(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009438
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】消火器収納装置
(51)【国際特許分類】
A62C 13/78 20060101AFI20240116BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20240116BHJP
A62C 35/20 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
A62C13/78 A
A62C3/00 J
A62C35/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110960
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EB00
(57)【要約】
【課題】トンネル断面形状に合わせて監視員通路上の高い位置に設置された筐体の側面から外部に引き出された消火器を容易かつ安全に取り出すことを可能とする。
【解決手段】消火器収納装置の一例となる消火栓装置10は、トンネルの壁面に沿って設けられた監視員通路35の路面に配置された架台30の上の高い位置に筐体が設置される。消火栓装置10の消火器収納部50cには、側面消火栓側面扉16を備えた引出筐体32設けられ、引出筐体32の底部側に消火器72を載置した消火器収納箱34がオイルダンパー38により昇降自在に配置される。引出筐体32が側方外部に引き出されると、消火器72の荷重によりオイルダンパー38のロッド3814が伸びて、消火器収納箱34が監視員通路35の路面に下降することで、消火器72を低い位置から安全かつ容易に取り出し可能とする。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を有するトンネルの壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定高さに、当該トンネル壁面に近接又は当接して筐体が設置された消火器収納装置であって、
前記筐体内の消火器収納部に縦置きされた消火器を、前記筐体の側面から外部に引き出し可能とするとともに、当該引き出された消火器の底部が前記消火器収納部の最下部より下方に位置するように下降させる消火器引出構造を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項2】
請求項1記載の消火器収納装置において、
前記消火器引出構造は、
前記筐体の側面に形成された引出開口と、
前記引出開口側の側面に側面消火器扉が配置されると共に、少なくとも前面及び底面が開放され、前記消火器収納部に対し出し入れ自在に配置された引出筐体と、
前記消火器収納部に対し前記引出筐体を引出方向に移動自在に支持する筐体引出機構と、
前記消火器を縦置き状態で取り出し自在に載置する消火器収納台と、
前記消火器収納台を上下方向に移動自在に前記引出筐体の底部側に支持する消火器昇降機構と、
を備え、
前記筐体引出機構は、利用者が前記引出開口を介して前記引出筐体を前記筐体の側面から外部へ引き出した際に、前記消火器昇降機構により前記消火器の底部が前記消火器収納部の最下部よりも下方に位置するように、前記消火器収納台を下降させることを特徴とする消火器収納装置。
【請求項3】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記筐体引出機構は、
前記消火器収納部の上部側に配置され、前記引出筐体を引出方向に移動自在に支持する第1の筐体引出機構と、
前記消火器収納部の底部側に配置され、前記引出筐体の移動に伴って移動される前記消火器収納台を引出方向に移動自在に支持する第2の筐体引出機構と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項4】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記消火器昇降機構は、前記消火器収納台を、前記引出筐体の底部側から前記監視員通路の路面上の所定の高さまで下降させ、
前記所定の高さは、前記消火器収納台が下降した場合に、当該消火器収納台の底部と前記監視員通路の路面との間に前記利用者の足が入る高さであることを特徴とする消火器収納装置。
【請求項5】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記消火器昇降機構は、
前記引出筐体の上部下面に一端が固定されるとともに他端が前記消火器収納台に固定され、前記引出筐体が前記筐体の側面から外部に引き出された場合に、載置された前記消火器の重量を受けて前記消火器収納台を下降させるダンパー装置と、
前記ダンパー装置による前記消火器収納台の動きを上下方向で案内する案内構造と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項6】
請求項5記載の消火器収納装置において、
前記消火器昇降機構は、前記ダンパー装置を1又は複数備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載の消火器収納装置において、
前記ダンパー装置は、
一端が前記引出筐体側に固定されたシリンダと、
前記シリンダ内に摺動自在に設けられたピストンと、
前記ピストンから外部へ延在し、延在方向の一端が前記消火器収納台側に固定されたロッドと、
前記シリンダ内に充填されたオイルと、
前記ピストンの移動に伴う前記オイルの流動により流動抵抗を発生する前記ピストンに設けられたオリフィスと、
前記ピストンの一方向の移動に伴い閉鎖するとともに前記ピストンの他方向の移動に伴い開放する前記ピストンに設けられた逆止弁と、
を備えたオイルダンパーであり、
前記オイルダンパーは、前記引出筐体が前記筐体の側面方向の引出位置へ移動した場合に、前記消火器収納台を所定の速度で下降させることを特徴とする消火器収納装置。
【請求項8】
請求項5又は6記載の消火器収納装置において、
前記ダンパー装置は、
一端が前記消火器収納台側に固定されたシリンダと、
前記シリンダ内に摺動自在に設けられた第1ピストンと、
前記第1ピストンに続いて前記シリンダ内に摺動自在に設けられた第2ピストンと、
前記第1ピストンから外部へ延在するとともに延在方向の一端が前記引出筐体側に固定されたロッドと、
前記第1シリンダの片側の第1シリンダ室及び前記第1シリンダと第2シリンダの間の第2シリンダ室に充填されたオイルと、
前記第2ピストンの片側の第3シリンダ室に加圧状態で充填された不活性ガスと、
前記第1ピストンの移動に伴い前記オイルを第1シリンダ室と第2シリンダ室の間で流動して所定の流動抵抗を発生する前記第1ピストンに設けられたオリフィスと、
前記オリフィスを通る流路を開閉するバルブと、
前記ロッドの内部に移動自在に設けられ、一端が前記ロッド外部に突出するとともに他端が前記バルブに連結され、軸方向の移動に伴い前記バルブを開閉させるプッシュピンと、
を備えたガスダンパーであり、
前記ガスダンパーは、前記プッシュピンの非押込み位置で前記バルブにより前記オリフィスを通る流路を閉鎖して前記シリンダと前記ピストンの相対移動をロックし、前記プッシュピンの押込み位置で前記バルブにより前記オリフィスを通る流路を開放して前記シリンダと前記ピストンの相対移動のロックを解除することを特徴とする消火器収納装置。
【請求項9】
請求項8記載の消火器収納装置において、
前記ガスダンパーは、前記プッシュピンの、押込み操作又は前記引出筐体の前記筐体の側面方向の引出位置への移動に伴う押込み動作に基づき、前記シリンダと前記ピストンの相対移動のロックを解除して前記消火器収納台を所定の速度で下降させることを特徴とする消火器収納装置。
【請求項10】
請求項5記載の消火器収納装置において、
前記案内構造は、
前記引出筐体の上部下面に一端が固定されるとともに他端が所定の引出高さにある前記消火器収納台に当接する位置にある円筒案内部材を備え、
前記円筒案内部材は、内部に前記ダンパー装置が配置され、当該ダンパー装置の上部側を支持することを特徴とする消火器収納装置。
【請求項11】
請求項5記載の消火器収納装置において、
前記案内構造は、
前記引出筐体の上下方向に配置された鞘状の案内固定部材と、
前記消火器収納台側に配置され、前記案内固定部材に摺動自在に挿入された案内移動部材と、
を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項12】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記側面消火器扉は、前記引出筐体の本体側が配置される上扉と、前記消火器収納台が配置される下扉とに分割され、
前記消火器収納台は、前記消火器昇降機構により前記引出筐体の本体側に対して上下方向に移動自在に支持されたことを特徴とする消火器収納装置。
【請求項13】
請求項2記載の消火器収納装置において、
前記消火器収納台は、上部に開口した消火器収納箱であり、
前記消火器収納箱は、前記消火器の取り出しに伴う当接を受けて外側へ回動するように底板前縁に軸支された前板を備えたことを特徴とする消火器収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用ホース及び消火器等を収納してトンネル内等に設置される消火栓装置、消火器を収納してトンネル内等に設置される消火器箱等の消火器収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路などのトンネル内には、トンネル非常用設備として消火栓装置が設置されている。消火栓装置は、前傾扉(消火栓扉)を備えた筐体の消火栓収納部に、先端にノズルを装着した消火用ホースと消火栓弁を含むバルブ類が収納され、また、消火器扉を備えた消火器収納部に、例えば、2本の消火器が収納されている。また、消火栓装置は、一般的に、トンネル長手方向に、例えば、50メートル間隔でトンネル壁面を箱抜きして埋込み設置されている。
【0003】
ところで、シールド工法等により作られたトンネルにあっては、トンネル躯体の構造上、トンネル壁面を箱抜きして消火栓装置を埋込み設置することがコストや手間の関係から困難であることから、監視員通路に消火栓装置を露出した状態で設置する必要がある。
【0004】
また、消火栓装置をトンネル壁面に箱抜きすることなく設置するため、トンネル壁面に設置された架台に消火栓装置を取り付け固定する壁掛け構造が提案されており、この場合、架台は壁面に固定される主支持部と消火栓装置の姿勢を保持する姿勢保持部材等から構成されている(特許文献2)。
【0005】
また、壁掛け構造の消火栓装置はトンネル壁面への取付けに工数と時間がかかる等の課題があることから、設置が容易である監視員通路の路面上に設置した架台に消火栓装置を露出した状態で取り付け固定する、いわゆる据置き構造とすることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-055073号公報
【特許文献2】特開2020-078429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、壁掛け構造又は据え置き構造の消火栓装置にあっても、消火器扉を備えた筐体の消火器収納部に、例えば、2本の消火器が収納されており、火災発生に伴い道路利用者が消火器を使用する場合には、消火器扉を横開き(片側が軸支された扉が回動)して消火器収納部から消火器を取り出して消火作業を行うことになるが、消火器が取り出された後に消火器扉が横開きされたままになっていると、監視員通路から避難する避難者の通行を妨げるという問題がある。
【0008】
この問題は、交通量やトンネル長さ等により分けられた低いランクのトンネルの非常用設備として設置されている消火器箱についても同様となる。
【0009】
この問題を解決するため本願出願人にあっては、道路を有するトンネルの壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定高さに、当該トンネル壁面に近接又は当接して筐体が設置された消火栓装置であって、筐体内の消火器収納部に縦置きされた消火器を、筐体の側面から外部に出し入れ可能とする消火器引出構造を備えた消火栓装置及び消火器箱を提案している(特願2022-35088号)。このため、道路利用者が消火器を使用して消火活動を行う場合には、消火栓装置の筐体側面方向に消火器を引き出して取り出すことができ、筐体前面の監視員通路の通行を妨げることなく、消火器を取り出すことが可能となる。
【0010】
一方、消火栓装置の消火器扉を開いて内部に収納された消火器を容易且つ安全に取り出すために、消火器のレバーの高さを道路面から1.5m以下とすることが消防法で規定されており、トンネルに設置する場合もこれに準ずることとされている。
【0011】
しかしながら、道路面から監視員通路の路面までの高さが1m程度であり、消火器のレバーの高さを道路面から1.5m以下となるように消火栓装置を設置すると、監視員通路の路面からの高さはせいぜい数十cm程度になる。仮に設置高さの制約がなく、例えば、道路面から2mといった比較的高所に消火栓装置を設置できるとしても、このような高さに引き出された重さ10kg程度の消火器を取り出す場合、落下させてしまったり、その衝撃で消火器が投げ出されたり破損したりする可能性がある。
【0012】
本発明は、トンネル断面形状に合わせて監視員通路上の高い位置に設置された筐体の側面から外部に引き出された消火器を、容易かつ安全に取り出すことを可能とする消火栓装置、消火器箱等の消火器収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(消火器収納装置)
本発明は、道路を有するトンネルの壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定高さに、当該トンネル壁面に近接又は当接して筐体が設置された消火器収納装置であって、
筐体内の消火器収納部に縦置きされた消火器を、筐体の側面から外部に引き出し可能とするとともに、当該引き出された消火器の底部が消火器収納部の最下部より下方に位置するように下降させる消火器引出構造を備えたことを特徴とする。
【0014】
(消火器引出構造)
消火器引出構造は、
筐体の側面に形成された引出開口と、
引出開口側の側面に側面消火器扉が配置されるとともに、少なくとも前面及び底面が開放され、消火器収納部に対し出し入れ自在に配置された引出筐体と、
消火器収納部に対し引出筐体を引出方向に移動自在に支持する筐体引出機構と、
消火器を縦置き状態で取り出し自在に載置する消火器収納台と、
消火器収納台を上下方向に移動自在に、引出筐体の底部側に支持する消火器昇降機構と、
を備え、
筐体引出機構は、利用者が引出開口を介して引出筐体を筐体の側面から外部へ引き出した際に、消火器昇降機構により消火器の底部が消火器収納部の最下部よりも下方に位置するように、消火器収納台を下降させる。
【0015】
(筐体引出機構の構成)
筐体引出機構は、
消火器収納部の上部側に配置され、引出筐体を引出方向に移動自在に支持する第1の筐体引出機構と、
消火器収納部の底部側に配置され、引出筐体の移動に伴って移動される消火器収納台を引出方向に移動自在に支持する第2の筐体引出機構と、
を備える。
【0016】
(消火器収納台の下に利用者の足が入る高さに下降)
消火器昇降機構は、消火器収納台を、引出筐体の底部側から監視員通路の路面上の所定の高さまで下降させ、
所定の高さは、消火器収納台が下降した場合に、当該消火器収納台の底部と監視員通路の路面との間に利用者の足が入る高さである。
【0017】
(消火器昇降機構)
消火器昇降機構は、
引出筐体の上部下面に一端が固定されるとともに他端が消火器収納台に固定され、引出筐体が筐体の側面から外部に引き出された場合に、載置された消火器の重量を受けて消火器収納台を下降させるダンパー装置と、
ダンパー装置による消火器収納台の動きを上下方向で案内する案内構造と、
を備える。
【0018】
(1又は複数のダンパー装置)
消火器昇降機構は、ダンパー装置を1又は複数備える。
【0019】
(オイルダンパー)
ダンパー装置は、
一端が引出筐体側に固定されたシリンダと、
シリンダ内に摺動自在に設けられたピストンと、
ピストンから外部へ延在し、延在方向の一端が消火器収納台側に固定されたロッドと、
シリンダ内に充填されたオイルと、
ピストンの移動に伴うオイルの流動により流動抵抗を発生するピストンに設けられたオリフィスと、
ピストンの一方向の移動に伴い閉鎖するとともにピストンの他方向の移動に伴い開放するピストンに設けられた逆止弁と、
を備えたオイルダンパーであり、
オイルダンパーは、引出筐体が筐体の側面方向の引出位置へ移動した場合に、消火器収納台を所定の速度で下降させる。
【0020】
(ロック制御機能付きのガスダンパー)
ダンパー装置は、
一端が消火器収納台側に固定されたシリンダと、
シリンダ内に摺動自在に設けられた第1ピストンと、
第1ピストンに続いてシリンダ内に摺動自在に設けられた第2ピストンと、
第1ピストンから外部へ延在するとともに延在方向の一端が前記引出筐体側に固定されたロッドと
第1シリンダの片側の第1シリンダ室及び第1シリンダと第2シリンダの間の第2シリンダ室に充填されたオイルと、
第2ピストンの片側の第3シリンダ室に加圧状態で充填された不活性ガスと、
第1ピストンの移動に伴いオイルを第1シリンダ室と第2シリンダ室の間で流動して流動抵抗を発生する第1ピストンに設けられたオリフィスと、
オリフィスを通る流路を開閉する第1ピストンに設けられたバルブと、
ロッドの内部に移動自在に設けられ、一端がロッド外部に突出するとともに他端がバルブに連結され、軸方向の移動に伴いバルブを開閉させるプッシュピンと、
を備えたガスダンパーであり、
ガスダンパーは、プッシュピンの非押込み位置でバルブによりオリフィスを通る流路を閉鎖してシリンダと第1及び第2ピストンの相対移動をロックし、プッシュピンの押込み位置でバルブによりオリフィスを通る流路を開放してシリンダと第1及び第2ピストンの相対移動のロックを解除する。
【0021】
(ロック解除)
ガスダンパーは、プッシュピンの、押込み操作又は引出筐体の筐体の側面方向の引出位置への移動に伴う押込み動作に基づき、シリンダとピストンの相対移動のロックを解除して消火器収納台を所定の速度で下降させる。
【0022】
(第1の案内構造:円筒案内部材)
消火器昇降機構の案内構造は、
引出筐体の上部下面に一端が固定されるとともに他端が所定の引出高さにある消火器収納台に当接する位置にある円筒案内部材を備え、
円筒案内部材は、内部にダンパー装置が配置され、当該ダンパー装置の上部側を支持する。
【0023】
(第2の案内構造)
消火器昇降機構の案内構造は、
引出筐体の上下方向に配置された鞘状の案内固定部材と、
消火器収納台側に配置され、案内固定部材に摺動自在に挿入された案内移動部材と、
を備える。
【0024】
(側面消火器扉を分割した引出筐体)
側面消火器扉は、引出筐体の本体側が配置される上扉と、消火器収納台が配置される下扉とに分割され、
消火器収納台は、消火器昇降機構により引出筐体の本体側に対して上下方向に移動自在に支持される。
【0025】
(消火器収納箱前板の開閉構造)
消火器収納台は、上部に開口した消火器収納箱であり、
消火器収納箱は、消火器の取り出しに伴う当接を受けて外側へ回動するように底板前縁に軸支された前板を備える。
【発明の効果】
【0026】
(基本的な効果)
本発明は、道路を有するトンネルの壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上方の所定高さに、当該トンネル壁面に近接又は当接して筐体が設置された消火器収納装置であって、筐体内の消火器収納部に縦置きされた消火器を、筐体の側面から外部に引き出し可能とするとともに、当該引き出された消火器の底部が消火器収納部の最下部より下方に位置するように下降させる消火器引出構造を備えたため、筐体の側面から外部に引き出された消火器は、監視員通路の路面に近い低い位置に下降し、このため、消火器が落下して破損するようなことはなく、消火器を取り出す操作性が向上し、例えば、力のない高齢者や女性であっても、消火器を安全かつ容易に取り出すことができ、消火器を用いた迅速な消火活動が可能となる。
【0027】
(消火器引出構造の効果)
また、消火器引出構造は、筐体の側面に形成された引出開口と、引出開口側の側面に消火器扉が配置されるとともに、少なくとも前面及び底面が開放され、消火器収納部に対し出し入れ自在に配置された引出筐体と、消火器収納部に対し引出筐体を引出方向に移動自在に支持する筐体引出機構と、消火器を縦置き状態で取り出し自在に載置する消火器収納台と、消火器収納台を上下方向に移動自在に、引出筐体の底部側に支持する消火器昇降機構と、を備え、筐体引出機構は、利用者が引出開口を介して引出筐体を前記筐体の側面から外部へ引き出した際に、消火器昇降機構により消火器の底部が消火器収納部の最下部よりも下方に位置するように、消火器収納台を下降させるため、利用者が引出筐体の側面消火器扉を側方へ引くことで、引出筐体が筐体引出機構によって筐体側面方向の露出した位置に引き出されると、消火器を縦置きで載置した消火器収納台が消火器昇降機構によって低い位置に下降し、筐体の側面方向に引き出された消火器を容易かつ安全に取り出し可能とする。
【0028】
(筐体引出機構の構成の効果)
また、筐体引出機構は、消火器収納部の上部側に配置され、引出筐体を引出方向に移動自在に支持する第1の筐体引出機構と、消火器収納部の底部側に配置され、引出筐体の移動に伴って移動される消火器収納台を引出方向に移動自在に支持する第2の筐体引出機構と備えるため、利用者の引出操作により引出筐体を、第1の筐体引出機構により消火器収納部から筐体の側面方向へ滑らかに移動させるとともに、引出筐体の底部側に配置された消火器を載置している消火器収納台を、第2の筐体引出機構により引出筐体の動きに併せて滑らかに引出方向へ移動させることを可能とする。
【0029】
(消火器収納台の下に利用者の足が入る高さに下降する効果)
また、消火器昇降機構は、消火器収納台を、引出筐体の底部側から監視員通路の路面上の所定の高さまで下降させ、所定の高さは、消火器収納台が下降した場合に、当該消火器収納台の底部と監視員通路の路面との間に利用者の足が入る高さであることで、利用者は消火器収納台の下に足を入れて体を消火器に近づけることで消火器を持ち上げ易くなり、姿勢を崩すことなく、消火器を容易かつ安全に取り出すことを可能とする。また、消火器収納部を下降させても、消火器収納台の底部と監視員通路の路面で利用者の足を挟んでしまうこともなく、高い安全性が確保される。
【0030】
(消火器昇降機構の効果)
また、消火器昇降機構は、引出筐体の上部下面に一端が固定されるともに他端が消火器収納台に固定され、引出筐体が筐体の側面から外部に引き出された場合に、載置された消火器の重量を受けて消火器収納台を下降させるダンパー装置と、ダンパー装置による消火器収納台の動きを上下方向で案内する案内構造とを備えたため、利用者による引出筐体の引出操作で消火器を縦置きで載置した消火器収納台を筐体側面の外側に引き出されると、ダンパー装置により消火器収納台が緩やかに下降し、また、案内構造により消火器収納台を滑らかに下降させることを可能とする。
【0031】
(1又は複数のダンパー装置の効果)
また、消火器昇降機構は、電気等の動力源を必要としないダンパー装置を1又は複数備えたため、1のダンパー装置であれば、構造が簡単でコストが低減し、また、複数のダンパー装置であれば、消火器を載置した消火器収納台を滑らかにバランス良く下降させることを可能とする。
【0032】
(オイルダンパーの効果)
また、ダンパー装置は、一端が引出筐体側に固定されたシリンダと、シリンダ内に摺動自在に設けられたピストンと、ピストンから外部へ延在し、延在方向の一端が消火器収納台側に固定されたロッドと、シリンダ内に充填されたオイルと、ピストンの移動に伴うオイルの流動により流動抵抗を発生するピストンに設けられたオリフィスと、ピストンの一方向の移動に伴い閉鎖するとともにピストンの他方向の移動に伴い開放するピストンに設けられた逆止弁とを備えたオイルダンパーであり、オイルダンパーは、引出筐体が筐体の側面方向の引出位置へ移動した場合に、消火器収納台を所定の速度で下降させるため、利用者が消火器を筐体側方の引出位置に引き出すと、載置した消火器の荷重を受けて消火器収納台を緩やかに且つ滑らかに下降させることを可能とする。
【0033】
(ロック制御機能付きのガスダンパーの効果)
また、ダンパー装置は、一端が消火器収納台側に固定されたシリンダと、シリンダ内に摺動自在に設けられた第1ピストンと、第1ピストンに続いてシリンダ内に摺動自在に設けられた第2ピストンと、第1ピストンから外部へ延在するとともに延在方向の一端が引出筐体側に固定されたロッドと、第1シリンダの片側の第1シリンダ室及び第1シリンダと第2シリンダの間の第2シリンダ室に充填されたオイルと、第2ピストンの片側の第3シリンダ室に加圧状態で充填された不活性ガスと、第1ピストンの移動に伴いオイルを第1シリンダ室と第2シリンダ室の間で流動して流動抵抗を発生する第1ピストンに設けられたオリフィスと、オリフィスを通る流路を開閉する第1ピストンに設けられたバルブと、ロッドの内部に移動自在に設けられ、一端がロッド外部に突出するとともに他端がバルブに連結され、軸方向の移動に伴いバルブを開閉させるプッシュピンと、を備えたガスダンパーであり、ガスダンパーは、プッシュピンの非押込み位置でバルブによりオリフィスを通る流路を閉鎖してシリンダと第1及び第2ピストンの相対移動をロックし、プッシュピンの押込み位置でバルブによりオリフィスを通る流路を開放してシリンダと第1及び第2ピストンの相対移動のロックを解除するため、利用者が消火器を筐体側方の引出位置に引き出した状態で、プッシュロッドを押し込むとロックが解除され、押し込んでいるあいだ、消火器を載置した消火器収納台側を緩やかに且つ滑らかに下降させることを可能とする。また、ガスダンパーは、下降中にプッシュロッドの押込みを解除すると、そのときの位置に消火器収納台側を停止させることを可能とする。
【0034】
(ロック解除の効果)
また、ガスダンパーは、プッシュピンの、押込み操作又は引出筐体の筐体の側面方向の引出位置への移動に伴う押込み動作に基づき、シリンダとピストンの相対移動のロックを解除して消火器収納台を所定の速度で下降させるため、消火器を使用する利用者の、例えば、押釦を利用した押込み操作により消火器を載置した消火器収納台を下降させ、また、任意の下降位置に停止させることを可能とする。また、ガスダンパーは、引出筐体の筐体の側面方向の引出位置への移動に伴う押込み動作に基づき、シリンダとピストンの相対移動のロックを解除して消火器収納台を下降させるようにしたため、例えば、引出筐体の引出位置への移動に対応してプッシュピンの押込み動作を行う機構構造により、消火器を引き出すと自動的に消火器収納台を下降させることを可能とする。
【0035】
(第1の案内構造の効果)
また、消火器昇降機構の案内構造は、引出筐体の上部下面に一端が固定されるとともに他端が所定の引出高さにある消火器収納台に当接する位置にある円筒案内部材を備え、円筒案内部材は、内部にダンパー装置が配置され、当該ダンパー装置の上部側を支持するため、引出筐体の内部にダンパー装置により消火器収納台を筐体上部から吊下げる消火器昇降機構の構造を堅牢に構成することができ、併せて、ダンパー装置による消火器収納台の滑らかな案内移動を円筒案内部材によって実現可能とする。
【0036】
(第2の案内構造の効果)
また、消火器昇降機構の案内構造は、引出筐体の上下方向に配置された鞘状の案内固定部材と、消火器収納台側に配置され、案内固定部に摺動自在に挿入された案内移動部材とを備えたため、例えば、消火器収納箱の左右2個所をダンパー装置で引出筐体の内部に吊下げるような場合に、ダンパー装置を挟んで両側に案内固定部材と案内移動部材で構成される案内構造を備えることで、引出筐体の内部にダンパー装置により消火器収納台を筐体上面から吊下げる消火器昇降機構の構造を堅牢に構成し、併せて、ダンパー装置による消火器収納台の滑らかな案内移動を実現可能とする。
【0037】
(側名消火器扉を分割した引出筐体の効果)
また、側面消火器扉は、引出筐体の本体側が配置される上扉と、消火器収納台が配置される下扉とに分割され、消火器収納台は、消火器昇降機構により引出筐体の本体側に対して上下方向に移動自在に支持されるため、側面消火器扉から分離した状態で配置された消火器収納台を消火器昇降機構で下降させる構造に比べ、消火器収納部が下扉と一体に形成されたことで、消火器を下降させる構造を簡単にすることができる。また、側面消火器扉を分割した下扉の下端が、消火器収納部の下降に伴い監視員通路の路面に当たって止まることで、消火器収納部と監視員通路の路面との間に、消火器を取り出す利用者の足が入る隙間を簡単に確保することを可能とする。
【0038】
(消火器収納箱前板の開閉構造の効果)
また、消火器収納台は、上部に開口した消火器収納箱であり、消火器収納箱は、消火器の取り出しに伴う当接を受けて外側へ回動するように底板前縁に軸支された前板を備えたため、筐体の側面から引き出されて低い位置に下降した消火器収納箱から利用者がレバーを握って消火器を取り出す場合に、取り出される消火器に押されて消火器収納箱の前板が外側に回動して開き、前板を乗り越えるように消火器を取り出す必要がなく、消火器収納箱からの消火器の取り出しを更に容易にすることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】消火器が縦置きされた消火栓装置の設置状態をトンネル縦断面で示した説明図である。
【
図2】
図1の消火栓装置の設置状態をトンネル横断面で示した説明図である。
【
図3】消火栓装置の設置状態をトンネル横断面で概略的に示した説明図である。
【
図4】消火器が縦置きされた消火栓装置の内部構造を前傾扉が開いた状態で正面から示した説明図である。
【
図5】消火器が収納された状態の消火栓装置を示した説明図である。
【
図6】消火器が引き出された状態の消火栓装置を示した説明図である。
【
図7】引き出された消火器が下降した状態の消火栓装置を示した説明図である。
【
図8】消火器が取り出された後に消火器収納箱が引出位置に戻った状態の消火栓装置を示した説明図である。
【
図9】筐体引出機構が配置される前の引出筐体を示した説明図である。
【
図10】消火器が収納された状態での消火栓装置の内部構造を示した説明図である。
【
図11】消火器が引き出された状態での消火栓装置の内部構造を示した説明図である。
【
図12】引き出された消火器が下降した状態での消火栓装置の内部構造を示した説明図である。
【
図13】引出筐体を取り出して左側面、正面、及び右側面で示した説明図である。
【
図14】引出筐体及び消火器収納箱を取り出して示した説明図である。
【
図15】筐体引出機構の消火器収納部側を示した説明図である。
【
図16】第1の筐体引出機構を取り出して動作を示した説明図である。
【
図17】オイルダンパーを備えた消火器昇降機構の構成を模式的に示した説明図である。
【
図18】足の入る隙間が形成されるように消火器収納箱が下降する消火栓装置を示した説明図である。
【
図19】消火器が取り出される際に消火器収納箱の前板が回動する消火栓装置を示した説明図である。
【
図20】側面消火器扉が上下に分割された消火栓装置を消火器の収納状態で示した説明図である。
【
図21】側面消火器扉が上下に分割された消火栓装置を消火器の下降状態で示した説明図である。
【
図22】側面消火器扉が上下に分割された消火栓装置の内部構造を消火器の収納状態で示した説明図である。
【
図23】側面消火器扉が上下に分割された消火栓装置の内部構造を消火器の引出状態で示した説明図である。
【
図24】側面消火器扉が上下に分割された消火栓装置の内部構造を消火器の下降状態で示した説明図である。
【
図25】消火器昇降機構のオイルダンパーを2本備えた消火栓装置を引出筐体の引出状態で示した説明図である。
【
図26】消火器昇降機構のオイルダンパーを2本備えた消火栓装置を消火器収納箱の下降状態で示した説明図である。
【
図27】消火器昇降機構のオイルダンパーを2本備えた消火栓装置の引出筐体を取り出して示した説明図である。
【
図28】消火器昇降機構のオイルダンパーを1本備えた消火栓装置を引出筐体の引出状態で示した説明図である。
【
図29】消火器昇降機構のオイルダンパーを1本備えた消火栓装置を消火器収納箱の下降状態で示した説明図である。
【
図30】消火器昇降機構のオイルダンパーを1本備えた消火栓装置の引出筐体を取り出して示した説明図である。
【
図31】消火器昇降機構にガスダンパーを備えた消火栓装置を引出筐体の引出状態で示した説明図である。
【
図32】消火器昇降機構にガスダンパーを備えた消火栓装置を消火器収納箱の下降状態で示した説明図である。
【
図33】消火器昇降機構にガスダンパーを備えた消火栓装置の引出筐体を取り出して示した説明図である。
【
図34】
図33のガスダンパーを取り出して示した説明図である。
【
図35】ガスダンパーの内部構造を断面で示した説明図である。
【
図36】消火器昇降機構にガスダンパーを備えた消火栓装置の引出筐体を取り出して消火器収納箱の下降状態で示した説明図である。
【
図37】ガスダンパーのロック制御機構を示した説明図である。
【
図38】
図38(A)の切断線h-hの断面を示した説明図である。
【
図39】消火器引出構造を備えた消火器箱を消火器の収納状態で示した説明図である。
【
図40】消火器引出構造を備えた消火器箱を消火器の引出状態、及び消火器の下降状態で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、本発明に係る消火器収納装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0041】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、消火器収納装置に関するものである。ここで、「消火器収納装置」とは、筐体内に消火用ホース及び消火器等を収納して例えばトンネル内等に設置される消火栓装置、又は、筐体内に消火器を収納して例えばトンネル内等に設置される消火器箱を含むものである。
【0042】
ここで、「消火栓装置」とは、消火対象領域となる、例えば高速道路や自動車専用道路のトンネル内等に設置される非常用設備の一種であり、消火対象領域に設置された筐体内に消火用ホース等の消火栓機器、電装扉に赤色表示灯や発信機等の電装機器、及び消火器が配置又は収納されたものである。
【0043】
また、消火栓装置は、例えば道路を有するトンネルの内部の壁面に沿って設けられた監視員通路の路面上の所定の高さに露出した状態で設置されるものである。ここで、「所定の高さ」とは、消火栓装置をトンネル壁面に近接又は当接した位置に設置することが可能な高さであり、例えば、監視員通路の路面上に設置された架台の上部に筐体を取り付け固定すること、或いは、監視員通路の路面上方のトンネル壁面に設置された架台の道路側となる前部に筐体を取り付け固定することで、所定の高さに設置されるものである。
【0044】
また、「架台」とは、柱と梁などによって物を支える構造を指すものであり、具体例は図示していないが、支持台、土台、基台、台座、ベースなどの概念を含むものである。
【0045】
本実施形態の消火栓装置は、筐体内の消火器収納部に縦置きされた消火器を、筐体の側面から外部に引き出可能とするとともに、当該引き出された消火器の底部が消火器収納部の最下部より下方に位置するように下降させる消火器引出構造を備えたことを特徴とするものである。
【0046】
このため、利用者が消火器を使用して消火活動を行う場合には、消火栓装置の筐体側面方向に消火器を引き出すと、消火器は監視員通路の路面に近い低い位置に下降し、取り出す際に消火器が落下して破損するようなことはなく、消火器を取り出す操作性が向上し、例えば、力のない高齢者や女性であっても、消火器を安全かつ容易に消火器を取り出すことができ、消火器を用いた迅速な消火活動が可能となるものである。
【0047】
ここで、「消火器の縦置き」とは、消火器の容器を下にし、開栓レバーと固定レバーを上にして消火器を立てた状態で置くことを意味する。
【0048】
「消火器引出構造」は、筐体内の消火器収納部に縦置きされた消火器を、利用者が筐体の側面から外部に引き出す操作に連動して下降させる構造であり、その形状や構造は任意であるが、例えば、引出開口、引出筐体、筐体引出機構、消火器収納台及び消火器昇降機構で構成されるものである。
【0049】
ここで、「引出開口」とは、筐体の消火器収納側の側面に形成された開口である。また、「消火器収納部」とは、引出開口に対応して筐体の内部に形成された空間である。また、「引出筐体」とは、引出開口側の側面に消火器扉が配置されるとともに、少なくとも前面及び底面が開放され、消火器収納部に対し出し入れ自在に配置されるものである。また、「筐体引出機構」とは、消火器収納部に対し引出筐体を引出方向に移動自在に支持する機構であり、その構造や機能は任意であるが、例えば、事務机や書類ロッカーなどに設けられているような引出機構が利用可能であり、筐体側に固定されたガイドレールに、引出筐体側に固定されたガイドレールが、ガイドローラを介して摺動自在に嵌め込まれるものである。
【0050】
また、「消火器収納台」とは、消火器を縦置き状態で取り出し自在に載置するものであり、例えば、消火器を載置する上部に開口した箱型の容器となる消火器収納箱を含む概念である。さらに、「消火器昇降機構」とは、消火器収納台を上下方向に移動自在に、引出筐体の底部側に支持する機構であり、その構造や機能は任意であるが、筐体引出機構により、利用者が引出開口を介して引出筐体を筐体の側面から外部へ引き出した際に、消火器収納台の底部が消火器収納部の最下部よりも下方に位置するように、消火器収納台を下降させるものである。
【0051】
また、「筐体引出機構」は、一例として、第1の筐体引出機構と第2の筐体引出機構で構成されるものである。ここで、「第1の筐体引出機構」とは、消火器収納部の上部側に配置され、引出筐体を引出方向に移動自在に支持する主たる筐体引出機構であり、引出筐体を消火器収納部の側面外側への滑らかに移動することを可能とするものである。また、「第2の筐体引出機構」とは、消火器収納部の底部側に配置され、引出筐体の移動に伴って移動する消火器収納台を引出方向に移動自在に支持する補助的な筐体引出機構であり、引出筐体の動きに併せて消火器収納台を滑らかに引出方向へ移動させることを可能とするものである。
【0052】
また、「消火器昇降機構」は、ダンパー装置と案内構造で構成されるものである。ここで、「ダンパー装置」とは、引出筐体の上面下側に一端が固定されるともに他端が消火器収納台に固定され、引出筐体が筐体の側面から外部に引き出された場合に、載置された消火器の重量を受けて消火器収納台を下降させるものであり、例えば、オイルダンパー又はロック制御機能付きのガスダンパーが用いられる。
【0053】
「オイルダンパー」は、一端が引出筐体側に固定されたシリンダと、シリンダ内に摺動自在に設けられたピストンと、ピストンから外部へ延在し、延在方向の一端が消火器収納台側に固定されたロッドと、シリンダ内に充填されたオイルと、ピストンの移動に伴うオイルの流動により流動抵抗を発生するピストンに設けられたオリフィスと、ピストンの一方向の移動に伴い閉鎖するとともにピストンの他方向の移動に伴い開放するピストンに設けられた逆止弁とを備えた構造であり、オイルダンパーは、引出筐体が筐体の側面方向の引出位置へ移動した場合に、消火器収納台を所定の速度で下降させるものである。
【0054】
また、「ロック制御機能付きのガスダンパー」は、一端が消火器収納台側に固定されたシリンダと、シリンダ内に摺動自在に設けられた第1ピストンと、第1ピストンに続いてシリンダ内に摺動自在に設けられた第2ピストンと、第1ピストンから外部へ延在するとともに延在方向の一端が引出筐体側に固定されたロッドと、第1シリンダの片側の第1シリンダ室及び第1シリンダと第2シリンダの間の第2シリンダ室に充填されたオイルと、第2ピストンの片側の第3シリンダ室に加圧状態で充填された不活性ガス、例えば、窒素ガスと、第1ピストンの移動に伴いオイルを第1シリンダ室と第2シリンダ室の間で流動して流動抵抗を発生する第1ピストンに設けられたオリフィスと、オリフィスを通る流路を開閉する第1ピストンに設けられたバルブと、ロッドの内部に移動自在に設けられ、一端がロッド外部に突出するとともに他端がバルブに連結され、軸方向の移動に伴いバルブを開閉させるプッシュピンと、を備えた構造であり、シリンダは移動側として消火器収納台側に配置され、ロッドは固定側としいて引出筐体側に配置され、プッシュピンの非押込み位置でバルブによりオリフィスを通る流路を閉鎖してシリンダと第1及び第2ピストンの相対移動をロックし、プッシュピンの押込み位置でバルブによりオリフィスを通る流路を開放してシリンダと第1及び第2ピストンのロックを解除して相対移動を可能とするものである。
【0055】
また、ロック制御機能付きのガスダンパーは、プッシュピンの、押込み操作又は引出筐体の筐体の側面方向の引出位置への移動に伴う押込み動作に基づき、シリンダとピストンの相対移動のロックを解除して消火器収納台を所定の速度で下降させるものである。
【0056】
また、「消火器昇降機構」に設けられる「案内構造」とは、ダンパー装置による消火器収納台の動きを上下方向で案内するものであり、その構造は任意であるが、例えば、第1の案内構造又は第2の案内構造が設けられる。
【0057】
ここで、「消火器昇降機構の第1の案内構造」とは、引出筐体の上部下面に一端が固定されるとともに他端が所定の引出高さにある消火器収納台に当接する位置にある円筒案内部材を備え、円筒案内部材は、内部にダンパー装置を配置し、当該ダンパー装置の上部側を支持するものである。
【0058】
また、「消火器昇降機構の第2の案内構造」とは、引出筐体の上下方向に配置された鞘状の案内固定部材、例えばガイドケースと、消火器収納台側に配置され、案内固定部に摺動自在に挿入された案内移動部材、例えば、ガイドレールとを備えるものである。
【0059】
消火器引出構造に設けられる引出筐体の別の実施形態として、側面消火器扉は、引出筐体の本体側が配置される上扉と、消火器収納箱台が配置される下扉とに分割され、消火器収納台は、消火器昇降機構により引出筐体の本体側に対し消火器収納台が消火器昇降機構により上下方向で移動自在に支持されるものである。
【0060】
また、「消火器昇降機構」は、消火器収納台の底部と監視員通路の路面との間に、消火器を取り出す利用者の足が入る所定の高さに位置するように、消火器収納台を下降させるものであり、利用者は消火器収納台の下に足を入れて体を消火器に近づけることで消火器を持ち上げ易くなり、また、消火栓収納部を下降させても、消火器収納台の底部と監視員通路の路面とで利用者の足を挟んでしまうこともない。
【0061】
また、消火器引出構造の消火器収納台は、上部に開口した消火器収納箱であり、消火器収納箱は、消火器の取り出しに伴う当接を受けて外側へ回動するように底板前縁に軸支された前板を備えるものである。
【0062】
また、実施形態は、筐体内に消火器が配置される消火器箱に関するものである。ここで、「消火器箱」とは、消火対象領域となる高速道路や自動車専用道路のトンネル内等に設置される非常用設備の一種であり、消火対象領域に設置された筐体内に消火器、及び、電装扉に赤色表示灯や発信機等の電装機器が収納されたものである。
【0063】
消火器箱の実施形態にあっても、前述した消火栓装置の場合と同様に、筐体内の消火器収納部に縦置きされた消火器を、筐体の側面から外部に引き出し可能とするとともに、当該引き出された消火器の底部が消火器収納部の最下部より下方に位置するように下降させる「消火器引出構造」が設けられるものである。
【0064】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、「消火器収納装置」が「消火栓装置」であり、「消火栓装置がトンネル内の監視員通路上に設置された架台上に取り付け固定された」ものであり、筐体の消火器収納部に「消火器引出構造」が設けられ、筐体の消火器収納部に近い側面に設けられた消火器扉が「側面消火器扉」であり、「ダンパー装置」が「オイルダンパー」又は「ロック制御機構付きのガスダンパー」である場合について説明する。また、以下に示す具体的な実施形態では、「消火器収納装置」が「消火器」である場合についても説明する。
【0065】
[実施形態の具体的内容]
消火栓装置について、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a.消火栓装置の概要
b.消火栓装置の設置
c.消火栓装置の設置高さと薄型化
d.消火栓装置の薄型化に対応した構成
e.側面消火器扉を備えた消火栓装置の構造
e1.第1筐体の構造
e2.第2筐体の構造
e3.消火器収納部
f.消火器引出構造
f1.消火器引出構造の概要
f2.引出筐体の構造
g.筐体引出機構
h.第1の筐体引出機構
h1.引出側の構造
h2.筐体側の構造
h3.第1の筐体引出機構の動作
i.第2の筐体引出機構
j.消火器昇降機構
k.消火器の引出操作
l.消火器収納箱が下に足が入る高さに下降する消火栓装置
m.消火器収納箱の前板の開閉構造
n.側面消火器扉が上下に分割された消火栓装置
o.オイルダンパーを2本備えた消火栓装置
p.オイルダンパーを1本備えた消火栓装置
q.ロック制御機能付きのガスダンパーを用いた消火栓装置
q1.消火器昇降機構の概要
q2.ロック制御機能付きのガスダンパー
q3.ロック制御機能付きのガスダンパーの構造
q4.消火器の引き出し操作に連動する自動ロック制御機構
r.消火器箱の実施形態
s.本発明の変形例
【0066】
[a.消火栓装置の概要]
消火栓装置の概要について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、トンネル内における消火栓装置の設置状態をトンネル縦断面(トンネル長手方向の断面)で示した説明図である
図1、及び、
図1の消火栓装置の設置状態をトンネル横断面で示した説明図である
図2を参照する。
【0067】
図1に示すように、本実施形態の消火栓装置10の筐体は、第1筐体11a及び第2筐体11bに分割されている。第1筐体11aの前面には化粧枠13aが装着されている。化粧枠13aの扉開口部は上下に分割され、扉開口部の下側にヒンジ12aにより下向きに開く消火栓扉として機能する前傾扉12が配置され、扉開口部の上側にヒンジ14aにより上向きに開く保守扉14が配置され、第1筐体11aの内部となる消火栓機器の収納部に消火用ホース及び消火栓弁等のバルブ類を含む所定の消火栓機器が収納されている。
【0068】
第2筐体11bの前面には化粧枠13bが装着されている。化粧枠13bの右側には扉開口部が設けられ、扉開口部の右側にはヒンジ18aにより右向きに横開きする電装扉18が配置され、左側にはヒンジ20aにより左向きに横開きして、内部の端子箱26a,26bへのアクセスを可能とする補助扉20が配置されている。電装扉18には、電装機器として、例えば、赤色表示灯22、発信機24及び応答ランプ25が設けられ、内側には電話ジャックが設けられている。
【0069】
赤色表示灯22は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から確認できるようになっている。火災が発生し、発信機24が押されて押し釦スイッチがオンすると、発信信号が送信され、これを受信した電気室等に設置された防災受信盤から火災警報が出力される。消火栓装置10は、防災受信盤からの応答信号を受信して、赤色表示灯22が点滅し、応答ランプ25が点灯する。
【0070】
補助扉20に相対した第2筐体11b内の後面には、高圧用の端子箱26aと低圧用の端子箱26bが上下方向に配置されている。高圧用の端子箱26aは、内蔵した端子台を使用して、消火栓装置10の外部から引き込まれた強電用ケーブルと赤色表示灯22を接続する。低圧用の端子箱26bは、内蔵した端子台を使用して、消火栓装置10の外部から引き込まれた弱電用ケーブルと発信機24、応答ランプ25及び電話ジャック等を接続する。
【0071】
また、第2筐体11bの内側は消火器収納部となっており、消火器収納部に近い第2筐体11bの左側面には、
図2に示すように、消火器引出構造における側面消火器扉16が設けられている。側面消火器扉16には扉ハンドル1610と、「消火器」と縦書きされた機器名表示1612が設けられている。
【0072】
側面消火器扉16は、道路利用者が扉ハンドル1610に手をかけて手前方向(側面方向)に引き出すことでラッチが解除され、消火器収納部に収納されている消火器が側面外側に引き出されると、監視員通路35の路面に下降して取り出し可能となる。このため、側面消火器扉16の引出開口の上部の筐体側面には、側面消火器扉16により消火器を引き出して下降した状態での取り出し可能とする操作を図形により表示した操作説明1614が配置されている。
【0073】
また、
図1に示すように、第2筐体11bの左側の消火器収納部に対応した化粧枠13bには、「消火器」と横書きされた器具名表示1612、
図2の筐体側面と同じ操作表示1614、及び覗き窓19が設けられ、覗き窓19は外部から消火器の有無を確認可能としている。
【0074】
[b.消火栓装置の設置]
トンネル内の消火栓装置の設置について、より詳細に説明する。シールド工法により構築された円筒状(円形断面)のトンネル躯体の下部には、
図1及び
図2に示すように、道路15がトンネル長手方向(左右方向)に構築され、道路15の後側に沿ったトンネル壁面17の下側に、道路15に対し所定高さの監視員通路35が構築されている。
【0075】
シールド工法によるトンネル壁面17は、消火栓装置10を設置するための箱抜きが困難であることから、監視員通路35の路面上にトンネル壁面17に近接させて架台30を設置し、連結された第1筐体11a及び第2筐体11bを架台30上に取付け固定することで、消火栓装置10が設置されている。ここで、監視員通路35の路面から消火栓装置10に配置された発信機24までの高さが、法的に定められた800mm~1500mmの間に入るように、架台30の高さH1が設定されている。
【0076】
また、本実施形態の架台30は、
図2に示すように、側面形状を底辺に対し上辺が長い逆台形とし、トンネル壁面17の湾曲形状に沿って後側が斜め下向きの傾斜面となっている。架台30の上端面は、消火栓装置10の連結された第1筐体11a及び第2筐体11bが取付け固定されるものである。また、消火栓装置10に対しては監視員通路35の路面下のダクト内から架台30を通して立ち上げられた給水配管49が接続されている。
【0077】
[c.消火栓装置の設置高さと薄型化]
消火栓装置の設置高さと薄型化について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、トンネル横断面における消火栓装置の設置状態を概略的に示した説明図である
図3を参照する。
【0078】
本実施形態にあっては、架台30により監視員通路35の路面上に設置された消火栓装置10の、トンネル壁面17からの突出(出っ張り)による通路幅の制約を低減するため、消火栓装置10の設置高さを最適化し、併せて、消火栓装置10を可能な限り薄型化している。
【0079】
まず、消火栓装置10の設置高さは、架台30により定まるものであるから、架台30の高さH1の最適化について、より詳細に説明する。消火栓装置10が設置されるトンネル壁面17は円形断面となっており、
図3(A)にあっては、トンネル中心(円形断面の中心)Pからの水平方向のトンネル中心線SL1に対し、監視員通路35上に設置された消火栓装置10は、その高さ方向の中心を通る横方向の筐体中心線SL2が可能な限り近付くように、架台30の高さH1が設定されている。
【0080】
この場合、筐体中心線SL2をトンネル中心線SL1に近づけるほど、消火栓装置10がトンネル壁面17から突出する度合いを低減することができる。
【0081】
図3(B)は、筐体中心線SL2をトンネル中心線SL1に一致させるように架台30の高さH1が設定された場合を示す。この場合には、消火栓装置10がトンネル壁面17から突出する度合いを最小とすることができる。ただし、架台30の高さH1は消火器の取出し等を踏まえ、可能な範囲での調整となる。
【0082】
次に、消火栓装置10の薄型化について、より詳細に説明する。消火栓装置10に収納される機器の中で前後方向のサイズが最大となるのは、第2筐体11bに収納される消火器であり、消火栓装置の幅(前後方向の厚さ)が第2筐体11bに消火器が収納できる最小値であれば、消火栓装置10の薄型化が可能であるから、消火栓装置10の幅は第2筐体11bに収納する消火器の外径に対応した所定の幅に設定される。
【0083】
消火器の外径は150~160mm程度であり、収納された消火器が第2筐体11bに接触しないように隙間を確保すると、消火栓装置10の最小幅は、例えば、180~200mm程度の範囲内となり、消火栓装置10の幅は当該範囲内の所定の幅に設定される。これに対し、トンネル躯体の壁面を箱抜きして埋込設置する従来の消火栓装置10の幅は300mm程度であることから、本実施形態の消火栓装置10の幅は従来の2/3以下にすることができ、消火栓装置10を薄型化することができる。
【0084】
[d.消火栓装置の薄型化に対応した構成]
消火栓装置10を消火器の外径に対応して、180~200mm程度の範囲の所定の幅に薄型化した場合、第1筐体11aに従来の消火栓装置と同様に所定長の消火用ホース、例えば、30mの保形ホースを内巻き状態で収納することが困難となる。そこで、本実施形態にあっては、第1筐体11aの横幅(左右方向の幅)を拡大することで、従来と同じ所定長の保形ホースが内巻き状態で収納可能となっている。
【0085】
また、消火栓装置10の薄型化に伴い、従来の消火栓装置のように、消火器が収納される消火器収納部の後側の筐体後面に端子箱26a,26bを配置することが困難となる。そこで、本実施形態にあっては、第2筐体11bの横幅(左右方向の長さ)を消火器の収納に加え、電装機器と端子箱を配置可能とする横幅に拡大している。
【0086】
[e.側面消火器扉を備えた消火栓装置の構造]
側面消火器扉を備えた消火栓装置の構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火栓装置の内部構造を、前傾扉を開いて正面から示した
図4を参照する。
【0087】
(e1.第1筐体の構造)
第1筐体11aの構造について、より詳細に説明する。
図4に示すように、消火栓bに分けられている。バルブ類収納部50aには、架台30を通して下から給水配管機器の収納部となる第1筐体11aの内部は、バルブ類収納部50aとホース収納部50bが引き込まれて給水栓52に接続され、また、給水配管49は下向きに分岐し、分岐先には消火栓弁54及び自動調圧弁56が設けられ、続いて保形ホースを用いた消火用ホース60が接続されている。
【0088】
消火栓弁54は、消火栓弁開閉レバー58により開閉操作されるものであり、消火栓弁開閉レバー58が開閉操作されると公知のワイヤーリンク機構により消火栓弁54が遠隔的に開閉する。また、消火栓弁開閉レバー58が開閉操作されると、操作ボックスに設けられたポンプ起動連動スイッチ(不図示)がオン、オフする。また、給水栓52の右上には、消防隊が使用するポンプ起動スイッチ64が設けられている。
【0089】
ホース収納部50bには、ホース収納フレーム62が設けられ、下側から引き込まれた消火用ホース60が右回り又は左回りの内巻き状態で収納されている。ここで、ホース収納フレーム62は、消火栓装置10の薄型化に伴う第1筐体11aの横幅の拡大に対応して横幅を広くしており、従来の消火栓装置に比べて少ない巻き数で従来と同じ所定長の消火用ホース60が収納可能となっている。また、ホースガイド66を通して引き出された消火用ホース60の先端にはノズル68が装着され、ノズル68はノズルホルダー70に着脱自在に保持されている。
【0090】
(e2.第2筐体の構造)
第2筐体11bの電装機器配置側の構造について、より詳細に説明する。
図4に示すように、第2筐体11bの内部は消火器収納部50cとなっており(
図11参照)、第2筐体11bの前面右側となる扉開口部には、ヒンジ18aにより右方向に横開きする電装扉18が配置され、電装扉18には、上から順に赤色表示灯22、発信機24、電話ジャック28、及び応答ランプ25が配置され、電話ジャック28は電装扉18の内側に配置されている。
【0091】
ここで、電装機器の内、第2筐体11bの内部となる消火器収納部50cでの前後方向のサイズが最大となるのは赤色表示灯22であり、そのサイズは120mm程度であるから、消火栓装置10を180~200mm程度の範囲の所定の幅に薄型化した場合でも、第1筐体11a側から引き込まれたケーブルの通線スペースを確保した上で各電装機器を配置することができる。
【0092】
また、電装扉18の左側にはヒンジ20aにより左方向に横開きする補助扉20が配置され、補助扉20に相対した第2筐体11bの筐体後面に、端子箱26a,26bが上下方向に配置されている。
【0093】
端子箱26a,26bは、箱本体と蓋部材で構成され、第2筐体11bに配置された状態での縦(上下)×横(左右)×奥行(前後)のサイズは、220mm×140mm×80mm程度である。
【0094】
このため、消火栓装置10を180~200mm程度の範囲の所定の幅に薄型化した場合でも、端子箱26a,26bの奥行(前後)のサイズは80mm程度であるから、第2筐体11b内には端子箱26a,26bを配置する十分なスペースが確保される。また、端子箱26a,26bは第1扉18に配置された赤色表示灯22等の電装機器に近い位置に配置されることから、端子箱26a,26bと電装機器との間は短い配線長による接続が可能となっている。
【0095】
このため、工場での第2筐体11bの組み立て等の段階で、電装扉18と補助扉20を開くことで第2筐体11bの前面を開放し、端子台26a,26bと電装扉18に配置した電装機器との間を信号線で接続する作業を容易に行うことが可能となっている。
【0096】
また、消火栓装置10をトンネル内に設置する場合にも、電装扉18と補助扉20の扉固定を解除し、電装扉18と補助扉20を開くことで、端子箱26a,26bに第1筐体11a側から引き込まれたケーブルを接続する作業を容易に行うことが可能となっている。
【0097】
(e3.消火器収納部)
図4に示すように、第2筐体11bの内部は消火器収納部であり、消火器引出構造によって、外径が150~160mm程度となる消火器72が2台収納されている。また、前述したように、消火栓装置10を薄型化するため、消火栓装置10の幅は消火器72の外径に対応した180~200mmの範囲の所定の幅となっており、消火器引出構造によって収納された消火器72の前後に15~25mm程度の隙間が確保され、消火器72が第2筐体11bに接触することなく収納可能となっている。
【0098】
また、第2筐体11bの内部の消火器収納部には、消火器引出構造の引出筐体32が配置され、引出筐体32の底部側に配置された消火器収納箱34には2本の消火器72が縦置き状態で取り出し自在に載置されている。
【0099】
[f.消火器引出構造]
消火器引出構造について説明する。消火器引出構造は、筐体内に縦置きされた消火器を、筐体の側面から外部に引き出し可能とするとともに、当該引き出された消火器の底部が消火器収納部の最下部より下方に位置するように下降させるものである。
【0100】
(f1.消火器引出構造の概要)
まず、消火栓装置に設けられた消火器引出構造の概要について説明する。当該説明にあっては、消火器が収納された状態の消火栓装置を示した
図5、消火器が引き出された状態の消火栓装置を示した
図6、引き出しされ消火器が下降した状態の消火栓装置を示した
図7、消火器が取り出された後に消火器収納箱が引出位置に戻った状態の消火栓装置を示した
図8を参照する。
【0101】
まず
図5に示すように、消火栓装置10は、監視員通路の路面上にトンネル壁面に近接して配置された架台30により所定の高さに設置されている。通常時、第2筐体11bの左側面に設けられた側面消火器扉16は閉鎖状態にあり、内部に2本の消火器が縦置き状態で収納されている。
【0102】
利用者が消火器を使用する場合には、側面消火器扉16の扉ハンドル1610に手をかけて手前方向(側面方向)に引き出すことでラッチが解除され、
図6に示すように、引出側ガイドレール36を備えた筐体引出機構により引出筐体32が引出開口45から引出され、これに伴い、引出筐体32の下部にダンパー装置を備えた消火器昇降機構により支持された消火器収納箱34に載置されている2本の消火器72が第2筐体11bの側方外部に引き出される。
【0103】
このように、引出筐体32が第2筐体11bの側方外部に引き出されると、2本の消火器72を載置している消火器収納箱34が消火器昇降機構のダンパー装置により下降する。下降した消火器収納箱34が監視員通路の路面上の所定の高さに位置することで、消火器72の取り出し位置を低くして、消火器72を容易に取り出すことを可能とする。
【0104】
また、利用者が消火器72を取り出して消火を行った場合には、道路管理者は未使用の消火器を消火栓装置10に収納する。この場合には、
図7に示したように、監視員通路の路面に下降していた消火器収納箱34を、
図8に示すように、第2筐体11bの引出開口45に収納可能な高さに引き上げて保持し、道路管理者がこの状態で消火器収納箱34の消火器ホルダー3410に未使用の消火器72を載置し、側面消火器扉16を扉ハンドル1610がロックする位置まで押し込んで引出筐体32を消火器収納部に収納することで、消火栓装置10を復旧させる。
【0105】
(f2.引出筐体の構造)
引出筐体の構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、筐体引出機構が配置される前の引出筐体を示した
図9を参照する。なお、
図9(A)は引出筐体の左側面を示し、
図9(B)はその正面を示し、及び
図9(C)は
図9(B)の切断線a-aの断面を示す。
【0106】
筐体引出機構が配置される前の引出筐体32は、左側面に消火器側面扉16が配置され、少なくとも前面及び底面が開放され、消火器昇降機構を介して底部側に消火器収納箱34を支持しており、消火器収納箱34は、第2筐体11bの引出開口45を介して消火器収納部50cに対し出し入れ自在に配置されるものである。
【0107】
より詳細には、
図9に取り出して示すように、引出筐体32は、側面消火器扉16と引出筐体本体3210で構成されている。引出筐体本体3210は、筐体上面3212、筐体背面3214及び筐体右側面3216で構成され、側面消火器扉16は、筐体左側面に配置されており、前面及び底面に開放された構造となっている。また、筐体上面3212は、側面消火器扉16の上端から所定高さ分低い位置に配置され、筐体上面3212の上部には、筐体引出機構のガイドレールの配置スペースが確保されている。また、側面消火器扉16の上部には、ハンドル取付開口3218が形成されている。
【0108】
[g.筐体引出機構]
筐体引出機構について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器が収納された状態での消火栓装置の内部構造を示した
図10、消火器が引き出された状態での消火栓装置の内部構造を示した
図11、引き出された消火器が下降した状態での消火栓装置の内部構造を示した
図12、消火器引出構造の引出筐体を取り出して左側面、正面、及び右側面で示した
図13、消火器引出構造の引出筐体を取り出して平面、
図13(B)の切断線b-bの断面、及び
図13(C)のA部拡大を示した
図14、消火器引出構造の筐体側を示した
図15、消火器引出構造の第1の筐体引出機構を取り出して動作を示した
図16、及び、オイルダンパーを備えた消火器昇降機構の構成を模式的に示した
図17を参照する。
【0109】
筐体引出機構は、消火器を筐体に対し出し入れする構造であり、その形状や構造は任意であるが、第1の筐体引出機構と第2の筐体引出機構で構成される。第1の筐体引出機構は、例えば、
図10の消火器収納状態に示すように、消火器収納部50c(
図11参照)の上部側に配置され、引出筐体32を引出方向に移動自在に支持する主たる筐体引出機構の部分である。これに対し第2の筐体引出機構48は、例えば、
図11の消火器引出状態に示すように、消火器収納部50cの底部側に配置され、引出筐体32の移動に伴って移動される消火器収納箱34を引出方向に移動自在に支持する補助的な筐体引出機構の部分である。
【0110】
[h.第1の筐体引出機構]
消火器収納部50cの上部側に配置され、引出筐体32を引出方向に移動自在に支持する第1の筐体引出機構について、より詳細に説明する。
【0111】
(h1.引出側の構造)
第1の筐体引出機構の引出側の構造について、より詳細に説明する。
図9に示した引出筐体本体3210の筐体上面の両側には、
図13(B)(C)及び
図14(A)に示すように、第2筐体11bの消火器収納部50cに対し引出筐体32を引出方向(左右方向)に移動自在に支持する第1の筐体引出機構の2本の引出側ガイドレール36が支持部材37により固定されている。
【0112】
引出側ガイドレール36は、
図13(C)のA部を拡大した
図14(C)に示すように、引出本体32の上面部に固定された支持部材37の外側に固定され、外側に向けて矩形断面のレール突起3610が形成されている。また、
図13(B)に示すように、筐体側ガイドレール36の奥側(右側)の先端にはローラ3614が設けられ、ローラ3614の上側には手前側(左側)が持ち上がった傾斜面のストッパ片3612が形成されている。
【0113】
引出本体32の左側面に固定された側面消火器扉16には、扉ハンドル1610と「消火器」と縦書きされた機器名表示1612が設けられている。扉ハンドル1610は、扉裏面側に上方に向けてラッチ爪1616を有し、扉ハンドル1610が手前に引かれるとラッチ爪1616が引き込み、筐体側面の引出開口45に対する扉ロックが解除されて引き出し可能となる。
【0114】
(h2.筐体側の構造)
第1の筐体引出機構の筐体側の構造について、より詳細に説明する。第1の筐体引出機構の筐体側の構造は、筐体本体32の上部側を引出方向に移動自在に支持するものであり、その形状や構造は任意であるが、
図15に示すように、第2筐体11bの内部となる消火器収納部50cの上部の両側に、筐体側ガイドレール42が固定されている。なお、
図15(A)は第2筐体11bの左側面を示し、
図15(B)は正面断面を示し、
図15(C)は
図15(B)の切断線c-cの断面を示している。
【0115】
筐体側ガイドレール42は、
図13に示した引出側ガイドレール36と同じか、それより長い所定の長さをもつ。また、筐体側ガイドレール42は、
図15(A)のB部を拡大した
図15(D)に示すように、横向きに開いたコ字形の枠板部材であり、
図13に示した引出側ガイドレール36の先端側に配置されたローラ3614が、コ字形の枠板部材の中を転動することになる。
【0116】
また、筐体側ガイドレール42は、引出開口45側に上側が広がった開口部4210が形成され、
図13に示した引出側ガイドレール36の後端のローラ3614が斜め上方からレール内に差し込み可能となっている。また、筐体側ガイドレール42の開口部4210の上側には、所定の隙間を介してストッパ4214が固定され、筐体側ガイドレール42にはめ込まれた引出側ガイドレール36が引き出される際に、ストッパ片3612が当接して抜け出さないようになっている。
【0117】
さらに、筐体側ガイドレール42の開口部4210の下側にはローラ4212が配置される。ローラ4212は、
図15(D)に示すように、ローラ4212の上側が筐体側ガイドレール42の底面部を超えて内側に入り込んでおり、筐体側ガイドレール42に差し込まれた引出側ガイドレール36のレール突起3610の下面が、ローラ4212に乗った状態での移動が可能となっている。
【0118】
(h3.第1の筐体引出機構の動作)
第1の筐体引出機構の動作について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、第1の筐体引出機構を取り出して動作を示した
図16を参照するが、
図16(A)は引出側が取り外された状態を示し、
図16(B)は引出側が嵌め入れられた初期状態又は完全に引き出された状態を示し、
図16(C)は引き出し途中状態を示し、
図16(D)は引出側が閉じた状態を示している。また、
図16(A)~(D)で筐体側ガイドレール42は透視状態で示している。
【0119】
消火栓装置の製作段階で、筐体側の消火器収納部50cに引出筐体32を収納する場合には、
図16(A)に示すように、作業者は引出筐体32側に設けられた引出側ガイドレール36の先端のローラ3614を、筐体側ガイドレール42の開口部4210に位置合わせし、引出側ガイドレール36を斜め下向きにして筐体側ガイドレール42の中に差し込む。このとき引出側ガイドレール36のストッパ片3612が筐体側のストッパ4214の上側を通るように差し入れる。
【0120】
これにより、
図16(B)に示すように、筐体側ガイドレール42の中に引出側ガイドレール36のローラ3614が入り、筐体側ガイドレール36のレール突起3610の下側にローラ4212が接触し、更に、ストッパ4214にストッパ片3612が当接して抜け止めされた状態となり、この状態が
図11及び
図12に示すように、引出筐体32が最も消火器収納部50cから引き出された位置となる。
【0121】
続いて、側面消火器扉16が押し込まれると、
図16(C)に示すように、ローラ3614,4212の転動によって、筐体側ガイドレール42に対し引出側ガイドレール36が滑らかに移動し、
図16(D)に示すように、引出筐体32は、消火器収納部50cに完全に収納された位置に移動する。このとき、
図13(C)に示した側面消火器扉16の扉ハンドル1610に設けられたラッチ爪1616が、
図15(A)に示した受け部材1618に係合し、側面消火器扉16が閉鎖位置にロックされる。この状態が
図10に示す消火栓措置10に消火器72が収納された通常の設置状態となる。
【0122】
[i.第2の筐体引出機構]
次に、第2の筐体引出機構について、より詳細に説明する。
図15に示すように、第2の筐体引出機構48は、消火器収納部50cの底部側に配置され、引出筐体32の移動に伴って移動する消火器収納箱34を引出方向に移動自在に支持する補助的な筐体引出機構である。
【0123】
ここで、第2の筐体引出機構48を設ける理由を説明する。
図13に示すように、消火器収納箱34は引出筐体32の内部にオイルダンパー38と案内円筒部材40で構成される消火器昇降機構によって吊下げ状態で支持されており、引出筐体32の移動に伴い消火器昇降機構を介して移動するものであり、そのままでは移動の際の支持が不安定となる。そこで、引出筐体32の移動に伴って移動する消火器収納箱34を引出方向に移動自在に支持するため、
図15(A)(B)に示すように、消火器収納部50cの底部に、第2の筐体引出機構48が設けられる。
【0124】
第2の筐体引出機構48の形状や構造は任意であるが、例えば、筐体内の底部に配置したローラ基台4812の移動方向の複数個所の両側にガイドローラ4810が回転自在に設けられる。
【0125】
引出筐体32の内部に消火器昇降機構により吊下げ状態で支持された消火器収納箱34は、
図10に示すように、第2の筐体引出機構48のガイドローラ4810の上に載置されており、このため
図11に示すように、筐体本体34の移動に伴い消火器引出機構を介して滑らかな引出方向での移動が可能となっている。
【0126】
[j.消火器昇降機構]
次に、消火器昇降機構について、より詳細に説明する。消火器昇降機構は、利用者が引出筐体32を引出開口45から筐体の側方外部へ引き出した際に、引き出された消火器72の底部が消火器収納部50cの最下部よりも下方に位置するように、消火器収納箱34を下降させる機構であり、その形状や構造は任意であるが、例えば、
図13に示すように、オイルダンパー38と円筒案内部材40で構成される。
【0127】
円筒案内部材40は、第1の案内構造に対応し、
図14(B)に示すように、引出筐体32の上部下面のコーナーの4箇所に上端が固定されて下向きに配置され、下端が消火器収納箱34の底面に当接する長さとなっている。ここで、消火器収納箱34は、上部に開口した箱部材であり、底部に2台の消火器72を縦置きで載置するため、ゴム材料などで作られた底の浅い円筒状の消火器ホルダー3410が配置されている。
【0128】
円筒案内部材40の内部には、オイルダンパー38が配置されている。オイルダンパー38は、シリンダ側となる上端が円筒案内部材40に固定部44、例えば、通しボルトで固定され、ロッド側となる下端が消火器収納箱34の底板に固定部46により固定されている。
【0129】
オイルダンパー38は、
図17(A)に模式的に示すように、シリンダ3810の内部にピストン3812が摺動自在に設けられ、ピストン3812からロッド3814が外部へ延在している。シリンダ3810の内部にはオイルが充填されている。
【0130】
ピストン3812には、オリフィス3816と逆止弁3818が設けられている。オリフィス3816は、ピストン3812の移動に伴うオイルの流動により流動抵抗を発生する。逆止弁3818は、ピストン3812の下向き方向の移動に伴い閉鎖するとともにピストン3812の上向き方向の移動に伴い開放する。シリンダ3810は上端が円筒案内部材40の内部に固定され、ロッド3812は下端が消火器収納箱34の底板に固定されている。
【0131】
このため
図11に示すように、引出筐体32が消火器収納部50cから第2筐体11bの側方外部の引出位置へ引き出された場合、消火器収納箱34の荷重は、縦置きで載置した2本の消火器72を含む、例えば、20kg程度の荷重となり、
図17(B)に示すように、オイルダンパー38は、消火器収納箱34の荷重を受けてシリンダ3810内でピストン3812が下方に移動し、
図12に示すように、消火器72を載置した状態で消火器収納箱34を下降させる。このときのピストン3812の下降速度は、オリフィス3816を流れるオイルの流動抵抗で決まり、消火器収納箱34は緩やかに下降し、監視員通路35の路面に達しても衝撃を生ずることはない。
【0132】
一方、利用者が消火器を使用して消火活動を行った後に、道路管理者が未使用の消火器を消火栓装置10に収納する場合には、
図12に示す下降位置にある消火器収納箱34を、
図8に示すように、引出筐体32の底部に収まる位置に引き上げる操作を行い、この状態で引出筐体32の右側を消火器収納部50cに少し押し入れることで保持し、そこに消火器72を縦置きで載置し、引出筐体32を消火器収納部50cへ押し込み、
図5に示す状態に復旧させる。このときの消火器収納箱34の引き上げに伴うピストン3812の上昇により逆止弁3818が開いてピストン3812を通る流路を開放し、オリフィス3816による流動抵抗を受けることなく、軽い力で消火器収納箱34を引き上げることができる。
【0133】
[k.消火器の引出操作]
筐体引出構造による消火器の引出操作について、より詳細に説明する。
図5に示すように、通常時、消火栓装置10の側面消火器扉16は閉鎖状態にロックされており、
図10に示すように、側面消火器扉16が筐体側面の引出開口45を閉鎖する位置に保持され、2本の消火器72が載置された引出筐体32は、第2筐体11bの消火器収納部50cに収納されている。
【0134】
利用者が消火器を使用する場合には、側面消火器扉16の扉ハンドル1610を手前に引くことでロックが解除され、
図6に示すように、消火器72を載置した引出筐体32が引出開口34から外側に引き出される。このとき、
図11に示すように、第1の筐体引出機構における引出筐体32の引出側ガイドレール36が、第2筐体11b側の筐体側ガイドレール42に沿ってローラ3614、4212の転動を受けながらストロークエンドまで移動する。このとき、2本の消火器72を載置した引出筐体32は、その荷重による回転モーメントがローラ3614回りに作用するが、ローラ4212が引出側ガイドレール36を支持するストッパとなり、下方への回転が阻止される。また、オイルダンパー38と円筒案内部材40で構成された消火器昇降機構を介して吊下げ支持されている消火器収納箱34は、2本の消火器72を縦置きで載置した状態で、消火器収納部50cの底部に配置した第2の筐体引出機構48のガイドローラ4810の転動により滑らかに移動する。
【0135】
図6及び
図11に示すように、引出筐体32が筐体の側方外部に完全に引き出されると、
図7及び
図12に示すように、消火器収納箱34に載置されている2本の消火器72の荷重を受けてオイルダンパー38のロッド3814が下方に移動し、消火器収納箱34を側面消火器扉16の下端が監視員通路35の路面に当たる位置に下降させる。このため、消火器72の取り出し位置が低くなることで、利用者は、消火器72を落下させて破損させることなく、容易に取り出すことができる。
【0136】
また、
図12に示すように、筐体の側面側に引き出された消火器72は、その前方及び上方が開放空間となっていることから、利用者は、消火器72の上部に設けられた開栓レバー7210と固定レバー7212の内、下側の固定レバー7212を握って上に持ち上げることで、監視員通路35の路面に下降した消火器収納箱34から消火器72を容易に取り出すことを可能とする。
【0137】
このように、固定レバー7212を握って下から上へ持ち上げる操作は、無理のない姿勢で力を出すことができ、そのため、利用者が女性や高齢者などの弱者であっても、容易に消火器を取り出して使用することが可能となる。
【0138】
また、消火栓装置10の筐体側方の外部に消火器72を引き出すことができるため、避難者が通行する筐体前面方向の監視員通路35が制約されず、監視員通路35の通行を妨げることなく、消火器72を引き出して取り出すことが可能となる。
【0139】
[l.消火器収納箱が下に足が入る高さに下降する消火栓装置]
次に、消火器収納箱の下に利用者の足が入る高さに消火器収納箱が下降する消火栓装置について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器収納箱の底部と監視員通路の路面との間に利用者の足の入る隙間が形成されるように消火器収納箱が下降する消火栓装置を示した
図18を参照する。
【0140】
図18に示すように、本実施形態の消火器昇降機構は、
図5乃至
図17の実施形態と同様に、オイルダンパー38と円筒案内部材40で構成されるものであるが、シリンダ内のピストンに移動して消火器収納箱34が下降した状態で、消火器収納箱34の底部と監視員通路35の路面との間に消火器を取り出す利用者の足が入る所定の高さH2の隙間を形成するように、オイルダンパー38に設けられたロッド3814の長さが設定されている。高さH2は任意であるが、例えば、10cm程度の高さである。
【0141】
このため、消火栓装置10の側方外部に引出筐体32を引き出した利用者は、下降した消火器収箱34の下に足を入れ、体を消火器72に近づけた状態で、容易に持ち上げることが可能となり、姿勢を崩すことなく、消火器を容易かつ安全に取り出すことが可能となる。また、消火栓収納台34が下降した場合に、利用者の足を挟んでしまうこともなく、高い安全性が確保される。
【0142】
[m.消火器収納箱の前板の開閉構造]
次に、消火器収納箱の前板の開閉構造を備えた消火栓装置の実施形態について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器が取り出され際に消火器収納箱の前板が回動する消火栓装置を示した
図19を参照する。なお、
図19(A)は消火器を引出下降させて取り出す状態を示し、
図19(B)は消火器収納箱の開閉構造を示す。
【0143】
図19(A)に示すように、本実施形態の消火器引出構造は、
図5乃至
図17に示した実施形態と同様となるが、消火器収納箱34については、
図19(B)に示すように、消火器収納箱34の前面側を構成する前板3412が、消火器の取り出しに伴う当接を受けて外側へ回動するように底板前縁にばね蝶番3414で閉鎖位置に付勢された状態で軸支される開閉構造となっている。
【0144】
このため、
図19(A)に示すように、筐体の側方外部へ引き出されて低い位置に下降した消火器収納箱34から利用者がレバーを握って消火器72を取り出す場合に、取り出される消火器72に押されて消火器収納箱34の前板3412が外側に回動して開くため、前板3412を乗り越えるように消火器72を持ち上げて取り出す必要がなく、消火器収納箱34からの消火器72の取り出しが更に容易になる。
【0145】
[n.側面消火器扉が上下に分割された消火栓装置]
次に、消火器引出構造において引出筐体の側面消火器扉が上下に分割された消火栓装置について、より詳細に説明する。
【0146】
当該説明にあっては、側面消火器扉が上下に分割された消火栓装置を消火器の収納した状態で示した
図20、側面消火器扉が上下に分割された消火栓装置を消火器の下降状態で示した
図21、側面消火器扉が上下に分割された消火栓装置の内部構造を消火器の収納状態で示した
図22、側面消火器扉が上下に分割された消火栓装置の内部構造を消火器の引出状態で示した
図23、及び、側面消火器扉が上下に分割された消火栓装置の内部構造を消火器の下降状態で示した
図24を参照する。
【0147】
図20乃至
図24に示すように、引出筐体32の側面消火器扉16は上扉1620と下扉1630に分割され、上扉1620側には、引出筐体32の本体側が配置され、下扉1630側には、消火器収納箱34が下扉1630を箱板の一部として配置されている。
【0148】
消火器昇降機構は、オイルダンパー38と消火器収納箱34のコーナー内側に起立して固定された円筒案内部材4010で構成され、オイルダンパー38のシリンダ側となる上端が引出筐体32側に固定され、下方に引き出されたロッド3814が円筒案内部材4010の中を通って消火器収納箱34の底面に固定されている。それ以外の構造は、
図5乃至
図18に示した実施形態と同様になることから、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0149】
本実施形態の消火栓装置にあっては、
図20に示すように、通常時、消火栓装置10の上扉1620と下扉1630に分割された側面消火器扉16は閉鎖状態にロックされており、
図22に示すように、側面消火器扉16が筐体側面の引出開口を閉鎖する位置に保持されていることで、消火器収納箱34に2本の消火器72が載置された引出筐体32は、第2筐体11bの消火器収納部50cに収納されている。
【0150】
利用者が消火器を使用する場合には、側面消火器扉16の扉ハンドル1610を手前に引くことでロックが解除され、
図23に示すように、消火器収納箱34に消火器72を載置した引出筐体32が引出開口45から外部へ引き出される。このとき、オイルダンパー38と円筒案内部材4010で構成された消火器昇降機構を介して吊下げ支持されている消火器収納箱34は、2本の消火器72を縦置きで載置した状態で、消火器収納部50cの底部に配置した第2の筐体引出機構48のガイドローラ4810の転動により外側へ滑らかに移動する。
【0151】
図23に示すように、引出筐体32が筐体の側方外部に完全に引き出されると、
図21及び
図24に示すように、消火器収納箱34に載置されている2本の消火器72の荷重を受けてオイルダンパー38のロッド3814が下方に移動し、下扉1630を備えた消火器収納箱34を下扉1630の下端が監視員通路35の路面に当たる位置に下降させ、消火器72の取り出し位置を低くすることで、消火器72を容易に取り出すことを可能となる。
【0152】
図24に示すように、消火器収納箱34が下降して下扉1630の下端が監視員通路35の路面に当接した状態で、消火器収納箱34の底面下側と監視員通路35の路面との間に、消火器を取り出そうとする利用者の足が入る高さH2の隙間が形成されるように、消火器収納箱34の底面下側から下扉1630の下端までの高さが設定されている。高さH2は任意であるが、余裕をもって足を入れるに十分な高さ、例えば、10cm程度が確保される。
【0153】
[o.オイルダンパーを2本備えた消火栓装置]
次に、消火器引出構造の消火器昇降機構において、オイルダンパーを2本備えた消火栓装置について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器昇降機構のオイルダンパーを2本備えた消火栓装置を引出筐体の引出状態で示した
図25、消火器昇降機構のオイルダンパーを2本備えた消火栓装置を消火器収納箱の下降状態で示した
図26、及び消火器昇降機構のオイルダンパーを2本備えた消火栓装置の引出筐体を取り出して示した
図27を参照する。なお、
図27(A)は正面を示し、
図27(B)は
図27(A)の切断線d-dの断面を示し、
図27(C)は
図27(B)の切断線e-eの断面を示す。
【0154】
図25乃至
図27に示すように、本実施形態の側面消火器扉16は、
図20乃至
図24の実施形態と同様に、上扉1620と下扉1630に分割されており、上扉1620側には、引出筐体32の本体側が配置され、下扉1630側には、消火器収納箱34が下扉1630を箱板の一部として配置されている。
【0155】
消火器昇降機構は、引出筐体32の上部下面に上端を固定して左右2個所に配置された2本の円筒案内部材4012、円筒案内部材4012に上下方向で相対して消火器収納箱34の底面に起立した2本の円筒案内部材4010、及び円筒案内部材4010、4012の内部に配置された2本のオイルダンパー38で構成される。
【0156】
オイルダンパー38は、円筒案内部材4012に収納された状態でシリンダ側の上端が通しボルトなどの固定部44で支持され、シリンダ側から下方に延在したロッド3814が、円筒案内部材4010を通って消火器収納箱34の底面に固定されている。
【0157】
更に、消火器昇降機構には、案内固定部材として機能するスライドケース80と案内移動部材として機能するスライドレール82で構成された案内構造(第2の案内構造に対応)が設けられている。スライドケース80は下方に開口し、内部にスライド空間が形成された鞘状の部材であり、引出筐体32の上側に配置された円筒管内部材4012を挟む両側の上下方向に配置されている。スライドレール82は上側がスライドケース80に収納され、下側が消火器収納箱34に固定され、消火器収納箱34の上下方向での移動を案内する。それ以外の構造は、
図5乃至
図17の実施形態と同様になることから、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0158】
このように2本のオイルダンパー38を備えた消火器昇降機構とすることで、消火器引出構造を簡単にし、コストの低減を可能とする。
【0159】
[p.オイルダンパーを1本備えた消火栓装置]
次に、消火器引出構造の消火器昇降機構において、オイルダンパーを1本備えた消火栓装置について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器昇降機構のオイルダンパーを1本備えた消火栓装置を引出筐体の引出状態で示した
図28、消火器昇降機構のオイルダンパーを1本備えた消火栓装置を消火器の下降状態で示した
図29、及び消火器昇降機構のオイルダンパーを1本備えた消火栓装置の引出筐体を取り出して示した
図30を参照する。なお、
図30(A)は正面を示し、
図30(B)は
図30(A)の切断線f-fの断面を示し、
図30(C)は
図30(B)の切断線g-gの断面を示す。
【0160】
図28乃至
図30に示すように、本実施形態の消火栓装置10は、
図25乃至
図27の実施形態で備えていた2本のオイルダンパー38を1本のオイルダンパー38としたことを特徴とする。
【0161】
消火器昇降機構は、引出筐体34の上部下面の中央部に上端を固定して引出筐体34の略中央に配置された1本の円筒案内部材4012、円筒案内部材4012に上下方向で相対して消火器収納箱34の底面に起立した1本の円筒案内部材4010、及び円筒案内部材4010、4012の内部に配置された1本のオイルダンパー38で構成される。
【0162】
オイルダンパー38は、円筒案内部材4012に収納された状態でシリンダ側の上端が通しボルトなどの固定部44で支持され、シリンダ側から下方に延在したロッド3814が、円筒案内部材4010を通って消火器収納箱34の底面に固定されており、オイルダンパー38に吊下げられた消火器収納箱34が左右及び前後でバランスする重心位置に、オイルダンパー38のロッド3814の下端が固定されている。
【0163】
更に、消火器昇降機構には、スライドケース80とスライドレール82で構成された案内構造が設けられている。スライドケース80は下方に開口し、内部にスライド空間が形成された鞘状の部材であり、引出筐体32の両側面内側の前後2個所の上下方向に配置さていれる。スライドレール82は上側がスライドケース80に収納され、下側が消火器収納箱34に固定され、消火器収納箱34の上下方向での移動を案内する。それ以外の構造は、
図25乃至
図27の実施形態と同様になることから、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0164】
このように1本のオイルダンパー38を備えた消火器昇降機構とすることで、消火器引出構造をさらに簡単にし、より一層のコストの低減を可能とする。
【0165】
[q.ロック制御機能付きのガスダンパーを用いた消火栓装置]
次に、消火器引出構造の消火器昇降機構において、ロック制御機能付きのガスダンパーを用いた消火栓装置について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器昇降機構にガスダンパーを備えた消火栓装置を引出筐体の引出状態で示した
図31、消火器昇降機構にガスダンパーを備えた消火栓装置を消火器収納箱の下降状態で示した
図32、消火器昇降機構にガスダンパーを備えた消火栓装置の引出筐体を取り出して示した
図33、ガスダンパーを取り出して示した
図34、ガスダンパーの内部構造を断面で示した
図35、消火器昇降機構にガスダンパーを備えた消火栓装置の引出筐体を取り出して消火器収納箱の下降状態で示した
図36、ガスダンパーのロック制御機構を示した
図37、及び、
図37(A)の切断線h-hの断面を示した
図38を参照する。
【0166】
(q1.消火器昇降機構の概要)
図31乃至
図33に示すように、本実施形態の消火栓装置10は、
図28乃至
図30に示した消火栓装置10の消火器昇降機構に設けられている1本のオイルダンパー38を、ロック制御機能付きのガスダンパーに変更したことを特徴とし、それ以外の構造は
図28乃至
図30の消火栓装置10と同様になる。
【0167】
より詳細には、
図31乃至
図33に示すように、消火器収納箱34の底部中央に起立して配置された円筒形のシリンダ固定部8420に、ロック制御機能付きのガスダンパー84のシリンダ8410が収納固定され、シリンダ8410から上方に延在したロッド8412の先端が、上端を引出筐体32の上部下面に固定されたロッド固定部8422の下端に取付固定されている。即ち、ロッド8412が固定側となり、シリンダ8410が移動側(昇降側)となる。
【0168】
ロッド固定部8422には押釦8415が設けられ、押釦8415が押込み操作されるとガスダンパー84のロックが解除される。
図31及び
図33に示すように、利用者が引出筐体32を側方外部に引き出しただけでは、押釦8415は操作されていないことからガスダンパー85はロック状態にあり、消火器収納箱34は、第2筐体11bの引出開口45から出し入れ可能な高さに保持される。
【0169】
利用者が押釦8415の押込み操作を行うとガスダンパー84のロックが解除され、固定側となるロッド8412に対し移動側となるシリンダ8410側が、2本の消火器72を載置している消火器収納箱34と共に下降する。ガスダンパー84のロック解除は、押釦8415が押込み操作されている間行われ、利用者が押釦8415を離すとガスダンパー84がロックされ、下降していた消火器収納箱34をそのときの位置に停止させることができる。
【0170】
(q2.ロック制御機能付きのガスダンパー)
消火器昇降機構に設けられたロック制御機能付きのガスダンパー84について、より詳細に説明する。
【0171】
図34に示すように、ガスダンパー84は、シリンダ8410、ロッド8412及びプッシュピン8411を備えており、プッシュピン8411が押し込まれるとロックが解除され、ロッド8412が固定側の場合、移動側となるシリンダ8410を下降させることができる。
【0172】
ガスダンパー84のプッシュピン8411を押込み操作するロック制御機構は、リリースヘッド8414、リリースワイヤー8418、押釦8415を備えた押釦ユニット8416で構成される。リリースヘッド8414は、ロッド先端のねじ部8413に取付られ、リリースヘッド8414と押釦ユニット8416は、リリースワイヤー8418により接続されている。
【0173】
押釦ユニット8416には、ばねで押し出された押釦8415が設けられている。押釦8415が押込み操作されると、押釦ユニット8416、リリースワイヤー8418及びリリースヘッド8414に至る公知のワイヤーリンク機構の動きにより、ガスダンパー84のロッド8412の先端から外部に突出しているプッシュピン8411が押し込まれ、プッシュピン8411が押し込まれている間、ガスダンパー84のロックが解除される。また、
図34に示すように、ロッド8412は、ロッド先端のねじ部8413がナット8417によりロッド固定部8422に取付け固定される。
【0174】
この構造のロック制御機構は、ワイヤー式リリース機構として知られているが、これ以外に、油圧式リリース機構として知られたロック制御機構を使用してもよい。油圧式リリース機構は、押釦ユニット8416とリリースヘッド8414の各々に小型のピストンとシリンダが設けられ、リリースワイヤー8418に代えて油圧ホースを使用し、押釦8415が押込み操作されると、押釦ユニット8416のピストンが押されてシリンダから油圧ホースにオイルが押し出され、これによりリリースヘッド8414のピストンが移動してプッシュピン8411を押込み、ロックが解除される。
【0175】
油圧式リリース機構の利点は、一つの押釦ユニット8416に複数のリリースヘッド8414を、油圧ホースを介して並列接続することで、複数のロック制御機能付きのガスダンパー84のロックを、一つの押釦8415の押込み操作で同時に解除することができる点にある。このため、前述した2本のオイルダンパー38を備えた消火栓装置10について、ロック制御機構として油圧式リリース機構を使用したガスダンパー84に置き換えた構成であってもよい。
【0176】
(q3.ロック制御機能付きのガスダンパーの構造)
ロック制御機能付きのガスダンパー84は、
図35に示す構造を備える。ガスダンパー84はシリンダ8410を備え、シリンダ8410内に第1ピストンとして機能するピストン8424が摺動自在に設けられ、ピストン8424に続いて第2ピストンとして機能するセパレートピストン8426がシリンダ内に摺動自在に設けられている。ピストン8424はロッド8412と一体に設けられ、ロッド8412はシリンダ8410から外部に延在している。
【0177】
シリンダ84の内部は、ピストン8424とセパレートピストン8426の配置により、第1シリンダ室8428、第2シリンダ室8430、及び第3シリンダ室8432が順次形成されている。第1シリンダ室8428と第2シリンダ室8430にはオイルが充填され、第3シリンダ室8432には、所定圧に加圧された状態で不活性ガス、例えば、窒素ガスが充填されている。
【0178】
ピストン8424にはオリフィス8434とバルブ8436が設けられている。ロッド8412の内部にはプッシュピン8411が軸方向に移動自在に設けられ、一端がロッド8412の外部に突出し、他端がバルブ8436に連結している。図示のプッシュピン8411が外部に突出した状態ではバルブ8436が閉鎖し、プッシュピン8411が押し込まれとバルブ8436が開放する。
【0179】
バルブ8436は、ピストン8424に形成された第1シリンダ室8428と第2シリンダ室8430を連通するオリフィス8434の流路を開閉する。即ち、プッシュピン8411が外部へ突出している非押込み位置で、バルブ8436によりオリフィス8434を通る流路を閉鎖してピストン8424をロックしており、プッシュピン8411の押込み位置でバルブ8436によりオリフィス8436を通る流路を開放してピストン8424のロックを解除し、固定側となるロッド8412に対し移動側となるシリンダ8410を下降させる。この場合の下降速度は、オリフィス8434を流れるオイルの流動抵抗に対応した速度となり、シリンダ8410を緩やかに下降させる。
【0180】
ここで、第1シリンダ室8428におけるシリンダ8410の上端の受圧面積S1と、第3シリンダ8432におけるシリンダ8410の下端の受圧面積S2を比較すると、シリンダ8410にロッド8412が貫通している分、下端の受圧面積S2に対し上端の受圧面積S1が小さくなる。また、第1シリンダ室8428、第2シリンダ室8430及び第3シリンダ室8432の圧力は、第3シリンダ室8432に充填した窒素ガスの圧力Pとなる。このためロッド8412を固定側とすると、シリンダ8410には上端の受圧面積S1と圧力Pで決まる上向きの力F1が加わるとともに、下端の受圧面積S2と圧力Pで決まる下向きの力F2が加わるが、F1<F2の関係にあることから、シリンダ8410には(F2-F1)となる下向きの力が加わっている。
【0181】
このため、プッシュピン8411の押込み操作でバルブ8436が開いてピストン8424のロックが解除されると、固定側となるロッド8412に対し移動側となるシリンダ8410は、(F2-F1)となる力を受けて下方に移動する。さらに、シリンダ8410の下端には、消火器72を載置した消火器収納箱34が懸架されており、シリンダ8410は、下向きの力(F2-F1)に消火器72を載置した消火器収納箱34の20Kg程度の重さを加えた力を受けて下方に移動することとなる。
【0182】
このように、ロック機能付きのガスダンパー84を使用した消火器昇降機構を備えたことで、
図33に示すように、利用者が引出筐体32を筐体側方の引出位置に引き出した状態で、押釦8415の押込み操作でプッシュロッド8411を押し込むと、ガスダンパー84のロックが解除され、押釦8415を押込み操作しているあいだ、ガス圧と載置した消火器72の荷重に対応した力を受けて消火器収納箱34を緩やかに且つ滑らかに下降させ、
図36に示すように、消火器収納箱34を下扉1630の下端が監視員通路35の路面に当接する低い位置に停止させることを可能とする。
【0183】
また、消火器収納箱34の下降中に押釦8415の押込み操作が解除されると、ガスダンパー84がロックされ、その位置に消火器収納箱34を停止させることを可能とする。なお、消火器72が取り出された後に、道路管理者が新たな消火器を載置するために、下降した消火器収納箱34を収納位置に戻す場合には、押釦8415を押し込んでガスダンパー84のロックを解除した状態で消火器収納箱34を引き上げて元の位置に戻し、押釦8415の押込みを解除してロックさせることになる。
【0184】
(q4.消火器の引き出し操作に連動する自動ロック制御機構)
次に、消火器引き出し操作に連動するガスダンパーの自動ロック制御機構について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、ガスダンパーの自動ロック制御機構を示した
図37、及び、
図37(A)の切断線h-hの断面を示した
図38を参照する。なお、
図37(A)は消火器収納状態での自動ロック制御機構を示し、
図37(B)は消火器引き出し状態での自動ロック制御機構を示す。
【0185】
ロック制御機能付きのガスダンパー84の自動ロック制御機構は、引出筐体32の側方外部の引出位置への移動に連動してガスダンパー84のロックを自動的に解除して消火器収納箱34を下降させる機構であり、その形状や構造は任意であるが、例えば、
図37及び
図38に示すように、ガスダンパー84のロック解除操作に用いる押釦ユニット90の押釦が、カムフォロアとなる溝を備えたカム釦92として引出筐体32の上板の右端に支持部材9010で上向きに支持され、カム釦92に対応して第2筐体11bの消火栓収納部50cの上部下面の引出方向にカム板94が配置される。
【0186】
カム板94は、奥行側となる右側に押込解除部9410を形成し、傾斜部9412に続いて引出側(左側)に押込部9414を形成している。押込解除部9410は高さ方向の板幅を小さくし、押込部9414は高さ方向の板幅を大きくし、あいだを傾斜部9412で繋いでいる。
【0187】
カム板94は、下端側がカム釦92の溝に嵌め込まれており、引出筐体32の引き出し操作に伴うカム釦92の移動に応じてカム釦92の押込み量が変化する。即ち、
図37(A)に示すように、引出筐体32が消火栓収納部50cに収納されている場合、カム釦92は、カム板94の板幅の小さい押込み解除部9410に位置し、押込み解除状態にある。このため、押釦ユニット90にリリースワイヤー8418を介して連結されたリリースヘッド8414は、オイルダンパー84に設けられたロッド8412の先端から突出しているプッシュピン8411(
図34参照)の押込みを解除しており、オイルダンパー84はロックされている。
【0188】
これに対し、
図37(B)に示すように、引出筐体32が消火栓収納部50cから側方外部に引き出されると、カム釦92はカム板94の板幅の大きい押込部9414へ移動して押し込まれる。このため、押釦ユニット90にリリースワイヤー8418を介して連結されたリリースヘッド8414は、ロッド8412の先端から突出しているプッシュピン8411(
図34参照)を押込むように作動して押込み状態を維持し、オイルダンパー84のロックが解除され、消火器収納箱34を自動的に下降させる。
【0189】
なお、消火器収納箱34が下降して消火器が取り出された後に、新たな消火器を載置するための消火器収納箱34の収納位置への戻し操作は、人為的に引き上げる操作を行う。
【0190】
このような自動ロック制御機構によれば、消火器を引き出すとオイルダンパー84のロック解除で自動的に消火器収納箱34を下降させることが可能となり、利用者によるロック解除操作を不要とすることができる。なお、
図37の自動ロック制御機構は、ワイヤー式リリース機構を例にとっているが、油圧式リリース機構であってもよい。
【0191】
[r.消火器箱の実施形態]
側面消火器扉を備えた消火器箱の構造について、より詳細に説明する。当該説明にあっては、消火器引出構造を備えた消火器箱を消火器の収納状態で示した
図39、及び、消火器引出構造を備えた消火器箱を消火器の引出状態と消火器の下降状態で示した
図40を参照する。なお、
図40(A)は消火器が引き出された状態を示し、
図40(B)は消火器が下降した状態を示す。
【0192】
図39及び
図40に示すように、本実施形態の消火器箱200は、
図1乃至
図17に示した消火栓装置10の第2筐体11bを分離して右側面を閉鎖した構造に相当する。消火器箱200の筐体1100の内部には、消火栓装置10の場合と同様な消火器引出構造を備えていることから、同一の符号を付して説明は省略する。なお、
図18乃至
図38に示した消火栓装置10についても、第2筐体11bを分離して右側面を閉鎖した構造とすることで、同様に、消火器箱200とする場合を含む。
【0193】
通常時は、
図39に示すように、消火器箱200の側面消火器扉16が筐体側面の引出開口を閉鎖する位置にロックされていることで、2本の消火器を載置した引出筐体は筐体1100の内部の消火器収納部に収納されている。
【0194】
利用者が消火器を使用する場合には、側面消火器扉16の扉ハンドル1610を手前に引くことでロックが解除され、
図40(A)に示すように、消火器72を載置した引出筐体32が引出開口45から側方外部へ引き出され、続いて、
図40(B)に示すように、オイルダンパーを備えた消火器昇降機構により消火器収納箱72が下降し、利用者は低い位置に下降した消火器収納箱34から消火器72を容易に取り出して消火活動を行うことが可能となる。
【0195】
[s.本発明の変形例]
本発明による消火栓装置の変形例について説明する。本発明の消火器収納装置となる消火栓装置又は消火器箱は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0196】
(壁掛け構造の消火栓装置)
上記の実施形態は、トンネル壁面側に近接又は当接して監視員通路の路面に設置された架台の上部に筐体が取り付け固定される据え置き構造の消火栓装置を例にとるものであったが、これに限定されず、監視員通路の路面上方のトンネル壁面に設置された架台の道路側となる前部に筐体が取り付け固定される壁掛け構造の消火栓装置についても、同様に、筐体の側面に側面扉が設けられ、側面扉を開いて筐体内に対する作業を側面外部から可能とするものである。
【0197】
(トンネル壁面が円形断面以外の場合)
上記の実施形態におけるトンネル断面形状は円形となっているが、トンネル断面が円形以外、例えば、三心円等の場合には、トンネル断面形状の水平方向の幅が最も広い位置の水平線を、上記の説明におけるトンネル中心線SL1とすることで、本発明を適用することができる。
【0198】
(薄型化に対応した消火栓装置の構造)
上記の実施形態における消火栓装置では、消火栓装置の薄型化に対応して第1筐体及び第2筐体の横幅を広くして薄型化により減少した分の内部容積を確保しているが、第1筐体及び第2筐体の上下幅を広くして薄型化により減少した分の内部容積を確保するようにしても良い。
【0199】
(第1の筐体引出機構)
上記の実施形態における第1の筐体引出機構は、消火栓収納部の筐体側ガイドレールに対し引出筐体の引出側ガイドレールを摺動自在に嵌め入れた、2本のガイドレールを用いた引出機構となっているが、筐体側ガイドレールと引出側ガイドレールとの間に中間レールが配置された3本のガイドレールを用いた筐体引出機構であってもよい。
【0200】
(第2の筐体引出機構)
上記の実施形態における第2の筐体引出機構は、ガイドローラを使用しているが、第1の筐体引出機構と同様に、消火栓収納部の筐体側ガイドレールに対し引出筐体の引出側ガイドレールを摺動自在に嵌め入れた、ガイドレール構造としてもよい。
【0201】
(消火器収納装置)
上記の実施形態は、消火器収納装置として消火栓装置と消火器箱を例にとるものであったが、これに限定されず、収納扉を有する筐体内に消火器が収納又は配置された装置であれば、適宜の装置を含むものである。また、消火器収納装置はトンネル内に限らず、例えば各種建物等に設置されても良い。また、消火器収納装置は壁面に設置されるものに限定されず、本発明の目的に適合する範囲で壁面以外の比較的高所に設置されるものを含む。
【0202】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、さらに、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0203】
10:消火栓装置
11a:第1筐体
11b:第2筐体
12:前傾扉
13a,13b:化粧枠
14:保守扉
15:道路
16:側面消火器扉
1610:扉ハンドル
1612:機器名表示
1614:操作案内
1620:上扉
1630:下扉
17:トンネル壁面
18:電装扉
19:覗き窓
20:補助扉
22:赤色表示灯
24:発信機
25:応答ランプ
26a,26b:端子箱
30:架台
32:引出筐体
3210:引出筐体本体
3212:筐体上面
3214:筐体背面
3216:筐体右側面
3218:ハンドル取付開口
34:消火器収納箱
3410:消火器ホルダー
3412:前板
3414:ばね蝶番
35:監視員通路
36:引出側ガイドレール
3612:ストッパ片
3614:ローラ
37:支持部材
38:オイルダンパー
3810:シリンダ
3812:ピストン
3814:ロッド
3816:オリフィス
3818:逆止弁
40、4010、4012:円筒案内部材
42:筐体側ガイドレール
4212:ローラ
4214:ストッパ部材
44,46:固定部
45:引出開口
48:第2の筐体引出機構
4810:ガイドローラ
4812:ローラ基台
49:給水配管
50a:バルブ類収納部
50b:ホース収納部
50c:消火器収納部
52:給水栓
54:消火栓弁
56:自動調圧弁
58:消火栓弁開閉レバー
60:消火用ホース
62:ホース収納フレーム
64:ポンプ起動スイッチ
66:ホースガイド
68:ノズル
70:ノズルホルダー
72:消火器
7210:開栓レバー
7212:固定レバー
80:スライドケース
82:スライドレール
84:ガスダンパー
8410:シリンダ
8411:プッシュピン
8412:ロッド
8413:ねじ部
8414:リリースヘッド
8415:押釦
8416:押釦ユニット
8417:ナット
8418:リリースワイヤー
8420:シリンダ固定部
8422:ロッド固定部
8424:ピストン
8426:セパレートピストン
8428:第1シリンダ室
8430:第2シリンダ室
8432:第3シリンダ室
8434:オリフィス
8436:バルブ
90:押釦ユニット
9010:支持部材
92:カム釦
94:カム板
9410:押込解除部
9412:傾斜部
9414:押込部
200:消火器箱
1100:筐体