(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009444
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】モード依存損失測定装置、およびモード依存損失測定方法
(51)【国際特許分類】
G01M 11/02 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
G01M11/02 N
G01M11/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110969
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大塚 節文
【テーマコード(参考)】
2G086
【Fターム(参考)】
2G086BB01
2G086BB04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】測定信頼性に優れたモード依存損失測定装置およびモード依存損失測定方法を提供する。
【解決手段】マルチコアモード依存損失測定装置であって、M個の光導波路と、被測定物のM個のコアを導光された第1の光、M個の光導波路を導光された第2の光、光量の他の一部を反射する光学素子と、M個のコアを導光される第1の光を、M個の第1変調部と、M個のコアから出射した第1、2の光と、に基づき、第1受光信号を出力する第1光検出部と、M個のコアから出射して光学素子により透過された第1の光と、光導波路から出射して光学素子により反射された第2の光と、に基づき、第2受光信号を出力する第2光検出部と、第1、2光検出部上において、第1、2の光とが対をなして重なるように、第1、2の光を導光する光学系と、第1、2受光信号と第1変調部による変調情報とに基づき、被測定物のモード依存損失に関する情報を出力する処理部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mを2以上の自然数とすると、それぞれが光を導光するM個のコアを含む被測定物のモード依存損失測定装置であって、
M個の光導波路と、
前記被測定物の前記M個のコアを導光された第1の光、および前記M個の光導波路を導光された第2の光、のそれぞれの光量の一部を透過するとともに、前記光量の他の一部を反射する光学素子と、
前記M個のコアを導光される前記第1の光を、前記M個のコアに入射する前に個別に変調する第1変調部と、
前記M個のコアから出射して前記光学素子により反射された前記第1の光と、前記光導波路から出射して前記光学素子により透過された前記第2の光と、に基づき、第1受光信号を出力する第1光検出部と、
前記M個のコアから出射して前記光学素子により透過された前記第1の光と、前記光導波路から出射して前記光学素子により反射された前記第2の光と、に基づき、第2受光信号を出力する第2光検出部と、
前記第1光検出部上および前記第2光検出部上のそれぞれにおいて、前記第1の光と前記第2の光とが対をなして重なるように、前記第1の光および前記第2の光を導光する光学系と、
前記第1受光信号と前記第2受光信号と前記第1変調部による変調情報とに基づき、前記被測定物のモード依存損失に関する情報を出力する処理部と、を有する、モード依存損失測定装置。
【請求項2】
前記第1の光は、光入射部材を通って前記M個のコアに入射し、
前記処理部は、予め取得された前記光入射部材の複素伝達行列に関する情報にさらに基づいて、前記被測定物のモード依存損失に関する情報を出力する、請求項1に記載のモード依存損失測定装置。
【請求項3】
前記光学系は、前記M個のコアそれぞれの出射端の像と、前記M個の光導波路それぞれの出射端の像と、を前記第1光検出部上および前記第2光検出部上のそれぞれにおいて結像させる、請求項1または請求項2に記載のモード依存損失測定装置。
【請求項4】
前記第1光検出部上および前記第2光検出部上のそれぞれにおいて、前記第1の光と前記第2の光とが対をなして重なるように、前記光学系または前記光導波路のいずれか1つを調整する調整機構を有し、
前記調整機構は、前記第1光検出部上および前記第2光検出部上のそれぞれにおいて、前記第1の光と前記第2の光の中心間距離が、前記被測定物および前記光導波路それぞれのモードフィールド半径の2乗和平方根の10%以下になるように調整する、請求項1または請求項2に記載のモード依存損失測定装置。
【請求項5】
前記M個の光導波路を導光される前記第2の光を、前記M個の光導波路に入射する前に個別に変調する第2変調部を有し、
前記処理部は、前記第2変調部による変調情報にさらに基づいて、前記M個のコアそれぞれのモード依存損失に関する情報を出力する、請求項1または請求項2に記載のモード依存損失測定装置。
【請求項6】
前記第1の光および前記第2の光のそれぞれは、直交する2つの偏光を含み、
前記第1変調部は、前記M個のコアを導光される2×M個の前記第1の光のそれぞれを変調し、
前記第2変調部は、前記M個の光導波路を導光される2×M個の前記第2の光のそれぞれを変調する、請求項5に記載のモード依存損失測定装置。
【請求項7】
前記第1変調部は、前記M個のコアを導光される2×M個の前記第1の光のそれぞれに光学的な遅延を与え、
前記第2変調部は、前記M個の光導波路を導光される2×M個の前記第2の光のそれぞれに光学的な遅延を与える、請求項6に記載のモード依存損失測定装置。
【請求項8】
前記第1変調部は、前記第1の光における直交する2つの偏光間に光学的な遅延が与えられた後、前記第1の光から分波されたM-1個の前記第1の光それぞれに光学的な遅延を与え、
前記第2変調部は、前記第2の光における直交する2つの偏光間に光学的な遅延が与えられた後、前記第2の光から分波されたにM-1個の前記第2の光それぞれに光学的な遅延を与える、請求項6に記載のモード依存損失測定装置。
【請求項9】
前記第1変調部は、第1番目から第2M番目までの変調信号を用いて前記第1の光を変調し、
前記第2変調部は、第2M+1番目から第4M番目までの変調信号を用いて前記第2の光を変調し、
前記第1番目から前記第4M番目までの変調信号に属する第m番目と第n番目の変調信号の積は、直交関数系に含まれる第i番目と第j番目の関数の線形結合である、請求項6に記載のモード依存損失測定装置。
【請求項10】
第1光源を有し、
前記第1の光は、前記第1光源からの光の一部であり、
前記第2の光は、前記第1光源からの光のうち、前記第1の光以外の光の一部である、請求項1または請求項2に記載のモード依存損失測定装置。
【請求項11】
前記第1光源は、射出するレーザ光の波長を連続的に掃引可能な波長可変レーザを含む、請求項10に記載のモード依存損失測定装置。
【請求項12】
前記第1光源は、波長可変レーザまたは波長安定化レーザと、前記波長可変レーザまたは前記波長安定化レーザからのレーザ光をM系列信号により2位相偏移変調するM系列変調部と、を有する、請求項10に記載のモード依存損失測定装置。
【請求項13】
第2光源と、
光合成部材と、を有し、
前記光合成部材は、前記第2光源からの光と、前記第1光源からの前記第1の光と、を合成し、
前記光合成部材により合成された光は、前記M個のコアのそれぞれに入射する、請求項10に記載のモード依存損失測定装置。
【請求項14】
前記光導波路は、非結合型マルチコア光ファイバを含む、請求項1または請求項2に記載のモード依存損失測定装置。
【請求項15】
前記光導波路は、シングルコア光ファイバを含む、請求項1または請求項2に記載のモード依存損失測定装置。
【請求項16】
自己遅延干渉計を有し、
前記処理部は、前記第1光源からの光に基づく前記自己遅延干渉計の出力に基づいて、前記第1光源からの光の位相雑音を補償する、請求項10に記載のモード依存損失測定装置。
【請求項17】
Mを2以上の自然数とすると、それぞれが光を導光するM個のコアを含む被測定物のモード依存損失測定装置によるモード依存損失測定方法であって、前記モード依存損失測定装置が、
光学素子により、前記被測定物の前記M個のコアを導光された第1の光、および、M個の光導波路を導光された第2の光、のそれぞれの光量の一部を透過するとともに、前記光量の他の一部を反射し、
第1変調部により、前記M個のコアを導光される前記第1の光を、前記M個のコアに入射する前に個別に変調し、
第1光検出部により、前記M個のコアから出射して前記光学素子により反射された前記第1の光と、前記光導波路から出射して前記光学素子により透過された前記第2の光と、に基づき、第1受光信号を出力し、
第2光検出部により、前記M個のコアから出射して前記光学素子により透過された前記第1の光と、前記光導波路から出射して前記光学素子により反射された前記第2の光と、に基づき、第2受光信号を出力し、
光学系により、前記第1光検出部上および前記第2光検出部上のそれぞれにおいて、前記第1の光と前記第2の光とが対をなして重なるように、前記第1の光および前記第2の光を導光し、
処理部により、前記第1受光信号と前記第2受光信号と前記第1変調部による変調情報とに基づき、前記被測定物のモード依存損失に関する情報を出力する、モード依存損失測定方法。
【請求項18】
前記第1の光は、光入射部材を通って前記M個のコアのそれぞれに入射し、
前記モード依存損失測定装置が、前記処理部により、
前記光入射部材および前記被測定物を通った前記第1の光に基づき、前記光入射部材と前記被測定物との合成複素伝達行列を取得し、
前記光入射部材を通った前記第1の光に基づき、前記光入射部材の複素伝達行列を取得し、
前記光入射部材の複素伝達行列の逆行列を、前記合成複素伝達行列に対し、右方から乗算することによって、前記被測定物の複素伝達行列を取得し、
前記被測定物の複素伝達行列に基づき、前記被測定物のモード依存損失に関する情報を出力する、請求項17に記載のモード依存損失測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モード依存損失測定装置、およびモード依存損失測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチコア光ファイバを用いたモード多重光伝送では、共通のクラッドにより包囲され、それぞれが光を導光するM個のコアを含むマルチコア光デバイスが用いられる。Mは2以上の自然数である。マルチコア光デバイスには、光ファイバ、光増幅器、光合波器、光アイソレータ等が挙げられる。このようなマルチコア光デバイスを伝搬するモード間の損失差であるモード依存損失(MDL:Mode Dependent Loss)を測定する技術が知られている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
非特許文献2には、ファンインを通ったプローブ光をマルチコア光デバイスに入射させ、被測定物を通った後、コアごとに分離されてファンアウトから出射したプローブ光に基づき、マルチコア光デバイスのモード依存損失を測定する技術が開示されている。ファンインは、マルチコア光デバイスの各コアに個別に光を入射させる光デバイスである。ファンアウトは、マルチコア光デバイスの各コアから出射した光を個別に導光する光デバイスである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M. Wada, et al., 「Cladding Pumped Randomly Coupled 12-Core Erbium-Doped Fiber Amplifier with Low Mode-Dependent Gain」, JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, VOL. 36, NO. 5, MARCH 1, 2018, P1220.
【非特許文献2】J. C. Alvarado-Zacarias, et al., 「Characterization of Coupled-Core Fiber Amplifiers Using Swept-Wavelength Interferometer」, OFC2019, Th1B.6.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1および非特許文献2の技術では、ファンイン等の光入射部材と、ファンアウト等の光出射部材と、の間にマルチコア光デバイス等の被測定物が挟まれた状態において測定を行う。このため、光入射部材および光出射部材の各モード依存損失が測定結果に含まれる。従って、被測定物のモード依存損失の測定信頼性に改善の余地がある。
【0006】
そこで、本開示は、測定信頼性に優れたモード依存損失測定装置およびモード依存損失測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
モード依存損失測定装置は、Mを2以上の自然数とすると、それぞれが光を導光するM個のコアを含む被測定物13のモード依存損失測定装置100であって、M個の光導波路23と、被測定物13のM個のコアを導光された第1の光L1、およびM個の光導波路23を導光された第2の光L2、のそれぞれの光量の一部を透過するとともに、光量の他の一部を反射する光学素子3と、M個のコアを導光される第1の光L1を、M個のコアに入射する前に個別に変調する第1変調部と、M個のコアから出射して光学素子3により反射された第1の光L1と、光導波路23から出射して光学素子3により透過された第2の光L2と、に基づき、第1受光信号v1を出力する第1光検出部51と、M個のコアから出射して光学素子3により透過された第1の光L1と、光導波路23から出射して光学素子3により反射された第2の光L2と、に基づき、第2受光信号v2を出力する第2光検出部52と、第1光検出部51上および第2光検出部52上のそれぞれにおいて、第1の光L1と第2の光L2とが対をなして重なるように、第1の光L1および第2の光L2を導光する光学系4と、第1受光信号v1と第2受光信号v2と第1変調部による変調情報とに基づき、被測定物13のモード依存損失に関する情報を出力する処理部7と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、測定信頼性に優れたモード依存損失測定装置およびモード依存損失測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るモード依存損失測定装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1光検出部上の被測定物のコア像および光導波路像を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2におけるIII-III線に沿う断面の光強度を示す図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係るモード依存損失測定装置の構成例を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、第2実施形態に係る差動増幅器の複素スペクトルのcos成分の出力例を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、第2実施形態に係る差動増幅器の複素スペクトルのsin成分を示す図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係るモード依存損失測定装置の構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、第4実施形態に係るモード依存損失測定装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。本開示の一態様に係るモード依存損失測定装置は、
(1)Mを2以上の自然数とすると、それぞれが光を導光するM個のコアを含む被測定物のモード依存損失測定装置であって、M個の光導波路と、前記被測定物の前記M個のコアを導光された第1の光、および前記M個の光導波路を導光された第2の光、のそれぞれの光量の一部を透過するとともに、前記光量の他の一部を反射する光学素子と、前記M個のコアを導光される前記第1の光を、前記M個のコアに入射する前に個別に変調する第1変調部と、前記M個のコアから出射して前記光学素子により反射された前記第1の光と、前記光導波路から出射して前記光学素子により透過された前記第2の光と、に基づき、第1受光信号を出力する第1光検出部と、前記M個のコアから出射して前記光学素子により透過された前記第1の光と、前記光導波路から出射して前記光学素子により反射された前記第2の光と、に基づき、第2受光信号を出力する第2光検出部と、前記第1光検出部上および前記第2光検出部上のそれぞれにおいて、前記第1の光と前記第2の光とが対をなして重なるように、前記第1の光および前記第2の光を導光する光学系と、前記第1受光信号と前記第2受光信号と前記第1変調部による変調情報とに基づき、前記被測定物のモード依存損失に関する情報を出力する処理部と、を有する。
上記構成により、モード依存損失測定装置は、被測定物のM個のコアから出射した第1の光それぞれを導光するファンアウト等の光出射部材を備えなくても、M個のコアのそれぞれを通った第1の光と、M個の光導波路を通った第2の光とを、対をなして重ねることができる。これにより、モード依存損失測定装置は、第1受光信号と第2受光信号とに基づき、被測定物のモード依存損失に関する情報を出力可能になる。測定結果に光出射部材のモード依存損失が含まれないため、光入射部材および光出射部材の両方のモード依存損失が測定結果に含まれる場合と比較して、測定信頼性に優れたモード依存損失測定装置を提供することができる。ここで、変調情報とは、変調した位相、周波数または位相および周波数の両方に関する情報をいう。また「対をなす」とは、「1対1に対応する」と言い換えることもできる。
【0011】
(2)上記(1)において、前記第1の光は、光入射部材を通って前記M個のコアに入射し、前記処理部は、予め取得された前記光入射部材のモード依存損失に関する情報にさらに基づいて、前記被測定物のモード依存損失に関する情報を出力してもよい。
ファンイン等の光入射部材を通してM個のコアに第1の光を入射させると、処理部から出力される被測定物のモード依存損失に関する情報には、光入射部材のモード依存損失が含まれるため、その分、測定信頼性が低くなる。予め取得された光入射部材のモード依存損失に関する情報を用いて処理することにより、処理部から出力される被測定物のモード依存損失に関する情報から光入射部材のモード依存損失を取り除くことができる。これにより、測定信頼性に優れたモード依存損失測定装置を提供することができる。
【0012】
(3)上記(1)または上記(2)において、前記光学系は、前記M個のコアそれぞれの出射端の像と、前記M個の光導波路それぞれの出射端の像と、を前記第1光検出部上および前記第2光検出部上のそれぞれにおいて結像させてもよい。
光学系で結像させることによって、第1光検出部上および第2光検出部上のそれぞれにおいて、M個のコアから出射した第1の光と、M個の光導波路から出射した第2の光と、が重なりやすくなる。この結果、第1の光と第2の光との重なり状態に応じた測定誤差を抑制できるからである。
【0013】
(4)上記(1)から上記(3)のいずれか1つにおいて、前記第1光検出部上および前記第2光検出部上のそれぞれにおいて、前記第1の光と前記第2の光とが対をなして重なるように、前記光学系または前記光導波路群のいずれか1つを調整する調整機構を有し、前記調整機構は、前記第1光検出部上および前記第2光検出部上のそれぞれにおいて、前記第1の光と前記第2の光の中心間距離が、前記被測定物および前記光導波路それぞれのモードフィールド半径の2乗和平方根の10%以下になるように調整してもよい。この調整により、第1の光と第2の光との重なり状態に応じた測定誤差を2%以下に抑制できるからである。
【0014】
(5)上記(1)から上記(4)のいずれか1つにおいて、前記M個の光導波路を導光される前記第2の光を、前記M個の光導波路に入射する前に個別に変調する第2変調部、を有し、前記処理部は、前記第2変調部による変調情報にさらに基づいて、前記M個のコアそれぞれのモード依存損失に関する情報を出力してもよい。
M個のコアそれぞれのモード依存損失を個別に測定するためには、M個のコアそれぞれを通った第1の光を識別して検出する必要がある。第1の光を識別するために、例えばM個のコアそれぞれを通った第2の光と対をなすようにM個の第1光検出部およびM個の第2光検出部を設けると、装置構成が複雑になったり、装置が大型化したりする場合がある。第2変調部による変調情報をさらに用いることにより、1つの第1光検出部および1つの第2光検出部を用いて、M個のコアそれぞれを通った第1の光を識別して検出可能になる。この結果、装置構成の複雑化、装置の大型化等を防ぎつつ、M個のコアそれぞれのモード依存損失を個別に測定することができる。
【0015】
(6)上記(5)において、前記第1の光および前記第2の光のそれぞれは、直交する2つの偏光を含み、前記第1変調部は、前記M個のコアを導光される2×M個の前記第1の光のそれぞれを変調し、前記第2変調部は、前記M個の光導波路を導光される2×M個の前記第2の光のそれぞれを変調してもよい。直交する2つの偏光を用いて、M個のコアそれぞれのモード依存損失を個別に測定できるからである。
【0016】
(7)上記(6)において、前記第1変調部は、前記M個のコアを導光される2×M個の前記第1の光のそれぞれに光学的な遅延を与え、前記第2変調部は、前記M個の光導波路を導光される2×M個の前記第2の光のそれぞれに光学的な遅延を与えてもよい。光学的な遅延を用いることにより、2×M個の第1の光それぞれ、および2×M個の第2の光それぞれを簡単な構成で変調できるからである。
【0017】
(8)上記(6)において、前記第1変調部は、前記第1の光における直交する2つの偏光間に光学的な遅延が与えられた後、前記第1の光から分波されたM-1個の前記第1の光それぞれに光学的な遅延を与え、前記第2変調部は、前記第2の光における直交する2つの偏光間に光学的な遅延が与えられた後、前記第2の光から分波されたM-1個の前記第2の光それぞれに光学的な遅延を与えてもよい。2×M個の第1の光および2×M個の第2の光のそれぞれに対し、光学的な遅延を与える光遅延線路を個別に設ける場合と比較して、光学的な遅延を与えるための構成部の数を削減できるからである。ここで、分波とは、1つの光を複数の光に分けることをいう。
【0018】
(9)上記(6)から上記(8)のいずれか1つにおいて、前記第1変調部は、第1番目から第2M番目までの変調信号を用いて前記第1の光を変調し、前記第2変調部は、第2M+1番目から第4M番目までの変調信号を用いて前記第2の光を変調し、前記第1番目から前記第4M番目までの変調信号に属する第m番目と第n番目の変調信号の積は、直交関数系に含まれる第i番目と第j番目の関数の線形結合であってもよい。2つの変調信号の周波数とその積である信号の周波数との関係に基づいて、複素伝達行列の成分を決定できるからである。
【0019】
(10)上記(1)から上記(9)のいずれか1つにおいて、第1光源を有し、前記第1の光は、前記第1光源からの光の一部であり、前記第2の光は、前記第1光源からの光のうち、前記第1の光以外の光の一部であってもよい。共通の光源である第1光源からの光を、第1の光および第2の光として用いることにより、第1の光と第2の光のコヒーレンスを高く確保でき、コヒーレント検波によりモード依存損失を測定できるからである。
【0020】
(11)上記(10)において、前記第1光源は、射出するレーザ光の波長を連続的に掃引可能な波長可変レーザを含んでもよい。波長を連続的に掃引可能な波長可変レーザを用いることにより、第1の光および第2の光のそれぞれを簡単な構成で変調できるからである。
【0021】
(12)上記(10)において、前記第1光源は、波長可変レーザまたは波長安定化レーザと、前記波長可変レーザまたは前記波長安定化レーザからのレーザ光をM系列信号により2位相偏移変調するM系列変調部と、を有してもよい。第1光源からの光の出力安定性が、連続周波数掃引する場合と比較して高くなるため、モード依存損失の測定精度を向上させることができるからである。ここで、M系列信号とは、規則性と不規則性を有する信号をいう。2位相偏移変調とは、光の位相を不連続に変化させて信号を表現する位相偏移変調の一つであり、位相が180°ずれた2つの光を切り替えて送る方式をいう。
【0022】
(13)上記(10)において、第2光源と、光合成部材と、を有し、前記光合成部材は、前記第2光源からの光と、前記第1光源からの前記第1の光と、を合成し、前記光合成部材により合成された光は、前記M個のコアのそれぞれに入射してもよい。
被測定物がエルビウム添加光ファイバ増幅器等である場合には、被測定物の動作条件を決定する波長多重光を再現するために用いられる光である背景光が、測定に使用する第1の光とは別に必要になる場合がある。光合成部材により合成された光をM個のコアそれぞれに入射させることにより、上記波長多重光を再現し、エルビウム添加光ファイバ増幅器等の被測定物のモード依存損失を測定できるからである。
【0023】
(14)上記(1)から上記(13)のいずれか1つにおいて、前記光導波路は、非結合型マルチコア光ファイバを含んでもよい。光導波路が非結合型マルチコア光ファイバを含むことにより、第2の光が導光される光路におけるモード依存損失を低減し、被測定物のモード依存損失の測定精度を高く確保できるからである。
【0024】
(15)上記(1)から上記(14)のいずれか1つにおいて、前記光導波路は、シングルコア光ファイバを含んでもよい。光導波路がシングルコア光ファイバを含むことにより、第2の光が導光される光路におけるモード依存損失を低減し、被測定物のモード依存損失の測定精度を高く確保できるからである。
【0025】
(16)上記(10)から上記(13)のいずれか1つにおいて、自己遅延干渉計を有し、前記処理部は、前記第1光源からの光に基づく前記自己遅延干渉計の出力に基づいて、前記第1光源からの光の位相雑音を補償してもよい。第1光源からの光の位相雑音を補償することにより、処理部により算出される複素伝達行列の誤差を小さくし、被測定物のモード依存損失の測定精度を高く確保できるからである。自己遅延干渉計とは、二分割した光の一方に該光のコヒーレンス長よりも短い光学的な遅延を付与し、該遅延が付与された光と、二分割した光のうちの他方の光と、の間におけるビート周波数を検出する干渉計をいう。ビート周波数とは、周波数がわずかに異なる2つの波が干渉した際に生じるうなりの周波数をいう。位相雑音とは、時間領域における完全な周期性からの偏差に対応する光の位相のランダム変動を、周波数領域において表現したものをいう。
【0026】
本開示の一態様に係るモード依存損失測定方法は、
(17)Mを2以上の自然数とすると、それぞれが光を導光するM個のコアを含む被測定物のモード依存損失測定装置によるモード依存損失測定方法であって、前記モード依存損失測定装置が、光学素子により、前記被測定物の前記M個のコアを導光された第1の光、および、M個の光導波路を導光された第2の光、のそれぞれの光量の一部を透過するとともに、前記光量の他の一部を反射し、第1変調部により、前記M個のコアを導光される前記第1の光を、前記M個のコアに入射する前に個別に変調し、第1光検出部により、前記M個のコアから出射して前記光学素子により反射された前記第1の光と、前記光導波路から出射して前記光学素子により透過された前記第2の光と、に基づき、第1受光信号を出力し、第2光検出部により、前記M個のコアから出射して前記光学素子により透過された前記第1の光と、前記光導波路から出射して前記光学素子により反射された前記第2の光と、に基づき、第2受光信号を出力し、光学系により、前記第1光検出部上および前記第2光検出部上のそれぞれにおいて、前記第1の光と前記第2の光とが対をなして重なるように、前記第1の光および前記第2の光を導光し、処理部により、前記第1受光信号と前記第2受光信号と前記第1変調部による変調情報とに基づき、前記被測定物のモード依存損失に関する情報を出力する。
この方法により、上記(1)と同じように、測定結果に光出射部材のモード依存損失が含まれないため、光入射部材および光出射部材の両方のモード依存損失が測定結果に含まれる場合と比較して、測定信頼性に優れたモード依存損失測定装置を提供することができる。
【0027】
(18)上記(17)において、前記第1の光は、光入射部材を通って前記M個のコアのそれぞれに入射し、前記モード依存損失測定装置が、前記処理部により、前記光入射部材および前記被測定物を通った前記第1の光に基づき、前記光入射部材と前記被測定物との合成複素伝達行列を取得し、前記光入射部材を通った前記第1の光に基づき、前記光入射部材の複素伝達行列を取得し、前記光入射部材の複素伝達行列の逆行列を、前記合成複素伝達行列に対し、右方から乗算することによって、前記被測定物の複素伝達行列を取得し、前記被測定物の複素伝達行列に基づき、前記被測定物のモード依存損失に関する情報を出力してもよい。
上記(2)と同じように、処理部から出力される被測定物のモード依存損失に関する情報から光入射部材のモード依存損失を取り除くことができ、測定信頼性に優れたモード依存損失測定装置を提供できるからである。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係るモード依存損失測定装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また説明において、同一要素または同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は適宜省略する。
【0029】
[第1実施形態]
(モード依存損失測定装置100の構成例)
図1は、第1実施形態に係るモード依存損失測定装置100の構成の一例を示す図である。モード依存損失測定装置100は、Mを2以上の自然数とすると、それぞれが光を導光するM個のコアを含む被測定物13のモード依存損失を測定する装置である。被測定物13は、マルチコア光デバイス等である。
【0030】
図1に示すように、被測定物13は、被測定物本体130と、入射側MCF(Multi Core Fiber:マルチコア光ファイバ)131と、出射側MCF132と、を含む。被測定物本体130は、被測定物13がマルチコア光デバイスとしての機能を発揮する部分である。例えば被測定物13が光増幅器である場合には、被測定物本体130は、光を増幅する部分である。入射側MCF131は、被測定物本体130に光が入射する側に設けられたマルチコア光ファイバである。出射側MCF132は、被測定物本体130から光が出射する側に設けられたマルチコア光ファイバである。
【0031】
被測定物本体130、入射側MCF131および出射側MCF132は、それぞれコアを有する。被測定物本体130のコア、入射側MCF131のコア、および出射側MCF132のコアは、対をなして繋がっており、被測定物13のM個のコアを形成している。換言すると、被測定物13は、入射側MCF131における1つのコアと、被測定物本体130における1つのコアと、出射側MCF132における1つのコアと、が繋がって形成されるコアを、M個有している。但し、被測定物13は、入射側MCF131および出射側MCF132を有さず、被測定物本体130のみから構成されてもよい。例えば、被測定物13がマルチコア光ファイバである場合には、被測定物13は、被測定物本体130としてのマルチコア光ファイバのみから構成される。
【0032】
被測定物13のM個のコアそれぞれには、第1ファンイン12を通って入射側MCF131の入射端から光が入射する。第1ファンイン12は、光入射部材の一例である。第1ファンイン12は、M個のシングルモード光ファイバを有し、該M個のシングルモード光ファイバを通してマルチコア光ファイバのM個のコアに光を入射させる。被測定物13のM個のコアそれぞれを通った光は、出射側MCF132の出射端から出射する。
【0033】
図1に示すように、モード依存損失測定装置100は、第1光源1と、第1光分波器2と、第2光分波器10と、第3光分波器20と、偏波素子P1~偏波素子P4Mと、光変調器C1~光変調器C4Mと、光インターフェース11と、第2ファンイン22と、M個の光導波路23と、調整機構24と、を有する。また、モード依存損失測定装置100は、光学素子3と、光学系4と、第1光検出部51と、第2光検出部52と、差動増幅器6と、処理部7と、を有する。光学系4は、第1レンズ41と、第2レンズ42と、第3レンズ43と、第4レンズ44と、を有する。
【0034】
第1光源1は、光L0を射出する。第1光源1には、気体レーザ、半導体レーザ等のレーザ光源を使用できる。第1の光L1および第2の光L2を用いてコヒーレント検波を行うために、第1光源1は、コヒーレンスが高いものであることが好ましい。第1光源1から射出された光L0は、第1光源1と第1光分波器2との間に設けられた光ファイバ内を導光される。
【0035】
第1光分波器2は、光L0を第1の光L1および第2の光L2の2つに分波する。第1の光L1は、第1光源1からの光の一部である。第2の光L2は、第1光源1からの光のうち、第1の光L1以外の光の一部である。第1の光L1は、被測定物13のM個のコアそれぞれを導光され、モード依存損失測定のためのプローブ光として用いられる。第2の光L2は、M個の光導波路23を導光され、コヒーレント検波のためにプローブ光と干渉させるための参照光として用いられる。
【0036】
第1の光L1は、第1光分波器2と第2光分波器10との間に設けられた光ファイバ内を導光される。第2の光L2は、第1光分波器2と第3光分波器20との間に設けられた光ファイバ内を導光される。なお、以下では、説明を簡単にするために、構成部間に設けられた導光用の光ファイバの説明を省略する場合がある。
【0037】
第1の光L1は、第2光分波器10によりM個に分波され、偏波素子P1~偏波素子PMのそれぞれに入射する。第2の光L2は、第3光分波器20によりM個に分波され、偏波素子P2M+1~偏波素子P3Mのそれぞれに入射する。なお、偏波素子P1の符号におけるアルファベットのPに付けられた「1」は、1番目の偏波素子であることを表す。偏波素子PMの符号におけるアルファベットのPに付けられた「M」は、M番目の偏波素子であることを表す。符号における2M+1は、2×M+1番目であることを「×」を省略して表している。これらの点は、以下においてアルファベットに数字または「M」が付けられた符号を用いる場合にも同じである。
【0038】
第1光分波器2、第2光分波器10および第3光分波器20には、3DBカプラ等を使用できる。偏波素子とは、偏光を扱う光学系において用いられる素子をいう。ここでの偏波素子P1~偏波素子P4Mのそれぞれには、偏光ビームスプリッタ等を使用できる。
【0039】
M個に分波された第1の光L1は、偏波素子P1~偏波素子PMのそれぞれによって、直交する2つの偏光に分けられ、2×M個の第1の光L1となる。2×M個の第1の光L1は、光変調器C1~光変調器C2Mに対をなして入射する。
【0040】
光変調器C1~光変調器C2Mのそれぞれは、被測定物13のM個のコアを導光される第1の光L1を、M個のコアに入射する前に個別に変調する第1変調部の一例である。本実施形態では、光変調器C1~光変調器C2Mのそれぞれは、被測定物13のM個のコアを導光される2×M個の第1の光L1を個別に変調する。
【0041】
光変調器C1~光変調器C2Mには、電気光学効果を有する電気光学結晶を使用できる。電気光学効果とは、透明な物質に電圧を印加した場合に屈折率等の光学定数が変化する現象をいう。電気光学結晶には、カリウム(K)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)から構成される酸化物結晶であるKTN結晶等が挙げられる。光変調器C1~光変調器C2Mは、印加電圧に応じて屈折率を変化させることにより、第1の光L1の位相を変調する。
【0042】
2×M個の第1の光L1のそれぞれは、偏光と、導光されるコアの番号と、の組み合わせに応じて異なるように変調された位相により、ラベル付けされる。
【0043】
光変調器C1~光変調器C2Mにより変調された2×M個の第1の光L1における直交する2つの偏光は、偏波素子PM+1~偏波素子P2Mのそれぞれにより合波される。合波とは、複数の光を合体して1つの光にすることをいう。ここでは、直交する2つの偏光が合波される結果、2×M個の第1の光L1は、M個の第1の光L1となる。
【0044】
M個の第1の光L1は、光インターフェース11および第1ファンイン12をこの順に通って、被測定物13のM個のコアに対をなして入射する。被測定物13のM個のコアを通ったM個の第1の光L1は、出射側MCF132の出射端から出射する。
【0045】
一方、M個に分波された第2の光L2は、偏波素子P2M+1~偏波素子P3Mのそれぞれによって、直交する2つの偏光に分けられ、2×M個の第2の光L2となる。2×M個の第2の光L2は、光変調器C2M+1~光変調器C4Mに対をなして入射する。
【0046】
光変調器C2M+1~光変調器C4Mのそれぞれは、M個の光導波路23を導光される第2の光L2を、M個の光導波路23に入射する前に個別に変調する第2変調部の一例である。本実施形態では、光変調器C2M+1~光変調器C4Mのそれぞれは、M個の光導波路23を導光される2×M個の第2の光L2を個別に変調する。
【0047】
光変調器C2M+1~光変調器C4Mには、電気光学結晶を使用できる。光変調器C2M+1~光変調器C4Mは、印加電圧に応じて屈折率を変化させることにより、第2の光L2の位相を変調する。
【0048】
2×M個の第2の光L2は、偏光と、導光される光導波路23の番号と、の組み合わせに応じて異なるように変調された位相により、ラベル付けされる。2×M個の第1の光L1のラベル付け、および2×M個の第2の光L2のラベル付けにより、例えばそれぞれが1つのフォトダイオードを含む第1光検出部および第2光検出部により2×M個の第1の光L1を受光する場合にも、第1光検出部および第2光検出部の各受光信号に基づき、2×M個の第1の光L1を演算により識別可能になる。
【0049】
光変調器C2M+1~光変調器C4Mにより変調された2×M個の第2の光L2における直交する2つの偏光は、偏波素子P3M+1~偏波素子P4Mのそれぞれにより合波される。2×M個の第2の光L2は、M個の第2の光L2となる。このM個の第2の光L2は、第2ファンイン22を通って、M個の光導波路23に対をなして入射する。
【0050】
M個の光導波路23は、第2の光L2が導光される方向から見た各光導波路の位置が、第1の光L1が導光される方向から見た被測定物13の各コアの位置と相似するように構成されている。ここでの「相似する」は、M個の光導波路23の相対的な位置関係が、被測定物13のM個のコアの相対的な位置関係と同じであり、M個の光導波路23同士の相対的な距離等は、被測定物13のM個のコア同士の相対的な距離とは必ずしも同じでないことを意味する。M個の第2の光L2は、M個の光導波路23を導光された後、M個の光導波路23の各出射端から出射する。
【0051】
光導波路23は、非結合型マルチコア光ファイバを含んでもよい。光導波路23が非結合型マルチコア光ファイバを含む場合には、第2ファンイン22に入射する第2の光L2の光量を調整することにより、第1ファンイン12と被測定物13の複素伝達行列において、第2の光L2に起因する測定誤差を抑制できる点において好適である。また、光導波路23は、シングルコア光ファイバを含んでもよい。M個の光導波路23は、M個のシングルコア光ファイバを含む場合には、M個のシングルコア光ファイバの束、すなわちバンドルになる。また、光導波路23は、非結合型マルチコア光ファイバおよびシングルコア光ファイバの両方を含んでもよい。
【0052】
被測定物13のM個のコアから出射した第1の光L1は、第1レンズ41により透過され、光学素子3の面に入射する。一方、M個の光導波路23から出射した第2の光L2は、第3レンズ43により透過され、光学素子3における第1の光L1が入射する面とは反対側の面に入射する。
【0053】
光学素子3は、被測定物13のM個のコアを導光された第1の光L1、およびM個の光導波路23を導光された第2の光L2、のそれぞれの光量の一部を透過するとともに、光量の他の一部を反射する。光学素子3には、ハーフミラー、キューブビームスプリッタ等を使用できる。コヒーレント検波を行う観点では、光学素子3により反射される光と透過される光の光量の比は、略1対1になることが好ましい。
【0054】
第1レンズ41により透過された第1の光L1の一部は、光学素子3により反射され、第4レンズ44により透過された後、第1光検出部51に入射する。該第1の光L1の他の一部は、光学素子3により透過され、第2レンズ42により透過された後、第2光検出部52に入射する。
【0055】
第3レンズ43により透過された第2の光L2の一部は、光学素子3により反射され、第2レンズ42により透過された後、第2光検出部52に入射する。該第2の光L2の他の一部は、光学素子3により透過され、第4レンズ44により透過された後、第1光検出部51に入射する。
【0056】
光学系4は、第1光検出部51上および第2光検出部52上のそれぞれにおいて、第1の光L1と第2の光L2とが対をなして重なるように、第1の光L1および第2の光L2を導光することができる。なお、本明細書において、「第1光検出部51上」は、第1光検出部51に入射する光を受光する第1光検出部51の受光面上を意味する。「第2光検出部52上」は、第2光検出部52に入射する光を受光する第2光検出部52の受光面上を意味する。
【0057】
調整機構24は、第1光検出部51上および第2光検出部52上のそれぞれにおいて、第1の光L1と第2の光L2とが対をなして重なるように、光学系4または光導波路23のいずれか1つを調整する。
【0058】
本実施形態では、調整機構24は回転機構である。例えば、第1光検出部51の受光面内において、M個の第2の光L2の配置がM個の第1の光L1の配置に対して面内回転するようにずれている場合には、調整機構24は、M個の光導波路23をその導光方向に平行な軸周りに回転させる。これにより調整機構24は、第1の光L1と第2の光L2とが対をなして重なるように、光導波路23を調整できる。
【0059】
調整機構24は、光導波路23の回転機構に限定されるものではない。例えば、光学系4はズーム可変であり、調整機構24は、光学系4のズームを調整可能であってもよい。第1光検出部51の受光面内において、M個の第1の光L1が配置される領域の大きさが、M個の第2の光L2が配置される領域の大きさよりも大きいことにより両者が重なっていない場合には、調整機構24は、M個の第1の光L1が配置される領域の大きさが小さくなるように光学系4のズームを調整する。これにより調整機構24は、第1の光L1と第2の光L2とが対をなして重なるように、光学系4を調整できる。
【0060】
第1光検出部51は、被測定物13のM個のコアから出射して光学素子3により反射された第1の光L1と、M個の光導波路23から出射して光学素子3により透過された第2の光L2と、に基づき、第1受光信号v1を出力する。光学素子3により反射された第1の光L1と、光学素子3により透過された第2の光L2は、干渉する。第1光検出部51は、この干渉光の光強度に対応する電気信号を第1受光信号v1として出力する。第1光検出部51には、フォトダイオード等を使用できる。
【0061】
第2光検出部52は、被測定物13のM個のコアから出射して光学素子3により透過された第1の光L1と、M個の光導波路23から出射して光学素子3により反射された第2の光L2と、に基づき、第2受光信号v2を出力する。光学素子3により反射された第2の光L2と、光学素子3により透過された第1の光L1は、干渉する。第1光検出部51は、この干渉光の光強度に対応する電気信号を第2受光信号v2として出力する。第2光検出部52には、フォトダイオード等を使用できる。
【0062】
差動増幅器6は、第1光検出部51から第1受光信号v1を入力し、第2光検出部52から第2受光信号v2を入力し、第1受光信号v1と第2受光信号v2の差分を所定係数で増幅した差動信号v3を、処理部7に出力する電気回路である。
【0063】
処理部7は、第1受光信号v1と第2受光信号v2とに基づき、被測定物13のモード依存損失に関する情報を出力する。処理部7の機能は電気回路により実現される他、該機能の一部はソフトウェア(CPU;Central Processing Unit)により実現されてもよい。また、処理部7の機能は、複数の回路または複数のソフトウェアによって実現されてもよい。また、処理部7は、各種設定や処理結果等のデータを記憶するメモリを備えてもよい。
【0064】
処理部7は、第1受光信号v1および第2受光信号v2に基づく差動信号v3の複素スペクトルから、第1ファンイン12と被測定物13とのモード依存損失に対応する合成複素伝達行列を算出する。処理部7は、該合成複素伝達行列の最大特異値と最小特異値の2乗の比を、モード依存損失に関する情報、すなわち測定結果として出力する。
【0065】
合成複素伝達行列は、光変調器C1~光変調器C2Mおよび光変調器C2M+1~光変調器C4Mによる変調情報と、第1受光信号v1および第2受光信号v2と、の対応関係に関する情報を含んでいる。このため、処理部7は、第1受光信号v1および第2受光信号v2と、光変調器C1~光変調器C2Mおよび光変調器C2M+1~光変調器C4Mによる変調情報と、に基づいて、M個のコアそれぞれのモード依存損失に関する情報を個別に算出し、出力することができる。
【0066】
モード依存損失測定装置100は、光変調器C2M+1~光変調器C4M等の第2変調部に代えて、M個のフォトダイオードを含む第2光検出部を有してもよい。M個のフォトダイオードそれぞれの出力信号を用いることにより、第2変調部を用いなくても、M個の光導波路23を通った第2の光L2をそれぞれ識別できるからである。
【0067】
測定精度を高く確保する観点では、第1の光および前記第2の光のそれぞれの偏光状態が既知であることが好ましく、第1の光および前記第2の光のそれぞれが直交する2つの偏光を含むことがさらに好ましい。
【0068】
モード依存損失測定装置100は、第1光源1を必ずしも有さなくてもよく、モード依存損失測定装置100の外部から入射した光を第1の光L1および第2の光L2として測定に用いてもよい。
【0069】
(コア像と光導波路像の重なり例)
図2および
図3を参照して、光学系4によるコア像と光導波路像との重なりの一例について説明する。
図2は、モード依存損失測定装置100が有する第1光検出部上における被測定物のコア像および光導波路像の一例を示す図である。
図2は、第1光検出部51の受光面の一部をその法線方向から平面視したものである。
図2は、第1光検出部51上において、被測定物13のコア像135と、光導波路像235と、が重なる様子を示している。
図3は、
図2におけるIII-III線に沿う光の断面の光強度を示す図である。
【0070】
図2および
図3において、コア像135は、第1レンズ41と第4レンズ44とからなる合成光学系により第1光検出部51上で結像された、被測定物13における出射側MCF132の出射端の像である。光導波路像235は、第3レンズ43と第4レンズ44とからなる合成光学系により第1光検出部51上で結像された、光導波路23の出射端の像である。
【0071】
図2において、コア像135は、コア像135-1、コア像135-2、コア像135-3およびコア像135-4を含む。コア像135を表す破線の丸は、第1の光L1の光強度が自身のピーク光強度の1/e
2となる等高線を表している。eは自然対数の底である。
【0072】
光導波路像235は、光導波路像235-1、光導波路像235-2、光導波路像235-3および光導波路像235-4を含む。光導波路像235を表す実線の丸は、第2の光L2の光強度が自身のピーク光強度の1/e2となる等高線を表している。
【0073】
光導波路像235-1は、コア像135-1の内側に位置する。光導波路像235-2は、コア像135-2の内側に位置する。光導波路像235-3は、コア像135-3の内側に位置する。光導波路像235-4は、コア像135-4の内側に位置する。以上より、光導波路像235-1とコア像135-1、光導波路像235-2とコア像135-2、光導波路像235-3とコア像135-3、並びに、光導波路像235-4とコア像135-4は、それぞれ対をなして重なっている。
【0074】
図3に示すように、光導波路像235-1の断面光強度は、コア像135-1の断面光強度の内側に位置する。光導波路像235-2の断面光強度は、コア像135-2の断面光強度の内側に位置する。以上より、光導波路像235-1とコア像135-1、並びに、光導波路像235-2とコア像135-2は、それぞれ対をなして重なっている。
【0075】
以上のように、光学系4は、第1光検出部51上において、第1の光L1と第2の光L2とが対をなして重なるように、第1の光L1および第2の光L2を導光する。モード依存損失測定装置100は、光学系4を用いて第1の光L1および第2の光L2を重ねることにより、第1光検出部51上および第2光検出部52上のそれぞれで、第1の光L1と第2の光L2を干渉させることができる。
【0076】
例えば、非特許文献1および非特許文献2の技術において、ファンイン等の光入射部材と、ファンアウト等の光出射部材と、の間に被測定物が挟まれた状態において測定を行う場合には、次の式(1)により表される合成複素伝達行列HXが得られる。
HX=Ho・Hs・Hi ・・・(1)
式(1)において、Hoは光出射部材の複素伝達行列を表す。Hsは被測定物の複素伝達行列を表す。Hiは光入射部材の複素伝達行列を表す。
【0077】
式(1)の合成複素伝達行列HXには、光入射部材の複素伝達行列Hiおよび光出射部材の複素伝達行列Hoが含まれるため、式(1)に基づき得られるモード依存損失の測定結果には、光入射部材および光出射部材の各モード依存損失が含まれる。
【0078】
上記に対し、本実施形態に係るモード依存損失測定装置100は、ファンアウト等の光出射部材を有さないため、次の式(2)により表される合成複素伝達行列Hが得られる。
H=Hs・Hi ・・・(2)
Hiは、光入射部材としての第1ファンイン12の複素伝達行列に対応する。
【0079】
式(2)の合成複素伝達行列Hには、光出射部材の複素伝達行列Hoが含まれないため、式(2)に基づき得られるモード依存損失の測定結果には、光出射部材のモード依存損失は含まれない。従って本実施形態では、光入射部材および光出射部材の両方のモード依存損失が測定結果に含まれる場合と比較して、測定信頼性を向上させることができる。
【0080】
光学系4は、M個のコアそれぞれの出射端の像と、M個の光導波路23それぞれの出射端の像と、を第1光検出部51上および第2光検出部52上のそれぞれにおいて、必ずしも結像させなくてもよい。第1光検出部51上および第2光検出部52上のそれぞれにおいて第1の光L1と第2の光L2を干渉させることができれば、結像させなくても測定信頼性を向上させる効果が得られるからである。但し、コアおよび光導波路23の各出射端像を結像させると、両者が重なっているか否かが分かりやすくなるため、重ね合わせのための光学系4の位置調整が容易になる点において好適である。光学系4の位置調整が容易になる結果、第1光検出部51上および第2光検出部52上のそれぞれにおいて、第1の光L1と第2の光L2とが重なりやすくなる。
【0081】
図1に示した調整機構24は、
図2に示す中心間距離Rが、被測定物13および光導波路23それぞれのモードフィールド半径の2乗和平方根の10%以下になるように調整してもよい。中心間距離Rは、第1光検出部51上および第2光検出部52上のそれぞれにおける、第1の光L1の中心と第2の光L2の中心との間の距離を意味する。
【0082】
光導波路像235とコア像135とが重なる状態は、
図2および
図3に示したような光導波路像235がコア像135の内側に含まれる状態に限定されない。コア像135が光導波路像235の内側に含まれる状態であってもよい。また、第1の光L1と第2の光L2とが干渉可能に、光導波路像235とコア像135の少なくとも一部が重なっていればよい。
【0083】
(第1ファンイン12の複素伝達行列の除去例)
本実施形態では、上記の式(2)から第1ファンイン12の複素伝達行列を除去することにより、モード依存損失の測定結果から第1ファンイン12のモード依存損失を除去し、被測定物13単独のモード依存損失を測定することもできる。以下、第1ファンイン12の複素伝達行列を除去するための動作および処理について説明する。
【0084】
まず、第1ステップとして、モード依存損失測定装置100は、第1ファンイン12を通って被測定物13のM個のコアそれぞれに第1の光L1が入射する状態において、測定を行う。これにより、上記の式(2)により表される合成複素伝達行列Hが得られる。
【0085】
続いて、第2ステップとして、第1ステップの状態から被測定物13が取り外され、モード依存損失測定装置100は、第1の光L1が第1ファンイン12の各シングルモード光ファイバのみを通る状態において、測定を行う。これにより、第1ファンイン12単独の複素伝達行列Hiが得られる。
【0086】
続いて、第3ステップとして、モード依存損失測定装置100は、処理部7により、次の式(3)に示すように、第1ファンイン12の複素伝達行列Hiの逆行列Hi_invを、式(2)の合成複素伝達行列Hに対し、右方から乗算する。
H・Hi_inv=Hs・Hi・Hi_inv=Hs ・・・(3)
【0087】
式(3)の演算により、Hi・Hi_invは単位行列になるため、被測定物13単独の複素伝達行列Hsが得られる。モード依存損失測定装置100は、処理部7により、被測定物13単独の複素伝達行列Hsの最大特異値と最小特異値の2乗の比を、被測定物13単独のモード依存損失に関する情報、すなわち測定結果として出力することができる。
【0088】
第1ファンイン12の複素伝達行列を除去する方法は、上述した第1ステップから第3ステップを行うものに限定されない。例えば、モード依存損失測定装置100は、第1ファンイン12の複素伝達行列Hiの逆行列Hi_invを予め取得し、処理部7に含まれるメモリに記憶しておいてもよい。この逆行列Hi_invは、第1ファンイン12の複素伝達行列Hiに関する情報に対応する。
【0089】
モード依存損失測定装置100は、処理部7により、メモリから読み出した逆行列Hi_invを用いて上記の式(3)の演算を行う。これによりモード依存損失測定装置100は、被測定物13単独の複素伝達行列Hsを取得し、複素伝達行列Hsから被測定物13単独のモード依存損失の測定結果を得ることができる。この方法では、上述した第1ステップから第3ステップを行うものと比較して、第2ステップの動作が不要となるため、モード依存損失測定のための動作を簡略化することができる。
【0090】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るモード依存損失測定装置100aについて説明する。なお、既に述べた実施形態と同じ構成部には同じ符号を付し、重複した説明を適宜省略する。この点は、以降に示す他の実施形態においても同じである。
【0091】
図4は、モード依存損失測定装置100aの構成の一例を示す図である。モード依存損失測定装置100aは、第1光源1aと、光遅延線路D1~光遅延線路D4Mと、可変光減衰器V1~可変光減衰器V4Mと、を有する。
【0092】
第1光源1aは、射出するレーザ光の波長を連続的に掃引可能な波長可変レーザである。第1光源1aからの光L0は、第1光分波器2により、第1の光L1と第2の光L2とに分波される。
【0093】
光遅延線路D1~光遅延線路D2Mは、偏波素子P1~偏波素子PMによって直交する2つの偏光に分けられた2×M個の第1の光L1のそれぞれに対し、光学的な遅延を個別に与える機器、部材または機器および部材の両方である。
【0094】
第1光源1aは、2×M個の第1の光L1のそれぞれを連続周波数掃引する。光遅延線路D1~光遅延線路D2Mは、光学的遅延により2×M個の第1の光L1のそれぞれを周波数変調する。
【0095】
2×M個の第1の光L1のそれぞれは、偏光と、導光されるコアの番号と、の組み合わせに応じて異なるように変調された周波数により、ラベル付けされる。第1光源1aおよび光遅延線路D1~光遅延線路D2Mは、第1変調部に対応する。
【0096】
可変光減衰器V1~可変光減衰器V2Mは、光遅延線路D1~光遅延線路D2Mのそれぞれを通る第1の光L1の光強度を個別に可変減衰させる機器である。可変光減衰器V1~可変光減衰器V2Mにより、2×M個の第1の光L1それぞれの光量を個別に調整できる。
【0097】
光遅延線路D2M+1~光遅延線路D4Mは、偏波素子P2M+1~偏波素子P3Mによって直交する2つの偏光に分けられた2×M個の第2の光L2のそれぞれに対し、光学的な遅延を個別に与える機器、部材または機器および部材の両方である。
【0098】
第1光源1aは、2×M個の第2の光L2のそれぞれを連続周波数掃引する。光遅延線路D2M+1~光遅延線路D4Mは、光学的遅延により2×M個の第2の光L2のそれぞれを周波数変調する。
【0099】
2×M個の第2の光L2のそれぞれは、偏光と、導光される光導波路23の番号と、の組み合わせに応じて異なるように変調された周波数により、ラベル付けされる。第1光源1aおよび光遅延線路D2M+1~光遅延線路D4Mは、第2変調部に対応する。
【0100】
可変光減衰器V2M+1~可変光減衰器V4Mは、光遅延線路D2M+1~光遅延線路D4Mのそれぞれを通る第2の光L2の光強度を個別に可変減衰させる機器である。可変光減衰器V2M+1~可変光減衰器V4Mにより、2×M個の第2の光L2それぞれの光量を個別に調整できる。
【0101】
モード依存損失測定装置100aは、第1実施形態に係るモード依存損失測定装置100と比較して、第1の光L1および第2の光L2をラベル付けするための変調方式が異なるが、その作用効果はモード依存損失測定装置100と同じである。
【0102】
第1光源1aは、波長可変レーザまたは波長安定化レーザと、該波長可変レーザまたは該波長安定化レーザからの光をM系列信号により2位相偏移変調するM系列変調部と、を有するものであってもよい。このような第1光源1aは、連続周波数掃引する場合と比較して、射出する光の出力安定性が高くなる点において有利である。
【0103】
<差動増幅器6の複素スペクトルの出力例>
本実施形態では、第1光源1aおよび光遅延線路D1~光遅延線路D2Mは、第1番目から第2M番目までの変調信号を用いて第1の光L1を変調する。第1光源1aおよび光遅延線路D2M+1~光遅延線路D4Mは、第2M+1番目から第4M番目までの変調信号を用いて第2の光L2を変調する。第1番目から前記第4M番目までの変調信号に属する第m番目と第n番目の変調信号の積は、直交関数系に含まれる第i番目と第j番目の関数の線形結合である。
【0104】
第1光源1aおよび光遅延線路D1~光遅延線路D4Mによる変調に使用される変調信号は、複素指数関数により表される。従って、異なる変調信号の積は、直交関数系をなすcos関数とsin関数の線形結合となる。この場合に、第1の光L1に対する第m番目の変調信号の周波数をfmとし、第2の光L2に対する第n番目の変調信号の周波数をfnとする。これらの変調信号の積は、直交関数系{cos(2π・fi・t),sin(2π・fj・t)}に属する第i番目と第j番目の関数の線形結合となる。これらの周波数の関係は、次の式(4)により表される。
fi=fj=fΔ+fm-fn ・・・(4)
【0105】
式(4)から、差動増幅器6が出力する複素スペクトルは、
図5Aおよび
図5Bに示すものとなる。
図5Aおよび
図5Bは、差動増幅器6が出力する複素スペクトルの一例を示す図であり、
図5Aは複素スペクトルのcos成分を示す図、
図5Bは複素スペクトルのsin成分を示す図である。
図5Aおよび
図5Bの横軸は周波数軸である。Co1~Co10は、cos成分の出力を表す。Si1~Si10は、sin成分の出力を表す。
【0106】
処理部7は、2つの変調信号の周波数と、2つの変調信号の積である信号の周波数と、の関係から、対応する複素スペクトル強度に基づいて、複素伝達行列のmn成分を決定することができる。
【0107】
第1番目から前記第4M番目までの変調信号に属する第m番目と第n番目の変調信号の積を、直交関数系に含まれる第i番目と第j番目の関数の線形結合とすることは、第1実施形態および以降に示す各実施形態に係るモード依存損失測定装置にも適用できる。これらの場合にも、本実施形態と同じ作用効果を得ることができる。
【0108】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係るモード依存損失測定装置100bについて説明する。
図6は、モード依存損失測定装置100bの構成の一例を示す図である。モード依存損失測定装置100bは、第2光源8と、光合分波器40と、第4光分波器50と、自己遅延干渉計9と、処理部7bと、を有する。自己遅延干渉計9は、第5光分波器60と、光遅延線路D2M+1と、光合波器70と、平衡検出器80と、を有する。
【0109】
被測定物13がエルビウム添加光ファイバ増幅器である場合等には、測定に使用する第1の光L1とは別に、被測定物13の動作条件を決定する波長多重光を再現するための背景光が必要になる。モード依存損失測定装置100bは、第2光源8により背景光L3を射出する。背景光L3は光合分波器40に入射する。光合分波器40は、第1光源1aからのM個の第1の光L1それぞれと第2光源8からの背景光L3を合波しつつ、合波した光をM個の光に分波して、被測定物13のM個のコアそれぞれに入射させる。モード依存損失測定装置100bは、背景光L3と合波されたM個の第1の光L1を用いて測定を行う。
【0110】
第2光源8は、被測定物13の様々な動作条件を再現するために、波長多重光源、または光コム光源であってもよい。波長多重光源は、異なる波長で発振する複数の分布帰還形(DFB:Distributed Feedback)レーザからの光をアレード光導波路回折格子(AWG:Arrayed Waveguide Grating)で合成したものである。光コム光源は、櫛、すなわちコムの歯列状の周波数スペクトルに分解した光を射出可能なレーザ光源である。なお、モード依存損失測定装置100bは、第1光源1aと同様に、第2光源8を必ずしも有さなくてもよく、モード依存損失測定装置100bの外部から入射した光から背景光L3を取り出して用いてもよい。
【0111】
光合分波器40は、第2光源8からの背景光L3と、第1光源1aからの第1の光L1と、を合成する光合成部材の一例である。光合分波器40には、3DBカプラ等を使用できる。
【0112】
一方、自己遅延干渉計9は、第1光源1aから射出される光L0の位相雑音を補償する。モード依存損失測定装置100bは、第1光分波器2からの第2の光L2を第4光分波器50により分波し、第2の光L2から分波された監視光L4を第5光分波器60に入射させる。
【0113】
自己遅延干渉計9は、マッハ・ツェンダー干渉計を構成している。なお、自己遅延干渉計9は、マッハ・ツェンダー干渉計以外の干渉計を構成してもよい。
【0114】
自己遅延干渉計9は、監視光L4を第5光分波器60により二分割する。自己遅延干渉計9は、二分割された光のうちの一方である第1監視光L41に対し、光遅延線路D2M+1により光L0のコヒーレンス長よりも短い遅延を付与する。
【0115】
自己遅延干渉計9は、遅延が付与された第1監視光L41と、第5光分波器60により二分割された光のうちの他方である第2監視光L42と、を光合波器70により合波する。第1監視光L41と第1監視光L41は、合波により、ビート周波数を有するうなりを発生する。自己遅延干渉計9は、うなりのビート周波数を平衡検出器80により検出し、検出信号v4を処理部7bに出力する。
【0116】
平衡検出器80からの検出信号v4は、第1光源1aからの光L0に基づく自己遅延干渉計9の出力に対応する。処理部7bは、検出信号v4に基づいて、差動信号v3における光L0の位相雑音の影響を、演算により補償することができる。
【0117】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係るモード依存損失測定装置100cについて説明する。
図7は、モード依存損失測定装置100cの構成の一例を示す図である。モード依存損失測定装置100cは、第1偏波コントローラ91と、第2偏波コントローラ92と、を有する。
【0118】
第1偏波コントローラ91は、第1光分波器2により分波された第1の光L1の偏波方向を制御可能な機器である。ここでは、第1偏波コントローラ91は、第1の光L1の偏光方向を制御することにより、第1の光L1の光量を調整できる。
【0119】
第2偏波コントローラ92は、第1光分波器2により分波された第2の光L2の偏波方向を制御可能な機器である。ここでは、第2偏波コントローラ92は、第2の光L2の偏波方向を制御することにより、第2の光L2の光量を調整できる。
【0120】
第1偏波コントローラ91を通った第1の光L1は、偏波素子P1により直交する2つの偏光に分けられ、一方の偏光に光遅延線路D1によって光学的な遅延が与えられた後、偏波素子P2により合波される。
【0121】
光遅延線路D2~光遅延線路D2Mは、第1の光L1における直交する2つの偏光間に光学的な遅延が与えられた後、光合分波器40によって第1の光L1から分波されたM-1個の第1の光L1それぞれに対し、光学的な遅延を与え、これらを変調する。光遅延線路D1~光遅延線路DMは、第1変調部に対応する。
【0122】
一方、第2偏波コントローラ92を通った第2の光L2は、偏波素子P3により直交する2つの偏光に分けられ、一方の偏光に光遅延線路DM+1によって光学的な遅延が与えられた後、偏波素子P4により合波される。
【0123】
光遅延線路DM+2~光遅延線路D2Mは、第2の光L2における直交する2つの偏光間に光学的な遅延が与えられた後、第3光分波器20によって第1の光L1から分波されたM-1個の第1の光L1それぞれに対し、光学的な遅延を与え、これらを変調する。光遅延線路DM+1~光遅延線路D2Mは、第2変調部に対応する。
【0124】
以上の構成により、2×M個の第1の光および2×M個の第2の光のそれぞれに対し、光学的な遅延を与える光遅延線路を個別に設ける場合と比較して、光学的な遅延を与えるための構成部の数を削減することができる。光学的な遅延を与えるための構成部は、ここでは、光遅延線路、偏波素子および可変光減衰器が該当するが、これらに限定されるものではない。
【0125】
以上、各実施形態および変形例を説明してきたが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0126】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。
【符号の説明】
【0127】
1、1a 第1光源
2 第1光分波器
3 光学素子
4 光学系
41 第1レンズ
42 第2レンズ
43 第3レンズ
44 第4レンズ
51 第1光検出部
52 第2光検出部
6 差動増幅器
7、7b 処理部
8 第2光源
9 自己遅延干渉計
91 第1偏波コントローラ
92 第2偏波コントローラ
10 第2光分波器
11 光インターフェース
12 第1ファンイン(光入射部材の一例)
13 被測定物
130 被測定物本体
131 入射側MCF
132 出射側MCF
135、135-1、135-2、135-3、135-4 コア像
20 第3光分波器
22 第2ファンイン
23 光導波路
235、235-1、235-2、235-3、235-4 光導波路像
24 調整機構
40 光合分波器
50 第4光分波器50
60 第5光分波器
70 光合波器
80 平衡検出器
100、100a、100b、100c モード依存損失測定装置
C1~C2M 光変調器(第1の変調部の一例)
C2M+1~C4M 光変調器(第2の変調部の一例)
D1~D4M+1 光遅延線路(第1の変調部の一例)
D2M+1~D4M 光遅延線路(第2の変調部の一例)
L0 光
L1 第1の光
L2 第2の光
L3 背景光
L4 監視光
L41 第1監視光
L42 第2監視光
M 2以上の自然数
P1~P4M 偏波素子
R 中心間距離
V1~V4M 可変光減衰器
v1 第1受光信号
v2 第2受光信号
v3 差動信号
v4 検出信号