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特開2024-94348電動弁制御装置および電動弁装置、ならびに、電動弁の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094348
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電動弁制御装置および電動弁装置、ならびに、電動弁の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240702BHJP
   H02P 8/36 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
F16K31/04 A
H02P8/36
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062620
(22)【出願日】2024-04-09
(62)【分割の表示】P 2022020590の分割
【原出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩元 大志
(72)【発明者】
【氏名】石塚 勇介
(57)【要約】
【課題】ローターが適切な回転範囲で正常に回転できるか否かを判定できる電動弁制御装置を提供する。
【解決手段】電動弁制御装置は、第2方向回転規制状態Sr2から第1方向回転規制状態Sr1までの間または第1方向回転規制状態Sr1から第2方向回転規制状態Sr2の間にステッピングモーターに入力されたパルス数(入力数Xi)が設計数Xdより小さいときまたは入力数Xiが設計数Xdより大きい上限数Xuより大きいとき、ローターが正常に回転できないと判定する。
【選択図】図17

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制する第1ストッパ機構と、前記ローターが全開位置にあるときに前記ローターの前記第2方向への回転を規制する第2ストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第2方向に回転させ、
(2)前記ローターを前記第2方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第2方向への回転が規制された状態(以下、「第2方向回転規制状態」という。)になると、前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(3)前記ローターを前記第1方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第1方向への回転が規制された状態(以下、「第1方向回転規制状態」という。)になると、前記第2方向回転規制状態から前記第1方向回転規制状態までの間に前記ステッピングモーターに入力したパルス数(以下、「入力数」という。)を取得し、
(4)前記入力数が前記ローターを前記全開位置から前記基準位置まで回転させるときに前記ステッピングモーターに入力される設計上のパルス数(以下、「設計数」という。)以上でかつ前記設計数より大きい上限数以下のとき、前記ローターが正常に回転できると判定し、
(5)前記入力数が前記設計数より小さいときまたは前記入力数が前記上限数より大きいとき、前記ローターが正常に回転できないと判定する、ことを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項2】
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制する第1ストッパ機構と、前記ローターが全開位置にあるときに前記ローターの前記第2方向への回転を規制する第2ストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記ローターを前記第1方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第1方向への回転が規制された状態(以下、「第1方向回転規制状態」という。)になると、前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第2方向に回転させ、
(3)前記ローターを前記第2方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第2方向への回転が規制された状態(以下、「第2方向回転規制状態」という。)になると、前記第1方向回転規制状態から前記第2方向回転規制状態までの間に前記ステッピングモーターに入力したパルス数(以下、「入力数」という。)を取得し、
(4)前記入力数が前記ローターを前記基準位置から前記全開位置まで回転させるときに前記ステッピングモーターに入力される設計上のパルス数(以下、「設計数」という。)以上でかつ前記設計数より大きい上限数以下のとき、前記ローターが正常に回転できると判定し、
(5)前記入力数が前記設計数より小さいときまたは前記入力数が前記上限数より大きいとき、前記ローターが正常に回転できないと判定する、ことを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項3】
前記電動弁制御装置が、
前記ローターの回転により前記ステッピングモーターのステーターに生じる電圧を取得し、
(i)前記電圧の波形の面積、(ii)前記電圧の波形において周期的に観測される波の振幅、および(iii)前記電圧の波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、前記電動弁が前記第1方向回転規制状態であるか否かおよび前記第2方向回転規制状態であるか否かを判定する、請求項1または請求項2に記載の電動弁制御装置。
【請求項4】
前記ステーターが、A相ステーターとB相ステーターとを有し、
前記A相ステーターおよび前記B相ステーターは、前記ステッピングモーターに入力されたパルスに応じた駆動電流が供給され、
前記電動弁制御装置が、前記A相ステーターおよび前記B相ステーターの一方のみに前記駆動電流が供給されたときに他方に生じる前記電圧を取得する、請求項3に記載の電動弁制御装置。
【請求項5】
前記電動弁と、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の電動弁制御装置と、を有する電動弁装置。
【請求項6】
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制する第1ストッパ機構と、前記ローターが全開位置にあるときに前記ローターの前記第2方向への回転を規制する第2ストッパ機構と、を有する電動弁の制御方法であって、
(1)前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第2方向に回転させ、
(2)前記ローターを前記第2方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第2方向への回転が規制された状態(以下、「第2方向回転規制状態」という。)になると、前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(3)前記ローターを前記第1方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第1方向への回転が規制された状態(以下、「第1方向回転規制状態」という。)になると、前記第2方向回転規制状態から前記第1方向回転規制状態までの間に前記ステッピングモーターに入力したパルス数(以下、「入力数」という。)を取得し、
(4)前記入力数が前記ローターを前記全開位置から前記基準位置まで回転させるときに前記ステッピングモーターに入力される設計上のパルス数(以下、「設計数」という。)以上でかつ前記設計数より大きい上限数以下のとき、前記ローターが正常に回転できると判定し、
(5)前記入力数が前記設計数より小さいときまたは前記入力数が前記上限数より大きいとき、前記ローターが正常に回転できないと判定する、ことを特徴とする電動弁の制御方法。
【請求項7】
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制する第1ストッパ機構と、前記ローターが全開位置にあるときに前記ローターの前記第2方向への回転を規制する第2ストッパ機構と、を有する電動弁の制御方法であって、
(1)前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記ローターを前記第1方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第1方向への回転が規制された状態(以下、「第1方向回転規制状態」という。)になると、前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第2方向に回転させ、
(3)前記ローターを前記第2方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第2方向への回転が規制された状態(以下、「第2方向回転規制状態」という。)になると、前記第1方向回転規制状態から前記第2方向回転規制状態までの間に前記ステッピングモーターに入力したパルス数(以下、「入力数」という。)を取得し、
(4)前記入力数が前記ローターを前記基準位置から前記全開位置まで回転させるときに前記ステッピングモーターに入力される設計上のパルス数(以下、「設計数」という。)以上でかつ前記設計数より大きい上限数以下のとき、前記ローターが正常に回転できると判定し、
(5)前記入力数が前記設計数より小さいときまたは前記入力数が前記上限数より大きいとき、前記ローターが正常に回転できないと判定する、ことを特徴とする電動弁の制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁制御装置および電動弁制御装置を有する電動弁装置、ならびに、電動弁の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の電動弁の一例を開示している。このような電動弁は、エアコンの冷凍サイクルに組み込まれる。電動弁は、弁本体と、弁体と、弁体を移動させるためのステッピングモーターと、を有している。ステッピングモーターは、ローターとステーターとを有している。ステッピングモーターにパルスが入力されるとローターが回転する。電動弁は、ローターの回転に応じて弁体を移動させる移動機構を有する。ローターは、基準位置から全開位置までの間で回転される。ローターが基準位置にあるとき、ローターに取り付けられた可動ストッパが弁本体に取り付けられた固定ストッパに接して、ローターの閉弁方向への回転が規制される。ローターが全開位置にあるとき、弁体が弁本体の弁口から最も離れる。
【0003】
電動弁は、電動弁制御装置によって制御される。電動弁制御装置は、初期化動作において、ステッピングモーターにパルスを入力してローターを閉弁方向に回転させ、ローターを基準位置に位置付ける。ステッピングモーターに入力するパルスの数は、可動ストッパが固定ストッパに接するために十分な数(以下、「初期化数」という。)である。初期化数は、ローターを全開位置から基準位置まで回転させるときにステッピングモーターに入力される設計上のパルス数より大きい数に設定される。ローターが閉弁方向に回転して可動ストッパが固定ストッパに接すると、ローターが基準位置に位置付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/130928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動弁制御装置は、初期化動作において、ステッピングモーターに入力したパルス数が初期化数に達するまで、ステッピングモーターにパルスを入力する。しかしながら、例えば、移動機構に冷媒に含まれる異物が進入したり、移動機構が故障したりすると、ローターが基準位置と全開位置との間の位置で停止してしまうことがある。また、可動ストッパおよび固定ストッパは、接触を繰り返すことにより摩耗する。そして、可動ストッパおよび固定ストッパの摩耗が進むと、ローターが基準位置を閉弁方向に大きく過ぎた位置まで回転され、ローターを基準位置に位置付けることができなくなることがある。そのため、電動弁制御装置は、電動弁が正常に動作しないにもかかわらず、初期化動作後に電動弁の制御を開始してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、ローターが適切な回転範囲で正常に回転できるか否かを判定することができる電動弁制御装置および電動弁制御装置を有する電動弁装置、ならびに、電動弁の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電動弁制御装置は、
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制する第1ストッパ機構と、前記ローターが全開位置にあるときに前記ローターの前記第2方向への回転を規制する第2ストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第2方向に回転させ、
(2)前記ローターを前記第2方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第2方向への回転が規制された状態(以下、「第2方向回転規制状態」という。)になると、前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(3)前記ローターを前記第1方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第1方向への回転が規制された状態(以下、「第1方向回転規制状態」という。)になると、前記第2方向回転規制状態から前記第1方向回転規制状態までの間に前記ステッピングモーターに入力したパルス数(以下、「入力数」という。)を取得し、
(4)前記入力数が前記ローターを前記全開位置から前記基準位置まで回転させるときに前記ステッピングモーターに入力される設計上のパルス数(以下、「設計数」という。)以上でかつ前記設計数より大きい上限数以下のとき、前記ローターが正常に回転できると判定し、
(5)前記入力数が前記設計数より小さいときまたは前記入力数が前記上限数より大きいとき、前記ローターが正常に回転できないと判定する、ことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁制御装置は、
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制する第1ストッパ機構と、前記ローターが全開位置にあるときに前記ローターの前記第2方向への回転を規制する第2ストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記電動弁制御装置が、
(1)前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記ローターを前記第1方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第1方向への回転が規制された状態(以下、「第1方向回転規制状態」という。)になると、前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第2方向に回転させ、
(3)前記ローターを前記第2方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第2方向への回転が規制された状態(以下、「第2方向回転規制状態」という。)になると、前記第1方向回転規制状態から前記第2方向回転規制状態までの間に前記ステッピングモーターに入力したパルス数(以下、「入力数」という。)を取得し、
(4)前記入力数が前記ローターを前記基準位置から前記全開位置まで回転させるときに前記ステッピングモーターに入力される設計上のパルス数(以下、「設計数」という。)以上でかつ前記設計数より大きい上限数以下のとき、前記ローターが正常に回転できると判定し、
(5)前記入力数が前記設計数より小さいときまたは前記入力数が前記上限数より大きいとき、前記ローターが正常に回転できないと判定する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明において、
前記電動弁制御装置が、
前記ローターの回転により前記ステッピングモーターのステーターに生じる電圧を取得し、
(i)前記電圧の波形の面積、(ii)前記電圧の波形において周期的に観測される波の振幅、および(iii)前記電圧の波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、前記電動弁が前記第1方向回転規制状態であるか否かおよび前記第2方向回転規制状態であるか否かを判定する、ことが好ましい。
【0010】
本発明において、
前記ステーターが、A相ステーターとB相ステーターとを有し、
前記A相ステーターおよび前記B相ステーターは、前記ステッピングモーターに入力されたパルスに応じた駆動電流が供給され、
前記電動弁制御装置が、前記A相ステーターおよび前記B相ステーターの一方のみに前記駆動電流が供給されたときに他方に生じる前記電圧を取得する、ことが好ましい。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁装置は、
前記電動弁と、前記電動弁制御装置と、を有する。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁の制御方法は、
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制する第1ストッパ機構と、前記ローターが全開位置にあるときに前記ローターの前記第2方向への回転を規制する第2ストッパ機構と、を有する電動弁の制御方法であって、
(1)前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第2方向に回転させ、
(2)前記ローターを前記第2方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第2方向への回転が規制された状態(以下、「第2方向回転規制状態」という。)になると、前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(3)前記ローターを前記第1方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第1方向への回転が規制された状態(以下、「第1方向回転規制状態」という。)になると、前記第2方向回転規制状態から前記第1方向回転規制状態までの間に前記ステッピングモーターに入力したパルス数(以下、「入力数」という。)を取得し、
(4)前記入力数が前記ローターを前記全開位置から前記基準位置まで回転させるときに前記ステッピングモーターに入力される設計上のパルス数(以下、「設計数」という。)以上でかつ前記設計数より大きい上限数以下のとき、前記ローターが正常に回転できると判定し、
(5)前記入力数が前記設計数より小さいときまたは前記入力数が前記上限数より大きいとき、前記ローターが正常に回転できないと判定する、ことを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁の制御方法は、
弁口を有する弁本体と、ローターを有するステッピングモーターと、前記ローターが第1方向に回転されると前記弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制する第1ストッパ機構と、前記ローターが全開位置にあるときに前記ローターの前記第2方向への回転を規制する第2ストッパ機構と、を有する電動弁の制御方法であって、
(1)前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第1方向に回転させ、
(2)前記ローターを前記第1方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第1方向への回転が規制された状態(以下、「第1方向回転規制状態」という。)になると、前記ステッピングモーターにパルスを入力して前記ローターを前記第2方向に回転させ、
(3)前記ローターを前記第2方向に回転させているときに前記電動弁が前記ローターの前記第2方向への回転が規制された状態(以下、「第2方向回転規制状態」という。)になると、前記第1方向回転規制状態から前記第2方向回転規制状態までの間に前記ステッピングモーターに入力したパルス数(以下、「入力数」という。)を取得し、
(4)前記入力数が前記ローターを前記基準位置から前記全開位置まで回転させるときに前記ステッピングモーターに入力される設計上のパルス数(以下、「設計数」という。)以上でかつ前記設計数より大きい上限数以下のとき、前記ローターが正常に回転できると判定し、
(5)前記入力数が前記設計数より小さいときまたは前記入力数が前記上限数より大きいとき、前記ローターが正常に回転できないと判定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、
(1)電動弁のローターを第2方向に回転させる、
(2)電動弁が第2方向回転規制状態になると、ローターを第1方向に回転させる、
(3)電動弁が第1方向回転規制状態になると、第2方向回転規制状態から第1方向回転規制状態までの間にステッピングモーターに入力したパルス数(入力数)を取得する、
(4)入力数が設計数以上でかつ上限数以下のとき、ローターが正常に回転できると判定する、
(5)入力数が設計数より小さいときまたは入力数が上限数より大きいとき、ローターが正常に回転できないと判定する。
【0015】
または、本発明によれば、
(1)電動弁のローターを第1方向に回転させる、
(2)電動弁が第1方向回転規制状態になると、ローターを第2方向に回転させる、
(3)電動弁が第2方向回転規制状態になると、第1方向回転規制状態から第2方向回転規制状態までの間にステッピングモーターに入力したパルス数(入力数)を取得する、
(4)入力数が設計数以上でかつ上限数以下のとき、ローターが正常に回転できると判定する、
(5)入力数が設計数より小さいときまたは入力数が上限数より大きいとき、ローターが正常に回転できないと判定する。
【0016】
ローターが基準位置から全開位置までの間で正常に回転できる場合、ローターを第1方向に回転させると第1ストッパ機構によって第1方向への回転が規制され(第1方向回転規制状態)、ローターを第2方向に回転させると第2ストッパ機構によって第2方向への回転が規制される(第2方向回転規制状態)。また、第1ストッパ機構および第2ストッパ機構はローターの回転を規制することにより摩耗し、摩耗が進むと基準位置または全開位置を過ぎた位置までローターが回転可能となる。そのため、ローターが基準位置から全開位置までの範囲を含む適切な回転範囲で正常に回転できる場合、入力数が設計数以上でかつ設計数より大きい上限数以下になる。上限数は、摩耗を考慮して設計数に基づいて設定される。このことから、入力数を設計数および上限数と比較することによって、ローターが適切な回転範囲で正常に回転できるか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例に係る電動弁装置を有するエアコンシステムのブロック図である。
図2図1の電動弁装置の断面図である。
図3図2の電動弁装置が有するローターおよびステーターを示す図である。
図4図2の電動弁装置が有するコンピュータ、モータードライバおよびステッピングモーターを説明する図である。
図5】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[1]入力時)。
図6】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[2]入力時)。
図7】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[3]入力時)。
図8】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[4]入力時)。
図9】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[5]入力時)。
図10】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[6]入力時)。
図11】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[7]入力時)。
図12】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[8]入力時)。
図13】電動弁装置の初期化動作において、ローターの回転によってステーターに生じた電圧の波形の一例を示す図である。
図14図13の電圧の波形の一部を拡大した図である。
図15図13の電圧の波形の他の一部を拡大した図である。
図16図2の電動弁装置が有するコンピュータが実行する初期化動作の一例を示すフローチャートである。
図17図2の電動弁装置が有するコンピュータが実行する初期化動作の一例を示すフローチャートである(図16の続き)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例に係る電動弁装置について、図1図17を参照して説明する。本実施例に係る電動弁装置1は、例えば、エアコンの冷凍サイクルにおいて冷媒流量を制御する流量制御弁として使用される。
【0019】
図1は、本発明の一実施例に係る電動弁装置を有するエアコンシステムのブロック図である。図2は、図1の電動弁装置の断面図である。図3は、図2の電動弁装置が有するローターおよびステーターを示す図である。図3において、ローターおよびステーターを模式的に示している。図4は、図2の電動弁装置が有するコンピュータ、モータードライバおよびステッピングモーターを説明する図である。図4Aは、電動弁制御装置が有するコンピュータとモータードライバとステッピングモーターとの接続を模式的に示す。図4Bは、パルスとモータードライバがステーターに供給する駆動電流との対応の一例を示す。図5図12は、ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である。図5図12は、パルスP[1]~P[8]入力時に対応している。図5図12において、ローターおよびステーターを模式的に示している。図13は、電動弁装置の初期化動作において、ローターの回転によってステーターに生じた電圧の波形の一例を示す図である。図14は、図13の電圧の波形の一部(期間T1)を拡大した図である。図15は、図13の電圧の波形の他の一部(期間T7)を拡大した図である。図16図17は、図2の電動弁装置が有するコンピュータが実行する初期化動作の一例を示すフローチャートである。
【0020】
図1に、車両に搭載されるエアコンシステム100の一例を示す。このエアコンシステム100は、配管105を介して順に接続された圧縮機101、凝縮器102、電動弁装置1(電動弁5)および蒸発器103を有している。電動弁装置1は、膨張弁である。エアコンシステム100は、エアコン制御装置110を有している。エアコン制御装置110は、電動弁装置1と通信可能に接続されている。エアコン制御装置110は、電動弁装置1を用いて配管105を流れる冷媒の流量を制御する。
【0021】
図2に示すように、電動弁装置1は、電動弁5と、電動弁制御装置90と、を有している。
【0022】
各図に示すように、電動弁5は、弁本体10と、キャン30と、弁体40と、弁軸50と、連結機構60と、ガイドステム70と、ステッピングモーター80と、を有している。
【0023】
弁本体10は、本体部材11と、弁座部材21と、を有している。本体部材11は、円筒形状を有している。弁座部材21は、円板形状を有している。弁座部材21は、本体部材11の下端に接合されている。弁座部材21は、弁口22と、弁座23と、を有している。弁口22は、弁座部材21の中央を上下方向(軸線L方向)に貫通する円形孔である。弁座23は、弁座部材21の上面に形成された円環形状のテーパー面である。弁座23は、弁口22を囲んでいる。
【0024】
弁本体10は、弁室14を有している。本体部材11には、第1導管18がろう付けされている。第1導管18は、本体部材11を横方向(図2の左右方向)に貫通している。第1導管18は、弁室14に接続されている。弁座部材21には、第2導管28がろう付けされている。第2導管28は、上下方向に沿って配置されている。第2導管28は、弁口22に接続されている。
【0025】
キャン30は、上端が塞がれた円筒形状を有している。キャン30の外径は、本体部材11の外径と等しい。キャン30の内径は、本体部材11の内径より大きい。キャン30は、本体部材11の上端面に取り付けられている。具体的には、キャン30の下端が、本体部材11の上端面の外周縁に溶接されている。
【0026】
弁体40は、軸部41と、弁部42と、スリーブ43と、を有している。軸部41は、円柱形状を有している。弁部42は、先端が下方を向く円錐形状を有している。弁部42は、軸部41の下端に同軸に連設されている。スリーブ43は、円筒形状を有している。スリーブ43の内側には、軸部41が挿通されている。スリーブ43は、軸部41に固着されている。
【0027】
弁体40は、弁室14において、弁口22と上下方向に対向している。弁部42は、弁座23に接離される。弁部42が弁座23から離れると、弁口22が開いて電動弁5が開弁状態となる。開弁状態では、第1導管18と第2導管28とが弁室14を介して接続される。弁部42が弁座23に接すると、弁口22が閉じて電動弁5が閉弁状態となる。閉弁状態では、第1導管18と第2導管28との接続が遮断される。
【0028】
弁軸50は、第1部分51と、第2部分52と、第3部分53と、を有している。第1部分51および第2部分52は、円柱形状を有している。第1部分51の外周面には、雄ねじ51cが形成されている。第2部分52の外径は、第1部分51の外径より小さい。第2部分52は、第1部分51の上端に同軸に連設されている。第3部分53は、円板形状を有している。第3部分53の外径は、第1部分51の外径より大きい。第3部分53は、第1部分51の下端に同軸に連設されている。
【0029】
第1部分51の上端には、上ストッパ体55が取り付けられている。第1部分51の下端には、下ストッパ体56が取り付けられている。
【0030】
連結機構60は、弁体40を弁軸50に連結する。連結機構60は、ホルダー61と、弁体支持部材62と、スペーサー63と、ばね受け部材65と、閉弁ばね66と、を有している。
【0031】
ホルダー61は、上端が塞がれた円筒形状を有している。ホルダー61は、弁軸50の第3部分53に固定されている。具体的には、弁軸50が第3部分53の下面から下方に延びる円筒形状の固定部54を有しており、固定部54がホルダー61の上壁部61aに形成された貫通孔に挿通されたのち拡径されている。これにより、上壁部61aが第3部分53と固定部54とに保持される。ホルダー61の内側空間は、均圧孔61bを介して弁室14と接続されている。
【0032】
弁体支持部材62は、円環板形状を有している。弁体支持部材62の外周縁は、ホルダー61の下端にかしめられている。弁体支持部材62の上面には、円環板形状のスペーサー63が配置されている。弁体支持部材62の内側およびスペーサー63の内側には、弁体40の軸部41が挿通されている。弁体40のスリーブ43は、軸部41が弁体支持部材62から脱落することを防いでいる。弁体支持部材62は、弁体40を上下方向に移動可能に支持している。
【0033】
ばね受け部材65は、円筒形状を有している。ばね受け部材65の下端には、径方向外方に突出するフランジ65aが形成されている。ばね受け部材65は、ホルダー61の内側に上下方向に移動可能に配置されている。ばね受け部材65の下面は、弁体40の軸部41の上端に接している。
【0034】
閉弁ばね66は、圧縮コイルばねである。閉弁ばね66は、ホルダー61の上壁部61aとばね受け部材65のフランジ65aとの間に配置されている。閉弁ばね66によって、ばね受け部材65が弁体40の軸部41に押し付けられる。閉弁ばね66は、ばね受け部材65を介して弁体40を下方に押している。
【0035】
なお、連結機構60を介さずに、弁体40と弁軸50とが直接的に接続されていてもよい。
【0036】
ガイドステム70は、円柱部71と、円筒部72と、保持部73と、円板74と、を有している。
【0037】
円柱部71の上端には、上ストッパ部75が形成されている。円柱部71の下端には、下ストッパ部76が形成されている。円柱部71の中央には、上下方向に貫通する雌ねじ71cが設けられている。雌ねじ71cは、弁軸50の雄ねじ51cと螺合される。
【0038】
円筒部72は、円柱部71の下端に連設されている。円筒部72の内側には、弁軸50の第3部分53、下ストッパ体56および連結機構60が配置されている。円筒部72の内径は、ホルダー61の外径と等しい。円筒部72は、ホルダー61を上下方向に移動可能に支持している。
【0039】
保持部73は、円筒部72の外周面から径方向外方に突出する環状の突部である。円板74は、環状に形成されている。円板74の内周縁は、保持部73に埋め込まれている。円板74の外周縁は、本体部材11の上端面の内周縁に溶接されている。ガイドステム70は、弁本体10に固定されている。
【0040】
ステッピングモーター80は、ローター81と、ステーター82と、を有している。
【0041】
ローター81は、上端が塞がれた円筒形状を有している。ローター81の外周面には、複数のN極および複数のS極が形成されている。複数のN極および複数のS極は、上下方向に延在している。図3に示すように、複数のN極および複数のS極は、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。本実施例において、ローター81は、N極を12個有し、S極を12個有している。互いに隣り合うN極とS極との間の角度は、15度である。
【0042】
ローター81は、キャン30の内側に回転可能に配置されている。ローター81の上壁部81aは、連結体83を介して、弁軸50の第2部分52と連結されている。弁軸50は、ローター81とともに回転する。弁軸50が回転すると、雄ねじ51cとガイドステム70の雌ねじ71cとのねじ送り作用によって、弁軸50、連結機構60および弁体40が上下方向に移動する。弁軸50とガイドステム70とは、ローター81の回転に応じて弁体40を移動させる移動機構である。
【0043】
ステーター82は、円筒形状を有している。ステーター82は、キャン30の外側に配置されている。ステーター82は、A相ステーター85と、B相ステーター86と、を有している。
【0044】
A相ステーター85は、複数のクローポール型の極歯85a、85bを内周に有している。図3において、A相ステーター85の径方向外方が上方に対応し、径方向内方が下方に対応する。極歯85aの先端は下方に向いており、極歯85bの先端は上方に向いている。極歯85aと極歯85bとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。本実施例において、A相ステーター85は、極歯85aを12個有し、極歯85bを12個有している。互いに隣り合う極歯85aと極歯85bとの間の角度は、15度である。A相ステーター85のコイル85cが通電されると、極歯85aと極歯85bとは互いに異なる極性の磁極となる。
【0045】
B相ステーター86は、複数のクローポール型の極歯86a、86bを内周に有している。図3において、B相ステーター86の径方向外方が上方に対応し、径方向内方が下方に対応する。極歯86aの先端は下方に向いており、極歯86bの先端は上方に向いている。極歯86aと極歯86bとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。本実施例において、B相ステーター86は、極歯86aを12個有し、極歯86bを12個有している。互いに隣り合う極歯86aと極歯86bとの間の角度は、15度である。B相ステーター86のコイル86cが通電されると、極歯86aと極歯86bとは互いに異なる極性の磁極となる。
【0046】
A相ステーター85は、B相ステーター86の上に同軸に配置されている。軸線L方向から見たときに互いに隣り合うA相ステーター85の極歯85aとB相ステーター86の極歯86aとの間の角度は、7.5度である。つまり、B相ステーター86は、極歯85aと極歯86aとが軸線L方向に並ぶ位置からA相ステーター85に対して軸線L周りに7.5度回転した位置にある。図4Aに示すように、A相ステーター85のコイル85cの端子A1、A2およびB相ステーター86のコイル86cの端子B1、B2は、電動弁制御装置90のモータードライバ94に接続されている。
【0047】
ステッピングモーター80にパルスP(P[1]~P[8])が入力されることによりローター81が回転する。具体的には、ステッピングモーター80のステーター82にパルスPに応じた駆動電流が供給されることによりローター81が回転する。本明細書において、「ステッピングモーター80にパルスPが入力されること」は、「ステッピングモーター80のステーター82にパルスPに応じた駆動電流が供給されること」と同義である。
【0048】
ステッピングモーター80には、図4Bに示すパルスP[1]~P[8]が順番に入力される。図5図12に、パルスP[1]~P[8]が入力されたときのローター81とステーター82との位置関係の例を示す。図5図12において、ローター81とステーター82(A相ステーター85、B相ステーター86)との位置関係を把握しやすくするため、基準となる極歯85aおよび基準となるローター81の磁極(S極)に黒丸を付している。
【0049】
ローター81を第1方向(図5図12において時計方向)に回転させる場合、ステッピングモーター80にパルスPを昇順(パルスP[1]~P[8]の順番)で循環的に入力する。ローター81とともに弁軸50が第1方向に回転して、弁軸50の雄ねじ51cとガイドステム70の雌ねじ71cとのねじ送り作用により、弁軸50が下方に移動する。弁軸50とともに連結機構60および弁体40も下方に移動する。弁体40が弁座23に接し、弁口22が閉じる(閉弁状態)。このときのローター81の位置は、閉弁位置Rcである。ローター81を第1方向にさらに回転させると、閉弁ばね66が圧縮されて弁軸50とともに連結機構60(ホルダー61、弁体支持部材62)が下方にさらに移動する。弁体40は下方に移動しない。そして、上ストッパ体55がガイドステム70の上ストッパ部75に接すると、ローター81の第1方向への回転が規制される。このときのローター81の位置は、基準位置Rxである。上ストッパ体55と上ストッパ部75とは、ローター81の第1方向への回転を規制する第1ストッパ機構S1である。
【0050】
ローター81を第2方向(図5図12において反時計方向)に回転させる場合、ステッピングモーター80にパルスPを降順(パルスP[8]~P[1]の順番)で循環的に入力する。ローター81とともに弁軸50が第2方向に回転して、弁軸50の雄ねじ51cとガイドステム70の雌ねじ71cとのねじ送り作用により、弁軸50が上方に移動する。弁軸50とともに連結機構60(ホルダー61、弁体支持部材62)も上方に移動する。弁体支持部材62とともに弁体40が上方に移動して、弁体40が弁座23から離れ、弁口22が開く(開弁状態)。ローター81を第2方向にさらに回転させる。そして、下ストッパ体56がガイドステム70の下ストッパ部76に接すると、ローター81の第2方向への回転が規制される。このときのローター81の位置は、全開位置Rzである。ローター81が全開位置Rzにあるとき、弁体40が弁口22から最も離れる。下ストッパ体56と下ストッパ部76とは、ローター81の第2方向への回転を規制する第2ストッパ機構S2である。
【0051】
電動弁5において、弁本体10(本体部材11、弁座部材21、弁口22、弁座23)、キャン30、弁体40、弁軸50、連結機構60(ホルダー61、ばね受け部材65)、ガイドステム70(円柱部71、円筒部72、円板74)およびステッピングモーター80(ローター81、ステーター82)は、それぞれの中心軸が軸線Lに一致する。
【0052】
本体部材11、弁座部材21、キャン30、弁体40および弁軸50は、例えば、ステンレス材などの金属製である。ガイドステム70は、合成樹脂製である。
【0053】
電動弁制御装置90は、複数の電子部品(図示なし)が実装された基板91を有している。電動弁制御装置90は、図1に示すように、不揮発性メモリ92と、通信装置93と、モータードライバ94と、コンピュータ95と、を有している。電動弁制御装置90は、エアコン制御装置110からの命令に基づいて、電動弁5を制御する。
【0054】
不揮発性メモリ92は、電源が切断された場合でも保持する必要があるデータを記憶する。不揮発性メモリ92は、例えば、EEPROMやフラッシュメモリである。不揮発性メモリ92には、設計数Xdと、上限数Xuと、が記憶されている。
【0055】
設計数Xdは、ローター81を全開位置Rzから基準位置Rxまで回転させるとき(または、ローター81を基準位置Rxから全開位置Rzまで回転させるとき)にステッピングモーター80に入力される設計上のパルス数である。そして、第1ストッパ機構S1および第2ストッパ機構S2は、ローター81の回転を規制することにより摩耗する。第1ストッパ機構S1および第2ストッパ機構S2が摩耗すると、全開位置Rzを第2方向に過ぎた位置、または、基準位置Rxを第1方向に過ぎた位置、までローター81が回転可能になり、ローター81の回転可能範囲が拡大する。そのため、上限数Xuは、摩耗による回転可能範囲の拡大を考慮して、設計数Xdより大きい数が設定される。具体的には、上限数Xuは、第1ストッパ機構S1および第2ストッパ機構S2において許容される摩耗量に応じて設計数Xdを大きくした数が設定される。例えば、上限数Xuは、設計数Xdの105~120%の数が設定される。ステッピングモーター80に上限数XuのパルスPが入力されたときのローター81の回転範囲は、全開位置Rzから基準位置Rxまでの範囲を含む最大回転可能範囲Wである。ローター81が少なくとも全開位置Rzから基準位置Rxまでの範囲で回転可能であり、多くとも最大回転可能範囲Wで回転可能であるとき、ローター81は適切な回転範囲で回転可能である。
【0056】
通信装置93は、有線通信バス120を介してエアコン制御装置110と通信可能に接続されている。エアコンシステム100は、例えば、Local Interconnect Network(LIN)やController Area Network(CAN)などの通信方式を採用している。なお、通信装置93は、エアコン制御装置110と無線通信可能に接続されていてもよい。
【0057】
モータードライバ94は、コンピュータ95から入力されるパルスPに基づいてステッピングモーター80に駆動電流を供給する。図4Bに、パルスPとモータードライバ94が供給する駆動電流との対応の一例を示す。図4Bにおいて、(+)は、端子A1から端子A2への駆動電流、または、端子B1から端子B2への駆動電流を供給することを示し、(-)は、端子A2から端子A1への駆動電流、または、端子B2から端子B1への駆動電流を供給することを示し、(0)は、駆動電流を供給しないことを示す。
【0058】
モータードライバ94は、コンピュータ95からパルスP[1]が入力されると、コイル85cに端子A1から端子A2への駆動電流を供給し(+)、コイル86cに駆動電流を供給しない(0)。
【0059】
モータードライバ94は、コンピュータ95からパルスP[2]が入力されると、コイル85cに端子A1から端子A2への駆動電流を供給し(+)、コイル86cに端子B1から端子B2への駆動電流を供給する(+)。
【0060】
モータードライバ94は、コンピュータ95からパルスP[3]が入力されると、コイル85cに駆動電流を供給せず(0)、コイル86cに端子B1から端子B2への駆動電流を供給する(+)。
【0061】
モータードライバ94は、コンピュータ95からパルスP[4]が入力されると、コイル85cに端子A2から端子A1への駆動電流を供給し(-)、コイル86cに端子B1から端子B2への駆動電流を供給する(+)。
【0062】
モータードライバ94は、コンピュータ95からパルスP[5]が入力されると、コイル85cに端子A2から端子A1への駆動電流を供給し(-)、コイル86cに駆動電流を供給しない(0)。
【0063】
モータードライバ94は、コンピュータ95からパルスP[6]が入力されると、コイル85cに端子A2から端子A1への駆動電流を供給し(-)、コイル86cに端子B2から端子B1への駆動電流を供給する(-)。
【0064】
モータードライバ94は、コンピュータ95からパルスP[7]が入力されると、コイル85cに駆動電流を供給せず(0)、コイル86cに端子B2から端子B1への駆動電流を供給する(-)。
【0065】
モータードライバ94は、コンピュータ95からパルスP[8]が入力されると、コイル85cに端子A1から端子A2への駆動電流を供給し(+)、コイル86cに端子B2から端子B1への駆動電流を供給する(-)。
【0066】
コンピュータ95は、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースおよびA/D変換器などが1つのパッケージに組み込まれた組込機器用のマイクロコンピュータである。コンピュータ95は、不揮発性メモリ92、通信装置93およびモータードライバ94を含んでいてもよい。コンピュータ95は、CPUがROMに格納されたプログラムを実行することにより、回転制御部96、電圧取得部97および状態判定部98として機能する。
【0067】
回転制御部96は、ステッピングモーター80にパルスPを入力してローター81を第1方向または第2方向に回転させる。具体的には、回転制御部96は、エアコン制御装置110から受信した命令に基づいて、モータードライバ94にパルスP[1]~P[8]を入力する。モータードライバ94は、入力されたパルスP[1]~P[8]に応じて、A相ステーター85のコイル85cおよびB相ステーター86のコイル86cに駆動電流を供給する。
【0068】
電圧取得部97は、ローター81の回転によってステーター82に生じる電圧(ステーター82に電磁誘導される電圧)を取得する。具体的には、電圧取得部97は、回転制御部96がパルスP[1]およびP[5]に応じてA相ステーター85のコイル85cのみに駆動電流を供給したときに、B相ステーター86のコイル86cの端子B1、B2間に生じる電圧VBを取得する。電圧取得部97は、回転制御部96がパルスP[3]およびP[7]に応じてB相ステーター86のコイル86cのみに駆動電流を供給したときに、A相ステーター85のコイル85cの端子A1、A2間に生じる電圧VAを取得する。なお、電圧取得部97は、回転制御部96がパルスP[1]~P[8]に応じてコイル85cおよびコイル86cに駆動電流を供給したときに、電圧VAおよび電圧VBを取得するようにしてもよい。この場合、電圧取得部97は、駆動電流によって端子A1、A2間に生じる電圧と電磁誘導される電圧VAとを分離し、駆動電流によって端子B1、B2間に生じる電圧と電磁誘導される電圧VBとを分離して、電圧VAおよび電圧VBを取得する。
【0069】
状態判定部98は、ローター81を基準位置Rxに位置付ける動作(以下、「初期化動作」という。)において、電圧取得部97によって取得された電圧VAの波形および電圧VBの波形に基づいて、電動弁5の状態を判定する。電動弁5は、回転許容状態Spと、第1方向回転規制状態Sr1と、第2方向回転規制状態Sr2と、を有している。回転許容状態Spは、ローター81の第1方向および第2方向への回転が許容される状態である。第1方向回転規制状態Sr1は、ローター81の第1方向への回転が規制される状態である。第2方向回転規制状態Sr2は、ローター81の第2方向への回転が規制される状態である。
【0070】
状態判定部98が、電圧VAの波形および電圧VBの波形に基づいて電動弁5の状態を判定する方法について説明する。
【0071】
図13図15は、初期化動作において測定した電圧VAの波形および電圧VBの波形の一例を示す。期間T1~T9のそれぞれにおいて、パルスP[1]~P[8]が昇順でステッピングモーター80に入力される。図13には記載されていないが、期間T1より前の電圧VAの波形および電圧VBの波形は、期間T1における電圧VAの波形および電圧VBの波形と同じ(ほぼ同じを含む)である。本実施例において、パルスPの周期は8msであり、1つの期間Tは64msである。期間Tにおいて、パルスP[1]~P[8]が入力される。時刻tcにおいて、弁体40が弁座23に接し、ローター81が閉弁位置Rcに位置付けられる。時刻txにおいて、上ストッパ体55が上ストッパ部75に接し、ローター81が基準位置Rxに位置付けられる。ローター81の第1方向への回転は、時刻tx前は許容され、時刻tx後は規制される。
【0072】
電圧VAの波形は、A波(a1~a9)と、B波(b1~b9)と、C波(c1~c9)と、D波(d1~d9)と、E波(e7~e9)と、を含む。A波およびB波は、全ての期間Tにわたって周期的に観測される負の電圧(-V)の波である。C波およびD波は、全ての期間Tにわたって周期的に観測される正の電圧(+V)の波である。E波は、時刻tx後に周期的に観測される正の電圧(+V)の波である。
【0073】
期間T1~T9におけるパルスP[7]に対応する区間の波形(C波およびD波を含む波形)の面積をSA1~SA9とすると、時刻tx後の期間T6~T9における面積SA6~SA9は、時刻tx前の期間T1~T5における面積SA1~SA5より小さい。なお、波形の面積とは、電圧0に対応する横軸と波形とによって囲まれる領域の面積である。
【0074】
また、D波は、時刻tx前には比較的振幅が大きい正の電圧であり(d1~d5)、時刻tx後に比較的振幅が小さい正の電圧になる(d6~d9)。
【0075】
また、E波は、時刻tx前には観測されず、時刻tx後に周期的に観測される(e7~e9)。つまり、E波は、全ての期間Tにわたって周期的に観測される波とは異なる新しい波であり、時刻tx後に周期的に出現する。
【0076】
電圧VBの波形は、F波(f1~f9)と、G波(g1~g9)と、H波(h1~h9)と、J波(j1~j9)と、K波(k1~k9)と、M波(m7~m9)と、を含む。F波およびG波は、全ての期間Tにわたって周期的に観測される正の電圧(+V)の波である。H波、J波およびK波は、全ての期間Tにわたって周期的に観測される負の電圧(-V)の波である。M波は、時刻tx後に周期的に観測される正の電圧(+V)の波である。
【0077】
期間T1~T9におけるパルスP[1]に対応する区間の波形(F波、G波およびH波を含む波形)の面積をSB1~SB9とすると、時刻tx後の期間T7~T9における面積SB7~SB9は、時刻tx前の期間T1~T6における面積SB1~SB6より小さい。
【0078】
また、G波は、時刻tx前には比較的振幅が大きい正の電圧であり(g1~g6)、時刻tx後に比較的振幅が小さい負の電圧になる(g7~g9)。なお、G波は、時刻tx後にH波と合わさり1つの波になる(g7~g9)。
【0079】
また、K波は、時刻tx前には比較的振幅が小さい負の電圧であり(k1~k5)、時刻tx後に比較的振幅が大きい負の電圧になる(k7~k9)。
【0080】
また、M波は、時刻tx前には観測されず、時刻tx後に周期的に観測される(m7~m9)。つまり、M波は、全ての期間Tにわたって周期的に観測される波とは異なる新しい波であり、時刻tx後に周期的に出現する。
【0081】
このことから、電圧VAの波形および電圧VBの波形は、時刻txの前後で以下の違いがある。
(i)時刻tx後の期間Tにおける波形の面積が、時刻tx前の期間Tにおける波形の面積より小さくなる。
(ii)時刻tx後の波の振幅が、時刻tx前の波の振幅と異なる。
(iii)時刻tx前に観測された波とは異なる波が時刻tx後に周期的に出現する。
【0082】
電圧VAの波形および電圧VBの波形は、第2ストッパ機構S2によってローター81の第2方向への回転が規制される前後で図13図15の波形と同様の違いがある。また、例えば、移動機構(弁軸50とガイドステム70)に異物が進入したり、移動機構が故障したりした場合も、ローター81の回転が規制される。このような場合も、電圧VAの波形および電圧VBの波形は、ローター81の回転が規制される前後で図13図15の波形と同様の違いがある。
【0083】
したがって、状態判定部98は、電圧VAの波形または電圧VBの波形において、上記(i)~(iii)に示す現象のうちの少なくとも1つを検出することによって、ローター81の第1方向への回転が規制されたこと、および、ローター81の第2方向への回転が規制されたことを判定することができる。
【0084】
状態判定部98は、初期化動作中に、電圧取得部97が取得した電圧VAの波形および電圧VBの波形において上記(i)~(iii)に示す現象のうちのいずれも検出していないとき、電動弁5が回転許容状態Spであると判定する。状態判定部98は、ローター81が第1方向に回転されているときに、上記(i)~(iii)に示す現象のうちの少なくとも1つを検出したとき、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であると判定する。状態判定部98は、ローター81が第2方向に回転されているときに、上記(i)~(iii)に示す現象のうちの少なくとも1つを検出したとき、電動弁5が第2方向回転規制状態Sr2であると判定する。
【0085】
なお、状態判定部98は、ローター81が第1方向に回転されているときに、上記(i)~(iii)に示す現象のうちの2つ以上を検出したとき、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であると判定し、ローター81が第2方向に回転されているときに、上記(i)~(iii)に示す現象のうちの2つ以上を検出したとき、電動弁5が第2方向回転規制状態Sr2であると判定するようにしてもよい。状態判定部98は、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1でなく、第2方向回転規制状態Sr2でもないとき、電動弁5が回転許容状態Spであると判定するようにしてもよい。
【0086】
以下に、状態判定部98が、ローター81が第1方向に回転されているときに、電動弁5の状態が第1方向回転規制状態Sr1または回転許容状態Spであるかを判定する一例を示す。
【0087】
状態判定部98は、ローター81が第1方向に回転されているとき、パルスP[1]~P[8]が入力される現在の期間Tが終了したタイミングで、電動弁5の状態を判定する。具体的には、状態判定部98は、以下の(1)~(8)を行う。
【0088】
(1)状態判定部98は、電圧VAの波形に関して、現在の期間TにおけるパルスP[7]に対応する区間の波形の面積SAを算出する。そして、状態判定部98は、当該面積SAが、1つ前の期間TにおけるパルスP[7]に対応する区間の波形の面積SAよりも所定の第1面積判定値以上小さくなったことを検出すると、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であると判定する。なお、面積SAは、期間Tの一部区間における波形の面積であってもよく、期間Tの全区間における波形の面積であってもよい。
【0089】
(2)状態判定部98は、電圧VAの波形に関して、現在の期間TにおけるD波の振幅を取得する。そして、状態判定部98は、当該振幅が、直前の期間TにおけるD波の振幅よりも所定の第1振幅判定値以上小さくなったことを検出すると、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であると判定する。
【0090】
(3)状態判定部98は、電圧VAの波形に関して、全ての期間Tにわたって観測されるA波、B波、C波、D波とは異なる新しいE波が連続する複数の期間T(例えば3つの期間)にわたって周期的に出現したことを検出すると、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であると判定する。
【0091】
(4)状態判定部98は、電圧VBの波形に関して、現在の期間TにおけるパルスP[1]に対応する区間の波形の面積SBを算出する。そして、状態判定部98は、当該面積SBが、1つ前の期間TにおけるパルスP[1]に対応する区間の波形の面積SBよりも所定の第2面積判定値以上小さくなったことを検出すると、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であると判定する。なお、面積SBは、期間Tの一部区間における波形の面積であってもよく、期間Tの全区間における波形の面積であってもよい。
【0092】
(5)状態判定部98は、電圧VBの波形に関して、現在の期間TにおけるG波の振幅を取得する。そして、状態判定部98は、当該振幅が、直前の期間TにおけるG波の振幅よりも所定の第2振幅判定値以上小さくなったことを検出すると、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であると判定する。
【0093】
(6)状態判定部98は、電圧VBの波形に関して、現在の期間TにおけるK波の振幅を取得する。そして、状態判定部98は、当該振幅が、直前の期間TにおけるK波の振幅よりも所定の第3振幅判定値以上大きくなったことを検出すると、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であると判定する。
【0094】
(7)状態判定部98は、電圧VBの波形に関して、全ての期間Tにわたって観測されるF波、G波、H波、J波、K波とは異なる新しいM波が連続する複数の期間T(例えば3つの期間)にわたって周期的に出現したことを検出すると、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であると判定する。
【0095】
なお、上記(1)、(2)、(4)~(6)で用いる面積および振幅は、連続する複数の期間Tにおける移動平均値であってもよい。また、上記(1)~(7)のうちの一部のみ行うようにしてもよい。
【0096】
(8)状態判定部98は、上記(1)~(7)において、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であると判定されなかったとき、電動弁5が回転許容状態Spであると判定する。
【0097】
状態判定部98は、同様に、ローター81が第2方向に回転しているときに、電動弁5の状態が第2方向回転規制状態Sr2または回転許容状態Spであるかを判定する。
【0098】
なお、状態判定部98は、上記(1)~(7)を仮判定とし、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であると2以上の所定の回数仮判定した場合に、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であると正式に判定し、第1方向回転規制状態Sr1であると正式に判定しなかった場合に、電動弁5が回転許容状態Spであると判定するようにしてもよい。
【0099】
次に、電動弁制御装置90の動作(初期化動作)の一例を、図16図17を参照して説明する。
【0100】
電動弁制御装置90(具体的にはコンピュータ95)は、エアコン制御装置110から初期化命令を受信すると(S110)、回転制御部96として機能し、ステッピングモーター80へのパルスP(降順)の入力を開始して、ローター81を第2方向に回転させる(S120)。これにより、パルスPに応じた駆動電流がステーター82に供給され、ローター81が第2方向に回転する。
【0101】
電動弁制御装置90は、電圧取得部97として機能し、A相ステーター85のコイル85cの端子A1、A2間に生じる電圧VAおよびB相ステーター86のコイル86cの端子B1、B2間に生じる電圧VBを取得する(S130)。
【0102】
電動弁制御装置90は、状態判定部98として機能し、パルスP[8]~P[1]が入力される現在の期間Tが終了したタイミングで、電圧VAおよび電圧VBに基づいて、電動弁5の状態(第2方向回転規制状態Sr2または回転許容状態Sp)を判定する(S140)。
【0103】
電動弁制御装置90は、電動弁5が回転許容状態Spであるとき(S150でN)、ステップS130~S150を繰り返す。
【0104】
電動弁制御装置90は、電動弁5が第2方向回転規制状態Sr2であるとき(S150でY)、ステッピングモーター80へのパルスPの入力を停止する(S160)。
【0105】
次に、電動弁制御装置90は、回転制御部96として機能し、ステッピングモーター80へのパルスP(昇順)の入力を開始して、ローター81を第1方向に回転させる(S170)。これにより、パルスPに応じた駆動電流がステーター82に供給され、ローター81が第1方向に回転する。
【0106】
電動弁制御装置90は、電圧取得部97として機能し、A相ステーター85のコイル85cの端子A1、A2間に生じる電圧VAおよびB相ステーター86のコイル86cの端子B1、B2間に生じる電圧VBを取得する(S180)。
【0107】
電動弁制御装置90は、状態判定部98として機能し、パルスP[1]~P[8]が入力される現在の期間Tが終了したタイミングで、電圧VAおよび電圧VBに基づいて、電動弁5の状態(第1方向回転規制状態Sr1または回転許容状態Sp)を判定する(S190)。
【0108】
電動弁制御装置90は、電動弁5が回転許容状態Spであるとき(S200でN)、ステップS180~S200を繰り返す。
【0109】
電動弁制御装置90は、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であるとき(S200でY)、ステッピングモーター80へのパルスPの入力を停止する(S210)。
【0110】
次に、電動弁制御装置90は、電動弁5が第2方向回転規制状態Sr2であると判定したときから第1方向回転規制状態Sr1であると判定したときまでにステッピングモーター80に入力したパルス数(以下、「入力数Xi」という。)を取得する(S220)。
【0111】
ローター81が少なくとも全開位置Rzから基準位置Rxまでの範囲で回転可能であり、かつ、多くとも最大回転可能範囲Wで回転可能であれば、入力数Xiが設計数Xd以上でかつ上限数Xu以下になる。
【0112】
ローター81が全開位置Rzから基準位置Rxまで回転可能でなければ、入力数Xiが設計数Xdより小さくなる。
【0113】
第1ストッパ機構S1および第2ストッパ機構S2の摩耗が進んで、ローター81が最大回転可能範囲Wを超えて回転可能であれば、入力数Xiが上限数Xuより大きくなる。
【0114】
電動弁制御装置90は、入力数Xiが設計数Xd以上でかつ上限数Xu以下のとき(S230でN、S240でN)、ローター81が全開位置Rzから基準位置Rxまでの間で正常に回転でき、かつ、ローター81が基準位置Rx(基準位置Rxの近傍の位置を含む)に位置付けられたとして、エアコン制御装置110に初期化動作が正常終了したことを通知する(S250)。
【0115】
電動弁制御装置90は、入力数Xiが設計数Xdより小さいとき(S230でY)、ローター81の回転が全開位置Rzおよび基準位置Rxまでの間の位置で規制され、ローター81が全開位置Rzから基準位置Rxまでの間で正常に回転できないとして、エアコン制御装置110に初期化動作が異常終了したことを通知する(S260)。
【0116】
電動弁制御装置90は、入力数Xiが上限数Xuより大きいとき(S230でN、S240でY)、ローター81が最大回転可能範囲Wを超えて回転され、ローター81を基準位置Rx(基準位置Rxの近傍の位置を含む)に位置付けることができないとして、エアコン制御装置110に初期化動作が異常終了したことを通知する(S260)。
【0117】
エアコン制御装置110は、電動弁5の初期化動作が正常終了した旨の通知を受けると、配管105を流れる冷媒の流量の制御を開始する。また、エアコン制御装置110は、電動弁5の初期化動作が異常終了した旨の通知を受けると、エアコンシステム100を停止したり、エアコンシステム100を縮退動作させたりするなど、異常発生時の動作を実行する。
【0118】
以上説明したように、本実施例に係る電動弁装置1は、電動弁5と電動弁制御装置90とを有している。電動弁5は、弁口22を有する弁本体10と、ローター81を有するステッピングモーター80と、ローター81が第1方向に回転されると弁口22に近づきかつローター81が第2方向に回転されると弁口22から離れる弁体40と、ローター81が基準位置Rxにあるときにローター81の第1方向への回転を規制する第1ストッパ機構S1と、ローター81が全開位置Rzにあるときにローター81の第2方向への回転を規制する第2ストッパ機構S2と、を有する。電動弁制御装置90は、電動弁5を制御する。
【0119】
そして、電動弁制御装置90は、初期化動作において、
(1)ステッピングモーター80にパルスPを入力してローター81を第2方向に回転させ、
(2)ローター81を第2方向に回転させているときに電動弁5が第2方向回転規制状態Sr2になると、ステッピングモーター80にパルスPを入力してローター81を第1方向に回転させ、
(3)ローター81を第1方向に回転させているときに電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1になると、第2方向回転規制状態Sr2から第1方向回転規制状態Sr1までの間にステッピングモーター80に入力したパルス数(入力数Xi)を取得し、
(4)入力数Xiが設計数Xd以上でかつ上限数Xu以下のとき、ローター81が全開位置Rzから基準位置Rxまでの間で正常に回転できかつローター81が最大回転可能範囲W内で回転されるとして、ローター81が正常に回転できると判定し、
(5)入力数Xiが設計数Xdより小さいときまたは入力数Xiが上限数Xuより大きいとき、ローター81が全開位置Rzから基準位置Rxまでの間で正常に回転できない、または、ローター81が最大回転可能範囲Wを超えて回転される、としてローター81が正常に回転できないと判定する。
【0120】
ローター81が全開位置Rzから基準位置Rxまでの間で正常に回転できる場合、ローター81を第2方向に回転させると第2ストッパ機構S2によって第2方向への回転が規制され(第2方向回転規制状態Sr2)、ローター81を第1方向に回転させると第1ストッパ機構S1によって第1方向への回転が規制される(第1方向回転規制状態Sr1)。また、第1ストッパ機構S1および第2ストッパ機構S2はローター81の回転を規制することにより摩耗し、摩耗が進むと全開位置Rzまたは基準位置Rxを過ぎた位置までローター81が回転可能となる。そのため、ローター81が全開位置Rzから基準位置Rxまでの範囲を含む適切な回転範囲で正常に回転できる場合、入力数Xiが設計数Xd以上でかつ上限数Xu以下になる。上限数Xuは、摩耗を考慮して設計数Xdに基づいて設定される。このことから、電動弁制御装置90は、入力数Xiを設計数Xdおよび上限数Xuと比較することによって、ローター81が適切な回転範囲で正常に回転できるか否かを判定することができる。
【0121】
また、電動弁制御装置90は、ローター81の回転によりステッピングモーター80のステーター82に生じる電圧VAおよび電圧VBを取得する。電動弁制御装置90は、(i)電圧VAおよび電圧VBの波形の面積、(ii)電圧VAおよび電圧VBの波形において周期的に観測される波の振幅、および(iii)電圧VAおよび電圧VBの波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であるか否かおよび第2方向回転規制状態Sr2であるか否かを判定する。このようにすることで、電圧VAおよび電圧VBについて比較的簡易な処理を行うことで電動弁5の状態を判定することができる。
【0122】
また、ステーター82が、A相ステーター85とB相ステーター86とを有する。A相ステーター85およびB相ステーター86は、ステッピングモーター80に入力されたパルスPに応じた駆動電流が供給される。電動弁制御装置90が、A相ステーター85のみに駆動電流を供給したときにB相ステーター86に生じる電圧VBを取得し、B相ステーター86のみに駆動電流を供給したときにA相ステーター85に生じる電圧VAを取得する。このようにすることで、電動弁制御装置90において、駆動電流によってA相ステーター85に生じる電圧と電圧VAとを分離する必要がなく、駆動電流によってB相ステーター86に生じる電圧と電圧VBとを分離する必要がない。そのため、比較的簡易な構成によって電圧VAおよび電圧VBを取得することができる。
【0123】
また、電動弁制御装置90は、電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であると判定したとき、ステッピングモーター80へのパルスPの入力を停止する。電動弁制御装置90は、電動弁5が第2方向回転規制状態Sr2であると判定したとき、ステッピングモーター80へのパルスPの入力を停止する。このようにすることで、ローター81の回転が規制されている状態でステッピングモーター80へのパルスPの入力が継続されることを防ぐことができる。そのため、第1ストッパ機構S1および第2ストッパ機構S2の摩耗を抑制して、電動弁5の耐久性を向上させることができる。
【0124】
上述した電動弁制御装置90は、電動弁5が回転許容状態Sp、第1方向回転規制状態Sr1または第2方向回転規制状態Sr2であるかを判定する。電動弁制御装置90は、これら以外の電動弁5の状態を判定するようにしてもよい。
【0125】
図13によれば、電圧VAの波形において、D波は、時刻tc前の各期間Tにおいて振幅が一定の正の電圧であり(d1、d2)、時刻tcから時刻txまでの間で振幅が漸減している(d3~d5)。また、電圧VBの波形において、K波は、時刻tc前の各期間において振幅が一定の負の電圧であり(k1、k2)、時刻tcから時刻txまでの間で振幅が漸減している(d3~d5)。これらは、ローター81が閉弁位置Rcを過ぎて閉弁ばね66が徐々に圧縮されることにより、ローター81の回転速度が徐々に低下することに起因すると推測される。そのため、電圧VAの波形または電圧VBの波形における波の振幅の漸減を検出することで、ローター81が閉弁位置Rcと基準位置Rxとの間の位置にあると判定することができる。
【0126】
そこで、電動弁制御装置90が、ローター81が第1方向に回転されている場合に、電圧VAの波形において周期的に観測されるD波の振幅が漸減したとき、および/または、電圧VBの波形において周期的に観測されるK波の振幅が漸減したとき、電動弁5が基準位置Rxの直前の位置にある状態Sqであると判定するようにしてもよい。状態Sqにおいて、ローター81は閉弁位置Rcと基準位置Rxとの間の位置にある。そのため、電動弁制御装置90は、ローター81が第1方向に回転されている場合に、電動弁5が状態Sqであると判定する前に電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1であると判定したとき、何らかの異常が生じてローター81が基準位置Rxに至る前にローター81の第1方向への回転が規制されたと判断することができる。
【0127】
上述した電動弁制御装置90は、初期化動作において、ローター81を基準位置Rxに位置付ける。電動弁制御装置90は、初期化動作において、ローター81を、基準位置Rxに代えて、全開位置Rzに位置付けるようにしてもよい。
【0128】
すなわち、電動弁制御装置90は、初期化動作において、
(1)ステッピングモーター80にパルスPを入力してローター81を第1方向に回転させ、
(2)ローター81を第1方向に回転させているときに電動弁5が第1方向回転規制状態Sr1になると、ステッピングモーター80にパルスPを入力してローター81を第2方向に回転させ、
(3)ローター81を第2方向に回転させているときに電動弁5が第2方向回転規制状態Sr2になると、第1方向回転規制状態Sr1から第2方向回転規制状態Sr2までの間にステッピングモーター80に入力したパルス数(入力数Xi)を取得し、
(4)入力数Xiが設計数Xd以上でかつ上限数Xu以下のとき、ローター81が基準位置Rxから全開位置Rzまでの間で正常に回転できかつローター81が最大回転可能範囲W内で回転されるとして、ローター81が正常に回転できると判定し、
(5)入力数Xiが設計数Xdより小さいときまたは入力数Xiが上限数Xuより大きいとき、ローター81が基準位置Rxから全開位置Rzまでの間で正常に回転できない、または、ローター81が最大回転可能範囲Wを超えて回転される、としてローター81が正常に回転できないと判定する。
【0129】
この構成においても、電動弁制御装置90は、ローター81が適切な回転範囲で正常に回転できるか否かを判定することができる。
【0130】
また、上述した電動弁制御装置90は、ローター81の回転によりステッピングモーター80のステーター82に生じる電圧VAおよび電圧VBに基づいて、ローター81の回転が規制されているか否かを判定する。電動弁制御装置90は、例えば、角度センサーによってローター81の回転角度を検出することにより、ローター81の回転が規制されているか否かを判定するようにしてもよい。
【0131】
また、上述した電動弁5は、ローター81が第1方向に回転すると、弁軸50に取り付けられたホルダー61が閉弁ばね66およびばね受け部材65を介して弁体40を下方に押す構成である。電動弁5は、ローター81が第1方向に回転すると、ローター81と弁軸50が直接的に弁体40を下方に押す構成でもよい。この構成において、弁体40が弁座23に接するとローター81の第1方向への回転が規制される。つまり、弁体40と弁座23とが第1ストッパ機構であり、弁体40が弁座23に接したときのローター81の位置が、基準位置Rxである。
【0132】
本明細書において、「円筒」や「円柱」等の部材の形状を示す各用語は、実質的にその用語の形状を有する部材にも用いられている。例えば、「円筒形状の部材」は、円筒形状の部材と実質的に円筒形状の部材とを含む。
【0133】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0134】
1…電動弁装置、5…電動弁、10…弁本体、11…本体部材、14…弁室、18…第1導管、21…弁座部材、22…弁口、23…弁座、28…第2導管、30…キャン、40…弁体、41…軸部、42…弁部、43…スリーブ、50…弁軸、51…第1部分、51c…雄ねじ、52…第2部分、53…第3部分、54…固定部、55…上ストッパ体、56…下ストッパ体、60…連結機構、61…ホルダー、61a…上壁部、61b…均圧孔、62…弁体支持部材、63…スペーサー、65…ばね受け部材、65a…フランジ、66…閉弁ばね、70…ガイドステム、71…円柱部、71c…雌ねじ、72…円筒部、73…保持部、74…円板、75…上ストッパ部、76…下ストッパ部、80…ステッピングモーター、81…ローター、81a…上壁部、82…ステーター、83…連結体、85…A相ステーター、85a…極歯、85b…極歯、85c…コイル、86…B相ステーター、86a…極歯、86b…極歯、86c…コイル、90…電動弁制御装置、91…基板、92…不揮発性メモリ、93…通信装置、94…モータードライバ、95…コンピュータ、96…回転制御部、97…電圧取得部、98…状態判定部、100…エアコンシステム、101…圧縮機、102…凝縮器、103…蒸発器、110…エアコン制御装置、120…有線通信バス、S1…第1ストッパ機構、S2…第2ストッパ機構、A1…端子、A2…端子、B1…端子、B2…端子、L…軸線、P…パルス、Rc…閉弁位置、Rx…基準位置、Rz…全開位置、Sp…回転許容状態、Sr1…第1方向回転規制状態、Sr2…第2方向回転規制状態、W…最大回転可能範囲、Xi…入力数、Xd…設計数、Xu…上限数

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-04-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テッピングモーターローターが第1方向に回転されると弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制する第1ストッパ機構と、前記ローターが全開位置にあるときに前記ローターの前記第2方向への回転を規制する第2ストッパ機構と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
記電動弁が前記ローターの前記第2方向への回転が規制された状態「第2方向回転規制状態」とい
記電動弁が前記ローターの前記第1方向への回転が規制された状態「第1方向回転規制状態」とい
前記電動弁が前記第2方向回転規制状態から前記ローターが前記第1方向に回転されて前記第1方向回転規制状態になるまでの間、または、前記電動弁が前記第1方向回転規制状態から前記ローターが前記第2方向に回転されて前記第2方向回転規制状態になるまでの間に前記ステッピングモーターに入力されたパルス数「入力数」とい
記ローターを前記全開位置から前記基準位置まで回転させるときに前記ステッピングモーターに入力される設計上のパルス数「設計数」というとすると
前記電動弁制御装置が、前記入力数が前記設計数より小さいときまたは前記入力数が前記設計数より大きい上限数より大きいとき、前記ローターが正常に回転できないと判定する、ことを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項2】
前記電動弁制御装置が、
前記ローターの回転により前記ステッピングモーターのステーターに生じる電圧を取得し、
(i)前記電圧の波形の面積、(ii)前記電圧の波形において周期的に観測される波の振幅、および(iii)前記電圧の波形において周期的に観測される波とは異なる新たな波の周期的な出現、のうちの少なくとも1つに基づいて、前記電動弁が前記第1方向回転規制状態であるか否かおよび前記第2方向回転規制状態であるか否かを判定する、請求項1に記載の電動弁制御装置。
【請求項3】
前記ステーターが、A相ステーターとB相ステーターとを有し、
前記A相ステーターおよび前記B相ステーターは、前記ステッピングモーターに入力されたパルスに応じた駆動電流が供給され、
前記電動弁制御装置が、前記A相ステーターおよび前記B相ステーターの一方のみに前記駆動電流が供給されたときに他方に生じる前記電圧を取得する、請求項に記載の電動弁制御装置。
【請求項4】
前記電動弁と、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の電動弁制御装置と、を有する電動弁装置。
【請求項5】
テッピングモーターローターが第1方向に回転されると弁口に近づきかつ前記ローターが第2方向に回転されると前記弁口から離れる弁体と、前記ローターが基準位置にあるときに前記ローターの前記第1方向への回転を規制する第1ストッパ機構と、前記ローターが全開位置にあるときに前記ローターの前記第2方向への回転を規制する第2ストッパ機構と、を有する電動弁の制御方法であって、
記電動弁が前記ローターの前記第2方向への回転が規制された状態「第2方向回転規制状態」とい
記電動弁が前記ローターの前記第1方向への回転が規制された状態「第1方向回転規制状態」とい
前記電動弁が前記第2方向回転規制状態から前記ローターが前記第1方向に回転されて前記第1方向回転規制状態になるまでの間、または、前記電動弁が前記第1方向回転規制状態から前記ローターが前記第2方向に回転されて前記第2方向回転規制状態になるまでの間に前記ステッピングモーターに入力されたパルス数「入力数」とい
記ローターを前記全開位置から前記基準位置まで回転させるときに前記ステッピングモーターに入力される設計上のパルス数「設計数」というとすると
記入力数が前記設計数より小さいときまたは前記入力数が前記設計数より大きい上限数より大きいとき、前記ローターが正常に回転できないと判定する、ことを特徴とする電動弁の制御方法。