(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094307
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】廃棄物処理方法及び廃棄物処理容器
(51)【国際特許分類】
G21F 9/36 20060101AFI20240702BHJP
G01M 7/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G21F9/36 511B
G01M7/02 Z
G21F9/36 501H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219418
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2022209697
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502040041
【氏名又は名称】日揮株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】高尾 肇
(72)【発明者】
【氏名】山崎 一敏
(72)【発明者】
【氏名】矢野 司
(57)【要約】
【課題】所望の粉粒物の充填の状態を得る。
【解決手段】廃棄物処理方法は、廃棄物81により形成される空隙に粉粒体が充填された状態を得る。振動を加えるための加振装置7に廃棄物処理容器1を取り付ける工程S23と、加振装置7を作動させて廃棄物81及び充填砂82を収容した廃棄物処理容器1に振動を加える工程S5と、を有する。加振装置7に取り付ける工程S23では、廃棄物処理容器1と加振装置7との間であって、廃棄物処理容器1が有する一対の拘束部13Rに挟まれるようにディスタンスピース2が配置された状態で、廃棄物処理容器1を加振装置7に拘束する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物により形成される空隙に粉粒体が充填された状態を得る廃棄物処理方法であって、
振動を加えるための加振装置に廃棄物処理容器を取り付ける工程と、
前記加振装置を作動させて前記廃棄物及び前記粉粒体を収容した前記廃棄物処理容器に振動を加える工程と、を有し、
前記加振装置に取り付ける工程では、前記廃棄物処理容器と前記加振装置との間であって、前記廃棄物処理容器が有する一対の拘束部に挟まれるように突起部が配置された状態で、前記廃棄物処理容器を前記加振装置に拘束する、廃棄物処理方法。
【請求項2】
前記廃棄物処理容器を取り付ける工程の前に実施される前記廃棄物処理容器を準備する工程をさらに含み、
前記廃棄物処理容器を準備する工程では、前記一対の拘束部と、前記一対の拘束部の間に設けられ、前記拘束部よりも前記加振装置側に突出する前記突起部と、を有する前記廃棄物処理容器を準備する、請求項1に記載の廃棄物処理方法。
【請求項3】
前記加振装置に取り付ける工程は、
前記加振装置に前記突起部を設ける工程と、
前記突起部が設けられた前記加振装置に前記廃棄物処理容器を拘束する工程と、を含む、請求項1に記載の廃棄物処理方法。
【請求項4】
前記加振装置に取り付ける工程の前に行われ、前記加振装置が発生する振動の周波数を決定すると共に、前記周波数に基づいて前記突起部の数を決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の廃棄物処理方法。
【請求項5】
前記加振装置に取り付ける工程の前に行われ、前記加振装置が発生する振動の周波数を決定すると共に、前記周波数に基づいて前記突起部が配置される位置を決定する工程をさらに含む、請求項1に記載の廃棄物処理方法。
【請求項6】
前記廃棄物処理容器を取り付ける工程では、前記廃棄物処理容器の底部フランジに設けられた貫通穴にボルトを挿通させて、前記ボルトを前記加振装置の加振テーブルに設けられたネジ穴にネジ込むことによって、前記廃棄物処理容器を前記加振装置に取り付ける、請求項1に記載の廃棄物処理方法。
【請求項7】
前記廃棄物処理容器を取り付ける工程では、前記加振装置の加振テーブルに固定治具が取り付けられ、前記固定治具が前記廃棄物処理容器を前記加振装置の加振テーブルに向けて押し付けることによって、前記廃棄物処理容器を前記加振装置に取り付ける、請求項1に記載の廃棄物処理方法。
【請求項8】
廃棄物により形成される空隙に粉粒体が充填された状態を保存する廃棄物処理容器であって、
容器底板部と、
前記容器底板部から立設して、前記廃棄物により形成される空隙に前記粉粒体が充填された状態を保存する領域を形成する容器壁板部と、を備え、
前記容器底板部は、
振動を発生する加振装置に対して拘束される少なくとも一対の拘束部と、
前記一対の拘束部の間に設けられると共に、前記拘束部よりも前記加振装置側に突出する突起部と、を有する廃棄物処理容器。
【請求項9】
前記容器底板部は、前記廃棄物を収容する領域に面する底板内面に設けられて、前記容器底板部の剛性を高めるリブを有する、請求項8に記載の廃棄物処理容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理方法及び廃棄物処理容器に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性廃棄物は、廃棄物処理容器に入れられてトレンチに埋設される。埋設された廃棄物処理容器の内部に空隙が存在すると、時間の経過と共に強度が低下した容器の内部に、廃棄物処理容器の上部に存在していた埋め戻し材が入り込むことがある。そうすると、廃棄物処理容器の上部の覆土に陥没が生じてしまうことが知られている。
【0003】
覆土の陥没は、廃棄物処理容器の内部に空隙が存在することが原因の一つである。従って、廃棄物処理容器の空隙率を下げることにより、覆土の陥没を抑制できる。特許文献1は、廃棄物処理容器の空隙を粉粒体によって充填する技術を開示する。特許文献1の技術によれば、廃棄物と粉粒体を投入した廃棄物処理容器に振動を加えることによって、廃棄物が形成する空隙に粉粒体を充填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加振の結果として得られる粉粒物の充填の状態は、さまざまな要因の影響を受ける。例えば、振動の周波数も粉粒物の充填の状態に影響を及ぼす要因の一つである。従って、振動を利用して粉粒体を充填させる場合には、加振対象物である廃棄物及び粉粒体が投入された廃棄物処理容器に対して、所望の条件を満たす振動を加えることが望まれる。つまり、当該技術分野にあっては、所望の条件を満たす振動を加振対象物に与えることによって、所望の粉粒物の充填の状態を得ることが可能な技術が望まれている。
【0006】
本発明は、所望の粉粒物の充填の状態を得ることが可能な廃棄物処理方法及び廃棄物処理容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、[1]「廃棄物により形成される空隙に粉粒体が充填された状態を得る廃棄物処理方法であって、振動を加えるための加振装置に廃棄物処理容器を取り付ける工程と、前記加振装置を作動させて前記廃棄物及び前記粉粒体を収容した前記廃棄物処理容器に振動を加える工程と、を有し、前記加振装置に取り付ける工程では、前記廃棄物処理容器と前記加振装置との間であって、前記廃棄物処理容器が有する一対の拘束部に挟まれるように突起部が配置された状態で、前記廃棄物処理容器を前記加振装置に拘束する、廃棄物処理方法。」である。
【0008】
廃棄物処理容器を加振装置に拘束したとき、廃棄物処理容器と加振装置との間であって、一対の拘束部に挟まれるように突起部が配置された状態となる。この状態で廃棄物処理容器を加振装置に拘束すると、容器底板部の一部が突起部によって内側へ押し上げられるように変形する。この変形に起因して容器底板部の内部の張力が発生する。張力が発生した容器底板部の固有周波数は、張力が発生していない容器底板部の固有周波数よりも高まる。従って、加振装置から廃棄物処理容器へ印加される振動が容器底板部において減衰することを抑制できる。その結果、所定の条件を満たす振動を廃棄物処理容器に収容された粉粒物及び廃棄物に与えることができるので、所望の粉粒物の充填の状態を得ることができる。
【0009】
本発明の一形態は、[2]「前記廃棄物処理容器を取り付ける工程の前に実施される前記廃棄物処理容器を準備する工程をさらに含み、前記廃棄物処理容器を準備する工程では、前記一対の拘束部と、前記一対の拘束部の間に設けられ、前記拘束部よりも前記加振装置側に突出する前記突起部と、を有する前記廃棄物処理容器を準備する、上記[1]に記載の廃棄物処理方法。」である。この工程によれば、加振装置に突起部を設けることなく、容器底板部に張力を発生させた状態を得ることができる。
【0010】
本発明の一形態は、[3]「前記加振装置に取り付ける工程は、前記加振装置に前記突起部を設ける工程と、前記突起部が設けられた前記加振装置に前記廃棄物処理容器を拘束する工程と、を含む、上記[1]に記載の廃棄物処理方法。」である。この工程によれば、廃棄物処理容器に突起部を設けることなく、容器底板部に張力を発生させた状態を得ることができる。
【0011】
本発明の一形態は、[4]「前記加振装置に取り付ける工程の前に行われ、前記加振装置が発生する振動の周波数を決定すると共に、前記周波数に基づいて前記突起部の数を決定する工程をさらに含む、上記[1]~[3]の何れか一項に記載の廃棄物処理方法。」である。この工程によれば、加振装置から印加される振動の周波数に応じた突起部の数を決定することができる。
【0012】
本発明の一形態は、[5]「前記加振装置に取り付ける工程の前に行われ、前記加振装置が発生する振動の周波数を決定すると共に、前記周波数に基づいて前記突起部が配置される位置を決定する工程をさらに含む、上記[1]~[4]の何れか一項に記載の廃棄物処理方法。」である。この工程によれば、加振装置から印加される振動の周波数に応じた突起部の位置を決定することができる。
【0013】
本発明の一形態は、[6]「前記廃棄物処理容器を取り付ける工程では、前記廃棄物処理容器の底部フランジに設けられた貫通穴にボルトを挿通させて、前記ボルトを前記加振装置の加振テーブルに設けられたネジ穴にネジ込むことによって、前記廃棄物処理容器を前記加振装置に取り付ける、上記[1]に記載の廃棄物処理方法。」である。この工程によれば、廃棄物処理容器を容易に加振テーブルに取り付けることができる。
【0014】
本発明の一形態は、[7]「前記廃棄物処理容器を取り付ける工程では、前記加振装置の加振テーブルに固定治具が取り付けられ、前記固定治具が前記廃棄物処理容器を前記加振装置の加振テーブルに向けて押し付けることによって、前記廃棄物処理容器を前記加振装置に取り付ける、上記[1]に記載の廃棄物処理方法。」である。この工程によっても、廃棄物処理容器を容易に加振テーブルに取り付けることができる。
【0015】
本発明の別の形態は、[8]「廃棄物により形成される空隙に粉粒体が充填された状態を保存する廃棄物処理容器であって、容器底板部と、前記容器底板部から立設して、前記廃棄物により形成される空隙に前記粉粒体が充填された状態を保存する領域を形成する容器壁板部と、を備え、前記容器底板部は、振動を発生する加振装置に対して拘束される少なくとも一対の拘束部と、前記一対の拘束部の間に設けられると共に、前記拘束部よりも前記加振装置側に突出する突起部と、を有する廃棄物処理容器。」である。
【0016】
この容器によっても、容器底板部に張力を発生させた状態で振動を印加することができる。その結果、所定の条件を満たす振動を廃棄物処理容器に収容された粉粒物及び廃棄物に与えることができるので、所望の粉粒物の充填の状態を得ることができる。
【0017】
本発明の別の形態は、[9]「前記容器底板部は、前記廃棄物を収容する領域に面する底板内面に設けられて、前記容器底板部の剛性を高めるリブを有する、上記[8]に記載の廃棄物処理容器。」である。この構成によれば、加振装置に廃棄物処理容器を取り付けていない状態であっても容器底板部の剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、所望の粉粒物の充填の状態を得ることが可能な廃棄物処理方法及び廃棄物処理容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態の廃棄物処理容器が用いられる施設を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の廃棄物処理方法に用いる容器を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、開放された廃棄物処理容器を加振装置に固定した様子を示す。
【
図4】
図4(a)は、参考形態としての廃棄物処理容器が加振テーブルに拘束された部分を拡大して示す断面図である。
図4(b)は、実施形態としての廃棄物処理容器が加振テーブルに拘束された部分を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図5は、参考形態としての廃棄物処理容器に振動を印加した場合の応答特性と、実施形態としての廃棄物処理容器に振動を印加した場合の応答特性と、を例示する線図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の廃棄物処理方法の主要な工程を示すフロー図である。
【
図7】
図7(a)は、ディスタンスピースの第1の例示である。
図7(b)は、ディスタンスピースの第2の例示である。
【
図8】
図8は、加振テーブルにディスタンスピースを配置する工程を説明する斜視図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の廃棄物処理方法に用いる容器を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の廃棄物処理方法の主要な工程を示すフロー図である。
【
図11】
図11(a)は、変形例1の廃棄物処理容器を示す平面図である。
図11(b)は、変形例2の廃棄物処理容器を示す平面図である。
【
図12】
図12(a)は、変形例3の廃棄物処理容器を示す平面図である。
図12(b)は、変形例4の廃棄物処理容器を示す平面図である。
【
図13】
図13(a)は、変形例5の廃棄物処理容器を示す平面図である。
図13(b)は、変形例6の廃棄物処理容器を示す平面図である。
【
図14】
図14(a)は、変形例7の廃棄物処理容器を示す平面図である。
図14(b)は、変形例8の廃棄物処理容器を示す平面図である。
【
図15】
図15は、変形例9の廃棄物処理容器を示す平面図である。
【
図16】
図16は、開放された廃棄物処理容器を加振装置に取り付ける構成の別の例示である。
【
図17】
図17は、実施例1及び比較例1の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
<第1実施形態>
いわゆる放射性廃棄物は、その放射性のレベルに応じた処分方法が定められている。放射性廃棄物のうち、高レベル放射性廃棄物に該当しないものは、低レベル放射性廃棄物と呼ばれている。以下の説明において、「放射性廃棄物」及び「廃棄物」は、低レベル放射性廃棄物を意味するものとする。低レベル放射性廃棄物の処分方法として、トレンチ処分及びピット処分がある。
【0022】
図1に示すようにトレンチ処分は、比較的浅い地中に放射性廃棄物を収容した廃棄物処理容器1を埋設する。廃棄物処理容器1には埋め戻し材101が被せられる。さらに、廃棄物処理容器1の上には、覆土102が被せられる。トレンチ処分では、地中に人工構造物を設けない。ピット処分も比較的浅い地中に放射性廃棄物を埋設する。ピット処分では、地中にコンクリート製のピットを設ける。
【0023】
放射性廃棄物は、容器に収容された状態で埋設される。放射性廃棄物を収容する容器は、放射性廃棄物処理容器である。以下の説明では、放射性廃棄物処理容器を「廃棄物処理容器」と称する。
【0024】
図2に示すように、廃棄物処理容器1は、矩形の箱である。廃棄物処理容器1は、薄い金属板により構成されている。廃棄物処理容器1は、廃棄物81(
図3参照)を収容する。廃棄物81の形状は、一律ではない。従って、複数の廃棄物81を廃棄物処理容器1に投入した場合には、廃棄物81の間に空隙が生じる。また、パイプのように廃棄物81自体が所定の空間を形成することもある。放射性廃棄物の処理のための基準によれば、廃棄物81を収容した廃棄物処理容器1の内部に廃棄物埋設地の安全機能を損なうおそれのある空隙が残らないように措置することが定められている。そこで、この空隙には、充填砂82(
図3参照)といった粉粒体が充填される。
【0025】
廃棄物処理容器1は、容器壁板部11と、容器蓋部12と、容器底板部13と、を備えている。
【0026】
容器壁板部11は、容器蓋部12及び容器底板部13と共に、廃棄物81及び充填砂82を収容する領域を形成する。容器壁板部11は、容器底板部13から立設し、埋設状態において廃棄物処理容器1の外周壁を形成する。容器壁板部11単体では、上面及び下面は、開放されている。
【0027】
容器蓋部12は、容器壁板部11の上面を閉鎖する。容器蓋部12は、廃棄物処理容器1に廃棄物81を配置するとき、及び、空隙に充填砂82を充填させるときは、取り外されている。これらの工程が終了したのちに、容器蓋部12は、容器壁板部11に被せられる。つまり、容器蓋部12は、容器壁板部11に対して着脱が可能である。
【0028】
容器底板部13は、容器壁板部11の下面を閉鎖する。容器底板部13は、容器壁板部11に対して固定されている。従って、容器底板部13は、容器蓋部12のように取り付けたり、取り外したりすることがない。容器壁板部11及び容器底板部13が一体化されたものを、以下、「開放された廃棄物処理容器1」と称することがある。「開放された廃棄物処理容器1」は、容器蓋部12を含まない。容器壁板部11及び容器底板部13が一体化されたものに容器蓋部12が被せられたものを「閉鎖された廃棄物処理容器1」と称することもある。廃棄物処理容器1において容器蓋部12の有無を区別しない場合には、単に「廃棄物処理容器1」と称する。
【0029】
容器底板部13は、底部底板131と、底部フランジ132と、を有する。底部底板131は、容器壁板部11を実質的に閉鎖する平板である。底部底板131は、容器壁板部11によって囲まれた領域を向く底板内面13aと、底板内面13aに対して逆向きの底板外面13bと、を有する。底板内面13aは、内向きの面なので、廃棄物81や充填砂82に触れる。底板外面13bは、外向きの面なので、後述する加振装置7に触れることがある。また、底板外面13bは、埋設されたときに埋め戻し材101などに触れることもある。
【0030】
底部フランジ132は、容器壁板部11から突出する枠状の部位である。底部フランジ132は、例えば、開放された廃棄物処理容器1を加振装置7に取り付けるときに用いられる。底部フランジ132の角部のそれぞれには、貫通穴13Hが設けられている。この貫通穴13Hには、ボルト13Bが挿通される。ボルト13Bの先端部が加振装置7にネジ込まれることによって、開放された廃棄物処理容器1が加振装置7に固定される。
【0031】
次に、廃棄物81が収められた廃棄物処理容器1を得るための廃棄物処理方法について説明する。この廃棄物処理方法によれば、廃棄物81によって形成された空隙に充填砂82が充填されることによって、要求される空隙率よりも小さい空隙率の廃棄物処理容器1を得ることができる。
【0032】
廃棄物81が投入された廃棄物処理容器1において、単に充填砂82を被せただけでは、充填砂82は空隙に十分に充填されない。そこで、廃棄物81及び充填砂82が投入された廃棄物処理容器1に振動を加える。この振動によって、充填砂82は、空隙に入り込む。
【0033】
図3は、開放された廃棄物処理容器1を加振装置7に固定した様子を示す。加振装置7は、装置本体71と加振テーブル72と、を有する。加振テーブル72は、装置本体71を基準として振動する。振動の方向は、X方向、Y方向、Z方向のいずれでも選択できる。また、それぞれの方向の成分を組み合わせて、円振動とすることも可能である。
【0034】
加振テーブル72のテーブル主面72sには、複数のネジ穴72H(
図8参照)が設けられている。このネジ穴72Hを利用して、加振テーブル72に振動を印加する対象物や対象物を拘束する治具などを取り付ける。
図3の例示では、開放された廃棄物処理容器1が加振テーブル72に対して固定されている。さらに、
図3の例示では、側面固定治具6も加振テーブル72に対して固定されている。この側面固定治具6は、面内方向(X方向、Y方向)に沿う廃棄物処理容器1の変形を抑制する。側面固定治具6は、治具本体61と、拘束ボルト61Bとを有する。この構成によれば、廃棄物処理容器1のZ方向(面外方向)への変位はボルト13Bによって拘束され、廃棄物処理容器1のX方向及びY方向(面内方向)への変位は拘束ボルト61Bによって拘束される。
【0035】
図4(a)は、参考形態としての廃棄物処理容器1が加振テーブル72に拘束された部分を拡大して示す断面図である。
図4(a)に示す参考形態において、加振テーブル72が振動したとする。この振動は、加振テーブル72の法線方向(Z方向)の成分を含むものとする。廃棄物処理容器1が加振テーブル72に対して拘束されていると定義できる拘束部13Rは、ボルト13Bの部位である。廃棄物処理容器1が加振テーブル72に対して拘束されているとは、振動の印加によって廃棄物処理容器1の底部フランジ132と加振テーブル72との位置が相対的に変化しないことをいう。一方、一対のボルト13Bの間に存在する底部底板131は、加振テーブル72に対して拘束されていない。従って、底部底板131は、振動の印加によって加振テーブル72に対する位置が変化することがある。
【0036】
より詳細には、底部底板131は、入力される振動の周波数と底部底板131の固有周波数に応じて振動する。例えば、
図5は、1自由度系の振動の応答曲線を示す。グラフG5aは、参考形態としての廃棄物処理容器1における底部底板131の応答曲線であるとする。グラフG5aが含むピークP5aは、底部底板131の固有周波数F5aに対応する。グラフG5aによって示される応答特性を有する底部底板131に対して、加振周波数F5sが60Hzであったとする。そうすると、加振周波数F5sは、固有周波数F5aよりも大きいので、応答ゲインは、1より小さくなる。換言すると、加振テーブル72の振動加速度に対して、底部底板131の振動加速度が小さくなる。つまり、参考形態としての廃棄物処理容器1に振動を印加した場合には、想定した条件(加速度)とは異なる振動が廃棄物81及び充填砂82に印加されることになる。
【0037】
これは、底部底板131が薄い金属板によって形成されていることに起因する。薄い平板の固有周波数は、一般には低くなりやすい。
【0038】
図4(b)は、実施形態としての廃棄物処理容器1が加振テーブル72に拘束された部分を拡大して示す断面図である。参考形態との相違は、底部底板131の中央部分に突起部であるディスタンスピース2(突起部)を設けている点である。ディスタンスピース2によって、底部底板131が上方に向かって押し上げられる。底部底板131の両端は、ボルト13Bによって拘束されている。従って、底部底板131の一部が押し上げられることによって、底部底板131に張力TFが発生することになる。この張力TFは、底部底板131の固有周波数を高める効果をもたらす。さらに、ディスタンスピース2と底部底板131とが接触する箇所は、振動の印加によって相対的な位置の変化を生じないとみなすことができる。そうすると、ディスタンスピース2と底部底板131とが接触する箇所は、新たな拘束部2Rとしてみなすことができる。拘束部間の距離が短くなるほど、固有周波数が高まる傾向にある。従って、
図4(b)に示す構成では、底部底板131の固有周波数F5bが、
図4(a)に示す構成における固有周波数F5aよりも高くなっている。
【0039】
固有周波数の高まりは、
図5のグラフG5bに示す応答曲線によってその効果を理解することができる。グラフG5bは、
図4(b)に示す構成における底部底板131の応答特性を示す。グラフG5bによれば、固有周波数F5bに対応するピークP5bは、ピークP5aよりも高周波側に位置する。また、グラフG5bによれば、加振周波数F5sが60Hzであった場合には、その応答ゲインが1であることがわかる。従って、加振テーブル72の振動加速度と、同じ大きさの振動加速度が底部底板131に発生する。その結果、実施形態としての廃棄物処理容器1に振動を印加した場合には、想定した条件(加速度)と同じ振動が廃棄物81及び充填砂82に印加されることになる。
【0040】
つまり、本実施形態の廃棄物処理方法では、廃棄物処理容器1にはなんらの追加構成を設けることなく、振動を印加するタイミング(具体的には、廃棄物処理容器1を加振装置7に固定しているとき)だけ、廃棄物処理容器1の底部底板131の固有周波数を高める。その結果、振動を減衰させることなく廃棄物処理容器1に収容された内容物に印加することができる。
【0041】
以下、廃棄物処理方法の具体的な工程について、
図6のフロー図を参照しながら説明する。
【0042】
まず、作業条件を設定する(工程S1)。作業条件の設定(工程S1)は、振動条件の設定(工程S11)と、ディスタンスピース2に関する設定(工程S12)と、を含む。振動条件は、加振周波数と加振加速度とを含んでよい。また、振動条件は、振動を印加する時間なども条件として含んでよい。加振周波数及び加振加速度は、例えば、充填砂82の粒径などに基づいて設定される。
【0043】
ディスタンスピース2の設定(工程S12)とは、加振テーブル72に配置されるディスタンスピース2の数の選択を含む。さらに、ディスタンスピース2の設定とは、加振テーブル72におけるディスタンスピース2の位置の設定を含む。ディスタンスピース2の配置のいくつかの例示は、変形例として後述する。
【0044】
図7(a)及び
図7(b)は、突起部であるディスタンスピース2A、2Bの例示である。
図7(a)に示すように、ディスタンスピース2Aは、ピース首部2aと、ピース頭部2bと、を有する。ピース首部2aの形状は、円柱状である。ピース首部2aは、加振テーブル72のネジ穴に差し込まれる。ピース首部2aの外周面には、加振テーブル72のネジ穴に対応する雄ネジが設けられてもよい。また、ピース首部2aの外周面は、雄ネジが設けられておらず、滑らかな円筒面であってもよい。ピース首部2aの上端には、ピース頭部2bが固定されている。ピース頭部2bの形状もおおむね円筒状であるが、ピース頭部2bの外径は、ピース首部2aよりも大きい。ピース頭部2bは、頭部主面221Aと、頭部側面222と、頭部裏面223と、を含む。頭部主面221Aは、廃棄物処理容器1Aの底板外面13bに当接する。頭部主面221Aは、例えば、凸状の球面であってもよい。また、
図7(b)のディスタンスピース2Bのように、頭部主面221Bは、平面であってもよい。頭部側面222は、円筒面である。頭部側面222の高さは、ピース頭部2bの高さを規定する。ピース頭部2bの高さは、加振テーブル72のテーブル主面72sから頭部主面221Aの頂部までの距離である。ピース頭部2bの高さが高いほど、底部底板131に生じる張力TFが大きくなる。従って、ピース頭部2bの高さは、底部底板131の固有周波数の目標値に対応して決定されてもよい。頭部裏面223は、テーブル主面72sに当接する。
【0045】
なお、ディスタンスピース2は、底部底板131の拘束された2点の間において、底部底板131の一部を持ち上げることができればよい。従って、ピース頭部2bの形状には、特に制限はない。例えば、頭部主面は、
図7(a)のように球面であってもよいし、
図7(b)のように平面であってもよい。また、ピース頭部2bの形状は、円柱であってもよいし、角柱(例えば六角柱)であってもよい。
【0046】
次に、廃棄物処理容器1を取り付けるための工程S2を実施する。まず、ディスタンスピース2を加振テーブル72に取り付ける(工程S21)。例えば、
図8に示すように、開放された廃棄物処理容器1が固定される領域において、その領域の中央にディスタンスピース2を配置する。なお、ディスタンスピース2は、工程S21ではなく、例えば、工程S11においてディスタンスピース2の設定と共に実行してもよい。
【0047】
続いて、廃棄物を収納した廃棄物処理容器1を加振テーブル72に取り付ける(工程S23)。まず、開放された廃棄物処理容器1を加振テーブル72の上に載置する。次に、底部フランジ132に設けられている貫通穴13Hにボルト13Bを差し込むと共に加振テーブル72のネジ穴にネジ込む。ボルト13Bのネジ込みは、底部フランジ132が加振テーブル72に密着するまで行われる。
【0048】
次に、充填砂82を開放された廃棄物処理容器1に投入する(工程S3)。
【0049】
次に、振動を印加する(工程S4)。振動は、工程S11で定めた時間が経過したことを条件として自動停止させてもよい(工程S5)。また、振動は、作業員の操作によって手動停止させてもよい(工程S5)。作業員は、充填砂82が空隙に流入していく様子を目視で観察することによって、停止のタイミングを判断してもよい。
【0050】
次に、充填の状態が条件を満たしたか否かを判定する(工程S6)。充填の状態を示す条件として、目標空隙率を用いてもよい。また、充填の状態を示す条件として、充填砂の目標重量を用いてもよい。
【0051】
充填の状態が条件を満たしていない場合(工程S6:NO)、再度振動を印加する(工程S4)。振動を印加する前に、必要に応じて、充填砂82を追加してもよい(工程S8)。また、振動条件を変更してもよい。
【0052】
充填の状態が条件を満たしている場合(工程S6:YES)、充填の処理が完了したと判定する。そして、充填済みの廃棄物処理容器1を加振装置7から取り外す(工程S7)。
【0053】
以上の工程S1~S8を実施することにより、所定の空隙率を有する廃棄物処理容器1を得ることができる。
【0054】
<作用効果>
廃棄物処理方法は、廃棄物81により形成される空隙に充填砂82が充填された状態を得る。廃棄物処理方法は、振動を加えるための加振装置7に廃棄物処理容器1を取り付ける工程S2と、加振装置7を作動させて廃棄物81及び充填砂82を収容した廃棄物処理容器1に振動を加える工程S5と、を有する。加振装置7に取り付ける工程S2では、廃棄物処理容器1と加振装置7との間であって、廃棄物処理容器1が有する一対の拘束部13Rに挟まれるようにディスタンスピース2が配置された状態で、廃棄物処理容器1を加振装置7に拘束する。
【0055】
廃棄物処理容器1を加振装置7に拘束したとき、廃棄物処理容器1と加振装置7との間であって、一対の拘束部13Rに挟まれるようにディスタンスピース2が配置された状態となる。この状態で廃棄物処理容器1を加振装置7に拘束すると、容器底板部13の一部がディスタンスピース2によって上方へ押し上げられるように変形する。この変形に起因して容器底板部13の内部の張力TFが発生する。張力TFが発生した容器底板部13の固有周波数は、張力TFが発生していない容器底板部13の固有周波数よりも高まる。従って、加振装置7から廃棄物処理容器1へ印加される振動が容器底板部13において減衰されることを抑制できる。その結果、廃棄物処理容器1の収容物に所定の振動を与えることができるので、所望の充填砂82の充填の状態を得ることができる。
【0056】
加振装置7に取り付ける工程S2は、加振装置7にディスタンスピース2を設ける工程S21と、ディスタンスピース2が設けられた加振装置7に廃棄物処理容器1を拘束する工程S23と、を含む。これらの工程S21、S23によれば、廃棄物処理容器1にディスタンスピース2を設けることなく、容器底板部13に張力TFを発生させた状態を得ることができる。
【0057】
廃棄物処理方法は、加振装置7に取り付ける工程S2の前に行われ、加振装置7が発生する振動の周波数F5sを決定すると共に、周波数F5sに基づいてディスタンスピース2の数を決定する工程S12をさらに含む。この工程S12によれば、加振装置7から印加される振動の周波数F5sに応じたディスタンスピース2の数を決定することができる。
【0058】
廃棄物処理方法は、加振装置7に取り付ける工程S2の前に行われ、加振装置7が発生する振動の周波数F5sを決定すると共に、周波数F5sに基づいてディスタンスピース2が配置される位置を決定する工程S12をさらに含む。この工程S12によれば、加振装置7から印加される振動の周波数F5sに応じたディスタンスピース2の位置を決定することができる。
【0059】
廃棄物処理容器1を取り付ける工程S2では、廃棄物処理容器1の底部フランジ132に設けられた貫通穴13Hにボルト13Bを挿通させて、ボルト13Bを加振装置7の加振テーブル72に設けられたネジ穴72Hにネジ込むことによって、廃棄物処理容器1を加振装置7に取り付ける。この工程S2によれば、廃棄物処理容器1を容易に加振テーブル72に取り付けることができる。
【0060】
<第2実施形態>
廃棄物処理方法では、廃棄物処理容器1を加振装置7に固定した状態であるときに、底部底板131に張力TFが発生していればよい。この張力TFは、底部底板131と加振テーブル72との間にディスタンスピース2が存在していればよい。従って、ディスタンスピース2は、第1実施形態で説明したように、加振テーブル72に取り付けられていてもよい。しかし、ディスタンスピース2は、加振テーブル72ではなく、廃棄物処理容器1に取り付けられていてもよい。
【0061】
図9に示すように、第2実施形態の廃棄物処理方法では、ディスタンスピース2Cが設けられた廃棄物処理容器1Aを用いる。ディスタンスピース2Cは、底板外面13bに予め固定されている。
【0062】
そうすると、
図10のフロー図に示すように、廃棄物処理容器1Aを加振装置7に取り付ける工程S2Aは、ディスタンスピース2を加振テーブル72に配置する工程S21に変えて、
図9に示す廃棄物処理容器1Aを準備する工程S22を有する。そのほかの工程S3~S8は、第1実施形態のフロー図と同じであるから、詳細な説明は省略する。
【0063】
<作用効果>
廃棄物処理容器1Aは、廃棄物81により形成される空隙に充填砂82が充填された状態を保存する。廃棄物処理容器1Aは、容器底板部13と、容器底板部13から立設して、廃棄物81により形成される空隙に充填砂82が充填された状態を保存する領域を形成する容器壁板部11と、を備える。容器底板部13は、振動を発生する加振装置7に対して拘束される少なくとも一対の拘束部13Rと、一対の拘束部13Rの間に設けられると共に、拘束部13Rよりも加振装置7の側に突出するディスタンスピース2Cと、を有する。
【0064】
第2実施形態の廃棄物処理容器1Aを準備する工程S2Aでは、一対の拘束部13Rと、一対の拘束部13Rの間に設けられ、拘束部13Rよりも加振装置7の側に突出するディスタンスピース2Cと、を有する廃棄物処理容器1Aを準備する。この工程S2Aによれば、加振装置7にディスタンスピース2Cを設けることなく、容器底板部13に張力TFを発生させた状態を得ることができる。
【0065】
本発明である廃棄物処理方法及び廃棄物処理容器は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0066】
所望の振動を収容物に印加するという作用効果は、底部底板131の剛性(固有周波数)を高めることによって得られる。例えば、底部底板131の剛性は、いわゆるリブ(桁)を設けることによっても高めることができる。
図11(a)、
図11(b)、
図12(a)及び
図12(b)は、変形例1~4の廃棄物処理容器1B、1C、1D、1Eを平面視した図である。
【0067】
変形例1~4の廃棄物処理容器1B、1C、1D、1Eは、4本のリブ141、142、143、144を有する。なお、リブの数は、底部底板131に要求される固有周波数に応じて適宜選択してよい。4本のリブ141、142、143、144は、底部底板131の裏面に固定されている。4本のリブ141、142、143、144が配置された底板内面13aは、9個の領域A1~A9に分割される。変形例1の廃棄物処理容器1B(
図11(a)参照)は、中央の領域A5に設けられたディスタンスピース21も備えている。変形例2の廃棄物処理容器1C(
図11(b)参照)は、加振方向DFに対して直交する方向に並ぶ3つの領域A2、A5、A8に設けられた3つのディスタンスピース21、22、23も備えている。変形例3の廃棄物処理容器1D(
図12(a)参照)は、加振方向DFに対して平行である方向に並ぶ3つの領域A4、A5、A6に設けられた3つのディスタンスピース21、22、23も備えている。変形例4の廃棄物処理容器1E(
図12(b)参照)は、9つの領域A1~A9の全てに設けられた9つのディスタンスピース21~29も備えている。
【0068】
なお、ディスタンスピース21~29は、廃棄物処理容器1B、1C、1D、1Eではなく、加振テーブル72に設けられていてもよい。この場合には、廃棄物処理容器は、4本のリブ141、142、143、144を有するが、ディスタンスピース21~29を有しない構成となる。
【0069】
第1実施形態では、加振テーブル72において、廃棄物処理容器1の底部底板131の中央に対応する位置にディスタンスピース2を設けた。ディスタンスピース2は、振動の条件に応じて様々な数と配置とを選択することができる。例えば、振動の周波数が高まると、底部底板131に要求される固有周波数も高くなる。そこで、ディスタンスピース2によって形成される追加拘束点の数を増やす。追加拘束点の数が増えると、拘束点間の距離が短くなるので、さらに固有周波数を高めることが可能になる。
【0070】
変形例5~9では、複数のディスタンスピース21~29を加振テーブル72に配置する構成を例示する。
図13(a)、
図13(b)、
図14(a)、
図14(b)及び
図15は、複数のディスタンスピース2を加振テーブル72に配置する構成のいくつかの変形例である。なお、複数のディスタンスピース21~26は、加振テーブル72ではなく、廃棄物処理容器に設けられてもよい。
【0071】
変形例5、6の例示では、3個のディスタンスピース21、22、23を加振テーブル72に設ける。変形例5の例示(
図13(a)参照)では、3個のディスタンスピース21、22、23は、加振方向DFと直交する方向に並ぶ。変形例6の例示(
図13(b)参照)では、3個のディスタンスピース2は、加振方向DFと平行である方向に並ぶ。
【0072】
変形例7、8の例示では、6個のディスタンスピース21~26を加振テーブル72に設ける。変形例7の例示(
図14(a)参照)では、3個のディスタンスピース21~23は、加振方向DFと直交する方向に並ぶ。別の3個のディスタンスピース24~26も、加振方向DFと直交する方向に並ぶ。変形例8の例示(
図14(b)参照)では、3個のディスタンスピース21~23は、加振方向DFと平行である方向に並ぶ。別の3個のディスタンスピース24~26も、加振方向DFと平行である方向に並ぶ。
【0073】
変形例9の例示(
図15参照)では、4個のディスタンスピース2を加振テーブル72に設ける。変形例9の例示では、4個のディスタンスピース2は、矩形の角部に対応する位置にそれぞれ設けられる。例えば、容器壁板部11からディスタンスピース2までの距離は、X方向において容器壁板部11の第1の辺の1/3であり、Y方向において容器壁板部11の第2の辺の1/3であってもよい。
【0074】
実施形態では、廃棄物処理容器1を加振テーブル72に取り付ける構成として、ボルト13Bを用いる例を説明した。廃棄物処理容器1を加振テーブル72に取り付ける構成は、そのほかの構成を採用してもよい。
図16に示すように、三軸方向固定治具6A(固定治具)は、面内方向(X方向、Y方向)への拘束に加えて、さらに面外方向(Z方向)について廃棄物処理容器1を拘束する機能を有してもよい。三軸方向固定治具6Aは、面外方向固定部62を有する。面外方向固定部62は、一対の治具本体61の間に架け渡された梁621と、梁621に設けられたボルト62Bと、を有する。廃棄物処理容器1の上部の開口には、蓋状固定治具65が配置されている。面外方向固定部62のボルト62Bの先端は、蓋状固定治具65に当接する。ボルト62Bが梁621にネジ込まれることにより、ボルト62Bは、蓋状固定治具65を加振テーブル72に押し付ける力を発生する。この力によって、面外方向(Z方向)について廃棄物処理容器1は、加振テーブル72に対して拘束される。
【0075】
廃棄物処理容器を取り付ける工程では、加振装置7の加振テーブル72に三軸方向固定治具6Aが取り付けられ、三軸方向固定治具6Aが廃棄物処理容器1を加振装置7の加振テーブル72に向けて押し付けることによって、廃棄物処理容器1を加振装置7に取り付ける。この工程によっても、廃棄物処理容器1を容易に加振テーブル72に取り付けることができる。
【0076】
<ディスタンスピースの有効性の確認試験>
ディスタンスピース2の有効性を確認する実施例1の試験を行った。また、実施例1の結果との対比のため、ディスタンスピース2を用いない比較例1の試験も行った。実施例1及び比較例1の相違は、ディスタンスピース2の有無のみである。試験に用いた加振装置7や廃棄物処理容器1の容器底板部13を模擬する模擬底板の寸法などは、実施例1及び比較例1で共通である。
【0077】
加振装置7の加振テーブル72に、容器底板部13を模擬する模擬底板を取り付けるためのベースプレートを取り付けた。このベースプレートには、ディスタンスピース2を着脱可能な複数の取付穴を設けた。実施例1では、模擬底板の中央にディスタンスピース2が位置するように、ベースプレートの取付穴にディスタンスピース2を差し込んだ。ベースプレートの表面から突出するディスタンスピース2の長さは、5mmとした。そして、ベースプレートに対して模擬底板の4つの角部をボルトにより固定した。さらに、模擬底板の中央部分に変位計を取り付けた。この構成に対して、加振装置7を動作させ、模擬底板に振動を加えた。振動は、ベースプレートの振幅を制御対象とし、10秒経過するごとに、ベースプレートの振幅を所定の量だけ増加させた。より詳細には、ベースプレートの振幅は、試験開始時(0秒)から10秒まではゼロとし、10秒経過するごとに、ベースプレートの振幅を増加させながら、トータルで110秒間だけ加振装置7を動作させた。
【0078】
図17のグラフは、実施例1及び比較例1の結果を示す。グラフの横軸は、加振時間を示す。グラフの縦軸は、変位計で計測された模擬底板の変位量を示す。符号G17aは、実施例1の結果を示す。符号G17bは、比較例1の結果を示す。
【0079】
まず、比較例1の結果(符号G17b)を参照する。最も小さい振幅の振動が与えられた期間(10秒から20秒)において、模擬底板の中央部の振幅が420μm程度であることがわかった。次の期間(20秒から30秒)では模擬底板の中央部の振幅が840μm程度であり、さらに次の期間(30秒から40秒)では1200μm程度であることがわかった。
【0080】
次に、実施例1の結果(符号G17a)を参照する。例えば、比較例1ではある期間(30秒から40秒)において1200μm程度の振幅が生じていたが、実施例1ではある期間(30秒から40秒)における振幅は100μm程度であることがわかった。
【0081】
実施例1と比較例1との対比によって、ディスタンスピース2を設置することにより、模擬底板の振幅を1/10程度に低減できることがわかった。これは、ディスタンスピース2を設置することにより、
図4(b)に例示するような張力TFが模擬底板に発生し、模擬底板に印加される振動エネルギーの減衰が抑制された結果、模擬底板の変位量が大きく低減したと考えられる。従って、廃棄物処理容器1の容器底板部13の一部をディスタンスピース2で持ち上げることにより、容器底板部13に張力TFを発生させ、その張力TFによって振動エネルギーの減衰が抑制できることが確認できた。
【符号の説明】
【0082】
1,1A…廃棄物処理容器、11…容器壁板部、12…容器蓋部、13…容器底板部、131…底部底板、132…底部フランジ、13a…底板内面、13b…底板外面、13B…ボルト、13H…貫通穴、13R,2R…拘束部、141,142,143,144…リブ、2,2A,2B,2C,21~26…ディスタンスピース(突起部)、6…側面固定治具、6A…三軸方向固定治具、7…加振装置、72…加振テーブル、81…廃棄物、82…充填砂(粉粒体)、TF…張力。