(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094236
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】液体殺菌剤組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 33/12 20060101AFI20240702BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20240702BHJP
C11D 1/62 20060101ALI20240702BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20240702BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240702BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240702BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20240702BHJP
A01N 63/50 20200101ALI20240702BHJP
【FI】
A01N33/12 101
C11D17/08
C11D1/62
C11D3/48
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/02
A01N63/50 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186922
(22)【出願日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2022209800
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】志摩 優太
(72)【発明者】
【氏名】季 佳慧
(72)【発明者】
【氏名】今井 康太
(72)【発明者】
【氏名】森田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】石塚 智貴
【テーマコード(参考)】
4H003
4H011
【Fターム(参考)】
4H003AC08
4H003AE05
4H003BA12
4H003EA12
4H003EA16
4H003EB07
4H003EB14
4H003EC02
4H003ED02
4H003FA34
4H011AA02
4H011AA04
4H011BA01
4H011BA06
4H011BB04
4H011BB06
4H011BB19
4H011BC03
4H011BC04
4H011BC06
4H011BC18
4H011BC19
4H011DA12
4H011DF04
4H011DG11
4H011DH03
4H011DH11
(57)【要約】
【課題】液安定性に優れ、殺菌効果に優れる液体殺菌剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)成分:特定の第4級アンモニウム塩と、(B)成分:特定の第4級アンモニウム塩と、を含有し、前記(A)成分の含有量は、液体殺菌剤組成物の総質量に対して0.05質量%超であり、前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比は、0.03~2.5であり、pH8以上である、液体殺菌剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:下記(a1)式で表される第4級アンモニウム塩と、
(B)成分:下記(b1)式で表される第4級アンモニウム塩と、を含有し、
前記(A)成分の含有量は、液体殺菌剤組成物の総質量に対して0.05質量%超であり、
前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比は、0.03~2.5であり、
pH8以上である、液体殺菌剤組成物。
【化1】
((a1)式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R
3及びR
4は、それぞれ独立して炭素数6~22の直鎖のアルキル基もしくはアルケニル基、又は炭素数6~22の分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基である。X
a-は、対イオンを表す。)
【化2】
((b1)式中、R
11~R
13は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R
14は、炭素数6~22の直鎖のアルキル基もしくはアルケニル基、又は炭素数6~22の分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基である。X
b-は、対イオンを表す。)
【請求項2】
(C)成分:アルカリ剤を含有する、請求項1に記載の液体殺菌剤組成物。
【請求項3】
液体殺菌剤組成物を水(mL)/液体殺菌剤組成物(g)で表される希釈倍率400倍とした希釈液のpHが8以上である、請求項1又は2に記載の液体殺菌剤組成物。
【請求項4】
(D)成分:タンパク質分解酵素を含有する、請求項1又は2に記載の液体殺菌剤組成物。
【請求項5】
界面活性剤((A)成分、(B)成分を除く)を含有し、液体殺菌剤組成物の総質量に対し、界面活性剤((A)成分、(B)成分を除く)の含有量が2質量%以下である、請求項1又は2に記載の液体殺菌剤組成物。
【請求項6】
有機酸を含有し、液体殺菌剤組成物の総質量に対し、有機酸の含有量が0.1質量%超20質量%以下である、請求項1又は2に記載の液体殺菌剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体殺菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生意識の高まりから、手指等のみならず、衣料等の生活用品に対して、殺菌処理、殺ウイルス処理が行われている。
殺菌処理には、殺菌剤組成物が用いられる。殺菌剤組成物としては、第4級アンモニウム塩を殺菌剤として含有する液体殺菌剤組成物が知られている。
例えば、特許文献1には、特定のアミン又は第4級アンモニウム塩と、アルカノールアミンと、を含有する液体殺菌剤組成物が提案されている。特許文献1の発明によれば、アルカリ剤の存在により、第4級アンモニウム塩の殺菌効果を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、第4級アンモニウム塩の中でも、塩化ジデシルジメチルアンモニウム(以下、「DDAC」ともいう。)は、殺菌効果の高い化合物として知られている。しかし、DDACは、グラム陰性菌に対する殺菌効果が不十分である。DDACの殺菌効果を高めるために、アルカリ剤と共存させると、DDACは析出する。DDACが析出すると、液体殺菌剤組成物が白濁し、液安定性が損なわれる。
そこで、本発明は、液安定性に優れ、殺菌効果をより高められる液体殺菌剤組成物を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の態様を有する。
<1>
(A)成分:下記(a1)式で表される第4級アンモニウム塩と、
(B)成分:下記(b1)式で表される第4級アンモニウム塩と、を含有し、
前記(A)成分の含有量は、液体殺菌剤組成物の総質量に対して0.05質量%超であり、
前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比は、0.03~2.5であり、
pH8以上である、液体殺菌剤組成物。
【化1】
((a1)式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R
3及びR
4は、それぞれ独立して炭素数6~22の直鎖のアルキル基もしくはアルケニル基、又は炭素数6~22の分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基である。X
a-は、対イオンを表す。)
【化2】
((b1)式中、R
11~R
13は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R
14は、炭素数6~22の直鎖のアルキル基もしくはアルケニル基、又は炭素数6~22の分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基である。X
b-は、対イオンを表す。)
<2>
(C)成分:アルカリ剤を含有する、<1>に記載の液体殺菌剤組成物。
<3>
液体殺菌剤組成物を水(mL)/液体殺菌剤組成物(mL)で表される希釈倍率400倍とした希釈液のpHが8以上である、<1>又は<2>に記載の液体殺菌剤組成物。
<4>
(D)成分:タンパク質分解酵素を含有する、<1>~<3>のいずれかに記載の液体殺菌剤組成物。
<5>
界面活性剤((A)成分、(B)成分を除く)を含有し、液体殺菌剤組成物の総質量に対し、界面活性剤((A)成分、(B)成分を除く)の含有量が2質量%以下である、<1>~<4>のいずれかに記載の液体殺菌剤組成物。
<6>
有機酸を含有し、液体殺菌剤組成物の総質量に対し、有機酸の含有量が0.1質量%超20質量%以下である、<1>~<5>のいずれかに記載の液体殺菌剤組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の液体殺菌剤組成物によれば、液安定性に優れ、殺菌効果をより高められる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(液体殺菌剤組成物)
本発明の液体殺菌剤組成物(以下、単に殺菌剤組成物ということがある)は、(A)~(B)成分を含有する。
【0008】
殺菌剤組成物の30℃における粘度は、1~200mPa・sが好ましく、1~100mPa・sがより好ましい。殺菌剤組成物の粘度が上記下限値以上であると、流動性を抑えて、計量作業をより容易にできる。殺菌剤組成物の粘度が上記上限値以下であると、流動性を高めて、容器等への投入を容易にできる。
殺菌剤組成物の粘度は、ブルックフィールド型粘度計(B型粘度計)にて、ローターの回転数を60rpmに設定し、60秒後の測定値である。
【0009】
殺菌剤組成物のpH(特に「組成物pH」ということがある)は、8以上12未満が好ましく、9以上12未満がより好ましく、10以上12未満がさらに好ましく、11以上12未満が特に好ましい。組成物pHが上記下限値以上であると、後述する使用方法での希釈殺菌液のpHをより高めて、殺菌効果をより高められる。組成物pHが上記上限値以下であれば、取り扱いが容易である。
組成物pHは、30℃でpHメーター(製品名:HM-30G、東亜ディーケーケー社製)により測定される値である。
【0010】
殺菌剤組成物を水で400倍に希釈して希釈液(特に「規格希釈液」ということがある)とした場合、規格希釈液のpH(特に「規格希釈液pH」ということがある)は、8以上12未満が好ましく、8以上11未満がより好ましく、9以上11未満がさらに好ましく、10以上11未満が特に好ましい。規格希釈液pHが上記下限値以上であると、殺菌効果をより高められる。規格希釈液pHが上記上限値以下であると、希釈殺菌液の取り扱いが容易である。
なお、希釈倍率は、希釈水(mL)/殺菌剤組成物(g)で表される比である。例えば、希釈倍率400倍とは、400mLの水に1gの殺菌剤組成物を溶解した状態である。
【0011】
(組成物pH)-(規格希釈液pH)で表されるpH差は、3.0以下が好ましく、
0.4超3.0以下がより好ましく、0.6~2.8がさらに好ましい。前記pH差が上記下限値以上であると、殺菌効果をより高められる。前記pH差が上記上限値以下であると、希釈殺菌液の取り扱いが容易である。
【0012】
<(A)成分>
(A)成分は、下記(a1)式で表される第4級アンモニウム塩である。殺菌剤組成物は(A)成分を含有することで、優れた殺菌効果を発揮する。
(A)成分は、芳香族炭化水素基を有しない化合物であることが好ましく、フェニル基を有しない化合物であることがより好ましい。
【0013】
【0014】
((a1)式中、R1及びR2は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R3及びR4は、それぞれ独立して炭素数6~22の直鎖のアルキル基もしくはアルケニル基、又は炭素数6~22の分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基である。Xa-は、対イオンを表す。)
【0015】
R1及びR2は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。R1及びR2の炭素数は、1~2が好ましい。炭素数が上記範囲内であると、殺菌効果がより高まる。
【0016】
R3及びR4の炭素数は、それぞれ独立して炭素数6~22が好ましく、8~20がより好ましく、10~18がさらに好ましい。炭素数が上記範囲内であると、殺菌効果がより高まる。
【0017】
Xa-は、例えば、ハロゲンイオン等が挙げられる。ハロゲンイオンとしては、塩素イオン、臭素イオン等が挙げられ、塩素イオンが好ましい。
【0018】
(A)成分としては、ジヤシ油アルキルジメチルアンモニウムクロリド(製品名「リポカード2C-75」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、塩化ジアルキル(C14-18)ジメチルアンモニウム(製品名「リポカード2HP-75」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド「リポカード210-80E」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、ビス(水素化牛脂)ジメチルアンモニウム=クロリド(製品名「リポカード 2HT-75」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)等が挙げられる。中でも、殺菌効果をより高める観点から、(A)成分としてはジデシルジメチルアンモニウムクロリドが特に好ましい。
これらの(A)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上が組み合わされて用いてもよい。
【0019】
(A)成分の含有量は、殺菌剤組成物の総質量に対して、0.05質量%超であり、0.05質量%超5質量%以下が好ましく、0.1~3質量%がより好ましく、0.15~1.5質量%がさらに好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、殺菌効果をより高められる。(A)成分の含有量が上記上限値以下であると、析出を抑制して、液安定性をより高められる。
【0020】
<(B)成分>
(B)成分は、下記(b1)式で表される第4級アンモニウム塩である。殺菌剤組成物は(B)成分を含有することで、液安定性を高め、殺菌効果を高められる。
(B)成分は、芳香族炭化水素基を有しない化合物であることが好ましく、フェニル基を有しない化合物であることがより好ましい。
【0021】
【0022】
((b1)式中、R11~R13は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R14は、炭素数6~22の直鎖のアルキル基もしくはアルケニル基、又は炭素数6~22の分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基である。Xb-は、対イオンを表す。)
【0023】
R11~R13は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。R11~R13の炭素数は、1~2が好ましい。炭素数が上記範囲内であると、水に対する(A)成分の溶解性がより高まる。
【0024】
R14の炭素数は、6~22が好ましく、8~20がより好ましく、10~16がさらに好ましい。炭素数が上記範囲内であると、水に対する(A)成分の溶解性がより高まる。
【0025】
Xb-は、例えば、ハロゲンイオン等が挙げられる。ハロゲンイオンとしては、塩素イオン、臭素イオン等が挙げられ、塩素イオンが好ましい。
Xb-は、Xa-と同じでもよいし、異なってもよい。
【0026】
(B)成分としては、塩化ヤシ油アルキルトリメチルアンモニウム(製品名「リポカード C-50」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、N,N,N-トリメチル-1-オクタデシルアンモニウムクロリド(製品名「リポカード T-28、リポカード T-800、リポカード 18-63」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、牛脂アルキルトリメチルアンモニウムクロライド(製品名「リポカード T-30、リポカード T-50」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、塩化アルキル(C14~C18)トリメチルアンモニウム(製品名「リポカード 16-50E」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(製品名「リポカード 2C-75」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(製品名「リポカード 22-80」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(製品名「リポカード 12-37W」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)が挙げられる。中でも、液安定性のさらなる向上を図る観点から、塩化ドデシルトリメチルアンモニウムが特に好ましい。
これらの(B)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上が組み合わされて用いてもよい。
【0027】
(B)成分の含有量は、殺菌剤組成物の総質量に対して、0.03~2質量%が好ましく、0.05~1.5質量%がより好ましく、0.1~1質量%がさらに好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値以上であると、(A)成分の析出をより良好に抑制して、液安定性をより高められる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であると、(B)成分の析出を抑制して、液安定性をより高められる。
【0028】
(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量であり、(A)成分/(B)成分で表される質量比(以下、「A/B比」ともいう。)は、0.03~2.56であり、0.1~2が好ましく、0.5~2がより好ましい。A/B比が上記下限値以上であると、(B)成分の析出を抑制して、液安定性をより高められる。A/B比が上記上限値以下であると、(B)成分の分離を良好に抑制して、液安定性をより高められる。
【0029】
<任意成分>
殺菌剤組成物は、(A)~(B)成分以外の任意成分を含有してもよい。但し、(A)~(B)成分及び任意成分の合計は、100質量%を超えない。
任意成分としては、水、アルカリ剤((C)成分)、タンパク質分解酵素((D)成分)、水、(A)及び(B)を除く界面活性剤(任意界面活性剤)、水溶性無機塩、有機酸又はその塩、香料、着色剤、分散剤、キレート剤、溶剤等が挙げられる。
【0030】
≪水≫
殺菌剤組成物が水を含有する場合、水の含有量は、殺菌剤組成物の総質量に対して、70~99質量%が好ましい。
【0031】
≪(C)成分≫
(C)成分はアルカリ剤である。(C)成分は、0.05%の水溶液としたときのpHが7以上の化合物であることが好ましい。(C)成分としては、炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、アルカノールアミン等が挙げられる。(C)成分としては、硫酸塩以外のアルカリ剤であることが好ましい。炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、セスキ炭酸ナトリウム等が挙げられる。水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン等が挙げられる。(C)成分としては、後述する希釈殺菌液のpHをより高められる観点から、炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物等の無機アルカリ剤が好ましい。
これらの(C)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上が組み合わされて用いてもよい。
【0032】
殺菌剤組成物が(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量は、殺菌剤組成物の総質量に対して、0.1~15質量%が好ましく、0.3~10質量%がより好ましく、0.5~8質量%がさらに好ましい。(C)成分の含有量が上記下限値以上であると、希釈殺菌液のpHを高めて、殺菌効果をより高められる。(C)成分の含有量が上記上限値以下であると、(C)成分の析出を抑制して、液安定性をより高められる。
【0033】
殺菌剤組成物が(C)成分を含有する場合、(A)成分と(B)成分との合計含有量に対する(C)成分の含有量であり、[(A)成分+(B)成分]/(C)成分で表される質量比(以下、「[A+B]/C比」ともいう。)は、5.0以下が好ましく、0.05~5.0がより好ましく、0.1~4.0がさらに好ましい。[A+B]/C比が上記下限値以上であると、(B)成分の析出を抑制して、液安定性をより高められる。[A+B]/C比が上記上限値以下であると、(B)成分の分離を良好に抑制して、液安定性をより高められる。
【0034】
≪(D)成分≫
(D)成分は、タンパク質分解酵素である。殺菌剤組成物は(D)成分を含有することで、殺菌効果をより高められる。
(D)成分としては、ノボザイムズ社から入手できる、Progress Uno(登録商標)100L、Progress Uno(登録商標)101L、Medley(登録商標)
Core210L、Savinase(登録商標)16L、Savinase Ultra 16L、Savinase Ultra 16XL、Savinase Evity 16L、Everlase(登録商標)
16L TypeEX、Everlase 16L、Everlase Ultra 16L、Esperase(登録商標)
8L、Alcalase(登録商標)
2.5L、Alcalase Ultra 2.5L、Liquanase(登録商標)
2.5L、Liquanase Ultra 2.5L、Liquanase Ultra 2.5XL、Coronase(登録商標)
48L(いずれも商品名)、ジェネンコア社から入手できるPurafect(登録商標)
L、Purafect OX、Properase L(いずれも商品名)等が挙げられる。
これらの(D)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上が組み合わされて用いてもよい。
【0035】
殺菌剤組成物が(D)成分を含有する場合、(D)成分の含有量は、殺菌剤組成物の総質量に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.1~4質量%がより好ましく、0.2~3質量%がさらに好ましい。(D)成分の含有量が上記下限値以上であると、殺菌効果をより高められる。(D)成分の含有量が上記上限値以下であると、(D)成分の析出を抑制して、液安定性をより高められる。(D)成分の含有量は、酵素製剤としての含有量である。
【0036】
≪任意界面活性剤≫
任意界面活性剤は、(A)成分及び(B)成分以外の界面活性剤である。任意界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤が挙げられる。任意界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤、アルキルフェノール、炭素数8~22の脂肪酸又は炭素数8~22のアミン等のアルキレンオキサイド付加体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、脂肪酸アルカノールアミン、脂肪酸アルカノールアミド、多価アルコール脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキサイド付加体、多価アルコール脂肪酸エーテル、アルキル(又はアルケニル)アミンオキサイド、硬化ヒマシ油のアルキレンオキサイド付加体、糖脂肪酸エステル、N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルキルグリコシド等が挙げられる。
但し、殺菌剤組成物は、任意界面活性剤を、2質量%を超える含有量で含まないことが好ましい。殺菌剤組成物におけるアニオン界面活性剤の含有量が2質量%以下であると、アニオン界面活性剤が(A)成分及び(B)成分の電荷を中和するのを防ぎ、これらの成分の機能を低下するのを防ぎやすくなる。殺菌剤組成物におけるノニオン界面活性剤の含有量が2質量%以下であると、使用時に殺菌剤組成物が泡立ちやすくなるのを防き、取り扱い性が悪化するのを防ぎやすくなる。殺菌剤組成物は、任意界面活性剤を含まないことがより好ましい。
これらの任意界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上が組み合わされて用いてもよい。
このため、殺菌剤組成物が任意界面活性剤を含有する場合、任意界面活性剤の含有量は、殺菌剤組成物の総質量に対して、0質量%超2質量%以下が好ましく、0質量%超1質量%以下がより好ましい。
【0037】
≪水溶性無機塩≫
水溶性無機塩(但し、(C)成分を除く)としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。殺菌剤組成物は水溶性無機塩を含有することで、殺菌効果をより高められる。殺菌剤組成物は水溶性無機塩を含有してもよいし、含有しなくてもよいが、含有しないことが好ましい。
これらの水溶性無機塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上が組み合わされて用いてもよい。
殺菌剤組成物が水溶性無機塩を含有する場合、水溶性無機塩の含有量としては、殺菌剤組成物の総質量に対して0.1~10質量%が好ましい。
【0038】
≪有機酸又はその塩≫
有機酸は、炭素数1~11のカルボン酸である。カルボキシ基の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。有機酸は水酸基を有していてもよい。水酸基の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。有機酸における有機基としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基、脂環式炭化水素基、又は芳香族炭化水素基が挙げられる。なかでも直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基、又は芳香族炭化水素基が好ましい。直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素基としては、炭素数1~10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又は炭素数1~10の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基が挙げられる。具体的には、有機酸又はその塩としては、乳酸、乳酸ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、マレイン酸、マレイン酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、フタル酸、フタル酸ナトリウム、フタル酸2ナトリウム、テレフタル酸、テレフタル酸2ナトリウム、L-リンゴ酸ナトリウム、マレイン酸2ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。殺菌剤組成物は有機酸又はその塩を含有してもよいし、含有しなくてもよいが、含有しないことが好ましい。
これらの有機酸又はその塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上が組み合わされて用いてもよい。
殺菌剤組成物が有機酸又はその塩を含有する場合、有機酸又はその塩の含有量としては、殺菌剤組成物の総質量に対して0.1~20質量%が好ましい。
【0039】
≪香料≫
香料としては、香料原料単体、又は、香料原料と香料用溶剤と香料安定化剤等とからなる香料組成物が挙げられる。また、香料がカプセルに内包されたカプセル香料を配合してもよい。
これらの香料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上が組み合わされて用いてもよい。
殺菌剤組成物が香料を含有する場合、香料の含有量は、殺菌剤組成物の総質量に対して0.01~5質量%が好ましい。
【0040】
≪着色剤≫
着色剤としては、キノン系色素、トリフェニルメタン系色素、アゾ系色素、キサンテン系色素、キノリン系色素、ピレン系色素等が挙げられる。本明細書において、「C.I.」は、カラーインデックスの略である。
各色素の構造は「法定色素ハンドブック」(日本化粧品工業連絡会編)、染料便覧(有機合成化学協会編)に記載されている。
キノン系色素としては、例えば、C.I.Solvent Blue 63(C.I.ソルベント ブルー 63、青色403号)、C.I.Solvent Violet 13(C.I.ソルベント バイオレット 13、紫色201号)、C.I.Acid Green 25(C.I.アシッド グリーン 25、緑色201号)、C.I.Acid Blue 112、C.I.Solvent Green 3(緑色202号)、C.I.Vat Blue 6(C.I.バット ブルー 6、青色204号)、C.I.Solvent Blue 11、C.I.Solvent Blue 12、C.I.Solvent Blue 36、C.I.Acid Violet 43(紫色401号)、C.I.Acid Blue 41、C.I.Acid Blue 62、C.I.Acid Blue 78、C.I.Direct Green 28(C.I.ダイレクト グリーン 28)、C.I.Acid Violet 34、C.I.Acid Vioret 41、C.I.Acid Vioret 51、C.I.Acid Blue 23、C.I.Acid Blue 25、C.I.Acid Blue 27、C.I.Acid Blue 40、C.I.Acid Blue 43、C.I.Acid Blue 45、C.I.Acid Blue 80、C.I.Acid Blue 126、C.I.Acid Blue 127、C.I.Acid Blue 129、C.I.Acid Blue 138、C.I.Acid Blue 143、C.I.Acid Blue 182、C.I.Acid Blue 183、C.I.Acid Blue 203、C.I.Acid Blue 204、C.I.Acid Blue 205、C.I.Acid Green 36、C.I.Acid Green 40、C.I.Acid Green 41、C.I.Acid Green 44、C.I.Acid Brown 27(C.I.アシッド ブラウン 27)、C.I.Acid Black 48(C.I.アシッド ブラック 48)、C.I.Acid Black 50、C.I.Disperse Red 9(C.I.ディスパース レッド 9)、C.I.Solvent Violet 14、C.I.Disperse Violet 1、C.I.Acid Green 27等が挙げられる。また、上記のなかでSolvent系(油溶性)色素に対して、発色団の構造の末端にポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどの水溶性高分子を化学的に修飾して水溶性を増すようにしたものでもよい。具体的には、ミリケン社製のLiquitint Blue HP、Liquitint Blue BL、Liquitint Blue MC等の商品名が挙げられる。
トリフェニルメタン系色素としては、例えば青色1号(C.I.42090)、緑色3号(C.I.42053)等が挙げられる。
アゾ系色素としては、例えば黄色4号(C.I.19140)等が挙げられる。キサンテン系色素としては、例えば赤色106号(C.I.Acid Red 52)、赤色3号(C.I.Acid Red 51)、赤色214号(C.I.Solvent Red 49)、赤色215号(C.I.Solvent Red 49)、赤色218号(C.I.Solvent Red 48)、赤色223号(C.I.Solvent Red 43)、だいだい色201号(C.I.Solvent Red 72)、だいだい色206号(C.I.Solvent Red 73)、赤色104号の(1)(C.I.Acid Red 92)、赤色105号の(1)(C.I.Acid Red 94)、赤色213号(C.I.Basic Violet 10)、赤色230号の(1)(C.I.Acid Red 87)、赤色230号の(2)(C.I.Acid Red 87)、赤色231号(C.I.Acid Red 92)、赤色232号(C.I.Acid Red 94)、だいだい色207号(C.I.Acid Red 95)、黄色201号(C.I.Acid Yellow 73)、黄色202号の(1)(C.I.Acid Yellow 73)、黄色202号の(2)(C.I.Acid Yellow 73)、赤色401号(C.I.Acid Violet 9)が挙げられる。
ここで「C.I.」とは、「カラーインデックス」の略である。キノリン系色素としては、例えば黄色203号(C.I.Acid Yellow 3)、黄色204号(C.I.Solvent Yellow 33)が挙げられる。ピレン系色素としては、例えば緑色204号(C.I.Solvent Green 7)が挙げられる。
これらの着色料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上が組み合わされて用いてもよい。
殺菌剤組成物が着色料を含有する場合、着色料の含有量は、殺菌剤組成物の総質量に対して0.1~100質量ppmが好ましい。
【0041】
≪分散剤≫
分散剤(但し、有機酸又はその塩に該当するものを除く。)としては、例えばポリアクリル酸及びその塩、ポリメタクリル酸及びその塩、高分子ポリカルボン酸またはそれらの塩等が挙げられる。
これらの分散剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上が組み合わされて用いてもよい。
殺菌剤組成物が分散剤を含有する場合、分散剤の含有量は、殺菌剤組成物の総質量に対して0.01~5質量%が好ましい。
【0042】
≪キレート剤≫
金属イオン捕捉剤(キレート剤ともいう。但し、有機酸又はその塩に該当するものを除く。)としては、例えば酢酸、アジピン酸、グリコール酸、ジグリコール酸、モノクロル酢酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の酸又はその塩のカルボン酸類;エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、トリエチレンテトラ酢酸(TTHA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、1,3-プロパン-2-ジアミン四酢酸(PDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸(HIDA)、ヒドロキシイミノジコハク酸(HIDS)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、プロピレンジアミンテトラ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、エチレングリコールジエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、シクロヘキサン-1,2-ジアミンテトラ酢酸、イミノジコハク酸、アスパラギン酸ジ酢酸、β-アラニンジ酢酸、ヒドロキシイミノジコハク酸等の酸又はその塩のアミノカルボン酸類;1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、N,N,N’,N’-テトラキス(ホスホノメチル)エチレンジアミン(EDTMP)等の酸又はその塩の有機ホスホン酸類などが挙げられる。
キレート剤の塩の形態としては、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。
これらのキレート剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上が組み合わされて用いてもよい。
殺菌剤組成物がキレート剤を含有する場合、キレート剤の含有量は、殺菌剤組成物の総質量に対して0.001~10質量%が好ましい。
【0043】
≪有機溶剤≫
殺菌剤組成物は、溶剤として水以外の有機溶剤を使用することができる。
有機溶剤としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、ベンジルアルコール等のアルカノール類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の炭素数2~3のアルキレングリコール単位を有する(ポリ)アルキレングリコールの芳香族エーテル類、が挙げられる。
これらの有機溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上が組み合わされて用いてもよい。
殺菌剤組成物が有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の含有量は、殺菌剤組成物の総質量に対して0.001~10質量%が好ましい。
【0044】
下記測定方法により測定される殺菌剤組成物の殺菌効果は、1.4以上が好ましく、1.4~10.0がより好ましく、1.8~8.0がさらに好ましく、2.0~6.0が特に好ましい。
<殺菌効果の測定方法>
大腸菌をSCD寒天培地(日本製薬株式会社製)に接種する。37℃で18~24時間培養した後、寒天表面のコロニーをかきとり、滅菌水に懸濁する。650nmの吸光度が30になるよう滅菌水で調整したものを菌液とする。試験管に10mLの殺菌剤組成物の規格希釈液(殺菌剤組成物を水で400倍に希釈したもの)を入れ、菌液を0.1mL投入後に攪拌し、10分間静置する。試験管から試料液を0.3mL取り出し、2.7mLの不活化剤(SCDLPB培地:日本製薬株式会社製)を入れた試験管に移して攪拌し、菌抽出液とする。
菌抽出液0.3mLを滅菌リン酸緩衝液2.7mLの入った試験管に加え撹拌し、さらにこの試験管から0.3mLを採り、滅菌リン酸緩衝液2.7mLが入った別の試験管に入れて混合する。このようにして得られた菌抽出液原液の希釈液2種と菌抽出液原液から1.0mLをシャーレに分注し、SCD寒天培地20mLを加え、混合する。室温放置で培地が固まった後、シャーレを倒置し37℃で24時間培養した後、コロニー数を数える。
ネガティブコントロールとして精製水を用いて比較試験液を調製する。即ち、3°DHの滅菌水1Lに対して精製水を0.5mLの割合で加えて比較試験液とし、上記菌液0.01mLと比較試験液9.99mLを混ぜて試験菌液とする。この試験菌液を用いて上記と同様の操作を行なう。
精製水を添加した比較試験液菌数と試料を添加した菌抽出液原液の希釈液での菌数の差で殺菌性を評価する。なお、殺菌効果は下記の式によって算出した値に換算する。
殺菌効果=log10(未処理布の生菌数/試験布の生菌数)
【0045】
(製造方法)
本発明の殺菌剤組成物は、従来公知の液体組成物の製造方法によって製造される。
液体組成物の製造方法は、例えば、水の一部に各成分を溶解し、これを任意のpHに調整し、水の残部を加えて全量を100質量とする方法が挙げられる。pHの調整方法は、例えば、アルカリ剤等を加える方法が挙げられる。
【0046】
(使用方法)
殺菌剤組成物の使用方法(殺菌方法)としては、例えば、殺菌剤組成物を水で希釈して希釈殺菌液とし、この希釈殺菌液を殺菌対象に接触させる方法等が挙げられる。
希釈殺菌液を殺菌対象に直接接触させる方法としては、殺菌剤組成物を洗濯機に投入し、洗濯液(洗浄剤を含む水溶液)又はすすぎ液を希釈殺菌液として、殺菌対象を洗浄又はすすぐ方法が挙げられる(洗濯時殺菌法)。
あるいは、予め希釈殺菌液を調製し、この希釈殺菌液を殺菌対象に直接接触させる方法が挙げられる(直接殺菌法)。
【0047】
洗濯時殺菌法で用いる希釈殺菌液の希釈倍率(水の体積÷殺菌剤組成物の体積)は、100~2000倍が好ましく、200~500倍がより好ましい。
また、洗濯時殺菌法で用いる希釈殺菌液中の(A)成分の含有量は、0.0001~0.05質量%が好ましく、0.0005~0.03質量%がより好ましく、0.001~0.01質量%がさらに好ましい。
洗濯時殺菌法としては、例えば、希釈殺菌液に柔軟剤を配合し、この希釈殺菌液を用いて洗浄後の衣料等をすすぐ方法が挙げられる。即ち、洗濯時殺菌法において、すすぎ工程で殺菌剤組成物を投入してもよい。この場合、衣料等の被洗物の質量に対する希釈殺菌液の質量(浴比)は10~30倍が好ましい。
【0048】
直接殺菌法で用いる希釈殺菌液の希釈倍率(水の体積÷殺菌剤組成物の体積)は、2~500倍が好ましく、20~200倍がより好ましい。
また、直接殺菌法で用いる希釈殺菌液中の(A)成分の含有量は、0.0001~2.5質量%が好ましく、0.001~1質量%がより好ましく、0.002~0.2質量%がさらに好ましい。
希釈殺菌液を殺菌対象に接触させる方法としては、希釈殺菌液に殺菌対象を浸漬する方法、殺菌対象に対して希釈殺菌液をスプレー等で吹きかける方法等が挙げられる。
希釈殺菌液を殺菌対象に接触させる時間は、例えば、5~60分間が好ましく、5~30分間がより好ましい。
【0049】
殺菌対象としては、例えば、衣料、布帛、シーツ、カーテン、絨毯等の繊維製品が挙げられる。あるいは、手指等を殺菌対象としてもよい。
【0050】
以上、本発明の殺菌剤組成物によれば、(A)成分と(B)成分とを特定の質量比で含有し、かつ特定のpHであるため、液安定性に優れ、活殺効果を高められる。このため、細胞外膜の透過障壁性により殺菌が困難であるグラム陰性菌に対しても、高い殺菌効果を発揮できる。
係る効果を発揮するメカニズムは定かではないが、アルカリ条件で粒子径を大きくして析出しやすい(A)成分が、曲率の高い(B)成分と共存することでミセルを形成することにより、(A)成分が大きな粒子径を形成して析出しやすくなるのを防ぐことができ、水に安定して溶解するためと考えられる。
【実施例0051】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0052】
(使用原料)
<(A)成分>
・A-1:塩化ジデシルジメチルアンモニウム(DDAC)、式(a1)中、R1及びR2がメチル基、R3及びR4がデシル基、Xa-が塩化物イオンである化合物。ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名「リポカード210-80E」。
・A-2:ビス(水素化牛脂)ジメチルアンモニウム=クロリド(BDAC)、式(a1)中、R1及びR2がメチル基、R3及びR4が炭素数16又は18のアルキル基、Xa-が塩化物イオンである化合物。ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名「リポカード 2HT-75」。
【0053】
<(B)成分>
・B-1:塩化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAC)、式(b1)中、R11~R13がメチル基、R14がドデシル基、Xb-が塩化物イオンである化合物。ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名「リポカード12―37W」。
・B-2:塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(HTAC)、式(b1)中、R11~R13がメチル基、R14がヘキサデシル基、Xb-が塩化物イオンである化合物。東京化成工業社製。
<(B’)成分>(B)成分の比較品
・B’-1:塩化ベンザルコニウム(BZC)、ロンザ社製。
【0054】
<(C)成分>
・C-1:炭酸ナトリウム(炭酸Na)、Dahuachem/GHCL Limited製、商品名「Soda Ash Dense」。
・C-2:モノエタノールアミン(MEA)、PETRONAS CHEMICALS DERIVATIVES SDN BHD/INEOS N.V.社製、商品名「Monoethanolamides」。
【0055】
<(D)成分>
・D-1:プロテアーゼ、ノボザイムズ社製、商品名「Progress UNO 100L」。
【0056】
<任意成分>
・E-1:硫酸ナトリウム(硫酸Na)、日本化学工業株式会社製、商品名「中性無水芒硝」。
・E-2:乳酸ナトリウム(乳酸Na)、関東化学社製、商品名「乳酸ナトリウム」。
・F-1:ノニオン界面活性剤(ノニオン)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル:炭素数が12~14の直鎖のアルキル基、7モル相当のオキシエチレン基を有する化合物。ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名「レオックスCL-70」。
【0057】
(評価方法)
<液安定性>
各例の殺菌剤組成物80mLを軽量ガラスビン(PS-No.11、田沼硝子工業所製)に入れて密栓し、評価用サンプルとした。評価用サンプルを25℃で30日間静置した(耐久試験)。耐久試験後の各例の殺菌剤組成物の状態を8人の専門パネラーが目視で観察し、下記判定基準に分類した。8人の評価点の平均点を求めた。2点以上を合格とした。
【0058】
≪判定基準≫
0点:全体に濃い白濁が生じ、透明性が失われている。
1点:全体がかなり白濁しているが、僅かに透明性がある。
2点:僅かに白濁しているが、透明性がある。
3点:白濁が発生せず、透明である。
【0059】
<殺菌効果>
大腸菌をSCD寒天培地(日本製薬株式会社製)に接種した。37℃で18~24時間培養した後、寒天表面のコロニーをかきとり、滅菌水に懸濁した。650nmの吸光度が30になるよう滅菌水で調整したものを菌液とした。試験管に10mLの各例の規格希釈液を入れ、菌液を0.1mL投入後に攪拌し、10分間静置した。試験管から試料液を0.3mL取り出し、2.7mLの不活化剤(SCDLPB培地:日本製薬株式会社製)を入れた試験管に移し撹拌して、菌抽出液とする。
菌抽出液0.3mLを滅菌リン酸緩衝液2.7mLの入った試験管に加え撹拌し、さらにこの試験管から0.3mLを採り、滅菌リン酸緩衝液2.7mLが入った別の試験管に入れて混合した。このようにして得られた菌抽出液原液の希釈液2種と菌抽出液原液から1.0mLをシャーレに分注し、SCD寒天培地20mLを加え、混合した。室温放置で培地が固まった後、シャーレを倒置し37℃で24時間培養した後、コロニー数を数えた。
ネガティブコントロールとして精製水を用いて比較試験液を調製した。即ち、3°DHの滅菌水1Lに対して精製水を0.5mLの割合で加えて比較試験液とし、上記菌液0.01mLと比較試験液9.99mLを混ぜて試験菌液とした。この試験菌液を用いて上記と同様の操作を行なった。
精製水を添加した比較試験液菌数と試料を添加した菌抽出液原液の希釈液での菌数の差で殺菌性を評価した。なお、殺菌効果は下記の式によって算出した値に換算した。
殺菌効果=log10(未処理布の生菌数/試験布の生菌数)
【0060】
(実施例1~15、比較例1~4)
表1~2に示す組成に従い、500mLのビーカーに、水の一部と(A)成分を投入し、マグネットスターラー(MITAMURA KOGYO INC.製)で十分に攪拌した。その後、(C)成分を所定量加えて同様に十分攪拌した。残りの成分を投入して攪拌した。
全体量が100質量%になるように水の残部を加えて、組成物pHを測定し、殺菌剤組成物を得た。加えて、各例の規格希釈液のpHを測定した。
各例の殺菌剤組成物について、液安定性及び殺菌効果を評価し、その結果を表中に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
表1~2に示すように、実施例1~15は、液安定性が2~3点、殺菌効果が2.0~4.4であった。
(B)成分を欠き、組成物pHが7.6である比較例1は、殺菌効果が0.7であった。(B)成分を欠く比較例2~3、A/B比が5である比較例4は、液安定性が0点であった。
以上の結果から、本発明を適用することで、液安定性に優れ、殺菌効果を高められることが確認された。