(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094478
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】壁構造および下地桟の補強具
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20240703BHJP
E04B 2/56 20060101ALI20240703BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
E04B2/74 531Z
E04B2/56 645F
E04B1/94 L
E04B2/74 551A
E04B2/74 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211033
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ バン ニー
(72)【発明者】
【氏名】藤井 良清
(72)【発明者】
【氏名】針金 奏一郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 晃一
(72)【発明者】
【氏名】井田 勇治
(72)【発明者】
【氏名】安河内 義剛
【テーマコード(参考)】
2E001
2E002
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA04
2E001FA06
2E001GA55
2E001GA63
2E001HA03
2E001JA02
2E001KA01
2E002EA03
2E002EB12
2E002FA02
2E002FB05
(57)【要約】
【課題】下地桟に切欠き部が設けられた壁の耐火性能を向上させること。
【解決手段】壁構造(1)は、柱を含む構造躯体に固定されたパネルフレームと、柱間に架け渡されたブレースと、上下方向に延在し、ブレースとの干渉部分に切欠き部(31)が設けられた下地桟(12)と、下地桟を補強する補強具(4)とを備える。補強具は、パネルフレームの縦フレーム部(23a)に取り付けられる支持部材(41)と、上下方向において切欠き部に隣接する一般部(32)に係合する係合部材(42)と、支持部材および係合部材に連結され、支持部材と係合部材との間隔を維持する連結部材(43)とを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱を含む構造躯体に固定されたパネルフレームと、
前記柱間に架け渡されたブレースと、
上下方向に延在し、前記ブレースとの干渉部分に切欠き部が設けられた下地桟と、
前記下地桟を補強するための補強具とを備え、
前記補強具は、前記パネルフレームの縦フレーム部に取り付けられる支持部材と、上下方向において前記切欠き部に隣接する一般部に係合する係合部材と、前記支持部材および前記係合部材に連結され、前記支持部材と前記係合部材との間隔を維持する連結部材とを含む、壁構造。
【請求項2】
前記下地桟は、板状部材が固定される閉鎖面部と、前記閉鎖面部に対面する一対のリップ部を有するC形鋼であり、
前記係合部材は、前記リップ部の裏側に引っ掛けられる掛止部を含む、請求項1に記載の壁構造。
【請求項3】
前記連結部材は、前記支持部材から前記閉鎖面部まで延在する棒状部材を含む、請求項2に記載の壁構造。
【請求項4】
前記補強具は、板状部材の縦目地に対応する前記下地桟に取り付けられる、請求項1に記載の壁構造。
【請求項5】
前記下地桟は、角形形状であり、
前記係合部材は、前記下地桟に嵌合する略U字状の本体部と、前記本体部を前記下地桟に固定する締結部とを含む、請求項1に記載の壁構造。
【請求項6】
前記補強具は、断熱補強材を固定する固定部材をさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載の壁構造。
【請求項7】
柱間に架け渡されたブレースとの干渉部分に切欠き部が設けられた下地桟を補強するための補強具であって、
パネルフレームの縦フレーム部に取り付けられる支持部材と、
上下方向において前記切欠き部に隣接する一般部に係合する係合部材と、
前記支持部材および前記係合部材に連結され、前記支持部材と前記係合部材との間隔を維持する連結部材とを含む、下地桟の補強具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構造および下地桟の補強具に関し、特に、ブレースとの干渉部分に切欠き部が設けられた下地桟を備えた壁構造、および、このような下地桟を補強する補強具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建物の壁は、内部に、複数の柱と、下地桟としてのスタッドとを備えている。スタッドの形状としては、角形(閉鎖断面)のものや、C形(開放断面)のものがある。
【0003】
スタッドが変形すると、せっこうボード等の板状部材がこのスタッド変形を受けて脱落しやすくなるため、スタッドの変形を防止する技術が従来から提案されている。たとえば実開平7-29111号公報(特許文献1)では、C形スタッドの開口部間に、磁力でスタッドに吸着するスペーサを設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建物の強度を向上させるために、壁の内部にブレースを設けることがある。また、このような壁への対応として、スタッドの一部に切欠き部を設けることがある。切欠き部は他の部分(一般部)に比べて断面二次モーメントが小さいため、このようなスタッドを備えた壁は、通常の(切欠き部の無い)スタッドを備えた壁と比べて耐火性能が低下する懸念がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、下地桟に切欠き部が設けられた壁の耐火性能を向上させることのできる壁構造、ならびに、下地桟の補強具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面に従う壁構造は、柱を含む構造躯体に固定されたパネルフレームと、柱間に架け渡されたブレースと、上下方向に延在し、ブレースとの干渉部分に切欠き部が設けられた下地桟と、下地桟を補強するための補強具とを備える。補強具は、パネルフレームの縦フレーム部に取り付けられる支持部材と、上下方向において切欠き部に隣接する一般部に係合する係合部材と、支持部材および係合部材に連結され、支持部材と係合部材との間隔を維持する連結部材とを含む。
【0008】
壁構造は典型的には外壁構造であり、パネルフレームは外壁パネルのフレームである。「一般部に係合する」とは、一般部の一部に接触または近接した状態で取り付けられる(一般部と係合部材とが係り合う)ことを意味し、係合部材は、少なくとも下地残に取り付けられる板状部材の表面側からの加熱条件下(外壁構造の場合、屋内側からの加熱条件下)で一般部の一部に接触すればよい。
【0009】
下地桟は、たとえば、板状部材が固定される閉鎖面部と、閉鎖面部に対面する一対のリップ部を有するC形鋼である。この場合、係合部材は、リップ部の裏側に引っ掛けられる掛止部を含むことが望ましい。
【0010】
外壁構造を想定した場合、屋内側からの加熱時に切欠き部が屋内側へ屈曲しようしても、掛止部がリップ部を拘束するので、スタッドの屋内側への面外変形を抑制することができる。
【0011】
また、係合部材を掛止部とすることで、ビス等の締結部を用いるよりも現場での施工を簡単にすることができる。
【0012】
なお、係合部材の掛止部とリップ部との掛止状態は、通常時(非加熱条件下)においてはルーズであってよく、板状部材の表面側からの加熱条件下において両者が接触状態となればよい。
【0013】
連結部材は、支持部材から閉鎖面部まで延在する棒状部材を含むことが望ましい。
【0014】
外壁構造を想定した場合、屋外側からの加熱時に切欠き部が屋外側へ屈曲しようとしても、棒状部材の先端部によって閉鎖面部が突っ張られるので、スタッドの屋外側への変形を抑制することもできる。
【0015】
また、スタッドへの板状部材のビス固定の際に、棒状部材の先端部(屋外側端部)による反力を確保できるため、切欠き部に対しても適切に板状部材を固定することができる。
【0016】
好ましくは、補強具は、板状部材の縦目地に対応する下地桟に取り付けられる。これにより、縦目地が広がることを防止または抑制できるので、壁の内部空間の温度上昇を抑えることができる。
【0017】
下地桟は、開口部の無い角形形状(閉鎖断面形状)であってもよい。この場合、係合部材は、下地桟に嵌合する略U字状の本体部と、本体部を下地桟に固定する締結部とを含むことが望ましい。
【0018】
補強具は、断熱補強材を固定する固定部材をさらに含んでいてもよい。
【0019】
上述の補強具を、下地桟の補強具として単体で提供してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、補強具によって切欠き部の面外変形が抑制されるため、壁の耐火性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係る外壁の基本構造を模式的に示す横断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る外壁の内部構成を模式的に示す斜視図である。
【
図3】切欠き部を有するスタッドの構造例を示す図である。
【
図4】スタッドに切欠き部が設けられた外壁の通常の耐熱性能を模式的に示す図である。
【
図5】(A),(B)は、本発明の実施の形態における補強具の取り付け構造、および、屋内側からの加熱に対する変形抑制効果を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態における設置状態の補強具を示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施の形態における補強具の設置手順を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態における補強具の設置手順を示す図である。
【
図9】(A),(B)は、本発明の実施の形態における補強具の取り付け構造、および、屋外側からの加熱に対する変形抑制効果を模式的に示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態の変形例1における補強具の構成例を模式的に示す図である。
【
図11】本発明の実施の形態の変形例2における補強具の構成例を模式的に示す図である。
【
図12】折曲げ辺を有さないC形スタッドに適した補強具の構成例を模式的に示す図である。
【
図13】角形スタッドに適した補強具の構成例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0023】
<基本構造について>
図1は、本実施の形態に係る外壁1の基本構造を模式的に示す横断面図である。
図1の矢印A1は屋外方向を示し、矢印A2は外壁1の横幅方向を示す。以降の図も同様である。
【0024】
図1を参照して、外壁1は、複数の柱11と、柱11間に配置されるスタッド12と、柱11間に架け渡されるブレース(破線で示す)13と、スタッド12の屋内側に配置されるせっこうボード等の板状部材(内装面材)21と、柱11の屋外側に配置される外壁パネル22とを含む。
【0025】
スタッド12は、上下方向に延在しており、上下端部が図示しないランナーにより拘束されている。本実施の形態におけるスタッド12の形状はC形である。板状部材21は、スタッド12の屋内面(後述の閉鎖面部121)に面接触した状態で、ビス91により固定される。
【0026】
外壁パネル22は、矩形状の枠体であるパネルフレーム23と、パネルフレーム23内に充填される断熱材24と、パネルフレーム23の屋外側に位置する外装下地25と、サイディング等の外装材26とを一体的に含む。パネルフレーム23の上下端部が固定金具(図示せず)を介して柱11に固定されることにより、外壁パネル22が柱11に取り付けられる。パネルフレーム23は、一対の縦材23aと一対の横材(図示せず)とを有している。以下の説明において、パネルフレーム23の縦材23aを、縦フレーム部23aという。なお、パネルフレーム23は、柱11以外の構造躯体(梁など)に固定されていてもよい。
【0027】
図1に示されるように、板状部材21が固定されるスタッド12の配置位置とブレース13の配置位置とが、内外方向において互いに重なっている。このようなスタッド12およびブレース13の配置関係が、
図2に示されている。なお、
図2の矢印A3は上下方向(高さ方向)を示す。以降の図も同様である。
【0028】
図2に示すように、スタッド12には、ブレース13との干渉を避けるために切欠き部31が設けられている。切欠き部31は、ブレース13が通る部分、すなわちブレース13との干渉部分にのみ設けられ、屋内側から見てスタッド12を奥側(屋外側)から部分的に切り欠くことによって形成されている。
【0029】
図3は、切欠き部31を有するスタッド12の構造例を示す図であり、紙面左側にスタッド12の側面図が示され、紙面右側に一般部32および切欠き部31の横断面図が示されている。一般部32とは、切欠き部31の無い部分を表わす。一般部32は、板状部材21の取り付け面である閉鎖面部121と、一対の側面部122と、閉鎖面部121に対面する一対のリップ部123とを含む。スタッド12は、一対のリップ部123間に開口部120を有している。本実施の形態では、リップ部123の先端に、閉鎖面部121側に折り曲げられた折曲げ片124が設けられている。
【0030】
スタッド12の切欠き部31は、リップ部123の全体および一対の側面部122の一部を含まない点において、一般部32と相違する。つまり、切欠き部31は、閉鎖面部121と、一般部32の側面部122よりも短辺とされた一対の側面部125とを含む。一般部32の奥行寸法(内外方向の寸法)が、たとえば40~50mmであると仮定すると、切欠き部31の奥行寸法は、たとえば10~15mm程度である。なお、スタッド12の横幅寸法は、60~70mm程度である。
【0031】
このようなスタッド12を備えた外壁は、切欠き部31の無い通常のスタッド12を備えた外壁と比べて、耐火性能が低下する。切欠き部31の断面二次モーメントが小さいため、この部分が熱を受けると熱膨張により面外方向の変形が大きくなるからである。
【0032】
図4は、スタッド12に切欠き部31が設けられた外壁(補強具を備えない外壁)100の通常の耐熱性能を模式的に示す図である。
図4の左図に示されるように、上下端部および中央部に切欠き部31を設けたスタッド12を準備し、当該スタッド12に板状部材21を固定した状態で、外壁100の屋内加熱試験を行った。この場合、
図4の右図に示されるように、中央部(ランナーから離れた場所)の切欠き部31に「く」の字のような面外変形が見られた。すなわち、スタッド12の中央部が加熱側である屋内側に突出するような面外変形が見られた。このような変形は、板状部材21の継ぎ目(縦目地)に位置するスタッド12に顕著に現れた。これにより、縦目地が広がり、その部分から入熱が促進されて外壁100の内部空間(空気層)の温度が上昇したため、所望の耐熱性能に至らなかった。
【0033】
そこで、本実施の形態の外壁1は、スタッド12(特に、切欠き部31)を補強する補強具4を備えている。補強具4は、切欠き部31の面外変形を抑制するために、切欠き部31を挟む両側(一般部32のうち、
図4に示す上側部分P1および下側部分P2)に設けられることが望ましい。以下に、補強具4について詳細に説明する。
【0034】
<補強具の構成例および取り付け構造>
図5および
図6は、補強具4の取り付け構造を示す図である。
図5(A)は、外壁1の内部における補強具4の設置位置を示す図である。
図5(B)は、設置状態の補強具4を模式的に示す断面図である。
図6は、設置状態の補強具4を模式的に示す斜視図である。
【0035】
図5(A)を参照して、本実施の形態に係る外壁1は、一般部32のうち、スタッド12の中央の切欠き部31に隣接する上側部分P1および下側部分P2のそれぞれに対応して設けられた2個の補強具4を備えている。補強具4は、切欠き部31の近傍一に設けられていることが望ましい。具体的には、上側部分P1の補強具4は一般部32の下端部に設けられ、下側部分P2の補強具4は、一般部32の上端部に設けられていることが望ましい。
【0036】
各補強具4は、
図5(B)および
図6に示されるように、背中合わせで配置される2つの縦フレーム部23aとスタッド12の開口部120とが対面する箇所に、配置されている。補強具4は、少なくとも、板状部材21の縦目地21aの位置にあるスタッド12(つまり、2枚の板状部材21が固定されるスタッド12)に取り付けられることが望ましい。
【0037】
補強具4は、パネルフレーム23の縦フレーム部23aに取り付けられる支持部材41と、スタッド12の一般部32(上側部分P1または下側部分P2)に係合する係合部材42と、支持部材41および係合部材42に連結され、支持部材41と係合部材42との間隔を維持する連結部材43とを含む。これらの部材41~43はいずれも、金属などの不燃性材料により形成されている。
【0038】
支持部材41は、隣り合う2つの縦フレーム部23a間に架け渡される本体部411と、本体部411の横幅方向一端部に設けられたクリップ部412とを含む。クリップ部412は、本体部411に連続する連続部と、連続部に対面するように折り返された折返し部とを含む。
【0039】
係合部材42は、C形のスタッド12に適した形状となっており、リップ部123の裏側に引っ掛けられる部分(掛止部)422を含む。具体的には、係合部材42は、スタッド12の開口部120に配置される本体部421と、本体部421の横幅方向両端部に設けられた一対の掛止部422とを含む。掛止部422は、鉤状(C字状またはV字状)に形成されており、設置状態において、リップ部123の折曲げ片124を内部に収容している。掛止部422は、取り付け作業を容易にする観点から、可撓性を有していることが望ましい。本実施の形態における係合部材42は、断面W型(またはM型)に形成されている。
【0040】
連結部材43は、支持部材41の本体部411と係合部材42の本体部421との間を内外方向に延在する棒状部材431を含む。棒状部材431は、剛性を有している。支持部材41の本体部411および係合部材42の本体部421のそれぞれに、ボルト431を挿通する貫通孔(図示せず)が設けられる。
【0041】
棒状部材431は、典型的にはボルト(たとえば寸切りボルト)により構成されている。以下、棒状部材431をボルト431という。連結部材43は、ボルト431に螺合し、支持部材41および係合部材42の位置決めを行う複数のナット432~434を含む。本実施の形態では、ボルト431の先端部(屋内側端部)がスタッド12の閉鎖面部121に接触している。
【0042】
なお、部品点数の削減や施工性を考慮し、支持部材41の本体部411に予めナット432が溶接等により固定されていてもよい。
【0043】
<補強具の取り付け方法>
図7および
図8は、補強具4の設置手順を示す図である。
【0044】
図7を参照して、はじめに、縦フレーム部23aの屋内側のフランジ部230に向かった支持部材41を側方からスライドさせて、クリップ部412をフランジ部230に嵌め込む(工程1)。
【0045】
支持部材41の本体部411の横幅方向中央部は若干凹んでおり、支持部材41をスライドさせる過程で、この凹部411aが2つの縦フレーム部23a間の隙間に嵌まり込む。これにより、支持部材41は、横幅方向の移動が不可とされる。また、凹部411aが2つの縦フレーム部23a間の隙間に嵌まり込んだ状態において、フランジ部230はクリップ部412によって挟持されるので、支持部材41は、内外方向の移動が不可とされる。このようにして、支持部材41が縦フレーム部23aに取り付けられる(工程2)。
【0046】
続いて、連結部材43のボルト431の一方端部(屋外側端部)を、本体部411に予め固定されたナット432(
図5)に取り付ける。ナット432は、本体部411の凹部411aの裏面(屋外側の面)に固定されている。ボルト431の軸方向中央部には予めナット433が固定されており、このナット433と支持部材41の本体部411との間隔が所望の間隔となるまでボルト431を回転させる。このようにして支持部材41と連結部材43とが連結される(工程3)。
【0047】
その後、
図8に示すように、ボルト431の他方端部(屋内側端部)に係合部材42を取り付ける。具体的には、係合部材42の本体部421の貫通孔にボルト431を通し、本体部421を上述のナット433に接触させる。その状態で、ボルト431の他方端部から別のナット434を螺合し、2つのナット433,434で本体部421を挟持する。これにより、係合部材42と連結部材43とが連結され、補強具4の組立が完了する(工程4)。
【0048】
なお、係合部材42をボルト431に通す前に中央のナット433の位置を調整することで、支持部材41と係合部材42との間の間隔を調整可能としてもよい。あるいは、係合部材42をボルト431に通した後に2つのナット433,434の位置を調整可能としてもよい。ナット433,434の位置はまた、支持部材41の本体部411からのボルト431の突出寸法がスタッド12の奥行き寸法と略一致するように、調整されることが望ましい。
【0049】
補強具4が完成した後、補強具4の係合部材42をスタッド12に取り付ける。具体的には、スタッド12の開口部120を係合部材42側に近付けて、スタッド12のリップ部123を係合部材42の掛止部422に嵌合させる(工程5、6)。
【0050】
本実施の形態において、掛止部422は可撓性を有している。そのため、スタッド12の開口部120に係合部材42を通す際、掛止部422の外側片423がリップ部123の折曲げ片124に押されて撓む。その後、外側片423と折曲げ片124との接触が解除されると(掛止部422が開口部120を通り抜けると)、外側片423は元の状態に復帰する。これにより、掛止部422の外側片423が、スタッド12の折曲げ片124に引っ掛けられた状態となる。
【0051】
以上の工程1~6を経ることにより、補強具4の設置が完了する。なお、補強具4は、支持部材41と縦フレーム部23aとの摩擦力によって、パネルフレーム23に片持ち支持されるため、取り付け時においては、掛止部422とリップ部123の折曲げ片124との掛止状態は、ルーズ(非接触状態)であってよい。また、ボルト431の先端部とスタッド12の閉鎖面部121との間に多少の隙間があってもよい。なお、ボルト431の先端部を閉鎖面部121に押し当てるように取り付けた場合には、ボルト431が突っ張り棒の役目を果たすため、補強具4の設置状態を安定させることができる。
【0052】
パネルフレーム23とスタッド12との間の距離(間隔)やスタッド12の寸法は、外壁1の仕様ごとに定められているため、外壁1の仕様に応じて、ボルト431に予め、ナット432~434の取り付け位置をマーキングしておいてもよい。これにより、現場での調整作業を簡素化できるので、施工性が向上する。
【0053】
上述のように、スタッド12の上下端部はランナーによって拘束されているため、工程5,6におけるスタッド12と係合部材42との嵌合作業は、スタッド12の上下方向中央部を一旦、屋内方向に撓ませることにより実施可能である。他の方法として、工程1,2において、支持部材41を切欠き部31に対面する位置に仮固定し、補強具4が完成した後で補強具4を一般部32に対面する位置にスライド移動させる方法も実施可能である。
【0054】
<補強具を備えた外壁の作用効果>
本実施の形態における補強具4は、係合部材42が中央の切欠き部31近傍の一般部32におけるリップ部123に係合した状態で、パネルフレーム23に支持されている。そのため屋内側からの加熱条件下でも、中央の切欠き部31が屋内側へ「く」の字状に変形することを防止または抑制することができる(
図5(A),(B)の想像線参照)。その結果、板状部材21の縦目地21aの拡大や、板状部材21の脱落を防止または抑制することができる。したがって、本実施の形態によれば、屋内側からの加熱に対する外壁1の耐熱性能を向上させることができる。
【0055】
また、本実施の形態では、ボルト431の先端部がスタッド12の閉鎖面部121に接触または近接しているので、屋外側から外壁1が加熱されたとしても、
図9(A),(B)に想像線で示すようにスタッド12の中央の切欠き部31が屋外側へ「く」の字状に変形することを防止または抑制することができる。したがって、本実施の形態によれば、屋内側からの加熱、および、屋外側からの加熱の両方に対して、耐熱性能を向上させることが可能である。
【0056】
また、ボルト431の先端部がスタッド12の閉鎖面部121に接触または近接しているので、板状部材21をビス固定する際の反力を確保できる。つまり、ビス91を打ち込む際の切欠き部31の撓みが軽減される。したがって、切欠き部31に対しても適切に板状部材21を固定することができる。このため、外壁1の耐熱性能を試験する際に、スタッド12の切欠き部31とパネルフレーム23との間に挿入するスペーサを不要とすることもできる。
【0057】
<変形例1>
本実施の形態の補強具4を利用することで、隣り合うパネルフレーム23の境目に配置される断熱補強材を効率的に固定することも可能である。このことについて、
図10を参照して説明する。
【0058】
図10(A)は、断熱補強材50の一般的な固定構造を示す図であり、
図10(B)は、断熱補強材50の固定金具(固定具)を兼ねた補強具4Aを模式的に示す図である。
【0059】
図10(A)に示すように、一般的な固定金具51は、縦フレーム部23aのフランジ部230を挟持するクリップ部52と、断熱補強材50を貫通して屋内方向に延びる挿通部53とを一体的に含む。固定金具51を断熱補強材50に固定する際、挿通部53をフランジ部230に直交するように真っすぐ延ばしておき、断熱補強材50に挿通部53を突き刺す。その後、挿通部53のうち断熱補強材50から突出している部分53aを折り曲げて断熱補強材50を押え付ける。このようにして、固定金具51が設置される。
【0060】
図10(B)を参照して、補強具4Aは、上述の支持部材41、係合部材42、および連結部材43に加え、断熱補強材50を固定する固定部材44をさらに含む。
【0061】
固定部材44は、ボルト431を通す貫通孔(図示せず)が設けられた押え板441と、ボルト431に螺合するナット442とを有している。固定部材44による断熱補強材50の固定工程は、
図7に示す工程3と
図8に示す工程4との間に実施可能である。なお、本変形例では、支持部材41にボルト431を取り付ける際に、ボルト431から中央のナット433が外されているものとする。
【0062】
固定部材44により断熱補強材50を固定する工程では、縦フレーム部23aに取り付けた支持部材41に(ナット432により)ボルト431を固定した後、ボルト431の先端に断熱補強材50の中央部を押し込み、断熱補強材50にボルト431を貫通させる。その後、押え板441をボルト431に通し、ナット442により押え板441を断熱補強材50に押し当てる。断熱補強材50は、押え板441と支持部材41とに挟まれることにより、隣り合う縦フレーム部23aの境界部分に断熱補強材50を固定することができる。
【0063】
断熱補強材50を固定した後、ボルト431の適した位置(たとえばマーキングされた位置)にナット433を取り付けてから、係合部材42および残りのナット434を取り付ける。
【0064】
<変形例2>
上記実施の形態では、連結部材43のボルト431の先端部がスタッド12Cの閉鎖面部121に接触または近接する例を示したが、このような例に限定されない。つまり、ボルト431の先端部はスタッド12の閉鎖面部121から離れていてもよい。
【0065】
この場合、
図11に示すように、補強具4Bの係合部材42Aが、スタッド12の一対のリップ部123の表面(屋外側の面)に接触または近接する板状部材(以下「プレート」という)425を含んでいてもよい。プレート425は、横幅方向に沿って真っすぐ延びており、中央にボルト431を通す貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0066】
本変形例では、2つのナット433,434によって係合部材42Aの本体部421とプレート425とが挟持される。これにより、ボルト431の先端部がスタッド12の閉鎖面部121から離れていても、プレート425によってスタッド12の屋外側への変形を防止または抑制することができる。
【0067】
<他の変形例>
本実施の形態では、下地桟であるスタッド12がC形鋼(折曲げ片124付き)である例について説明したが、このような例に限定されない。
【0068】
(折曲げ片を有さないC形スタッド)
図12は、折曲げ片124を有さないC形のスタッド12Aに適した補強具4Cの構成例を模式的に示す図である。
【0069】
図12に示す補強具4Cは、
図5等に示した係合部材42に代えて、係合部材45を備えている。係合部材45は、たとえば、スタッド12Aの一対のリップ部123の裏面に近接または接触するプレート(板状部材)のみで構成されている。プレートである係合部材45の高さ寸法(上下方向長さ)は、スタッド12Aのリップ部123の開口幅よりも小さい。これにより、係合部材45をスタッド12Aに取り付ける際に、係合部材45を縦向きにすることで開口部120からリップ部123の裏側に挿入することが可能である。
【0070】
補強具4Cは、
図11に示した補強具4Bと同様に、スタッド12の一対のリップ部123の表面(屋外側の面)に接触または近接するプレート425をさらに備えていてもよい。この場合、ボルト431の先端部がスタッド12の閉鎖面部121から離れていてもよい。
【0071】
(角形スタッド)
図13は、角形スタッド12Bに適した補強具4Dの構成例を模式的に示す図である。
【0072】
図13を参照して、補強具4Dは、
図5等に示した係合部材42に代えて、係合部材46を備えている。係合部材46は、角形スタッド12Bに嵌合する略U字状の本体部460と、本体部460を角形スタッド12Bに固定するビス(締結部)463とを含む。本体部460は、角形スタッド12Bの屋外側端部を受け入れる。本体部460の中央部461には、貫通孔が設けられており、連結部材43のボルト431が挿通される。中央部461が連結部材43のナット433,434に挟み込まれることにより、係合部材46が位置決めされる。なお、本変形例では、ボルト431がナット434から突出している必要がなく、ナット434が角形スタッド12Bの屋外側の面に接触している。
【0073】
本体部460は、角形スタッド12Bの側面部122に接触する一対の接触部462を有している。一対の接触部462が角形スタッド12Bの側面部122に面接触した状態で、ビス463により両者を固定する。これにより、角形スタッド12Bにおいても、中央の切欠き部31に隣接する一般部32が、係合部材46によって拘束されるので、角形スタッド12Bの切欠き部31が屋内側および屋外側の双方に変形することを、防止または抑制できる。
【0074】
したがって、本変形例においても、屋内側からの加熱、および、屋外側からの加熱の両方に対して、耐熱性能を向上させることが可能である。
【0075】
なお、本変形例の補強具4Dは、筒状である角形スタッド12Bだけでなく、たとえば木桟などにも適用可能である。
【0076】
上記実施の形態および各変形例では、補強具の支持部材41が摩擦力によって縦フレーム部23aに取り付けられる例を示したが、このような例に限定されない。たとえば、支持部材41は縦フレーム部23aにビス等の締結部材によって取り付けられてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態および各変形例では、支持部材41、係合部材42、および連結部材43が独立した部材である例を示したが、これらが一体的に設けられていてもよい。つまり、ナットを用いた位置調整を不要としてもよい。
【0078】
上記実施の形態および各変形例では、補強具を備えた外壁1の構造について説明したが、外壁以外の壁にも補強具を適用可能である。
【0079】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
1 外壁、4,4A,4B,4C,4D 補強具、11 柱、12,12A,12B スタッド、13 ブレース、21 板状部材、21a 縦目地、22 外壁パネル、23 パネルフレーム、23a 縦フレーム部、31 切欠き部、32 一般部、41 支持部材、42,45,46 係合部材、43 連結部材、120 開口部、121 閉鎖面部、122,125 側面部、123 リップ部、124 折曲げ片、422 掛止部、431 ボルト(棒状部材)、432,433,434 ナット。