(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094304
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】耐水性紙および包装容器
(51)【国際特許分類】
D21H 19/82 20060101AFI20240702BHJP
D21H 19/36 20060101ALI20240702BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
D21H19/82
D21H19/36 Z
B65D1/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219224
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2022209440
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 高弘
(72)【発明者】
【氏名】槌本 真和
(72)【発明者】
【氏名】松本 郁加
(72)【発明者】
【氏名】赤井 佐和子
【テーマコード(参考)】
3E033
4L055
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033AA10
3E033BA10
3E033BA14
3E033BA30
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3E033CA09
4L055AG11
4L055AG27
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4L055BE08
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4L055EA32
4L055EA40
4L055FA19
4L055FA30
4L055GA05
(57)【要約】
【課題】ヒートシール性を有し、耐水性に優れ、かつ耐油性に優れる耐水性紙を提供すること、および該耐水性紙を用いてなる包装容器を提供すること。
【解決手段】紙基材の一方の面に、紙基材側から、下塗り層1および耐水性層1をこの順に有する耐水性紙であって、紙基材を構成するパルプの平均ルンケル比が0.51以下であり、下塗り層1が、ラテックスおよび顔料を含有し、耐水性層1の塗工量が4.5g/m2以上である、耐水性紙。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の一方の面に、紙基材側から、下塗り層1および耐水性層1をこの順に有する耐水性紙であって、
紙基材を構成するパルプの平均ルンケル比が0.51以下であり、
下塗り層1が、ラテックスおよび顔料を含有し、
耐水性層1の塗工量が4.5g/m2以上である、
耐水性紙。
【請求項2】
紙基材を構成するパルプ原料が、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)および針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有し、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)との質量比(LBKP/NBKP)が、60/40以上100/0以下である、請求項1に記載の耐水性紙。
【請求項3】
下塗り層1において、顔料に対するラテックスの質量比(ラテックス/顔料)が10/90以上40/60以下である、請求項1に記載の耐水性紙。
【請求項4】
紙基材の他方の面に、下塗り層2および耐水性層2の少なくとも一方を有する、請求項1に記載の耐水性紙。
【請求項5】
耐水性層2の塗工量が5.0g/m2以下である、請求項4に記載の耐水性紙。
【請求項6】
耐水性層1が、ポリオレフィン系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の耐水性紙。
【請求項7】
紙基材が澱粉系乾燥紙力増強剤を含有する、請求項1に記載の耐水性紙。
【請求項8】
紙基材の坪量が200g/m2以上である、請求項1に記載の耐水性紙。
【請求項9】
耐水性紙の耐水性層1を有する面において、接触時間30分における20℃の水のCobb吸水度が10g/m2以下である、請求項1に記載の耐水性紙。
【請求項10】
耐水性紙の耐水性層1を有する面において、接触時間30分における90℃の水のCobb吸水度が20g/m2以下である、請求項1に記載の耐水性紙。
【請求項11】
耐水性紙の耐水性層1を有する面において、キット値が5以上である、請求項1に記載の耐水性紙。
【請求項12】
包装容器用である、請求項1に記載の耐水性紙。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の耐水性紙を用いてなる、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水性紙およびこれを用いてなる包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料、食品等の各種容器や、食品用カトラリー(例えば、箸、スプーン、フォーク等)として、従来プラスチック製品が使用されてきたが、環境負荷低減を目的として、紙製品への転換が望まれている。
【0003】
従来、基紙の片面にポリエチレンフィルムをラミネートしたポリエチレンラミネート紙が、飲料、食品等の各種容器に使用されてきたが、再生時にポリエチレンフィルムの除去が困難であり、再生利用性に劣るという問題があった。
このような問題に対応するために、抄紙工程での性能の付与や、塗工による性能の付与により、耐水性等を付与することが行われてきた。
【0004】
また、特許文献1には、プラスチックの使用量を低減することができる包装用紙を提供することを目的として、紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも1層のヒートシール層を有する包装用紙であって、前記ヒートシール層がアイオノマーを含み、前記ヒートシール層の乾燥塗工量が全層で2~10g/m2であり、前記ヒートシール層が少なくとも一方の面に2層以上形成されていることを特徴とする包装用紙が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された耐水性紙は、紙基材については検討されておらず、充分な耐水性やヒートシール性が得られない場合があった。
そこで、本発明は、ヒートシール性を有し、耐水性に優れ、かつ耐油性に優れる耐水性紙を提供すること、および該耐水性紙を用いてなる包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、紙基材上の少なくとも一方の面(例えば、接液面)に耐水性層を有する耐水性紙において、紙基材を構成するパルプの平均ルンケル比を特定の値以下とし、かつ、ラテックスおよび顔料を含有する下塗り層を設け、さらに、耐水性層の塗工量を特定の値以上とすることにより、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の<1>~<13>に関する。
<1> 紙基材の一方の面に、紙基材側から、下塗り層1および耐水性層1をこの順に有する耐水性紙であって、紙基材を構成するパルプの平均ルンケル比が0.51以下であり、下塗り層1が、ラテックスおよび顔料を含有し、耐水性層1の塗工量が4.5g/m2以上である、耐水性紙。
<2> 紙基材を構成するパルプ原料が、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)および針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有し、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)との質量比(LBKP/NBKP)が、60/40以上100/0以下である、<1>に記載の耐水性紙。
<3> 下塗り層1において、顔料に対するラテックスの質量比(ラテックス/顔料)が10/90以上40/60以下である、<1>または<2>に記載の耐水性紙。
<4> 紙基材の他方の面に、下塗り層2および耐水性層2の少なくとも一方を有する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の耐水性紙。
<5> 耐水性層2の塗工量が5.0g/m2以下である、<4>に記載の耐水性紙。
<6> 耐水性層1が、ポリオレフィン系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の耐水性紙。
<7> 紙基材が澱粉系乾燥紙力増強剤を含有する、<1>~<6>のいずれか1つに記載の耐水性紙。
<8> 紙基材の坪量が200g/m2以上である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の耐水性紙。
<9> 耐水性紙の耐水性層1を有する面において、接触時間30分における20℃の水のCobb吸水度が10g/m2以下である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の耐水性紙。
<10> 耐水性紙の耐水性層1を有する面において、接触時間30分における90℃の水のCobb吸水度が20g/m2以下である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の耐水性紙。
<11> 耐水性紙の耐水性層1を有する面において、キット値が5以上である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の耐水性紙。
<12> 包装容器用である、<1>~<11>のいずれか1つに記載の耐水性紙。
<13> <1>~<12>のいずれか1つに記載の耐水性紙を用いてなる、包装容器。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒートシール性を有し、耐水性に優れ、かつ耐油性に優れる耐水性紙が提供される。さらに、本発明によれば、該耐水性紙を用いてなる包装容器が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[耐水性紙]
本実施形態の耐水性紙は、紙基材の一方の面に、紙基材側から、下塗り層1および耐水性層1をこの順に有する耐水性紙であって、紙基材を構成するパルプの平均ルンケル比が0.51以下であり、下塗り層1が、ラテックスおよび顔料を含有し、耐水性層1の塗工量が4.5g/m2以上である。
本実施形態の耐水性紙は、ヒートシール性を有し、耐水性に優れ、かつ耐油性に優れる。さらに、本実施形態の耐水性紙は、成形性にも優れる。ここで、本明細書において、「成形性」とは、トップカール加工性に優れることを意味する。一般に、トップカール部を備える包装容器を製造する際には、耐水性紙の縦方向が、容器の垂直方向(すなわち、トップカール加工時に巻かれる方向)となり、横方向が水平方向となる。ヒートシール性が良好であると、トップカール加工時に、トップカール部のヒートシール部分の剥がれが抑制され、成形性に優れる。
なお、本実施形態において、耐水性層1が形成された面は、包装容器等として使用する場合に、内容物と接する面(接液面、表面)であることが好ましく、その反対面は、印刷が行われる面(印刷面、裏面)であることが好ましい。以下の説明において、便宜上、耐水性紙の耐水性層1が形成された面(一方の面)を、接液面または表面ともいい、他方の面を、印刷面または裏面ともいう。
【0011】
上記効果を奏するメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
パルプのルンケル比は、パルプ壁厚の2倍をパルプの腔の直径で割った値であり、ルンケル比が小さい程、パルプの繊維径に対するパルプの壁厚が薄いことを意味する。平均ルンケル比が紙基材を構成するパルプの平均ルンケル比を0.51以下とすることにより、パルプが潰れやすく、平滑性の高い紙基材が得られると考えられる。
さらに、該紙基材上に、ラテックスおよび顔料を含有する下塗り層1を形成することにより、耐水性層1を設ける前の平滑性がより向上し、形成厚み等のムラの少ない耐水性層1が形成されたと考えられる。さらに、耐水性層1の塗工量を4.5g/m2以上とすることにより、耐水性層1の全面において形成厚みムラの発生が抑制され、耐水性および耐油性に優れる耐水性紙が得られたと考えられる。耐水性層1の厚みにムラがあると、厚みが薄い部分から水や油が染み込むことで、耐水性および耐油性が劣化する傾向にあり、厚みムラが抑制されることで、耐水性および耐油性に優れる耐水性紙が得られたと考えられる。さらに、上記のように厚みムラの少ない耐水性層1が形成されると、ヒートシール時には、耐水性層1が含有する樹脂が均一に溶融して、ヒートシール面が十分かつ均一に接着することで、優れたヒートシール性が得られたと考えられる。
なお、本発明の効果は、上記メカニズムによって制限されるものではない。
また、耐水性紙の縦方向とは、紙基材の抄紙方向(MD方向)に対応する方向を意味し、耐水性紙の横方向とは、紙基材の幅方向(CD方向)に対応する方向を意味する。
以下、本実施形態の耐水性紙の構成および物性について、さらに詳細に説明する。
【0012】
本明細書中、「X~Y」で表される数値範囲は、Xを下限値、Yを上限値として含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限および下限は任意に組合わせることができる。また、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの両方を含む総称である。
【0013】
<紙基材>
本実施形態の耐水性紙を構成する紙基材は、単層構成であっても、多層構成であってもよい。多層紙である場合、紙層の層数は、特に制限されないが、例えば、好ましくは3層以上、より好ましくは4層以上、さらに好ましくは5層以上である。紙層を3層以上とすることで、所望の坪量および紙厚を実現できる他、各層の坪量、フリーネス等を調整して、耐水性紙の物性を所望の範囲に調整することができる。紙層の上限は、特に限定されないが、好ましくは7層以下、より好ましくは6層以下である。
【0014】
本実施形態において、紙基材を構成するパルプの平均ルンケル比は0.51以下である。紙基材を構成するパルプの平均ルンケル比が0.51以下であると、得られる紙基材の平滑性に優れ、その結果、厚みムラの抑制された耐水性層が得られるため、ヒートシール性に優れ、さらに、耐水性および耐油性に優れた耐水性紙が得られる。
紙基材を構成するパルプの平均ルンケル比は、ヒートシール性、耐水性および耐油性に優れた耐水性紙を得る観点から、好ましくは0.48以下、より好ましくは0.45以下、さらに好ましくは0.42以下であり、そして、耐水性紙としての必要な紙力を得る観点、および製造容易性の観点から、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.26以上、さらに好ましくは0.32以上である。
ここで、ルンケル比とは、パルプ繊維の繊維径をR、ルーメン径をrとしたとき、以下の式で表される。
ルンケル比=(R-r)/r
ここで、パルプ繊維の繊維径Rとルーメン径rは、円形近似により以下の式から算出される。
繊維壁の外周の長さをX、繊維壁断面積をSとすると、パルプ繊維の半径A(すなわちR/2)および繊維内腔半径B(すなわちr/2)は以下の式となる。
A=X/(2π)
B={(πA2-S)/π}1/2
すなわち、ルンケル比が小さいと、パルプの繊維径に対して、繊維壁厚が薄いことを意味し、ルンケル比が小さいパルプは、外力により潰れやすく、より平滑な紙基材が得られると考えられる。従って、平均ルンケル比が小さいパルプ原料で紙基材を作製すると、平滑性に優れる紙基材が得られる。
【0015】
なお、上記平均ルンケル比は、耐水性紙の紙基材を構成するパルプの平均ルンケル比であり、得られた耐水性紙からパルプを離解し、離解後のパルプで測定する。なお、抄紙および離解によって、紙基材を構成するパルプの平均ルンケル比は殆ど変化しないことから、原料であるパルプの平均ルンケル比で近似できる。
ルンケル比は、パルプの種類および産地等によって異なる。一般的には、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)のルンケル比は、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)よりも小さい傾向にある。所望の平均ルンケル比となるように、使用する原料パルプを適宜選択して、組合わせればよい。また、平均ルンケル比は、それぞれのルンケル比を有するパルプの質量加重平均値である。
ルンケル比は、実施例に記載の方法により測定される。
【0016】
紙基材を構成するパルプとしては、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の化学パルプ;砕木パルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、ケミグランドパルプ(CGP)等の機械パルプ;古紙パルプ;ケナフ、バガス、竹、コットン等の非木材繊維パルプ;合成パルプ等が挙げられる。これらのパルプは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。中でも、所望のルンケル比および紙力を得る観点から、紙基材を構成するパルプ原料が、LBKPおよびNBKPよりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、LBKPを単独で使用するか、またはLBKPとNBKPを併用することがより好ましく、LBKPとNBKPを併用することがさらに好ましい。
LBKPの原料としては、ユーカリ、アカシアが例示される。
NBKPの原料としては、ラジアータパイン、ダグラスファーが例示される。
【0017】
包装容器用の耐水性紙として適切な紙力を得る観点、および成形性に優れる耐水性紙を得る観点から、LBKPのカナダ標準ろ水度(CSF)は、好ましくは300mL以上600mL以下であり、より好ましくは325mL以上、さらに好ましくは350mL以上、よりさらに好ましくは380mL以上であり、そして、より好ましくは550mL以下、さらに好ましくは500mL以下、よりさらに好ましくは480mL以下である。
また、包装容器用の耐水性紙として適切な紙力を得る観点、および成形性に優れる耐水性紙を得る観点から、NBKPのカナダ標準ろ水度(CSF)は、好ましくは350mL以上700mL以下であり、より好ましくは400mL以上、さらに好ましくは450mL以上、よりさらに好ましくは480mL以上であり、そして、より好ましくは675mL以下、さらに好ましくは650mL以下であり、よりさらに好ましくは625mL以下である。
カナダ標準ろ水度は、JIS P 8121-2:2012「パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法」に従って測定される。
紙基材を構成するパルプとしてLBKPとNBKPとを併用し、かつ、それぞれのカナダ標準ろ水度(CSF)が上記の範囲であることが好ましい。
【0018】
上述したように、紙基材を構成するパルプ原料が、LBKPおよびNBKPよりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、少なくともLBKPを含有し、NBKPをさらに含有することがより好ましく、LBKPとNBKPとを併用することがさらに好ましい。紙基材を構成するパルプ原料中のLBKPとNBKPとの質量比(LBKP/NBKP)は、紙基材を構成するパルプの平均ルンケル比を所望の範囲とする観点、適切な紙力を得る観点、および成形性に優れる耐水性紙を得る観点から、60/40以上100/0以下であることが好ましく、より好ましくは70/30以上、さらに好ましくは75/25以上であり、そして、より好ましくは90/10以下、さらに好ましくは85/15以下である。
【0019】
紙基材への添加剤としては、例えばpH調整剤(炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム等)、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、内添サイズ剤、濾水歩留り向上剤、消泡剤、填料(炭酸カルシウム、タルク等)、染料、定着剤(硫酸バンド)等が挙げられる。これらの添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。添加剤の含有量は、特に限定されず、通常用いられている範囲であってよい。
【0020】
乾燥紙力増強剤としては、一般に、ポリアクリルアミド(PAM)系乾燥紙力増強剤、澱粉系乾燥紙力増強剤、CMC(カルボキシメチルセルロース)若しくはその塩であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース亜鉛等が例示されるが、ヒートシール性、耐水性および耐油性に優れた耐水性紙を得る観点から、乾燥紙力増強剤が澱粉系乾燥紙力増強剤を含有することが好ましい。紙基材が多層の紙層を有する場合、乾燥紙力増強剤は、一部の層が含有していてもよいが、各層が含有していることが好ましく、各層の含有量が下記の好ましい含有量の範囲であることがより好ましい。
乾燥紙力増強剤中の澱粉系乾燥紙力増強剤の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下である。なお、乾燥紙力増強剤として、ポリアクリルアミド系乾燥紙力増強剤を使用すると、成形性が低下する傾向にあるため、乾燥紙力増強剤におけるポリアクリルアミド系乾燥紙力増強剤の含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下であり、含有しないことが特に好ましい。
澱粉系乾燥紙力増強剤としては、カチオン化澱粉が例示される。乾燥紙力増強剤として澱粉系乾燥紙力増強剤を使用する場合、成形性に優れた耐水性紙を得る観点から、カチオン化澱粉の配合量は、原料パルプ100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、さらに好ましくは1.0質量部以下である。
【0021】
湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂(PAE)、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂が例示され、これらの中でも、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂が好ましい。紙基材が多層の紙層を有する場合、湿潤紙力増強剤は、一部の層が含有していてもよいが、各層が含有していることが好ましく、各層の含有量が下記の好ましい含有量の範囲であることがより好ましい。
原料パルプ100質量部に対する湿潤紙力増強剤の含有量は、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上、よりさらに好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以下である。
内添サイズ剤としては、ロジン系、アルキルケテンダイマー等が例示され、これらの中でも、ロジン系サイズ剤が好ましい。ロジン系サイズ剤は、例えば、酸性ロジン系サイズ剤、弱酸性ロジン系サイズ剤、および中性ロジン系サイズ剤を用いることができる。
紙基材が多層の紙層を有する場合、内添サイズ剤は、一部の層が含有していてもよいが、各層が含有していることが好ましく、各層の含有量が下記の好ましい含有量の範囲であることがより好ましい。
原料パルプ100質量部に対する内添サイズ剤の含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
【0022】
紙基材の坪量は、特に限定されるものではないが、例えば包装容器、好ましくは食品容器、より好ましくは紙コップ用途であれば、包装容器としての紙力を得る観点から、好ましくは180g/m2以上、より好ましくは200g/m2以上、さらに好ましくは220g/m2以上であり、そして、成形性に優れた耐水性紙を得る観点から、好ましくは430g/m2以下、より好ましくは380g/m2以下、さらに好ましくは330g/m2以下、よりさらに好ましくは280g/m2以下である。紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
紙基材の紙厚も、特に限定されるものではないが、例えば包装容器、好ましくは食品容器、より好ましくは紙コップ用途であれば、包装容器としての紙力を得る観点から、好ましくは210μm以上、より好ましくは230μm以上、さらに好ましくは240μm以上であり、そして、成形性に優れた耐水性紙を得る観点から、好ましくは480μm以下、より好ましくは410μm以下、さらに好ましくは380μm以下、よりさらに好ましくは330μm以下である。紙基材の紙厚は、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
紙基材の密度も、特に限定されるものではないが、例えば包装容器、好ましくは紙コップ用途であれば、包装容器としての紙力を得る観点および成形の際の柔軟性の観点から、好ましくは0.4g/cm3以上1.1g/cm3以下であり、より好ましくは0.6g/cm3以上、さらに好ましくは0.7g/cm3以上であり、そして、より好ましくは1.0g/cm3以下、さらに好ましくは0.95g/cm3以下である。紙基材の密度は、上述した測定方法により得られた、紙基材の坪量および厚さから算出される。
【0023】
〔紙基材の製造方法〕
紙基材を製造する方法としては、パルプを含有する紙料を抄紙する方法が挙げられる。なお、紙料は、添加剤をさらに含有してもよい。添加剤としては、例えば前記で挙げた添加剤が挙げられる。紙料は、パルプスラリーに添加剤を添加することにより調製できる。パルプスラリーは、パルプを水の存在下で叩解することにより得られる。パルプの叩解方法、叩解装置は特に限定されず、公知の叩解方法、叩解装置と同様であってよい。紙料におけるパルプの含有量は、特に限定されず、通常用いられている範囲であってよい。例えば、紙料(固形分)の総質量に対して、60質量%以上100質量%未満である。
【0024】
紙料の抄紙は定法により実施できる。例えば、紙料をワイヤ等に流延させ、脱水して湿紙を得て、必要に応じて複数の湿紙を重ね、この単層または多層の湿紙をプレスし、乾燥させる方法が挙げられる。このとき、複数の湿紙を重ねない場合は単層抄きの紙が得られ、複数の湿紙を重ねる場合は多層抄きの紙が得られる。複数の湿紙を重ねる際に、湿紙の表面(他の湿紙を重ねる面)に接着剤を塗布してもよい。
得られた紙基材は、一方の面と、他方の面で、平滑度に差がある場合があり、本実施形態においては、ヒートシール性、耐水性および耐油性に優れた耐水性紙を得る観点から、紙基材のより平滑な面に下塗り層1および耐水性層1をこの順で設けて接液面(表面)とすることが好ましい。
【0025】
<下塗り層>
本実施形態の耐水性紙は、紙基材の一方の面、例えば接液面(表面)に、紙基材側から、下塗り層1および耐水性層1をこの順で有する。ここで、接液面とは、液体と接する面であり、例えば、耐水性紙が包装容器に使用される場合には、内容物に接する面を意味する。この際、内容物は液体、非液体のいずれであってもよい。
下塗り層1は、ラテックスおよび顔料を含有する。
本実施形態の耐水性紙は、紙基材の他方の面、例えば接液面とは反対の面(印刷面、裏面)にも、下塗り層2および耐水性層2の少なくとも一方を有していてもよく、また、紙基材側から、下塗り層2および耐水性層2をこの順で有していてもよい。
【0026】
表面が下塗り層1を有することで、より耐水性に優れた耐水性紙が得られる。また、裏面が下塗り層2を有すると、印刷適性が向上する。表面において、下塗り層1は、紙基材と耐水性層1の間に設けられる。裏面に下塗り層2を有する場合、下塗り層2上には、耐水性層2が積層されていてもよいし、耐水性層2が積層されていなくてもよい。なお、本実施形態の耐水性紙は、少なくとも一方の面(接液面)が下塗り層1を有していればよく、他方の面(印刷面、裏面)に下塗り層2を有していなくてもよいが、ヒートシール性、印刷面の耐水性および成形性の観点からは、下塗り層2を有していることが好ましい。紙コップ用途においては、耐水性の観点から、少なくとも接液面は紙基材側から、下塗り層1および耐水性層1を有することが必要である。さらに、コールド飲料向け紙コップ用途においては、結露防止および印刷適性の観点から、印刷面も下塗り層2および耐水性層2を有することが好ましい。従って、本発明の一実施形態に係る耐水性紙は、紙基材の両面に、下塗り層および耐水性層をこの順に有する。一方、ホット飲料向け紙コップ用途においては、耐結露性が求められないため、印刷面は必ずしも耐水性層を有しなくてもよい。従って、本発明の他の一実施形態に係る耐水性紙は、紙基材の一方の面(表面、接液面)に下塗り層1および耐水性層1をこの順に有し、紙基材の他方の面(裏面、印刷面)は、耐水性層2を有しない。ホット飲料向け紙コップ用途では、印刷適性の観点から、紙基材の他方の面(裏面、印刷面)に下塗り層2を有していてもよい。すなわち、本発明の他の実施形態に係る耐水性紙は、紙基材の一方の面(表面、接液面)に下塗り層1および耐水性層1をこの順に有し、紙基材の他方の面(裏面、印刷面)に下塗り層2を有する。
なお、ヒートシール性および成形性を向上させる観点からは、表面および裏面に耐水性層を有することが好ましい。
下塗り層は、片面あたり、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。耐水性紙が下塗り層を有する場合には、生産性の観点から、下塗り層が1層であることが好ましく、耐水性を向上させる観点から、2層以上であってもよい。
なお、紙基材の一方の面に、下塗り層を2層以上有する場合には、それぞれの下塗り層の組成および塗工量は同一でも異なっていてもよく、また、紙基材の一方の面と他方の面に下塗り層を有する場合、それぞれの下塗り層の組成および塗工量は同一でも異なっていてもよい。
以下の説明において、下塗り層1は、耐水性層1を有する面(表面、接液面)に設けられた下塗り層を意味し、下塗り層2は、これとは反対側の面(裏面、印刷面)に設けられた下塗り層を意味する。下塗り層1、下塗り層2の別が特定されていない場合には、下塗り層1および下塗り層2の総称である。
【0027】
本実施形態において、下塗り層1は、ラテックスおよび顔料を含有する。下塗り層2は、ラテックスおよび顔料を含有することが好ましい。
以下、下塗り層が含有するラテックスおよび顔料について詳述する。
〔ラテックス〕
本実施形態において、ラテックスは、水中に安定して分散可能な高分子を表す。ラテックスは、一般には、界面活性剤等により乳化分散されている。
ラテックスの具体例としては、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体;(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、およびこれと共重合可能な単量体との共重合体(例えば、スチレン-アクリル系共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体)などのアクリル系重合体;エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニルなどのビニル系重合体;ポリウレタン樹脂;天然ゴムなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、耐水性および/または耐油性のさらなる向上の観点から、スチレン-ブタジエン共重合体およびアクリル系重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、アクリル系重合体であることがより好ましく、スチレン-アクリル系共重合体であることがさらに好ましい。
スチレン-アクリル系共重合体としては、スチレンと、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体であることが好ましい。
ラテックスとしては、市販品、合成品のいずれを使用してもよい。市販品としては、BASF株式会社製のAcronal S728ap、Acronal S504ap、DIC株式会社製のラックスター3307BEなどが挙げられる。
【0028】
ラテックスのガラス転移温度も、特に制限されないが、耐水性層と下塗り層の接着強度の観点から、好ましくは-50℃以上、より好ましくは-20℃以上、さらに好ましくは0℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下である。なお、ラテックスのガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)法によって測定される値を採用するものとする。
【0029】
下塗り層において、顔料に対するラテックスの質量比(ラテックス/顔料)は、ヒートシール性、耐水性および耐油性に優れる耐水性紙を得る観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは12/88以上であり、そして、好ましくは40/60以下、より好ましくは35/65以下であり、操業性向上(塗工設備の汚れの抑制)の観点からは、さらに好ましくは25/75以下、よりさらに好ましくは20/80以下である。
【0030】
〔顔料〕
顔料としては、特に制限されず、例えば、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、焼成クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料;密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、耐水性および/または耐油性のさらなる向上の観点から、カオリンおよび炭酸カルシウムよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、少なくともカオリンを含有することがより好ましく、炭酸カルシウムとカオリンとを併用することがさらに好ましい。
炭酸カルシウムとカオリンとを併用する場合、炭酸カルシウムとカオリンとの質量比(炭酸カルシウム/カオリン)は特に制限されないが、好ましくは50/50以上90/10以下、より好ましくは、60/40以上80/20以下である。
【0031】
顔料の平均粒子径は、特に制限されないが、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、そして、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、顔料の平均粒子径は、レーザー回折法の原理によるレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて求めることができ、測定された粒度分布によって測定される値を採用するものとする。
【0032】
顔料として、アスペクト比が5以上である顔料(顔料1)と、アスペクト比が5未満である顔料(顔料2)とを併用することが、下塗り層による耐水性の向上の観点、並びに下塗り層用塗工液の粘度調整およびコストの観点から好ましい。
顔料1のアスペクト比は、5以上であり、好ましくは50以上であり、そして、好ましくは500以下、より好ましくは300以下である。上記のアスペクト比を有する顔料としては、カオリンが例示される。
顔料2のアスペクト比は、5未満であり、好ましくは4以下、より好ましくは3.5以下であり、1以上である。上記アスペクト比を有する顔料としては、炭酸カルシウムが例示される。
なお、顔料のアスペクト比は、平均粒子径を平均厚みで除した形状因子である。平均厚みは、溶媒等で希釈した顔料をガラス基板上に数滴滴下し、自然乾固させ、透過電子顕微鏡を用いてこのガラス基板上に配向した顔料を20点抽出し、それぞれの厚みを測定する。そして、測定した20点の厚みのうち、上位値および下位値の各3点の厚みを除外した残りの14点の厚みの平均値を求め、その平均値を平均厚みとする。
【0033】
下塗り層において、顔料およびラテックスの合計含有量は、耐水性およびヒートシール性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0034】
下塗り層は、ラテックスおよび顔料以外の成分をさらに含有していてもよい。その他の成分としては、接着剤、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤、界面活性剤等が挙げられる。接着剤としては、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉等のエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。
【0035】
下塗り層の塗工量は、接液面と印刷面で同じでもよく、異なっていてもよい。ヒートシール性、耐水性および耐油性に優れた耐水性紙を得る観点から、下塗り層の片面あたりの塗工量は、好ましくは1g/m2以上、より好ましくは3g/m2以上、さらに好ましくは4g/m2以上であり、ヒートシール性およびコストの観点から、好ましくは30g/m2以下、より好ましくは20g/m2以下、さらに好ましくは12g/m2以下である。
また、特に印刷適性に優れた耐水性紙とする観点からは、接液面の下塗り層の塗工量は、上述の片面当たりの塗工量と同じであり、印刷面の下塗り層の塗工量は、好ましくは8g/m2以上30g/m2以下であり、より好ましくは10g/m2以上、さらに好ましくは12g/m2以上である。印刷面の下塗り層の塗工量は、印刷適性の観点から、前記下限値以上であることが好ましく、ヒートシール性およびコストの観点から、前記上限値以下であることが好ましい。
【0036】
下塗り層の形成方法は、特に限定されないが、例えば、ラテックス、顔料、および必要に応じてその他の成分を含有する下塗り層用塗工液を調製し、紙基材上に塗工し、乾燥することにより得られる。
なお、紙基材のより平滑な面が、下塗り層1および耐水性層1を有することが好ましく、紙基材のより平滑な面を接液面(表面)として、下塗り層1および耐水性層1をこの順に形成することが好ましい。
【0037】
本実施形態の耐水性紙が、下塗り層を有する場合、紙基材および下塗り層の積層体(以下、「下塗り紙」ともいう)の坪量は、特に限定されるものではないが、例えば包装容器、好ましくは紙コップ用途であれば、包装容器としての紙力を得る観点から、好ましくは200g/m2以上、より好ましくは220g/m2以上、さらに好ましくは240g/m2以上であり、そして、成形性の観点から、好ましくは450g/m2以下、より好ましくは400g/m2以下、さらに好ましくは350g/m2以下、よりさらに好ましくは300g/m2以下である。下塗り紙の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
下塗り紙の厚み(紙厚)も、特に限定されるものではないが、例えば包装容器、好ましくは紙コップ用途であれば、包装容器としての紙力を得る観点から、好ましくは230μm以上、より好ましくは250μm以上、さらに好ましくは260μm以上であり、そして、トップカール加工性の観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは430μm以下、さらに好ましくは400μm以下、よりさらに好ましくは350μm以下である。下塗り紙の紙厚は、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
下塗り紙の密度は、特に限定されるものではないが、例えば包装容器、好ましくは紙コップ用途であれば、包装容器としての紙力を得る観点および成形の際の柔軟性の観点から、好ましくは0.4g/cm3以上1.1g/cm3以下であり、より好ましくは0.6g/cm3以上、さらに好ましくは0.7g/cm3以上であり、そして、より好ましくは1.0g/cm3以下、さらに好ましくは0.95g/cm3以下である。下塗り紙の密度は、上述した測定方法により得られた、下塗り紙の坪量および厚さから算出される。
【0038】
下塗り紙の耐水性層1を形成する面(接液面、表面)における王研式平滑度は、耐水性、ヒートシール性および成形性に優れる耐水性紙を得る観点から、好ましくは20秒以上、より好ましくは30秒以上、さらに好ましくは45秒以上であり、その上限は特に限定されないが、例えば1000秒以下である。
また、下塗り紙の耐水性層2を形成する面(印刷面、裏面)における王研式平滑度は、ヒートシール性および成形性に優れる耐水性紙を得る観点、並びに、印刷層を形成する場合に印刷適性に優れる観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは15秒以上、さらに好ましくは20秒以上であり、そして、その上限は特に限定されないが、例えば200秒以下である。
王研式平滑度は、JIS P 8115:2010に準拠して測定される。
【0039】
<耐水性層>
本実施形態の耐水性紙は、紙基材の一方の面(例えば、接液面)に耐水性層1を有する。
本実施形態の耐水性紙において、耐水性層1は、紙基材上に下塗り層1を介して形成される。また、ヒートシール性の観点から、耐水性層は、紙基材の少なくとも一方の面の最上層に設けられていることが好ましく、少なくとも接液面の最上層に設けられていることがより好ましい。
【0040】
本実施形態の耐水性紙は、紙基材の少なくとも一方の面に、耐水性層を1層以上有し、少なくとも一方の面に、2層以上の耐水性層を有していてもよい。生産性の観点からは、耐水性層が1層であることが好ましく、耐水性を向上させる観点からは、2層以上であることが好ましい。
また、耐水性層は、接液面(以下、接液面を表面ともいう)のみに設けられてもよく、さらに紙基材を介して反対面である裏面にも設けられていてもよい。
さらに、冷水用紙コップのように結露が生じる用途に使用する場合は、外側となる面(接液面とは反対側の面、裏面または印刷面ともいう)に耐水性層を1層以上有することが好ましく、2層以上有していてもよい。すなわち、本実施形態の耐水性紙は、耐水性層を紙基材の両面に有することが好ましく、紙基材の他方の面に、耐水性層2を有することが好ましい。
なお、紙基材の一方の面に、耐水性層を2層以上有する場合には、それぞれの耐水性層の組成および塗工量は同一でも異なっていてもよく、また、紙基材の一方の面と他方の面に耐水性層を有する場合、それぞれの耐水性層の組成および塗工量は同一でも異なっていてもよい。
以下の説明において、耐水性層1、耐水性層2の別が特定されていない場合には、耐水性層1および耐水性層2の総称を意味する。
【0041】
耐水性層は、水系樹脂を含有することが好ましい。水系樹脂とは、水に分散または懸濁可能な樹脂を意味する。
水系樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられ、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル系共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体が例示される。α-オレフィンの炭素数は、好ましくは4以上20以下、より好ましくは6以上16以下、さらに好ましくは6以上12以下である。これらの中でも、耐水性、ヒートシール性、およびトップカール加工性の観点から、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル系共重合体、およびエチレン-α-オレフィン共重合体よりなる群から選択される少なくとも1つを含有することが好ましく、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体またはスチレン-アクリル系共重合体を含有することがより好ましく、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体がさらに好ましい。水系樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
耐水性層1がエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体を含有してもよく、本実施形態の耐水性紙が耐水性層2を有する場合には、耐水性層1および耐水性層2がエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体を含有してもよい。
【0042】
耐水性層は、所望のヒートシール剥離強度を得る観点から、表面(接液面)および裏面(印刷面)の両面に耐水性層を有する場合には、両面の耐水性層が同種の水系樹脂を含有することが好ましい。表面と裏面との水系樹脂が同種であると、ヒートシール剥離強度が向上する傾向にある。
従って、たとえば、表面の耐水性層が水系樹脂としてエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体を含有する場合であって、裏面が耐水性層を有する場合には、裏面の耐水性層は、水系樹脂としてエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体を含有することが好ましい。
なお、両面の耐水性層が異種の水系樹脂を含有してもよいが、ヒートシール剥離強度の観点からは、樹脂同士の極性が近いことが好ましい。
【0043】
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体は、エチレン-アクリル酸共重合体でもよく、エチレン-メタクリル酸共重合体であってもよい。スチレン-アクリル系共重合体は、スチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体であってもよい。
水系樹脂としては、上市されている製品を使用してもよく、例えば、ヘンケルジャパン株式会社製のAQUENCE EPIX BC 9220HS、マイケルマンジャパン合同会社製のMP498345N、MP4983R、MP4990R、201103PX.S、MFHS1279、住友精化株式会社製のザイクセン(登録商標)A、ザイクセン(登録商標)AC、三井化学株式会社のケミパールシリーズ(S100、S300、S500)、丸芳化学株式会社製のMYE-30ER、MYE-30MAZ、デュポン社製のサーリンシリーズ、三井・ダウポリケミカル株式会社製のハイミランシリーズ、ダウケミカルジャパン株式会社製のHYPOD2000、RHOBARR320、RHOBARR325、東邦化学工業株式会社製のハイテックSC-100、中央理化工業株式会社製のアクアテックスAC-3100、ヘンケルジャパン製のAQUENCE EPIX BC900F、BC905F、BC910F、BASF社製のJoncryl HPB-4110が例示される。
【0044】
耐水性層中の水系樹脂の含有量は、耐水性の観点から、耐水性層の樹脂成分中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、100質量%以下である。
ここで、耐水性層の樹脂成分とは、耐水性層が含有する高分子成分、すなわち、重量平均分子量が1,000以上である化合物を意味する。
【0045】
耐水性層は、上述した水系樹脂に加えて、他の成分を含有してもよい。
他の成分としては、例えば、粘度調整剤;消泡剤;界面活性剤、アルコール等のレベリング剤;着色顔料、着色染料等の着色剤;無機顔料、合成樹脂等のアンチブロッキング剤などが例示される。
なお、これらの成分は、耐水性およびヒートシール性の確保の観点から、他の成分の含有量の合計は、耐水性層の固形分中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であり、下限値は0質量%である。
【0046】
耐水性層は、水系樹脂を含有する耐水性層用塗工液を調製し、これを、塗工することにより得られる。
耐水性層用塗工液は、水性ディスパージョンであることが好ましい。また、耐水性層用塗工液は、界面活性剤等の乳化剤、分散剤を含有しない、自己乳化分散性の塗工液であることがより好ましい。界面活性剤等の乳化剤、分散剤を含有しないことにより、より耐水性に優れるので好ましい。
【0047】
耐水性層用塗工液に配合されるエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体は、アイオノマーの形態であってもよい。ここで、アイオノマーとは、共重合体を陽イオンで中和したものである。すなわち、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体を陽イオンで中和した合成樹脂は、全てアイオノマーに該当する。アイオノマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。陽イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の金属イオン、アンモニウムイオン(NH4
+)、有機アンモニウムイオンが例示される。
【0048】
耐水性層用塗工液を塗工する方法としては、特に限定されず、一般に使用されている塗工装置から適宜選択して使用すればよい。例えば、エアナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の公知の各種塗工装置が挙げられる。
少なくとも表面(接液面)の耐水性層の形成には、耐水性層の品質向上の観点から、エアナイフコーターを使用することが好ましい。また、裏面の耐水性層の形成には、同様の観点からエアナイフコーターを使用することが好ましいが、グラビアコーターを使用してもよい。
【0049】
耐水性層1の塗工量は、ヒートシール性、耐水性および耐油性の観点から、4.5g/m2以上である。耐水性層1の塗工量が4.5g/m2未満であると、充分なヒートシール性、耐水性および耐油性が得られない傾向があり、また、その結果、包装容器の成形性や耐水性に劣る場合がある。耐水性層1の塗工量は、上記観点から、好ましくは4.8g/m2以上、より好ましくは5.5g/m2以上、さらに好ましくは6.5g/m2以上、よりさらに好ましくは7.5g/m2以上である。耐水性層1の塗工量の上限は、特に制限されないが、成形性およびコストの観点、並びにリサイクル性の観点から、例えば、好ましくは20g/m2以下、より好ましくは15g/m2以下、さらに好ましくは10g/m2以下である。耐水性層1の塗工量は、耐水性層1が2層以上である場合は、その合計塗工量を指す。
【0050】
耐水性層2の塗工量は、成形性およびコストの観点から、好ましくは5.0g/m2以下、より好ましくは4.5g/m2未満、さらに好ましくは4.0g/m2以下、よりさらに好ましくは3.5g/m2以下である。下限は特に限定されないが、ヒートシール性の観点から、好ましくは1.0g/m2以上、より好ましくは2.0g/m2以上、さらに好ましくは2.5g/m2以上である。耐水性層2の塗工量は、耐水性層2が2層以上である場合は、その合計塗工量を指す。
【0051】
本実施形態の耐水性紙が耐水性層2を有する場合、耐水性層1と耐水性層2の合計塗工量、すなわち、表面および裏面の耐水性層の合計塗工量は、耐水性およびヒートシール性の観点から、好ましくは6g/m2以上、より好ましくは7g/m2以上、さらに好ましくは7.5g/m2以上であり、そして、好ましくは20g/m2以下、より好ましくは15g/m2以下、さらに好ましくは12g/m2以下である。
本実施形態の耐水性紙が、紙基材の他方の面に耐水性層2を有する場合、耐水性層2の塗工量(A)は、耐水性層1の塗工量(B)に比べて、同等または少なくてもよく、具体的には、A/Bが、1.0以下、0.8以下または0.7以下であってもよい。A/Bの下限は、特に限定されないが、例えば0.3以上である。耐水性層2が2層以上の場合、上記Aはその合計塗工量を指し、耐水性層1が2層以上の場合、上記Bはその合計塗工量を指す。
従って、本実施形態の耐水性紙を包装容器(好ましくは食品容器、例えば、紙コップ)に使用する場合において、耐水性層を片面(接液面)のみに有する場合は、接液面側の耐水性層の合計塗工量は、上記範囲内であることが好ましい。また、本実施形態の耐水性紙を包装容器(好ましくは食品容器、例えば、紙コップ)に使用する場合において、耐水性層を両面(接液面および印刷面)に有する場合は、接液面側の耐水性層の合計塗工量、印刷面側の耐水性層の合計塗工量が、それぞれ、上記範囲内であることが好ましく、また、両面での耐水性層の合計塗工量が上記の範囲であることが好ましい。
【0052】
本実施形態の耐水性紙は、上記の下塗り層、耐水性層に加えて、その他の層を有していてもよい。その他の層としては、印刷層、水蒸気バリア層、酸素バリア層、酸素吸収層、接着性付与層等が例示される。印刷層は、油性インキ、水性インキ、バイオマスインキなどの公知のインキを用いて形成されていてもよい。印刷層は、耐水性紙の一面に形成されていてもよいし、面の一部に形成されていてもよい。すなわち、本実施形態の耐水性紙は、少なくとも一方の面(例えば、印刷面)の全部または一部に印刷が施されてもよい。印刷される内容は、模様、図柄、情報(成分、賞味期限、QRコード(登録商標)など)であってもよい。また、ホット飲料向け紙コップ用途では、紙基材の一方の面(接液面)に耐水性層1を設け、紙基材の他方の面(印刷面、裏面)は紙基材が露出していてもよいが、紙コップの胴部を成形する際のヒートシール性(サイドシール性)に乏しいことがある。そこで、ヒートシール性(サイドシール性)の向上の観点から、紙基材の他方の面(印刷面、裏面)に接着性付与層を設けてもよい。接着性付与層は、オレフィン樹脂、ビニルアルコール系樹脂、アミド系樹脂、アミン系樹脂等の公知の樹脂を使用して形成することができる。
なお、本実施形態の耐水性紙は、紙基材上の少なくとも一方の面に、紙基材に直接接するように設けられた1層以上(好ましくは1層のみ)の下塗り層、および前記下塗り層に直接に接するように設けられた、1層以上(好ましくは1層のみ)の耐水性層をこの順で有することが好ましく、紙基材、下塗り層、耐水性層のみから構成されていることがより好ましい。また、他方の面は特に限定されないが、たとえば、コールド飲料向け紙コップ用途では、紙基材に直接接するように設けられた1層以上(好ましくは1層のみ)の下塗り層、および前記下塗り層に直接に接するように設けられた、1層以上(好ましくは1層のみ)の耐水性層をこの順で有することが好ましく、ホット飲料向け紙コップ用途では、紙基材に直接接するように設けられた1層以上(好ましくは1層のみ)の下塗り層を有していてもよい。
【0053】
<耐水性紙の物性>
〔坪量〕
耐水性紙の坪量は、特に限定されるものではないが、例えば包装容器、好ましくは食品容器、より好ましくは紙コップ用途であれば、包装容器としての強度を得る観点から、好ましくは220g/m2以上、より好ましくは240g/m2以上、さらに好ましくは250g/m2以上であり、そして、トップカール加工性の観点から、好ましくは500g/m2以下、より好ましくは450g/m2以下、さらに好ましくは400g/m2以下、よりさらに好ましくは350g/m2以下、特に好ましくは300g/m2以下である。
耐水性紙の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0054】
〔厚み〕
耐水性紙の厚み(紙厚)も、特に限定されるものではないが、例えば包装容器、好ましくは食品容器、より好ましくは紙コップ用途であれば、包装容器としての強度を得る観点から、好ましくは230μm以上、より好ましくは250μm以上、さらに好ましくは270μm以上であり、そして、トップカール加工性の観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは430μm以下、さらに好ましくは400μm以下、よりさらに好ましくは350μm以下である。
耐水性紙の紙厚は、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0055】
〔密度〕
耐水性紙の密度は、特に限定されるものではないが、例えば包装容器、好ましくは紙コップ用途であれば、包装容器としての紙力を得る観点および成形の際の柔軟性の観点から、好ましくは0.4g/cm3以上1.1g/cm3以下であり、より好ましくは0.6g/cm3以上、さらに好ましくは0.7g/cm3以上であり、そして、より好ましくは1.0g/cm3以下、さらに好ましくは0.95g/cm3以下である。耐水性紙の密度は、上述した測定方法により得られた、耐水性紙の坪量および厚さから算出される。
【0056】
[Cobb吸水度]
本実施形態の耐水性紙は、冷水への耐水性の観点から、耐水性層1を有する面において、接触時間30分における20℃の水のCobb吸水度が、好ましくは15g/m2以下、より好ましくは10g/m2以下、より好ましくは8g/m2以下、さらに好ましくは6g/m2以下、よりさらに好ましくは4g/m2以下、特に好ましくは3g/m2以下または2g/m2以下である(下限は0g/m2)。20℃のCobb吸水度は、紙基材を構成するパルプの平均ルンケル比、耐水性層に使用する樹脂の種類および塗工量、下塗り層に使用する顔料およびラテックスの種類並びにそれらの配合量、下塗り層の塗工量などにより、所望の範囲内に調整することができる。Cobb吸水度は、JIS P 8140:1998に準拠して測定される値を採用するものとする。
【0057】
また、本実施形態の耐水性紙は、熱水への耐水性の観点から、耐水性層1を有する面において、接触時間30分における90℃の水のCobb吸水度が、好ましくは20g/m2以下、より好ましくは15g/m2以下、さらに好ましくは12g/m2以下、よりさらに好ましくは10g/m2以下、特に好ましくは8g/m2以下、5g/m2以下または3g/m2以下である(下限は0g/m2)。90℃のCobb吸水度は、耐水性層に使用する樹脂の種類および塗工量、下塗り層に使用する顔料およびラテックスの種類並びにそれらの配合量、下塗り層の塗工量などにより、所望の範囲内に調整することができる。Cobb吸水度は、JIS P 8140:1998に準拠して測定される値を採用するものとする。
【0058】
[耐油性]
本実施形態の耐水性紙は、JAPAN TAPPI No.41(キット法)に準拠して測定されるキット値が、耐水性層1を有する面において、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上である。キット値が大きいほど(上限である「12」に近い程)、耐油性に優れることを意味する。上記範囲内であれば、食品包装用途に好適に使用することができる。
【0059】
<耐水性紙の用途>
本実施形態の耐水性紙は、ヒートシール性および耐水性に優れることから、コップ、皿、トレー、蓋材、パウチ、チューブ型容器などの包装容器;スプーン、フォーク、ナイフ、箸などのカトラリー;ストロー;包装紙、包装袋、蓋、ラベル等の軟包装用材料などに好適に使用することができる。包装容器は、例えば、必要に応じて耐水性紙の表面に印刷を施し、製造する包装容器の形状に対応した形状に打抜き加工し、折り曲げ加工し、重なり部分をヒートシールにより貼り合わせて成形することができる。従って、本発明によれば、上記の耐水性紙を用いてなる、包装容器(特に紙コップ)も提供される。また、本実施形態の耐水性紙は、耐油性にも優れることから、食品包装用途にも好適に使用することができる。
本実施形態の耐水性紙は、トップカール性に優れることから、これらの中でも、トップカールが必要とされる、紙コップ、紙皿、紙トレーなどの包装容器に好適である。包装容器の内容物は、食品、非食品のいずれであってもよい。また、包装容器の内容物は、液体、固体、ゲル体であってもよい。包装容器の内容物としては、特に制限されず、例えば、コーヒー、お茶、紅茶、ジュース、炭酸飲料などの嗜好飲料;日本酒、焼酎、ワイン等のアルコール飲料;牛乳等の乳飲料;即席食品(インスタントラーメンなど)、電子レンジ対応食品、嗜好食品(ヨーグルト、アイスクリーム、ゼリー、プリンなど)、惣菜などの食品;医薬品;カーワックス、シャンプー、リンス、洗剤、入浴剤、染毛剤、および歯磨き粉等の化学製品;等が挙げられる。
本実施形態の耐水性紙からなる包装容器は、従来のラミネート紙からなる包装容器に比べて、使用するプラスチック量が低減される。さらに、従来のラミネート紙からなる包装容器は、古紙に再利用する際、高離解性能のパルパーを用いて離解する必要があるが、本実施形態の耐水性紙からなる包装容器は、通常の離解性能のパルパーでも離解することができ、リサイクル性に優れる。本実施形態の耐水性紙からなる包装容器を洗浄、裁断、離解等に供してパルプスラリーを調製し、得られたパルプスラリーを用いて紙を製造することができる。抄造する紙の種類は、特に制限されず、例えば、印刷用紙、包装用紙、衛生用紙、板紙などが挙げられる。また、抄造した紙を加工して、包装容器(例えば、ティッシュ箱、紙コップのスリーブなど)を製造することも可能である。
【実施例0060】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。また、実施例および比較例の操作は、特にことわりがない限り、室温(20~25℃)、常湿(40~50%RH)の条件で行った。
【0061】
実施例および比較例で使用した原材料は、以下の通りである。
<原料パルプ>
・LBKP(I):ユーカリ、アカシアを原料とする広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)。ルンケル比0.29。なお、詳細な配合比は、以下の通りである。ユーカリA、Bは、樹種および産地が異なる。
ユーカリA:ルンケル比0.24 15質量%配合
ユーカリB:ルンケル比0.31 75質量%配合
アカシアA:ルンケル比0.25 10質量%配合
・LBKP(II):アカシアを原料とする広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)。ルンケル比0.60。なお、詳細な配合比は、以下の通りである。アカシアA、B、Cは、樹種および産地が異なる。
アカシアB:ルンケル比0.60 50質量%配合
アカシアC:ルンケル比0.60 50質量%配合
・NBKP:ラジアータパイン、ダグラスファーを原料とする針葉樹晒クラフトパルプ。ルンケル比0.85。なお、詳細な配合比は、以下の通りである。
ラジアータパイン:ルンケル比0.80 40質量%配合
ダグラスファー:ルンケル比0.88 60質量%配合
【0062】
<顔料>
・重質炭酸カルシウム(商品名「FMT-90」、株式会社ファイマテック、平均粒子径1.1μm、アスペクト比1.0~3.0)
・カオリン(商品名「バリサーフHX」、イメリス株式会社製、平均粒子径9.0μm、アスペクト比80~100)
<ラテックス>
・ラテックス:スチレン-アクリル系共重合体ラテックス(商品名「Acronal S728ap」、BASF株式会社製、ガラス転移温度23℃)、塗工液AおよびBで使用
【0063】
<水系樹脂分散液>
・商品名「AQUENCE EPIX BC9220HS」、ヘンケルジャパン株式会社製、固形分濃度23質量%、ポリオレフィン系樹脂ディスパージョン
・商品名「AQUENCE EPIX BC905F」、ヘンケルジャパン株式会社製、固形分濃度45質量%、アクリル系樹脂ディスパージョン
・商品名「ケミパールS300」、三井化学株式会社製、固形分濃度35質量%、エチレン-メタクリル酸共重合体ディスパージョン
・商品名「RHOBARR320」、ダウ社製、固形分濃度43質量%、ポリオレフィン系樹脂ディスパージョン
・商品名「RHOBARR325」、ダウ社製、固形分濃度47質量%、ポリオレフィン系樹脂ディスパージョン
・商品名「201103PX.S」、マイケルマンジャパン合同会社製、固形分濃度20質量%、エチレン-アクリル酸共重合体ディスパージョン
・商品名「Joncryl HPB-4110」、BASF社製、固形分濃度40質量%、アクリル系樹脂ディスパージョン
<その他>
・消泡剤:商品名「ビスマーKS-38E」、株式会社日新化学研究所製
【0064】
<下塗り層用塗工液の作製>
(a)塗工液Aの作製
顔料配合を、固形分中の重質炭酸カルシウムの含有量が70.0質量%、固形分中のカオリンの含有量が30.0質量%に調整した顔料分散液を得た。この顔料分散液に、スチレン-アクリル系共重合体ラテックスを配合して、固形分中の顔料の含有量が85.0質量%、スチレン-アクリル系共重合体ラテックスの含有量が15.0質量%である顔料/スチレン-アクリル系共重合体ラテックス混合液を調製した。顔料/スチレン-アクリル系共重合体ラテックス混合液に、消泡剤を配合して、固形分中の顔料/スチレン-アクリル系共重合体ラテックス混合物の含有量が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度60質量%の塗工液Aを調製した。
【0065】
(b)塗工液Bの作製
顔料配合を、固形分中の重質炭酸カルシウムの含有量が70.0質量%、固形分中のカオリンの含有量が30.0質量%に調整した顔料分散液を得た。この顔料分散液に、スチレン-アクリル系共重合体ラテックスを配合して、固形分中の顔料の含有量が70.0質量%、スチレン-アクリル系共重合体ラテックスの含有量が30.0質量%である顔料/スチレン-アクリル系共重合体ラテックス混合液を調製した。顔料/スチレン-アクリル系共重合体ラテックス混合液に、消泡剤を配合して、固形分中の顔料/スチレン-アクリル系共重合体ラテックス混合物の含有量が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度60質量%の塗工液Bを調製した。
【0066】
<耐水性層用塗工液の作製>
(a)塗工液C(グラビアコーター用塗工液)の作製
水系樹脂分散液(AQUENCE EPIX BC 9220HS、ヘンケルジャパン株式会社製)に、消泡剤を配合して、水を加えて固形分濃度を調整し、固形分中の水系樹脂の含有量が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度21質量%の塗工液Cを調製した。
【0067】
(b)塗工液D(エアナイフコーター用塗工液)の作製
水系樹脂分散液(AQUENCE EPIX BC 9220HS、ヘンケルジャパン株式会社製)に、消泡剤を配合して、水を加えて固形分濃度を調整し、固形分中の水系樹脂の含有量が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度18質量%の塗工液Dを調製した。
【0068】
(c)塗工液E(グラビアコーター用塗工液)の作製
水系樹脂分散液(AQUENCE EPIX BC905F、ヘンケルジャパン株式会社製)に、消泡剤を配合して、水を加えて固形分濃度を調整し、固形分中の水系樹脂の含有量が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度35質量%の塗工液Eを調製した。
【0069】
(d)塗工液F(エアナイフコーター用塗工液)の作製
水系樹脂分散液(AQUENCE EPIX BC905F、ヘンケルジャパン株式会社製)に、消泡剤を配合して、水を加えて固形分濃度を調整し、固形分中の水系樹脂の含有量が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度30質量%の塗工液Fを調製した。
【0070】
(e)塗工液G(グラビアコーター用塗工液)の作製
水系樹脂分散液(ケミパールS300、三井化学株式会社製)に、消泡剤を配合して、水を加えて固形分濃度を調整し、固形分中の水系樹脂が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度28質量%の塗工液Gを調製した。
【0071】
(f)塗工液H(エアナイフコーター用塗工液)の作製
水系樹脂分散液(ケミパールS300、三井化学株式会社製)に、消泡剤を配合して、水を加えて固形分濃度を調整し、固形分中の水系樹脂が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度25質量%の塗工液Hを調製した。
【0072】
(g)塗工液I(グラビアコーター用塗工液)の作製
水系樹脂分散液(RHOBARR320、ダウ社製)に、消泡剤を配合して、水を加えて固形分濃度を調整し、固形分中の水系樹脂の含有量が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度28質量%の塗工液Iを調製した。
【0073】
(h)塗工液J(エアナイフコーター用塗工液)の作製
水系樹脂分散液(RHOBARR320、ダウ社製)に、消泡剤を配合して、水を加えて固形分濃度を調整し、固形分中の水系樹脂の含有量が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度27質量%の塗工液Jを調製した。
【0074】
(i)塗工液K(グラビアコーター用塗工液)の作製
水系樹脂分散液(201103PX.S、マイケルマンジャパン合同会社製)に、消泡剤を配合して、水を加えて固形分濃度を調整し、固形分中の水系樹脂の含有量が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度17質量%の塗工液Kを調製した。
【0075】
(j)塗工液L(エアナイフコーター用塗工液)の作製
水系樹脂分散液(201103PX.S、マイケルマンジャパン合同会社製)に、消泡剤を配合して、水を加えて固形分濃度を調整し、固形分中の水系樹脂の含有量が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度16質量%の塗工液Lを調製した。
【0076】
(k)塗工液M(グラビアコーター用塗工液)の作製
水系樹脂分散液(Joncryl HPB-4110、BASF社製)に、消泡剤を配合して、水を加えて固形分濃度を調整し、固形分中の水系樹脂の含有量が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度34質量%の塗工液Mを調製した。
【0077】
(L)塗工液N(エアナイフコーター用塗工液)の作製
水系樹脂分散液(Joncryl HPB-4110、BASF社製)に、消泡剤を配合して、水を加えて固形分濃度を調整し、固形分中の水系樹脂の含有量が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度31質量%の塗工液Nを調製した。
【0078】
(m)塗工液O(グラビアコーター用塗工液)の作製
水系樹脂分散液(RHOBARR325、ダウ社製)に、消泡剤を配合して、水を加えて固形分濃度を調整し、固形分中の水系樹脂の含有量が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度38質量%の塗工液Oを調製した。
【0079】
(n)塗工液P(エアナイフコーター用塗工液)の作製
水系樹脂分散液(RHOBARR325、ダウ社製)に、消泡剤を配合して、水を加えて固形分濃度を調整し、固形分中の水系樹脂の含有量が99.5質量%、消泡剤の含有量が0.5質量%であり、固形分濃度35質量%の塗工液Pを調製した。
【0080】
<実施例1>
叩解したLBKP(I)(CSF400mL、ルンケル比0.29)および叩解したNBKP(CSF500mL、ルンケル比0.85)を90質量%、10質量%の割合で混合したパルプスラリー100質量部(固形分換算)に対し、弱酸性ロジン系サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、サイズパインN-811)0.85質量部、湿潤紙力増強剤(ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂(PAE)、星光PMC株式会社製、WS4020)0.15質量部、乾燥紙力増強剤(カチオン化澱粉、王子コーンスターチ株式会社製、エースk)0.7質量部、硫酸バンド1.5質量部を添加し、第1層用および第5層用の紙料を調製した。また、LBKP(I)およびNBKPの叩解度を変更し、表に示すCSFを有するパルプとし、各層のパルプ配合を表1に示すように変更した以外は、同様にして、第2層用および第4層用の紙料、並びに第3層用の紙料を調製した。これらの紙料を用いて、5層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙し、紙基材を得た。
紙基材の両面に、上記塗工液Aを、塗工量(固形分)が片面あたり5.0g/m2となるように、ロッドコーターを用いて塗工して、乾燥させ、下塗り層を形成し、坪量が260g/m2、紙厚が305μmの下塗り紙を得た。
下塗り紙の高平滑面(表面、接液面)に、上記塗工液Dを、塗工量(固形分)が5.0g/m2となるように、エアナイフコーターを用いて塗工して、乾燥させ、耐水性層1を形成したのち、反対面に、塗工液Cを、塗工量(固形分)が3.0g/m2となるように、グラビアコーターを用いて塗工して、乾燥させ、耐水性層2を形成し、耐水性紙を作製した。なお、紙基材の高平滑面(フェルト面)が、下塗り紙の高平滑面に対応し、さらに耐水性紙の表面(接液面)に対応する。
【0081】
<実施例2>
各層のパルプ配合を表1に示すように変更し、全層でのパルプ配合をLBKP(I)89質量%、NBKP11質量%とした以外は実施例1と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0082】
<実施例3>
各層のパルプ配合を表1に示すように変更し、全層でのパルプ配合をLBKP(I)66質量%、NBKP34質量%とした以外は実施例1と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0083】
<実施例4>
実施例1と同様にして調製した紙料を用いて、5層抄きの長網抄紙機を用いて抄紙し、紙基材を得た。
紙基材の両面に、上記塗工液Aを、塗工量(固形分)が10.0g/m2となるように、ロッドコーターを用いて塗工して、乾燥させ、下塗り層を形成し、坪量が270g/m2、紙厚が310μmの下塗り紙を得た。
下塗り紙の高平滑面(表面、接液面)に、上記塗工液Dを、塗工量(固形分)が5.0g/m2となるように、エアナイフコーターを用いて塗工して、乾燥させ、耐水性層1を形成したのち、反対面に、塗工液Cを、塗工量(固形分)が3.0g/m2となるように、グラビアコーターを用いて塗工して、乾燥させ、耐水性層2を形成し、耐水性紙を作製した。
【0084】
<実施例5>
表面の耐水性層の塗工量を6g/m2に増やした以外は実施例1と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0085】
<実施例6>
表面の耐水性層の塗工量を8g/m2に増やした以外は実施例1と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0086】
<実施例7>
下塗り層用塗工液を、塗工液Aから塗工液Bに変更した以外は実施例1と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0087】
<実施例8>
表面の耐水性層用塗工液を、塗工液Dから塗工液Fに変更し、裏面の耐水性層用塗工液を、塗工液Cから塗工液Eに変更した以外は実施例6と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0088】
<実施例9>
表面の耐水性層用塗工液を、塗工液Dから塗工液Hに変更し、裏面の耐水性層用塗工液を、塗工液Cから塗工液Gに変更した以外は実施例6と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0089】
<実施例10>
表面の耐水性層用塗工液を、塗工液Dから塗工液Jに変更し、裏面の耐水性層用塗工液を、塗工液Cから塗工液Iに変更した以外は実施例6と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0090】
<実施例11>
表面の耐水性層用塗工液を、塗工液Dから塗工液Lに変更し、裏面の耐水性層用塗工液を、塗工液Cから塗工液Kに変更した以外は実施例6と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0091】
<実施例12>
表面の耐水性層用塗工液を、塗工液Dから塗工液Nに変更し、裏面の耐水性層用塗工液を、塗工液Cから塗工液Mに変更した以外は実施例6と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0092】
<実施例13>
耐水性層2を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0093】
<実施例14>
表面の下塗り層の塗工量を10.0g/m2に変更したこと以外は実施例1と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0094】
<実施例15>
裏面の下塗り層の塗工量を20.0g/m2に変更したこと以外は実施例1と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0095】
<実施例16>
表面の耐水性層用塗工液を、塗工液Dから塗工液Pに変更して、表面の耐水性層の塗工量を9.0g/m2に変更し、裏面の耐水性層用塗工液を、塗工液Cから塗工液Oに変更したこと以外は実施例1と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0096】
<比較例1>
LBKP(I)をLBKP(II)に変更した以外は実施例1と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0097】
<比較例2>
叩解したLBKP(I)および叩解したNBKPを、各層で、45質量%、55質量%の割合に変更した以外は実施例1と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0098】
<比較例3>
耐水性層の表面の樹脂量を4g/m2に変更した以外は実施例1と同様にして、耐水性紙を作製した。
【0099】
[測定および評価]
紙基材、下塗り紙、実施例1~16および比較例1~3の耐水性紙に対し、以下の測定・評価を行った。
<ルンケル比>
繊維長測定装置(バルメット社製、バルメット ファイバー イメージ アナライザー ValmetFS5)を使用して、パルプの繊維幅、繊維粗度およびルーメン径を測定した。
各パルプのルンケル比は、下記式により算出した。
ルンケル比=繊維壁厚×2/ルーメン径
上記繊維壁厚は下記式(円形近似)により算出した。
【0100】
【0101】
上記式中、
Wa=繊維壁厚(μm)、
Wi=繊維幅(μm)、
C=繊維粗度(mg/m)
d=密度(kg/dm3)、
を表す。
また、上記密度dは、JIS P 8228:2018に準拠して測定されたパルプの保水度WRVを用いて下記式により算出した。
【0102】
【0103】
紙基材を構成するパルプの平均ルンケル比は、各パルプ(LBKP(I)、LBKP(II)、NBKP)のルンケル比およびパルプ配合から算出した。なお、耐水性紙からルンケル比を測定する場合は、耐水性紙をJIS P 8220-1:2012に準拠して離解し、得られたパルプについて上記測定を行うことで、紙基材を構成する平均ルンケル比を算出することができる。
【0104】
<坪量>
JIS P 8124:2011に準拠して測定した。
【0105】
<紙厚>
JIS P 8118:2014に準拠して測定した。
【0106】
<密度>
上述した測定方法により得られた坪量および紙厚から算出した。
【0107】
<Cobb吸水度>
耐水性層1を有する面について、JIS P 8140:1998に準拠して、温度20℃または90℃、接触時間30分の条件で測定した。
【0108】
<耐油度(キット値)>
耐水性層1を有する面について、JAPAN TAPPI No.41(キット法)に準拠し、評価した。値(キット値)が高いほど(上限である「12」に近い程)耐油度(撥油性)が高いことを示す。
【0109】
<平滑度(王研式平滑度)>
JIS P 8155:2010に準拠して測定した。
【0110】
<ヒートシール性>
得られた耐水性紙を縦方向15cm×横方向25cmに裁断し、表面(接液面)が内側となるように、横方向に丸めて径7.5cmの筒状にし、耐水性紙が重なり合う部分(紙コップ胴部のサイド部にあたる、サイドシール幅0.7cm)のヒートシール性を以下の基準に基づいて評価した。なお、ヒートシールは、中部総業株式会社製「CS-205」を使用し、温度250℃、圧力0.1MPa、接着時間2秒の条件で実施した。
AまたはBであれば実用上使用可能と判断できる。
〔評価基準〕
A:接着強度が強く、筒の外側から手で押して形を歪めても容易に剥離せず、接着部分を破いて解体すると、接着部分の全てが基材から破壊していることが確認できる。
B:接着強度が強く、筒の外側から手で押して形を歪めても容易に剥離しないが、接着部分を破いて解体すると、基材から破壊していない部分がわずかにある。
C:接着強度がやや強く、筒の外側から手で押して形を歪めても容易に剥離しないが、接着部分を破いて解体すると、接着状態が悪く基材から破壊していない部分が一部ある。
D:接着強度がやや弱く、筒の外側から手で押して形を歪めると、接着部分の半分以上が剥離する。
E:全く接着しない。
【0111】
<成形性(トップカール加工適性)>
得られた耐水性紙を、表面が内側(接液面)、裏面が外側(印刷面)となるように、かつ、構成する紙基材のCD方向がカップの水平方向となるようにカップ状に成形し、トップカール処理した際のカップのトップカール部分の成形性を以下の基準に基づいて評価した。なお、トップカール処理は以下のような方法で行った。
カップ上端の開口部周縁に金型をあてることにより開口部を広げ、カール直径約3mmのカール形状が施された金型をあて、カップ外側に向かってカールさせた。続けてカップを下方へ押し込み、下方にセットされたカール形状が施された金型の曲面に沿って、基材を内側へ巻き込んだ。加工適性は以下の基準に基づいて評価した。
上記方法にて紙コップを10,000個成形し、トップカール部分の不良対象(割れ、紙層剥離、カール不足、しわ)を検査し、不良率(%)=(不良個数÷紙コップ成形数)×100の式でトップカール部分の不良率を算出した。
【0112】
〔評価基準〕
A:トップカール部分の不良率は1%以下である(実用上問題はない)
B:トップカール部分の不良率は1%を超えて2%以下である(実用上問題はない)
C:トップカール部分の不良率は2%を超えて3%以下である(実用上問題はない)
D:トップカール部分の不良率は3%を超えて5%以下である(実用上問題はない)
E:トップカール部分の不良率は5%を超えて10%以下である(実用上若干問題がある)
F:トップカール部分の不良率は10%を超える(実用上問題がある)
【0113】
【0114】
なお、実施例1~16で得られた耐水性紙を離解して、紙基材を構成するパルプのルンケル比を測定した結果、いずれも0.51以下であった。
表1の結果からわかるように、紙基材の少なくとも一方の面に下塗り層1および耐水性層1をこの順で有し、紙基材を構成するパルプの平均ルンケル比が0.51以下であり、下塗り層1がラテックスおよび顔料を含有し、耐水性層1の塗工量が4.5g/m2以上である実施例1~16の耐水性紙は、冷水および熱水に対する耐水性に優れ、耐油性を有し、ヒートシール性に優れ、さらに、成形性(トップカール加工性)に優れるものであった。
一方、紙基材を構成するパルプのルンケル比が0.51超である比較例1および2の耐水性紙は、耐水性、耐油性およびヒートシール性のいずれにも劣るものであり、さらに、成形性(トップカール加工性)にも劣るものであった。さらに、耐水性層の塗工量が4.5g/m2未満である比較例3の耐水性紙は、耐水性、耐油性およびヒートシール性おいずれにも劣るものであり、成形性(トップカール加工性)にも劣るものであった。