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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094464
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】苗運搬システムおよび苗運搬方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240703BHJP
   A01C 11/00 20060101ALI20240703BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240703BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
A01C11/00 B
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211007
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
【テーマコード(参考)】
2B043
2B060
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB20
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB20
2B043DA04
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA02
2B043EA13
2B043EA32
2B043EA37
2B043EA40
2B043EB05
2B043EB14
2B043EB15
2B043EB16
2B043EB17
2B043EB18
2B043ED03
2B043ED12
2B043EE01
2B060AB07
2B060AB10
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD17
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG10
5H301GG14
5H301GG17
5H301KK03
5H301KK04
5H301LL06
5H301LL08
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】作物の苗を効率的に運搬する。
【解決手段】苗運搬システムは、移植機が圃場内で移植する苗を、自動運転を行う運搬車に運搬させるシステムである。前記苗運搬システムは、前記運搬車の動作を制御する制御装置を備える。前記制御装置は、前記移植機の作業計画または前記移植機からの要求に従って、前記運搬車を前記苗の保管場所まで走行させ、前記保管場所において前記運搬車への前記苗の積み込みが完了した後、前記保管場所から前記圃場に向けて前記運搬車を走行させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植機が圃場内で移植する苗を、自動運転を行う運搬車に運搬させる苗運搬システムであって、
前記運搬車の動作を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記移植機の作業計画または前記移植機からの要求に従って、
前記運搬車を前記苗の保管場所まで走行させ、
前記保管場所において前記運搬車への前記苗の積み込みが完了した後、前記保管場所から前記圃場に向けて前記運搬車を走行させる、
苗運搬システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記運搬車に、前記保管場所の出入口を通過させて前記保管場所の内部に進入させ、
前記保管場所の内部において前記苗の積み込みが完了した後、前記運搬車に、前記保管場所の内部から前記保管場所の前記出入口を通過させて前記圃場まで走行させる、
請求項1に記載の苗運搬システム。
【請求項3】
前記圃場および前記保管場所を含むエリアの環境地図を記憶する記憶装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記移植機の作業計画または前記移植機からの要求に従って、
前記運搬車の現在位置から前記保管場所までの第1経路と、前記保管場所から前記圃場に設定された前記苗の受け渡し場所までの第2経路とを、前記環境地図に基づいて決定し、
前記第1経路および前記第2経路に沿って前記運搬車を走行させる、
請求項2に記載の苗運搬システム。
【請求項4】
前記環境地図は、前記保管場所の出入口の位置情報を含み、
前記制御装置は、前記出入口の前記位置情報に基づいて、
前記運搬車の現在位置から前記出入口を通って前記保管場所の内部に至る経路を前記第1経路として決定し、
前記保管場所の内部から前記出入口を通って前記受け渡し場所に至る経路を前記第2経路として決定する、
請求項3に記載の苗運搬システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記運搬車の周囲の環境をセンシングしてセンサデータを出力するセンシング装置から取得した前記センサデータに基づいて、前記運搬車を前記保管場所の内部に進入させ、
前記保管場所の内部に配置された苗を認識し、前記苗の近傍まで前記運搬車を移動させる、
請求項1から4のいずれかに記載の苗運搬システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記運搬車を前記圃場に設定された受け渡し場所で停止させ、
前記受け渡し場所において前記苗の積み下ろしが完了した後、前記運搬車を他の圃場、または予め設定された待機場所まで走行させる、
請求項1から4のいずれかに記載の苗運搬システム。
【請求項7】
前記環境地図は、前記圃場を含む複数の圃場の位置情報を含み、
前記制御装置は、
前記複数の圃場の位置情報に基づいて、前記複数の圃場にそれぞれ設定された複数の受け渡し場所を巡回する経路を決定し、
前記保管場所において前記苗の積み込みが完了した後、前記運搬車を前記経路に沿って走行させ、
各受け渡し場所で前記運搬車を停止させ、
各受け渡し場所で前記苗の積み下ろしが完了した後、前記運搬車に前記経路に沿った走行を再開させる、
請求項3または4に記載の苗運搬システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記運搬車を含む複数の運搬車を制御し、
前記移植機を含む複数の移植機の作業計画、または前記複数の移植機のいずれかからの要求に従って、
前記複数の運搬車の各々を、前記運搬車に対応付けられた苗の保管場所まで走行させ、
前記保管場所において前記運搬車への前記苗の積み込みが完了した後、前記保管場所から、前記運搬車に対応付けられた圃場まで前記運搬車を走行させる、
請求項1から4のいずれかに記載の苗運搬システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記保管場所において前記苗の積み込みが完了した後、前記保管場所における作業者が使用する入力装置からの指令に応答して、前記運搬車に、前記保管場所から前記苗の受け渡し場所への走行を開始させる、請求項1から4のいずれかに記載の苗運搬システム。
【請求項10】
前記保管場所は、前記苗の育苗を行う育苗施設である、請求項1から4のいずれかに記載の苗運搬システム。
【請求項11】
前記運搬車と通信を行う通信装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記通信装置を介して前記運搬車に指令を送信することによって前記運搬車の走行を制御する、
請求項1から4のいずれかに記載の苗運搬システム。
【請求項12】
前記運搬車は、前記苗を、育苗箱に収納された状態で運搬し、
前記制御装置は、前記移植機への前記苗の受け渡しが行われた後、前記受け渡し場所に残された前記育苗箱を、前記運搬車または他の運搬車に回収させるために、前記運搬車または前記他の運搬車を、前記受け渡し場所に移動させる、
請求項1から4のいずれかに記載の苗運搬システム。
【請求項13】
請求項1から4のいずれかに記載の苗運搬システムを備える運搬車。
【請求項14】
移植機が圃場内で移植する苗を、自動運転を行う運搬車に運搬させる苗運搬方法であって、
前記移植機の作業計画または前記移植機からの要求に従って、
前記運搬車を前記苗の保管場所まで走行させることと、
前記保管場所において前記運搬車への前記苗の積み込みが完了した後、前記保管場所から前記圃場に向けて前記運搬車を走行させることと、
を含む苗運搬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、苗運搬システムおよび苗運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代農業として、ICT(Information and Communication Technology)およびIoT(Internet of Things)を活用したスマート農業の研究開発が進められている。圃場で使用されるトラクタ、移植機、および収穫機などの農業機械の自動化および無人化に向けた研究開発も進められている。例えば、精密な測位が可能なGNSS(Global Navigation Satellite System)などの測位システムを利用して圃場内を自動で走行しながら農作業を行う作業車両が実用化されている。
【0003】
特許文献1は、田植機または野菜移植機などの移植機に予備苗を供給する苗補給装置を開示している。当該苗補給装置は、圃場における移植機の作業経路上の苗補給地点に自動的に移動する苗運搬車を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6-33409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移植機に苗の補給を行う従来の方法では、予め十分な量の苗を圃場に用意しておく必要があった。例えば、苗の育苗施設から、運搬車を用いて十分な量の苗を予め運搬し、圃場内またはその周辺の畦または農道に苗を配置しておく必要があった。
【0006】
本開示は、移植作業で使用される苗の運搬を効率化するためのシステムおよび方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態による苗運搬システムは、移植機が圃場内で移植する苗を、自動運転を行う運搬車に運搬させるシステムである。前記システムは、前記運搬車の動作を制御する制御装置を備える。前記制御装置は、前記移植機の作業計画または前記移植機からの要求に従って、前記運搬車を前記苗の保管場所まで走行させ、前記保管場所において前記運搬車への前記苗の積み込みが完了した後、前記保管場所から前記圃場に向けて前記運搬車を走行させる。
【0008】
本開示の包括的または具体的な態様は、装置、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム、もしくはコンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体、またはこれらの任意の組み合わせによって実現され得る。コンピュータが読み取り可能な記憶媒体は、揮発性の記憶媒体を含んでいてもよいし、不揮発性の記憶媒体を含んでいてもよい。装置は、複数の装置で構成されていてもよい。装置が2つ以上の装置で構成される場合、当該2つ以上の装置は、1つの機器内に配置されてもよいし、分離した2つ以上の機器内に分かれて配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の実施形態によれば、移植作業で使用される苗の運搬を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の例示的な実施形態による農業管理システムの概要を説明するための図である。
図2】運搬車および収穫機の構成例を示すブロック図である。
図3】管理装置および端末装置の構成例を示すブロック図である。
図4】苗運搬システムの動作を説明するための模式図である。
図5】運搬車がビニールハウスの内部に進入する様子を模式的に示す図である。
図6】制御装置による運搬車の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図7】配送計画の作成の動作の例を示すフローチャートである。
図8】配送計画の一例を示す図である。
図9】運搬車による育苗箱の回収動作の一例を示す図である。
図10】回収計画の作成の動作の例を示すフローチャートである。
図11】回収計画の一例を示す図である。
図12】制御装置によって実行される自動運転時の操舵制御の動作の例を示すフローチャートである。
図13A】目標経路に沿って走行する運搬車の例を示す図である。
図13B】目標経路から右にシフトした位置にある運搬車の例を示す図である。
図13C】目標経路から左にシフトした位置にある運搬車の例を示す図である。
図13D】目標経路に対して傾斜した方向を向いている運搬車の例を示す図である。
図14】端末装置の表示装置に表示される設定画面の一例を示す図である。
図15】管理装置によって作成される作業計画の例を示す図である。
図16】移植機の一例である田植機の構成例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略することがある。例えば、既によく知られた事項の詳細な説明および実質的に同一の構成に関する重複する説明を省略することがある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似の機能を有する構成要素については、同一の参照符号を付している。
【0012】
以下の実施形態は例示であり、本開示の技術は以下の実施形態に限定されない。以下の実施形態の内容はあくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。また、技術的に矛盾が生じない限りにおいて、一の態様と他の態様とを組み合わせることが可能である。
【0013】
本明細書において、「自動運転」は、運転者による手動操作によらず、制御装置の働きによって農業機械または運搬車などの移動体の移動を制御することを意味する。車両型の移動体が自動運転によって走行することを「自動走行」と称する。制御装置は、車両の移動に必要な操舵、移動速度の調整、移動の開始および停止の少なくとも1つを制御し得る。自動運転による移動には、移動体が所定の経路に沿って目的地に向かう移動のみならず、追尾目標に追従する移動も含まれ得る。自動運転を行う移動体は、部分的にユーザの指示に基づいて移動してもよい。また、自動運転を行う移動体は、自動運転モードに加えて、運転者の手動操作によって移動する手動運転モードで動作してもよい。手動によらず、制御装置の働きによって移動体の操舵を行うことを「自動操舵」と称する。制御装置の一部または全部が移動体の外部にあってもよい。移動体の外部にある制御装置と移動体との間では、制御信号、コマンド、またはデータなどの通信が行われ得る。自動運転を行う移動体は、人が移動の制御に関与することなく、周囲の環境をセンシングしながら自律的に移動してもよい。自律的な移動が可能な移動体は、無人で圃場内または圃場外(例えば道路)を走行することができる。自律移動中に、障害物の検出および障害物の回避動作を行ってもよい。
【0014】
[1.構成]
図1は、本開示の例示的な実施形態による農業管理システム1の概要を説明するための図である。図1に示す農業管理システム1は、移植機100と、運搬車200と、端末装置400と、管理装置600とを備える。
【0015】
端末装置400は、移植機100のユーザが使用するコンピュータである。管理装置600は、農業管理システム1を運営する事業者が管理するコンピュータである。移植機100、運搬車200、端末装置400、および管理装置600は、ネットワーク80を介して互いに通信することができる。図1には1台の移植機100および1台の運搬車200が例示されているが、農業管理システム1は、複数の移植機100および/または複数の運搬車200を含んでいてもよい。
【0016】
本実施形態における移植機100は、圃場で作物の苗の移植作業を行う作業車両である。移植機100は、例えば水田で稲の苗を移植する田植機、または畑で野菜の苗を移植する野菜移植機であり得る。移植機100は、移植作業を行いながら走行することが可能である。移植機100は、自動運転または手動運転で走行する。
【0017】
本実施形態における運搬車200は、移植機100が移植作業で消費する作物の苗を運搬する車両である。運搬車200は、苗を乗せる荷台または容器を有する。運搬車200は、例えばトラック(ローリー)、バン、運搬ロボット(ローバー)、苗載台を連結したトラクタ等の、苗の運搬に適した車両であり得る。
【0018】
運搬車200は、自動運転機能を備える。すなわち、運搬車200は、手動によらず、制御装置の働きによって走行することができる。本実施形態における制御装置は、運搬車200の内部に設けられ、運搬車200の速度および操舵の両方を制御することができる。運搬車200は、圃場内に限らず、圃場外(例えば道路)を自動走行することができる。
【0019】
運搬車200は、GNSS受信機およびLiDARセンサなどの、測位あるいは自己位置推定のために利用される装置を備える。運搬車200の制御装置は、運搬車200の位置と、目標経路の情報とに基づいて、運搬車200を自動で走行させる。運搬車200は、圃場外の道(例えば、農道または一般道)を目標経路に沿って自動で走行することができる。運搬車200は、カメラ、障害物センサおよびLiDARセンサなどのセンシング装置から出力されるセンサデータを活用しながら、道に沿って自動走行を行う。
【0020】
管理装置600は、移植機100による農作業を管理するコンピュータである。管理装置600は、例えば圃場に関する情報をクラウド上で一元管理し、クラウド上のデータを活用して農業を支援するサーバコンピュータであり得る。管理装置600は、例えば、ユーザが端末装置400を用いて入力した情報に基づいて、移植機100の作業計画を生成する。管理装置600は、さらに、運搬車200が苗の運搬のために辿る目標経路を生成するように構成され得る。管理装置600は、生成した作業計画および目標経路のデータを、運搬車200に送信する。運搬車200は、それらのデータに基づいて、苗の運搬を自動で行う。
【0021】
端末装置400は、移植機100および運搬車200から離れた場所にいるユーザ(例えば営農管理者)が使用するコンピュータである。図1に示す端末装置400はラップトップコンピュータであるが、これに限定されない。端末装置400は、デスクトップPC(Personal Computer)などの据え置き型のコンピュータであってもよいし、スマートフォンまたはタブレットコンピュータなどのモバイル端末でもよい。端末装置400は、移植機100の作業計画(例えば移植作業のスケジュール)を作成するために必要な情報をユーザが入力するための設定画面をディスプレイに表示する。ユーザが設定画面上で必要な情報を入力し送信の操作を行うと、端末装置400は、入力された情報を管理装置600に送信する。管理装置600は、その情報に基づいて作業計画を作成する。移植機100が自動運転を行う場合、端末装置400は、移植機100の圃場内での走行経路を設定したり、移植機100を遠隔で監視したりするために使用されてもよい。
【0022】
図2は、運搬車200および移植機100の構成例を示すブロック図である。運搬車200は、ネットワーク80を介して、移植機100および管理装置600と通信することができる。
【0023】
図2に例示する運搬車200は、GNSSユニット220、LiDARセンサ225、カメラ226、障害物センサ227、駆動装置240、センサ群250、制御装置260、通信装置290を備える。これらの構成要素は、バスを介して相互に通信可能に接続される。
【0024】
GNSSユニット220は、GNSS受信機221、RTK受信機222、完成計測装置(IMU)223、処理回路224を備える。センサ群250は、運搬車200の各種状態を検出する。センサ群250は、ステアリングホイールセンサ251、回転センサ252、切れ角センサ253を含む。制御装置260は、プロセッサ261、RAM(Random Access Memory)262、ROM(Read Only Memory)263、記憶装置264、電子制御ユニット(ECU)265および266を備える。図2には、運搬車200による自動運転の動作との関連性が相対的に高い構成要素が示されており、それ以外の構成要素の図示は省略されている。
【0025】
GNSSユニット220が備えるGNSS受信機221は、複数のGNSS衛星から送信される衛星信号を受信し、衛星信号に基づいてGNSSデータを生成する。GNSSは、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System、例えばみちびき)、GLONASS、Galileo、およびBeiDouなどの衛星測位システムの総称である。GNSSデータは、例えばNMEA-0183フォーマットなどの所定のフォーマットで生成される。GNSSデータは、例えば、衛星信号が受信されたそれぞれの衛星の識別番号、仰角、方位角、および受信強度を示す値を含み得る。
【0026】
図2に例示するGNSSユニット220は、RTK(Real Time Kinematic)-GNSSを利用して運搬車200の測位を行う。RTK-GNSSによる測位では、複数のGNSS衛星から送信される衛星信号に加えて、基準局から送信される補正信号が利用される。基準局は、運搬車200が自動走行を行う圃場周辺の道付近(例えば、運搬車200から10km以内の位置)に設置され得る。基準局は、複数のGNSS衛星から受信した衛星信号に基づいて、例えばRTCMフォーマットの補正信号を生成し、GNSSユニット220に送信する。RTK受信機222は、アンテナおよびモデムを含み、基準局から送信される補正信号を受信する。GNSSユニット220の処理回路224は、補正信号に基づき、GNSS受信機221による測位結果を補正する。RTK-GNSSを用いることにより、例えば誤差数cmの精度で測位を行うことが可能である。緯度、経度、および高度の情報を含む位置データが、RTK-GNSSによる高精度の測位によって取得される。GNSSユニット120は、例えば1秒間に1回から10回程度の頻度で、運搬車200の位置を計算することができる。
【0027】
なお、測位方法はRTK-GNSSに限らず、必要な精度の位置データが得られる任意の測位方法(干渉測位法または相対測位法など)を用いることができる。例えば、VRS(Virtual Reference Station)またはDGPS(Differential Global Positioning System)を利用した測位を行ってもよい。基準局から送信される補正信号を用いなくても必要な精度の位置データが得られる場合は、補正信号を用いずに位置データを生成してもよい。その場合、GNSSユニット220は、RTK受信機222を備えていなくてもよい。
【0028】
RTK受信機222によらず、他の方法で運搬車200の位置を推定してもよい。例えば、LiDARセンサ225および/またはカメラ226などのセンシング装置から出力されたセンサデータと、記憶装置264に記憶された高精度の環境地図とのマッチングによって、運搬車200の位置を推定してもよい。
【0029】
IMU223は、3軸加速度センサおよび3軸ジャイロスコープを備え得る。IMU223は、3軸地磁気センサなどの方位センサを備えていてもよい。IMU223は、モーションセンサとして機能し、運搬車200の加速度、速度、変位、および姿勢などの諸量を示す信号を出力することができる。処理回路224は、衛星信号および補正信号に加えて、IMU223から出力された信号に基づいて、運搬車200の位置および向きをより高い精度で推定することができる。IMU223から出力された信号は、衛星信号および補正信号に基づいて計算される位置の補正または補完に用いられ得る。IMU223は、GNSS受信機221よりも高い頻度で信号を出力する。その高頻度の信号を利用して、処理回路224は、運搬車200の位置および向きをより高い頻度(例えば、10Hz以上)で計測することができる。IMU223に代えて、3軸加速度センサおよび3軸ジャイロスコープを別々に設けてもよい。IMU223は、GNSSユニット220とは別の装置として設けられていてもよい。
【0030】
カメラ226は、運搬車200の周辺の環境を撮影する撮像装置である。カメラ226は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサを備える。カメラ226は、他にも、一つ以上のレンズを含む光学系、および信号処理回路を備え得る。カメラ226は、運搬車200の走行中、運搬車200の周辺の環境を撮影し、画像(例えば動画)のデータを生成する。カメラ226は、例えば、3(fps)以上のフレームレートで動画を撮影することができる。カメラ226によって生成された画像は、自己位置推定または障害物の検出に利用され得る。複数のカメラ226が運搬車200の異なる位置に設けられていてもよいし、単数のカメラが設けられていてもよい。可視光画像を生成する可視カメラと、赤外線画像を生成する赤外カメラとが別々に設けられていてもよい。可視カメラと赤外カメラの両方が監視用の画像を生成するカメラとして設けられていてもよい。赤外カメラは、夜間において障害物の検出にも用いられ得る。
【0031】
障害物センサ227は、運搬車200の周辺に存在する物体を検出する。障害物センサ227は、例えばレーザスキャナまたは超音波ソナーを含み得る。複数の障害物センサ227が運搬車200の異なる位置に設けられていてもよい。例えば、複数のレーザスキャナと、複数の超音波ソナーとが、運搬車200の異なる位置に配置されていてもよい。障害物センサ227を複数個備えることにより、運搬車200の周辺の障害物の監視における死角を減らすことができる。
【0032】
ステアリングホイールセンサ251は、運搬車200のステアリングホイールの回転角を計測する。切れ角センサ253は、操舵輪である前輪202Fの切れ角を計測する。ステアリングホイールセンサ251および切れ角センサ253による検出値は、制御装置260による操舵制御に利用される。
【0033】
回転センサ252は、車輪202に接続された車軸の回転速度、すなわち単位時間あたりの回転数を計測する。回転センサ252は、例えば磁気抵抗素子(MR)、ホール素子、または電磁ピックアップを利用したセンサであり得る。回転センサ252は、例えば、車軸の1分あたりの回転数(単位:rpm)を示す数値を出力する。回転センサ252は、例えば運搬車200の速度を計測するために使用される。
【0034】
駆動装置240は、原動機211、変速装置212等の運搬車200の走行のための駆動に必要な各種の装置を含む。原動機211は、例えば内燃機関を備え得る。駆動装置240は、内燃機関に代えて、あるいは内燃機関とともに、トラクション用の電動モータを備えていてもよい。
【0035】
プロセッサ261は、例えば中央演算処理装置(CPU)を含む半導体集積回路であり得る。プロセッサ261は、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラによって実現され得る。あるいは、プロセッサ261は、CPUを搭載したFPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ASSP(Application Specific Standard Product)、または、これら回路の中から選択される二つ以上の回路の組み合わせによっても実現され得る。プロセッサ261は、ROM263に格納された、少なくとも一つの処理を実行するための命令群を記述したコンピュータプログラムを逐次実行し、所望の処理を実現する。プロセッサ261は、GNSSユニット220、センサ群250、LiDARセンサ225、カメラ226、障害物センサ227、通信装置290、ECU265、266などの動作を制御し、必要な演算を実行する制御回路である。
【0036】
ROM263は、例えば、書き込み可能なメモリ(例えばPROM)、書き換え可能なメモリ(例えばフラッシュメモリ)、または読み出し専用のメモリである。ROM263は、プロセッサ261の動作を制御するプログラムを記憶する。ROM263は、単一の記憶媒体である必要はなく、複数の記憶媒体の集合体であってもよい。複数の記憶媒体の集合体の一部は、取り外し可能なメモリであってもよい。
【0037】
RAM262は、ROM263に格納された制御プログラムをブート時に一旦展開するための作業領域を提供する。RAM262は、単一の記憶媒体である必要はなく、複数の記憶媒体の集合体であってもよい。
【0038】
記憶装置264は、フラッシュメモリまたは磁気ディスクなどの一つ以上の記憶媒体を含む。記憶装置264は、GNSSユニット220、LiDARセンサ225、カメラ226、障害物センサ227、センサ群250、および制御装置260が生成する各種のデータを記憶する。記憶装置264が記憶するデータには、運搬車200が走行する環境内の地図データ(環境地図)、および自動運転のための目標経路のデータが含まれ得る。環境地図は、移植機100が移植作業を行う1つ以上の圃場、移植作業で使用される苗を保管する1つ以上の保管場所(例えば育苗施設)、およびその周辺の道の情報を含む。環境地図および目標経路は、管理装置600のプロセッサによって生成され得る。なお、制御装置260が、環境地図および目標経路を生成または編集する機能を備えていてもよい。制御装置260は、管理装置600から取得した環境地図および目標経路を、運搬車200の走行環境に応じて編集する機能を備えていてもよい。記憶装置264は、通信装置290が管理装置600から受信した作業計画のデータも記憶する。
【0039】
記憶装置264は、プロセッサ261、ECU265、266に、後述する各種の動作を実行させるコンピュータプログラムも記憶する。そのようなコンピュータプログラムは、記憶媒体(例えば半導体メモリまたは光ディスク等)または電気通信回線(例えばインターネット)を介して運搬車200に提供され得る。そのようなコンピュータプログラムが、商用ソフトウェアとして販売されてもよい。
【0040】
制御装置260は、ECU265、266を含む。ECU265は、駆動装置240に含まれる原動機、変速装置、操舵装置等を制御することによって運搬車200の走行を制御する。
【0041】
ECU265は、GNSSユニット220、カメラ226、障害物センサ227、LiDARセンサ225、センサ群250、およびプロセッサ261から出力されたデータに基づいて、自動運転を実現するための演算および制御を行う。例えば、ECU265は、GNSSユニット220、カメラ226、およびLiDARセンサ225の少なくとも1つから出力されたデータに基づいて、運搬車200の位置を特定する。ECU265は、GNSSユニット220から出力されたデータのみに基づいて運搬車200の位置を決定してもよいし、カメラ226および/またはLiDARセンサ225が取得したデータに基づいて運搬車200の位置を推定または補正してもよい。カメラ226および/またはLiDARセンサ225が取得したデータを利用することにより、測位の精度をさらに高めることができる。例えば、ECU265は、LiDARセンサ225および/またはカメラ226から出力されるデータと、環境地図とのマッチングにより、運搬車200の位置を推定してもよい。自動運転中、ECU265は、推定された運搬車200の位置に基づいて、目標経路に沿って運搬車200が走行するために必要な演算を行う。
【0042】
ECU266は、記憶装置264に格納された作業計画に基づいて運搬車200の移動先を決定し、運搬車200の移動の開始地点から目的地点までの目標経路を決定し得る。ECU266は、LiDARセンサ225、カメラ226、障害物センサ227から出力されたデータに基づいて、運搬車200の周辺に位置する障害物を検出し、障害物を回避するように局所的な経路を設定する処理を行ってもよい。
【0043】
これらECU265、266の働きにより、制御装置260は、自動運転を実現する。自動運転時において、制御装置260は、計測または推定された運搬車200の位置と、目標経路とに基づいて、駆動装置240を制御する。これにより、制御装置260は、運搬車200を目標経路に沿って走行させることができる。
【0044】
制御装置260に含まれる複数のECUは、例えばCANなどのビークルバス規格に従って、相互に通信することができる。CANに代えて、車載イーサネット(登録商標)などの、より高速の通信方式が用いられてもよい。図2において、ECU265、266のそれぞれは、個別のブロックとして示されているが、これらのそれぞれの機能が、複数のECUによって実現されていてもよい。ECU265、266の少なくとも一部の機能を統合した車載コンピュータが設けられていてもよい。制御装置260は、ECU265、266以外のECUを備えていてもよく、機能に応じて任意の個数のECUが設けられ得る。各ECUは、一つ以上のプロセッサを含む処理回路を備える。プロセッサ261は、制御装置260が含むECUのいずれかと統合されていてもよい。
【0045】
通信装置290は、移植機100、端末装置400、および管理装置600と通信を行う回路を含む装置である。通信装置290は、移植機100の通信装置190との間で無線通信を行う回路を含む。これにより、移植機100に所望の動作を実行させたり、移植機100から情報を取得したりすることができる。通信装置290は、さらに、ネットワーク80を介した信号の送受信を、端末装置400および管理装置600のそれぞれの通信装置との間で実行するためのアンテナおよび通信回路を含み得る。通信装置290は、運搬車200の近くにいる監視者が使用する携帯端末と通信する機能を備えていてもよい。そのような携帯端末との間では、Wi-Fi(登録商標)、3G、4Gもしくは5Gなどのセルラー移動体通信、またはBluetooth(登録商標)などの、任意の無線通信規格に準拠した通信が行われ得る。
【0046】
図2には、移植機100の概略的な構成も示されている。移植機100は、ネットワーク80を介して、端末装置400および管理装置600と通信することができる。移植機100と運搬車200とは、ネットワーク80を介して通信を行ってもよいし、ネットワーク80を介さずに直接通信を行ってもよい。
【0047】
移植機100は、通信装置190と、制御装置160と、駆動装置140とを備えている。通信装置190は、運搬車200、管理装置600、および端末装置400と通信を行う。制御装置160は、移植機100の動作を制御する。駆動装置140は、原動機および変速装置等の、運搬車200の走行のための駆動に必要な各種の装置を含む。通信装置190、制御装置160、駆動装置140は、それぞれ、運搬車200の通信装置290、制御装置160、駆動装置240と同様の構成を備え得る。なお、移植機100は、自動運転の機能を備えていなくてもよい。
【0048】
次に、図3を参照しながら、管理装置600および端末装置400の構成を説明する。図3は、管理装置600および端末装置400のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【0049】
管理装置600は、記憶装置650と、プロセッサ660と、ROM670と、RAM680と、通信装置690とを備える。これらの構成要素は、バスを介して相互に通信可能に接続される。管理装置600は、移植機100などの農業機械が実行する圃場における農作業のスケジュール管理を行い、管理するデータを活用して農業を支援するクラウドサーバとして機能し得る。ユーザは、端末装置400を用いて作業計画の作成に必要な情報を入力し、その情報を、ネットワーク80を介して管理装置600にアップロードすることが可能である。管理装置600は、その情報に基づき、農作業のスケジュール、すなわち作業計画を作成することができる。
【0050】
通信装置690は、ネットワーク80を介して移植機100、運搬車200、端末装置400と通信するための通信モジュールである。通信装置690は、例えば、IEEE1394(登録商標)またはイーサネット(登録商標)などの通信規格に準拠した有線通信を行うことができる。通信装置690は、Bluetooth(登録商標)規格もしくはWi-Fi規格に準拠した無線通信、または、3G、4Gもしくは5Gなどのセルラー移動体通信を行ってもよい。
【0051】
プロセッサ660は、例えば中央演算処理装置(CPU)を含む半導体集積回路であり得る。ROM670は、例えば、書き込み可能なメモリ(例えばPROM)、書き換え可能なメモリ(例えばフラッシュメモリ)、または読み出し専用のメモリである。RAM680は、ROM670に格納された制御プログラムをブート時に一旦展開するための作業領域を提供する。プロセッサ660、ROM670、RAM680の構成の詳細は、プロセッサ161、ROM163、RAM162と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0052】
記憶装置650は、主としてデータベースのストレージとして機能する。記憶装置650は、例えば、磁気記憶装置または半導体記憶装置であり得る。記憶装置650は、管理装置600とは独立した装置であってもよい。例えば、記憶装置650は、管理装置600にネットワーク80を介して接続される記憶装置、例えばクラウドストレージであってもよい。
【0053】
端末装置400は、入力装置420と、表示装置430と、記憶装置450と、プロセッサ460と、ROM470と、RAM480と、通信装置490とを備える。これらの構成要素は、バスを介して相互に通信可能に接続される。入力装置420は、ユーザからの指示をデータに変換してコンピュータに入力するための装置である。入力装置420は、例えば、キーボード、マウス、またはタッチパネルであり得る。表示装置430は、例えば液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり得る。プロセッサ460、ROM470、RAM480、記憶装置450、および通信装置490のそれぞれに関する説明は、運搬車200および管理装置600のハードウェア構成例において記載したとおりであり、それらの説明を省略する。
【0054】
[2.動作]
[2-1.苗運搬システムの動作]
次に、本実施形態における苗運搬システムの動作を説明する。
【0055】
本実施形態における苗運搬システムは、移植機100が圃場内で移植する苗を、自動運転を行う運搬車200に運搬させるシステムである。苗運搬システムは、運搬車200の動作を制御する制御装置260を備える。制御装置260は、移植機100の作業計画または移植機100からの要求に従って、運搬車200を苗の保管場所まで走行させる制御を実行する。苗の保管場所において、運搬車200への苗の積み込みが行われる。苗の積み込みが完了した後、制御装置260は、保管場所から圃場に向けて運搬車200を走行させる。これにより、人が運搬車200を運転することなく、運搬車200を苗の保管場所まで移動させ、苗の積み込み後、圃場の付近まで運搬車200を移動させることができる。結果として、移植機100への苗の補充のための運搬作業を省力化することができる。
【0056】
本実施形態では、運搬車200に搭載された制御装置260が上記の制御を実行するが、管理装置600のプロセッサ660が上記の制御を実行する制御装置として機能してもよい。その場合、プロセッサ660は、予め作成された作業計画または移植機100からの要求に従って運搬車200に走行指令を与える。これにより、運搬車200を、苗の保管場所まで移動させ、積み込み作業の後、保管場所から圃場まで移動させることができる。
【0057】
図4は、本実施形態における苗運搬システムの動作を説明するための模式図である。図4には、複数の圃場70(圃場A~H)と、複数のビニールハウス90(ハウスA~C)と、運搬車200の待機場所98とが例示されている。ビニールハウス90は、苗の保管を行う保管場所の一例である。ビニールハウス90以外の育苗施設または他の屋内施設(例えば納屋)を苗の保管場所として利用してもよい。待機場所98は、運搬車200が運搬作業を行わないときに待機する場所である。待機場所98は、例えば納屋、車庫または駐車場などの任意の場所であり得る。
【0058】
図4には、2台の移植機100(100A、100B)と、3台の運搬車200(200A、200B、200C)とが例示されている。このように、本実施形態におけるシステムは、複数の運搬車200および複数の移植機100を含み得る。図4には、運搬車200Aの移動経路の例が実線矢印で示され、運搬車200Bの移動経路の例が破線矢印で示されている。
【0059】
各移植機100は、乗用田植機または野菜移植機などの、植物の苗を圃場に植え付けながら走行する。各移植機100は、自動運転または自動操舵の機能を備えていてもよいし、そのような機能を備えていなくてもよい。
【0060】
図4の例において、移植機100Aは、圃場Aで苗の移植作業を行っている。移植機100Bは、圃場Bで苗の移植作業を行っている。運搬車200Aは、待機場所98からハウスAに向かい、ハウスAで苗を積み込んだ後、圃場A、B、Cのそれぞれに設定された苗の受け渡し場所Pa、Pb、Pcを順に訪れ、受け渡し場所Pa、Pb、Pcで苗の積み下ろしを行った後、ハウスAに帰還する。運搬車200Bは、ハウスBで苗を積み込んだ後、圃場E、Fのそれぞれに設定された苗の受け渡し場所Pe、Pfを順に訪れ、受け渡し場所Pe、Pfで苗の積み下ろしを行った後、ハウスBに帰還する。運搬車200Cは、待機場所98で待機している。運搬車200Cは、作業計画またはいずれかの移植機100からの要求に応じて、必要なタイミングで、指定されたビニールハウス90に移動し、苗を積み込んだ後、指定された1つ以上の圃場の受け渡し場所に向かう。
【0061】
各運搬車200の制御装置260は、運搬車200が、保管場所であるビニールハウス90の出入口91を通過してビニールハウス90の内部に進入するように制御する。制御装置260はまた、ビニールハウス90において苗の積み込みが完了した後、運搬車200が、ビニールハウス90の内部から出入口91を通過して圃場70における受け渡し場所まで走行するように制御する。これにより、ビニールハウス90の内部に運搬車200を自動で移動させ、積み込み作業およびその後の運搬作業を効率化することができる。
【0062】
図5は、運搬車200がビニールハウス90の内部に進入する様子を模式的に示す図である。図5における複数の直線矢印は、ビニールハウス90内での運搬車200の経路の例を示している。図示されるように、本実施形態における運搬車200は、出入口91を通ってビニールハウス90の内部に進入し、苗92(例えば育苗箱)の近傍まで自動で移動する。苗92の運搬車200への積み込みが完了すると、運搬車200は、出入口91を通ってビニールハウス90の外に出て、指定された圃場70に向かって自動で走行する。
【0063】
運搬車200は、運搬車200の周囲の環境をセンシングしてセンサデータを出力する複数のセンシング装置(例えばカメラ226、LiDARセンサ225、および障害物センサ227)を備えている。制御装置260は、これらの少なくとも1つのセンシング装置から出力されたセンサデータに基づいて、出入口91において衝突が生じないように、運搬車200の局所的経路を生成する。制御装置260は、局所的経路に沿って運搬車200が走行するように、運搬車200の操舵制御を行う。これにより、制御装置260は、運搬車200をビニールハウス90の内部に進入させることができる。制御装置260は、さらに、カメラ226またはLiDARセンサ225等のセンシング装置から出力されたセンサデータに基づいて、ビニールハウス90の内部に配置された1つ以上の苗92を認識し、苗92の近傍まで運搬車200を移動させ、停車させるように構成され得る。
【0064】
運搬車200が停車すると、運搬車200への苗の積み込みが行われる。苗の積み込みは、例えばハウス90内の作業者によって行われ得る。積み込みは、例えばベルトコンベアを含む搬送装置を用いて行われてもよい。運搬車200が、苗の積み込みを補助する補助装置を備えていてもよい。そのような補助装置を用いることにより、運搬車200への苗の積み込みを少なくとも部分的に自動化することができる。
【0065】
運搬車200への苗の積み込みが完了すると、作業者は、例えばリモートコントローラ、スマートフォン、または運搬車200に搭載されたスイッチ等の入力装置を用いて、運搬車200に運搬開始の指令を与える。制御装置260は、当該入力装置からの指令に応答して、運搬車200に、ハウス90から苗の受け渡し場所に向かう走行を開始させる。なお、運搬車200への苗92の積み込みが自動化されている場合、制御装置260は、積み込まれた苗92の量を検出するセンサからの出力に基づいて、規定の量の苗92の積み込みが完了したことを自動で判断し、走行を開始させてもよい。
【0066】
図4に示す例では、運搬車200Aは、ハウス90(ハウスA)を出た後、複数の圃場70の周辺の農道に沿って移動し、圃場Aの周囲に設定された受け渡し場所Paに自動で向かう。受け渡し場所Paにおいて、運搬車200Aは停止し、苗の積み下ろしが行われる。苗の積み下ろしは、例えば移植機100Aの運転者または他の作業者によって行われ得る。積み下ろされた苗は、移植機100Aに積載される。苗の積み下ろしと移植機100Aへの積載は同時に行われてもよいし、苗を積み下ろして受け渡し場所Paに一旦置いた後、しばらくしてから移植機100Aに苗を積載してもよい。運搬車200Aは、苗の積み下ろしまたは苗の移植機100Aへの積載を補助する補助装置を備えていてもよい。そのような補助装置を用いることにより、運搬車200Aから移植機100Aへの苗の受け渡しを少なくとも部分的に自動化することができる。
【0067】
受け渡し場所Paにおいて苗の積み下ろしが完了すると、積み下ろし作業を行う作業者または移植機100Aの運転者が、例えばリモートコントローラ、スマートフォン、または運搬車200に搭載されたスイッチ等の入力装置を用いて、運搬車200に運搬再開の指令を与える。制御装置260は、その指令に応答して、運搬車200に、次の圃場Bの受け渡し場所Pbへの走行を開始させる。なお、運搬車200からの苗の積み下ろしまたは移植機100への苗の受け渡しが自動化されている場合、制御装置260は、苗の残量を検出するセンサからの出力に基づいて、全ての苗の積み下ろしまたは受け渡しが完了したことを自動で判断し、走行を開始させてもよい。
【0068】
苗は、単体で運搬されることもあれば、育苗箱に収納された状態で運搬されることもある。育苗箱に収納された状態で苗が運搬される場合、制御装置260は、圃場Aで使用される全ての育苗箱が積み下ろされ、受け渡し場所Paに置かれた後、すぐに次の受け渡し場所Pbに向かうように運搬車200の走行を制御してもよい。その場合、移植機100への苗の積載が完了した後、受け渡し場所Paに空の育苗箱が残されることになる。この点については、以降の受け渡し場所についても同様である。
【0069】
受け渡し場所Paを出発した運搬車200Aは、受け渡し場所Pbに向かい、そこで停止する。受け渡し場所Pbにおいても同様に、圃場Bで使用される苗の積み下ろしと苗の移植機100Bへの積載が行われる。なお、図4の例では、移植機100Bに苗が積載されるが、これは一例にすぎない。例えば、移植機100Aが圃場Aでの移植作業を終えた後、圃場Bに移動して移植作業を行う場合、受け渡し場所Pbに置かれた苗が移植機Aに載せられてもよい。
【0070】
受け渡し場所Pbにおいて苗の積み下ろしが完了すると、運搬車200Aは次の圃場Cの受け渡し場所Pcまで移動し、停止する。受け渡し場所Pcにおいても同様に、圃場Cで使用される苗の積み下ろしと苗の移植機100Bへの積載が行われ得る。移植機100Bは、例えば圃場Bでの移植作業が終わった後、圃場Cに移動して移植作業を行い、苗の残量が少なくなると、受け渡し場所Pcに向かい、苗を補充する。移植機100Bの代わりに移植機100Aが圃場A、Bでの移植作業を終えた後、圃場Cに移動して移植作業を行う場合、受け渡し場所Pcに置かれた苗が移植機Aに載せられてもよい。
【0071】
図4の例では、受け渡し場所Pcにおいて苗の積み下ろしが完了すると、運搬車200Aは、複数の圃場70の周辺の農道を通って、ハウスAに帰還する。ハウスAにおいて、再び苗の積み込みが行われ、他の圃場70への苗の運搬が行われ得る。なお、運搬車200Aは、ハウスAに帰還する代わりに、予め設定された待機場所98に移動してもよい。例えば、圃場A、B、Cへの苗の運搬が完了してからしばらくは運搬を行わない場合、運搬車200Aは、待機場所98に帰還して待機してもよい。
【0072】
図4に示す運搬車200Bについても、運搬車200Aと同様に制御される。運搬車200Bは、ハウスB内で苗の積み込みを行った後、圃場E、Fのそれぞれの受け渡し場所Pe、Pfに自動で向かい、受け渡し場所Pe、Pfで苗の積み下ろしが行われる。受け渡し場所Pe、Pfで積み下ろされた苗は、図4には示されていない他の移植機100に載せられる。
【0073】
図4の例では、各圃場70の受け渡し場所は、その圃場70の外側の畦または農道に設けられている。そのような例に限定されず、受け渡し場所は、圃場70の内部に設けられていてもよい。その場合、運搬車200は、圃場70の内部の受け渡し場所まで自動で走行するように制御される。
【0074】
上記の制御を実現するため、各運搬車200の記憶装置264は、圃場70、ビニールハウス90(保管場所)、待機場所98、およびその周辺の農道を含むエリアの環境地図を記憶する。制御装置260は、環境地図に基づいて、運搬車200の経路計画および自動運転制御を行う。経路計画はECU266によって実行され、自動運転制御はECU265によって実行される。記憶装置264は、各移植機100の作業計画も記憶する。制御装置260は、作業計画または移植機100からの要求に従い、運搬車200の現在位置から保管場所までの第1経路と、保管場所から1つ以上の苗の受け渡し場所までの第2経路とを、環境地図に基づいて決定し、第1経路および第2経路に沿って運搬車200を走行させる。図4に示す運搬車200Aを例に挙げると、第1経路は、待機場所98からハウスAに向かう経路であり、第2経路は、ハウスAから農道に沿って圃場A、B、Cのそれぞれの受け渡し場所Pa、Pb、Pcに向かう経路である。
【0075】
図6は、制御装置260による運搬車200の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【0076】
ステップS110において、制御装置260は、作業計画または移植機100からの要求に従い、苗の保管場所までの第1経路、および保管場所から受け渡し場所までの第2経路を、環境地図に基づいて生成する。例えば、制御装置260は、運搬車200の現在位置から保管場所まで、最短の時間で到達できる経路を第1経路として生成してもよい。制御装置260はまた、保管場所から受け渡し場所まで最短の時間で到達できる経路を第2経路として生成してもよい。複数の受け渡し場所まで苗が運搬される場合、制御装置260は、保管場所と複数の受け渡し場所とをつなぐ経路を第2経路として生成する。
【0077】
制御装置260は、第1経路および第2経路を、環境地図における農道などの走行可能な領域上に生成する。環境地図は、保管場所の出入口の位置情報も含み得る。制御装置260は、出入口の位置情報に基づいて、運搬車200の現在位置から出入口を通って保管場所の内部に至る経路を第1経路として決定してもよい。制御装置260はまた、保管場所の内部から出入口を通って受け渡し場所に至る経路を第2経路として決定してもよい。
【0078】
ステップS120において、制御装置260は、運搬車200を第1経路に沿って保管場所まで走行させる(ステップS120)。ステップS120における走行の開始タイミングは、例えば作業計画に含まれる移植作業のスケジュールに基づいて決定され得る。制御装置260は、移植機100に搭載された苗が完全に消費される前に受け渡し場所に苗を届けることが可能なタイミングで保管場所への走行を開始させる。走行開始のタイミングは、例えば、移植機100への苗の補充が必要になる時刻から、運搬車200が保管場所に移動して苗を積み込み、受け渡し場所まで移動するのに要する時間を差し引いた時刻よりも前に設定され得る。管理装置600が各運搬車200の配車のスケジュールを管理する場合、管理装置600が各運搬車200に走行開始のタイミングを通知してもよい。制御装置260は、運搬車200に、保管場所の出入口を通過させて保管場所の内部に進入させる。例えば、制御装置260は、運搬車200に搭載されたカメラ226などのセンシング装置から出力されたセンサデータに基づいて、保管場所の内部に配置された苗を認識し、苗の近傍まで運搬車200を移動させてもよい。保管場所の内部で、苗の積み込み作業が行われる。
【0079】
ステップS130において、制御装置260は、苗の積み込みが完了したか否かを判定する。例えば、積み込み作業の完了後、作業者が入力装置を用いて積み込み完了の操作を行うと、入力装置から走行開始の指令が制御装置260に送られる。制御装置260は、その指令を受けた場合、苗の積み込みが完了したと判定することができる。あるいは、苗の積み込みを自動化する機構を運搬車200が備えている場合、苗の積み込みの完了を検知するセンサからの信号に基づいて、苗の積み込みの完了を判定してもよい。苗の積み込みが完了したと判定すると、ステップS140に進む。
【0080】
ステップS140において、制御装置260は、運搬車200を第2経路に沿って走行させ、圃場70の受け渡し場所まで移動させる。走行中、制御装置260は、GNSSユニット220によって計測される運搬車200の位置および向きと、第2経路とのずれを最小化するように運搬車200の操舵制御を行う。これにより、制御装置260は、運搬車200を第2経路に沿って走行させ、圃場70の受け渡し場所で停止させる。受け渡し場所において、運搬車200からの苗の積み下ろし作業が行われる。
【0081】
ステップS150において、制御装置260は、苗の積み下ろしが完了したか否かを判定する。例えば、積み下ろし作業の完了後、作業者が入力装置を用いて積み下ろし完了の操作を行うと、入力装置から走行開始の指令が制御装置260に送られる。制御装置260は、その指令を受けた場合、苗の積み下ろしが完了したと判定することができる。あるいは、苗の積み下ろしを自動化する機構を運搬車200が備えている場合、苗の積み下ろしの完了を検知するセンサからの信号に基づいて、苗の積み下ろしの完了を判定してもよい。苗の積み下ろしが完了したと判定された場合、ステップS160に進む。
【0082】
ステップS160において、制御装置260は、予定された全ての圃場70への苗の運搬が完了したか否かを判定する。予定された全ての圃場70への運搬が完了している場合はステップS170に進む。まだ運搬が完了していない圃場70が残っている場合は、ステップS140に戻り、制御装置260は、運搬車200を次の圃場70の受け渡し場所に移動させる。予定された全ての圃場70への運搬が完了するまで、ステップS140からS160の動作が繰り返される。
【0083】
ステップS170において、制御装置260は、運搬車200を待機場所または保管場所に移動させる。例えば制御装置260は、作業計画に基づき、次に苗の運搬を開始するまでの時間が所定時間よりも短いと判断した場合、運搬車200を保管場所に移動させてもよい。反対に、次に苗の運搬を開始するまでの時間が所定時間以上であると判断した場合、運搬車200を待機場所に移動させてもよい。
【0084】
ステップS110からS170の動作は、繰り返し実行され得る。本実施形態における制御装置260は、環境地図に含まれる複数の圃場70の位置情報に基づいて、複数の圃場70にそれぞれ設定された複数の受け渡し場所を巡回する経路を決定する。保管場所において苗の積み込みが完了した後、制御装置260は、運搬車200を当該経路に沿って走行させ、各受け渡し場所で運搬車200を停止させる。各受け渡し場所で前記苗の積み下ろしが完了した後、制御装置260は、運搬車200に経路に沿った走行を再開させる。このような動作により、作業計画または移植機100からの要求に基づいて、適切なタイミングで複数の圃場70に苗を自動で運搬することができる。このため、苗の運搬作業を省力化し、移植作業の効率を向上させることができる。
【0085】
本実施形態では、運搬車200の制御装置260が、作業計画または移植機100からの要求に従って経路生成および運搬に関する制御を実行する。このような形態の代わりに、管理装置600が、経路生成および運搬に関する制御を実行する制御装置として機能してもよい。管理装置600は、通信装置690を介して運搬車200に指令を送信することによって運搬車200の走行を制御することができる。管理装置600は、作業計画に基づいて運搬車200の自動走行の経路を生成し、適切なタイミングで運搬車200に走行の指令を送ることにより、前述の運搬動作を実現することができる。また、管理装置600は、複数の運搬車200を制御することができる。管理装置600は、複数の移植機100の作業計画、または複数の移植機100のいずれかからの要求に従って、複数の運搬車200の各々を、当該運搬車200に対応付けられた苗の保管場所まで走行させることができる。管理装置600はまた、当該保管場所において当該運搬車200への苗の積み込みが完了した後、保管場所から、当該運搬車200に対応付けられた圃場まで運搬車200を走行させることができる。これにより、複数の運搬車200によって苗を必要な圃場にタイムリーかつ効率的に運搬することができる。
【0086】
管理装置600は、各移植機100の作業計画に基づいて、各運搬車200の配送計画を作成し、当該配送計画を各運搬車200に送信することによって各運搬車200の動作を制御してもよい。そのような制御も、作業計画に基づく制御に該当する。以下、管理装置600による配送計画の作成の動作の例を説明する。
【0087】
図7は、管理装置600が実行する配送計画の作成の動作の例を示すフローチャートである。管理装置600は、まず、予め作成された各移植機100の作業計画を参照する(ステップS310)。次に、管理装置600は、作業計画に基づいて各運搬車200の配送計画を設定する(ステップS320)。続いて、管理装置600は、配送計画を、各運搬車200に送信する(ステップS330)。
【0088】
図8は、配送計画の一例を示す図である。この例における配送計画は、配送先の圃場、配送日時、配送すべき苗または育苗箱の数量、運搬させる運搬車200、および苗の保管場所の情報を含むテーブルの形式のデータである。管理装置600は、作業計画に示された各圃場における移植作業のスケジュールに基づいて、このような配送計画を作成し、各運搬車200に送信する。管理装置600は、各運搬車200の稼働状況に基づいて、いずれの運搬車200に育苗箱の配送をさせるかを決定してもよい。
【0089】
管理装置600は、配送計画において設定したそれぞれの日の最初の配達時刻よりも所定時間だけ前に、配送計画を運搬車200に送信する。運搬車200の制御装置260は、その配送計画に従い、配送先として設定された各圃場に、設定された日時に到着するように、運搬車200の走行を制御する。なお、管理装置600は、配送計画を運搬車200に送信する代わりに、配送計画に基づく適切なタイミングで、運搬車200に配送のための走行を開始させる指令を送信してもよい。
【0090】
次に、運搬車200が育苗箱に収納された苗を運搬する場合における育苗箱の回収の動作の例を説明する。
【0091】
前述のように、運搬車200は、苗単体を運搬する場合もあれば、育苗箱に収納された状態の苗を運搬し、圃場の受け渡し場所に育苗箱ごと苗を運搬する場合もある。運搬車200が育苗箱ごと苗を運搬する場合、運搬車200は、各受け渡し場所で育苗箱を積み下ろした後、次の目的地に向かうように制御され得る。各受け渡し場所では、例えば圃場における作業者が、育苗箱から苗を取り出して移植機100に載せる作業を行う。その結果、空になった育苗箱が各受け渡し場所に残されることになる。この空の育苗箱を運搬車200に回収させることが可能である。なお、育苗箱を運搬した運搬車200と、空の育苗箱を回収する運搬車200とは、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0092】
図9は、運搬車200による育苗箱94の回収動作の一例を示す図である。図9には、運搬車200が、受け渡し場所Pa~Pfに残された空の育苗箱94を回収するために走行する経路の例が矢印で示されている。この例では、運搬車200の制御装置260または管理装置600は、待機場所98から受け渡し場所Pa~Pfを経由してビニールハウス90(ハウスA)に至る経路を生成する。制御装置260は、運搬車200がその経路に沿って走行するように制御する。運搬車200は、各受け渡し場所で停止し、育苗箱94を回収し、ビニールハウス90に空の育苗箱94を運搬する。各受け渡し場所では、例えば作業者が空の育苗箱94を運搬車200に載せる作業を行う。なお、図9の例では、運搬車200は待機場所98から出発するが、他の場所、例えばいずれかの圃場70の付近から回収のための動作を開始してもよい。また、回収された空の育苗箱94は、ビニールハウス90に限らず、他の保管場所(例えば納屋)に運搬されてもよい。
【0093】
この回収の動作は、例えば管理装置600が作成する回収計画に基づいて行われ得る。以下、管理装置600による回収計画の作成の動作の例を説明する。
【0094】
図10は、管理装置600が実行する回収計画の作成の動作の例を示すフローチャートである。管理装置600は、まず、予め作成された各移植機100の作業計画を参照する(ステップS410)。次に、管理装置600は、作業計画に基づいて回収計画を設定する(ステップS420)。続いて、管理装置600は、回収計画を、運搬車200に送信する(ステップS430)。
【0095】
図11は、回収計画の一例を示す図である。この例における回収計画は、回収先の圃場、回収日時、回収すべき育苗箱の数量、回収させる運搬車200、および帰還先である保管場所の情報を含むテーブルの形式のデータである。管理装置600は、作業計画に示された各圃場における移植作業のスケジュールに基づいて、このような回収計画を作成し、運搬車200に送信する。管理装置600は、各運搬車200の稼働状況に基づいて、いずれの運搬車200に育苗箱の回収をさせるかを決定してもよい。
【0096】
管理装置600は、回収計画において設定したそれぞれの日の最初の回収時刻よりも前に、回収計画を運搬車200に送信する。運搬車200の制御装置260は、その回収計画に従い、回収先として設定された各圃場に、設定された日時に到着するように、運搬車200の走行を制御する。なお、管理装置600は、回収計画を運搬車200に送信する代わりに、回収計画に基づいて適切なタイミングで、運搬車200に回収のための走行を開始させる指令を送信してもよい。
【0097】
このように、管理装置600または運搬車200の制御装置260は、移植機100への苗の受け渡しが行われた後、受け渡し場所に残された育苗箱を、運搬車200に回収させるために、運搬車200を受け渡し場所に移動させる制御を行ってもよい。
【0098】
[2-2.自動走行動作]
次に、制御装置260による運搬車200の自動運転制御の例を説明する。
【0099】
図12は、制御装置260によって実行される自動運転時の操舵制御の動作の例を示すフローチャートである。制御装置260は、運搬車200の走行中、図12に示すステップS210からS250の動作を実行することにより、自動操舵を行う。速度に関しては、例えば予め設定された速度に維持される。制御装置260は、運搬車200の走行中、GNSSユニット220によって生成された運搬車200の位置を示すデータを取得する(ステップS210)。次に、制御装置260は、運搬車200の位置と、目標経路との偏差を算出する(ステップS220)。偏差は、その時点における運搬車200の位置と、目標経路との距離を表す。制御装置260は、算出した位置の偏差が予め設定された閾値を超えるか否かを判定する(ステップS230)。偏差が閾値を超える場合、制御装置260は、偏差が小さくなるように、駆動装置240に含まれる操舵装置の制御パラメータを変更することにより、操舵角を変更する。ステップS230において偏差が閾値を超えない場合、ステップS240の動作は省略される。続くステップS250において、制御装置260は、動作終了の指令を受けたか否かを判定する。動作終了の指令は、例えばユーザが遠隔操作で自動運転の停止を指示したり、運搬車200が目的地に到達したりした場合に出され得る。動作終了の指令が出されていない場合、ステップS210に戻り、新たに計測された運搬車200の位置に基づいて、同様の動作を実行する。制御装置260は、動作終了の指令が出されるまで、ステップS210からS250の動作を繰り返す。上記の動作は、制御装置260におけるECU265によって実行される。
【0100】
図12に示す例では、制御装置260は、GNSSユニット220によって特定された運搬車200の位置と目標経路との偏差のみに基づいて駆動装置240を制御するが、方位の偏差もさらに考慮して制御してもよい。例えば、制御装置260は、GNSSユニット220によって特定された運搬車200の向きと、目標経路の方向との角度差である方位偏差が予め設定された閾値を超える場合に、その偏差に応じて駆動装置240の操舵装置の制御パラメータ(例えば操舵角)を変更してもよい。
【0101】
以下、図13Aから図13Dを参照しながら、制御装置260による操舵制御の例をより具体的に説明する。
【0102】
図13Aは、目標経路Pに沿って走行する運搬車200の例を示す図である。図13Bは、目標経路Pから右にシフトした位置にある運搬車200の例を示す図である。図13Cは、目標経路Pから左にシフトした位置にある運搬車200の例を示す図である。図13Dは、目標経路Pに対して傾斜した方向を向いている運搬車200の例を示す図である。これらの図において、GNSSユニット220によって計測された運搬車200の位置および向きを示すポーズがr(x,y,θ)と表現されている。(x,y)は、地球に固定された2次元座標系であるXY座標系における運搬車200の基準点の位置を表す座標である。図13Aから図13Dに示す例において、運搬車200の基準点はGNSSユニット220が設置された位置にある。なお、基準点の位置は任意である。θは、運搬車200の計測された向きを表す角度である。図示されている例においては、目標経路PがY軸に平行であるが、一般的には目標経路PはY軸に平行であるとは限らない。
【0103】
図13Aに示すように、運搬車200の位置および向きが目標経路Pから外れていない場合には、制御装置260は、運搬車200の操舵角および速度を変更せずに維持する。
【0104】
図13Bに示すように、運搬車200の位置が目標経路Pから右側にシフトしている場合には、制御装置260は、運搬車200の走行方向が左寄りに傾き、経路Pに近付くように操舵角を変更する。このとき、操舵角に加えて速度も併せて変更してもよい。操舵角の大きさは、例えば位置偏差Δxの大きさに応じて調整され得る。
【0105】
図13Cに示すように、運搬車200の位置が目標経路Pから左側にシフトしている場合には、制御装置260は、運搬車200の走行方向が右寄りに傾き、経路Pに近付くように操舵角を変更する。この場合も、操舵角に加えて速度も併せて変更してもよい。操舵角の変化量は、例えば位置偏差Δxの大きさに応じて調整され得る。
【0106】
図13Dに示すように、運搬車200の位置は目標経路Pから大きく外れていないが、向きが目標経路Pの方向とは異なる場合は、制御装置260は、方位偏差Δθが小さくなるように操舵角を変更する。この場合も、操舵角に加えて速度も併せて変更してもよい。操舵角の大きさは、例えば位置偏差Δxおよび方位偏差Δθのそれぞれの大きさに応じて調整され得る。例えば、位置偏差Δxの絶対値が小さいほど方位偏差Δθに応じた操舵角の変化量を大きくしてもよい。位置偏差Δxの絶対値が大きい場合には、経路Pに戻るために操舵角を大きく変化させることになるため、必然的に方位偏差Δθの絶対値が大きくなる。逆に、位置偏差Δxの絶対値が小さい場合には、方位偏差Δθをゼロに近づけることが必要である。このため、操舵角を決定するための方位偏差Δθの重み(すなわち制御ゲイン)を相対的に大きくすることが妥当である。
【0107】
運搬車200の操舵制御および速度制御には、PID制御またはMPC制御(モデル予測制御)などの制御技術が適用され得る。これらの制御技術を適用することにより、運搬車200を目標経路Pに近付ける制御を滑らかにすることができる。
【0108】
なお、走行中にLiDARセンサ225、カメラ226、または障害物センサ227によって障害物が検出される場合がある。その場合、制御装置260は、運搬車200を停止させるか、運搬車200が障害物を回避するように駆動装置240を制御する。
【0109】
本実施形態における運搬車200は、圃場外でも自動走行が可能である。圃場外において、制御装置260は、カメラ226またはLiDARセンサ225から出力されたデータに基づいて、運搬車200から比較的離れた位置に存在する物体(例えば、他の車両または歩行者等)を検出することができる。制御装置260は、検出された物体を回避するように局所的経路を生成し、局所的経路に沿って速度制御および操舵制御を行うことにより、圃場外の道における自動走行を実現できる。
【0110】
このように、本実施形態における運搬車200は、無人で圃場外を自動で走行できる。記憶装置264には、複数の圃場およびその周辺の道を含むエリアの環境地図および目標経路が記録される。環境地図および目標経路は、管理装置600またはECU266によって生成され得る。運搬車200が道路上を走行する場合、運搬車200は、カメラ226およびLiDARセンサ225などのセンシング装置を用いて周囲をセンシングしながら、目標経路に沿って走行する。走行中、制御装置260は、局所的経路を逐次生成し、局所的経路に沿って運搬車200を走行させる。これにより、障害物を回避しながら自動走行することができる。例えば、図5に示すように、出入口91で衝突することなく、ビニールハウス90の内部に運搬車200を進入させることができる。
【0111】
[2-3.作業計画の例]
本実施形態における運搬車200は、管理装置600によって作成された作業計画に従って苗の運搬を自動で実行する。作業計画は、移植機100などの農業機械によって実行される1つ以上の農作業に関する情報を含む。例えば、作業計画は、移植機100によって実行される移植作業、および各作業が行われる圃場の情報を含む。作業計画は、複数の作業日にわたって複数の農業機械が実行する複数の農作業、および各農作業が行われる圃場の情報を含んでいてもよい。より具体的には、作業計画は、作業日ごとに、どの時刻に、どの農業機械が、どの圃場で、どの農作業を行うかを示す作業スケジュールの情報を含むデータベースであり得る。以下、作業計画がそのような作業スケジュールのデータである場合の例を説明する。作業計画は、ユーザが端末装置400を用いて入力した情報に基づいて、管理装置600のプロセッサ660によって作成され得る。以下、作業計画の作成方法の例を説明する。
【0112】
図14は、端末装置400の表示装置430に表示される設定画面760の一例を示す図である。端末装置400のプロセッサ460は、ユーザによる入力装置420を用いた操作に応答して、作業計画作成のためのアプリケーションソフトウェアを起動して、図14に示すような設定画面760を表示装置430に表示させる。ユーザは、この設定画面760上で、作業計画の作成に必要な情報を入力することができる。
【0113】
図14は、農作業として、稲作用の圃場において田植えが行われる場合の設定画面760の一例を示している。設定画面760は、図示されるものに限定されず、適宜変更が可能である。図14の例における設定画面760は、日付設定部761、作業時間設定部762、作付品種選択部763、圃場選択部764、作業選択部765、作業者選択部766、機械選択部768、および育苗施設選択部769を含む。
【0114】
日付設定部761には、入力装置420によって入力された日付が表示される。入力された日付が農作業の実施日として設定される。
【0115】
作業時間設定部762には、入力装置420から入力された作業時間が表示される。作業時間は、開始時刻および終了時刻によって指定される。入力された作業時間が、農作業が実行される予定時間として設定される。
【0116】
作付品種選択部763には、作付けされる(すなわち植え付けられる)作物の品種の一覧が表示される。一覧の中から所望の品種をユーザが選択することが可能である。図14の例では、稲の品種「こしいぶき」が選択されている。
【0117】
圃場選択部764には、地図中の圃場が表示される。ユーザは、表示された圃場の中から任意の圃場を選択できる。図14の例では、「圃場A」を示す部分が選択されている。この場合、選択された「圃場A」が、農作業が行われる圃場として設定される。複数の圃場が選択されてもよい。
【0118】
作業選択部765には、選択された作物を栽培するために必要な複数の農作業が表示される。ユーザは、複数の農作業の中から一つの農作業を選択することができる。図14の例では、複数の農作業の中から「田植え」が選択されている。この場合、選択された「田植え」が、実施される農作業として設定される。
【0119】
作業者選択部766には、予め登録された作業者が表示される。ユーザは、表示された複数の作業者の中から一人以上の作業者を選択することができる。図14の例では、複数の作業者のうち、「作業者A」が選択されている。この場合、選択された「作業者A」が、その農作業を実施または管理する担当の作業者として設定される。なお、農業機械が自動で農作業を行う場合、選択された作業者は実際には農作業を行わず、農業機械が実行する農作業を遠隔で監視するだけであってもよい。
【0120】
機械選択部768は、その農作業において使用される農業機械を設定する部分である。機械選択部768には、例えば、予め管理装置600によって登録された農業機械の種類または型式、および使用可能なインプルメントの種類または型式等が表示され得る。ユーザは、表示された機械の中から、特定の機械を選択することができる。図14の例では、「田植機A」が選択されている。この場合、田植機Aが、当該農作業において使用される機械として設定される。
【0121】
育苗施設選択部769は、作付けされる稲の苗の保管場所である育苗施設を選択する部分である。育苗施設選択部769には、例えば、予め管理装置600によって登録された複数の育苗施設の名称が表示される。ユーザは、表示された複数の育苗施設の中から、特定の育苗施設を選択することができる。選択された育苗施設が、当該農作業において使用される苗の保管場所として設定される。
【0122】
設定画面760において、必要な情報が入力され、「登録」が選択されると、端末装置400の通信装置490は、入力された情報を管理装置600に送信する。管理装置600のプロセッサ660は、受信した情報を記憶装置650に記憶させる。プロセッサ660は、受信した情報に基づいて、各農業機械に実行させる農作業のスケジュールを作成し、記憶装置650に記憶させる。
【0123】
なお、管理装置600によって管理される農作業の情報は上述したものに限定されない。例えば、圃場で使用される肥料または農薬の種類および散布量を設定画面760で設定できるようにしてもよい。図14に示す農作業以外の農作業に関する情報を設定できるようにしてもよい。
【0124】
図15は、管理装置600によって作成される作業計画の例を示す図である。この例における作業計画は、登録された農業機械ごとに、農作業が行われる日および時間、圃場、作業内容、および使用される苗の保管場所を示す情報を含む。作業計画は、図15に示す情報以外にも、作業内容に応じた他の情報、例えば使用されるインプルメントの種類、または肥料もしくは農薬の種類および散布量などの情報を含んでいてもよい。このような作業計画に従い、管理装置600のプロセッサ660は、運搬車200に農作業の指示を出すことができる。作業計画は、運搬車200の制御装置260によってダウンロードされ、記憶装置264にも格納され得る。制御装置260は、管理装置600からの指示に従って動作を開始してもよいし、記憶装置264に格納された作業計画に従って自発的に動作を開始してもよい。
【0125】
本実施形態では、作業計画は管理装置600によって作成されるが、作業計画は他の装置によって作成されてもよい。例えば、端末装置400のプロセッサ460または運搬車200における制御装置260が作業計画を生成または更新する機能を備えていてもよい。
【0126】
運搬車200の制御装置260は、上記のような作業計画に基づいて、運搬車200の自動運転の経路を決定し、運搬車200が保管場所に向かうタイミングを決定することができる。例えば、制御装置260は、作業計画に基づいて、各圃場において田植機に積載された苗が不足するタイミングを計算し、そのタイミングよりも前に、当該圃場の受け渡し場所に到達できるように、保管場所への出発タイミングを決定することができる。これにより、田植機に積載された苗が完全に消費される前に、圃場に苗が届けられるため、田植機による作業の中断を最小限に抑えることができる。
【0127】
制御装置260は、作業計画によらず、移植機100からの要求に応じて、苗の運搬のための動作を開始してもよい。その場合、移植機100は、苗の残量を検知するセンサを備え得る。移植機100の制御装置160は、苗の残量が閾値を下回った場合に、通信装置190を介して運搬車200に運搬の要求を送るように構成され得る。あるいは、移植機100に搭載されたスイッチまたは操作端末をユーザ(例えば運転者)が操作することによって運搬車200に苗の運搬を要求できるようにしてもよい。運搬車200の制御装置260は、移植機100からの要求に応答して、苗の保管場所に運搬車200を移動させ、運搬車200への苗の積み込みが完了した後、運搬車200を移植機100が移植作業を行う圃場に移動させるように構成され得る。
【0128】
[3.移植機の構成例]
次に、移植機100の構成例を説明する。ここでは、自動運転の機能を備えた移植機100の例を説明する。
【0129】
図16は、移植機100の一例である田植機100Tの構成例を示す側面図である。田植機100Tは、乗用型で四輪駆動形式の機体101を備えている。機体101は、リンク機構111、昇降シリンダ115、苗植付装置103、および施肥装置104を備えている。
【0130】
機体101は、走行のための機構として、車輪112、エンジン113、および油圧式の無段変速装置114を備えている。車輪112は、操舵可能な左右の前輪112Aと、左右の後輪112Bとを有する。エンジン113および無段変速装置114は、機体101の前部に搭載されている。エンジン113からの動力は、無段変速装置114等を介して前輪112A、後輪112B、苗植付装置103および施肥装置104に供給される。苗植付装置103は、苗載せ台131および植付機構132を備えている。
【0131】
機体101は、運転部121を備えている。運転部121は、ステアリングホイール、主変速レバー、副変速レバー、作業操作レバー、運転座席等を備えている。さらに、運転部121の前方に、予備苗を収容する予備苗フレーム117が設けられている。予備苗フレーム117の上方に、測位装置108が設けられている。
【0132】
測位装置108は、機体101の位置および方位を算出するための測位データを出力する。測位装置108には、GNSSの衛星からの電波を受信する衛星測位モジュールと、機体101の三軸の傾きおよび加速度を検出する慣性計測モジュールとが含まれている。
【0133】
田植機100Tは、図16に示されている構成要素以外にも、自動走行を制御する制御装置160(図2参照)および各種のセンサ群を備えている。センサ群は、例えば操舵角、主変速レバーおよび副変速レバーの操作位置、車速、エンジン回転数等の状態、およびそれらに対する設定値を検出するセンサを含み得る。センサ群は、リンク機構111、苗植付装置103、施肥装置104の状態およびそれらに対する設定値を検出するセンサも含み得る。例えば、センサ群は、苗の残量、肥料の残量といった、農業資材の残量を計測するセンサを含み得る。前述のように、制御装置160は、苗の残量が閾値を下回った場合に、通信装置190を介して運搬車200に運搬の要求を送るように構成され得る。
【0134】
制御装置160は、前輪112Aの操舵角、および無段変速装置114を制御することにより、田植機100Tの車速および進行方向を変化させる。制御装置160はまた、苗植付装置103の苗取り量、および施肥装置104の施肥量を制御する。制御装置160は、測位装置108から逐次送られてくる衛星測位データに基づいて、田植機100Tの地図上の座標(自車位置)を算出する。制御装置160は、算出した自車位置と、予め設定した目標経路とに基づいて、田植機100Tを目標経路に沿って走行させる。
【0135】
田植機100Tは、手動走行モードと自動走行モードとを切り替えて動作することが可能である。自動走行モードにおいて、制御装置160は、自車位置と目標経路とを比較して算出された横偏差および方位偏差に基づいて、横偏差および方位偏差が縮小するように、操舵制御量を決定する。決定した操舵制御量に基づいて、前輪112Aの操舵角が調節される。また、制御装置160は、予め設定された基準速度以下の速度で走行するように走行速度を制御する。手動走行モードにおいて、制御装置160は、ステアリングホイールの操作量に基づいて、前輪112Aの操舵角を調節する。制御装置160は、主変速レバーおよび副変速レバーの操作位置に応じた走行速度で走行するように無段変速装置114を制御する。
【0136】
以上の実施形態における運搬車の移動経路を作成する装置、および移動経路に従って運搬車の移動を制御する装置を、それらの機能を有しない運搬車に後から取り付けることもできる。そのような装置は、運搬車とは独立して製造および販売され得る。そのような装置で使用されるコンピュータプログラムも、運搬車とは独立して製造および販売され得る。コンピュータプログラムは、例えばコンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体に格納されて提供され得る。コンピュータプログラムは、電気通信回線(例えばインターネット)を介したダウンロードによっても提供され得る。
【0137】
以上のように、本開示は、以下の項目に記載の苗運搬システム、苗運搬方法、および運搬車を含む。
【0138】
[項目1]
移植機が圃場内で移植する苗を、自動運転を行う運搬車に運搬させる苗運搬システムであって、
前記運搬車の動作を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記移植機の作業計画または前記移植機からの要求に従って、
前記運搬車を前記苗の保管場所まで走行させ、
前記保管場所において前記運搬車への前記苗の積み込みが完了した後、前記保管場所から前記圃場に向けて前記運搬車を走行させる、
苗運搬システム。
【0139】
[項目2]
前記制御装置は、
前記運搬車に、前記保管場所の出入口を通過させて前記保管場所の内部に進入させ、
前記保管場所の内部において前記苗の積み込みが完了した後、前記運搬車に、前記保管場所の内部から前記保管場所の前記出入口を通過させて前記圃場まで走行させる、
項目1に記載の苗運搬システム。
【0140】
[項目3]
前記圃場および前記保管場所を含むエリアの環境地図を記憶する記憶装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記移植機の作業計画または前記移植機からの要求に従って、
前記運搬車の現在位置から前記保管場所までの第1経路と、前記保管場所から前記圃場に設定された前記苗の受け渡し場所までの第2経路とを、前記環境地図に基づいて決定し、
前記第1経路および前記第2経路に沿って前記運搬車を走行させる、
項目1または2に記載の苗運搬システム。
【0141】
[項目4]
前記環境地図は、前記保管場所の出入口の位置情報を含み、
前記制御装置は、前記出入口の前記位置情報に基づいて、
前記運搬車の現在位置から前記出入口を通って前記保管場所の内部に至る経路を前記第1経路として決定し、
前記保管場所の内部から前記出入口を通って前記受け渡し場所に至る経路を前記第2経路として決定する、
項目3に記載の苗運搬システム。
【0142】
[項目5]
前記制御装置は、
前記運搬車の周囲の環境をセンシングしてセンサデータを出力するセンシング装置から取得した前記センサデータに基づいて、前記運搬車を前記保管場所の内部に進入させ、
前記保管場所の内部に配置された苗を認識し、前記苗の近傍まで前記運搬車を移動させる、
項目1から4のいずれかに記載の苗運搬システム。
【0143】
[項目6]
前記制御装置は、
前記運搬車を前記圃場に設定された受け渡し場所で停止させ、
前記受け渡し場所において前記苗の積み下ろしが完了した後、前記運搬車を他の圃場、または予め設定された待機場所まで走行させる、
項目1から5のいずれかに記載の苗運搬システム。
【0144】
[項目7]
前記環境地図は、前記圃場を含む複数の圃場の位置情報を含み、
前記制御装置は、
前記複数の圃場の位置情報に基づいて、前記複数の圃場にそれぞれ設定された複数の受け渡し場所を巡回する経路を決定し、
前記保管場所において前記苗の積み込みが完了した後、前記運搬車を前記経路に沿って走行させ、
各受け渡し場所で前記運搬車を停止させ、
各受け渡し場所で前記苗の積み下ろしが完了した後、前記運搬車に前記経路に沿った走行を再開させる、
項目3または4に記載の苗運搬システム。
【0145】
[項目8]
前記制御装置は、
前記運搬車を含む複数の運搬車を制御し、
前記移植機を含む複数の移植機の作業計画、または前記複数の移植機のいずれかからの要求に従って、
前記複数の運搬車の各々を、前記運搬車に対応付けられた苗の保管場所まで走行させ、
前記保管場所において前記運搬車への前記苗の積み込みが完了した後、前記保管場所から、前記運搬車に対応付けられた圃場まで前記運搬車を走行させる、
項目1から7のいずれかに記載の苗運搬システム。
【0146】
[項目9]
前記制御装置は、前記保管場所において前記苗の積み込みが完了した後、前記保管場所における作業者が使用する入力装置からの指令に応答して、前記運搬車に、前記保管場所から前記苗の受け渡し場所への走行を開始させる、項目1から8のいずれかに記載の苗運搬システム。
【0147】
[項目10]
前記保管場所は、前記苗の育苗を行う育苗施設である、項目1から9のいずれかに記載の苗運搬システム。
【0148】
[項目11]
前記運搬車と通信を行う通信装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記通信装置を介して前記運搬車に指令を送信することによって前記運搬車の走行を制御する、
項目1から10のいずれかに記載の苗運搬システム。
【0149】
[項目12]
前記運搬車は、前記苗を、育苗箱に収納された状態で運搬し、
前記制御装置は、前記移植機への前記苗の受け渡しが行われた後、前記受け渡し場所に残された前記育苗箱を、前記運搬車または他の運搬車に回収させるために、前記運搬車または前記他の運搬車を、前記受け渡し場所に移動させる、
項目1から11のいずれかに記載の苗運搬システム。
【0150】
[項目13]
項目1から11、および12のいずれかに記載の苗運搬システムを備える運搬車。
【0151】
[項目14]
移植機が圃場内で移植する苗を、自動運転を行う運搬車に運搬させる苗運搬方法であって、
前記移植機の作業計画または前記移植機からの要求に従って、
前記運搬車を前記苗の保管場所まで走行させることと、
前記保管場所において前記運搬車への前記苗の積み込みが完了した後、前記保管場所から前記圃場に向けて前記運搬車を走行させることと、
を含む苗運搬方法。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本開示の技術は、例えば田植機または野菜移植機などの移植機が移植作業で消費する作物の苗を運搬する運搬車に適用することができる。
【符号の説明】
【0153】
70・・・圃場、90・・・ビニールハウス、91・・・出入口、92・・・苗、98・・・待機場所、100・・・移植機、140・・・駆動装置、160・・・制御装置、190・・・通信装置、200・・・運搬車、220・・・GNSSユニット、225・・・LiDARセンサ、226・・・カメラ、227・・・障害物センサ、240・・・駆動装置、260・・・制御装置、264・・・記憶装置、290・・・通信装置、600・・・管理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図13B
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