(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094227
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】勾配リング状のボンド磁石及びその製造方法、モータ
(51)【国際特許分類】
H01F 7/02 20060101AFI20240702BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20240702BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01F7/02 A
H02K15/03 C
H01F7/02 E
H01F41/02 G
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177636
(22)【出願日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】202211687071.4
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519229622
【氏名又は名称】有研稀土高技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】GRIREM HI-TECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】North of Gushan South Road And East Of Happiness Road,Hi-tech industrial zone,Yanjiao Town,Sanhe City, Langfang City, Hebei 065200, China
(71)【出願人】
【識別番号】515330421
【氏名又は名称】有研稀土新材料股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】羅 陽
(72)【発明者】
【氏名】張 澤
(72)【発明者】
【氏名】王 子龍
(72)【発明者】
【氏名】楊 遠飛
(72)【発明者】
【氏名】▲イェン▼ 文龍
(72)【発明者】
【氏名】于 敦波
(72)【発明者】
【氏名】李 天昊
(72)【発明者】
【氏名】▲イェン▼ 文建
(72)【発明者】
【氏名】胡 騰飛
【テーマコード(参考)】
5E062
5H622
【Fターム(参考)】
5E062CC02
5E062CD04
5E062CE04
5E062CG01
5E062CG03
5H622DD02
5H622QA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】勾配リング状のボンド磁石及びその製造方法並びにモータを提供する。
【解決手段】勾配リング状のボンド磁石は、磁石本体1及び少なくとも1つの補強層2を含み、磁石本体は、リング状の円柱体であり、補強層は、磁石本体の表面に圧着される。磁石本体の材料は、第1永久磁石であり、補強層の材料は、第2永久磁石であり、第2永久磁石の保磁力性能、残留磁化性能及び/又は最大動作温度は、第1永久磁石よりも高い。勾配リング状のボンド磁石は、リング状のボンド磁石の局所強化を実現し、モータでの応用における耐減磁及び耐高温性能を効果的に向上させ、ジスプロシウム、テルビウム等の高価な金属の使用量を効果的に節約し、永久磁石の材料コストを低減させる。また、勾配リング状のボンド磁石の製造方法は、プロセスが簡単で加工コストが低く、追加の設備を必要とせず大量生産に適用できる。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配リング状のボンド磁石であって、
磁石本体(1)と少なくとも1つの補強層(2)とを含み、
前記磁石本体(1)は、リング状の円柱体であり、
前記補強層(2)は、前記磁石本体(1)の表面に圧着され、
前記磁石本体(1)の材料は、第1永久磁石であり、前記補強層(2)の材料は、第2永久磁石であり、前記第2永久磁石の保磁力性能、残留磁化性能及び/又は最大動作温度は、前記第1永久磁石よりも高い、ことを特徴とする勾配リング状のボンド磁石。
【請求項2】
前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石の材料は、ネオジム鉄ホウ素、サマリウム鉄窒素及び/又はサマリウムコバルトを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の勾配リング状のボンド磁石。
【請求項3】
前記補強層(2)は、リング状の円柱体であり、
前記磁石本体(1)の内壁は、前記補強層(2)の径方向における外壁に圧着され、あるいは、
前記磁石本体(1)の外壁は、前記補強層(2)の径方向における内壁に圧着される、ことを特徴とする請求項1に記載の勾配リング状のボンド磁石。
【請求項4】
前記補強層(2)は、リング状の円柱体であり、その内径及び外径が前記磁石本体(1)の内径及び外径と同じであり、
前記補強層(2)は、1つであり、前記補強層(2)の軸方向における側壁は、前記磁石本体(1)の軸方向における一端の側壁に圧着され、あるいは、
前記補強層(2)は、1つであり、前記磁石本体(1)は、いずれもリング状の円柱体である第1本体及び第2本体を含み、前記第1本体及び第2本体は、それぞれの軸方向における一端の側壁がそれぞれ前記補強層(2)の軸方向における両端の側壁に圧着され、あるいは、
前記補強層(2)は、2つであり、前記補強層(2)の軸方向における側壁は、前記磁石本体(1)の軸方向の両端における側壁に圧着される、ことを特徴とする請求項1に記載の勾配リング状のボンド磁石。
【請求項5】
前記磁石本体(1)の径方向における内壁又は径方向における外壁には、複数の凹溝が設けられ、
前記補強層(2)は、前記凹溝の形状に合わせる複数の弧形のシート状の補強体を含み、
前記補強体は、凹溝内に設けられ、前記補強体は、前記凹溝の底部に圧着される、ことを特徴とする請求項1に記載の勾配リング状のボンド磁石。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の勾配リング状のボンド磁石を製造するための勾配リング状のボンド磁石の製造方法であって、以下のステップを含み、
ステップ1であって、モータの構造に基づき、磁石本体及び補強層の構造パラメータ及び接続位置パラメータを得、
ステップ2であって、前記構造パラメータ及び前記接続位置パラメータに基づき、磁石本体のプリフォーム及び補強層のプリフォームを得、
ステップ3であって、前記磁石本体のプリフォームと前記補強層のプリフォームに対して嵌合取付を行い、プレスし、硬化させ、勾配リング状のボンド磁石を得る、ことを特徴とする勾配リング状のボンド磁石の製造方法。
【請求項7】
前記磁石本体と前記補強層との比率値は、前記モータが最悪な動作のコンディションにおける通常の安全領域と減磁しやすい領域との比率値である、ことを特徴とする請求項6に記載の勾配リング状のボンド磁石の製造方法。
【請求項8】
ステップ2において、前記磁石本体のプリフォーム及び前記補強層のプリフォームの密度は、3~4g/cm3であり、
ステップ3において、最終プレス金型によってプレスされた前記勾配リング状のボンド磁石の密度は、6.0~6.3g/cm3である、ことを特徴とする請求項6に記載の勾配リング状のボンド磁石の製造方法。
【請求項9】
ステップ3において、前記硬化の温度は、120℃~180℃であり、好ましくは、前記硬化の温度は、150℃であり、
前記硬化の時間は、1時間~3時間であり、好ましくは、前記硬化の時間は、2時間である、ことを特徴とする請求項6に記載の勾配リング状のボンド磁石の製造方法。
【請求項10】
モータであって、
請求項1~5のいずれか1項に記載の勾配リング状のボンド磁石を含む、ことを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ用の磁石加工分野に関し、特に勾配リング状のボンド磁石及びその製造方法、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、表面実装型の永久磁石モータは、効率が高く、出力密度が大きく、構造が簡単であることなどの利点を有するため、各業界に広く応用されている。また、表面実装型の永久磁石モータにも、いくつかの欠点が存在し、表面実装型の永久磁石モータの永久磁石が直接的にモータの固定子に面して電機子反応するため、高い温度及び減磁リスクを有する。ジスプロシウム、テルビウムなどの元素は、ネオジム鉄ホウ素などの磁性材料の保磁力を効果的に向上させることができるが、ジスプロシウム、テルビウムなどの元素が高価であるため、永久磁石材料のコストが上昇する。焼結ネオジム鉄ホウ素などの磁石は、領域選択された粒界拡散などの手段により永磁材料の局所強化を実現でき、永久磁石の保磁力を効果的に向上させるとともに少ないジスプロシウム、テルビウム等の高価な金属元素を使用することができる。ボンド磁石は、現在、局所強化を実現できる対応的な手段がなく、固定子の電機子に近い面に減磁しやすく、モータの消磁を引き起こす。本発明の提供する方法は、リング状のボンド磁石の局所の耐減磁能力を効果的に向上させ、ジスプロシウム、テルビウム等の高価な金属の使用量を節約することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の実施例の目的は、勾配リング状のボンド磁石及びその製造方法、モータを提供することにあり、磁石本体の表面に補強層を設けることにより、リング状のボンド磁石の局所の耐減磁及び耐高温性能を効果的に向上させ、ジスプロシウム、テルビウム等の高価な金属の使用量を効果的に節約することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記技術的問題を解決するために、本発明の実施例の第1態様は、勾配リング状のボンド磁石を提供し、当該勾配リング状のボンド磁石は、磁石本体及び少なくとも1つの補強層を含み、
前記磁石本体は、リング状の円柱体であり、
前記補強層は、前記磁石本体の表面に圧着され、
前記磁石本体の材料は、第1永久磁石であり、前記補強層の材料は、第2永久磁石であり、前記第2永久磁石の保磁力性能、残留磁化性能及び/又は最大動作温度は、前記第1永久磁石よりも高い。
【0005】
さらに、前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石の材料は、ネオジム鉄ホウ素、サマリウム鉄窒素及び/又はサマリウムコバルトを含む。
【0006】
さらに、前記補強層は、リング状の円柱体であり、
前記磁石本体の内壁は、前記補強層の径方向における外壁に圧着され、あるいは、
前記磁石本体の外壁は、前記補強層の径方向における内壁に圧着される。
【0007】
さらに、前記補強層は、リング状の円柱体であり、その内径及び外径が前記磁石本体の内径及び外径と同じであり、
前記補強層は、1つであり、前記補強層の軸方向における側壁は、前記磁石本体の軸方向における一端の側壁に圧着され、あるいは、
前記補強層は、1つであり、前記磁石本体は、いずれもリング状の円柱体である第1本体及び第2本体を含み、前記第1本体及び第2本体は、それぞれの軸方向における一端の側壁がそれぞれ前記補強層の軸方向における両端の側壁に圧着され、あるいは、
前記補強層は、2つであり、前記補強層の軸方向における側壁は、前記磁石本体の軸方向における両端の側壁に圧着される。
【0008】
さらに、前記磁石本体の径方向における内壁又は径方向における外壁には、複数の凹溝が設けられ、
前記補強層は、前記凹溝の形状に合わせる弧形のシート状の補強体を含み、
前記補強体は、凹溝内に設けられ、前記補強体は、前記凹溝の底部に圧着される。
【0009】
対応的に、本発明の実施例の第2態様は、上記勾配リング状のボンド磁石を製造するための勾配リング状のボンド磁石の製造方法を提供し、当該方法は、以下のステップを含み、
ステップ1であって、モータの構造に基づき、磁石本体及び補強層の構造パラメータ及び接続位置パラメータを得、
ステップ2であって、前記構造パラメータ及び前記接続位置パラメータに基づき、磁石本体のプリフォーム及び補強層のプリフォームを得、
ステップ3であって、前記磁石本体のプリフォームと前記補強層のプリフォームに対して嵌合取付を行い、プレスし、硬化させる。
【0010】
さらに、前記磁石本体と前記補強層との比率値は、前記モータが最悪な動作のコンディションにおける通常の安全領域と減磁しやすい領域との比率値である。
【0011】
さらに、ステップ2において前記磁石本体のプリフォーム及び前記補強層のプリフォームの密度は、3~4g/cm3であり、
ステップ3において、最終プレス金型によってプレスされた前記勾配リング状のボンド磁石の密度は、6.0~6.3g/cm3である。
【0012】
さらに、ステップ3において、前記硬化の温度は、120℃~180℃であり、好ましくは、前記硬化の温度は、150℃であり、
前記硬化の時間は、1時間~3時間であり、好ましくは、前記硬化の時間は、2時間である。
【0013】
対応的に、本発明の実施例の第3態様は、上記勾配リング状のボンド磁石を含むモータを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施例の上記技術案は、以下の有益な技術的効果を有し、
上記勾配リング状のボンド磁石は、リング状のボンド磁石の局所強化を実現することができ、リング状のボンド磁石のモータでの応用における耐減磁、耐高温性能を効果的に向上させ、ジスプロシウム、テルビウム等の高価な金属の使用量を効果的に節約し、永久磁石の材料コストを低減させ、且つ本発明の提供する勾配リング状のボンド磁石製造方法は、プロセスが簡単、加工コストが低く、追加の設備等を必要とせず、大量生産に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a】本発明の実施例の提供する勾配リング状のボンド磁石の実施例1の模式図の一例である。
【
図1b】本発明の実施例の提供する勾配リング状のボンド磁石の実施例2の模式図の一例である。
【
図1c】本発明の実施例の提供する勾配リング状のボンド磁石の実施例3の模式図の一例である。
【
図1d】本発明の実施例の提供する勾配リング状のボンド磁石の実施例4の模式図の一例である。
【
図1e】本発明の実施例の提供する勾配リング状のボンド磁石の実施例5の模式図である。
【
図1f】本発明の実施例の提供する勾配リング状のボンド磁石の実施例6の模式図の一例である。
【
図1g】本発明の実施例の提供する勾配リング状のボンド磁石の実施例7の模式図の一例である。
【
図2】本発明の実施例の提供する勾配リング状のボンド磁石の製造方法の模式図の一例である。
【
図3】本発明の実施例の提供する6スロット4極表面実装型の永久磁石モータ2次元トポロジー図の一例である。
【
図4】本発明の実施例の提供する、勾配リング状のボンド磁石が取り付けられていない6スロット4極の表面実装型の永久磁石モータの回転子の表面減磁率の模式図の一例である。
【
図5】本発明の実施例の提供する、勾配リング状のボンド磁石が取り付けられている6スロット4極の表面実装型の永久磁石モータの回転子の表面減磁率の模式図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、具体的な実施形態を参照しながら図面を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。これらの記述は例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。なお、以下の説明では、本発明の概念を不必要に混同することを避けるために、公知の構成及び技術の説明を省略する。
【0017】
図1を参照すると、上記技術的問題を解決するために、本発明の実施例の第1態様は、勾配リング状のボンド磁石を提供し、当該勾配リング状のボンド磁石は、磁石本体1及び少なくとも1つの補強層2を含み、磁石本体1は、リング状の円柱体であり、補強層2は、磁石本体1の表面に圧着され、磁石本体1の材料は、第1永久磁石であり、補強層2の材料は、第2永久磁石であり、第1永久磁石の保磁力性能、残留磁化性能及び/又は最大動作温度は、第2永久磁石よりも高い。
【0018】
具体的には、第1永久磁石及び第2永久磁石の材料は、ネオジム鉄ホウ素、サマリウム鉄窒素及び/又はサマリウムコバルトを含む。
【0019】
第2永久磁石の基本材料は、第1永久磁石の基本材料と同じであってもよく、異なってもよい。両者の基本材料が同じであるかどうかにかかわらず、第2永久磁石の保磁力性能、残留磁化性能及び/又は最大動作温度が第1永久磁石よりも高くすればよい。
【0020】
以下、複数の実施例で勾配リング状のボンド磁石の構造を説明する。
勾配リング状のボンド磁石の実施例1は、
図1aを参照すると、勾配リング状のボンド磁石の補強層2は、リング状の円柱体であり、磁石本体1の内壁は、補強層2の径方向における外壁に圧着される。即ち、リング状の円柱体の補強層2は、リング状の円柱体の磁石本体の外側に嵌設され、両者は、圧着により一体に固定される。
【0021】
勾配リング状のボンド磁石の実施例2は、
図1bを参照すると、勾配リング状のボンド磁石の補強層2は、リング状の円柱体であり、磁石本体1の外壁は、補強層2の径方向における内壁に圧着される。即ち、リング状の円柱体の磁石本体は、リング状の円柱体の補強層2の外側に嵌設され、両者は、圧着により一体に固定される。
【0022】
勾配リング状のボンド磁石の実施例3は、
図1cを参照すると、勾配リング状のボンド磁石の補強層2は、リング状の円柱体であり、その内径及び外径が磁石本体1と同じであり、両者の軸方向における長さが異なる。補強層2は、1つであり、磁石本体1の軸方向における一端に設けられ、補強層2の軸方向における側壁は、磁石本体の軸方向における一端の側壁に圧着される。
【0023】
勾配リング状のボンド磁石の実施例4は、
図1dを参照すると、勾配リング状のボンド磁石の補強層2は、リング状の円柱体であり、その内径及び外径が磁石本体1と同じであり、両者の軸方向における長さが異なる。補強層2は、2つであり、磁石本体1の軸方向における両端に設けられ、補強層2の軸方向における側壁は、磁石本体の軸方向における両端の側壁に圧着される。
【0024】
勾配リング状のボンド磁石の実施例5は、
図1eを参照すると、勾配リング状のボンド磁石の補強層2は、リング状の円柱体であり、その内径及び外径が磁石本体1と同じであり、両者の軸方向における長さが異なる。補強層2は、1つであり、磁石本体1は、2つの同じ部分であり、それぞれ補強層2の軸方向における両端に位置し、2つの磁石本体1の軸方向における側壁は、それぞれ補強層2の軸方向における両端の側壁に圧着される。
【0025】
勾配リング状のボンド磁石の実施例6は、
図1fを参照すると、磁石本体1の径方向における内壁には、複数の凹溝が設けられ、補強層2は、凹溝の形状に合わせる複数の弧形のシート状の補強体を含み、補強体は、凹溝内に設けられ、補強体は、磁石本体1の凹溝の底部に圧着される。
【0026】
勾配リング状のボンド磁石の実施例7は、
図1gを参照すると、磁石本体1の径方向における外壁には、複数の凹溝が設けられ、補強層2は、凹溝の形状に合わせる複数の弧形のシート状の補強体を含み、補強体は、凹溝内に設けられ、補強体は、磁石本体1の凹溝の底部に圧着される。
【0027】
磁石本体1及び補強層2について、異なる材料又は異なる型番の材料を採用し、具体的なモータの構造及び応用需要に応じて、補強層2の具体的な位置を確定し、計算により磁石本体1及び補強層2の具体的な寸法を確定し、対応するプリフォームを製造し、最後に2つのプリフォームを嵌合取付した後、プレスし、硬化させる過程を経て全体のリング状の磁石構造を得る。
【0028】
上記勾配リング状のボンド磁石は、表面実装型の永久磁石モータにおける永久磁石の固定子電機子に近い部分又は磁石の辺縁部分が非常に減磁しやすいことに基づき、固定子電機子に近いリング状のボンド磁石の一方側又は辺縁領域を局所的に強化することを試み、リング状のボンド磁石の加工プロセスに合わせて、強化層の予圧リング及び通常層の予圧リングを追加し、そして複数の予圧リングを一体に嵌合取付して最終プレスを行い、硬化させる方法で、リング状のボンド磁石を局所的に強化させる目的を達成する。
【0029】
対応的に、本発明の実施例の第2態様は、上記勾配リング状のボンド磁石を製造するための勾配リング状のボンド磁石の製造方法を提供し、当該方法は、以下のステップを含み、
ステップ1であって、モータの構造に基づき、磁石本体1及び補強層2の構造パラメータ及び接続位置パラメータを得、
ステップ2であって、構造パラメータ及び接続位置パラメータに基づき、磁石本体1プリフォーム及び補強層2プリフォームを得、
ステップ3であって、磁石本体1プリフォームと補強層2プリフォームに対して嵌合取付を行い、プレスし、硬化させ、勾配リング状のボンド磁石を得る。
【0030】
さらに、磁石本体と補強層との比率値は、モータが最悪な動作のコンディションにおける通常の安全領域と減磁しやすい領域との比率値である。
【0031】
さらに、ステップ2において、磁石本体のプリフォーム及び補強層のプリフォームの密度は、3~4g/cm3であり、
ステップ3において、最終プレス金型によってプレスされた勾配リング状のボンド磁石の密度は、6.0~6.3g/cm3である。
【0032】
さらに、ステップ3において硬化の温度は、120℃~180℃であり、好ましくは、硬化の温度は、150℃であり、硬化の時間は、1時間~3時間であり、好ましくは、硬化の時間は、2時間である。
【0033】
以下、いくつかの実施例で上記製造方法を詳述する。
実施例1
内径が18mm、外径が26mm、高さが20mmであるボンド磁石リング永久磁石モータを用いて、計算により、当該モータは、最悪な動作のコンディションにおいて退磁が表層に発生し、分布の深さは、概ね1.5mmである。計算により、補強層を当該ボンド磁石リングの表層とし、厚さは、1.5mmであり、磁石本体の厚さは、2.5mmである。さらにシミュレーション計算によりボンド磁石リングを用いた永久磁石モータの最悪な動作のコンディションにおいて磁石の表層に減磁が発生しない磁石性能を得、当該の型番の磁性粉末を選択してプレスする。
【0034】
まず、内径が23mm、外径が26mm、高さが40mm、密度が3.0g/cm3である補強層の予圧リング、及び内径が18mm、外径が23mm、高さが40mm、密度が3.0g/cm3である磁石リングの本体層として予圧し、そして補強層を本体層と組立、組立が完了後、最終プレス機に入れて内径18mm、外径26mm、高さ20mm、密度が6.0g/cm3である最終ボンド磁石リング素体にプレスし、そして、ボンド磁石リング素体を150℃のオーブンに配置し、2時間加熱し、最終硬化を完了させる。
【0035】
実施例2
内径が22mm、外径が30mm、高さが15mmであるボンド磁石リング永久磁石モータを用いて、計算により、当該モータは、最悪な動作のコンディションにおいて減磁が表層に発生し、分布の深さは、概ね1.8mmである。計算により、補強層を当該ボンド磁石リングの表層とし、厚さは、1.8mmであり、磁石本体の厚さは、2.2mmである。さらに、シミュレーション計算により、ボンド磁石リングを用いた永久磁石モータの最悪な動作のコンディションにおいて磁石表層に減磁が発生しない場合の磁石性能を得、当該型番の磁性粉末を選択してプレスする。
【0036】
まず、内径が22mm、外径が25.6mm、高さが30mm、密度が4.0g/cm3である補強層の予圧リング、及び内径が25.6mm、外径が30mm、高さが30mm、密度が4.0g/cm3である磁石リングの本体層として予圧し、そして補強層を本体層と組立て、組立てが完了後、最終プレス機に入れて内径22mm、外径30mm、高さ15mm、密度が6.2g/cm3である最終ボンド磁石リング素体にプレスし、そしてボンド磁石リング素体を120℃のオーブンに配置し、3時間加熱し、最終硬化を完了させる。
【0037】
実施例3
内径が16mm、外径が22mm、高さが15mmであるボンド磁石リング永久磁石モータを用いて、計算により、当該モータは、最悪な動作のコンディションにおいて減磁が表層に発生し、分布の深さは、概ね1mmである。計算により、補強層を当該ボンド磁石リングの表層とし、厚さは、1mmであり、磁石本体の厚さは、2mmである。さらに、シミュレーション計算により、ボンド磁石リングを用いた永久磁石モータの最悪な動作のコンディションにおいて磁石表層に減磁が発生しない場合の磁石性能を得、当該型番の磁性粉末を選択してプレスする。
【0038】
まず、内径が16mm、外径が18mm、高さが30mm、密度が3.5g/cm3である補強層予圧リング、及び内径が18mm、外径が22mm、高さが30mm、密度が3.5g/cm3である磁石リングの本体層として予圧し、そして補強層を本体層と組立て、組立てが完了後、最終プレス機に入れて内径16mm、外径22mm、高さ15mm、密度が6.3g/cm3である最終ボンド磁石リング素体にプレスし、そしてボンド磁石リング素体を180℃のオーブンに配置し、1時間加熱し、最終硬化を完了させる。
【0039】
対応的に、本発明の実施例の第3態様は、上記勾配リング状のボンド磁石を含むモータを提供する。
【0040】
図3、
図4及び
図5を参照すると、1つの具体的な実施形態では、
図3は、6スロット4極の表面実装型の永久磁石モータの2次元トポロジー図であり、その内部から径方向において外に向かって順にモータの回転軸6、モータの回転子の鉄心3、補強層2、磁石本体1、モータの固定子の鉄心4及びモータの固定子の巻き線5である。
【0041】
上記実施例では、外径26mm、内径18mmの4極リング状のボンド永久磁石を用い、当該リング状の永久磁石は、1つの6スロット4極の表面実装型の永久磁石モータに適用され、モータの構造は、
図3に示される。まず、当該モータの通常のリング状の永久磁石の回転子構造が最悪な動作のコンディションにおいて表層の減磁率が5%よりも大きい厚さを計算し、
図4に示すように、減磁率が5%よりも大きい領域は、1.5mmの厚さを有する。そして、計算された厚さに基づき、高保磁力の磁性粉末を選択し、粉末混合し、且つ外径が26mm、内径が23mmである予圧補強層磁石をプレスし、及び元の通常の磁性粉末を用いて粉末混合後、外径23mm、内径18mmの通常層の磁石プレスし、2つの予圧リングが完成後、それらを一体に組立て、そして、最終金型中に入れて最終プレスを行い、外径26mm、内径18mmの勾配リング状のボンド磁石を得、当該ボンド磁石を硬化させる。硬化が完成後、勾配リング状のボンド磁石を目標モータに装着し、テストを行い、テスト結果は、
図5に示すように、同じ動作のコンディションにおいて、勾配リング状のボンド磁石を使用した表面実装型の永久磁石モータは、減磁率が5%よりも大きい領域がほぼ0である。
【0042】
本発明の実施例は、勾配リング状のボンド磁石及びその製造方法、モータに対する保護を求め、また、勾配リング状のボンド磁石は、磁石本体及び少なくとも1つの補強層を含み、前記磁石本体は、リング状の円柱体であり、前記補強層は、前記磁石本体の表面に圧着され、前記磁石本体の材料は、第1永久磁石であり、前記補強層の材料は、第2永久磁石であり、前記第2永久磁石の保磁力性能、残留磁化性能及び/又は最大動作温度は、前記第1永久磁石よりも高い。上記技術案は、以下の効果を有し、
上記勾配リング状のボンド磁石は、リング状のボンド磁石の局所強化を実現することができ、リング状のボンド磁石のモータでの応用における耐減磁、耐高温性能を効果的に向上させ、ジスプロシウム、テルビウム等の高価な金属の使用量を効果的に節約し、永久磁石の材料コストを低減し、且つ本発明の提供する勾配リング状のボンド磁石製造方法のプロセスが簡単であり、加工コストが低く、追加の設備等を必要とせず、大量生産に適用することができる。
【0043】
本発明の上記具体的な実施形態は、例示的な説明又は本発明の原理を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではないことを理解されたい。したがって、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われる任意の修正、等価置換、改良等は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。さらに、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
1 磁石本体
2 補強層
3 モータの回転子の鉄心
4 モータの固定子の鉄心
5 モータの固定子の巻き線
6 モータの回転軸