(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094297
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】アブレーションカテーテルの正確な灌注量
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023219039
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】18/088,858
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK13
4C160KK23
4C160KK36
4C160KK57
4C160MM38
4C160NN23
(57)【要約】
【課題】医療システムを提供すること。
【解決手段】1つの例示的なモードにおいて、システムは、ハウジングと、ロータと、ステータと、ポートとを備える、プログレッシブキャビティポンプ(PCP)であって、ポートの1つが、灌注リザーバに接続されるよう構成されている、プログレッシブキャビティポンプと、少なくとも1つのアブレーション電極と、少なくとも1つの灌注孔と、灌注孔に接続されている遠位端及びPCPの別のポートに接続されるよう構成されている近位端を有する灌注流路とを備える、アブレーションカテーテルと、PCPに接続されて、プログレッシブキャビティポンプのロータの回転を駆動するよう構成されている駆動シャフトを備えるモータと、灌注液を灌注リザーバから灌注流路内に圧送し、アブレーションカテーテルの灌注孔から排出するよう、PCPの流量を制御するために、モータの回転速度を制御するように構成されている、コントローラとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
ハウジングと、ロータと、ステータと、一対のポートとを備える、プログレッシブキャビティポンプであって、前記ポートの1つが、灌注リザーバに接続されるよう構成されており、前記ロータが、前記ハウジング内の前記ステータに配設されている、プログレッシブキャビティポンプと、
少なくとも1つのアブレーション電極と、少なくとも1つの灌注孔と、前記少なくとも1つの灌注孔に接続されている遠位端及び前記プログレッシブキャビティポンプの前記ポートの別の1つに接続されるよう構成されている近位端を有する灌注流路とを備える、アブレーションカテーテルと、
前記プログレッシブキャビティポンプに接続されて、前記プログレッシブキャビティポンプの前記ロータの回転を駆動するよう構成されている駆動シャフトを備えるモータと、
灌注液を前記灌注リザーバから前記灌注流路内に圧送し、前記アブレーションカテーテルの前記少なくとも1つの灌注孔から排出するよう、前記プログレッシブキャビティポンプの流量を制御するために、前記モータの回転速度を制御するように構成されている、コントローラと
を備える、システム。
【請求項2】
前記ロータが、遊星運動により、前記ステータ内で回転するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記モータの前記駆動シャフト及び前記プログレッシブキャビティポンプの前記ロータに接続されるよう構成されており、かつ前記モータによってもたらされる円運動を遊星運動に変換して、前記ステータ内の前記ロータの遊星運動を駆動するよう構成されている、伝達部を更に備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記伝達部が、前記ハウジング内に配設されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記プログレッシブキャビティポンプが使い捨てカートリッジとして形成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プログレッシブキャビティポンプがプラスチック製の使い捨てカートリッジとして形成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プログレッシブキャビティポンプが成形プラスチック製の使い捨てカートリッジとして形成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記モータがサーボモータである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ハウジングが2つの端部を含み、前記一対のポートが、前記ハウジングの前記端部のうち同じ一方に配設されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記プログレッシブキャビティポンプが、ある期間にわたり、前記灌注リザーバから前記灌注流路への前記灌注液の連続した滑らかな流れをもたらすよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記プログレッシブキャビティポンプが、1分間あたり1~2ミリリットルの流量で、前記期間にわたり、前記灌注リザーバから前記灌注流路への前記灌注液の前記連続した滑らかな流れをもたらすよう構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記期間が、1~10分の範囲である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記期間が、1~10分の範囲である、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラが、前記アブレーションカテーテルによって感知される温度に基づいて前記プログレッシブキャビティポンプの前記流量を制御するために、前記モータの前記回転速度を制御するよう構成されている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療システムに関し、特に、排他的ではないが、アブレーションシステムにおける灌注に関する。
【背景技術】
【0002】
幅広い医療処置では、カテーテルなどのプローブを患者の体内に置くことを伴う。このような類のプローブすなわちカテーテルが極めて有用であることが分かっている1つの医療処置は、心不正脈治療におけるものである。心不整脈及び心房細動は、とりわけ高齢者群ではよくある危険な医学的病気として特に根強く残る。
【0003】
心不整脈の診断及び治療として、心臓組織、とりわけ心内膜及び心臓容積の電気的性質をマッピングすることと、電気印加によって心臓組織を選択的にアブレーションすることとが挙げられる。カテーテルは、このような処置中に心腔内に挿入され、場合により心腔の周囲に挿入される。ほとんどの処置では、複数のカテーテルが患者に挿入される。カテーテルは、マッピングカテーテル、アブレーションカテーテル、温度感知カテーテル、及び画像感知カテーテルを含み得る。いくつかのカテーテルは、解剖学的構造の特定の部分、例えば、冠静脈洞、食道、心房、心室への配置専用である。カテーテルは、複数の電気チャネルを有し、各カテーテルに含まれるセンサ及び電極の数に応じて、いくつかは他のものよりも多い。カテーテルの数及びタイプは、処置及び医師が好むワークフローに依存する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本開示は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から理解されよう。
【
図1】本開示の例示的なモードにしたがって構築され、動作する、カテーテルベースの電気生理学的マッピング及びアブレーションシステムの透視図である。
【
図2A】
図1のシステムにおいて使用するためのプログレッシブキャビティポンプの概略図である。
【
図2B】
図1のシステムにおいて使用するためのプログレッシブキャビティポンプの概略図である。
【
図2C】
図1のシステムにおいて使用するためのプログレッシブキャビティポンプの概略図である。
【
図3】
図1のシステムにおける灌注サブシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
概説
アブレーション処置の間、細胞に投入されるアブレーション電力は、十分に調整される必要がある。というのは、細胞のアブレーションエネルギーの吸収が少なすぎる場合、細胞は、部分的にしか不活性化されないことがある一方で、アブレーションエネルギーの吸収が多すぎる場合、心臓に対し、生命に脅威を与える可能性のある過剰な損傷を生じさせるおそれがあるからである。電力投入に関する別の考慮事項は、所与のアブレーション処置に対する全体的な時間である。医師は、典型的には、時間を最小に保持することを好むため、十分なエネルギーを投入するためには、この時間の間に投入する電力は高くなるはずである。したがって、アブレーション電力送達の目標は、過剰な外傷を生じさせないことを条件として、電力レベルを可能なかぎり標的電力に近づけることである。
【0006】
アブレーションの間に組織の炭化又はキャビテーション(「スチームポップ」と呼ばれるもの)が発生するという問題を防止するため、心筋アブレーションの間に組織灌流を実施する必要がある。したがって、電力レベルの目標が標的電力にできるだけ近いことに加えて、心筋組織の温度も、標的温度にできるだけ近いままであるべきである。温度及び電力がより安定的であれば、一般に、アブレーション結果がより良好となり、かつアブレーション処理部の品質もより高いものとなる。
【0007】
灌注は、一般に、アブレーション部位を冷却するため、灌注液を灌注リザーバからカテーテルを介してアブレーション部位に圧送するペリスタポンプを使用して実施される。しかし、ペリスタポンプによって供給される灌注液流量は、ポンプの性質及び管の特徴に起因して安定して継続しないことがあり、したがって、アブレーション部位の温度を正確に制御することは困難である。アブレーション部位を目標温度に維持し、かつ上記の問題を回避するため、灌注液流量が安定して継続することが重要である。
【0008】
したがって、本開示の例示的なモードの一部は、プログレッシブキャビティポンプ(PCP)を使用し、灌注リザーバからカテーテルを介して、アブレーション部位に灌注液を圧送することを含む。PCPは、ハウジング、ロータ、ステータ及び一対のポートを含むことができる。一対のポートは、灌注液をリザーバからPCP内に受け入れるための流体入口ポートと、灌注液がPCPから排出されてカテーテル灌注チューブに向かう出口ポートとを含む。ロータは、ハウジング内のステータ内に配置されている。ポートの1つは、例えば、好適なチューブを介して灌注リザーバに接続されており、ポートの1つは、例えば、好適なチューブを介して、カテーテルに接続されている。カテーテルは、灌注液が圧送される灌注流路を含む。灌注流路は、カテーテルの近位端からカテーテルの遠位端まで延在している。遠位端は、アブレーション部位における組織を冷却するため、灌注液が排出する1つ以上の灌注孔を含む。
【0009】
PCPは、灌注液流量を正確に制御し、連続かつ滑らかな流れをもたらすよう動作させることができる。用語「連続」とは、本明細書及び特許請求の範囲おいて使用される場合、ポンプが能動的に圧送している期間中に、流れが停止しない、又は最小流量(例えば、1分あたり0.5ミリリットル(ml))を下回らないことと定義される。用語「滑らかな」とは、本明細書及び特許請求の範囲おいて使用される場合、流量が、PCPが設定される流量から10%を超えて、及び場合により3%又は1%~3%未満しか変化しないと定義される。例えば、1分あたり1mlで圧送するようPCPが設定される場合、流量は、1分あたり0.9ml未満に低下することはなく、かつ1分あたり1.1mlを超えて増加しない。
【0010】
PCPによってもたらされる流量は、PCPロータの回転速度の関数となり、したがって、PCPは、PCPロータの回転速度を調節するよう較正されて、灌注液の所望の流量を実現することができる。多くの用途では、流量は、1分あたり1~2mlの範囲とすることが望ましい。PCPロータの回転速度は、モータの回転速度、したがってPCPロータの回転速度を制御する好適なコントローラによって駆動されるモータ、例えばサーボモータを使用して制御されてもよい。
【0011】
PCPによってもたらされる流量は、アブレーション部位において測定される温度の関数となることがあり、したがって、PCPによってもたらされる流量は、アブレーション部位における温度が上昇した場合に増加し、逆もまた同様である。
【0012】
PCPは、流量を正確に制御すること、及び連続した滑らかな流れを実現することに加え、必要に応じてペリスタポンプを用いると、特別なチューブを必要としない。更に、PCPは、ペリスタポンプのチューブにかかる圧力のために、プラスチックに由来する電荷の放出に関係するペリスタポンプによって生じるノイズを回避する。
【0013】
一部の例示的なモードでは、PCPは、モータ及び灌注チューブに接続した使い捨てカートリッジとして形成されてもよい。PCPカートリッジは、使用後、チューブ及びモータから接続解除されて、次に廃棄されてもよい。モータは、再使用可能であってもよい。PCPは、任意の好適な材料、例えば、成形プラスチックなどのプラスチックから形成されてもよい。プラスチック製PCPの寸法は、高度に耐性を有することができるが、PCPは、ロータの1分間あたりの回転数(RPM)と流量との間で線形関係を明確にするよう較正されてもよい。
【0014】
一部の例示的なモードでは、PCPの両方のポートがPCPの同じ側に位置して、灌注チューブの容易な接続及び接続解除を可能にする。
【0015】
ロータは、通常、遊星運動によりステータ内で回転する。したがって、PCPは、モータによってもたらされる円運動を遊星運動に変換してステータ内のロータの遊星運動を駆動するために、モータの駆動シャフト及びPCPのロータに接続する伝達部を含んでもよい。伝達部は、オルダム継手などの自在継手を使用して設けられてもよい。
【0016】
システムの説明
本開示の例示的なモードにしたがって構築及び動作する、カテーテルベースの電気生理学的マッピング及びアブレーションシステム10の透視図である、
図1を参照する。システム10は、患者の血管系を通り、心臓14の腔又は血管構造内に、医師12によって経皮的に挿入される複数のカテーテルを含む。通常、送達シースカテーテルは、心臓14内の所望の位置近傍の左心房又は右心房内に挿入される。その後、1本以上のカテーテルを、送達シースカテーテルに挿入して、心臓14内の所望の場所に到達させることができる。複数のカテーテルは、心内電位図(Intracardiac Electrogram、IEGM)信号の感知専用のカテーテル、アブレーション専用のカテーテル、並びに/又は感知及びアブレーションの両方に専用のカテーテルを含んでもよい。IEGMを感知するよう、及び/又はアブレーションを実施するよう構成されている例となるカテーテル16が本明細書に例示されている。医師12は、心臓14における標的部位を感知するために、カテーテル16の遠位先端部18を心臓壁と接触させて置くことができる。アブレーションするため、医師12は、カテーテル16(又は任意の好適なカテーテル)の遠位先端部18を、組織をアブレーションする標的部位に接触させて、同様に置くことができる。
【0017】
カテーテル16は、遠位先端部18に場合により分布されており、IEGM信号を感知するよう構成されている、1つ以上の電極20(これらのうちの少なくとも1つは、アブレーション電極である)を含む例示的なカテーテルである。カテーテル16は、遠位先端部18の位置及び向きを追跡するために、遠位先端部18内又はその近傍に埋め込まれた位置センサ22を更に含んでもよい。位置センサ22は、三次元(3D)位置及び向きを感知する3つの磁気コイル(ロールを含む)を含む、磁気ベースの位置センサであってもよい。
【0018】
磁気ベースの位置センサ22は、所定の作業体積内に磁場を発生するように構成されている複数の磁気コイル26を含む位置パッド24と共に動作されてもよい。カテーテル16の遠位先端部18のリアルタイム位置は、位置パッド24によって発生され、磁気ベースの位置センサ22によって感知される磁場に基づいて追跡されてもよい。磁場ベースの位置感知技術の詳細は、米国特許第5,5391,199号;同第5,443,489号;同第5,558,091号;同第6,172,499号;同第6,239,724号;同第6,332,089号;同第6,484,118号;同第6,618,612号;同第6,690,963号;同第6,788,967号;同第6,892,091号に記載されている。
【0019】
システム10は、位置パッド24に関する位置基準及び電極20のインピーダンスベースの追跡を確立するために、患者30において皮膚接触するよう位置決めされた1つ以上の電極(本体表面)パッチ28を含む。インピーダンスベースの追跡のために、電流が電極20に向けられ、電極本体表面パッチ28において感知され、その結果、電極パッチ28を介して、各電極の位置を三角測量することができる(又は、他には計算される)。インピーダンスベースの位置追跡技術の詳細は、米国特許第7,536,218号;同第7,756,576号;同第7,848,787号;同第7,869,865号;及び同第8,456,182号に記載されている。
【0020】
レコーダ32は、本体表面ECG電極36によりキャプチャされた電気記録
図34と、カテーテル16の電極20によりキャプチャされた心内電位図(IEGM)とを記録して表示する。レコーダ32は、心拍リズムをペーシングするためのペーシング能力を含んでもよく、及び/又は独立型ペーサに電気的に接続されてもよい。
【0021】
システム10は、アブレーションするように構成されたカテーテル16の遠位先端部18にある電極20にアブレーションエネルギーを伝達するように適合されているアブレーションエネルギー発生器38を含んでもよい。アブレーションエネルギー発生器38によって発生されるエネルギーは、以下に限定されないが、不可逆的エレクトロポレーション(IRE)をもたらすために使用され得る単極又は双極高電圧DCパルスを含む、無線周波数(RF)エネルギー若しくはパルス場アブレーション(PFA)エネルギー、又はそれらの組合せを含んでもよい。
【0022】
患者インターフェースユニット(PIU)40は、カテーテルと、電気生理学的機器と、電源と、システム10の動作を制御するワークステーション42との間の電気通信を確立するように構成されているインターフェースである。システム10の電気生理学的機器は、例えば、複数のカテーテル、位置パッド24、本体表面ECG電極36、電極パッチ28、アブレーションエネルギー発生器38及びレコーダ32を含んでもよい。場合により、及び好ましくは、PIU40は、カテーテルの位置のリアルタイム計算を実行し、ECG計算を実施するための処理能力を更に含む。
【0023】
ワークステーション42は、メモリと、適切なオペレーティングソフトウェアがその中に記憶されたメモリ又は記憶装置を有するプロセッサユニットと、ユーザインターフェース機能とを含む。ワークステーション42は、場合により、(1)心内膜解剖学的構造を3次元(3D)でモデル化し、モデル又は解剖学的マップ44をディスプレイデバイス46上に表示するためにレンダリングすることと、(2)記録された電気記録
図34からコンパイルされた活性化シーケンス(又は他のデータ)を、レンダリングされた解剖学的マップ44上に重ね合わされた代表的な視覚的指標又は画像でディスプレイデバイス46上に表示すること、(3)心腔内の複数のカテーテルのリアルタイム位置及び向きを表示すること、及び(4)アブレーションエネルギーが印加された場所などの関心部位をディスプレイデバイス46上に表示することを含む、多数の機能を設けてもよい。システム10の要素を具現化する1つの市販製品は、Biosense Webster,Inc.(31A Technology Drive,Irvine,CA 92618)から市販されている、CARTO(商標)3システムとして入手可能である。
【0024】
これより、
図1のシステム10において使用するためのプログレッシブキャビティポンプ(PCP)200の概略図である
図2A~2Cを参照する。プログレッシブキャビティポンプ200は、
図3を参照して一層詳細に説明されるとおり、アブレーション部位の組織を冷却するためにアブレーション部位に灌注液を供給するために、カテーテル16などのアブレーションカテーテルの灌注流路を介して灌注リザーバから灌注液を圧送するために使用される。
【0025】
プログレッシブキャビティポンプ200は、アブレーション処置中に使用するためのモータ(
図3に示す)に接続されている使い捨てカートリッジなどのカートリッジ202として形成されてもよい。使用後、カートリッジ202は、通常、モータから切り離され、カートリッジ202は、廃棄される一方、モータは将来の処置のために保持される。
【0026】
プログレッシブキャビティポンプ200の一層詳細な説明は、2つの異なる視点からのプログレッシブキャビティポンプ200を概略的に示す
図2Aを参照して、並びに
図2B及び
図2Cを参照して提示される。
図2Bは、プログレッシブキャビティポンプ200の内部要素を示しており、内部要素のいくつかは、部分的に分解された形態で示されている。
図2Cは、
図2Aの線C:Cからのプログレッシブキャビティポンプ200の縦方向の断面図である。
【0027】
図2Aに例示されるとおり、プログレッシブキャビティポンプ200は、2つの端部206を有するカートリッジハウジング204を備えており、両端部のうちの一方は、正面部分208である。ハウジング204は、ステータ210を画定して保持するような形状にされており、正面部分208は、ステータ210と流体連通する一対のポート212を備えている。PCP200の同じ端部にポート212が配設されていることにより、灌注リザーバからポート212のうちの1つへの灌注チューブの一層容易な接続、及びアブレーションカテーテル16の灌注流路からポート212のうちの別の1つへの灌注チューブの一層容易な接続が可能となる。
【0028】
ステータ210が、
図2Bに例示されている。ステータ210は、金属製であってもよく、又はポリマー製であってもよい。PCP200は、任意の好適な材料から、又は材料の組合せ物から形成されてもよい。本開示の一部の例示的なモードでは、PCP200は、成形プラスチックなどのプラスチック製の使い捨てカートリッジとして形成される。
【0029】
プログレッシブキャビティポンプ200は、ハウジング204内のステータ210内に回転可能に配設されているロータ214(
図2B及び
図2C)を更に備える。
図2Cにおける断面図は、正面部分208なしに示されており、ステータ210内に配設されているロータ(roto)214を例示している。ロータ214は、金属製であってもよく、又はポリマー製であってもよい。
【0030】
ポート212のうちの1つは、灌注リザーバに接続可能であり、ポート212のうちの別の1つは、アブレーションカテーテル16に接続可能である。したがって、ステータ210内でのロータ214の回転により、灌注液が灌注リザーバからアブレーションカテーテル16の遠位端に流れる。
図2Cにおいて、矢印は、PCP200のポート212間のPCP200内の流体の流れを概略的に例示している。ロータ214の方向が逆転する場合、灌注液は反対方向に流れることに留意すべきである。
【0031】
ロータ214は、遊星運動によりステータ210内で回転するよう構成されている。モータの回転運動を必要な遊星運動に変換するため、プログレッシブキャビティポンプ200は、ハウジング204内に配設されている伝達部216を含む。伝達部216は、モータの駆動シャフト及びプログレッシブキャビティポンプ200のロータ214に接続されるよう構成されている。伝達部216は、モータによってもたらされる円運動を遊星運動に変換して、ステータ210内のロータ214の遊星運動を駆動するように構成されている。本開示の一部の例示的なモードでは、伝達部216は、オルダム継手などの一対の自在継手を備えており、伝達部216は、ロータ214とコネクタ218との間に配設されている。コネクタ218は、通常、雌型である非円形の外側部分を有する。例示されている実施例において、コネクタ218の外側部分は、トラフ220を備えており(
図2A)、モータのシャフトは、トラフ220に連結するよう構成されている。
【0032】
流動中にPCP200から流体が漏出するのを防止するために、PCP200は封止アセンブリ222を備える。アセンブリ222は、PCP200のポート212の間を流体が移動するのを単に可能にすることによって、PCP200の完全性を維持する。アセンブリ222は、
図2Cでは、組み立てられた状態、及び
図2Bの上部に示されており、アセンブリ222の要素は、
図2Bの下側部に分解された状態で示されている。
【0033】
アセンブリ222は、ロータ214の直径よりも大きな直径を有すると同時に、ロータ214を保持するように構成されている隙間226を有する外側保持スリーブ224を備える。すなわち、
図2Cに例示されているとおり、外側保持スリーブ224の隙間226とロータ214との間に間隙が存在する。外側保持スリーブ224は、円錐形状を有することができる弾性ダイヤフラム228を取り囲んでおり、ダイヤフラム228は、第1の開口部230内のダイヤフラムの近位端で、及び第1の開口部230より大きな第2の開口部232内のダイヤフラムの遠位端において終端している。
【0034】
ダイヤフラム228の第1の開口部230は、内側保持スリーブ234を把持するように構成されており、この内側保持スリーブ234は、弾性Oリング236を保持する。Oリング236は、ロータ214を取り囲み、その結果、弾性ダイヤフラム228の第1の開口部230は、内側保持スリーブ234及びOリング236を使用して、ロータ214を効果的に把持する。
【0035】
弾性ダイヤフラム228の第2の開口部232は、リング238によって外側保持スリーブ224と接触して保持されており、次に、リング238は、ハウジング204の内側表面と接触して保持されている。こうして、リング238は、ダイヤフラム228の第2の開口部232を、プログレッシブキャビティポンプ200のステータ210に近接して保持する、それに対して実質的に固定される、及びそれと封止接触している。弾性ダイヤフラム228の第2の開口部232と外側保持スリーブ224及びリング238との接触は、本開示の実施例では、第2の開口部232の肉厚部240によって強化されている。肉厚部240は、外側保持スリーブ224及びリング238との接触を維持するのに必要な任意の形状又は厚さとすることができる。
【0036】
図2Cの精査から明らかなとおり、弾性ダイヤフラム228の遠位側とステータ210の近位端との間の領域には、プログレッシブキャビティポンプ200の動作中に流体が存在する。しかし、シールアセンブリ222内のダイヤフラム228及びOリング236の配置に加え、これらの要素に弾力特性があるために、流体がアセンブリ222から確実に漏出しない。
【0037】
更に、ダイヤフラム228の近位側と外側保持スリーブ224の内側表面との間の空間、並びにロータ214の直径と比べて隙間226の直径がより大きいことにより、PCP200の動作中に必要なロータ214の遊星運動が可能になる。
【0038】
図2A~CのPCP200などのプログレッシブキャビティポンプは、個々の空洞内で、流体の離散的体積をポンプ200により移動させることによって動作する。流れの離散的性質とは、本質的に流れの脈動が存在することを意味しており、したがって、圧力の変動が存在する。本開示の実施例では、弾性ダイヤフラム228の弾力性質は、圧力の変動を減衰させるように作用する。
【0039】
これより、
図1のシステム10の灌注サブシステム300のブロック図である、
図3を参照する。灌注サブシステム300は、コントローラ302、モータ304、灌注リザーバ306、プログレッシブキャビティポンプ200(伝達部216を含む)、温度センサ308を含んでもよいカテーテル16を含む。
【0040】
プログレッシブキャビティポンプ200のポート212のうちの1つは、例えば、チューブ310を介して、灌注リザーバ306に接続されるように構成されている。プログレッシブキャビティポンプ200の他のポート212は、例えば、チューブ314を介して、カテーテル16の灌注流路312の近位端に接続されるように構成されている。カテーテル16は、少なくとも1つの灌注孔316を含む。灌注流路312は、灌注孔316に接続された遠位端を有する。
【0041】
モータ304は、プログレッシブキャビティポンプ200の伝達部216に接続(例えば、コネクタ218(
図2A~C)を介する)されるように構成されている駆動シャフト318を含む。モータ304は、プログレッシブキャビティポンプ200のロータ214の回転を駆動するよう構成されている。一部の例示的なモードでは、モータ304は、サーボモータである。
【0042】
コントローラ302は、灌注液を灌注リザーバ306から灌注流路312内に圧送し、アブレーションカテーテル16の灌注孔316から排出するよう、モータ304の回転速度を制御してプログレッシブキャビティポンプ200の流量を制御するように構成されている。コントローラ302は、ロータ214の回転速度とプログレッシブキャビティポンプ200によってもたらされる流量との間の既知の関係に基づいて流量を制御する。コントローラ302は、ワークステーション42又は患者インターフェースユニット40からコマンド320を受信して、流量を医師12が要求する所与の値に設定することができる。
【0043】
プログレッシブキャビティポンプ200は、ある期間にわたり(例えば、1回のアブレーションを実行するのにかかる時間にわたる)、灌注リザーバ306から灌注流路312への灌注液の連続的かつ滑らかな流れをもたらすよう構成されている。一部の例示的なモードでは、その時間は、1~10分又はそれより長い範囲にある。任意の好適な流量が、プログレッシブキャビティポンプ200によってもたらされ得ることに留意すべきである。しかし、一部の例示的なモードでは、プログレッシブキャビティポンプ200は、1分間あたり1~2ミリリットルの流量で、ある期間にわたり、灌注リザーバ306から灌注流路312への灌注液の連続した滑らかな流れをもたらすよう構成されている。一部の例示的なモードでは、コントローラ302は、温度を目標温度に保つよう、モータ304の回転速度を制御し、アブレーションカテーテル16の温度センサ308によって感知される温度に基づいてプログレッシブキャビティポンプ200の流量を制御するよう構成されている。コントローラ302は、温度が上昇するにつれて、流量を増加することができ、逆もまた同様である。
【0044】
実際には、コントローラ302の機能の一部又はすべてを、単一の物理的構成要素に組み込む、又は代わりに複数の物理的構成要素を使用して実装することができる。これらの物理的構成要素は、ハードワイヤードデバイス又はプログラム可能なデバイス、あるいはこれら2つの組合せを備えてもよい。一部の例では、コントローラ302の機能のうちの少なくとも一部は、好適なソフトウェアの制御下でプログラム可能なプロセッサによって実行されてもよい。このソフトウェアは、例えばネットワークを介して電子的形態でデバイスにダウンロードされてもよい。代替的に又は追加的に、このソフトウェアは、光学的メモリ、磁気的メモリ又は電子的メモリなどの有形の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に記憶され得る。
【実施例0045】
実施例1:システムであって、ハウジングと、ロータと、ステータと、一対のポートとを備える、プログレッシブキャビティポンプであって、ポートの1つが、灌注リザーバに接続されるよう構成されており、ロータが、ハウジング内のステータに配設されている、プログレッシブキャビティポンプと、少なくとも1つのアブレーション電極と、少なくとも1つの灌注孔と、少なくとも1つの灌注孔に接続されている遠位端及びプログレッシブキャビティポンプのポートの別の1つに接続されるよう構成されている近位端を有する灌注流路とを備える、アブレーションカテーテルと、プログレッシブキャビティポンプに接続されて、プログレッシブキャビティポンプのロータの回転を駆動するよう構成されている駆動シャフトを備えるモータと、灌注液を灌注リザーバから灌注流路内に圧送し、アブレーションカテーテルの少なくとも1つの灌注孔から排出するよう、プログレッシブキャビティポンプの流量を制御するために、モータの回転速度を制御するように構成されている、コントローラとを備える、システム。
【0046】
実施例2:ロータが、遊星運動によりステータ内で回転するよう構成されている、実施例1によるシステム。
【0047】
実施例3:モータの駆動シャフト及びプログレッシブキャビティポンプのロータに接続されるよう構成されており、かつモータによってもたらされる円運動を遊星運動に変換して、ステータ内のロータの遊星運動を駆動するよう構成されている、伝達部を更に備える、実施例1又は実施例2によるシステム。
【0048】
実施例4:伝達部が、ハウジング内に配設されている、実施例3によるシステム。
【0049】
実施例5:プログレッシブキャビティポンプが使い捨てカートリッジとして形成されている、実施例1~4のいずれかによるシステム。
【0050】
実施例6:プログレッシブキャビティポンプがプラスチック製の使い捨てカートリッジとして形成されている、実施例1~4のいずれかによるシステム。
【0051】
実施例7:プログレッシブキャビティポンプが成形プラスチック製の使い捨てカートリッジとして形成されている、実施例1~4のいずれかによるシステム。
【0052】
実施例8:モータがサーボモータである、実施例1~7のいずれかによるシステム。
【0053】
実施例9:ハウジングが2つの端部を含み、ポートが、ハウジングの上記端部のうち同じ一方に配設されている、実施例1~8のいずれかによるシステム。
【0054】
実施例10:プログレッシブキャビティポンプが、ある期間にわたり、灌注リザーバから灌注流路への灌注液の連続した滑らかな流れをもたらすよう構成されている、実施例1~9のいずれかによるシステム。
【0055】
実施例11:プログレッシブキャビティポンプが、1分間あたり1~2ミリリットルの流量で、上記の期間にわたり、灌注リザーバから灌注流路への灌注液の連続した滑らかな流れをもたらすよう構成されている、実施例10によるシステム。
【0056】
実施例12:上記の期間が、1~10分の範囲である、実施例11によるシステム。
【0057】
実施例13:上記の期間が、1~10分の範囲である、実施例10によるシステム。
【0058】
実施例14:コントローラが、アブレーションカテーテルによって感知される温度に基づいて、プログレッシブキャビティポンプの流量を制御するために、モータの回転速度を制御するよう構成されている、実施例1~13のいずれかによるシステム。
【0059】
本開示のさまざまな特徴が、明確性のために別個の例示的な態様の文脈において記載されているが、これらが単一の例示的な態様に組み合わされて提供されてもよい。逆に、簡潔にするために単一の例示的な態様の文脈において記載されている本開示のさまざまな特徴が、別々に又は任意の好適な部分的組合せで提供されてもよい。
【0060】
上述した例示的な態様は例として挙げたものであり、本開示は上記に特に示して説明したものに限定されない。むしろ本開示の範囲は、上記の明細書で説明されるさまざまな特徴の組合せ及びその部分的組合せの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、従来技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。
【0061】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
ハウジングと、ロータと、ステータと、一対のポートとを備える、プログレッシブキャビティポンプであって、前記ポートの1つが、灌注リザーバに接続されるよう構成されており、前記ロータが、前記ハウジング内の前記ステータに配設されている、プログレッシブキャビティポンプと、
少なくとも1つのアブレーション電極と、少なくとも1つの灌注孔と、前記少なくとも1つの灌注孔に接続されている遠位端及び前記プログレッシブキャビティポンプの前記ポートの別の1つに接続されるよう構成されている近位端を有する灌注流路とを備える、アブレーションカテーテルと、
前記プログレッシブキャビティポンプに接続されて、前記プログレッシブキャビティポンプの前記ロータの回転を駆動するよう構成されている駆動シャフトを備えるモータと、
灌注液を前記灌注リザーバから前記灌注流路内に圧送し、前記アブレーションカテーテルの前記少なくとも1つの灌注孔から排出するよう、前記プログレッシブキャビティポンプの流量を制御するために、前記モータの回転速度を制御するように構成されている、コントローラと
を備える、システム。
(2) 前記ロータが、遊星運動により、前記ステータ内で回転するよう構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記モータの前記駆動シャフト及び前記プログレッシブキャビティポンプの前記ロータに接続されるよう構成されており、かつ前記モータによってもたらされる円運動を遊星運動に変換して、前記ステータ内の前記ロータの遊星運動を駆動するよう構成されている、伝達部を更に備える、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記伝達部が、前記ハウジング内に配設されている、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記プログレッシブキャビティポンプが使い捨てカートリッジとして形成されている、実施態様1に記載のシステム。
【0062】
(6) 前記プログレッシブキャビティポンプがプラスチック製の使い捨てカートリッジとして形成されている、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記プログレッシブキャビティポンプが成形プラスチック製の使い捨てカートリッジとして形成されている、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記モータがサーボモータである、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記ハウジングが2つの端部を含み、前記一対のポートが、前記ハウジングの前記端部のうち同じ一方に配設されている、実施態様1に記載のシステム。
(10) 前記プログレッシブキャビティポンプが、ある期間にわたり、前記灌注リザーバから前記灌注流路への前記灌注液の連続した滑らかな流れをもたらすよう構成されている、実施態様1に記載のシステム。
【0063】
(11) 前記プログレッシブキャビティポンプが、1分間あたり1~2ミリリットルの流量で、前記期間にわたり、前記灌注リザーバから前記灌注流路への前記灌注液の前記連続した滑らかな流れをもたらすよう構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(12) 前記期間が、1~10分の範囲である、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記期間が、1~10分の範囲である、実施態様10に記載のシステム。
(14) 前記コントローラが、前記アブレーションカテーテルによって感知される温度に基づいて前記プログレッシブキャビティポンプの前記流量を制御するために、前記モータの前記回転速度を制御するよう構成されている、実施態様1に記載のシステム。