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▶ 株式会社バイオマスレジンホールディングスの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094211
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】バイオマスマスターバッチ
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20240702BHJP
   C08L 3/02 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C08J3/22
C08L3/02
C08L23/06
C08L23/08
C08L23/26
C08K5/053
C08K5/103
C08L71/02
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111129
(22)【出願日】2023-07-06
(62)【分割の表示】P 2022209464の分割
【原出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】522261525
【氏名又は名称】株式会社バイオマスレジンホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】神谷 雄仁
(72)【発明者】
【氏名】坂口 和久
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA03
4F070AA13
4F070AA15
4F070AB03
4F070AB11
4F070AB23
4F070AB24
4F070AC43
4F070AE02
4F070AE30
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB04
4F070FB06
4F070FC06
4J002AA00Z
4J002AB04W
4J002BB02X
4J002BB02Y
4J002BB07X
4J002BB21Z
4J002BB23X
4J002BG01X
4J002BG03X
4J002CH01Z
4J002GA00
4J002GG00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】最終的な成形品の物性の設計や成形性を容易にせしめる技術を提供することを本発明は課題とする。
【解決手段】本発明の一態様は、デンプンと、ポリエチレン、アイオノマー樹脂およびアクリレート共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂とを含み、190℃10kgfでのMFRが3.30~4.20g/10minであり、かつ、デンプンの含有比率が60重量%超である、バイオマスマスターバッチである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンと、ポリエチレン、アイオノマー樹脂およびアクリレート共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂とを含み、190℃10kgfでのMFRが3.3~4.2g/10minであり、かつ、デンプンの含有比率が60重量%超である、バイオマスマスターバッチ。
【請求項2】
前記デンプンが、米またはそれに由来するものである、請求項1に記載のバイオマスマスターバッチ。
【請求項3】
前記ポリエチレンが、少なくとも2種から構成される、請求項1に記載のバイオマスマスターバッチ。
【請求項4】
前記樹脂のうち少なくとも1種が、バイオポリエチレンである、請求項1に記載のバイオマスマスターバッチ。
【請求項5】
グリセロール、ポリグリセロール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール、および、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、請求項1に記載のバイオマスマスターバッチ。
【請求項6】
前記添加剤が、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂と、グリセリン脂肪酸エステルとを含む、請求項5に記載のバイオマスマスターバッチ。
【請求項7】
デンプンと、
ポリエチレン、アイオノマー樹脂およびアクリレート共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、
を製造装置内で混練することを有する、請求項1に記載のバイオマスマスターバッチの製造方法。
【請求項8】
前記デンプンが、米またはそれに由来するものである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂のうち少なくとも1種の融点が、110℃以下である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂のうち少なくとも1種の190℃2.16kgfでのMFRが、15g/10min以上であり、
前記樹脂のうち少なくとも1種の190℃2.16kgfでのMFRが、15g/10min未満である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂のうち少なくとも1種が、バイオポリエチレンである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項12】
グリセロール、ポリグリセロール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール、および、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項13】
前記添加剤が、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂と、グリセリン脂肪酸エステルとを含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記デンプンのアルファ化が、前記製造装置内で開始される、請求項7に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載のマスターバッチと、希釈用樹脂とを含む、デンプンの含有比率が25重量%以上である、樹脂混合物。
【請求項16】
請求項15に記載の樹脂混合物を成形加工することによりなる、成形品。
【請求項17】
前記成形加工が、インフレーション成形である、請求項16に記載の成形品。
【請求項18】
フィルム又はシートである、請求項16に記載の成形品。
【請求項19】
包袋資材、農業用資材、電子機器筐体、家電製品筐体、建材用部品、自動車部品、二輪車用部品、航空機用部品、鉄道車両用部品および日用雑貨品からなる群から選択される少なくとも1種の用途に用いられる、請求項16に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオマスマスターバッチに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス(動植物に由来する有機物である資源(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭を除く)をいう)を化学的方法又は生物的作用を利用する方法等によって処理することにより製造される組成物またはその成形品(例えばプラスチック製買物袋等)の重量のうちバイオマス素材の配合率が25重量%以上を占めるものについては、バイオマス素材がカーボンニュートラルな素材であり、地球温暖化対策になる。
【0003】
そのような配合率のバイオマス素材の組成物の作製のためには、バイオマス素材が所定の配合率となるように樹脂と混合することによって一度で組成物を作製することもできるし、あるいは、バイオマス素材の配合率が高い組成物(バイオマスマスターバッチ)を一度作製した後、バイオマス素材の配合率を調整するための希釈用樹脂と混合することによって組成物を作製することもできる。後者の形態は、希釈用樹脂の物性等を適宜選択する等して、最終的な組成物の物性等の設計や成形性等を容易にするということができる点で好適である。
【0004】
一方、後者の形態の希釈用樹脂を使用してバイオマス素材の配合率を25重量%以上とするためには、バイオマスマスターバッチにおけるバイオマス素材の配合率を相当程度高める必要がある。このようなバイオマス素材の配合率の高いバイオマスマスターバッチを作製するにあたり、バイオマス素材としてデンプンと、樹脂としてポリエチレン、アイオノマー樹脂、あるいは、アクリレート共重合体等とを混合する際に、溶融粘度が高くなることがネックとなったり、熱流動性不足からの設備におけるトルクオーバーや処理能力の低下となったりして組成物中にバイオマス素材の凝集が発生しうるため、従来、バイオマスマスターバッチにおけるバイオマス素材の配合率は高くても60重量%以下(特には50重量%以下)とすることしか現実的にはなかった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5183455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなバイオマス素材の配合率の低いバイオマスマスターバッチと希釈用樹脂とを使用してバイオマス素材の配合率が特に25重量%以上の組成物とするには、最終的な組成物の物性等の設計や成形性等を容易にする重要因子となる希釈用樹脂の混合比率を少なくしなければならず、最終的な組成物の物性等の設計や成形性等が困難となったりすることを見出した。
【0007】
そこで本発明は最終的な成形品の物性の設計や成形性を容易にせしめる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、デンプンと、少なくとも1種のポリエチレン、アイオノマー樹脂およびアクリレート共重合体からなる群から選択される少なくとも1種とを含み、190℃10kgfでのMFRが3.30~4.20g/10minであり、かつ、デンプンの含
有比率が60重量%超である、バイオマスマスターバッチである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、最終的な成形品の物性の設計や成形性を容易にせしめる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るバイオマスマスターバッチの製造装置を示す斜視図である。
図2図1の正面図である。
図3図1の平面図である。
図4】バイオマスマスターバッチの製造装置を構成する第1収容部の第1収容空間を示す図である。
図5図1のバイオマスマスターバッチの製造装置を構成する第1収容部の第1収容空間に配置された複数の回転部材について示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るバイオマスマスターバッチの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「X~Y」は、その前後に記載される数値(XおよびY)を下限値および上限値として含む意味で使用し、「X以上Y以下」を意味する。「X~Y」が複数記載されている場合、例えば、「X1~Y1、あるいは、X2~Y2」と記載されている場合、各数値を上限とする開示、各数値を下限とする開示、および、それらの上限・下限の組み合わせは全て開示されている(つまり、補正の適法な根拠となる)。具体的には、X1以上との補正、Y2以下との補正、X1以下との補正、Y2以上との補正、X1~X2との補正、X1~Y2との補正等は全て適法とみなされなければならない。
【0012】
<バイオマスマスターバッチ>
本発明の一態様は、デンプンと、ポリエチレン、アイオノマー樹脂およびアクリレート共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂とを含み、190℃10kgfでのMFRが3.30~4.20g/10minであり、かつ、デンプンの含有比率が60重量%超である、バイオマスマスターバッチである。かかる態様によって、最終的な成形品の物性の設計や成形性を容易にせしめることができる。
【0013】
(バイオマスマスターバッチの190℃10kgfでのMFR)
本発明の一態様のバイオマスマスターバッチの190℃10kgfでのメルトフローレイト(MFR)は、3.30~4.20g/10minである。本発明の一実施形態において、バイオマスマスターバッチの190℃10kgfでのMFRは、3.32g/10min以上、3.34g/10min以上、3.36g/10min以上、3.38g/10min以上、3.40g/10min以上、3.42g/10min以上、3.44g/10min以上、3.46g/10min以上、3.48g/10min以上、3.50g/10min以上、3.60g/10min以上、3.70g/10min以上、3.80g/10min以上、あるいは、3.90g/10min以上である。本発明の一実施形態において、バイオマスマスターバッチの190℃10kgfでのMFRは、4.15g/10min以下、4.13g/10min以下、4.11g/10min以下、4.09g/10min以下、4.07g/10min以下、4.05g/10min以下、4.03g/10min以下、4.01g/10min以下、3.99g/10min以下、3.98g/10min以下、3.96g/10min以下、3.90g/10min以下、3.80g/10min以下、3.70g/10min以下、3.60g
/10min以下、3.50g/10min以下、3.48g/10min以下、あるいは、3.46g/10min以下である。
【0014】
(デンプン)
本発明の一態様のバイオマスマスターバッチは、デンプンを含み、その含有比率はバイオマスマスターバッチにおいて60重量%超である。60重量%以下となると、最終的な組成物の物性等の設計や成形性等を容易にする重要因子となる希釈用樹脂の混合比率を少なくしなければならず、最終的な組成物の物性等の設計や成形性等が困難となりうる。本明細書中、少なくともデンプンについての含有量、含有比率等について言うときは、その含有量、含有比率等は含水率から換算した固形分に基づくものとする。なお、本明細書において、含水率の計算は、カールフィッシャー電量滴定法(JIS K0113:2005)の方法に基づきうる。
【0015】
本発明の一実施形態において、バイオマスマスターバッチにおけるデンプンの含有比率は、61重量%以上、62重量%以上、63重量%以上、64重量%以上、65重量%以上、66重量%以上、67重量%以上、68重量%以上、あるいは、69重量%以上である。本発明の一実施形態において、バイオマスマスターバッチにおけるデンプンの含有比率は、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、78重量%以下、76重量%以下、74重量%以下、73重量%以下、71重量%以下、69重量%以下、67重量%以下、65重量%以下、あるいは、63重量%以下である。
【0016】
本明細書中、デンプンとは、成分としてデンプンのみからなるものの他、精米(生米)や米ぬか等のデンプンを主成分とするデンプン含有物(単に「デンプン」とも称する)でありうる。主成分とは、デンプン含有物中、デンプンが、50重量%超、60重量%以上、あるいは、70重量%以上でありうる。
【0017】
デンプンの種類は、特に制限されないが、市場価格や安定供給の観点から、精米(生米)または米ぬか(中白粉)等の米、じゃがいも、タロイモ、トウモロコシ、小麦、ライ麦、豆類、及び、サツマイモからなる群より選択される1つ以上あるいはこれに由来するものであることが好ましい。なお由来するものとは、これらの少なくとも1種に対して加工処理を行ったものであり、例えば大豆であればにがり等の成分を使って加工処理することにより得られた豆腐であってもよいということである。精米(生米)または米ぬか(中白粉)等の米に何らかの加工処理を行ったものであってもよい。
【0018】
原料としてのデンプンとして米を用いる場合、それは、β構造(結晶構造)でありうる。なお、精米(生米)は玄米から米ぬかを取ることによって準備することができる。精米(生米)は、吟醸米(例えば、3分精米~7分精米、4分精米~6分精米等)の形態であってもよい。中でも、バイオマスマスターバッチの原料となる樹脂のペレットの一般的なサイズと類似しており、ハンドリングが容易であるという観点から、米は精米であることが好ましい。なお、米ぬかは、精米される過程で廃棄されることが多いため、米ぬかを使用することも、環境負荷が低くエコロジーであり、ライフサイクルアセスメントの観点からも好適である。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、原料としてのデンプンの平均直径は、(ここで、直径とは、任意の二点を取ったときの最大径、本明細書において同じ)100μm以上、110μm以上、500μm以上、750μm以上、1mm以上、2mm以上、3mm以上、4mm以上、あるいは、4.5mm以上でありうる。本発明の一実施形態によれば、原料としてのデンプンの平均直径は、15mm以下、10mm以下、9mm以下、8mm以下、7mm以下、あるいは、6mm以下でありうる。具体的には、複数のデンプンから統計学的に信頼できる数(あるいは、10個、50個、100個、500個、1000個または
それ以上)を任意に選び出し、それらを相加平均する。測定に用いる機器としては、例えば、ノギス(JIS B 7507:2016)や顕微鏡が挙げられる。
【0020】
また、デンプンとして米を用いる場合、米粉を用いることもできる。米粉の原料としては、上記と同様に、β構造(結晶構造)である、精米、吟醸米(3分精米~7分精米、4分精米~6分精米等)、米ぬか(中白粉)等が好適である。米粉の平均直径は、100μm未満、あるいは、80μm未満でありうる。米粉の平均直径は、30μm以上、40μm以上、50μm以上、あるいは、60μm以上でありうる。平均直径の測定に用いる機器としては、例えば、顕微鏡が挙げられ、複数のデンプンから統計学的に信頼できる数(あるいは、10個、50個、100個、500個、1000個またはそれ以上)を任意に選び出し、それらを相加平均する。
【0021】
デンプンが米である場合、バイオマスマスターバッチにおける米の含有比率は、61重量%以上、62重量%以上、63重量%以上、64重量%以上、65重量%以上、66重量%以上、67重量%以上、68重量%以上、あるいは、69重量%以上である。本発明の一実施形態において、バイオマスマスターバッチにおける米の含有比率は、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、78重量%以下、76重量%以下、74重量%以下、73重量%以下、71重量%以下、69重量%以下、67重量%以下、65重量%以下、あるいは、63重量%以下である。このように、本明細書においてデンプンを米(精米および/または米ぬか)と読み替えてもよい。
【0022】
(樹脂)
本発明の一態様のバイオマスマスターバッチは、ポリエチレン、アイオノマー樹脂およびアクリレート共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含む。このような樹脂は、混練中に溶融粘度が高くなり取り扱いが難しいという性質がある。
【0023】
本発明の一実施形態において、ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、あるいは、高密度ポリエチレン(HDPE)である。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明の一実施形態において、ポリエチレンの市販品としては、日本ポリエチレン社のカーネルKS340T、カーネルKJ640T、KS560T、KS240T、KF260T等が例示できる。
【0025】
本発明の一実施形態において、前記ポリエチレンが、少なくとも2種から構成される。
【0026】
本発明の一実施形態において、前記樹脂のうち少なくとも1種が、バイオポリエチレンである。かかる実施形態であることによって、バイオマス度を高めることができる。ここで、バイオマス度とは、樹脂混合物中のバイオマスに由来する割合(重量%)でありうる。本発明の一実施形態において、バイオマス度は、60重量%以上、62重量%以上、64重量%以上、66重量%以上、68重量%以上、70重量%以上、72重量%以上、あるいは、74重量%でありうる。本発明の一実施形態において、バイオマス度の上限に特に制限はないが、70重量%以下、68重量%以下、66重量%以下、あるいは、65重量%以下でありうる。
【0027】
本発明の一実施形態において、バイオポリエチレンの市販品としては、ブラスケム社のSPB608、SPB208、SLH218、SLH118;ノボンジャパン社のノボンマスターバッチ NOBON BN2バイオ等が例示できる。
【0028】
本発明の一実施形態において、アイオノマー樹脂は、エチレン、アクリル酸、メタクリ
ル酸等の少なくとも1種からなるポリマー構造の間に金属イオンが結合して架橋構造を形成している合成樹脂である。ここで、金属イオンとしては、亜鉛イオン、ナトリウムイオン等が例示できる。市販品としては、三井・ダウケミカル社のハイミラン(登録商標)1706、1707等が例示できる。
【0029】
本発明の一実施形態において、アクリレート共重合体は、エチレン-アクリル酸メチル共重合体が好適である。市販品としては、日本ポリエチレン社製のレクスパールEMA EB140F、EB050S等が例示できる。
【0030】
本発明の一実施形態において、バイオマスマスターバッチにおける樹脂(2種以上併用の場合はその合計)の含有比率は、10重量%以上、12重量%以上、14重量%以上、16重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、22重量%以上、24重量%以上、26重量%以上、あるいは、28重量%以上である。本発明の一実施形態において、バイオマスマスターバッチにおける樹脂(2種以上併用の場合はその合計)の含有比率は、60重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、32重量%以下、30重量%以下、28重量%以下、26重量%以下、あるいは、25重量%以下である。
【0031】
本発明の一実施形態において、樹脂が2種以上併用され、これらの樹脂のメルトフローレイトの値は異なるものであり、少なくとも1種の樹脂(これを「低メルトフローレイト樹脂」とも称する)のメルトフローレイト(MFR(190℃/2.16kgf))は、0.5g/10min以上15g/10min未満、0.8~14g/10min、1.2~13g/10min、1.4~12g/10min、1.8~11g/10min、2.0~10g/10min、2.2~9g/10min、2.4~8g/10min、2.8~7g/10min、3~6g/10min、3.2~5g/10min、あるいは、3.3~4g/10minであり、少なくとも1種の樹脂(これを「高メルトフローレイト樹脂」とも称する)のメルトフローレイト(MFR(190℃/2.16kgf))は、15~50g/10min、18~48g/10min、20~46g/10min、22~44g/10min、24~42g/10min、26~40g/10min、28~38g/10min、29~36g/10min、29~34g/10min、あるいは、29~32g/10minである。すなわち、本発明の一実施形態において、前記樹脂のうち少なくとも1種の190℃2.16kgfでのMFRが、15g/10min以上であり、前記樹脂のうち少なくとも1種の190℃2.16kgfでのMFRが、15g/10min未満である。上記のようなメルトフローレイトを有する樹脂を適宜複数用いることで、高い強度と流動性を両立させることができインフレーション加工に好適に用いられる。ただし、インフレーション加工に制限されず、例えば、シート押出加工、射出成形加工等にも使用することができる。
【0032】
本発明の一実施形態において、高メルトフローレイト樹脂の含有重量に対する低メルトフローレイト樹脂の含有重量(低メルトフローレイト樹脂/高メルトフローレイト樹脂)は、1.00超、1.10以上、1.20以上、1.30以上、1.40以上、1.50以上、1.60以上、1.70以上、1.80以上、1.90以上、1.93以上、1.94以上、1.95以上、1.96以上、1.97以上、1.98以上、1.99以上、2.00以上、あるいは、2.01以上である。本発明の一実施形態において、高メルトフローレイト樹脂の含有重量に対する低メルトフローレイト樹脂の含有重量(低メルトフローレイト樹脂/高メルトフローレイト樹脂)は、5.00未満、4.50以下、4.00以下、3.50以下、3.00以下、2.80以下、2.60以下、2.40以下、2.26以下、2.25以下、2.24以下、2.23以下、2.22以下、2.21以下、2.20以下、2.15以下、2.10以下、あるいは、2.05以下である。
【0033】
本発明の一実施形態において、使用される樹脂の種類の数は、例えば4種類以下、3種類以下、あるいは2種類以下である。例えば4種類の樹脂が使用される場合、3種の樹脂が高メルトフローレイト樹脂で1種の樹脂が低メルトフローレイト樹脂であってもよいし、3種の樹脂が低メルトフローレイト樹脂で1種の樹脂が高メルトフローレイト樹脂であってもよいし、2種の樹脂が高メルトフローレイト樹脂で2種の樹脂があってもよい。例えば3種類の樹脂が使用される場合、2種の樹脂が高メルトフローレイト樹脂で1種の樹脂が低メルトフローレイト樹脂であってもよいし、2種の樹脂が低メルトフローレイト樹脂で1種の樹脂が高メルトフローレイト樹脂であってもよい。バイオマスマスターバッチが、190℃10kgfでのMFRが3.3~4.2g/10minであり、かつ、デンプンの含有比率が60重量%超となるように適宜組み合わされうる。
【0034】
本発明の一実施形態において、樹脂の融点は、(樹脂が2種以上使用される場合はそれぞれ独立して)120℃以下、110℃以下、100℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以下、65℃以下、あるいは、60℃以下である。本発明の一実施形態において、樹脂の融点は、(樹脂が2種以上使用される場合はそれぞれ独立して)45℃以上、50℃以上、55℃以上、59℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、あるいは、90℃以上でありうる。本発明の一実施形態によれば、前記樹脂のうち少なくとも1種の融点が、110℃以下である。なお、本明細書において、融点の測定は、例えば株式会社 島津製作所製の定試験力押出形 細管式レオメータ フローテスタ(CFT-500EX)を用いて行うことができる。
【0035】
(添加剤)
本発明の一実施形態によれば、バイオマスマスターバッチは、グリセロール、ポリグリセロール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール、および、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノエステル、ジエステル、トリエステルの3種が挙げられ、より具体的には、例えば、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、グリセリンジアセトモノラウレート等のアセチル化グリセライド(ジアセチル脂肪酸モノグリセリド)、コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン縮合リノシール酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレートが挙げられる。本発明の一実施形態によれば、ジアセチル脂肪酸モノグリセリドは、炭素数が8~15、9~14、あるいは、10~13のアルキル基を有する。本発明の一実施形態によれば、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、以下の構造を有し、nは、例えば、2~6、あるいは、2~5であり、Rは、炭素数が11~20、13~19、あるいは、15~18のアルキル基である。
【0037】
【化1】
【0038】
本発明の一実施形態によれば、不飽和カルボン酸として、マレイン酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ソルビン酸、アクリル酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、不飽和カルボン酸の金属塩、アミド、イミド、エステル等を使用することができる。
【0039】
一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールは、以下:
H(OA)OH
ここで、Aはアルキレン基で、nが1~5である、で示される。本発明の一実施形態によれば、アルキレン基の炭素数は1~5、1~4、1~3あるいは1または2でありうる。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリエチレンまたはポリプロピレン等が挙げられる。これは、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸またはその誘導体と、ラジカル発生剤とを溶媒の存在下または不存在下に加熱混合することにより得られる。本発明の一実施形態において、ポリオレフィン樹脂に対する不飽和カルボン酸またはその誘導体の付加量(変性量)は、0.1~15質量%、あるいは、1~10質量%である。添加剤としては、臭気が無く、酸性度が小さい不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性したポリオレフィン樹脂が好適である。
【0041】
本発明の一実施形態において、添加剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の一実施形態において、添加剤は液状でありうる。
【0043】
本発明の一態様のバイオマスマスターバッチにおける添加剤(2種以上併用の場合はその合計)の含有比率は、(添加剤が液状である場合は固形分換算で)0.2重量%以上、0.5重量%以上、1.0重量%以上、1.5重量%以上、2重量%以上、2.5重量%以上、3.0重量%以上、3.5重量%以上、4.0重量%以上、4.5重量%以上、5.0重量%以上、5.2重量%以上、5.4重量%以上、5.6重量%以上、あるいは、5.8重量%以上である。本発明の一態様のバイオマスマスターバッチにおける添加剤(2種以上併用の場合はその合計)の含有比率は、(添加剤が液状である場合は固形分換算で、)20重量%以下、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8.0重量%以下、あるいは、7.0重量%以下である。
【0044】
本発明の一実施形態において、添加剤は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂を含む。
【0045】
本発明の一実施形態において、添加剤は、グリセリン脂肪酸エステルを含む。
【0046】
本発明の一実施形態において、添加剤が2種以上併用される場合、少なくとも、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂と、グリセリン脂肪酸エステルとの組み合わせを含む。不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂における「カルボキシル基」と、「ポリオレフィン構造」とが、それぞれ、デンプンの水酸基、ポリエチレン樹脂と相互作用することで相溶化効果を高めることができうる。また、グリセリン脂肪酸エステルが、デンプンのα化を促進し、さらに樹脂との相溶性を高めて可塑性を付与しうる。なお、かようなメカニズムによって本発明が制限されるものではない。
【0047】
本発明の一実施形態において、グリセリン脂肪酸エステルの含有重量に対する不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂の含有重量は、1.0超、1.2以上、1.4以上、1.6以上、1.8以上、2.0以上、2.2以上、2.4以上、あるいは、2.5以上である。本発明の一実施形態において、グリセリン脂肪酸エステルの含有重量に対する不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂の含有重量は、4.0以下、3.5以下、3.0以下、あるいは、2.8以下である。
【0048】
本発明の一実施形態において、添加剤は、市販品を用いてもよく、具体的には、リケエ
イドMG-440P(理研ビタミン株式会社社製)、MG-441P(理研ビタミン株式会社製)、MG-250P(理研ビタミン株式会社製)、ポエム J-4081V(理研ビタミン株式会社製)、ユーメックス1001(三洋化成工業株式会社製)ユーメックス1010(三洋化成工業株式会社製)、チラバゾールVR-01(太陽化学株式会社製)、チラバゾールVR-07(太陽化学株式会社製)、バイオサイザー(理研ビタミン社製)等が挙げられる。
【0049】
本発明の一実施形態において、添加剤は、生分解性を有している。添加剤が生分解性を有することにより、添加剤が自然界に残存することを防ぐことができる。また、非生分解性の添加剤を用いた場合、組成物全体の生分解を阻害する可能性もあるが、生分解性の添加剤を用いる場合は組成物全体の生分解を阻害する可能性は極めて低い。なお、日本バイオプラスチック協会(JBPA)の生分解性プラポジティブリスト(PL)(分類番号B-3(滑剤))に列挙されている物質は、参照により全体として引用され、本明細書に組み込まれ、補正の適法な根拠となる。
【0050】
ここで、生分解とは、土中・水中の微生物が生産する酵素によって、物質の分子結合が切断され、最終的に水と二酸化炭素とに分解されることを指す。一実施形態によれば、生分解性とは、ISO 9408、ISO 9439、ISO 10707、JIS K 6950、JIS K 6951、JIS K 6953又は、JIS K 6955の少なくとも1つを満たすものである。
【0051】
<バイオマスマスターバッチの製造方法>
本発明の一態様において、デンプンと、ポリエチレン、アイオノマー樹脂およびアクリレート共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂(以下、材料とも称する)と、を製造装置内で混練することを有する、バイオマスマスターバッチの製造方法が提供される。本態様においては、バイオマスマスターバッチにおけるデンプンの含有比率が60重量%超となるように設定され、かつ、バイオマスマスターバッチの190℃10kgfでのMFRが3.30~4.20g/10minとなるように設定されている。バイオマスマスターバッチの190℃10kgfでのMFRが3.30~4.20g/10minとなるように設定するためには、上述のとおり、原料の樹脂のMFRを選択したり、原料の樹脂の融点を選択したり、適宜、相溶化剤や、可塑化剤(アルファ化促進剤)を併用したりすること等が例示できる。
【0052】
材料の混合には、種々の製造装置を制限なく用いることができる。ただし、製造装置に投入されるデンプンが気乾状態である場合には、製造装置内に水を投入することが好ましく、そうすることで、デンプンが水の存在下で加温された状態で混合されることになりデンプンのアルファ化が装置内で開始され、これにより、樹脂と、デンプンとが混合時にアモルファスの状態となり、混合を容易にすることができる。そのため、装置は水が投入される場合に用いることができる装置であることが好ましい。
【0053】
(製造装置)
本発明の一実施形態において、製造装置は、二軸混練装置100でありうる。二軸混練装置100は、図1図5に示すように第1収容部10と、投入部20と、回転部30と、脱水部50と、第1脱気部60と、第2脱気部70と、排出部80と、冷却部90と、切断部110と、を有する。
【0054】
なお、二軸混練装置100の説明にあたり、図面には直交座標系を表記している。Xは後述する回転部30の回転軸の延在する方向であり、長手方向Xとする。Yは長手方向Xと交差する第1収容部10の幅方向に相当し、幅方向Yとする。Zは長手方向X及び幅方向Yと交差する方向であり、高さ方向Zとする。以下、詳述する。
【0055】
(第1収容部10)
第1収容部10は、デンプンおよび樹脂や相溶化剤(材料)等を、必要に応じて水とともに収容できる第1収容空間S1を形成する。第1収容部10は、二軸混練装置100を設置する空間の長手方向Xに延在するように長尺に構成している。
【0056】
第1収容部10は、回転部30を構成する複数の回転部材31、32、33、34、35、36、37、38、39、41、42を収容する第1収容空間S1を形成するように構成している。第1収容部10によって形成される第1収容空間S1は投入部20の直下から第2脱気部70と接続される部位まで一続きになるように構成している。第1収容空間S1は、本実施形態において回転部30の回転部材の回転軸を二軸設けるように、図4に示すように断面の内周部分を、2つの円弧を合わせたような形状に構成している。第1収容部10には第1収容空間S1の温度を調整するためのヒーター等の加熱装置(図示省略)を設けることができる。上述したヒーターは第1収容部10の第1収容空間S1の長手方向Xにおいて後述する回転部材の特定の区間毎に温度を調整できるように例えば長手方向Xに複数配置することができる。
【0057】
(投入部)
投入部20は、図1に示すように第1収容空間S1に上述した材料と水を投入可能なホッパー(フィーダー)を備える。投入部20のホッパーは、漏斗状に形成している。
【0058】
(回転部)
回転部30は、第1収容空間S1において回転可能に配置される。回転部30は、複数の回転部材31~39、41、42を長手方向Xに平行な方向を回転軸として回転軸に沿って並べて配置するように構成している。回転部材31~39、41、42は、図5に示すように幅方向Yに沿って2軸並べて設けている。回転部材31は、本明細書において第1スクリュー、回転部材32は第1パドル、回転部材33は第2スクリュー、回転部材34は第2パドル、回転部材35は第4スクリュー、回転部材41は第6スクリュー、回転部材42は第7スクリューに相当する。以下に各々の回転部材について詳述する。
【0059】
(回転部材31)
回転部材31は、第1収容部10の第1収容空間S1において投入部20のホッパーの直下に配置している。回転部材31は、スクリューを形成するように構成している。本明細書において回転部材31が配置される第1収容空間S1の部位は材料と水が投入される材料投入部と称する。
【0060】
(回転部材32、33)
回転部材32は、図5に示すように第1収容空間S1の回転部材31よりも下流側において回転部材31に隣接して設けている。回転部材32は、板状部材を回転軸に沿って並べて配置するように構成している。回転部材32は、回転部材31と回転部材33との間に配置している。
【0061】
回転部材33は、第1収容空間S1の回転部材32よりも下流側において回転部材32に隣接して設けている。回転部材33は、回転部材31と同様にスクリューを形成するように構成している。回転部材33は、回転部材31よりも螺旋の溝を浅く形成している。回転部材33は、回転部材31よりも螺旋の径方向における最外周と最内周の差が大きくなるように構成している。回転部材33は、回転部材31と最外周の大きさが同等で、最内周が回転部材31よりも小さくなるように構成している。回転部材32、33が配置される第1収容空間S1の部位は、投入部20から投入された樹脂を溶解させる樹脂溶解部と称することができる。
【0062】
(回転部材34)
回転部材34は、回転部材32と同様に板状部材を回転軸に沿って複数並べるように配置しており、第1収容空間S1において回転部材33よりも回転軸の下流側に配置するように構成している。回転部材34は、図5において板状部材の板厚が一種類となるように図示しているが、一種類でなくてもよい。回転部材34は、回転部材32よりも薄く形成することによってせん断応力をより発揮させて材料を分散させるとともに均一な撹拌を行うように構成している。回転部材34が配置される第1収容空間S1の部位は、投入部20から投入された材料を混練する混練部と称することができる。回転部材33と回転部材34との境界近傍には、上述した材料に加えられた水等の気液成分を排出するために脱水部50を接続するように構成している。詳細は後述する。
【0063】
(回転部材35)
回転部材35は、第1収容空間S1において回転部材34よりも下流側において回転部材34に隣接して設けている。回転部材35は、回転部材33と同様にスクリューを形成するように構成している。回転部材35は、螺旋の溝の深さが回転部材33と同等になるように構成している。回転部材35は、第1収容空間S1において混練された材料を脱気する第1脱気部60と接続される。詳しくは後述する。
【0064】
(回転部材36~39)
回転部材36、37は、第1収容空間S1の回転部材35の下流側において回転部材35に隣接して設けている。回転部材36、37は、回転部材32と同様に板状部材を並べるように構成している。回転部材36、37には起伏の小さい螺旋を形成しており、回転部材36と回転部材37の螺旋の回転方向は異なるように構成している。
【0065】
回転部材38、39は、第1収容空間S1の回転部材37よりも下流側において回転部材37に隣接して設けている。回転部材38、39は、回転部材33と同様にスクリューを形成するように構成している。回転部材38、39のスクリューは螺旋の溝の深さを回転部材33と同様に構成している。回転部材38と回転部材39は螺旋の回転方向が逆転するように構成している。
【0066】
このように回転部材36、38と回転部材37、39の螺旋の回転方向を逆転させることによって、回転部材35から送られる材料は回転部材37、39で回転軸の上流側に一時的に押し返されるようにしたうえで下流側に移動する。これにより、材料が回転部材36~39に比較的長く滞留し、材料の密度が向上するように圧縮が行われる。回転部材36~39が配置される第1収容空間S1の部位は材料の圧縮を行う圧縮部と称することができる。
【0067】
(回転部材41、42)
回転部材41は、第1収容空間S1の回転部材35、39よりも下流側において回転部材39に隣接して設けている。回転部材42は、第1収容空間S1の回転部材41よりも下流側において回転部材41に隣接して設けている。回転部材41、42は、回転部材33と同様にスクリューを形成するように構成しており、回転部材42は回転部材41よりも螺旋のピッチが短くなるように構成している。回転部材41、42は第1収容空間S1に収容された材料の脱気を行う第2脱気部70と接続される。
【0068】
このように、回転部材31~39、41、42は、螺旋形状を備え、投入部20の直下に配置された回転部材31と、回転部材31よりも回転軸の下流側に配置され、回転部材31よりも螺旋の溝が浅く形成された回転部材33を備える。このように構成することによって、材料の少なくとも一部が通常、二軸混練装置ではスクリューによって下流側に送
られ難くても、回転部材31によって材料の少なくとも一部を下流側に送るようにして混練を行うことによってバイオマスマスターバッチを効率的に製造することができる。
【0069】
また、回転部材31~39、41、42は、第1収容空間S1において回転部材34よりも下流側に設けられる回転部材35を備える。回転部材35の近傍には、第1脱気部60を接続している。第1脱気部60は、スクリュー61と、第3収容部62と、を備える。スクリュー61は、回転部材31~39、41、42の回転軸と交差する方向に平行な方向を回転軸として回転し、対になるように構成している。第3収容部62は、スクリュー61を収容する第3収容空間S3を備えるとともに第1収容部10と接続され、第1収容空間S1で発生した気体を吸引により排出可能なポンプ等と接続される。このように構成することによって、脱水部50と同様に材料の固形成分を第1収容空間S1に残しつつ、不要な水分をさらに排出するようにできる。
【0070】
また、回転部材31~39、41、42は、第1収容空間S1において回転部材35よりも下流側に設けられる回転部材41と、回転部材41に隣接して設けられる回転部材42と、を備える。回転部材41の近傍には、第2脱気部70を接続している。第2脱気部70は、スクリュー71と、第4収容部72と、を備える。スクリュー71は、回転部材41の回転軸と交差する方向に平行な方向を回転軸として回転し、対になるように構成している。第4収容部72は、スクリュー71を収容する第4収容空間S4を備えるとともに第1収容部10と接続され、第1収容空間S1で発生した気体を吸引により排出可能なポンプと接続される。このように構成することによって、第1脱気部60と同様に材料の固形成分を第1収容空間S1に残しつつ、不要な水分をさらに排出することができる。また、第2脱気部70を回転部材42ではなく、螺旋のピッチが比較的大きい回転部材41の近傍で接続することによって、不要な水分を第1収容空間S1から排出し易くすることができる。
【0071】
なお、回転部材31~39、41、42の長手方向Xの全体長さに対する回転部材32、34の比率(すなわち、ニーディングブロック比率)は、例えば、18~32%、あるいは、22~27%でありうる。
【0072】
(脱水部50)
脱水部50は、第1収容部10で混練される水分等の気液成分を排出(脱水)するように構成している。脱水部50は、図5に示すように回転部材33と回転部材34との境界近傍において回転部材33、34の回転軸と交差する方向から第1収容部10に接続している。第1収容空間S1における回転部材33と回転部材34の境界付近では、少なくとも混練の際の第1収容空間S1における内部圧力が飽和蒸気圧となるように構成できる。
【0073】
脱水部50は、図5に示すようにスクリュー51(第3スクリューに相当)と、第2収容部52と、駆動部53と、を備える。スクリュー51は、回転部材31~39、41、42と交差する方向に回転し、対になるように構成している。駆動部53は、スクリュー51を回転させるモーターを備えるように構成している。第2収容部52は、図5に示すように第1収容部10と接続され、スクリュー51を収容する第2収容空間S2を設けた筐体等を備える。第2収容部52は、第2収容空間S2から水分を排出する。第2収容部52には水分を排出可能な開口部(図示省略)を設けている。開口部は、第2収容部52の上部等に設けることができる。
【0074】
上述のとおり、回転部材31~39、41、42は、回転部材31と回転部材33の間に配置され、板状部材を回転軸に並べて配置した回転部材32と、回転部材33よりも回転軸の下流側に配置される板状の回転部材34と、を備える。回転部材33と回転部材34の近傍には、脱水部50を接続している。脱水部50は、スクリュー51と、第2収容
部52と、を備える。スクリュー51は、回転軸と交差する幅方向Yに平行な方向を回転軸として回転し、対となるように構成している。第2収容部52は、スクリュー51を収容する第2収容空間S2を備えるとともに第1収容部10と接続され水分を排出可能な開口部を設けている。このように構成することによって、材料に含まれる固形成分を第1収容部10の第1収容空間S1に残しつつ、不要な水分等を取り除くことができる。
【0075】
(第1脱気部60)
第1脱気部60は、第1収容部10において回転部材35が配置される近傍に接続するように構成している。第1脱気部60は、図5に示すようにスクリュー61(第5スクリューに相当)と、第3収容部62と、駆動部63と、を備える。スクリュー61は、回転部材31~39、41、42の回転軸と交差する方向に回転し、対になるように構成している。駆動部63は、脱水部50と同様にスクリュー61を回転駆動させるモーター等を備えるように構成している。第3収容部62は、回転部材35の近傍で第1収容部10と接続され、スクリュー61を収容する第3収容空間S3を設けた筐体等を備える。第3収容部62は、第3収容空間S3を介して第1収容空間S1で発生した気液成分を吸引可能な真空ポンプ等と接続している。
【0076】
(第2脱気部70)
第2脱気部70は、第1収容部10において回転部材41が配置される近傍において接続するように構成している。第2脱気部70は、図5に示すようにスクリュー71(第8スクリューに相当)と、第4収容部72と、駆動部73と、を、備える。スクリュー71は、回転部材31~39、41、42の回転軸と交差する方向に回転し、対になるように構成している。駆動部73は、第1脱気部60と同様にスクリュー71を回転駆動させるモーター等を備えるように構成している。第4収容部72は、回転部材41の近傍で第1収容部10と接続され、スクリュー71を収容する第4収容空間S4を設けた筐体等を備える。脱水部50のスクリュー51と第1脱気部60のスクリュー61と第2脱気部70のスクリュー71は、回転部材31~39、41、42の動作を妨げない程度に幅方向Yに沿って回転部材31~39、41、42に接近するように延在している。第4収容部72は、第4収容空間S4を介して第1収容空間S1で発生した気液成分を吸引可能な真空ポンプ等と接続している。なお、第2収容部52、第3収容部62、第4収容部72は、図5において便宜上、簡略化して図示している。
【0077】
このように、二軸混練装置1が2つの脱気部として第1脱気部60と第2脱気部70を備えるように構成することによって、含水率が高い材料を用いて混練を行った際に、第1脱気部60と第2脱気部70によって更に効率的に脱水を行うことができバイオマスマスターバッチに不要な水分等を取り除くことができる。
【0078】
(排出部80)
排出部80は、図1等に示すように第1収容部10の下流側における外側に隣接して設けている。排出部80は、第1収容部10の第1収容空間S1において脱気された材料(以下、混練物とも称する)を紐状に形成するために設けられる。排出部80は、本実施形態において第1収容部10の長手方向Xにおける端部であって第1収容部10の第1収容空間S1と外部とを繋ぐ部位に設けた複数の穴形状を設けた部材を備えるように構成している。排出部80は、第1収容部10に配置された回転部材31~39、41、42等と同様にヒーター等の加熱装置を設けることによって加温することができる。
【0079】
(冷却部90)
冷却部90は、第1収容部10から排出された紐状の混練物を冷却するために設けられる。冷却部90は、図1に示すようにコンベヤー91と、液体供給部92と、気体供給部93と、を備える。
【0080】
コンベヤー91は、排出部80に隣接して設けている。コンベヤー91は、図2に示すように排出部80から排出された混練物を切断部110まで搬送するように構成している。コンベヤー91は、本実施形態において図2に示すように長手方向Xから高さ方向Zの正の方向に向かって傾斜した斜め方向に沿って延在するように構成している。ただし、コンベヤー91の延在方向は一例であって混練物を切断部110に搬送できれば、コンベヤーの具体的な搬送方向は図2等に限定されない。
【0081】
液体供給部92は、コンベヤー91上で搬送される混練物に比較的温度の低い冷却水を供給するように構成している。液体供給部92は、ホース等によって冷却水の供給源と接続された噴射ノズルをコンベヤー91の搬送方向に複数配置することによって構成している。
【0082】
気体供給部93は、所定の温度に調整された空気等の気体をコンベヤー91上で搬送される混練物に供給するように構成している。気体供給部93は、不図示のダクトと、ダクトに接続され、気体をコンベヤー91上の混練物に向けて噴射可能なブロワーを備えるように構成している。
【0083】
(切断部110)
切断部110は、排出部80から排出され、冷却部90において冷却された混練物を所定の長さにて切断するように構成している。切断部110は、図1に示すように混練物を送る送りローラー111と、送られた混練物を切断する刃物を備えた切断ローラー112と、を備えることができる。また、冷却された混練物は、乾燥を行うチャンバー等の設備(乾燥部と呼ぶことができる)において乾燥工程を実施することができる。
【0084】
切断部110を経てペレット状になったバイオマスマスターバッチの平均直径は、0.5~30mm、0.5~20mm、0.5~10mm、1~8mm、2~6mm、あるいは、2~5mmである。なお実施例で得られたバイオマスマスターバッチの平均直径は4~5mmであった。バイオマスマスターバッチの平均直径の測定方法はデンプンの平均直径の測定方法と同じでありうる。
【0085】
このようにして本発明の一実施形態のバイオマスマスターバッチを得ることができる。なお、バイオマスマスターバッチは、包袋資材、農業用資材、電子機器筐体、家電製品筐体、建材用部品、自動車部品、二輪車用部品、航空機用部品、鉄道車両用部品および日用雑貨品からなる群から選択される少なくとも1種の用途に応用できる。中でも、包袋資材、農業用資材に応用することが好適である。
【0086】
より好適には、マスターバッチと、希釈用樹脂とを含む樹脂混合物を成形加工することによりなる成形品を上記用途に応用することである。
【0087】
以下では、樹脂混合物およびその製造方法ならびに成形品およびその製造方法について説明を行う。
【0088】
<樹脂混合物およびその製造方法>
本発明の一態様において、バイオマスマスターバッチと希釈用樹脂とを含む樹脂混合物が提供される。また、本発明の一態様において、バイオマスマスターバッチと、希釈用樹脂とを混合することを有する、樹脂混合物の製造方法が提供される。
【0089】
本発明の一実施形態において、バイオマスマスターバッチと、希釈用樹脂との混合は、公知の技術を適宜適用することができる。一例を挙げると、バイオマスマスターバッチと
、希釈用樹脂との混合は、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、V型混合機等の公知の混合装置を使用することによって行うことができる。
【0090】
本発明の一実施形態において、樹脂混合物におけるバイオマスマスターバッチの含有比率は、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、あるいは、40重量%以上である。本発明の一実施形態において、樹脂混合物におけるバイオマスマスターバッチの含有比率は、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、あるいは、45重量%以下である。
【0091】
本発明の一実施形態において、樹脂混合物における希釈用樹脂の含有比率は、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、あるいは、60重量%以下である。本発明の一実施形態において、樹脂混合物における希釈用樹脂の含有比率は、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、あるいは、55重量%以上である。
【0092】
本発明の一実施形態において、樹脂混合物におけるデンプンの含有比率が、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、あるいは、65重量%以上でありうる。特に、25重量%以上を占めるものについては、バイオマス素材がカーボンニュートラルな素材であり、地球温暖化対策になる。本発明の一実施形態において、樹脂混合物におけるデンプンの含有比率が、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下でありうる。
【0093】
本発明の一実施形態において、希釈用樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、あるいは、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレンでありうる。ポリエチレンの市販品は、特に制限されないが、プライムポリマー社のエボリュー(登録商標)SP1510でありうる。
【0094】
<成形品およびその製造方法>
本発明の一態様において、樹脂混合物を成形加工することによりなる、成形品が提供される。
【0095】
本発明の一実施形態において、前記成形加工が、インフレーション成形、シート成形、あるいは、射出成形である。中でも、インフレーション成形が好ましい。
【0096】
本発明の一実施形態において、前記成形品が、フィルム又はシートである。成形物をフィルムとする場合、その厚さは10μm~100μmであることが好ましく、成形物をシートとする場合その厚さは100μmを超え1mm以下であることが好ましい。なお、成形物の厚みはJIS B7503:2017に従って測定することができる。一実施形態において、当該成形物は、フィルム又はシート以外の形態に成形されてもよい。
【0097】
本発明の一実施形態において、前記成形品が、包袋資材、農業用資材、電子機器筐体、家電製品筐体、建材用部品、自動車部品、二輪車用部品、航空機用部品、鉄道車両用部品および日用雑貨品からなる群から選択される少なくとも1種の用途に用いられる。中でも、成形品をフィルムとする場合、ごみ袋(ごみをまとめる樹脂で作られた袋)やレジ袋(コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の小売店において、購入した持ち帰り商品を入れるためにレジで渡される樹脂で作られた袋)等の包袋資材に用いることができる。なお、農業用途の例としては、以下に制限されないが、農業用のマルチシート等が挙げられる。
【0098】
フィルム又はシート等に成形を行う際の樹脂混合物を成形加工する際の温度は、得られる成形物の退色抑制と強度を両立する観点から、120~190℃であることが好ましく140~180℃であることがより好ましい。
【0099】
本願は、以下の態様および形態を包含する。
【0100】
1.デンプンと、ポリエチレン、アイオノマー樹脂およびアクリレート共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂とを含み、190℃10kgfでのMFRが3.3~4.2g/10minであり、かつ、デンプンの含有比率が60重量%超である、バイオマスマスターバッチ。
【0101】
2.前記デンプンが、米またはそれに由来するものである、1.に記載のバイオマスマスターバッチ。
【0102】
3.前記ポリエチレンが、少なくとも2種から構成される、1.または2.に記載のバイオマスマスターバッチ。
【0103】
4.前記樹脂のうち少なくとも1種が、バイオポリエチレンである、1.~3.のいずれかに記載のバイオマスマスターバッチ。
【0104】
5.グリセロール、ポリグリセロール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール、および、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、1.~4.のいずれかに記載のバイオマスマスターバッチ。
【0105】
6.前記添加剤が、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂と、グリセリン脂肪酸エステルとを含む、5.に記載のバイオマスマスターバッチ。
【0106】
7.デンプンと、ポリエチレン、アイオノマー樹脂およびアクリレート共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、を製造装置内で混練することを有する、バイオマスマスターバッチの製造方法。
【0107】
8.前記デンプンが、米またはそれに由来するものである、7.に記載の製造方法。
【0108】
9.前記樹脂のうち少なくとも1種の融点が、110℃以下である、7.または8.に記載の製造方法。
【0109】
10.前記樹脂のうち少なくとも1種の190℃2.16kgfでのMFRが、15g/10min以上であり、前記樹脂のうち少なくとも1種の190℃2.16kgfでのMFRが、15g/10min未満である、7.~9.のいずれかに記載の製造方法。
【0110】
11.前記樹脂のうち少なくとも1種が、バイオポリエチレンである、7.~10.のいずれかに記載の製造方法。
【0111】
12.グリセロール、ポリグリセロール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール、および、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、7.~11.のいずれかに記載の製造方法。
【0112】
13.前記添加剤が、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂と、グリセリン脂肪酸エステルとを含む、12.に記載の製造方法。
【0113】
14.前記デンプンのアルファ化が、前記製造装置内で開始される、7.~13.のいずれかに記載の製造方法。
【0114】
15.1.~6.のいずれかに記載のマスターバッチと、希釈用樹脂とを含む、デンプンの含有比率が25重量%以上である、樹脂混合物。
【0115】
16.15.に記載の樹脂混合物を成形加工することによりなる、成形品。
【0116】
17.前記成形加工が、インフレーション成形である、16.に記載の成形品。
【0117】
18.フィルム又はシートである、16.または17.に記載の成形品。
【0118】
19.包袋資材、農業用資材、電子機器筐体、家電製品筐体、建材用部品、自動車部品、二輪車用部品、航空機用部品、鉄道車両用部品および日用雑貨品からなる群から選択される少なくとも1種の用途に用いられる、16.~18.のいずれかに記載の成形品。
【実施例0119】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0120】
<バイオマスマスターバッチの作製>
(実験例1)
材料として、
デンプンとして平均直径5mmの精米(新潟ケンベイ社製、中白米、含水率11重量%)を78.7重量部(米固形分重量:70重量部)、
樹脂AとしてMFR(190℃/2.16kgf)が3.4g/10minのポリエチレン(日本ポリエチレン社製、カーネルKS340T)を19.7重量部、
樹脂CとしてMFR(190℃/2.16kgf)が30g/10minのポリエチレン(日本ポリエチレン社製、カーネルKJ640T)を8重量部、
添加剤Aとして無水マレイン酸変性ポリプロピレン(理研ビタミン社製 MG-441P)4質量部(MAPP3wt%/全量(固形物換算))、および、
添加剤Bとしてグリセリン脂肪酸エステル(アセチル化モノグリセライド;グリセリンジアセトモノラウレート、理研ビタミン社製、バイオサイザー、日本バイオプラスチック協会(JBPA)のポジティブリストに掲載済み)を2重量部(固形物換算)、
を用いた。
【0121】
上記の材料を、図1等に示される、同方向に回転する二軸混練装置100を使用して混練し、切断部110で切断された実施例1のバイオマスマスターバッチを作製した。
【0122】
二軸混練装置100の回転部材のL/D(図5中の(x方向のスクリュー全体長さ)÷(スクリュー1つの断面直径長さ))は50とした。
【0123】
回転部30の回転部材は上述した回転部材31~39、41、42を用いた。回転部材31~39、41、42の長手方向Xの全体長さに対する回転部材32、34の比率(ニーディングブロック比率)は25%とした。
【0124】
上記の材料は投入部20から第1収容空間S1に供給した。なお、材料が固体である場
合は、ホッパーから供給し、材料が液体である場合はホッパーからチューブポンプを用いて供給した。また、デンプン100重量部に対して3重量部(すなわち実施例1では2.1重量部)の蒸留水も、ホッパーからチューブポンプを用いて第1収容空間S1に供給した。
【0125】
回転部材31~39、41、42の回転数は、280rpmとした。そして、第1収容空間S1における投入部に相当する部位を80℃、樹脂溶解部に相当する部位を160℃、混練部に相当する部位を180℃に加温した。なお材料が回転部材33から回転部材34へ送られる際に水分を脱水部50によって脱水した。また、第1収容空間S1における第1脱気部60と第2脱気部70との接続部を160℃、圧縮部に相当する部位を170℃、排出部80を180℃に加温した。
【0126】
(実施例2、3及び比較例1~10)
材料およびその含有量を表1に示したものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2、3及び比較例1~10のバイオマスマスターバッチを作製した。
【0127】
<デンプンの凝集レベル>
デンプンの凝集は、切断部110から送られることにより得られたバイオマスマスターバッチのうち3g分取り出し、それを170℃でホットプレスによる熱圧成形にて平面状に引き延ばしたものをサンプルとして目視で観察し、デンプンの凝集粒(直径0.1mm以上)が観察されるか確認した。評価は以下の基準に沿って行った。
【0128】
デンプン凝集粒の評価基準
A:サンプル中に凝集粒の確認ができない。
【0129】
B:サンプル中に凝集粒が10個以下確認できる。
【0130】
C:サンプル中に凝集粒が11~20個確認できる。
【0131】
D:サンプル中に凝集粒が21個以上確認できる。
【0132】
<成形性評価>
実施例1で得られた米の配合率が70重量%のバイオマスマスターバッチ43重量部と、希釈用樹脂としてエボリュー(登録商標)SP1510(プライムポリマー社製)57重量部とをタンブラーミキサーを用いて均一に攪拌混合することでデンプンの含有比率が30重量%である樹脂混合物を得た。樹脂混合物を、インフレーション成形機を用いて成膜した。
【0133】
続いて、実施例2、3、比較例1~10のバイオマスマスターバッチを用い、これらのバイオマスマスターバッチと、希釈用樹脂との混合比を適宜調節することによってデンプンの含有比率が30重量%である樹脂混合物を作製した以外は、実施例1と同様に樹脂混合物の作製を行った。それらを用いて160~170℃の温度範囲で、インフレーション成形機で成膜を行った。結果を表1に示す。
【0134】
成形性評価の基準
◎:石油由来樹脂と同様レベルに高い生産性を保持して加工ができ、成形不良も発生しない。
○:加工ができ、成形不良が発生しない。
○△:加工ができるが、成形不良が一部発生する。
△:加工ができるが、成形不良が多く発生する。
×:加工できるが成形不良が極めて多く発生する。
××:加工不可。
【0135】
<バイオマス度>
バイオマス度とは、樹脂混合物(樹脂)中のバイオマスに由来する割合(重量%)である。例えば、実施例3の樹脂Eのバイオマス度は95%であるため、バイオマスマスターバッチ中のバイオマス度は米65重量%と樹脂中のバイオマス9.3重量%(=9.8重量%×(95/100))との合計で74.3重量%となる。
【0136】
<メルトフローレイト>
MFR(190℃/2.16kgf)の測定は、JIS K 7210-1:2014(ISO1133-1:2011)、プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方-第1部:標準的試験方法、に準拠して測定された値である。
【0137】
MFR(190℃/10kgf)の測定は、MFR(190℃/2.16kgf)の測定において分銅の重さ(荷重)のみが10kgfとなるように変更した以外は、同様にして行った。
【0138】
【表1】
【0139】
<考察>
実施例1~3のバイオマスマスターバッチは、MFRの数値が基準(3.30~4.20g/10min)の範囲内であり、凝集粒も確認できず、また、成形性に優れていた。
【0140】
比較例2、4~8、10、実施例1、2は、MFRの相対的に低い樹脂AとMFRの相対的に高い樹脂Cの組み合わせである。MFRの相対的に高い樹脂に対するMFRの相対的に低い含有重量が低いとバイオマスマスターバッチのMFRは高くなり、逆だとバイオマスマスターバッチのMFRは低くなる傾向にある。実施例1、2では、樹脂Cの含有重量に対する樹脂Aの含有重量(樹脂A/樹脂C)が適切であるため、バイオマスマスターバッチのMFRが適切な範囲となっていると推測される。なお、比較例7のバイオマスマスターバッチのMFRが基準値をかなり下回ったのは可塑剤やアルファ化促進剤として機能しうる添加剤Bが入っていないためと推測される。また比較例7の凝集レベルがBであったのは、混練中の溶融粘度が高くなり、熱流動性不足からの設備におけるトルクオーバーや処理能力の低下となったためと推測される。
【0141】
実施例3は、MFRの相対的に低い樹脂AとMFRの相対的に高い樹脂Eの組み合わせである。樹脂Eの含有重量に対する樹脂Aの含有重量(樹脂A/樹脂E)が適切であるため、バイオマスマスターバッチのMFRが適切な範囲となっていると推測される。
【0142】
比較例3は、MFRの低い相対的に樹脂DとMFRの相対的に高い樹脂Bの組み合わせである。比較例3は、MFRの相対的に高い樹脂に対するMFRの相対的に低い樹脂の比率が実施例の中で最も低く、樹脂Bはポリプロピレンであるため混練中の溶融粘度が低く、混練に必要な剪断が得られなかったため凝集レベルが悪化し、またバイオマスマスターバッチのMFRが実施例の中で最も高くなっている。
【0143】
一方、比較例1は、MFRの相対的に低い樹脂AとMFRの相対的に高い樹脂Bの組み合わせであり、MFRの相対的に高い樹脂に対するMFRの相対的に低い樹脂の比率が比較的高いためバイオマスマスターバッチのMFRは低くなる傾向になるはずとも思える。しかし、バイオマスマスターバッチにおいてポリプロピレンとポリエチレンとが均一に相溶ができていなくて、バイオマスマスターバッチのMFR測定でポリプロピレンの性質が強く出たため、また、相溶不十分な遊離ポリプロピレンが存在することによりバイオマスマスターバッチのMFRが基準値の上限を超えたものと推測される。
【0144】
比較例9は、MFRの相対的に高い樹脂CとMFRの相対的に低い樹脂Dの組み合わせである。MFRの相対的に高い樹脂に対するMFRの相対的に低い樹脂の比率が比較的高いため、バイオマスマスターバッチのMFRは低くなっていると考えられる。
【0145】
続いて、成形性について考察を行う。
【0146】
実施例1のバイオマスマスターバッチはデンプンの配合率は70重量%と有意に高く、かつ、適切なMFRの値を有しているため、希釈用樹脂の混合比率を多くすることができ、インフレーション成形性が◎という観点で良好であった。実施例2、3のバイオマスマスターバッチもデンプンの配合率が高く、適切なMFRの値を有しているため、実施例1と同様の成形性を有することが確認された。
【0147】
これに対し、比較例のバイオマスマスターバッチはデンプンの配合率が低かったり、適切なMFRの値を有していなかったりするため、インフレーション成形性が××~○△で不良であった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンと、未変性のポリエチレンである樹脂とを含み、190℃10kgfでのMFRが3.3~4.2g/10minであり、かつ、デンプンの含有比率が60重量%超である、バイオマスマスターバッチ。
【請求項2】
前記デンプンが、米またはそれに由来するものである、請求項1に記載のバイオマスマスターバッチ。
【請求項3】
前記ポリエチレンが、少なくとも2種から構成される、請求項1に記載のバイオマスマスターバッチ。
【請求項4】
前記樹脂のうち少なくとも1種が、バイオポリエチレンである、請求項1に記載のバイオマスマスターバッチ。
【請求項5】
デンプンと、
未変性のポリエチレンである樹脂と、
を製造装置内で混練することを有する、請求項1に記載のバイオマスマスターバッチの製造方法。
【請求項6】
前記デンプンが、米またはそれに由来するものである、請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂のうち少なくとも1種の融点が、110℃以下である、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂のうち少なくとも1種の190℃2.16kgfでのMFRが、15g/10min以上であり、
前記樹脂のうち少なくとも1種の190℃2.16kgfでのMFRが、15g/10min未満である、請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂のうち少なくとも1種が、バイオポリエチレンである、請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記デンプンのアルファ化が、前記製造装置内で開始される、請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載のマスターバッチと、希釈用樹脂とを含む、デンプンの含有比率が25重量%以上である、樹脂混合物。
【請求項12】
請求項11に記載の樹脂混合物を成形加工することによりなる、成形品。
【請求項13】
前記成形加工が、インフレーション成形である、請求項12に記載の成形品。
【請求項14】
フィルム又はシートである、請求項12に記載の成形品。
【請求項15】
包袋資材、農業用資材、電子機器筐体、家電製品筐体、建材用部品、自動車部品、二輪車用部品、航空機用部品、鉄道車両用部品および日用雑貨品からなる群から選択される少なくとも1種の用途に用いられる、請求項12に記載の成形品。