(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094277
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ポリマー、組成物、負極およびこれを用いる電池
(51)【国際特許分類】
C08B 37/08 20060101AFI20240702BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240702BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240702BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240702BHJP
C08L 5/08 20060101ALI20240702BHJP
C08L 1/10 20060101ALI20240702BHJP
H01M 4/48 20100101ALN20240702BHJP
H01M 4/587 20100101ALN20240702BHJP
【FI】
C08B37/08 A
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/13
C08L5/08
C08L1/10
H01M4/48
H01M4/587
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214852
(22)【出願日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】111150071
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】頼冠霖
(72)【発明者】
【氏名】趙基揚
(72)【発明者】
【氏名】葉定儒
(72)【発明者】
【氏名】鄭季汝
(72)【発明者】
【氏名】劉冠甫
【テーマコード(参考)】
4C090
4J002
5H050
【Fターム(参考)】
4C090AA02
4C090AA08
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4J002GT00
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
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5H050CB02
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5H050DA11
5H050EA23
5H050EA25
5H050HA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電池の効率およびサイクル寿命が改善され得る、負極活性層の組成物を提供する。
【解決手段】式(I)の繰り返し単位を有するポリマー、前記ポリマーを含む組成物、前記組成物から作製された負極およびこれを用いた電池を提供する。
式中、R
1は水素またはアセチル基であり、R
2はそれぞれ独立に水素、-SO
3H、または-SO
3Liであり、R
2のうちの少なくとも1つは-SO
3Liである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の繰り返し単位を有するポリマー。
【化1】
(式中、R
1は水素またはアセチル基であり、R
2はそれぞれ独立に水素、-SO
3H、または-SO
3Liであり、R
2のうちの少なくとも1つが-SO
3Liである。)
【請求項2】
前記式(I)の繰り返し単位が下記のいずれかである、請求項1に記載のポリマー。
【化2】
(式中、R
1は水素またはアセチル基である。)
【請求項3】
前記式(I)の繰り返し単位が下記のいずれかである、請求項1に記載のポリマー。
【化3】
(式中、R
2はそれぞれ独立に水素、-SO
3H、または-SO
3Liであり、R
2のうちの少なくとも1つが-SO
3Liである。)
【請求項4】
組成物であって、
請求項1に記載のポリマーであるポリマー(A-1)を含む成分(A)と、
バインダーである成分(B)と、
を含み、成分(A)と成分(B)の重量比が1:1から1:9である、組成物。
【請求項5】
成分(A)がカルボキシメチルセルロース(A-2)をさらに含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマー(A-1)とカルボキシメチルセルロース(A-2)の重量比が99:1から1:19である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
負極活物質である成分(C)をさらに含む請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
成分(A)および成分(B)の総重量と成分(C)の重量との比が1:5から1:15である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
導電性材料である成分(D)をさらに含む請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
成分(A)および成分(B)の総重量と成分(D)の重量との比が1:1から1:9である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項7に記載の組成物から作製された負極活性層を含む負極。
【請求項12】
電池であって、
請求項11に記載の負極と、
セパレータと、
正極と、
を含み、前記負極が前記セパレータによって前記正極と分離されている、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマー、組成物、負極およびこれを用いる電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は主流の商用製品であり、それらは現在、軽量、低体積、およびより安全になるよう、ならびにより高いエネルギー容量およびより長いサイクル寿命を持つように開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カーボン材料は、リチウム電池の負極の活物質として広く用いられている。電池容量をさらに増やすため、リチウム電池は、その負極における活物質としてケイ素含有材料を使用する方向に発展してきている。しかしながら、ケイ素含有材料が負極における活物質として用いられると、電池のクーロン効率が低くなる。加えて、ケイ素含有材料の体積膨潤の現象はリチウム電池のサイクル寿命に大きく影響するため、リチウム電池負極へのケイ素含有材料の応用の大きな障害となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、ポリマー、組成物、負極、これを用いる電池を提供する。ポリマーは式(I)の繰り返し単位を有する。
【0006】
【0007】
式中、R1は水素またはアセチル基であり、R2はそれぞれ独立に水素、-SO3H、または-SO3Liであり、R2のうちの少なくとも1つが-SO3Liである。
【0008】
本開示の実施形態によれば、本開示は組成物も提供する。組成物は成分(A)および成分(B)を含む。成分(A)は、本開示のポリマー(A-1)(式(I)の繰り返し単位を有する)を含む。成分(B)はバインダーである。ここで、成分(A)と成分(B)の重量比は1:1から1:9であってよい。
【0009】
本開示の実施形態によれば、本開示は負極も提供する。負極は負極活性層を含み、負極活性層は本開示の組成物から作製されたものである。
【0010】
本開示の実施形態によれば、本開示は電池も提供する。電池は、本開示の負極、セパレータ、および正極を含み、負極はセパレータによって正極と分離されている。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、ポリマー、組成物(例えば負極活性層の組成物)、負極(例えばリチウム電池の負極)、およびこれを用いる電池(例えばリチウム電池)を提供する。本開示の実施形態によれば、本開示のポリマーは、スルホン酸リチウム基を有するため、水酸基を有する化合物またはケイ素含有化合物と反応することができる。本開示のポリマーの添加により、本開示の組成物は、リチウム補充機能(lithium replenishment functionality )および高い機械強度を有する構造を形成することができ、これによって、負極の活性層の安定性が高まると共に、充電および放電時における負極の体積膨潤の発生が抑制される。その結果、電池の効率およびサイクル寿命が改善され得る。
【0012】
添付の図面を参照にして、以下の詳細な説明および例を読むことにより、本発明をより十分に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施形態による電池の負極の断面図である。
【
図2】本開示の実施形態による電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示のポリマー、組成物、負極およびこれを用いる電池が、以下の記載において詳細に説明される。以下の詳細な記載では、説明の目的で、本開示が十分理解されるように多数の特定の詳細と実施形態が示される。以下の詳細な記載において記載される特定の要素および構成は、本開示を明確に説明するために示されるものである。しかしながら、ここに示される例示的な実施形態は、単に説明の目的のために用いられるに過ぎず、本発明概念はそれらの例示的な実施形態に限定されることなく様々な形式で具体化可能であるという点は、明らかであろう。加えて、本開示を明確に説明するため、それぞれ異なる実施形態の図面では、類似および/または対応する要素を示すのに類似および/または対応する数字を用いることがある。しかしながら、それぞれ異なる実施形態の図面における類似および/または対応する数字の使用は、異なる実施形態間の何らの相関関係をも示唆しない。本明細書において使用されるとき、数量的な用語における用語「約」は、当業者にとって一般的かつ合理的である量だけプラスまたはマイナスすることを指す。
【0015】
本開示の図面における要素または装置は当業者には既知である任意の形式または構成で提示され得るという点について、留意されなければならない。加えて、「別の層を覆う層」、「層が別の層の上側に配置される」、「層が別の層上に配置される」、および「層が別の層の上方に配置される」という表現は、他の層に直接接触する層に言及する場合があり、それらはまた、他の層と直接接触しない層であって、他の層との間に1つまたはそれ以上の中間層が存在する層に言及する場合もある。
【0016】
描かれている図は概略に過ぎず、非限定的なものである。説明の目的で、図におけるいくつかの構成要素のサイズ、形状または厚さは誇張されており、縮尺で描かれていないことがある。寸法および相対寸法は、本開示を実施するための実際の位置に対応していない。本開示は、特定の実施形態について、かつ特定の図に関して説明されるが、本開示がこれに限定されることはない。
【0017】
本開示の実施形態によれば、本開示のポリマーは式(I)の繰り返し単位を有していてよい。
【0018】
【0019】
式中、R1は水素またはアセチル基であってよく、R2はそれぞれ独立に水素、-SO3H、または-SO3Liであってよく、R2のうちの少なくとも1つは-SO3Liである。本開示の実施形態によれば、本開示のポリマーは、少なくとも1つの式(I)の繰り返し単位を有し得る。
【0020】
本開示の実施形態によれば、式(I)の繰り返し単位は下記のいずれかであってよい。
【0021】
【0022】
式中、R1は水素またはアセチル基であってよい。
【0023】
本開示の実施形態によれば、式(I)の繰り返し単位は下記のいずれかであってよい。
【0024】
【0025】
式中、R2はそれぞれ独立に水素、-SO3H、または-SO3Liであってよく、R2のうちの少なくとも1つは-SO3Liである。
【0026】
本開示の実施形態によれば、式(I)の繰り返し単位は下記のいずれかであってよい。
【0027】
【0028】
本開示の実施形態によれば、本開示のポリマーの重量平均分子量(Mw)は約100,000g/molから900,000g/mol(例えば150,000g/mol、200,000g/mol、300,000g/mol、500,000g/mol、700,000g/mol、または800,000g/mol)である。本開示のオリゴマーまたはポリマーの重量平均分子量(Mw)は、(ポリスチレンの検量線に基づき)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0029】
本開示の実施形態によれば、本開示の式(I)の繰り返し単位を有するポリマーを作製する方法は次のステップを含んでいてよい。先ず、キトサンを準備する。次いで、キトサンをクロロスルホン酸と反応させてスルホン化を進行させ、スルホ基を有するキトサンを得る。次いで、そのスルホ基を有するキトサンを水酸化リチウムと反応させて、式(I)の繰り返し単位を有するポリマーを得る。
【0030】
本開示の実施形態によれば、本開示は組成物(例えばバインダー組成物)も提供する。本開示の実施形態によれば、組成物は成分(A)および成分(B)を含んでいてよい。成分(A)は本開示のポリマー(A-1)(式(I)の繰り返し単位を有する)を含んでいてよい。成分(B)はバインダーであってよい。本開示の実施形態によれば、成分(A)と成分(B)の重量比は約1:1から1:9、例えば1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、または1:8であってよい。成分(A)と成分(B)の重量比が上述の範囲内にあるとき、本開示の組成物は優れた接着能力を示す。
【0031】
本開示の別の実施形態によれば、成分(A)は本開示のポリマー(A-1)(式(I)の繰り返し単位を有する)からなるものであってよい。
【0032】
本開示の実施形態によれば、組成物の接着能力を高めるため、成分(A)はカルボキシメチルセルロース(CMC)(A-2)をさらに含んでいてよい。本開示の別の実施形態によれば、成分(A)は本開示のポリマー(A-1)とカルボキシメチルセルロース(CMC)(A-2)との組み合わせであってよい。つまり、成分(A)は本開示のポリマー(A-1)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)(A-2)からなるものであってよい。
【0033】
本開示の実施形態によれば、ポリマー(A-1)とカルボキシメチルセルロース(CMC)(A-2)の重量比は約99:1から1:19、例えば95:1、90:1、85:1、80:1、75:1、70:1、65:1、60:1、55:1、50:1、45:1、40:1、35:1、30:1、25:1、20:1、15:1、10:1、5:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、または1:15であってよい。本開示の実施形態によれば、本開示のポリマーはメチルセルロースと反応して網目構造を形成することができる。
【0034】
本開示の実施形態によれば、バインダー(つまり、成分(B))は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(スチレン-co-ブタジエン)、フッ素ゴム、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリブタジエン、ポリアクリル酸(PAA)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロペン(PVDF-HFP)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリル樹脂、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、本開示のバインダーの重量平均分子量(Mw)は約100,000g/molから9,000,000g/mol(例えば200,000g/mol、300,000g/mol、500,000g/mol、700,000g/mol、1,000,000g/mol、1,300,000g/mol、1,500,000g/mol、2,000,000g/mol、32,000,000g/mol、4,000,000g/mol、5,000,000g/mol、6,000,000g/mol、7,000,000g/mol、または8,000,000g/mol)であってよい。本開示のバインダーの重量平均分子量(Mw)は、(ポリスチレンの検量線に基づき)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0035】
本開示の実施形態によれば、組成物は成分(C)をさらに含んでいてよく、成分(C)は負極活物質であってよい。本開示の実施形態によれば、負極活物質は、カーボン材料、リチウム、遷移金属酸化物、リチウム含有化合物、ケイ素含有材料、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、カーボン材料には、準安定相球状カーボン(metastable phase spherical carbon, MCMB)、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)、コークス、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、アセチレンブラック、カーボンファイバー、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、リチウム含有化合物には、LiAl、LiMg、LiZn、Li3Bi、Li3Cd、Li3Sb、Li4Si、Li4.4Pb、Li4.4Sn、LiC6、Li3FeN2、Li2.6Co0.4N、またはLi2.6Cu0.4Nが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、ケイ素含有材料には、炭素修飾(carbon-modified)酸化ケイ素、炭化ケイ素または純ケイ素材料が含まれ得る。本開示の実施形態によれば、遷移金属酸化物にはLi4Ti5O12またはTiNb2O7が含まれ得る。本開示の実施形態によれば、成分(A)および成分(B)の総重量と成分(C)の重量との比は、約1:5から1:15、例えば1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、または1:13であってよい。
【0036】
本開示の実施形態によれば、組成物は成分(D)をさらに含んでいてよく、成分(D)は導電性材料である。本開示の実施形態によれば、導電性材料は、導電性カーボンブラック、導電性グラファイト、フルオロカーボン、還元グラフェン、窒素ドープグラファイト、窒素ドープグラフェン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブまたはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、成分(A)および成分(B)の総重量と成分(D)の重量との比は、1:1から1:9、例えば1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、または1:8であってよい。
【0037】
本開示の実施形態によれば、本開示の組成物は、負極活性層を作製するために用いる負極活性層組成物であってよく、電池の負極となる。組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、および成分(D)を含んでいてよい。本開示の実施形態によれば、成分(A)、成分(B)、成分(C)、および成分(D)の総重量に対し、組成物は、成分(A)を約0.1wt%から6wt%(例えば0.2wt%、0.3wt%、0.5wt%、1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、または5.5wt%)、成分(B)を1wt%から10wt%(例えば1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%,または9wt%)、成分(C)を65wt%から90wt%(例えば70wt%、75wt%、80wt%、82wt%、または84wt%)、および成分(D)を1wt%から20wt%(例えば1wt%、2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%、8wt%、9wt%、10wt%、12wt%、15wt%、17wt%、18wt%、または19wt%)含んでいてよい。
【0038】
本開示の別の実施形態によれば、組成物は成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)からなるものであってよい。
【0039】
本開示の実施形態によれば、接着力の高い保護層(成分(A)および成分(B)から形成される)が成分(C)の表面に形成されることより、充電および放電時における負極の表面平坦度が高まり得ると共に、金属デンドライトの形成が抑制または減少され得る。結果として、電池(例えばリチウム電池)の性能および寿命が改善される。加えて、成分(C)がケイ素含有材料である場合、成分(A)がケイ素含有材料と反応してケイ素含有材料の緊密な封入(compact encapsulation)が達成され、充電および放電時に生じる応力に耐え得るようになるため、充電および放電時におけるケイ素含有材料の体積膨潤の現象が回避される。このことは、ケイ素系(silicon-based)負極のサイクル寿命改善の目的を達するのに寄与する。
【0040】
本開示の実施形態によれば、成分(A)がポリマーおよびメチルセルロースからなるものであるとき、網目構造が形成されて成分(C)の表面を覆うことができる。
【0041】
本開示の実施形態によれば、組成物は成分(E)をさらに含み、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)が成分(E)中に均一に分散してスラリー(塗布プロセスにおいて用いられる)を形成し、これにより成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)が充分に混合される。本開示の実施形態によれば、成分(E)は、水、エチレングリコールジメチルエーテル(DME)、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ピロリドン、N-ドデシルピロリドン、γ-ブチロラクトンまたはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、組成物が成分(E)を含むとき、組成物の固形分は約5wt%から30wt%、例えば6wt%、10wt%、15wt%、20wt%、または25wt%であり得る。ここで、固形分とは、組成物の総重量に対する、成分(E)を除く組成物の成分の重量百分率を意味する。
【0042】
本開示の別の実施形態によれば、組成物は成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、および成分(E)からなるものであってよい。
【0043】
本開示の実施形態によれば、本開示の組成物の特定の成分および含有量によって、当該組成物から作製される負極は、リチウム補充(lithium replenishment)の機能、および機械強度の高い構造を有するため、負極の安定性が高まり、負極の体積膨張の発生が抑制され、電池の効率およびサイクル寿命が改善されることとなる。
【0044】
本開示の実施形態によれば、本開示は、電池の負極(例えばリチウム電池の負極)となる負極を提供する。本開示の実施形態によれば、
図1に示されるように、本開示の負極10は負極活性層12を含み得る。本開示の実施形態によれば、負極活性層12は、混合または反応後の本開示の組成物から作製されたものであってよい。本開示の実施形態によれば、本開示の負極活性層12の厚さは限定されず、当該分野において通常の知識を有する者が任意に変更することができる。例えば、負極活性層12の厚さは約1μmから1,000μm(例えば約5μm、10μm、50μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、または900μm)であってよい。
【0045】
加えて、
図1に示されるように、負極10は負極集電層14をさらに含んでいてよく、負極活性層12は負極集電層14上に配置される。本開示の実施形態によれば、負極集電層14の厚さは限定されず、当該分野において通常の知識を有する者が任意に変更することができる。例えば、負極集電層14の厚さは約100μmから5,000μm(例えば、約200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1,000μm、2,000μm、3,000μm、または4,000μm)であってよい。本開示の実施形態によれば、負極集電層14は、導電性カーボン基板、金属箔または多孔質構造を有する金属材料、例えばカーボンクロス、カーボンフェルト、カーボンペーパー、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ニッケルメッシュ、銅メッシュ、モリブデンメッシュ、ニッケルフォーム、銅フォームまたはモリブデンフォームであってよい。本開示の実施形態によれば、多孔質構造を有する金属材料の気孔率は約10%から99.9%(例えば20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%)であってよい。
【0046】
本開示の別の実施形態によれば、負極10は負極活性層12からなるものであってよい。本開示の別の実施形態によれば、負極10は負極活性層12および負極集電層14からなるものであってよい。
【0047】
本開示の実施形態によれば、
図1に示される負極10の作製方法は次のステップを含んでいてよい。先ず、負極集電層(例えば銅箔)14を準備する。次いで、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を成分(E)(つまり溶媒)中に一定の時間(約30分から6時間、例えば1時間、2時間、3時間、または5時間)均一に分散させて、本開示の組成物を得る(負極活性層スラリーとなる)。次いで、塗布プロセスにより組成物を負極集電層14の表面に塗布してコーティングを形成する。次いで、そのコーティングに圧延プロセス(圧縮率(compression ratio)約15%から70%、例えば20%、30%、40%、50%、または60%)および乾燥プロセス(温度90
oCから180
oC(例えば100
oC、120
oC、または150
oC)を30分から18時間(例えば1時間、3時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、または15時間))を行って、負極活性層12を得る。塗布プロセスはスクリーン印刷、スピンコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ローラーコーティング、溶媒キャスティングまたはディップコーティングであってよい。
【0048】
本開示の実施形態によれば、
図2に示されるように、本開示は、電池100、例えばリチウム電池、リチウムイオン電池、またはリチウム金属電池も提供する。電池100は、
図1に示される負極10、セパレータ20、および正極30を含み、負極10はセパレータ20により正極30と分離されている。本開示の実施形態によれば、正極30はセパレータ20に直接接触していてよい、および/または負極10はセパレータ20に直接接触していてもよい。本開示の実施形態によれば、正極30は特定の距離だけセパレータ20と離間していてよい、および/または負極10は特定の距離だけセパレータ20と離間していてよい。本開示の実施形態によれば、電池100は液体電解質40をさらに含んでいてよく、液体電解質は負極10と正極30との間に配置される。つまり、負極10、セパレータ20、および正極30が積層された構造を液体電解質40中に浸漬させる。即ち、電池100は液体電解質で満たされる。本開示のいくつかの実施形態によれば、本開示の負極活性層12はセパレータ20と負極集電層14との間に配置されてよい。本開示の実施形態によれば、本開示の電池100は負極10、セパレータ20、正極30、および液体電解質40からなるものであってよい。
【0049】
本開示の実施形態によれば、セパレータ20は絶縁材料、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリアニリン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン(PS)、セラミック材料、またはこれらの組み合わせを含んでいてよい。例えば、セパレータ20は多層複合構造であってよい。本開示の実施形態によれば、セパレータは多孔質構造を有していてよい。つまり、セパレータの気孔は、セパレータ全体にわたり均一に分布されている。
【0050】
本開示の実施形態によれば、液体電解質40は溶媒およびリチウム塩(またはリチウム含有化合物)を含んでいてよい。本開示の実施形態によれば、負極活物質(つまり成分(C))は保護層(成分(A)および成分(B)から作製される)に封入される。よって、保護層が負極活物質と液体電解質とを直接接触させないようにするため、液体電解質の分解(decomposition)が低減し、電池のサイクル性能が改善される。
【0051】
本開示の実施形態によれば、本開示の液体電解質40は限定されず、リチウム電池に用いられる従来の液体電解質であってよい。本開示の実施形態によれば、溶媒中のリチウム塩の濃度は約0.8Mから1.6M、例えば約0.9M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、または1.5Mであってよい。本開示の実施形態によれば、溶媒は、有機溶媒、例えばエステル系溶媒、ケトン系溶媒、カーボネート系溶媒、エーテル系溶媒、アルカン系溶媒、アミド系溶媒、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、溶媒は、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド(DMAc)、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸プロピル(PA)、γ-ブチロラクトン(GBL)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジプロピルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1、3-プロパンスルトン、またはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、リチウム塩は、ヘキサフルオロりん酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム((lithium perchlorate(LiClO4))、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム(LiN(SO2F)2)(LiFSI)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiBF2(C2O4))(LiDFOB)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、リチウムトリフルオロメタンスルホナート(LiSO3CF3)、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム(LiN(SO2CF3)2)(LiTFSI)、リチウムビスパーフルオロエタンスルホンイミド(LiN(SO2CF2CF3)2)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、リチウムヘキサフルオロアンチモネート(LiSbF6)、リチウムテトラクロロアルミネート(LiAlCl4)、リチウムテトラクロロガラート(lithium tetrachlorogallate(LiGaCl4))、リチウムニトレート(LiNO3)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム(LiC(SO2CF3)3)、チオシアン酸リチウム水和物(LiSCN)、LiO3SCF2CF3、LiC6F5SO3、LiO2CCF3、リチウムフルオロスルホナート(LiSO3F)、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(LiB(C6H5)4)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiB(C2O4)2)(LiBOB)、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0052】
本開示の実施形態によれば、正極30は正極活性層32および正極集電層34を含んでいてよく、正極活性層32は正極集電層34上に配置され、正極活性層32は正極活物質を含む。
【0053】
本開示の実施形態によれば、正極活物質は、硫黄、有機硫化物、硫黄・炭素複合体(sulfur-carbon composite)、金属含有酸化リチウム、金属含有硫化リチウム、金属含有セレン化リチウム、金属含有テルル化リチウム、金属含有ケイ化リチウム、金属含有ホウ化リチウム、またはこれらの組み合わせであってよく、当該金属は、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、銅、モリブデン、ニオブ、鉄、ニッケル、コバルトおよびマンガンからなる群より選ばれる。本開示の実施形態によれば、正極材料は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リチウムクロムマンガン酸化物、リチウムニッケルバナジウム酸化物、リチウムマンガンニッケル酸化物、リチウムコバルトバナジウム酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リン酸鉄リチウムまたはこれらの組み合わせであってよい。
【0054】
本開示の実施形態によれば、本開示のリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物は、構造LiNixCoyMnzO2を有していてよく、式中、0<x<1、0<y<1、0<z<1、かつx+y+z=1である。本開示の実施形態によれば、本開示のリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物は、構造LiNi0.80Co0.15Al0.05O2を有していてよい。本開示の実施形態によれば、本開示のリチウムコバルト酸化物はLiCoO2であってよい。
【0055】
本開示の実施形態によれば、正極活性層32はバインダーをさらに含んでいてよい。本開示の実施形態によれば、正極活性層32中、バインダーと正極活物質の重量比は0.1:99.9から10:90(例えば1:99、2:98、3:97、4:96、5:95、6:94、7:93、8:92、または9:91)であってよい。
【0056】
本開示の実施形態によれば、バインダーには、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン・ブタジエンコポリマー、フッ素ゴム、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリブタジエン、ポリアクリル酸(PAA)、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。本開示の実施形態によれば、正極活性層32は導電性添加剤をさらに含んでいてよく、導電性添加剤は導電性カーボンブラック、導電性グラファイト、フルオロカーボン、還元グラフェン、窒素ドープグラファイト、窒素ドープグラフェン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブまたはこれらの組み合わせであってよい。本開示の実施形態によれば、正極活性層32中、導電性添加剤と正極活物質の重量比は0.1:99.9から10:90(例えば1:99、2:98、3:97、4:96、5:95、6:94、7:93、8:92、または9:91)であってよい。本開示の別の実施形態によれば、正極活性層32は正極活物質およびバインダーからなるものであってよい。本開示の別の実施形態によれば、正極活性層32はバインダー、導電性添加剤、および正極活物質からなるものであってよい。
【0057】
本開示の実施形態によれば、正極集電層34は、導電性カーボン基板、金属箔、または多孔質構造を有する金属材料、例えばカーボンクロス、カーボンフェルト、カーボンペーパー、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ニッケルメッシュ、銅メッシュ、モリブデンメッシュ、ニッケルフォーム、銅フォームまたはモリブデンフォームであってよい。本開示の実施形態によれば、多孔質構造を有する金属材料の気孔率は約10%から99.9%(例えば60%または70%)であってよい。
【0058】
本開示の実施形態によれば、本開示の正極活性層32はセパレータ20と正極集電層34との間に配置されてよい。
【0059】
本開示の実施形態によれば、正極活性層32の厚さは限定されず、当該分野において通常の知識を有する者が任意に変更することができる。例えば、正極活性層32の厚さは約1μmから1,000μm(例えば約5μm、10μm、50μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、または900μm)であってよい。本開示の実施形態によれば、正極集電層34の厚さは限定されず、当該分野において通常の知識を有する者が任意に変更することができる。例えば、正極集電層34の厚さは約100μmから5,000μm(例えば約200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1,000μm、2,000μm、3,000μm、または4,000μm)であってよい。
【0060】
以下に、当該分野において通常の知識を有する者が容易に理解できるよう、添付の図面を参照にして、例示的な実施形態を詳細に説明する。本発明概念は、ここに示される例示的な実施形態に限定されることなく、様々な形式で具体化され得る。明瞭にするため、周知の部分についての説明は省かれ、かつ全体を通して類似する参照数字は類似する構成要素を示すものとする。
【実施例0061】
ポリマーの作製
実施例1
クロロスルホン酸(12mL)および濃硫酸(濃度17.9M、40mL)を0℃で混合し、混合物を得た。次いで、キトサン(分子量約300,000)(CAS:9012-76-4、sigma-aldrichより市販されている)をその混合物に0℃で加えた。キトサンとクロロスルホン酸との当量比は約3:1であった。次いで、その結果得られたものを室温(25℃)で1時間反応させた。次いで、その結果得られたものをエチルエーテル中に加えて固体を析出させた。ろ過した後、そのろ過ケークを脱イオン水中に溶解した。ろ過後、得られたものを水酸化リチウム水溶液(濃度1M)で滴定して中性にした。最後に、その溶液を、透析膜(Cellu-Sep T4)を用いて3日透析し、残留したスルホン酸イオン(sulfonic ions)を除去した。透析後、その溶液を、凍結乾燥装置(FD-8510T)を用い低温および低圧下で凍結乾燥し、水分を直接昇華させて、ポリマー(1)を得た。
【0062】
ポリマー(1)の核磁気共鳴分析の測定結果を以下に示す。1H NMR(600MHz,CDCl3):4.92-5.10(H-1),4.50-4.11(H-3,4,5),4.11-3.45(H-6),3.22-2.80(H-2)
【0063】
負極活性層組成物の作製
実施例2
SiO/C(酸化ケイ素と炭素の混合物)(Kaijin New Energy Technology Co., Ltd.から取引名KYX-2で市販されている)80.7重量部、導電性カーボンブラック(取引番号Super-PでTimcalから市販されている)12.6重量部、ポリマー(1) 2.9重量部、およびポリアクリル酸(PAA)3.8重量部を混合し、脱イオン水中に均一に溶解して(少なくとも4時間)(固体22.5wt%および脱イオン水77.5wt%)、負極活性層組成物(1)を得た。
【0064】
実施例3
SiO/C(酸化ケイ素と炭素の混合物)(Kaijin New Energy Technology Co., Ltd.から取引名KYX-2で市販されている)78.9重量部、導電性カーボンブラック(取引番号Super-PでTimcalから市販されている)12.3重量部、ポリマー(1)0.5重量部、カルボキシメチルセルロース(CMC)(取引番号CMC-2200でDaicel Chemical industriesから市販されている)4.5重量部、およびスチレンブタジエンゴム(SBR)(取引番号Nippon A&L 307RでCino GroupまたはS-insight technologyから市販されている)3.8重量部を混合し、脱イオン水中に均一に溶解して(少なくとも4時間)(固体22.5wt%および脱イオン水77.5wt%)、負極活性層組成物(2)を得た。
【0065】
実施例4
SiO/C(酸化ケイ素と炭素の混合物)(Kaijin New Energy Technology Co., Ltd. から取引名KYX-2で市販されている)78.7重量部、導電性カーボンブラック(取引番号Super-PでTimcalから市販されている)12.3重量部、ポリマー(1)0.7重量部、カルボキシメチルセルロース(CMC)(取引番号CMC-2200でDaicel Chemical industriesから市販されている)4.5重量部、およびスチレンブタジエンゴム(SBR)(取引番号Nippon A&L 307RでCino GroupまたはS-insight technologyから市販されている)3.8重量部を混合し、脱イオン水中に均一に溶解して(少なくとも4時間)(固体22.5wt%および脱イオン水77.5wt%)、負極活性層組成物(3)を得た。
【0066】
比較例1
SiO/C(酸化ケイ素と炭素の混合物)(Kaijin New Energy Technology Co., Ltd. から取引名KYX-2で市販されている)80.7重量部、導電性カーボンブラック(取引番号Super-PでTimcalから市販されている)12.6重量部、およびポリアクリル酸(PAA)(poly(acrylic acid),PAA)6.7重量部を混合し、脱イオン水中に均一に溶解して(少なくとも4時間)(固体22.5wt%および脱イオン水77.5wt%)、負極活性層組成物(4)を得た。
【0067】
比較例2
SiO/C(酸化ケイ素と炭素の混合物)(Kaijin New Energy Technology Co., Ltd.から取引名KYX-2で市販されている)78.9重量部、導電性カーボンブラック(取引番号Super-PでTimcalから市販されている)12.3重量部、カルボキシメチルセルロース(CMC)(取引番号CMC-2200でDaicel Chemical industriesから市販されている)5重量部、およびスチレンブタジエンゴム(SBR)(取引番号Nippon A&L 307RでCino GroupまたはS-insight technologyから市販されている)3.8重量部を混合し、脱イオン水中に均一に溶解して(少なくとも4時間)(固体22.5wt%および脱イオン水77.5wt%)、負極活性層組成物(5)を得た。
【0068】
比較例3
SiO/C(酸化ケイ素と炭素の混合物)(Kaijin New Energy Technology Co., Ltd.から取引名KYX-2で市販されている)78.9重量部、導電性カーボンブラック(取引番号Super-PでTimcalから市販されている)12.3重量部、キトサン(分子量約300,000)(CAS:9012-76-4、sigma-aldrichから市販されている)0.5重量部、カルボキシメチルセルロース(CMC)(取引番号CMC-2200でDaicel Chemical industriesから市販されている)4.5重量部、およびスチレンブタジエンゴム(SBR)(取引番号Nippon A&L 307RでCino GroupまたはS-insight technologyから市販されている)3.8重量部を混合し、脱イオン水中に均一に溶解して(少なくとも4時間)(固体22.5wt%および脱イオン水77.5wt%)、負極活性層組成物(6)を得た。
【0069】
負極
実施例5
銅箔(取引番号BFR-FでChang Chun Groupから市販されている)(負極集電層となる)を準備した。次いで、その銅箔に負極活性層組成物(1)をブレードコーティングにより塗布し、コーティングを形成した。次いで、圧延機を用い圧縮率25%から30%でそのコーティングを圧延した。次いで、120℃で乾燥した後、負極活性層(1)(厚さ約50μm)を有する負極(1)を得た。
【0070】
負極活性層(1)の抵抗率を四探針抵抗計(DU-5211 Ohm Meter, Delta United)を用いて測定した。その結果は表1に示されている。
【0071】
負極活性層の抵抗率を測定する方法は次のステップを含むものとした。サンプルを四探針抵抗計中に置いた。圧力0.08MPa下で探針をサンプルの表面に接触させた。接触後、四探針抵抗計により抵抗率を測定する前に、システムを3秒静置した。
【0072】
比較例4
負極活性層組成物(1)を負極活性層組成物(4)に置き換えたこと以外、比較例4を実施例5で開示した負極の作製方法と同じ方式で行って、負極活性層(2)(厚さ約50μm)を有する負極(2)を得た。
【0073】
負極活性層(2)の抵抗率を四探針抵抗計(DU-5211 Ohm Meter, Delta United)を用いて測定した。その結果は表1に示されている。
【0074】
【0075】
表1に示されるように、負極活性層の抵抗率は、負極活性層組成物に本開示のポリマーを添加することによって大きく変化することはなかった。
【0076】
実施例6
負極活性層組成物(1)を負極活性層組成物(2)に置き換えたこと以外、実施例6を実施例5で開示した負極の作製方法と同じ方式で行って、負極活性層(3)(厚さ約50μm)を有する負極(3)を得た。
【0077】
負極活性層(3)と負極集電層間の接着力を測定した。その結果は表2に示されている。
【0078】
GB2792-1998に従い、引張試験機(DS2-20N, IMADA)を用い180度剥離試験を行うことで接着力を測定した。
【0079】
実施例7
負極活性層組成物(1)を負極活性層組成物(3)に置き換えたこと以外、実施例7を実施例5で開示した負極の作製方法と同じ方式で行って、負極活性層(4)(厚さ約50μm)を有する負極(4)を得た。
【0080】
負極活性層(4)と負極集電層間の接着力を測定した。その結果は表2に示されている。
【0081】
比較例5
負極活性層組成物(1)を負極活性層組成物(5)に置き換えたこと以外、比較例5を実施例5で開示した負極の作製方法と同じ方式で行って、負極活性層(5)(厚さ約50μm)を有する負極(5)を得た。
【0082】
負極活性層(5)と負極集電層間の接着力を測定した。その結果は表2に示されている。
【0083】
比較例6
負極活性層組成物(1)を負極活性層組成物(6)に置き換えたこと以外、比較例6を実施例5で開示した負極の作製方法と同じ方式で行って、負極活性層(6)(厚さ約50μm)を有する負極(6)を得た。
【0084】
負極活性層(6)と負極集電層間の接着力を測定した。その結果は表2に示されている。
【0085】
【0086】
表2に示されるように、比較例5で得られた負極活性層(5)と比較して、実施例6の負極活性層(3)を作製するのに用いた組成物は本開示のポリマー(カルボキシメチルセルロース(CMC)および活物質と反応することができる)をさらに含んでいることから、負極活性層と負極集電層間の接着力が改善されている。加えて、比較例6で得られた負極活性層(6)と比較して、キトサンがスルホン酸リチウム基を有するキトサンに置換されたため、実施例6では負極活性層と負極集電層間の接着力がより一層改善されている。さらに、実施例6と比較して、実施例7の組成物ではポリマーの量が増えたため、実施例7において負極活性層と負極集電層間の接着力がより一層改善されている。
【0087】
負極の性能(半電池の評価)
【0088】
実施例8
実施例5の負極(1)、ポリプロピレン(PP)セパレータ(取引番号2320でCelgardから市販されている)(厚さ約20μm)、および金属リチウム(直径6mm、厚さ1mm)(対向電極とする)を準備した。
【0089】
次いで、負極、セパレータおよび正極を順次配置し(負極の負極活性層をセパレータに向け、かつ正極のリチウム箔をセパレータに向ける)、コイン型セル(CR2032)(サイズ3.2mm(厚さ)×20mm(幅)×20mm(長さ)中に封止し、次いで液体電解質(S-insight technologyから市販されている)をそのコイン型セル中に注入して、電池(1)を得た。
【0090】
次いで、電池(1)の初回サイクルの充電/放電における充電容量および放電容量を、ポテンショスタット(取引名VMP3でBiologicから市販されている)を用いて定電流(0.1C)、25℃で測定し、不可逆比を決定した。その結果は表3に示されている。次いで、電池(1)の容量維持率を測定した。その結果は表3に示されている。容量維持率は、25℃、0.2C/0.2Cの充電率および放電率における初回サイクル充電/放電での放電比容量(discharge specific capacity)と、50サイクル目の充電/放電での放電比容量とを決定することにより測定した。
【0091】
比較例7
負極(1)を負極(2)に置き換えたこと以外、実施例8の電池を作製する方法と同じ方式で比較例7を行って電池(2)を得た。
【0092】
次いで、電池(2)の初回サイクルの充電/放電における充電容量および放電容量を、ポテンショスタット(取引名VMP3でBiologicから市販されている)を用いて定電流(0.1C)、25℃で測定し、不可逆比を決定した。その結果は表3に示されている。次いで、電池(2)の容量維持率を測定した。その結果は表3に示されている。
【0093】
【0094】
表3に示されるように、本開示のポリマーが負極活性層の組成物にさらに添加されると、電池の初回サイクルの充電/放電の放電容量が改善されると共に、電池のサイクル寿命も延長される。
【0095】
実施例9
負極(1)を負極(3)に置き換えたこと以外、実施例8の電池を作製する方法と同じ方式で実施例9を行って電池(3)を得た。
【0096】
次いで、電池(3)の初回サイクルの充電/放電における充電容量および放電容量を、ポテンショスタット(取引名VMP3でBiologicから市販されている)を用いて定電流(0.1C)、25℃で測定し、不可逆比を決定した。その結果は表4に示されている。次いで、電池(3)の容量維持率を測定した。その結果は表4に示されている。
【0097】
実施例10
負極(1)を負極(4)に置き換えたこと以外、実施例8の電池を作製する方法と同じ方式で実施例10を行って電池(4)を得た。
【0098】
次いで、電池(4)の初回サイクルの充電/放電における充電容量および放電容量を、ポテンショスタット(取引名VMP3でBiologicから市販されている)を用いて定電流(0.1C)、25℃で測定し、不可逆比を決定した。その結果は表4に示されている。次いで、電池(4)の容量維持率を測定した。その結果は表4に示されている。
【0099】
比較例8
負極(1)を負極(5)に置き換えたこと以外、実施例8の電池を作製する方法と同じ方式で比較例8を行って電池(5)を得た。
【0100】
次いで、電池(5)の初回サイクルの充電/放電における充電容量および放電容量を、ポテンショスタット(取引名VMP3でBiologicから市販されている)を用いて定電流(0.1C)、25℃で測定し、不可逆比を決定した。その結果は表4に示されている。次いで、電池(5)の容量維持率を測定した。その結果は表4に示されている。
【0101】
比較例9
負極(1)を負極(6)に置き換えたこと以外、実施例8の電池を作製する方法と同じ方式で比較例9を行って電池(6)を得た。
【0102】
次いで、電池(6)の初回サイクルの充電/放電における充電容量および放電容量を、ポテンショスタット(取引名VMP3でBiologicから市販されている)を用いて定電流(0.1C)、25℃で測定し、不可逆比を決定した。その結果は表4に示されている。次いで、電池(6)の容量維持率を測定した。その結果は表4に示されている。
【0103】
【0104】
表4に示されるように、比較例8の電池(5)と比較して、実施例9の負極を作製するのに用いた組成物は本開示のポリマーをさらに含んでいたため、初回サイクルの充電/放電の放電容量が改善され、不可逆比が低減し、かつ電池のサイクル寿命が延長される。加えて、比較例9の電池(6)の50サイクル目の充電/放電における容量維持率はほとんど0%である。比較例9と比較して、実施例9の負極は、キトサンがスルホン酸リチウム基を有するキトサンに置換されて作製されているため、初回サイクルの充電/放電の放電容量が改善され、不可逆比が低減し、かつ電池のサイクル寿命が延長される。
【0105】
本開示の実施形態によれば、本開示のポリマーは、スルホン酸リチウム基を有するため、水酸基を有する化合物またはケイ素含有化合物と反応することができる。本開示のポリマーの添加によって、本開示の組成物は、リチウム補充機能(lithium replenishment functionality)および高い機械強度を有する構造を形成することができ、これによって電池の効率およびサイクル寿命が向上する。
【0106】
開示された方法および物質に各種変更および変化を加えられるということは、明らかであろう。明細書および例は単なる例示としてみなされるように意図されており、本開示の真の範囲は以下のクレームおよびそれらの均等物によって示される。