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特開2024-94228光硬化性樹脂組成物、硬化被膜、および硬化被膜付き基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094228
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物、硬化被膜、および硬化被膜付き基材
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/00 20060101AFI20240702BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240702BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20240702BHJP
   C09D 175/14 20060101ALI20240702BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240702BHJP
   C09D 7/47 20180101ALI20240702BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20240702BHJP
   B32B 27/16 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
C08F290/00
B32B27/30
C09D4/02
C09D175/14
C09D7/63
C09D7/47
C09D7/48
B32B27/16 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023182839
(22)【出願日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2022210842
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】矢野 諒介
(72)【発明者】
【氏名】亀田 佳憲
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK51A
4F100AT00
4F100BA02
4F100CA02A
4F100CA02H
4F100CA07A
4F100CA07H
4F100CA18A
4F100CA18H
4F100CC022
4F100CC02A
4F100EH462
4F100EH46A
4F100EJ542
4F100EJ54A
4F100EJ54B
4F100GB48
4F100JB14A
4J038FA111
4J038FA281
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4J127AA04
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4J127BB111
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4J127CC112
4J127CC113
4J127CC162
4J127DA12
4J127DA61
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】外観、UVカット性、ブルーライトカット性、透明性、色調、基材密着性、硬度、および耐屈曲性に優れる硬化被膜を形成可能な光硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】本発明による光硬化性樹脂組成物は、光重合性樹脂(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)、光重合開始剤(C)、紫外線吸収剤(D)、およびレベリング剤(E)を含有する光硬化性樹脂組成物であって、
前記光重合性樹脂(A)が、ウレタン(メタ)アクリレートおよびアクリル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含有し、
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)が、2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)を含有し、
前記2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)の含有量が、前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量に対して35質量%以上であり、
前記紫外線吸収剤(D)が、320nm以上370nm未満の波長領域に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤(d1)と、370nm以上400nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤(d2)とを含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性樹脂(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)、光重合開始剤(C)、紫外線吸収剤(D)、およびレベリング剤(E)を含有する光硬化性樹脂組成物であって、
前記光重合性樹脂(A)が、ウレタン(メタ)アクリレートおよびアクリル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含有し、
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)が、2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)を含有し、
前記2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)の含有量が、前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量に対して35質量%以上であり、
前記紫外線吸収剤(D)が、320nm以上370nm未満の波長領域に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤(d1)と、370nm以上400nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤(d2)とを含有する、光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤(D)の含有量が、前記光硬化性樹脂組成物の固形分100質量%に対して1質量%以上20質量%以下である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記光重合性樹脂(A)の含有量が、前記光硬化性樹脂組成物の固形分100質量%に対して35質量%以上75質量%以下である、請求項1または2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量が、前記光硬化性樹脂組成物の固形分100質量%に対して15質量%以上45質量%以下である、請求項1または2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記レベリング剤(E)が、フッ素系化合物、シリコーン系化合物およびアクリル系化合物から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記レベリング剤(E)が、パーフルオロポリエーテル骨格を含有するフッ素系化合物である、請求項5に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜。
【請求項8】
基材と前記基材上に設けられた請求項7に記載の硬化被膜とを備える被膜付き基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜および該硬化被膜付き基材にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、折り曲げ可能なスマートフォンやタブレット等のフォルダブルデバイスが、携帯性や意匠性向上の観点から注目されている。フォルダブルデバイスの構成要素のひとつであるフレキシブルディスプレイ等の画像表示装置では、偏光子の保護用途として、ハードコート層を備えた保護フィルムが使用される。当該ハードコート層は、ハードコート剤をフィルム表面上に塗布し、硬化させることで形成される。当該ハードコート層には、透明性、基材との密着性、耐屈曲性、高い表面硬度等が求められるが、特に表面硬度向上のためにハードコート層の架橋密度を高めると、耐屈曲性が不足するという課題がある。
【0003】
また、画像表示装置のバックライトとして使用されるLEDには、エネルギーの高いブルーライト(波長380nm~495nm)が含まれており、睡眠や人体への悪影響が懸念されている。さらに当該ブルーライトや外部からの紫外線は、画像表示装置の構成部材や光学機能層の光劣化を引き起こす一因となる。そこで、上記抑制のための紫外線およびブルーライトの遮蔽には、活性エネルギー線硬化型塗料組成物に紫外線吸収剤を配合することが有効である(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-074028号公報
【特許文献2】特開2011-144309号公報
【特許文献3】特開2013-234217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、紫外線吸収剤を含有する光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜であっても、要求される様々な物性を満たすことは容易では無かった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、外観、UVカット性、ブルーライトカット性、透明性、色調、基材密着性、硬度、および耐屈曲性に優れる硬化被膜を形成可能な光硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、光重合性樹脂(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)、光重合開始剤(C)、紫外線吸収剤(D)、およびレベリング剤(E)を含有する光硬化性樹脂組成物において、(メタ)アクリレートモノマー(B)が、特定量の2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)を含有し、さらに、前記紫外線吸収剤(D)が、異なる波長領域に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤(d1)および紫外線吸収剤(d2)を含有することにより、上記課題を解決できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] 光重合性樹脂(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)、光重合開始剤(C)、紫外線吸収剤(D)、およびレベリング剤(E)を含有する光硬化性樹脂組成物であって、
前記光重合性樹脂(A)が、ウレタン(メタ)アクリレートおよびアクリル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含有し、
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)が、2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)を含有し、
前記2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)の含有量が、前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量に対して35質量%以上であり、
前記紫外線吸収剤(D)が、320nm以上370nm未満の波長領域に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤(d1)と、370nm以上400nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤(d2)とを含有する、光硬化性樹脂組成物。
[2] 前記紫外線吸収剤(D)の含有量が、前記光硬化性樹脂組成物の固形分100質量%に対して1質量%以上20質量%以下である、[1]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[3] 前記光重合性樹脂(A)の含有量が、前記光硬化性樹脂組成物の固形分100質量%に対して35質量%以上75質量%以下である、[1]または[2]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[4] 前記(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量が、前記光硬化性樹脂組成物の固形分100質量%に対して15質量%以上45質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[5] 前記レベリング剤(E)が、フッ素系化合物、シリコーン系化合物およびアクリル系化合物から選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
[6] 前記レベリング剤(E)が、パーフルオロポリエーテル骨格を含有するフッ素系化合物である、[5]に記載の光硬化性樹脂組成物。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜。
[8] 基材と前記基材上に設けられた[7]に記載の硬化被膜とを備える被膜付き基材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外観、UVカット性、ブルーライトカット性、透明性、色調、基材密着性、硬度、および耐屈曲性に優れる硬化被膜を形成可能な光硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、このような光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜および該被膜付き基材を提供することもできる。本発明の光硬化性樹脂組成物から形成される硬化被膜が基材上に設けられた基材は、外観、UVカット性、ブルーライトカット性、透明性、色調、基材密着性、硬度、および耐屈曲性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。
「固形分」とは、光硬化性樹脂組成物から有機溶剤等の揮発成分を除いたものであり、硬化させたときに硬化被膜を構成する成分を示す。
【0011】
<光硬化性樹脂組成物>
本発明による光硬化性樹脂組成物は、少なくとも、光重合性樹脂(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)、光重合開始剤(C)、紫外線吸収剤(D)、およびレベリング剤(E)を含有するものである。本発明においては、光硬化性樹脂組成物が(A)~(E)成分を含み、かつ、前記(メタ)アクリレートモノマー(B)が、特定量の2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)を含有し、さらに、前記紫外線吸収剤(D)が、異なる波長領域に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤(d1)および紫外線吸収剤(d2)を含有することで、外観、UVカット性、ブルーライトカット性、透明性、色調、基材密着性、硬度、および耐屈曲性に優れる硬化被膜を形成することができる。
【0012】
また、本発明による光硬化性樹脂組成物は、溶剤(F)、無機粒子(G)、およびその他の成分をさらに含んでもよい。以下、光硬化性樹脂組成物を構成する各成分について詳述する。
【0013】
(光重合性樹脂(A))
光重合性樹脂(A)は、少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーおよびポリマーから選択される少なくとも1種であって、ウレタン(メタ)アクリレートおよびアクリル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含有するものである。
【0014】
(ウレタン(メタ)アクリレート)
ウレタン(メタ)アクリレートは、分子中に官能基としてアクリロイル基(CH=CHCO-)および/またはメタクリロイル基(CH=C(CH)-CO-)と、ウレタン結合(-NH・COO-)とを有するものである。ウレタン(メタ)アクリレートは、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリレートと、必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとを反応させて得られる。ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、オリゴマーまたはポリマーであることが好ましく、オリゴマーであることがより好ましい。
【0015】
上記ポリイソシアネートは、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られる。ポリイソシアネートの合成原料であるポリオールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられ、これらのうちの1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
ポリエステルポリオールとしては、特に製造方法の制約はなく、例えばジオールとジカルボン酸またはジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させたり、ジオールまたはジカルボン酸をエステル化してエステル交換反応させたりする等、公知の方法にて得られるもの等を使用できる。
ポリエステルポリオールの合成に用いられるジオールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールの合成に用いられるジカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ジマレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられる。
【0017】
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド-プロピレンオキシドランダム共重合体等が挙げられる。
【0018】
ポリカーボネートポリオールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、下記成分Aと成分Bを重縮合して得られる反応生成物等が挙げられる。即ち、成分Aとしては、特に限定されるものではないが、例えば、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-メチルプロパンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール類、または、これらジオール類と、蓚酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸との反応生成物などが挙げられる。また、成分Bとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ジフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、フェニルトルイルカーボネート、フェニルクロロフェニルカーボネート、2-トリル-4-トリルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、炭酸エチレン等の芳香族系カーボネートまたは脂肪族系カーボネートなどが挙げられる。
【0019】
ポリイソシアネートの合成原料であるジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、直鎖式、脂環式の脂肪族ジイソシアネート、または芳香族ジイソシアネートを用いることができる。具体的には、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有直鎖状炭化水素、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有分岐鎖状炭化水素、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等のイソシアネート基含有環状炭化水素、p-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4、4-ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート基含有芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0020】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、水酸基を少なくとも1個以上、好ましくは1~5個有する(メタ)アクリレートを用いることができる。また、このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、好ましくは炭素数が2~20の炭化水素部位を有することが望ましい。ここで、炭化水素部位とは、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、あるいは芳香族炭化水素基を有する有機基をいい、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよい。なお、当該炭化水素部位の一部には、エーテル結合(C-O-C結合)が含まれていてもよい。
【0021】
水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよびそのカプロラクトン付加物(株式会社ダイセル製プラクセルFA1,FA2など)、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのOH基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、それらのエチレンオキサイド変性物(新中村化学工業株式会社製AM-90G,AM-130G,共栄社化学株式会社製ライトアクリレートEC-A、MTG-A,EHDG-ATなど)、グリセリンモノ(メタ)アクリレート(日油株式会社製ブレンマーGLMなど)、グリセリンジ(メタ)アクリレート(東亜合成株式会社製アロニックスMT3560など)、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート(東亜合成株式会社製アロニックスM-313,315など)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(大阪有機化学工業株式会社製ビスコート300、東亜合成株式会社製アロニックスM-305,M-306,MT-3548、共栄社化学株式会社製ライトアクリレートPE-3A、新中村化学工業株式会社製NKエステルA-TMM-3Lなど)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(東亜合成製アロニックスM-400,M-402,M-403,MT-3549,共栄社化学株式会社製ライトアクリレートDPE-6A、新中村化学工業株式会社製NKエステルA-DPHなど)等が挙げられる。これらの中でも、硬化被膜の硬度と耐屈曲性の両立の観点から、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレートやペンタエリスリトールトリアクリレートを用いることが好ましい。このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
必要に応じて用いられる、上記水酸基含有(メタ)アクリレート以外のポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等の公知のポリオールを用いることができる。具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ポリカプロラクトンポリオール、アルキレンジオール等が挙げられる。このようなポリオールは、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記のウレタン(メタ)アクリレートの中でも、硬化被膜の硬度と耐屈曲性の両立の観点から多官能ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、2官能以上12官能以下のウレタン(メタ)アクリレートがより好ましく、3官能以上10官能以下のウレタン(メタ)アクリレートがさらに好ましい。また、耐光性の観点から、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、脂環式骨格を含有するウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、イソシアヌレート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
【0024】
(アクリル(メタ)アクリレート)
アクリル(メタ)アクリレートは、アクリロイル基(CH=CHCO-)および/またはメタクリロイル基(CH=C(CH)-CO-)を側鎖に含有するアクリルオリゴマーまたはポリマーである。アクリル(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートの共重合体に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーを反応させた化合物、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーの共重合体に2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネートモノマーを反応させた化合物等が挙げられる。
【0025】
このようなアクリル(メタ)アクリレートとしては、市販のアクリル(メタ)アクリレートを用いることもできる。例えば、根上工業株式会社製の商品名ART CURE OAP-5000、ART CURE OAP-2531、ART CURE RA-3631P、CURE RA-4101、ART CURE RA-4706、ART CURE RA-331P、ART CURE RA-341、ART CURE MAP-4050、ART CURE MAP-7000、ART CURE MAP-2801、ダイセル・オルネクス株式会社製の商品名KRM8912、KRM8981、KRM9322、KRM8312B、IRR679、EBECRYL 303、EBECRYL 1710、EBECRYL 767、EBECRYL 305、DIC株式会社製の商品名ルクシディアV-6850、ルクシディアETS-834、ルクシディアERS-830、ルクシディアZHU-1809、昭和電工株式会社製の商品名HA7975、HA7975D等が挙げられる。このようなアクリル(メタ)アクリレートは、1種単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
光重合性樹脂(A)は、前記ウレタン(メタ)アクリレートおよびアクリル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーまたはポリマーを含有してもよい。このような(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーの例としては、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
光重合性樹脂(A)の含有量は、硬化被膜の硬度、耐屈曲性等の観点から、光硬化性樹脂組成物の固形分100質量%に対して、好ましくは35質量%以上75質量%以下であり、より好ましくは37質量%以上73質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以上70質量%以下である。
【0028】
光重合性樹脂(A)の中の前記ウレタン(メタ)アクリレートおよびアクリル(メタ)アクリレートの合計の含有量は、硬化被膜の基材密着性、硬度等の観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。
【0029】
((メタ)アクリレートモノマー(B))
(メタ)アクリレートモノマー(B)は、少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであり、光硬化性樹脂組成物の粘度を調整する反応性希釈剤としての役割を有し、光硬化性樹脂組成物に対して紫外線照射した際、上記の光重合性樹脂(A)とともに硬化被膜を形成する。
【0030】
(2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1))
(メタ)アクリレートモノマー(B)は、少なくとも、2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)を含む。2官能の(メタ)アクリレートモノマーとは、分子内に官能基として2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を意味する。2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートおよびネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;テトラフルオロエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のハロゲン置換アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート;水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の水添ジシクロペンタジエンまたはトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート;1,3-ジオキサン-2,5-ジイルジ(メタ)アクリレート〔別名:ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート〕等のジオキサングリコールまたはジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレート物、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジアクリレート物等のビスフェノールAまたはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ビスフェノールFジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物等のビスフェノールAまたはビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート;シリコーンジ(メタ)アクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート;2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン;2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン;2-(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート;等が挙げられる。これらの2官能の(メタ)アクリレートモノマーの中でも、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ハロゲン置換アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート、脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエンまたはトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールまたはジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン、2-(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートが好ましく、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。これらのモノマーは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2))
(メタ)アクリレートモノマー(B)は、6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)をさらに含む。6官能の(メタ)アクリレートモノマーとは、分子内に官能基として6個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を意味する。6官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性テトラグリセリンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)は、カプロラクトン変性体であることが好ましく、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0032】
(他の(メタ)アクリレートモノマー)
(メタ)アクリレートモノマー(B)は、上記2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)および6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)以外の他の(メタ)アクリレートモノマーをさらに含んでもよい。他の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、3官能以上5官能以下の(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましい。3官能以上5官能以下の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)の含有量は、硬化被膜の基材密着性、屈曲性等の観点から、(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量に対して35質量%以上であり、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、また、100質量%であってもよい。
(メタ)アクリレートモノマー(B)の含有量は、硬化被膜の基材密着性、硬度等の観点から、光硬化性樹脂組成物の固形分100質量%に対して、好ましくは15質量%以上45質量%以下であり、より好ましくは17質量%以上43質量%以下であり、さらに好ましくは19質量%以上40質量%以下である。
(メタ)アクリレートモノマー(B)中の6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)の含有量は、硬化被膜の基材密着性、硬度等の観点から、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、さらにより好ましくは15質量%以下であり、また、0質量%であってもよい。
【0034】
(光重合開始剤(C))
光重合開始剤(C)は、特に限定されず、従来公知の紫外線硬化用の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤、アセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイルホルメート系重合開始剤、チオキサントン系重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤、ヒドロキシベンゾイル系重合開始剤、ベンゾフェノン系重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤等が挙げられる。
【0035】
アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド、およびビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
アセトフェノン系重合開始剤としては、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン等が挙げられる。
ベンゾイルホルメート系重合開始剤としては、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
チオキサントン系重合開始剤としては、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
オキシムエステル系重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]およびエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
ヒドロキシベンゾイル系重合開始剤としては、ベンゾインアルキルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、および4,4’-ジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
α-アミノアルキルフェノン系重合開始剤としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられる。
これらの重合開始剤は1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
光重合開始剤(C)の含有量は、硬化被膜の硬化性および透明性の観点から、光硬化性樹脂組成物の固形分量に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上7.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下である。
【0037】
(紫外線吸収剤(D))
紫外線吸収剤(D)は、320nm以上370nm未満の波長領域に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤(d1)と、370nm以上400nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤(d2)とを含有する。
【0038】
(紫外線吸収剤(d1))
紫外線吸収剤(d1)は、320nm以上370nm未満の波長領域に極大吸収波長を有する。極大吸収波長の波長領域は、UVカット性、色調、透明性等の光学特性と、硬度、外観等の性能のバランスの観点から、上限値は、好ましくは365nm以下であり、より好ましくは360nm以下であり、下限値は、好ましくは345nm以上であり、より好ましくは350nm以上である。紫外線吸収剤(d1)としては、例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ケイ皮酸誘導体等の有機系紫外線吸収剤、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機系紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの中でも、硬化被膜のUVカット性、色調、透明性等の光学特性と、硬度、外観等の性能のバランスの観点から、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましい。これらの紫外線吸収剤は1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,2’,2’’-[1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリイルトリス(3-ヒドロキシ-4,1-フェニレン)オキシ]-1,1’,1’’-トリプロピオン酸オクチル等が挙げられる。
【0040】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル-3’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-シアノ-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-tert-ブチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-5-ニトロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸-3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1、1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-,C7~9-ブランチ直鎖アルキルエステル、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール等が挙げられる。
【0041】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アセトキシエトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5,5’-ジスルホベンゾフェノン・2ナトリウム塩等が挙げられる。
【0042】
(紫外線吸収剤(d2))
紫外線吸収剤(d2)は、370nm以上400nm以下の波長領域に極大吸収波長を有する。紫外線吸収剤(d2)の極大吸収波長は、好ましくは395nm以下であり、より好ましくは390nm以下である。紫外線吸収剤(d2)としては、例えば、クマリン系色素、ポルフィリノイド系色素、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ケイ皮酸誘導体等の有機系紫外線吸収剤、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機系紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの中でも、硬化被膜のUVカット性、ブルーライトカット性、色調、透明性等の光学特性と、硬度、外観等の性能のバランスの観点から、ケイ皮酸誘導体、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。これらの紫外線吸収剤は1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
ケイ皮酸誘導体としては、例えば、Everlight Chemical社製の製品名Eversorb BL4、Eutec Chemical社製の商品名Eusorb UV-1990等が挙げられる。
【0044】
紫外線吸収剤(D)の含有量は、硬化被膜の硬度、透明性の観点から、光硬化性樹脂組成物の固形分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上17質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上15質量%以下である。
紫外線吸収剤(d1)と紫外線吸収剤(d2)の含有量の比は、硬化被膜のUVカット性、ブルーライトカット性、色調の観点から、好ましくは30:70~90:10であり、より好ましくは50:50~85:15であり、さらに好ましくは55:45~80:20である。
【0045】
(レベリング剤(E))
レベリング剤(E)とは、光硬化性樹脂組成物の流動性を調整し、塗布した被膜を平坦にする機能を有するものである。レベリング剤としては、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、およびアクリル系化合物等が挙げられる。
【0046】
フッ素系化合物としては、パーフルオロポリエーテル骨格を含有するフッ素系化合物を用いることが好ましい。例えば、パーフルオロアルケニルカルボン酸塩、パーフルオロアルケニルスルホン酸塩、パーフルオロアルケニルリン酸エステル、パーフルオロアルケニルベタイン等のパーフルオロアルケニル基を主鎖又は側鎖に有するフッ素系レベリング剤;パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルベタイン等のパーフルオロアルキル基を主鎖又は側鎖に有するフッ素系レベリング剤等が挙げられる。
【0047】
シリコーン系化合物としては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジエンシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルフェニルシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルハイドロジエンシロキサン等が挙げられる。
【0048】
アクリル系化合物としては、下記一般式(1)で表されるポリエーテル変性(メタ)アクリル化合物を用いることができる。
【化1】
一般式(1)中、R~Rは同一または異なっていてもよく、R~Rの少なくとも一つは前記一般式(2)で表されるポリエーテル基を示し、かつ少なくとも一つは(メタ)アクリロイル基または(メタ)アクリロイル基を有するC1~C20の直鎖もしくは分岐のアルキル基を示す。
【化2】
一般式(2)中、RはC1~C20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、R10は水素原子、C1~C20の直鎖もしくは分岐のアルキル基、C2~C20の直鎖もしくは分岐のアルケニル基またはC2~C20の直鎖もしくは分岐のアルキニル基を示す。複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。kは1以上の整数を示す。その他のR~Rは、C1~C20の直鎖もしくは分岐のアルキル基を示す。複数存在するR~Rは、それぞれ同一または異なっていてもよい。
m、nは同一でも異なっていてもよく、0以上の整数、好ましくは1~20の整数、さらに好ましくは1~10の整数を示す。
【0049】
このようなレベリング剤としては、市販のレベリング剤を用いることもできる。例えば、フッ素系レベリング剤としては、信越化学工業株式会社製の商品名KY-1203、ネオス株式会社製の商品名フタージェント602A等が挙げられる。シリコーン系レベリング剤としては、ダウ・東レ株式会社製の商品名DOWSIL 57 Additive、BYK-Chemie社製の商品名BYK-315N、BYK-325N等、共栄社化学株式会社製、商品名ポリフローKL-401、EVONIK株式会社製の商品名Tego flow 425等が挙げられる。アクリル系レベリング剤としては、共栄社化学株式会社製の商品名ポリフローNo.75、BYK-Chemie社製、商品名BYK-350、BYK-381等が挙げられる。その他のレベリング剤として、BYK-Chemie社製の商品名BYK-399等が挙げられる。
【0050】
レベリング剤(E)の重量平均分子量(Mw)は、硬化被膜の平滑性および透明性の観点から、好ましくは1,000~100,000であり、より好ましくは2,000~50,000であり、さらに好ましくは3,000~30,000である。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0051】
レベリング剤(E)の含有量は、硬化被膜の平滑性および透明性の観点から、光硬化性樹脂組成物の固形分量に対して、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上2質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。
【0052】
(溶剤(F))
光硬化性樹脂組成物は、塗料として適した粘度に調整するため、必要に応じて溶剤で希釈することができる。溶剤(F)としては、光硬化性樹脂組成物中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステルまたはエーテルエステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびメトキシブチルアセテート)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびジエチレングリコールモノエチルエーテル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトンおよびシクロヘキサノン)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-またはi-プロパノール、n-、i-、sec-またはt-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコールおよびベンジルアルコール)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、水およびこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。
【0053】
(無機粒子(G))
無機粒子としては、例えば、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、バリウム、タンタル、タングステン、イリジウム、白金、金、鉛、ビスマス、セリウムおよびこれら2種以上からなる合金、またはこれらの酸化物、フッ化物、窒化物、硫化物、炭化物、ホウ化物、炭酸塩、その他粘土鉱物、およびこれらの複合体等が好ましく挙げられ、硬化被膜の硬度向上の観点から、シリカ、アルミナ、ジルコニア等がより好ましい。
【0054】
無機粒子としてシリカを用いる場合、シリカ表面に(メタ)アクリロイル基を有する反応性シリカを用いることがより好ましい。前記反応性シリカは、例えば、シリカと、分子内に(メタ)アクリロイル基、及びメトキシ基、エトキシ基等の加水分解性基を有する加水分解性シランとを反応させることで得ることができる。このような態様であると、紫外線照射によって本組成物を硬化させる際、反応性シリカが、成分(A)および成分(B)と反応して硬化被膜に組み込まれることで形成される硬化被膜の硬度をより向上させることができる。
【0055】
前記無機粒子の配合量としては、硬化被膜の硬度および耐屈曲性の観点から、光硬化性樹脂組成物の固形分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上25質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上24質量%以下であり、特に好ましくは15質量%以上23質量%以下である。
【0056】
前記無機粒子の平均一次粒子径は、硬化被膜の透明性の観点から、好ましくは1~500nmであり、より好ましくは5~300nmである。無機粒子の平均一次粒子径は、レーザー回折法により測定することができる。
【0057】
(その他の成分)
本発明による光硬化性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記(A)~(G)成分以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、光安定剤、帯電防止剤、重合禁止剤、非反応性希釈剤、つや消し剤、消泡剤、分散剤、沈降防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、密着性向上剤、光増感剤、抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤、シランカップリング剤、可塑剤等を必要に応じて配合することができる。
【0058】
<光硬化性樹脂組成物の調製方法>
本発明による光硬化性樹脂組成物は、上記の各成分を、従来公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を用いて、混合・撹拌することにより得られる。このような装置としては、例えば混合・分散ミル、ホモディスパー、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等が挙げられる。
【0059】
光硬化性樹脂組成物(樹脂溶液)の25℃における粘度は、好ましくは0.5~500mPa・sであり、より好ましくは1~250mPa・sであり、さらに好ましくは5~100mPa・sである。粘度の測定はB型粘度計を用いることができる。粘度が上記数値範囲内であれば、塗料として用い易く、加工適性に優れる。
【0060】
<硬化被膜>
本発明による硬化被膜は、上記の光硬化性樹脂組成物を塗布し、紫外線を照射して硬化させることにより形成される。硬化被膜の膜厚は特に限定されないが、UVカット性、ブルーライトカット性、硬度、および耐屈曲性等の維持の観点から、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~30μm、さらに好ましくは3~10μmである。本発明における膜厚とは、硬化被膜の断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)等にて観察した際の、硬化被膜の厚さを指す。このような膜厚の被膜を形成する際は、1回の塗布で、所望の厚みの被膜を形成してもよいし、複数回の塗布で、所望の厚みの被膜を形成してもよい。
【0061】
<硬化被膜付き基材>
本発明による硬化被膜付き基材は、基材上に上記の光硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて硬化被膜を形成したものである。基材としては、特に限定されないが、プラスチック基材などの透明基材を用いることが好ましい。透明基材としては、例えば、各種透明プラスチックフィルム、例えばトリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルムなどが挙げられる。その中でも、ポリエチレンテレフタラートフィルムが強度や光学特性等のバランスなどの点で好ましい。
【0062】
(用途)
本発明の硬化被膜付き基材は、太陽光およびLED照射光に含まれる紫外線およびブルーライトの遮蔽に有効であるため、例えば、光源におけるブルーライトカットフィルター、画像表示装置の表面保護フィルム、偏光子保護フィルム、太陽電池モジュールの表面保護フィルム等が挙げられる。
【0063】
<硬化被膜付き基材の製造方法>
本発明による硬化被膜付き基材の製造方法は、上記の光硬化性樹脂組成物を基材の少なくとも一方の面に塗布する塗布工程と、
塗布工程の後、紫外線照射により上記の光硬化性脂組成物を硬化させて硬化被膜を形成する硬化工程と、
を含むものである。以下、各工程について、詳細に説明する。
【0064】
(塗布工程)
塗布工程は、基材の少なくとも一方の面上に、従来公知の方法により、上記の光硬化性樹脂組成物を塗布する工程である。塗布には、例えば、スプレー、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(ナチュラルロールコーターおよびリバースロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーターおよびブレードコーター等の塗布機が使用できる。
【0065】
光硬化性樹脂組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗布後に乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、好ましくは10~200℃、塗膜の平滑性および外観の観点から更に好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から更に好ましい下限は30℃である。
【0066】
(硬化工程)
硬化工程は、基材の塗布面に紫外線を照射して、塗布された光硬化性樹脂組成物を硬化させて、硬化被膜を形成する工程である。紫外線で硬化させる方法としては、200~500nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、UV-LED等を用いて、紫外線を照射する方法等が挙げられる。紫外線の照射量は、光硬化性樹脂組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から、好ましくは100~10,000mJ/cmであり、より好ましくは500~5,000mJ/cmである。
【実施例0067】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
[ウレタン(メタ)アクリレート(A)の合成]
(1)合成例1
イソシアネート化合物(a1)として、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI、ジイソシアネート基含有率31.8%)を準備した。また、水酸基および光重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートモノマー(a2)として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(水酸基価110mg/KOH)を準備した。
続いて、撹拌装置、温度計、空気導入管を備えた200mL反応容器に、(a1)成分を32.8g、(a2)成分を102g、ジエチレングリコールを3.3g、p-メトキシフェノールを0.05g、ジブチルヒドロキシトルエンを0.17g、ジブチルスズジウラートを0.17g、酢酸ブチルを17.3gを添加し、80℃で5時間反応させた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルを17.3g加えて希釈をし、ウレタン(メタ)アクリレート(A1)を得た。この(A1)成分は、官能基数が6、重量平均分子量(MW)が2,400、固形分が80%であった。
【0069】
(2)合成例2
イソシアネート化合物(a1)として、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI、ジイソシアネート基含有率31.8%)を準備した。また、ポリカーボネートジオール化合物(a2)として、ETERNACOLL UM-90(3/1)(宇部興産株式会社製)を準備した。さらに、光反応性化合物(a3)としてイソシアヌル酸EO変性ジおよびトリアクリレート(東亞合成株式会社製、アロニックスM-313)を準備した。
続いて、撹拌装置、還流冷却器、温度計を取り付けた4つ口フラスコに、(a2)成分を192.8g、(a3)成分を480.8g、4-メトキシフェノールを0.15g、ジブチルヒドロキシトルエンを0.45g、ジラウリン酸ジブチルスズを1.5g入れ、オイルバスにて80℃まで加温した後、(a1)成分112.3gを1時間かけて加え入れ、その後90℃で3時間反応させた。反応終了後、プロピレングリコールモノメチルエーテルを450g加えて希釈をし、ウレタン(メタ)アクリレート(A2)を得た。なお、反応の終点は赤外吸収分析でイソシアネート基に由来したピークの消失により確認した。得られた混合物は、有機溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルが36.3%であり、固形分が63.7%であった。また、この(A2)成分は、官能基数が4、重量平均分子量(MW)が2,900であった。
【0070】
光硬化性樹脂組成物のために、以下の材料を用いた。
・6官能ウレタンアクリレート1:合成例1で得られたウレタン(メタ)アクリレート(A1)、Mw.2,400
・6官能ウレタンアクリレート2:亜細亜工業株式会社製、商品名EXCELATE RUA-076MG、Mw.1,300
・6官能ウレタンアクリレート3:亜細亜工業株式会社製、商品名EXCELATE RUA-071VE、Mw.1,100
・10官能ウレタンアクリレート:根上工業株式会社製、商品名H-135、Mw.1360
・4官能ウレタンアクリレート:合成例2で得られたウレタン(メタ)アクリレート(A2)、Mw.2,900
・2官能ウレタンアクリレート: PCD系、根上工業株式会社製、商品名ART RESIN UN-9000PEP、Mw.5,000
・アクリルアクリレート1:三井化学株式会社製、商品名オレスターRA3055BE
・アクリルアクリレート2:根上工業株式会社製、商品名ART CURE OAP-5000
・アクリルアクリレート3:ダイセル・オルネクス株式会社製、商品名KRM8912
・2官能エポキシアクリレート:ビスフェノールAタイプ、ダイセル・オルネクス株式会社製、商品名EBECRYL 3700
・6官能ポリエステルアクリレート(80%)+アクリルモノマー(20%):ダイセル・オルネクス株式会社製、商品名EBECRYL 1830
・カプロラクトン変性DPHA:長興材料工業株式会社製、商品名EM2692
・単官能アクリレートモノマー1:ダイセル・オルネクス株式会社製、商品名IBOA-B
・単官能アクリレートモノマー2:共栄社化学株式会社製、商品名ライトアクリレートL-A
・単官能アクリレートモノマー3:KJケミカルズ株式会社製、商品名ACMO
・2官能アクリレートモノマー1:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、Sartomer Chemicals Ltd株式会社製、商品名SR238NS
・2官能アクリレートモノマー2:共栄社化学株式会社製、商品名ライトアクリレート1,9ND-A
・2/3官能アクリレートモノマー:東亜合成株式会社製、商品名アロニックスM-313
・3官能アクリレートモノマー1:Green Chemical社製、商品名KOMERATE-T001
・3官能アクリレートモノマー2:Miwon Speciality Chemicals社製、商品名MIRAMER M300
・6官能アクリレートモノマー1:東亜合成株式会社製、商品名アロニックスM-400
・6官能アクリレートモノマー2:ポリグリセリン系、阪本薬品工業株式会社製、商品名SYntech SA-TE6
・光重合開始剤1:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、IGM Resins社製、商品名Omnirad TPO
・光重合開始剤2:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、IGM Resins社製、商品名Omnirad 184
・光重合開始剤3:メチルベンゾイルホルメート、IGM Resins社製、商品名Omnirad MBF
・紫外線吸収剤1:ヒドロキシフェニルトリアジン系、極大吸収波長322nm、BASF社製、商品名Tinuvin 479
・紫外線吸収剤2:ヒドロキシフェニルトリアジン系、極大吸収波長336nm、BASF社製、商品名Tinuvn 400
・紫外線吸収剤3:ベンゾトリアゾール系、極大吸収波長342nm、BASF社製、商品名Tinuvin PS
・紫外線吸収剤4:ベンゾトリアゾール系、極大吸収波長約340nm、大塚化学株式会社製、商品名RUVA-93
・紫外線吸収剤5:ヒドロキシフェニルトリアジン系、極大吸収波長356nm、BASF株式会社製、商品名Tinuvin 477
・紫外線吸収剤6:ベンゾフェノン系、極大吸収波長353nm、BASF社製、商品名Uvinul 3050
・紫外線吸収剤7:ケイ皮酸誘導体、極大吸収波長384nm、Eutec Chemical社製、商品名Eusorb UV-1990
・紫外線吸収剤8:ケイ皮酸誘導体、極大吸収波長371nm、Everlight Chemical社製、商品名Eversorb BL4
・フッ素系レベリング剤1:重合性不飽和基を有するパーフルオロポリエーテル、信越化学工業株式会社製、商品名KY-1203、Mw.36,000
・シリコーン系レベリング剤:非反応性、シリコーングリコール共重合体、ダウ・東レ株式会社製、商品名DOWSIL 57 Additive
・アクリル系レベリング剤:共栄社化学株式会社製、商品名ポリフローNo.75
・フッ素系レベリング剤2:ノニオン系含フッ素プレポリマー(UV反応基含有)、Mw:25,000、ネオス株式会社製、商品名フタージェント602A
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル
・無機粒子1:UV反応基を有するシリカナノ粒子、日産化学株式会社製、商品名PGM-AC-2140Y、平均一次粒子径10~15nm
・無機粒子2:UV反応基を有するシリカナノ粒子、日産化学株式会社製、商品名MEK-AC-5140Z、平均一次粒子径70~100nm
・無機粒子3:シリカナノ粒子、御国色素株式会社製、商品名MHIフィラー#B929M、平均一次粒子径100~200nm
【0071】
[光硬化性樹脂組成物の調製]
[実施例1]
表1に記載のように、32質量部のウレタン(メタ)アクリレート(A1)(Mw:2,400)と、7質量部のウレタン(メタ)アクリレート(A2)(Mw:2,900)と、1質量部の6官能(メタ)アクリレートモノマー(b2)と、12質量部の2官能(メタ)アクリレートモノマー(b1)と、2質量部の光重合開始剤(C)と、5質量部の紫外線吸収剤(d1)と、2質量部の紫外線吸収剤(d2)と、1質量部のパーフルオロポリエーテル骨格を有するフッ素系レベリング剤(E)と、39質量部の溶剤(F)とを混合し、光硬化性樹脂組成物を得た。
【0072】
[実施例2~34、比較例1~14]
表1~4に記載の配合に従って、成分および成分の配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして、光硬化性樹脂組成物を得た。
【0073】
[被膜付き基材(試験体)の作製]
基材フィルム(PMMAフィルム、厚み300μm、150mm×210mm)上に、調製した光硬化性樹脂組成物を乾燥膜厚が約5μmとなるようにバーコーターで1回塗装し、80℃で1分間乾燥させ、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射(照射量:500mJ/cm2)することで硬化させ、被膜付き基材を作成した。
【0074】
[被膜付き基材の評価]
(硬化被膜の外観)
上記で得た被膜付き基材の外観を目視により評価した。具体的には、硬化被膜に白化、ハジキ、平滑性不足、およびワレ等の異常が無いかを観察し、下記の基準で評価した。評価結果を表5~8に示した。
(評価基準)
○:白化、ハジキ、平滑性不足、およびワレ等の異常が無かった。
×:白化、ハジキ、平滑性不足、およびワレ等の異常が一つでもあった。
【0075】
(透明性)
被膜付き基材の透明性をヘイズ(HZ)および全光線透過率(TT)により評価した。ヘイズおよび全光線透過率の測定には、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH4000)を使用した。測定結果を表5~8に示した。ヘイズが1.0%未満であり、全光線透過率が90.0%以上であれば、透明性に優れていると評価した。
【0076】
(黄色度(色調))
ASTM E313-05に準じて、被膜付き基材の黄色度(YI値)を評価した。黄色度(YI値)の測定は分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、CM-5)を使用し、下記の条件にて行った。測定結果を表5~8に示した。黄色度(YI値)が13.5以下であれば、十分に低い黄色度を有すると評価した。
測定方法:透過
光源:C
視野:2deg
【0077】
(基材密着性)
JIS K 5600-5-6:1990に記載されている碁盤目試験の方法に準じて、被膜付き基材の硬化被膜上にカッターで1mm幅、100マスの傷を入れ、碁盤目を付けた試験片を作製した。続いて、試験片にセロテープ(登録商標)(商品名、ニチバン株式会社製)を貼り付けた後、セロテープを速やかに、碁盤面に対して45度斜め上方の方向に引張ることで剥離させ、残った碁盤目上の硬化被膜数を計数し、この残存数を基材密着性の指標とした。測定結果を表5~8に示した。碁盤目上の硬化被膜の残存数が100/100であれば、基材密着性に優れていると評価した。
【0078】
(UVカット性)
被膜付き基材のUVカット性を波長320nmにおける光の透過率(%)により評価した。透過率の測定には、紫外可視赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、SolidSpec-3700)を使用した。測定結果を表5~8に示した。透過率が5.0%未満であれば、UVカット性に優れていると評価した。
【0079】
(ブルーライトカット性)
被膜付き基材のブルーライトカット性を波長385nmにおける光の透過率(%)により評価した。透過率の測定には、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、SolidSpec-3700)を使用した。測定結果を表5~8に示した。透過率が5.0%未満であれば、ブルーライトカット性に優れていると評価した。
【0080】
(鉛筆硬度)
被膜付き基材の塗膜表面硬度を引っかき硬度(鉛筆法)により評価した。鉛筆硬度の測定は、JIS K 5600-5-4:1990に準拠し、引っかき硬度試験機(株式会社安田精機製、553-M)および日本塗料検査協会認定の鉛筆(三菱鉛筆株式会社製、Hi-uni)を使用した。鉛筆を硬化被膜に対して角度45°、荷重750gで押すように取り付けた後、引っかき試験を行い、硬化被膜の破れや窪み、擦り傷等が認められない最も硬い鉛筆の濃度記号を塗膜の鉛筆硬度とした。測定結果を表5~8に示した。鉛筆硬度がF以上であれば、硬化被膜が十分な表面硬度を有すると評価した。
【0081】
(耐屈曲性)
被膜付き基材の耐屈曲性を、円筒型マンドレルを用いた屈曲試験により評価した。耐屈曲性の測定には、マンドレルのサイズはR=1.0(2mmφ)のものを使用し、硬化被膜の面を外側にして10回折り曲げた後、硬化被膜の外観を目視で観察した。硬化被膜の剥離や割れが認められない場合、耐屈曲性に優れていると評価した。
(評価基準)
○:硬化被膜に剥離や割れが認められなかった。
×:硬化被膜に剥離や割れが認められた。
【0082】
(撥水性)
被膜付き基材の撥水性を、硬化被膜の表面における水接触角により評価した。水接触角の測定には、接触角計(協和界面科学株式会社製、DropMaster DM500)を使用した。純水の水滴を塗膜表面に滴下して10秒後の接触角を測定した。測定結果を表5~8に示した。接触角が90°以上であれば撥水性に優れていると評価した。また、接触角が80°以下であればリコート性に優れていると評価した。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】