(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094300
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】並列パワーバンクを有するアブレーションパルス発生器
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20240702BHJP
A61B 18/14 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023219176
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】18/089,228
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ユーリ・シャミス
(72)【発明者】
【氏名】ライラ・マージアーノ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK13
4C160MM33
(57)【要約】
【課題】アブレーションパルスを生成するための装置を提供すること。
【解決手段】アブレーションパルスを生成するための装置(50)は、パルス発生器(102)と、電源(104)と、感知回路(110)と、エネルギー貯蔵パワーバンク(108)とを含む。パルス発生器は、組織のアブレーションのためのアブレーションパルスを生成するように構成されている。電源は、パルス発生器に電力を供給するように構成されている。感知回路は、電源によってパルス発生器に供給された電力の弱化を感知するように構成されている。エネルギー貯蔵パワーバンクは、電源と並列に接続されており、かつ弱化を示す感知回路からの指示に応答して、電源によって供給された電流を増大させる追加の電流をパルス発生器に供給するように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブレーションパルスを生成するための装置であって、前記装置は、
組織のアブレーションのためのアブレーションパルスを生成するように構成されたパルス発生器と、
前記パルス発生器に電力を供給するように構成された電源と、
前記電源によって前記パルス発生器に供給された前記電力の弱化を感知するように構成された感知回路と、
前記電源と並列に接続されており、かつ前記弱化を示す前記感知回路からの指示に応答して、前記電源によって供給された電流を増大させる追加の電流を前記パルス発生器に供給するように構成されている、エネルギー貯蔵パワーバンクと、を備える、装置。
【請求項2】
前記エネルギー貯蔵パワーバンクは、電荷を貯蔵するように構成された高エネルギーコンデンサを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記感知回路は、前記電源によって供給された電圧レベルを感知することによって前記弱化を感知するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記感知回路は、前記電源によって供給された電圧レベルの減少を検出することによって前記弱化を感知するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記感知回路は、前記電源によって供給された電圧レベルの減少率を検出することによって前記弱化を感知するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記パルス発生器は、前記アブレーションパルスの断続的なバーストを生成するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記電源は、前記バースト間の時間間隔中に前記エネルギー貯蔵パワーバンクをエネルギーで充電するように構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記感知回路は、前記エネルギー貯蔵パワーバンクに一体化されている、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、医療デバイスに関し、具体的には、不可逆的エレクトロポレーション(Irreversible Electroporation、IRE)パルス発生器に動作電力を供給するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
組織アブレーションは、高エネルギー電気パルスを使用して、患者の心臓内の所定の部位に損傷を生成するために、1つ又は2つ以上のアブレーションカテーテルを使用して、医師が患者の心臓の不整脈を治療する際など、様々な医療手技において使用される。
【0003】
アブレーションは、パルスフィールドアブレーション(Pulsed Field Ablation、PFA)とも称される不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を使用して行われることがあり、この場合、発生器が高エネルギー電気パルスを患者の組織に印加する。パルスはバーストで印加され、発生器は、バースト中にかなりの量の電気エネルギーを必要とする。
【0004】
本開示は、図面と併せて、本開示の実施例の以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本開示の一実施例による、電気生理学的マッピング及びアブレーションを行うカテーテルベースのシステムの概略描写図である。
【
図2】本発明の一実施例による、アブレーションエネルギー送達回路を概略的に示すブロック図である。
【
図3】本開示の一実施例による、アブレーションエネルギー送達回路における信号の波形を概略的に示すタイミング波形図である。
【
図4】本開示の一実施例による、アブレーションパルス発生器に電力を提供するための方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
概要
パルスフィールドアブレーション(PFA)は、好適な電極を有する1つ又は2つ以上のカテーテルを使用して、患者の心臓における不整脈を治療するために使用され得る。PFAは、組織に高電圧パルスを印加することによって組織細胞をアブレーションするために使用され得る。膜貫通電位が閾値を超えたときに細胞破壊が起こり、細胞死及び組織の不可逆的エレクトロポレーション(IRE)をもたらし、心臓のそれぞれのセクションにおける損傷の形成をもたらす。PFAベースのアブレーション手技では、一連のマイクロ秒高電圧電気パルスが、アブレーションされることが意図される組織に印加される。
【0007】
PFAパルスは、典型的には、高電圧の単極パルス又は双極パルスのバーストで投与される。一実施例では、バーストは、典型的には、100~200ミリ秒の間続き、バースト間のギャップは、典型的には、1~4秒の間である。各パルスの電圧は、典型的には、500V~2,000V、例えば、1,600~1,800Vであり、電流は、アブレーションされる組織のインピーダンスに応じて、10~80アンペアであるが、任意選択的に、より高い値に到達してもよい。この実施例におけるパルス発生器は、バーストの送達中に28ボルトDC及び80アンペア(2.24KW)を必要とする。上記の数値は、あくまで例として選択されたものであり、任意の他の好適な値を代替的な実施例において使用することができる。いずれにしても、そのような電力レベルを満たす電源は、高価でかさばる場合がある。
【0008】
以下に記載される本開示の実施例は、アブレーションパルス発生器の要件を下回る定格を有する電源を使用するための技法を提供し、バースト中、電力はパワーバンク回路によって増大される。バースト間の時間間隔の間、電源はパワーバンクを充電する。
【0009】
いくつかの実施例では、アブレーションパルス発生器、電源、及びパワーバンクは、共通の電力バスに並列に接続されている。一実施例では、パワーバンクは、電力バスに結合されており、電力バス上の電圧が弱化するときを示す感知回路を備えており、パワーバンク回路は、そのような指示に応答して、追加の電力をアブレーションパルス発生器に送達するように構成されている。
【0010】
いくつかの実施例では、感知回路は、電力バス上の電圧を監視し、電圧が事前設定された閾値を下回る場合、電圧弱化を示す。他の実施例では、感知回路は、電力バス上の電圧低下率を測定し、弱化率が事前設定された閾値を超える場合、電圧弱化を示す。
【0011】
要約すると、本開示の技法は、アブレーションパルス発生器要件を満たすように、高電力アブレーションパルス発生器の電力を提供するために、小型の既製の電源を使用すること、パルスのバースト間に充電されるパワーバンクを使用すること、及び電源が送達する電流をパワーバンクが増大させるべきであるときを検出するために感知回路を使用することと、を可能にする。
【0012】
システムの説明
図1は、本開示の一実施例による、電気生理学的マッピング及びアブレーションを行うカテーテルベースのシステム10の概略描写図である。
【0013】
いくつかの実施例では、システム10は、患者の血管系を通じて、心臓12の腔又は血管構造内に、医師24によって経皮的に挿入される複数のカテーテルを含む。典型的には、送達シースカテーテルは、心臓12の所望の位置の近くの左心房又は右心房内に挿入される。その後、1つ又は2つ以上のカテーテルを、送達シースカテーテルに挿入して、心臓12内の所望の場所に到達させることができる。複数のカテーテルには、心内電位図(Intracardiac Electrogram、IEGM)信号を感知するための専用のカテーテル、アブレーション専用のカテーテル、及び/又は感知及びアブレーションの両方に適応されたカテーテルが含まれ得る。いくつかの実施形態では、医師24は、心臓12の標的部位を感知するために、カテーテル14の遠位先端部28を心臓壁と接触させて配置し得る。それに加えて又はその代わりに、アブレーションのために、医師24は、上と同様に、アブレーションカテーテルの遠位端を、アブレーションされるよう意図された組織をアブレーションするための標的部位と接触させて配置する。
【0014】
本実施例では、カテーテル14は、カテーテル14の遠位先端28において、1つの電極26、又は好ましくは複数の電極26であってシャフト22に沿って任意選択的に分配された電極26を含む。電極26は、IEGM信号を感知するように構成されている。カテーテル14は、遠位先端部28の位置及び配向を追跡するために、遠位先端部28内又はその近くに埋め込まれた位置センサ29を更に含むことができる。任意選択的にかつ好ましくは、位置センサ29は、三次元(three-dimensional、3D)位置及び配向を感知するための3つの磁気コイルを含む磁気ベースの位置センサである。
【0015】
いくつかの実施例では、磁気ベースの位置センサ29は、所定の作業空間内に複数(例えば3つ)の磁場を生成するように構成された、複数(例えば3つ)の磁気コイル32を含む位置パッド25と共に動作してもよい。カテーテル14の遠位先端部28のリアルタイム位置は、位置パッド25によって生成され、磁気ベースの位置センサ29によって感知される磁場に基づいて追跡され得る。磁気ベースの位置感知技術の詳細は、参例えば、米国特許第5,5391,199号、同第5,443,489号、同第5,558,091号、同第6,172,499号、同第6,239,724号、同第6,332,089号、同第6,484,118号、同第6,618,612号、同第6,690,963号、同第6,788,967号、及び同第6,892,091号に記載されている。
【0016】
いくつかの実施例では、カテーテル14は、接触力センサ31を含み、その接触力センサ31は、遠位先端部28によって心臓12の組織に加えられる接触力を感知し、感知された接触力を示す信号を生成するように構成されている。
【0017】
いくつかの実施例では、システム10は、1つ又は2つ以上の電極パッチ38を含み、その電極パッチ38は、患者23上に、皮膚と接触するように配置され、位置パッド25のため及び電極26のインピーダンスベースの追跡のための位置基準を確立する。インピーダンスベースの追跡のために、電流が電極26に向けられ、電極皮膚パッチ38において検知され、それにより、各電極の位置を、電極パッチ38を介して三角測量することができる。この技術は、本明細書では高度電流位置特定(Advanced Current Location、ACL)とも呼ばれ、インピーダンスベースの位置追跡技術の詳細は、米国特許第7,536,218号、同第7,756,576号、同第7,848,787号、同第7,869,865号、及び同第8,456,182号に記載されている。いくつかの実施例では、磁気ベースの位置感知及びACLは、剛性カテーテルのシャフト又は、別の種類のカテーテルの遠位先端部における可撓性アーム若しくはスプラインに結合される、例えば、1つ又は2つ以上の電極の位置感知を改善するために同時に適用されてもよく、上記のような別の種類のカテーテルとしては、例えば、Biosense Webster,Inc.(31A Technology Drive,Irvine,CA 92618)から入手可能なPentaRay(登録商標)又はOPTRELL(登録商標)カテーテルなどが挙げられる。
【0018】
いくつかの実施例では、レコーダ11が、体表面ECG電極18で捕捉された電位
図21と、カテーテル14の電極26で捕捉された心内電位図(IEGM)とを表示する。レコーダ11は、心臓の律動をペーシングするためのペーシング能力を含んでもよく、及び/又は独立型ペーサに電気的に接続されてもよい。
【0019】
いくつかの実施例では、システム10は、アブレーションエネルギー発生器50を含み得るが、そのアブレーションエネルギー発生器50は、アブレーションするように構成されたカテーテルの遠位先端部にある1つ又は2つ以上の電極にアブレーションエネルギーを伝達するように適合されたものである。本実施例では、アブレーションエネルギー発生器50によって生成されるエネルギーは、不可逆電気穿孔(IRE)をもたらすために使用され得るような単極又は双極の高電圧DCパルスを含む、パルスフィールドアブレーション(PFA)エネルギーのパルス列、又はそれらの組み合わせを含む。本実施例では、カテーテル14は、アブレーション電極33を含むが、任意選択的に、複数の電極33(図示せず)を含み、電極33は、遠位先端部28に配置され、PFAエネルギーのパルス列を心臓12の壁の組織に印加するように構成されている。
【0020】
いくつかの実施例では、患者インターフェースユニット(patient interface unit、PIU)30は、カテーテル、電気生理学的機器、電源、及びワークステーション55の間の電気通信を確立して、システム10の動作を制御するように構成されたインターフェースである。システム10の電気生理学的機器は、例えば、複数のカテーテル、位置パッド25、体表面ECG電極18、電極パッチ38、アブレーションエネルギー送達回路50、及びレコーダ11を含んでもよい。任意選択で、かつ好ましくは、PIU30は、カテーテルの位置のリアルタイム計算を実装し、ECG計算を実行するための処理能力を更に含む。
【0021】
いくつかの実施例では、ワークステーション55は、記憶装置、適切なランダムアクセスメモリを有するプロセッサ77、又は適切なオペレーティングソフトウェアが記憶された記憶装置、(例えば、プロセッサ77とシステム10の別のエンティティとの間で)データの信号を交換するように構成されたインターフェース56、及びユーザインターフェース能力を含む。ワークステーション55は、任意選択的に、(1)心内膜解剖学的構造を三次元(3D)でモデルリングし、モデル又は解剖学的マップ20をディスプレイデバイス27上に表示するためにレンダリングすること、(2)記録された電位
図21からコンパイルされたアクティブ化シーケンス(又は他のデータ)を、レンダリングされた解剖学的マップ20上に重ね合わされた代表的な視覚的指標又は画像でディスプレイデバイス27上に表示すること、(3)心腔内の複数のカテーテルのリアルタイム位置及び向きを表示すること、及び(4)アブレーションエネルギーが印加された場所などの関心部位を表示装置27上に表示すること、を含む、複数の機能を提供してもよい。システム10の各要素を具現化する1つの市販製品は、Biosense Webster,Inc.31A Technology Drive,Irvine,CA,92618、から市販されている、CARTO(登録商標)3システムとして入手可能である。
【0022】
いくつかの実施例では、プロセッサ77は、接触力センサ31から、アブレーション電極33とアブレーションされるよう意図される組織との間に印加される接触力を示す信号を受け取る。更に、プロセッサ77は、アブレーション電極33とアブレーションされることが意図される組織との間に印加される接触力が十分であるかどうかの指示を医師24に提供するために、1つ又は2つ以上の接触力閾値を記憶してもよい。
【0023】
図2は、本発明の例示的な態様による、アブレーションエネルギー送達回路50を概略的に示すブロック図である。アブレーションエネルギー発生器は、アブレーションのために構成されたカテーテルの遠位先端部にある電極に高エネルギーアブレーションパルスを送るように構成されたアブレーションパルス発生器102と、AC電源コード106に動作可能に結合された電源104と、パワーバンク108とを備える。パワーバンクは、感知回路110を備える。
【0024】
図2に示される例示的な態様によれば、アブレーションエネルギー送達回路50は、電力バス112を更に含み、電力バス112は、正の導体及び負の導体を備え、アブレーションパルス発生器102、電源104、パワーバンク108、及びパワーバンク内の感知回路110に並列に接続されている。電力バス112は、必ずしも物理的構成要素ではなく、むしろ、電力バスは、アブレーションパルス発生器、電源、パワーバンク、及び感知回路の電源端子を接続する全ての並列電源ワイヤの集合体を指すことに留意されたい。
【0025】
図2に示される例示的態様によれば、アブレーションパルス発生器102が送達するアブレーションパルスは、1~4秒離れた正及び負の100~200マイクロ秒パルスの100~200ミリ秒バーストを含み、各パルスにおいて、発生器は、(典型的には)500V~2,000Vの電圧レベルで最大80Aを送達し、バースト間の時間間隔は1~4秒である。他の例示的な態様では、他の好適な電圧、電流及び時間が使用され得る。
【0026】
アブレーションパルス発生器102は、パルスのバーストを送達するときに高電力(例えば、2.5KW)を消費し得、バースト間ではゼロに近くなり得る。アブレーションパルス発生器が消費する平均(経時的)電力は、著しく低い。例えば、毎秒200ミリ秒のバーストを仮定すると、平均電力は2.5KW×0.2=0.5KWである。アブレーションパルスに応じて、アブレーションパルス発生器の電力要件は、電源の最大出力定格を超える場合がある。
【0027】
一態様では、パワーバンク108は、例えば、バースト間にエネルギーを(電荷の形態で)貯蔵し、バースト中にエネルギーを出力して、アブレーションパルスのバースト中に電源104が生成する電流を増大させるためのコンデンサを備える。電源によって生成される電力が、アブレーションパルス発生器によって消費される電力よりも大きいとき(例えば、パルスのバースト間)、パワーバンクは、エネルギーを蓄積する。
【0028】
パワーバンク108は、アブレーションパルス発生器に供給された電力の弱化を示すために感知回路110が送るアクティブ化指示に応答して、電力バス112上に電力をドライブする。
図2に示される例によれば、感知回路110はパワーバンク108内にある。代替的な実施例では、感知回路は、パワーバンクの外部にあってもよい。.この実施例の一態様によれば、感知回路は、電力バス112上の電圧レベルが事前設定されたレベルを下回るときにアクティブ化指示を送るように構成されている。この実施例の別の態様によれば、感知回路は、電力バス上の電圧の低下率が事前設定された閾値を上回るときにアクティブ化指示を送る。更に他の態様では、任意の他の好適な基準が使用され得る。
【0029】
いくつかの態様によれば、パワーバンク108は、電源104によって供給される(及び電力バス108を介して送達される)電荷を貯蔵する1つ又は2つ以上のコンデンサを備え得る。例えば、アルミニウム電解コンデンサ及びスーパーコンデンサを含む、任意の好適なタイプのコンデンサが使用されてもよい。一態様によれば、高電力密度を受け取るために、パワーバンク108は、コンデンサを充電及び放電するための好適なアップ/ダウン電圧コンバータを含む、より良好なエネルギー貯蔵密度のための高電圧コンデンサを備える。
【0030】
図2に示されるアブレーションパルス発生器50の構成は、単に概念を明確にするために引用される例示的構成である。本開示の他の実施例では、他の構成が使用され得る。一態様では、例えば、感知回路110は、電源104が出力する電流を感知し、電源から出力された電流に応答してパワーバンクに「アクティブ化」を示す(したがって、感知回路110は、電源104に組み込まれ得る)。別の実施例では、アブレーションパルス発生器102が出力するアブレーションパルスは、電圧パルスではなく、事前設定された電流定格の電流パルスであってもよい。
【0031】
いくつかの実施例では、パワーバンクは、複数のコンデンサと一組のスイッチを備え、電源がパワーバンクを充電するとき、スイッチはコンデンサを並列に接続し、パワーバンクが電源によって出力される電流を増大させるべきであるとき、スイッチは、より高い電圧を生成するためにスイッチを直列に接続し、次いで、より高い電圧は、例えば、電流源を通して、電力バスに電流を供給することができる。
【0032】
図3は、本開示の一実施例による、アブレーションエネルギー送達回路50(
図2)における信号の波形を概略的に示すタイミング波形
図200である。
【0033】
図3の時間軸は、T1~T5(T4及びT5は以下では記載されない)と指定された5つの離散期間に分割されており、これらは、波形が反復的であることをより良く示すためにのみ示され、T4はT2と同様であり、T5はT3と同様である。
【0034】
グラフ202は、アブレーションパルス発生器がアブレーションパルスを生成するときを示す。(以下では、発生器がアブレーションパルスを生成する期間を「アブレーション期間」又は「アブレーション」と称し、アブレーション期間の間のギャップを「ギャップ期間」又は「ギャップ」と称する)。
【0035】
グラフ204は、電力バス上の電圧レベル(「出力電圧」)を示し、グラフ206は、電源電流を示し、グラフ208は、パワーバンクの電流出力を示す。
【0036】
T1は、初期ギャップ期間である。パワーバンクは、完全に充電されている。電源及びパワーバンクが出力する電流はゼロである。電力バス上の電圧は、V1(例えば、28V)で示される。
【0037】
T2の間、アブレーションパルス発生器は、アブレーションパルスを生成し、高い供給電流を消費する。電源電流206は、I1(例えば、50A)まで上昇し、これは、アブレーションパルス発生器の要件(例えば、80A)を下回り得る。その結果、出力電圧204は、瞬間的にV2まで降下する。いくつかの実施例では、V2未満であるが、依然としてアブレーションパルス発生器の最小電源電圧仕様内で安全であるV2=27V。
【0038】
電力感知回路は、出力電圧を監視し、電圧がV2を下回ることをパワーバンクに示し得る。パワーバンクは、それに応じて、パワーバンク内に蓄積された電荷を電力バスに(したがって、アブレーション電力発生器に)送達することになる。パワーバンクは、ここでI3を出力し、一実施例では、I3=30Aであり、電源が出力する電流(50A)をアブレーションパルス発生器の要件である80Aに補充する。T2の間の電圧204は、V3(例えば、29V)に指定され、これは、発生器からカテーテルの遠位端における電極まで延在するケーブルにわたる電圧の低減を補償するために、V2を上回る。
【0039】
T3は、ギャップ期間である。アブレーション電源電流消費は、ゼロに(又はゼロに近くまで)降下する。電源出力電流206がゼロに降下する短い期間の後、電源はパワーバンクを充電し、電源出力電流はI2(例えば、5A)に上昇する。パワーバンクが出力する電流は、したがって、-5Aに降下する(負の値は、パワーバンクが電流を出力するのではなく受け取ることを意味する)。
【0040】
パワーバンクが完全に充電されると、充電が停止し、電源及びパワーバンク出力電流はゼロになる(又はゼロに近くなる)。適切な動作のために、充電は、T3内かつ次のアブレーション期間の前に完了されるべきである。
【0041】
図3を参照して上述した全ての電圧、電流及び期間は、例として引用されている。代替的な実施例では、他の好適な電圧、電流及び時間が使用され得る。いくつかの実施例では、パワーバンクの充電は漸進的であり、例えば、RC充電曲線に従う。
【0042】
図4は、本開示の一実施例による、アブレーションパルス発生器に電力を提供するための方法300を概略的に示すフローチャートである。フローチャートは、アブレーションエネルギー送達回路50(
図2)及びそのサブ回路によって実行される。
【0043】
フローチャートは、アブレーションバーストオンチェックステップ302で開始し、アブレーションエネルギー送達回路は、アブレーションパルス発生器がアブレーションパルスのバーストを現在生成しているかどうかをチェックする。アブレーションパルス発生器がアブレーションパルスのバーストを現在生成していない場合、フローチャートは、エネルギーをパワーバンクに送るステップ304に入り、電源の現在の出力は、パワーバンクのコンデンサを充電することになる。
【0044】
ステップ302において、アブレーションパルス発生器がアブレーションパルスのバーストを生成する場合、フローチャートは、電源から電流を供給するステップ306に入り、電源は、電力バスを通してアブレーションパルス発生器に電力を送達し、次いで、電圧弱化又はバースト終了を検出するステップ308に進むことになる。
【0045】
場合によっては(アブレーションされる組織のオーム抵抗に応じて)、電源がアブレーションパルス発生器に供給する電力が十分でない場合がある。これが起こると、電力バス上の電圧は徐々に弱化する。感知回路110は、ステップ308において、そのような弱化を検出する。感知回路は、電力バス上の電圧を測定する。いくつかの実施例では、感知回路は、電圧を事前設定された閾値と比較し、電圧が閾値を下回るときに電圧弱化を信号伝達する。他の実施例では、感知回路は、電力バス電圧の低下率(例えば、ボルト/秒単位)が事前設定された閾値を上回るとき、電圧弱化を検出する。
【0046】
加えて、ステップ308にある間、アブレーションエネルギー送達回路は、アブレーションパルス発生器が依然としてパルスを送っており、したがって、高電力を消費しているかどうかをチェックする。パルスバーストが停止した場合、フローチャートはステップ304に再び入り、パワーバンクにエネルギーを貯蔵することになる。
【0047】
ステップ308において、感知回路が電力バス上の電圧の弱化を検出する場合、フローチャートは、追加電流提供ステップ310に入り、パワーバンクは、アブレーションパルス発生器の要件に適合するように、電源が送達する電流を増大させ、次いで、ステップ302に再び入ることになる。
【0048】
ステップ308において、感知回路が電圧の弱化を感知せず、アブレーションパルスバーストが依然としてオンである場合、フローチャートはステップ308に留まる。
【0049】
フローチャート300は、単に概念を明確にするために例として引用されている。他の態様では、他のフローチャートが使用され得る。例えば、一態様では、感知回路は存在せず、パワーバンクは、アブレーションパルスのバーストが存在しないときに充電し、バーストがオンであるときに電源を増大させる。フローチャートは、それに応じて変化する。
【0050】
アブレーションエネルギー送達システム50の構成は、アブレーションパルス発生器102、電源104、パワーバンク108、及び感知回路110を含み、
図1~
図4に示され、上述された、
図200のグラフ及びフローチャート300の方法は、単に概念を明確にするために示された例示的な構成、波形、及びフローチャートである。代替的な実施例では、任意の他の好適な構成、波形、及びフローチャートを使用することができる。
【0051】
プロセッサ77(
図1)は通常、本明細書に記載される機能を行うようにソフトウェアでプログラムされた1つ又は2つ以上の汎用プロセッサを備え得る。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して、若しくはホストから、電子的形態でプロセッサにダウンロードされ得るか、又はソフトウェアは、代替的に若しくは追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの非一時的有形媒体に提供及び/若しくは記憶され得る。
【0052】
本明細書に記載される実施例は、主としてアブレーションパルス発生器への電力の送達を扱うものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、他の用途にも使用することができる。
【実施例0053】
実施例1:アブレーションパルスを生成するための装置(50)であって、本装置は、パルス発生器(102)と、電源(104)と、感知回路(110)と、エネルギー貯蔵パワーバンク(108)とを含む、装置。パルス発生器は、組織のアブレーションのためのアブレーションパルスを生成するように構成されている。電源は、パルス発生器に電力を供給するように構成されている。感知回路は、電源によってパルス発生器に供給された電力の弱化を感知するように構成されている。エネルギー貯蔵パワーバンクは、電源と並列に接続されており、かつ弱化を示す感知回路からの指示に応答して、電源によって供給された電流を増大させる追加の電流をパルス発生器に供給するように構成されている。
【0054】
実施例2:エネルギー貯蔵パワーバンクは、電荷を貯蔵するように構成された高エネルギーコンデンサを含む、実施例1に記載の装置。
【0055】
実施例3:感知回路は、電源によって供給された電圧レベルを感知することによって弱化を感知するように構成されている、実施例1に記載の装置。
【0056】
実施例4:感知回路は、電源によって供給された電圧レベルの減少を検出することによって弱化を感知するように構成されている、実施例1に記載の装置。
【0057】
実施例5:感知回路は、電源によって供給された電圧レベルの減少率を検出することによって弱化を感知するように構成されている、実施例1に記載の装置。
【0058】
実施例6:パルス発生器は、アブレーションパルスの断続的なバーストを生成するように構成される、実施例1に記載の装置。
【0059】
実施例7:電源は、バースト間の時間間隔中にエネルギー貯蔵パワーバンクをエネルギーで充電するように構成されている、実施例6に記載の装置。
【0060】
実施例8:感知回路は、エネルギー貯蔵パワーバンクに一体化されている、実施例1に記載の装置。
【0061】
実施例9:アブレーションパルスを生成するための方法であって、本方法は、組織のアブレーションのためにパルス発生器を使用してアブレーションパルスを生成することと、電源によってパルス発生器に電力を供給することと、を含む方法。電源によってパルス発生器に供給される電力の弱化が感知される。電源によって供給された電流を増大させる追加の電流が、供給された電力の感知された弱化に応答して、電源と並列に接続されたエネルギー貯蔵パワーバンクを使用してパルス発生器に供給される。
【0062】
これにより、上述の実施例は、例として引用されており、本発明は、特に示され、上述されたものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に説明される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれた文献は、本出願の不可欠な部分とみなされるべきであり、ただし、これらの組み込まれた文献においていずれかの用語が、本明細書で明示的又は暗黙的になされた定義と矛盾する方法で定義されている限り、本明細書の定義のみが考慮されるべきである。
【0063】
〔実施の態様〕
(1) アブレーションパルスを生成するための装置であって、前記装置は、
組織のアブレーションのためのアブレーションパルスを生成するように構成されたパルス発生器と、
前記パルス発生器に電力を供給するように構成された電源と、
前記電源によって前記パルス発生器に供給された前記電力の弱化を感知するように構成された感知回路と、
前記電源と並列に接続されており、かつ前記弱化を示す前記感知回路からの指示に応答して、前記電源によって供給された電流を増大させる追加の電流を前記パルス発生器に供給するように構成されている、エネルギー貯蔵パワーバンクと、を備える、装置。
(2) 前記エネルギー貯蔵パワーバンクは、電荷を貯蔵するように構成された高エネルギーコンデンサを備える、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記感知回路は、前記電源によって供給された電圧レベルを感知することによって前記弱化を感知するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記感知回路は、前記電源によって供給された電圧レベルの減少を検出することによって前記弱化を感知するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記感知回路は、前記電源によって供給された電圧レベルの減少率を検出することによって前記弱化を感知するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
【0064】
(6) 前記パルス発生器は、前記アブレーションパルスの断続的なバーストを生成するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記電源は、前記バースト間の時間間隔中に前記エネルギー貯蔵パワーバンクをエネルギーで充電するように構成されている、実施態様6に記載の装置。
(8) 前記感知回路は、前記エネルギー貯蔵パワーバンクに一体化されている、実施態様1に記載の装置。
(9) アブレーションパルスを生成するための方法であって、前記方法は、
組織のアブレーションのために、パルス発生器を使用してアブレーションパルスを生成することと、
電源によって前記パルス発生器に電力を供給することと、
前記電源によって前記パルス発生器に供給された前記電力の弱化を感知することと、
前記電源と並列に接続されているエネルギー貯蔵パワーバンクを使用して、前記供給された電力の感知された前記弱化に応答して、前記電源によって供給された電流を増大させる追加の電流を前記パルス発生器に供給することと、を含む、方法。
(10) 前記エネルギー貯蔵パワーバンクは、電荷を貯蔵するように構成された高エネルギーコンデンサを備える、実施態様9に記載の方法。
【0065】
(11) 前記弱化を感知することは、前記電源によって供給された電圧レベルを感知することを含む、実施態様9に記載の方法。
(12) 前記弱化を感知することは、前記電源によって供給された電圧レベルの減少を検出することを含む、実施態様9に記載の方法。
(13) 前記弱化を感知することは、前記電源によって供給された電圧レベルの減少率を検出することを含む、実施態様9に記載の方法。
(14) 前記アブレーションパルスを生成することは、前記アブレーションパルスの断続的なバーストを生成することを含む、実施態様9に記載の方法。
(15) 前記バースト間の時間間隔中に、前記電源を使用して、前記エネルギー貯蔵パワーバンクにエネルギーを充電することを更に含む、実施態様14に記載の方法。
【0066】
(16) 前記弱化の感知は、前記エネルギー貯蔵パワーバンクに一体化されている感知回路によって行われる、実施態様9に記載の方法。