(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094230
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ブレスレット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A44C 5/02 20060101AFI20240702BHJP
A44C 5/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A44C5/02 E
A44C5/00 502Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023183715
(22)【出願日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】22216777.7
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ソフィ・ナーポリ
(57)【要約】
【課題】 多くのカスタマイズオプションを可能にする、機能的で快適なインサートを備えるブレスレットを提供する
【解決手段】 本発明は、上側細長材(2)と下側細長材(3)を含むブレスレット(1)に関し、上側細長材(2)と下側細長材(3)は、ブレスレットの少なくとも1つのストランドを形成し、ブレスレットには、上側細長材(2)と下側細長材(3)の間に配置されるフレキシブルな中間層(4)があり、フレキシブルな中間層(4)は、0℃~40℃の範囲内の転移温度を有する少なくとも1種類のカプセル化された相変化材料によって形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側細長材(2)と下側細長材(3)を含むブレスレット(1)であって、
前記上側細長材(2)と前記下側細長材(3)は、前記ブレスレットの少なくとも1つのストランドを形成し、
前記ブレスレットには、前記上側細長材(2)と前記下側細長材(3)の間に配置されるフレキシブルな中間層(4)があり、
前記フレキシブルな中間層(4)は、0℃~40℃の範囲内の転移温度を有する少なくとも1種類のカプセル化された相変化材料によって形成される
ことを特徴とするブレスレット。
【請求項2】
前記少なくとも1種類の相変化材料は、パラフィン系炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ワックス、油、水和塩、脂肪酸、脂肪酸エステル、二塩基酸、二塩基性エステル、1-ハロゲン化物、ポリマー、及びこれらの混合物から選択される
ことを特徴とする請求項1に記載のブレスレット。
【請求項3】
前記下側細長材(3)には、微小孔がある
ことを特徴とする請求項2に記載のブレスレット。
【請求項4】
前記上側細長材(2)と前記下側細長材(3)は、金属性及び/又はセラミックス性のフィラーを含むエラストマー複合材料によって作られる
ことを特徴とする請求項1に記載のブレスレット。
【請求項5】
前記相変化材料の転移温度は、25℃~30℃の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載のブレスレット。
【請求項6】
カプセル化された相変化材料によって作られた前記中間層(4)には、固定手段を通すための穴がある
ことを特徴とする請求項1に記載のブレスレット。
【請求項7】
前記上側細長材(2)は、皮革、天然繊維又は合成繊維、エラストマー及びシリコーン材料からなる群から選択される1種類又は複数種類の材料によって作られる
ことを特徴とする請求項1に記載のブレスレット。
【請求項8】
前記フレキシブルな中間層(4)は、15℃~20℃の範囲内の転移温度を有する第1のカプセル化された相変化材料、及び25℃~35℃の範囲内の転移温度を有する第2のカプセル化された相変化材料である、2種類のカプセル化された相変化材料によって形成される
ことを特徴とする請求項1に記載のブレスレット。
【請求項9】
請求項1に記載のブレスレットを製造する方法であって、
所望のブレスレットの最終形状に対応する少なくとも1種類のカプセル化された相変化材料によって形成されるフレキシブルな中間層(4)を製造するステップと、
上側細長材(2)と下側細長材(3)を設けるステップと、
前記中間層(4)を前記下側細長材(3)に結合するステップと、
前記上側細長材(2)を前記下側細長材(3)と前記中間層(4)に剛接続させてブレスレットを形成するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)、宝飾品又は皮革製品の産業のためのフレキシブルで変形可能なブレスレットないしリストバンド、及びこのようなブレスレットないしリストバンドを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的に、携行型時計のブレスレットは、皮革、合成材料、布、ゴム、又は金属によって作られている。ブレスレットには、さらに、ライニング又はシース内、又は後で一緒に結合される上側細長材と下側細長材の間に配置されるインサートがある。このインサートには、主にフレキシブル性を与える機械的な機能がある。
【0003】
皮革ブレスレットの場合、インサートは、耐引裂補強材、皮革製のパディング、ブレスレットの高さを増す不織布材料によって作られている。皮革又は合成樹脂製の上面とともに、皮革ライニングも設けられる。
【0004】
代替的形態において、ブレスレットの上部は、ブレスレットの面においてのみ曲がり、準曲がりタイプとなっている。準曲がりタイプのブレスレットや機械的に曲がるタイプのブレスレットは、型とプラテンプレスを用いて作られる。
【0005】
エラストマー材料によって作られたブレスレットであって、いくつかの層が一緒に結合及び/又は溶接されて、インサートを囲むものも考えられる。この場合に、プレスを用いてプリフォームを切って各ブレスレットストランドの形にする。そして、ブレスレットのエッジをエッジラッカーで保護して縫い合わせることができる。
【0006】
一部のブレスレットは、このようなエラストマータイプの材料と典型的な高級皮革を組み合わせて作られ、携行型時計が着用されているときの外観を変えることなく、これらのブレスレットの耐久性を向上させている。
【0007】
しかし、これらのブレスレットは、一般的には、典型的には互いに縫い合わされたり結合されたりする、異なる材料によって作られた異なる部品を含み、これらの部品が時間経過とともに外れてしまうことがある。また、これらの異なる部品の組み付けは、十分かつ/又は満足できる、パーソナライゼーション及び/又は装飾を可能にしない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、密接に結合された材料の組み合わせを特徴とし、多くのカスタマイズオプションを可能にする、機能的で快適なインサートを備えるブレスレット、及びこのようなブレスレットを製造する方法を提供することを目的とする。
【0009】
このために、本発明は、上側細長材と下側細長材を含むブレスレットに関し、前記上側細長材と前記下側細長材は、前記ブレスレットの少なくとも1つのストランドを形成し、前記ブレスレットには、前記上側細長材と前記下側細長材の間に配置されるフレキシブルな中間層があり、前記フレキシブルな中間層は、0℃~40℃の範囲内の転移温度を有する少なくとも1種類のカプセル化された相変化材料によって形成される。
【0010】
本発明の他の有利な代替的実施形態は、以下の特徴を有する。
- 前記少なくとも1種類の相変化材料は、パラフィン系炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ワックス、油、水和塩、脂肪酸、脂肪酸エステル、二塩基酸、二塩基性エステル、1-ハロゲン化物、ポリマー、及びこれらの混合物から選択される。
- 前記下側細長材には、微小孔がある。
- 前記上側細長材と前記下側細長材は、金属性及び/又はセラミックス性のフィラーを含むエラストマー複合材料によって作られて、熱交換を改善する。
- 所定の温度しきい値は、25℃~30℃の範囲内である。
- カプセル化された相変化材料の層には、固定手段を通すための穴がある。
- 前記上側細長材は、皮革、天然繊維又は合成繊維、エラストマー及びシリコーン材料からなる群から選択される1種類又は複数種類の材料によって作られる。
- 前記フレキシブルな中間層は、15℃~25℃の範囲内の転移温度を有する第1のカプセル化された相変化材料、及び26℃~35℃の範囲内の転移温度を有する第2のカプセル化された相変化材料である、2種類のカプセル化された相変化材料によって形成される。
【0011】
本発明に係るブレスレットの利点は、1つ又は複数の追加機能を提供しつつ、このようなブレスレットの伝統的な厚みを増加させることなく、伝統的な補強インサートを置き換えることができるほどインサートが十分に薄いということに基づいている。
【0012】
本発明は、さらに、独立請求項9に記載の特徴を有するブレスレットを製造する方法に関する。
【0013】
図面を参照しながら以下の説明を読むことによって、リン光性インサートを備えるブレスレットの目的、利点及び特徴が明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る中間層を備えるブレスレットを示している。
【
図2】本発明に係るブレスレットストランドの断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の態様は、ブレスレットないしリストバンド1の少なくとも1つのストランドを形成する上側細長材2と下側細長材3を備えるブレスレットないしリストバンド1に関し、各細長材には、ピン又は舌状体を通すための、対応する穴10がある。ブレスレットには、さらに、上側細長材2と下側細長材3の間に配置されるインサートがあり、このインサートは、上側細長材2と下側細長材3の間に配置されるフレキシブルな中間層4の形態である。
【0016】
用語「上側」は、外側を向いておりブレスレットが装着されているときに着用者に見えるブレスレットの部分を意味すると理解することができる。同様に、用語「下側」は、内側を向いておりブレスレットが装着されているときに着用者と接触するブレスレットの部分を意味すると理解することができる。
【0017】
有利なことに、フレキシブルな中間層4は、0℃~40℃の範囲内の転移温度を有する少なくとも1種類のカプセル化された相変化材料によって形成されて、ブレスレットが着用者の皮膚と接触しているときに熱を放出又は吸収できるようにされる。
【0018】
前記転移温度は、例えば、25℃~30℃の範囲内である。この温度に達すると、前記相変化材料は、着用者の熱を吸収し、着用者に冷感を与える。
【0019】
逆も可能である。前記転移温度は、例えば、15℃~20℃の範囲内であることができる。この温度に達すると、前記相変化材料は、着用者へと熱を放出し、着用者に熱感を与える。
【0020】
中間層4には、さらに、ピン又は舌状体を通すための上側及び下側細長材における穴に対応する穴10'がある。
【0021】
中間層4は、ブレスレットが組み付けられた後に中間層4が動かないように、上側細長材2及び下側細長材3に結合される。
【0022】
伝統的には、上側細長材2と下側細長材3は、皮革、天然繊維又は合成繊維、エラストマー、金属性及び/又はセラミックス性のフィラーを含むエラストマー複合材料、及びシリコーン材料からなる群から選択される1つ又は複数の材料によって作られる。これらの材料は、着用者が望むことに応じて組み合わせることもできる。
【0023】
本発明の一実施形態において、下側細長材3には、着用者からカプセル化された相変化材料へ、及び/又はその逆への、より良い熱伝導を可能にする微小孔30がある。
【0024】
エラストマーは、FKMファミリー(架橋性フルオロ又はパーフルオロポリアルキレン)に属するもののようなフッ素化エラストマー、又はTPU(ポリウレタン)、EVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)、シリコーン、EPR(エチレンプロピレンゴム)のような熱可塑性エラストマー、及びこれらの熱可塑性誘導体(TPO)又はアクリルエラストマーファミリーからから選択することができる。また、選択されるエラストマーには、比較的フレキシブルであって、ブレスレットが装着されているときに手首の曲がりに適応することができるという利点がある。
【0025】
中間層4は、追加の効果を発揮しつつ、このようなブレスレットの伝統的な厚みを増加させることなく、伝統的な補強インサートの代わりに置き換えることができるほど十分に薄い。
【0026】
本発明によると、前記少なくとも1種類の相変化材料は、パラフィン系炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ワックス、油、水和塩、脂肪酸、脂肪酸エステル、二塩基酸、二塩基性エステル、1-ハロゲン化物、ポリマー、及びこれらの混合物から選択される。
【0027】
前記相変化材料は、シリコーン又は熱可塑性エラストマー材料によって作られたケーシング内にカプセル化されており、中間層4を上側細長材2と下側細長材3に容易に結合することを可能にする。
【0028】
本発明の一実施形態において、フレキシブルな中間層4は、鉱物油又は植物油のような液体と、相変化材料のマイクロカプセルとを収容するポケットによって形成される。
【0029】
繰り返しになるが、本発明の特定の実施形態において、フレキシブルな中間層4は、15℃~20℃の範囲内の転移温度を有する第1のカプセル化された相変化材料と、25℃~35℃の範囲内の転移温度を有する第2のカプセル化された相変化材料である、2種類のカプセル化された相変化材料によって形成される。このような構成のおかげで、転移温度が15℃~20℃のときに着用者を加熱し、転移温度が25℃~35℃のときに着用者を冷却するように、複数の機能を組み合わせることができる。
【0030】
本発明は、さらに、このようなブレスレットを製造する方法に関し、この方法は、
- 所望のブレスレットの最終形状に対応する少なくとも1種類のカプセル化された相変化材料によって形成されるフレキシブルな中間層4を製造するステップと、
- 上側細長材2と下側細長材3を設けるステップと、
- 中間層4を下側細長材3に結合するステップと、
- 上側細長材2を下側細長材3と中間層4に剛接続させて、ブレスレットを形成するステップと
を備える。
【0031】
上側細長材2と下側細長材3は、例えば、結合、ステッチング又は溶接によって、互いに剛接続される。
【0032】
これらの特徴のおかげで、2つの細長材2、3と中間層4は互いに密接に結合し、このようにして作られたブレスレットの堅牢性が高いレベルになり耐久性が優れることを確実にする。
【0033】
また、上側細長材2上にオーバーモールドすることもできる。この場合、開口のまわりに溝又は成形物を設けて、アセンブリーの美観を向上させることができる。実際に、このような溝又は成形物のおかげで、ブレスレットの異なる部分の間の材料の移り変わりを少なくとも部分的に隠すことが可能になる。
【0034】
上記の製造方法のおかげで、フレキシブルなブレスレットの機能における多くのバリエーションを、着用者が満足するように作ることができる。
【0035】
また、これらのブレスレットは、水や汗に露出されることになっても、非常に耐久性が高い。
【符号の説明】
【0036】
1 ブレスレット
2 上側細長材
3 下側細長材
4 フレキシブルな中間層
【外国語明細書】