(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094273
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】木片含有舗装材の再生方法
(51)【国際特許分類】
E01C 7/22 20060101AFI20240702BHJP
E01C 5/22 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
E01C7/22
E01C5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213978
(22)【出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2022210367
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502124282
【氏名又は名称】田中建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】田中 稔
(72)【発明者】
【氏名】谷口 圭汰
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AF15
2D051AG01
2D051AG06
2D051AH03
(57)【要約】
【課題】 使用済みの木片含有舗装材に含まれる塊を、加熱温度を抑えつつ短時間でばらして再生できる木片含有舗装材の再生方法を得る。
【解決手段】 骨材となる木片とバインダとを混合してなる使用済みの木片含有舗装材を再生する木片含有舗装材の再生方法であって、前記使用済みの木片含有舗装材に新たな木片を加えて混合し加熱する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材となる木片とバインダとを含有する使用済みの木片含有舗装材を再生する木片含有舗装材の再生方法であって、
前記使用済みの木片含有舗装材に新たな木片を添加して混合し加熱することを特徴とする木片含有舗装材の再生方法。
【請求項2】
前記バインダが、アスファルトである請求項1記載の木片含有舗装材の再生方法。
【請求項3】
前記新たな木片を、前記使用済みの木片含有舗装材に対し、容積比率で20%以上80%以下加える請求項1記載の木片含有舗装材の再生方法。
【請求項4】
前記使用済みの木片含有塗装材が木片以外の骨材を含有しており、
前記新たな木片とともに、前記使用済みの木片含有舗装材に含まれる木片以外の骨材と同種の新たな骨材を添加する請求項1記載の木片含有舗装材の再生方法。
【請求項5】
再生後の木片含有舗装材に含まれる木片とその木材以外の骨材との比率が、前記使用済みの木片含有舗装材に含まれる木片とその木材以外の骨材との比率と同一になるように、前記新たな木片及び前記新たな骨材を添加する請求項4記載の木片含有舗装材の再生方法。
【請求項6】
前記新たな木片とともに、前記使用済みの木片含有舗装材に含まれるバインダと同種の新たなバインダを添加する請求項1記載の木片含有舗装材の再生方法。
【請求項7】
再生後の木片含有舗装材に含まれる木片とバインダとの比率が、前記使用済みの木片含有舗装材に含まれる木片とバインダとの比率と同一になるように、前記新たな木片及び前記新たなバインダを添加する請求項6記載の木片含有舗装材の再生方法。
【請求項8】
前記新たな木片が、水分含有量15重量%以上45重量%以下のものである請求項1記載の木片含有舗装材の再生方法。
【請求項9】
前記新たな木片とともに、石膏ボード片を添加する請求項1記載の木片含有舗装材の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木片含有舗装材の再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から粗骨材となる木片とバインダとを含有する木片含有舗装材がある。この木片含有舗装材は、木片の代わりに小石を粗骨材とする舗装材に比べて、蓄熱量が小さく、断熱性も高いことから、ヒートアイランド現象を抑制する効果がある。
【0003】
出願人は、前記木片含有舗装材の製造方法として、特許文献1に示すように、木材の細切物及びその他の骨材にバインダを供給する工程と、木材の細切物、その他の骨材及びバインダを加熱しつつ、加熱により木材の細切物から発生する水蒸気中で混練する工程とを含む方法を開発し、長年この方法で製造した木片含有舗装材を用いて道路の舗装工事を施工してきた。
【0004】
近年、過去に施工した道路において、木片含有舗装材が経年劣化し、バインダであるアスファルトの油が抜けてひび割れし易くなったことから、舗装材の打ち換え工事の発注が増えている。打ち換え工事では、一旦道路から使用済みの舗装材を剥がした後、新しい舗装材を打ち直すことから、使用済みの木片含有舗装材が廃棄物として大量に発生する。このため、出願人は、従来から実施されている前記小石を骨材とする舗装材の再生方法と同様に、使用済みの舗装材をバインダが劣化しない温度まで加熱しながら混練して再生を試みた。
【0005】
しかしながら、前記従来の再生方法では、再生に長時間を要し効率が悪いことが分かった。
【0006】
詳述すると、使用済みの木片含有舗装材には、複数の木片がバインダを介してくっ付いた塊が多数含まれる。再生品にこの塊が残っていると、多くの問題が生じる。詳述すると、塊が舗装された箇所に舗装ムラが生じ、見栄えが悪くなる。また、舗装作業時に加熱しても熱が伝わり難く、流動性が得られず作業性が悪くなる。さらに、塊の芯は油が抜けたままとなるため、塊が舗装された部分だけ崩れ易くなり、道路に凹凸ができる原因となる。
【0007】
このため、再生時に塊をばらす必要があるが、木片含有舗装材は、小石を粗骨材とする舗装材よりも軽量であるため、混練時に塊同士がぶつかり合っても崩れ難い。また、従来の再生方法では、塊となった舗装材の隙間が空気で満たされ、舗装材間で熱が伝わり難く、塊の芯まで加熱するのに時間を要する。その結果、長時間加熱しながら混練し続けなければ、塊を崩すことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、使用済みの木片含有舗装材に含まれる塊を短時間で崩すことができる木片含有舗装材の再生方法を得ることを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る木片含有舗装材の再生方法は、骨材となる木片とバインダとを含有する使用済みの木片含有舗装材を再生する木片含有舗装材の再生方法であって、前記使用済みの木片含有舗装材に新たな木片を添加して混合し加熱することを特徴とするものである。
【0011】
このような構成であれば、使用済みの木片含有舗装材に新たな木片を添加して混合し加熱することにより、木片含有舗装材と混ざり合った新たな木片から水蒸気が発生する。これにより、塊となった木片含有舗装材の隙間が水蒸気で満たされ、その木片含有舗装材をコーディングするバインダと反応してフォームド化する。そして、このフォームド化したバインダが、媒体となって木片含有舗装材間で熱が伝わり易くなる。その結果、塊の芯まで熱が効率良く伝わるようになり、塊を短時間でばらすことできる。
【0012】
前記バインダは、具体的には、アスファルトであってもよい。
【0013】
前記木片の具体的な添加量としては、前記使用済みの木片含有舗装材に対し、容積比率で20%以上80%以下添加すればよい。なお、木片の添加量が、容積比率で20%未満になると、木片含有舗装材から発生する水蒸気が少なくなり、バインダのフォームド化が促進されない。その結果、短時間で塊の芯まで熱が伝わり難くなる。一方、容積比率で80%を超えると、混合物全体の水分量が過多となり、混合物の昇温に時間を要する。その結果、短時間で塊の芯まで熱が伝わり難くなる。
【0014】
また、前記使用済みの木片含有舗装材が、前記木片以外の骨材を含有しており、前記木片とともに、前記使用済みの木片含有舗装材に含まれる木片以外の骨材と同種の新たな骨材を添加してもよい。
【0015】
このような構成によれば、新たな木片を追加することで不足する木片以外の骨材を補うことができる。これにより、耐久性を低下させることなく再生できる。
【0016】
新たな木片と新たな骨材とは、再生後の木片含有舗装材に含まれる木片とその木材以外の骨材との比率が、前記使用済みの木片含有舗装材に含まれる木片とその木材以外の骨材との比率と同一になるように添加すればよい。
【0017】
このように構成すれば、使用済みの木片含有舗装材が元々有していた耐久性にまで回復する。
【0018】
また、前記木片とともに、前記使用済みの木片含有舗装材に含まれるバインダと同種の新たなバインダを添加してもよい。
【0019】
このような構成によれば、新たな木片を追加することで不足するバインダを補うことができる。これにより、耐久性を低下させることなく再生できる。
【0020】
新たな木片と新たなバインダとは、再生後の木片含有舗装材に含まれる木片とバインダとの比率が、前記使用済みの木片含有舗装材に含まれる木片とバインダとの比率と同一になるように、前記新たな木片及び前記新たなバインダを添加すればよい。
【0021】
このように構成すれば、使用済みの木片含有舗装材が元々有していた耐久性にまで回復する。
【0022】
また、前記木片は、水分含有量が15重量%以上45重量%以下のものであってもよい。
【0023】
このような構成によれば、塊の芯まで熱がより効率良く伝わるようになり、塊をより短時間でばらすことできる。詳述すると、木片の水分含有量が、15重量%未満になると、木片含有舗装材から発生する水蒸気が少なくなり、バインダのフォームド化が促進されない。その結果、短時間で塊の芯まで熱が伝わり難くなる。一方、水分含有量が45重量%を超えると、木片含有舗装材自体の温度が上がり難くなり、水蒸気を発生するまでに時間を要する。その結果、短時間で塊の芯まで熱が伝わり難くなる。
【0024】
また、前記木片とともに、石膏ボード片を添加してもよい。
【0025】
石膏ボード片と木片とを混ぜると、石膏ボードに含まれる硫酸カルシウムが木片に含まれる水分と反応して硫化水素ガスが発生し非常で危険である。しかしながら、骨材となる木片とバインダとを含有する使用済みの木片含有舗装材と一緒に混合し加熱すると、バインダが溶解して石膏ボード片の表面を被覆する。これにより、石膏ボード片に含まれる硫酸カルシウムが水分と反応しなくなり、硫化水素ガスが発生しなくなる。その結果、年々増加する石膏ボードをリサイクルできる。
【発明の効果】
【0026】
このように、本発明に係る木片含有舗装材の再生方法であれば、使用済みの木片含有舗装材に含まれる塊を芯まで短時間で崩せる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態の木片含有舗装材の再生方法に使用される加熱装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る木片含有舗装材の再生方法は、例えば道路の舗装材の打ち換え工事において発生する使用済みの木片含有舗装材(以下、単に木片含有舗装材ともいう)を再生するための方法である。ここで、使用済みの木片含有舗装材は、粗骨材である木片とバインダとを混合しながら加熱して形成されたものである。
【0029】
<第1実施形態> 本実施形態に係る木片含有舗装材の再生方法は、使用済みの木片含有舗装材に添加物を添加する添加工程と、木片含有舗装材と添加物とを混合しながら加熱する加熱工程とを備えている。使用済みの木片含有舗装材は、粗骨材である木片とバインダであるアスファルトとを含有するものである。なお、骨材として、木片以外に例えば細骨材である砂利、フィラーである石粉などを含有するものであってもよい。
【0030】
前記添加工程は、使用済みの木片含有舗装材に対し、新たに木片を添加する工程である。具体的には、新たな木片は、使用済みの木片含有舗装材に対し、容積比率で20%以上80%以下添加することが好ましい。なお、新たな木片の添加量が、容積比率で20%未満となると、発生する水蒸気が少なくなり、バインダのフォームド化が促進されない。その結果、短時間で塊の芯まで熱が伝わり難くなる。一方、容積比率で80%を超えると、混合物全体の水分量が過多となり、混合物の昇温に時間を要する。その結果、短時間で塊の芯まで熱が伝わり難くなる。
【0031】
前記使用済みの木片含有舗装材は、粗骨材である木片とバインダとを含有するものである。より具体的には、粗骨材である木片をバインダでコーティングしたものである。なお、骨材として、粗骨材以外に細骨材、フィラーから選択される少なくとも一つをさらに含有するものであってもよい。本実施形態の使用済みの木片含有舗装材は、粗骨材である木片、細骨材である砂利、フィラーである石粉、及び、バインダであるアスファルトを含有するものである。
【0032】
前記新たな木片は、使用済みの木片含有舗装材に含有される木片と同様の大きさのものであることが好ましい。具体的には、10mm以上25mm以下四方の網目を通過する大きさのものであることが好ましい。また、新たな木片は、水分含有量が15重量%以上45重量%以下のものであるものが好ましい。新たな木片の水分含有量が、15重量%未満になると、発生する水蒸気が少なくなり、バインダのフォームド化が促進されない。その結果、短時間で塊の芯まで熱が伝わり難くなる。一方、水分含有量が45重量%を超えると、木片含有舗装材自体の温度が上がり難くなり、水蒸気を発生するまでに時間を要する。その結果、短時間で塊の芯まで熱が伝わり難くなる。
【0033】
また、前記添加工程では、使用済みの木片含有舗装材に対し、新たな木片以外の添加物を添加してもよい。具体的には、新たな木片以外の添加物としては、木片含有舗装材に含有される木片以外の原料と同種のものが挙げられる。つまり、本実施形態では、細骨材である砂利、フィラーである石粉、バインダであるアスファルトから選択されるものを添加物としてもよい。
【0034】
なお、新たな木片以外に新たな骨材を添加する場合、再生後の木片含有舗装材に含まれる木片とその木材以外の骨材との比率が、前記使用済みの木片含有舗装材に含まれる木片とその木材以外の骨材との比率と同一になるように添加することが好ましい。また、新たな木片以外に新たなバインダを添加する場合、再生後の木片含有舗装材に含まれる木片とバインダとの比率が、前記使用済みの木片含有舗装材に含まれる木片とバインダとの比率と同一になるように、前記新たな木片及び前記新たなバインダを添加することが好ましい。
【0035】
前記加熱工程は、添加工程で添加された添加物と使用済みの木片含有舗装材とを含有する混合物を所定温度まで加熱する工程である。加熱工程は、例えば
図1に示す加熱装置100を用いて行う。加熱装置100は、モータで回転するドラム10と、ドラム10内に設置されたバーナー20とを備えている。そして、ドラム10には、一端部周面に投入口10aが形成されているとともに、他端部周面に排出口10bが形成されている。また、ドラム10の内周面には、螺旋状に延びるフィン10cが設けられている。そして、投入口10aからドラム10内に投入された投入物は、バーナー20で加熱されるとともに、フィン10cに引っ掛かって混練されながら一端側から他端側へと搬送されて排出口10bから排出される。
【0036】
前記所定温度は、120℃以上180℃以下であることが好ましい。所定温度が120℃未満になると、アスファルトの流動性が小さくなり、混合し難くなる。その結果、水蒸気が隅々に行き渡り難くなり、アスファルトのフォームド化が促進されない。一方、加熱温度が180℃を越えると、アスファルトから油が抜け出し劣化する。
【0037】
このような構成によれば、加熱温度を木片が炭化するような温度にまで上げなくても、使用済みの木片含有舗装材に含まれる塊を芯まで効率良く加熱することができる。これにより、塊を短時間でばらすことができる。その結果、再生品の熱伝導率を小さく保ちながら、短時間で再生できる。
【0038】
また、添加物として、使用済みの木片含有舗装材に含有される木片以外の原料と同種のものを添加することにより、耐久性を低下させることなく再生できる。
【0039】
<その他の実施形態> 本発明に係る木片含有舗装材の再生方法は、前記実施形態のものに限定されない。例えば、添加物として、さらに着色剤を添加してもよい。これにより、再生品の色を調整できる。
【0040】
また、前記実施形態では、使用済みの木片含有舗装材に木片を添加した後、混合しながら加熱したが、例えば混合した後に加熱してもよい。つまり、混合し続ける必要はない。
【0041】
また、前記実施形態では、使用済みの木片含有舗装材に元々含有されている含有物と同種の添加物を添加したが、新たに石膏ボード片を添加してもよい。
【0042】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の一部同士の組み合わせや、変形等を行っても構わない。
【符号の説明】
【0043】
100 加熱装置
10 ドラム
20 バーナー