(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094270
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】モノホスファイトの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07F 9/145 20060101AFI20240702BHJP
C07D 257/04 20060101ALI20240702BHJP
C07F 9/6524 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C07F9/145
C07D257/04 A CSP
C07F9/6524
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023208243
(22)【出願日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】22216771.0
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523448406
【氏名又は名称】エボニック オクセノ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンナ キアラ サレ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート フランケ
(72)【発明者】
【氏名】ディルク フリダグ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ククミールクザイク
(72)【発明者】
【氏名】アナ マルコビク
(72)【発明者】
【氏名】アルミン ボーナー
(72)【発明者】
【氏名】ジェンス ホルズ
(72)【発明者】
【氏名】カースティン ロメイケ
(72)【発明者】
【氏名】ガドラン ウェンゼル
【テーマコード(参考)】
4H050
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AA02
4H050AB84
4H050BB21
4H050WA17
4H050WA23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】合成後のモノホスファイトの手間のかかる精製が省略される、モノホスファイトの調製方法、及びその調製に使用される化合物を提供する。
【解決手段】例えば、テトラゾール(1)と化合物(2)を反応させ、次いでフェノール化合物(4)を反応させる、モノホスファイト(5)の調製方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの炭素原子が窒素原子で置換された5員環である化合物Yを最初に充填する工程と、
(b)P(NX
2)
3(式中、Xは-(C
1-C
6)-アルキルである。)を加える工程と、
(c)式(I):
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3は、-H、-(C
1-C
12)-アルキル、-O-(C
1-C
12)-アルキル、-(C
6-C
10)-アリール、-CN、-NO
2から選択される。)
による化合物を加える工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記5員環(Y)は、少なくとも1つの二重結合を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記5員環(Y)は、2つの二重結合を有する、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記5員環(Y)は、少なくとも1つのN-H結合を有する、請求項1~請求項3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記5員環(Y)は、少なくとも2つの窒素原子を有する、請求項1~請求項4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記5員環(Y)は、少なくとも3つの窒素原子を有する、請求項1~請求項5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記5員環(Y)は、4つの窒素原子を有する、請求項1~請求項6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
Yは、以下:
【化2】
の化合物である、請求項1~請求項7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
Xは、-(C1-C2)-アルキルである、請求項1~請求項8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
Xは、-CH3である、請求項1~請求項9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
R1、R2、R3は、-H、-(C1-C12)-アルキル、-O-(C1-C12)-アルキル、-(C6-C10)-アリールから選択される、請求項1~請求項10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
R1、R2、R3は、-H、-(C1-C12)-アルキル、-O-(C1-C12)-アルキルから選択される、請求項1~請求項6のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
溶媒を加える追加工程(d)を含む、請求項1~請求項12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
溶媒は、アセトニトリル(ACN)、トルエン、キシレン、THF、ヘプタンから選択される請求項13記載の方法。
【請求項15】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノホスファイトの調製方法と、その調製に使用される化合物とに関する。
【背景技術】
【0002】
モノホスファイトは、古典的には、Cl含有化合物を使用するか、またはCl含有中間体を経由して調製される。
【0003】
国際公開第2015/176929号パンフレットに記載されているように、合成による塩素残基が有機リン化合物中に残存していると、有機リン化合物を使用する際に問題が生じる。例えば、原子炉の鋼鉄が塩素から攻撃され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/176929号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Cl含有化合物を使用して調製されたモノホスファイトは、Cl含有量を減らすために、合成後に手間をかけて精製される必要がある。しかし、労力をかけて精製した後でも、モノホスファイトにはCl残留物が依然として残っており、この化合物をさらに使用する際に問題が生じる。
【0006】
本発明の技術的目的は、従来技術に関連して生じる問題を軽減または除去する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1記載の方法により達成される。
【0008】
(a)少なくとも1つの炭素原子が窒素原子で置換された5員環である化合物Yを最初に充填する工程と、
(b)P(NX2)3(式中、Xは-(C1-C6)-アルキルである。)を加える工程と、
(c)式(I):
【0009】
【0010】
(式中、R1、R2、R3は、-H、-(C1-C12)-アルキル、-O-(C1-C12)-アルキル、-(C6-C10)-アリール、-CN、-NO2から選択される。)
による化合物を加える工程と、
を含む方法。
【0011】
炭素原子が窒素原子に置換された5員環の例は、ピロリジン、2-ピロリン、3-ピロリン、アゾールである。
【0012】
2つの炭素原子が窒素原子に置換された5員環の例は、ジアゾリジン、1,2-ジアゾール、1,3-ジアゾールである。
【0013】
3つの炭素原子が窒素原子に置換された5員環の例は、1,2,3-トリアゾリジン、1,2,4-トリアゾリジン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾールである。
【0014】
4つの炭素原子が窒素原子に置換された5員環の例は、テトラゾリジン、5H-テトラゾール、2,5-ジヒドロ-1H-テトラゾールである。
【0015】
5つの炭素原子が窒素原子に置換された5員環の例は、1H-ペンタゾールである。
【0016】
本方法の一変形例では、5員環(Y)は、少なくとも1つの二重結合を有する。
【0017】
本方法の一変形形では、5員環(Y)は、2つの二重結合を有する。
【0018】
本方法の一変形例では、5員環(Y)は、少なくとも1つのN-H結合を有する。
【0019】
本方法の一変形例では、5員環(Y)は、少なくとも2つの窒素原子を有する。
【0020】
本方法の一変形例では、5員環(Y)は、少なくとも3つの窒素原子を有する。
【0021】
本方法の一変形例では、5員環(Y)は、4つの窒素原子を有する。
【0022】
本方法の一変形例では、Yは、次の化合物である。
【0023】
【0024】
本方法の一変形例では、Xは、-(C1-C2)-アルキルである。
【0025】
本方法の一変形例では、Xは、-CH3である。
【0026】
本方法の一変形例では、R1、R2、R3は、-H、-(C1-C12)-アルキル、-O-(C1-C12)-アルキル、-(C6-C10)-アリールから選択される。
【0027】
本方法の一変形例では、R1、R2、R3は、-H、-(C1-C12)-アルキル、-O-(C1-C12)-アルキルから選択される。
【0028】
本方法の一変形例では、R1、R2、R3は、-H、-(C1-C12)-アルキルから選択される。
【0029】
本方法の一変形例では、R1、R2、R3は、-H、-CH3、-O-CH3、-tertBuから選択される。
【0030】
本方法の一変形例では、式(I)の化合物は、以下の構造(4)を有する。
【0031】
【0032】
本方法の一変形例では、当該方法は、溶媒を加える追加工程(d)を含む。
【0033】
本方法の一変形例では、溶媒は、アセトニトリル(ACN)、トルエン、キシレン、THF、ヘプタンから選択される。
【0034】
本方法の一変形例では、溶媒は、アセトニトリル(ACN)である。
【0035】
本方法の一変形例では、合成は、Clの非存在下で行われる。
【0036】
方法自体に加えて、方法で使用される化合物も特許請求されている。
式(3)による化合物。
【0037】
【0038】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
【実施例0039】
アルカノックスの合成
【0040】
【0041】
トリ(1H-テトラゾ-1-イル)ホスフィン(3)を生成するために、HMPT(2)(163mg、1ミリモル)をテトラゾール(1)の0.45Mアセトニトリル溶液(13.4mL、6ミリモル)に添加し、その混合物をアルゴン下、室温で5分間撹拌した。次いで、3当量の2,4-ジ-tert-ブチルフェノール(4)(619mg、3ミリモル)を当該溶液に添加した。反応混合物をアルゴン下、60℃で約20時間さらに撹拌した。15~30分後、溶液から白色の沈殿物が徐々に沈殿した。後処理として、沈殿物を嫌気条件下で濾別し、アセトニトリル(2mL)で1回洗浄し、真空下で乾燥させた。
収率(5):0.50gの白色固体(=77%)。
【0042】
31P NMR(CD2Cl2):129.9ppm。
1H NMR(CD2Cl2):7.40(3H、d、J2.5Hz、3xHar)、7.40(3H、dd、J8.5、2.1Hz、3xHar)、7.12(3H、dd、J8.5、2.5Hz、3xHar)、1.41(27H,s,3xC(CH3)3)、1.30(27H,s,3xC(CH3)3)。
13C NMR(CD2Cl2):149.5(d,J4.0Hz,3xCar-O)、146.2(3xCar)、139.4(d,J2.6Hz,Car)、125.0 (3xCarH)、124.0(3xCarH)、119.2(d,J18.2Hz、3xCarH)、35.4(3xtC)、34.8(3xtC)、31.7(9xCH3)、30.4(9xCH3)。
【0043】
新規な合成経路により、Cl含有化合物を除去することが可能になる。第一に、これにより、合成後のモノホスファイトの手間のかかる精製が省略され、第二に、反応器への残留塩素の導入も回避される。