IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイスの特許一覧

特開2024-94252時計ムーブメントのヒゲゼンマイの外側最後のコイルを取り付けるための部品
<>
  • 特開-時計ムーブメントのヒゲゼンマイの外側最後のコイルを取り付けるための部品 図1A
  • 特開-時計ムーブメントのヒゲゼンマイの外側最後のコイルを取り付けるための部品 図1B
  • 特開-時計ムーブメントのヒゲゼンマイの外側最後のコイルを取り付けるための部品 図2
  • 特開-時計ムーブメントのヒゲゼンマイの外側最後のコイルを取り付けるための部品 図3
  • 特開-時計ムーブメントのヒゲゼンマイの外側最後のコイルを取り付けるための部品 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094252
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】時計ムーブメントのヒゲゼンマイの外側最後のコイルを取り付けるための部品
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/34 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
G04B17/34
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023199225
(22)【出願日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】22216824.7
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】クリスタン、 ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】クールボアジエ、 ラファエル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】接着剤を使用せずにヒゲゼンマイの外側最後のコイルを取り付けることができる取付部品を提供する。
【解決手段】時計ムーブメントのヒゲゼンマイ12の外側最後のコイル10の自由端8を取り付けるための取付部品1であって、ヒゲゼンマイ12は、コイル状に巻かれたリボンの形態をとり、互いに平行にかつ距離を置いて延在する第1の面及び第2の面によって境界を定められ、取付部品1は、ヒゲゼンマイ12の外側最後のコイル10の自由端8の固定を保証するべくこの自由端8に弾性クランプ力を加えるために自由端8と接触するように配置された弾性変形可能なクランプ手段を備え、弾性クランプ力は、少なくとも第1の接触線に沿ってヒゲゼンマイ12の第1の面に加えられ、接触面Sに沿って第2の面に加えられる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメントのヒゲゼンマイ(12)を取り付けるために配置された部品(1)であって、このヒゲゼンマイ(12)は、コイル状に巻かれ、互いから距離を置いて延在する第1の面及び第2の面によって境界を定められ、この取付部品(1)は、前記ヒゲゼンマイ(12)の固定を保証するべくこのヒゲゼンマイ(1)に弾性クランプ力を加えるために前記ヒゲゼンマイ(12)と接触するように配置された弾性変形可能なクランプ手段を備え、この弾性クランプ力は、少なくとも第1の接触線(A、B)に沿って前記ヒゲゼンマイ(12)の前記第1の面に加えられ、接触面(S)に沿って前記第2の面に加えられる、部品(1)。
【請求項2】
前記弾性クランプ力は、前記第1及び第2の接触線(A、B)に沿って前記ヒゲゼンマイ(12)の第1の面に加えられることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【請求項3】
前記クランプ手段は、互いに対向する別個の第1及び第2のクランプ手段の形態をとることを特徴とする請求項2に記載の取付部品(1)。
【請求項4】
前記第1及び第2のクランプ手段は、弾性変形可能な2つのアーム(16a、16b)の形態をとり、弾性変形可能な2つのアーム(16a、16b)の互いに対向する自由端(18a、18b)は、前記ヒゲゼンマイ(12)の外側最後のコイル(10)の自由端(8)に対して前記ヒゲゼンマイ(12)が延在する平面(X、Y)に垂直な方向(Z)に弾性クランプ力(F1)を加えるために、この自由端(8)と接触するように配置されることを特徴とする請求項3に記載の取付部品(1)。
【請求項5】
前記取付部品(1)は、前記2つのアーム(16a、16b)に対向する前記自由端(18a、18b)においてそれ自体に徐々に接近する音叉の形態をとることを特徴とする請求項4に記載の取付部品(1)。
【請求項6】
前記取付部品(1)には把持手段が設けられ、把持手段は、前記ヒゲゼンマイ(12)の外側最後のコイル(10)の自由端(8)をクランプする手段がこの自由端(8)を解放するために離れることを可能にするように配置されることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【請求項7】
前記取付部品(1)は、テンプ受け(22)に又はテンプ(26)のピボット軸受(31)の周囲に取り付けられる手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【請求項8】
前記取付部品(1)とヒゲゼンマイ(12)の外側最後のコイル(10)の自由端(8)との間の組み立ては取り外し可能であることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【請求項9】
前記取付部品(1)は、打抜き加工及び曲げ加工によって得られることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【請求項10】
前記取付部品(1)は、前記ヒゲゼンマイ(12)が作られる材料よりも硬い材料で作られることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【請求項11】
前記ヒゲゼンマイ(12)は、その第1及び第2の面が互いに平行に延在するリボンの形態をとることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【請求項12】
前記ヒゲゼンマイ(12)にはプレート(13)が設けられ、前記プレート(13)に前記クランプ手段が前記弾性クランプ力を加えて前記プレート(13)の固定を確実にすることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計ムーブメントのヒゲゼンマイ付きテンプアセンブリのヒゲゼンマイの外側最後のコイルを取り付けるための部品に関する。
【背景技術】
【0002】
時計の分野では、テンプと関連付けられたヒゲゼンマイが、一般に機械式時計のためのヒゲゼンマイ付きテンプと呼ばれる調整部材を形成する。ヒゲゼンマイは、当初は応力がかかっていないときにそれ自体の周りに同心のコイルに巻かれた非常に薄いばねと見なされる。取り付けられた状態では、内側最初のコイルと呼ばれるヒゲゼンマイの第1端は、テンプの軸に取り付けられたコレットに取り付けられ、外側最後のコイルと呼ばれるヒゲゼンマイの第2端は、テンプ受けとも呼ばれる、一般にテンプ用バー内にスタッドホルダを用いて取り付けられる部品であるスタッドに取り付けられる。
【0003】
より具体的には、振動系とも呼ばれる機械式時計のための時間基準は、ヒゲゼンマイとテンプのペアと脱進機を備える。テンプは、第1の軸受と第2の軸受の間で軸支され、径方向アームを用いてテンプの周縁に接続されたテンプ軸で構成される。ヒゲゼンマイは、その内側最初のコイルによって、例えばコレットを用いて、テンプの軸に取り付けられ、その外側最後のコイルによって、スタッドホルダによって担持されるスタッドのような固定取付点に取り付けられる。
【0004】
脱進機は、その非常に広範な実施形態において、インパルスピンを担持するテーブルローラとノッチが作られた安全ローラとで構成される二重ローラシステムを備える。脱進機はさらに、第1の軸受と第2の軸受との間で軸支されたパレット軸を有するパレットレバーを備える。パレットレバーは、フォークを入口アーム及び出口アームに接続するレバーで構成される。フォークは、入口ホーンと出口ホーンとで構成され、ダーツを担持する。フォークの移動は、パレットブリッジと一体にすることができる入口バンキングピンと出口バンキングピンによって制限される。入口アームと出口アームは、それぞれ入口パレットと出口パレットを担持する。最後に、パレットレバーは、ガンギ車とガンギカナとを備えるガンギ車セットと協働し、このアセンブリは、ガンギ車とガンギカナが第1の軸受と第2の軸受の間で軸支されることにより形成される。
【0005】
ヒゲゼンマイは、静止時に螺旋ばねの形状を採用するばねである。時計ムーブメントの平面に平行な水平面内で巻かれたヒゲゼンマイは、1つの目的のみを果たす。それは、テンプがその平衡位置(死点とも呼ばれる)を中心に、可能な限り一定の周波数で振動させることである。テンプが所定の方向に旋回してその平衡位置を離れると、ヒゲゼンマイは収縮する。これにより、テンプをその平衡位置に戻らせる復元トルクがヒゲゼンマイに発生する。このビートの間に、ヒゲゼンマイが伸びる。しかしながら、テンプがある一定の速度、つまり運動エネルギーを獲得すると、ヒゲゼンマイによってテンプにかけられる復元トルクが再びテンプを停止させ、強制的にテンプを反対方向に回転させるまで、テンプは前とは反対方向にその平衡位置を超える。
【0006】
ヒゲゼンマイはこのように交互に伸縮し、呼吸すると言われる。しかしながら、ヒゲゼンマイが伸長期及び収縮期中に等時的に発展するのを妨げることに多くの要因が関与する可能性がある。特に、ヒゲゼンマイは、コイル同士をくっつかせ、時計の精度を破壊するように作用し、ヒゲゼンマイを完全に停止させることさえある、酸化と磁気に耐えなければならない。一方、大気圧の影響は少ない。厚さにより金属が膨張し、寒さにより金属が収縮するため、長い間、温度が主な問題であった。ヒゲゼンマイはこのため、変形しても常に元の形状に戻ることができるように、弾性でなければならない。
【0007】
ヒゲゼンマイの製造に使用される材料は、通常、鋼である。延性があるため、使用されるスチールは腐食に耐える必要がある。過去20年間にわたる開発では、ヒゲゼンマイをシリコンから製造することも提案されている。シリコン製ヒゲゼンマイは、特に磁気の影響を受けないため、従来の鋼製ヒゲゼンマイよりも高い歩度の精度が可能である。しかしながら、原価が高く、壊れやすいため組み立てがより困難である。
【0008】
ヒゲゼンマイは等時性でなければならない。テンプがどこまで回転するかにかかわらず、振動するのにかかる時間は常に同じでなければならない。ヒゲゼンマイがほんの数度収縮した場合、ヒゲゼンマイはほとんどエネルギーを蓄積せず、ゆっくりとその平衡位置に戻る。ヒゲゼンマイが平衡位置から遠く離れた場合、ヒゲゼンマイは非常に速く反対方向に動く。重要なことは、この2つの過程が完了するのにかかる時間が同じであるということである。根底にある考え方は、ヒゲゼンマイが利用できるエネルギーは一定ではなく、時計が完全に巻かれていても、そのパワーリザーブの最後の時間であっても、ヒゲゼンマイは機能しなければならないということである。
【0009】
ヒゲゼンマイは寸法が小さいため、組み立てが困難である。しかしながら、ヒゲゼンマイの両端が取り付けられる方法はまた、時計ムーブメントの歩度の精度に大きな影響を与える。ほとんどの機械的な時計ムーブメントでは、ヒゲゼンマイの両端はドリルで穴を開けた部品に挿入され、ペンチを用いて手で強制的に組み立てられたピンを用いて固定される。これによりヒゲゼンマイがわずかに回転する可能性があり、これはムーブメントの歩度の精度に悪影響を及ぼす。
【0010】
もう1つの手法は、接着剤を用いてヒゲゼンマイの端を取り付けることから成る。しかしながら、この手法にも限界がある。その粘度により、接着剤は毛管現象によってヒゲゼンマイに引張力を及ぼし、ヒゲゼンマイの端部をスタッドの壁に押し付けることができることが観察されている。結果として生じるヒゲゼンマイの変形は、ヒゲゼンマイに機械的応力を誘発し、機械的応力は一定の歩度を維持するのに有害である。
【0011】
これらの問題を克服するために、出願人は既に、例えば紫外線照射によって、重合させることができる流動性のある接着剤の滴を用いてヒゲゼンマイの外側最後のコイルをスタッドに接着接合することから成る、ヒゲゼンマイを取り付ける方法を提案している。これにより、例えば注射器型の接着剤ディスペンサを用いて、接着剤の滴を付着させたときに、ヒゲゼンマイの最後のコイルの自由端が接着剤の滴の重みの影響を受けてわずかに移動し、ヒゲゼンマイに望ましくない機械的応力が誘発されたとしても、接着剤は硬化する前に十分に流動性があり、ヒゲゼンマイの最後のコイルの自由端が自然にその静止位置に戻ることを可能にする。したがって、液体接着剤の滴を付着させたときにヒゲゼンマイに誘発された機械的応力は自然に消失し、ヒゲゼンマイの歩度の一貫性は、ヒゲゼンマイ上で行われる接着接合作業の影響を受けない。
【0012】
上記の解決策はこのように、ヒゲゼンマイの組み立て中にヒゲゼンマイに通常誘発される機械的応力のすべて又は少なくとも大部分を除去しながら、ヒゲゼンマイをその外側最後のコイルの自由端によってスタッド内に取り付けることを可能にする。これにより、ヒゲゼンマイの歩度の一貫性が大幅に改善される。しかしながら、出願人は、使用中に、ヒゲゼンマイの外側最後のコイルの自由端を取り付けるために使用される液体接着剤の滴が重合されるときに形成される硬化した粘着性パッドが時としてスタッドから剥がれる傾向があることに気付いた。これにより、当然ながら、このヒゲゼンマイが組み込まれている時計ムーブメントは直ちに機能しなくなる。このような状況は、特に、粘着性パッドがスタッドに完全に接着するのを妨げるスタッドの表面状態の問題と、時間の経過による粘着性パッドの劣化が原因である。また、周囲温度が上昇すると、ほとんどの接着剤が軟化し、その結果、ヒゲゼンマイの有効長、ひいては剛性が変化し、ひいては、時計ムーブメントの速度に悪影響を及ぼす。
【0013】
最後に、特に最高級の時計ムーブメントの場合、接着剤や合成製品の使用を可能な限り避けることに留意すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、部品を提供することによって上記の欠点及び他の欠点を克服することにあり、その利点の1つは、接着剤を使用せずにヒゲゼンマイの外側最後のコイルを取り付けることができることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このために、本発明は、時計ムーブメントのヒゲゼンマイを取り付けるために配置された部品であって、このヒゲゼンマイは、コイル状に巻かれ、互いから距離を置いて延在する第1の面及び第2の面によって境界を定められ、この取付部品は、ヒゲゼンマイの固定を保証するべくヒゲゼンマイに弾性クランプ力を加えるためにヒゲゼンマイと接触するように配置された弾性変形可能なクランプ手段を備え、この弾性クランプ力は、少なくとも第1の接触線に沿ってヒゲゼンマイの第1の面に加えられ、接触面に沿って第2の面に加えられる部品に関するものである。
【0016】
本発明の特定の一実施形態によれば、弾性クランプ力は、第1及び第2の接触線に沿ってヒゲゼンマイの第1の面に加えられる。
【0017】
本発明の別の特定の実施形態によれば、クランプ手段は、互いに対向する別個の第1及び第2のクランプ手段の形態をとる。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態によれば、第1及び第2のクランプ手段は、弾性変形可能な2つのアームの形態をとり、弾性変形可能な2つのアームの互いに対向する自由端は、ヒゲゼンマイの外側最後のコイルの自由端に対してヒゲゼンマイが延在する平面に垂直な方向に弾性クランプ力を加えるために、このヒゲゼンマイの外側最後のコイルの自由端と接触するように配置される。
【0019】
本発明のさらに別の実施形態によれば、取付部品は、2つのアームに対向する自由端においてそれ自体に徐々に接近する音叉の形態をとる。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態によれば、取付部品には把持手段が設けられ、把持手段は、ヒゲゼンマイの外側最後のコイルの自由端をクランプする手段がこの自由端を解放するために離れることを可能にするように配置される。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態によれば、取付部品は、テンプ受けに又はテンプのピボット軸受の周囲に取り付けられる手段を備える。
【0022】
本発明のさらに別の実施形態によれば、部品とヒゲゼンマイの外側最後のコイルの自由端との間の組み立ては取り外し可能である。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態によれば、取付部品は、打抜き加工及び曲げ加工によって得られる。
【0024】
本発明のさらに別の実施形態によれば、取付部品は、ヒゲゼンマイが作られる材料よりも硬い材料で作られる。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態によれば、ヒゲゼンマイは、その第1の面と第2の面が互いに平行に延在するリボンの形態をとる。
【0026】
本発明のさらに別の実施形態によれば、ヒゲゼンマイにはプレートが設けられ、プレートにクランプ手段が弾性クランプ力を加えてプレートの固定を確実にする。
【0027】
これらの特徴により、本発明は、接着剤を使用せずにヒゲゼンマイの外側最後のコイルの自由端を取り付けることを有利に可能にする部品を提供する。したがって、これにより、このような組み立てに対する接着剤の使用に関連するすべての問題が回避され、関連する場合には、このような取付部品とヒゲゼンマイのアセンブリの取り外し可能な性質を保証する。また、取付部品は、特に打抜き加工及び曲げ加工によって非常に簡単に得ることができ、したがって製造コストが低い。本発明による取付部品が取り付けられたヒゲゼンマイ付きテンプアセンブリの原価は、ヒゲゼンマイ付きテンプアセンブリのテンプ受けなどのコックに又はテンプのピボット軸受の周りに取付部品を取り付ける手段が取付部品に設けられる場合にさらに低減される。この場合、本発明による取付部品がスタッド及びスタッドホルダとして同時に機能するからである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明によるヒゲゼンマイを取り付けるための部品の一実施形態に関する以下の詳細な説明を読むことにより、より明確に明らかになるであろう。この例は、例示のみの目的のために提供されており、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、添付図面を参照して与えられる。
図1A】本発明による取付部品の上面斜視図であり、この取付部品は、音叉のように配置され、ヒゲゼンマイの外側最後のコイルの自由端をクランプによって固定することを可能にする。
図1B図1Aにおいて丸で囲まれた領域のより大きな縮尺の図である。
図2図1Aにおける音叉の底面斜視図である。
図3】本発明による取付部品が取り付けられたヒゲゼンマイ付きテンプアセンブリの上面斜視図である。
図4】本発明によるヒゲゼンマイ付きテンプアセンブリの底面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、接着剤を使用せずにヒゲゼンマイの外側最後のコイルの自由端を取り付けることを可能にする部品を提供することから成る一般的発明概から得られたものである。より具体的には、本発明によれば、取付部品には従来、選択された実施形態に応じて、ヒゲゼンマイの外側最後のコイルの自由端に対してこの最後のコイルが延在する平面に垂直な方向に弾性クランプ力を加える第1及び第2のアームが設けられている。例えば、打抜き加工及び曲げ加工よって製造される場合、取付部品は、ヒゲゼンマイの外側最後のコイルの自由端に十分な弾性クランプ力を加えてその固定を保証するために、この自由端の上にアームを曲げることができるようになっている。また、ヒゲゼンマイの外側最後のコイルのブロックがアームを曲げることによって得られることを考慮すると、必要に応じて、取付部品とヒゲゼンマイによって形成される組み立ては、アームを伸ばすだけで簡単に分解できることが容易に理解できる。また、取付部品は、打抜き加工及び曲げ加工によって得られるため、安価に製造できる。また、取付部品に、それを時計ムーブメントのテンプ受けなどのコックに取り付ける手段が設けられる場合、さらに原価が低減される。後者の場合、本発明は、スタッドとスタッドホルダの両方として機能する部品を提供する。
【0030】
全体として一般符号1で示される本発明による部品は、時計ムーブメントのためのヒゲゼンマイ12の外側最後のコイル10の自由端8の取り付けを可能にすることを目的としている。図に示す例では、ヒゲゼンマイ12には、溶接などの任意の好適な手段で取り付けられるか又は外側最後のコイル10の自由端8と一体に作られるプレート13が設けられている。このために、本発明によれば、取付部品1は、このプレート13に対してヒゲゼンマイ12が延在する平面X、Yに垂直な方向Zに弾性クランプ力F1を加えるために、ヒゲゼンマイ12の外側最後のコイル10の自由端8に設けられたプレート13と接触してプレート13をクランプするように配置された弾性変形可能なクランプ手段を備える。
【0031】
クランプによってヒゲゼンマイ12の外側最後のコイル10の自由端8に設けられたプレート13のZ方向のみの固定を確実にすることによって、本発明による取付部品1を用いたヒゲゼンマイ12の取り付けが、このような取付部品1が取り付けられたヒゲゼンマイ付きテンプアセンブリ14の歩度の精度に与える悪影響は、可能な限り制限される。より具体的には、ヒゲゼンマイ12の外側最後のコイル10の自由端8に対してヒゲゼンマイ12が延在する平面X、Yに垂直な方向Zに機械的応力を加えることは、ヒゲゼンマイ12が延在する平面X、Yにおいてヒゲゼンマイ12に応力を加える場合によりも、ヒゲゼンマイ付きテンプアセンブリ14の歩度の精度に与える悪影響がかなり(10分の1程度)少ないことが知られている。
【0032】
本発明によれば、取付部品1は、ヒゲゼンマイ12の外側最後のコイル10の自由端8に設けられたプレート13を固定する別個の第1及び第2のクランプ手段を備え、これにより、特に、このプレート13が滑ったり、それ自体を中心に旋回したりするリスクが防止される。このリスクは当然、ヒゲゼンマイ付きテンプアセンブリ14の正常動作に悪影響をもたらし、このようなヒゲゼンマイ付きテンプアセンブリ14が取り付けられた時計を工場に返却することを必要とする。
【0033】
好ましいが非限定的な実施形態によれば、第1及び第2のクランプ手段は、弾性変形可能な2つのアーム16a、16bの形態をとり、2つのアーム16a、16bの互いに対向するそれぞれの自由端18a、18bは、2つの別個の接触線A、Bに沿ってヒゲゼンマイ12の外側最後のコイル10の自由端8に設けられたプレート13と接触してクランプするように配置される。好ましくは、これに限定されるものではないが、取付部品1は、2つのアーム16a、16bに対向する自由端18a、18bにおいてそれ自体に徐々に接近する音叉型クランプの形態をとり、ヒゲゼンマイ12の外側最後のコイル10の自由端8に存在するプレート13は、これら2つのアーム16a、16bの自由端18a、18bとこれら2つのアーム16a、16bを互いに接続する横材20との間にクランプされる。本発明によれば、この横材20は、接触面Sに沿ってプレート13を弾性的にクランプする。
【0034】
したがって、2つのアーム16a、16bを弾性変形によりプレート13と接触させることにより、このプレート13を取付部品1の横材20に押し付けることができ、弾性クランプ力によってプレート13を固定することができ、弾性クランプ力は、ヒゲゼンマイ12を形成するリボンの一方の側では2つの接触線A、Bに沿って作用し、ヒゲゼンマイ12を形成するリボンの他方の側では接触面Sに沿って作用する。
【0035】
取付部品1は、例えば、打抜き加工及び曲げ加工などの任意の適切な手段によって製造することができるので、その原価は非常に低い。取付部品1は、時計ムーブメントのコック22に取り付けることができる。この目的のために、本発明の好ましい実施形態によれば、取付部品1は、時計ムーブメントのテンプ26のピボット軸24の周りに取り付けられる手段を備える。このために、取付部品1は、開口部30が設けられた取付要素28によって延長されており、開口部30の内径は、テンプ受け22の肩部の外径又は当業者に知られているタイプのピボット軸受31の外径に調整される。したがって、本発明による取付部品1は、スタッド及びスタッドホルダの両方として有利に機能する。
【0036】
本発明の特別な実施形態によれば、取付部品1には、例えばホーン型32の把持手段が設けられており、把持手段は、ピンセットを用いてクランプされたときに、ヒゲゼンマイ12の外側最後のコイル10の自由端8の2つのアーム16a、16bに対向する自由端18a、18bがこの自由端8を解放するために離れることを可能にするように配置される。したがって、必要に応じて、接着剤がないこと及び取付クランプ1の弾性変形可能な性質を前提として、取付部品1とヒゲゼンマイ12とで形成された組み立てを分解することができる。
【0037】
言うまでもなく、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から離れることなく、当業者であれば様々な簡単な代替案及び修正案を考えることができる。特に、プレート13の存在は、弾性クランプによるヒゲゼンマイ12の固定に必須ではないことを理解すべきである。より具体的には、ヒゲゼンマイ12は、本発明による取付部品1を用いて、この取付部品1のアーム16a、16b及び横材20によって境界を定められた空間内でヒゲゼンマイ12の外側最後のコイル10の自由端8を直接係合させることによって固定することができる。同様に、好ましくは非限定的ではあるが、取付部品1はヒゲゼンマイ12が作られる材料よりも硬い材料で作られることに留意すべきである。この特徴により、プレート13又は直接ヒゲゼンマイ12の外側最後のコイル10の自由端8がクランプされたとき、取付部品1のアーム16a、16b及び横材20はヒゲゼンマイ1によって跡を付けられない。したがって、必要に応じて、本発明による取付部品1が取り付けられた時計の耐用期間中に、取付部品1のアーム16a、16bを伸ばすことによってヒゲゼンマイ12を取り外すために、アーム16a、16bは操作後に、ヒゲゼンマイ12の外側最後のコイル10の自由端8の上に再び曲げることができ、この自由端8の再配置は、アーム16a、16b又は横材20に刻まれ得る溝の存在によって妨げられることはない。
【符号の説明】
【0038】
1 取付部品
F1 弾性クランプ力
Z 方向
X、Y 平面
8 自由端
10 外側最後のコイル
12 ヒゲゼンマイ
13 プレート
14 ヒゲゼンマイ付きテンプアセンブリ
16a、16b アーム
18a、18b 自由端
A、B 接触点
20 横材
22 コック
24 ピボット軸
26 テンプ
28 取付要素
30 開口部
31 ピボット軸受
32 ホーン
S 接触面
図1A
図1B
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ムーブメントのヒゲゼンマイ(12)を取り付けるために配置された取付部品(1)であって、前記ヒゲゼンマイ(12)は、コイル状に巻かれ、互いから距離を置いて延在する第1の面及び第2の面によって境界を定められ、前記取付部品(1)は、前記ヒゲゼンマイ(12)の固定を保証するべく前記ヒゲゼンマイ(12)に弾性クランプ力を加えるために前記ヒゲゼンマイ(12)と接触するように配置された弾性変形可能なクランプ手段を備え、前記弾性クランプ力は、少なくとも第1の接触線(A)に沿って前記ヒゲゼンマイ(12)の前記第1の面に加えられ、接触面(S)に沿って前記第2の面に加えられる、取付部品(1)。
【請求項2】
前記弾性クランプ力は、前記第1の接触線(A)及び第2の接触線(B)に沿って前記ヒゲゼンマイ(12)の第1の面に加えられることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【請求項3】
前記クランプ手段は、互いに対向する別個の第1及び第2のクランプ手段の形態をとることを特徴とする請求項2に記載の取付部品(1)。
【請求項4】
前記第1及び第2のクランプ手段は、弾性変形可能な2つのアーム(16a、16b)の形態をとり、弾性変形可能な2つのアーム(16a、16b)の互いに対向する自由端(18a、18b)は、前記ヒゲゼンマイ(12)の外側最後のコイル(10)の自由端(8)に対して前記ヒゲゼンマイ(12)が延在する平面(X、Y)に垂直な方向(Z)に弾性クランプ力(F1)を加えるために、前記自由端(8)と接触するように配置されることを特徴とする請求項3に記載の取付部品(1)。
【請求項5】
前記取付部品(1)は、前記2つのアーム(16a、16b)に対向する前記自由端(18a、18b)においてそれ自体に徐々に接近する音叉の形態をとることを特徴とする請求項4に記載の取付部品(1)。
【請求項6】
前記取付部品(1)には把持手段が設けられ、把持手段は、前記ヒゲゼンマイ(12)の外側最後のコイル(10)の自由端(8)をクランプする手段が前記自由端(8)を解放するために離れることを可能にするように配置されることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【請求項7】
前記取付部品(1)は、テンプ受け(22)に又はテンプ(26)のピボット軸受(31)の周囲に取り付けられる手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【請求項8】
前記取付部品(1)とヒゲゼンマイ(12)の外側最後のコイル(10)の自由端(8)との間の組み立ては取り外し可能であることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【請求項9】
前記取付部品(1)は、打抜き加工及び曲げ加工によって得られることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【請求項10】
前記取付部品(1)は、前記ヒゲゼンマイ(12)が作られる材料よりも硬い材料で作られることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【請求項11】
前記ヒゲゼンマイ(12)は、その第1及び第2の面が互いに平行に延在するリボンの形態をとることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【請求項12】
前記ヒゲゼンマイ(12)にはプレート(13)が設けられ、前記プレート(13)に前記クランプ手段が前記弾性クランプ力を加えて前記プレート(13)の固定を確実にすることを特徴とする請求項1に記載の取付部品(1)。
【外国語明細書】