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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094444
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ITGAVを標的とする核酸医薬
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240703BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240703BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240703BHJP
   C07H 21/02 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
C12N15/113 140Z
A61K31/713 ZNA
A61P35/00
A61P43/00 111
C07H21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021042912
(22)【出願日】2021-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001926
【氏名又は名称】塩野義製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113789
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100209598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】永井 良平
(72)【発明者】
【氏名】藤原 孝博
(72)【発明者】
【氏名】横田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】関口 光明
(72)【発明者】
【氏名】三岡 恭典
【テーマコード(参考)】
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4C057BB01
4C057CC02
4C057CC05
4C057DD03
4C057MM02
4C057MM04
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の目的は、新規のITGAVの発現を抑制する核酸を提供することにある。
【解決手段】特定の標的配列に対する核酸又は特定の配列を有する核酸が、優れたITGAV発現抑制活性を有することを見出した。該核酸を有効成分として含む医薬組成物は、線維化関連疾患の予防又は治療のための医薬として非常に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の2291位~2311位、657位~687位、768位~809位、927位~954位、1094位~1141位、1310位~1332位、1575位~1600位、1710位~1743位、1897位~1919位、1989位~2021位、2089位~2109位、2145位~2185位、2376位~2404位、2483位~2509位、2748位~2782位又は3313位~3346位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、
インビトロで5nMの濃度で、ヒト肝癌由来細胞におけるITGAVの発現を87.5%以上抑制することを特徴とする核酸。
【請求項2】
配列番号246~249、158~162、165~170、173~175、178~186、192~195、201~206、212~217、219~225、227~229、231~240、251~255、258~263、265~268及び273~279からなる群から選ばれるいずれかの塩基配列;又は
配列番号246~249、158~162、165~170、173~175、178~186、192~195、201~206、212~217、219~225、227~229、231~240、251~255、258~263、265~268及び273~279からなる群から選ばれるいずれかの塩基配列において、1~3の塩基が欠失、置換若しくは挿入された塩基配列;
を含む、請求項1記載の核酸。
【請求項3】
配列番号246、178、183~185、203~205、208、214、220、224、237、238、251、254、255、260、263、270及び272からなる群から選ばれるいずれかの塩基配列;又は
配列番号246、178、183~185、203~205、208、214、220、224、237、238、251、254、255、260、263、270及び272からなる群から選ばれるいずれかの塩基配列において、1~3の塩基が欠失、置換若しくは挿入された塩基配列;
を含み、1以上の化学修飾を有するヌクレオチドを含み、かつ、ITGAVの発現を抑制する核酸。
【請求項4】
該化学修飾が、糖の2´位に置換基を有するヌクレオシド及び/又は糖の4´位と2´位との間に架橋構造を有するヌクレオシドである、請求項3記載の核酸。
【請求項5】
該塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの3´末端にオーバーハングを含む、請求項2~4のいずれかに記載の核酸。
【請求項6】
siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA又はmiRNAである、請求項1~5のいずれかに記載の核酸。
【請求項7】
アンチセンス鎖が、配列番号317及び444~494からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるITGAVの発現を抑制するsiRNA。
【請求項8】
アンチセンス鎖が、配列番号444~446、453、455、463~466、478、483及び492~494からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドである請求項7記載のsiRNA。
【請求項9】
以下のいずれかである請求項7又は8記載のsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号444に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号332、333、352~362及び435~441からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号445に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号332~393からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号446に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号332~365、371~387及び配列番号391~433からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号453に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号360、381及び402~404からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号455に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号360、375、383、423、424、429及び430からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号463に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号360に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号464に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号360、375、383、386及び403からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号465に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号360又は383に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号466に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号332、360、364、375、383、406~409、434及び436~443からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号478に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号360に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号483に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号360、375、383、386及び403からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号492に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号440に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号493に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号440に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;又は
アンチセンス鎖が配列番号494に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号440に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA。
【請求項10】
請求項1~6のいずれかに記載の核酸又は請求項7~9のいずれかに記載のsiRNAを含有する医薬組成物。
【請求項11】
ITGAVが関連する疾患の予防又は治療のために用いる、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
該疾患が、線維化関連疾患である、請求項11記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテグリンα-VをコードするITGAVを標的とする核酸医薬に関する。より詳細には、線維化関連疾患の予防又は治療薬として有用なITGAVに対する核酸に関する。
【背景技術】
【0002】
線維化関連疾患は、組織の修復又は反応プロセスにおいて、過剰な線維組織が形成される疾患である。典型的には、炎症又は損傷の結果として、体内の多くの臓器や多くの組織で起こる可能性があり、例えば、肺の線維症(肺線維症、嚢胞性線維症、特発性肺線維症等)、心臓の線維症(心房線維症、心内膜線維症、過去の心筋梗塞の結果として生じる損傷等)、肝臓の線維症(肝硬変等)が挙げられる。
【0003】
インテグリンは、細胞-細胞相互作用及び細胞-マトリックス相互作用を媒介する糖タンパク質膜貫通受容体のファミリーである。インテグリンは、2つの異なる鎖、αサブユニット及びβサブユニットを有するヘテロ二量体である。哺乳動物においては、18個のαサブユニットと8個のβサブユニットが記載されている。
【0004】
インテグリンα-Vはオステオポンチン、フィブロネクチン等の受容体であり、細胞接着因子として作用する。インテグリンα-Vノックアウトマウスに肝臓に激しい障害を起こすことで知られている四塩化炭素を投与すると肝線維化進展が抑制されたこと(非特許文献1)、ヒト肝臓星細胞株LX-2にインテグリンα-V siRNAを添加すると線維症の進行を示すマーカーの発現が大きく低下したこと(非特許文献2)等が知られている。これらのことから、ITGAV発現抑制活性を有する医薬組成物は、肝線維化関連疾患の治療又は予防に利用できることが示唆されている。
【0005】
特許文献1又は2には、ITGAVに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドが記載されている。
また、特許文献3又は4には、多数の遺伝子に関するsiRNAターゲット配列が記載されている。特許文献3のTable13には、多数のターゲットに対するsiRNAが記載されており、ID:3786901~3787000として100のヒトのITGAVのsiRNAターゲット配列が記載されている。特許文献4には、配列番号:330629~330743として115のヒトのITGAVのsiRNAターゲット配列が記載されている。しかし、ITGAV発現抑制を含め、生物学的データは一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO99/054456
【特許文献2】WO02/031142
【特許文献3】WO2004/045543
【特許文献4】WO2005/116204
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nat Med. 2013;19(12):1617-24
【非特許文献2】J Gastroenterol. 2016 51(12):1161-1174
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れたITGAV発現抑制活性を有する核酸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、優れたITGAV発現抑制活性(ノックダウン活性)を有する新規核酸(siRNA)の合成に成功した。さらに、本発明者らは、ITGAVのmRNAの中で特に、核酸のノックダウン活性に関連する標的領域を見出した。具体的には、600以上の標的配列の異なるsiRNAと200以上の該siRNAの変異体(塩基置換)からインビトロで5nMの濃度で、ヒト肝癌由来細胞(HepG2)におけるITGAVの発現を87.5%以上抑制する144のsiRNAと、それらの標的領域として16箇所の領域を見出した(実施例2、4及び5)。また、本発明者らは、得られたsiRNAに変異や化学修飾を導入し、生体内であっても標的組織に移行し、十分な活性を示すsiRNAの合成に成功した(実施例6)。そのうち特に有用なsiRNAとして、配列番号246の塩基配列を含み、1以上の化学修飾を有するヌクレオチドを含むsiRNAを見出した(実施例3)。さらに、該siRNAがITGAVの発現を抑制することにより、肝線維化を抑制し得ることを見出した(実施例4、5、7、及び8)。
また、本発明者らは、肝実質細胞;胆管上皮細胞、類洞内皮細胞等を含む非実質細胞;肝星細胞等において本発明の核酸がノックダウン活性を有することを見出した。肝臓において複数の細胞種に作用し、強力な薬効が期待される。
なお、本発明の核酸は、医薬として使用するために十分安全である。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に関する。
(1)配列番号1の2291位~2311位、657位~687位、768位~809位、927位~954位、1094位~1141位、1310位~1332位、1575位~1600位、1710位~1743位、1897位~1919位、1989位~2021位、2089位~2109位、2145位~2185位、2376位~2404位、2483位~2509位、2748位~2782位又は3313位~3346位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、
インビトロで5nMの濃度で、ヒト肝癌由来細胞におけるITGAVの発現を87.5%以上抑制することを特徴とする核酸。
(2)配列番号246~249、158~162、165~170、173~175、178~186、192~195、201~206、212~217、219~225、227~229、231~240、251~255、258~263、265~268及び273~279からなる群から選ばれるいずれかの塩基配列;又は
配列番号246~249、158~162、165~170、173~175、178~186、192~195、201~206、212~217、219~225、227~229、231~240、251~255、258~263、265~268及び273~279からなる群から選ばれるいずれかの塩基配列において、1~3の塩基が欠失、置換若しくは挿入された塩基配列;
を含む、(1)記載の核酸。
(3)配列番号246、178、183~185、203~205、208、214、220、224、237、238、251、254、255、260、263、270及び272からなる群から選ばれるいずれかの塩基配列;又は
配列番号246、178、183~185、203~205、208、214、220、224、237、238、251、254、255、260、263、270及び272からなる群から選ばれるいずれかの塩基配列において、1~3の塩基が欠失、置換若しくは挿入された塩基配列;
を含み、1以上の化学修飾を有するヌクレオチドを含み、かつ、ITGAVの発現を抑制する核酸。
(4)該化学修飾が、糖の2´位に置換基を有するヌクレオシド及び/又は糖の4´位と2´位との間に架橋構造を有するヌクレオシドである、(3)記載の核酸。
(5)該塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの3´末端にオーバーハングを含む、(2)~(4)のいずれかに記載の核酸。
(6)siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA又はmiRNAである、(1)~(5)のいずれかに記載の核酸。
(7)アンチセンス鎖が、配列番号317及び444~494からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるITGAVの発現を抑制するsiRNA。
(8)アンチセンス鎖が、配列番号444~446、453、455、463~466、478、483及び492~494からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドである(7)記載のsiRNA。
(9)以下のいずれかである(7)又は(8)記載のsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号444に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号332、333、352~362及び435~441からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号445に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号332~393からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号446に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号332~365、371~387及び配列番号391~433からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号453に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号360、381及び402~404からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号455に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号360、375、383、423、424、429及び430からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号463に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号360に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号464に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号360、375、383、386及び403からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号465に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号360又は383に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号466に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号332、360、364、375、383、406~409、434及び436~443からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号478に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号360に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号483に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号360、375、383、386及び403からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号492に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号440に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;
アンチセンス鎖が配列番号493に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号440に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA;又は
アンチセンス鎖が配列番号494に記載のオリゴヌクレオチドであり、
センス鎖が配列番号440に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNA。
(10)(1)~(6)のいずれかに記載の核酸又は(7)~(9)のいずれかに記載のsiRNAを含有する医薬組成物。
(11)ITGAVが関連する疾患の予防又は治療のために用いる、(10)記載の医薬組成物。
(12)該疾患が、線維化関連疾患である、(11)記載の医薬組成物。
【0011】
(13)(1)~(6)のいずれかに記載の核酸又は(7)~(9)のいずれかに記載のsiRNAを投与する工程を含む、ITGAVが関連する疾患の予防又は治療方法。
(14)ITGAVが関連する疾患の予防又は治療剤を製造するための、(1)~(6)のいずれかに記載の核酸又は(7)~(9)のいずれかに記載のsiRNA。
(15)ITGAVが関連する疾患の予防又は治療のための、(1)~(6)のいずれかに記載の核酸又は(7)~(9)のいずれかに記載のsiRNA。
(16)該疾患が、線維化関連疾患である、(13)記載の方法又は(14)若しくは(15)記載の核酸又はsiRNA。
(17)線維化関連疾患が、肝線維症(肝臓の線維化)である、(12)記載の医薬組成物又は(16)記載の方法、核酸若しくはsiRNA。
【発明の効果】
【0012】
本発明の核酸は優れたITGAV発現抑制活性を示し、医薬品、特にITGAVの関与する疾患、例えば、線維化関連疾患の予防又は治療のための医薬として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】四塩化炭素(CCl4)誘導肝線維症モデルにおける血中アミノ基転移酵素(ALT)活性
図2】CCl4誘導肝線維症モデルにおける肝臓中ヒドロキシプロリン量
図3】コリン欠乏メチオニン減量高脂肪食 (CDHFD) 負荷モデルにおける血中アミノ基転移酵素(ALT)活性
図4】CDHFD負荷モデルにおける血中アミノ基転移酵素(AST)活性
図5】CDHFD負荷モデルにおける肝臓線維化陽性面積率
図6】CDHFD負荷モデルにおける肝臓中ヒドロキシプロリン量
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において使用される用語は、特に言及する場合を除いて、当該分野で通常用いられる意味で用いられる。
本発明においては、当該分野で公知の遺伝子操作的手法が利用可能である。例えば、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Forth Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012)、Current Protocols Essential Laboratory Techniques, Current Protocols (2012)に記載された方法等が挙げられる。
【0015】
以下に本明細書中で使用する各用語を説明する。
「ヌクレオシド」とは、核酸塩基と糖とがN-グリコシド結合をした化合物を意味する。
「オリゴヌクレオチド」とは、同一又は異なるヌクレオシドがヌクレオシド間結合を介して複数個結合したヌクレオチドを意味する。
「ヌクレオチド」とはオリゴヌクレオチドを構成する1単位であり、ヌクレオシドとヌクレオシド間結合を有する。
【0016】
本願発明の「核酸」とは、医薬品として利用可能な核酸として当該分野で公知の核酸であればいずれも利用可能である。例えば、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、miRNA等が挙げられる。siRNAには、一本鎖オリゴヌクレオチドsiRNA(WO2015/168661等参照)も含まれる。また、アンチセンスオリゴヌクレオチドの場合、ハイブリダイズ可能な配列と共に二本鎖オリゴヌクレオチドを形成していてもよい(WO2013/089283等参照)。
【0017】
本発明の核酸の標的遺伝子としては、ITGAVが挙げられる。例えば、ヒトITGAV、マウスItgav等が挙げられるが、これらに限定されない。ヒトITGAVのmRNA配列は、GenBank:NM_002210.5(配列番号1)、アミノ酸配列は、GenPept:NP_002201.2に記載されている。本発明における「ITGAV」は、これらの配列に限定されるものではなく、インテグリンα-Vの機能が保持される限り、アミノ酸配列やmRNA配列におけるの変異数や変異部位に制限はないものとする。
【0018】
本発明の「核酸」としては、
(a)配列番号1の2291位~2311位、657位~687位、768位~809位、927位~954位、1094位~1141位、1310位~1332位、1575位~1600位、1710位~1743位、1897位~1919位、1989位~2021位、2089位~2109位、2145位~2185位、2376位~2404位、2483位~2509位、2748位~2782位又は3313位~3346位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、
インビトロで5nMの濃度で、ヒト肝癌由来細胞におけるITGAVの発現を87.5%以上抑制することを特徴とする核酸
が挙げられる。該核酸は、該オリゴヌクレオチドに相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。上記標的領域は、それぞれ、ヒトITGAV mRNAの中で特に、核酸のノックダウン活性に関連する領域である。該標的領域に「相補的な」オリゴヌクレオチドとは、実質的に相補的な配列であれば、長さやヌクレオチドの修飾や変異の有無に関わらず、本発明の核酸に含まれる。「実質的に相補的な配列」とは、上記標的領域の塩基配列の完全相補配列と少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の相同性を有する配列が挙げられる。ここで、相同性は、例えば、Altschulら(The Journal of Molecular Biology,215,403-410(1990).)の開発したアルゴリズムを使用した検索プログラムBLASTを用いることにより、スコアで類似度が示される。
【0019】
ITGAV発現抑制活性(ノックダウン活性)は、公知の方法により測定することが可能である。例えば、後述する実施例2~6記載の方法により測定することができる。
ヒト肝癌由来細胞におけるITGAVの発現抑制は公知の方法により測定することが可能である。例えば、実施例2及び3に記載の方法で測定することができる。
【0020】
特に好ましくは、以下が挙げられる。
(b)配列番号246~249、158~162、165~170、173~175、178~186、192~195、201~206、212~217、219~225、227~229、231~240、251~255、258~263、265~268及び273~279からなる群から選ばれるいずれかの塩基配列を含む、上記(a)記載の核酸;又は
(c)配列番号246~249、158~162、165~170、173~175、178~186、192~195、201~206、212~217、219~225、227~229、231~240、251~255、258~263、265~268及び273~279からなる群から選ばれるいずれかの塩基配列において、1~3の塩基が欠失、置換若しくは挿入された塩基配列を含む、上記(a)記載の核酸。該核酸は、該塩基配列に相補的な塩基配列をさらに含んでいてもよい。
【0021】
「1~3の塩基」とは、好ましくは1又は2個の塩基を意味している。また、2又は3個の塩基が変異している場合、変異の種類は同じであっても異なっていてもよく、欠失、置換及び挿入の中から選ばれる1又は2以上である。欠失、置換又は挿入によっても、標的遺伝子(ITGAV)の発現抑制作用を有する限り、本発明の核酸に包含される。
【0022】
配列番号1の2291位~2311位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号246~249のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-96、SNG-97a、SNG-98、SNG-98a等が挙げられる。
配列番号1の657位~687位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号158~162のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-12、SNG-13、SNG-13a、SNG-14、SNG-15等が挙げられる。
配列番号1の768位~809位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号165~170のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-18、SNG-19、SNG-20a、SNG-21、SNG-22、SNG-22a等が挙げられる。
配列番号1の927位~954位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号173~175のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-25~SNG-27等が挙げられる。
配列番号1の1094位~1141位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号178~186のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-30a、SNG-31a、SNG-32a、SNG-33、SNG-34a、SNG-35~SNG-38等が挙げられる。
配列番号1の1310位~1332位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号192~195のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-42a、SNG-43~SNG-45等が挙げられる。
配列番号1の1575位~1600位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号201~206のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-51a、SNG-52、SNG-53、SNG-54a、SNG-55、SNG-56等が挙げられる。
配列番号1の1710位~1743位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号212~217のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-62a、SNG-63a、SNG-64、SNG-65、SNG-66a、SNG-67等が挙げられる。
配列番号1の1897位~1919位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号219~221のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-69a、SNG-70、SNG-71等が挙げられる。
配列番号1の1989位~2021位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号222~225のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-72、SNG-73a、SNG-74、SNG-75a等が挙げられる。
配列番号1の2089位~2109位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号227~229のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-77~SNG-79等が挙げられる。
配列番号1の2145位~2185位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号231~240のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-81a、SNG-82、SNG-83a、SNG-84a、SNG-85a、SNG-86a、SNG-87a、SNG-88、SNG-89a、SNG-90a等が挙げられる。
配列番号1の2376位~2404位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号251~255のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-100、SNG-101a、SNG-102a、SNG-103a、SNG-104a等が挙げられる。
配列番号1の2483位~2509位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号258~263のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-107、SNG-108a、SNG-109、SNG-110a、SNG-111、SNG-112等が挙げられる。
配列番号1の2748位~2782位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号265~268のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-114~SNG-117等が挙げられる。
配列番号1の3313位~3346位からなる塩基配列に対して相補的な少なくとも15塩基以上の塩基配列を有する15~30ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを含む、上記(a)記載の核酸として、例えば、配列番号273~279のいずれかの塩基配列を有する核酸、具体的には、SNG-122a、SNG-123a、SNG-124a、SNG-125a、SNG-126a、SNG-127a、SNG-128等が挙げられる。
【0023】
本発明の「核酸」の他の態様としては、以下が挙げられる。
(d)配列番号146~289からなる群から選ばれるいずれかの塩基配列を含み、かつ、ITGAVの発現を抑制する核酸;又は
(e)配列番号146~289からなる群から選ばれるいずれかの塩基配列において、1~3の塩基が欠失、置換若しくは挿入された塩基配列を含み、かつ、ITGAVの発現を抑制する核酸。該核酸は、該塩基配列に相補的な塩基配列をさらに含んでいてもよい。
例えば、表1~8に記載のsiRNAが挙げられる。
【0024】
本発明の「核酸」の他の態様としては、以下が挙げられる。
(f)配列番号246、178、183~185、203~205、208、214、220、224、237、238、251、254、255、260、263、270若しくは272の塩基配列を含み、1以上の化学修飾を有するヌクレオチドを含み、かつ、ITGAVの発現を抑制する核酸;又は
(g)配列番号246、178、183~185、203~205、208、214、220、224、237、238、251、254、255、260、263、270若しくは272の塩基配列において、1~3の塩基が欠失、置換若しくは挿入された塩基配列を含み、1以上の化学修飾を有するヌクレオチドを含み、かつ、ITGAVの発現を抑制する核酸。該核酸は、該塩基配列に相補的な塩基配列をさらに含んでいてもよい。
本発明の「核酸」は、該塩基配列を含み、ヒトITGAV発現抑制活性を有する限り、長さやヌクレオチドの化学修飾の数に関わらず、本発明の核酸に含まれる。
【0025】
ヌクレオチドの化学修飾としては、当該分野で公知のヌクレオチドの修飾であれば、いずれも本発明の核酸に利用可能である。例えば、リン酸修飾、核酸塩基修飾、糖修飾が知られている。
【0026】
リン酸修飾としては、例えば、天然の核酸が有するリン酸ジエステル結合、S-オリゴ(ホスホロチオエート)、D-オリゴ(ホスホジエステル)、M-オリゴ(メチルフォスフォネイト)、ボラノホスフェート等が挙げられる。また、国際公開第2013/022966号、国際公開第2011/005761号、国際公開第2014/012081号、国際公開第2015/125845号等に記載の結合も利用可能である。リン原子を有していない結合としては、アルキル、非芳香族炭素環式基、ハロアルキル、ハロゲンで置換された非芳香族炭素環式基等から誘導される二価の置換基が挙げられる。例えば、シロキサン、スルフィド、スルホキシド、スルホン、アセチル、ギ酸アセチル、チオギ酸アセチル、メチレンギ酸アセチル、チオギ酸アセチル、アルケニル、スルファマート、メチレンイミノ、メチレンヒドラジノ、スルホナート、スルホンアミド、アミド等から誘導される二価の置換基である。オリゴヌクレオチド中、全て同じ結合でもよいし、異なる結合を含んでいてもよい。
【0027】
核酸塩基修飾としては、例えば、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-プロピニルシトシン等が挙げられる。
【0028】
糖修飾としては、糖の2´位に置換基を有するヌクレオシド及び/又は糖の4´位と2´位との間に架橋構造を有するヌクレオシドが挙げられる。
糖の2´位に置換基を有するヌクレオシドとしては、例えば、2´-O-CH-CH-O-CH(2´MOE)、LNA(Locked nucleic acid)、2´-OMe、2´-Fluoroが挙げられる。
該架橋構造として、例えば、BNA(Bridged Nucleic Acid)、AmNA(Amido-bridged nucleic acid、WO2011/052436参照)、TrNA(Triazole-Bridged Nucleic Acid、WO2014/126229参照)が挙げられる。特に好ましくは、4´-(CH)m-O-2´(mは1~4の整数)又は、4´-C(=O)-NR-2´(Rは、水素原子又はアルキルである)である。
4´-(CH)m-O-2´(mは1~4の整数)の中で、特に好ましくは4´-CH-O-2´(LNA、Locked nucleic acid)である。具体例及びその調製方法は、国際公開第98/39352号、国際公開第2003/068795号、国際公開第2005/021570号等に記載されている。
4´-C(=O)-NR-2´(Rは、水素原子又はアルキルである)の中で、特に好ましくは4´-C(=O)-NCH-2´である。具体例及びその調製方法は、国際公開第2011/052436号に記載されている。
【0029】
当該分野で公知のヌクレオチドの修飾及び修飾方法については、例えば、以下の特許文献にも開示されている。
WO98/39352、WO99/014226、WO2000/056748、WO2003/068795、WO2004/016749、WO2005/021570、WO2005/083124、WO2007/143315、WO2009/071680、WO2011/052436、WO2014/112463、WO2014/126229等。
【0030】
本発明の「核酸」が二本鎖である場合、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の3´末端にオーバーハングを含んでいてもよい。「オーバーハング」とは、一本鎖の3´末端が他の鎖の5´末端を超えて伸長している(又は逆もある)際に、二本鎖構造から突き出ているヌクレオチドを意味する。当該分野で公知のオーバーハングとして用いられるヌクレオチドであればいずれも利用可能である。例えば、1~6ヌクレオチド、1~5ヌクレオチド、1~3ヌクレオチド、2又は3ヌクレオチド(dTdT、U(2´-OMe)U(2´-OMe)、U(2´-OMe)A(2´-OMe)、A(2´-OMe)U(2´-OMe)、A(2´-OMe)A(2´-OMe)、U(2´-F)U(2´-F)等)が挙げられる。標的配列のmRNAに対して相補的であってもよいし、非相補的であってもよい。
【0031】
本発明の「核酸」としては、好ましくは、siRNA(一本鎖オリゴヌクレオチドsiRNAを含む)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA又はmiRNAが挙げられる。さらに好ましくは、siRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。特に好ましくは、上記(1)~(5)に記載の核酸であるsiRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチド、上記(7)~(9)に記載のsiRNAである。
オーバーハングや末端修飾を含まない核酸を構成する各鎖の長さは、15~30ヌクレオチドが好ましい。例えば、15~25、17~25、17~23、17~21、19~21ヌクレオチドの長さが挙げられる。
【0032】
本発明の核酸の3´末端及び/又は5´末端は、修飾基を有していてもよい。水酸基の保護基、脱塩基型(Abasic)ヌクレオチド、リン酸エステル部分(式:-O-P(=O)(OH)OHで示される基若しくは式:-O-P(=S)(OH)OHで示される基又はそれらの修飾基)等が挙げられる。
また、本発明の核酸は、上記塩基配列を有する限りにおいて、核酸中に脱塩基型(Abasic)ヌクレオチドが挿入されていてもよい。
【0033】
該塩基配列が配列番号246である上記(f)又は(g)記載の核酸として、例えば、配列番号317又は配列番号444~494に記載の配列を有する核酸、具体的には、SNG-96m、表23~26記載のsiRNA等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号178である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号291の配列を有する核酸、具体的には、SNG-30am等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号183である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号293の配列を有する核酸、具体的には、SNG-35m等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号184である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号295の配列を有する核酸、具体的には、SNG-36m等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号185である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号297の配列を有する核酸、具体的には、SNG-37m等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号203である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号299の配列を有する核酸、具体的には、SNG-53m等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号204である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号301の配列を有する核酸、具体的には、SNG-54am等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号205である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号303の配列を有する核酸、具体的には、SNG-55m等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号208である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号305の配列を有する核酸、具体的には、SNG-58m等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号214である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号307の配列を有する核酸、具体的には、SNG-64m等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号220である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号309の配列を有する核酸、具体的には、SNG-70m等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号224である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号311の配列を有する核酸、具体的には、SNG-74m等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号237である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号313の配列を有する核酸、具体的には、SNG-87am等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号238である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号315の配列を有する核酸、具体的には、SNG-88m等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号251である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号319の配列を有する核酸、具体的には、SNG-100m等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号254である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号321の配列を有する核酸、具体的には、SNG-103am等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号255である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号323の配列を有する核酸、具体的には、SNG-104am等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号260である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号325の配列を有する核酸、具体的には、SNG-109m等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号263である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号327の配列を有する核酸、具体的には、SNG-112m等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号270である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号329の配列を有する核酸、具体的には、SNG-119m等が挙げられる。
該塩基配列が配列番号272である上記(f)記載の核酸として、例えば、配列番号331の配列を有する核酸、具体的には、SNG-121m等が挙げられる。
【0034】
該塩基配列が配列番号246である上記(f)又は(g)記載の核酸の中でより好ましくは、以下が挙げられる。
アンチセンス鎖が、配列番号444~446、453、455、463~466、478、483及び492~494からなる群から選ばれるいずれかに記載のオリゴヌクレオチドであるITGAVの発現を抑制する核酸。該核酸は、該オリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。より好ましくは、siRNAである。
【0035】
より具体的には、以下が挙げられる。
A-0(配列番号444)を有する核酸。好ましくは、アンチセンス鎖がA-0であり、センス鎖がS-0(配列番号332)、S-1(配列番号333)、S-20~S-30(配列番号352~362)、S-103~S-109(配列番号435~441)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
A-1(配列番号445)を有する核酸。好ましくは、アンチセンス鎖がA-1であり、センス鎖がS-0~S-61(配列番号332~393)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
A-2(配列番号446)を有する核酸。好ましくは、アンチセンス鎖がA-2であり、センス鎖がS-0~S-33(配列番号332~365)、S-39~S-55(配列番号371~387)、S-59~S-101(配列番号391~433)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
A-9(配列番号453)を有する核酸。好ましくは、アンチセンス鎖がA-9であり、センス鎖がS-28(配列番号360)、S-49(配列番号381)、S-70~S-72(配列番号402~404)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
A-11(配列番号455)を有する核酸。好ましくは、アンチセンス鎖がA-11であり、センス鎖がS-28(配列番号360)、S-43(配列番号375)、S-51(配列番号383)、S-91(配列番号423)、S-92(配列番号424)、S-97(配列番号429)及びS-98(配列番号430)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
A-19(配列番号463)を有する核酸。好ましくは、アンチセンス鎖がA-19であり、センス鎖がS-28(配列番号360)に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNAである。
A-20(配列番号464)を有する核酸。好ましくは、アンチセンス鎖がA-20であり、センス鎖がS-28(配列番号360)、S-43(配列番号375)、S-51(配列番号383)、S-54(配列番号386)及びS-71(配列番号403)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
A-21(配列番号465)を有する核酸。好ましくは、アンチセンス鎖がA-21であり、センス鎖がS-28(配列番号360)、S-32(配列番号364)、S-51(配列番号383)、S-110(配列番号442)又はS-111(配列番号443)に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNAである。
A-22(配列番号466)を有する核酸。好ましくは、アンチセンス鎖がA-22であり、センス鎖がS-0(配列番号332)、S-28(配列番号360)、S-32(配列番号364)、S-43(配列番号375)、S-51(配列番号383)、S-74~77(配列番号406~409)、S-102(配列番号434)、S-104~111(配列番号436~443)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
A-34(配列番号478)を有する核酸。好ましくは、アンチセンス鎖がA-34であり、センス鎖がS-28(配列番号360)に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNAである。
A-39(配列番号483)を有する核酸。好ましくは、アンチセンス鎖がA-39であり、センス鎖がS-28(配列番号360)、S-43(配列番号375)、S-51(配列番号383)、S-54(配列番号386)及びS-71(配列番号403)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
A-49(配列番号492)を有する核酸。好ましくは、アンチセンス鎖がA-49であり、センス鎖がS-108(配列番号440)に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNAである。
A-50(配列番号493)を有する核酸。好ましくは、アンチセンス鎖がA-50であり、センス鎖がS-108(配列番号440)に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNAである。
A-51(配列番号494)を有する核酸。好ましくは、アンチセンス鎖がA-51であり、センス鎖がS-108(配列番号440)に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNAである。
【0036】
該塩基配列が配列番号246である上記(f)又は(g)記載の核酸の他の態様としては、以下もまた挙げられる。
S-0(配列番号332)を有する核酸。好ましくは、センス鎖がS-0であり、アンチセンス鎖がA-0~A-2(配列番号444~446)、A-22(配列番号466)、A-40~A-48(配列番号484、317、485~491)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
S-27(配列番号359)を有する核酸。好ましくは、センス鎖がS-27であり、アンチセンス鎖がA-0~A-2(配列番号444~446)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
S-28(配列番号360)を有する核酸。好ましくは、センス鎖がS-28であり、アンチセンス鎖がA-0~A-11(配列番号444~455)、A-19~A-39(配列番号463~483)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
S-30(配列番号362)を有する核酸。好ましくは、センス鎖がS-30であり、アンチセンス鎖がA-0~A-2(配列番号444~446)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
S-32(配列番号364)を有する核酸。好ましくは、センス鎖がS-32であり、アンチセンス鎖がA-1(配列番号445)、A-2(配列番号446)、A-22(配列番号466)、A-41(配列番号317)、A-42(配列番号485)及びA-49(配列番号493)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
S―43(配列番号375)を有する核酸。好ましくは、センス鎖がS-43であり、アンチセンス鎖がA-1(配列番号445)、A-2(配列番号446)、A-4(配列番号448)、A-6(配列番号450)、A-10(配列番号454)、A-11(配列番号455)、A-20(配列番号464)、A-22(配列番号466)及びA-39(配列番号483)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
S―49(配列番号381)を有する核酸。好ましくは、センス鎖がS-49であり、アンチセンス鎖がA-1(配列番号445)、A-2(配列番号446)、A-8(配列番号452)、A-9(配列番号453)、A-15~A-18(配列番号459~462)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
S―51(配列番号383)を有する核酸。好ましくは、センス鎖がS-51であり、アンチセンス鎖がA-1(配列番号445)、A-2(配列番号446)、A-4(配列番号448)、A-6(配列番号450)、A-10(配列番号454)、A-11(配列番号455)、A-20~A-25(配列番号464~469)及びA-39(配列番号483)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
S―54(配列番号386)を有する核酸。好ましくは、センス鎖がS-54であり、アンチセンス鎖がA-1(配列番号445)、A-2(配列番号446)、A-20(配列番号464)及びA-39(配列番号483)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
S―71(配列番号403)を有する核酸。好ましくは、センス鎖がS-71であり、アンチセンス鎖がA-2(配列番号446)、A-4(配列番号448)、A-6(配列番号450)、A-9(配列番号453)、A-20(配列番号464)及びA-39(配列番号483)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
S-73(配列番号405)を有する核酸。好ましくは、センス鎖がS-73であり、アンチセンス鎖がA-2(配列番号446)に記載のオリゴヌクレオチドであるsiRNAである。
S―105(配列番号437)を有する核酸。好ましくは、センス鎖がS-105であり、アンチセンス鎖がA-0(配列番号444)、A-22(配列番号466)、A-41(配列番号317)、A-43~A-48(配列番号486~491)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
S―108(配列番号440)を有する核酸。好ましくは、センス鎖がS-108であり、アンチセンス鎖がA-0(配列番号444)、A-22(配列番号466)、A-41(配列番号317)、A-42(配列番号485)、A-49~A-51(配列番号492~494)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
S-109(配列番号441)を有する核酸。好ましくは、センス鎖がS-109であり、アンチセンス鎖がA-0(配列番号444)、A-22(配列番号466)、A-41(配列番号317)及びA-42(配列番号485)からなる群から選ばれるいずれかであるsiRNAである。
S-110(配列番号442)を有する核酸。好ましくは、センス鎖がS-110であり、アンチセンス鎖がA-21(配列番号465)又はA-22(配列番号466)であるsiRNAである。
【0037】
該塩基配列が配列番号246である上記(f)又は(g)記載の核酸の他の態様として特に好ましくは、以下が挙げられる。
下記A群から選ばれるいずれかの化学構造からなるオリゴヌクレオチド又はその塩を有するsiRNA。該オリゴヌクレオチドの塩としてはナトリウム塩又はカリウム塩が挙げられる。
【0038】
A群:
【化1】

(配列番号444)、
【化2】

(配列番号445)、
【化3】

(配列番号446)、
【化4】

(配列番号453)、
【化5】

(配列番号455)、
【0039】
【化6】

(配列番号463)、
【化7】

(配列番号464)、
【化8】

(配列番号465)、
【化9】

(配列番号466)、
【化10】

(配列番号478)、
【0040】
【化11】

(配列番号483)、
【化12】

(配列番号492)、
【化13】

(配列番号493)又は
【化14】

(配列番号494)。
【0041】
下記S群から選ばれるいずれかの化学構造からなるオリゴヌクレオチド又はその塩を有するsiRNA。該オリゴヌクレオチドの塩としてはナトリウム塩又はカリウム塩が挙げられる。
【0042】
S群:
【化15】

(配列番号332)、
【化16】

(配列番号359)、
【化17】

(配列番号360)、
【化18】

(配列番号362)、
【化19】

(配列番号364)、
【0043】
【化20】

(配列番号375)、
【化21】

(配列番号381)、
【化22】

(配列番号383)、
【化23】

(配列番号386)、
【化24】

(配列番号405)、
【0044】
【化25】

(配列番号440)又は
【化26】

(配列番号442)。
【0045】
好ましくは、上記A群から選ばれるいずれかの化学構造からなるオリゴヌクレオチド又はその塩及び上記S群から選ばれるいずれかの化学構造からなるオリゴヌクレオチド又はその塩を有するsiRNAである。例えば、以下のいずれかの組み合わせからなるオリゴヌクレオチド又はその塩が挙げられる。該オリゴヌクレオチドの塩としてはナトリウム塩又はカリウム塩が挙げられる。
A-0及びS-0;A-0及びS-27;A-0及びS-28;A-0及びS-30;A-1及びS-0;A-1及びS-27;A-1及びS-28;A-1及びS-30;A-1及びS-43;A-1及びS-49;A-1及びS-51;A-2及びS-28;A-2及びS-32;A-2及びS-73;A-11及びS-28;A-19及びS-28;A-20及びS-28;A-20及びS-43;A-20及びS-51;A-20及びS-54;A-21及びS-28;A-21及びS-32;A-21及びS-110;A-22及びS-28;A-22及びS-32;A-22及びS-108;A-22及びS-110;A-39及びS-28;A-39及びS-51;A-39及びS-54;A-49及びS-108;A-50及びS-108;A-51及びS-108。
【0046】
本発明の核酸は、ITGAV発現抑制活性のみならず、医薬としての有用性を備えており、下記いずれか、あるいは全ての優れた特徴を有している。
a)肝臓の線維化及び/又は肝細胞障害を改善する。
b)CYP酵素(例えば、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4等)に対する阻害作用が弱い。
c)変異原性を有さない。
d)心血管系に影響するリスクが低い。
e)高い溶解性を示す。
f)化学的安定性が高い。
【0047】
本発明の核酸において、ヌクレオチドは修飾されていてもよい。適切な修飾を施した核酸は、無修飾の核酸と比較し、下記いずれか、あるいは全ての特徴を有している。
a)標的遺伝子との親和性が高い。
b)ヌクレアーゼに対する抵抗性が高い。
c)薬物動態が改善する。
d)組織移行性が高くなる。
e)免疫刺激性が低い。
f)高い溶解性を示す。
g)化学的安定性が高い。
h)持続的に作用を発現する。
i)αvβ1、αvβ3、αvβ5、αvβ6及びαvβ8の全てを阻害する。
よって、修飾された核酸は、無修飾の核酸と比較して、生体内で分解されにくくなり、より効率的に、持続的に標的遺伝子の発現を阻害できる。
【0048】
本発明の核酸は、適切なDDSと共に利用することができる。その結果、下記いずれか、あるいは全ての特徴を有している。
a)肝臓の線維化及び/又は肝細胞障害を改善する。
b)標的臓器へ高選択的に移行する。
c)効率的に標的細胞内へ移行し、低用量で作用を発現する。
d)良好な薬物動態を示す。
e)代謝安定性が高い。
f)変異原性を有さない。
g)心血管系に影響するリスクが低い。
h)高い溶解性を示す。
i)化学的安定性が高い。
よって、本発明の核酸は、適切なDDSと共に利用することによって、核酸単独で投与する場合と比較して、標的臓器及び標的細胞内へ効率的に移行し、より安定して標的遺伝子の発現を阻害できる。
【0049】
本発明の核酸(オーバーハングや末端修飾を含んでいる核酸も含む)の3´末端及び/又は5´末端は、公知のリガンドが付加されていてもよい。本発明の核酸の追跡を可能にするため、本発明の核酸の薬物動態又は薬力学を改善するため、本発明の核酸の安定性又は結合親和性を向上させるために、本発明の核酸の細胞内取り込みを含む細胞内動態を改善するため、あるいはそれらのすべて又はいずれかを達成させることを目的として単体又は複数種の多分子からなる輸送担体(リポソーム、脂質ナノ粒子(LNP)、ポリマー、ミセル、ウイルス粒子等)の構成成分とするため、当該分野で公知のリガンドを利用することができる。例えば、レポーター分子、脂質(脂肪酸、脂肪鎖、コレステロール、リン脂質等)、糖(N-アセチル-ガラクトサミン等)、ビタミン、ペプチド(膜透過ペプチド、細胞標的ペプチド、受容体結合ペプチド、エンドソーム脱出促進ペプチド、RGDペプチド、血中成分と親和性の高いペプチド、組織標的ペプチド等)、PEG(polyethylene glycol)、色素、蛍光分子等が挙げられる。
【0050】
上記リガンドを本発明の核酸に付加する際は、リンカーを介していてもよい。「リンカー」としては、当該分野で用いられるリンカーであれば、いずれでも利用可能である。例えば、極性型リンカー(例えば、オリゴヌクレオチドリンカー)、アルキレンリンカー、エチレングリコールリンカー、エチレンジアミンリンカー等が挙げられる。リンカーは、当該分野において公知の手法を参考にしながら合成することができる。
【0051】
リンカーとして好ましくは、オリゴヌクレオチドリンカーである。オリゴヌクレオチドリンカーの長さは、2~10塩基、2~5塩基、2塩基、3塩基、4塩基、5塩基である。例えば、dG、dGdG、dGdGdGdG、dGdGdGdGdG、dT、dTdT、dTdTdTdT、dTdTdTdTdT等が挙げられる。
【0052】
当該分野で公知のリガンド又はリンカー及びそれらの合成方法については、例えば、以下の特許文献にも開示されている。
WO2009/126933、WO2012/037254、WO2009/069313、WO2009/123185、WO2013/089283、WO2015/105083、WO2018/181428等。
【0053】
本発明の核酸(又はその修飾体)は常法によって合成することができ、例えば、市販の核酸自動合成装置(例えば、AppliedBiosystems製、(株)大日本精機製等)によって容易に合成することができる。合成法はホスホロアミダイトを用いた固相合成法、ハイドロジェンホスホネートを用いた固相合成法等がある。例えば、Tetrahedron Letters 22, 1859-1862 (1981)、WO2011/052436等に開示されている。
【0054】
本発明の核酸は、ヒトを含む動物に投与する際、生物学的に活性な代謝産物又はその残渣物を(直接的に、あるいは、間接的に)提供し得る、任意の製薬上許容される塩、エステル、若しくはかかるエステルの塩、又は任意の他の同等物を包含する。つまり、本発明の核酸のプロドラッグ及び製薬上許容される塩、該プロドラッグの製薬上許容される塩、ならびに他の生物学的同等物を包含する。
【0055】
「プロドラッグ」とは、内在性酵素又は他の化学物質の作用及び/又は状態によってその生体内又は細胞内で活性形態(即ち、薬物)に変換される、不活性形態又はより低い活性形態の誘導体である。本発明の核酸のプロドラッグは、WO93/24510、WO94/26764、WO2004/063331等に記載される方法に従って調製することができる。
【0056】
「製薬上許容される塩」とは、本発明の核酸の生理学的に及び製薬上許容される塩、即ち、該核酸の所望される生物学的な活性を保持し、そこで望まれない毒物学的効果を与えない塩のことをいう。
【0057】
製薬上許容される塩としては、例えば、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、バリウム等)、マグネシウム、遷移金属(例えば、亜鉛、鉄等)、アンモニア、有機塩基(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メグルミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン等)及びアミノ酸との塩、又は無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、臭化水素酸、リン酸、ヨウ化水素酸等)、及び有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マンデル酸、グルタル酸、リンゴ酸、安息香酸、フタル酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等)との塩が挙げられる。特にナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。これらの塩は、通常行われる方法によって形成させることができる。
【0058】
本発明は、本発明の核酸を含有する医薬組成物も包含する。本発明の医薬組成物の投与方法及び製剤は、上述の修飾する方法やリガンドを付加する方法以外に、当該分野で公知の投与方法及び製剤であれば、いずれも利用可能である。核酸の投与方法及び製剤は、例えば、以下の文献にも開示されている。
WO2008/042973、WO2009/127060、WO2011/064130、WO2011/123468、WO2011/153542、WO2013/074974、WO2013/075035、WO2013/163258、WO2013/192486等。
【0059】
本発明の医薬組成物は、局所的あるいは全身的な治療のいずれが望まれるのか、又は治療すべき領域に応じて、様々な方法により投与することができる。投与方法としては、例えば、局所的(点眼、膣内、直腸内、鼻腔内、経皮を含む)、経口的、又は、非経口的であってもよい。非経口的投与としては、静脈内注射若しくは点滴、皮下、腹腔内若しくは筋肉内注入、吸引若しくは吸入による肺投与、硬膜下腔内投与、脳室内投与等が挙げられる。
【0060】
本発明の医薬組成物を局所投与する場合、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴下剤、坐剤、噴霧剤、液剤、散剤等の製剤を用いることができる。
経口投与用組成物としては、散剤、顆粒剤、水若しくは非水性媒体に溶解させた懸濁液又は溶液、カプセル、粉末剤、錠剤等が挙げられる。
非経口、硬膜下腔、又は、脳室内投与用組成物としては、バッファー、希釈剤及びその他の適当な添加剤を含む無菌水溶液等が挙げられる。
【0061】
本発明の医薬組成物は、本発明の核酸の有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤等の各種医薬用添加剤を必要に応じて混合して得ることができる。注射剤の場合には適当な担体と共に滅菌処理を行なって製剤とすればよい。
【0062】
賦形剤としては乳糖、白糖、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム又は結晶セルロース等が挙げられる。結合剤としてはメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン又はポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤としてはカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末又はラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。滑沢剤としてはタルク、ステアリン酸マグネシウム又はマクロゴール等が挙げられる。坐剤の基剤としてはカカオ脂、マクロゴール又はメチルセルロース等を用いることができる。また、液剤又は乳濁性、懸濁性の注射剤として調製する場合には通常使用されている溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、保存剤、等張剤等を適宜添加しても良い。経口投与の場合には嬌味剤、芳香剤等を加えても良い。
【0063】
投与は、治療される病態の重度と反応度に依存し、治療コースは、数日から数ヶ月、あるいは、治癒が実現されるまで、又は、病状の減退が達成されるまで持続する。最適投与スケジュールは、生体における薬剤蓄積の測定から計算が可能である。当該分野の当業者であれば、最適用量、投与法、及び、繰り返し頻度を定めることができる。最適用量は、個々の核酸の相対的効力に応じて変動するが、一般に、インビトロ及びインビボの動物実験におけるIC50又はEC50に基づいて計算することが可能である。例えば、核酸の分子量(核酸配列及び化学構造から導かれる)と、例えば、IC50のような効果的用量(実験的に導かれる)が与えられたならば、mg/kgで表される用量が通例に従って計算される。例えば、1日に0.001~10mg/kgが挙げられる。注射剤の場合、一定期間、例えば、5~180分間にわたって投与することができる。また1日1回~数回投与することもでき、1日~数日の間隔をおいて(例えば、2週間ごとに)投与することもできる。
【0064】
本発明の医薬組成物は、ITGAV発現抑制活性を有するため、ITGAVが関連する疾患の予防又は治療のために用いることができる。
ITGAVが関連する疾患としては、線維化関連疾患、例えば、皮膚、肺、心臓、肝臓、腎臓等の線維症が挙げられる。具体的には、肺線維症、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、心房線維症、心内膜線維症、過去の心筋梗塞の結果として生じる損傷、拡張機能障害、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、原発性巣状糸球体硬化症、原発性分節性糸球体硬化症、糖尿病性腎症原発性硬化性胆管炎、骨髄線維症等が挙げられる。
【実施例0065】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0066】
実施例1
1)オリゴヌクレオチドの合成
本明細書の実施例に利用したオリゴヌクレオチドはnS-8-I(大日本精機)、nS-8-II(大日本精機)を用いて、ホスホロアミダイト法により合成した。モノマーアミダイトは0.1Mアセトニトリル溶液に調製した。カップリング時間は32秒~10分間とし、1つのモノマーの縮合に8~10当量のアミダイト体を用いた。PO酸化には0.02M Oxidizer(Sigma-Aldrich)を使用し、PS酸化には50mM DDTT[(ジメチルアミノーメチリデン)アミノ-3H-1,2,4ージチアゾリンー3ーチオン)]のアセトニトリル/3-ピコリン=1/4(v/v)、アセトニトリル/ピリジン=1/4(v/v)溶液を用いた。活性化剤はETT activator(0.25M アセトニトリル溶液)(Sigma-Aldrich)、キャッピング試薬はCapA、CapB(Sigma-Aldrich)を使用した。脱トリチル化試薬はDeb(3w/v%TCA ジクロロメタン溶液)(和光純薬)を使用した。
【0067】
2)樹脂からの切り出し、塩基及びリン酸の脱保護
オリゴヌクレオチドの切り出しは28%アンモニア水/40%メチルアミン水溶液/エタノール=2/2/1(v/v/v)を用いて、室温下で22時間振とうした。1μmol合成の際は、切り出し溶液を1ml用い、5μmol又は10μmol合成の際は、切り出し液を5ml、10mlそれぞれ用いて切り出し反応を行った。樹脂を50%エタノール水で洗浄後、ろ過液を減圧下で1~5ml程度まで濃縮した。
【0068】
3)精製
オリゴヌクレオチドは逆相HPLCで精製を行った。
逆相HPLCの条件
移動相 A液:100mM TEAA (triethylammonium acetate pH7.0)水溶液
B液:100mM TEAA (triethylammonium acetate pH7.0)水溶液/アセトニトリル=1/1(v/v)
B濃度グラジエント:20-40%
(条件1)
Column:Hydrosphere C18(YMC社製)150x10mmI.D、S-5μm、12nm
流速:4.7ml/min
カラム温度:室温
検出UV:260nm
(条件2)
Column:Hydrosphere C18(YMC社製)100x20mmI.D、S-5μm、12nm
流速:15ml/min
カラム温度:室温
検出UV:260nm
【0069】
4)精製オリゴヌクレオチドの脱塩及び凍結乾燥
得られたオリゴヌクレオチドは減圧下で濃縮した後、凍結乾燥にて目的とするオリゴヌクレオチドを粉末として得た。
【0070】
5) オリゴヌクレオチドの構造確認
得られたオリゴヌクレオチドは、UPLC/MS測定による実測分子量が理論分子量と一致することで、目的の配列が合成できていることを確認した。

Xevo G2 Tof System(Waters社製)
Column:UPLC Aquity OST C18(2.1x50mm)(Waters社製)
移動相 A液:200mM 1,1,1,3,3,3ーヘキサフルオロー2ープロパノール/8mMトリエチルアミン
B液:メタノール
B濃度グラジエント:10-30%(10min)
温度:50℃
流速:0.2ml/min
【0071】
なお、N(X)(AmNA)を導入したオリゴヌクレオチドはWO2011/052436に記載の方法に従い、核酸合成及び精製を行った。
N(Y)(TrNA)を導入したオリゴヌクレオチドはWO2014/126229に記載の方法に従い、核酸合成及び精製を行った。
また、味の素バイオファーマサービス 株式会社ジーンデザインに核酸合成及び精製を委託することでオリゴヌクレオチドを得た。
【0072】
6)二本鎖オリゴヌクレオチドの調製
各オリゴヌクレオチドの水溶液を等モル量となるように混合した後、75℃下で5分間加温後、室温まで自然冷却させることで二本鎖核酸を得た。二本鎖形成の確認は、サイズ排除クロマトグラフィーにより実施した。
Column:YMC-PAC Diol-120(4.6x300mm)(YMC社製)
移動相:1xPBS溶液
流速0.5mL/min
温度:室温
【0073】
合成した二本鎖オリゴヌクレオチド(siRNA)を以下に示す。
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
【表7】
【0080】
【表8】
【0081】
さらに、合成したオリゴヌクレオチドのうち修飾を有する二本鎖オリゴヌクレオチド(修飾型siRNA)を以下に示す。
【0082】
【表9】
【0083】
【表10】
【0084】
さらに、上記SNG-96のセンス鎖又はアンチセンス鎖の誘導体を合成した。
【0085】
【表11】
【0086】
【表12】
【0087】
【表13】
【0088】
【表14】
【0089】
【表15】
【0090】
【表16】
【0091】
【表17】
【0092】
【表18】
【0093】
【表19】
【0094】
上記の表中、N(M)=2´-OMe、N(F)=2´-F、N(D)=DNA、N(R)=RNA、N(X)=AmNA、N(Y)=TrNAである。ヌクレオシド間結合に関しては、^=-P(S)OH-、無記号=―P(O)OH-である。具体的には以下の通りである。
【化27】

表中、5´末端修飾に関しては、以下の通りである。
【化28】
【0095】
社内合成した1本鎖オリゴヌクレオチドの純度分析の結果を以下に示す。なお、下記表に結果の記載が無いオリゴヌクレオチドは味の素バイオファーマサービス 株式会社ジーンデザインに核酸合成及び精製を委託することで得ている。
【0096】
【表20】
【0097】
【表21】
【0098】
【表22】
【0099】
上記で合成したSNG-96mのセンス鎖又はアンチセンス鎖及びその誘導体から以下の二本鎖オリゴヌクレオチド(修飾型siRNA)を調製した。
【0100】
【表23】
【0101】
【表24】
【0102】
【表25】
【0103】
【表26】
【0104】
実施例2 ITGAVに対するsiRNAの評価(ヒト由来肝細胞株HepG2細胞)
HepG2を、DMEM(SIGMA)+10%ウシ胎児血清(FBS)(ハイクロン)+ペニシリン(100units/mL)(サーモフィッシャーサイエンティフィック)+ストレプトマイシン(100ug/mL)(サーモフィッシャーサイエンティフィック)で培養し、37℃、95~98%湿度及び5%COで維持した。
実施例1で設計したsiRNAのアンチセンス鎖及びセンス鎖の3´末端にオーバーハングとしてdTdTを付加したsiRNA(二重鎖)をSIGMAより購入した。該siRNAを用いて、上記HepG2でのノックダウン実験を行った。siRNAはLipofectamine(登録商標)3000(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いて、リバーストランスフェクション法により細胞培養液にsiRNAの最終濃度が5nmol/Lになるように添加し、細胞に導入した。導入24時間後にCellAmp Direct RNA Prep Kit for RT-PCR(タカラバイオ)にて細胞ライセートを回収し、One Step SYBR PrimeScript PLUS RT-PCR Kit(タカラバイオ)を用いてリアルタイムPCRにより活性を評価した。内在性コントロールとしてGAPDHを使用した。
【0105】
ヒトITGAVの発現量を測定するために使用したプライマー配列は、
Fwプライマー(配列番号495);AAACTCGCCAGGTGGTATGTGA
Rvプライマー(配列番号496);CTGGTGCACACTGAAACGAAGA
を用い、
ヒトGAPDHの発現量を測定するために使用したプライマー配列は、
Fwプライマー(配列番号497);GCACCGTCAAGGCTGAGAAC
Rvプライマー(配列番号498);TGGTGAAGACGCCAGTGGA
を用いた。
【0106】
ITGAVに対するノックダウン活性は、各siRNAを導入した細胞のITGAVの発現量(Ct値)とGAPDHの発現量(Ct値)の差(ΔCt)を、未処理細胞におけるITGAVの発現量と相対比較(ΔΔCt)し、解析した。
ΔΔCt=―((GAPDHの発現量―未処理細胞のITGAVの発現量)(ΔCt)―(GAPDHの発現量―各siRNA添加時のITGAVの発現量)(ΔCt))
各siRNAにおけるΔΔCtの値が小さいものほど、siRNAがより強いITGAVの発現量の変化を誘導したことを示し、より高いノックダウン活性を示している。ΔΔCt=-3のとき87.5%のITGAVに対するノックダウン活性を示し、ΔΔCt=-4のとき93.75%のITGAVに対するノックダウン活性を示す。
【0107】
表27~表45に示されるように本発明のsiRNAは、いずれもΔΔCtが-3以下であり、ITGAVに対し87.5%以上の高いノックダウン活性を示した。この結果、本発明の核酸がITGAVの発現を強く抑制することが分かった。
【0108】
【表27】
【0109】
【表28】
【0110】
【表29】
【0111】
【表30】
【0112】
【表31】
【0113】
【表32】
【0114】
【表33】
【0115】
【表34】
【0116】
【表35】
【0117】
【表36】
【0118】
【表37】
【0119】
【表38】
【0120】
【表39】
【0121】
【表40】
【0122】
【表41】
【0123】
【表42】
【0124】
【表43】
【0125】
【表44】
【0126】
【表45】
【0127】
実施例3 ITGAVに対する修飾型siRNAの評価(ヒト由来肝細胞株HepG2細胞)
実施例1で合成した修飾型siRNAを用いて、HepG2でのノックダウン実験を行った。実施例2に記載した条件にてHepG2を培養した。修飾型siRNAはLipofectamine(登録商標)3000(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いて、フォワードトランスフェクション法により細胞培養液に修飾型siRNAの最終濃度が10nmol/Lになるように添加し、細胞に導入した。導入24時間後にCellAmp Direct RNA Prep Kit for RT-PCR(タカラバイオ)にて細胞ライセートを回収し、One Step SYBR PrimeScript PLUS RT-PCR Kit(タカラバイオ)を用いてリアルタイムPCRを行った。内在性コントロールとしてGAPDHを使用した。ヒトITGAV及びヒトGAPDHの発現量を測定するために使用したプライマー配列は実施例2と同じである。
【0128】
ITGAVに対するノックダウン活性は、各修飾型siRNAを導入した細胞のヒトITGAVの発現量(Ct値)とヒトGAPDHの発現量(Ct値)の差(ΔCt)を、未処理細胞におけるITGAVの発現量と相対比較(ΔΔCt)し、解析した。
ΔΔCt=―((GAPDHの発現量―未処理細胞のITGAVの発現量)(ΔCt)―(GAPDHの発現量―各修飾型siRNA添加時のITGAVの発現量)(ΔCt))
各修飾型siRNAにおけるΔΔCtの値が小さいものほど、修飾型siRNAがより強いITGAVの発現量の変化を誘導したことを示し、より高いノックダウン活性を示している。ΔΔCt=-3のとき87.5%のITGAVに対するノックダウン活性を示し、ΔΔCt=-4のとき93.75%のITGAVに対するノックダウン活性を示す。
【0129】
結果1:センス鎖及びアンチセンス鎖を2´-OMe-RNA又は2´-F-RNAで修飾し、アンチセンス鎖の5´末端にpo修飾を有するSNG-96m_0.0は、87.5%以上の高いノックダウン活性を示した。SNG-96m_0.0に対し、センス鎖のオーバーハングdTdTを除き、2´-OMe-RNAの数を増やし、2´-F-RNAの数を減らしたSNG-96m_0.20、SNG-96m_0.21、SNG-96m_0.22、SNG-96m_0.23、SNG-96m_0.25及びSNG-96m_0.26は、87.5%以上の高いノックダウン活性を示した。次に、5´末端から7又は9番目がRNA又はDNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_0.27、SNG-96m_0.29及びSNG-96m_0.30は、87.5%以上の高いノックダウン活性を確認した。特に、5´末端から5及び8番目が2´-F-RNAであり、7及び9番目がDNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_0.28は、91%の著しく強いノックダウン活性を示した。これらの結果から、センス鎖へのDNAの導入が本発明の核酸にとって有用であることが示唆される。結果を表46に示す。
【0130】
【表46】
【0131】
結果2:5´末端から7及び9番目がRNA又はDNA、5及び8番目が2´-F-RNAであるセンス鎖と2´-OMe-RNA及び2´-F-RNAからなるアンチセンス鎖を有し、5´末端修飾をもたないSNG-96m_1.0、SNG-96m_1.27、SNG-96m_1.29及びSNG-96m_1.30は、87.5%以上の高いノックダウン活性を示した。結果を表47に示す。
【0132】
【表47】
【0133】
結果3:2´-OMe-RNA及び2´-F-RNAからなるアンチセンス鎖と、5´末端から5番目が2´-F-RNAであるセンス鎖を有する修飾型siRNAの場合、5´末端から7、8及び9番目が、全て2´-F-RNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_1.41、全てDNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_1.47、少なくとも1か所以上がDNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_1.28、SNG-96m_1.39、SNG-96m_1.42、SNG-96m_1.43、SNG-96m_1.45及びSNG-96m_1.46は、87.5%以上の高いノックダウン活性を示した。5´末端から5番目がDNAであるセンス鎖を有する修飾型siRNAの場合、5´末端から7、8及び9番目において少なくとも1か所以上がDNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_1.48及びSNG-96m_1.49は、87.5%以上の高いノックダウン活性を示した。5´末端から1、7及び9番目がDNAで、5番目が2´-F-RNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_1.51は、91%の著しく強いノックダウン活性を示した。これらの結果から、5´末端から1、5、7、8及び9番目において少なくとも1か所以上がDNAであるセンス鎖を有することが、本発明の核酸にとって有用であることが示唆される。結果を表48に示す。
【0134】
【表48】
【0135】
結果4:14か所の2´-OMe-RNA、5か所の2´-F-RNAとオーバーハングが2つの2´-OMe-Uからなるアンチセンス鎖と、5´末端から1、5、7、9及び11番目において少なくとも2か所以上がDNAであるセンス鎖を有する修飾型siRNAの場合、5´末端から11番目がDNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_2.62は、87.5%のノックダウン活性を示し、1、5、7及び9番目において少なくとも2か所以上がDNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_2.28、SNG-96m_2.63、SNG-96m_2.64及びSNG-96m_2.65は、92.5%以上の著しく強いノックダウン活性を示した。5´末端から5及び8番目に2´-F-RNA、7及び9番目にDNAを有し、3´末端のヌクレオシド間結合において2か所のP(S)修飾されたセンス鎖を有するSNG-96m_2.66は、92.5%以上の著しく強いノックダウン活性を示した。14か所の2´-OMe-RNA、5か所の2´-F-RNAとオーバーハングが2つの2´-OMe-Aからなるアンチセンス鎖と、5´末端から7及び9番目がDNA、5及び8番目が2´-F-RNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_11.28は、93%の著しく強いノックダウン活性を示した。
14か所の2´-OMe-RNA、5か所の2´-F-RNA、オーバーハングが2つの2´-OMe-Uからなるアンチセンス鎖と、アンチセンス鎖の5´末端から16、17又は18塩基と対合するように短鎖化され、3´末端から12及び15番目が2´-F-RNA、11及び13番目がDNAであるセンス鎖を有する修飾型siRNAの場合、SNG-96m_2.67、SNG-96m_2.68及びSNG-96m_2.69は、91%以上の著しく強いノックダウン活性を示した。また、短鎖化したセンス鎖に対し、3´末端のP(S)修飾の数を変更したアンチセンス鎖を有するSNG-96m_12.67及びSNG-96m_13.68は、91%以上の著しく強いノックダウン活性を示した。
結果を表49に示す。
【0136】
【表49】
【0137】
結果5:14か所の2´-OMe-RNA、5か所の2´-F-RNA、オーバーハングが2つの2´-OMe-U、両末端2か所のP(S)修飾からなるアンチセンス鎖と、5´末端から7及び9番目がDNA、5及び8番目が2´-F-RNAであるセンス鎖を有する修飾型siRNAの場合、3´末端及びその近傍の少なくとも1塩基がAmNA又はTrNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_2.31、SNG-96m_2.32、SNG-96m_2.33、SNG-96m_2.61及びSNG-96m_2.73は、89%以上の高いノックダウン活性を示した。
5´末端から7及び9番目がDNA、5及び8番目が2´-F-RNAであるセンス鎖を有する修飾型siRNAの場合、5´及び3´末端におけるヌクレオシド間結合のP(S)修飾の数を変更したセンス鎖を有するSNG-96m_2.74、SNG-96m_2.75、SNG-96m_2.76、SNG-96m_2.77及びSNG-96m_2.78は、89%以上の高いノックダウン活性を示した。
5´末端から7及び9番目がDNA、5及び8番目が2´-F-RNAであるセンス鎖と、14か所の2´-OMe-RNA、5か所の2´-F-RNAとオーバーハングが2つの2´-OMe-Uからなるアンチセンス鎖を有する修飾型siRNAについて、5´末端及び3´末端におけるヌクレオシド間結合のP(S)修飾の数を変更したアンチセンス鎖を有するSNG-96m_21.28、SNG-96m_22.28、SNG-96m_23.28、SNG-96m_24.28及びSNG-96m_25.28は、89%以上の高いノックダウン活性を示した。特に、3´末端の1か所にP(S)修飾を有したアンチセンス鎖を有するSNG-96m_22.28は、90.5%の著しく強いノックダウン活性を示した。
5´末端から7及び9番目がDNA、5及び8番目が2´-F-RNAであるセンス鎖と、14か所の2´-OMe-RNA、5か所の2´-F-RNAとオーバーハングが2つの2´-OMe-Uからなるアンチセンス鎖を有する修飾型siRNAの場合、アンチセンス鎖の5´末端にpo修飾を有するSNG-96m_19.28及びps修飾を有するSNG-96m_20.28は、89%以上の高いノックダウン活性を示した。
結果は表50に示す。
【0138】
【表50】
【0139】
結果6:14か所の2´-OMe-RNA、5か所の2´-F-RNAとオーバーハングが2つの2´-OMe-Uからなるアンチセンス鎖と、5´末端から7、8及び9番目がDNAであるセンス鎖を有する修飾型siRNAの場合、5´末端から1及び5番目がDNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_2.70は、90%の著しく強いノックダウン活性を示した。さらに、5´末端から1及び5番目が2´-OMe-RNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_2.71及び5´末端から1番目がDNA、5番目が2´-OMe-RNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_2.72は、91.5%以上のさらに強いノックダウン活性を示した。これらの結果から、5´末端から7、8及び9番目がDNAであり、それ以外の塩基がDNA又は2´-OMe-RNAであるセンス鎖を有する修飾型siRNAが、本発明の核酸として有用であることが示唆される。
5´末端から2、6、14及び16番目がDNAであり、残りの塩基が2´-OMe-RNAであるアンチセンス鎖と、DNA及び2´-OMe-RNAからなるセンス鎖を有するSNG-96m_9.49、SNG-96m_9.70及びSNG-96m_9.71は、87%以上の高いノックダウン活性を示した。これらの結果から、DNA及び2´-OMe-RNAからなるセンス鎖及びアンチセンス鎖を有する修飾型siRNAが、本発明の核酸として有用であることが示唆される。
結果は表51に示す。
【0140】
【表51】
【0141】
結果7:14か所の2´-OMe-RNA、5か所の2´-F-RNAとオーバーハングが2つの2´-OMe-Uからなるアンチセンス鎖と、5´末端から5、7及び8番目が2´-F-RNA、9番目がDNAであるセンス鎖を有する修飾型siRNAの場合、少なくとも1か所がTrNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_2.79、SNG-96m_2.80、SNG-96m_2.81、SNG-96m_2.82、SNG-96m_2.83、SNG-96m_2.84、SNG-96m_2.85、SNG-96m_2.86、SNG-96m_2.87及びSNG-96m_2.88が、92%以上の著しく強いノックダウン活性を示した。これらの結果から、少なくとも1か所以上がTrNAであるセンス鎖を有する修飾型siRNAが、本発明の核酸として有用であることが示唆される。
14か所の2´-OMe-RNA、5か所の2´-F-RNA、オーバーハングが2つの2´-OMe-U、5´末端修飾にps修飾を有するアンチセンス鎖と、5´末端から1、7、8又は9番目の少なくとも1か所がDNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_20.43、SNG-96m_20.51及びSNG-96m_20.71は、92%以上の著しく強いノックダウン活性を示した。特に、5´末端から7又は9番目がDNA、8番目が2´-OMe-RNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_20.54は、93.7%のさらに高いノックダウン活性を示した。これらの結果から、5´末端から7又は9番目の少なくとも1か所がDNAであるセンス鎖を有する修飾型siRNAがが、本発明の核酸として有用であることが示唆される。
9か所の2´-OMe-RNA、5か所の2´-F-RNA、オーバーハングが2つの2´-OMe-U、5´末端から8~12番目がDNAからなるアンチセンス鎖と、5´末端から1、7、8及び9番目の少なくとも1か所がDNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_39.51、SNG-96m_39.54及びSNG-96m_39.71は、92.8%以上の著しく強いノックダウン活性を示した。さらに、5´末端から9番目がDNA、5、7及び8番目が2´-F-RNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_39.43は、93.7%のさらに高いノックダウン活性を示した。これらの結果から、5´末端から8、9、10、11及び12番目がDNAであるアンチセンス鎖を有する修飾型siRNAが、本発明の核酸として有用であることが示唆される。
結果は表52に示す。
【0142】
【表52】
【0143】
結果8:5´末端から7及び9番目がDNA、5及び8番目が2´-F-RNAであるセンス鎖と、2、4、6、14及び16番目が2´-F-RNAであるアンチセンス鎖を有する修飾型siRNAの場合、5´末端から5~11番目のいずれか1か所がAmNAであるアンチセンス鎖を有するSNG-96m_29.28、SNG-96m_30.28、SNG-96m_31.28、SNG-96m_32.28、SNG-96m_33.28、SNG-96m_34.28及びSNG-96m_35.28は、88%以上の高いノックダウン活性を示した。5´末端から5~11番目の少なくとも1か所がAmNAであるアンチセンス鎖を有する修飾型siRNAが、本発明の核酸として有用であることが示唆される。
14か所の2´-OMe-RNA、5か所の2´-F-RNA、オーバーハングが2つの2´-OMe-U、3´末端のヌクレオシド間結合に1か所のP(S)修飾を有するアンチセンス鎖と、5´末端から5及び8番目が2´-F-RNA、7及び9番目がDNAであるセンス鎖を有する修飾型siRNAの場合、センス鎖の両末端のヌクレオシド間結合のP(S)修飾の数が異なるSNG-96m_22.75、SNG-96m_22.76及びSNG-96m_22.77は、91%以上の著しく強いノックダウン活性を示した。特に、P(S)修飾を有さないセンス鎖を有するSNG-96m_22.74は、93%のさらに高いノックダウン活性を示した。
5´末端から7及び9番目がDNA、5及び8番目が2´-F-RNAであるセンス鎖と、2、4、6、14及び16番目が2´-F-RNAであるアンチセンス鎖を有する修飾型siRNAの場合、5´末端から8~12番目の少なくとも3か所がRNAであるアンチセンス鎖を有するSNG-96m_36.28及びSNG-96m_37.28は、91%以上の著しく強いノックダウン活性を示した。同じ位置の少なくとも3か所がDNAであるアンチセンス鎖を有するSNG-96m_38.28及びSNG-96m_39.28は、92%以上のさらに強いノックダウン活性を示した。これらの結果から、5´末端から8~12番目の少なくとも3か所がDNAであるアンチセンス鎖を有する修飾型siRNAが、本発明の核酸として有用であることが示唆される。
結果は表53に示す。
【0144】
【表53】
【0145】
結果9:14か所の2´-OMe-RNA、5か所の2´-F-RNA、オーバーハングが2つの2´-OMe-U、アンチセンス鎖の3´末端のヌクレオシド間結合として1か所以下のP(S)修飾を有するアンチセンス鎖と、5´末端から5及び8番目が2´-F-RNA、7及び9番目がDNA、18番目がAmNAであり、5´末端にヌクレオシド間結合としてP(S)修飾又は3´末端にオーバーハングを有するセンス鎖を有するSNG-96m_22.32、SNG-96m_22.108、SNG-96m_22.110、SNG-96m_22.111、SNG-96m_21.32、SNG-96m_21.110及びSNG-96m_21.111は、91.7%以上の著しく強いノックダウン活性を示した。また、上記と同じセンス鎖と、12~13か所が2´-OMe-RNA、6~7か所が2´-F-RNA、オーバーハングが2つの2´-OMe-U、3´末端に1か所のP(S)修飾を有するアンチセンス鎖を有するSNG-96m_49.108、SNG-96m_50.108及びSNG-96m_51.108は、91%以上の著しく強いノックダウン活性を示した。これらの結果から、該修飾型siRNAが、本発明の核酸として有用であることが示唆される。結果は表54に示す。
【0146】
【表54】
【0147】
結果10:14か所の2´-OMe-RNA、5か所の2´-F-RNA、オーバーハングが2つの2´-OMe-Uとその間にP(S)修飾を有するアンチセンス鎖と、5´末端から8番目が2´-F-RNA、7及び9番目がDNA、18番目がAmNAであり、8か所の2´-OMe-RNA、8か所の2´-F-RNAからなるセンス鎖を有するSNG-96m_22.105(オーバーハング有)及びSNG-96m_22.109(オーバーハング無)は、89%以上の高いノックダウン活性を示した。また、オーバーハングを有するセンス鎖に対し、9か所の2´-OMe-RNA、9か所の2´-F-RNA、オーバーハングがdTdT、ヌクレオシド間結合として4か所のP(S)修飾を有するアンチセンス鎖を有するSNG-96m_45.105は、89%の高いノックダウン活性を示した。結果は表55に示す。
【0148】
【表55】
【0149】
結果11:センス鎖及びアンチセンス鎖が2´-OMe-RNA及び2´-F-RNAからなり、オーバーハングがdTdTから構成されるSNG-96m_40.0、SNG-96m_41.0、SNG-96m_42.0、SNG-96m_43.0、SNG-96m_44.0、SNG-96m_45.0、SNG-96m_46.0、SNG-96m_47.0及びSNG-96m_48.0は、87%以上の高いノックダウン活性を示した。また、2´-OMe-RNA及び2´-F-RNAからなり、オーバーハングがdTdT、5´末端修飾としてps修飾を有するアンチセンス鎖と、5´末端から8番目が2´-F-RNA、7及び9番目がDNAであり、3´近傍の1か所がAmNAであるセンス鎖を有するSNG-96m_0.103、SNG-96m_0.104、SNG-96m_0.106、SNG-96m_0.107及びSNG-96m_0.109は、87%以上の高いノックダウン活性を示した。結果は表56に示す。
【0150】
【表56】
【0151】
結果12:5´末端から8番目が2´-F-RNA、7及び9番目がDNA、18番目がAmNAであるセンス鎖と、10か所の2´-OMe-RNA及び9か所の2´-F-RNAから構成されるアンチセンス鎖を有し、オーバーハングを2つの2´-OMe-U及び、P(S)修飾又はdTdTを付加したSNG-96m_41.109及びSNG-96m_42.109は、88%以上の高いノックダウン活性を示した。結果は表57に示す。
【0152】
【表57】
【0153】
実施例4 ITGAVに対するsiRNAの評価(ヒト由来肝星細胞株LX-2細胞)
肝星細胞は肝線維化病態において、ACTA2やCTGF遺伝子を高発現する筋線維芽細胞様の細胞に変化し、細胞外線維の産生を行うことが知られている。ヒト肝星細胞株LX-2細胞(25,000個細胞/ウェル)を抗生物質、グルタミン及びウシ胎仔血清含有DMEM培地に播種した。24時間のインキュベーション後、核酸導入試薬としてLipofectamine3000(登録商標)を用いて、本発明の核酸をLX-2細胞に導入した。核酸導入48時間後に細胞からRNAを抽出し、Real-time PCR法によりACTA2及びCTGF遺伝子発現量の解析を行った。対照群として、スクランブル配列核酸を用いて同処置を施した細胞と比較した。
【0154】
ヒト肝星細胞株LX-2細胞において、本発明の核酸の導入により、対照群と比較してACTA2及びCTGF遺伝子の発現低下を認め、細胞外線維の産生を行う筋線維芽細胞様への形質転換を抑制することを示した。
以上より、本発明の核酸は、病態に伴う星細胞の形質転換を抑制することにより、肝線維化を抑制しうることが明らかとなった。
【0155】
実施例5 ITGAVに対するsiRNAの評価(ヒト由来肝星細胞株LI90)
肝星細胞は肝線維化病態において、細胞増殖又は細胞死抑制を伴い、細胞量が増加することが知られている。ヒト肝星細胞株LI90細胞(8,000個細胞/ウェル)を抗生物質、グルタミン及びウシ胎仔血清含有DMEM培地に播種した。24時間のインキュベーション後、核酸導入試薬としてLipofectamine RNAiMAX(登録商標)を用いて、本発明の核酸をLI90細胞に導入した。核酸導入後120時間にわたりインキュベートし、Cell Titer-Blue(登録商標) Cell Viability Assay kit (Promega)を用いて生存細胞数を、Caspase-Glo(登録商標) 3/7 Assay kit (Promega)を用いてアポトーシス活性を評価した。対照群として、スクランブル配列核酸を用いて同処置を施した細胞と比較した。
【0156】
ヒト肝星細胞株LI90細胞において、本発明の核酸の導入により、対照群と比較して、生存細胞数の減少と、アポトーシス活性の亢進を認めた。
以上より、本発明の核酸は、肝線維化に関わる星細胞の生存低下及びアポトーシス亢進により、肝線維化を抑制しうることが明らかとなった。
【0157】
実施例6 ITGAVに対するsiRNAの評価(健常マウス)
C57BL/6Jマウスに対して、本発明の核酸を3mg/kgの用量にて、尾静脈注射により単回投与を実施した。核酸導入のキャリアとしては、Invivofectamine(登録商標) 3.0(Thermo Fisher Scientific)を用いた。オリゴ核酸とキャリアの複合体形成後、Float-A-Lyzer(登録商標) G2(Spectrum)を用いて透析を実施した。対照群には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を投与した。投与3日後に、イソフルラン麻酔下でマウスを屠殺し、肝臓サンプを採取した。肝臓からのRNA抽出はRNeasy Plus Mini Kit(Qiagen)を用いてメーカー推奨プロトコル通りに行った。得られたtotal RNAを用いて、One Step SYBR PrimeScript PLUS RT-PCR Kit(Takara)によりItgav mRNAの発現量を定量的PCRで解析を行った。内在性コントロールとしてRplp0を使用した。
【0158】
マウスItgavの発現量を測定するために使用したプライマー配列は、
Fwプライマー(配列番号499);CGTGCACCAGCAGTCAGAGA
Rvプライマー(配列番号500);ACGGCGAGGTCAACCTTGTAA
を用い、
マウスRplp0の発現量を測定するために使用したプライマー配列は、
Fwプライマー(配列番号501);ATCAATGGGTACAAGCGCGT
Rvプライマー(配列番号502);CAGATGGATCAGCCAGGAAGG
を用いた。
【0159】
ヒトITGAV mRNAに対し設計した修飾型siRNAは、マウスの肝臓においてItgavの発現量を85%以上抑制した。マウスItgavの発現量の変化について、PBS投与群に対する発現量の変化の割合として結果を表58に示した。
【表58】
【0160】
実施例7 四塩化炭素(CCl4)誘導肝線維症モデル
C57BL/6Jマウスに対して、CCl4:オリーブ油を1:9で混合した溶液を、CCl4として1 mL/kgの用量にて、週2回の頻度で腹腔内注射を4週間継続することにより、肝線維症を誘導した。CCl4の腹腔内注射により、肝臓小葉中心部の壊死、アミノ基転移酵素(ALT)活性上昇及び肝線維症を生じる。
上記のモデルマウスに対して、本発明の核酸であるSNG-96mを1 mg/kgの用量にて、週2回の頻度で尾静脈注射により2週間の反復投与を実施した。核酸導入のキャリアとしては、Invivofectamine(登録商標) 3.0(Thermo Fisher Scientific)を用いた。対照群には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を投与し、非病態対照群にはオリーブ油(CCl4投与なし)とPBSの投与を行った。その後、マウスを屠殺し、血漿サンプルを用いてALTを測定し、肝臓サンプルについては肝線維化の指標としてコラーゲン分解物であるヒドロキシプロリン含量をLC/MSにより解析した。
【0161】
その結果、非病態対照群に対してCCl4投与群では有意にアミノ基転移酵素(ALT)の活性上昇、及び肝臓の線維化を認めた。本モデルにおいて、SNG-96m(1 mg/kg)の投与により、PBS対照群と比較して、CCl4誘導性のALT上昇を有意に抑制し(図1)、ヒドロキシプロリン量の増加を抑制した(図2)。
以上より、本発明の核酸は、CCl4肝線維化モデルにおいて、肝障害を低減するとともに、肝線維化の進展を抑制することが確認された。
【0162】
実施例8 コリン欠乏メチオニン減量高脂肪食 (CDHFD) 負荷モデル
C57BL/6Jマウスに対して、CDHFDを8週間負荷することにより、NASH様の肝線維症を誘導した。本モデルでは、アミノ基転移酵素(ALT、AST)活性上昇及び脂肪蓄積、局所炎症、肝細胞壊死及び線維症を特徴とするヒトNASHで観察される組織学的特徴と類似の変化を誘導する。
上記のモデルマウスに対して、本発明の核酸であるSNG-96mを3 mg/kgの用量にて、週2回の頻度で尾静脈注射により4週間の反復投与を実施した。核酸導入のキャリアとしては、Invivofectamine(登録商標) 3.0(Thermo Fisher Scientific)を用いた。対照群には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を投与し、非病態対照群には通常食負荷(CDHFD負荷なし)とPBSの投与を行た。その後、マウスを屠殺し、血漿サンプルを用いてALT及びASTを測定し、肝臓サンプルについては肝線維化の指標として、シリウスレッド染色による線維化面積率評価及びコラーゲン分解物であるヒドロキシプロリン含量をLC/MSにより解析した。
【0163】
その結果、非病態対照群(通常食負荷群)に対してCDHFD負荷群では有意にアミノ基転移酵素(ALT、AST)の活性上昇、及び肝臓の線維化を認めた。本モデルにおいて、SNG-96m(3 mg/kg)の投与により、PBS対照群と比較して、ALT及びASTの上昇を有意に抑制し(図3及び4)、線維化陽性面積率及びヒドロキシプロリン量の増加を抑制した(図5~6)。
以上より、本発明の核酸は、CCl4肝線維化モデルにおいて、肝障害を低減するとともに、肝線維化の進展を抑制することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明の核酸はITGAV発現抑制活性を示す。従って、本発明化合物は線維化関連疾患の予防又は治療のための医薬として非常に有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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