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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094222
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】転写フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/06 20190101AFI20240702BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240702BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240702BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20240702BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B32B7/06
B32B15/08 N
B65D65/40 D
B29C65/48
B32B27/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173227
(22)【出願日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2022210619
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】植木 貴之
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086AD05
3E086AD06
3E086AD08
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB05
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA11
3E086CA17
3E086CA18
3E086CA28
3E086CA31
3E086CA35
3E086DA08
4F100AA17C
4F100AA19C
4F100AB01C
4F100AB10C
4F100AK03A
4F100AK03D
4F100AK03E
4F100AK05A
4F100AK06A
4F100AK07A
4F100AK07D
4F100AK07E
4F100AK17E
4F100AK21B
4F100AK42C
4F100AK46B
4F100AK49E
4F100AK51E
4F100AK51G
4F100AK63A
4F100AK63D
4F100AK63E
4F100AK69B
4F100AP00E
4F100AT00A
4F100AT00E
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB00E
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4F100EC04B
4F100EH20
4F100EH20A
4F100EH20D
4F100EH20E
4F100EH66C
4F100EJ37
4F100EJ38
4F100EJ91A
4F100GB15
4F100GB16
4F100JB16E
4F100JD02B
4F100JD03
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4F100JK06A
4F100JK06B
4F100JK09E
4F100JL12E
4F100JL14A
4F100JM02C
4F100YY00B
4F211AA03
4F211AA04
4F211AA11
4F211AA16
4F211AA19
4F211AA29
4F211AA40
4F211AD03
4F211AD06
4F211AG01
4F211AG03
4F211AH54
4F211AR07
4F211TA03
4F211TC01
4F211TD11
4F211TH24
4F211TN42
(57)【要約】
【課題】被転写体である基材上に金属および/または無機酸化物を含む薄膜層を転写技術で設けることが可能であり、高いガスバリア性を有するバリア性積層体を製造できる転写フィルムを提供する。
【解決手段】支持層と、支持層から剥離可能な転写層と、を備える転写フィルムであって、支持層は、ポリオレフィンを主成分として含有する第1のポリオレフィン層を少なくとも備え、転写層は、ガスバリア性樹脂を主成分として含有するバリア性樹脂層と、金属および/または無機酸化物を含む薄膜層と、を少なくとも備え、第1のポリオレフィン層とバリア性樹脂層とが接している、転写フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層と、前記支持層から剥離可能な転写層と、を備える転写フィルムであって、
前記支持層は、
ポリオレフィンを主成分として含有する第1のポリオレフィン層
を少なくとも備え、
前記転写層は、
ガスバリア性樹脂を主成分として含有するバリア性樹脂層と、
金属および/または無機酸化物を含む薄膜層と、
を少なくとも備え、
前記第1のポリオレフィン層と前記バリア性樹脂層とが接している、
転写フィルム。
【請求項2】
前記バリア性樹脂層が、前記ガスバリア性樹脂として、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールおよびポリアミドから選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項3】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体が、50モル%以下のエチレン含有割合を有する、請求項2に記載の転写フィルム。
【請求項4】
前記バリア性樹脂層が、0.3μm以上10μm以下の厚さを有する、請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項5】
前記第1のポリオレフィン層が、密度が0.930g/cm3以上のポリエチレンを主成分として含有する層、密度が0.930g/cm3未満のポリエチレンを主成分として含有する層、または、ポリプロピレンを主成分として含有する層である、請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項6】
前記支持層が、1層または2層以上の第2のポリオレフィン層をさらに備え、
前記1層または2層以上の第2のポリオレフィン層が、前記第1のポリオレフィン層における前記バリア性樹脂層に向かう面とは反対側の面上に位置している、
請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項7】
前記バリア性樹脂層が、第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面と、を有し、前記第1のポリオレフィン層が、前記バリア性樹脂層の前記第1の面に接しており、前記薄膜層が、前記バリア性樹脂層の前記第2の面に接している、請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項8】
剥離角度:T型剥離、試験速度:50mm/minの条件にて測定される、前記第1のポリオレフィン層と前記バリア性樹脂層との剥離強度が、0.5N/15mm幅以下である、請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項9】
前記薄膜層が、アルミニウム薄膜層であり、
前記アルミニウム薄膜層が、1.0以上の光学濃度(OD値)を有する、
請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項10】
前記薄膜層が、酸化アルミニウム薄膜層または酸化ケイ素薄膜層である、請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項11】
前記転写層が、前記薄膜層における前記バリア性樹脂層に向かう面とは反対側の面上に保護層をさらに備える、請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項12】
前記転写フィルムが、
前記第1のポリオレフィン層および前記バリア性樹脂層を少なくとも備える積層フィルムと、
前記バリア性樹脂層上に位置する前記薄膜層と、
を少なくとも備え、
前記積層フィルムが、10μm以上100μm以下の厚さを有する、
請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項13】
前記積層フィルムが、共押出樹脂フィルムである、請求項12に記載の転写フィルム。
【請求項14】
前記積層フィルムが、MD方向の一軸延伸フィルムであるか、または二軸延伸フィルムである、請求項12に記載の転写フィルム。
【請求項15】
請求項1に記載の転写フィルムと、
接着層と、
基材と、
をこの順に少なくとも備え、
前記第1のポリオレフィン層と、
前記バリア性樹脂層と、
前記薄膜層と、
前記接着層と、
前記基材と、
をこの順に少なくとも備えるバリア性積層体。
【請求項16】
ガスバリア性樹脂を主成分として含有するバリア性樹脂層と、
金属および/または無機酸化物を含む薄膜層と、
接着層と、
基材と、
をこの順に少なくとも備えるバリア性積層体。
【請求項17】
前記バリア性樹脂層が、第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面と、を有し、前記薄膜層が、前記バリア性樹脂層の前記第2の面に接している、請求項16に記載のバリア性積層体。
【請求項18】
前記バリア性樹脂層が、第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面と、を有し、前記バリア性積層体が、前記バリア性樹脂層の前記第1の面上に、熱融着性樹脂層をさらに備える、請求項16に記載のバリア性積層体。
【請求項19】
前記基材が、紙基材、木材、ポリイミド系基材、フッ素樹脂系基材またはポリオレフィン系基材である、請求項15~18のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
【請求項20】
前記基材が、紙基材である、請求項16~18のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
【請求項21】
前記接着層が、接着剤層または接着性樹脂層である、請求項15~18のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
【請求項22】
請求項1~14のいずれか一項に記載の転写フィルムと、基材と、を準備する工程、
前記転写フィルムを、前記転写フィルムの薄膜層が前記基材に向かうように接着層を介して前記基材上に配置して、前記転写フィルム、前記接着層および前記基材をこの順に備える中間積層体を得る工程、ならびに
前記中間積層体の前記転写フィルムにおける前記支持層を前記転写層から剥離して、前記転写層、前記接着層および前記基材をこの順に備えるバリア性積層体を得る工程、
を備える、バリア性積層体の製造方法。
【請求項23】
請求項16~18のいずれか一項に記載のバリア性積層体を備える包装容器。
【請求項24】
請求項20に記載のバリア性積層体を備える包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
包装材料などにガスバリア性を付与するために、例えば包装材料が備える基材上に金属および/または無機酸化物を含む薄膜層を設けることが検討されている。また、近年、マイクロプラスチックによる環境問題が大きく取り上げられている。例えば包装材料においても、環境負荷を低減するために、基材として紙基材を用いることによってリサイクル性を向上することが求められている。紙基材は、一般的にガスバリア性が不充分である。このため、紙基材を備える包装材料のガスバリア性を高めるために、紙基材上に上記薄膜層を設けることが検討されている。
【0003】
しかしながら、紙基材のように、基材の種類によっては、基材上に蒸着膜などの薄膜層を直接設けることが困難な場合がある(例えば特許文献1参照)。例えば、加工ロスによる価格の上昇、および工程の不安定さから、品質の安定性に大きく影響を与えている。
【0004】
そこで現在では、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)および離型層を備える離型フィルムと、該離型層上に設けられた上記薄膜層と、を備える転写フィルム(以下「薄膜層転写用PETフィルム」ともいう)が用いられている。この転写フィルムを用いて、加工ロスなく、また安定した品質のもと、薄膜層を基材上に転写する。これにより、薄膜層を直接形成することが困難な基材に対しても、薄膜層を設けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4622201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薄膜層転写用PETフィルムを用いる薄膜層の転写技術では、被転写体である基材に対して薄膜層を転写すると同時に、易剥離用の離型層も一緒に転写させることから、その後の製品の物性に影響を及ぼす可能性がある。また、ガスバリア性の向上に関して、離型層と薄膜層との相乗効果はほぼ期待できない状態にあった。
【0007】
本開示は、被転写体である基材上に薄膜層を転写技術で設けることが可能であり、高いガスバリア性を有するバリア性積層体を製造できる転写フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の転写フィルムは、支持層と、支持層から剥離可能な転写層と、を備え、支持層は、ポリオレフィンを主成分として含有する第1のポリオレフィン層を少なくとも備え、転写層は、ガスバリア性樹脂を主成分として含有するバリア性樹脂層と、金属および/または無機酸化物を含む薄膜層と、を少なくとも備え、第1のポリオレフィン層とバリア性樹脂層とが接している。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、被転写体である基材、特に紙基材上に上記薄膜層を転写技術で設けることが可能であり、高いガスバリア性を有するバリア性積層体を製造できる転写フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の転写フィルムの一実施形態の模式断面図である。
図2図2は、本開示の転写フィルムの一実施形態の模式断面図である。
図3図3は、本開示の転写フィルムの一実施形態の模式断面図である。
図4図4は、本開示の転写フィルムの一実施形態の模式断面図である。
図5図5は、本開示のバリア性積層体の一実施形態の模式断面図である。
図6図6は、本開示のバリア性積層体の一実施形態の模式断面図である。
図7図7は、本開示のバリア性積層体の一実施形態の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、詳細に説明する。本開示は多くの異なる形態で実施でき、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されない。図面は、説明をより明確にするため、実施形態に比べ、各層の幅、厚さおよび形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。本明細書と各図において、既出の図に関してすでに説明したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
本開示において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補および複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。上記パラメータとしては、例えば、物性値、成分の含有割合および層の厚さが挙げられる。一例として、「パラメータBは、好ましくはA1以上、より好ましくはA2以上、さらに好ましくはA3以上である。パラメータBは、好ましくはA4以下、より好ましくはA5以下、さらに好ましくはA6以下である。」との記載について説明する。この例において、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下でもよく、A1以上A5以下でもよく、A1以上A6以下でもよく、A2以上A4以下でもよく、A2以上A5以下でもよく、A2以上A6以下でもよく、A3以上A4以下でもよく、A3以上A5以下でもよく、A3以上A6以下でもよい。
【0013】
本明細書において、以下の説明で登場する各成分(例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、α-オレフィン、ガスバリア性樹脂などの樹脂材料、ならびに添加剤)は、それぞれ1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0014】
本明細書において、ある層における「主成分」とは、当該層中の含有割合が50質量%超、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である成分をいう。
【0015】
[転写フィルム]
本開示の転写フィルムは、支持層と、支持層から剥離可能な転写層と、を備える。
本開示の転写フィルムは、
ポリオレフィンを主成分として含有する第1のポリオレフィン層と、
ガスバリア性樹脂を主成分として含有するバリア性樹脂層と、
金属および/または無機酸化物を含む薄膜層と、
をこの順に少なくとも備える。
【0016】
第1のポリオレフィン層は、バリア性樹脂層と接している。
支持層は、第1のポリオレフィン層を少なくとも備える。
転写層は、バリア性樹脂層と薄膜層とを少なくとも備える。
【0017】
本開示の転写フィルムを用いることにより、上記転写層を基材上に転写できる。具体的には、本開示の転写フィルムを例えば接着層を介して基材上に配置し、次に転写フィルムが備える支持層を転写層から剥離する。このようにして、基材と、該基材上に配置された転写層と、を備えるバリア性積層体を得ることができる。転写層は、バリア性樹脂層と薄膜層とを備える。したがって、バリア性積層体は、例えば、バリア性樹脂層および薄膜層に基づくガスバリア性に優れる。
【0018】
バリア性樹脂層は、第1の面と、第1の面に対向する第2の面と、を有する。
第1のポリオレフィン層は、バリア性樹脂層の第1の面上に設けられており、好ましくは、バリア性樹脂層の第1の面に接している。バリア性樹脂層は、ポリオレフィン層と比べて、通常は極性が高い。第1のポリオレフィン層とバリア性樹脂層とは極性差を有することから、バリア性樹脂層から第1のポリオレフィン層を容易に剥離できる。したがって、バリア性樹脂層の第1の面は、通常、転写層から支持層を剥離する際の剥離面である。
【0019】
転写フィルムは、第1のポリオレフィン層とバリア性樹脂層との間に、接着性樹脂層などの接着層を備えない。このような転写フィルムは、第1のポリオレフィン層とバリア性樹脂層との極性差に起因して、バリア性樹脂層からの第1のポリオレフィン層の剥離性に優れる。
【0020】
薄膜層は、バリア性樹脂層の第2の面上に設けられており、好ましくは、バリア性樹脂層の第2の面に接している。転写層は、極性の高いバリア性樹脂層上に薄膜層を備えることから、例えば、ガスバリア性に優れる。
【0021】
本開示の転写フィルムにおける転写層から支持層を剥離して得られた、支持層からなるフィルムを「剥離フィルム」ともいう。支持層(剥離フィルム)におけるポリオレフィンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。一実施形態において、支持層(剥離フィルム)におけるポリエチレンの含有割合が上記下限値以上であることが望ましい。
【0022】
従来の易剥離転写技術では、薄膜層のための支持基材として、PETフィルムと離型層とを備える離型フィルムが用いられている。転写剥離後のPETフィルムは、通常は廃棄されており、コスト上昇または環境負荷の要因となっている。本開示の転写フィルムにおいて上記支持基材に相当する支持層が、ポリオレフィンを上記下限値以上の範囲で含有する場合は、剥離フィルムを容易にリサイクルできるし、支持層に再利用することもできる。また、支持層が後述する延伸処理を受けている場合にも、剥離フィルムを、包装材料を構成するポリエチレン延伸基材として再利用することもできる。
【0023】
支持層は、1層または2層以上の第2のポリオレフィン層をさらに備えてもよい。ここで1層または2層以上の第2のポリオレフィン層は、第1のポリオレフィン層におけるバリア性樹脂層に向かう面とは反対側の面上に設けられている。
【0024】
すなわち、本開示の転写フィルムは、
1層または2層以上の第2のポリオレフィン層と、
第1のポリオレフィン層と、
バリア性樹脂層と、
金属および/または無機酸化物を含む薄膜層と、
をこの順に少なくとも備えてもよい。
【0025】
以下、転写フィルムが備える各層について詳細に説明する。
【0026】
<バリア性樹脂層>
バリア性樹脂層は、ガスバリア性樹脂を主成分として含有する。バリア性樹脂層は、例えば、酸素バリア性および水蒸気バリア性等のガスバリア性に優れる。したがって、バリア性樹脂層を備える転写層を基材(被転写体)上に転写して得られるバリア性積層体は、ガスバリア性に優れる。
【0027】
ガスバリア性樹脂は、例えば、ヘテロ原子含有樹脂である。ヘテロ原子含有樹脂におけるヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子および塩素原子が挙げられる。ヘテロ原子含有樹脂は、例えば、ヒドロキシ基、アミド結合、エステル結合、ウレタン結合、イミド基、ニトリル基および塩素原子などのヘテロ原子含有基を有する。ガスバリア性樹脂としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールおよびポリ塩化ビニリデンなどの変性エチレン系重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタン、ポリアクリロニトリルならびに(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。ガスバリア性樹脂は、ポリオレフィンと比べて、通常は極性の高い樹脂である。これらの中でも、ガスバリア性などの観点から、変性エチレン系重合体が好ましく、エチレン-ビニルアルコール共重合体およびポリビニルアルコールがより好ましい。また、ポリアミドも好ましい。
【0028】
ガスバリア性樹脂のメルトフローレート(MFR)は、加工性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。ガスバリア性樹脂のMFRは、製膜性(例えば共押出性)という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。ガスバリア性樹脂のMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。測定温度は、ガスバリア性樹脂の融点に応じて210℃でもよい。
【0029】
共押出性の観点から、バリア性樹脂層を構成する樹脂材料としてMFRが30g/10分以下のガスバリア性樹脂を用い、かつ、後述するポリオレフィン層を構成する樹脂材料としてMFRが30g/10分以下のポリオレフィンを用いることが好ましい。
【0030】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(以下「EVOH」ともいう)は、例えば、エチレンとビニルエステル系モノマーとを共重合させた後にケン化させることにより得られる。エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより行うことができる。
【0031】
ビニルエステル系モノマーとしては、一般的に酢酸ビニルが用いられるが、他のビニルエステル系モノマーを用いてもよい。他のビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニルおよびバーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、ならびに安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステルが挙げられる。
【0032】
EVOHにおいてエチレンに由来する構成単位の含有割合(エチレン含有割合)は、転写層のガスバリア性という観点から、好ましくは50モル%以下、より好ましくは48モル%以下、さらに好ましくは44モル%以下、よりさらに好ましくは40モル%以下、特に好ましくは35モル%以下である。また、EVOHにおけるエチレン含有割合が上限値以下であると、第1のポリオレフィン層とバリア性樹脂層との極性差が大きくなり、支持層の剥離性が向上する。EVOHにおけるエチレン含有割合は、転写フィルムの製膜性という観点から、10モル%以上でもよく、15モル%以上でもよく、20モル%以上でもよく、25モル%以上でもよい。エチレン含有割合は、NMR法により測定される。
【0033】
EVOHにおける平均ケン化度は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上である。平均ケン化度は、JIS K6726:1994(ただしEVOHは水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液を使用)に準拠して測定される。
【0034】
EVOHの融点(Tm)は、耐熱性という観点から、好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは160℃以上、特に好ましくは170℃以上である。EVOHのTmは、好ましくは200℃以下、より好ましくは195℃以下、さらに好ましくは190℃以下である。本明細書において、各種材料のTmは、JIS K7121:2012(3.(2)(ただし、冷却速度10℃/分)による状態調節後の試験片を用いる)に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により得られる融解ピーク温度である。
【0035】
EVOHは、公知の方法により、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化などの変性がされていてもよい。
【0036】
ポリビニルアルコール(以下「PVA」ともいう)における平均ケン化度は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは85モル%以上、90モル%以上または95モル%以上である。平均ケン化度は、JIS K6726:1994に準拠して測定される。PVAは、平均ケン化度が高いほうが、水溶性が高い。紙製品のリサイクル処理には、通常は水が用いられている。例えば基材として紙基材を備えるバリア性積層体を、水を用いたリサイクル処理に供する場合に、平均ケン化度が高いPVAを水に容易に溶解させることができる。したがって、このようなPVAを含有するバリア性樹脂層を備えるバリア性積層体は、リサイクル性に優れる。
【0037】
PVAの融点(Tm)は、耐熱性という観点から、好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは160℃以上、特に好ましくは170℃以上である。PVAのTmは、好ましくは200℃以下、より好ましくは195℃以下、さらに好ましくは190℃以下である。
【0038】
ポリアミドとしては、例えば、脂肪族ポリアミドおよび半芳香族ポリアミドが挙げられる。ポリアミドとしては、脂肪族ポリアミドが好ましく、結晶性脂肪族ポリアミドがより好ましい。
【0039】
脂肪族ポリアミドとしては、例えば、脂肪族ホモポリアミドおよび脂肪族共重合ポリアミドが挙げられる。以下の例示において、ポリアミドを「PA」とも記載する。
【0040】
脂肪族ホモポリアミドとしては、具体的には、ポリカプロラクタムまたはポリ(6-アミノカプロン酸)(PA6)、ポリエナントラクタムまたはポリ(7-アミノエナント酸)(PA7)、ポリウンデカンラクタムまたはポリ(11-アミノウンデカン酸)(PA11)、ポリラウリルラクタムまたはポリ(12-アミノラウリン酸)(PA12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(PA66)、ポリテトラメチレンドデカミド(PA412)、ポリペンタメチレンアゼラミド(PA59)、ポリペンタメチレンセバカミド(PA510)、ポリペンタメチレンドデカミド(PA512)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(PA69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(PA610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(PA612)、ポリノナメチレンアジパミド(PA96)、ポリノナメチレンアゼラミド(PA99)、ポリノナメチレンセバカミド(PA910)、ポリノナメチレンドデカミド(PA912)、ポリデカメチレンアジパミド(PA106)、ポリデカメチレンアゼラミド(PA109)、ポリデカメチレンデカミド(PA1010)、ポリデカメチレンドデカミド(PA1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(PA126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(PA129)、ポリドデカメチレンセバカミド(PA1210)およびポリドデカメチレンドデカミド(PA1212)が挙げられる。
【0041】
脂肪族共重合ポリアミドとしては、具体的には、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(PA6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(PA6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(PA6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカン酸共重合体(PA6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカン酸共重合体(PA6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(PA6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(PA6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(PA6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(PA6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(PA6/66/612)が挙げられる。
【0042】
脂肪族ポリアミドの相対粘度は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.5以上であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.0以下である。脂肪族ポリアミドの相対粘度は、JIS K6920-2:2009に準拠して、ポリアミド1gを96%濃硫酸100mLに溶解させ、25℃で測定される。
【0043】
半芳香族ポリアミドとは、芳香族ジアミンに由来する構成単位と、脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位とを有するポリアミド、または、脂肪族ジアミンに由来する構成単位と、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位とを有するポリアミドである。例えば、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから構成されるポリアミド、および脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸とから構成されるポリアミドが挙げられる。
【0044】
半芳香族ポリアミドとしては、例えば、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(PA6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(PA6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(PA9T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体(PA66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(PA66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミド共重合体(PA6T/6)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミド共重合体(PA6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカミド共重合体(PA6T/12)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体(PA6I/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルペンタメチレンテレフタルアミド)共重合体(PA6T/M5T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(PA66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(PA66/6/6I)およびポリメタキシリレンアジパミド(PAMXD6)が挙げられる。
【0045】
半芳香族ポリアミドのメルトボリュームレート(MVR)は、好ましくは5cm3/10分以上、より好ましくは10cm3/10分以上であり、好ましくは200cm3/10分以下、より好ましくは100cm3/10分以下であり、例えば5cm3/10分以上200cm3/10分以下である。MVRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度275℃、荷重5.00kgで測定される。
【0046】
ポリアミドとしては、結晶性脂肪族ポリアミドが好ましい。結晶性脂肪族ポリアミドとしては、例えば、PA6、PA11、PA12、PA66、PA610、PA612、PA6/66およびPA6/66/12が挙げられる。結晶性脂肪族ポリアミドの融点(Tm)は、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上、さらに好ましくは200℃以上であり、好ましくは300℃以下、より好ましくは270℃以下、さらに好ましくは240℃以下である。
【0047】
ポリアミドのMFRは、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは1.5g/10分以上であり、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは30g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下であり、例えば0.1g/10分以上50g/10分以下である。ポリアミドのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度235℃、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。ポリアミドの融点に応じて、適切な測定温度を採用できる。
【0048】
バリア性樹脂層におけるガスバリア性樹脂の含有割合は、ガスバリア性などの上述した物性という観点から、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0049】
バリア性樹脂層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、相溶化剤、顔料および改質用樹脂が挙げられる。
【0050】
転写層は、バリア性樹脂層を1層備えてもよく、2層以上備えてもよい。転写層がバリア性樹脂層を2層以上備える場合は、転写層は、意図せぬ層間での剥離を抑制するという観点から、各バリア性樹脂層の間に、例えばポリオレフィン層などの他の層を備えないことが好ましい。
【0051】
転写層がバリア性樹脂層を2層以上備える場合は、バリア性樹脂層の第1の面とは、複数のバリア性樹脂層の面のうち、第1のポリオレフィン層の最も近くに位置する面を意味し、第2の面とは、複数のバリア性樹脂層の面のうち、薄膜層の最も近くに位置する面を意味する。例えば、転写フィルムが、第1のポリオレフィン層と、第1のバリア性樹脂層と、第2のバリア性樹脂層と、薄膜層と、をこの順に備える場合は、上記第1の面とは、第1のバリア性樹脂層における第1のポリオレフィン層に向かう面を意味し、上記第2の面とは、第2のバリア性樹脂層における薄膜層に向かう面を意味する。
【0052】
バリア性樹脂層の厚さは、転写層の耐屈曲性という観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下、特に好ましくは3μm以下である。バリア性樹脂層の厚さは、ガスバリア性などの上述した物性という観点から、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。転写層がバリア性樹脂層を2層以上備える場合は、上記厚さは、各バリア性樹脂層の厚さの合計を意味する。
【0053】
ガスバリア性は、一般的にバリア材の厚さに依存することが多い。しかしながら、本開示における転写層は、バリア性樹脂層上に薄膜層を備える。したがって、転写層は、バリア性樹脂層の厚さに大きく依存せずに、バリア性樹脂層が薄くても高いガスバリア性を発現でき、高いガスバリア性を被転写体である基材に付与できる。また、薄いバリア性樹脂層上に薄膜層を備える転写層は、高い耐屈曲性を有することから、後述するバリア性積層体の耐屈曲性を高めることができる。ここで高い耐屈曲性とは、折り曲げ後のガスバリア性が優れることを意味する。
【0054】
第1のポリオレフィン層とバリア性樹脂層との剥離強度は、好ましくは0.5N/15mm幅以下、より好ましくは0.4N/15mm幅以下、さらに好ましくは0.3N/15mm幅以下である。このような剥離強度を有する転写フィルムの場合、支持層から転写層を被転写体である基材に容易に転写できる。上記剥離強度は、例えば0.01N/15mm幅以上である。
【0055】
上記剥離強度は、剥離角度:T型剥離、試験速度:50mm/minの条件にて測定される。具体的には、実施例欄に記載の条件で作製した中間積層体をカットして、幅:15mm、長さ:100mmのサイズを有する試験片を切り出す。試験片における長さ方向の一方の端部の支持層を剥離して、部分的に剥離された支持層(剥離フィルム)の端部を、引張試験機の一方のつかみ具に取り付け、上記部分的に剥離後の転写層、接着剤層および基材からなる積層体の端部を、引張試験機の他方のつかみ具に取り付ける。初期チャック間距離は100mmとする。次いで、剥離フィルムの端部を取り付けたつかみ具をT型剥離の条件で、50mm/minの速度で引っ張り、最大強度(N)を測定する。15mm幅の試験片に対して測定された最大強度(N)を、剥離強度(N/15mm幅)とする。以上に記載した試験条件以外の条件については、JIS K6854-3:1999に準拠する。
【0056】
<第1のポリオレフィン層>
第1のポリオレフィン層は、バリア性樹脂層から剥離できるように、バリア性樹脂層上に設けられている。したがって、バリア性樹脂層および薄膜層は、転写層を構成する。第1のポリオレフィン層は、好ましくはバリア性樹脂層に接している。
【0057】
第1のポリオレフィン層は、ポリオレフィンを主成分として含有する。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリメチルペンテンが挙げられる。第1のポリオレフィン層としては、ポリエチレンを主成分として含有するポリエチレン層、ポリプロピレンを主成分として含有するポリプロピレン層、ならびにポリエチレンおよびポリプロピレンの混合樹脂を主成分として含有する層が好ましく、ポリエチレン層およびポリプロピレン層がより好ましい。
【0058】
ポリオレフィンのMFRは、加工性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.3g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上である。ポリオレフィンのMFRは、製膜性(例えば共押出性)という観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下、特に好ましくは5g/10分以下である。ポリオレフィンのMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、荷重2.16kgの条件で、A法により測定される。MFRの測定温度は、ポリオレフィンの融点等に応じて設定され、ポリエチレンの場合は190℃であり、ポリプロピレンの場合は230℃である。
【0059】
第1のポリオレフィン層におけるポリオレフィンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
第1のポリオレフィン層は、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリオレフィン(以下「リサイクルポリオレフィン」ともいう)を含有してもよい。メカニカルリサイクルおよびケミカルリサイクルについては後述する。第1のポリオレフィン層は、リサイクルポリオレフィンを50質量%超含有してもよく、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、または90質量%以上含有してもよい。
【0060】
第1のポリオレフィン層は、ポリオレフィン以外の樹脂材料を含有してもよい。このような樹脂材料としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド、ポリエステルおよびアイオノマー樹脂が挙げられる。
【0061】
第1のポリオレフィン層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0062】
第1のポリオレフィン層の厚さは、転写フィルムの強度、耐熱性および剥離フィルムのリサイクル性という観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは2μm以上である。第1のポリオレフィン層の厚さは、転写フィルムの加工性という観点から、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
【0063】
(ポリエチレン層)
第1のポリオレフィン層としてのポリエチレン層は、ポリエチレンを主成分として含有する。本明細書においてポリエチレンとは、全繰返し構成単位中、エチレン由来の構成単位の含有割合が50モル%超の重合体をいう。この重合体において、エチレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。上記含有割合は、NMR法により測定される。
【0064】
本明細書において、ポリエチレンは、エチレンの単独重合体でもよく、エチレンと、エチレン以外のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体でもよい。エチレン以外のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび6-メチル-1-ヘプテン等の炭素数3以上20以下のα-オレフィン、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル等のビニルモノマー、ならびに(メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。α-オレフィンとしては、炭素数3以上12以下のα-オレフィンが好ましく、炭素数3以上8以下のα-オレフィンがより好ましい。
【0065】
上記共重合体としては、例えば、コモノマーが少なくとも1-ブテンであるエチレン-1-ブテン共重合体、コモノマーが少なくとも1-ヘキセンであるエチレン-1-ヘキセン共重合体、およびコモノマーが少なくとも1-オクテンであるエチレン-1-オクテン共重合体が挙げられる。これらの共重合体において、上記コモノマーのみに限定されず、さらなるコモノマーが用いられていてもよい。
【0066】
本明細書において、ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレン、ならびにエチレン-酢酸ビニル共重合体およびエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。
【0067】
本明細書においてポリエチレンの密度は、以下のとおりである。
高密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.945g/cm3以上である。高密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.965g/cm3以下である。中密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.930g/cm3以上0.945g/cm3未満である。低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.860g/cm3以上0.930g/cm3未満、より好ましくは0.900g/cm3以上0.930g/cm3未満である。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.860g/cm3以上0.930g/cm3未満、より好ましくは0.900g/cm3以上0.930g/cm3未満である。ポリエチレンの密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。
【0068】
低密度ポリエチレンは、例えば、高圧重合法によりエチレンを重合して得られるポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン)である。直鎖状低密度ポリエチレンは、例えば、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒またはメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いた重合法によりエチレンおよび少量のα-オレフィンを重合して得られるポリエチレンである。直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)としては、例えば、コモノマーが少なくとも1-ブテンであるエチレン-1-ブテン共重合体(C4-LLDPE)、コモノマーが少なくとも1-ヘキセンであるエチレン-1-ヘキセン共重合体(C6-LLDPE)、およびコモノマーが少なくとも1-オクテンであるエチレン-1-オクテン共重合体(C8-LLDPE)が挙げられる。これらの共重合体において、上記コモノマーのみに限定されず、さらなるコモノマーが用いられていてもよい。
【0069】
ポリエチレンの融点(Tm)は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。ポリエチレンのTmは、好ましくは140℃以下である。
【0070】
密度または分岐が異なるポリエチレンは、重合方法を適宜選択することによって得られる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒、またはメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合および高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段または2段以上の多段で重合を行うことが好ましい。
【0071】
本明細書において、ポリエチレンとしては、バイオマス由来のポリエチレン(以下「バイオマスポリエチレン」ともいう)を用いてもよい。すなわち、ポリエチレンを得るための原料として、化石燃料から得られるエチレン等に代えて、バイオマス由来のエチレン等を用いてもよい。バイオマスポリエチレンは、カーボンニュートラルな材料であることから、積層体または包装容器による環境負荷を低減できる。バイオマスポリエチレンは、例えば、特開2013-177531号公報に記載されている方法により製造できる。市販されているバイオマスポリエチレンを用いてもよい。
【0072】
本明細書において、ポリエチレンとしては、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエチレン(以下「リサイクルポリエチレン」ともいう)を用いてもよい。これにより、積層体または包装容器による環境負荷を低減できる。メカニカルリサイクルとは、一般的に、回収されたポリエチレンフィルムなどを粉砕し、アルカリ洗浄してフィルム表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してフィルム内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、フィルムの汚れを取り除き、再びポリエチレンに戻す方法である。ケミカルリサイクルとは、一般的に、回収されたポリエチレンフィルムなどをモノマーレベルまで分解し、当該モノマーを再度重合してポリエチレンを得る方法である。
【0073】
上記ポリエチレンの説明は、他の層に含まれるポリエチレンにも適用できる。
【0074】
第1のポリオレフィン層としてのポリエチレン層は、例えば、密度が0.930g/cm3以上のポリエチレンを主成分として含有する層、または、密度が0.930g/cm3未満のポリエチレンを主成分として含有する層である。
第1のポリオレフィン層としてのポリエチレン層は、密度が0.930g/cm3以上のポリエチレンを主成分として含有することが好ましく、密度が0.940g/cm3以上のポリエチレンを主成分として含有することがより好ましく、密度が0.945g/cm3以上のポリエチレンを主成分として含有することがさらに好ましい。このようなポリエチレン層は、密度が0.930g/cm3未満のポリエチレンを主成分として含有する層と比べて、バリア性樹脂層からの剥離性により優れる。
【0075】
第1のポリオレフィン層としてのポリエチレン層としては、例えば、低密度ポリエチレンを主成分として含有する層、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する層、中密度ポリエチレンを主成分として含有する層、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンの混合樹脂を主成分として含有する層、および高密度ポリエチレンを主成分として含有する層が挙げられる。
第1のポリオレフィン層としてのポリエチレン層としては、中密度ポリエチレンを主成分として含有する層、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンの混合樹脂を主成分として含有する層、または高密度ポリエチレンを主成分として含有する層が好ましく、高密度ポリエチレンを主成分として含有する層がより好ましい。このようなポリエチレン層は、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する層と比べて、バリア性樹脂層からの剥離性により優れる。
【0076】
第1のポリオレフィン層としてのポリエチレン層における上記密度を有するポリエチレンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0077】
(ポリプロピレン層)
第1のポリオレフィン層としてのポリプロピレン層は、ポリプロピレンを主成分として含有する。ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー(ホモポリプロピレン)、プロピレンランダムコポリマー(ランダムポリプロピレン)およびプロピレンブロックコポリマー(ブロックポリプロピレン)のいずれでもよく、これらから選択される2種以上の混合物でもよい。ポリプロピレンとしては、環境負荷の低減という観点から、バイオマス由来のポリプロピレンや、メカニカルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリプロピレンを用いてもよい。ホモポリプロピレンを含有する層よりもランダムポリプロピレンを含有する層の方が、バリア性樹脂層との密着強度が高くなる傾向にある。
【0078】
ポリプロピレン層は、バリア性樹脂層、特にEVOHを主成分として含有するバリア性樹脂層からの剥離性に優れる傾向にある。ポリプロピレンの中でも、バリア性樹脂層からのポリプロピレン層の剥離性という観点から、アタクチックポリプロピレンよりも、アイソタクチックポリプロピレンまたはシンジオタクチックポリプロピレンが好ましい。
【0079】
プロピレンホモポリマーとは、プロピレンのみの重合体である。プロピレンランダムコポリマーとは、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィン等とのランダム共重合体である。プロピレンブロックコポリマーとは、少なくともプロピレンからなる重合体ブロックと、少なくともプロピレン以外のα-オレフィン等からなる重合体ブロックとを有する共重合体である。これらの中でもプロピレンランダムコポリマーは、製膜性の観点から好ましい。
【0080】
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2以上20以下のα-オレフィンが挙げられ、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび6-メチル-1-ヘプテンが挙げられる。α-オレフィンとしては、炭素数2以上12以下のα-オレフィンが好ましく、炭素数2以上8以下のα-オレフィンがより好ましい。
【0081】
ポリプロピレンの密度は、例えば0.88g/cm3以上0.92g/cm3以下である。ポリプロピレンの密度は、JIS K7112:1999のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定される。
【0082】
ポリプロピレンの融点(Tm)は、バリア性樹脂層からのポリプロピレン層の剥離性という観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上である。ポリプロピレンのTmは、好ましくは170℃以下である。
【0083】
上記ポリプロピレンの説明は、他の層に含まれるポリプロピレンにも適用できる。
【0084】
ポリプロピレン層におけるポリプロピレンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0085】
<第2のポリオレフィン層>
支持層は、第2のポリオレフィン層をさらに備えてもよい。支持層は、第2のポリオレフィン層を1層備えてもよく、2層以上備えてもよい。支持層が第2のポリオレフィン層を備える場合は、第2のポリオレフィン層は、第1のポリオレフィン層におけるバリア性樹脂層に向かう面とは反対側の面上に位置している。
【0086】
第2のポリオレフィン層の組成は、第1のポリオレフィン層の組成と同一でもよく、異なってもよい。第2のポリオレフィン層の厚さは、第1のポリオレフィン層の厚さと同一でもよく、異なってもよい。支持層が第2のポリオレフィン層を2層以上備える場合は、複数の第2のポリオレフィン層の組成は、それぞれ同一でもよく、異なってもよく、複数の第2のポリオレフィン層の厚さは、それぞれ同一でもよく、異なってもよい。
【0087】
第2のポリオレフィン層は、ポリオレフィンを主成分として含有する。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリメチルペンテンが挙げられる。第2のポリオレフィン層としては、ポリエチレンを主成分として含有するポリエチレン層、ポリプロピレンを主成分として含有するポリプロピレン層、ならびにポリエチレンおよびポリプロピレンの混合樹脂を主成分として含有する層が好ましく、ポリエチレン層およびポリプロピレン層がより好ましい。
【0088】
ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィンの詳細(具体例や、MFRおよびTmなど)については、第1のポリオレフィン層の欄において詳細に説明したとおりであり、本欄での記載は省略する。
【0089】
第2のポリオレフィン層におけるポリオレフィンの含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
第2のポリオレフィン層は、リサイクルポリオレフィンを含有してもよい。第2のポリオレフィン層は、リサイクルポリオレフィンを50質量%超含有してもよく、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、または90質量%以上含有してもよい。
【0090】
第2のポリオレフィン層は、ポリオレフィン以外の樹脂材料を含有してもよい。このような樹脂材料としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド、ポリエステルおよびアイオノマー樹脂が挙げられる。
【0091】
第2のポリオレフィン層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0092】
転写フィルムは、例えば、中密度ポリエチレン、または中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンの混合樹脂を主成分として含有する第2-1層と、高密度ポリエチレンを主成分として含有する第2-2層と、中密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンの混合樹脂を主成分として含有する第2-3層と、高密度ポリエチレンを主成分として含有する第1のポリオレフィン層と、バリア性樹脂層と、薄膜層と、をこの順に備えてもよい。第2-1層、第2-2層および第2-3層が、第2のポリオレフィン層に相当する。
【0093】
第2-1層は、中密度ポリエチレンを主成分として含有するか、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンの混合樹脂を主成分として含有する。該混合樹脂における中密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの質量比は、10:90~90:10でもよく、20:80~80:20でもよく、30:70~70:30でもよく、40:60~60:40でもよい。中密度ポリエチレンは、例えば、インフレーション製膜性などの加工性および積層フィルムの表面状態の向上に寄与する。高密度ポリエチレンは、例えば、積層フィルムのカールの抑制に寄与する。
第2-2層は、高密度ポリエチレンを主成分として含有する。高密度ポリエチレンは、例えば、積層フィルムのカールの抑制に寄与する。
第2-3層は、中密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンの混合樹脂を主成分として含有する。該混合樹脂における中密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとの質量比は、10:90~90:10でもよく、20:80~80:20でもよく、30:70~70:30でもよく、40:60~60:40でもよい。直鎖状低密度ポリエチレンは、例えば、加工性の向上に寄与する。中密度ポリエチレンは、層間密度差を小さく、例えば、層間密着性の向上に寄与する。
【0094】
転写フィルムは、例えば、中密度ポリエチレン、または中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンの混合樹脂を主成分として含有する第2-4層と、中密度ポリエチレンを主成分として含有する第2-5層と、ランダムポリプロピレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンの混合樹脂を主成分として含有する第2-6層と、ランダムポリプロピレンを主成分として含有する第1のポリオレフィン層と、バリア性樹脂層と、薄膜層と、をこの順に備えてもよい。第2-4層、第2-5層および第2-6層が、第2のポリオレフィン層に相当する。
【0095】
第2-4層は、中密度ポリエチレンを主成分として含有するか、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンの混合樹脂を主成分として含有する。該混合樹脂における中密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの質量比は、10:90~90:10でもよく、20:80~80:20でもよく、30:70~70:30でもよく、40:60~60:40でもよい。中密度ポリエチレンは、例えば、インフレーション製膜性などの加工性および積層フィルムの表面状態の向上に寄与する。高密度ポリエチレンは、例えば、積層フィルムのカールの抑制に寄与する。
第2-5層は、中密度ポリエチレンを主成分として含有する。中密度ポリエチレンは、例えば、加工性の向上に寄与する。
第2-6層は、ランダムポリプロピレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンの混合樹脂を主成分として含有する。該混合樹脂におけるランダムポリプロピレンと直鎖状低密度ポリエチレンとの質量比は、10:90~90:10でもよく、20:80~80:20でもよく、30:70~70:30でもよく、40:60~60:40でもよい。直鎖状低密度ポリエチレンは、例えば、第2-6層と第2-5層との密着性の向上に寄与する。ランダムポリプロピレンは、例えば、第2-6層と第1のポリオレフィン層との密着性の向上に寄与する。ランダムポリプロピレンは、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンとの混和性に優れる傾向にある。
【0096】
転写フィルムは、例えば、ホモポリプロピレンを主成分として含有する第2-7層と、ホモポリプロピレンを主成分として含有する第2-8層と、ホモポリプロピレンを主成分として含有する第2-9層と、ホモポリプロピレンまたはランダムポリプロピレンを主成分として含有する第1のポリオレフィン層と、バリア性樹脂層と、薄膜層と、をこの順に備えてもよい。第2-7層、第2-8層および第2-9層が、第2のポリオレフィン層に相当する。
【0097】
転写フィルムは、例えば、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する第2-10層と、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する第2-11層と、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する第2-12層と、直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含有する第1のポリオレフィン層と、バリア性樹脂層と、薄膜層と、をこの順に備えてもよい。第2-10層、第2-11層および第2-12層が、第2のポリオレフィン層に相当する。
【0098】
第2-1層または第2-4層の厚さの割合は、第2のポリオレフィン層の総厚さに対して、好ましくは3%以上、より好ましくは8%以上、さらに好ましくは13%以上であり、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。
第2-2層または第2-5層の厚さの割合は、第2のポリオレフィン層の総厚さに対して、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上であり、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下である。
第2-3層または第2-6層の厚さの割合は、第2のポリオレフィン層の総厚さに対して、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは55%以上であり、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下、さらに好ましくは70%以下である。
【0099】
第2-7層または第2-10層の厚さの割合は、第2のポリオレフィン層の総厚さに対して、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上であり、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。
第2-8層または第2-11層の厚さの割合は、第2のポリオレフィン層の総厚さに対して、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは7%以上であり、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。
第2-9層または第2-12層の厚さの割合は、第2のポリオレフィン層の総厚さに対して、好ましくは55%以上、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは75%以上であり、好ましくは96%以下、より好ましくは92%以下、さらに好ましくは88%以下である。
【0100】
第2のポリオレフィン層の厚さは、転写フィルムの強度、耐熱性および剥離フィルムのリサイクル性という観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。第2のポリオレフィン層の厚さは、転写フィルムの加工性という観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。支持層が第2のポリオレフィン層を2層以上備える場合は、上記厚さは、第2のポリオレフィン層の厚さの合計を意味する。
【0101】
<薄膜層>
本開示の転写フィルムは、バリア性樹脂層の第2の面上に、金属および/または無機酸化物を含む薄膜層を備える。薄膜層は、好ましくは、バリア性樹脂層の第2の面に接している。好ましくは、薄膜層は、バリア性樹脂層の第2の面に直接、蒸着形成されている。
【0102】
上述したように、従来の易剥離転写技術では、薄膜層のための支持基材として、PETフィルムと離型層とを備える離型フィルムが用いられている。離型層は、通常は極性が低く、薄膜層との密着性が高くない傾向にある。したがって、転写後の薄膜層の安定性の低下や、クラックの発生などが懸念され、ガスバリア性が充分ではない場合がある。これに対して、上記バリア性樹脂層は高い極性を有することから、薄膜層との密着性に優れる傾向にある、と推測される。したがって、高い極性を有するバリア性樹脂層上に薄膜層を備えるバリア性積層体は、ガスバリア性樹脂が有する固有のガスバリア値を超える高いガスバリア性を発現するとともに、高い耐屈曲性を有する。
【0103】
薄膜層は、金属および/または無機酸化物を含む。薄膜層は、1種または2種以上の金属から構成される金属薄膜層、具体的には金属蒸着膜でもよく、1種または2種以上の無機酸化物から構成される無機酸化物薄膜層、具体的には無機酸化物蒸着膜でもよい。
薄膜層は、例えば、金属蒸着膜、または透明蒸着膜等の無機酸化物蒸着膜である。
【0104】
金属としては、例えば、アルミニウム、クロム、スズ、ニッケル、銅、銀、金およびプラチナが挙げられる。無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウムおよび酸化炭化珪素(炭素含有酸化珪素)が挙げられる。
【0105】
薄膜層としては、アルミニウム蒸着膜などのアルミニウム薄膜層、酸化アルミニウム(アルミナ)蒸着膜などの酸化アルミニウム薄膜層、酸化ケイ素(シリカ)蒸着膜などの酸化ケイ素薄膜層、および酸化炭化珪素蒸着膜などの酸化炭化珪素薄膜層が好ましい。
【0106】
薄膜層の厚さは、ガスバリア性および意匠性という観点から、好ましくは50Å以上、より好ましくは100Å以上、さらに好ましくは200Å以上、よりさらに好ましくは300Å以上、特に好ましくは400Å以上である。薄膜層の厚さは、薄膜層におけるクラックの発生の抑制という観点から、好ましくは1500Å以下、より好ましくは1300Å以下、さらに好ましくは1000Å以下、よりさらに好ましくは900Å以上、特に好ましくは800Å以下である。
【0107】
薄膜層がアルミニウム蒸着膜などのアルミニウム薄膜層である場合は、アルミニウム蒸着膜などのアルミニウム薄膜層の光学濃度(OD値)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上、特に好ましくは2.5以上であり、例えば3.5以下でもよい。このような薄膜層を備える転写フィルムは、生産性に優れるとともに、被転写体に良好な酸素バリア性および水蒸気バリア性を付与できる。OD値は、JIS K7361-1:1997に準拠して測定できる。
【0108】
薄膜層には、表面処理が施されていることが好ましい。このような薄膜層は、例えば、隣接する層との密着性に優れる。表面処理の方法としては、例えば、物理的処理および化学的処理が挙げられる。物理的処理としては、例えば、コロナ処理、オゾン処理、酸素ガスおよび/または窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、ならびにグロー放電処理が挙げられる。化学的処理としては、例えば、化学薬品を用いた酸化処理が挙げられる。
【0109】
薄膜層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法などの物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、ならびにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法および光化学気相成長法などの化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)が挙げられる。薄膜層は、物理気相成長法および化学気相成長法の両者を併用して形成される、異種の薄膜層を2層以上含む複合膜でもよい。加熱手段としては、例えば、抵抗加熱手段、誘導加熱手段および電子線加熱手段が挙げられる。
【0110】
薄膜層は、1回の蒸着工程により形成される単層でもよく、複数回の蒸着工程により形成される多層でもよい。薄膜層が多層である場合、各層は同一の成分から構成されてもよく、異なる成分から構成されてもよい。各層は、同一の方法により形成してもよく、異なる方法により形成してもよい。
【0111】
<保護層>
本開示の転写フィルムは、薄膜層上に、保護層をさらに備えてもよい。すなわち、転写層は、薄膜層におけるバリア性樹脂層に向かう面とは反対側の面上に、保護層をさらに備えてもよい。このような転写層は、例えば、酸素バリア性および水蒸気バリア性に優れるとともに、薄膜層が無機酸化物薄膜層である場合は、薄膜層におけるクラックの発生を効果的に抑制できる。
【0112】
保護層は、一実施形態において、上述したガスバリア性樹脂を含有する層である。
保護層におけるガスバリア性樹脂の含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
保護層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0113】
ガスバリア性樹脂を含有する保護層の厚さは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
【0114】
ガスバリア性樹脂を含有する保護層は、例えば、ガスバリア性樹脂などの材料を水または適当な有機溶剤に溶解または分散させて得られた塗布液を、薄膜層に塗布し、乾燥することにより形成できる。
【0115】
保護層は、一実施形態において、金属アルコキシドと、水溶性高分子と、必要に応じてシランカップリング剤とを混合し、必要に応じて水、有機溶剤およびゾルゲル法触媒を添加して得られたガスバリア性組成物を、薄膜層に塗布し、乾燥することにより形成されるガスバリア性塗布膜である。ガスバリア性塗布膜は、上記金属アルコキシド等がゾルゲル法によって加水分解および重縮合された加水分解重縮合物を含む。このようなガスバリア性塗布膜を薄膜層上に設けることにより、薄膜層が無機酸化物薄膜層である場合は、薄膜層におけるクラックの発生を効果的に抑制できる。
【0116】
金属アルコキシドとしては、例えば、アルコキシシランが挙げられ、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランおよびテトラブトキシシランが挙げられる。
【0117】
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体等の水酸基含有高分子が挙げられる。酸素バリア性、水蒸気バリア性、耐水性および耐候性などの所望の物性に応じて、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体のいずれか一方を用いてもよく、両者を併用してもよく、また、ポリビニルアルコールを用いて得られるガスバリア性塗布膜およびエチレン-ビニルアルコール共重合体を用いて得られるガスバリア性塗布膜を積層してもよい。水溶性高分子の使用量は、金属アルコキシド100質量部に対して、好ましくは5質量部以上500質量部以下である。
【0118】
シランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができ、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好ましく、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランおよびβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。シランカップリング剤の使用量は、金属アルコキシド100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下である。
【0119】
ガスバリア性組成物は、金属アルコキシド1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.5モル以上の、好ましくは100モル以下、より好ましくは60モル以下の割合の水を含んでもよい。
【0120】
ガスバリア性組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールおよびn-ブチルアルコールが挙げられる。
【0121】
ゾルゲル法触媒としては、酸またはアミン系化合物が好ましい。
【0122】
ガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーター等のロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコートおよびアプリケータ等の塗布手段が挙げられる。
【0123】
ガスバリア性塗布膜の厚さは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
【0124】
<接着層>
本開示の転写フィルムは、薄膜層におけるバリア性樹脂層に向かう面とは反対側の面上または保護層における薄膜層に向かう面とは反対側の面上に、接着層を備えてもよい。接着層は、後述するバリア性積層体の製造方法においては、被転写体と薄膜層または保護層とを貼り合わせるための層である。転写フィルムは接着層を備えなくともよく、例えば被転写体上に接着層を設けてもよい。
【0125】
接着層は、一実施形態において、薄膜層と接する層である。この実施形態においては、接着層は、薄膜層を保護する。例えば、転写フィルムに屈曲負荷が掛かった場合に、接着層は、薄膜層におけるクラックの発生を抑制し、屈曲負荷後に薄膜層に微小なクラックが生じ始めた場合においても、ガスバリア性の低下を抑制する。
接着層の詳細は後述するとおりであり、本欄での説明は省略する。
【0126】
<積層フィルム>
本開示の転写フィルムは、一実施形態において、
第1のポリオレフィン層およびバリア性樹脂層を少なくとも備える積層フィルムと、
バリア性樹脂層上に位置する薄膜層と、
を少なくとも備える。
【0127】
積層フィルムは、第1のポリオレフィン層とバリア性樹脂層とを少なくとも備える。バリア性樹脂層は、積層フィルムの一方の表層を構成する。積層フィルムは、第2のポリオレフィン層をさらに備えてもよく、例えば、1層または2層以上の第2のポリオレフィン層と、第1のポリオレフィン層と、バリア性樹脂層と、をこの順に少なくとも備えてもよい。各層の詳細については上述したとおりである。
【0128】
積層フィルムは、第1のポリオレフィン層とバリア性樹脂層との間に、接着性樹脂層などの接着層を備えない。このような積層フィルムは、第1のポリオレフィン層とバリア性樹脂層との極性差に起因して、バリア性樹脂層からの第1のポリオレフィン層の剥離性に優れる。
【0129】
積層フィルムの層数は、2層以上であり、好ましくは3層以上であり、好ましくは9層以下であり、より好ましくは7層以下である。積層フィルムの層数は、具体的には、3層、5層、7層または9層である。
【0130】
積層フィルムは、延伸フィルムでもよく、未延伸フィルムでもよい。積層フィルムは、延伸フィルムであること、すなわち延伸処理が施されたフィルムであることが好ましい。延伸処理により、例えば、フィルムの強度および耐熱性を向上できるとともに、バリア性樹脂層を薄膜化できる。
【0131】
延伸処理は、一軸延伸でもよく、二軸延伸でもよい。MD方向(積層フィルムの流れ方向)へ延伸を行う場合の延伸倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、好ましくは20倍以下、より好ましくは10倍以下、さらに好ましくは7倍以下である。TD方向(MD方向に対して垂直な方向)へ延伸を行う場合の延伸倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上であり、好ましくは20倍以下、より好ましくは10倍以下、さらに好ましくは7倍以下である。
【0132】
延伸処理は、フィルム成形から連続して延伸を行うインライン方式で行ってもよく、一旦巻き取った未延伸フィルムを再度巻き戻して延伸を行うオフライン方式で行ってもよい。延伸処理としては、積層フィルムの厚さを容易に制御できるという観点から、インライン方式が好ましい。
【0133】
積層フィルムは、例えば、一軸延伸されたフィルム(一軸延伸フィルム)または二軸延伸されたフィルム(二軸延伸フィルム)であり、具体的には、MD方向へ一軸延伸されたフィルム(MDOフィルム)でもよく、MD方向およびTD方向へ二軸延伸されたフィルム(BOフィルム)でもよい。
【0134】
積層フィルムの厚さは、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは18μm以上、特に好ましくは20μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは40μm以下である。厚さが下限値以上の積層フィルムは、例えば、強度および耐熱性に優れる。厚さが上限値以下の積層フィルムは、例えば、加工性に優れる。
【0135】
バリア性樹脂層の厚さは、積層フィルムの厚さに対して、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上であり、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。積層フィルムがバリア性樹脂層を2層以上備える場合は、上記厚さは、各バリア性樹脂層の厚さの合計を意味する。
【0136】
積層フィルムは、例えば、各層を構成する材料を製膜してフィルムを作製した後、該フィルムを延伸することにより作製できる。製膜の方法としては、例えば、インフレーション成形法およびTダイ成形法が挙げられる。インフレーション成形法によれば、製膜に続いて延伸を行うことができる。
【0137】
積層フィルムは、一実施形態において、共押出樹脂フィルムである。
積層フィルムは、一実施形態において、ポリオレフィン層を構成する材料と、バリア性樹脂層を構成する材料とを、インフレーション成形法またはTダイ法等により共押出製膜し、得られたフィルムをさらに延伸処理して得られたフィルムである。エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールおよびポリアミド等のガスバリア性樹脂を含有する樹脂フィルムは、直接、薄く加工することが困難であることがある。また、ガスバリア性樹脂を含有する溶液をポリオレフィン層に塗布しコート層を形成する場合は、該溶液とポリオレフィン層との親和性が高くないことから、ポリオレフィン層が該溶液を弾いてしまい、コーティングが困難であることがある。これらの方法に対して、ポリオレフィンおよびバリア性樹脂を共押出法により共押出し、得られたフィルムを延伸処理することにより、ポリオレフィン層上に薄いバリア性樹脂層を備える積層フィルムを作製できる。
【0138】
上記延伸フィルムは、ある程度の厚さを有し、かつフィルム自体の強度を有することから、蒸着工程での加工性に優れており、したがって上記延伸フィルムのバリア性樹脂層上に薄膜層を容易に形成できる。一方、上述した厚さが3μm以下という薄いバリア性樹脂層のみからなるフィルムに、薄膜層を形成することは、困難であることがある。
【0139】
積層フィルムには、表面処理が施されていてもよい。このような積層フィルムは、例えば、他の層との密着性に優れる。表面処理の方法としては、上述したとおりである。
【0140】
<転写フィルムの層構成>
本開示の転写フィルムの層構成について、以下に数例を挙げる。
・第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層
・第2のPO層/第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層
・第2のPO層/第2のPO層/第2のPO層/第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層
・第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層/保護層
・第2のPO層/第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層/保護層
・第2のPO層/第2のPO層/第2のPO層/第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層/保護層
・第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層/接着層
・第2のPO層/第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層/接着層
・第2のPO層/第2のPO層/第2のPO層/第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層/接着層
・第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層/保護層/接着層
・第2のPO層/第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層/保護層/接着層
・第2のPO層/第2のPO層/第2のPO層/第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層/保護層/接着層
【0141】
「PO層」はポリオレフィン層を意味し、「/」は層間を意味する。
【0142】
図1図4に、本開示の転写フィルムの一実施形態に係る模式断面図を示す。
図1に示す転写フィルム1は、第1のポリオレフィン層14と、バリア性樹脂層12と、薄膜層20と、をこの順に備える。バリア性樹脂層12は、第1の面12aと第2の面12bとを有する。第1のポリオレフィン層14は、バリア性樹脂層12の第1の面12aに接して設けられている。薄膜層20は、バリア性樹脂層12の第2の面12bに接して設けられている。
【0143】
図2に示す転写フィルム1は、第1のポリオレフィン層14と、バリア性樹脂層12と、バリア性樹脂層12と、薄膜層20と、をこの順に備える。図2に示す転写フィルム1は、バリア性樹脂層12を2層備える。
【0144】
図3に示す転写フィルム1は、第2のポリオレフィン層16と、第1のポリオレフィン層14と、バリア性樹脂層12と、薄膜層20と、をこの順に備える。
【0145】
図4に示す転写フィルム1は、第2のポリオレフィン層16と、第2のポリオレフィン層16と、第2のポリオレフィン層16と、第1のポリオレフィン層14と、バリア性樹脂層12と、薄膜層20と、をこの順に備える。図4に示す転写フィルム1は、第2のポリオレフィン層16を3層備える。
【0146】
図1図4に示す転写フィルム1は、支持層1Sと、該支持層1S上に設けられた転写層1Tと、を備える。図1図4に示す転写フィルム1は、積層フィルム10を備える。積層フィルム10は、任意に第2のポリオレフィン層16と、第1のポリオレフィン層14と、バリア性樹脂層12と、を備える。
【0147】
図1図4に示す転写フィルム1は、薄膜層20におけるバリア性樹脂層12に向かう面とは反対側の面上に、いずれも図示せぬ保護層および/または接着層をさらに備えてもよい。
【0148】
<転写フィルムのガスバリア性>
本開示の転写フィルムの酸素透過度(単位:cc/(m2・day・atm))は、好ましくは3.0以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下、よりさらに好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.3以下である。酸素透過度の下限値は、例えば0.01でもよい。酸素透過度は、JIS K7126-2:2006に準拠して、温度23℃、湿度65%RH環境下にて測定される。
【0149】
本開示の転写フィルムの水蒸気透過度(単位:g/(m2・day))は、好ましくは10以下、より好ましくは7.0以下、さらに好ましくは5.0以下、よりさらに好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.0以下である。水蒸気透過度の下限値は、例えば0.1でもよい。水蒸気透過度は、JIS K7129-2:2019に準拠して、温度38℃、湿度90%RH環境下にて測定される。
【0150】
[バリア性積層体]
本開示の第1の態様のバリア性積層体は、
第1のポリオレフィン層と、
バリア性樹脂層と、
金属および/または無機酸化物を含む薄膜層と
接着層と、
基材と、
をこの順に少なくとも備える。
【0151】
本開示の第2の態様のバリア性積層体は、
バリア性樹脂層と、
金属および/または無機酸化物を含む薄膜層と
接着層と、
基材と、
をこの順に少なくとも備える。
【0152】
本開示の第1の態様のバリア性積層体は、第1のポリオレフィン層におけるバリア性樹脂層に向かう面とは反対側の面上に、第2のポリオレフィン層をさらに備えてもよい。本開示の第1の態様のバリア性積層体は、第2のポリオレフィン層を1層または2層以上備えてもよい。本開示の第1の態様のバリア性積層体は、上述した転写フィルムと、所望により接着層と、基材と、をこの順に少なくとも備えてもよい。本開示の第2の態様のバリア性積層体は、上述した転写層と、所望により接着層と、基材と、をこの順に少なくとも備えてもよい。転写フィルムまたは転写層が接着層を備える場合は、上記接着層を設けなくともよい。
【0153】
本開示の第1の態様および第2の態様のバリア性積層体は、薄膜層と接着層との間に、保護層をさらに備えてもよい。
本開示の第2の態様のバリア性積層体は、熱融着性樹脂層をさらに備えてもよい。
【0154】
本開示の第1の態様のバリア性積層体における少なくとも第1のポリオレフィン層を剥離することにより、第2の態様のバリア性積層体を得ることができる。具体的には、本開示の第1の態様のバリア性積層体における転写フィルムを構成する支持層を剥離することにより、第2の態様のバリア性積層体を得ることができる。このように第1の態様のバリア性積層体は、第2の態様のバリア性積層体を得るための、中間積層体であってもよい。
【0155】
第1の態様および第2の態様のバリア性積層体における各層および薄膜層の詳細、ならびに各層の位置関係については、転写フィルムの欄にて上述したとおりであり、本欄での説明は省略する。
【0156】
<基材(被転写体)>
基材としては、例えば、樹脂フィルム、紙基材および木材が挙げられる。基材は、厚さが大きい樹脂フィルムや、紙基材および木材などの、薄膜層を直接形成することが困難な基材でもよい。これらの中でも、紙基材が好ましい。基材として紙基材を備える第2の態様のバリア性積層体を、「紙バリア積層体」ともいう。
【0157】
環境負荷の低減という観点から、基材として、樹脂フィルムに代えて紙基材が用いられることがある。紙基材は、通常はガスバリア性が低いことから、ガスバリア性の付与が望まれる場合がある。しかしながら、紙基材に対して蒸着処理を直接行うことにより薄膜層を形成することは、蒸着処理の困難性やコストの問題がある。本開示の転写フィルムを用いることにより、紙基材に対して蒸着処理を直接行うことなく、転写方式により、紙基材上に薄膜層を設けることができる。このようにして得られる紙バリア積層体は、ガスバリア性に優れる。
【0158】
基材は、転写フィルムにおける転写層が転写される被転写体である。
基材は、枚葉シートでもよく、ロール状に巻回された連続シートでもよい。
【0159】
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ビニル樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ジアリールフタレート樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、セルロース系樹脂およびフッ素樹脂が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンおよび環状ポリオレフィンが挙げられる。ビニル樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体およびポリビニルアルコールが挙げられる。スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン単独重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートが挙げられる。
【0160】
樹脂フィルムとしては、具体的には、ポリオレフィン系基材、ビニル樹脂系基材、ポリエステル系基材、ポリアミド系基材、ポリイミド系基材、およびフッ素樹脂系基材が挙げられる。
【0161】
紙基材としては、例えば、クラフト紙、純白ロール紙、上質紙、中質紙、グラシン紙、ケント紙、加工原紙、板紙、合成紙および厚紙(例えばカップ原紙、カートン原紙)等の紙材が挙げられる。紙基材としては、例えば、クレーコート紙、微塗工印刷用紙、塗工印刷用紙(例えばコート紙、キャストコート紙およびアート紙)、樹脂コート紙、剥離原紙および両面コート剥離原紙等の、紙材の片面または両面上に目止め層または樹脂層が形成された紙基材を用いてもよい。
【0162】
紙基材は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、サイズ剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、蛍光消色剤、充填剤、補強剤、顔料および染料が挙げられる。添加剤は、他の性能に悪影響を与えない範囲で目的に応じて、任意の量で添加できる。
【0163】
基材における接着層に向かう面に、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、グロー放電処理およびサンドブラスト処理等の物理的表面処理;ならびに化学薬品を用いた酸化処理等の化学的表面処理を予め施しておくこともできる。
【0164】
紙基材は、一実施形態において、上述した紙材と、紙材における接着層に向かう面上に形成された目止め層または樹脂層と、を備える。目止め層は、接着層を構成する接着剤等が紙材中に浸透することを抑制し、接着層の接着力を安定させる機能を有する。
【0165】
目止め層または樹脂層は、一実施形態において、樹脂成分を含有する。樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、および熱硬化性樹脂の硬化物が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン、塩化ビニル系樹脂および酢酸ビニル系樹脂等のビニル樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体等のスチレン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ならびにセルロース系樹脂が挙げられる。
【0166】
目止め層または樹脂層は、一実施形態において、添加剤を含有する。添加剤としては、例えば、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、蛍光消色剤、充填剤、補強剤、顔料および染料が挙げられる。目止め層または樹脂層は、好ましくは充填剤を含有する。充填剤としては、例えば、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛が挙げられる。
【0167】
目止め層または樹脂層は、例えば、塗布法または押出コート法によって形成できる。目止め層または樹脂層の厚さは、例えば、0.1μm以上30μm以下である。
【0168】
紙基材等の基材は、1層で構成されていてもよく、同一のまたは異なる基材からなる2層以上の多層で構成されていてもよい。基材間は、従来公知の接着剤層を介して、任意の積層手段によって積層できる。
【0169】
紙基材等の基材の厚さは、好ましくは10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上であり、好ましくは1,500μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは300μm以下である。紙基材の坪量は、好ましくは20g/m2以上、より好ましくは30g/m2以上であり、好ましくは600g/m2以下、より好ましくは450g/m2以下である。基材が多層で構成されている場合は、基材の厚さは、多層の基材の合計の厚さを意味する。坪量についても同様である。紙基材は、薄紙および厚紙のいずれでもよい。このような厚さおよび/または坪量であれば、例えば、バリア性積層体に適切な強度および剛性を付与できる。厚さおよび/または坪量が下限値以上であれば、例えば、バリア性積層体の製造時にカールおよび波打ちの発生を抑制できる。厚さおよび/または坪量が上限値以下であれば、強度および剛性が適切な範囲となり、作業効率の低下を抑制できる。
【0170】
基材には、接着層に向かう面とは反対側の面に、例えば、箔押し加工、エンボス加工および賦形処理などの加飾処理を行ってもよい。
【0171】
<意匠層>
本開示のバリア性積層体は、印刷層などの意匠層をさらに備えてもよい。
意匠層は、画像を有する。画像としては、例えば、文字、図形、模様、記号およびこれらの組合せが挙げられる。画像は、商品名、包装容器中の物品の名称、製造者および原材料名等の文字情報を含んでもよい。画像は、単色無地(いわゆるベタ画像)でもよい。
【0172】
意匠層は、例えば、基材の表面に設けられていてもよい。基材が紙基材または木材である場合は、意匠層は、例えば、紙基材および木材における接着層に向かう面とは反対側の面上に設けられていてもよい。
【0173】
意匠層は、一実施形態において、着色剤を含有する。着色剤としては、例えば、無機顔料および有機顔料等の顔料、ならびに、酸性染料、直接染料、分散染料、油溶性染料、含金属油溶性染料および昇華性色素等の染料が挙げられる。また、着色剤としては、紫外線を吸収することにより蛍光を発する紫外線発光材料、および赤外線を吸収することにより蛍光を発する赤外線発光材料等の蛍光発光材料も挙げられる。
【0174】
意匠層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上である。意匠層の厚さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0175】
<接着層>
本開示のバリア性積層体は、基材と薄膜層との間に、接着層を備える。このようなバリア性積層体は、例えば、基材と薄膜層との密着性に優れる。
【0176】
接着層は、一実施形態において、接着剤により構成される接着剤層でもよい。接着剤は、1液硬化型の接着剤、2液硬化型の接着剤、および非硬化型の接着剤のいずれでもよい。接着剤は、無溶剤型の接着剤でもよく、溶剤型の接着剤でもよい。
【0177】
無溶剤型の接着剤、すなわちノンソルベントラミネート接着剤としては、例えば、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤およびウレタン系接着剤が挙げられる。これらの中でも、ウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型のウレタン系接着剤がより好ましい。
【0178】
溶剤型の接着剤としては、例えば、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、オレフィン系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤およびウレタン系接着剤が挙げられる。これらの中でも、ウレタン系接着剤が好ましく、2液硬化型のウレタン系接着剤がより好ましい。
【0179】
接着剤層の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上である。接着剤層の厚さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは6μm以下である。接着剤層の厚さは、2μm以下でもよい。
【0180】
接着層は、一実施形態において、熱可塑性樹脂を含有する接着性樹脂層でもよく、熱可塑性樹脂を含有する押出樹脂層でもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂、およびポリオレフィンに不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物またはエステル単量体をグラフト重合または共重合した樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、化石燃料由来の材料でもよく、バイオマス由来の材料でもよく、これらの両方を用いてもよい。
【0181】
押出樹脂層は、好ましくは押出ポリエチレン層である。
押出ポリエチレン層に含まれるポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。これらの中でも、層間密着性という観点から、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、低密度ポリエチレンがより好ましい。
【0182】
押出樹脂層等の接着性樹脂層の厚さは、層間密着性という観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、積層体の生産コストの低減およびその生産性の向上という観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下である。
<熱融着性樹脂層>
本開示の第2の態様のバリア性積層体は、バリア性樹脂層の第1の面上に、積層体の表層としての熱融着性樹脂層を備えてもよい。熱融着性樹脂層は、例えばバリア性積層体を包装材料として用いる場合には、ヒートシール性シーラント層として機能する。熱融着性樹脂層とは、ヒートシール性を有する層であり、具体的には、加熱圧着することにより接着対象に接着できる層、または加熱圧着することにより該層同士で融着して接着できる層である。
【0183】
このような熱融着性樹脂層は、例えば、バリア性積層体を備える包装容器におけるシール層として機能する。本開示のバリア性積層体を用いて包装容器を作製した場合に、熱融着性樹脂層は、包装容器の収容空間に面する層である。
【0184】
熱融着性樹脂層は、例えば、熱融着性樹脂を主成分として含有する。熱融着性樹脂としては、例えば、ポリオレフィンおよび(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンが挙げられる。これらの中でも、ヒートシール性という観点から、ポリエチレンが好ましい。
【0185】
ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体およびエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられ、ヒートシール性という観点から、低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。環境負荷低減という観点から、バイオマスポリエチレンおよび/またはリサイクルポリエチレンを用いてもよい。
【0186】
熱融着性樹脂層におけるポリエチレンのMFRの数値範囲としては、第1のポリオレフィン層に含まれるポリオレフィンのMFRと同様の数値範囲を挙げることができる。
【0187】
熱融着性樹脂層におけるポリエチレンの融点(Tm)は、ヒートシール性という観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは125℃以下であり、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。
【0188】
熱融着性樹脂層における、ポリエチレンなどの熱融着性樹脂の含有割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0189】
熱融着性樹脂層は、上記添加剤を含有してもよい。
【0190】
熱融着性樹脂層は、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。
熱融着性樹脂層の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、よりさらに好ましくは20μm以上、特に好ましくは30μm以上である。熱融着性樹脂層の厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下、よりさらに好ましくは80μm以下、特に好ましくは60μm以下である。熱融着性樹脂層の厚さは、熱融着性樹脂層の強度およびバリア性積層体の加工性や、バリア性積層体を用いて製造される包装容器内に充填される内容物の質量に応じて、適宜変更することが好ましい。
【0191】
熱融着性樹脂層は、例えば、熱融着性樹脂含有塗工液をバリア性樹脂層の第1の面に塗布し、乾燥させて形成してもよい。熱融着性樹脂層は、例えば、熱融着性樹脂をバリア性樹脂層の第1の面上に溶融押し出して形成してもよい。熱融着性樹脂層は、例えば、熱融着性樹脂フィルムを、必要に応じて接着層を介して、バリア性樹脂層の第1の面に貼り合わせてもよい。接着層の詳細は上述したとおりである。
【0192】
熱融着性樹脂フィルムは、ヒートシール性という観点から、好ましくは未延伸の樹脂フィルムである。上記樹脂フィルムは、例えば、キャスト法、Tダイ法またはインフレーション法等を利用することにより作製できる。未延伸のフィルムとは、全く延伸されていないフィルムだけでなく、製膜の際に加えられる張力に起因してわずかに延伸されているフィルムも含む概念である。
【0193】
<バリア性積層体の層構成>
本開示の第1の態様のバリア性積層体の層構成について、以下に数例を挙げる。
・第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層/接着層/基材
・第2のPO層/第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層/接着層/基材
・第2のPO層/第2のPO層/第2のPO層/第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層/接着層/基材
・第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層/保護層/接着層/基材
・第2のPO層/第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層/保護層/接着層/基材
・第2のPO層/第2のPO層/第2のPO層/第1のPO層/バリア性樹脂層/薄膜層/保護層/接着層/基材
【0194】
本開示の第2の態様のバリア性積層体の層構成について、以下に数例を挙げる。
・バリア性樹脂層/薄膜層/接着層/基材
・バリア性樹脂層/薄膜層/保護層/接着層/基材
・熱融着性樹脂層/バリア性樹脂層/薄膜層/接着層/基材
・熱融着性樹脂層/バリア性樹脂層/薄膜層/保護層/接着層/基材
【0195】
図5図7に、本開示のバリア性積層体の一実施形態に係る模式断面図を示す。
図5に示す第1の態様のバリア性積層体2は、第1のポリオレフィン層14と、バリア性樹脂層12と、薄膜層20と、接着層30と、基材(被転写体)40と、をこの順に備える。
【0196】
図6に示す第2の態様のバリア性積層体2は、バリア性樹脂層12と、薄膜層20と、接着層30と、基材(被転写体)40と、をこの順に備える。図7に示す第2の態様のバリア性積層体2は、熱融着性樹脂層50と、バリア性樹脂層12と、薄膜層20と、接着層30と、基材(被転写体)40と、をこの順に備える。
【0197】
本開示の紙バリア積層体の酸素透過度(単位:cc/(m2・day・atm))は、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.6以下、よりさらに好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.2以下である。酸素透過度の下限値は、例えば0.01でもよい。酸素透過度は、JIS K7126-2:2006に準拠して、温度23℃、湿度65%RH環境下にて測定される。
【0198】
本開示の紙バリア積層体の水蒸気透過度(単位:g/(m2・day))は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下、よりさらに好ましくは0.8以下、とりわけ好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.5以下である。水蒸気透過度の下限値は、例えば0.01または0.1でもよい。水蒸気透過度は、JIS K7129-2:2019に準拠して、温度38℃、湿度90%RH環境下にて測定される。
【0199】
<バリア性積層体の製造方法>
本開示のバリア性積層体は、例えば以下に記載の製造方法により得られる。
本開示のバリア性積層体の製造方法は、
本開示の転写フィルムと基材とを準備する工程(以下「準備工程」ともいう)、
転写フィルムを、転写フィルムの薄膜層が基材に向かうように接着層を介して基材上に配置して、転写フィルム、接着層および基材をこの順に備える第1の態様のバリア性積層体を得る工程(以下「貼付工程」ともいう)、ならびに
第1の態様のバリア性積層体の転写フィルムにおける支持層を転写層から剥離して、転写層、接着層および基材をこの順に備える第2の態様のバリア性積層体を得る工程(以下「剥離工程」ともいう)、
を備える。
【0200】
本開示のバリア性積層体の製造方法は、バリア性樹脂層の第2の面上に熱融着性樹脂層を形成する工程(以下「樹脂層形成工程」ともいう)をさらに備えてもよい。
【0201】
上述した貼付工程および剥離工程により、紙基材などの基材上に転写層を転写できる。転写法によって紙基材上に転写された薄膜層の方が、紙基材に直接蒸着形成された薄膜層よりも、汚染が少なく、薄膜層と接着層との密着性が高く、均質で安定し、ガスバリア性に優れる。本開示の製造方法により、紙基材を用いながら、樹脂フィルムを用いた場合と同様に基材上に薄膜層を設けることができる。このようにして、優れたガスバリア性を有し、かつ環境に優しい紙バリア積層体を得ることができる。
【0202】
(準備工程)
準備工程では、本開示の転写フィルムと基材とを準備する。
【0203】
(貼付工程)
貼付工程では、転写フィルムを、転写フィルムの薄膜層が基材に向かうように接着層を介して基材上に配置して、転写フィルム、接着層および基材をこの順に備える第1の態様のバリア性積層体(以下「中間積層体」ともいう)を得る。貼付工程では、転写フィルムと被転写体である基材とを、接着層を介して貼り合わせる。なお、転写フィルム(転写層)が接着層を備える場合は、上記接着層を別途設けなくともよい。この場合は、転写フィルムを、転写フィルムの接着層が基材に向かうように基材上に配置して、転写フィルムおよび基材をこの順に備える第1の態様のバリア性積層体を得てもよい。
【0204】
貼付工程では、接着層は、転写フィルム上および基材上のどちらに形成してもよく、両方に形成してもよく、転写フィルムと基材の間に接着剤または熱可塑性樹脂を供給して、接着層の形成と、被転写体および転写フィルムの接着とを同時に行ってもよい。
【0205】
貼付工程では、一実施形態において、基材上に接着層を形成し、当該接着層に転写フィルムを貼り合わせる。貼付工程では、一実施形態において、転写フィルムの転写層上に接着層を形成し、当該接着層に基材を貼り合わせる。貼付工程では、一実施形態において、基材上に接着層を形成し、転写フィルムの転写層上に接着層を形成し、基材と転写フィルムとを両者の接着層が接するように貼り合わせる。具体的な接着層の形成方法としては、例えば、溶剤型の接着剤を用いたドライラミネート法、無溶剤型の接着剤を用いたノンソルベントラミネート法、および熱可塑性樹脂の押出しによって押出層を形成する方法が挙げられる。接着剤層は、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法およびトランスファーロールコート法などの方法により、転写フィルムまたは基材等に接着剤を塗布および乾燥することにより形成できる。
【0206】
(剥離工程)
剥離工程では、第1の態様のバリア性積層体の転写フィルムにおける支持層を転写層から剥離して、転写層、接着層および基材をこの順に備える第2の態様のバリア性積層体を得る。例えば、基材と転写フィルムとの間の接着層による充分な接着強度が発現した後、第1の態様のバリア性積層体において、支持層を転写層から剥離する。一実施形態において、基材と転写フィルムとを接着層を介して貼り合わせながら、転写フィルムにおける支持層を転写層から剥離してもよい。上述したように転写フィルム(転写層)が接着層を備える場合は、第1の態様のバリア性積層体の転写フィルムにおける支持層を転写層から剥離して、転写層および基材をこの順に備える第2の態様のバリア性積層体を得てもよい。
【0207】
例えば、第1の態様のバリア性積層体がロール状に巻回された連続シートである場合には、離型ロールを用いて、第1の態様のバリア性積層体の転写層から支持層(剥離フィルム)を連続的に剥離して、第2の態様のバリア性積層体および支持層(剥離フィルム)それぞれを巻き取ってもよい。
【0208】
(樹脂層形成工程)
樹脂層形成工程では、バリア性樹脂層の第1の面上に熱融着性樹脂層を形成する。熱融着性樹脂層は、例えば、バリア性樹脂層の第1の面に、熱融着性樹脂含有塗工液を塗布し、乾燥することにより形成してもよく、熱融着性樹脂の溶融押出しにより形成してもよく、熱融着性樹脂フィルムを必要に応じて上述した接着層を介して貼り合わせてもよい。
【0209】
[包装袋等の包装容器]
本開示のバリア性積層体は、例えば、包装袋等の包装容器用途に好適に使用できる。
包装容器としては、例えば、包装袋、カップ、トレーおよび蓋付容器が挙げられる。
本開示の包装袋等の包装容器は、本開示の第2の態様のバリア性積層体を備える。本開示の包装袋等の包装容器は、必要に応じて、上記バリア性積層体とともに、種々の機能を有する層をさらに備えていてもよい。包装容器は、上述した紙バリア積層体を備える包装容器でもよい。
【0210】
例えば、上記バリア性積層体を、紙基材等の基材が外側、熱融着性樹脂層が内側に位置するように二つ折にして重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装袋を製造できる。また、複数の上記バリア性積層体を熱融着性樹脂層が対向するように重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装袋を製造できる。包装袋の全部が上記バリア性積層体で構成されていてもよく、包装袋の一部が上記バリア性積層体で構成されていてもよい。
【0211】
包装袋におけるヒートシールの形態としては、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、およびガゼット型が挙げられる。また、自立性包装用袋(スタンドパウチ)も可能である。ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、および超音波シールが挙げられる。
【0212】
包装袋内に充填される内容物としては、例えば、液体、粉体およびゲル体が挙げられ、食品でもよく、非食品でもよい。包装袋内に内容物を充填した後、包装袋の開口をヒートシールすることにより、包装体が得られる。
【0213】
内容物としては、具体的には、コーヒー豆、茶葉;チーズ、スナック類、米菓、生・半生菓子、ナッツ、野菜、果物、魚・肉製品、練り製品、干物、薫製、佃煮、生米、米飯類、餅、幼児食品、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、スパイス類、乳製品およびペットフード等の食品;ビール、ワイン、フルーツジュース、緑茶およびコーヒー等の飲料;医薬品;化粧品、シャンプー、リンスおよび洗剤;ならびに金属部品および電子部品が挙げられる。
【0214】
本開示は、例えば以下の[1]~[24]に関する。
[1]支持層と、前記支持層から剥離可能な転写層と、を備える転写フィルムであって、前記支持層は、ポリオレフィンを主成分として含有する第1のポリオレフィン層を少なくとも備え、前記転写層は、ガスバリア性樹脂を主成分として含有するバリア性樹脂層と、金属および/または無機酸化物を含む薄膜層と、を少なくとも備え、前記第1のポリオレフィン層と前記バリア性樹脂層とが接している、転写フィルム。
[2]前記バリア性樹脂層が、前記ガスバリア性樹脂として、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールおよびポリアミドから選択される少なくとも1種を含有する、前記[1]に記載の転写フィルム。
[3]前記エチレン-ビニルアルコール共重合体が、50モル%以下のエチレン含有割合を有する、前記[2]に記載の転写フィルム。
[4]前記バリア性樹脂層が、0.3μm以上10μm以下の厚さを有する、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の転写フィルム。
[5]前記第1のポリオレフィン層が、密度が0.930g/cm3以上のポリエチレンを主成分として含有する層、密度が0.930g/cm3未満のポリエチレンを主成分として含有する層、または、ポリプロピレンを主成分として含有する層である、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の転写フィルム。
[6]前記支持層が、1層または2層以上の第2のポリオレフィン層をさらに備え、前記1層または2層以上の第2のポリオレフィン層が、前記第1のポリオレフィン層における前記バリア性樹脂層に向かう面とは反対側の面上に位置している、前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の転写フィルム。
[7]前記バリア性樹脂層が、第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面と、を有し、前記第1のポリオレフィン層が、前記バリア性樹脂層の前記第1の面に接しており、前記薄膜層が、前記バリア性樹脂層の前記第2の面に接している、前記[1]~[6]のいずれか一項に記載の転写フィルム。
[8]剥離角度:T型剥離、試験速度:50mm/minの条件にて測定される、前記第1のポリオレフィン層と前記バリア性樹脂層との剥離強度が、0.5N/15mm幅以下である、前記[1]~[7]のいずれか一項に記載の転写フィルム。
[9]前記薄膜層が、アルミニウム薄膜層であり、前記アルミニウム薄膜層が、1.0以上の光学濃度(OD値)を有する、前記[1]~[8]のいずれか一項に記載の転写フィルム。
[10]前記薄膜層が、酸化アルミニウム薄膜層または酸化ケイ素薄膜層である、前記[1]~[9]のいずれか一項に記載の転写フィルム。
[11]前記転写層が、前記薄膜層における前記バリア性樹脂層に向かう面とは反対側の面上に保護層をさらに備える、前記[1]~[10]のいずれか一項に記載の転写フィルム。
[12]前記転写フィルムが、前記第1のポリオレフィン層および前記バリア性樹脂層を少なくとも備える積層フィルムと、前記バリア性樹脂層上に位置する前記薄膜層と、を少なくとも備え、前記積層フィルムが、10μm以上100μm以下の厚さを有する、前記[1]~[11]のいずれか一項に記載の転写フィルム。
[13]前記積層フィルムが、共押出樹脂フィルムである、前記[12]に記載の転写フィルム。
[14]前記積層フィルムが、MD方向の一軸延伸フィルムであるか、または二軸延伸フィルムである、前記[12]または[13]に記載の転写フィルム。
[15]前記[1]~[14]のいずれか一項に記載の転写フィルムと、接着層と、基材と、をこの順に少なくとも備え、前記第1のポリオレフィン層と、前記バリア性樹脂層と、前記薄膜層と、前記接着層と、前記基材と、をこの順に少なくとも備えるバリア性積層体。
[16]ガスバリア性樹脂を主成分として含有するバリア性樹脂層と、金属および/または無機酸化物を含む薄膜層と、接着層と、基材と、をこの順に少なくとも備えるバリア性積層体。
[17]前記バリア性樹脂層が、第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面と、を有し、前記薄膜層が、前記バリア性樹脂層の前記第2の面に接している、前記[15]または[16]に記載のバリア性積層体。
[18]前記バリア性樹脂層が、第1の面と、前記第1の面に対向する第2の面と、を有し、前記バリア性積層体が、前記バリア性樹脂層の前記第1の面上に、熱融着性樹脂層をさらに備える、前記[16]または[17]に記載のバリア性積層体。
[19]前記基材が、紙基材、木材、ポリイミド系基材、フッ素樹脂系基材またはポリオレフィン系基材である、前記[15]~[18]のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
[20]前記基材が、紙基材である、前記[16]~[18]のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
[21]前記接着層が、接着剤層または接着性樹脂層である、前記[15]~[20]のいずれか一項に記載のバリア性積層体。
[22]前記[1]~[14]のいずれか一項に記載の転写フィルムと、基材と、を準備する工程、前記転写フィルムを、前記転写フィルムの薄膜層が前記基材に向かうように接着層を介して前記基材上に配置して、前記転写フィルム、前記接着層および前記基材をこの順に備える中間積層体を得る工程、ならびに前記中間積層体の前記転写フィルムにおける前記支持層を前記転写層から剥離して、前記転写層、前記接着層および前記基材をこの順に備えるバリア性積層体を得る工程、を備える、バリア性積層体の製造方法。
[23]前記[16]~[21]のいずれか一項に記載のバリア性積層体を備える包装容器。
[24]前記[20]に記載のバリア性積層体を備える包装容器。
【実施例0215】
本開示の転写フィルムおよび積層体について実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本開示の転写フィルムおよび積層体は実施例によって何ら限定されない。
【0216】
[転写フィルムおよび積層体の作製]
以下の実施例で用いた成分を示す。
・エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)
クラレ社製、エバール F171B、
密度:1.19g/cm3、融点:183℃、MFR:1.6g/10分、
エチレン含有割合:32モル%
・エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)
クラレ社製、エバール L171B、
密度:1.21g/cm3、融点:190℃、MFR:4.0g/10分、
エチレン含有割合:27モル%
・エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)
クラレ製、エバール G156B、
密度:1.12g/cm3、融点:157℃、MFR:6.4g/10分、
エチレン含有割合:48モル%
・ポリビニルアルコール(PVA)
三菱化学社製、Nichigo G-Polymer BVE8049P、
密度:1.29g/cm3、融点:188℃、MFR:4.3g/10分、
水溶性を有する熱可塑性樹脂
・ポリアミド(PA)
UBE製、ポリアミド6 1020、
融点:220℃、相対粘度:3.04
・エチレン-1-オクテン共重合体(HDPE)
Dow Chemical社製、ELITE 5960G、
密度:0.962g/cm3、融点:134℃、MFR:0.85g/10分、
メタロセン触媒を用いて原料モノマーを重合して得られた共重合体
・エチレン-1-ヘキセン共重合体(MDPE)
Exxon Mobil社製、ENABLE 4002MC、
密度:0.938g/cm3、融点:128℃、MFR:0.25g/10分、
メタロセン触媒を用いて原料モノマーを重合して得られた共重合体
・エチレン-1-ヘキセン共重合体(LLDPE)
Exxon Mobil社製、EXCEED XP 8656ML、
密度:0.916g/cm3、融点:121℃、MFR:0.5g/10分、
メタロセン触媒を用いて原料モノマーを重合して得られた共重合体
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
ダウケミカル製、INNATE TF80、メタロセンLLDPE、
密度:0.926g/cm3、MFR:1.7g/10分
・ランダムポリプロピレン(r-PP)
BOREALIS社製、BORCLEAR RB707CF、
密度:0.900g/cm3、融点:145℃、MFR:1.5g/10分、
プロピレン-エチレン共重合体
・ホモポリプロピレン(h-PP)
The Polyolefin Company(Singapore)製、COSMOPLENE FS3031、
密度:0.900g/cm3、融点:168℃、MFR:3.4g/10分
アイソタクチックインデックス:98%
・ランダムポリプロピレン(r-PP)
The Polyolefin Company(Singapore)製、COSMOPLENE FS5612、
密度:0.900g/cm3、融点:134℃、MFR:5.5g/10分
【0217】
以下の記載において、5層の積層フィルムおよび延伸積層フィルムの各層を便宜上、A層、B層、C層、D層およびE層と記載する。上記積層フィルムおよび上記延伸積層フィルムは、A層、B層、C層、D層およびE層をこの順に備える。
【0218】
[実施例1A]
A層用に、EVOH(エバール F171B)、
B層用に、エチレン-1-オクテン共重合体(ELITE 5960G)、
C層用に、50質量部のエチレン-1-ヘキセン共重合体(ENABLE 4002MC)と50質量部のエチレン-1-ヘキセン共重合体(EXCEED XP 8656ML)との混合物、
D層用に、エチレン-1-オクテン共重合体(ELITE 5960G)、および
E層用に、エチレン-1-ヘキセン共重合体(ENABLE 4002MC)
をインフレ-ション製膜法により共押出し製膜した。このようにして、厚さ8μmのA層、厚さ16μmのB層、厚さ48μmのC層、厚さ16μmのD層および厚さ12μmのE層を備え、総厚さ100μmの5層の積層フィルムを製造した。
【0219】
上記積層フィルムを、予備加熱ロール、低速ロール(SD)、高速ロール(FD)、アニーリングロールおよび冷却ロールを備える一軸延伸装置に通し、低速ロール(SD)と高速ロール(FD)との回転差を設けることで、上記積層フィルムに対してMD方向(流れ方向)に4倍の一軸延伸を施した。このようにして、厚さ25μmの一軸延伸積層フィルムを製造した。
【0220】
一軸延伸積層フィルムを真空アルミ蒸着機の送り出しロ-ルに装着し、下記の条件で、一軸延伸積層フィルムのA層(EVOH層)上にOD=3.0のアルミニウム蒸着膜を形成した。このようにして、蒸着フィルムを製造した。
【0221】
<蒸着条件>
蒸着源:アルミニウム
蒸着チャンバー内の真空度:2×10-3mbar
巻き取りチャンバー内の真空度:3×10-2mbar
フィルムの搬送速度:200m/min
膜厚:600Å
【0222】
蒸着フィルムのアルミニウム蒸着面に、グラビアロールコート法により2液硬化型のポリウレタン系ラミネート用接着剤を厚さ3.0g/m2(乾燥状態)になるようにコーティングして、ラミネート用接着剤層を形成した。蒸着フィルムのラミネート用接着剤層面と、片面クレーコート紙(Sappi社製、Algro Finess、斤量:50g/m2)の未クレーコート面と、を貼り合わせ、40℃かつ3日間の加熱エージング処理を行った。このようにて、中間積層体を製造した。中間積層体における一軸延伸積層フィルムのA層から、B層、C層、D層およびE層からなる積層体部を50m/minの剥離速度で剥離した。このようにして、片面クレーコート紙上に、アルミニウム蒸着膜およびA層を転写した。このようにして、紙バリア積層体を製造した。
【0223】
[実施例2A]
A層用に、EVOH(エバール F171B)、
B層用に、r-PP(BORCLEAR RB707CF)、
C層用に、50質量部のr-PP(BORCLEAR RB707CF)と50質量部のエチレン-1-ヘキセン共重合体(EXCEED XP 8656ML)との混合物、
D層用に、エチレン-1-ヘキセン共重合体(ENABLE 4002MC)、および
E層用に、エチレン-1-ヘキセン共重合体(ENABLE 4002MC)
をインフレ-ション製膜法により共押出し製膜した。このようにして、厚さ8μmのA層、厚さ16μmのB層、厚さ48μmのC層、厚さ16μmのD層および厚さ12μmのE層を備え、総厚さ100μmの5層の積層フィルムを製造した。
【0224】
以降の工程は、上記積層フィルムを用いたこと以外は実施例1Aと同様に行った。
【0225】
[実施例3A]
A層用に、EVOH(エバール L171B)、
B層用に、エチレン-1-オクテン共重合体(ELITE 5960G)、
C層用に、50質量部のエチレン-1-ヘキセン共重合体(ENABLE 4002MC)と50質量部のエチレン-1-ヘキセン共重合体(EXCEED XP 8656ML)との混合物、
D層用に、エチレン-1-オクテン共重合体(ELITE 5960G)、および
E層用に、エチレン-1-ヘキセン共重合体(ENABLE 4002MC)
をインフレ-ション製膜法により共押出し製膜した。このようにして、厚さ8μmのA層、厚さ16μmのB層、厚さ48μmのC層、厚さ16μmのD層および厚さ12μmのE層を備え、総厚さ100μmの5層の積層フィルムを製造した。
【0226】
以降の工程は、上記積層フィルムを用い、一軸延伸装置における各ロールの設定温度を適宜変更したこと以外は実施例1Aと同様に行った。
【0227】
[実施例4A]
A層用に、PVA(Nichigo G-Polymer BVE8049P)
B層用に、エチレン-1-オクテン共重合体(ELITE 5960G)、
C層用に、50質量部のエチレン-1-ヘキセン共重合体(ENABLE 4002MC)と50質量部のエチレン-1-ヘキセン共重合体(EXCEED XP 8656ML)との混合物、
D層用に、エチレン-1-オクテン共重合体(ELITE 5960G)、および
E層用に、エチレン-1-ヘキセン共重合体(ENABLE 4002MC)
をインフレ-ション製膜法により共押出し製膜した。このようにして、厚さ8μmのA層、厚さ16μmのB層、厚さ48μmのC層、厚さ16μmのD層および厚さ12μmのE層を備え、総厚さ100μmの5層の積層フィルムを製造した。
【0228】
以降の工程は、上記積層フィルムを用い、一軸延伸装置における各ロールの設定温度を適宜変更したこと以外は実施例1Aと同様に行った。
【0229】
[実施例5A]
A層用に、ポリアミド(ポリアミド6 1020)、
B層用に、エチレン-1-オクテン共重合体(ELITE 5960G)、
C層用に、50質量部のエチレン-1-ヘキセン共重合体(ENABLE 4002MC)と50質量部のエチレン-1-ヘキセン共重合体(EXCEED XP 8656ML)との混合物、
D層用に、エチレン-1-オクテン共重合体(ELITE 5960G)、および
E層用に、エチレン-1-ヘキセン共重合体(ENABLE 4002MC)
をインフレ-ション製膜法により共押出し製膜した。このようにして、厚さ8μmのA層、厚さ16μmのB層、厚さ48μmのC層、厚さ16μmのD層および厚さ12μmのE層を備え、総厚さ100μmの5層の積層フィルムを製造した。
【0230】
以降の工程は、上記積層フィルムを用い、一軸延伸装置における各ロールの設定温度を適宜変更したこと以外は実施例1Aと同様に行った。
【0231】
[比較例1A]
アルミ蒸着転写PETフィルム(Polyplex社製、VMPET-RMZ251、12μm、シリコーンコート系、OD=2.5)を準備した。アルミ蒸着転写PETフィルムのアルミニウム蒸着面に、グラビアロールコート法により2液硬化型のポリウレタン系ラミネート用接着剤を厚さ3.0g/m2(乾燥状態)になるようにコーティングして、ラミネート用接着剤層を形成した。アルミ蒸着転写PETフィルムのラミネート用接着剤層面と、片面クレーコート紙(Algro Finess)の未クレーコート面と、を貼り合わせ、40℃かつ3日間の加熱エージング処理を行った。アルミ蒸着転写PETフィルムのPETフィルム層を50m/minの剥離速度で剥離し、片面クレーコート紙上にアルミニウム蒸着膜を転写した。このようにして、紙バリア積層体を製造した。
【0232】
[実施例1B]
A層用に、EVOH(エバール G156B)、
B層用に、h-PP(FS3031)、
C層用に、h-PP(FS3031)、
D層用に、h-PP(FS3031)、および
E層用に、h-PP(FS3031)、
をTダイキャスト法により5層共押出製膜して、5層フィルムを得た。該フィルムに対して、機械方向(MD方向)に5倍延伸、続いて幅方向(TD方向)に8.5倍延伸の逐次2軸延伸処理を行い、厚さ18μmの二軸延伸積層フィルムを作製した。
【0233】
このようにして得られた二軸延伸積層フィルムは、
厚さ1μmのEVOH層と、
厚さ1.5μmのポリプロピレン層と、
厚さ13μmのポリプロピレン層と、
厚さ1.5μmのポリプロピレン層と、
厚さ1μmのポリプロピレン層と、
をこの順に備える。
【0234】
以降の工程は、一軸延伸積層フィルムにかえて二軸延伸積層フィルムを用いたこと以外は実施例1Aと同様に行った。
【0235】
[実施例2B]
A層用に、EVOH(エバール G156B)、
B層用に、r-PP(FS5612)、
C層用に、h-PP(FS3031)、
D層用に、h-PP(FS3031)、および
E層用に、h-PP(FS3031)、
をTダイキャスト法により5層共押出製膜して、5層フィルムを得た。該フィルムに対して、機械方向(MD方向)に5倍延伸、続いて幅方向(TD方向)に8.5倍延伸の逐次2軸延伸処理を行い、厚さ18μmの二軸延伸積層フィルムを作製した。以降の工程は、一軸延伸積層フィルムにかえて二軸延伸積層フィルムを用いたこと以外は実施例1Aと同様に行った。
【0236】
[実施例3B]
A層用に、EVOH(エバール G156B)、
B層用に、LLDPE(INNATE TF80)、
C層用に、LLDPE(INNATE TF80)、
D層用に、LLDPE(INNATE TF80)、および
E層用に、LLDPE(INNATE TF80)、
をTダイキャスト法により5層共押出製膜して、5層フィルムを得た。該フィルムに対して、機械方向(MD方向)に5倍延伸、続いて幅方向(TD方向)に8.5倍延伸の逐次2軸延伸処理を行い、厚さ18μmの二軸延伸積層フィルムを作製した。以降の工程は、一軸延伸積層フィルムにかえて二軸延伸積層フィルムを用いたこと以外は実施例1Aと同様に行った。
【0237】
[実施例4B]
A層用に、ポリアミド(ポリアミド6 1020)、
B層用に、h-PP(FS3031)、
C層用に、h-PP(FS3031)、
D層用に、h-PP(FS3031)、および
E層用に、h-PP(FS3031)、
をTダイキャスト法により5層共押出製膜して、5層フィルムを得た。該フィルムに対して、機械方向(MD方向)に5倍延伸、続いて幅方向(TD方向)に8.5倍延伸の逐次2軸延伸処理を行い、厚さ18μmの二軸延伸積層フィルムを作製した。以降の工程は、一軸延伸積層フィルムにかえて二軸延伸積層フィルムを用いたこと以外は実施例1Aと同様に行った。
【0238】
[実施例5B]
A層用に、ポリアミド(ポリアミド6 1020)、
B層用に、r-PP(FS5612)、
C層用に、h-PP(FS3031)、
D層用に、h-PP(FS3031)、および
E層用に、h-PP(FS3031)、
をTダイキャスト法により5層共押出製膜して、5層フィルムを得た。該フィルムに対して、機械方向(MD方向)に5倍延伸、続いて幅方向(TD方向)に8.5倍延伸の逐次2軸延伸処理を行い、厚さ18μmの二軸延伸積層フィルムを作製した。以降の工程は、一軸延伸積層フィルムにかえて二軸延伸積層フィルムを用いたこと以外は実施例1Aと同様に行った。
【0239】
[実施例6B]
A層用に、ポリアミド(ポリアミド6 1020)、
B層用に、LLDPE(INNATE TF80)、
C層用に、LLDPE(INNATE TF80)、
D層用に、LLDPE(INNATE TF80)、および
E層用に、LLDPE(INNATE TF80)、
をTダイキャスト法により5層共押出製膜して、5層フィルムを得た。該フィルムに対して、機械方向(MD方向)に5倍延伸、続いて幅方向(TD方向)に8.5倍延伸の逐次2軸延伸処理を行い、厚さ18μmの二軸延伸積層フィルムを作製した。以降の工程は、一軸延伸積層フィルムにかえて二軸延伸積層フィルムを用いたこと以外は実施例1Aと同様に行った。
【0240】
[物性評価]
特に言及しない限り、各物性についてそれぞれ3個の試験片について測定を行い、得られた3個の値の算術平均値をそれぞれの物性値として記載した。
【0241】
<ガスバリア性評価>
以上の転写フィルムおよび紙バリア積層体(以下、これらをまとめて「試験片」ともいう)について、酸素透過度(cc/(m2・day・atm))および水蒸気透過度(g/(m2・day))を以下の方法により測定した。結果を各表に記載する。
また、紙バリア積層体を、転写層が内側に位置するように折り込み、折り込まれた積層体を800gのローラーで一回押圧した。その後、その一回目の折り目と垂直となるように積層体を折り込み、折り込まれた積層体を800gのローラーで一回押圧した。4つ折り後の積層体を展開して、紙バリア積層体のガスバリア性を測定した。
【0242】
(酸素透過度)
酸素透過度測定装置(MOCON社製、機種名:OXTRAN)を用いて、JIS K 7126-2:2006に準拠して、温度23℃、湿度65%RH環境下における試験片の酸素透過度を測定した。試験片が転写フィルムである場合は、転写フィルムの積層フィルム面が酸素供給側を向き、蒸着膜面が検知器側を向くように試験片を配置した。試験片が紙バリア積層体である場合は、紙バリア積層体の紙基材面が酸素供給側を向き、転写層面が検知器側を向くように試験片を配置した。
【0243】
(水蒸気透過度)
水蒸気透過度測定装置(MOCON社製、機種名:PERMATRAN)を用いて、JIS K 7129-2:2019に準拠して、温度38℃、湿度90%RH環境下における試験片の水蒸気透過度を測定した。試験片が転写フィルムである場合は、転写フィルムの積層フィルム面が水蒸気供給側を向き、蒸着膜面が検知器側を向くように試験片を配置した。試験片が紙バリア積層体である場合は、紙バリア積層体の紙基材面が水蒸気供給側を向き、転写層面が検知器側を向くように試験片を配置した。
【0244】
<剥離強度>
実施例および比較例で得られた中間積層体をMD方向にカットして、幅:15mm、長さ:100mmのサイズを有する試験片を切り出した。上記試験片と、測定器として卓上型引張圧縮試験機MCT-1150(AND社製)とを用いて、初期チャック間距離:100mm、剥離角度:T型剥離、試験速度:50mm/minの条件にて、中間積層体における転写層と支持層との剥離強度(N/15mm幅)を測定した。剥離強度の測定時の環境は、温度23℃および湿度50%RHである。
【0245】
【表1】
【0246】
【表2】
【0247】
【表3】
【0248】
[実施例3Cおよび6C]
延伸後において、B層の厚さを2μmに、C層の厚さを19μmに、D層の厚さを2μmにそれぞれ変更し、二軸延伸積層フィルムの厚さを25μmに変更したこと以外は実施例3Bおよび6Bと同様にして、実施例3Cおよび6Cの二軸延伸積層フィルム、蒸着フィルム、中間積層体および紙バリア積層体を作製した。実施例3Cおよび6Cにおける各評価の結果は、対応する実施例番号の実施例(実施例3Bおよび6B)の結果と同程度であった。
【符号の説明】
【0249】
1 …転写フィルム
1S…支持層
1T…転写層
2 …バリア性積層体
10…積層フィルム(延伸フィルム)
12…バリア性樹脂層
12a…第1の面
12b…第2の面
14…第1のポリオレフィン層
16…第2のポリオレフィン層
20…薄膜層
30…接着層
40…基材(被転写体)
50…熱融着性樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7