(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009429
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】送信器、送信装置、通信装置、および通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/112 20130101AFI20240116BHJP
G01S 7/484 20060101ALI20240116BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H04B10/112
G01S7/484
G01S7/481 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110938
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】高田 紘也
(72)【発明者】
【氏名】水本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】奥村 藤男
【テーマコード(参考)】
5J084
5K102
【Fターム(参考)】
5J084AC02
5J084BA04
5J084BA07
5J084BA36
5J084BB01
5J084BB22
5K102AA21
5K102AH02
5K102AH27
5K102AL23
5K102AL28
5K102MB02
5K102PB14
5K102PC12
5K102PH02
5K102PH03
5K102PH23
5K102PH24
5K102PH25
5K102PH31
5K102RB02
5K102RB03
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】多方向の通信対象に対して、不要な光成分が除去された空間光信号を送信できる送信器等を提供する。
【解決手段】複数の出射器を含む光源と、複数の出射器の各々に対応付けられた複数の変調領域が設定される変調部を有する空間光変調器と、空間光信号として送信される投射光の投射角に応じた曲率を有する曲面状の反射面を有し、空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域の各々で変調された変調光を反射面で反射するように、複数の変調領域の各々に対応付けて配置された複数の曲面ミラーと、空間光変調器と曲面ミラーとの間に配置され、複数の変調領域の各々で変調された変調光に含まれる不要な光成分を除去する遮光帯と、を備える送信器とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の出射器を含む光源と、
複数の前記出射器の各々に対応付けられた複数の変調領域が設定される変調部を有する空間光変調器と、
空間光信号として送信される投射光の投射角に応じた曲率を有する曲面状の反射面を有し、前記空間光変調器の前記変調部に設定された複数の前記変調領域の各々で変調された変調光を前記反射面で反射するように、複数の前記変調領域の各々に対応付けて配置された複数の曲面ミラーと、
前記空間光変調器と前記曲面ミラーとの間に配置され、複数の前記変調領域の各々で変調された前記変調光に含まれる不要な光成分を除去する遮光帯と、を備える送信器。
【請求項2】
前記変調部には、格子状に配列された複数の前記変調領域が割り当てられ、隣接し合う前記変調領域の間には、前記光源に含まれる複数の前記出射器から出射された光が変調されない不感帯が設定される請求項1に記載の送信器。
【請求項3】
前記光源の出射面および前記変調部の変調面の中心点に関して点対称の位置関係にある前記出射器と前記変調領域とが対応付けられる請求項2に記載の送信器。
【請求項4】
前記遮光帯は、
複数の前記変調領域の各々で変調された前記変調光に含まれる0次画像が照射される位置に開口が形成され、前記変調光に含まれる0次光および高次画像の光成分を遮蔽する位置に配置される請求項1に記載の送信器。
【請求項5】
複数の前記曲面ミラーは、互いに異なる投射方向に前記反射面を向けて配置される請求項1に記載の送信器。
【請求項6】
前記曲面ミラーの前記反射面の曲率は、空間光信号を送信する距離に応じた曲率に設定される請求項5に記載の送信器。
【請求項7】
前記遮光帯の第1面に複数の前記出射器が配置され、
前記遮光帯の第2面に冷却機構が形成される請求項1に記載の送信器。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の送信器と、
前記送信器に含まれる空間光変調器の変調部に割り当てられた複数の変調領域の各々に空間光通信に用いられる位相画像を設定し、複数の前記変調領域の各々に対して光が照射されるように、複数の前記変調領域の各々に対応付けられた出射器を制御する制御手段を備える送信装置。
【請求項9】
請求項8に記載の送信装置と、
空間光信号を受信する受信装置と、
前記受信装置によって受信された他の通信装置からの空間光信号に基づく信号を取得し、取得した前記信号に応じた処理を実行し、実行した前記処理に応じた空間光信号を前記送信装置に送信させる制御装置と、を備える通信装置。
【請求項10】
請求項9に記載の通信装置を複数備え、
複数の前記通信装置が、
空間光信号を互いに送受信し合うように配置された通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間を伝搬する光信号を送信する送信器等に関する。
【背景技術】
【0002】
光空間通信においては、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う。空間光信号を広範囲に送信するためには、投射光の投射角ができるだけ大きい方が好ましい。例えば、位相変調型の空間光変調器を含む送光装置を用いれば、空間光変調器の変調部に設定されるパターンを制御することによって、投射角を広げることができる。送光装置を中心として多方向に空間光信号を送信できれば、空間光信号を用いた通信ネットワークを構築できる。
【0003】
特許文献1には、空間光変調器を含む送光装置について開示されている。特許文献1の装置は、空間光変調器、光源、投射光学系、および送光制御手段を備える。空間光変調器の変調部には、第1領域および第2領域が割り当てられる。送光制御手段は、第1領域に、通信信号の位相画像のパターンを設定する。送光制御手段は、第2領域に、通信信号のゴースト像に重ねられるダミー信号の位相画像のパターンを設定する。光源は、第1光源および第2光源を有する。第1光源は、通信信号を送光するための光を、第1領域に向けて出射する。第2光源は、ダミー信号を送光するための光を、第2領域に向けて出射する。投射光学系は、第1光源および第2光源から出射されて、変調部で変調された光を、空間光信号として送光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置は、異なる方向に投射される空間光信号を送信するためのパターンを、空間光変調器の変調部に割り当てられた2つの領域に個別に設定する。特許文献1の装置は、変調部に割り当てられた2つの領域に対して、それらの領域の各々に対応付けられた光源から光を照射する。特許文献1の手法では、空間光変調器の変調部を2分割することによって、異なる方向に空間光信号を投射する。
【0006】
空間光変調器の変調部をさらに分割すれば、空間光信号をより多方向に送信できる。空間光変調素子を用いた画像の投射においては、回折によって高次の像が発生する。空間光変調素子の変調部を複数の領域に分割し、隣接する領域の間に隔壁を設ければ、隔壁の位置における高次の像を除去できる。しかし、空間光変調素子の変調部に隔壁を設けると、変調部に対する光の入射角度が限定され、光源の数に制約が生じる。そのため、隔壁を用いて変調部を複数の領域に分割する場合、分割できる領域の数に限界があるため、通信可能な通信対象の数に制約があった。
【0007】
本開示の目的は、多方向の通信対象に対して、不要な光成分が除去された空間光信号を送信できる送信器等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の送信器は、複数の出射器を含む光源と、複数の出射器の各々に対応付けられた複数の変調領域が設定される変調部を有する空間光変調器と、空間光信号として送信される投射光の投射角に応じた曲率を有する曲面状の反射面を有し、空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域の各々で変調された変調光を反射面で反射するように、複数の変調領域の各々に対応付けて配置された複数の曲面ミラーと、空間光変調器と曲面ミラーとの間に配置され、複数の変調領域の各々で変調された変調光に含まれる不要な光成分を除去する遮光帯と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、多方向の通信対象に対して、不要な光成分が除去された空間光信号を送信できる送信器等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る送信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図2】第1の実施形態に係る送信装置が備える光源の構成の一例を示す概念図である。
【
図3】第1の実施形態に係る送信装置が備える光源に含まれる出射器の構成例を示す概念図である。
【
図4】第1の実施形態に係る送信装置が備える光源に含まれる出射器の構成例を示す概念図である。
【
図5】第1の実施形態に係る送信装置が備える空間光変調器の変調部に割り当てられた複数の変調領域の一例を示す概念図である。
【
図6】第1の実施形態に係る送信装置が備える空間光変調器の変調部に割り当てられた変調領域に対する光の照射例を示す概念図である。
【
図7】第1の実施形態に係る送信装置が備える遮光帯の構成の一例を示す概念図である。
【
図8】第1の実施形態に係る送信装置が備える空間光変調器の変調部で変調された変調光に含まれる高次画像について説明するための概念図である。
【
図9】第1の実施形態に係る送信装置が備える遮光帯による高次画像の遮蔽について説明するための概念図である。
【
図10】第1の実施形態に係る送信装置が備える光源、空間光変調器、および遮光帯の配置例について説明するための概念図である。
【
図11】第1の実施形態に係る送信装置が備える光源、空間光変調器、および遮光帯の配置例について説明するための概念図である。
【
図12】第1の実施形態に係る送信装置による空間光信号の投射例を示す概念図である。
【
図13】第1の実施形態に係る送信装置による空間光信号の投射例を示す概念図である。
【
図14】第1の実施形態に係る送信装置による空間光信号の投射例を示す概念図である。
【
図15】第1の実施形態に係る送信装置による空間光信号の投射例を示す概念図である。
【
図16】第1の実施形態に係る送信装置が備える光源が配置される位置について説明するための概念図である。
【
図17】第1の実施形態に係る送信装置が備える光源、空間光変調器、および遮光帯の配置例について説明するための概念図である。
【
図18】第1の実施形態に係る送信装置が備える光源、空間光変調器、および遮光帯の配置例について説明するための概念図である。
【
図19】第1の実施形態に係る送信装置が備える光源、空間光変調器、および遮光帯の配置例について説明するための概念図である。
【
図20】第1の実施形態に係る送信装置が備える遮光帯の構成の一例を示す概念図である。
【
図21】第1の実施形態に係る送信装置が備える遮光帯の構成の一例を示す概念図である。
【
図22】第2の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図23】第2の実施形態に係る通信装置が備える受信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図24】第2の実施形態の適用例1について説明するための概念図である。
【
図25】第2の実施形態の適用例1について説明するための概念図である。
【
図26】第2の実施形態の適用例1に係る通信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図27】第2の実施形態の適用例1に係る通信装置が備える送信機構の構成の一例を示す概念図である。
【
図28】第2の実施形態の適用例1に係る通信装置が備える受信機構の構成の一例を示す概念図である。
【
図29】第2の実施形態の適用例1に係る通信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図30】第2の実施形態の適用例1に係る通信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図31】第2の実施形態の適用例1に係る通信装置による空間光信号を用いた通信の一例について説明するための概念図である。
【
図32】第2の実施形態の適用例1に係る通信装置による空間光信号を用いた通信の一例について説明するための概念図である。
【
図33】第2の実施形態の適用例1に係る通信装置による空間光信号を用いた通信の一例について説明するための概念図である。
【
図34】第2の実施形態の適用例2について説明するための概念図である。
【
図35】第2の実施形態の適用例2に係る通信装置による空間光信号の投射範囲について説明するための概念図である。
【
図36】第2の実施形態の適用例2に係る通信装置が備える送信機構の構成の一例を示す概念図である。
【
図37】第2の実施形態の適用例2に係る通信装置による空間光信号の送信について説明するための概念図である。
【
図38】第2の実施形態の適用例2に係る通信装置から送信されるパルス状の光について説明するための概念図である。
【
図39】第2の実施形態の適用例2に係る通信装置のドローンへの搭載例を示す概念図である。
【
図40】第2の実施形態の適用例3について説明するための概念図である。
【
図41】第2の実施形態の適用例3に係る通信装置による空間光信号の投射範囲について説明するための概念図である。
【
図42】第2の実施形態の適用例4について説明するための概念図である。
【
図43】第3の実施形態に係る送信器の構成の一例を示す概念図である。
【
図44】各実施形態に係る処理や制御を実行するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0012】
以下の実施形態の説明に用いる全図において、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、光や信号の向きを限定するものではない。また、図面中の光の軌跡を示す線は、概念的なものであり、実際の光の進行方向や状態を正確に表すものではない。例えば、図面においては、空気と物質との界面における屈折や反射、拡散などによる光の進行方向や状態の変化を省略したり、光束を一本の線で表現したりすることもある。また、光の経路の一例を図示したり、構成が込み合ったりする等の理由により、断面にハッチングを施さない場合がある。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、本実施形態に係る送信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の送信装置は、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う光空間通信に用いられる。本実施形態の送信装置は、空間を伝搬する光を送光する用途であれば、光空間通信以外の用途に用いられてもよい。なお、本実施形態の説明で用いられる図面は、概念的なものであり、実際の構造を正確に描写したものではない。
【0014】
(構成)
図1は、本実施形態に係る送信装置10の構成の一例を示す概念図である。送信装置10は、光源11、空間光変調器12、遮光帯13、曲面ミラー14、および制御部15を備える。光源11、空間光変調器12、遮光帯13、および曲面ミラー14は、送信器100を構成する。
図1は、送信装置10の内部構成を横方向から見た側面図である。送信装置10の内部構成の一部(遮光帯13)は、断面を示す。
図1は、概念的なものであり、各構成要素の形状や、構成要素間の位置関係、光の進行などを正確に表したものではない。
図1には、遮光帯13を1つしか図示していないが、送信装置10は、複数の遮光帯13を備えてもよい。また、
図1には、曲面ミラー14を1つしか図示していないが、送信装置10は、投射光104の投射方向に応じた数の曲面ミラー14を備える。
【0015】
光源11は、制御部15の制御に応じて、平行光101を出射する。
図2は、光源11の構成の一例を示す概念図である。光源11は、複数の出射器110-1~12を含む。複数の出射器110-1~12の各々は、空間光変調器12の変調部120に設定された複数の変調領域の各々に、対応付けられる。複数の出射器110-1~12の出射面は、対応付けられた変調領域に向けられる。本実施形態においては、複数の出射器110-1~12の出射面と、空間光変調器12の変調部120とは、互いに対面するように配置される。複数の出射器110-1~12と、空間光変調器12の変調部120に設定された複数の変調領域とは、斜向かいの位置関係にあるものが対応付けられる。複数の出射器110-1~12の各々は、対応付けられた変調領域に向けて、平行光101を出射する。なお、光源11に含まれる出射器110の数は、12個に限定されない。出射器110の数は、12個未満であってもよいし、13個以上であってもよい。
【0016】
光源11に含まれる出射器110は、制御部15の制御に応じて、所定の波長帯のレーザ光を出射する。出射器110から出射されるレーザ光の波長は、特に限定されず、用途に応じて選定されればよい。例えば、出射器110は、可視や赤外の波長帯のレーザ光を出射する。例えば、800~900ナノメートル(nm)の近赤外線であれば、レーザクラスをあげられるので、他の波長帯よりも1桁くらい感度を向上できる。例えば、1.55マイクロメートル(μm)の波長帯の赤外線ならば、高出力のレーザ光源を用いることができる。1.55μmの波長帯の赤外線を出射するレーザ光源としては、アルミニウムガリウムヒ素リン(AlGaAsP)系レーザ光源や、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)系レーザ光源などを用いることができる。レーザ光の波長が長い方が、回折角を大きくでき、高いエネルギーに設定できる。
【0017】
光源11は、コリメータ(図示しない)を含む。コリメータは、複数の出射器110-1~12の各々に配置される。コリメータは、出射器110から出射されたレーザ光を、平行光101に変換する。変換後の平行光101は、光源11から出射される。光源11から出射された平行光101は、空間光変調器12の変調部120に向けて進行する。なお、光源11と空間光変調器12との距離などに応じて、コリメータが省略されてもよい。
【0018】
例えば、光源に含まれる出射器110は、面発光型レーザによって実現される。面発光型レーザの一例として、VCSEL(Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser)があげられる。VCSEL型レーザは、円形広放射のレーザ光を出射する。また、面発光型レーザの一例として、PCSEL(Photonic Crystal Surface Emitting Laser)があげられる。PCSEL型レーザは、円形狭放射のレーザ光を出射する。VCSEL型レーザと比べて、PCSEL型レーザは、均一なレーザ光を出射する。
【0019】
例えば、光源に含まれる出射器110は、ファイバアレイ型レーザによって実現される。ファイバアレイ型レーザは、レーザ光源と出射部(コリメータ)が、光導波路(光ファイバ)によって接続される。レーザ光源から出射されたレーザ光は、導波路を通じて、出射部から出射される。ファイバアレイ型レーザを用いれば、レーザ光源と出射部とを異なる位置に配置できる。そのため、ファイバアレイ型レーザを用いれば、平行光101の出射部と空間光変調器12とを近接させても、レーザ光源を空間光変調器12から離れた位置に配置できるため、熱的な問題を解消できる。以下に、ファイバアレイ型レーザの構成例を2つあげる。
【0020】
図3は、光源11に含まれる出射器110の第1例(出射器111)の構成を示す概念図である。出射器111は、3つの出射器110が一体化されたファイバアレイ型レーザの一例である。出射器111は、変調ドライバ112、レーザ光源113、光ファイバ114、およびマイクロコリメータ115を3組含む。変調ドライバ112は、レーザ光源113を駆動させて、レーザ光源113から出射されるレーザ光を変調する。レーザ光源113は、直接変調可能なレーザ光源である。レーザ光源113は、変調ドライバ112による駆動に応じて、変調されたレーザ光を出射する。レーザ光源113から出射されたレーザ光は、光ファイバ114を通じて、マイクロコリメータ115に向けて進行する。光ファイバ114は、レーザ光源113から出射されたレーザ光を、マイクロコリメータ115に向けて導光する光導波路である。光ファイバ114の材質は、レーザ光源113から出射されるレーザ光の波長帯に応じて、選択される。マイクロコリメータ115には、光ファイバ114を通じて、レーザ光が入射する。マイクロコリメータ115は、入射したレーザ光を平行光101に変換する。例えば、マイクロコリメータ115は、マイクロオプティクス化されて、一体で形成される。変換後の平行光101は、光源11から出射される。
【0021】
図4は、光源11に含まれる出射器110の第2例(出射器121)の構成を示す概念図である。出射器121は、3つの出射器110が一体化されたファイバアレイ型レーザの一例である。出射器121は、直流電流源122、レーザ光源123、光ファイバ124、変調器125、およびマイクロコリメータ126を含む。変調器125およびマイクロコリメータ126は、マイクロコリメータ付き外部変調器アレイ127を構成する。出射器121は、直流電流源122およびレーザ光源123を1組含む。出射器110は、変調器125およびマイクロコリメータ126を3組含む。直流電流源122は、レーザ光源123に直流電流を供給する電流源である。レーザ光源123は、連続的にレーザ出力を発振するCW(Continuous Wave)レーザ光源である。レーザ光源123は、直流電流源122からの直流電流の供給に応じて、レーザ光を出射する。レーザ光源123から出射されたレーザ光は、光ファイバ124を通じて、変調器125に向けて進行する。光ファイバ124は、レーザ光源123から出射されたレーザ光を、変調器125に向けて導光する光導波路である。光ファイバ124の材質は、レーザ光源123から出射されるレーザ光の波長帯に応じて、選択される。光ファイバ124は、変調器125とマイクロコリメータ126の間にも配置される。変調器125には、光ファイバ124を通じて、レーザ光が入射する。変調器125は、マッハツェンダ型の光変調器である。変調器125は、電界吸収型の光変調器であってもよい。変調器125は、入射したレーザ光を変調する。マイクロコリメータ126には、変調器125によって変調されたレーザ光が入射する。マイクロコリメータ126は、入射したレーザ光を平行光101に変換する。例えば、マイクロコリメータ126は、マイクロオプティクス化されて、一体で形成される。変換後の平行光101は、光源11から出射される。
【0022】
空間光変調器12は、位相変調型の空間光変調器である。空間光変調器12は、変調部120を有する。変調部120には、複数の変調領域が設定される。変調部120に設定される変調領域の数は、光源11に含まれる出射器110の数に合わせて設定される。
【0023】
図5は、変調部120に設定される複数の変調領域Mの一例を示す概念図である。
図5の例では、12個の変調領域M-1~12が設定される。隣接し合う変調領域Mの間には、不感帯が設定される。不感帯には、黒いストライプ状の位相画像が設定される。例えば、変調部120の画素が1090行×1920列の場合、不感帯の幅を50画素に設定すれば、1つの変調領域Mに対して515行×278列の画素を確保できる。
【0024】
複数の変調領域M-1~12の各々は、光源11に含まれる複数の出射器110-1~12の各々に、対応付けられる。複数の出射器110-1~12と、複数の変調領域M-1~12とは、斜向かいの位置関係にあるものが対応付けられる。複数の変調領域M-1~12の各々には、対応付けられた出射器110から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。複数の変調領域M-1~12の各々には、変調部120の長軸方向および短軸方向に対して、斜めに平行光101が照射される。本実施形態においては、光源11の出射面および変調部120の中心点に関して点対称の位置関係にある、出射器110と変調領域Mとが対応付けられる。このような位置関係で対応付けられれば、光源11と空間光変調器12とを近づけても、出射器110と変調領域Mとの距離を十分に取れる。そのため、送信器100のサイズを小型化できる。
【0025】
変調領域M-1には、出射器110-1から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。変調領域M-2には、出射器110-2から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。変調領域M-3には、出射器110-3から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。変調領域M-4には、出射器110-4から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。変調領域M-5には、出射器110-5から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。変調領域M-6には、出射器110-6から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。変調領域M-7には、出射器110-7から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。変調領域M-8には、出射器110-8から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。変調領域M-9には、出射器110-9から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。変調領域M-10には、出射器110-10から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。変調領域M-11には、出射器110-11から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。変調領域M-12には、出射器110-12から出射されたレーザ光に由来する平行光101が照射される。なお、出射器110から出射されたレーザ光に由来する平行光101が、変調領域Mの変調面に対して斜めに入射されれば、変調領域Mと出射器110との対応関係は、上記の対応関係に限定されない。
【0026】
図6は、変調部120に設定された変調領域Mに照射される平行光101の照射パターンについて説明するための概念図である。
図6には、平行光101の照射パターンをハッチングで示す。変調領域M-1には、矩形状の照射パターンで平行光101が照射される。矩形状の照射パターンは、不感帯へのはみだしがなく、理想的なパターンである。矩形状の照射パターンで平行光を照射するためには、ビーム成形のための光学系が必要となる。
【0027】
変調領域M-2~3には、円形状の照射パターンで平行光101が照射される。MR-2に照射された円形状の照射パターンは、不感帯へのはみだしがなく、平行光101が照射される領域の面積が小さい。MR-3に照射された円形状の照射パターンは、不感帯へはみ出す。MR-2に照射された円形状の照射パターンと比べて、MR-3に照射された円形状の照射パターンは、平行光101が照射される領域の面積が大きい。面発光型レーザであれば、変調領域M-2~3の照射パターンを実現できる。照射径の広がりが小さければ、変調領域M-3の照射パターンを実現できる。
【0028】
変調領域M-8~9には、楕円形状の照射パターンで平行光101が照射される。MR-8に照射された楕円形状の照射パターンは、不感帯へのはみだしがなく、MR-2に照射された円形状の照射パターンと比べて、平行光101が照射される領域の面積が大きい。MR-9に照射された円形状の照射パターンは、不感帯へはみ出す。MR-8に照射された楕円形状の照射パターンと比べて、MR-9に照射された円形状の照射パターンは、平行光101が照射される面積が大きい。エッジエミッタ型の半導体レーザは、楕円形状のビームを放出する。エッジエミッタ型レーザであれば、変調領域M-8~9の照射パターンを実現できる。照射径の広がりが小さければ、変調領域M-8の照射パターンを実現できる。エッジエミッタ型の半導体レーザであれば、楕円の長軸方向と偏光方向がそろっているので、複雑なコリメート系が不要である。
【0029】
変調領域M-10~11には、2つの円形状の照射パターンで平行光101が照射される。変調領域M-10~11の照射パターンの場合、1つの変調領域Mに対して、2つの出射器110が構成される。MR-11に照射された2つの円形状の照射パターンは、不感帯へのはみだしがなく、MR-2に照射された円形状の照射パターンと比べて、平行光101が照射される領域の面積が大きい。MR-12に照射された2つの円形状の照射パターンは、不感帯へはみ出す。MR-10に照射された2つの円形状の照射パターンと比べて、MR-12に照射された2つの円形状の照射パターンは、平行光101が照射される面積が大きい。面発光型レーザであれば、変調領域M-10~11の照射パターンを実現できる。照射径の広がりが小さければ、変調領域M-11の照射パターンを実現できる。
【0030】
複数の変調領域Mの各々には、制御部15の制御に応じて、投射光104によって表示される像に応じたパターン(位相画像とも呼ぶ)が設定される。変調部120に設定された複数の変調領域M-1~12の各々に入射した平行光101は、複数の変調領域M-1~12の各々に設定されたパターン(位相画像)に応じて変調される。複数の変調領域M-1~12の各々で変調された変調光102は、それらの変調領域M-1~12の各々に対応付けられた曲面ミラー14の反射面140に向けて進行する。
【0031】
例えば、空間光変調器12は、強誘電性液晶やホモジーニアス液晶、垂直配向液晶などを用いた空間光変調器によって実現される。例えば、空間光変調器12は、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)によって実現できる。また、空間光変調器12は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)によって実現されてもよい。位相変調型の空間光変調器12では、投射光104を投射する箇所を順次切り替えるように動作させることによって、エネルギーを像の部分に集中することができる。そのため、位相変調型の空間光変調器12を用いる場合、光源11の出力が同じであれば、その他の方式と比べて画像を明るく表示させることができる。
【0032】
複数の変調領域Mは、複数の領域に分割される(タイリングとも呼ぶ)。例えば、変調領域Mは、所望のアスペクト比の領域(タイルとも呼ぶ)に分割される。変調領域Mに設定された複数のタイルの各々には、位相画像が割り当てられる。複数のタイルの各々は、複数の画素によって構成される。複数のタイルの各々には、投射される画像に対応する位相画像が設定される。
【0033】
変調領域Mに割り当てられた複数のタイルの各々には、位相画像がタイリングされる。例えば、複数のタイルの各々には、予め生成された位相画像が設定される。複数のタイルに位相画像が設定された状態で、変調領域Mに平行光101が照射されると、各タイルの位相画像に対応する画像を形成する変調光102が出射される。変調領域Mに設定されるタイルが多いほど、鮮明な画像を表示させることができるが、各タイルの画素数が低下すると解像度が低下する。そのため、変調領域Mに設定されるタイルの大きさや数は、用途に応じて設定される。
【0034】
遮光帯13は、空間光変調器12と曲面ミラー14との間に配置される。遮光帯13には、投射光104として投射される変調光102を通過させる、開口130が形成される。遮光帯13は、変調光102に含まれる0次光を遮蔽する。また、遮光帯13は、変調光102に含まれる0次画像の周辺を遮蔽する。すなわち、遮光帯13は、変調光に含まれる0次光および高次画像を形成する光成分を遮蔽する。
【0035】
図7は、遮光帯13の一例を示す概念図である。
図7の遮光帯13は、
図5~
図6のように設定された複数の変調領域Mのうち、変調部120の下段に設定された6つの変調領域M-1~6、または、変調部120の上段に設定された6つの変調領域M-7~12に対応する。後述するように、下段に設定された変調領域M-1~6および上段に設定された変調領域M-7~12の各々に対応させて、2つの遮光帯13が配置される。具体的な遮光帯13の配置については、後述する。
【0036】
遮光帯13には、複数の変調領域Mの各々に対応付けられた投射範囲が設定される。各々の投射範囲には、開口130が形成される。開口130は、変調光102によって形成される画像のうち、0次画像を形成する光成分を通過させる部分である。開口130は、変調光102に含まれる0次光が照射される位置を避けて形成される。すなわち、変調光102に含まれる0次光は、遮光帯13で遮蔽されるため、曲面ミラー14に向けて進行しない。
【0037】
図8は、空間光変調器12の変調部120で変調された変調光102によって形成される画像について説明するための概念図である。位相変調型の空間光変調器12を用いる場合、回折現象を利用して画像を結像させるため、回折格子と同じように高次画像が発生する。
図8の例では、中央の0次画像が投射対象の画像であり、1次画像以上の次数の画像が高次画像である。高次画像は、次数の増加に応じて電力が低くなるため、次数が大きくなるほど視認しづらくなる。しかし、高次画像は、完全に視認できなくなるわけではない。例えば、空間光変調器12の変調部120を複数の変調領域Mに分割する場合、隣接する変調領域Mの間に隔壁を設ければ、高次画像を除去できる。しかし、隔壁を設けると、平行光101の照射角度が制限され、変調部120の分割数に限界が生じる。
【0038】
図9は、遮光帯13による高次画像の遮蔽の一例について説明するための概念図である。空間光変調器12の変調部120に照射された平行光101は、変調部120で変調光102に変調される。変調光102に含まれる0次画像を形成する光成分の大部分は、遮光帯13の開口130を通過する。変調光102に含まれる0次画像を形成する光成分のうち、周辺部分の画像を形成する光成分は、遮光帯13で遮蔽される。また、変調光102に含まれる1次画像を形成する光成分は、遮光帯13で遮蔽される。2次以上の高次画像は、輝度が低下しているうえに、平行光101の照射角度に応じた方向に投射されるため、大部分が送信装置10の筐体(図示しない)の外部に投射されない。
【0039】
本実施形態では、複数の変調領域Mを不感帯で分割するため、平行光101の照射角度の制限がない。そのため、本実施形態によれば、隔壁を設ける場合と比較して、変調部120をより多くの変調領域Mに分割できる。また、本実施形態によれば、空間光変調器12の変調部120に対する平行光101の入射角度を大きくすることができるので、光源11を空間光変調器12に近づけることができる。例えば、光源11に含まれる出射器110に面発光型レーザを用いれば、光源11からコリメータを排除できる。
【0040】
図10~
図11は、光源11、空間光変調器12、および遮光帯13の配置例を示す概念図である。
図10は、空間光変調器12の長軸方向から見た図である。
図11は、空間光変調器12の短軸方向から見た図である。
図10~
図11においては、重なり合う構成を省略して図示する。
図10~
図11には、光源から出射された平行光101や、空間光変調器12の変調部120で変調された変調光102の光路を、概念的に示す。遮光帯13は、複数の出射器110から出射される平行光101の光路から外れた位置に配置される。
図10~
図11の例では、空間光変調器12と遮光帯13との間隔と比べて、光源11と空間光変調器12との間隔の方が大きい。
【0041】
複数の出射器110から出射された平行光101は、空間光変調器12の変調部120に照射される。複数の出射器110の各々から出射された平行光101は、対応付けられた変調領域Mに照射される。変調部120に対する平行光101は、空間光変調器12の長軸および短軸の両方に対して、角度を付けて入射される。すなわち、変調部120の面に対して、平行光101は、非垂直に照射される。変調部120に設定された複数の変調領域Mの各々で変調された変調光102は、それらの変調領域Mの各々が対応付けられた曲面ミラー14の反射面140に向けて進行する。変調光102のうち、0次光および高次画像を形成する光成分は、遮光帯13で遮蔽される。変調光102のうち、0次画像を形成する光成分は、遮光帯13の開口130を通過して、曲面ミラー14の反射面140に向けて進行する。
【0042】
曲面ミラー14は、曲面状の反射面140を有する反射鏡である。曲面ミラー14は、空間光変調器12の変調部120に設定された複数の変調領域Mの各々に対応付けて、1つずつ配置される。本実施形態では、12個の変調領域Mの各々に対応付けて、12個の曲面ミラー14が配置される。曲面ミラー14の反射面140は、投射光104の投射角に応じた曲率を有する。曲面ミラー14の反射面140は、曲面状の部分を含めば、その形状に限定を加えない。例えば、曲面ミラー14の反射面140は、円柱の側面の形状を有する。例えば、曲面ミラー14の反射面140は、自由曲面や球面でもよい。例えば、曲面ミラー14の反射面140は、単一の曲面ではなく、複数の曲面を組み合わせた形状であってもよい。例えば、曲面ミラー14の反射面140は、曲面と平面を組み合わせた形状であってもよい。
【0043】
曲面ミラー14は、空間光変調器12の変調部120に設定された変調領域Mに向けて、反射面140を向けて配置される。曲面ミラー14は、変調光102の光路上に配置される。反射面140には、変調部120で変調された変調光102のうち、遮光帯13の開口130を通過した光成分が照射される。反射面140に照射された変調光102は、その反射面140で反射される。反射面140で反射された光(投射光104)は、その反射面140の曲率に応じた拡大率で拡大されて、投射される。
【0044】
図12~
図13は、曲面ミラー14による光の反射に関する一例について説明するための概念図である。
図12~
図13は、360度の方向に向けて空間光信号(投射光104)が投射される例である。
図12は、空間光変調器12の短軸方向から見た図である。
図13は、空間光変調器12の裏側から見た図である。
図12~
図13においては、遮光帯13を省略する。複数の曲面ミラー14は、空間光変調器12の変調部120に設定された複数の変調領域Mのいずれかに対応付けられる。
図12~
図13の例の場合、投射光104は、曲面ミラー14の反射面140における変調光102の照射範囲の曲率に応じて、水平方向(
図13の紙面に対して垂直方向)に沿って拡大される。また、投射光104は、送信装置21から離れるにつれて、垂直方向(
図13の紙面における上下方向)にも拡大される。
【0045】
複数の曲面ミラー14は、異なる方向に反射面140を向けて配置される。左側に配置された6つの曲面ミラー14の反射面140は、
図13の紙面の面内において、左方に向けられる。左側に配置された6つの曲面ミラー14の反射面140は、
図13の紙面の面内における左方の180度の投射範囲を担当する。右側に配置された6つの曲面ミラー14の反射面140は、
図13の紙面の面内において、右方に向けられる。右側に配置された6つの曲面ミラー14の反射面140は、
図13の紙面の面内における右方の180度の投射範囲を担当する。例えば、1つの曲面ミラー14の投射角が30度以上に設定されれば、12個の曲面ミラー14が担当する投射角を合計すると、360度の投射範囲をカバーできる。
【0046】
図14~
図15は、曲面ミラー14による光の反射に関する別の一例について説明するための概念図である。
図14~
図15は、180度の方向に向けて空間光信号(投射光104)が投射される例である。
図14は、空間光変調器12の短軸方向から見た図である。
図15は、空間光変調器12の裏側から見た図である。
図14~
図15においては、遮光帯13を省略する。複数の曲面ミラー14は、空間光変調器12の変調部120に設定された複数の変調領域Mのいずれかに対応付けられる。
図14~
図15の例の場合、投射光104は、曲面ミラー14の反射面140における変調光102の照射範囲の曲率に応じて、水平方向(
図15の紙面に対して垂直方向)に沿って拡大される。また、投射光104は、送信装置21から離れるにつれて、垂直方向(
図15の紙面における上下方向)にも拡大される。
【0047】
複数の曲面ミラー14は、異なる方向に反射面140を向けて配置される。左側に配置された6つの曲面ミラー14の反射面140は、
図15の紙面の面内において、左方に向けられる。左側に配置された6つの曲面ミラー14の反射面140は、
図15の紙面の面内における左方の上半分に相当する90度の投射範囲を担当する。右側に配置された6つの曲面ミラー14の反射面140は、
図15の紙面の面内において、左方に向けられる。右側に配置された6つの曲面ミラー14の反射面140は、
図15の紙面の面内における左方の下半分に相当する90度の範囲を担当する。例えば、1つの曲面ミラー14の投射角が15度以上に設定されれば、12個の曲面ミラー14が担当する投射角を合計すると、左方の180度の投射範囲をカバーできる。
【0048】
送信装置10には、曲面ミラー14の代わりに、フーリエ変換レンズや投射レンズ等を含む投射光学系が設けられてもよい。また、送信装置10は、曲面ミラー14や投射光学系を含まずに、空間光変調器12の変調部120で変調された光をそのまま投射するように、構成されてもよい。
【0049】
制御部15は、光源11および空間光変調器12を制御する。例えば、制御部15は、プロセッサとメモリを含むマイクロコンピュータによって実現される。制御部15は、空間光変調器12の変調部120に設定されたタイリングのアスペクト比に合わせて、投射される画像に対応する位相画像を変調部120に設定する。制御部15は、空間光変調器12の変調部120に設定された複数の変調領域Mの各々に、投射される画像に対応する位相画像を設定する。例えば、制御部15は、画像表示や通信、測距など、用途に応じた画像に対応する位相画像を変調部120に設定する。投射される画像の位相画像は、記憶部(図示しない)に予め記憶させておけばよい。投射される画像の形状や大きさには、特に限定を加えない。
【0050】
制御部15は、空間光変調器12の変調部120に照射される平行光101の位相と、その変調部120で反射される変調光102の位相との差分を決定づけるパラメータが変化するように、空間光変調器12を制御する。例えば、パラメータは、屈折率や光路長などの光学的特性に関する値である。例えば、制御部15は、空間光変調器12の変調部120に印加する電圧を変化させることによって、変調部120の屈折率を調節する。位相変調型の空間光変調器12の変調部120に照射された平行光101の位相分布は、変調部120の光学的特性に応じて変調される。なお、制御部15による空間光変調器12の駆動方法は、空間光変調器12の変調方式に応じて決定される。
【0051】
制御部15は、表示される画像に対応する位相画像が変調部120に設定された状態で、光源11を駆動させる。その結果、空間光変調器12の変調部120に位相画像が設定されたタイミングに合わせて、光源11から出射された平行光101が空間光変調器12の変調部120に照射される。空間光変調器12の変調部120に照射された平行光101は、空間光変調器12の変調部120において変調される。空間光変調器12の変調部120において変調された変調光102は、曲面ミラー14の反射面140に向けて出射される。
【0052】
例えば、送信装置21に含まれる曲面ミラー14の反射面140の曲率と、空間光変調器12と曲面ミラー14の距離とを調整すれば、投射光104の投射角を任意の角度に設定できる。また、送信装置21の内部で変調光102の光路上に平面鏡が配置されれば、投射光104の投射角を多様に設定できる。例えば、360度の向きに投射光を投射するように構成された送信装置10と、360度の方向から到来する空間光信号を受光するように構成された受信装置とを組み合わせた構成とする。このような構成とすれば、360度の向きに空間光信号を送信し、360度の方向から到来する空間光信号を受光する通信装置を実現できる。
【0053】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下においては、光源が配置される位置が異なる変形例(変形例1)と、遮光帯13の構造が異なる変形例(変形例2)とをあげる。以下の変形例は、一例であって、本実施形態の変形例を限定するものではなに。
【0054】
〔変形例1〕
図16は、光源11が配置される位置について説明するための概念図である。
図16は、空間光変調器12の短軸方向から見た図である。光源11は、
図16に示す3通りの位置に配置することができる。位置Aは、空間光変調器12と遮光帯13との間の領域R
Aである。位置Bは、遮光帯13と曲面ミラー14との間の領域R
Bである。位置Cは、空間光変調器12から見て、曲面ミラー14よりも遠い領域R
Cである。空間光変調器12との距離は、位置Aが最も近く、位置Cが最も遠い。上述した
図12~
図15の例は、光源11が位置Bに設置された例である。
【0055】
VCSELは、面発光であり、放射角が比較的広い。そのため、VCSELで構成された出射器110は、位置Aに配置できる。位置Aに配置された場合、出射器110からコリメータを省略できる。位置Cに配置された場合、出射器110にはコリメータが必要である。PCSELは、面発光であり、放射角が比較的狭い。そのため、有効発光面積が少し大きめに設定することで、PCSELで構成された出射器110は、位置Cに配置されてもコリメータを省略できる。PCSELは、高出力化に有利である。
【0056】
図17~
図18は、空間光変調器12と遮光帯13との間の領域R
A(
図16の位置A)に、光源11が配置された例(変形例1)である。
図17は、空間光変調器12の長軸方向から見た図である。
図18は、空間光変調器12の短軸方向から見た図である。
図17~
図18においては、重なり合う構成を省略して図示する。遮光帯13は、複数の出射器110から出射される平行光101の光路から外れた位置に配置される。本変形例のように、光源11を空間光変調器12に近接させれば、送信装置10を小型化できる。本変形例のように構成されても、光源11に含まれる出射器110のレーザ光の出射角が十分に大きければ、多方向に空間光信号を送信できる。また、本変形例のように構成する場合、光源11からコリメータを省略できる。
【0057】
〔変形例2〕
図19~
図21は、一体化された遮光帯13の一例(変形例2)である。本変形例の遮光帯131には、12個の開口132が形成される。光源11を構成する複数の出射器110は、遮光帯131の一方の面上に配列される。複数の出射器110が配列された面(出射面)は、空間光変調器12の変調部120に向けられる。
【0058】
出射面の反対側の面には、放熱機構135が形成される。放熱機構135は、出射器110によるレーザ光の出射に応じて発生した熱を放熱する。例えば、遮光帯131は、熱伝導率の高い金属やカーボン、樹脂等を材質とする。効率的に放熱できれば、放熱機構135の形状については、特に限定を加えない。放熱機構135は、送信装置10の筐体(図示しない)に熱的に接続されてもよい。熱伝導性の高い筐体であれば、効率的に排熱できる。
【0059】
図19~
図21の構成によれば、光源11と遮光帯131を一体化できる。また、
図19~
図21の構成によれば、放熱機構135を設けることによって、出射器110から発せられた熱を効率的に排熱できる。なお、
図19~
図21の構成において、放熱機構135が省略されてもよい。
【0060】
以上のように、本実施形態の送信装置は、光源、空間光変調器、遮光帯、複数の曲面ミラー、および制御部を備える。光源は、複数の出射器を含む。光源は、平行光を出射する。空間光変調器は、変調部を有する。変調部には、複数の出射器の各々に対応付けられた複数の変調領域が設定される。制御部は、空間光変調器の変調部に割り当てられた複数の変調領域の各々に、空間光通信に用いられる位相画像を設定する。制御部は、複数の変調領域の各々に対して光が照射されるように、複数の変調領域の各々に対応付けられた出射器を制御する。複数の曲面ミラーは、曲面状の反射面を有する。反射面は、空間光信号として送信される投射光の投射角に応じた曲率を有する。複数の曲面ミラーは、空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域の各々で変調された変調光を反射面で反射するように、複数の変調領域の各々に対応付けて配置される。遮光帯は、空間光変調器と曲面ミラーとの間に配置される。遮光帯は、複数の変調領域の各々で変調された変調光に含まれる不要な光成分を除去する。不要な光成分が除去された変調光は、曲面ミラーの反射面で反射されて、空間光信号(投射光)として送信される。
【0061】
本実施形態の送信装置では、複数の出射器から出射されたレーザ光に由来する平行光が、空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域に照射される。複数の変調領域で変調された変調光に含まれる不要な光成分は、遮光帯を通過する際に遮蔽される。複数の変調領域の各々で変調された変調光に含まれる空間光信号の光成分は、複数の変調領域の各々に対応付けられたいずれかの曲面ミラーによって、空間光信号として送信される。そのため、本実施形態の送信装置によれば、多方向の通信対象に対して、不要な光成分が除去された空間光信号を送信できる。
【0062】
本実施形態の一態様において、変調部には、格子状に配列された複数の変調領域が割り当てられる。隣接し合う変調領域の間には、光源に含まれる複数の出射器から出射された光が変調されない不感帯が設定される。本態様によれば、隣接し合う変調領域の間に隔壁を設けなくても、それらの変調領域の各々に照射された平行光を、それらの変調領域の各々に対応付けられた通信対象に対して設定された条件で変調できる。また、本態様によれば、隣接し合う変調領域の間に隔壁を設けないため、変調部に対する平行光の入射角度を大きくでき、送信装置のサイズを小型化できる。
【0063】
本実施形態の一態様において、光源の出射面および変調部の変調面の中心点に関して点対称の位置関係にある出射器と変調領域とが対応付けられる。本態様によれば、互いに斜めの位置関係にある出射器と変調領域とが対応付けられるため、光源と空間光変調器との間隔を小さくできる。そのため、本態様によれば、光源と空間光変調器とを近接させることで、光源からコリメータを省略できる。また、本態様によれば、光源と空間光変調器とを近接させることで、送信装置のサイズを小型化できる。
【0064】
本実施形態の一態様において、遮光帯は、複数の変調領域の各々で変調された変調光に含まれる0次画像が照射される位置に、開口が形成される。遮光帯は、変調光に含まれる0次光および高次画像の光成分を遮蔽する位置に配置される。本態様によれば、変調光に含まれる0次光および高次画像を含む不要な光成分が除去された空間光信号を送信できる。
【0065】
本実施形態の一態様において、複数の曲面ミラーは、互いに異なる投射方向に反射面を向けて配置される。例えば、曲面ミラーの反射面の曲率は、空間光信号を送信する距離に応じた曲率に設定される。本態様によれば、互いに異なる投射方向に反射面を向けて配置された複数の曲面ミラーによって、多様な方向の通信対象に向けて、空間光信号を送信できる。例えば、本態様によれば、複数の曲面ミラーが備える反射面の向きや曲率を調整することによって、水平面内における360度の方向に空間光信号を送信できる。
【0066】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る通信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、受信装置と送信装置とを組み合わせた構成である。送信装置は、第1の実施形態の構成である。受信装置は、空間光信号を受信する。以下においては、ボールレンズを含む受光機能を備えた受信装置の例をあげる。なお、本実施形態の通信装置は、ボールレンズを含まない受光機能を含む受信装置を備えてもよい。
【0067】
図22は、本実施形態に係る通信装置20の構成の一例を示す概念図である。通信装置20は、送信装置21、制御装置25、および受信装置27を備える。通信装置20は、外部の通信対象と空間光信号を送受信し合う。そのため、通信装置20には、空間光信号を送受信するための開口や窓が形成される。また、後述するように、通信装置20には、カメラモジュールやLiDAR(Light Detection And Ranging)モジュールが搭載される場合がある。カメラモジュールやLiDARモジュールについては、汎用のモジュールを適用できる。
【0068】
送信装置21は、第1の実施形態の送信装置である。送信装置21は、制御装置25から制御信号を取得する。送信装置21は、制御信号に応じた空間光信号を投射する。送信装置21から投射された空間光信号は、その空間光信号の送信先の通信対象(図示しない)によって受光される。
【0069】
制御装置25は、受信装置27から出力された信号を取得する。制御装置25は、取得した信号に応じた処理を実行する。制御装置25が実行する処理については、特に限定を加えない。制御装置25は、実行した処理に応じた光信号を送信するための制御信号を、送信装置21に出力する。例えば、制御装置25は、受信装置27が受信した信号に含まれる情報に応じて、予め決められた条件に基づく処理を実行する。例えば、制御装置25は、受信装置27が受信した信号に含まれる情報に応じて、通信装置20の管理者によって指定された処理を実行する。
【0070】
受信装置27は、通信対象(図示しない)から送信された空間光信号を受信する。受信装置27は、受信した空間光信号を電気信号に変換する。受信装置27は、変換後の電気信号を制御装置25に出力する。例えば、受信装置27は、ボールレンズを含む受光機能を備える。また、受信装置27は、ボールレンズを含まない受光機能を有してもよい。
【0071】
〔受信装置〕
次に、受信装置27の構成について図面を参照しながら説明する。
図23は、受信装置27の構成の一例について説明するための概念図である。受信装置27は、ボールレンズ271、受光素子273、および受信回路275を備える。
図23は、受信装置27の内部構成を横方向から見た側面図である。受信回路275の位置については、特に限定を加えない。受信回路275は、受信装置27の内部に配置されてもよいし、受信装置27の外部に配置されてもよい。また、受信回路275の機能を制御装置25に含めてもよい。
【0072】
ボールレンズ271は、球形のレンズである。ボールレンズ271は、通信対象から送信された空間光信号を集光する光学素子である。ボールレンズ271は、任意の角度から見て、球形である。ボールレンズ271の一部は、受信装置27の筐体に開けられた開口から突出する。ボールレンズ271は、入射された空間光信号を集光する。開口から突出したボールレンズ271に入射した空間光信号が集光される。空間光信号を集光できさえすれば、ボールレンズ271の一部は、開口から突出していなくてもよい。
【0073】
ボールレンズ271によって集光された空間光信号に由来する光(光信号とも呼ぶ)は、そのボールレンズ271の集光領域に向けて集光される。ボールレンズ271は、球形であるため、任意の方向から到来する空間光信号を集光する。すなわち、ボールレンズ271は、任意の方向から到来する空間光信号に対して、同様の集光性能を示す。ボールレンズ271に入射した光は、ボールレンズ271の内部に進入する際に屈折される。また、ボールレンズ271の内部を進行する光は、ボールレンズ271の外部に出射する際に、再度屈折される。ボールレンズ271から出射される光の大部分は、集光領域に集光される。
【0074】
例えば、ボールレンズ271は、ガラスや結晶、樹脂などの材料で構成できる。可視領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ271は、可視領域の光を透過/屈折するガラスや結晶、樹脂などの材料によって実現できる。例えば、ボールレンズ271は、クラウンガラスやフリントガラスなどの光学ガラスによって実現できる。例えば、ボールレンズ271は、BK(Boron Kron)などのクラウンガラスによって実現できる。例えば、ボールレンズ271は、LaSF(Lanthanum Schwerflint)などのフリントガラスによって実現できる。例えば、ボールレンズ271には、石英ガラスが適用できる。例えば、ボールレンズ271には、サファイア等の結晶が適用できる。例えば、ボールレンズ271には、アクリル等の透明樹脂が適用できる。
【0075】
空間光信号が近赤外領域の光(以下、近赤外線とも呼ぶ)である場合、ボールレンズ271には、近赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、1.5マイクロメートル(μm)程度の近赤外領域の空間光信号を受光する場合、ボールレンズ271には、ガラスや結晶、樹脂などに加えて、シリコンなどの材料を適用できる。空間光信号が赤外領域の光(以下、赤外線とも呼ぶ)である場合、ボールレンズ271には、赤外線を透過する材料が用いられる。例えば、空間光信号が赤外線である場合、ボールレンズ271には、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイド系の材料を適用できる。空間光信号の波長領域の光を透過/屈折できれば、ボールレンズ271の材質には限定を加えない。ボールレンズ271の材質は、求められる屈折率や用途に応じて、適宜選択されればよい。
【0076】
ボールレンズ271は、受光素子273の配置された領域に向けて空間光信号を集光できれば、その他の集光器によって代替されてもよい。例えば、ボールレンズ271は、入射した空間光信号を、受光素子273の受光部に向けて導光する光線制御素子であってもよい。例えば、ボールレンズ271は、レンズや光線制御素子を組み合わせた構成であってもよい。例えば、ボールレンズ271によって集光される光信号を、受光素子273の受光部に向けて導光する機構が、追加されてもよい。
【0077】
受光素子273は、ボールレンズ271の後段に配置される。受光素子273は、ボールレンズ271の集光領域に配置される。受光素子273は、ボールレンズ271によって集光された光信号を受光する受光部を有する。ボールレンズ271によって集光された光信号は、受光素子273の受光部で受光される。受光素子273は、受光された光信号を電気信号(以下、信号とも呼ぶ)に変換する。受光素子273は、変換後の信号を、受信回路275に出力する。
図23には、受光素子273が単一の例を示す。例えば、ボールレンズ271の集光領域に、複数の受光素子273がアレイ化された受光素子アレイが配置されてもよい。
【0078】
受光素子273は、受信対象である空間光信号の波長領域の光を受光する。例えば、受光素子273は、可視領域の光に感度を有する。例えば、受光素子273は、赤外領域の光に感度を有する。受光素子273は、例えば1.5μm(マイクロメートル)帯の波長の光に感度を有する。なお、受光素子273が感度を有する光の波長帯は、1.5μm帯に限定されない。受光素子273が受光する光の波長帯は、受信対象の空間光信号の波長に合わせて、任意に設定できる。受光素子273が受光する光の波長帯は、例えば0.8μm帯や、1.55μm帯、2.2μm帯に設定されてもよい。また、受光素子273が受光する光の波長帯は、例えば0.8~1μm帯であってもよい。波長帯が短い方が、大気中の水分による吸収が小さいので、降雨時における光空間通信には有利である。また、受光素子273は、強烈な太陽光で飽和してしまうと、空間光信号に由来する光信号を読み取ることができない。そのため、受光素子273よりも前段に、空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタが設置されてもよい。
【0079】
例えば、受光素子273は、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの素子によって実現できる。例えば、受光素子273は、アバランシェフォトダイオードによって実現される。アバランシェフォトダイオードによって実現された受光素子273は、高速通信に対応できる。なお、受光素子273は、光信号を電気信号に変換できさえすれば、フォトダイオードやフォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード以外の素子によって実現されてもよい。通信速度を向上させるために、受光素子273の受光部は、できるだけ小さい方が好ましい。例えば、受光素子273の受光部は、一辺が5mm(ミリメートル)程度の正方形の受光面を有する。例えば、受光素子273の受光部は、直径0.1~0.3mm程度の円形の受光面を有する。受光素子273の受光部の大きさや形状は、空間光信号の波長帯や通信速度などに応じて選定されればよい。
【0080】
例えば、受光素子273の前段に、偏光フィルタ(図示しない)が配置されてもよい。偏光フィルタは、受光素子273の受光部に対応付けて配置される。例えば、偏光フィルタは、受光素子273の受光部に、重ねて配置される。例えば、偏光フィルタは、受信対象の空間光信号の偏光状態に応じて選択されてもよい。例えば、受信対象の空間光信号が直線偏光の場合、偏光フィルタは1/2波長板を含む。例えば、受信対象の空間光信号が円偏光の場合、偏光フィルタは1/4波長板を含む。偏光フィルタの偏光特性に応じて、その偏光フィルタを通過した光信号の偏光状態が変換される。
【0081】
受信回路275は、受光素子273から出力された信号を取得する。受信回路275は、受光素子273からの信号を増幅する。受信回路275は、増幅された信号をデコードする。受信回路275によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。受信回路275によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0082】
〔適用例〕
次に、本実施形態の通信装置20の適用例について図面を参照しながら説明する。以下においては、3つの適用例(適用例1~4)をあげる。以下の適用例では、管理側/制御側の通信装置と、被管理側/被制御側の通信装置とが、空間光信号を送受信する例をあげる。いずれの通信装置も、第2の実施形態に係る通信装置と同様の構成を有する。
【0083】
<適用例1>
図24~
図25は、適用例1について説明するための概念図である。本適用例は、車両に搭載された通信装置と、車両が走行する道路に設置された通信装置との間で、空間光信号を送受信する例である。本適用例では、車両の前部および後部に通信装置(通信装置201、通信装置202)が搭載され、道路管理側の通信装置(通信装置203)が信号器に配置される例をあげる。本適用例では、車両に搭載された通信装置201および通信装置202と、道路管理側の通信装置203とによって、通信システムが形成される。
【0084】
車両には、通信装置201、通信装置202、および全体制御装置210が搭載される。通信装置201は、車両の前部に設置される。通信装置201は、V2I(Vehicle to Infrastructure)通信とV2V(Vehicle to Vehicle)通信に用いられる空間光信号を送信する。通信装置202は、車両の後部に設置される。通信装置202は、V2V通信に用いられる空間光信号を送信する。全体制御装置210は、通信装置201および通信装置202に接続される。全体制御装置210が設置される位置については、特に限定しない。
【0085】
信号器には、通信装置203が配置される。通信装置203は、I2V(Infrastructure to Vehicle)に用いられる空間光信号を送信する。通信装置203は、信号器以外の設備に配置されてもよい。例えば、通信装置203は、道路標識や歩道橋、料金所、街灯、電信柱などに配置されてもよい。
【0086】
車両の前部に搭載された通信装置201は、車両の前方の2方向に向けて空間光信号を送信する。通信装置201は、前方斜め上方に向けた空間光信号を送信する。前方斜め上方に向けた空間光信号は、信号器に配置された通信装置203との間のV2I(Vehicle to Infrastructure)通信で用いられる。通信装置201は、前方正面(前方斜め下方を含む)に向けた空間光信号を送信する。前方正面に向けた空間光信号は、前方を走行する車両との間のV2V(Vehicle to Vehicle)通信に用いられる。また、通信装置201は、前方正面に向けた空間光信号は、車両に搭載されたLiDARモジュールによる検知や測距に用いられる。
【0087】
図26は、通信装置201の構成の一例を示す概念図である。
図26は、通信装置201の筐体を前方斜め上方から見た斜視図である。筐体の前部には、送信スリットS1、受信窓W1、カメラ窓VC1、LiDAR窓L1が形成される。送信スリットS1は、空間光信号を送信するための開口である。受信窓W1は、空間光信号を受信するための開口である。カメラ窓VC1は、カメラで撮影するための開口である。LiDAR窓L1は、検知や測距に用いられる光を受信するための開口である。筐体の前部の開口は、可視光や赤外光などの送受光対象の光が透過する透明なカバーで被覆されてもよい。
【0088】
図27は、通信装置201の筐体内部における送信機構の一例を示す概念図である。
図27は、送信機構の部分を示す断面図である。送信機構は、光源211、空間光変調器212、遮光帯(図示しない)、および曲面ミラー214を含む。
図27においては、遮光帯を省略する。光源211は、筐体の上方に設置される。光源211は、第1の実施形態の光源11と同様の構成である。空間光変調器212は、筐体の下方に設置される。空間光変調器212は、第1の実施形態の空間光変調器12と同様の構成である。光源211および空間光変調器212は、受信機構と共通の基板215に接続される。基板215には、
図22の制御装置25と同様の制御機能が実装される。基板215は、車両に搭載された全体制御装置210に接続される。遮光帯(図示しない)は、第1の実施形態と同様の構成である。複数の曲面ミラー214は、光源211と空間光変調器212との間に配置される。曲面ミラー214は、第の実施形態の曲面ミラー14と同様の構成である。複数の曲面ミラー214の反射面は、空間光変調器212の変調部と送信スリットS1に向けられる。複数の曲面ミラー214は、V2I通信用と、LiDAR/V2V通信用とに分けられる。
【0089】
光源211から出射された平行光は、空間光変調器212の変調部に照射される。変調部で変調された変調光のうち、遮光帯を通過した光成分は、曲面ミラー214の反射面で反射される。V2I通信用の曲面ミラー214で反射された変調光(空間光信号)は、前方斜め上方に向けて送信される。LiDAR/V2V通信用の曲面ミラー214で反射された変調光(空間光信号)は、前方に向けて送信される。
【0090】
図27には、LiDAR窓L1の部分に搭載されたLiDARモジュール219を示す。LiDARモジュール219は、LiDAR用の空間光信号の反射光を受光する。LiDARモジュール219は、受光した反射光に応じて、前方にある物体の検知や測距を行う。LiDARモジュール219の詳細な構成については、省略する。
【0091】
図28は、通信装置201の筐体内部における受信機構の一例を示す概念図である。
図28は、受信機構の部分を示す断面図である。受信機構は、ボールレンズ221、受光素子223、および受信回路(図示しない)を含む。受信回路は、基板215に実装される。ボールレンズ221は、
図23のボールレンズ271と同様の構成である。ボールレンズ221の一部は、受信窓W1から突出する。受光素子223は、支持構造226によって筐体に固定される。受光素子223は、
図23の受光素子273と同様の構成である。受光素子223は、支持構造226を介して、基板215に接続される。
図28の例の場合、支持構造226には、複数の受光素子223が配置される。複数の受光素子223は、支持構造226に設置された配線(図示しない)を介して、基板215に実装された受信回路に接続される。
【0092】
複数の受光素子223は、I2V通信用とV2V通信用とに分けられる。I2V通信用の受光素子223は、信号器に配置された通信装置203から送信された空間光信号に由来する光信号を受光する。V2V通信用の受光素子223は、前方の車両に搭載された通信装置203から送信された空間光信号に由来する光信号を受光する。受光素子223によって受光された光信号は、基板215に実装された受信回路によってデコードされる。デコードされた信号は、全体制御装置210に送信される。
【0093】
図29は、車両の後部に搭載される通信装置202の構成の一例を示す概念図である。
図29は、通信装置202の筐体を前方斜め上方から見た斜視図である。筐体の前部には、送信スリットS2、受信窓W2、カメラ窓VC2が形成される。送信スリットS2は、空間光信号を送信するための開口である。受信窓W2は、空間光信号を受信するための開口である。カメラ窓VC2は、カメラで撮影するための開口である。筐体の前部の開口は、可視光や赤外光などの送受光対象の光が透過する透明なカバーで被覆されてもよい。通信装置202の構成は、LiDARの機能が搭載されていない点を除いて、通信装置201の構成と同様である。なお、通信装置202の構成に、LiDARの機能が搭載されてもよい。
【0094】
図30は、信号器に設置される通信装置203の構成の一例を示す概念図である。
図30は、通信装置203の筐体を前方斜め上方から見た斜視図である。筐体の前部には、送信スリットS3、受信窓W3、カメラ窓VC3が形成される。送信スリットS3は、空間光信号を送信するための開口である。受信窓W3は、空間光信号を受信するための開口である。カメラ窓VC3は、カメラで撮影するための開口である。筐体の前部の開口は、可視光や赤外光などの送受光対象の光が透過する透明なカバーで被覆されてもよい。通信装置203の構成は、LiDARの機能が搭載されていない点を除いて、通信装置201の構成と同様である。なお、通信装置203の構成に、LiDARの機能が搭載されてもよい。
【0095】
図31~
図33は、道路を走行する車両間におけるV2V通信の一例について説明するための概念図である。
図31~
図33は、車両の運転席からの視界を示す。車両の前部に搭載された通信装置201は、車両の前方に向けて、空間光信号を投射する。
図31~
図33の例では、複数のドット光が格子状に配列された画像パターンが投射される。なお、
図31~
図33の例の画像パターンは、概念的なものであって、実際に表示される像を示すわけではない。通信装置201は、6つの投射領域R1~R6に分けて、空間光信号を投射する。投射領域R1~R6の各々には、異なる出射器から出射されたレーザ光に由来する空間光信号が投射されるものとする。投射領域R1~R6のうち、周辺の位置の投射領域R1と投射領域R6に関しては、通信対象となる車両が比較的近くに位置する。そのため、投射領域R1と投射領域R6に関しては、曲率を大きくして、広範囲に対応させる。投射領域R1~R6のうち、正面の位置の投射領域R1~R4に関しては、通信対象となる車両が比較的遠くに位置するため、曲率を小さくして狭範囲に対応させる。
【0096】
図31は、通信対象となる車両をサーチする段階におけるワイドスキャンの様子を示す。ワイドスキャンにおいては、予め設定された投射領域R1~R6に向けて、空間光信号が投射される。ワイドスキャンでは、前方を走行する車両を検知する。
図32は、前方を走行する車両の検知に応じて、通信対象となる車両との通信を確立させる段階におけるナロースキャンの様子を示す。ナロースキャンにおいては、ワイドスキャンで検知された車両に対して、投射領域が絞り込まれる。
図32の例では、投射領域R2~R4が、前方を走行するいずれかの車両に対応付けられる。
図33は、通信対象の車両との間で通信が確立した段階におけるV2V通信の様子を示す。通信が確立した車両に対しては、それらの車両に搭載された通信装置201や通信装置202に向けて、照射範囲が絞り込まれた空間光信号(スポット光LS2~5)が送信される。
【0097】
本変形例では、車両や信号器に設置された通信装置を用いて、I2V通信、V2I通信、およびV2V通信を含む通信ネットワークを構築できる。例えば、本変形例の手法で構築された通信ネットワークを用いれば、道路の状況に応じて、道路を走行する車両の交通を円滑化できる。
【0098】
<適用例2>
図34は、適用例2について説明するための概念図である。本適用例は、地上の管理局(図示しない)に設置された通信装置204と、上空を飛翔するドローン250に搭載された通信装置205との間で、空間光信号を送受信する例である。本適用例では、管理局の通信装置204と、ドローン250に搭載された通信装置205とによって、通信システムが形成される。
【0099】
管理局には、管理側の通信装置204が配置される。例えば、通信装置204は、管理局の建屋の屋上に配置される。通信装置204は、ボールレンズの下方に受光器が位置するように、配置される。通信装置204は、上方の全方向から到来する空間光信号を受信する。広範囲を飛翔するドローン250と通信するために、通信装置204には、通信装置205と比べて大型のボールレンズが搭載されることが好ましい。例えば、ボールレンズの直径を70mm(ミリメートル)から90~100mmに変更すれば、空間光信号の受信距離が1.7~2.0倍程度長くなる。通信装置204は、地上に設置されるため、そのサイズには制約が少なく、大型化が可能である。
【0100】
図35は、通信装置204から送信された空間光信号の広がりについて説明するための概念図である。通信装置204から離れるにつれて、その通信装置204から送信された空間光信号は減衰する。例えば、近方の領域には低密度の空間光信号を送信し、遠方には高密度の空間光信号を送信すれば、ドローン250が空間光信号を受信できる範囲が広がる。
図35の例の場合、通信装置204からの距離に応じて、低密度領域R
L、中密度領域R
M、および高密度領域R
Hが割り当てられる。低密度領域R
Lには、低密度の空間光信号が送信される。高密度領域R
Hには、高密度の空間光信号が送信される。中密度領域R
Mには、低密度と高密度の中間に相当する中密度の空間光信号が送信される。
【0101】
図36は、管理局に配置される通信装置204の筐体内部における送信機構の一例を示す概念図である。
図36は、送信機構の部分を示す断面図である。通信装置204の受信機構は、適用例1と同様であるので、説明を省略する。送信機構は、光源241、空間光変調器242、遮光帯(図示しない)、および曲面ミラー244を含む。
図36においては、遮光帯を省略する。光源241は、筐体の中央付近に設置される。光源241は、第1の実施形態の光源11と同様の構成である。空間光変調器242は、筐体の下方に設置される。空間光変調器242は、第1の実施形態の空間光変調器12と同様の構成である。光源241および空間光変調器242は、受信機構(図示しない)と共通の基板245に接続される。基板245には、
図22の制御装置25と同様の制御機能が実装される。基板245は、車両に搭載された全体制御装置210に接続される。遮光帯(図示しない)は、第1の実施形態と同様の構成である。複数の曲面ミラー244は、光源211の上方に配置される。曲面ミラー244は、第の実施形態の曲面ミラー14と同様の構成である。複数の曲面ミラー244の反射面は、空間光変調器242の変調部と透明カバー247に向けられる。透明カバー247は、通信装置204の筐体の上方に形成された開口を被覆する。透明カバー247は、可視光や赤外光などの送受光対象の光が透過する素材を含む。複数の曲面ミラー214の送信範囲は、低密度領域R
L、中密度領域R
M、および高密度領域R
Hのうち少なくともいずれかに割り当てられる。複数の曲面ミラー214の反射面で反射された変調光は、低密度領域R
L、中密度領域R
M、および高密度領域R
Hのいずれかに向けて、空間光信号として送信される。
図36の例では、低密度領域R
Lおよび中密度領域R
Mに割り当てられた空間光信号が同じ曲面ミラー244の反射面で反射されているように見える。低密度領域R
Lおよび中密度領域R
Mに割り当てられた空間光信号は、紙面の垂直方向において異なる位置に配置された異なる曲面ミラー244によって反射されている。
【0102】
図37は、通信装置204から送信された空間光信号の広がりの一例を示す概念図である。
図37の例では、12個の曲面ミラー244によって、異なる方向に空間光信号が送信される。また、
図37の例では、1つの通信装置204が、水平面内における90度の投射範囲をカバーする。空間光信号の密度は、空間光信号の投射角に依存する。空間光信号の密度は、投射角が大きいほどが小さく、投射角が小さいほど大きい。空間光信号の投射角は、曲面ミラー214の曲率に応じて定まる。空間光信号の投射角は、曲面ミラー214の曲率が大きいほど大きく、曲面ミラー214の曲率が小さいほど小さい。すなわち、空間光信号の密度は、曲面ミラー214の曲率が大きいほど小さく、曲面ミラー214の曲率が小さいほど大きい。そのため、中密度領域R
Mおよび高密度領域R
Hに割り当てられた曲面ミラー214と比べて、低密度領域R
Lに割り当てられた曲面ミラー214には、反射面の曲率が大きいミラーが用いられる。言い換えると、中密度領域R
Mおよび低密度領域R
Lに割り当てられた曲面ミラー214と比べて、高密度領域R
Hに割り当てられた曲面ミラー214には、反射面の曲率が小さいミラーが用いられる。例えば、
図37のように、水平面内における90度の投射範囲を通信装置204がカバーできる場合、4つの通信装置204を組み合わせれば、水平面内における360度の投射範囲をカバーできる。
【0103】
数km(キロメートル)離れた位置を飛翔するドローン250を制御するためには、高出力の空間光信号を送信することが求められる。そのような高出力の空間光信号を送信し続けるためには、法令によって定められた基準から外れた高出力の空間光信号を送信しなければならない。例えば、平均してクラス1以下の電力でパルス状の空間光信号を送信すれば、法令によって定められた基準を満たす高出力の空間光信号を送信できる。
【0104】
図38は、パルス状の空間光信号(パルス波とも呼ぶ)について説明するための概念図である。
図38のパルス波は、出力がW、パルス幅がP、繰り返し時間がIである。パルス幅Pは、フォトダイオードの帯域から求められる。1550nm(ナノメートル)の波長は、周波数に換算すると、600MHz(メガヘルツ)である。この場合、出力Wが10W(ワット)、パルス幅Pが10ナノ秒、繰り返し時間Iが10マイクロ秒であれば、100kbps(キロビット毎秒)のスループットが得られる。また、840~950nmの波長は、周波数に換算すると、50MHzである。この場合、出力Wが1W、パルス幅Pが100ナノ秒、繰り返し時間Iが100マイクロ秒であれば、10kbpsのスループットが得られる。すなわち、パルス波を用いれば、ドローン250を操作するために十分なスループットが得られる。
【0105】
図39は、ドローン250の搭載される通信装置205の一例について説明するための概念図である。
図39の例では、2つの通信装置205がドローン250に搭載される。通信装置205-1は、変形例1の通信装置201(
図26~
図28)と同様の構成である。通信装置205-2は、変形例1の通信装置202(
図29)や通信装置203(
図30)と同様の構成である。通信装置205-1は、空間光信号の送受信方向を任意の方向に向けられるジンバルによって、ドローン250に搭載される。通信装置205-2は、空間光信号の送受信方向が固定される。例えば、通信装置205-2による空間光信号の送信方向は、1次元的な範囲に制限されてもよい。通信装置205-2による空間光信号の送信方向は、ドローン250の姿勢制御によって、地上に設置された通信装置204に向けられる。通信装置205-2には、受信機構が実装されていなくてもよい。
【0106】
ドローン250には、被管理側の通信装置205が搭載される。例えば、ドローン250には、周囲を撮影するカメラや、周囲の物理量を計測するセンサが搭載される。通信装置205は、ドローン250の下側に搭載される。通信装置205は、ボールレンズの上方に受光器が位置するように、配置される。通信装置205は、下方から到来する空間光信号を受信する。通信装置205には、通信装置204と比べて小型のボールレンズが搭載される。
【0107】
本適用例によれば、大型の通信装置204を用いることによって、広範囲を飛翔するドローン250に搭載された小型の通信装置205と通信装置204との間で、全天球型の通信が実現される。すなわち、本適用例によれば、上空の任意の位置を飛翔するドローン250と地上の管理局との間で、空間光信号を用いた通信が可能になる。その結果、本適用例によれば、地上の管理局が、ドローン250の飛行を制御するシステムを実現できる。また、本適用例によれば、ドローン250によって収集された情報を、リアルタイムで活用するシステムを実現できる。
【0108】
<適用例3>
図40は、適用例3について説明するための概念図である。本適用例は、工事現場において稼働する複数の工事車両270に搭載された通信装置207と、それらの工事車両270を制御する制御車両260に設置された通信装置206との間で、空間光信号を送受信する例である。本適用例では、制御車両260の通信装置206と、工事車両270に搭載された通信装置207とによって、通信システムが形成される。
【0109】
また、本適用例では、工事現場の上空を、変形例2のドローン250が飛翔する。ドローン250は、制御車両260の制御を受けるとともに、制御車両260の通信装置206と工事車両270の通信装置207との間に遮蔽物が入り込んだ際に、中継器の役割を果たす。
図40の例では、制御車両260の上部に、ドローン250に給電できる給電装置(図示しない)が搭載される。例えば、ドローン250は、上空から工事現場を撮影したり、測距を行ったりする。
【0110】
制御車両260は、工事現場、または工事現場の近傍に駐車される。制御車両260には、制御側の通信装置206が配置される。例えば、通信装置206は、制御車両260の上部に設置された柱の上方に配置される。工事現場の全域を通信範囲にできるように、柱の高さは、できるだけ高い方が好ましい。例えば、制御車両260を用いずに、工事現場、または工事現場の近傍に設置された柱の上部に、通信装置206が設置されてもよい。通信装置206は、工事現場で稼働する工事車両270を制御する制御システム(図示しない)に接続される。
【0111】
通信装置206は、ボールレンズに対する受光器の位置が工事現場の反対側に位置するように、配置される。通信装置206は、工事現場の方向から到来する空間光信号を受信する。通信装置206の受光方向は、ドローン250の飛翔範囲が通信範囲に含まれるように、設定される。工事現場において広範囲で移動する工事車両270と通信するために、通信装置206には、通信装置207と比べて大型のボールレンズが搭載される。通信装置206は、地上に設置されるため、そのサイズには制約が少なく、大型化が可能である。
【0112】
工事現場では、複数の工事車両270が稼働する。通信装置206に接続された制御システムの制御に応じて、複数の工事車両270が稼働する。工事車両270には、被制御側の通信装置207が搭載される。例えば、工事車両270には、通信装置206から送信された空間光信号に応じて、工事車両270を動作させる自動運転装置(図示しない)が搭載される。
【0113】
通信装置207は、工事車両270の上側に搭載される。通信装置207は、ボールレンズの下方に受光器が位置するように、配置される。通信装置207は、上方から到来する空間光信号を受信する。通信装置207には、通信装置206と比べて小型のボールレンズが搭載される。
【0114】
図41は、通信装置207から送信された空間光信号の広がりの一例を示す概念図である。
図41の例では、12個の曲面ミラー244によって、異なる方向に空間光信号が送信される。また、
図41の例では、1つの通信装置207が、水平面内における120度の投射範囲をカバーする。この場合、3つの通信装置207を用いれば、水平面内における360度の投射範囲をカバーできる。
【0115】
例えば、通信装置206に接続された制御装置は、ドローン250によって取得された画像情報や測距情報などの情報を用いて、通信が途絶えた通信装置207の位置を特定する。制御装置は、特定された通信装置207の位置に応じて、空間光信号の中継に用いられるドローン250を選定する。制御装置は、選定されたドローン250を中継させて、通信が途絶えた通信装置207に対して空間光信号を送信できる。
【0116】
本適用例によれば、制御車両260に搭載された通信装置206を用いることによって、工事現場で稼働する工事車両270を制御できる。また、本適用例によれば、ドローン250によって収集された情報を活用しながら、工事現場で稼働する工事車両270を自動運転するシステムを実現できる。
【0117】
<適用例4>
図42は、適用例4について説明するための概念図である。本適用例は、工場で稼働する装置に搭載された通信装置209と、それらの製造装置を管理する管理システム(図示しない)に接続された通信装置208との間で、空間光信号を送受信する例である。本適用例では、工場の天井に通信装置208が配置され、複数の装置に通信装置209が搭載される例をあげる。工場の内部には、複数の通信装置208が配置されてもよい。例えば、複数の通信装置208の間は、高速通信可能に接続される。本適用例では、天井に設置された通信装置208と、複数の装置に搭載された通信装置209とによって、通信システムが形成される。
【0118】
通信装置208は、IoTゲートウェイ281に接続される(IoT:Internet of Things)。IoTゲートウェイ281は、複数の装置によって収集されたデータの中継や、管理システムから送信されたデータの中継を行うルータ機能を有する。IoTゲートウェイ281は、インターネット経由で、クラウドやサーバに構築された管理システムに接続される。複数の装置によって収集された膨大なデータを、IoTゲートウェイ281で処理した後に管理システムに送信することによって、通信負荷を軽減できる。管理システムは、工場の内部の端末装置に構築されてもよい。
【0119】
通信装置208は、複数の装置を見下ろすことができる天井に配置される。複数の装置と空間光信号をやり取りできれば、通信装置208が配置される位置には限定を加えない。例えば、通信装置208は、工場の壁などに設置されてもよい。通信装置208は、ボールレンズに対する受光器の位置が天井側に位置するように、配置される。通信装置208は、工場の内部に設置された複数の装置から送信された空間光信号を受信する。また、通信装置208は、工場の内部に設置された複数の装置に向けて空間光信号を送信する。工場の内部の広範囲に配置された装置と通信するために、通信装置208には、通信装置209と比べて大型のボールレンズが搭載される。
【0120】
工場の内部では、複数の装置が稼働する。
図42の例では、搬送ロボットや製造設備、組立機、産業機械、コンベア、検査機が配置される。複数の装置の各々には、被管理側の通信装置209が搭載される。通信装置209は、装置の上側に搭載される。通信装置209は、ボールレンズの下方に受光器が位置するように、配置される。通信装置209は、上方の通信装置208から送信された空間光信号を受信する。また、通信装置209は、上方の通信装置208に向けて空間光信号を送信する。通信装置209には、通信装置208と比べて小型のボールレンズが搭載される。
【0121】
例えば、通信装置208に接続された管理システムは、複数の装置によって収集されたデータを用いて、それらの装置の稼働状況を管理する。例えば、管理システムは、工場の内部で稼働する装置の稼働状況を、管理者が扱う端末装置(図示しない)の画面に表示させる。例えば、管理システムは、把握された稼働状況に応じて、それらの装置に対する制御信号を送信する。
【0122】
本適用例によれば、工場の内部に設置された通信装置208を用いることによって、工場の内部で稼働する装置を管理できる。本適用例によれば、通信装置208と通信装置209との間で空間光信号をやり取りするため、配線を省略できる。無線通信とは異なり、空間光信号を用いた通信では、同時に接続できる台数の制約を受けにくい。空間光信号を用いた通信は、工場の内部における雑音の影響を受けにくい。また、本適用例によれば、複数の装置によって収集されたデータを活用しながら、工場で稼働する複数の装置を自動制御するシステムを実現できる。
【0123】
以上のように、本実施形態の通信装置は、受信装置、送信装置、および制御装置を備える。受信装置は、空間光信号を受信する。送信装置は、光源、空間光変調器、遮光帯、複数の曲面ミラー、および制御部を備える。光源は、複数の出射器を含む。光源は、平行光を出射する。空間光変調器は、変調部を有する。変調部には、複数の出射器の各々に対応付けられた複数の変調領域が設定される。制御部は、空間光変調器の変調部に割り当てられた複数の変調領域の各々に、空間光通信に用いられる位相画像を設定する。制御部は、複数の変調領域の各々に対して光が照射されるように、複数の変調領域の各々に対応付けられた出射器を制御する。複数の曲面ミラーは、曲面状の反射面を有する。反射面は、空間光信号として送信される投射光の投射角に応じた曲率を有する。複数の曲面ミラーは、空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域の各々で変調された変調光を反射面で反射するように、複数の変調領域の各々に対応付けて配置される。遮光帯は、空間光変調器と曲面ミラーとの間に配置される。遮光帯は、複数の変調領域の各々で変調された変調光に含まれる不要な光成分を除去する。不要な光成分が除去された変調光は、曲面ミラーの反射面で反射されて、空間光信号(投射光)として送信される。制御装置は、受信装置によって受信された他の通信装置からの空間光信号に基づく信号を取得する。制御装置は、取得した信号に応じた処理を実行する。制御装置は、実行した処理に応じた空間光信号を送信装置に送信させる。
【0124】
本実施形態の通信装置は、複数の出射器から出射されたレーザ光に由来する平行光が、空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域に照射される。複数の変調領域で変調された変調光に含まれる不要な光成分は、遮光帯を通過する際に遮蔽される。複数の変調領域の各々で変調された変調光に含まれる空間光信号の光成分は、複数の変調領域の各々に対応付けられたいずれかの曲面ミラーによって、空間光信号として送信される。そのため、本実施形態の通信装置によれば、多方向の通信対象に対して、不要な光成分が除去された空間光信号を送信できる。
【0125】
本実施形態の一態様の通信システムは、上記の通信装置を複数備える。通信システムにおいて、複数の通信装置は、空間光信号を互いに送受信し合うように配置される。本態様によれば、空間光信号を送受信する通信ネットワークを実現できる。
【0126】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る送信器について図面を参照しながら説明する。本実施形態の送信器は、第1の実施形態の送信器が簡略化された構成である。
図43は、本実施形態に係る送信器300の構成の一例を示す概念図である。
図43は、送信器300の内部構成を横方向から見た側面図である。送信器300は、光源31、空間光変調器32、遮光帯33、および複数の曲面ミラー34を備える。
【0127】
光源31は、複数の出射器を含む。光源31は、平行光301を出射する。空間光変調器32は、複数の出射器の各々に対応付けられた複数の変調領域が設定される変調部320を有する。複数の曲面ミラー34は、曲面状の反射面340を有する。曲面ミラー34の反射面は、空間光信号として送信される投射光の投射角に応じた曲率を有する。複数の曲面ミラー34は、空間光変調器32の変調部320に設定された複数の変調領域の各々で変調された変調光302を反射面340で反射するように、複数の変調領域の各々に対応付けて配置される。遮光帯33は、空間光変調器32と曲面ミラー34との間に配置される。遮光帯33は、複数の変調領域の各々で変調された変調光302に含まれる不要な光成分を除去する。不要な光成分が除去された変調光302は、曲面ミラー34の反射面340で反射されて、空間光信号(投射光304)として送信される。
【0128】
以上のように、本実施形態の送信器では、複数の出射器から出射されたレーザ光に由来する平行光が、空間光変調器の変調部に設定された複数の変調領域に照射される。複数の変調領域で変調された変調光に含まれる不要な光成分は、遮光帯を通過する際に遮蔽される。複数の変調領域の各々で変調された変調光に含まれる空間光信号の光成分は、複数の変調領域の各々に対応付けられたいずれかの曲面ミラーによって、空間光信号として送信される。そのため、本実施形態の送信器によれば、多方向の通信対象に対して、不要な光成分が除去された空間光信号を送信できる。
【0129】
(ハードウェア)
ここで、本開示の各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成について、
図44の情報処理装置90(コンピュータ)を一例としてあげて説明する。なお、
図44の情報処理装置90は、各実施形態の制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0130】
図44のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。
図44においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0131】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラム(命令)を、主記憶装置92に展開する。例えば、プログラムは、各実施形態の制御や処理を実行するためのソフトウェアプログラムである。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。プロセッサ91は、プログラムを実行することによって、各実施形態に係る制御や処理を実行する。
【0132】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magneto resistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0133】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0134】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。外部機器と接続されるインターフェースとして、入出力インターフェース95と通信インターフェース96とが共通化されてもよい。
【0135】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。入力機器としてタッチパネルが用いられる場合、タッチパネルの機能を有する画面がインターフェースになる。プロセッサ91と入力機器とは、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0136】
情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器が備え付けられてもよい。表示機器が備え付けられる場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられる。情報処理装置90と表示機器は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0137】
情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体に格納されたデータやプログラムの読み込みや、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みを仲介する。情報処理装置90とドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0138】
以上が、本発明の各実施形態に係る制御や処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。
図44のハードウェア構成は、各実施形態に係る制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。各実施形態に係る制御や処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。
【0139】
各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も、本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0140】
各実施形態の構成要素は、任意に組み合わせられてもよい。各実施形態の構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよい。各実施形態の構成要素は、回路によって実現されてもよい。
【0141】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0142】
10 送信装置
11、31 光源
12、32 空間光変調器
13、33 遮光帯
14、34 曲面ミラー
15 制御部
20 通信装置
25 制御装置
27 受信装置
100、300 送信器
110、111、121 出射器
112 変調ドライバ
113、123 レーザ光源
114、124 光ファイバ
115、126 マイクロコリメータ
122 直流電流源
125 変調器
131 遮光帯
135 放熱機構
271 ボールレンズ
273 受光素子
275 受信回路
201、202、203、204、205、206、207、208、209 通信装置
210 全体制御装置
211、241 光源
212、242 空間光変調器
214、244 曲面ミラー
215、245 基板
219 LiDARモジュール
221 ボールレンズ
223 受光素子
226 支持構造
247 透明カバー