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特開2024-94473荷役車両、荷役車両の制御方法及び荷役車両の制御プログラム
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  • 特開-荷役車両、荷役車両の制御方法及び荷役車両の制御プログラム 図1
  • 特開-荷役車両、荷役車両の制御方法及び荷役車両の制御プログラム 図2
  • 特開-荷役車両、荷役車両の制御方法及び荷役車両の制御プログラム 図3
  • 特開-荷役車両、荷役車両の制御方法及び荷役車両の制御プログラム 図4
  • 特開-荷役車両、荷役車両の制御方法及び荷役車両の制御プログラム 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094473
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】荷役車両、荷役車両の制御方法及び荷役車両の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
B66F9/24 J
B66F9/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211023
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】小島 宏志
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AE02
3F333BA02
3F333BA08
3F333DB01
3F333FA09
3F333FA32
3F333FD06
3F333FE01
(57)【要約】
【課題】荷崩れの発生を好適に抑制する。
【解決手段】フォークリフト1は、直進走行及び旋回走行が可能な車体10と、車体10に設けられて荷Lを保持するフォーク12と、荷Lの重量を取得する荷重センサ29と、フォーク12の加速度及び角速度の少なくとも一方を取得するフォークIMU25と、制御部27とを備える。制御部27は、荷Lの重心位置を取得し、フォーク12の加速度及び角速度の少なくとも一方と、荷Lの重量及び重心位置とに基づいて、荷Lの動的な重心位置であるZMPを算出し、ZMPに基づいて、荷Lが転倒するか否かを判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直進走行及び旋回走行が可能な車体と、
前記車体に設けられて荷を保持する荷役装置と、
前記荷の重量を取得する第1取得部と、
前記荷役装置の加速度及び角速度の少なくとも一方を取得する第2取得部と、
前記荷の重心位置を取得する第3取得部と、
前記荷役装置の加速度及び角速度の少なくとも一方と、前記荷の重量及び重心位置とに基づいて、前記荷の動的な重心位置であるZMPを算出する算出部と、
前記ZMPに基づいて、前記荷が転倒するか否かを判定する判定部と、
を備える荷役車両。
【請求項2】
前記判定部は、前記ZMPが前記荷の底面内の所定範囲よりも外側に外れている場合に、前記荷が転倒すると判定する、
請求項1に記載の荷役車両。
【請求項3】
前記荷が転倒すると前記判定部が判定した場合に、前記荷に作用する慣性力を抑制する動作制御部を備える、
請求項2に記載の荷役車両。
【請求項4】
外部装置と情報の送受信が可能な通信部を備え、
前記第3取得部は、
少なくとも前記荷の形状の情報を、前記通信部を通じて前記外部装置から取得し、
前記荷の形状の情報に基づいて、前記荷の重心位置を算出する、
請求項1に記載の荷役車両。
【請求項5】
直進走行及び旋回走行が可能な車体と、
前記車体に設けられて荷を保持する荷役装置と、
前記荷の重量を取得する第1取得部と、
前記荷役装置の加速度及び角速度の少なくとも一方を取得する第2取得部と、
を備える荷役車両の制御方法であって、
前記荷役車両は、前記荷の重心位置を取得する第3取得部をさらに備え、
制御部が、
前記荷役装置の加速度及び角速度の少なくとも一方と、前記荷の重量及び重心位置とに基づいて、前記荷の動的な重心位置であるZMPを算出する算出工程と、
前記ZMPに基づいて、前記荷が転倒するか否かを判定する判定工程と、
を実行する荷役車両の制御方法。
【請求項6】
直進走行及び旋回走行が可能な車体と、
前記車体に設けられて荷を保持する荷役装置と、
前記荷の重量を取得する第1取得部と、
前記荷役装置の加速度及び角速度の少なくとも一方を取得する第2取得部と、
を備える荷役車両の制御プログラムであって、
前記荷役車両は、前記荷の重心位置を取得する第3取得部をさらに備え、
コンピュータを、
前記荷役装置の加速度及び角速度の少なくとも一方と、前記荷の重量及び重心位置とに基づいて、前記荷の動的な重心位置であるZMPを算出する算出部、
前記ZMPに基づいて、前記荷が転倒するか否かを判定する判定部、
として機能させる荷役車両の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役車両、荷役車両の制御方法及び荷役車両の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフト等の荷役車両を使用する現場では、荷の転倒や落下を含む荷崩れを防ぐために、車両速度が制限される場合がある。車両速度が制限されると作業効率が悪化するため、車両速度の制限度合いを緩和しつつ好適に荷崩れを抑制できる技術が望まれていた。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載の技術では、車載カメラで撮影した画像に基づいて荷の外郭座標を検出し、当該外郭座標に基づいて荷が偏って配置されているか否かを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-123537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、専用の車載カメラを必要としている。より簡便な構成で荷崩れの発生を抑制できることが望ましい。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、荷崩れの発生を好適に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る荷役車両は、
直進走行及び旋回走行が可能な車体と、
前記車体に設けられて荷を保持する荷役装置と、
前記荷の重量を取得する第1取得部と、
前記荷役装置の加速度及び角速度の少なくとも一方を取得する第2取得部と、
前記荷の重心位置を取得する第3取得部と、
前記荷役装置の加速度及び角速度の少なくとも一方と、前記荷の重量及び重心位置とに基づいて、前記荷の動的な重心位置であるZMP(ゼロモーメントポイント)を算出する算出部と、
前記ZMPに基づいて、前記荷が転倒するか否かを判定する判定部と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、荷崩れの発生を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るフォークリフトの側面図である。
図2】実施形態に係るフォークリフトの概略の制御構成を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る荷崩れ抑制処理の手順を示すフローチャートである。
図4】実施形態に係る荷崩れ抑制処理を説明するための図である。
図5】実施形態に係る荷の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
[フォークリフトの構成]
図1は、本実施形態に係るフォークリフト1の側面図である。
本実施形態に係るフォークリフト1は、本発明に係る荷役車両の一例であり、例えば倉庫内での荷Lの搬送を含む荷役作業を行う。フォークリフト1は、特に限定はされないが、無人(自動)で動作可能な無人搬送フォークリフト(AGF:Automated Guided Forklift)であり、管理サーバ200(図2参照)からの動作指令等に基づいて所定の荷役作業を行う。
なお、以下の説明において、前後左右上下の各方向の記載は、特に断りのない限り、フォークリフト1から見た方向を意味するものとする。
【0011】
具体的に、フォークリフト1の車体10は、車両本体11、フォーク12、昇降体(リフト)13、マスト14、車輪15を備える。車体10は、所定の向きで進行方向に走行可能となっている。マスト14は車両本体11の後方に設けられ、図示しない駆動源によって駆動されて車両本体11の前後に傾斜する。昇降体13は、図示しない駆動源によって駆動され、マスト14に沿って昇降する。昇降体13には、荷Lやパレット30などを保持する左右一対のフォーク12が取り付けられている。一対のフォーク12は、マスト14及び昇降体13の駆動により、車両本体11に対する傾斜及び昇降が可能となっている。本発明に係る荷役装置は、フォーク12、昇降体13及びマスト14を含む。なお、マスト14は傾斜せずに、昇降体13がマスト14に対して傾斜する構成であってもよい。
パレット30は、荷Lが載置された荷受台である。このパレット30は、短矩形板状に形成され、一対のフォーク12が挿入される2つの孔部(フォークポケット)32を有する。
【0012】
図2は、フォークリフト1の概略の制御構成を示すブロック図である。
この図に示すように、フォークリフト1は、上記構成に加え、駆動部21、操作部22、表示部23、通信部28、車体IMU(Inertial Measurement Unit;慣性計測ユニット)24、フォークIMU25、荷重センサ29、記憶部26、制御部27を備える。
【0013】
駆動部21は、フォークリフト1の各種駆動源である走行モータ、操舵モータ及び荷役モータ(いずれも図示省略)を含む。走行モータは、車輪15のうちの駆動輪を駆動する。操舵モータは、車輪15のうちの操舵輪を回転(操舵動作)させる。これにより、フォークリフト1(車体10)は、直進走行及び旋回走行が可能となっている。荷役モータは、昇降体13の昇降とマスト14の傾倒との各動作を行わせる駆動源である。荷役モータ(荷役アクチュエータ)は油圧アクチュエータ等であってもよい。
【0014】
操作部22は、例えば有人(手動)運転時に運転者が各種操作を行う操作手段である。操作部22は、例えばハンドルやペダル、レバー、各種ボタン等を含み、これらの操作内容に応じた操作信号を制御部27に出力する。
表示部23は、例えば液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のディスプレイであり、制御部27から入力される表示信号に基づいて各種情報を表示する。なお、表示部23は、操作部22の一部を兼ねるタッチパネルであってもよい。また、表示部23は、音声出力可能な音声出力部を含んでもよい。
通信部28は、管理サーバ200等との間で各種情報を送受信可能な通信デバイスである。
【0015】
車体IMU24は、車体10に配置され、車体10の三次元の加速度及び角速度を計測して、その結果を制御部27に出力する。
フォークIMU25は、フォーク12に内蔵され、フォーク12の三次元の加速度及び角速度を計測して、その結果を制御部27に出力する。ただし、フォークIMU25は、直進時のフォーク12(車体10)の加速度と、旋回時のフォーク12の角速度との少なくとも一方を取得できればよい。
【0016】
荷重センサ29は、駆動部21のうちの荷役アクチュエータの荷重(負荷)を検出するセンサである。荷重センサ29は、例えば、昇降体13を昇降させる油圧アクチュエータの油圧を検出する油圧センサを含む。
【0017】
記憶部26は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等により構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、制御部27の作業領域としても機能する。本実施形態の記憶部26は、後述の荷崩れ抑制処理(図3参照)を実行するための荷崩れ抑制プログラム260を予め記憶している。
制御部27は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成され、フォークリフト1各部の動作を制御する。具体的に、制御部27は、管理サーバ200からの動作指令等に基づいて駆動部21を動作させたり、記憶部26に予め記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。
【0018】
[荷崩れ抑制処理]
続いて、荷役作業中のフォークリフト1が荷崩れ抑制処理を実行するときの動作について説明する。
図3は、荷崩れ抑制処理の手順を示すフローチャートであり、図4は、荷崩れ抑制処理を説明するための図である。
【0019】
荷崩れ抑制処理は、フォークリフト1が荷役作業を行うときに、フォーク12上に保持した荷Lのパレット30上での転倒を抑制する処理であって、作業中に継続的に実行される処理である。荷崩れ抑制処理は、フォークリフト1の制御部27が記憶部26から荷崩れ抑制プログラム260を読み出して展開することで実行される。
なお、荷崩れ抑制処理は、荷役作業の略全体を制御する荷役処理に含まれてもよい。
【0020】
図3に示すように、荷役処理に伴って荷崩れ抑制処理が実行されると、まず制御部27は、図示しない管理サーバ200からの動作指令に基づいて、例えば倉庫内等でパレット30上の荷Lを搬送する荷役作業を開始し(ステップS1)、フォーク12上に荷Lを保持する。
【0021】
フォーク12上に荷Lを保持すると、制御部27は、荷重センサ29により荷Lの重量を検出する(ステップS2)。
【0022】
次に、制御部27は、車体10の動作によって荷Lに作用する慣性力を求める(ステップS3)。車体10の動作には、並進(直進)、回転(旋回)、及びこれらの複合が含まれる。
具体的に、制御部27は、フォークIMU25により計測したフォーク12(荷L)の加速度又は角速度と、ステップS2で求めた荷Lの重量とに基づいて、荷Lに作用する慣性力を算出する。
【0023】
次に、制御部27は、荷Lの重心の位置を求める(ステップS4)。
ここでは、制御部27は、管理サーバ200から予め(又は当該ステップS3の時点で)取得した荷Lの形状情報(サイズ情報を含む)と、ステップS2で検出した荷Lの重量とに基づいて、荷Lの重心の位置を求める。
なお、形状に加えて荷Lの密度又は重量分布の情報等を取得できた場合には、荷Lの重心の位置を直接算出できるが、詳細な荷Lの情報を得ることができない場合もあり得る。このような場合には、簡易的に荷Lの中心位置を重心と設定してもよい。また、荷Lの転倒に対する安全サイドの考え方を採用し、算出された位置(又は荷Lの中心位置)よりもやや上側の位置を重心としてもよい。また、例えば形状を取得可能なセンサを車体10に搭載していた場合には、当該センサにより荷Lの形状情報を取得してもよい。
【0024】
次に、制御部27は、荷Lの動的な重心位置であるゼロモーメントポイント(ZMP)の位置を求める(ステップS5)。
ZMPは、重力Mと慣性力Nの合力Fのモーメントがゼロとなる位置である。すなわち、ZMPは、図4(a)に示すように、重力Mと慣性力Nの合力(ベクトル)Fが床面(パレット30表面)と交わる点である。具体的に、制御部27は、ステップS2~S4で求めた荷Lの重量(重力M)、作用する慣性力N、重心Gの位置に基づいて、合力Fを算出し、当該合力Fとパレット30表面との交点としてZMPの位置を算出する。
【0025】
次に、制御部27は、ステップS5で求めたZMPの位置が、パレット30と接触する荷Lの底面La内の所定範囲に含まれているか否かを判定する(ステップS6)。
ここでは、制御部27は、ZMPの位置が、底面La上の所定の点P2よりも内側(荷Lの重心Gに近い側)に位置するか否かを判定する。点P2は、慣性力Nの方向における底面Laの端点P1よりも内側の点であって、重心Gから底面Laに下ろした垂線の足を中心として幅aWを有する2点のうち、慣性力Nが作用している方向(側)の点である。幅aWは、慣性力Nの方向における底面Laの幅(長さ)Wに対して1未満の係数aを乗じたものである。係数「a」は、1未満であれば特に限定されず(例えば0.95)、種々の演算誤差や安全率を見込んで設定される。
そして、ZMPの位置が荷Lの底面La内の所定範囲に含まれていると判定した場合(ステップS6;Yes)、制御部27は、荷Lがパレット30上で転倒するおそれは少ないと判断し、車体10の動作をそのまま続行させる(ステップS7)。
【0026】
一方、ステップS6において、ZMPの位置が荷Lの底面La内の所定範囲に含まれていないと判定した場合(ステップS6;No)、制御部27は、ZMPの位置が荷Lの底面La内の所定範囲に含まれるように、慣性力Nを抑制する(ステップS8)。
ここで、慣性力Nを抑制しない場合には、図4(b)に示すように、ZMPの位置が荷Lの底面Laの外側に外れて荷Lが底面Laの端点P1回りに転倒するおそれがある。そこで、制御部27は、ZMPの位置がより確実に荷Lの底面La(の所定範囲)内に入って転倒のおそれが低減するように、慣性力N(すなわち加速度又は角加速度)を小さくする。
【0027】
次に、制御部27は、荷崩れ抑制処理を終了させるか否かを判定し(ステップS9)、終了させないと判定した場合には(ステップS9;No)、上述のステップS2へ処理を移行し、荷役作業を続ける。
そして、例えば荷役作業の終了等により、荷崩れ抑制処理を終了させると判定した場合には(ステップS9;Yes)、制御部27は、荷崩れ抑制処理を終了させる。
【0028】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、荷重センサ29により取得された荷Lの重量と、フォークIMU25により取得されたフォーク12(荷L)の加速度及び角速度の少なくとも一方と、荷Lの重心位置と、に基づいて、荷Lの動的な重心G位置であるZMPが算出される。そして、ZMPに基づいて、荷Lが転倒するか否かが判定される。
これにより、専用の車載カメラを必要とすることなく簡便な構成で荷Lが転倒するか否かを判定できる。したがって、荷崩れの発生を好適に抑制することができる。
また、フォークIMU25をフォークリフト1に搭載することで、フォークリフト1自体の転倒防止制御に流用できたりピッチングや振動を検出できるので、フォークリフト1自体の安定化制御に利用しつつ、ZMPの算出にも利用して荷Lが転倒しないように制御できる。
【0029】
また、本実施形態によれば、ZMPが荷Lの底面La内の所定範囲よりも外側に外れている場合に、荷Lが転倒する(おそれがある)と判定される。
つまり、底面Laの端点P1を判定閾値とした場合、その判定時点で荷Lの転倒が生じるおそれがあるところ、端点P1よりも手前(内側)の位置で判定することで、荷Lの転倒をより確実に抑制できる。
また、本実施形態によれば、ZMPが荷Lの底面La内の所定範囲よりも外側に外れて、荷Lが転倒する(おそれがある)と判定された場合に、車体10に作用する慣性力Nが抑制される。
これにより、慣性力Nを抑えてZMPを底面Laの所定範囲内に移動させ、荷Lの転倒を抑制できる。
【0030】
また、本実施形態によれば、少なくとも荷Lの形状の情報が通信部28を通じて管理サーバ200等から取得され、取得された荷Lの形状の情報に基づいて荷Lの重心G位置が算出される。
これにより、好適に荷Lの形状の情報を取得して、荷Lの重心Gの位置を求めることができる。
なお、物流システムにおいては、トラックなどを利用して、製造工場から複数の倉庫を経由して小売店又は配送センターに配送され、これらの物流を効率的に行うため、倉庫内やトラック内においても、荷Lの種別や座標が高度に管理されるケースが想定される。そのようなケースにおいては、荷Lの寸法(XYZ)や重量の情報の情報を記憶・記録しておくのが望ましい。そうして取得した情報を用いることで、容易に精度よくZMPを算出することができる。また、物流(例えばコンベアでの搬送)の中で、設備側のセンサでXYZ寸法を測定しておくこと等もできる。荷役車両が備えるセンサで形状を取得しても良いが、センサの配置によっては、死角が生じることも想定されるため、物流の中で予め情報を記録して保持しておくのがより好ましい。
【0031】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態(変形例含む)に限られない。
例えば、上記実施形態では、荷Lがパレット30上で一体的に転倒する場合について説明した。しかし、本発明は、例えば図5に示すように、荷Lが複数の荷L1を含み、そのなかで荷L1が個別に転倒する場合を含む。この場合、管理サーバ200から荷L1の数量の情報を取得できれば、全体の重量を当該数量で割ることにより荷L1の単位重量が分かる。荷L1の形状は管理サーバ200から取得できる。
【0032】
また、上記実施形態では、水平に載置された荷Lの転倒について説明した。しかし、フォークリフト1が斜面を走行して車体10が傾斜していたり、フォーク12がチルト操作されて車体10に対して傾斜していたりする場合には、これらの傾斜を加味する必要がある。この場合でも、荷Lの傾斜は、フォークIMU25から姿勢情報として取得できる。ただし、車体IMU24を利用して取得してもよい。
また、車体10に対して並進運動の加速度と回転運動の角加速度とが複合して作用する場合には、これら両者を加味すればよい。
【0033】
また、上記実施形態では、フォークリフト1に搭載された制御部27が各種演算等を行うこととした。しかし、フォークリフト1外に設けられた制御手段(例えば管理サーバ200等の外部装置)が、フォークリフト1から送信された情報に基づいて演算を行い、その結果をフォークリフト1に送信することとしてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、フォークリフト1が無人搬送フォークリフトであることとした。しかし、本発明に係る荷役車両は、有人運転(遠隔操作含む)が可能なものや、有人運転と無人運転を切り替え可能なものを含む。また、本発明は有人運転のアシスト機能としても利用可能である。
また、本発明に係る荷役車両は、フォーク(又はそれに類する荷役装置)で荷を保持して走行できるものであればフォークリフトに限定されず、例えば無人で走行する無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)等を含む。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 フォークリフト(荷役車両)
10 車体
12 フォーク(荷役装置)
13 昇降体
14 マスト
24 車体IMU(第2取得部)
25 フォークIMU(第2取得部)
26 記憶部
27 制御部(第3取得部、算出部、判定部、動作制御部)
28 通信部
29 荷重センサ(第1取得部)
30 パレット
200 管理サーバ
260 荷崩れ抑制プログラム
F 合力
G 重心
L、L1 荷
La 底面
M 重力
N 慣性力
P1 荷の底面の端点
ZMP ゼロモーメントポイント
図1
図2
図3
図4
図5