(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009433
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】硬度成分除去装置及び純水製造システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/42 20230101AFI20240116BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20240116BHJP
C02F 1/64 20230101ALI20240116BHJP
C02F 1/20 20230101ALI20240116BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240116BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20240116BHJP
B01D 61/12 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C02F1/42 A
C02F1/28 D
C02F1/64 A
C02F1/20 A
C02F1/44 H
B01D61/04
B01D61/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110953
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】山本 克美
【テーマコード(参考)】
4D006
4D025
4D037
4D038
4D624
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006JA71
4D006KA02
4D006KB11
4D006KB12
4D006KB14
4D006KB17
4D006KE02R
4D006PA01
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4D025BB09
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4D037BA23
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4D038BB03
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4D624AA03
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4D624CA01
4D624DA05
4D624DB02
4D624DB03
4D624DB05
4D624DB19
4D624DB20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】除鉄除マンガン処理と陽イオン交換処理を一体化しつつ、各水処理材の劣化を抑制し、効率的な洗浄及び再生を可能とした硬度成分除去装置を提供すること。
【解決手段】仕切り板11、12により上下方向に少なくとも3つの処理部に区画された水処理容器1と、最上段の仕切り板11上の第1の処理部21及び除鉄除マンガン触媒層31と、下段の仕切り板12上の第2の処理部22及び活性炭層32と、仕切り板12より下の第3の処理部23及び陽イオン交換樹脂層33と、水処理容器1上部から外部に通じる第1の通水管41と、除鉄除マンガン触媒層31の上方から外部に通じる第2の通水管42と、活性炭層33の上方から外部に通じる第3の通水管43と、陽イオン交換樹脂層33上方から外部に通じる第4の通水管44と、水処理容器下部1から外部に通じる第5の通水管45と、を有する硬度成分除去装置100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に少なくとも2つの通水可能な仕切り板を備えて、前記仕切り板により上下方向に少なくとも3つの処理部に区画された水処理容器と、
前記2つの仕切り板のうち最上段の仕切り板上の第1の処理部と、
前記第1の処理部内に設けられた除鉄除マンガン触媒層と、
前記2つの仕切り板のうち下段の仕切り板上の第2の処理部と、
前記第2の処理部内に設けられた活性炭層と、
前記2つの仕切り板のうち下段の仕切り板より下の第3の処理部と、
前記第3の処理部内に設けられた陽イオン交換樹脂層と、
前記水処理容器上部から外部に通じる第1の通水管と、
前記第1の処理部内に設けられ、前記除鉄除マンガン触媒層の上方から外部に通じる第2の通水管と、
前記第2の処理部内に設けられ、前記活性炭層の上方から外部に通じる第3の通水管と、
前記第3の処理部内に設けられ、前記陽イオン交換樹脂層上方から外部に通じる第4の通水管と、
前記水処理容器下部から外部に通じる第5の通水管と、
を有する硬度成分除去装置。
【請求項2】
さらに、前記陽イオン交換樹脂層内を貫通して外部に通じる第6の通水管を有する請求項1に記載の硬度成分除去装置。
【請求項3】
第3の処理部の下部にさらに、最下段の仕切り板を有する請求項1又は2に記載の硬度成分除去装置。
【請求項4】
さらに、前記第2の通水管から被処理水を通液させる原水供給機構と、前記被処理水に酸化剤を添加する酸化剤供給装置と、前記除鉄除マンガン触媒層、前記活性炭層及び前記陽イオン交換樹脂層を経た後の被処理水を処理水として前記第5の通水管から排出させる処理水排出機構を有する請求項1又は2に記載の硬度成分除去装置。
【請求項5】
さらに、前記第5の通水管から逆洗水を前記陽イオン交換樹脂層内上方向に通液させる第1の逆洗水供給機構と、前記陽イオン交換樹脂層を経た後の逆洗水を前記第4の通水管から排出させる第1の逆洗水排出機構を有する請求項1又は2に記載の硬度成分除去装置。
【請求項6】
さらに、前記第5の通水管から前記陽イオン交換樹脂層内上方向に再生液を通液させるとともに前記第4の通水管から再生押え水を通水させる第1の再生液供給機構と、前記陽イオン交換樹脂層を経た後の再生液及び再生押え水を前記第6の通水管から排出させる第1の再生液排出機構を有する請求項2に記載の硬度成分除去装置。
【請求項7】
さらに、前記第4の通水管から逆洗水を前記活性炭層及び前記除鉄除マンガン触媒層へ上方向に通水させる第2の逆洗水供給機構と、前記活性炭層及び前記除鉄除マンガン触媒層を経た後の逆洗水を前記第1の通水管から排水させる第2の逆洗水排出機構を有する請求項1又は2に記載の硬度成分除去装置。
【請求項8】
原水供給機構が、500L/時間以上120000L/時間以下で原水を供給する、請求項4に記載の硬度成分除去装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の硬度成分除去装置と、脱気装置と、逆浸透膜装置と、をこの順に備え、
さらに、各装置間を接続して被処理水を移送する配管と、
前記逆浸透膜装置の供給水にアルカリを添加して供給水のpHを9以上11以下に調整するアルカリ添加装置を備える、
純水製造システム。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の硬度成分除去装置と、脱気装置と、陰イオン交換樹脂装置と、をこの順に備え、
さらに、各装置間を接続して被処理水を移送する配管を備える、
純水製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3種の水処理材を一体化して水中の硬度成分を除去する硬度成除去装置及びこれを用いた純水製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、井水や市水などの原水を被処理水として、水中の不純物を除去することで処理水を生成する水処理システムとして、給水ライン上に、原水に含まれる鉄分及びマンガン分を除去する除鉄除マンガン装置を備えた技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この水処理システムは、除鉄除マンガン処理装置、活性炭装置、陽イオン交換樹塔と、これらを接続する通水管により構成されており、被処理水を、除鉄除マンガン処理装置、活性炭装置、陽イオン交換樹塔に、通水管を介してこの順に通水させて、被処理水中の、硬度金属イオン(鉄、マンガン、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムなど)を除去して処理水を生成する。
【0003】
また、ろ過処理とイオン交換処理を行う水処理装置において、装置の設置面積を小さくするために、これらを一体化させた水処理装置も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-083666号
【特許文献2】特開平10-80683号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した除鉄除マンガン装置を備えた水処理システムでは、水処理の繰り返しにより生じたろ材の洗浄や除鉄除マンガン処理材の洗浄、劣化した陽イオン交換樹脂の再生が必要となる。しかし、この水処理システムでは、除鉄除マンガン処理装置、活性炭装置、陽イオン交換樹塔のそれぞれを別個に洗浄又は再生を行う必要があり、そのための洗浄廃水や再生排水の量が増大するという課題があった。
【0006】
一方、ろ過処理とイオン交換処理を一体化した水処理装置では、イオン交換処理材の再生の際に、酸性やアルカリ性の再生液がろ過材に接触することとなり、ろ過材の早期劣化を招き、ひいては水質劣化につながりかねない。
【0007】
また、除鉄除マンガン処理及びその後段の活性炭処理は触媒処理であり、理想的には再生等は不要である。しかし、原水中の濁りの原因物質や微粒子および微生物等が処理材に付着するため、ろ過処理と同様の洗浄が必要となる。一方、イオン交換処理は負荷されたイオン交換量がイオン交換容量を超えれば機能しなくなるので、再生が必須である。この、除鉄除マンガン処理材及び活性炭処理材の洗浄と、イオン交換処理材の再生の時期は、同じになるとは限らない。したがって、これらのろ過処理とイオン交換処理を一体化した水処理装置は、例えば、10m3/h以上の大型の装置では、あまり有効ではないと考えられていた。
【0008】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであって、除鉄除マンガン処理と陽イオン交換処理を一体化しつつ、各水処理材の劣化を抑制し、効率的な洗浄及び再生を可能とした硬度成分除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は次の通りのものである。
[1]内部に少なくとも2つの通水可能な仕切り板を備えて、前記仕切り板により上下方向に少なくとも3つの処理部に区画された水処理容器と、前記2つの仕切り板のうち最上段の仕切り板上の第1の処理部と、前記第1の処理部内に設けられた除鉄除マンガン触媒層と、前記2つの仕切り板のうち下段の仕切り板上の第2の処理部と、前記第2の処理部内に設けられた活性炭層と、前記2つの仕切り板のうち下段の仕切り板より下の第3の処理部と、前記第3の処理部内に設けられた陽イオン交換樹脂層と、前記水処理容器上部から外部に通じる第1の通水管と、前記第1の処理部内に設けられ、前記除鉄除マンガン触媒層の上方から外部に通じる第2の通水管と、前記第2の処理部内に設けられ、前記活性炭層の上方から外部に通じる第3の通水管と、前記第3の処理部内に設けられ、前記陽イオン交換樹脂層上方から外部に通じる第4の通水管と、前記水処理容器下部から外部に通じる第5の通水管と、を有する硬度成分除去装置。
[2]さらに、前記陽イオン交換樹脂層内を貫通して外部に通じる第6の通水管を有する[1]の硬度成分除去装置。
[3]第3の処理部の下部にさらに、最下段の仕切り板を有する[1]又は[2]の硬度成分除去装置。
【0010】
[4]さらに、前記第2の通水管から被処理水を通液させる原水供給機構と、前記被処理水に酸化剤を添加する酸化剤供給装置と、前記除鉄除マンガン触媒層、前記活性炭層及び前記陽イオン交換樹脂層を経た後の被処理水を処理水として前記第5の通水管から排出させる処理水排出機構を有する[1]乃至[3]のいずれか1つの硬度成分除去装置。
[5]さらに、前記第5の通水管から逆洗水を前記陽イオン交換樹脂層内上方向に通液させる第1の逆洗水供給機構と、前記陽イオン交換樹脂層を経た後の逆洗水を前記第4の通水管から排出させる第1の逆洗水排出機構を有する[1]乃至[4]のいずれか1つの硬度成分除去装置。
[6]さらに、前記第5の通水管から前記陽イオン交換樹脂層内上方向に再生液を通液させるとともに前記第4の通水管から再生押え水を通水させる第1の再生液供給機構と、前記陽イオン交換樹脂層を経た後の再生液及び再生押え水を前記第6の通水管から排出させる第1の再生液排出機構を有する[2]乃至[5]のいずれか1つの硬度成分除去装置。
[7]さらに、前記第4の通水管から逆洗水を前記活性炭層及び前記除鉄除マンガン触媒層へ上方向に通水させる第2の逆洗水供給機構と、前記活性炭層及び前記除鉄除マンガン触媒層を経た後の逆洗水を前記第1の通水管から排水させる第2の逆洗水排出機構を有する[1]乃至[6]のいずれか1つの硬度成分除去装置。
[8]原水供給機構が、500L/時間以上120000L/時間以下で原水を供給する、[4]乃至[7]のいずれか1つの硬度成分除去装置。
【0011】
[9][1]乃至[8]のいずれか1つの硬度成分除去装置と、脱気装置と、逆浸透膜装置と、をこの順に備え、さらに、各装置間を接続して被処理水を移送する配管と、前記逆浸透膜装置の供給水にアルカリを添加して供給水のpHを9以上11以下に調整するアルカリ添加装置を備える、純水製造システム。
[10][1]乃至[8]のいずれか1つの硬度成分除去装置と、脱気装置と、陰イオン交換樹脂装置と、をこの順に備え、さらに、各装置間を接続して被処理水を移送する配管を備える、純水製造システム。
【0012】
なお、本明細書において「~」の符号は、符号の左の値以上右の値以下の数値範囲を表す。
【発明の効果】
【0013】
本発明の硬度成分除去装置によれば、除鉄除マンガン処理と陽イオン交換処理を一体化しつつ、各水処理材の劣化を抑制し、効率的に洗浄及び再生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態の硬度成分除去装置100を概略的に示す断面図である。
【
図2】第2の実施形態の硬度成分除去装置200を概略的に示す断面図である。
【
図3】実施形態の空気逆洗工程における空気の流通方向を概略的に示した図である。
【
図4】実施形態の陽イオン交換樹脂の逆洗工程における逆洗水の流通方向を概略的に示した図である。
【
図5】実施形態の除鉄除マンガン触媒と活性炭の逆洗工程における逆洗水の流通方向を概略的に示した図である。
【
図6】実施形態の陽イオン交換樹脂の再生工程における再生液及び再生押え水の流通方向を概略的に示した図である。
【
図7】実施形態の洗浄工程における逆洗水の流通方向を概略的に示した図である。
【
図8】第1の実施形態の純水製造システム300を概略的に示すフロー図である。
【
図9】第2の実施形態の純水製造システム400を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1に、本発明の第1の実施形態の硬度成分除去装置100の縦断面を概略的に示す。
(硬度成分除去装置)
図1に示す硬度成分除去装置100は、内部に水処理材を収容可能な水処理容器1を備えている。この水処理容器1は、例えば、一般構造用圧延鋼などの強硬度の鋼鉄材が、内空円筒状に成型された水処理塔である。水処理容器1の内壁面は、硬質天然ゴムシートでライニングされていてもよい。水処理容器1の塔高は、好ましくは2m以上7m以下、より好ましくは4m以上6m以下であり、水処理容器の内容積は、好ましくは700L以上58000L以下、より好ましくは1500L以上50000L以下であると本発明の効果が顕著に得やすい。本実施形態の硬度成分除去装置100は、塔高が抑えられるため、例えば、半導体製造工場の建屋内であっても、問題なく設置することが可能である。
【0016】
水処理容器1の内部には、水処理容器の内部を上下に仕切る2つの通水可能な仕切り板が設置されている。これらの仕切り板を、水処理容器1内の上から下へ、第1の仕切り板11、第2の仕切り板12と呼ぶ。第1の仕切り板11及び第2の仕切り板12により、水処理容器1の内部空間は上下に少なくとも3つに区画され、この3つの内部空間がそれぞれ、水処理容器内の上から下へ、第1の処理部21、第2の処理部22、第3の処理部23を構成する。仕切り板は本発明の効果を損なわない限り、3つ以上備えられていてもよい。本実施形態の硬度成分除去装置100は、上記した仕切り板を用いるため、従来の水処理塔に用いられるろ材の支持床(砂利等)が不要となり、装置構造を簡略化して装置を軽量化することができる。また、硬度成分除去装置100内の通水抵抗を下げられるため、装置の消費電力を抑えることができる。なお、ここでの上下は、重力の方向を下、重力の反対方向を上という。
【0017】
第1の仕切り板11及び第2の仕切り板12に使用される仕切り板の構造は、水が流通可能であるとともに、水処理材(除鉄除マンガン触媒、活性炭、陽イオン交換樹脂)が通過できない構造であれば特に限定されない。仕切り板としては、スリットやメッシュによって水を流通可能としたストレーナーなどを使用することができる。第1の仕切り板11及び第2の仕切り板12は、それぞれ水処理容器1内に配置されて固定されていてもよいし、水処理容器1と一体的に形成されていてもよい。
【0018】
第1の処理部21は、水処理容器1内上方の、第1の仕切り板11の上部に、第1の仕切り板11を底面、水処理容器1の上方内壁を壁面、水処理容器1の上面を上面として構成される。第1の処理部21内には、除鉄除マンガン触媒層31が設置されている。除鉄除マンガン触媒層31は第1の処理部21の上面より低く配設されており、除鉄除マンガン触媒層31の上方は所定の容積の空間である。
【0019】
第1の処理部21における鉄除マンガン触媒層31の占有体積(層高)は、第1の処理部21の高さの0.5倍以上0.8倍以下であることが好ましい。鉄除マンガン触媒層31の占有体積(層高)が上記範囲であると、通水時に、鉄除マンガン触媒の充填密度が一部不均等な状態となり、鉄除マンガン触媒層31内に大きな空間が生じ、そこから大流量で被処理水が流れてしまう現象(チャンネル現象)を解消することができる。また、微生物等によって鉄除マンガン触媒同士が付着して大きな塊となること(クランピング)を抑制することができるほか、スカムや不純物など除鉄除マンガン触媒層31内の堆積物等が排出されやすいという効果がある。
【0020】
除鉄除マンガン触媒層31は、除鉄除マンガン触媒が積層されて成り、被処理水中の鉄及びマンガンを除去する。除鉄除マンガン触媒は、例えば、表面に触媒コーティングされた粉砕粒状のろ過材である。触媒コーティングは、水中のマンガンイオンと酸化剤の反応触媒として作用する。除鉄除マンガン触媒層31に好適な除鉄除マンガン触媒としては、MSシリーズ、フェロライトMCシリーズ、フェロライトGCシリーズ(株式会社トーケミ製)、日本原料株式会社製マンガン砂、二酸化マンガン粒等が挙げられる。除鉄除マンガン触媒は一種を単独で用いてもよいし2種以上を混合又は積層して併用してもよい。
【0021】
第2の処理部22は、水処理容器1内の高さ方向の中央付近に、第1の仕切り板11を上面、水処理容器1の中央部内壁を壁面、第2の仕切り板12の上面を底面として構成される。第2の処理部22内には、活性炭層32が設置されている。活性炭層32は第2の処理部22の上面より低く配設されており、活性炭層32の上方は所定の容積の空間である。
【0022】
第2の処理部22における活性炭層32の占有体積(層高)は、第2の処理部22の高さの0.5倍以上0.8倍以下であることが好ましい。活性炭層32の占有体積(層高)が上記範囲であると、通水時の、チャンネル現象やクランピングを抑制することができるほか、スカムや不純物など活性炭層32内の堆積物等が排出されやすいという効果がある。
【0023】
活性炭層32は、活性炭が積層されて成り、被処理水中の、懸濁物質(SS)及び全有機炭素(TOC)を除去する。活性炭層32を構成する活性炭は、石油系活性炭、石炭系活性炭、ヤシガラ炭等である。充填密度を高くするとともに、後段の陽イオン交換樹脂へのダストの混入を低減する観点からは、活性炭は、石油系活性炭又はヤシガラ炭であることが好ましい。活性炭の形状は、球状、楕円球状、不定形粒状、粉末状であり、なかでも、球状の活性炭が、ダスト低減の観点から好ましい。球状の活性炭を用いる場合、その平均粒径は、0.2mm以上であることが好ましく、1.0mm以下であることが好ましい。また、活性炭表面に、銀等の触媒を担持して、殺菌効果や、酸化剤の分解効果を向上させた活性炭を使用してもよい。活性炭の硬さは、90%以上であることが好ましく、95%以上であることが好ましい。なお、活性炭の平均粒径及び硬さはJIS K 1474:2014のふるい分け法に準じて測定される値である。
【0024】
活性炭層32に好適な活性炭としては、例えば、球状活性炭BAC(株式会社クレハ製)、エバダイヤ(登録商標、水ing株式会社製)が挙げられる。活性炭は一種を単独で用いてもよいし2種以上を混合又は積層して併用してもよい。
【0025】
第3の処理部23は、水処理容器1内下方の、第2の仕切り板12の下部に、水処理容器1の底面を底面、水処理容器1の下方内壁を壁面、第2の仕切り板2を上面として構成される。第3の処理部23内には、陽イオン交換樹脂層33が設置されている。陽イオン交換樹脂層33は第3の処理部23の上面より低く配設されており、陽イオン交換樹脂層33の上方は所定の容積の空間である。
【0026】
第3の処理部23における陽イオン交換樹脂層33の占有体積(層高)は、第3の処理部23の高さの0.5倍以上0.8倍以下であることが好ましい。陽イオン交換樹脂層33の占有体積(層高)が上記範囲であると、通水時の、チャンネル現象やクランピングを抑制することができるほか、スカムや不純物など陽イオン交換樹脂層33内の堆積物等が排出されやすいという効果がある。
【0027】
陽イオン交換樹脂層33は、陽イオン交換樹脂が積層されて成り、被処理中の陽イオン、例えば、Na、K、Ca、Mgなどの金属イオンを除去する。陽イオン交換樹脂は、Na形又はH形のイオン交換基を有しており、当該イオン交換基のNa又はHが水中の陽イオンと交換されることで、上記の陽イオンが被処理水中から除去される。陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。陽イオン交換樹脂の陽イオン交換基は、後段での処理を簡略化できるため、H形が好ましい。なお、原水中の硬度成分が100mg/L as CaCO3以上の場合には、再生頻度が抑えられるためNa型の使用が好ましい。陽イオン交換樹脂の形状は例えば粒状である。
【0028】
強酸性陽イオン交換樹脂は、例えば、DDPスペシャルティ・プロダクツ・ジャパン株式会社製のアンバーライト(登録商標)IR120B、IR124、200CT252、アンバージェット1020、1024、1060、1220、C-255LFH、三菱ケミカル社製のダイヤイオン(登録商標)SK104、SK1B、SK110、SK112、PK208、PK212L、PK216、PK218、PK220、PK228、UBK08、UBK10、UBK12、ピュロライト社製のC100、C100E、C120E、C100x10、C100x12MB、C150、C160、SGC650、レバチット社製のモノプラスS108H、SP112、S1668、住化ケムテックス社製のデュオライト(登録商標)C20、C20LF、C255LFH、C26CH等である。
【0029】
弱酸性陽イオン交換樹脂は、例えば、オルガノ製のFPC3500、IRC76、三菱ケミカル社製のダイヤイオンWK10、WK11、WK100、WK40L、ピュロライト社製のC104、C106、C107E、C115E、SSTC104、レバチット社製のCNP80WS等である。
【0030】
陽イオン交換樹脂としては、上記したなかでも、DDPスペシャルティ・プロダクツ・ジャパン株式会社製のC-255LFHが好適である。陽イオン交換樹脂は一種を単独で用いてもよいし2種以上を混合又は積層して併用してもよい。
【0031】
本実施形態の硬度成分除去装置100における、除鉄除マンガン触媒層31、活性炭層32及び陽イオン交換樹脂層33の体積比は、高純度の処理水を得る観点から、活性炭層32/除鉄除マンガン触媒層31で表される体積比が、より好ましくは1~0.2、好ましくは0.7~0.3である。陽イオン交換樹脂層33/除鉄除マンガン触媒層31で表される体積比が、より好ましくは1~0.2、好ましくは0.6~0.4である。
【0032】
水処理容器1の上部には開口が設けられ、該開口に第1の通水管41が接続されている。また、水処理容器1の壁面には、4つの開口が設けられ、該開口に上から順に、第2の通水管42、第3の通水管43、第4の通水管44、第6の通水管46がそれぞれ接続されている。また、水処理容器1の下部には開口が設けられ、該開口に第5の通水管45が接続されている。また、水処理容器1の下部の開口には、液体が通流可能で陽イオン交換樹脂を通さないメッシュなどが設けられている。第1の通水管41、第2の通水管42、第3の通水管43、第4の通水管44、第5の通水管45、第6の通水管46によってそれぞれ、水処理容器1の内部が外部と通じており、空気や水、その他所定の液体が各通水管を介して水処理容器内外の所定の方向に流れることができる。
【0033】
第2の通水管42は、第1の処理部21内の、除鉄除マンガン触媒層31が配設されていない上部空間に、第2の通水管42を流通した水又は液体が、除鉄除マンガン触媒層31の上面全体に網羅的に散布されるように構成される。このように構成することで、除鉄除マンガン触媒の逆洗時の逆洗水を、除鉄除マンガン触媒層31の上面全体から第2の通水管42を介して排出させることができる。
【0034】
第3の通水管43は、第2の処理部22内の、活性炭層32が配設されていない上部空間に、第3の通水管43を流通した水又は液体が、活性炭層32の上面全体に、網羅的に散布されるように構成される。このように構成することで、活性炭の逆洗時の逆洗水を、活性炭層32の上方全体から第3の通水管43を介して排出させることができる。
【0035】
第4の通水管44は、第3の処理部22内の、陽イオン交換樹脂層33が配設されていない上部空間に、第4の通水管44を流通した水又は液体が、陽イオン交換樹脂層33の上面の平面全体に、網羅的に散布されるように構成される。このように構成することで、陽イオン交換樹脂の逆洗時の逆洗水を、陽イオン交換樹脂層33の上方全体から第4の通水管44を介して排出させることができる。
【0036】
第6の通水管46は、第3の処理部22内の、陽イオン交換樹脂層33内部を貫通して備えられている。第6の通水管46は、第6の通水管46の上方から下方へ流通した水又は液体が、陽イオン交換樹脂層33の横断面全体から、網羅的に集水されるように構成される。このように構成することで、陽イオン交換樹脂層33の下部から上方へ流通した水又は液体を、第6の通水管46を介して排出することもできる。
【0037】
第2の通水管42、第3の通水管43、第4の通水管44、第6の通水管46を構成する通水管は、それぞれ、例えば、1本の本管と、本管から分岐した複数の枝管からなる。具体的には、各通水管は、本管と、ラテラル管によって本管に接合された分岐管で構成することができる。この構成では、本管が、水処理容器1壁面の開口を貫通しており、分岐管が、水処理容器内部の各処理部の横断面全体にわたって配設される。本管及び分岐管の少なくとも1つの側面には所定の液体が流通可能な複数の開口が設けられている。なお、各通水管は、1本の本管のみを有するものに限られず、2本以上の本管とこれに接続された複数の分岐管を有する形態であってもよい。
【0038】
第1の通水管41、第2の通水管42、第3の通水管43、第4の通水管44、第5の通水管45の、水処理容器1外には、それぞれバルブV1、バルブV2、バルブV3、バルブV4、バルブV5が介装されており、さらにその外側にはそれぞれ、ポンプP1、ポンプP2、ポンプP3、ポンプP4、ポンプP5が設けられている。第6の通水管46の、水処理容器1外には、バルブV6が介装されている。バルブV1~V6は、例えば、各通水管の流路を開閉する開閉弁や、流量調整弁であり、自動制御可能な自動開閉弁や自動流量調整弁であってもよい。ポンプP1~P5は、例えば、各通水管へ所定の液体を流通させるための移送ポンプである。
【0039】
第2の通水管42には、酸化剤供給装置として、薬注ポンプDが接続されている。薬注ポンプDは、酸化剤を第2の通水管42に定量注入するポンプ及び注入管からなり、ポンプは、例えば、ダイヤフラムや電磁駆動を用いたポンプである。また、硬度成分除去装置100は、バルブV1~V6、ポンプP1~P5、薬注ポンプDを、予め入力したプログラムに従い自動制御する、制御装置(図示せず)を備えていてもよい。
【0040】
次に、第2の実施形態の硬度成分除去装置200について
図2を参照して説明する。
図2に、本発明の第2の実施形態の硬度成分除去装置200の縦断面を概略的に示す。
【0041】
第2の実施形態の硬度成分除去装置200は、3つの仕切り板を備える点で、第1の実施形態の硬度成分除去装置100と異なっているが、その他の構成は第1の実施形態の硬度成分除去装置100と同様であるので、同様の構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
第2の実施形態の硬度成分除去装置200では、第2の仕切り板12の下方に、第3の仕切り板13を有している。第3の仕切り板13の好ましい態様は第1の仕切り板11と同様であり、第3の仕切り板13は、水処理容器1内に配置されて固定されていてもよいし、水処理容器1と一体的に形成されていてもよい。硬度成分除去装置200において、第3の処理部23は、水処理容器1内下方の、第2の仕切り板12の下部に、第3の仕切り板13を底面、水処理容器1の下方内壁を壁面、第2の仕切り板12を上面として構成される。第3の処理部23内には、陽イオン交換樹脂層33が設置されている。陽イオン交換樹脂層33は第3の処理部23の上面より低く配設されており、陽イオン交換樹脂層33の上方は所定の容積の空間である。
【0043】
(水処理方法)
次に、
図1を参照して、硬度成分除去装置100を用いた水処理方法について説明する。
まず、制御装置により、バルブV2及びバルブV5が開、その他のバルブ(バルブV1、V3、V4、V6)が閉にされる。ポンプP2によって、市水、井水などの原水が被処理水として、第2の通水管42を介して水処理容器1内に供給される。このとき、薬注ポンプDが、第2の通水管42内を通流する原水に酸化剤を定量的に添加する。酸化剤は、例えば、次亜塩素酸又は次亜塩素酸塩であり、次亜塩素ナトリウムが好ましい。なお、原水の水質は、例えば、pH6以下、Mnが0.1~3mg/L、硬度が20~200mg/L asCaCO
3、濁度20以下、アルカリ度100mg/L asCaCO
3以下であり、酸化剤の添加量は、次亜塩素酸塩を用いる場合、塩素(Cl
2)濃度として、3~5質量ppmとなる濃度であることが好ましい。なお、バルブV2とポンプP2が原水供給機構を構成する。
【0044】
原水供給機構が供給する原水の量は、500L/h~120000L/hであることが好ましく、10000L/h~120000L/hであることがより好ましい。原水の供給量が上記範囲であると、装置の規模が大きくなるので、水処理材の一体化、逆洗や再生のための各機構の共通化、逆洗水の共通化等の効果を増大させることができる。また、装置の規模が大きいため、半導体や液晶製造用の純水や超純水の製造に特に好適に用いることができる。
【0045】
酸化剤の添加された原水は、第2の通水管42を構成する本管及び分岐管の開口から第1の処理部21の上方から下方に向けて散布され、除鉄除マンガン触媒層31を通流する。原水中のマンガンイオン及び鉄イオンは、酸化剤と反応して不溶化しており、原水が除鉄除マンガン触媒層31を通流する過程で、不溶化した鉄及びマンガンが該触媒層に吸着される。マンガンイオンの一部は不溶化されずに原水中に残留するが、このマンガンイオンは、除鉄除マンガン触媒層31の触媒作用によって不溶化されて、不溶化されたマンガンが該触媒層に吸着される。これによって、原水中の鉄及びマンガンが除去される。
【0046】
本実施形態の硬度成分除去装置100において、除鉄除マンガン触媒層31における被処理水の空間速度は、好適には10~20(1/h)である。空間速度は、ポンプP2の吐出圧やポンプP2のインバータ制御によって調整することができる。また、空間速度は、ポンプP2出口側のバルブV2として流量調整弁を用い、当該流量調節弁によって調節してもよい。
【0047】
鉄及びマンガンが除去された被処理水は、続いて、除鉄除マンガン触媒層31の下部に配設された第1の仕切り板11を通過し、第2の処理部22内へ通流され、さらに、活性炭層32内部を通流する。被処理水が活性炭層32を通流する過程で、被処理水に含有される懸濁物質(SS)及び全有機炭素(TOC)が吸着されて、被処理水中から除去される。また、酸化剤は活性炭によって分解されて塩化物イオンとなり、活性炭に吸着される。ここで分解される酸化剤は、主に、薬注ポンプDにより添加された酸化剤のうち、鉄やマンガンと反応せずに被処理水中に残留した酸化剤(残留塩素)である。被処理水は、除鉄除マンガン触媒層31を通流することで整流されているため、被処理水を流通量や速度の偏りなく活性炭層32内部に通流させることができる。このため、活性炭への処理負荷が活性炭層32上部より均等にかかるため、従来用いていた活性炭充填量の余裕分を割愛することができる。その結果、水処理容器内に充填される活性炭の量を少なくして、装置の小型化を実現しながら、十分な処理水水質を得ることができる。また、活性炭層32によって、被処理水中の残留塩素が吸着除去されるため、後段の陽イオン交換樹脂の劣化を抑制することができ、処理水水質向上につながる。なお、単純な活性炭の単層床塔の場合、活性炭層の上層に不活性ろ材を敷くことがあるが、本実施形態の硬度成分除去装置100ではその必要はない。したがって、活性炭層32の充填層高は、単純な活性炭の単層床塔と比較して、例えば、40~80%低くすることができる。
【0048】
本実施形態の硬度成分除去装置100において、活性炭層32における被処理水の空間速度は、好適には20~40(1/h)である。空間速度は、ポンプP2の吐出圧やポンプP2のインバータ制御によって調整することができる。また、空間速度は、ポンプP2出口側のバルブV2として流量調整弁を用い、当該流量調節弁によって調節してもよい。
【0049】
残留塩素が除去された被処理水は、続いて、活性炭層32の下部に配設された第2の仕切り板12を通過し、第3の処理部23内の上部から下方へ散布され、陽イオン交換樹脂層33内部を通流する。陽イオン交換樹脂として酸で再生したもの、すなわちH型の陽イオン交換樹脂を使用する場合、被処理水が陽イオン交換樹脂層33を通流する過程で、被処理水に含有されるNa、K、Ca、Mgなどの金属イオンがイオン交換されて、被処理水中から除去され、処理水が生成される。また、陽イオン交換樹脂として例えば塩化ナトリウムで再生したもの、すなわちナトリウム型の陽イオン交換樹脂を使用する場合、被処理水が陽イオン交換樹脂層33を通流する過程で、被処理水に含有されるNa及びKが除去される。このときも、被処理水は、除鉄除マンガン触媒層31及び活性炭層32を通流することで整流されているため、被処理水を流通量や速度の偏りなく陽イオン交換樹脂層33内部に通流させることができる。このため、陽イオン交換樹脂への処理負荷が樹脂層33上方より均等にかかるため、水処理容器内に充填される陽イオン交換樹脂の量を少なくして、装置の小型化を実現しながら、十分な処理水水質を得ることができる。なお、単純な陽イオン交換樹脂の単層床塔の場合、陽イオン交換樹脂の上層に不活性ろ材を敷くことがあるが、本実施形態の硬度成分除去装置100では、除鉄除マンガン触媒層31及び活性炭層32から直接被処理水が陽イオン交換樹脂層33に供給されるので、これらを通過する際に整流されるため、不活性ろ材を配置する必要はない。したがって、陽イオン交換樹脂層33の充填層高は、単純な陽イオン交換樹脂の単層床塔と比較して、例えば、40~80%低くすることができる。
【0050】
本実施形態の硬度成分除去装置100において、陽イオン交換樹脂層33における被処理水の空間速度は、好適には10~40(1/h)である。空間速度は、ポンプP2の吐出圧やポンプP2のインバータ制御によって調整することができる。また、空間速度は、ポンプP2出口側のバルブV2として流量調整弁を用い、当該流量調節弁によって調節してもよい。
【0051】
処理水は、第5の通水管45を流れて外部に排出され、取水される。ここで得られる処理水の水質は、例えば、マンガン濃度0.05ppm以下、鉄濃度0.3ppm以下、塩素濃度が0.1ppm以下、TOCが300μgC/L以下である。なお、バルブV5が処理水排出機構を構成する。
【0052】
(洗浄・再生装置と洗浄・再生方法)
次に、実施形態の硬度成分除去装置100の洗浄・逆洗装置及び再生装置、これらを用いた洗浄・逆洗方法、再生方法について説明する。実施形態の硬度成分除去装置100の洗浄・逆洗及び再生は、通常次の順序で行うが、必要に応じて任意の工程を組み合わせたり、順序を入れ替えてもよい。また、これらの工程は、予め入力したプログラムに従い、制御装置によってバルブやポンプを自動制御して行うことができる。
(1)空気逆洗工程
(2)陽イオン交換樹脂の逆洗工程
(3)除鉄除マンガン触媒と活性炭の逆洗工程
(4)陽イオン交換樹脂の再生工程
(5)洗浄工程
【0053】
(1)空気逆洗工程
図3は、空気逆洗工程における空気の流通方向を概略的に示した図である。
図3では、空気の流れる方向を太い矢印で示し、
図1に示したのと同じ構成には同一の符号を付して説明を省略するほか、一部の構成を省略して示す。以下、
図4~
図7においても同様である。
【0054】
空気逆洗工程は硬度成分除去装置100内の液体をすべて排出させた後に行われる。空気逆洗工程では、バルブV2とバルブV5を開、その他のバルブ(バルブV1、V3、V4、V6)を閉にして、図示しないブロアーによって、第5の通水管45を介して、硬度成分除去装置100内の上方に向けて空気を送り込む。送り込まれた空気は、陽イオン交換樹脂層23、活性炭層22、除鉄除マンガン触媒層21を順に通過して、第2の通水管42から排出される。送り込まれた空気により、凝集している陽イオン交換樹脂、活性炭、除鉄除マンガン触媒をほぐし、展開して、これらに付着している付着物を剥離させる。その結果、続く(2)陽イオン交換樹脂の逆洗工程、(3)除鉄除マンガン触媒と活性炭の逆洗工程における洗浄の精度を高めることができる。本実施形態の硬度成分除去装置100によれば、特別な設備を配備することなく、簡易に空気逆洗を行うことができるので、水処理材の長寿命化につながる。ここで、ブロアー及びバルブV5が空気供給機構を構成し、バルブV2が空気排出機構を構成する。なお、空気逆洗工程は、必須ではなく、硬度成分除去装置100を長期使用することで、付着物が陽イオン交換樹脂、活性炭、除鉄除マンガン触媒の各々に蓄積したタイミング、もしくは、陽イオン交換樹脂層33、活性炭層32、除鉄除マンガン触媒総31の各々の層内で樹脂や活性炭、除鉄除マンガン触媒同士がお互いに付着してしまい、クラスター状(すなわち、バクテリア等でのクランピング)になったタイミングで行うのが好適である。なお、一般に、陽イオン交換樹脂、活性炭、除鉄除マンガン触媒それぞれを単層床塔で用いた水処理システムでも、空気逆洗を可能にするため、ブロワーの設置が望まれるが、ブロワーの使用頻度が低い為、現実的には、設置しない場合も多い。本実施形態の硬度成分除去装置100では単一のブロワーで陽イオン交換樹脂層33、活性炭層32、除鉄除マンガン触媒層31の空気逆洗が可能であるので、この問題が解決される。
【0055】
(2)陽イオン交換樹脂の逆洗工程
図4は、陽イオン交換樹脂の逆洗工程における逆洗水の流通方向を概略的に示した図である。
図4では、液体の流れる方向を太い矢印で示す。
図5~
図7においても同様である。陽イオン交換樹脂の逆洗工程では、バルブV4とバルブV5を開、その他のバルブ(バルブV1、V2、V3、V6)を閉にして、ポンプP5によって、第5の通水管45を介して、硬度成分除去装置100内の上方に向けて逆洗水を送り込む。逆洗水は通常、純水又は超純水である。送り込まれた逆洗水は、陽イオン交換樹脂層23を通流して、第4の通水管44から排出される。陽イオン交換樹脂の逆洗工程により、陽イオン交換樹脂の付着物が洗浄除去される。なお、ポンプP5及びバルブV5が第1の逆洗水供給機構を構成し、バルブV4が第1の逆洗水排出機構を構成する。本実施形態の硬度成分除去装置100は、第4の通水管44及び第5の通水管45、それに付随するバルブV4、V5、ポンプP4、P5を備えることで、陽イオン交換樹脂単独で再生して、再生排液を活性炭や除鉄除マンガン触媒に接触させずに、硬度成分除去装置100外に排出することができる。このため、活性炭及び除鉄除マンガン触媒の劣化を最大限に抑制し、長期にわたって高い水質の処理水を得ることができる。
【0056】
(3)除鉄除マンガン触媒と活性炭の逆洗工程
図5は、除鉄除マンガン触媒と活性炭の逆洗工程における逆洗水の流通方向を概略的に示した図である。除鉄除マンガン触媒と活性炭の逆洗工程では、バルブV1とバルブV4を開、その他のバルブ(バルブV2、V3、V5、V6)を閉にして、ポンプP4によって、第4の通水管44を介して、硬度成分除去装置100内の上方に向けて逆洗水を送り込む。送り込まれた逆洗水は、活性炭層22、除鉄除マンガン触媒層21に、順に通流して、第1の通水管41から排出される。除鉄除マンガン触媒と活性炭の逆洗工程により、除鉄除マンガン触媒の付着物及び活性炭の付着物が洗浄除去される。なお、ポンプP4及びバルブV4が第2の逆洗水供給機構を構成し、バルブV1が第2の逆洗水排出機構を構成する。本実施形態の硬度成分除去装置100を用いることで、除鉄除マンガン触媒と活性炭の逆洗工程を一括して行うことができ、逆洗水及び逆洗排水の量を削減することができる。なお、(3)除鉄除マンガン触媒と活性炭の逆洗工程と後述する(4)陽イオン交換樹脂の再生工程は、同じタイミングで行うことが好ましい。
【0057】
(4)陽イオン交換樹脂の再生工程
図6は、陽イオン交換樹脂の再生工程における再生液及び再生押え水の流通方向を概略的に示した図である。陽イオン交換樹脂の再生工程では、バルブV4、V5、V6を開、その他のバルブ(バルブV1、V2、V3)を閉にする。ポンプP5によって、再生液を第5の通水管45から、硬度成分除去装置100内の上方へ向けて通流させる。同時に、ポンプP4によって再生押え水を第4の通水管44から供給する。イオン交換樹脂層32を通流した再生液及び押え水は、第6の通水管46を介して、硬度成分除去装置100外に排出される。ここでの再生押え水は、逆洗水と同様に、純水又は超純水であり、第6の通水管46より上に積層されたイオン交換樹脂を水流で下方に荷重して、第6の通水管46より下のイオン交換樹脂が、上方に通流される再生液によって浮き上がってくるのを押える役割を担う。再生液は、イオン交換基に捕捉された金属イオンを脱離させるもので、水酸化ナトリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、希塩酸等である。なお、ポンプP4、ポンプP5、バルブV4及びバルブV5が第1の再生液供給機構を構成し、バルブV6が、第1の再生液排出機構を構成する。
【0058】
(5)洗浄工程
図7は、洗浄工程における逆洗水の流通方向を概略的に示した図である。洗浄工程では、硬度成分除去装置100の全塔内に洗浄水を通流させるために、バルブV2とバルブV5を開、その他のバルブ(バルブV1、V3、V4、V6)を閉にして、ポンプP2によって、第2の通水管42を介して、硬度成分除去装置100内に洗浄水を送り込む。送り込まれた洗浄水は、除鉄除マンガン触媒層21、活性炭層22、陽イオン交換樹脂層23に、順に通流して、第5の通水管45から排出される。洗浄工程により、活性炭の付着物、除鉄除マンガン触媒の付着物及び陽イオン交換樹脂の付着物のほか、陽イオン交換樹脂の再生に使用され、陽イオン交換樹脂に残留した再生液が洗浄除去される。本実施形態の硬度成分除去装置100によれば、逆洗で付着物の除去された活性炭及び除鉄除マンガン触媒、再生を経た陽イオン交換樹脂を一括で洗浄できるので、洗浄排水量や洗浄時間、洗浄負荷(洗浄の手間)を軽減し、迅速に次の水処理を再開することができる。なお、バルブV2とポンプP2が、第1の洗浄水供給機構を構成し、バルブV5が第1の洗浄水排出機構を構成する。
【0059】
次に、(2)陽イオン交換樹脂の逆洗工程の変形例である、(2-1)陽イオン交換樹脂の洗浄工程について説明する。(2-1)陽イオン交換樹脂の洗浄工程は、(2)陽イオン交換樹脂の逆洗工程とは、(2-1)陽イオン交換樹脂の洗浄工程では逆洗水(洗浄水)の流通方向が、水処理の際の被処理水の流通方向と同じ(向流)である点で、異なっている。この変形例の工程では、バルブV4及びバルブV5を開、その他のバルブ(バルブV1、V2、V3、V6)を閉にする。ポンプP4によって洗浄水を第4の通水管44から供給する。洗浄水は、陽イオン交換樹脂層33を通流して、続いて、第5の通水管45を介して水処理容器1の外部へ排出される。なお、バルブV4とポンプP4が第2の洗浄水供給機構を構成し、バルブV5が第2の洗浄水排出機構を構成する。
【0060】
次に、(4)陽イオン交換樹脂の再生工程の変形例である、(4-1)陽イオン交換樹脂の向流再生工程について説明する。(4-1)陽イオン交換樹脂の向流再生工程は、(4)陽イオン交換樹脂とは、(4-1)陽イオン交換樹脂の向流再生工程では再生液の流通方向が、水処理の際の被処理水の流通方向と同じ(向流)である点で、異なっている。この変形例の工程では、バルブV4及びバルブV5を開、その他のバルブ(バルブV1、V2、V3、V6)を閉にする。ポンプP4によって再生液を第4の通水管44から供給する。再生液は、陽イオン交換樹脂層33を通流して、続いて、第5の通水管45を介して水処理容器1の外部へ排出される。なお、バルブV4とポンプP4が第2の再生液供給機構を構成し、バルブV5が第2の再生液排出機構を構成する。また、この変形例では再生液として、塩化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。
【0061】
次に、(4)陽イオン交換樹脂の再生工程の他の変形例である、(4-2)塩化ナトリウム水溶液を用いた陽イオン交換樹脂の再生工程について説明する。この変形例の工程では、バルブV2及びバルブV5を開、その他のバルブ(バルブV1、V3、V4、V6)を閉にする。この変形例の工程における再生液の流通経路は
図3と同様である。ポンプP5によって再生液を第5の通水管45から供給する。再生液は、陽イオン交換樹脂層33を通流して、続いて、活性炭層32及び除鉄除マンガン触媒層31を通流し、第2の通水管42を介して水処理容器1の外部へ排出される。なお、バルブV5とポンプP5が第3の再生液供給機構を構成し、バルブV2が第3の再生液排出機構を構成する。この再生方法によれば、陽イオン交換樹脂の再生廃液によって、活性炭層32及び除鉄除マンガン触媒層31を逆洗することができるため、逆洗用水及び逆洗廃水を削減することができる。
【0062】
次に、(3)除鉄除マンガン触媒と活性炭の逆洗工程の変形例として、活性炭と除鉄除マンガン触媒を別々に逆洗する方法について説明する。この方法では、活性炭の逆洗工程と除鉄除マンガン触媒の逆洗工程を別々に行う。活性炭の逆洗工程と除鉄除マンガン触媒の逆洗工程は、いずれか一方のみを行ってもよく、また、任意の順序で行ってよい。活性炭の逆洗工程では、バルブV3及びバルブV4を開、その他のバルブ(バルブV1、V2、V5、V6)を閉にする。ポンプP4によって逆洗水を第4の通水管44から供給する。逆洗水は、活性炭層32を通流して、続いて、第3の通水管43を介して水処理容器1の外部へ排出される。除鉄除マンガン触媒の逆洗工程では、バルブV1及びバルブV3を開、その他のバルブ(バルブV2、V4、V5、V6)を閉にする。ポンプP3によって逆洗水を第3の通水管43から供給する。逆洗水は、除鉄除マンガン触媒層31を通流して、続いて、第1の通水管41を介して硬度成分除去装置100の外部へ排出される。バルブV4とポンプP4が、第3の逆洗水供給機構を構成し、バルブV3が第3の逆洗水排出機構を構成する。また、バルブV3とポンプP3が、第4の逆洗水供給機構を構成し、バルブV1が第3の逆洗水排出機構を構成する。
【0063】
(純水製造システム)
ここでは、本実施形態の硬度成分除去装置100を用いた純水製造システムについて説明する。
図8は、第1の実施形態の純水製造システム300を概略的に示すフロー図である。
図8に示す純水製造システム300は、上述した硬度成分除去装置100と、脱気装置(DG)101と、逆浸透膜装置(RO)102とをこの順に備えており、さらに、各装置を接続して被処理水を移送する配管を備えている。脱気装置(DG)101は、例えば常圧脱気塔であり、被処理水中の炭酸ガスを除去する。逆浸透膜装置(RO)102は、被処理水中の塩類やイオン性の有機物、コロイド性の有機物を除去する。また、純水製造システム300は、逆浸透膜装置102の直前に設けられ、逆浸透膜装置102の供給側の配管内を流通する供給水にアルカリを添加して、供給水のpHを調整するアルカリ添加装置D1を有している。また、逆浸透膜装置(RO)102の後段に再生式混床式イオン交換装置又は電気再生式イオン交換装置が設置されていてもよい。また、紫外線照射装置、脱気膜や真空脱気装置等の脱酸素装置が、逆浸透膜装置(RO)102と再生式混床式イオン交換装置又は電気再生式イオン交換装置の間に設置されていてもよい。
【0064】
この純水製造システム300では、前段の硬度成分除去装置100が被処理水中の硬度成分を除去し、脱気装置101が水中の炭酸ガスを除去する。このように硬度成分と炭酸ガスの除去された被処理水にアルカリが注入されて、被処理水のpHが9~11程度の高pHに調整される。高pHに調整された被処理水が逆浸透膜装置102に供給されることで、逆浸透膜装置102において高効率で水中のシリカを除去することができるとともに、高水回収率(RO透過水量/RO供給水量)を実現することができる。特に、硬度成分除去装置100によって、高精度で硬度成分が除去されるほか、洗浄効率が高められることで水中への不純物の混入が著しく低減されることが、純水製造システム300における処理効率の向上に寄与する。アルカリとしては、通常、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムであるが、これらに限定されない。純水製造システム300により得られる純水の水質は例えば、TOC濃度が5μgC/L以下、抵抗率が17MΩ・cm以上である。
【0065】
図9は、第2の実施形態の純水製造システム400を概略的に示すフロー図である。
図9に示す純水製造システム400は、上述した硬度成分除去装置100と、脱気装置(DG)105と、陰イオン交換樹脂装置106とをこの順に備えており、さらに、これらの装置を接続して被処理水を移送する配管を備えている。脱気装置(DG)105は、例えば常圧脱気塔であり、被処理水中の炭酸ガスを除去する。陰イオン交換樹脂装置106は、強塩基性陰イオン交換樹脂又は弱塩基性陰イオン交換樹脂等の陰イオン交換可能な樹脂を内部に充填した樹脂塔であり、被処理水中の陰イオン成分(Cl
-、NO
3
-、SO
4
2-等)を除去する。
【0066】
この純水製造システム400では、前段の硬度成分除去装置100が被処理水中の硬度成分を除去し、脱気装置105が水中の炭酸ガスを除去する。このように硬度成分と炭酸ガスの除去された被処理水が陰イオン交換樹脂装置106に供給されることで、陰イオン交換樹脂装置106は高効率で陰イオン成分を除去することができる。特に、硬度成分除去装置100によって、高精度で硬度成分が除去されるほか、洗浄効率が高められることで水中への不純物の混入が著しく低減されることが、純水製造システム400における処理効率の向上に寄与する。純水製造システム300により得られる純水の水質は例えば、TOC濃度が5μgC/L以下、抵抗率が17MΩ・cm以上である。
【0067】
なお、上述した純水製造システム300及び純水製造システム400は、配管経路の任意の箇所に、被処理水移送のためのポンプやバルブを有していてもよい。また、純水製造システム300及び純水製造システム400は、原水水質に応じて、硬度成分除去装置100の前段に砂ろ過装置を備えていてもよい。この場合、砂ろ過装置により原水中の懸濁物質を除去して、後段のシステムの負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0068】
100、200…硬度成分除去装置、1…水処理容器、11…第1の仕切り板、11…第2の仕切り板、13…第3の仕切り板、21…第1の処理部、22…第2の処理部、23…第3の処理部、31…除鉄除マンガン触媒層、32…活性炭層、33…陽イオン交換樹脂層、D…薬注ポンプ、V1~V6…バルブ、P1~P5…ポンプ、101…脱気装置(DG)、102…逆浸透膜装置(RO)、105…脱気装置(DG)、106…陰イオン交換樹脂装置、D1…アルカリ添加装置、300、400…純水製造システム。