IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バルメット テクノロジーズ オサケユキチュアの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094295
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ベルト
(51)【国際特許分類】
   D21F 3/00 20060101AFI20240702BHJP
   D21F 7/08 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
D21F3/00
D21F7/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023218711
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】20226166
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(71)【出願人】
【識別番号】515183610
【氏名又は名称】バルメット テクノロジーズ オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヴェサ‐マッティ リーヒオヤ
(72)【発明者】
【氏名】トゥオマス スオランタ
(72)【発明者】
【氏名】アルシ ニッキネン
(72)【発明者】
【氏名】ヤンネ ホンカネン
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055CE71
4L055CE79
4L055EA15
4L055EA19
(57)【要約】
【課題】繊維ウェブ機械のためのベルトを提供する。
【解決手段】本発明は、繊維ウェブ機械のためのベルトに関し、ベルト(10)は、内面(11)と、外面(12)とを有し、ベルト(10)は、ベルト(10)の外面(11)に第1の方向(D1)において配置される複数の平行な脱水溝を含み、各脱水溝は、幅を有し、第1の脱水溝(21)が、第1の深さ(32)を有する浅い部分(30)と、第2の深さ(42)を有する深い部分(40)と、を含み、第1および第2の深さ(32,42)は、深さ方向においてベルト(10)の外面(12)から決定され、第1の深さ(32)は、第2の深さ(42)よりも小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維ウェブ機械のためのベルトであって、
当該ベルトは、内面と、外面とを有し、
当該ベルトは、当該ベルトの前記外面に第1の方向において配置される複数の平行な脱水溝を含み、各脱水溝は、幅を有し、
第1の脱水溝が、
- 第1の深さを有する浅い部分と、
- 第2の深さを有する深い部分と、を含み、
前記第1の深さおよび前記第2の深さは、深さ方向において当該ベルトの前記外面から決定され、
前記第1の深さは、前記第2の深さよりも小さい、
ベルト。
【請求項2】
前記浅い部分の数が、前記第1の方向において前記第1の脱水溝から測定される、1/m~50/m、好ましくは、20/m~40/mである、請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記第2の深さは、0.8mm~1.6mmの間の範囲内、好ましくは、1mm~1.4mmの間の範囲内である、請求項1に記載のベルト。
【請求項4】
前記第1の深さは、
- 前記第2の深さに対して、0mm以上、好ましくは、少なくとも1%、より好ましくは、少なくとも2%、さらにより好ましくは、少なくとも3%、最も好ましくは、少なくとも5%である、および/または
- 前記深さ方向において当該ベルトの前記外面から決定される、前記第2の深さに対する、75%未満、好ましくは、50%未満、さらにより好ましくは、25%未満である、
請求項1に記載のベルト。
【請求項5】
前記第1の深さは、0mm~1.2mmの間の範囲内、好ましくは、0.02mm~0.4mmの間の範囲内である、請求項1に記載のベルト。
【請求項6】
前記第1の深さは、当該ベルトの厚さに対して、少なくとも0.2%である、請求項1に記載のベルト。
【請求項7】
前記第2の深さは、
当該ベルトの厚さに対して、
- 6%以上、および/または
- 30%以下
である、
請求項1に記載のベルト。
【請求項8】
2つの最も近い浅い部分の中心線の間の距離が、前記第1の方向において前記第1の脱水溝から測定される、少なくとも20mmかつ100mm以下であり、好ましくは、少なくとも25mmかつ70mm以下である、請求項1に記載のベルト。
【請求項9】
- 前記浅い部分は、前記第1の方向における断面積が前記外面に向かって減少するようにテーパ状であるように構成される、および/または
- 前記浅い部分は、1つ以上の湾曲した側面を含む、
請求項1に記載のベルト。
【請求項10】
前記浅い部分は、前記第1の方向において前記第1の脱水溝から測定される、8mm~25mmの間の範囲内の平均的な長さを有する、請求項1に記載のベルト。
【請求項11】
前記深い部分は、前記第1の方向において前記第1の脱水溝から測定される、20mm~60mmの間の範囲内の平均的な長さを有する、請求項1に記載のベルト。
【請求項12】
前記浅い部分は、各々の浅い部分が、前記第1の脱水溝の底に対して少なくとも5°かつ90°以下の角度を形成する方向において前記第1の脱水溝の前記底から延在するような方法において、構成される、請求項1に記載のベルト。
【請求項13】
前記浅い部分の幅が、前記第1の脱水溝の前記幅の少なくとも8%、好ましくは、前記第1の脱水溝の前記幅の少なくとも35%である、請求項1に記載のベルト。
【請求項14】
少なくとも99%、および、好ましくは、全ての脱水溝は、前記浅い部分および前記深い部分を含む、請求項1に記載のベルト。
【請求項15】
前記脱水溝は、水について1平方メートル当たり100~600mlの総容量を形成するように構成される、請求項1に記載のベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維ウェブ機械(fiber web machine)のためのベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙機(paper machines)のような繊維ウェブ機械、ならびに板紙抄紙機、パルプマシン、およびティッシュ抄紙機は、典型的には、形成セクション、プレスセクション、および乾燥セクションを備える。製紙、パルプ製造、板紙製造では、繊維ウェブの物理的な特性を低下させることなく生産効率を向上させるために、湿った繊維ウェブからの脱水量をどのように増加させるかが課題である。
【0003】
今日、これらの機械は、典型的には、繊維ウェブの水除去又は搬送を支持するためにフェルトおよびワイヤを有する。さらに、繊維ウェブ機械は、乾燥した繊維ウェブの滑らかさを向上させるためのカレンダ機械のような最終製品特性を改良するための仕上げセクションを有することがある。
【0004】
繊維ウェブ機械は、異なる機能を有する異なるセクションに配置された多くの種類のロールを含むことがよく知られている。例えば、スリーブロールを形成セクションで使用して、湿った繊維材料からの遊離水の除去を向上させることができる。シュープレスを、例えば、プレスセクションで使用して、内部の繊維ウェブ中の残留水の除去を向上させることができる。スリーブロールおよびシュープレスは、両方とも、ベルトが正常に作動し得ることを必要とする。
【0005】
しかしながら、繊維ウェブ機械のための新しいベルトが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書の目的は、繊維ウェブ機械のためのベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の態様が、独立項に記載されているものによって特徴付けられる。本発明の様々な実施形態が、従属項に開示されている。
【0008】
本明細書による繊維ウェブ機械は、抄紙機であることができ、あるいは、板紙抄紙機、パルプマシン、またはティッシュ抄紙機であることができる。
【0009】
繊維ウェブ機械は、スリーブロールを含むことがある。スリーブロールは、典型的には、繊維ウェブ機械のワイヤセクションに配置される。スリーブロールのお陰で、ワイヤセクションの水除去を向上させることができる。一実施形態において、本明細書によるベルトは、スリーブロールベルトである。
【0010】
繊維ウェブ機械は、シュープレスを含むことがある。シュープレスは、典型的には、繊維ウェブ機械のプレスセクションに配置される。シュープレスのお陰で、プレスセクションの水除去を向上させることができる。有利には、本明細書によるベルトは、シュープレスベルトである。新規な脱水溝は、ベルトがシュープレスベルトであるときに特に有利であることができる。
【0011】
本明細書によるベルトは、内面および外面を有する。使用中、ベルトは、典型的には、閉ループを形成する。ベルトは、不浸透性ベルトであることができる。技術的効果は、繊維ウェブ織物から水を除去するために脱水溝を使用し得ること、およびベルトの外面の特性に影響を及ぼすことなくベルトの内面に油層を設け得ることを含む。
【0012】
ベルトは、本体材料を含む本体を含むことができる。さらに、ベルトは、補強構造を含むことができる。
【0013】
ベルトの外面は、第1の方向において複数の平行な脱水溝を含むことができる。各脱水溝は、第2の方向において決定される幅を有することができる。第2の方向は、第1の方向に対して横方向である。
【0014】
好ましくは、第1の方向は、機械方向から10°を超えて逸脱せず、第2の方向は、交差方向から10°を超えて逸脱しない。より好ましくは、第1の方向が、機械方向から5°を超えて逸脱せず、第2の方向は、交差方向から5°を超えて逸脱しない。最も好ましくは、第1の方向は、機械方向であり、第2の方向は、第1の方向に対して交差方向である。
【0015】
ベルトは、深い部分と浅い部分とを有する第1の脱水溝を含む。深い部分の間の浅い部分の技術的効果は、水の除去を強化することであり、それは浅い部分と深い部分とを含む脱水溝を有する機械におけるウェブ速度および生産効率の増加に寄与することができる。
【0016】
浅い部分は、第1の深さを有し、第1の深さは、ベルトの深さ方向においてベルトの外面から浅い部分の底までの最小の深さとして決定される。深い部分は、第2の深さを有し、第2の深さは、ベルトの深さ方向においてベルトの外面から深い部分の底まで決定される。ベルトの第1の深さは、第2の深さよりも小さい。
【0017】
第1の深さは、0mm~1.20mmの間の範囲内、好ましくは、0.02mm~0.40mmの間の範囲内であることができる。さらに、第2の深さは、0.8mm~1.6mmの間の範囲内、好ましくは、1mm~1.4mmの間の範囲内であることができる。技術的効果は、繊維ウェブから脱水溝への水のより効果的な伝達、および脱水溝からの脱水溝内に蓄積した水のより良好な除去を達成することである。
【0018】
好ましくは、第1の深さは、深さ方向においてベルトの外面から決定される、第2の深さに対して、少なくとも1%、より好ましくは、少なくとも2%、さらにより好ましくは、少なくとも3%、最も好ましくは、少なくとも5%である。さらに、第1の深さは、深さ方向においてベルトの外面から決定される、第2の深さに対して、好ましくは、75%未満、より好ましくは、50%未満、さらにより好ましくは、25%未満である。技術的効果は、とりわけ、繊維ウェブから脱水溝への強化された水除去、それによる、繊維ウェブのより高い乾燥含有量を含む。
【0019】
第1の深さは、ベルトの厚さに対して、例えば、0.2%~20%の間の範囲内のような、少なくとも0.2%であることができる。代替的にまたは追加的に、第2の深さは、ベルトの厚さに対して、6%~30%の間の範囲内であることができる。技術的効果は、脱水溝を使用しながらベルトの所望のプレス能力特性を維持して、繊維ウェブから脱水溝への水の効果的な伝達を達成することである。
【0020】
好ましくは、浅い部分の数は、第1の方向において1つの第1の脱水溝から決定される1/m~50/mであり、より好ましくは、20/m~40/mであり、最も好ましくは、22/m~30/mである。前記数の技術的効果は、脱水溝内の水流量が高く、脱水溝からの水の除去が強化されることである。
【0021】
各々の浅い部分は、浅い部分の最小の深さ(または最小の深さを有する領域の中心)の場所として決定される中心線を有する。
【0022】
2つの最も近い浅い部分の中心線の間の距離は、第1の方向において第1の脱水溝から測定される1000mm未満、好ましくは、少なくとも20mmかつ100mm以下、より好ましくは、少なくとも25mmかつ70mm以下、さらにより好ましくは、少なくとも32mmかつ53mm以下であることができる。技術的効果は、浅い部分によってもたらされる有利な効果を増強し、脱水溝からのより制御されたより良好な水の除去を達成することである。
【0023】
浅い部分は、脱水溝の底から浅い部分の頂まで決定される、第1の方向における断面形状を有する。
【0024】
前記断面形状は、ベルトの外面に向かってテーパ状になることができる。技術的効果は、前記テーパ形状が鋭利なエッジのない滑らかな移行を与えて、溝を細い繊維、充填添加剤などからより綺麗に保つとともに、脱水溝からの水除去を向上させることである。
【0025】
一実施形態において、浅い部分は、第1の脱水溝の底に対して少なくとも5°かつ90°以下、好ましくは、80°以下の角度を形成する方向において、各々の浅い部分が第1の脱水溝の底から延在するような方法において配置される。技術的効果は、ベルトの微調整特性を改良することである。その角度は、除去されるべき水の量に対しても効果を有する。
【0026】
浅い部分は、第1の方向において第1の脱水溝から決定される第1の長さを有することができ、深い部分は、第1の方向において第1の脱水溝から決定される第2の長さを有することができる。第1の長さは、第1の方向において第1の脱水溝から測定される、5mm~35mmの間の範囲内、好ましくは、7mm~15mmの間の範囲内にあることができる。第2の長さは、第1の方向において第1の脱水溝から測定される、10mm~90mmの間の範囲内、好ましくは、20mm~45mmの間の範囲内にあることができる。この組み合わせの技術的効果は、繊維ウェブから脱水溝への水除去および脱水溝からの水のより良好な除去を向上させることである。
【0027】
浅い部分の平均的な長さは、好ましくは、第1の方向に決定される深い部分の平均的な長さよりも小さい。好ましくは、各々の浅い部分は、第1の方向において第1の脱水溝から決定される、深い部分の平均的な長さの60%以下、好ましくは、50%以下の第1の長さを有する。技術的効果は、繊維ウェブから脱水溝への水の除去を向上させることであり、故に、脱水されるべき繊維ウェブのより高い乾燥含有量を得ることである。
【0028】
浅い部分の平均的な幅は、第1の脱水溝の幅の少なくとも8%かつ100%以下であることができ、好ましくは、浅い部分の平均的な幅は、第2の方向において決定される、第1の脱水溝の幅の少なくとも35%かつ100%以下、より好ましくは、50%以上、最も好ましくは、70%以上である。技術的効果は、特に浅い部分が実質的に小さい深さを有する場合に、脱水されるべき繊維ウェブのマーキングを回避することである。
【0029】
前記第1の脱水溝、すなわち、前記浅い部分および前記深い部分を有する脱水溝の総量は、全ての脱水溝の総量から決定される、少なくとも50%、好ましくは、少なくとも99%、最も好ましくは、100%であることができる。技術的効果は、繊維ウェブから脱水溝への水のより効果的な伝達、および脱水溝からの水のより制御されたより良好な除去を達成することである。別の技術的効果は、脱水効率を向上させ、それによって、繊維ウェブ機械の脱水セクションの生産効率を向上させることである。
【0030】
脱水溝は、水のための総全容積を形成するように配置される。好ましくは、前記総容量は、100~600ml/mであり、より好ましくは、200~500ml/mである。技術的効果は、脱水されるべき繊維ウェブのより高い脱水および乾燥含有量を達成し、それによって、繊維ウェブ機械の生産効率を向上させる使用されることができる、そのような総容量を提供することである。
【0031】
よって、新規なベルトは、多くの利点を有する。例えば、深い部分の間の浅い部分のお陰で、繊維ウェブのより高い乾燥含有量が、脱水溝からの水の除去を強化することによって達成され得ることである。何故ならば、深い部分は、水を集めることができ、浅い部分は、水をベルトから押し離すことができるからである。このようにして、深い部分および浅い部分は、繊維ウェブのより高い乾燥含有量を達成するために、脱水プロセスに対して強い影響を有する。
【0032】
以下では、本発明を図面により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1a】シュープレスに装着されたベルトを含むシュープレスの例を示す。
図1b】スリーブロールに装着されたベルトを含むスリーブロールの一例を示す。
図2a】ベルトの例を示す。
図2b】ベルトの脱水溝の例を示しており、浅い部分および深い部分の例を示す。
図2c】ベルトの脱水溝の例を示しており、図2(b)の一点の例を示す。
図3a】ベルトの1つの脱水溝の一部分を断面図で示す。
図3b】ベルトの1つの脱水溝の一部分を断面図で示す。
図3c】ベルトの一部分を頂面図で示す。
図4a】脱水溝の一部分の例を示す。
図4b】断面図における脱水溝の深い部分の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図は、ベルトの幾つかの例を示す。図は、縮尺通りではないことがある例示である。同様の部分は、同じ参照番号によって図中に示される。
【0035】
解決策は、限定的であるとみなされるべきでない幾つかの実施形態を参照して以下により詳細に記載される。
【0036】
(符号の説明)
この明細書では、以下の番号及び表示を伴う図を参照する。
D1 ベルトの第1の方向
D2 ベルトの第2の方向
MD ベルトの進行方向
CD ベルトの交差方向
C1 スリーブロールの第1の曲線
C2 スリーブロールの第2の曲線
1 シュープレス
2 プレスシュー
3 カウンタロール
4 プレスゾーン
5,5a,5b 繊維ウェブ機械織物、例えば、ワイヤ又はフェルト
6 繊維ウェブ
7 スリーブロール
8 スリーブロールの支持シャフト
9 スリーブロールの曲線要素
10 ベルト
10a ベルト本体の厚さ
11 ベルトの内面
12 ベルトの外面
13a ベルトの第1の端
13b ベルトの第2の端
14 ベルトの本体
15 ベルトの取り付け点
16 ベルトの外縁
21 第1の脱水溝
22 脱水溝の幅
23 2つの隣接する脱水溝の間のランド
24 ランドの幅
30 第1の脱水溝の浅い部分
31 浅い部分の中心線
32 第1の深さ、すなわち、浅い部分の深さ
33 第1の方向における2つの最も近い浅い部分の中心線の間の距離
34 第1の方向における浅い部分の長さ
40 脱水溝の深い部分
42 深い部分の深さ
44 第1の方向における深い部分の長さ
【0037】
特許請求の範囲及び明細書に記載される実施形態及び例は、別段の断りがない限り、相互に自由に組み合わせ可能である。
【0038】
本明細書において、「含む(comprising)」という用語は、開放用語として使用されることがあるが、本明細書は、閉塞用語である「からなる(consisting of)」も含む。よって、別段の断りがない限り、「含む」という用語は、「含むまたはからなる」として理解されることができる。
【0039】
本明細書および特許請求の範囲の目的のために、特に断りのない限り、全ての範囲は、開示される最大値および最小値のあらゆる組み合わせを含み、それらの中のあらゆる中間範囲を含み、それらは、本明細書に具体的に列挙されることがあり、あるいは列挙されないことがある。
【0040】
特に断りのない限り、全ての範囲及び値は、新しいベルトから決定される。例えば、溝の深さは、ベルトが摩耗するにつれて減少し得る。
【0041】
本明細書において、「厚さ」という用語は、ベルトの深さ方向を指す。他方、「深さ」という用語は、ベルトの厚さ方向を指す。
【0042】
本明細書では、「進行方向(travel direction)」MDおよび「交差方向(cross direction)」CDという用語を使用する。走行方向MD(すなわち、走行方向(direction of running))は、使用中のベルトの回転方向を指す。交差方向CDは、ベルトの進行方向MDに対して横断方向を指す。使用中、交差方向は、ベルトの回転軸に対して実質的に平行である。
【0043】
本明細書において、「実質的に平行」という用語は、1つの方向が、前記実質的に平行な方向から10度を超えて、好ましくは、3度を超えて逸脱しないことを意味する。よって、例えば、「進行方向に実質的に平行」は、本明細書において、ある方向が前記進行方向から10度を超えて、好ましくは、3度を超えて逸脱しないことを意味する。
【0044】
本明細書による繊維ウェブ機械(fiber web machine)は、スリーブロール(sleeve roll)およびシュープレス(shoe press)のうちの少なくとも1つを含むことがある。
【0045】
(シュープレス)
図1aを参照すると、繊維ウェブ機械(fiber web machine)は、シュープレス1を含むことがある。
【0046】
ベルト10は、シュープレスベルトであることができる。
【0047】
ベルト10を備えたシュープレスは、繊維ウェブを脱水するために使用されることができる。シュープレスは、典型的には、カウンタロール4およびプレスシュー2を含み、プレスゾーンが、それらの間に形成される。よって、延長されたプレスゾーン4、すなわち、いわゆるロングニップ(long nip)が、プレスシュー2とカウンタロール3との間に形成される。シュープレスの機能は、典型的には、繊維ウェブから水を除去することである。
【0048】
ベルトは、作動中に、ベルトがカウンタロールとプレスシューとの間のプレスゾーンを通じて走るような方法において、シュープレスに関連して配置され、あるいは配置されることができる。
【0049】
典型的には、プレスシューおよびカウンタロールは、
1)シュープレスベルト、
2)少なくとも1つの抄紙機用の織物、および
3)脱水される繊維ウェブ
が、プレスシューとカウンタロールとの間のニップ内で圧縮されるような方法において、プレスゾーン内で互いに対して押しつけられる。
【0050】
(スリーブロール)
図1bを参照すると、繊維ウェブ機械は、スリーブロール7を含むことがある。
【0051】
ベルト10は、スリーブロールベルトであることができる。
【0052】
スリーブロール7は、内部からの水除去を向上させるために、形成セクション内に配置されることができる。ベルト10を備えたスリーブロール7は、ワイヤ5上の繊維ウェブ6を脱水するために使用されることができる。
【0053】
ベルト10は、スリーブロール7の外面の周囲に配置されることができる。スリーブロールは、支持シャフト8を含むことができる。よって、ベルト10は、支持シャフト8の周りを回るように導かれることができる。さらに、スリーブロール7は、支持シャフト8上で互いに離間して配置される支持要素を含むことができる。スリーブロールの外面の周りを回ることができるベルト10は、支持要素によって支持されることができる。
【0054】
ベルト10は、その外面12が繊維ウェブ6に面し、その内面11がスリーブロール7に面するような方法において、スリーブロール7に関連して配置されることがある。よって、スリーブロール7は、ループの形状を有するベルト10によって囲まれることができる。
【0055】
スリーブロール7は、曲線要素9をさらに含むことができる。動作中、ベルトは、典型的には、曲線要素上の脱水ゾーンを通じて走る。さらに、ワイヤ5は、曲線状の脱水ゾーンC1、C2を介して導かれることができ、それらの脱水ゾーンは、ベルト10によって支持されることができる。曲線状の脱水ゾーンC1、C2は、第1の部分曲線C1の曲率半径がベルトの移動方向MDにおいて第1の部分曲線に続く第2の部分曲線C2の曲率半径よりも大きいように、少なくとも2つの部分曲線C1、C2を含むことができる。これは繊維ウェブからの水除去を向上させることができる。曲線要素9は、移動可能であることができる、すなわち、曲線要素の表面上のベルトの曲率半径は、曲線要素を移動させることによって制御されることができる。
【0056】
(ベルト)
本明細書によるベルト10は、スリーブロールベルトであるように構成されることができる。好ましくは、本明細書によるベルトは、シュープレスベルトであるように構成される。
【0057】
ベルトは、内面11と、外面12とを有することができる。ベルトは、少なくとも動作中に、閉ループを形成することができる、すなわち、ベルト10は、無端ループのように成形されることができる。
【0058】
ベルト10は、1回転の長さである円周と、厚さ10aとを有する。厚さは、ベルトの最小寸法である。円周は、ベルトをスリーブロールまたはシュープレスに適合させるように選択されることができる。ベルト10の円周は、ベルト10の内径が動作中に目的に適するように決定される。ベルト10の円周は、ベルト10の内径が動作中に使用に適するように決定される。ベルトの円周は、異なることがある。ベルトの内径は、例えば、700mm~2000mmの間の範囲であることがある。
【0059】
ベルト1は、不浸透性ベルトであることができる。よって、ベルトの外面12の特性に影響を及ぼすことなく、例えば、ベルトの内面11上に油層を使用することが可能である。
【0060】
ベルトの厚さ10aは、少なくとも2mm、より好ましくは、少なくとも3mm、最も好ましくは、3.5mm以上であることができる。ベルトの厚さ10aは、8mm以下、より好ましくは、7mm以下、最も好ましくは、6mm以下であることができる。技術的効果は、脱水溝を有するベルトが、特にスリーブロールベルトおよびシュープレスベルトについて良好な強度特性を有する構造を提供することである。
【0061】
ベルトは、第1の方向D1において配置された、ベルトの外側表面上の複数の平行な脱水溝を含む。各脱水溝は、第2の方向D2において決定される幅を有する。
【0062】
好ましくは、脱水溝は、機械方向MD、すなわち、使用中のベルト10の回転方向に、または使用中のベルト10の回転方向に少なくとも実質的に延びる。
【0063】
ランド23(land)が、2つの隣接する脱水溝の間に設けられる。よって、ベルトは、隣接する脱水溝の間に複数の平行なランド23を有する。ランド23は、0.8mm~5mmの間の範囲内、好ましくは、1mm~3mmの間の範囲内、最も好ましくは、1.1mm~2.5mmの間の範囲内の幅を有することができる。代替的にまたは追加的に、2つの平行で隣接する脱水溝の中心線間の距離は、1.5mm~7mmの間の範囲内、好ましくは、1.8mm~5.5mmの間の範囲内、最も好ましくは、2.0mm~4.5mmの間の範囲内であることができる。代替的にまたは追加的に、脱水溝の幅22は、0.5mm~2mmの間の範囲内、好ましくは、0.7mm~1.8mmの間の範囲内、最も好ましくは、0.8mm~1.6mmの間の範囲内であることができる。前記幅および距離の技術的効果は、浅い部分および深い部分と共に、前記繊維ウェブに望ましくないマーキングを生じさせることなく、脱水されるべき繊維ウェブからの水除去を最適化することである。
【0064】
第1の脱水溝21は、第1の方向において第1の脱水溝に沿って配置された浅い部分および深い部分を有し、浅い部分は、第1の深さを有し、深い部分は、第2の深さを有する。第1の深さは、第2の深さよりも小さい。技術的効果は、水をウェブから脱水溝に効果的に除去できることである。
【0065】
浅い部分30の第1の深さは、ベルトの外面から浅い部分の底までの浅い部分の最も小さい深さとして決定される、0~1.20mmの間の範囲内、好ましくは、0.01mm~1.0mmの間の範囲内、より好ましくは、0.02mm~0.8mmの間の範囲内、さらにより好ましくは、0.04mm~0.6mmの間の範囲内、さらにより好ましくは、0.05mm~0.4mmの間の範囲内、最も好ましくは、0.2mm以下のような、0mm以上であることができる。技術的な効果は、より少ない再湿潤が繊維ウェブに関して生じ得ることである。別の技術的効果は、バックスプラッシュ現象および脱水されるべき繊維ウェブのマーキングの両方を回避することである。
【0066】
深い部分30の第2の深さは、深い部分の底からベルトの外面まで決定される、0.8mm以上、好ましくは、0.9mm~1.6mmの間の範囲内、より好ましくは、1mm~1.5mmの間の範囲内、最も好ましくは、1.1mm~1.4mmの間の範囲内であることができる。前記第2の深さと第1の深さとの組み合わせの技術的効果は、バックスプラッシュ現象および再湿潤化を回避することである。好ましくは、第2の深さは、深さ部分を通して実質的に同じである。
【0067】
第1の深さは、第2の深さに対して少なくとも1%、より好ましくは、少なくとも2%、さらに好ましくは、少なくとも3%、最も好ましくは、少なくとも5%であることができる。追加的にまたは代替的に、第1の深さは、深さ方向におけるベルトの外面から決定される、第2の深さに対して75%未満、好ましくは、50%未満、さらに好ましくは、25%未満であることができる。技術的効果は、ベルトによって生じるマーキングを減少させること、故に、製造されるべき繊維ウェブの表面特性を改良することである。
【0068】
マーキングレベルの低下のさらなる技術的効果は、コーティングされたおよび/またはカレンダされた(calendered)繊維ウェブのような最終製品のより良い特性を達成することである。
【0069】
第1の深さは、好ましくは、ベルトの厚さに対して0.2%~29%の間の範囲内、好ましくは、2%~15%の間の範囲内のような、少なくとも0.2%である。さらに、第2の深さは、ベルトの厚さに対して6%~30%の間の範囲内、好ましくは、10%~25%の間の範囲内であることができる。技術的効果は、脱水されるべき繊維ウェブの効果的な脱水を達成することである。
【0070】
浅い部分および深い部分の上述の深さで、水は、前記第1の脱水溝を介してウェブからより効率的に除去されることができる。これらの利益は、典型的には、良好に実現され、上述の構成のより多くは、ベルトに実装される。
【0071】
2つの最も近い浅い部分の中心線31の間の距離33は、好ましくは、1000mm未満、より好ましくは、500mm未満である。有利な効果を高めるために、2つの最も近い浅い部分の中心線31の間の距離33は、第1の方向において第1の脱水溝から決定される、少なくとも20mmかつ100mm以下、好ましくは、少なくとも25mmかつ70mm以下、最も好ましくは、少なくとも30mmかつ50mm以下であることができる。
【0072】
第1の脱水溝内の浅い部分は、ウェブからの水の除去を高め、それらの有効性は、浅い部分の数が1/m~50/mの間に、好ましくは、20/m~40/mの間の範囲内に維持されるにつれて向上することができ、その場合、最良の結果は、前記浅い部分の数が、第1の方向D1において第1の脱水溝21から測定された22/m~30/mであるときに達成されることができる。前記数の浅い部分の別の技術的効果は、水をウェブから脱水溝に効果的に除去することができ、さらに、より少ない再湿潤が繊維ウェブに関して生じ得ることである。
【0073】
有利な効果をさらに高めるために、ベルトの外面は、1平方メートル(m)当たり5000~15000個の浅い部分を含むことができる。
【0074】
浅い部分30は、第1の方向において第1の脱水溝21から測定された、8mm~25mmの間の範囲の平均的な長さ34を有することができる。代替的にまたは追加的に、深い部分40は、第1の方向において第1の脱水溝から測定された、20mm~60mmの間の範囲内の平均的な長さ44を有することができる。技術的効果は、ベルトの脱水特性を実質的な程度まで向上させることである。別の技術的効果は、製造されるべき繊維ウェブについて良好な水分プロファイルを達成することである。
【0075】
浅い部分は、各浅い部分が第1の脱水溝の底に対して少なくとも5°および90°以下の角度を形成する方向において第1の脱水溝の底から延在するような方法において配置されることができる。好ましくは、浅い部分は、第1の脱水溝の底に対して10°~80°の角度を形成する方向において第1の脱水溝の底から延在する。角度は、除去されるべき水の量に対する影響を有する。技術的効果は、ベルトの微調整特性を向上させることである。
【0076】
図2bに示すように、浅い部分は、少なくとも部分的に斜めに位置付けられることができる。技術的効果は、脱水に対する浅い部分の影響がベルトの任意の位置に維持できることである。
【0077】
1つの実施形態において、浅い部分は、第1の方向において、
- 四角形、
- 長方形、
- 少なくとも1つの湾曲した側面および/または少なくとも1つの湾曲した縁を有する長方形、
- 三角形、
- 少なくとも1つの湾曲した側面および/または少なくとも1つの湾曲した縁を有する三角形、
- トラペジウム(trapezium)、および
- 少なくとも1つの湾曲した側面および/または少なくとも1つの湾曲した縁を有するトラペジウム
のうちの少なくとも1つの交差方向形状を有する。
【0078】
浅い部分のそのような形状の技術的効果は、その脱水特性を向上させることである。
【0079】
浅い部分は、第1の方向において少なくとも1つの湾曲した側面を含むことができる。浅い部分は、第1の方向に1つ以上の凹んだ側面を含むことができる。技術的効果は、脱水溝からの水の除去を強化することである。別の技術的効果は、使用中の浅い部分の耐久性を向上させることである。
【0080】
浅い部分は、第1の方向において実質的に上下逆のU字形またはV字形の断面のような、下向きの開口を有するように成形されることができる。技術的効果は、そのような成形された浅い部分が第1の脱水溝から水を除去するために深い部分と共に特に良好に作用するので、脱水特性を向上させることである。
【0081】
浅い部分は、第1の方向において決定される断面積が外面に向かって減少するように、テーパ状に配置されることができる。よって、浅い部分の形状は、浅い部分の底から浅い部分の頂に向かってテーパ状であることがある。技術的効果は、小さな繊維、充填添加剤などから溝を綺麗に保ち、脱水溝からの水の除去を向上させることである。
【0082】
浅い部分の効果は、典型的には、前記浅い部分を含む脱水溝の数が増加するときに強化される。好ましくは、第1の脱水溝の数は、第2の方向における第1の脱水溝の数として決定される、少なくとも140/mであり、より有利には、少なくとも200/mであり、好ましくは、少なくとも230/mであり、有利には、670/m以下であり、より好ましくは、560/m以下であり、好ましくは、500/m以下である。
【0083】
脱水溝の総水量は、100~800ml/mの間、好ましくは、200ml/m~600ml/mの間、より好ましくは、300ml/m~500ml/mの間であることができる。技術的効果は、脱水されるべき繊維ウェブの脱水を強化することである。
【0084】
ベルトは、典型的には、パルプ乾燥機、板紙抄紙機、または製紙機に装着されることが意図される。
【0085】
ベルトは、繊維ウェブ機械のシュープレスまたはスリーブロールに装着されることが意図されることができる。
【0086】
ベルトは、当業者によって知られている方法によって製造されることができる。
【0087】
図2aを参照すると、ベルトは、一例において、ベルトの改良された装着のためにベルトの外縁16および/または複数の取り付け点15を有することがある。ベルトは、例えば、ベルトの強度特性を改良するための補強構造(図示せず)をさらに含むことがある。補強構造は、使用されるならば、例えば、ヤーンを含むことがある。一例において、本体14は、ベルトの総重量から計算された少なくとも50重量%のポリウレタンのような、ポリウレタンを含むことがある。
【0088】
本発明は、図示および例を用いて説明された。本発明は、上記の実施形態のみに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内で修正されることがある。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
【外国語明細書】