(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094365
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】フルオロエーテル系化合物の質量分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20240702BHJP
H01J 49/16 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N27/62 G
H01J49/16 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024065680
(22)【出願日】2024-04-15
(62)【分割の表示】P 2023010103の分割
【原出願日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2022012348
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 裕香
(72)【発明者】
【氏名】田中 勇次
(72)【発明者】
【氏名】細田 一輝
(57)【要約】
【課題】フルオロエーテル系化合物を高感度で検出することができる質量分析方法を提供すること。
【解決手段】(1)フルオロエーテル系化合物および溶媒を含有する試料溶液を調製し、(2)前記試料溶液中のフルオロエーテル系化合物をイオン化するとともに、前記溶媒を除去することにより、イオンを生成させ、(3)前記イオンの質量分離を行うことにより前記イオンの質量を特定するフルオロエーテル系化合物の質量分析方法であり、前記イオンを生成させる際に、前記試料溶液を330℃以下の噴霧ガスとともに噴霧することにより液滴を生成させ、生成した前記液滴を190℃以下の乾燥ガスと接触させる質量分析方法を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)フルオロエーテル系化合物および溶媒を含有する試料溶液を調製し、
2)前記試料溶液中のフルオロエーテル系化合物をイオン化するとともに、前記溶媒を除去することにより、イオンを生成させ、
3)前記イオンの質量分離を行うことにより前記イオンの質量を特定する
フルオロエーテル系化合物の質量分析方法であり、
前記イオンを生成させる際に、
前記試料溶液を330℃以下の噴霧ガスとともに噴霧することにより液滴を生成させ、生成した前記液滴を190℃以下の乾燥ガスと接触させる
質量分析方法。
【請求項2】
前記試料溶液のpHが、8未満である請求項1に記載の質量分析方法。
【請求項3】
前記イオンを生成させる際の圧力が、大気圧である請求項1または2に記載の質量分析方法。
【請求項4】
前記イオンを生成させる方法が、エレクトロスプレーイオン化法である請求項1または2に記載の質量分析方法。
【請求項5】
前記フルオロエーテル系化合物が、一般式:
【化6】
(式中、R
1は、H-、F-、Cl-、CH
2=CH-、CH
2=CF-、CF
2=CF-またはCF
2=CFO-であり、R
2はCOOまたはSO
3であり、a~gは、同一若しくは異なってもよく、それぞれ0以上の整数であり、a~gの合計は0または1以上の整数であり、a~gの合計が0である場合、R
1はCF
2=CFO-であり、X
4およびX
5は、独立に、H、FまたはCF
3であり、nは1以上の整数であり、Mはカチオンである)で表される化合物である請求項1または2に記載の質量分析方法。
【請求項6】
プレカーサーイオンとして、一般式:
【化7】
(式中、R
1、R
2、a~g、X
4、X
5およびnは、上記したとおり)で表されるイオンを用いる請求項5に記載の質量分析方法。
【請求項7】
フルオロエーテル系化合物以外の含フッ素化合物をさらに含有する試料溶液を調製し、フルオロエーテル系化合物に加えて、含フッ素化合物をイオン化するとともに、前記溶媒を除去することにより、フルオロエーテル系化合物のイオンおよび含フッ素化合物のイオンを生成させて、フルオロエーテル系化合物のイオンの質量に加えて、含フッ素化合物のイオンの質量を特定する請求項1または2に記載の質量分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フルオロエーテル系化合物の質量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、下記ステップを有する、撥水撥油剤組成物中の炭素数が20以下である低分子の有機化合物の分析方法が記載されている。
(a)パーフルオロアルキル基を有する化合物に基づく繰り返し単位を有する含フッ素重合体が媒体に分散または溶解した撥水撥油剤組成物と、炭素数が1~5のアルコールとを混合し、前記含フッ素重合体を凝集させ、含フッ素重合体の凝集物を含む液を得るステップ。
(b)前記含フッ素重合体の凝集物を含む液を固液分離し、液相を得るステップ。
(c)液体クロマトグラフ-質量分析計、液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計またはガスクロマトグラフ-質量分析計を用いて、前記液相中の炭素数が20以下である低分子の有機化合物の濃度を測定するステップ。
【0003】
非特許文献1には、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸(HFPO-DA)の分析を、移動相の添加物として重炭酸アンモニウムを用いて、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)により行うと、HFPO-DAの断片化が抑えられ、[M-H]-の検出感度が改善される一方で、重炭酸塩付加物[M+HCO3]-も同程度以上検出されることが記載されている。そして、Waters社製の質量分析計(製品名:Xevo G2-XS QTof)を用いて、精密質量測定(high-resolution MS; HRMS)を行い、重炭酸塩付加物[M+HCO3]-の同一性、および、HFPO-DAの断片化を確認したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“Reduction of LC/MS In-Source Fragmentation of HFPO-DA (GenX) Through Mobile Phase Additive Selection: Experiments to Increase [M-H]- Formation」”, [online], 2018年9月26日, アメリカ合衆国環境保護庁, [2021年11月25日検索], インターネット<https://cfpub.epa.gov/si/si_public_record_report.cfm?dirEntryId=342415>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示では、フルオロエーテル系化合物を高感度で検出することができる質量分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、(1)フルオロエーテル系化合物および溶媒を含有する試料溶液を調製し、(2)前記試料溶液中のフルオロエーテル系化合物をイオン化するとともに、前記溶媒を除去することにより、イオンを生成させ、(3)前記イオンの質量分離を行うことにより前記イオンの質量を特定するフルオロエーテル系化合物の質量分析方法であり、前記イオンを生成させる際に、前記試料溶液を330℃以下の噴霧ガスとともに噴霧することにより液滴を生成させ、生成した前記液滴を190℃以下の乾燥ガスと接触させる質量分析方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、フルオロエーテル系化合物を高感度で検出することができる質量分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実験例5における液体クロマトグラフィー質量分析により得られたクロマトグラムである。横軸は保持時間(分)であり、縦軸は相対ピーク強度である。
【
図2】
図2は、実験例6における液体クロマトグラフィー質量分析により得られたクロマトグラムである。横軸は保持時間(分)であり、縦軸は相対ピーク強度である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特許文献1に記載の分析方法における測定対象は、たとえば、パーフルオロオクタン酸(PFOA)などのパーフルオロカルボン酸である。フルオロエーテル系化合物を測定対象とする場合、パーフルオロカルボン酸などを分析対象とする従来の質量分析方法をそのまま適用しても、フルオロエーテル系化合物を高感度で検出できない問題がある。
【0011】
非特許文献1に記載の分析方法における測定対象は、HFPO-DAであるが、HFPO-DAの断片化や付加物の生成を抑制し、[M-H]-を高感度に検出するための更なる改善が望まれる。
【0012】
本開示では、フルオロエーテル系化合物を高感度で検出することができる質量分析方法を提供することを目的とする。
【0013】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本開示の一実施形態に係るフルオロエーテル系化合物の質量分析方法は、
1)フルオロエーテル系化合物および溶媒を含有する試料溶液を調製するステップと、
2)前記試料溶液中のフルオロエーテル系化合物をイオン化するとともに、前記溶媒を除去することにより、イオンを生成させるステップと、
3)前記イオンの質量分離を行うことにより前記イオンの質量を特定するステップと、
を含む。
【0015】
ステップ(1)においては、フルオロエーテル系化合物および溶媒を含有する試料溶液を調製する。
【0016】
フルオロエーテル系化合物の種類は特に限定されず、1以上のフッ素原子および1以上のエーテル結合を含む炭素数2以上の有機化合物であれば、本開示の質量分析方法の測定対象とすることができる。
【0017】
フルオロエーテル系化合物としては、ポリオキシフルオロアルキレンフルオロアルキルエーテル、フルオロエーテルカルボン酸、フルオロエーテルスルホン酸などが挙げられる。
【0018】
フルオロエーテル系化合物としてより具体的には、下記一般式(III)で表されるパーフルオロエーテルカルボン酸(III)、下記一般式(V)で表されるパーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)、下記一般式(X)で表されるフルオロカルボン酸(X)、下記一般式(XI)で表されるアルコキシフルオロスルホン酸(XI)、下記一般式(XII)で表される化合物(XII)、下記一般式(XIII)で表される化合物(XIII)、下記一般式(XIV)で表される化合物(XIV)などが挙げられる。
【0019】
上記パーフルオロエーテルカルボン酸(III)は、下記一般式(III)
Rf1-O-(CF(CF3)CF2O)n3CF(CF3)COOM (III)
(式中、Rf1は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、n3は、0~3の整数であり、Mは、H、金属原子、NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R7は、H又は有機基である。)で表されるものである。
【0020】
上記アルコキシフルオロカルボン酸(V)は、下記一般式(V)
Rf4-O-CY1Y2-(CF2)m-COOM (V)
(式中、Rf4は、炭素数1~12のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基又はアルケニル基であり、Y1及びY2は、同一若しくは異なって、H、F又はCF3であり、mは0又は1であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0021】
上記フルオロカルボン酸(X)は、下記一般式(X)
Rf7-O-Rf8-O-CF2-COOM (X)
(式中、Rf7は、炭素数1~6のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rf8は、炭素数1~6の直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0022】
上記アルコキシフルオロスルホン酸(XI)は、下記一般式(XI)
Rf9-O-CY1Y2-(CF2)m-SO3M (XI)
(式中、Rf9は、炭素数1~12のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基又はアルケニル基であり、Y1及びY2は、同一若しくは異なって、H、F又はCF3であり、mは0又は1であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0023】
上記化合物(XII)は、下記一般式(XII):
【化1】
(式中、X
1、X
2及びX
3は、同一若しくは異なってもよく、H、F又は炭素数1~6のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rf
10は、炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、Lは連結基であり、Y
0はアニオン性基である。)で表されるものである。
Y
0は、-COOM、-SO
2M、又は、-SO
3Mであってよく、-SO
3M、又は、COOMであってよい(式中、Mは上記定義したものである。)。
Lとしては、例えば、単結合、炭素数1~10のエーテル結合を含みうる部分又は完全フッ素化されたアルキレン基が挙げられる。
【0024】
上記化合物(XIII)は、下記一般式(XIII):
Rf11-O-(CF2CF(CF3)O)n9(CF2O)n10CF2COOM (XIII)
(式中、Rf11は、塩素を含む炭素数1~5のフルオロアルキル基であり、n9は、0~3の整数であり、n10は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。化合物(XIII)としては、CF2ClO(CF2CF(CF3)O)n9(CF2O)n10CF2COONH4(平均分子量750の混合物、式中、n9およびn10は上記定義したものである。)が挙げられる。
【0025】
上記化合物(XIV)は、下記一般式(XIV):
CXiXk=CXjRa-(CZ1Z2)k-Y0 (XIV)
(式中、Xi、Xj及びXkは、同一若しくは異なってもよく、F、Cl、H又はCF3であり;Y0は、SO3M又はCOOMであり;Raは連結基であり;Z1及びZ2は、同一若しくは異なってもよく、H、F又はCF3であり、kは0又は1であり、Mは、上記定義したものである。)で表される化合物が挙げられる。
【0026】
フルオロエーテル系化合物としては、なかでも、従来の質量分析方法では高感度で検出することが困難である化合物であって、本開示の質量分析方法の効果が大きく発揮される化合物を好ましく用いることができ、たとえば、一般式:
【化2】
(式中、R
1は、H-、F-、Cl-、CH
2=CH-、CH
2=CF-、CF
2=CF-またはCF
2=CFO-であり、R
2はCOOまたはSO
3であり、a~gは、同一若しくは異なってもよく、それぞれ0以上の整数であり、a~gの合計は0または1以上の整数であり、a~gの合計が0である場合、R
1はCF
2=CFO-であり、X
4およびX
5は、独立に、H、FまたはCF
3であり、nは1以上の整数であり、Mはカチオンである)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0027】
上記の一般式において、各繰り返し単位の存在順序は任意であり、X4およびX5は各出現において同一であっても異なってもよい。
【0028】
a~gは、同一若しくは異なってもよく、それぞれ、0以上の整数であり、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0または1である。
a~gの合計は、0または1以上の整数であり、好ましくは1~5の整数であり、より好ましくは1~3の整数であり、さらに好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。
nは、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。
【0029】
フルオロエーテル系化合物の一実施形態において、gが0であって、a~fは、同一若しくは異なってもよく、それぞれ0以上の整数であり、a~fの合計は1以上の整数である。
フルオロエーテル系化合物の一実施形態において、gが0であって、a~fは、同一若しくは異なってもよく、それぞれ、0以上の整数であり、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0または1である。
フルオロエーテル系化合物の一実施形態において、gが0であって、a~fの合計は、1以上の整数であり、好ましくは1~5の整数であり、より好ましくは1~3の整数であり、さらに好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。
フルオロエーテル系化合物の一実施形態において、gが0であって、nは、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。
【0030】
Mとしては、H、金属原子、NR7
4(R7は、Hまたは有機基である)、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムが好ましく、H、金属原子またはNR7
4がより好ましく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR7
4がさらに好ましく、H、Na、K、LiまたはNH4が特に好ましい。
【0031】
フルオロエーテル系化合物としては、なかでも、従来の質量分析方法では高感度で検出することが困難な化合物であって、本開示の質量分析方法の効果が大きく発揮される化合物であることから、以下の式で表される化合物が特に好ましい。
CF3O(CF2)3OCHFCF2COOM、
C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOM、
CF3CF2CF2OCF(CF3)COOM、
CF3CF2OCF2CF2OCF2COOM、
C2F5OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOM、
CF3OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOM、
CF2ClCF2CF2OCF(CF3)CF2OCF2COOM、
CF2ClCF2CF2OCF2CF(CF3)OCF2COOM、
CF2ClCF(CF3)OCF(CF3)CF2OCF2COOM、
CF2ClCF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2COOM、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOM、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO3M、
CF2=CFOCF2CF2SO3M、
CF2=CFOCF2CF2COOM、
CH2=CFCF2OCF(CF3)COOM、
CH2=CFCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOM
(各式中、Mは、H、金属原子、NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R7は、Hまたは有機基である。)
【0032】
溶媒としては、ステップ(2)において、容易に除去することができ、質量分離の対象となるイオンのみを容易に生成させることができる揮発性の溶媒が好ましい。溶媒としては、液体クロマトグラフィー質量分析に通常用いられる溶媒が挙げられ、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、アセトニトリル、水などが挙げられる。
【0033】
一実施形態において、試料溶液は、液体クロマトグラフィーにより成分分離された試料溶液である。液体クロマトグラフィーを用いて試料溶液を調製する場合、ステップ(1)は、たとえば、フルオロエーテル系化合物を含有する試料を、移動相とともにカラムに送り込み、カラムを通過する間に成分分離させ、成分分離された溶出液を、試料溶液としてカラムから溶出させるステップを含むことができる。
【0034】
一実施形態においては、液体クロマトグラフィーを用いた成分分離を、液体クロマトグラフィー質量分析装置の液体クロマトグラフィー部(LC部)において行うことができる。このような液体クロマトグラフィー質量分析装置は、たとえば、液体クロマトグラフィーにより試料溶液を成分分離するLC部、試料溶液中の成分をイオン化するとともに脱溶媒させるイオン化部、質量電荷比に応じてイオンを分離する質量分離部、および、分離したイオンを検出するイオン検出部を備えている。
【0035】
液体クロマトグラフィーとしては、逆相クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、親水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどが挙げられる。一実施形態においては、逆相クロマトグラフィーが用いられる。
【0036】
液体クロマトグラフィーを実施する際には、単一の移動相を用いるアイソクラティック法、または、移動相の組成を連続的に変化させるグラジエント法を用いることができる。一実施形態においては、移動相に水およびメタノールまたは水およびアセトニトリルを用い、移動相中の水とメタノールの組成または水とアセトニトリルの組成を連続的に変化させながら、液体クロマトグラフィーが実施される。
【0037】
試料溶液のpHを調整することも好ましい。試料溶液のpHは、たとえば、8未満であってよい。一実施形態において、pHの調整は、溶出液のpHが所望の範囲内となるように、液体クロマトグラフィーに送り込む移動相のpHを調整することにより行われる。移動相のpHを調整するために、たとえば、ギ酸、酢酸などの酸、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、水酸化アンモニウムなどのアンモニウム塩、アンモニアなどのpH調整剤を用いることができる。
【0038】
ステップ(2)においては、試料溶液中のフルオロエーテル系化合物をイオン化するとともに、溶媒を除去することにより、イオンを生成させる。
【0039】
一実施形態においては、液体クロマトグラフィー質量分析装置のイオン化部においてイオンを生成させる。ステップ(1)において、液体クロマトグラフィーを実施した場合には、カラムから溶出した溶出液を、試料溶液としてイオン化部に導入することができる。イオン化には、たとえば、大気圧下でイオン化が行う方法が好適に用いられる。
【0040】
イオン化部には、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)、大気圧化学イオン化法(APCI)などに対応したものが用いられる。一実施形態においては、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)を用いて、イオンを生成させる。
【0041】
エレクトロスプレーイオン化法においては、帯電した液滴を生成させ、帯電した液滴を乾燥させることにより、試料分子をイオン化させる。液滴を生成させる際には、試料溶液をエレクトロスプレーによって分散させる。この際、窒素などの不活性ガスをネブライザーガスとして用いることにより、液滴の生成が促進される。また、噴霧ガスとともに試料溶液を噴霧することによって、液滴からの脱溶媒が促進される。噴霧ガスは、シースガス、脱溶媒ガス(Desolvation Gas)、補助ガス(Auxiliary Gas)、ヒーターガス、ターボガスなどと呼ばれることがある。さらに、液滴を乾燥ガスと接触させることにより、液滴の脱溶媒および乾燥がさらに促進される。乾燥ガス(Dry Gas)は、スイープガス(Sweep Gas)、コーンガス(Cone Gas)などと呼ばれることがある。
【0042】
ステップ(2)において、試料溶液を330℃以下の噴霧ガスとともに噴霧することにより液滴を生成させ、生成した液滴を190℃以下の乾燥ガスと接触させることによって、フルオロエーテル系化合物を高感度で検出することができる。従来の質量分析方法では、生成した液滴を効率よく蒸発させるため高温で積極的に気化させることが通常であり、噴霧ガスおよび乾燥ガスの温度を低く制御することによる検出感度の顕著な改善は、予測できない驚くべき効果である。
【0043】
噴霧ガスの温度は、たとえば、100~330℃であってよい。噴霧ガスの温度は、フルオロエーテル系化合物の検出感度が一層向上することから、好ましくは310℃以下であり、より好ましくは300℃以下であり、好ましくは130℃以上であり、より好ましくは140℃以上であり、さらに好ましくは150℃以上である。
【0044】
噴霧ガスの温度は、シースガス温度、ベーポライザー温度、デソルベーションガス温度、ESIヒーター温度、ソース温度、ターボ温度、HSID温度などと呼ばれるパラメータを調整することによって、調整することができる。
【0045】
乾燥ガスの温度は、たとえば、80~190℃であってよい。乾燥ガスの温度は、フルオロエーテル系化合物の検出感度が一層向上することから、好ましくは175℃以下であり、より好ましくは165℃以下であり、さらに好ましくは155℃以下である。
【0046】
乾燥ガスの温度は、イオントランスファー温度、ソース温度、ブロックヒーター温度、デソルベーションライン温度、ソース温度、ドライヒーター温度などと呼ばれるパラメータを調整することによって、調整することができる。
【0047】
イオン化のその他の条件は、液体クロマトグラフィー質量分析装置を用いた測定において通常設定される条件を用いることができる。たとえば、Agilent社製の質量分析装置を用いる場合、各条件を以下の範囲に設定することができる。
噴霧ガスの流量:2~12L/min
乾燥ガスの流量:3~13L/min
試料溶液の供給流速:50~1000μL/min
イオンを生成させる際の印加電圧:300~6000V
ネブライザーガスの圧力:30~60psi
【0048】
ステップ(3)においては、ステップ(2)で生成させたイオンの質量分離を行うことによりイオンの質量を特定する。
【0049】
一実施形態においては、液体クロマトグラフィー質量分析装置の質量分離部およびイオン検出部において、質量電荷比に応じてイオンを質量分離させ、分離したイオンを検出することにより、イオンの質量が特定される。
【0050】
質量分離部には、四重極型質量分離部、イオントラップ型質量分離部、扇形磁場型質量分離部、飛行時間型質量分離部などが用いられる。また、同じ形式の質量分離部または異なる形式の質量分離部を連結して用いることもできる(タンデム質量分析計(MS/MS))。一実施形態においては、本開示の質量分析方法が、液体クロマトグラフィータンデム質量分析装置(LC-MS/MS)を用いて行われる。
【0051】
本開示の質量分析方法によれば、ステップ(3)において、プレカーサーイオンとして、一般式:
【化3】
(式中、R
1、R
2、a~g、X
4、X
5およびnは、上記したとおり。各繰り返し単位の存在順序は任意であり、X
4およびX
5は各出現において同一であっても異なってもよい。)で表されるイオンを用いることができる。従来の方法においては、このようなイオンを高感度で検出できない(非常に弱いシグナルしか示さない)ことから、代わりにフラグメントイオン(たとえば、COOなどの一部の原子団が離脱して生成するフラグメントイオン)を検出することにより、フルオロエーテル系化合物の質量を分析しようとすることがあった。しかしながら、このような方法では、フラグメントイオンが別の化合物から生じている可能性を否定できず、また、検出感度も十分とはいえないため、正確な分析が困難である。本開示の質量分析方法によれば、上記のイオンを高感度で直接検出できることから、フルオロエーテル系化合物の質量を的確に測定することができる。
【0052】
本開示の質量分析方法において、フルオロエーテル系化合物および溶媒に加えて、フルオロエーテル系化合物以外の含フッ素化合物をさらに含有する試料溶液を用いることよって、フルオロエーテル系化合物の質量だけでなく、フルオロエーテル系化合物以外の含フッ素化合物の質量を同時に特定することができる。
【0053】
本開示の質量分析方法の対象に含み得る含フッ素化合物(フルオロエーテル系化合物以外の含フッ素化合物)としては、1以上のフッ素原子を含み、エーテル結合を含まない化合物であれば特に限定されない。たとえば、
パーフルオロブタン酸、パーフルオロペンタン酸、パーフルオロヘキサン酸、パーフルオロヘプタン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロノナン酸、パーフルオロデカン酸、パーフルオロウンデカン酸、パーフルオロドデカン酸、パーフルオロトリデカン酸、パーフルオロテトラデカン酸などのパーフルオロカルボン酸;
パーフルオロカルボン酸の一部のフッ素原子が水素原子に置換されたフルオロカルボン酸;
パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロペンタンスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロノナンスルホン酸、パーフルオロデカンスルホン酸、パーフルオロウンデカンスルホン酸、パーフルオロドデカンスルホン酸、パーフルオロトリデカンスルホン酸、パーフルオロテトラデカンスルホン酸などのパーフルオロスルホン酸;
1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキサンスルホン酸、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタンスルホン酸、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデカンスルホン酸などの、パーフルオロスルホン酸の一部のフッ素原子が水素原子に置換されたフルオロスルホン酸;
2-(N-メチルパーフルオロオクタンスルホンアミド)酢酸、2-(N-エチルパーフルオロオクタンスルホンアミド)酢酸などのパーフルオロカルボン酸またはパーフルオロスルホン酸の誘導体;
などが挙げられる。
【0054】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0055】
<1> 本開示の第1の観点によれば、
1)フルオロエーテル系化合物および溶媒を含有する試料溶液を調製し、
2)前記試料溶液中のフルオロエーテル系化合物をイオン化するとともに、前記溶媒を除去することにより、イオンを生成させ、
3)前記イオンの質量分離を行うことにより前記イオンの質量を特定する
フルオロエーテル系化合物の質量分析方法であり、
前記イオンを生成させる際に、
前記試料溶液を330℃以下の噴霧ガスとともに噴霧することにより液滴を生成させ、生成した前記液滴を190℃以下の乾燥ガスと接触させる
質量分析方法。
<2> 本開示の第2の観点によれば、
前記試料溶液のpHが、8未満である第1の観点による質量分析方法が提供される。
<3> 本開示の第3の観点によれば、
前記イオンを生成させる際の圧力が、大気圧である第1または第2の観点による質量分析方法が提供される。
<4> 本開示の第4の観点によれば、
前記イオンを生成させる方法が、エレクトロスプレーイオン化法である第1~第3のいずれかの観点による質量分析方法が提供される。
<5> 本開示の第5の観点によれば、
前記フルオロエーテル系化合物が、一般式:
【化4】
(式中、R
1は、H-、F-、Cl-、CH
2=CH-、CH
2=CF-、CF
2=CF-またはCF
2=CFO-であり、R
2はCOOまたはSO
3であり、a~gは、同一若しくは異なってもよく、それぞれ0以上の整数であり、a~gの合計は0または1以上の整数であり、a~gの合計が0である場合、R
1はCF
2=CFO-であり、X
4およびX
5は、独立に、H、FまたはCF
3であり、nは1以上の整数であり、Mはカチオンである)で表される化合物である第1~第4のいずれかの観点による質量分析方法が提供される。
<6> 本開示の第6の観点によれば、
プレカーサーイオンとして、一般式:
【化5】
(式中、R
1、R
2、a~g、X
4、X
5およびnは、上記したとおり)で表されるイオンを用いる第5の観点による質量分析方法が提供される。
<7> 本開示の第7の観点によれば、
フルオロエーテル系化合物以外の含フッ素化合物をさらに含有する試料溶液を調製し、フルオロエーテル系化合物に加えて、含フッ素化合物をイオン化するとともに、前記溶媒を除去することにより、フルオロエーテル系化合物のイオンおよび含フッ素化合物のイオンを生成させて、フルオロエーテル系化合物のイオンの質量に加えて、含フッ素化合物のイオンの質量を特定する第1~第6のいずれかの観点による質量分析方法が提供される。
【実施例0056】
つぎに本開示の実施形態について実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
実験例1~4においては、次の装置を用いた。
(液体クロマトグラフィー質量分析装置)
(LC-MS/MS)
LC:Agilent社製、1290 Infinity II
MS:Agilent社製、Ultivo LC/TQ
【0058】
(LC測定条件)
カラム:Agilent社製、ZORBAX Extend-C18、2.1mm×50mm、1.8μm
移動相:(A液)20mM酢酸アンモニウム水溶液、(B液)LC/MS用アセトニトリル
組成:A液:B液=40:60
サンプル注入量:1μL
流速:200μL/min
カラム温度:40℃
【0059】
(MS測定条件)
イオン化法:Negative ESI
<2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸>
MRMモニターイオン:329.0→285.0
フラグメンター電圧:50V
コリジョンエネルギー:1V
<PFOA>
MRMモニターイオン:413.0→369.0
フラグメンター電圧:110V
コリジョンエネルギー:5V
2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸、および、PFOAは、富士フィルム和光純薬株式会社より購入した。
【0060】
実験例1
実験例1では、極めて限定された範囲の噴霧ガスの温度が、フルオロエーテル系化合物の検出感度を著しく向上させることを示す。
【0061】
サンプル(液体クロマトグラフィーに注入するサンプル)には、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸の0.1質量ppm水溶液を用いた。
【0062】
調製したサンプルおよび上記した液体クロマトグラフィー質量分析装置を用いて、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸の質量分析を行った。
【0063】
実験例1におけるイオン化条件は次のとおりである。
乾燥ガス温度:150℃
乾燥ガス流量:5L/min
噴霧ガス温度(シースガス温度):表1に記載のとおり
噴霧ガス流量:7.5L/min
ネブライザー圧:50psi
Frag:50V
CE:1V
キャピラリー電圧:表1に記載のとおり
【0064】
得られたスペクトルの[CF3CF2CF2OCF(CF3)COO]-の質量に相当するイオンのピーク面積値から、イオン化の各条件の検出感度(レスポンス)を特定した。乾燥ガス温度150℃、噴霧ガス温度350℃、電圧1000Vの条件で測定した場合の検出感度を100として算出した数値を表1に示す。
【0065】
【0066】
実験例2
実験例2では、極めて限定された範囲の乾燥ガスの温度が、フルオロエーテル系化合物の検出感度を著しく向上させることを示す。
【0067】
実験例1において調製したサンプルおよび上記した液体クロマトグラフィー質量分析装置を用いて、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸の質量分析を行った。
【0068】
実験例2におけるイオン化条件は次のとおりである。
乾燥ガス温度:表2に記載のとおり
乾燥ガス流量:5L/min
噴霧ガス温度:250℃
噴霧ガス流量:7.5L/min
ネブライザー圧:50psi
Frag:50V
CE:1V
キャピラリー電圧:表2に記載のとおり
【0069】
得られたスペクトルの[CF3CF2CF2OCF(CF3)COO]-の質量に相当するイオンのピーク面積値から、イオン化の各条件の検出感度(レスポンス)を特定した。乾燥ガス温度150℃、噴霧ガス温度350℃、電圧1000Vの条件で測定した場合の検出感度を100として算出した数値を表2に示す。
【0070】
【0071】
実験例3および4
実験例3および4では、本開示の質量分析方法を用いてパーフルオロオクタン酸(PFOA)の質量を分析すると、パーフルオロオクタン酸(PFOA)を十分な感度で検出できないことを示す。
【0072】
サンプル(液体クロマトグラフィーに注入するサンプル)には、パーフルオロオクタン酸(PFOA)の0.1質量ppm水溶液を用いた。
【0073】
調製したサンプルおよび上記した液体クロマトグラフィー質量分析装置を用いて、パーフルオロオクタン酸の質量分析を行った。
【0074】
実験例3におけるイオン化条件は次のとおりである。
乾燥ガス温度:150℃
乾燥ガス流量:5L/min
噴霧ガス温度(シースガス温度):表3に記載のとおり
噴霧ガス流量:7.5L/min
ネブライザー圧:50psi
Frag:110V
CE:5V
キャピラリー電圧:表3に記載のとおり
【0075】
得られたスペクトルの[CF3(CF2)6COO]-の質量に相当するイオンのピーク面積値から、イオン化の各条件の検出感度(レスポンス)を特定した。乾燥ガス温度150℃、噴霧ガス温度350℃、電圧1000Vの条件で測定した場合の検出感度を100として算出した数値を表3に示す。
【0076】
【0077】
実験例4におけるイオン化条件は次のとおりである。
乾燥ガス温度:表4に記載のとおり
乾燥ガス流量:5L/min
噴霧ガス温度:250℃
噴霧ガス流量:7.5L/min
ネブライザー圧:50psi
Frag:110V
CE:5V
キャピラリー電圧:表4に記載のとおり
【0078】
得られたスペクトルの[CF3(CF2)6COO]-の質量に相当するイオンのピーク面積値から、イオン化の各条件の検出感度(レスポンス)を特定した。乾燥ガス温度150℃、噴霧ガス温度350℃、電圧1000Vの条件で測定した場合の検出感度を100として算出した数値を表4に示す。
【0079】
【0080】
実験例5~6においては、次の装置を用いた。
(液体クロマトグラフィー質量分析装置)
(LC-MS/MS)
LC:Agilent社製、1290 Infinity II
MS:Agilent社製、Ultivo LC/TQ
【0081】
(LC測定条件)
カラム:Agilent社製、ZORBAX Extend-C18、2.1mm×50mm、1.8μm
移動相:(A液)20mM酢酸アンモニウム水溶液、(B液)LC/MS用アセトニトリル
組成:A液:B液=80:20 (0-1分)
↓ (1-6分)
60:40 (6-7分)
↓ (7-12分)
95:5 (12-15分)
サンプル注入量:5μL
流速:300μL/min
カラム温度:40℃
【0082】
(MS測定条件)
イオン化法:Negative ESI
【0083】
【0084】
パーフルオロブタン酸、パーフルオロペンタン酸、パーフルオロヘキサン酸、パーフルオロヘプタン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロノナン酸、パーフルオロデカン酸、パーフルオロウンデカン酸、パーフルオロドデカン酸、パーフルオロトリデカン酸、および、パーフルオロテトラデカン酸の混合物はウェリントンラボ社より購入した。
【0085】
実験例5
実験例5では、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸と、パーフルオロブタン酸、パーフルオロペンタン酸、パーフルオロヘキサン酸、パーフルオロヘプタン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロノナン酸、パーフルオロデカン酸、パーフルオロウンデカン酸、パーフルオロドデカン酸、パーフルオロトリデカン酸、パーフルオロテトラデカン酸との同時測定が可能であることを示す。
【0086】
実験例5におけるイオン化条件は次のとおりである。
乾燥ガス温度:150℃
乾燥ガス流量:5L/min
噴霧ガス温度(シースガス温度):250℃
噴霧ガス流量:7.5L/min
ネブライザー圧:50psi
Frag:表5に記載のとおり
CE:表5に記載のとおり
キャピラリー電圧:2500V
【0087】
サンプル(液体クロマトグラフィーに注入するサンプル)には、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸、並びに、パーフルオロブタン酸、パーフルオロペンタン酸、パーフルオロヘキサン酸、パーフルオロヘプタン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロノナン酸、パーフルオロデカン酸、パーフルオロウンデカン酸、パーフルオロドデカン酸、パーフルオロトリデカン酸、および、パーフルオロテトラデカン酸の混合物を含有する水溶液(12種類の化合物の含有量が、各々、0.01質量ppm)を用いた。注入量は5μLである。測定の結果を
図1に示す。
【0088】
実験例6
実験例6では、2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸と、パーフルオロブタン酸、パーフルオロペンタン酸、パーフルオロヘキサン酸、パーフルオロヘプタン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロノナン酸、パーフルオロデカン酸、パーフルオロウンデカン酸、パーフルオロドデカン酸、パーフルオロトリデカン酸、パーフルオロテトラデカン酸との同時測定において、限定された乾燥ガス温度の範囲外ではフルオロエーテル系化合物の検出感度が低下することを示す。
【0089】
乾燥ガス温度を300℃とした他は実験例5と同一条件で測定を行った。測定の結果を
図2に示す。2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸に由来するピーク4の強度が低下していることが分かる。