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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094218
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 29/00 20060101AFI20240702BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240702BHJP
   B26B 15/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B23D29/00 A
B23Q11/00 D
B26B15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023141751
(22)【出願日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2022210638
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和信
(72)【発明者】
【氏名】佐野 翔麻
【テーマコード(参考)】
3C011
3C039
3C065
【Fターム(参考)】
3C011AA14
3C039FA03
3C065AA19
3C065BA21
3C065EA02
3C065EA08
3C065EA11
3C065EA27
(57)【要約】
【課題】被切断物を確実に切断しながらも、切断刃同士の衝突を防止することのできる切断装置、を提供する。
【解決手段】切断装置10は、被切断物を挟み込んで切断する一対の切断刃111と、駆動力を発生させる電動モーター400と、電動モーター400の駆動力により切断刃111を動作させる駆動機構と、を備える。駆動機構は、電動モーター400の駆動力により所定方向に移動する連結部材230を有し、連結部材230の動作を、切断刃111の開閉動作に変換するものである。この切断装置10では、切断刃111が上記所定方向に移動すると、一対の切断刃111が互いに近づく方向に移動し、一対の切断刃111が互いに最接近した後に、切断刃111が更に上記所定方向に移動すると、一対の切断刃111が互いに遠ざかる方向に移動する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式の切断装置であって、
被切断物を挟み込んで切断する一対の切断刃と、
駆動力を発生させる電動モーターと、
前記電動モーターの駆動力により前記切断刃を動作させる駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、
前記電動モーターの駆動力により所定方向に移動する移動部材を有し、当該移動部材の動作を、前記切断刃の開閉動作に変換するものであり、
前記移動部材が前記所定方向に移動すると、一対の前記切断刃が互いに近づく方向に移動し、
一対の前記切断刃が互いに最接近した後に、前記移動部材が更に前記所定方向に移動すると、一対の前記切断刃が互いに遠ざかる方向に移動するように構成されている、切断装置。
【請求項2】
前記電動モーターの動作を制御する制御部を更に備え、
前記被切断物を切断する際において、前記制御部は、
一対の前記切断刃が互いに近づく方向に移動し、最接近した後に互いに遠ざかる方向に移動し始めるまで、前記移動部材を前記所定方向に移動させる、請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記駆動機構は、
前記切断刃と前記移動部材との間を連結する棒状のリンク部材、を更に有し、
一対の前記切断刃が互いに最接近したときに、前記リンク部材の長手方向と前記所定方向との間のなす角度が90度となるように構成されている、請求項1に記載の切断装置。
【請求項4】
一対の前記切断刃が互いに最接近した状態において、一対の前記切断刃の間には隙間が形成されている、請求項1に記載の切断装置。
【請求項5】
電動式の切断装置であって、
被切断物を挟み込んで切断する一対の切断刃と、
駆動力を発生させる電動モーターと、
前記電動モーターの駆動力により前記切断刃を動作させる駆動機構と、
一対の切断刃の間の隙間を調整する調整機構と、を備える切断装置。
【請求項6】
前記切断刃が設けられた刃部材と、
前記刃部材の貫通穴に挿通された回転軸と、を更に備え、
前記調整機構は、
前記貫通穴の内面から前記回転軸に向けて突出する調整螺子を含む、請求項5に記載の切断装置。
【請求項7】
前記切断刃が設けられた刃部材、を更に備え、
前記調整機構は、
前記刃部材の貫通穴に挿通された円柱形状の回転軸を有し、当該回転軸の中心軸の位置を変更し得るように構成されている、請求項5に記載の切断装置。
【請求項8】
前記切断刃が取り付けられた部材であって、前記切断刃と共に動作するブレードベースを更に備え、
前記調整機構は、
前記ブレードベースにおける前記切断刃の取り付け位置を調整するように構成されている、請求項5に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式の切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式の切断装置としては、例えば下記特許文献1に記載されているようなものが知られている。電動式の切断装置においては、使用者の把持力に替えて、電動モーターの駆動力によって切断刃を動作させ、一対の切断刃で挟み込むことによって被切断物を切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-171580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動式の切断装置においては、切断が完了した後における切断刃の停止位置が問題となる。例えば剪定挟のように、一対の切断刃がすれ違いながら動作する切断装置ではなく、一対の切断刃が互いに対向して動作する(つまり、概ね同一の平面を通る軌道で一対の切断刃が動作する)ような切断装置においては、切断刃の制動を開始するタイミングが遅れると、それぞれの切断刃が比較的大きな相対速度のまま衝突し、切断刃の一部が変形もしくは欠損してしまうような事態が生じ得る。
【0005】
しかしながら、切断刃の速度は、被切断物の形状や材質によって変化するので、制動を開始すべきタイミングは常に一定とはならない。このため、切断刃同士の衝突を確実に防止し得るような最適なタイミングで、常に制動を開始することは困難である。尚、切断刃が互いに衝突するよりも前に、余裕を持ったタイミングで切断刃を停止されることも考えられる。しかしながら、そのような場合には、被切断物の切断が完了する前に切断刃が停止してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、被切断物を確実に切断しながらも、切断刃同士の衝突を防止することのできる切断装置、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る切断装置は、電動式の切断装置であって、被切断物を挟み込んで切断する一対の切断刃と、駆動力を発生させる電動モーターと、電動モーターの駆動力により切断刃を動作させる駆動機構と、を備える。駆動機構は、電動モーターの駆動力により所定方向に移動する移動部材を有し、当該移動部材の動作を、切断刃の開閉動作に変換するものである。駆動機構は、移動部材が所定方向に移動すると、一対の切断刃が互いに近づく方向に移動し、一対の切断刃が互いに最接近した後に、移動部材が更に所定方向に移動すると、一対の切断刃が互いに遠ざかる方向に移動するように構成されている。
【0008】
上記構成の切断装置では、移動部材が所定方向に移動し続けると、一対の切断刃が互いに近づく方向に移動して最接近した後に、互いに遠ざかる方向に移動する。このような動作を実現するための駆動機構は、例えば、ボール螺子のナットを含むトグルリンク機構として容易に構成することができる。
【0009】
このような構成においては、互いに最接近した際における一対の切断刃の位置は、移動部材の停止タイミングとは無関係に、機械的に定まることとなる。このため、一対の切断刃が互いに最接近するような位置、を超える位置まで移動部材を動作させ、その後停止させることとすれば、一対の切断刃を確実に最接近させ、これにより被切断物を切断することができる。その際、移動部材を正確な位置で停止させるような高精度の位置決め制御を行わなくても、最接近時における切断刃同士の位置関係は常に一定となる。このため、切断刃同士の衝突を確実に防止することができる。
【0010】
尚、一対の切断刃が互いに最接近した状態とは、切断刃同士の間に所定の隙間が開いているような状態であってもよく、当該隙間が0となっている状態であってもよい。隙間が0となるまで最接近する場合であっても、切断刃同士が衝突して破損してしまうような事態を防止することは可能である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、被切断物を確実に切断しながらも、切断刃同士の衝突を防止することのできる切断装置、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る切断装置の構成を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る切断装置が備えるガイドプレートの構成を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る切断装置の駆動機構について説明するための図である。
図4図4は、第1実施形態に係る切断装置が備える制御基板の構成を示す図である。
図5図5は、第1実施形態に係る制御基板によって実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、第2実施形態に係る切断装置の調整機構の構成を示す図である。
図7図7は、第3実施形態に係る切断装置の刃部材の構成を示す図である。
図8図8は、第3実施形態に係る切断装置の調整機構の構成を示す図である。
図9図9は、第4実施形態に係る切断装置の調整機構の構成を示す図である。
図10図10は、第5実施形態に係る切断装置の調整機構の構成を示す図である。
図11図11は、第5実施形態に係る切断装置の調整機構の構成を示す図である。
図12図12は、第6実施形態に係る切断装置の連結構成を示す図である。
図13図13は、第7実施形態に係る切断装置の連結構成を示す図である。
図14図14は、第8実施形態に係る切断装置の連結部材の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0014】
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る切断装置10は、電動式の切断装置であって、建設現場等において鉄筋を切断するための装置として構成されている。図1を主に参照しながら、切断装置10の構成について説明する。切断装置10は、ハウジング11と、トリガスイッチ12と、切断機構100と、ボール螺子200と、減速機300と、電動モーター400と、制御基板500と、蓄電池600と、を備えている。
【0015】
ハウジング11は、切断装置10の外形を区画する容器であって、例えば樹脂により形成されている。ハウジング11の内部には、後述のボール螺子200や減速機300等が収容されている。図1においては、ハウジング11のうち紙面手前側の部分が除去されており、切断装置10の内部構成が断面図として示されている。
【0016】
トリガスイッチ12は、使用者の指によって操作されるスイッチである。使用者は、トリガスイッチ12に指をかけて手前側に引き込む操作を行うことにより、トリガスイッチ12をオン状態にすることができる。使用者が指の力を緩めると、トリガスイッチ12はばねの力によって元の位置に戻り、オフ状態となる。トリガスイッチ12がオン状態とオフ状態との間で切り替えられると、それに対応する信号が後述の制御基板500に送信される。トリガスイッチ12は、使用者が行う操作によりオン状態とオフ状態との間で切り替えられる「操作部」に該当する。後に説明するように、使用者がトリガスイッチ12をオン状態に切り替える操作を行うと、鉄筋の切断が開始される。
【0017】
切断機構100は、被切断物である鉄筋を切断する部分である。切断機構100は、一対の刃部材110と、一対のリンク部材120と、を有している。
【0018】
それぞれの刃部材110には、被切断物を挟み込んで切断する切断刃111が形成されている。刃部材110は、ハウジング11に対し固定された軸101の回りにおいて、回動自在な状態で保持されている。本実施形態では、切断刃111の刃先の稜線が、概ね同一の平面を通る軌道で動作するように、それぞれの刃部材110が対向配置されている。これにより、それぞれの切断刃111が互いに離間した開状態と、それぞれの切断刃111が互いに当接(又は近接)した閉状態と、を切り換えることが可能となっている。図1の例では、一対の切断刃111が閉状態となっている。
【0019】
リンク部材120は棒状の部材であって、一端が軸102を介して刃部材110に接続されており、他端が軸231を介して後述の連結部材230に接続されている。リンク部材120及び刃部材110は、軸102の周りにおいて互いに回動自在な状態で接続されている。同様に、リンク部材120及び連結部材230は、軸231の周りにおいて互いに回動自在な状態で接続されている。後に説明するように、連結部材230は、電動モーター400の駆動力によって、図1の左右方向に移動する。本実施形態におけるリンク部材120は、平行な2枚の板状部材とこの2枚の板状部材を接続する1枚の板状部材からなるコの字状の断面形状を有する板金部品から構成されている。
【0020】
図1の状態から、連結部材230が左方向に移動すると、図1の上側にある刃部材110は反時計回り方向に回転し、図1の下側にある刃部材110は時計回り方向に回転する。これにより、一対の切断刃111は閉状態から開状態になる。一方、一対の切断刃111が開状態となっているときに、連結部材230が図1の右方向に移動すると、図1の上側にある刃部材110は時計回り方向に回転し、図1の下側にある刃部材110は反時計回り方向に回転する。これにより、一対の切断刃111は閉状態に戻る。このように、一対の刃部材110、一対のリンク部材120、及び連結部材230の全体は、所謂「トグルリンク機構」を構成している。
【0021】
本実施形態では、刃部材110の近傍に一対のガイドプレート700が設けられている。ガイドプレート700は、金属により形成された板状の部材であって、図1における紙面手前側及び奥側の両方から刃部材110を挟み込むように配置されている。一対のガイドプレート700の形状は互いに同一である。図2に示されるように、それぞれのガイドプレート700には凹部710が形成されている。
【0022】
説明の便宜上、図1における右側のことを以下では「先端側」とも称し、同図における左側のことを以下では「後端側」とも称する。凹部710は、ガイドプレート700の先端側から後端側に向かって後退するように形成されている。図1図2のように切断装置10を側面側から見た場合においては、それぞれの凹部710は、閉じた状態における切断刃111を含む位置に形成されている。切断刃111が全開となっている待機状態においては、それぞれの切断刃111は凹部710の外側に退避した状態となり、図2の視点においては、ガイドプレート700によって刃部材110の全体が隠れた状態となる。ガイドプレート700は、待機状態の切断刃111を覆い保護する機能と、被切断物である鉄筋を、凹部710に沿って一対の切断刃111の間へと導く機能と、の両方を有している。ガイドプレート700は更に、凹部710において鉄筋を挟み込むことで、切断前後における切断装置10の姿勢を安定させる機能をも有している。
【0023】
ボール螺子200は、電動モーター400の回転運動を、連結部材230の直線運動に変換し、これにより切断機構100を動作させるための装置である。ボール螺子200は、螺子軸210と、ナット220と、連結部材230と、を有している。
【0024】
螺子軸210は、後端側から先端側に向かって直線状に伸びる棒状の部材である。螺子軸210の外周面には雄螺子が形成されている。電動モーター400が駆動されると、螺子軸210はその中心軸回りにおいて回転する。
【0025】
ナット220は、螺子軸210を外周側から囲むように配置された略円筒形状の部材である。ナット220の内周面には雌螺子が形成されており、螺子軸210の外周面に形成された雄螺子に対し螺合している。ナット220は、螺子軸210の長手方向に沿った移動は許容されている一方で、螺子軸210の中心軸回りにおける回転は規制されている。このため、螺子軸210がその中心軸回りにおいて回転すると、ナット220は、当該中心軸に沿って図1の左右方向に移動する。
【0026】
連結部材230は、ナット220に対し取り付けられた部材であって、ナット220と共に螺子軸210に沿って移動する部材である。連結部材230は、ナット220から先端側に向けて突出するように取り付けられている。連結部材230のうち先端側の端部近傍となる部分には、先に述べた軸231を介して一対のリンク部材120が接続されている。
【0027】
連結部材230の外周面には磁石241が取り付けられている。また、連結部材230の近傍となる位置には、ホールセンサ242がハウジング11に対して取り付けられている。ホールセンサ242が取り付けられている位置は、図1の状態からナット220が後端に移動して切断刃111が全開となったときに、連結部材230の磁石241と対向する位置となっている。切断刃111が全開になると、磁石241と対向することによってホールセンサ242から信号が発信され、当該信号が制御基板500に入力される。
【0028】
減速機300は、電動モーター400の出力軸410の回転を、減速した上でボール螺子200の螺子軸210に伝達する装置である。
【0029】
電動モーター400は、切断刃111の動作に必要な駆動力を発生させるための回転電機であって、例えばブラシレスDCモーターである。電動モーター400は出力軸410を有している。出力軸410は略円柱形状の部材であって、その中心軸は螺子軸210の中心軸と一致している。出力軸410の一部は減速機300に向けて突出しており、減速機300に接続されている。
【0030】
電動モーター400のコイルに電流が供給されると、出力軸410がその中心軸周りに回転する。出力軸410の回転は減速機300を介して螺子軸210に伝達され、ナット220を先端側もしくは後端側に向けて移動させる。これにより、先に述べたように切断機構100の切断刃111を開閉動作させる。
【0031】
電動モーター400の内部には、回転センサ420が設けられている。回転センサ420は、出力軸410が所定角度だけ回転する毎にパルス信号を発信するセンサであって、電動モーター400が有するの基板430の上に設けられている。回転センサ420からのパルス信号は制御基板500に送信される。制御基板500は、パルス信号の数をカウントすることにより、特定のタイミング以降における出力軸410の回転角度を把握することができる。また、制御基板500は、単位時間あたりに入力されるパルス信号の数に基づいて、出力軸410の回転速度をも把握することができる。回転センサ420は、出力軸410の回転角度及び回転速度を測定できるものであれば、本実施形態とは異なる種類のセンサであってもよく、電動モーター400とは異なる位置に別途設けられたセンサであってもよい。
【0032】
制御基板500は、電動モーター400を含む切断装置10の全体の動作を制御するために設けられた回路基板である。制御基板500は、電動モーター400に供給される電流を調整するためのインバーター回路や、インバーター回路におけるスイッチング動作等を制御するためのマイコン等を含む。
【0033】
蓄電池600は、電動モーター400や制御基板500の動作に必要な電力を蓄えておくものであり、例えばリチウムイオンバッテリーである。切断装置10のうち蓄電池600が内蔵されている部分は、バッテリーパックとしてハウジング11から着脱することが可能となっており、外部の充電器に接続して充電を行うことができる。このような態様に換えて、蓄電池600がハウジング11に取り付けられている状態のまま、蓄電池600の充電を行うことが可能な構成としてもよい。
【0034】
切断刃111を動作させるための機構について、更に詳しく説明する。先述べたように、切断装置10では、電動モーター400の駆動力によって、ボール螺子200のナット220及び連結部材230が、螺子軸210の中心軸と平行な方向に直線的に移動する。このような連結部材230の動作は、リンク部材120を介して、刃部材110に設けられた切断刃111の開閉動作に変換される。ナット220、連結部材230、リンク部材120、及び刃部材110は、電動モーター400の駆動力により切断刃111を動作させる「駆動機構」を構成している。駆動機構の一部であるナット220及び連結部材230は、電動モーター400の駆動力により所定方向に移動する「移動部材」に該当する。
【0035】
図3には、移動部材である連結部材230の位置が変化するに伴って、切断刃111が閉じて行く様子が示されている。切断刃111が閉方向に動作し始めた以降は、連結部材230は先端側へと移動し続けている。図3(A)に示されるのは、切断刃111が閉じて行く途中の状態である。このとき、一対の切断刃111は互いに近づくように動作しているが、まだ互いに最接近した状態とはなっていない。
【0036】
点線DL1は、リンク部材120の長手方向を表す線である。リンク部材120の「長手方向」とは、例えば、図1において軸102の中心から軸231の中心に向かう方向のことである。点線DL2は、連結部材230が移動している方向、すなわち、螺子軸210の中心軸の方向を表す線である。点線DL1と点線DL2との間のなす角度のことを、以下では「角度θ」とも表記する。切断刃111が閉方向に動作し始めてから図3(A)の状態となるまでの間において、連結部材230の移動に伴って角度θは次第に大きくなっている。図3(A)の時点においては、角度θは90度よりも小さい。
【0037】
図3(B)に示されるのは、図3(A)の状態から連結部材230が更に先端側に移動したときの状態である。図3(B)の時点においては、角度θは90度となっており、一対の切断刃111は互いに最近接した状態となっている。本実施形態では、このように最接近した状態においても、切断刃111の間にはわずかな隙間が形成されるように構成されている。鉄筋を確実に切断するためには、最接近時における隙間の大きさが、鉄筋の直径の10%以下となっていることが好ましい。
【0038】
このような態様に換えて、図3(B)のように角度θが90度となったと同時に、切断刃111同士が互いに当接した状態となるように構成されてもよい。
【0039】
本実施形態では、図3(B)のように一対の切断刃111が互いに最近接しても、連結部材230は停止せず、引き続き先端側に向けて移動する。図3(C)に示されるのは、図3(A)の状態から連結部材230が更に先端側に移動したときの状態である。連結部材230が図3(C)の位置まで到達すると、電動モーター400は動作を停止し、連結部材230や切断刃111も停止する。図3(C)の時点においては、角度θは90度よりも大きくなっている。このため、切断刃111は、図3(B)の状態から、互いに遠ざかる方向に僅かに移動している。
【0040】
このように、本実施形態の駆動機構は、移動部材である連結部材230が所定方向に移動すると、一対の切断刃111が互いに近づく方向に移動し、一対の切断刃111が互いに最接近した後に、連結部材230が更に上記所定方向に移動すると、一対の切断刃111が互いに遠ざかる方向に移動するように構成されている。上記の「所定方向」とは、螺子軸210の中心軸と平行な方向であって、後端側から先端側に向かう方向のことである。このような構成においては、互いに最接近した際における一対の切断刃111の位置(図3(B))は、連結部材230の停止タイミングとは無関係に、機械的に定まることとなる。
【0041】
制御基板500の構成について、図4を参照しながら説明する。マイコンを含む制御基板500は、その機能を表す要素として、位置取得部510と、制御部520と、を備えている。
【0042】
位置取得部510は、連結部材230の現在位置を取得する処理、を行う部分である。本実施形態では、磁石241とホールセンサ242が対向したときを基準とした、回転センサ420から入力されるパルス信号のカウント値が、連結部材230の「現在位置」として位置取得部510により算出され取得される。位置取得部510により取得される「現在位置」は、連結部材230の現在位置を直接的又は間接的に示す指標であればよく、パルス信号のカウント値以外の値であってもよい。例えば、上記の基準となる位置から連結部材230が進行した距離を、ミリメートル等の単位で表した値が、上記の「現在位置」として用いられてもよい。
【0043】
連結部材230の現在位置の取得を可能とするために、切断装置10が起動された際等においてリセット動作を行うこととすればよい。リセット動作では、例えば、一対の切断刃111が閉状態から開状態になる方向に電動モーター400を駆動させ、ホールセンサ242からの検知信号が入力された時点で電動モーター400を停止させればよい。この時点からパルス信号のカウントを開始すれば、以降における連結部材230の現在位置を正確に取得することができる。
【0044】
制御部520は、電動モーター400の動作を制御する部分である。制御部520は、電動モーター400に供給される電流の大きさを例えばPWM制御により調整することで、切断刃111の開閉動作を制御する。また、制御部520は、電動モーター400が備える複数のコイルの一部を周期的に又は連続的に短絡させる、所謂「ショートブレーキ」を行うことで、切断刃111の制動動作をも制御する。
【0045】
制御基板500により実行される処理について、図5を参照しながら説明する。図5のフローチャートに示される一連の処理は、上記のリセット動作が完了した以降、所定の制御周期が経過する毎に、制御基板500によって繰り返し実行されるものである。
【0046】
当該処理の最初のステップS01では、トリガスイッチ12がオン状態であるか否かが判定される。トリガスイッチ12がオフ状態のままである場合には、図5の処理を一旦終了する。トリガスイッチ12がオン状態である場合には、ステップS02に移行する。
【0047】
ステップS02では、電動モーター400を駆動させてそれぞれの切断刃111を閉方向に動作させ始める処理が、制御部520によって行われる。これにより、鉄筋の切断が開始される。ステップS02以降は、連結部材230が先端側に向けて移動して行く。
【0048】
ステップS02に続くステップS03では、連結部材230が目標位置に到達したか否かが判定される。「目標位置」とは、例えば図3(B)や図3(C)の状態における連結部材230の位置のことである。ステップS03の判定は、例えば、回転センサ420からのパルス信号のカウント値が、上記目標位置に対応する値となったか否かに基づいて行うことができる。
【0049】
連結部材230が未だ目標位置に到達していない場合には、先端側に向けた連結部材230の移動を継続させながら、ステップS03の処理が再度実行される。連結部材230が目標位置に到達すると、ステップS04に移行する。
【0050】
ステップS04では、連結部材230及び切断刃111の動作を停止させる処理が行われる。具体的には、電動モーター400を制動するためのショートブレーキ等の処理が開始される。ステップS04では、電動モーター400への電流供給を単に停止することで、連結部材230及び切断刃111を停止させることとしてもよい。切断刃111の動作を停止させる処理に続いて、切断刃111を全開位置に戻す処理が自動的に行われてもよい。
【0051】
以上のように、鉄筋を切断する際において、制御部520は、一対の切断刃111が互いに近づく方向に移動し、最接近した後に互いに遠ざかる方向に移動し始めるまで、連結部材230を上記の「所定方向」に移動させるように構成されている。
【0052】
このような制御により、一対の切断刃111を確実に最接近させ、これにより鉄筋を切断することができる。その際、連結部材230を正確な位置で停止させるような高精度の位置決め制御を行わなくても、図3(B)のような最接近時における切断刃111同士の位置関係は常に一定となる。このため、切断刃111同士の衝突を確実に防止することができる。
【0053】
第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。本実施形態では、刃部材110の構成において第1実施形態と異なっている。本実施形態における刃部材110の構成について、図6を参照しながら説明する。
【0054】
図6に示される貫通穴112は、軸102が挿通される穴である。貫通穴113は、刃部材110の回転軸である軸101が挿通される穴である。本実施形態では、貫通穴113の内径が、軸101の外径よりも僅かに大きくなっている。
【0055】
刃部材110には更に、貫通穴114が形成されている。貫通穴114は、貫通穴113とは垂直な方向に、刃部材110を貫くように形成されている。貫通穴114の中心軸は、貫通穴113の中心軸と交差している。このため、貫通穴113の内面の2か所には、貫通穴114が開口している。貫通穴114の内面には不図示の雌螺子が形成されている。
【0056】
貫通穴114の内部には、2つの調整螺子121が配置されている。調整螺子121は、「六角穴止め螺子」や「イモ螺子」等とも称されるものであり、その外周面に不図示の雄螺子が形成された部材である。2つの調整螺子121は、貫通穴113の内面から軸101に向けて突出しており、軸101を間に挟み込んでいる。
【0057】
切断装置10の製造者や使用者は、調整螺子121を回転させることにより、貫通穴113の内面からの調整螺子121の突出量を調整することができる。例えば、図6において上側にある刃部材110、の2つの調整螺子121を、それぞれ矢印AR1の方向に移動するように調整した場合には、切断刃111を含む刃部材110の全体が、軸101に対して矢印AR2の方向に移動することとなる。同様に、2つの調整螺子121を、それぞれ矢印AR1とは逆の方向に移動するように調整した場合には、切断刃111を含む刃部材110の全体が、軸101に対して矢印AR2とは逆の方向に移動することとなる。図6において下側にある刃部材110についても同様である。
【0058】
本実施形態では、上記のように刃部材110の位置を調整することで、最接近した際における切断刃111の間の隙間を調整することができる。貫通穴114及び調整螺子121は、一対の切断刃111の間の隙間を調整するための「調整機構」に該当する。
【0059】
尚、調整機構は、本実施形態のように両方の刃部材110に設けられていてもよいが、一方の刃部材110のみに設けられていてもよい。
【0060】
第3実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。本実施形態でも、刃部材110の構成において第1実施形態と異なっている。本実施形態における刃部材110の構成について、図7及び図8を参照しながら説明する。
【0061】
図7は、閉じた状態の一対の刃部材110を、螺子軸210の中心軸に沿って先端側から見て描いた図である。図8は、刃部材110を図6と同様の視点で描いた図である。図7及び図8に示されるように、本実施形態ではそれぞれの刃部材110が、第1部材110A及び第2部材110Bからなる2つの部材に分かれている。
【0062】
第1部材110Aは、刃部材110の大部分を占める部材である。第1部材110Aには、軸102が挿通される貫通穴112と、軸101(回転軸)が挿通される貫通穴113と、が形成されている。
【0063】
第2部材110Bは、切断刃111が形成された部材である。第2部材110Bは、図7における上下方向に移動可能な状態で、第1部材110Aに対して取り付けられている。第1部材110Aは、切断刃111を有する第2部材110Bが取り付けられた部材であって、切断刃111と共に動作する「ブレードベース」に該当する。
【0064】
第1部材110Aには、貫通穴115が形成されている。貫通穴115は、貫通穴113とは垂直な方向に、刃部材110を貫くように形成されている。貫通穴115の中心軸は第2部材110Bと交差している。貫通穴115の内面には不図示の雌螺子が形成されている。
【0065】
貫通穴115の内部には調整螺子122が配置されている。調整螺子122は、「六角穴止め螺子」や「イモ螺子」等とも称されるものであり、その外周面に不図示の雄螺子が形成された部材である。調整螺子122は、貫通穴115から第2部材110Bに向けて突出しており、調整螺子122の先端は第2部材110Bに当接している。
【0066】
切断装置10の製造者や使用者は、調整螺子122を回転させることにより、貫通穴115からの調整螺子122の突出量を調整することができる。例えば、図8において上側にある刃部材110の調整螺子122を、矢印AR11の方向に移動するように調整した場合には、切断刃111を含む第2部材110Bの全体が、第1部材110Aに対して矢印AR12の方向に移動することとなる。同様に、調整螺子122を、矢印AR11とは逆の方向に移動するように調整した場合には、切断刃111を含む第2部材110Bの全体が、矢印AR12とは逆の方向に移動することとなる。図8において下側にある刃部材110についても同様である。
【0067】
本実施形態では、上記のように、第1部材110Aにおける切断刃111の取り付け位置を調整することで、最接近した際における切断刃111の間の隙間を調整することができる。貫通穴115及び調整螺子122は、一対の切断刃111の間の隙間を調整するための「調整機構」に該当する。
【0068】
第4実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。本実施形態でも、刃部材110の構成において第1実施形態と異なっている。本実施形態における刃部材110の構成について、図9を参照しながら説明する。
【0069】
本実施形態でも第3実施形態(図8)と同様に、それぞれの刃部材110が、第1部材110A及び第2部材110Bからなる2つの部材に分かれている。
【0070】
第1部材110Aには、貫通穴116が形成されている。貫通穴116は、第1部材110Aの先端側端部から、切断刃111の稜線と平行な方向に直線状に形成されている。貫通穴116の奥側には空間が形成されており、当該空間には楔部材130が嵌め込まれている。楔部材130は、貫通穴116の中心軸に沿って移動可能な状態で保持されている。楔部材130のうち第2部材110B側の部分には、傾斜面131が形成されている。傾斜面131は、後端側から先端側に行く程、切断刃111側に近づくように傾斜した平坦面である。第2部材110Bは、第1部材110Aの傾斜面131に当接した状態で保持されている。
【0071】
第1部材110Aに設けられた貫通穴116の内面には不図示の雌螺子が形成されている。貫通穴116の内部には調整螺子123が配置されている。調整螺子123は、「六角穴止め螺子」や「イモ螺子」等とも称されるものであり、その外周面に不図示の雄螺子が形成された部材である。調整螺子123は、貫通穴116から楔部材130に向けて突出しており、調整螺子123の先端は楔部材130に当接している。
【0072】
切断装置10の製造者や使用者は、調整螺子123を回転させることにより、貫通穴116からの調整螺子123の突出量を調整することができる。例えば、調整螺子123を、図9の矢印AR21の方向に移動するように調整した場合には、楔部材130が後端側へと移動することに伴って、切断刃111を含む第2部材110Bの全体が、第1部材110Aに対して矢印AR22の方向に移動することとなる。同様に、調整螺子123を、矢印AR21とは逆の方向に移動するように調整した場合には、切断刃111を含む第2部材110Bの全体が、矢印AR22とは逆の方向に移動することとなる。
【0073】
本実施形態でも第3実施形態(図8)と同様に、第1部材110Aにおける切断刃111の取り付け位置を調整することで、最接近した際における切断刃111の間の隙間を調整することができる。貫通穴116、調整螺子123、及び楔部材130は、一対の切断刃111の間の隙間を調整するための「調整機構」に該当する。
【0074】
第5実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。本実施形態では、刃部材110の構成、及び、刃部材110の回転軸である軸101の構成において、第1実施形態と異なっている。
【0075】
図10には、本実施形態における軸101の構成が示されている。本実施形態の軸101には、内部軸140が設けられている。内部軸140は円柱形状の部材であって、軸101を貫いている。内部軸140のうち、図10における下方側の部分は、軸101から更に下方側に向けて突出しており、ハウジング11又はガイドプレート700に対して回転可能な状態で取り付けられている。内部軸140のうち、図10における上方側の部分は、軸101から更に上方側に向けて突出している。当該部分は、他の部分よりも径の大きな拡径部141となっている。
【0076】
図10に示されるAX1は内部軸140の中心軸であり、AX2は軸101の中心軸である。これら2つの中心軸は互いに一致していない。つまり、軸101は、内部軸140に対して偏心した軸となっている。
【0077】
図11に示されるように、本実施形態でも、軸101は、刃部材110の貫通穴113に挿通されている。刃部材110が軸101の周りに回転することで、切断刃111が開閉動作する。その回転中心軸は、軸101の中心軸AX2と一致する。
【0078】
切断装置10の製造者や使用者は、例えば拡径部141を掴んで内部軸140を回転させることにより、ハウジング11に対する中心軸AX2の位置を調整することができる。例えば、内部軸140を、図11の矢印AR31の方向に回転させた場合には、中心軸AX2の位置が変化することに伴って、切断刃111を含む刃部材110の全体が、ハウジング11に対して矢印AR32の方向に移動することとなる。
【0079】
本実施形態では、上記のように、内部軸140の回転角度を変化させることで、回転軸である軸101の中心軸AX2の位置を変更し、これにより、最接近した際における切断刃111の間の隙間を調整することができる。軸101、内部軸140、及び貫通穴113は、一対の切断刃111の間の隙間を調整するための「調整機構」に該当する。
【0080】
第6実施形態について説明する。他の実施形態と異なる点を中心に説明し、共通する点については適宜説明を省略する(他の実施形態でも同様である)。本実施形態は、ナット、連結部材及びリンク部材の連結構成において他の実施形態と異なっており、特にナットの端面と連結部材の一部を当接させる構成を採用することにより、高負荷の際に破損しにくい構成を開示する。
【0081】
図12は、本実施形態におけるナット320、連結部材330及びリンク部材120の連結構成を示す一部拡大斜視図である。なおリンク部材120は、他の実施形態と同様の構成を備えているため同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
ナット320は、螺子軸210を外周側から囲むように配置された略円筒形状の部材である。ナット320の内周面には雌螺子が形成されており、螺子軸210の外周面に形成された雄螺子に対し螺合している。螺子軸210がその中心軸回りにおいて回転すると、ナット320は、当該中心軸に沿って移動する点においてナット220と共通する。
【0083】
連結部材330は、ナット320とリンク部材120とを連結する部材である。連結部材330は同図に示されるように内方(螺子軸210の中心軸に接近する方向)に突出して形成されることによって、ナット320の先端側を向いた端面320Sによって支持される被支持部330Pを備えている。被支持部330Pは、後端方向に向かう力が作用したときにナット320の端面320Sから反力を受けるための部分である。
【0084】
なお本実施形態の連結部材330は、被支持部330Pに加えて、螺子軸210の長手方向に延在する腕部330Aをさらに備えており、この腕部330Aの先端側の領域には軸231の端部と係合するためのリンク係合穴が形成され、腕部330Aの後端側の領域には、ナット320の側面から突出する突出部と係合するためのナット係合穴が形成されている。
【0085】
同図に示されるように軸231(駆動軸)の端部がリンク係合穴を貫通することにより連結部材330とリンク部材120を連結し、ナット320の突出部がナット係合穴を貫通することにより連結部材330とナット320を連結すると共に、連結部材330が軸周りに回転移動することを規制することが可能となる。このとき被支持部330Pは、ナット320の先端側を向いた端面320Sによって支持されている。
【0086】
このような構成によれば、被切断物の切断時にリンク部材120から連結部材330に後端方向の強い負荷が作用しても、その負荷の一部をナット320の先端側を向いた端面320Sによって、剪断力ではなく圧縮力として受け止めることが可能となるので、ナット320の強度を確保するためにナット320を大型化することが抑えられ、ナット320および連結部材330を含む製品の外径が細くなることで、工具の小型化に寄与することが可能となる。これにより、工具の把持部の大きさを適正に設定することが可能となり、工具を扱いやすさを向上させることが可能となる。
【0087】
対して被支持部330Pが設けられていない比較構成の場合、連結部材に作用する全ての負荷をナットの側面から突出する突出部で支持しなければならないため、ナットの突出部に大きな剪断力がかかってしまいナットが破損してしまう可能性が高い。
【0088】
なお、同図に示されるように、螺子軸210を挟んで反対側にも、同一構成の連結部材330が設けられていてもよい。また、同図に示されるように、被支持部330Pの両端端部を端面320Sに沿って湾曲させてもよい。ナット320の端面320Sで荷重を受ける場合、被支持部330Pとナット320の端面320Sとの接触面に対して軸方向において同一となる位置でリンク部材120から連結部材330に対して荷重が伝達される構成が好ましい。すなわち、リンク部材120と連結部材330とをナット320の外径よりも内側で接合させる構成が好ましい。これにより、連結部材330及びナット320の小型化(細径化)を実現することが可能となる。
【0089】
第7実施形態について説明する。本実施形態においても、ナット、連結部材及びリンク部材の連結構成において他の実施形態と異なっている。ただしナットの端面と連結部材の一部を当接させる構成を採用することにより、高負荷の際に破損しにくい構成を実現した点において、第6実施形態と共通する。
【0090】
図13は、本実施形態におけるナット720、連結部材730及びリンク部材120の連結構成を示す一部拡大斜視図である。
【0091】
ナット720は、螺子軸210を外周側から囲むように配置された略円筒形状の部材である。ナット720の内周面には雌螺子が形成されており、螺子軸210の外周面に形成された雄螺子に対し螺合し、螺子軸210がその中心軸回りにおいて回転すると、ナット720は、当該中心軸に沿って移動する点においてナット320と共通する。さらにナット720の先端側の領域には、後端側の領域よりも小径で雄螺子が形成された先端部が設けられている。すなわちナット720は相対的に大径に形成された後端部と、相対的に小径に形成され外周面に雌螺子が形成された先端部を有している。
【0092】
連結部材730は、ナット720とリンク部材120とを連結する部材である。連結部材730は、筒型に形成されている点でトラニオンと呼ばれる場合がある。連結部材730の内周面には、ナット720の先端部外周面に形成された雄螺子と螺合する雌螺子が形成されており、以てナット720と連結部材730とが連結されている。また、連結部材730は、ナット720の後端部と先端部との段差面によって支持される。この段差面は、ナット720の先端側を向いた端面に相当する。
【0093】
なお本実施形態の連結部材730は、さらに、螺子軸210の長手方向に延在する一対の腕部730Aをさらに備えており、この腕部730Aの先端側の領域には軸231の端部と係合するためのリンク係合穴が形成されている。
【0094】
同図に示されるように軸231の端部がリンク係合穴を貫通することにより連結部材730とリンク部材120は連結する。このとき連結部材730の後端側を向いた面は、ナット720の先端側を向いた端面によって支持されている。
【0095】
このような構成によれば、被切断物の切断時にリンク部材120から連結部材730に後端方向の強い負荷が作用しても、その負荷の一部をナット720の先端側を向いた端面によって剪断力ではなく圧縮力として受け止めることが可能となるので、高負荷の際に破損しにくい構成を実現することが可能となる。
【0096】
第8実施形態について説明する。本実施形態は、トラニオンと呼ばれることもある連結部材を2つの異なる組成の材料から構成している。図14は、本実施形態に係る連結部材830を示す斜視図である。
【0097】
連結部材830は、ナットと連結する第1部分(ナット連結部830B)と、リンク部材120と連結する第2部分(リンク連結部830A)とを備える。ナット連結部830Bの内周面には、ナット720の先端部外周面に形成された雄螺子と螺合する雌螺子が形成されている。ナット連結部830Bは、ナット720の後端部と先端部との段差面によって支持される。ナット連結部830Bは、第2部分よりも軽く(比重が小さく)、かつ、低強度の材料でできており、例えば、アルミニウムから形成される。
【0098】
一方でリンク連結部830Aは、軸231と連結するための一対の腕部を備えている。リンク連結部830Aは、ナット連結部830Bよりも重く(比重が大きく)、かつ、高強度の材料でできており、例えば、鉄鋼材料から形成される。ここでリンク連結部830Aの後端側の領域を上下方向に長く形成することによって、ナット連結部830Bによって支持される領域の面積を広くしてもよい。
【0099】
なお、ナット連結部830Bは、内側に螺子軸210を貫通させるため寸法的な制約があり、小型化が困難である。そのため、リンク連結部830Aとナット連結部830Bとを同一の部材で一体形成した場合、連結部材830は要求される仕様に対して過剰な強度を有する重量の重い部品となる。この点、本実施形態では、ナット連結部830Bの軽量化によって連結部材830全体の軽量化を実現できるから、連結部材830の慣性を抑えることが可能となる。このためナット720及び連結部材830の螺子軸210の長手方向における停止位置制御の精度向上や素早い作動が可能となる。一方でトグルリンクと連結することにより高負荷がかかるリンク連結部830Aは、高強度の材料を用いて強度を確保することが可能となる。また、ナット連結部830Bがリンク連結部830Aを支持する領域の面積を大きくすることによって、負荷を分散することも可能となる。したがって軽量化と強度を両立することが可能となる。
【0100】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0101】
10:切断装置
101:軸
110:刃部材
111:切断刃
113,114,115,116:貫通穴
120:リンク部材
121,122,123:調整螺子
130:楔部材
140:内部軸
220:ナット
230:連結部材
400:電動モーター
520:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14