シート、重剥離シートの種類を表4~6に示すように変更した以外は実施例1と同様の方法により各実施例・比較例の粘着シートロールを得た。
【0118】
(g)粘着シートロールの評価
g-1.デントの観察
各実施例・比較例の粘着シートロールを巻出し、光源(230VILS、ウシオ電機株式会社製)を正面100cmの距離から粘着シートに照射し、100cm後方にあるスクリーンに粘着シートを等倍で投影した。そして、目視によりスクリーンを観察して粘着シートのデントを以下の基準により評価した。なお、デントは目視でカウントできるものをいい、長径0.5mm以上のものを1個とカウントした。
5:デントが50個/m未満である。
4:デントが50個/m以上、100個/m未満である。
3:デントが100個/m以上、300個/m未満である。
2:デントが300個/m以上、500個/m未満である。
1:デントが500個/m以上、1000個/m未満である。
【0119】
g-2.折り畳み時の気泡
各実施例・比較例の粘着シートロールを巻出し、軽剥離シートを剥がし、露出した粘着層をポリイミドフィルムにラミネートした。
次いで重剥離シートを粘着層から剥がし、露出した粘着層を易接着PETフィルムにラミネートした。このラミネート物をオートクレーブに投入し、50℃で20分間保持した。次に、ラミネート物を取り出して25℃、50%RHで30分間静置した後、幅70mm・長さ100mmの大きさに裁断して、易接着PETフィルム/粘着層/ポリイミドからなる試験用積層体を得た。
次いで試験用積層体を、25℃、50%RH雰囲気において面状体無負荷捻回試験機(ユアサシステム機器社製)にて、左右に捻じ曲げた後、捻じ曲げる前の状態に戻るまでを1サイクルとして、20万サイクル同様の操作を行った。サンプル試験数はN=5で行い、試験後の外観を目視で評価した。評価基準は以下の通りである。なお、気泡は目視で判断し、直径100μm以上の空隙をのものをカウントした。
5:5サンプル全てにおいて、気泡が見られない。
4:1サンプルにおいて、気泡が見られた。
3:2サンプルにおいて、気泡が見られた。
2:3サンプルにおいて、気泡が見られた。
1:4サンプルまたは全てのサンプルにおいて、気泡が見られた。
【0120】
g-3.抜き加工収率
金型(トムソン刃)でシート状に打ち抜き加工を行った。打ち抜き形状・サイズはA4とした。加工収率は、打ち抜き加工を20回行ったときのナキワカレの発生しなかった頻度とする。
5:ナキワカレが発生した回数が1回以下。
4:ナキワカレが発生した回数が2回以上、3回以下。
3:ナキワカレが発生した回数が4回以上、5回以下。
2:ナキワカレが発生した回数が6回以上、7回以下。
1:ナキワカレが発生した回数が8回以上。
【0121】
g-4.貼り合わせ後の粘着層の変形
粘着シートから軽剥離シートを剥がし、被着体としてPETフィルム50μm(G2L、東洋紡社製)を貼り合わせ、幅1000mm×長さ1000mmサイズの試験片を作製した。光源(230VILS、ウシオ電機株式会社製)を正面100cmの距離から試験片に照射し、20cm以内の距離から目視により直接試験片を観察し、粘着層の浮きを以下の基準により評価した。なお、浮きは0.5mm以上のものをいう。なお、10mm以上の大きな浮きが存在する場合、評価は1とした。
5:1mm未満の浮きが10個/m未満、1mm以上10mm未満の浮きが10個/m未満。
4:1mm未満の浮きが30個/m未満、1mm以上10mm未満の浮きが10個/m未満。
3:1mm未満の浮きが30個/m未満、1mm以上10mm未満の浮きが10個/m以上。
2:1mm未満の浮きが30個/m以上、1mm以上10mm未満の浮きが10個/m未満。
1:上記評価2~5のいずれにも該当しない。若しくは10mm以上の浮きが1個/m以上。
【0122】
【表4】
【0123】
【表5】
【表6】
【0124】
重剥離シートを巻き外にする粘着シートロールは、比較例1に示すように、気泡および貼り合わせ後の粘着層の変形において課題が確認された。また、剥離力の比Ph/Plが2~6を満たしていても、剥離力Plが0.02~0.30N/25mmの範囲外、或いは剥離力Phが0.10~0.80N/25mmの範囲外である剥離シートで形成した粘着シートロールは、比較例2,3に示すように、気泡の発生に課題があることが確認された。同じく、剥離力の比Ph/Plが2~6を満たさない剥離シートを組み合わせた粘着シートロールは、比較例4,5、7に示すように、気泡の発生に課題があることが確認された。粘着層の厚みが150μmを超える粘着層を有する粘着シートロールは、比較例6に示すように、デントの発生が確認された。また、軽剥離シートと重剥離シートの厚みが同一または、Tl>Thの剥離シートを組み合わせた粘着シートロールは、比較例7,8に示すようにデントの発生に課題があった。一方、本実施例によれば、デントおよび気泡の発生を抑制し、抜き加工収率に優れ、貼り合わせ後の粘着層変形も抑制できる品質の高い粘着シートロールが提供できることを確認した。
【符号の説明】
【0125】
1:巻芯
2:発泡体層
3:粘着シート
6:重剥離シート
7:粘着層
8:軽剥離シート
10:粘着シートロール
図1
図2