(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094310
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】アパルタミドの固体分散体を含む薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4439 20060101AFI20240702BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240702BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240702BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240702BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240702BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P43/00 111
A61K47/38
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219735
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2022210654
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 正哉
(72)【発明者】
【氏名】千々石 雅志
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076EE32
4C076EE33
4C076FF33
4C076GG09
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA36
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA02
4C086ZC42
(57)【要約】
【課題】本発明は、アンドロゲン受容体アンタゴニストであるアパルタミドに特定のポリマー等を加えた固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物、その製造方法、およびアパルタミドの溶解方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、アパルタミドと、種々のポリマー等、特にカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)、またはそれらと界面活性剤との新規な組み合わせの固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体形態である、
(i)アパルタミド、ならびに
(ii)カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、
を含有する固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
【請求項2】
さらに、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を含有する、請求項1に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
【請求項3】
さらに、
(iii)界面活性剤
を含む、請求項1または2に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
【請求項4】
アパルタミド、およびカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)を含有する固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
【請求項5】
さらに、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を含有する、請求項4に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
【請求項6】
アパルタミドと、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)との重量比が、アパルタミド100重量部に対して、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)が300重量部以下であって、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)が100重量部未満である
請求項1または2に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
【請求項7】
顆粒、錠剤、ペレット、またはカプセル剤である、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物の製造方法であって、
a)アパルタミドを、溶媒中に溶解し、
b)a)の溶液にカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を溶解し、
c)b)の溶液から、アパルタミドの固体分散体を調製し;
d)任意に、顆粒化、錠剤化、ペレット化及びカプセル化から選択される追加の工程を実施する;
ことを含む、前記製造方法。
【請求項9】
界面活性剤をステップa)からc)のいずれか1つでさらに添加する、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
(i)アパルタミド、ならびに
(ii)カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)
を含有する請求項1または2に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物とする、
アパルタミドの溶解性改善方法。
【請求項11】
さらに、水溶液中へのアパルタミドの最大溶解度が、40μg/mL以上である、請求項10に記載の溶解性改善方法。
【請求項12】
アパルタミド、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を含有する固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物であって、アパルタミド100重量部に対して、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)が100重量部未満である固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
【請求項13】
アパルタミド、およびポリマーを含有する固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物であって、アパルタミド100重量部に対して、ポリマーが200重量部未満である固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
【請求項14】
アパルタミドが、水溶液に溶解時のアパルタミドの最大溶解度が、40μg/mL以上であるように調整された、請求項1、2、4、5、12、および13のいずれか一項に記載の固体分散体を含む薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンドロゲン受容体アンタゴニストであるアパルタミドに特定のポリマー等を加えた固体分散体を含む薬学的組成物、その製造方法、およびアパルタミドの溶解方法に関する。前記薬学的組成物は前立腺癌等の治療において有用である。
【背景技術】
【0002】
アパルタミドは、アンドロゲン受容体アンタゴニストである。アパルタミドの化学名は、化学名:4-[7-[6-シアノ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]-8-オキソ-6-チオキソ-5,7-ジアザスピロ[3.4]オクタン-5-イル]-2-フルオロ-N-メチルベンズアミドである。構造式は、
【0003】
【化1】
である(特許文献1:国際公開2007/126765)。
【0004】
アパルタミドは、難溶性であり、特に、無水エタノールには僅かにしか溶解せず、pH1~11の水には実際不溶性である。またアセトン及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に可溶性である。更に、生理学的pH範囲でイオン化されないままである非吸湿性結晶質固体である。アパルタミドは、生物薬剤学分類システムを用いてクラス2薬物に属している。しかしながら、乏しい薬物溶解度は溶出の障害を生じ、薬物バイオアベイラビリティーに決定的な影響を与える。
【0005】
これらの欠点を克服する手段として、特許文献2(国際公開2016/090098号)には、アパルタミドにヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(HPMC-AS)を加えた固体分散体が記載されている。
【0006】
また、特許文献3(国際公開2016/090101号)には、アパルタミドにポリ(メタ)アクリレート共重合体を加えた固体分散体の固体医薬組成物が記載されている。
【0007】
また、特許文献4(国際公開2016/090105号)には、アパルタミドにポリ(メタ)アクリレート共重合体を加えた固体分散体の固体医薬組成物が記載されている。
また、特許文献5(特許公開2020-143069公報)には、アパルタミド(ARN-509)にヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を加えた固体分散体の固体医薬組成物が記載されている。
しかし、これらの組成物は、ポリマーが限定されており、その溶解度が不十分な場合や、溶解度を上げるために組成物の重量を増やす必要があるため、製剤の小型化ができないなどの、改善するべき課題があった。
【0008】
したがって、患者のバイオアベイラビリティーや服薬コンプライアンス向上のために、溶解度が改善された、多様なポリマー等および界面活性剤を含有する固体分散体を含む薬学的組成物の他の選択肢が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開2007/126765号
【特許文献2】国際公開2016/090098号
【特許文献3】国際公開2016/090101号
【特許文献4】国際公開2016/090105号
【特許文献5】特許公開2020-143069号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、患者のバイオアベイラビリティーや服薬コンプライアンス向上のために、溶解度の改善された、特定のポリマー等、特にカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP(登録商標)、一般名:ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸エステル)および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を含むアパルタミドの固体分散体を含む薬学的組成物、その製造方法、およびアパルタミドの溶解方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、アパルタミドと、種々のポリマー等および界面活性剤を使用して、アパルタミドの固体分散体を作成し、その水溶液中での溶解度を検討したところ、特定のポリマー等、特にカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)、またはそれらと界面活性剤との新規な組み合わせにおいて、従来の固体分散体と同等またはそれ以上の溶解度を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]
固体形態である、
(i)アパルタミド、ならびに
(ii)カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、
を含有する固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
[2]
さらに、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を含有する、[1]に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
[3]
アパルタミドが、水溶液に溶解時のアパルタミドの最大溶解度が、40μg/mL以上であるように調整された、[1]または[2]に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
[4]
さらに、
(iii)界面活性剤
を含む、[1]または[2]に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
[5]
アパルタミド、およびカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)を含有する固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
【0013】
[6]
さらに、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を含有する、[5]に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
[7]
アパルタミドと、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)との重量比が、アパルタミド100重量部に対して、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)が300重量部以下であって、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)が100重量部未満である、
[1]または[2]に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
[8]
顆粒、錠剤、ペレット、またはカプセル剤である、[1]または[2]に記載の薬学的組成物。
[9]
[1]または[2]に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物の製造方法であって、
a)アパルタミドを、溶媒中に溶解し、
b)a)の溶液にカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を溶解し、
c)b)の溶液から、アパルタミドの固体分散体を調製し;
d)任意に、顆粒化、錠剤化、ペレット化及びカプセル化から選択される追加の工程を実施する;
ことを含む、前記製造方法。
【0014】
[10]
界面活性剤をステップa)からc)のいずれか1つでさらに添加する、[9]に記載の製造方法。
[11]
溶媒が、アセトンであり、乾燥が噴霧乾燥である、[9]に記載の製造方法。
[12]
(i)アパルタミド、ならびに
(ii)カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)
を含有する[1]または[2]に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物とする、
アパルタミドの溶解性改善方法。
【0015】
[13]
界面活性剤をさらに含む、[12]に記載の溶解性改善方法。
[14]
さらに、水溶液中へのアパルタミドの最大溶解度が、40μg/mL以上である、[12]に記載の溶解性改善方法。
[15]
a)アパルタミドを、溶媒中に溶解し;
b)a)の溶液にカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を溶解し、
c)b)の溶液から、[1]または[2]に記載のアパルタミドの固体分散体を調製し、
d)c)の固体分散体を、水溶液中で溶解する、
ことを含み、
ここでアパルタミドの水溶液中での最大溶解度が、40μg/mL以上である、
アパルタミドの溶解方法。
【0016】
[16]
界面活性剤をステップa)~c)のいずれか1つで添加する、[15]に記載の溶解方法。
[17]
溶媒がアセトンであり、乾燥が噴霧乾燥である、[15]に記載の溶解方法。
[18]
過剰増殖性障害を有する患者を処置するための組成物であって、[1]または[2]に記載の薬学的組成物を含む、組成物。
[19]
過剰増殖性障害が、良性前立腺肥大症、前立腺がん、乳がん、および卵巣がんからなる群より選択される、[18]に記載の組成物。
【0017】
[20]
過剰増殖性障害が、前立腺がんであり、前記前立腺がんが、ホルモン不応性前立腺がんおよびホルモン感受性前立腺がんからなる群より選択される、[19]に記載の組成物。
[21]
アパルタミド、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を含有する固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物であって、アパルタミド100重量部に対して、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)が100重量部未満である固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
[22]
アパルタミド、およびポリマーを含有する固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物であって、アパルタミド100重量部に対して、ポリマーが200重量部未満である固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
[23]
アパルタミドが、水溶液に溶解時のアパルタミドの最大溶解度が、40μg/mL以上であるように調整された、[5]、[6]、[21]または[22]のいずれかに記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
【0018】
さらに、本発明は以下にも関する。
[1]
固体形態である、
(i)アパルタミド、ならびに
(ii)カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、
を含有する固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
【0019】
[2]
さらに、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を含有する、[1]に記載の固体分散体、またはその固分散体を含む薬学的組成物。
[3]
アパルタミドが、水溶液に溶解時のアパルタミドの最大溶解度が、40μg/mL以上であるように調整された、[1]または[2]に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
[4]
さらに、
(iii)界面活性剤
を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
[5]
アパルタミド、およびカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)を含有する固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
【0020】
[6]
さらに、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を含有する、[5]に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
[7]
アパルタミドと、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)との重量比が、アパルタミド100重量部に対して、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)が300重量部以下であって、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)が100重量部未満である
[1]~[4]のいずれか一項に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
[8]
顆粒、錠剤、ペレット、またはカプセル剤である、[1]~[7]のいずれか一項に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
[9]
[1]~[8]のいずれか一項に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物の製造方法であって、
a)アパルタミドを、溶媒中に溶解し、
b)a)の溶液にカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を溶解し、
c)b)の溶液から、アパルタミドの固体分散体を調製し;
d)任意に、顆粒化、錠剤化、ペレット化及びカプセル化から選択される追加の工程を実施する;
ことを含む、前記製造方法。
【0021】
[10]
界面活性剤をステップa)からc)のいずれか1つでさらに添加する、[9]に記載の製造方法。
[11]
溶媒が、アセトンであり、乾燥が噴霧乾燥である、[9]または[10]に記載の製造方法。
[12]
(i)アパルタミド、ならびに
(ii)カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)
を含有する[1]~[8]のいずれか一項に記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物とする、
アパルタミドの溶解性改善方法。
[13]
界面活性剤をさらに含む、[12]に記載の溶解性改善方法。
[14]
さらに、水溶液中へのアパルタミドの最大溶解度が、40μg/mL以上である、[12]または[13]に記載の溶解性改善方法。
【0022】
[15]
a)アパルタミドを、溶媒中に溶解し;
b)a)の溶液にカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を溶解し、
c)b)の溶液から、[1]または[2]に記載のアパルタミドの固体分散体を調製し、
d)c)の固体分散体を、水溶液中で溶解する、
ことを含み、
ここでアパルタミドの水溶液中での最大溶解度が、40μg/mL以上である、
アパルタミドの溶解方法。
[16]
界面活性剤をステップa)~c)のいずれか1つで添加する、[15]に記載の溶解方法。
[17]
溶媒がアセトンであり、乾燥が噴霧乾燥である、[15]または[16]に記載の溶解方法。
[18]
過剰増殖性障害を有する患者を処置するための組成物であって、[1]~[8]のいずれか1つに記載の薬学的組成物を含む、組成物。
[19]
過剰増殖性障害が、良性前立腺肥大症、前立腺がん、乳がん、および卵巣がんからなる群より選択される、[18]に記載の組成物。
【0023】
[20]
過剰増殖性障害が、前立腺がんであり、前記前立腺がんが、ホルモン不応性前立腺がんおよびホルモン感受性前立腺がんからなる群より選択される、[19]に記載の組成物。
[21]
アパルタミド、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を含有する固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物であって、アパルタミド100重量部に対して、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)が100重量部未満である固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
[22]
アパルタミド、およびポリマーを含有する固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物であって、アパルタミド100重量部に対して、ポリマーが200重量部未満である固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
[23]
アパルタミドが、水溶液に溶解時のアパルタミドの最大溶解度が、40μg/mL以上であるように調整された、[5]、[6]、[21]または[22]のいずれかに記載の固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物。
【発明の効果】
【0024】
本発明の固体分散体を含む薬学的組成物は、従来の固体分散体を含む薬学的組成物とは異なる組成を有することにより、組成物の重量が軽減でき、製剤の小型化が可能となり、水溶液中での溶解度に優れ、患者のバイオアベイラビリティおよび服薬コンプライアンスの向上が期待できる新たな選択肢を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、溶出性試験(試験例1)での実施例1~2(検体(1)~(2))、参考例1(検体(3))、比較例1の溶出挙動を示す。
【
図2】
図2は、溶出性試験(試験例2)での実施例3(検体(4))、参考例2(検体(5))、比較例2の溶出挙動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書において別様に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。本明細書中で参照する全ての特許、出願および他の出版物や情報は、その全体を参照により本明細書に援用する。
本発明の一側面において、本発明は、
固体形態である、
(i)アパルタミド、ならびに
(ii)カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、
を含有する固体分散体を含む薬学的組成物であって、
ここで、アパルタミドが、水溶液に溶解時のアパルタミドの最大溶解度が、40μg/mL以上であるように調整された、薬学的組成物、
を提供する。さらに、これらにヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を加える場合もある。
【0027】
本発明におけるアパルタミドは、アパルタミド、並びにアンドロゲン受容体アンタゴニストとしての活性を含めた同一の特性を有すると予想される非常に密接に関連している化合物、たとえば活性代謝物、製造副産物等の類似体、プロドラッグ、それらの薬学的に許容される塩、溶媒和物等を含む。活性化合物は本明細書において「API」または「API化合物」とも称され得る。
好ましくは、本明細書中に開示されているすべての態様、実施形態及び説明において
アパルタミドは、次式:
【化2】
で表される。
【0028】
本発明のいくつかの形態において、ポリマー等は、特に限定されないが、親水性ポリマー、好ましくは水溶性ポリマーから選択される。好ましいポリマーは、アパルタミドを主に、好ましくは本質的に、最も好ましくは完全に固体分散体で存在させ、有利にはその形態を長時間保つことができるものである。例として、特に、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、およびヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)が好ましい。さらに、これらにヒプロメロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を加える場合もある。
【0029】
本発明の別の形態において、ヒドロキシプロピルセルロース、メタクリル酸コポリマー(メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS)、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、ポビドン、コポリビドン、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体(Solplus)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー、メチルヘスペリジン、糖転移ヘスペリジンが使用される場合もある。
【0030】
本発明のさらなる形態としてヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ヒプロメロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)、ポリアクリケート、アラビアガム、キサンタンガム、トラガカント、アカシア、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、ペクチン、アルギネート及びその混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーが使用される場合もある。
【0031】
本明細書に記載される原薬の粒子径は、約1500μm、約1000μm、約500μm、約400μm、約250μm、約200μm、約150μm、約125μm、約100μm、約70μm、約65μm、約60μm、約55μm、約50μm、約45μm、約40μm、約3μm、約30μm、約25μm、又は約20μmのd50値(メジアン径)を有する。噴霧乾燥によって得られる粒子は、好ましくは、約20μm~約100μmの範囲のd50値(メジアン径)、特に約20μm~約70μmの範囲のd50値、より具体的には、約20μm、約25μm、約30μm、約35μm、約40μm、約45μm、約50μm、約55μm、約60μm、約65μm、又は約70μmの範囲のd50値を有する。
本発明のいくつかの形態において、アパルタミドは、固体分散体の形態で、本発明の薬学的組成物に含まれる。
【0032】
本発明において、「分散体」は、分散相である1種の物質が、第2の物質(連続相又は媒体)中に、区別されたユニットとして分散している分散系を言う。分散相の大きさは、大幅に異なりうる(例えば、ナノメートル容積のコロイド粒子から、数ミクロンサイズまで)。一般には、分散相は、固体、液体又は気体でありうる。固体分散体である場合には、分散相及び連続相はいずれも固体である。
発明で得られる固体分散体粉末の水分値は、0~5%の範囲であってもよく、例えば1%、2%、3%であってもいい。
【0033】
薬学的な適用においては、固体分散体はポリマー(連続相)中の結晶性の薬物(分散相)、あるいはポリマー(連続相)中のアモルファスの薬物(分散相)を含むことができる。ある実施態様としては、固体分散体は、分散相を構成するポリマー及び連続層を構成する薬物を含む。ある実施態様においては、固体分散体はアモルファス化合物又は実質的にアモルファスの化合物を含む。
【0034】
本発明において「アモルファス」は、一般的な意味で用いられ、固体内の原子は互いに強く結合しており、かつ不規則に並んでいる状態をいう。また一部に結晶を含んでいても良い。
【0035】
本明細書で使用している「アモルファス」の語は、その分子の位置に長距離秩序をもたない固体物質をいう。アモルファス固体は、一般的には、分子がランダムな形で配置されているため、明確な配列、例えば分子パッキングが存在せず、長距離秩序が無い過冷却液体である。アモルファス固体は一般に等方性であり、すなわち全方向で類似特性を呈し、明確な融点をもたない。例えば、アモルファス物質は、そのX線粉末回折(XRPD)パターンにおいて鋭い特有の結晶ピーク(複数も可)をもたない(すなわち、XRPDにより測定される結晶性ではない)固体物質である。その代わりとして、1つまたは幾つかの
広いピーク(例えば、ハロ)がそのXRPDパターンで現れる。
【0036】
本発明において、「固体分散体のアパルタミド」は、水性使用環境、例えば、インビトロの溶解試験の水性溶解媒体(例えば、リン酸緩衝食塩水またはモデル絶食時十二指腸液もしくは模擬胃液)またはインビボの胃もしくは小腸の環境における結晶性アパルタミドより急速におよびより大きな程度まで溶解する。この増強された溶解は、結晶性薬物と比較してより高いアパルタミドの経口バイオアベイラビリティーをもたらす。
いくつかの実施形態において、アパルタミドは、固体分散体中にアモルファスを含んでもよいが、結晶が含まれていても、本発明の高い溶解度には影響しない。
アモルファスのアパルタミドは、噴霧乾燥、熱溶融押出、および非溶媒を加えることによる溶液からの沈殿等を含めた任意の公知の手段によって調製し得る。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態において、アパルタミド/ポリマー等を溶解する溶媒は、アセトン、エタノール、メタノール、これらの混合物、および水との混合物である。
本発明の一形態において、アパルタミド/ポリマー等を溶解する溶媒は、アセトンである。
本発明の一形態において、溶媒が、アセトンであり、乾燥が噴霧乾燥である。
噴霧乾燥は、公知の方法に従えばよいが、たとえば以下の方法が挙げられる。
【0038】
1つの例において、1種以上のポリマー等およびアパルタミドを1種以上の溶媒(例えば、アセトン)と混合して、約4質量%~約15質量%の総固体量を有する溶液を形成する。総固体量のパーセンテージは、化合物および1種以上のポリマー等の合計質量を、アパルタミド、1種以上のポリマー等、および1種以上の溶媒の合計質量で割ることにより決定される。次に、溶液を噴霧乾燥して固体分散体を形成することができ、これに場合によりさらなる乾燥工程を加えることもできる。
【0039】
本発明において、「薬学的組成物」は、特に限定されず、患者に投与された場合に、何らかの薬理作用を発現する組成物一般について用いられ、「医薬組成物」を含む概念であり、薬理作用を発現すれば、医薬品に限定されない。
【0040】
本発明のいくつかの形態において、本発明の「薬学的組成物」は、アパルタミドの水溶液中の最大溶解度が、40μg/mL以上であるように調整された、薬学的組成物である。
【0041】
本発明の一つの側面において、アパルタミドの水溶液中の最大溶解度が、40μg/mL以上であるように調整された、薬学的組成物は、製剤化によって、良好なバイオアベイラビリティーおよび服薬コンプライアンスを投与された患者にもたらす新たな選択肢を提供する。
【0042】
最大溶解度が、40μg/mL以上であるように調整するには、ポリマー等および/または界面活性剤の特定によって、アパルタミドとの配合比、固体分散体の作製条件等を適宜調整して行う。
【0043】
さらに、ポリマー等および/または界面活性剤の特定によって、アパルタミドとの配合比、固体分散体の作製条件等を適宜調整して最大溶解度を調製することにより以下の最大溶解度を得ることも可能である。
【0044】
本発明の一つの側面において、アパルタミドの水溶液中の最大溶解度が、70μg/mL以上であるように調整された、薬学的組成物は、製剤化によって、良好なバイオアベイラビリティーおよび服薬コンプライアンスを投与された患者にもたらす選択肢を提供する。
【0045】
本発明の一つの側面において、アパルタミドの水溶液中の最大溶解度が、80μg/mL以上であるように調整された、薬学的組成物は、製剤化によって、良好なバイオアベイラビリティーおよび服薬コンプライアンスを投与された患者にもたらす選択肢を提供する。
【0046】
本発明の一つの側面において、アパルタミドの水溶液中の最大溶解度が、90μg/mL以上であるように調整された、薬学的組成物は、製剤化によって、良好なバイオアベイラビリティーおよび服薬コンプライアンスを投与された患者にもたらす選択肢を提供する。
【0047】
本発明の一つの側面において、アパルタミドの水溶液中の最大溶解度が、100μg/mL以上であるように調整された、薬学的組成物は、製剤化によって、良好なバイオアベイラビリティーおよび服薬コンプライアンスを投与された患者にもたらす選択肢を提供する。
【0048】
本発明の一つの側面において、アパルタミドの水溶液中の最大溶解度が110μg/mL以上であるように調整された、薬学的組成物は、製剤化によって、良好なバイオアベイラビリティーおよび服薬コンプライアンスを投与された患者にもたらす選択肢を提供する。
【0049】
本発明の一つの側面において、アパルタミドの水溶液中の最大溶解度が120μg/mL以上であるように調整された、薬学的組成物は、製剤化によって、良好なバイオアベイラビリティーおよび服薬コンプライアンスを投与された患者にもたらす選択肢を提供する。
【0050】
本発明の一つの側面において、アパルタミドの水溶液中の最大溶解度が、130μg/mL以上であるように調整された、薬学的組成物は、製剤化によって、良好なバイオアベイラビリティーおよび服薬コンプライアンスを投与された患者にもたらす選択肢を提供する。
【0051】
本発明の一つの側面において、アパルタミドの水溶液中の最大溶解度が、140μg/mL以上であるように調整された、薬学的組成物は、製剤化によって、良好なバイオアベイラビリティーおよび服薬コンプライアンスを投与された患者にもたらす選択肢を提供する。
【0052】
本発明の一つの側面において、アパルタミドの水溶液中の最大溶解度が、150μg/mL以上であるように調整された、薬学的組成物は、製剤化によって、良好なバイオアベイラビリティーおよび服薬コンプライアンスを投与された患者にもたらす選択肢を提供する。
【0053】
本発明の一つの側面において、アパルタミドの水溶液中の最大溶解度が、160μg/mL以上であるように調整された、薬学的組成物は、製剤化によって、良好なバイオアベイラビリティーおよび服薬コンプライアンスを投与された患者にもたらす選択肢を提供する。
本発明において、用語「水溶液」は、水を含有する溶液であれば特に限定されず、水そのものである場合もあるが、たとえば人工胃液または腸液のような生物関連媒体をも含む概念である。また、例えば、インビトロの溶解試験の水性溶解媒体(例えば、リン酸緩衝食塩水、日本薬局方溶出試験第2液、またはモデル絶食時十二指腸液もしくは模擬胃液)またはインビボの胃液もしくは小腸液等の生体の体液でもよい。
【0054】
本発明のいくつかの側面において、アパルタミド:ポリマー等、特にカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)の配合比は、たとえば重量比で、1:20以下、1:10以下、1:7以下、1:5以下、好ましくは1:3以下である。
また本発明のいくつかの側面において、アパルタミド:ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)の配合比は、1:1未満が好ましい。
【0055】
本発明のいくつかの側面において、アパルタミドとポリマーとの配合比は、たとえばアパルタミド100重量部に対して、2000重量部以下、1000重量部以下、700重量部以下、500重量部以下、好ましくは300重量部以下、さらに好ましくは200重量部未満、190重量部以下、180重量部以下、170重量部以下である。
本発明のいくつかの側面において、アパルタミドとカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)との配合比は、たとえばアパルタミド100重量部に対して、2000重量部以下、1000重量部以下、700重量部以下、500重量部以下、好ましくは300重量部以下である。
また、本発明のいくつかの側面において、アパルタミドとヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)との配合比は、たとえばアパルタミド100重量部に対して、100重量部未満が好ましい。
また、本発明のいくつかの側面において、アパルタミドとヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)との配合比は、たとえばアパルタミド100重量部に対して、ヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)が300重量部以下、好ましくは290重量部以下、さらに好ましくは285重量部以下である。
また、本発明のいくつかの側面において、アパルタミドとカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)との配合比は、たとえばアパルタミド100重量部に対して、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)が100重量部以下、好ましくは90重量部以下、さらに好ましくは80重量部以下である。
また、本発明のいくつかの側面において、アパルタミドとヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)との配合比は、たとえばアパルタミド100重量部に対して、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)が100重量部未満、好ましくは90重量部以下である。
【0056】
本発明の別の側面において、アパルタミドとカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)との配合比は、特に限定しないが、たとえばアパルタミド100重量部に対して、10重量部以上、30重量部以上、50重量部以上、60重量部以上、好ましくは70重量部以上である。
本発明の別の態様において、本発明の薬学的組成物はさらに、界面活性剤を含んでもよい。
【0057】
本発明に使用される界面活性剤は、特に限定されないが、当業者が一般的に理解しているように、それ自体2つの液体間または液体と固体間の表面張力(または、界面張力)を下げることができる物質である。好ましくは、本明細書中で使用されている用語「界面活性剤」は、湿潤剤として、乳化剤として、洗浄剤として、及び分散剤として作用し得る物質、より好ましくは湿潤剤として作用し得る物質を意味する。界面活性剤である物質の一般的機能は典型的には当業者により予め公知であり得る。より具体的には、使用しようとする界面活性剤の上記能力は、所与組成物または処方物中のアパルタミドの溶出が溶出媒体、温度及び攪拌条件のような同一規定条件下で界面活性剤を含有していない以外同一の組成物または処方物と比べて強化され得るかどうかの簡単な測定により、調べられ得る。
【0058】
本発明に使用される界面活性剤としては、特に限定されないが、アニオン性界面活性剤、好ましくはラウリル硫酸ナトリウム;ポリエチレングリコール(PEG)、好ましくは約2000~10000の範囲の分子量を有するPEG、より好ましくはPEG 3350、PEG 4000、PEG 6000、PEG 8000;ポリソルベート、好ましくはトゥイーン20、トゥイーン80またはスパン80;脂肪酸エステル、好ましくはプロピレングリコールカプリレート、例えばカプムルPG-8、カプリオール90;グリセロールと脂肪酸のエステル、好ましくはグリセロールオレエート及びカプリレート(カプムルMCM);ポリエチレングリコールと脂肪酸のエステル、例えばラブラゾル及びソルトール;ヒマシ油エトキシレート(グリセロールポリエチレングリコールリシノレエート)、例えばクレモフォールEL及びクレモフォールRH 40からなる群から選択され得る。より好ましくは、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウム;PEG 3350、PEG 4000、PEG 6000またはPEG 8000、好ましくはPEG 6000;トゥイーン20またはトゥイーン80;及びポリエチレングリコールと脂肪酸のエステルからなる群から選択される。
【0059】
本発明の別の側面において、本発明の薬学的組成物は、アパルタミド、およびカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、を含有する固体分散体を含む薬学的組成物である。
【0060】
本発明のいくつかの態様において、界面活性剤とアパルタミドの配合比は特に限定されないが、たとえばアパルタミド100重量部に対して、界面活性剤を300重量部以下、200重量部以下、150重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下であってもよい。好ましくは150重量部以下である。また、界面活性剤の種類によってその物性も異なることからこれらに限定されない。
【0061】
本発明の別の側面において、界面活性剤とアパルタミドの配合比は、たとえばアパルタミド100重量部に対して、界面活性剤を10重量部以上、20重量部以上、30重量部以上、40重量部以上、50重量部以上、60重量部以上、70重量部以上、80重量部以上、90重量部以上、100重量部以上、110重量部以上、120重量部以上、130重量部以上、140重量部以上、および150重量部以上であってもよい。好ましくは、50重量部以上である。
【0062】
本発明の別の側面において、界面活性剤とアパルタミドの配合比は、たとえばアパルタミド100重量部に対して、界面活性剤を10~300重量部、20~200重量部、好ましくは50~150重量部である。
本発明において、上記比率は、本発明者らが、鋭意検討の結果、界面活性剤の特性に合わせて調整して見出したものである。
【0063】
本発明のいくつかの形態において、本発明の薬学的組成物中に他の添加物を含むことができる。これらの添加物は、薬学的組成物を錠剤、カプセル剤、懸濁剤、懸濁のための散剤、クリーム剤、経皮パッチ剤、デポー剤などに製剤するために、アパルタミドおよびポリマー等組成物と共に利用し得る。アパルタミドおよびポリマー等の組成物は、アパルタミドまたは実質的に変化させない本質的に任意の様式で、他の剤形成分に加えることができる。添加物は、分散体と物理的に混合し、かつ/または分散体内に含まれ得る。
【0064】
アパルタミドおよびポリマー等、特にカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)を含む固体分散体を、1種または複数種の薬学的に許容される添加物とさらに混合し、薬学的組成物を調製する。
【0065】
添加物は、これらが薬学的に許容されるものである限り、特に限定されない。添加物の例には、賦形剤、結合剤、崩壊剤(disintegrator)、酸味剤、発泡剤、甘味剤、矯味矯臭剤、滑沢剤、着色剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤、流動促進剤などが含まれる。
【0066】
賦形剤は、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、リン酸水素カルシウム水和物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、精製したスクロース、グルコース、結晶セルロースなどから選択され得る。
【0067】
結合剤は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アラビアゴムなどから選択され得る。
【0068】
崩壊剤は、例えば、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、軽質無水ケイ酸(light anhydrous silicic acid)、ケイ酸カルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分的にアルファ化されたデンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、寒天粉末、クロスポビドン、合成ケイ酸アルミニウム、スクロース脂肪酸エステル、ラクトース水和物、D-マンニトール、無水クエン酸などから選択され得る。
酸味剤は、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などから選択され得る。
発泡剤は、例えば、炭酸水素ナトリウムなどから選択され得る。
甘味剤は、例えば、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビア、タウマチンなどから選択され得る。
矯味矯臭剤は、例えば、レモン、レモンライム、オレンジ、メントールなどから選択され得る。
【0069】
滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、スクロース脂肪酸エステル、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸などから選択され得る。
着色剤は、例えば、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用青色3号などから選択され得る。
【0070】
緩衝剤は、例えば、クエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸、またはその塩;グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン、またはその塩;酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸、ホウ酸、またはこれらの塩などから選択され得る。
抗酸化剤は、例えば、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピルなどから選択され得る。
【0071】
流動促進剤は、例えば、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、ステアリン酸、コロイド状シリカ、コロイド状20二酸化ケイ素、ヒュームドシリカ、CAB-O-SIL(登録商標)M-5P、AEROSIL(登録商標)、タルク、デンプン、およびケイ酸アルミニウムマグネシウムなどから選択され得る。
これらの添加物は、適当な量で単独で、または適当な量で2種以上のこれらの組合せとして加え得る。
【0072】
本発明の薬学的組成物は、好ましくは圧縮または非圧縮剤形である。好ましくは、本発明の薬学的組成物は、顆粒剤、顆粒を充填したカプセル剤のようなカプセル剤、サッシェ剤、ペレット剤、糖衣錠、薬用キャンディー、トローチ錠、香錠、または非コーティング錠、コーティング錠、発泡錠、可溶性錠剤、または分散性錠剤である。より好ましい剤形はアパルタミド含有顆粒を充填したカプセル剤、または錠剤のような圧縮剤形である。錠剤は均一容量の粒子、粒子凝集物、または好ましくは顆粒化方法により生成される顆粒を圧縮することにより製造され得る。
【0073】
本発明の一形態において、本発明の薬学的組成物は、以下の方法で製造される。
a)アパルタミドを、溶媒中に溶解し;
b)a)の溶液にポリマー等、特にカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)を溶解し、
c)b)の溶液から、アパルタミドの固体分散体を、水溶液に溶解時のアパルタミドの最大溶解度が、40μg/mL以上であるように調整し;
d)任意に、顆粒化、錠剤化、ペレット化及びカプセル化から選択される追加の工程を実施する;
ことを含む、製造方法。
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、界面活性剤をステップa)~c)のいずれか1つでさらに添加する製造方法である。
【0074】
本発明のいくつかの形態において、アパルタミドを溶解する溶媒は、特に限定されないが、アパルタミドおよびポリマー等が相互に可溶性である任意の有機化合物でよい。いくつかの実施形態において、溶媒はまた、150℃以下の沸点を伴い揮発性である。さらに、溶媒は、比較的毒性が低く、International Committee on Harmonization(ICH)のガイドラインによって許容されるレベルまで分散体から除去されるべきである。このレベルまでの溶媒の除去は、加工ステップ、例えば、噴霧乾燥または噴霧コーティング工程に続くトレイ乾燥を必要とし得る。溶媒には、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、およびブタノール;ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン;エステル、例えば、酢酸エチルおよび酢酸プロピル;ならびに様々な他の溶媒、例えば、アセトニトリル、塩化メチレン、トルエン、および1,1,1-トリクロロエタンが含まれる。より低い揮発性の溶媒、例えば、ジメチルアセトアミドまたはジメチルスルホキシドをまた使用することができる。噴霧乾燥工程を実行可能なものとするためにポリマー等およびアパルタミドが十分に可溶性である限り、水との混合物と同様に、溶媒の混合物、例えば、50%のエタノールおよび50%のアセトンをまた使用することができる。一般に、アパルタミドの疎水性の性質によって、非水性溶媒が使用される。非水性溶媒は、約10重量%未満の水、いくつかの実施形態において、1重量%未満の水を含む。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態において、アパルタミド/ポリマー等溶液を乾燥するための溶媒は、アセトン、エタノール、メタノール、これらの混合物、および水との混合物である。
本発明の一形態において、アパルタミド/ポリマー等溶液を乾燥するための溶媒は、アセトンである。
本発明の一形態において、溶媒が、アセトンであり、乾燥が噴霧乾燥である。
噴霧乾燥は、公知の方法に従えばよいが、たとえば以下の方法が挙げられる。
【0076】
1つの例において、1種以上のポリマー等およびアパルタミドを1種以上の溶媒(例えば、アセトン)と混合して、約50質量%の総固体量を有する溶液を形成する。総固体量の質量%は、化合物および1種以上のポリマー等の合計質量を、アパルタミド、1種以上のポリマー等、および1種以上の溶媒の合計質量で割ることにより決定される。次に、溶液を噴霧乾燥して固体分散体を形成することができ、これに場合によりさらなる乾燥工程を加えることもできる。
【0077】
本発明に係る製造方法に使用されるポリマー等としては、特に限定されないが、親水性ポリマー、好ましくは水溶性ポリマーから選択される。好ましいポリマーは、アパルタミドを主に、好ましくは本質的に、最も好ましくは完全に固体分散体形態で存在させ、有利にはその形態を長時間保つことができるものである。例として、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)が好ましい。
【0078】
本発明に係る製造方法に使用されるポリマー等の他の例として、ヒドロキシプロピルセルロース、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、ポビドン、コポリビドン、およびポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体(Solplus)からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー、またはメチルヘスペリジン、糖転移ヘスペリジンでもよい。
【0079】
本発明に係る製造方法に使用されるポリマーの他の例として、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ヒプロメロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)、ポリアクリケート、アラビアガム、キサンタンガム、トラガカント、アカシア、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、ペクチン、アルギネート及びその混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを用いて製造される場合もある。
【0080】
本発明に係る製造方法に使用される界面活性剤としては、特に限定されないが、アニオン性界面活性剤、好ましくはラウリル硫酸ナトリウム;ポリエチレングリコール(PEG)、好ましくは約2000~10000の範囲の分子量を有するPEG、より好ましくはPEG 3350、PEG 4000、PEG 6000、PEG 8000;ポリソルベート、好ましくはトゥイーン20、トゥイーン80またはスパン80;脂肪酸エステル、好ましくはプロピレングリコールカプリレート、例えばカプムルPG-8、カプリオール90;グリセロールと脂肪酸のエステル、好ましくはグリセロールオレエート及びカプリレート(カプムルMCM);ポリエチレングリコールと脂肪酸のエステル、例えばラブラゾル及びソルトール;ヒマシ油エトキシレート(グリセロールポリエチレングリコールリシノレエート)、例えばクレモフォールEL及びクレモフォールRH 40からなる群から選択され得る。より好ましくは、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウム;PEG 3350、PEG 4000、PEG 6000またはPEG 8000、好ましくはPEG 6000;トゥイーン20またはトゥイーン80;及びポリエチレングリコールと脂肪酸のエステルからなる群から選択される。
【0081】
本発明の一形態において、本発明に係る製造方法は、d)任意に、顆粒化、錠剤化、ペレット化及びカプセル化から選択される追加の工程を実施する;ことを含む。
本発明に係る製造方法において、顆粒化、錠剤化、ペレット化及びカプセル化は、周知の方法で加工され得る。
【0082】
本発明の一形態において、本発明は、以下のアパルタミドの溶解性改善方法に関する。
(i)アパルタミド、ならびに
(ii)カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)
を含有する固体分散体、またはその固体分散体を含む薬学的組成物とする、
アパルタミドの溶解性改善方法。
上記に溶解性改善方法おいて、界面活性剤をさらに含んでもよい。
上記に溶解性改善方法において、水溶液に溶解時のアパルタミドの最大溶解度が、40μg/mL以上であるように調整されていてもよい。
【0083】
さらに、本発明は別の一態様において、以下の溶解方法にも関する。
a)アパルタミドを、溶媒中に溶解し;
b)a)の溶液にポリマー等、特にカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)を溶解し、
c)b)の溶液から、アパルタミドの固体分散体を、アパルタミドが、水溶液に溶解時のアパルタミドの最大溶解度が、40μg/mL以上であるように調整し、
d)c)の固体分散体を、水溶液中で溶解する、
ことを含む、
アパルタミドの溶解方法。
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の溶解方法は、界面活性剤をステップa)~c)のいずれか1つでさらに添加する溶解方法である。
【0084】
本発明のいくつかの形態において、アパルタミドを溶解する溶媒は、特に限定されないが、アパルタミドおよびポリマー等が相互に可溶性である任意の有機化合物でよい。いくつかの実施形態において、溶媒はまた、150℃以下の沸点を伴い揮発性である。さらに、溶媒は、比較的毒性が低く、International Committee on Harmonization(ICH)のガイドラインによって許容されるレベルまで分散体から除去されるべきである。このレベルまでの溶媒の除去は、加工ステップ、例えば、噴霧乾燥または噴霧コーティング工程に続くトレイ乾燥を必要とし得る。溶媒には、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、およびブタノール;ケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン;エステル、例えば、酢酸エチルおよび酢酸プロピル;ならびに様々な他の溶媒、例えば、アセトニトリル、塩化メチレン、トルエン、および1,1,1-トリクロロエタンが含まれる。より低い揮発性の溶媒、例えば、ジメチルアセトアミドまたはジメチルスルホキシドをまた使用することができる。噴霧乾燥工程を実行可能なものとするためにポリマー等およびアパルタミドが十分に可溶性である限り、水との混合物と同様に、溶媒の混合物、例えば、50%のエタノールおよび50%のアセトンをまた使用することができる。一般に、アパルタミドの疎水性の性質によって、非水性溶媒が使用される。非水性溶媒は、約10重量%未満の水、いくつかの実施形態において、1重量%未満の水を含む。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態において、アパルタミド/ポリマー等、特にカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)溶液を乾燥するための溶媒は、アセトン、エタノール、メタノール、これらの混合物、および水との混合物である。
本発明の一形態において、アパルタミド/ポリマー等を乾燥するための溶媒は、アセトンである。
【0086】
本発明に係る溶解方法に使用されるポリマー等としては、特に限定されないが、親水性ポリマー、好ましくは水溶性ポリマーから選択される。好ましいポリマーは、アパルタミドを主に、好ましくは本質的に、最も好ましくは完全に固体分散体形態で存在させ、有利にはその形態を長時間保つことができるものである。例として、特にカルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、および/またはヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、および/またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)
が好ましい。
【0087】
本発明に係る溶解方法に使用されるポリマーの別の例は、ヒドロキシプロピルセルロース、メタクリル酸コポリマー(例としてメタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS)、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、ポビドン、コポリビドン、およびポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体(Solplus)、からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーまたはポリマーではないものとしてメチルヘスペリジン、糖転移ヘスペリジンでもよい。
【0088】
本発明の別の形態において、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ヒプロメロースアセテートサクシネート(HPMC-AS)、ポリアクリケート、アラビアガム、キサンタンガム、トラガカント、アカシア、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、ペクチン、アルギネート及びその混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを用いて溶解される場合もある。
【0089】
本発明に係る溶解方法に使用される界面活性剤としては、特に限定されないが、アニオン性界面活性剤、好ましくはラウリル硫酸ナトリウム;ポリエチレングリコール(PEG)、好ましくは約2000~10000の範囲の分子量を有するPEG、より好ましくはPEG 3350、PEG 4000、PEG 6000、PEG 8000;ポリソルベート、好ましくはトゥイーン20、トゥイーン80またはスパン80;脂肪酸エステル、好ましくはプロピレングリコールカプリレート、例えばカプムルPG-8、カプリオール90;グリセロールと脂肪酸のエステル、好ましくはグリセロールオレエート及びカプリレート(カプムルMCM);ポリエチレングリコールと脂肪酸のエステル、例えばラブラゾル及びソルトール;ヒマシ油エトキシレート(グリセロールポリエチレングリコールリシノレエート)、例えばクレモフォールEL及びクレモフォールRH 40からなる群から選択され得る。より好ましくは、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウム;PEG 3350、PEG 4000、PEG 6000またはPEG 8000、好ましくはPEG 6000;トゥイーン20またはトゥイーン80;及びポリエチレングリコールと脂肪酸のエステルからなる群から選択される。
本発明のいくつかの形態において、本発明は、過剰増殖性障害を有する患者を処置するための組成物であって、本発明の薬学的組成物を含む、組成物に関する。
【0090】
本発明における過剰増殖性障害は、これに限定されないが、良性前立腺肥大症、前立腺がん、乳がん、および卵巣がんからなる群より選択される場合があり、好ましくは前立腺がんであり、前記前立腺がんが、ホルモン不応性前立腺がんおよびホルモン感受性前立腺がんからなる群より選択されてもよい。
【実施例0091】
実施例1:噴霧乾燥法によるアパルタミド固体分散体の作製(検体(1))
原薬の水分値が電量滴定法での測定で1.8%であることを確認したアパルタミド5g、カルボキシメチルエチルセルロース(「CMEC」フロイント産業社製)15gをアセトン230gに溶解させ、ミニスプレードライヤーにて噴霧乾燥して、アパルタミドを25質量%含有する固体分散体粉末を得た。得られた固体分散体粉末は、非晶質であり、d50値が約10μm、乾燥減量が2.8%であった。
【0092】
実施例2:噴霧乾燥法によるアパルタミド固体分散体の作製(検体(2))
原薬の水分値が電量滴定法での測定で1.8%であることを確認したアパルタミド5g、ヒプロメロースフタル酸エステル(「HP-55」信越化学社製)15gをアセトン230gに溶解させ、ミニスプレードライヤーにて噴霧乾燥して、アパルタミドを25質量%含有する固体分散体粉末を得た。得られた固体分散体粉末は、非晶質であり、d50値が約10μm、乾燥減量が3.2%であった。
【0093】
参考例1:噴霧乾燥法によるアパルタミド固体分散体の作製(検体(3))
アパルタミド5g、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(「Shin-Etsu AQOAT-LG」信越化学社製)15gをアセトン230gに溶解させ、ミニスプレードライヤーにて噴霧乾燥して、アパルタミドを25質量%含有する固体分散体粉末を得た。
比較例1:結晶性のアパルタミド原薬
結晶性のアパルタミド原薬を用いた。
【0094】
試験例1: 溶出性試験
試験液に日本薬局方溶出試験第2液(pH6.8)を用いた。37±0.5℃に加温した試験液200mL中に、アパルタミド60mg相当量の固体分散体粉末又はアパルタミド原薬を入れ、パドルを200rpmで回転させ、5、15、30、60、及び360分後に7mLを採取し、孔径0.45μmのメンブランフィルターで濾過した。初めの濾液5mL以上を除き、次の濾液1mLを正確に量り、試験液9mL及び水/アセトニトリル混液(1:1)10mLを加えて試料液とした。
【0095】
別途、アパルタミド約25mgを精密に量り、水/アセトニトリル混液(1:1)を加えて総量を50mLに正確に調整した。この液5mLを正確に量り取り、水/アセトニトリル混液(1:1)を加えて総量を50mLに正確に調整した。この液1mLに試験液1mLを加えて標準液とした。
試料液と標準液10μLずつを、以下の条件の液体クロマトグラフィーで分析し、アパルタミドを定量した。
分析装置: 「高速液体クロマトグラフ」島津製作所社製、Waters社製
検出器: 「紫外吸光光度計」島津製作所社製、Waters社製
カラム: InertSustain C18, 4.6×100mm, 5μm
検出波長: 270nm
流速: 1.0mL/min
サンプルクーラー温度: 15℃
カラム温度: 約30℃
移動相: 酢酸を加えてpH4.5とした20mM 酢酸アンモニウム/アセトニトリル混液(1:1)
【0096】
実施例3:アパルタミド固体分散体を含む製剤の作製(検体(4))
アパルタミド6g、カルボキシメチルエチルセルロース(「CMEC」フロイント産業社製)4.75g、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(「Shin-Etsu AQOAT-LG」信越化学社製)5.4gをアセトン1615gに溶解させ、遠心式濃縮機 スピンドライヤーライト VC-36R(TAITEC社製)にて乾燥して、アパルタミドを約質量37%含有する固体分散体粉末を得た。得られた固体分散体粉末を後添加末と混合し,打錠して錠剤を製した。
【0097】
参考例2:アパルタミド固体分散体を含む製剤の作製(検体(5))
アパルタミド6g、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(「Shin-Etsu AQOAT-LG」信越化学社製)18gをアセトン240gに溶解させ、遠心式濃縮機 スピンドライヤーライト VC-36R(TAITEC社製)にて乾燥して、アパルタミドを約質量25%含有する固体分散体粉末を得た。得られた固体分散体粉末を後添加末と混合し,打錠して錠剤を製した。
比較例2:アパルタミドを含む製剤の作製(検体(6))
アパルタミドを後添加末と混合し,打錠して錠剤を製した。
【0098】
試験例2: 溶出性試験
試験液に日本薬局方溶出試験第2液(pH6.8)を用いた。37±0.5℃に加温した試験液900mL中に錠剤を入れ、パドルを75rpmで回転させ、5、10,15、30、45,60、90,120,180及び360分後に10mLを採取し、孔径0.45μmのメンブランフィルターで濾過した。初めの濾液5mL以上を除き、次の濾液2mLを正確に量り、試験液2mL及び薄めたリン酸(1→500)/アセトニトリル混液(1:1)2mLを加えて試料液とした。
別途、アパルタミド約33mgを精密に量り、薄めたリン酸(1→500)/アセトニトリル混液(1:1)を加えて総量を50mLに正確に調製した。この液5mLを正確に量り取り、薄めたリン酸(1→500)/アセトニトリル混液(1:1)を加えて総量を50mLに正確に調製した。この液2mLを正確に取り,試験液2mLを正確に加えて標準液とした。
試料液と標準液10μLずつを、以下の条件の液体クロマトグラフィーで分析し、アパルタミドを定量した。
分析装置: 「高速液体クロマトグラフ」島津製作所社製、Waters社製
検出器: 「紫外吸光光度計」島津製作所社製、Waters社製
検出波長: 270nm
カラム: Inertsil ODS-3, 4.6×50mm, 3.5μm
流速: 0.8mL/min
サンプルクーラー温度: 25℃
カラム温度: 約40℃
移動相: 酢酸(100)を加えてpH4.0とした20mM 酢酸アンモニウム溶液/アセトニトリル混液(1:1)
【0099】
以下、実施例3、参考例2および比較例2の処方例を表1に示す。処方例
【表1】