IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川澄化学工業株式会社の特許一覧 ▶ 住友ベークライト株式会社の特許一覧

特開2024-94264ステントグラフト及びステントグラフト留置装置
<>
  • 特開-ステントグラフト及びステントグラフト留置装置 図1
  • 特開-ステントグラフト及びステントグラフト留置装置 図2
  • 特開-ステントグラフト及びステントグラフト留置装置 図3
  • 特開-ステントグラフト及びステントグラフト留置装置 図4
  • 特開-ステントグラフト及びステントグラフト留置装置 図5
  • 特開-ステントグラフト及びステントグラフト留置装置 図6
  • 特開-ステントグラフト及びステントグラフト留置装置 図7
  • 特開-ステントグラフト及びステントグラフト留置装置 図8
  • 特開-ステントグラフト及びステントグラフト留置装置 図9
  • 特開-ステントグラフト及びステントグラフト留置装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094264
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ステントグラフト及びステントグラフト留置装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20240702BHJP
【FI】
A61F2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023205250
(22)【出願日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2022210095
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022210096
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 弘樹
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC13
4C097CC14
4C097DD09
(57)【要約】
【課題】アウターシースを細径化可能なステントグラフト及びステントグラフト留置装置を提供する。
【解決手段】ステントグラフト40は、胴部5aと、第1脚部(短脚部5c)及び第2脚部(長脚部5b)と、を備える。胴部5a、短脚部5c及び長脚部5bのそれぞれは、ワイヤ11aで構成された骨格部11と、骨格部41に接続されたグラフト部42と、を有する。骨格部11は、短脚部5cに設けられた第1骨格部41sと、長脚部5bに設けられた第2骨格部41fと、を有する。ワイヤは、第1骨格部41sを構成する第1ワイヤ11sと、第2骨格部41fを構成する第2ワイヤ11fと、を有する。短脚部5cと長脚部5bとが対向方向に重なり、長脚部5bの周面の一部を覆って短脚部5cが潰された状態となったときに、第1ワイヤ11sと第2ワイヤ11fとは、対向領域5rにおいて、重ならない位置に配設されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部と、該胴部に接続されて枝分かれしている第1脚部及び第2脚部と、を備えるステントグラフトであって、
前記胴部、前記第1脚部及び前記第2脚部のそれぞれは、
ワイヤで構成された骨格部と、前記骨格部に接続されたグラフト部と、を備え、
前記骨格部は、前記第1脚部に設けられた第1骨格部と、前記第2脚部に設けられた第2骨格部と、を有し、
前記ワイヤは、前記第1骨格部を構成する第1ワイヤと、前記第2骨格部を構成する第2ワイヤと、を有し、
前記第1脚部と前記第2脚部とが、前記第1脚部及び前記第2脚部の互いの軸心方向に垂直な方向における互いの近接側である対向方向に重なり前記第2脚部の周面の少なくとも一部を覆って前記第1脚部が潰された状態となったときに、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは、前記第1脚部と前記第2脚部とが前記対向方向に重なる対向領域において、重ならない位置に配設されていることを特徴とするステントグラフト。
【請求項2】
前記第1ワイヤは、前記第1脚部の軸心方向にジグザグに繰り返し往復して周方向に延在しており、
前記第2ワイヤは、前記第2脚部の軸心方向にジグザグに繰り返し往復して周方向に延在しており、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは、前記胴部からの位置がずれて配置されており、
前記対向領域において、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとにおける近接する部位は、同位相の位置に形成されている請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
前記第1ワイヤの少なくとも一部と前記第2ワイヤの少なくとも一部とは、前記対向領域の少なくとも一部において嵌合している請求項1又は2に記載のステントグラフト。
【請求項4】
前記第1ワイヤは、前記第1脚部の軸心方向に複数段設けられており、
前記第2ワイヤは、前記第2脚部の軸心方向に複数段設けられており、
前記対向領域において、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとにおける互いに近接する部位は、同位相でジグザグに形成されており、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは、複数段に亘ってずれた位置に配設されている請求項3に記載のステントグラフト。
【請求項5】
前記第1脚部は短脚部であり、前記第2脚部は長脚部であり、それぞれの軸心方向の長さが異なり、
前記第1ワイヤの線径は、前記第2ワイヤの少なくとも一部の線径よりも小さい請求項4に記載のステントグラフト。
【請求項6】
前記骨格部は、前記胴部に設けられた第3骨格部を更に有し、
前記ワイヤは、前記第3骨格部を構成する第3ワイヤを更に有し、
前記第2ワイヤの線径は、前記第3ワイヤの少なくとも一部の線径よりも小さい請求項5に記載のステントグラフト。
【請求項7】
前記第1ワイヤと前記グラフト部とが縫合された第1縫合部と、
前記第2ワイヤと前記グラフト部とが縫合された第2縫合部と、を更に備え、
前記第1脚部と前記第2脚部とが、前記第1脚部及び前記第2脚部の互いの軸心方向に垂直な方向における互いの近接側である対向方向に重なり前記第2脚部の周面の少なくとも一部を覆って前記第1脚部が潰された状態となったときに、
前記第1縫合部と前記第2縫合部とは、軸心方向にずれて配置されている請求項6に記載のステントグラフト。
【請求項8】
前記第1脚部と前記第2脚部の一方の脚部には、X線不透過性のマーカーが前記一方の脚部の軸心方向の少なくとも一部に周回して設けられており、
前記第1脚部と前記第2脚部の他方の脚部には、前記骨格部のワイヤ密度の高い密領域と、前記骨格部のワイヤ密度が前記密領域よりも低い疎領域とが、前記他方の脚部の軸心方向に沿ってそれぞれ設けられており、
前記マーカーは、前記疎領域に対向する位置に設けられている請求項7に記載のステントグラフト。
【請求項9】
前記疎領域は、前記ワイヤが配設されていないワイヤ非配設部である請求項8に記載のステントグラフト。
【請求項10】
前記疎領域が、前記他方の脚部の軸心方向に沿って複数設けられており、
前記他方の脚部において、前記マーカーに対向する前記疎領域の軸心方向の長さは、他の前記疎領域の軸心方向の長さよりも長い請求項9に記載のステントグラフト。
【請求項11】
前記第1脚部と前記第2脚部は、それぞれの軸心方向の長さが異なる長脚部と短脚部であり、
前記一方の脚部は、前記短脚部であり、
前記他方の脚部は、前記長脚部である請求項10に記載のステントグラフト。
【請求項12】
請求項1に記載のステントグラフトと、
前記ステントグラフトが周囲に取り付けられるインナーシースと、
前記ステントグラフトの周囲を覆う状態と、前記ステントグラフトを露出する状態と、に遷移可能に構成されたアウターシースと、を備えるステントグラフト留置装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体管内に留置されるステントグラフト及びステントグラフト留置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血管、消化器管等の体管内に留置される医療用の留置具として、ステントグラフトがある。特許文献1に記載のように、ステントグラフトには、分岐する腹部大動脈等が留置目標の場合に、二股に分岐した脚部を有する形状のものがある。このステントグラフトには、一方の脚部(同文献には、第1の分枝部と記載。)の開口端に、造影性を有する線材で構成されたマーカー(同文献には、ゲートマーカーと記載。)が設けられている。
【0003】
また、ステントグラフトは、ステントグラフト留置装置によって、ステントグラフトが取り付けられるインナーシースと、ステントグラフトを被覆可能であり、かつ露出可能に軸心方向に移動可能であるアウターシースと、を備えるものがある。
ステントグラフトは、インナーシースに一方の脚部を通され、他方の脚部を一方の脚部に押しつけて潰された状態で、アウターシースに覆われるようにして、ステントグラフト留置装置に収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-153326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
体管内に通されるインナーシース及びアウターシースについては、指向性を良好にするため、及び低侵襲性を考慮して細径化が望まれている。
特許文献1に記載のステントグラフトは、上記のように、脚部が潰された状態で、アウターシース内に収容されて、ステントグラフト留置装置に搬送される。このため、ステントグラフトからの荷重(復元力)がアウターシースに径方向外側に加わることから、ステントグラフト留置装置のアウターシースを細径化することは困難であった。
特に、一方の脚部に設けられた骨格部が他方の脚部に設けられた骨格部に重なることで、インナーシースとアウターシースとの間にあるステントグラフトの収容領域内における断面積当たりのステントグラフトの充填率が高くなったり、ステントグラフトの復元力が大きくなったりするために、上記の細径化は困難であった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、アウターシースを細径化可能なステントグラフト及びステントグラフト留置装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のステントグラフトは、胴部と、該胴部に接続されて枝分かれしている第1脚部及び第2脚部と、を備えるステントグラフトであって、前記胴部、前記第1脚部及び前記第2脚部のそれぞれは、ワイヤで構成された骨格部と、前記骨格部に接続されたグラフト部と、を備え、前記骨格部は、前記第1脚部に設けられた第1骨格部と、前記第2脚部に設けられた第2骨格部と、を有し、前記ワイヤは、前記第1骨格部を構成する第1ワイヤと、前記第2骨格部を構成する第2ワイヤと、を有し、前記第1脚部と前記第2脚部とが、前記第1脚部及び前記第2脚部の互いの軸心方向に垂直な方向における互いの近接側である対向方向に重なり前記第2脚部の周面の少なくとも一部を覆って前記第1脚部が潰された状態となったときに、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは、前記第1脚部と前記第2脚部とが前記対向方向に重なる対向領域において、重ならない位置に配設されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のステントグラフト留置装置は、前記ステントグラフトと、前記ステントグラフトが周囲に取り付けられるインナーシースと、前記ステントグラフトの周囲を覆う状態と、前記ステントグラフトを露出する状態と、に遷移可能に構成されたアウターシースと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アウターシースを細径化可能なステントグラフト及びステントグラフト留置装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は、第1実施形態に係るステントグラフト留置装置を示す分解図である。(b)は、ステントグラフト留置装置の組立状態を示す図である。
図2】長脚部と短脚部を平行に配設した状態にあるステントグラフトを示す模式図である。
図3】マーカーと骨格部との位置関係を示すステントグラフトの模式図である。
図4】長脚部と長脚部の一部に重なるように押し潰された短脚部とを示す模式図である。
図5】対向領域における、第1ワイヤと第2ワイヤとの嵌合状態を示す説明図である。
図6】骨格部とグラフト部とを縫合する縫合部を備えるステントグラフトを示す模式図である。
図7】カシメ部を有する骨格部を備えるステントグラフトを示す模式図である。
図8】第1変形例に係るステントグラフトを説明する模式図である。
図9】第2実施形態に係るステントグラフトを説明する模式図である。
図10】第3実施形態に係るステントグラフトを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るステントグラフト及びステントグラフト留置装置について、図面を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0012】
また、本実施形態で用いる図面は、本発明のステントグラフト及びステントグラフト留置装置の構成、形状、ステントグラフト及びステントグラフト留置装置を構成する各部材(各部位)の配置を例示するものであり、本発明を限定するものではない。また、図面は、ステントグラフト及びステントグラフト留置装置の長さ、幅、高さといった寸法比を必ずしも正確に表すものではない。
なお、近位側(基端側)は、施術時に術者の近くに配置される側をいい、遠位側(先端側)は、施術時に術者の遠くに配置される側をいう。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0013】
<<第1実施形態>>
<概要>
まず本発明のステントグラフト及びステントグラフト留置装置の概要について、第1実施形態に係るステントグラフト5及びステントグラフト留置装置1を例に、図1から図4を主に参照して説明する。
【0014】
図1(a)は、第1実施形態に係るステントグラフト留置装置1を示す分解図であり、図1(b)は、ステントグラフト留置装置1の組立状態を示す図である。図2は、長脚部5bと短脚部5cを平行に配設した状態にあるステントグラフト5を示す模式図、図3は、マーカー13と骨格部11との位置関係を示すステントグラフト5の模式図である。図4は、長脚部5bと長脚部5bの一部に重なるように押し潰された短脚部5cとを示す模式図である。
【0015】
なお、後述するワイヤ11f、11s、11tは、図2(並びに後述する図5及び図8)では、丸みを帯びた形状を有し、図3では、角張った形状を有するように示しているが、これらの形状は限定されず、いずれの形状であってもよい。
【0016】
図2に示すように、本実施形態に係るステントグラフト5は、胴部5aと、胴部5aに接続されて枝分かれしている2本の脚部(第1脚部(短脚部5c)及び第2脚部(長脚部5b))と、を備えるものである。
胴部5a及び2本の脚部(短脚部5c及び長脚部5b)のそれぞれは、ワイヤ11t、11f、11sで構成された骨格部11と、骨格部11に接続されたグラフト部12と、を有する。
骨格部11は、短脚部5cに設けられた第1骨格部(骨格部41s)と、長脚部5bに設けられた第2骨格部(骨格部41f)と、を有する。
ワイヤ11f、11sは、骨格部41sを構成する第1ワイヤ(ワイヤ11s)と、骨格部41fを構成する第2ワイヤ(ワイヤ11f)と、を有する。
短脚部5cと長脚部5bとが、図4に示すように、短脚部5c及び長脚部5bの互いの軸心方向に垂直な方向における互いの近接側である対向方向に重なり、長脚部5bの周面の少なくとも一部を覆って短脚部5cが潰された状態となったときに、ワイヤ11fとワイヤ11sとは、短脚部5cと長脚部5bとが対向方向に重なる対向領域5rにおいて、重ならない位置に配設されていることを特徴とする。
【0017】
「骨格部」には、軸心方向に断続的に形成されているもの(本実施形態に係るステントグラフト5を構成するZステントに設けられた骨格部11)、後述するように、図9に示す螺旋状に軸心方向に連続するもの(骨格部51)、及び図10に示すメッシュ状に形成されているもの(骨格部61)が含まれる。
【0018】
本実施形態に係る脚部は、長脚部5bと短脚部5cとの長さが異なるものによって構成されているが、このような構成に限定されない。つまり、ワイヤ11fとワイヤ11sとが対向領域5rにおいて重ならない位置に配設されていればよく、一対の脚部の長さは同じであってもよい。
【0019】
上記の「ワイヤ11sとワイヤ11fとは、短脚部5cと長脚部5bとが対向方向に重なる対向領域5rにおいて、重ならない位置に配設されている。」とは、ワイヤ11sとワイヤ11fとがインナーシース2(又はアウターシース3)の径方向(骨格部11(ワイヤ11s、11f)の厚さ方向)において重ならないことを意味する。
【0020】
なお、例えば図2においては、ワイヤ11f、ワイヤ11sの軸心方向の位置が大きくずれて配置されているが、ワイヤ11sとワイヤ11fとが重ならない位置にあればよく、ワイヤの太さ分ずれて配置されているものであってもよい。
さらには、図6に示して後述するように、ワイヤ11s、11fそれぞれとグラフト部12とを縫合する縫合部14についてもずれて配置されているとより好適である。
【0021】
また「対向領域5r」とは、上記のように短脚部5c及び長脚部5bの互いの軸心方向に垂直な方向における互いの近接側の領域であって、例えば幅2mm程度で軸心方向に平行に延在する領域である。
【0022】
例えば、ワイヤ11sとワイヤ11fとは、対向領域5rにおいて重なっていなければ、対向領域5r以外の領域において重なっていてもよい。そして、短脚部5cは、対向領域5rとは逆側まで長脚部5bを包み込むように配設されていてもよい。
【0023】
上記構成によれば、第1ワイヤ(ワイヤ11s)と第2ワイヤ(ワイヤ11f)が対向領域5rにおいて重ならない位置に配設されていることで、第1脚部(短脚部5c)及び第2脚部(長脚部5b)がアウターシース3内に収容されたときに、これらが嵩張ることを抑制できる。
【0024】
換言すると、インナーシース2とアウターシース3との間にあるステントグラフト5の収容領域のうち、第1脚部(短脚部5c)と第2脚部(長脚部5b)とが重なる部分の断面積当たりのステントグラフト5の充填率を低く抑えることができる。
また、第1ワイヤ(ワイヤ11s)と第2ワイヤ(ワイヤ11f)が対向方向において重なることによるラジアルフォース(径方向の復元力)の増大を防ぐことができ、アウターシース3にステントグラフト5を収容したときに、ステントグラフト5の装填抵抗低減に寄与することとなる。充填率低減及び装填抵抗低減により、アウターシース3の細径化が実現できる。
【0025】
特に、対向領域5rにおいて、長脚部5bと短脚部5cの対向方向である並び方向に、ワイヤ11fとワイヤ11sが重なることを防ぐことで、アウターシース3の内側から径方向外側に張り出すことになる長脚部5bと短脚部5cの並び方向の嵩張り及びラジアルフォースを小さくすることができる。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係るステントグラフト留置装置1は、ステントグラフト5と、ステントグラフト5が周囲に取り付けられるインナーシース2と、ステントグラフト5の周囲を覆う状態と、ステントグラフト5を露出する状態と、に遷移可能に構成された(インナーシース2に対して軸心方向に相対移動可能に構成された)アウターシース3と、を備える。
上記構成によれば、ステントグラフト留置装置1においても、本発明に係るステントグラフト5によって奏される効果を享受することができる。
【0027】
<全体構成>
次に、ステントグラフト留置装置1の全体構成について、図1を参照して説明する。
ステントグラフト留置装置1は、上記のように、ステントグラフト5と、ステントグラフト5が周囲に着脱可能に取り付けられるインナーシース2と、インナーシース2及びステントグラフト5の周囲を覆う状態と、ステントグラフト5を露出する状態と、に遷移可能に構成された(インナーシース2に対して軸心方向に相対移動可能に構成された)アウターシース3と、を備える。
【0028】
「ステントグラフト5の周囲を覆う状態と、ステントグラフト5を露出する状態と、に遷移可能に構成された・・・アウターシース3」とは、本実施形態においては、アウターシース3が、インナーシース2に対して軸心方向に相対移動可能に構成されていることによって、上記の2つの状態に遷移する構成となっている。
しかしながら、このような構成に限定されず、ステントグラフト5の周囲を覆っていたアウターシース3が破られたり、帯状のアウターシース3が筒状に重ねた状態で重なり部分を縫合する不図示の縫合糸が解かれたりすることによって、ステントグラフト5を露出させるように遷移する構成であってもよい。
【0029】
また、インナーシース2は、軸心方向に延在する本体部2aと、本体部2aに連続して遠位側に設けられて本体部2aよりも小径に形成された小径部2bと、小径部2bの先端に固定された先端チップ2cと、を備える。小径部2bとアウターシース3との間に、ステントグラフト5が収容される。
ステントグラフト留置装置1は、アウターシース3の基端部に設けられ、術者によって把持されてインナーシース2に対して軸心方向に相対的に摺動させて、ステントグラフト5をアウターシース3から露出させることが可能なスライダ9をさらに備える。
【0030】
[ステントグラフト]
次に、本実施形態に係るステントグラフト5について説明する。
ステントグラフト5は、上記のように、胴部5a及び2本の脚部(長脚部5b、短脚部5c)を備えてY字状に形成されており、ステントグラフト留置装置1による搬送時に、まとめて1つのアウターシース3内に収容されている。
【0031】
具体的には、後述する長脚部5b及び胴部5a内にインナーシース2が通されて、図4に示すように短脚部5cが長脚部5bに押し当てられるようにして潰された状態で、ステントグラフト5がアウターシース3内に収容されている。
【0032】
一方の脚部(短脚部5c)には、X線不透過性のマーカー13が一方の脚部(短脚部5c)の軸心方向の少なくとも一部に周回して設けられている。
他方の脚部(長脚部5b)には、骨格部11のワイヤ密度の高い密領域11rと、骨格部11のワイヤ密度が密領域11rよりも低い疎領域12rとが、当該他方の脚部(長脚部5b)の軸心方向に沿ってそれぞれ設けられている。
ところで、一方の脚部(短脚部5c)に設けられたマーカー13が他方の脚部(長脚部5b)の骨格部に重なることで、インナーシース2とアウターシース3との間にあるステントグラフト5の収容領域内における断面積当たりのステントグラフト5の充填率が高くなったり、ステントグラフト5の復元力が大きくなったりするために、アウターシース3の細径化が困難になるという課題があった。
この課題に対し、本実施形態に係るマーカー13は、疎領域12r(疎領域12r1)に対向する位置に設けられている。
【0033】
「疎領域」には、ワイヤ密度がゼロでグラフト部12のみのものの他に、ワイヤ11fが配設されているが、そのワイヤ密度が密領域と比較して相対的に低いものも含まれる。
また、「ワイヤ密度」について、「脚部(短脚部5c及び長脚部5b)の横断面に現れるワイヤ11s、11fの断面積を周回方向に集計した合計断面積」をいうものとする。
【0034】
また、「疎領域12rに対向する位置」について、外方から両脚部(長脚部5b及び短脚部5c)が近接するように両脚部に荷重をかけて、図2に示すように、両脚部を平行に向けたときに対向する位置である。つまり、「マーカー13は、疎領域12r(疎領域12r1)に対向する位置に設けられている」状態は、枝分かれする分岐部5dからマーカー13がある位置までの短脚部5cの軸心方向の長さと、分岐部5dから疎領域12rのいずれかの部位がある位置までの長脚部5bの軸心方向の長さが等しい状態である。
【0035】
密領域11r、疎領域12rに係る「領域」とは、脚部(長脚部5b)の軸心方向長さで区切られる外周面全体の領域ではなく、脚部(長脚部5b)の外周面における、マーカー13に重なる部分と、重ならない部分とで区切られる領域をいうものとする。
【0036】
本実施形態に係る脚部は、長脚部5bと短脚部5cとの長さが異なるものによって構成されているが、このような構成に限定されない。つまり、マーカー13が疎領域12rに対向する位置に設けられていればよく、一対の脚部の長さは同じであってもよい。
【0037】
上記構成によれば、マーカー13が、疎領域12rに対向する位置に設けられていることで、換言すると密領域11rに対向する位置に設けられていないことで、アウターシース3内にステントグラフト5が収容されて、図4に記載のように、2本の脚部(長脚部5b、短脚部5c)が重なるときに、マーカー13と骨格部11の密領域11rが重ならず、ステントグラフト5におけるマーカー13部分が嵩張ることを抑制できる。
【0038】
換言すると、インナーシース2とアウターシース3との間にあるステントグラフト5の収容領域のうち、マーカー13を含む部分における断面積当たりのステントグラフト5の充填率を低く抑えることができる。
また、疎領域12rのラジアルフォース(径方向の復元力)を密領域11rのラジアルフォースよりも低減することができ、アウターシース3にステントグラフト5を収容したときに、疎領域12rにマーカー13が重なることで、ステントグラフト5の装填抵抗低減に寄与することとなる。充填率低減及び装填抵抗低減により、アウターシース3の細径化が実現できる。
【0039】
図2及び図3に示すように、2本の脚部は、それぞれの軸心方向の長さが異なる長脚部5b(第2脚部)と短脚部5c(第1脚部)である。つまり、上記の「一方の脚部」は、短脚部5cであり、上記の「他方の脚部」は、長脚部5bである。
上記構成によれば、長脚部5bが他方の脚部であり、密領域11rと疎領域12rを有するものであると、短脚部5cにマーカー13が取り付けられることになり、マーカー13を目印として、短脚部5cに不図示のガイドワイヤ及び不図示のリムを挿入しやすくなるため好適である。
【0040】
上記のように、胴部5a及び2本の脚部(長脚部5b、短脚部5c)のそれぞれは、ワイヤ11t、11f、11sで構成された骨格部11と、骨格部11に接続された樹脂であるグラフト部12と、を有する。骨格部11は、例えばNi-Ti合金によって形成されている。骨格部11は、コバルト-クロム合金、チタン合金、又はステンレス鋼等の公知の金属又は金属合金によって形成されていてもよい。
また、骨格部11は、胴部5aに設けられた第3骨格部(骨格部41t)を有し、ワイヤ11tは、骨格部41tを構成する第3ワイヤ(ワイヤ11t)を有する。
本実施形態に係る骨格部11は、樹脂製のグラフト部12の外表面(ステントグラフト5の径方向外側の面)に配設されている。しかしながら、このような構成に限定されず、グラフト部12の内表面(ステントグラフト5の径方向内側の面)に配設されていてもよい。
【0041】
図2に示すように、第1ワイヤ(ワイヤ11s)は、第1脚部(短脚部5c)の軸心方向にジグザグに繰り返し往復して周方向に延在している。
第2ワイヤ(ワイヤ11f)は、第2脚部(長脚部5b)の軸心方向にジグザグに繰り返し往復して周方向に延在している。
ワイヤ11fのそれぞれとワイヤ11sのそれぞれとは、胴部5aからの位置がずれて(すなわち、胴部5aの骨格部11における末梢側の端部に対して異なる距離に)配置されている。
【0042】
特に、図4に示されるように潰される短脚部5cの複数のワイヤ11sは、図3に示すように不等間隔で、短脚部5cの軸心方向に配置されている。
具体的には、短脚部5cにおいて、胴部5aに近接して配置されたワイヤ11sと次に近接するワイヤ11sとの間隔12s2は、他の末梢側にあるワイヤ11s同士の間隔12s1よりも大きく形成されている。
【0043】
このように、ワイヤ11sの間隔12s2が大きいことで短脚部5cの根本側の剛性が低められ、短脚部5cを剛性の高い胴部5aに近接する部位に至るまで潰しやすくなる。
このため、収縮したステントグラフト5をアウターシース3内に装填する際の装填抵抗の低減に寄与し、アウターシース3からステントグラフト5を放出する際の放出抵抗の低減に寄与することとなる。
【0044】
短脚部5cと長脚部5bとが対向方向に重なる対向領域5rにおいて、ワイヤ11sとワイヤ11fとにおける近接する部位は、同位相の位置に形成されている。
【0045】
上記の「同位相」とは、周期的に繰り返されて形成されたジグザグの位置が一致する関係性をいうものとする。例えば、「同位相」の関係性の一例としては、第1脚部(短脚部5c)及び第2脚部(長脚部5b)が重なって対向する状態において、鏡面対称に形成されたものの一方が軸心方向にずれている関係性である。また、「同位相」の関係性は、対向領域5rにおける、第1ワイヤ(ワイヤ11s)と第2ワイヤ(ワイヤ11f)との少なくとも一部が同位相となっているものを含む。
【0046】
上記構成によれば、ジグザグに形成された第1ワイヤ(ワイヤ11s)と第2ワイヤ(ワイヤ11f)を重ならない位置に配設することで、これらが嵩張ること(収容領域における断面積当たりのステントグラフト5の充填率が高くなること)を抑制でき、ラジアルフォース(径方向の復元力)の増大を防ぐことができる。
【0047】
図2及び図3に示すように、第1ワイヤ(ワイヤ11s)は、第1脚部(短脚部5c)の軸心方向に複数段設けられている。
第2ワイヤ(ワイヤ11f)は、第2脚部(長脚部5b)の軸心方向に複数段設けられている。
【0048】
対向領域5rにおいて、ワイヤ11fとワイヤ11sとにおける互いに近接する部位は、同位相でジグザグに形成されている。ワイヤ11fとワイヤ11sとは、複数段に亘ってずれた位置に配設されている。
つまり、対向領域5rにおけるワイヤ11fとワイヤ11sとにおける互いに近接する部位のみが同位相でジグザグに形成されていてもよい。
【0049】
上記構成によれば、第1ワイヤ(ワイヤ11s)と第2ワイヤ(ワイヤ11f)がそれぞれ複数段設けられている場合でも、それぞれがずれて重ならずに配設されていることで嵩張りを抑制でき、ラジアルフォースの増大を防ぐことができる。
【0050】
上記のように、長脚部5bには、骨格部11のワイヤ密度の高い密領域11rと、骨格部11のワイヤ密度が密領域11rよりも低い疎領域12rとが、長脚部5bの軸心方向に沿ってそれぞれ設けられている。
【0051】
図2に示すように、本実施形態に係る疎領域12rは、ワイヤ11fが配設されていないワイヤ非配設部である。
つまり、疎領域12rとしてのワイヤ非形成部は、グラフト部12のみの領域である。
上記構成によれば、アウターシース3内にステントグラフト5を収容する際に、ワイヤ非配設部にマーカー13が重なることになるため、ステントグラフト5におけるマーカー13部分が嵩張ることを一層抑制できる。
【0052】
図2に示すように、疎領域12rは、他方の脚部(長脚部5b)の軸心方向に沿って複数設けられている。
長脚部5bにおいて、マーカー13に対向する疎領域12r1の軸心方向の長さは、他の疎領域12r2の軸心方向の長さよりも長い。換言すると、マーカー13に対向する疎領域12r1を軸心方向に区切るワイヤ11fの間隔は、他の疎領域12r2を軸心方向に区切るワイヤ11fの間隔よりも長い。
【0053】
具体的には、マーカー13に対向する疎領域12r1の軸心方向の長さは、他の疎領域12r2の少なくとも1つの軸心方向の長さよりも長い。
なお、上記の「疎領域12rは、・・・複数設けられている」とは、具体的には密領域11rが互いに離間して、疎領域12rを挟んで設けられていることを意味する。
上記構成によれば、疎領域12rが長さの長い疎領域12r1と、長さの短い疎領域12r2とにより構成されていることで、長脚部5b全体の剛性が低くなることを防ぐことができる。
【0054】
そして、マーカー13に対向する疎領域12r1は、長脚部5bに差し込まれる不図示のリムが重なる位置に配設されている。
このような構成によれば、ラジアルフォースの低い疎領域12r1に、不図示のリムが重なって配置されることで、不図示のリムから径方向外側の拡張力が疎領域12r1に加わり、ステントグラフト5を体管内壁に密着させることができる。
【0055】
また、疎領域12r1に対向するマーカー13が設けられている位置は、短脚部5cに複数設けられたワイヤ11sのうち、最も末梢側に位置するワイヤ11sにおける末梢側の端部が位置する部位である。
つまり、このように、疎領域12r1と最も末梢側に位置するワイヤ11sにおける末梢側の端部とが対向する位置にあることで、アウターシース3からステントグラフト5を放出させる際の位置決めを良好にすることができる。
具体的には、アウターシース3からステントグラフト5を放出させる際に、短脚部5cに設けられたワイヤ11sにおける末梢側の端部が露出する際に、潰れた短脚部5cがワイヤ11sの剛性により復元しようとする。このときに、短脚部5cのワイヤ11sの末梢側の端部に長脚部5bの疎領域12r1が対向していることで、この復元力を小さく抑え、復元力によってアウターシース3が振れることを抑制できる。
【0056】
短脚部5cの骨格部11を構成する第1ワイヤ(ワイヤ11s)の線径は、長脚部5bの骨格部11を構成する第2ワイヤ(ワイヤ11f)の少なくとも一部の線径よりも小さいと好適である。
例えば、本実施形態に係る長脚部5bに設けられたワイヤ11fの線径は、0.25mmであり、短脚部5cに設けられたワイヤ11sの線径は、0.20mmである。
【0057】
上記構成によれば、短脚部5cのワイヤ11sの線径が長脚部5bのワイヤ11fの線径よりも小さいことで、収容領域における断面積当たりの短脚部5cの充填率を低く抑え、且つ短脚部5cの弾性復元力(ラジアルフォース)を小さくし、ステントグラフト5のアウターシース3収容時(収縮時)の膨出を抑制できる。
つまり、アウターシース3内に長脚部5bと短脚部5cを好適に収容でき、ステントグラフト5を収容するアウターシース3の細径化に寄与することができる。
【0058】
さらに、長脚部5bのワイヤ11fの線径が短脚部5cのワイヤ11sの線径よりも大きいことで、マーカー13に対向して長さの長い疎領域12r1が設けられていても、ステントグラフト5を留置するための長脚部5bの復元力を確保することができる。
【0059】
また、長脚部5bの骨格部11を構成するワイヤ11fの線径は、胴部5aの骨格部11を構成するワイヤ11tの少なくとも一部の線径よりも小さい。
例えば、本実施形態に係る胴部5aに設けられた第3骨格部(骨格部41t)を構成するワイヤ11tの線径は、0.30mmである。
【0060】
上記構成によれば、長脚部5bのワイヤ11fの線径が胴部5aのワイヤ11tの線径よりも小さいことで、収容領域における断面積当たりの長脚部5bの充填率を低く抑え、且つ長脚部5bの弾性復元力を小さくし、長脚部5bのアウターシース3収容時(収縮時)の膨出を抑制できる。このため、アウターシース3内に長脚部5b及び短脚部5cを好適に収容でき、かつ、ステントグラフト5を留置するための胴部5aの復元力を確保することができる。
【0061】
本実施形態に係るマーカー13は、短脚部5cの位置及び収縮状態か拡張状態かを示して、短脚部5cに挿入される不図示のガイドワイヤ及び不図示のリムを挿入する際のガイドとなるものである。マーカー13は、上記のようにX線不透過材料(タングステン又は金等)で、線状に形成され、骨格部11を形成するワイヤ11sに結び付けられている。
【0062】
例えば、マーカー13は、周回方向に3分割(つまり、中心角120度の3つの円弧)で構成されている。しかしながら、この分割数は任意である。さらには、マーカー13の形状は線状のものに限定されず、ある程度太さのあるリング状のマーカーであってもよい。
また、マーカー13は、短脚部5cの開口端部に設けられていると、不図示のガイドワイヤ及び不図示のリムを開口端部に挿入する際の目印となり好適であるが、開口端部以外の例えば軸心方向中央部分に設けられていてもよい。
【0063】
次に、長脚部5bのワイヤ11fの一部、短脚部5cのワイヤ11sの一部との嵌合状態について、図5を参照して説明する。
図5は、対向領域5rにおける、第1ワイヤ(ワイヤ11s)と第2ワイヤ(ワイヤ11f)との嵌合状態を示す説明図である。
【0064】
図5に示すように、第1ワイヤ(ワイヤ11s)の少なくとも一部と第2ワイヤ(ワイヤ11f)の少なくとも一部とは、短脚部5cと長脚部5bとが対向方向に重なる対向領域5rの少なくとも一部において嵌合していてもよい。
【0065】
対向領域5rにおいて、半分に潰される第1脚部(短脚部5c)を構成する第1ワイヤ(ワイヤ11s)は短脚部5cの周方向に拡張するのに対し、第2脚部(長脚部5b)を構成する第2ワイヤ(ワイヤ11f)は、長脚部5bの周方向に収縮する状態になることがある。この場合には、ワイヤ11fの一部は、ワイヤ11sの一部に嵌合(ステントグラフト5の周方向に挟持されている)していると好適である。
【0066】
ここで、上記の「嵌合」について具体的には、インナーシース2(又はアウターシース3)の周方向又は軸心方向の接触による嵌合を意味する。
上記構成によれば、ワイヤ11sとワイヤ11fが嵌合していることで、アウターシース3の径方向に、互いにずれることが抑制され、嵩張ることを抑制できる。
【0067】
例えば、本実施形態においては、ワイヤ11fの3つの凸部に跨ってワイヤ11sの1つの凹部が嵌合し、ワイヤ11sの1つの凸部がワイヤ11fの1つの凹部に嵌合している。
しかしながら、このような構成に限定されず、ワイヤ11sの1つの凹部が跨るワイヤ11fの凸部の数は任意に設定可能であり、ワイヤ11fの複数の凸部にワイヤ11sの凹部が嵌合していればよい。
【0068】
つまり、ワイヤ11fの奇数個の凸部にワイヤ11sの凹部が嵌合していることで、ワイヤ11fの奇数個の凸部の中央部分で、ワイヤ11sの凹部と同位相となっている。しかしながらワイヤ11fはワイヤ11sと同位相の位置に形成されているものに限定されず、例えば、ワイヤ11fの偶数個の凸部にワイヤ11sの凹部が嵌合して、偶数個の凸部の中央部分で、ワイヤ11fとワイヤ11sとが逆位相となっていてもよい。
【0069】
[縫合部]
長脚部5bに設けられたワイヤ11fと短脚部5cに設けられたワイヤ11sとが、短脚部5cと長脚部5bとが対向方向に重なる対向領域5rにおいて、重ならない位置に配設されていることを、図3を参照して説明した。
このように、ワイヤ11fとワイヤ11sとが重ならない位置に配置されていることに加え、ワイヤ11fとグラフト部12とを縫合する縫合部14rと、ワイヤ11sとグラフト部12とを縫合する縫合部14sと、が重ならない位置に配設されている。
【0070】
次に、このことについて、図6を主に参照して説明する。
図6は、縫合された骨格部11とグラフト部12とを縫合する縫合部14を備えるステントグラフト5を示す模式図である。
なお、図6に示す縫合部14(縫合部14r、14s)については、他の図の多くにおいて図示を省略している。
【0071】
本実施形態に係るステントグラフト5は、第1ワイヤ(ワイヤ11s)とグラフト部12とが縫合された第1縫合部(縫合部14s)と、第2ワイヤ(ワイヤ11f)とグラフト部12とが縫合された第2縫合部(縫合部14r)と、を備える。
第1脚部(短脚部5c)と第2脚部(長脚部5b)とが、短脚部5c及び長脚部5bの互いの軸心方向に垂直な方向における互いの近接側である対向方向に重なり長脚部5bの周面の少なくとも一部を覆って短脚部5cが潰された状態となったときに、縫合部14sと縫合部14rとは、軸心方向にずれて配置されている。
【0072】
縫合部14rは、ワイヤ11fのうち、図6の上側にあり湾曲した部位を縫合する山部14r1と、直線的に延在する部位を縫合する中間部14r2と、図6の下側にあり湾曲した部位を縫合する谷部14r3と、によって構成されている。
同様に、縫合部14sは、ワイヤ11sのうち、図6の上側にあり湾曲した部位を縫合する山部14s1と、直線的に延在する部位を縫合する中間部14s2と、図6の下側にあり湾曲した部位を縫合する谷部14s3と、によって構成されている。
【0073】
本実施形態において、山部14r1、14s1及び谷部14r3、14s3は、ワイヤ11f、11sとグラフト部12に縫合糸が3周通されて構成されており、中間部14r2、14s2は、ワイヤ11f、11sとグラフト部12に縫合糸が1周通されて構成されている。
【0074】
そして、図4に示すように短脚部5cが長脚部5bに押し当てられるようにして潰された状態において、同一軸心方向に位置することとなる長脚部5bに設けられた山部14r1と短脚部5cに設けられた山部14s1とは重ならない位置に配置されている。
なお、このように同一軸心方向に位置することとなる、山部14r1の一部と山部14s1の一部とを図6において破線の円で囲んで示している。
【0075】
同様に、この状態において同一軸心方向に位置することとなる長脚部5bに設けられた中間部14r2と短脚部5cに設けられ中間部14s2とは重ならない位置に配置されている。
なお、このように同一軸心方向に位置することとなる、中間部14r2の一部と中間部14s2の一部とを図6において破線の円で囲んで示している。
【0076】
同様に、この状態において同一軸心方向に位置することとなる長脚部5bに設けられた谷部14r3と短脚部5cに設けられた谷部14s3とは重ならない位置に配置されている。
なお、このように同一軸心方向に位置することとなる、谷部14r3の一部と谷部14s3の一部とを図6において破線の円で囲んで示している。
【0077】
このように、縫合部14rと縫合部14sも軸方向に重ならないように配設されていることで、長脚部5bに短脚部5cを重ねた状態で、ステントグラフト5を収縮しやすくなる。このため、収縮したステントグラフト5をアウターシース3内に装填する際の装填抵抗の低減に寄与し、アウターシース3からステントグラフト5を放出する際の放出抵抗の低減に寄与することとなる。
【0078】
なお、縫合部14を構成する縫合糸を通す回数について、つまりグラフト部12から露出する縫合糸の本数については、任意に設定可能であることはいうまでもない。
【0079】
[カシメ部]
次に、カシメ部15を有するステントグラフト5について、図7を主に参照して説明する。図7は、カシメ部15を有する骨格部11を備えるステントグラフト5を示す模式図である。
なお、図7に示すカシメ部15(カシメ部15r、15s、15t)については、他の図において図示を省略している。
【0080】
カシメ部15は、ワイヤ11f、11s、11tそれぞれの両端部を短筒に挿し込んで、短筒をカシメることで、それぞれの両端部を接合して、環状に連続するように形成するものである。
カシメ部15は、長脚部5bのワイヤ11fに設けられたカシメ部15rと、短脚部5cのワイヤ11sに設けられたカシメ部15sと、胴部5aのワイヤ11tに設けられたカシメ部15tと、で構成されている。
【0081】
カシメ部15(15r、15s、15t)は、長脚部5b、短脚部5c及び胴部5aのそれぞれにおいて、それぞれの軸心方向上に複数配設されている。
このように、長脚部5b、短脚部5c及び胴部5aのそれぞれの軸心方向上に配設されていることによって、各部位に設けられた複数のワイヤ11f、11s、11tにカシメが適切に施されているかの検査を容易に行うことができる。
【0082】
特に、短脚部5cに設けられた複数のカシメ部15sは、アウターシース3内にステントグラフト5が収容されたとき(図4に記載のように、2本の脚部(長脚部5b、短脚部5c)が重なる状態のとき)に、長脚部5bに当接して、アウターシース3側に露出しないこととなる。
このような構成によれば、アウターシース3からステントグラフト5が放出される際に、拡張する短脚部5cのカシメ部15sがアウターシース3に接触せず、カシメ部15sによって放出抵抗が増大することがないため好適である。
【0083】
また、本実施形態において、長脚部5bに設けられた複数のカシメ部15rは、図4に記載のように、2本の脚部が重なる状態のときに、短脚部5cに覆われる位置に設けられていない。しかしながら、この状態のときに、カシメ部15rが短脚部5cに覆われる位置に設けられている構成であってもよい。この構成によれば、アウターシース3からステントグラフト5が放出される際に、カシメ部15rもアウターシース3に接触しないこととなり、カシメ部15rによって放出抵抗が増大することがないため好適である。
【0084】
そして、上記においては、ワイヤ11f、ワイヤ11sの軸心方向の位置がワイヤの太さ分ずれて配置されていればよいと述べた。しかしながら、カシメ部15r、15sが骨格部11に設けられている場合には、カシメ部15r、15s同士、カシメ部15rとワイヤ11s、及びカシメ部15sとワイヤ11fが重ならない位置(周方向又は軸心方向にずれた位置)にあるとより好適である。
【0085】
なお、本実施形態においては、胴部5aに設けられたワイヤ11tは、図7における上側の3つと下側の3つで形状が異なるが、同じ形状であってもよい。ワイヤ11tが同じ形状であり、同じ周回位置に山同士、谷同士が位置するものとすれば、同一軸心方向に配置されるカシメ部15tの向きも同じ向きとなる。
【0086】
また、カシメ部15によってワイヤ11f、11s、11tそれぞれの両端部が接続されて、ワイヤ11f、11s、11tが環状に連続するように形成されている構成について説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。
例えば、ワイヤ11f、11s、11tのそれぞれは、パイプからレーザーによって、環状に連続するように切り出されるものであってもよく、ワイヤ11f、11s、11tのそれぞれは、溶接等によってその両端部が接合されるものであってもよい。
【0087】
<第1変形例>
次に、Zステントによって構成されるステントグラフト5の変形例に係るステントグラフト70について、図8を主に参照して説明する。図8は、第1変形例に係るステントグラフト70を説明する模式図である。
本例に係るステントグラフト70の長脚部5bにおける骨格部11は、ワイヤ11aとワイヤ11aと異なる位相で配設されたワイヤ11bとを備える。
【0088】
具体的には、ワイヤ11a、11bは、長脚部5bの軸心方向にジグザグに繰り返し往復して周方向に延在しており、軸心方向に断続的に複数設けられている。
長脚部5bの周回方向の同じ位置において、ワイヤ11a、11bは、山と谷が異なる位置となるように、異なる位相(逆位相)で配設されている。
このため、ワイヤ11aとワイヤ11bとの境界を含む領域は、ワイヤ密度の低い疎領域72rを形成することとなり、ワイヤ11aが連続する領域は、ワイヤ密度の高い密領域71rを形成することとなる。
そして、マーカー13は、ワイヤ11aとワイヤ11bとの境界を含む領域である疎領域72rに対向する位置に配設されている。
【0089】
このような構成においても、マーカー13が疎領域72rに対向する位置に設けられていることで、アウターシース3内にステントグラフト60が収容されて、図3に記載のように、2本の長脚部5b、短脚部5cが重なるときに、マーカー13と骨格部11の密領域71rが重ならず、ステントグラフト50におけるマーカー13部分が嵩張ることを抑制できる。
【0090】
<<第2実施形態>>
上記実施形態に係るステントグラフト5における骨格部11は、軸心方向に断続的に形成されているものを例に説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。
次に、他の例に係るステントグラフト50について、主に図9を参照して説明する。図9は、第2実施形態に係るステントグラフト50を説明する模式図である。
【0091】
本実施形態に係るステントグラフト50の骨格部51は、長脚部5b及び短脚部5cのそれぞれに設けられ、それぞれの軸心方向に延在する螺旋状のワイヤ51f、51sによって構成されている。ワイヤ51f、51sは、対向領域5rにおいてずれた位置で配置されており、互いに重ならない。
本例における密領域51rは、対向領域5rにおいて、ワイヤ51fが配設された螺旋状の領域をいい、疎領域52rは、対向領域5rにおいて、ワイヤ51fが配設されていない樹脂のみのグラフト部52の領域をいう。
【0092】
本例において、マーカー13は、疎領域52rに対向する位置に設けられている。
より具体的には、図4に示すように、短脚部5cが押し潰されて、アウターシース3内にステントグラフト50が収容されている状態において、マーカー13が疎領域52rに対向する位置に設けられている。
【0093】
このような構成においても、マーカー13が疎領域52rに対向する位置に設けられていることで、アウターシース3内にステントグラフト50が収容されて、図4に示されているように、2本の脚部(長脚部5b、短脚部5c)が重なるときに、マーカー13と骨格部51の密領域51rが重ならず、ステントグラフト50におけるマーカー13部分が嵩張ることを抑制できる。
【0094】
例えば、マーカー13に対向する疎領域52rを画定するワイヤ51fのピッチを他の部位よりも長くして、マーカー13に対向する疎領域52rを軸心方向に長く形成するようにしてもよい。ワイヤ51fのピッチを他の部位よりも長くすることは、換言すると、長脚部5bの軸心方向に対するワイヤ51fが成す角度である螺旋角を小さくすることである。
【0095】
このようにすれば、短脚部5cが長脚部5bに押し潰されている状態において、マーカー13がワイヤ51f(密領域51r)に重なることをより好適に防ぐことができる。
さらには、ワイヤ51fを断続的に形成して、マーカー13に対向する部分にワイヤ51fを配設しないようにしてもよい。
【0096】
<<第3実施形態>>
上記の図2及び図3に示す実施形態において、ステントグラフト5における骨格部11は、Zステントによって構成されるもの、図9に示す第2実施形態おいて、螺旋状のワイヤ51f、51sによって構成されるものについて説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。
次に、第3実施形態に係るステントグラフト60について、図10を主に参照して説明する。図10は、第3実施形態に係るステントグラフト60を説明する模式図である。
【0097】
本例に係るステントグラフト60の骨格部61は、長脚部5b及び短脚部5cのそれぞれに、複数の格子状のワイヤ61f、61sを備える。
長脚部5bには、骨格部61のワイヤ密度の高い密領域61rとしての格子61gで形成された領域と、ワイヤ密度が密領域61rよりも低い(ワイヤ61fが配設されていない)疎領域62rとしてのグラフト部62で形成された領域とが、軸心方向に交互に設けられている。
【0098】
同様に、短脚部5cには、骨格部61のワイヤ密度の高い密領域61rとしての格子61gで形成された領域と、ワイヤ密度が密領域61rよりも低い(ワイヤ61sが配設されていない)疎領域62rとしてのグラフト部62で形成された領域とが、軸心方向に交互に設けられている。
本実施形態においても、長脚部5bの骨格部61(ワイヤ61f)と短脚部5cの骨格部61(ワイヤ61s)とは、重ならない位置に配設されている。
【0099】
また、疎領域62rとしては、ワイヤ61fが全く形成されていないグラフト部62のみの領域に限定されず、ワイヤ61fが配設されているが、密領域61rよりもワイヤ密度が低いもの(格子61gの開口部分に形成されたグラフト部62の割合が高いもの)であってもよい。このようにして、開口の大きさが異なる格子61gを用いて、密領域61r、疎領域62rを形成することができる。
【0100】
このような構成においても、マーカー13が疎領域62rに対向する位置に設けられていることで、アウターシース3内にステントグラフト60が収容されて、図4に示されているように、短脚部5cと長脚部5bとが重なるときに、短脚部5cに設けられたマーカー13と長脚部5bに設けられた骨格部61の密領域61rが重ならず、ステントグラフト50におけるマーカー13部分が嵩張ることを抑制できる。
【0101】
また、自然状態において均等な開口を有する格子61gにおいて、長脚部5bの周回方向において、マーカー13に対向する領域にある格子61gを押し広げ、格子61gの開口を大きくして疎領域62rを形成し、長脚部5bにおいて、マーカー13から離間する部分に開口の細かい格子61gを偏らせる(密領域61rを形成する)ようにしてもよい。
【0102】
なお、本発明のステントグラフト及びステントグラフト留置装置に係る各種構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0103】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)
胴部と、該胴部に接続されて枝分かれしている第1脚部及び第2脚部と、を備えるステントグラフトであって、
前記胴部、前記第1脚部及び前記第2脚部のそれぞれは、
ワイヤで構成された骨格部と、前記骨格部に接続されたグラフト部と、を備え、
前記骨格部は、前記第1脚部に設けられた第1骨格部と、前記第2脚部に設けられた第2骨格部と、を有し、
前記ワイヤは、前記第1骨格部を構成する第1ワイヤと、前記第2骨格部を構成する第2ワイヤと、を有し、
前記第1脚部と前記第2脚部とが、前記第1脚部及び前記第2脚部の互いの軸心方向に垂直な方向における互いの近接側である対向方向に重なり前記第2脚部の周面の少なくとも一部を覆って前記第1脚部が潰された状態となったときに、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは、前記第1脚部と前記第2脚部とが前記対向方向に重なる対向領域において、重ならない位置に配設されていることを特徴とするステントグラフト。
(2)
前記第1ワイヤは、前記第1脚部の軸心方向にジグザグに繰り返し往復して周方向に延在しており、
前記第2ワイヤは、前記第2脚部の軸心方向にジグザグに繰り返し往復して周方向に延在しており、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは、前記胴部からの位置がずれて配置されており、
前記対向領域において、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとにおける近接する部位は、同位相の位置に形成されている(1)に記載のステントグラフト。
(3)
前記第1ワイヤの少なくとも一部と前記第2ワイヤの少なくとも一部とは、前記対向領域の少なくとも一部において嵌合している(1)又は(2)に記載のステントグラフト。
(4)
前記第1ワイヤは、前記第1脚部の軸心方向に複数段設けられており、
前記第2ワイヤは、前記第2脚部の軸心方向に複数段設けられており、
前記対向領域において、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとにおける互いに近接する部位は、同位相でジグザグに形成されており、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは、複数段に亘ってずれた位置に配設されている(2)又は(3)に記載のステントグラフト。
(5)
前記第1脚部は短脚部であり、前記第2脚部は長脚部であり、それぞれの軸心方向の長さが異なり、
前記第1ワイヤの線径は、前記第2ワイヤの少なくとも一部の線径よりも小さい(1)から(4)のいずれか一項に記載のステントグラフト。
(6)
前記骨格部は、前記胴部に設けられた第3骨格部を更に有し、
前記ワイヤは、前記第3骨格部を構成する第3ワイヤを更に有し、
前記第2ワイヤの線径は、前記第3ワイヤの少なくとも一部の線径よりも小さい(1)から(5)のいずれか一項に記載のステントグラフト。
(7)
前記第1ワイヤと前記グラフト部とが縫合された第1縫合部と、
前記第2ワイヤと前記グラフト部とが縫合された第2縫合部と、を更に備え、
前記第1脚部と前記第2脚部とが、前記第1脚部及び前記第2脚部の互いの軸心方向に垂直な方向における互いの近接側である対向方向に重なり前記第2脚部の周面の少なくとも一部を覆って前記第1脚部が潰された状態となったときに、
前記第1縫合部と前記第2縫合部とは、軸心方向にずれて配置されている(1)から(6)のいずれか一項に記載のステントグラフト。
(8)
胴部と、該胴部に接続されて枝分かれしている2本の脚部と、を備えるステントグラフトであって、
前記胴部及び2本の前記脚部のそれぞれは、
ワイヤで構成された骨格部と、前記骨格部に接続されたグラフト部と、を有し、
一方の前記脚部には、X線不透過性のマーカーが前記一方の脚部の軸心方向の少なくとも一部に周回して設けられており、
他方の前記脚部には、前記骨格部のワイヤ密度の高い密領域と、前記骨格部のワイヤ密度が前記密領域よりも低い疎領域とが、前記他方の脚部の軸心方向に沿ってそれぞれ設けられており、
前記マーカーは、前記疎領域に対向する位置に設けられていることを特徴とするステントグラフト。
(9)
前記疎領域は、前記ワイヤが配設されていないワイヤ非配設部である(8)に記載のステントグラフト。
(10)
前記疎領域が、前記他方の脚部の軸心方向に沿って複数設けられており、
前記他方の脚部において、前記マーカーに対向する前記疎領域の軸心方向の長さは、他の前記疎領域の軸心方向の長さよりも長い(8)又は(9)に記載のステントグラフト。
(11)
前記2本の脚部は、それぞれの軸心方向の長さが異なる長脚部と短脚部であり、
前記一方の脚部は、前記短脚部であり、
前記他方の脚部は、前記長脚部である(8)から(10)のいずれか一項に記載のステントグラフト。
(12)
前記短脚部の前記骨格部を構成する前記ワイヤの線径は、前記長脚部の前記骨格部を構成する前記ワイヤの少なくとも一部の線径よりも小さい(11)に記載のステントグラフト。
(13)
前記長脚部の前記骨格部を構成する前記ワイヤの線径は、前記胴部の前記骨格部を構成する前記ワイヤの少なくとも一部の線径よりも小さい(12)に記載のステントグラフト。
(14)
(1)から(13)のいずれか一項に記載のステントグラフトと、
前記ステントグラフトが周囲に取り付けられるインナーシースと、
前記ステントグラフトの周囲を覆う状態と、前記ステントグラフトを露出する状態と、に遷移可能に構成されたアウターシースと、を備えるステントグラフト留置装置。
【符号の説明】
【0104】
1 ステントグラフト留置装置
2 インナーシース
2a 本体部
2b 小径部
2c 先端チップ
3 アウターシース
5 ステントグラフト
5a 胴部
5b 長脚部(脚部、第2脚部)
5c 短脚部(脚部、第1脚部)
5d 分岐部
5r 対向領域
9 スライダ
11 骨格部
11a、11b、11f ワイヤ(第2ワイヤ)
11r 密領域
11s ワイヤ(第1ワイヤ)
11t ワイヤ(第3ワイヤ)
12 グラフト部
12r、12r1、12r2 疎領域(ワイヤ非配設部)
12s1、12s2 間隔
13 マーカー
14、 縫合部
14r 縫合部(第2縫合部)
14s 縫合部(第1縫合部)
14r1、14s1 山部
14r2、14s2 中間部
14r3、14s3 谷部
15、15r、15s、15t カシメ部
41f 骨格部(第2骨格部)
41s 骨格部(第1骨格部)
41t 骨格部(第3骨格部)
50 ステントグラフト
51 骨格部
51f ワイヤ(第1ワイヤ)
51r 密領域
51s ワイヤ(第2ワイヤ)
52 グラフト部
52r 疎領域(ワイヤ非配設部)
60 ステントグラフト
61 骨格部
61f ワイヤ(第1ワイヤ)
61g 格子
61r 密領域
61s ワイヤ(第2ワイヤ)
62 グラフト部
62r 疎領域(ワイヤ非配設部)
70 ステントグラフト
71r 密領域
72r 疎領域(ワイヤ非配設部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10