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特開2024-94471作業車両の遠隔操作支援システム、遠隔装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094471
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】作業車両の遠隔操作支援システム、遠隔装置
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
A01B69/00 B
A01B69/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211017
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】時枝 快己
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB11
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA07
2B043BB01
2B043DA07
2B043DA17
2B043EA12
2B043EA15
2B043EB18
2B043EB22
2B043ED13
2B043EE01
2B043EE06
(57)【要約】
【課題】オペレータに作業車両の姿勢を容易に把握させること。
【解決手段】作業車両の遠隔操作支援システムは、作業車両の姿勢を検出する検出装置と、前記作業車両に対して連結された作業機の周囲を撮像する第1撮像装置と、前記第1撮像装置とは異なる前記作業車両の周囲を撮像する第2撮像装置と、前記第1撮像装置及び前記第2撮像装置により撮像された複数の撮像画像を表示する表示装置と当該表示装置を制御する制御装置とを有する遠隔装置と、を備え、前記制御装置は、前記検出装置により検出された前記作業車両の姿勢を示す第1姿勢オブジェクトを、前記表示装置に表示された複数の前記撮像画像に重畳表示させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の姿勢を検出する検出装置と、
前記作業車両に対して連結された作業機の周囲を撮像する第1撮像装置と、
前記第1撮像装置とは異なる前記作業車両の周囲を撮像する第2撮像装置と、
前記第1撮像装置及び前記第2撮像装置により撮像された複数の撮像画像を表示する表示装置と当該表示装置を制御する制御装置とを有する遠隔装置と、を備え、
前記制御装置は、前記検出装置により検出された前記作業車両の姿勢を示す第1姿勢オブジェクトを、前記表示装置に表示された複数の前記撮像画像に重畳表示させる作業車両の遠隔操作支援システム。
【請求項2】
前記第1撮像装置は、前記作業車両に対して前記作業機が連結された方向を撮像し、
前記第2撮像装置は、前記作業車両の進行方向を撮像し、
前記制御装置は、前記第1撮像装置により撮像された前記第1撮像画像及び前記第2撮像装置により撮像された前記第2撮像画像を前記表示装置に表示させ、当該表示させた前記第1撮像画像及び前記第2撮像画像に前記第1姿勢オブジェクトを重畳表示させる請求項1に記載の作業車両の遠隔操作支援システム。
【請求項3】
前記第1撮像装置は、前記作業機が連結された前記作業車両の後方を撮像し、
前記第2撮像装置は、前記作業車両の前方を撮像し、
前記制御装置は、前記第1撮像装置により撮像された前記作業車両の後方撮像画像及び前記第2撮像装置により撮像された前記作業車両の前方撮像画像を前記表示装置に表示させ、当該表示させた前記後方撮像画像及び前記前方撮像画像に前記第1姿勢オブジェクトを重畳表示させる請求項1に記載の作業車両の遠隔操作支援システム。
【請求項4】
前記制御装置は、複数の前記撮像画像の中央に前記第1姿勢オブジェクトを重畳表示させる請求項1に記載の作業車両の遠隔操作支援システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1姿勢オブジェクトを、複数の前記撮像画像のそれぞれにおける前記第1姿勢オブジェクトの表示位置に映り込んだ被写体が視認可能になる表示形態で表示させる請求項1に記載の作業車両の遠隔操作支援システム。
【請求項6】
前記制御装置は、複数の前記撮像画像の少なくともいずれかに、前記第1姿勢オブジェクトとして、前記作業車両の水平姿勢に対応する水平基準オブジェクトと、前記検出装置により検出された前記作業車両の傾斜角度を示す指標オブジェクトとを重畳表示させ、且つ前記指標オブジェクトを前記作業車両の傾斜角度に応じて前記水平基準オブジェクトに対して傾斜させる請求項1に記載の作業車両の遠隔操作支援システム。
【請求項7】
前記制御装置は、複数の前記撮像画像の少なくともいずれかに、前記第1姿勢オブジェクトとして、前記水平基準オブジェクト及び指標オブジェクトと共に、前記作業車両の傾斜角度を示す数値を重畳表示させる請求項6に記載の作業車両の遠隔操作支援システム。
【請求項8】
前記制御装置は、複数の前記撮像画像の少なくともいずれかに、前記第1姿勢オブジェクトとして、所定方向に対する前記作業車両の傾斜角度の目盛を示す目盛オブジェクトと、前記検出装置により検出された前記所定方向に対する前記作業車両の前記傾斜角度を前記目盛オブジェクトに対して示す指標オブジェクトとを重畳表示させる請求項1に記載の作業車両の遠隔操作支援システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記目盛オブジェクト及び前記指標オブジェクトを、前記検出装置により検出された前記所定方向とは異なる方向に対する前記作業車両の傾斜角度に応じて傾
斜させる請求項8に記載の作業車両の遠隔操作支援システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記目盛オブジェクトとして、複数の目盛ラインと、当該複数の目盛ラインにそれぞれ対応する複数の数値とを表示させ、且つ複数の前記目盛ラインと複数の前記数値とを、複数の前記撮像画像の少なくともいずれかにおける前記目盛オブジェクトの表示位置に映り込んでいた被写体が視認可能になる表示形態で表示させる請求項8に記載の作業車両の遠隔操作支援システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記検出装置により検出された前記作業車両のピッチ角及びロール角の少なくともいずれかを示す前記第1姿勢オブジェクトを、複数の前記撮像画像に重畳表示させる請求項1に記載の作業車両の遠隔操作支援システム。
【請求項12】
前記制御装置は、複数の前記撮像画像のうち、前記作業機を映す撮像画像に、前記作業機の姿勢を示す第2姿勢オブジェクトを重畳表示させる請求項1に記載の作業車両の遠隔操作支援システム。
【請求項13】
前記制御装置は、前記作業車両に設けられた姿勢変更装置により前記作業機の姿勢が変更された場合の、変更後の前記作業機の前記姿勢を示す前記第2姿勢オブジェクトを、前記作業機を映す前記撮像画像に重畳表示させる請求項12に記載の作業車両の遠隔操作支援システム。
【請求項14】
前記制御装置は、複数の前記撮像画像に映り込む前記作業車両又は前記作業機の一部に、前記第1姿勢オブジェクト及び前記第2姿勢オブジェクトを重畳表示させる請求項12に記載の作業車両の遠隔操作支援システム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の作業車両の遠隔操作支援システムに備わる遠隔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の遠隔操作を支援する作業車両の遠隔操作支援システム及び遠隔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両の遠隔操作を支援するため、例えば特許文献1、2には、撮像装置により作業車両の前方を撮像した撮像画像と、検出装置により検出された作業車両の姿勢を示す姿勢画像とを、遠隔操作画面に表示させる技術が開示されている。特許文献1では、撮像画像に映り込んだ作業車両の天井の表示箇所に、作業車両のロール角及びピッチ角を示す水準器画像(姿勢画像)を重畳表示させている。特許文献2では、前方撮像画像の角部に、作業車両(重機)の水平状態に対する前後の傾きと左右の傾きとをそれぞれ示す姿勢情報表示画像を重畳表示させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-72401号公報
【特許文献2】特開2001-348914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に開示されているように、従来は、作業車両の姿勢を示す姿勢画像が遠隔操作画面中の作業車両の一方向(前方)の撮像画像にしか重畳表示されていなかったため、オペレータは作業車両の姿勢を把握(イメージ)することが難しかった。特に、熟練者でないオペレータは、例えば遠隔操作で作業車両を他方向に走行させる場合、又は作業車両の他方向に連結された作業機によって作業を行う場合などに、一方向の撮像画像に重畳表示された姿勢画像を見ても、作業車両の姿勢を把握できないことがあり、作業車両を遠隔操作することが難しかった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、オペレータに作業車両の姿勢を容易に把握させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
【0007】
本発明の作業車両の遠隔操作支援システムは、作業車両の姿勢を検出する検出装置と、前記作業車両に対して連結された作業機の周囲を撮像する第1撮像装置と、前記第1撮像装置とは異なる前記作業車両の周囲を撮像する第2撮像装置と、前記第1撮像装置及び前記第2撮像装置により撮像された複数の撮像画像を表示する表示装置と当該表示装置を制御する制御装置とを有する遠隔装置と、を備え、前記制御装置は、前記検出装置により検出された前記作業車両の姿勢を示す第1姿勢オブジェクトを、前記表示装置に表示された複数の前記撮像画像に重畳表示させる。また、前記遠隔装置は、本発明の遠隔装置を構成する。
【0008】
本発明の一態様では、前記第1撮像装置は、前記作業車両に対して前記作業機が連結された方向を撮像し、前記第2撮像装置は、前記作業車両の進行方向を撮像し、前記第1撮像装置により撮像された前記第1撮像画像及び前記第2撮像装置により撮像された前記第2撮像画像を前記表示装置に表示させ、当該表示させた前記第1撮像画像及び前記第2撮
像画像に前記第1姿勢オブジェクトを重畳表示させてもよい。
【0009】
本発明の一態様では、前記第1撮像装置は、前記作業機が連結された前記作業車両の後方を撮像し、前記第2撮像装置は、前記作業車両の前方を撮像し、前記制御装置は、前記第1撮像装置により撮像された前記作業車両の後方撮像画像及び前記第2撮像装置により撮像された前記作業車両の前方撮像画像を前記表示装置に表示させ、当該表示させた前記後方撮像画像及び前記前方撮像画像に前記第1姿勢オブジェクトを重畳表示させてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、複数の前記撮像画像の中央に前記第1姿勢オブジェクトを重畳表示させてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記第1姿勢オブジェクトを、複数の前記撮像画像のそれぞれにおける前記第1姿勢オブジェクトの表示位置に映り込んだ被写体が視認可能になる表示形態で表示させてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、複数の前記撮像画像の少なくともいずれかに、前記第1姿勢オブジェクトとして、前記作業車両の水平姿勢に対応する水平基準オブジェクトと、前記検出装置により検出された前記車体の傾斜角度を示す指標オブジェクトとを重畳表示させ、且つ前記指標オブジェクトを前記車体の傾斜角度に応じて前記水平基準オブジェクトに対して傾斜させてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、複数の前記撮像画像の少なくともいずれかに、前記第1姿勢オブジェクトとして、前記水平基準オブジェクト及び指標オブジェクトと共に、前記作業車両の傾斜角度を示す数値を重畳表示させてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、複数の前記撮像画像の少なくともいずれかに、前記第1姿勢オブジェクトとして、所定方向に対する前記作業車両の傾斜角度の目盛を示す目盛オブジェクトと、前記検出装置により検出された前記所定方向に対する前記作業車両の傾斜角度を前記目盛オブジェクトに対して示す指標オブジェクトとを重畳表示させてもよい。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記制御装置は、前記目盛オブジェクト及び前記指標オブジェクトを、前記検出装置により検出された前記所定方向とは異なる方向に対する前記作業車両の傾斜角度に応じて傾斜させてもよい。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記目盛オブジェクトとして、複数の目盛ラインと、当該複数の目盛ラインにそれぞれ対応する複数の数値とを表示させ、且つ複数の前記目盛ラインと複数の前記数値とを、複数の前記撮像画像の少なくともいずれかにおける前記目盛オブジェクトの表示位置に映り込んでいた被写体が視認可能になる表示形態で表示させてもよい。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記検出装置により検出された前記作業車両のピッチ角及びロール角の少なくともいずれかを示す前記第1姿勢オブジェクトを、複数の前記撮像画像に重畳表示させてもよい。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、複数の前記撮像画像のうち、前記作業機を映す撮像画像に、前記作業機の姿勢を示す第2姿勢オブジェクトを重畳表示させてもよい。
【0019】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記作業車両に設けられた姿勢変更装置により前記作業機の姿勢が変更された場合の、変更後の前記作業機の前記姿勢を示す前記第2姿勢オブジェクトを、前記作業機を映す前記撮像画像に重畳表示させてもよい。
【0020】
さらに、本発明の一態様では、前記制御装置は、複数の前記撮像画像に映り込む前記作業車両又は前記作業機の一部に、前記第1姿勢オブジェクト及び前記第2姿勢オブジェクトを重畳表示させてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の作業車両の遠隔操作支援システム及び遠隔装置によれば、オペレータに作業車両の姿勢を容易に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】作業車両の遠隔操作支援システムの構成図である。
図2】作業車両の一例であるトラクタの側面図である。
図3】作業車両に備わる連結装置の斜視図である。
図4】作業車両の前後への傾斜状態の一例を示す図である。
図5】作業車両の左右への傾斜状態の一例を示す図である。
図6】作業機の左右への姿勢変更状態を示す図である。
図7】作業車両と遠隔装置の動作を示すフローチャートである。
図8】遠隔監視画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一実施形態の作業車両の遠隔操作支援システム100の構成図である。遠隔操作支援システム100は遠隔装置30を備えている。遠隔操作支援システム100及び遠隔装置30は、作業車両1の遠隔操作を支援する。作業車両1は、自律して走行可能な農業機械(「自律走行型農業機械」とも言う。)から構成されている。本実施形態では、作業車両1は、図2に示すようなトラクタから構成されている。トラクタは、圃場で農作業を行う農業機械の一例である。なお、作業車両1は、トラクタ以外の走行可能な農業機械又は建設機械などから構成されてもよい。
【0024】
図2は、作業車両1(トラクタ)の側面図である。作業車両1には、車体3と走行装置7が備わっている。走行装置7は、車体3の左右両側にそれぞれ設けられ、車体3を走行可能に支持している。走行装置7は、タイヤから成る前輪7F及び後輪7Rを有した装輪型の走行装置である。これ以外に、前輪又は後輪がクローラから成る走行装置を用いてもよい。
【0025】
車体3には、原動機4、変速装置5、制動装置13(図1)、及び操舵装置14(図1)が搭載されている。原動機4は、エンジン(ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン)又は電動モータなどから成る。変速装置5は、変速動作を行うことにより、走行装置7の推進力を可変し、且つ走行装置7の前進、後進の切り換えを行う。制動装置13は車体3を制動する。操舵装置14は車体3を操舵する。
【0026】
車体3の上部には、キャビン9が設けられている。キャビン9の内部には、運転席10及び操縦装置11が設けられている。作業車両1は無人で走行(運転)し、作業機2により作業(農作業)をすることが可能なトラクタであるが、運転席10に着座した作業者が操縦装置11を操作することによって、作業車両1を走行させながら作業機2により作業をすることも可能である。キャビン9は、運転席10の前方、後方、上方及び左右側方を取り囲むことにより、運転席10を保護する。
【0027】
図2に矢印A1で示す方向が、作業車両1の前方である。矢印A2で示す方向が、作業車両1の後方である。矢印Z1で示す方向が、作業車両1の上方である。矢印Z2で示す方向が、作業車両1の下方である。そして、矢印A1、A2、Z1、Z2に対して直行する方向が、作業車両1の幅方向(左右方向)である。図2に向かって手前側が作業車両1の左方(後述する図5のB1方向)であり、奥側が作業車両1の右方(図5のB2方向)である。
【0028】
車体3の後部には、作業機2を連結するための連結装置8が設けられている。即ち、作業機2は、連結装置8を介して作業車両1の車体3に連結される。作業機2が連結装置8に連結された状態で、走行装置7が駆動することで、作業車両1(車体3)が走行して、作業機2を牽引する。
【0029】
作業機2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置などから成る。作業車両1は、作業機2により圃場に対して農作業を行う。
【0030】
図3は、連結装置8を後方から見た場合の斜視図である。連結装置8は、3点リンク機構で構成されている。詳しくは、連結装置8は、リフトアーム8a、ロアリンク8b、トップリンク8c、リフトロッド8d、リフトシリンダ8e、及び角度変更シリンダ8fを有している。このうち、リフトアーム8a、ロアリンク8b、及びリフトシリンダ8eはそれぞれ、左右一対で設けられている。
【0031】
左右一対のリフトアーム8aの前端部はそれぞれ、変速装置5を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。左右一対のリフトアーム8aはそれぞれ、左右一対のリフトシリンダ8eの駆動によって揺動(昇降)する。左右一対のリフトシリンダ8eはそれぞれ油圧シリンダから構成されていて、制御弁27aを介して作業車両1に備わる油圧ポンプ(図示省略)と接続されている。制御弁27aは電磁弁などから構成されている。左右一対のリフトシリンダ8eはそれぞれ、対応する制御弁27aを介して供給される作動油の圧力によって伸縮する。
【0032】
左右一対のロアリンク8bの前端部は、変速装置5の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク8cの前端部は、ロアリンク8bよりも上方において、変速装置5の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド8dは、左側(B1方向側)にあるリフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。角度変更シリンダ8fは、右側(B2方向側)にあるリフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。左右一対のロアリンク8bの後部及びトップリンク8cの後部(先端部)に、作業機2(図2)が連結される。
【0033】
連結装置8の左右一対のリフトシリンダ8eが伸縮することで、左右一対のリフトアーム8aが上下に回動し、当該リフトアーム8aにそれぞれリフトロッド8d或いは角度変更シリンダ8fを介して連結された左右一対のロアリンク8bが上下に回動する。そして、左右一対のロアリンク8bとトップリンク8cの後部に連結された作業機2が上下に昇降する。
【0034】
例えば作業機2が耕耘装置である場合、作業機2は、耕耘作業を行うときに連結装置8により下降して、地面と接触する作業位置に位置する。また、作業機2は、耕耘作業を行うことなく作業車両1が移動するときに連結装置8により上昇して、地面から所定距離以上離間する非作業位置に位置する。連結装置8は、昇降装置とも呼ばれている。
【0035】
連結装置8の角度変更シリンダ8fは、油圧シリンダから構成されていて、制御弁27bを介して油圧ポンプと接続されている。制御弁27bは、電磁弁などから構成されている。角度変更シリンダ8fは、制御弁27bを介して供給される作動油の圧力によって伸縮する。角度変更シリンダ8fが伸縮することで、右側のロアリンク8bが上下に回動し、右側のロアリンク8bの後部が左側にあるロアリンク8bの後部よりも上方又は下方に位置する。そして、左右一対のロアリンク8bとトップリンク8cの後部に連結された作業機2が、前後軸(A1方向及びA2方向と平行な仮想軸)を中心にして、左右に揺動(傾斜)する。即ち、水平面に対する作業機2の左右への傾斜姿勢(ロール角)が、連結装置8によって変更される。
【0036】
上述したように、連結装置8は、作業機2を昇降させ、且つ作業機2を水平面に対して左右に揺動させる。連結装置8は、作業機2の姿勢を変更する姿勢変更装置でもある。なお、作業機2の種類によっては、地面から離間した状態で作業を行うため、連結装置8により昇降しないことがある(例えば散布装置など)。
【0037】
図2に示すように、キャビン9の前側には、ボンネット12が設けられている。ボンネット12は、車体3に取り付けられている。ボンネット12と車体3の間には、収容ルーム(符号省略)が形成されている。その収容ルームには、原動機4だけでなく、冷却ファン、ラジエータ、及びバッテリなど(図示省略)が収容されている。
【0038】
図1に示すように、作業車両1は、車載制御装置21、車載通信装置23、検出装置24、センシング装置25、操縦装置11、アクチュエータ群27、原動機4、走行装置7、変速装置5、制動装置13、操舵装置14、及び連結装置8を有している。また、作業車両1には、CAN、LIN、又はFlexRayなどの車載ネットワークが構築されている。車載制御装置21には、当該車載ネットワークを介して、車載通信装置23、検出装置24、センシング装置25、操縦装置11、アクチュエータ群27、及び作業車両1に連結された作業機2などが電気的に接続されている。
【0039】
車載制御装置21は、CPUとメモリとを含んだECU(電子制御装置)から構成されている。車載制御装置21は、作業車両1の各部の動作を制御するコントローラである。車載制御装置21のメモリは、揮発性又は不揮発性のメモリなどから構成されている。車載制御装置21のメモリには、車載制御装置21が作業車両1の各部の動作を制御するための各種の情報とデータが読み書き可能に記憶される。
【0040】
車載通信装置23は、携帯電話通信網、インターネット、又は無線LANを介して、無線で通信するためのアンテナ、IC、及び電気回路などから構成されている。車載制御装置21は、車載通信装置23により遠隔装置30と無線で通信する。
【0041】
なお、本実施形態では、作業車両1と遠隔装置30とが携帯電話通信網などを介して通信する例を示しているが、これ以外に、例えば作業車両1と遠隔装置30とが携帯電話通信網などと、サーバ又は中継器などの外部装置を介して通信するようにしてもよい。また、作業車両1と遠隔装置30とが、例えばBLU(Bluetooth(登録商標) Low Energy)信号又はUHF(Ultra High Frequency)信号などのような近距離無線信号で直接通信してもよい。この場合、車載通信装置23と遠隔装置30とに、近距離無線通信用のインタフェイスがそれぞれ設けられていればよい。
【0042】
検出装置24には、測位装置24a、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)24b、及び状態検出装置24cが含まれている。測位装置24aは、例えばキャビン9(図2)の上部に設置されている(詳細図示省略)。なお、測位装置24aの設置位置は、キャビン9の上部に限定せず、車体3の別の箇所又は作業機2の所定の箇所でもよい。
【0043】
測位装置24aは、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、又はみちびきなどの衛星測位システムを利用して、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を測位する。具体的には、例えば測位装置24aは、測位衛星から送信された信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、当該信号に基づいて自己の位置を検出する。そして、測位装置24aは、検出した自己の位置を車体3の位置とみなす。即ち、測位装置24aは、車体3(作業車両1)の位置を検出する。また、測位装置24aは、検出した自己の位置と、予め記憶された作業機2の外形情報と、車体3に対する作業機2の取り付け位置とに基づいて、作業機2の位置を算出する。
【0044】
慣性計測装置24bは、ジャイロセンサ又は加速度センサなどを含んでいて、作業車両1(車体3)のロール角、ピッチ角、及びヨー角などを検出する。即ち、慣性計測装置24bは、作業車両1の水平状態に対する左右及び前後への傾斜姿勢と、作業車両1の操舵状態(操舵角と操舵方向など)とをそれぞれ検出する。
【0045】
状態検出装置24cは、作業車両1及び作業機2の状態を検出する。具体的には、状態検出装置24cには、作業車両1及び作業機2の各部に設置された各種センサと、演算器とが含まれていて、演算器が各種センサからの出力信号に基づいて、作業車両1及び作業機2の動作状態を検出(演算)する。状態検出装置24cが検出する作業車両1の状態には、作業車両1の各部の駆動と停止の状態、作業車両1の進行方向、及び走行速度などが含まれている。状態検出装置24cが検出する作業機2の状態には、作業機2の各部の駆動と停止の状態などが含まれている。
【0046】
状態検出装置24cは、例えば前輪7F若しくは後輪7Rの回転数或いは前輪7F及び後輪7Rを転動させる走行モータの回転数を検出する回転数センサの出力信号に基づいて、車体3の走行速度を検出する。他の例として、状態検出装置24cは、測位装置24aにより検出された車体3の位置を所定の周期で取得して、当該車体3の位置の変化(変遷)から、車体3の走行速度を検出してもよい。
【0047】
作業車両1(車体3)の姿勢は、前述したように慣性計測装置24bにより検出されるが、作業機2の姿勢は、車載制御装置21が作動を制御する制御弁27a、27b、リフトシリンダ8e、角度変更シリンダ8fの作動状態に基づいて検出する。具体的には、例えば車載制御装置21が、制御弁27a、27bに入力した制御信号から、制御弁27a、27bの作動位置と開度をそれぞれ判断し、当該作動位置と開度からリフトシリンダ8e及び角度変更シリンダ8fの伸縮量をそれぞれ判断する。そして、車載制御装置21は、リフトシリンダ8e及び角度変更シリンダ8fの伸縮量から、作業機2の上下方向の姿勢(昇降位置)と左右方向の姿勢(左右への傾斜角度、即ち作業機2のロール角)とをそれぞれ検出する。
【0048】
又は、車載制御装置21が、リフトシリンダ8e及び角度変更シリンダ8fの伸縮量をそれぞれ検出するセンサからの検出信号に基づいて、作業機2の上下方向の姿勢と左右方向の姿勢とをそれぞれ検出してもよい。さらに他の例として、状態検出装置24cが、作業機2の上下方向の姿勢を検出するセンサと、作業機2の左右方向の姿勢を検出するセンサとを含んでいてもよい。
【0049】
図4は、作業車両1を側方から見た場合の、作業車両1の前後への傾斜状態の一例を示す図である。図4に示すように、作業車両1の車体3が前下がりに傾斜した前傾姿勢にある場合、慣性計測装置24bにより検出される車体3のピッチ角θpは、マイナス値(-θp)となる。一方、車体3が後ろ下がりに傾斜した後傾姿勢にある場合、慣性計測装置
24bにより検出される車体3のピッチ角θpは、プラス値(+θp)となる(図示省略)。
【0050】
図5は、作業車両1を後方から見た場合の、作業車両1の左右への傾斜状態の一例を示す図である。図5に示すように作業車両1の車体3が右下がりに傾斜した右傾姿勢にある場合、慣性計測装置24bにより検出される車体3のロール角θrは、マイナス値(-θr)となる。一方、車体3が左下がりに傾斜した左傾姿勢にある場合、慣性計測装置24bにより検出される車体3のロール角θrは、プラス値(+θr)となる(図示省略)。
【0051】
図5に示すように作業車両1の車体3が右傾姿勢にある場合、車体3に連結装置8を介して連結された作業機2も右傾姿勢になる。この場合、作業車両1で水平作業モード(「水平モンロー制御モード」とも言う。)が設定されているときは、車載制御装置21が、前述の制御弁27b(図3)を作動させて、連結装置8の角度変更シリンダ8fを収縮させることにより、図6に示すように作業機2を略水平な姿勢に変更する。このように作業機2の姿勢を変更した状態で、作業車両1が走行しながら作業機2により作業を行った場合、作業跡が傾斜地に対して水平になる。
【0052】
また、車体3が左傾姿勢にある場合、車体3に連結装置8を介して連結された作業機2も左傾姿勢になる。この場合、作業車両1で水平作業モードが設定されているときには、車載制御装置21が、制御弁27bを作動させて、連結装置8の角度変更シリンダ8fを伸長させることにより、作業機2を略水平な姿勢に変更する。
【0053】
なお、作業車両1では、水平作業モード以外に、傾斜地作業モード(「傾斜地モンロー制御モード」とも言う。)が設定可能である。作業車両1の車体3が右傾姿勢或いは左傾姿勢にある場合に、作業車両1で傾斜地作業モードされているときは、車載制御装置21が、制御弁27bを作動させて、連結装置8の角度変更シリンダ8fを伸縮させることにより、作業機2を傾斜地と略平行な姿勢に変更する(図示省略)。このように作業機2の姿勢を変更した状態で、作業車両1が走行しながら作業機2により作業を行った場合、作業跡が傾斜地に対して均平になる。
【0054】
上述したように、検出装置24(測位装置24a、慣性計測装置24b、及び状態検出装置24c)及び車載制御装置21は、作業車両1及び作業機2の位置、動作、姿勢、及び速度などの状態を検出する。車載制御装置21は、検出装置24などにより検出された作業車両1及び作業機2の状態を示す検出情報を生成し、当該検出情報を車載制御装置21に出力する。
【0055】
センシング装置25は、作業車両1の周囲をセンシング(監視)する。詳しくは、センシング装置25は、レーザセンサ25a、超音波センサ25b、カメラ25c、及び対象物検出部25dを有している。レーザセンサ25a及び超音波センサ25bは、作業車両1の前部、後部、及び左右側部などの適宜箇所にそれぞれ設置されていて(詳細図示省略)、作業車両1の前方、後方、及び左右側方などの周囲状況及び当該周囲にある対象物を検出する。レーザセンサ25a及び超音波センサ25bは、対象物センサの一例である。
【0056】
レーザセンサ25aは、ライダー(LiDAR: Light Detection And Ranging)などの光学式のセンサから構成されている。超音波センサ25bは、ソナーなどの空中超音波センサから構成されている。対象物検出部25dは、レーザセンサ25a及び超音波センサ25bからそれぞれ出力された信号に基づいて、対象物の有無、対象物の位置、対象物までの距離、及び対象物の種類などを検出する電気回路又はICなどから構成されている。対象物検出部25dが検出する対象物には、作業車両1が走行及び作業を行う現場、圃場、圃場の作物、地面、路面、その他の物体、及び人などが含まれている。
【0057】
カメラ25cは、CCD(Charge Coupled Devices:電荷結合素子)イメージセンサを搭載したCCDカメラ、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサを搭載したCMOSカメラなどから構成されている。カメラ25cは、作業車両1の前部、後部、左右側部、及びキャビン9の内部などの適宜箇所にそれぞれ設置されている。これら複数のカメラ25cは、作業車両1の前方、後方、及び左右側方などの周囲をそれぞれ撮像して、当該撮像画像のデータを出力する。カメラ25cは、撮像装置の一例である。
【0058】
作業車両1に設置された複数のカメラ25cのうち、図2に示すように作業車両1の車体3の後部に設置された後部カメラ25c1(第1撮像装置)は、作業車両1に対して連結された作業機2側の周囲を撮像する。即ち、後部カメラ25c1は、作業車両1に対して作業機2が連結された方向、より詳しくは作業車両1の後方(A2方向、第1方向)を撮像する。
【0059】
キャビン9の内部に設置された内部カメラ25c2(第2撮像装置)は、後部カメラ25c1とは異なる作業車両1の周囲を撮像する。より詳しくは、内部カメラ25c2は、作業車両1の進行方向である前方(A1方向、第2方向)を撮像する。また、内部カメラ25c2は、運転席10に着座した作業者と略同様の視野で、運転席10から作業車両1の前方を撮像する。対象物検出部25dは、複数のカメラ25cから出力された撮像画像のデータに基づいて、対象物の有無、対象物の位置、及び対象物の種類などを検出することも可能である。
【0060】
センシング装置25は、レーザセンサ25a、超音波センサ25b、カメラ25c、及び対象物検出部25dにより、作業車両1及び作業機2の周辺状況をセンシング(監視)し、その結果を示すセンシング情報を車載制御装置21に出力する。センシング情報には、少なくとも対象物検出部25dの検出情報とカメラ25cの撮像画像のデータとが含まれているが、これら以外にレーザセンサ25aと超音波センサ25bの検出情報がセンシング情報に含まれていてもよい。
【0061】
検出装置24は、所定の周期又は所定のタイミングで作業車両1及び作業機2の状態を検出した結果を示す検出情報を車載制御装置21に随時出力する。また、センシング装置25も、所定の周期又は所定のタイミングでセンシングした結果を示すセンシング情報を車載制御装置21に随時出力する。車載制御装置21は、検出装置24から入力された検出情報、車載制御装置21自身が検出した検出情報、及びセンシング装置25から入力されたセンシング情報を内部メモリに記憶させる。また、車載制御装置21は、内部メモリに記憶させた検出情報及びセンシング情報を、所定のタイミングで車載通信装置23により遠隔装置30に送信する。
【0062】
アクチュエータ群27には、作業車両1の原動機4、走行装置7、変速装置5、制動装置13、及び連結装置8などの各部を作動させるための電動式若しくは油圧式のモータ、シリンダ、及び制御弁(前述の制御弁27a、27bなど)が含まれている。操縦装置11には、ステアリングハンドル11a(図2)、アクセルペダル、ブレーキペダル、及び変速レバーなどが含まれている。車載制御装置21は、操縦装置11の操作状態などに応じて、アクチュエータ群27に含まれる所定のアクチュエータを作動させて、原動機4、走行装置7、変速装置5、制動装置13、及び操舵装置14を駆動し、作業車両1の走行と操舵を制御する。
【0063】
また、車載制御装置21は、作業機2に備わる制御部2aと通信して、制御部2aに作業機2の動作を制御させる。即ち、車載制御装置21は、制御部2aを介して作業機2の
動作を制御することで、圃場に対して作業を行う。なお、作業車両1に連結可能な作業機2には、制御部2aが備わっていないものもある。この場合、車載制御装置21は、連結装置8により作業機2の姿勢を制御して、作業機2により圃場に対して作業(農作業)を行う。
【0064】
車載制御装置21は、検出装置24などの検出情報(車載制御装置21自身の検出情報を含む)とセンシング装置25のセンシング情報などに基づいて、作業車両1の走行と操舵、作業機2の作業と姿勢、作業車両1のその他の動作をそれぞれ制御する。また、車載制御装置21は、遠隔装置30から送信された遠隔操作信号を車載通信装置23により受信した場合には、上記各情報に加えて、当該遠隔操作信号に基づいて、作業車両1の走行と操舵、作業機2による作業と姿勢、作業車両1のその他の動作をそれぞれ制御する。
【0065】
さらに、車載制御装置21は、作業車両1及び作業機2を制御する際に、対象物検出部25dの検出情報から、対象物が作業車両1又は作業機2に所定距離未満で接近して、接触する危険があるか否かを判断する。そして、車載制御装置21は、対象物が作業車両1又は作業機2に所定距離未満で接近して、接触する危険があると判断した場合に、走行装置7又は作業機2などを制御して、作業車両1の走行と作業機2による作業を停止し、対象物との接触を回避する。
【0066】
遠隔装置30は、タブレット装置若しくはスマートフォンなどの携帯型の端末装置、又は基地局(図示省略)に設置された据え置き型のコンピュータから構成されている。本実施形態では、遠隔装置30は、作業車両1を遠隔で操作及び監視する遠隔操作監視装置から構成されている。即ち、オペレータは遠隔装置30により作業車両1を遠隔で操作し、且つ作業車両1の周辺状況を監視する。なお、他の例として、遠隔装置30が作業車両1を遠隔で監視する遠隔監視装置から構成され、当該遠隔装置30とは別に、作業車両1を遠隔で操作する遠隔操作装置が設けられてもよい。
【0067】
図1に示すように、遠隔装置30には、制御装置31、通信装置33、表示装置34、及び操作装置35が設けられている。制御装置31は、CPUなどから構成されている。制御装置31は、遠隔装置30の各部の動作を制御するプロセッサである。制御装置31に設けられた内部メモリ32は、揮発性又は不揮発性のメモリである。内部メモリ32には、制御装置31が遠隔装置30の各部の動作を制御するための各種の情報とデータが読み書き可能に記憶される。
【0068】
通信装置33は、携帯電話通信網、インターネット、又は無線LANを介して、無線で通信するためのアンテナ、IC、及び電気回路などから構成されている。制御装置31は、通信装置33により作業車両1と無線で通信する。
【0069】
表示装置34は、例えば液晶ディスプレイなどから構成されている。表示装置34には、作業車両1を遠隔で操作するための情報が表示される。操作装置35は、タッチパッド又はハードウェア型のスイッチなどから構成されている。オペレータは、操作装置35を操作することによって、作業車両1の走行と操舵と作業機2による作業とをそれぞれ遠隔で操作し、且つ作業車両1と作業機2の周囲の状況を表示装置34により監視することが可能である。また、オペレータは、操作装置35を操作することによって、遠隔装置30に所定の情報又は指示を入力可能である。
【0070】
操作装置35は入力装置の一例である。表示装置34と操作装置35とは、ユーザインタフェイスの一例である。他の例として、表示装置34と操作装置35とに代えて、タッチパネルのような表示装置と操作装置とが一体になったユーザインタフェイスを、遠隔装置30に設けてもよい。
【0071】
オペレータが操作装置35を操作して、作業車両1の動作指示を入力すると、制御装置31が、当該動作指示に対応する遠隔操作信号を生成し、当該遠隔操作信号を通信装置33により作業車両1に送信する。作業車両1の車載制御装置21は、遠隔装置30からの遠隔操作信号を車載通信装置23により受信すると、当該遠隔操作信号と、検出装置24などの検出情報とセンシング装置25のセンシング情報とに基づいて、作業車両1の各部を動作させて、作業車両1の走行及び操舵を制御したり、作業機2による作業動作を制御したりする。また、車載制御装置21は、検出情報及びセンシング情報を車載通信装置23により遠隔装置30に送信する。
【0072】
遠隔装置30の制御装置31は、検出情報及びセンシング情報を通信装置33により受信すると、これらの情報を内部メモリ32に記憶させ且つ表示装置34に表示させる。特に、制御装置31は、カメラ25cにより撮像された作業車両1の車体3の前方撮像画像及び後方撮像画像を含む遠隔監視画面を表示装置34に表示させる。そして、制御装置31は、表示装置34に表示させた前方撮像画像及び後方撮像画像に、作業車両1又は作業機2の姿勢を示すオブジェクトをそれぞれ重畳表示させる。
【0073】
図7は、作業車両1と遠隔装置30の動作を示すフローチャートである。図7の左側に示すフローチャートの各ステップは、作業車両1の車載制御装置21が内部メモリに記憶されたソフトウェアプログラムに基づいて実行する。図7の右側に示すフローチャートの各ステップは、遠隔装置30の制御装置31が内部メモリ32に記憶されたソフトウェアプログラムに基づいて実行する。
【0074】
遠隔装置30が起動すると、制御装置31が、作業車両1で検出された情報を要求するリクエスト信号を、通信装置33により作業車両1に送信する(S1)。作業車両1の車載制御装置21は、遠隔装置30からのリクエスト信号を車載通信装置23により受信すると(S11)、検出装置24などの検出情報とセンシング装置25のセンシング情報とを車載通信装置23により遠隔装置30に送信する(S12)。
【0075】
遠隔装置30の制御装置31は、検出情報及びセンシング情報を通信装置33により受信すると(S2)、これらの情報を一旦内部メモリ32に記憶させた後に読み込む。そして、制御装置31は、読み込んだ検出情報及びセンシング情報に基づいて、遠隔監視画面を表示装置34に表示させる(S3)。遠隔監視画面の詳細は後述する。
【0076】
制御装置31は、遠隔監視画面を表示させた後、所定時間が経過すると、再度リクエスト信号を作業車両1に送信する(S1)。作業車両1では、遠隔装置30からのリクエスト信号が再度受信されると(S11)、車載制御装置21が、検出装置24などの検出情報とセンシング装置25のセンシング情報とを遠隔装置30に再度送信する(S12)。制御装置31は、検出情報及びセンシング情報を再度受信すると(S2)、当該情報に基づいて遠隔監視画面を再度表示する(S3)。
【0077】
上記のように、作業車両1の検出装置24などの検出情報とセンシング装置25のセンシング情報とが周期的に作業車両1から遠隔装置30に送信され、当該検出情報とセンシング情報とに基づいて遠隔監視画面が周期的に更新される。
【0078】
オペレータが遠隔装置30の操作装置35によって作業車両1の走行などの動作指示を入力したときに、制御装置31は、当該動作指示に対応する遠隔操作信号を通信装置33により作業車両1に送信すると共に、リクエスト信号を作業車両1に送信する(S1)。この場合も、作業車両1では、遠隔装置30からのリクエスト信号が再度受信されると(S11)、車載制御装置21が、検出装置24などの検出情報とセンシング装置25のセンシング情報とを遠隔装置30に再度送信する(S12)。制御装置31は、検出情報及びセンシング情報を再度受信すると(S2)、当該情報に基づいて遠隔監視画面を再度表示する(S3)。
【0079】
上記のように、オペレータが遠隔装置30に作業車両1の動作指示を入力する度に、検出装置24などの検出情報とセンシング装置25のセンシング情報とが作業車両1から遠隔装置30に送信され、当該検出情報とセンシング情報とに基づいて遠隔監視画面が更新される。
【0080】
また、作業車両1が遠隔装置30による遠隔操作で走行しているときに、車載制御装置21は、センシング装置25のセンシング情報に基づいて、作業車両1と障害物との接触を避けるために作業車両1の走行を自動で緊急停止させることがある(S13:YES)。この場合、車載制御装置21は、検出装置24などの検出情報とセンシング装置25のセンシング情報とを車載通信装置23により遠隔装置30に送信する(S12)。制御装置31は、検出情報及びセンシング情報を受信すると(S2)、当該情報に基づいて遠隔監視画面を表示する(S3)。
【0081】
即ち、作業車両1の遠隔操作による走行中に、作業車両1が自動で緊急停止したときにも、検出装置24などの検出情報とセンシング装置25のセンシング情報とが作業車両1から遠隔装置30に送信され、当該検出情報とセンシング情報とに基づいて遠隔監視画面が更新される。図7に示す遠隔装置30及び作業車両1の動作、並びに遠隔監視画面の表示は、遠隔装置30が停止する(電源オフ)まで継続される。
【0082】
図8は、表示装置34に表示される遠隔監視画面40の一例を示す図である。詳しくは、図8は、作業車両1の遠隔操作による走行中に、表示装置34に表示される遠隔監視画面40を示している。
【0083】
遠隔装置30の制御装置31は、作業車両1の検出装置24及び車載制御装置21により検出された作業車両1の状態を、遠隔監視画面40のウインドウ41a、41bに表示させる。図8に示す例では、走行装置7の進行方向が前進方向に切り換えられていること(「シャトル:F」)、変速装置5の副変速が高速段に切り換えられていること(「副変速:高」)、主変速(無段変速)の状態が50%になっていること(「主変速:50%」)、作業車両1が2輪駆動モードで走行していること(「走行モード:2WD」)、及びアクセルペダルの操作量が40%であることが、ウインドウ41aに表示されている。また、作業車両1が遠隔操作で走行中であること(「遠隔操作中」)、作業車両1(車体3)の走行速度が2.9km/hであること、及び原動機4の回転数1600rpmであることなどが、ウインドウ41bに表示されている。
【0084】
ウインドウ41a、41bに表示される情報は、上記の作業車両1の状態に限定されない。また、ウインドウ41a、41bの数は2つに限定されず、1つでも3つ以上でもよい。また、制御装置31が、検出装置24などの検出情報又はセンシング装置25のセンシング情報に基づいて、作業車両1の状態だけでなく、作業車両1への作業機2の連結の有無、作業機2の種類などを、遠隔監視画面40のウインドウに表示させてもよい。
【0085】
また、制御装置31は、作業車両1に設けられた複数のカメラ25cのうち、キャビン9内に設置された内部カメラ25c2(図2)により運転者目線で作業車両1の前方が撮像された前方撮像画像42aと、車体3の後部に設置された後部カメラ25c1(図2)により作業車両1の後方が撮像された後方撮像画像42bとを、表示装置34により遠隔監視画面40に表示させる。
【0086】
前方撮像画像42aには、キャビン9内の一部(ピラー、ミラー、ステアリングハンドル11aなど)と、作業車両1の前部(ボンネット12と前輪7Fなど)と、作業車両1の前方の周辺環境とが映り込んでいる。後方撮像画像42bには、車体3の後部に設けられた連結装置8の一部と、連結装置8に連結された作業機2の一部と、作業車両1の後方の周辺環境とが映り込んでいる。
【0087】
なお、キャビン9内に内部カメラ25c2だけでなく、運転者目線で作業車両1の後方を撮像する後方用内部カメラが設置されてもよい。そして、制御装置31が、当該後方用内部カメラによって撮像された後方撮像画像を、後方撮像画像42bに代えて或いは加えて、表示装置34により遠隔監視画面40に表示させてもよい。また、制御装置31は、車体3の前部に設置されたカメラ25c(図示省略)により作業車両1の前方が撮像された前方撮像画像を、前方撮像画像42aに代えて或いは加えて、表示装置34により遠隔監視画面40に表示させてもよい。
【0088】
また、図8の例では、遠隔監視画面40において、前方撮像画像42aを後方撮像画像42bより大きく表示しているが、これ以外に、制御装置31が、例えば作業車両1(車体3)の前進時に前方撮像画像42aを後方撮像画像42bより大きく表示し、作業車両1の後進時に後方撮像画像42bを前方撮像画像42aより大きく表示してもよい。
【0089】
図8に示すように、制御装置31は、検出装置24の慣性計測装置24bにより検出された作業車両1(車体3)の姿勢を示す車両姿勢オブジェクト(第1姿勢オブジェクト)51~55を、表示装置34により遠隔監視画面40中の前方撮像画像42a及び後方撮像画像42bにそれぞれ重畳表示させる。
【0090】
車両姿勢オブジェクト51~55には、作業車両1の水平姿勢に対応する水平基準ライン(水平基準オブジェクト)55、作業車両1のロール角(左右の傾斜角度)θrを示すロール指標ライン(第1指標オブジェクト)51、作業車両1のロール角θrを示す数値52a、及び当該数値52aの表示欄52bが含まれている。制御装置31は、慣性計測装置24bにより検出された作業車両1のロール角θrに応じて、ロール指標ライン51を水平基準ライン55に対して傾斜させて、前方撮像画像42a及び後方撮像画像42bにそれぞれ重畳表示させる。また、制御装置31は、ロール指標ライン51の中央に円形の表示欄52bを重畳表示させ、当該表示欄52bにロール角θrの数値52aを重畳表示させる。
【0091】
また、車両姿勢オブジェクト51~55には、作業車両1のピッチ角θp(前後の傾斜角度、第2傾斜角度)の目盛を示す複数の目盛ライン(目盛オブジェクト)53a、各目盛ライン53aに対応する数値53b、及び作業車両1のピッチ角θpを複数の目盛ライン53aに対して示すピッチ指標ライン(第2指標オブジェクト)54も含まれている。制御装置31は、複数の目盛ライン53aと数値53bとを前方撮像画像42aに重畳表示させる。
【0092】
また、制御装置31は、慣性計測装置24bにより検出された作業車両1のピッチ角θpに応じて、ピッチ指標ライン54を前方撮像画像42a中のいずれかの目盛ライン53a上に或いは隣り合ういずれか2本の目盛ライン53a間にそれぞれ重畳表示させる。さらに、制御装置31は、複数の目盛ライン53a、数値53b、及びピッチ指標ライン54を、作業車両1のロール角θr(第1傾斜角度)に応じて左右に傾斜させる。
【0093】
図8の例では、作業車両1が右傾姿勢(図5)で且つ前傾姿勢(図4)にある場合の、車両姿勢オブジェクト51~55を制御装置31が示しているため、ロール指標ライン51及び数値52aが示すロール角θrがマイナス値(-θr[-15°])になっていて、ピッチ指標ライン54及び数値53bが示すピッチ角θpもマイナス値(-θp[-7°])になっている。また、作業車両1のロール角がマイナス値(-θr)であるため、複数の目盛ライン53a、数値53b、及びピッチ指標ライン54が、当該ロール角(-θr)に応じて右に傾斜している。
【0094】
また、作業車両1が左傾姿勢にある場合には、制御装置31によってロール指標ライン51及び数値52aが示すロール角θrがプラス値(+θr)になり、複数の目盛ライン53a、数値53b、及びピッチ指標ライン54が、当該ロール角(+θr)に応じて左に傾斜する(図示省略)。また、作業車両1が後傾姿勢にある場合には、制御装置31によってピッチ指標ライン54及び数値53bが示すピッチ角θpがプラス値(+θp)になる(図示省略)。
【0095】
また、制御装置31は、車載制御装置21により検出された作業機2の姿勢を示す作業姿勢ライン(第2姿勢オブジェクト)56を、表示装置34により遠隔監視画面40中の後方撮像画像42bに重畳表示させる。より詳しくは、作業機2の左右方向に対する姿勢(図5の右傾姿勢、或いは図示しない左傾姿勢)が作業車両1の連結装置8の角度変更シリンダ8fなどにより変更された場合に、車載制御装置21が変更後の作業機2の左右方向に対する姿勢、即ち変更後の作業機2のロール角を検出する。そして、制御装置31が、変更後の作業機2のロール角に応じて、作業姿勢ライン56を水平基準ライン55に対して傾斜させて、後方撮像画像42bにそれぞれ重畳表示させる。
【0096】
図8に示すように、制御装置31は、前方撮像画像42aの中央に、ロール指標ライン51、数値52a、表示欄52b、目盛ライン53a、数値53b、ピッチ指標ライン54、及び水平基準ライン55を重畳表示させる。また、制御装置31は、後方撮像画像42bの中央に、ロール指標ライン51、数値52a、表示欄52b、及び作業姿勢ライン56を重畳表示させる。
【0097】
また、制御装置31は、車両姿勢オブジェクト51~55を、前方撮像画像42aにおける車両姿勢オブジェクト51~55の表示位置に映り込んだ被写体が視認可能になる表示形態で表示させる。具体的には、制御装置31は、複数の車両姿勢オブジェクト51~55を含んだ面積を有する画像を、前方撮像画像42aに表示させるのではなく、複数の車両姿勢オブジェクト51~55をそれぞれ前方撮像画像42aに表示させる。
【0098】
また、制御装置31は、ロール指標ライン51、目盛ライン53a、ピッチ指標ライン54、及び水平基準ライン55をそれぞれ、面積を有しない1次元の線分オブジェクトで構成して、前方撮像画像42aに表示させる。また、制御装置31は、数値52a、53bをそれぞれ文字オブジェクトで構成して、前方撮像画像42aに表示させる。また、制御装置31は、表示欄52bを、数値52aを包囲可能な小径の円オブジェクトで構成して、前方撮像画像42aに表示させる。また、制御装置31は、前方撮像画像42aにおける車両姿勢オブジェクト51~55の表示位置に映り込んだ被写体を全部覆わないように、車両姿勢オブジェクト51~55の位置と間隔と大きさをそれぞれ設定して、当該設定内容で車両姿勢オブジェクト51~55を前方撮像画像42aに表示させる。
【0099】
また、制御装置31は、車両姿勢オブジェクト51、52a、52b、55と作業姿勢ライン56とを、後方撮像画像42bにおける当該姿勢オブジェクト51、52a、52b、55、56の表示位置に映り込んだ被写体が視認可能になる表示形態で表示させる。具体的には、制御装置31は、複数の姿勢オブジェクト51、52a、52b、55、56を含んだ面積を有する画像を、後方撮像画像42bに表示させるのではなく、複数の姿勢オブジェクト51、52a、52b、55、56をそれぞれ後方撮像画像42bに表示させる。
【0100】
また、制御装置31は、ロール指標ライン51及び水平基準ライン55と同様に、作業姿勢ライン56を、面積を有しない1次元の線分オブジェクトで構成して、これらを後方撮像画像42bに表示させる。また、制御装置31は、数値52aを文字オブジェクトで構成し、表示欄52bを小径の円オブジェクトで構成して、後方撮像画像42bに表示させる。また、制御装置31は、後方撮像画像42bにおける姿勢オブジェクト51、52a、52b、55、56の表示位置に映り込んだ被写体を全部覆わないように、姿勢オブジェクト51、52a、52b、55、56の位置と間隔と大きさをそれぞれ設定して、当該設定内容で姿勢オブジェクト51、52a、52b、55、56を後方撮像画像42bに表示させる。
【0101】
また、制御装置31は、前方撮像画像42aに映り込む作業車両1の一部(図8の例では、ボンネット12)に、車両姿勢オブジェクト51~55を重畳表示させる。また、制御装置31は、後方撮像画像42bに映り込む作業車両1の一部(図8の例では、連結装置8)に、車両姿勢オブジェクト51、52a、52b、55又は作業姿勢ライン56を重畳表示させる。また、制御装置31は、作業機2の種類又は大きさによっては、後方撮像画像42bに映り込む作業機2の一部に、車両姿勢オブジェクト51、52a、52b、55又は作業姿勢ライン56を重畳表示させる(図示省略)。
【0102】
また、制御装置31は、前方撮像画像42a及び後方撮像画像42bにおいて、作業車両1のロール角θrを示すロール指標ライン51と、作業車両1のピッチ角θpを示すピッチ指標ライン54と、水平基準ライン55と、作業姿勢ライン56とを、線種、形状(太さ、長さ、端部の形状)、色、輝度、明度、又は彩度などの見た目が異なる表示形態でそれぞれ表示させる。図8の例では、制御装置31は、ロール指標ライン51とピッチ指標ライン54と水平基準ライン55と作業姿勢ライン56の線種を異ならせたり、長さを異ならせたり、端部の形状を異ならせたり(矢印、菱形、丸印の有無)している。これ以外に、制御装置31が、例えばロール指標ライン51を紫色、ピッチ指標ライン54を青色、水平基準ライン55を赤色、作業姿勢ライン56を緑色というように、各ラインの色を変えて表示してもよい。
【0103】
また、図8の例では、制御装置31が、目盛ライン53aをピッチ指標ライン54とは異なる線種で表示させているが、これ以外に、例えば目盛ライン53aをピッチ指標ライン54と同色で表示して、目盛ライン53aとピッチ指標ライン54とを明確に対応付けてもよい。また、数値53bも目盛ライン53a及びピッチ指標ライン54と同色で表示して、これらを明確に対応付けてもよい。
【0104】
また、制御装置31は、例えば表示欄52bの内部を透明にして、背景に映り込んだ被写体(図8の例では道路)を視認可能にしてもよいし、或いは表示欄52bの内部を半透明若しくは不透明にしてもよい。また、制御装置31は、例えば表示欄52bを矩形オブジェクトにしてもよいし、或いは表示欄52bを省略して、ロール指標ライン51上若しくはロール指標ライン51の側傍に数値52aを表示してもよい。
【0105】
また、図8の例では、ロール角θrを示す数値52aが傾斜していないが、制御装置31は、ロール角θrに応じて数値52aを水平基準ライン55に対して傾斜させて、前方撮像画像42a及び後方撮像画像42bにそれぞれ重畳表示させてもよい。
【0106】
また、図8の例では、ピッチ角θpを示す数値が表示されていないが、制御装置31は、ピッチ角θpを示す数値を、ピッチ指標ライン54に対応させて、ピッチ指標ライン54上或いはピッチ指標ライン54の側傍などに表示させてもよい。また、制御装置31は、作業機2の変更後のロール角を示す数値も、作業姿勢ライン56に対応させて、作業姿勢ライン56上或いは作業姿勢ライン56の側傍などに表示させてもよい。
【0107】
また、図8の例では、ロール指標ライン51、数値52a、表示欄52b、水平基準ライン55、及び作業姿勢ライン56が、後方撮像画像42bに重畳表示されているが、制御装置31が、目盛ライン53a、数値53b、及びピッチ指標ライン54を、ロール指標ライン51などに加えて或いは代えて、後方撮像画像42bに重畳表示させてもよい。
【0108】
また、オペレータが、遠隔装置30の操作装置35を操作することにより、所定の設定画面を表示装置34に表示させて、当該設定画面で前方撮像画像42a又は後方撮像画像42bに重畳表示させる姿勢オブジェクト51~56を適宜選択できるようにしてもよい。また、オペレータが、姿勢オブジェクト51~56以外の作業車両1の姿勢を示す車両姿勢オブジェクト及び作業機2の姿勢を示す作業姿勢オブジェクトの表示と非表示を適宜選択できるように、上記設定画面を構成してもよい。
【0109】
また、オペレータが、複数のカメラ25cによりそれぞれ撮像された作業車両1の前方、後方、左右側方の複数の撮像画像のうち、任意の1つ以上の撮像画像を所定の設定画面で選択し、制御装置31が、当該選択された撮像画像を遠隔監視画面40に表示させ、当該表示させた撮像画像に車両姿勢オブジェクト51~55及び作業姿勢オブジェクト56を表示させてもよい。
【0110】
また、作業機2が作業車両1の後方以外の方向に連結されている場合、制御装置31が、複数のカメラ25cによりそれぞれ撮像された作業車両1の前方、後方、左右側方の複数の撮像画像のうち、作業機2が連結された方向の撮像画像と、作業車両1の進行方向の撮像画像とを、表示装置34により遠隔監視画面40に表示させ、当該表示させた撮像画像に車両姿勢オブジェクト51~55及び作業姿勢オブジェクト56を表示させてもよい。
【0111】
また、オペレータが、車両姿勢オブジェクト51~55及び作業姿勢オブジェクト56の線種、形状、色、輝度、明度、彩度、又は透明性などの表示形態を、所定の設定画面で適宜設定できるようにしてもよい。
【0112】
また、図8の例では、車体3のピッチ角θpを示すために複数の目盛ライン53aと複数の目盛の数値53bとが前方撮像画像42aに表示されているが、これ以外に、制御装置31が、ロール指標ライン51と共に、車体3のロール角θrの目盛を示す複数の目盛ラインと複数の目盛の数値とを所定の角度間隔で、前方撮像画像42a及び後方撮像画像42bに重畳表示させてもよい。この場合、制御装置31は、ロール角θrを示す数値52aと表示欄52bを省略してもよい。また、制御装置31は、作業姿勢ライン56と共に、作業機2のロール角の目盛を示す複数の目盛ラインと複数の目盛の数値とを所定の角度間隔で、後方撮像画像42bに重畳表示させてもよい。
【0113】
また、図8の例では、角度変更シリンダ8fなどによる変更後の作業機2の左右方向に対する姿勢(ロール角)が後方撮像画像42bに重畳表示されているが、例えば作業機2の左右方向に対する姿勢が連結装置8によって変更される前には、制御装置31が、作業機2の左右方向に対する姿勢を後方撮像画像42bに表示させなくてもよいし、或いは作業機2の左右方向に対する現在の姿勢(変更前の姿勢)を後方撮像画像42bに表示させてもよい。
【0114】
また、制御装置31が、作業機2の上下方向に対する姿勢(昇降位置(作業位置・非作業位置など))を示す作業姿勢オブジェクトを後方撮像画像42bに表示させたり、作業機2の上下方向に対する姿勢を示すオブジェクトを遠隔監視画面40に表示させたりして
もよい。
【0115】
また、作業機2が、左右方向と平行な軸回りの姿勢(チルト)、上下方向と平行な軸回りの姿勢(アングル)、及び左右方向へオフセットした姿勢などのうち、いずれかの姿勢の調節が可能な作業機である場合、当該作業機2の姿勢をそれぞれ車載制御装置21又は検出装置24で検出し、遠隔装置30の制御装置31が、当該検出した作業機2の姿勢を示す作業姿勢オブジェクトを遠隔監視画面40中の後方撮像画像42bなどに重畳表示させてもよい。
【0116】
以上説明した本実施形態の作業車両の遠隔操作支援システム100及び遠隔装置30は、以下の構成を備え、効果を奏する。
【0117】
本実施形態の作業車両の遠隔操作支援システム100は、作業車両1の姿勢を検出する検出装置24(慣性計測装置24b)と、作業車両1に対して連結された作業機2側の周囲(作業車両1の周囲)を撮像する第1撮像装置(後部カメラ)25c1と、第1撮像装置25c1とは異なる作業車両1の周囲を撮像する第2撮像装置(内部カメラ)25c2と、第1撮像装置25c1及び第2撮像装置25c2により撮像された複数の撮像画像42b、42aを表示する表示装置34と当該表示装置34を制御する制御装置31とを有する遠隔装置30と、を備え、制御装置31は、検出装置24、24bにより検出された作業車両1の姿勢を示す第1姿勢オブジェクト51~55を、表示装置34に表示された複数の撮像画像42a、42bに重畳表示させる。
【0118】
上記構成によれば、オペレータは、遠隔装置30が有する表示装置34に表示された作業車両1の周囲の作業機2側の撮像画像42bと、作業機2側とは異なる撮像画像42bと、当該撮像画像42b、42aに重畳表示された第1姿勢オブジェクト51~55とを見て、作業車両1の姿勢を容易に把握することができる。また、オペレータは、例えば遠隔操作で作業車両1を走行させながら作業機2により作業を行う場合に、作業車両1に対して作業機2が連結された連結方向とこれとは異なる方向の様子と、当該連結方向及び異なる方向のそれぞれにおける作業車両1の姿勢とを容易に関連付けて把握することができ、作業車両1を容易に遠隔操作することが可能となる。
【0119】
本実施形態では、第1撮像装置25c1は、作業車両1に対して作業機2が連結された方向を撮像し、第2撮像装置25c2は、作業車両1の進行方向を撮像し、制御装置31は、第1撮像装置25c1により撮像された第1撮像画像42b及び第2撮像装置25c2により撮像された第2撮像画像42aを表示装置34に表示させ、当該表示させた第1撮像画像42b及び第2撮像画像42aに第1姿勢オブジェクト51~55を重畳表示させる。これにより、オペレータは、例えば遠隔操作で作業車両1を走行させながら作業機2により作業を行う場合に、作業車両1の進行方向及び作業機2の連結方向の様子と、作業車両1の進行方向及び作業機2の連結方向のそれぞれにおける作業車両1の姿勢とを容易に関連付けて把握することができ、作業車両1を容易に遠隔操作することが可能となる。
【0120】
また、本実施形態では、第1撮像装置25c1は、作業機2が連結された作業車両1の後方を撮像し、第2撮像装置25c2は、作業車両1の前方を撮像し、制御装置31は、第1撮像装置により撮像された車体3の後方撮像画像42b及び第2撮像装置により撮像された車体3の前方撮像画像42aを表示装置34に表示させ、当該表示させた後方撮像画像42b及び前方撮像画像42aに、第1姿勢オブジェクト51~55をそれぞれ重畳表示させる。これにより、オペレータは、表示装置34に表示された作業車両1の前方撮像画像42a及び後方撮像画像42bと、当該撮像画像42a、42bに重畳表示された第1姿勢オブジェクト51~55とを見て、作業車両1の姿勢を容易に把握することがで
きる。また、オペレータは、遠隔操作で作業車両1を前進或いは後進させる場合、又は作業車両1の後方に連結された作業機2によって作業を行う場合などに、作業車両1の前後の様子と作業車両1の姿勢とを容易に関連付けて把握することができ、作業車両1を容易に遠隔操作することが可能となる。
【0121】
また、本実施形態では、制御装置31は、複数の撮像画像42a、42bの中央に第1姿勢オブジェクト51~55を重畳表示させる。これにより、オペレータは、複数の撮像画像42a、42bをそれぞれ一目見て、作業車両1の姿勢を容易に把握することができる。また、オペレータの視線の移動量を減少させて、負担を軽減することができる。
【0122】
また、本実施形態では、制御装置31は、第1姿勢オブジェクト51~55を、複数の撮像画像42a、42bのそれぞれにおける第1姿勢オブジェクト51~55の表示位置に映り込んだ被写体が視認可能になる表示形態で表示させる。これにより、オペレータは、複数の撮像画像42a、42bにそれぞれ映り込んだ被写体を視認しつつ、作業車両1の姿勢を容易に把握することができる。
【0123】
また、本実施形態では、制御装置31は、複数の撮像画像42a、42bの少なくともいずれかに、第1姿勢オブジェクトとして、作業車両1の水平姿勢に対応する水平基準オブジェクト(水平基準ライン)55と、検出装置24、24bにより検出された作業車両1の傾斜角度(第1傾斜角度)θrを示す指標オブジェクト(第1指標オブジェクト、ロール指標ライン)51とを重畳表示させ、且つ指標オブジェクト51を作業車両1の傾斜角度θrに応じて水平基準オブジェクト55に対して傾斜させる。これにより、オペレータは、作業車両1が水平状態に対してどの方向にどの程度傾斜しているかを容易に把握することができる。
【0124】
また、本実施形態では、制御装置31は、複数の撮像画像42a、42bの少なくともいずれかに、第1姿勢オブジェクトとして、水平基準オブジェクト55及び指標オブジェクト51と共に、作業車両1の傾斜角度θrを示す数値52aを重畳表示させる。これにより、オペレータは、作業車両1が水平状態に対してどの方向にどの程度傾斜しているかを容易且つ数的に把握することができる。
【0125】
また、本実施形態では、制御装置31は、複数の撮像画像42a、42bの少なくともいずれかに、第1姿勢オブジェクトとして、所定方向(前後方向)に対する作業車両1の傾斜角度(第2傾斜角度)θpの目盛を示す目盛オブジェクト53a、53bと、検出装置24、24bにより検出された所定方向に対する作業車両1の傾斜角度θpを目盛オブジェクト53a、53bに対して示す指標オブジェクト(第2指標オブジェクト、ピッチ指標ライン)54とを重畳表示させる。これにより、オペレータは、作業車両1が所定方向(前後方向)に対してどの程度傾斜しているかを容易且つ数的に把握することができる。
【0126】
また、本実施形態では、制御装置31は、目盛オブジェクト53a、53b及び指標オブジェクト54を、検出装置24、24bにより検出された所定方向(前後方向)とは異なる方向(左右方向)に対する作業車両1の傾斜角度θrに応じて傾斜させる。これにより、オペレータは、作業車両1が所定方向(前後方向)に対してどの程度傾斜しているかを容易且つ数的に把握することができると共に、作業車両1が所定方向とは異なる方向(左右方向)に対してどの程度傾斜しているかも容易に把握することもできる。
【0127】
また、本実施形態では、制御装置31は、目盛オブジェクト53a、53bとして、複数の目盛ライン53aと、当該複数の目盛ライン53aにそれぞれ対応する複数の数値53bとを表示させ、且つ複数の目盛ライン53aと複数の数値53bとを、複数の撮像画像42a、42bの少なくともいずれかにおける目盛オブジェクト53a、53bの表示位置に映り込んでいた被写体が視認可能になる表示形態で表示させる。これにより、オペレータは、複数の撮像画像42a、42bの少なくともいずれかにおいて、映り込んだ被写体を視認しつつ、作業車両1がどの方向にどの程度傾斜しているかを容易に把握することができる。
【0128】
また、本実施形態では、制御装置31は、検出装置24、24bにより検出された作業車両1のピッチ角θp及びロール角θrの少なくともいずれかを示す第1姿勢オブジェクト51~55を、複数の撮像画像42a、42bに重畳表示させる。これにより、オペレータは、複数の撮像画像42a、42bと第1姿勢オブジェクト51~55とを見て、作業車両1のピッチ角θp及びロール角θrの少なくともいずれかを容易に把握することができる。また、オペレータは、作業車両1のピッチ角θp及びロール角θrに基づいて、遠隔装置30により作業車両1を遠隔操作し易くなる。
【0129】
また、本実施形態では、制御装置31は、複数の撮像画像42a、42bのうち、作業機2を映す撮像画像42bに、作業機2の姿勢を示す第2姿勢オブジェクト(作業姿勢ライン)56を重畳表示させる。これにより、オペレータは、撮像画像42bと第2姿勢オブジェクト56とを見て、作業機2の姿勢を容易に把握することができる。また、オペレータは、作業機2の姿勢に基づいて、遠隔装置30により作業車両1を遠隔操作して、作業機2により作業し易くなる。
【0130】
また、本実施形態では、制御装置31は、作業車両1に設けられた姿勢変更装置(連結装置)8により作業機2の姿勢が変更された場合の、変更後の作業機2の姿勢を示す第2姿勢オブジェクト56を、作業機2を映す撮像画像42bに重畳表示させる。これにより、オペレータは、撮像画像42bと第2姿勢オブジェクト56とを見て、姿勢変更装置8により変更された作業機2の姿勢を容易に把握することができる。また、オペレータは、当該変更後の作業機2の姿勢に基づいて、遠隔装置30により遠隔操作で作業車両1を走行させながら、作業機2により作業した作業跡の状態も把握することができる。
【0131】
また、本実施形態では、制御装置31は、複数の撮像画像42a、42bに映り込む作業車両1又は作業機2の一部に、第1姿勢オブジェクト51~55及び第2姿勢オブジェクト56を重畳表示させる。これにより、複数の撮像画像42a、42bに映り込んだ作業車両1の第1方向及び第2方向の様子が、第1姿勢オブジェクト51~55及び第2姿勢オブジェクト56により見難くなるのを防ぎつつ、第1姿勢オブジェクト51~55及び第2姿勢オブジェクト56を見易くすることができる。
【0132】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0133】
1 作業車両
2 作業機
24 検出装置
24b 慣性計測装置
25c1 後部カメラ(第1撮像装置)
25c2 内部カメラ(第2撮像装置)
30 遠隔装置
31 制御装置
34 表示装置
40 遠隔監視画面
42a 前方撮像画像
42b 後方撮像画像
51 ロール指標ライン(車両姿勢オブジェクト、指標オブジェクト、第1姿勢オブジェクト)
52a 作業車両のロール角を示す数値(車両姿勢オブジェクト、第1姿勢オブジェクト)
53a 目盛ライン(車両姿勢オブジェクト、目盛オブジェクト、第1姿勢オブジェクト)
53b 目盛ラインに対応する数値(車両姿勢オブジェクト、目盛オブジェクト、第1姿勢オブジェクト)
54 ピッチ指標ライン(車両姿勢オブジェクト、指標オブジェクト、第1姿勢オブジェクト)
55 水平基準ライン(車両姿勢オブジェクト、水平基準オブジェクト、第1姿勢オブジェクト)
56 作業姿勢ライン(作業姿勢オブジェクト、第2姿勢オブジェクト)
100 作業車両の遠隔操作支援システム
θp 車体のピッチ角
θr 車体のロール角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8