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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094484
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】畳表折曲げ装置
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
E04F15/02 104Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211043
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000163121
【氏名又は名称】KLASS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】油田 要
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AD11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】折曲した側辺を備える畳に用いる畳表の製造装置を提供する。
【解決手段】畳表の側辺を内側に折曲げるための畳表折曲げ装置(10)であって、架台フレーム上の一方の端部に、並び配された、第1畳表折曲げユニット(18A)と、第2畳表折曲げユニット(18B)とを備え、前記第1畳表折曲げユニット(18A)と前記第2畳表折曲げユニット(18B)が、水平方向に旋回可能に構成されていることを特徴とする、畳表折曲げ装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
畳表の側辺を内側に折曲げるための畳表折曲げ装置であって、
架台フレーム上の一方の端部に、並び配された、第1畳表折曲げユニットと、第2畳表折曲げユニットと、を備え、
前記第1畳表折曲げユニットと前記第2畳表折曲げユニットが、水平方向に旋回可能に構成されていることを特徴とする、畳表折曲げ装置。
【請求項2】
前記第1畳表折曲げユニットと前記第2畳表折曲げユニットは、
前記第1畳表折曲げユニットと前記第2畳表折曲げユニットの間の中間位置を旋回軸として、その旋回軸を中心に水平方向に旋回可能に構成されている、
請求項1に記載の畳表折曲げ装置。
【請求項3】
前記第1畳表折曲げユニットは、第1畳表押さえ機構と第1畳表折曲げ機構を有し、
前記第2畳表折曲げユニットは、第2畳表押さえ機構と第2畳表折曲げ機構を有し、
前記第1畳表押さえ機構と前記第2畳表押さえ機構が、同調して前記旋回軸を中心に水平方向に旋回する、
請求項2記載の畳表折曲げ装置。
【請求項4】
前記第1畳表押さえ機構と前記第2畳表押さえ機構を同調して水平旋回させる駆動機構をさらに備え、
前記駆動機構は、前記第1畳表押さえ機構と前記第2畳表押さえ機構を同調して水平旋回させる共有駆動である、
請求項3記載の畳表折曲げ装置。
【請求項5】
前記旋回軸は、畳表の長さ方向が前記第1畳表折曲げ機構と前記第2畳表折曲げ機構の間の中間位置であり、かつ、畳表の巾方向が畳表の折曲げ位置である、
請求項3記載の畳表折曲げ装置。
【請求項6】
前記第1畳表折曲げ機構は、畳表と接地する長手方向に伸びる接地面を有し、畳表の端部を立ち上げる長尺の第1折曲げ部材を有し、
前記第2畳表折曲げ機構は、畳表と接地する長手方向に伸びる接地面を有し、畳表の端部を立ち上げる長尺の第2折曲げ部材を有し、
前記旋回軸は、前記第1折曲げ部材と前記第2折曲げ部材の長手方向における間の中間位置と、前記第1折曲げ部材と前記第2折曲げ部材の短手方向における前記接地面の先端位置が交差する点である、
請求項3記載の畳表折曲げ装置。
【請求項7】
前記旋回軸が仮想軸である、
請求項3記載の畳表折曲げ装置。
【請求項8】
前記第1畳表折曲げユニットは、第1畳表押さえ機構と第1畳表折曲げ機構を有し、
前記第2畳表折曲げユニットは、第2畳表押さえ機構と第2畳表折曲げ機構を有し、
前記第1畳表押さえ機構と前記第2畳表押さえ機構は、
上下昇降駆動がそれぞれ別駆動であり、前記第1畳表押さえ機構と前記第2畳表押さえ機構がそれぞれ個別に畳表の厚み方向に昇降する、
請求項2記載の畳表折曲げ装置。
【請求項9】
前記第1畳表折曲げ機構及び前記第2畳表折曲げ機構は、畳表の側辺を立ち上げる折曲げ部材をそれぞれ有し、
前記折曲げ部材は、畳表の厚み方向に昇降可能であり、かつ、畳表の巾方向に移動可能である、
請求項8記載の畳表折曲げ装置。
【請求項10】
前記折曲げ部材が、畳表の厚み方向における折曲げ位置よりも低い位置で停止可能である、または畳表の巾方向における折曲げ位置から遠ざかった位置で停止可能である、
請求項9記載の畳表折曲げ装置。
【請求項11】
畳表の側辺を裁断する裁断機構をさらに備え、
前記裁断機構は、前記第1畳表折曲げ機構と前記第2折曲げ機構を横断可能である、
請求項1記載の畳表折曲げ装置。
【請求項12】
前記裁断機構は、裁断刃と筋付具とが所定の間隔をあけて配されていて、
前記裁断刃が、跳ね上がる機構を具備する、
請求項11記載の畳表折曲げ装置。
【請求項13】
架台フレーム上の他方の端部に設けられた第3畳表折曲げユニットを備える、
請求項1に記載の畳表折曲げ装置。
【請求項14】
前記第1畳表折曲げユニット及び前記第2畳表折曲げユニットと、前記第3畳表折曲げユニットとは、互いに接離する方向に水平移動可能であり、
前記第1畳表折曲げユニット及び前記第2畳表折曲げユニットと、前記第3畳表折曲げユニットとの間に、畳表を押さえて保持する中間押さえを備え、
前記中間押さえは、前記第1畳表折曲げユニット及び前記第2畳表折曲げユニットと、前記第3畳表折曲げユニットとの中間位置よりも、前記第1畳表折曲げユニット及び前記第2畳表折曲げユニットに近い位置に配されている、
請求項13記載の畳表折曲げ装置。
【請求項15】
前記中間押さえは、
前記第1畳表折曲げユニット及び前記第2畳表折曲げユニットと、前記第3畳表折曲げユニットとが互いに接離する方向に、水平移動可能である、
請求項14記載の畳表折曲げ装置。
【請求項16】
前記第1畳表折曲げユニット及び前記第2畳表折曲げユニットと、前記第3畳表折曲げユニットとの間に、畳表を押さえて保持する中間押さえを備え、
前記中間押さえは、前記第1畳表折曲げユニット及び前記第2畳表折曲げユニットと、前記第3畳表折曲げユニットとの中間位置よりも、前記第3畳表折曲げユニットに近い位置に配されている、
請求項13乃至15のいずれか1項記載の畳表折曲げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畳表を折曲げる畳表折曲げ装置に関し、より詳細には、畳表の下前側や上前側の側辺を畳床に沿う方向に折曲げるための畳表折曲げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、畳縁を有する通常の畳に代わり、意匠性などを考慮して、畳縁を備えていない所謂「縁無し畳」が広範に用いられるようになっている。
【0003】
この場合、図20に示したように、このような縁無し畳201を製造するためには、畳床206の側辺(上前側の側辺206aと下前側の側辺206b)に沿って、畳表200を畳床206の側面208に沿うように、略90°以上の角度で折曲げる必要がある。なお、図20では説明の便宜上、片方の側辺のみ図示した。
【0004】
すなわち、畳表200の側辺を畳床206の側面208に沿うように折曲げて、折曲げた側辺210を畳床206の側面208、または裏面212に縫着したり、接着剤やテープで固着することが行われる。
【0005】
ところで、このような場合、畳表200のみを予め所定のサイズに切断して、畳表200の畳床206の形状に沿って側辺を折り曲げて覆えれば、様々な種類の畳床206と畳表200の組み合わせやサイズに対応することができ、非常に便利である。
【0006】
しかしながら、部屋の敷居は必ずしも正方形や長方形などではないので、畳を敷き詰める場合に、上前側を直線状に仕上げ、下前側を敷居にぴったり沿うようにくせ取りして畳を仕上げて敷き詰める必要がある。このため、畳の平面視の形状は、対向する上前側の側辺と下前側の側辺が平行でない場合がある。
【0007】
したがって、畳(畳床)のこのような平面視の形状に沿って、畳表200の両側の側辺202を折曲げる必要がある。
【0008】
そこで、本願の出願人は、特許文献1に示す縁無し畳を製造するための畳表折曲げ装置を提案している。この畳表折曲げ装置は、畳表の側辺を、畳床の側辺に合致した形状に折曲げることができるので、非常に便利で汎用性に優れ、作業効率も向上した装置である。
【0009】
具体的には、この畳表折曲げ装置は、架台フレーム12上の一方の端部に設けられた上前側畳表折曲げユニット16と、架台フレーム12上の他方の端部に設けられた下前側畳表折曲げユニット18とを備え、上前側畳表折曲げユニット16が、下前側畳表折曲げユニット18に対して接離する方向に水平移動可能に構成され、下前側畳表折曲げユニット18が、上前側畳表折曲げユニット16に対して接離する方向に水平移動可能に構成されるとともに、下前側畳表折曲げユニット18が、水平方向に旋回可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第6780166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の畳表折曲げ装置は、畳表を畳床の側辺に合致した形状に折曲げることができ、また畳の框方向の幅や畳表の厚さが変わった場合にも、畳床の側辺に合致した形状に折曲げることができるが、主として半畳用の畳に対応した装置であった。
【0012】
一方、従来の縁無し畳は、略正方形状の半畳用の畳が主流であったが、昨今では一畳用の縁無し畳のニーズが増加している。また、部屋の敷居は、必ずしも正方形や長方形ではなく、また必ずしも一直線状に形成されているとも限らない。
【0013】
そのため、畳を敷き詰める場合に、畳が正方形や長方形、台形などの形状だと、部屋の敷居にぴったりと合わないため、一直線状の畳の側辺を直線でない形状にする必要がある場合がある。なお、正方形や長方形、台形でない敷居の場合、畳の長辺の中間(間中)位置で敷居の角度が変えられていることが一般的である。
【0014】
そのため、このような形状の敷居に一畳用の畳を敷き詰めようとすると、畳の側辺が一直線状であるときれいに敷き詰めることができず、畳の長辺の中間位置で、側辺の角度を変更した畳とする必要がある。この場合、特許文献1の畳表折曲げ装置であると、側辺を傾斜した直線状にすることは可能であるが、途中で角度を変更した側辺とすることはできなかった。
【0015】
本発明は、このような事情に鑑み、側辺の傾斜が途中で変わるような畳の製造にも対応できるようにした畳表折曲げ装置を提供することを1の目的とする。
【0016】
また、本発明の別の態様においては、畳の短辺方向(巾方向)の幅が異なる畳に対しても対応できる畳表折曲げ装置を提供することを1の目的とする。
【0017】
また、本発明の別の態様においては、畳表の折り目(折り癖)をしっかりと付けられ、畳床の側面に折曲げた部分を固定する際に浮いた状態となることなくしっかりと固定でき、見栄えが良好で商品価値が高い縁無し畳を製造することができる畳表折曲げ装置を提供することを1の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一の態様にかかる畳表折曲げ装置は、畳表の側辺を内側に折曲げるための畳表折曲げ装置であって、架台フレーム上の一方の端部に、並び配された第1畳表折曲げユニットと、第2畳表折曲げユニットとを備え、前記第1畳表折曲げユニットと前記第2畳表折曲げユニットが、水平方向に旋回可能に構成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、第1畳表折曲げユニットと第2畳表折曲げユニットが、架台フレーム上の一方の端部に並び配されていて、これらが旋回可能に構成されていることで、側辺が一直線状でなく、途中で傾斜した側辺を有する畳の場合にも、これに対応する畳の畳表を製造することができる。
【0020】
また、この畳表折曲げ装置は、前記第1畳表折曲げユニットと前記第2畳表折曲げユニットが、前記第1畳表折曲げユニットと前記第2畳表折曲げユニットの間の中間位置を旋回軸として、その旋回軸を中心に水平方向に旋回可能に構成されている。
【0021】
この構成によれば、第1畳表折曲げユニットと第2畳表折曲げユニットが、これらの間の中間位置を旋回軸として旋回可能であるので、側辺が直線でない畳における最も一般的な長辺の間中位置で折曲した畳に対応することができる。また、これらの中間位置を旋回軸とすることで、これらのいずれか端部を旋回軸とする場合に比べて、回転距離を最小限に留めることが可能となり、回転機構の1つにでき、省スペース化を図ることができる。
【0022】
また、この畳表折曲げ装置は、前記第1畳表折曲げユニットは、第1畳表押さえ機構と第1畳表折曲げ機構を有し、前記第2畳表折曲げユニットは、第2畳表押さえ機構と第2畳表折曲げ機構を有し、前記第1畳表押さえ機構と前記第2畳表押さえ機構が、同調して前記旋回軸を中心に水平方向に旋回する。
【0023】
この構成によれば、第1畳表押さえ機構と第2畳表押さえ機構の水平旋回駆動がこれらの中間位置を旋回軸として同調して水平方向に旋回するので、回転距離も最小限に留めることが可能となる。
【0024】
また、この畳表折曲げ装置は、前記第1畳表押さえ機構と前記第2畳表押さえ機構を同調して水平旋回させる駆動機構をさらに備え、前記駆動機構は、前記第1畳表押さえ機構と前記第2畳表押さえ機構を同調して水平旋回させる共有駆動である。
【0025】
この構成によれば、第1畳表押さえ機構と第2畳表押さえ機構の水平旋回駆動が共有駆動であるので、これらの水平旋回を1の回転機構で担うことができるため、省スペース化やコストの抑制を図ることができる。
【0026】
また、この畳表折曲げ装置は、前記旋回軸が、畳表の長さ方向が前記第1畳表折曲げ機構と前記第2畳表折曲げ機構の間の中間位置であり、かつ、畳表の巾方向が畳表の折曲げ位置である。
【0027】
また、この畳表折曲げ装置は、前記第1畳表折曲げ機構が畳表と接地する長手方向に伸びる接地面を具備する畳表の端部を立ち上げる長尺の第1折曲げ部材を有し、前記第2畳表折曲げ機構は、畳表と接地する長手方向に伸びる接地面を具備する畳表の端部を立ち上げる長尺の第2折曲げ部材を有し、前記旋回軸は、前記第1折曲げ部材と前記第2折曲げ部材の長手方向における間の中間位置と、前記第1折曲げ部材と前記第2折曲げ部材の短手方向における前記接地面の先端位置が交差する点である。
【0028】
この構成によれば、畳表の端辺の傾斜が変わる折曲げ位置を旋回軸として第1畳表折曲げ機構と第2畳表折曲げ機構が旋回するので、それぞれの傾斜に合わせて端部の折曲げが可能となる。
【0029】
また、この畳表折曲げ装置は、前記旋回軸が仮想軸である。
【0030】
この構成によれば、旋回軸を仮想軸とすることで、旋回の中心に物理的な回転軸を設ける必要がないため、回転軸を設置できない場合にも対応することが可能である。旋回軸を仮想軸とする構成としては、例えば、第1畳表折曲げユニットと前記第2畳表折曲げユニットとをリンク機構を用いて旋回軸を仮想軸とする構成や、これらを電子制御を用いて旋回軸を仮想軸とする構成が考えられる。
【0031】
また、この畳表折曲げ装置は、前記第1畳表折曲げユニットが第1畳表押さえ機構と第1畳表折曲げ機構を有し、前記第2畳表折曲げユニットが第2畳表押さえ機構と第2畳表折曲げ機構を有し、前記第1畳表押さえ機構と前記第2畳表押さえ機構は、上下昇降駆動がそれぞれ別駆動であり、前記第1畳表押さえ機構と前記第2畳表押さえ機構がそれぞれ個別に畳表の厚み方向に昇降する。
【0032】
この構成によれば、第1畳表押さえ機構と第2畳表押さえ機構が昇降動作を個別に行えるため、畳表の折曲げを別々に行うことが可能である。また、昇降動作の個別駆動と、回転動作の共有駆動を同時に備える構成とすれば、畳表の折曲げは別々に行うことが可能でありながら、回転を同調して行うことが可能となる。
【0033】
また、この畳表折曲げ装置は、前記第1畳表折曲げ機構及び前記第2畳表折曲げ機構が、畳表の側辺を立ち上げる折曲げ部材をそれぞれ有し、前記折曲げ部材は、畳表の厚み方向に昇降可能であり、かつ、畳表の巾方向に移動可能である。この構成によれば、畳表の側辺を立ち上げる際に、任意の位置で立ち上げが可能である。
【0034】
また、この畳表折曲げ装置は、前記折曲げ部材が、畳表の厚み方向における完全に折曲げる位置よりも低い位置で停止可能である、または畳表の巾方向における折曲げ位置から遠ざかった位置で停止可能である。
【0035】
この構成によれば、折曲げ部材が畳表の厚み方向における完全に折曲げる位置よりも低い位置で停止可能か、畳表の巾方向における折曲げ位置から遠ざかった位置で停止可能である構成とすることで、畳表の側辺を完全に折曲げる前に、仮曲げを行うことが可能である。
【0036】
具体的には、畳表の側辺を完全に折曲げるに先立って、折曲げ時よりも低い位置で折曲げを停止して仮曲げをしたり、折曲げ位置から水平方向に少し遠ざかった位置で折曲げ部材を立ち上げて仮曲げをしたりすることが可能である。また、遠ざかった位置かつ低い位置で停止して仮曲げを行うこととしてもよい。
【0037】
また、仮曲げを行う効果としては、本件は側辺が一直線状でなく折曲した畳に対応するため、畳表が硬い場合などに側辺の一部を仮曲げを行わずいきなり本曲げを行うと、他部を折曲げる際に、折曲げが重なる中間位置などで畳表の破れなどが生じるおそれがあるところ、仮曲げを先立って行うことでこのような破れを抑制することができる。
【0038】
また、この畳表折曲げ装置は、畳表の側辺を裁断する裁断機構をさらに備え、前記裁断機構は、前記第1畳表折曲げ機構と前記第2折曲げ機構を横断可能である。
【0039】
この構成によれば、第1畳表折曲げ機構と第2折曲げ機構が分割されていながら、これらを横断する1の裁断機構とすることで、それぞれに裁断機構を備える場合と比較して、装置全体のスケールを抑え、構造をシンプルにでき、コストも抑えることができる。
【0040】
また、この畳表折曲げ装置は、前記裁断機構が、裁断刃と筋付具とが所定の間隔をあけて配されていて、前記裁断刃および筋付け具が跳ね上がる機構を具備する。
【0041】
この構成によれば、一直線状の側辺に対しては、裁断刃と筋付具が開始位置から終了位置まで同調させて裁断と筋付を行っていたが、折曲した側辺に対して裁断と筋付を行う場合、同じ位置までこれらを走らせると、余分な部分(他部にかかる部分)を切断したり筋付けすることになるため、所定の位置で裁断刃および筋付け具を跳ね上げる機構を具備することで、余分な部分の切断を行わないように構成できる。
【0042】
また、この畳表折曲げ装置は、架台フレーム上の他方の端部に設けられた第3畳表折曲げユニットを備える。この構成によれば、例えば畳表の下前側を第1、第2畳表折曲げユニットが対応し、上前側を第3畳表折曲げユニットが対応することで、上前側も下前側も処理できるので、畳表をこの装置に一度セットすれば、最後まで自動で畳の寸法に合わせて折曲げ処理を行うことができる。
【0043】
また、この畳表折曲げ装置は、前記第1畳表折曲げユニット及び前記第2畳表折曲げユニットと、前記第3畳表折曲げユニットとは、互いに接離する方向に水平移動可能であり、前記第1畳表折曲げユニット及び前記第2畳表折曲げユニットと、前記第3畳表折曲げユニットとの間に、畳表を押さえて保持する中間押さえを備え、前記中間押さえは、前記第1畳表折曲げユニット及び前記第2畳表折曲げユニットと、前記第3畳表折曲げユニットとの中間位置よりも、前記第1畳表折曲げユニット及び前記第2畳表折曲げユニットに近い位置に配されている。
【0044】
この構成によれば、中間押さえが畳表を押圧して保持することで、畳表の側辺の切断や折曲げ処理を行う際にズレを抑止できる。また、第1、第2畳表折曲げユニットが担う折曲している側の側辺を処理する際は、中間位置でクセの取り直しをする必要があり、その際にズレが生じるおそれがあるため、第1、第2畳表折曲げユニットに近い位置に中間押さえを配することで、このズレを効果的に抑止することができる。なお、第1、第2畳表折曲げユニットに近い位置と、第3畳表折曲げユニットに近い位置と、それぞれに中間押さえを配するとより効果的である。
【0045】
また、この畳表折曲げ装置は、前記中間押さえが、前記第1畳表折曲げユニット及び前記第2畳表折曲げユニットと、前記第3畳表折曲げユニットとが互いに接離する方向に、水平移動可能であることが望ましい。この構成によれば、中間押さえが第1及び第2畳表折曲げユニットと第3畳表折曲げユニットの接離方向に移動可能であるので、第1及び前記第2畳表折曲げユニットの移動と連動して移動することが可能である。これにより、中間表押えが第1及び第2と一緒に移動することで、折曲げ処理の際に中間押さえが近い位置で畳表を押さえられるので、クセ取り直しの際などのズレを効果的に抑止できる。
【0046】
また、この畳表折曲げ装置は、前記第1畳表折曲げユニット及び前記第2畳表折曲げユニットと、前記第3畳表折曲げユニットとの間に、畳表を押さえて保持する中間押さえを備え、前記中間押さえは、前記第1畳表折曲げユニット及び前記第2畳表折曲げユニットと、前記第3畳表折曲げユニットとの中間位置よりも、前記第3畳表折曲げユニットに近い位置に配されている。
【0047】
この構成によれば、中間押さえが畳表を押圧して保持することで、畳表の側辺の切断や折曲げ処理を行う際にズレを抑止できる。また、第1、第2畳表折曲げユニットが担う折曲している側の側辺を処理する際は、中間位置でクセの取り直しをするため、ズレが生じるおそれがあるため、第1、第2畳表折曲げユニットに近い位置に中間押さえを配することで、このズレを効果的に抑止することができる。なお、第1、第2畳表折曲げユニットに近い位置と、第3畳表折曲げユニットに近い位置と、いずれにも中間押さえを配するとより効果的である。
【発明の効果】
【0048】
本発明は、第1畳表折曲げユニットと第2畳表折曲げユニットが、架台フレーム上の一方の端部に並び配されていて、これらが旋回可能に構成されているので、側辺が一直線状でなく、途中で傾斜した側辺を有する畳の場合にも、これに対応する畳の畳表を製造することができる。
【0049】
また、本発明の一の態様において、第1畳表折曲げユニット及び第2畳表折曲げユニットと、第3畳表折曲げユニットを備え、第1及び第2畳表折曲げユニットを下前側とし、第3畳表折曲げユニットを上前側とする構成をとることで、一度畳表のセットが完了すると、最後まで自動で畳の寸法に合わせて折曲げ処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明の一実施形態の畳表折曲げ装置を示す平面図
図2】本発明の一実施形態の畳表折曲げ装置を示す正面図
図3】本発明の一実施形態の畳表折曲げ装置を示す側面図
図4】本発明の一実施形態の畳表折曲げ装置の上前側の折曲げ部分の作動を示す図
図5】本発明の一実施形態の畳表折曲げ装置の折曲げ部分の拡大図
図6】本発明の一実施形態の畳表折曲げ装置の裁断及び筋付部分を示す図
図7】本発明の一実施形態の畳表折曲げ装置の下前側の折曲げ部分の作動を示す図
図8】本発明の一実施形態の畳表折曲げ装置の仮曲げ時の作動を示す図
図9】本発明の一実施形態の畳表折曲げ装置の旋回機構を示す図
図10】本発明の一実施形態の畳表折曲げ装置の折曲げ工程を示すフロー図
図11】本発明の一実施形態の畳表折曲げ装置の折曲げ工程を示すフロー図
図12】本発明の一実施形態の畳表折曲げ装置の折曲げ工程を示すフロー図
図13】本発明の一実施形態の畳表折曲げ装置の折曲げ工程を示すフロー図
図14】本発明の一実施形態の畳表折曲げ装置の折曲げ工程を示すフロー図
図15】本発明の一実施形態の畳表折曲げ装置の折曲げ工程を示すフロー図
図16】本発明の一実施形態に係る畳表の上前側の折曲げを示す説明図
図17】本発明の一実施形態に係る畳表を示す説明図
図18】本発明の一実施形態に係る畳表の折曲部分を示す拡大図
図19】本発明の一実施形態に係る畳表の下前側の折曲げを示す説明図
図20】縁無し畳を製造する方法を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0051】
<畳表折曲げ装置の構造>
以下、本発明の一実施形態に係る畳表折曲げ装置を図面に基づき説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0052】
(1.概要)
まず、本発明の一実施形態に係る畳表折曲げ装置10は、いわゆる「縁無し畳」を製造するためのものであって、畳床の形状に沿って折り曲げられた畳表を製造するものである。
【0053】
本発明の畳表折曲げ装置10は、所定の寸法に裁断された畳床に取り付けるための畳表200を、畳床の寸法に合うように、裁断、折曲げなどの処理を行うものである。そして、これらの処理がされた畳表200を畳床に取り付けて畳が完成する。
【0054】
また、本発明の畳表折曲げ装置10において、畳表200の被折曲げ側辺である畳表200の側辺202は、畳表200の長さ方向の辺(上前側の辺、下前側の辺)を言う。また、側辺204は短手方向の辺(巾側の辺)を言う。
【0055】
また、本発明の畳表折曲げ装置10の対象とする畳表200は、例えば、天然のイ草からなる畳表、和紙製のイ草からなる畳表、樹脂製のイ草からなる畳表など全ての畳表に適用することができる。
【0056】
(2.全体構造)
図1は本実施形態の畳表折曲げ装置を示す平面図、図2は同畳表折曲げ装置の正面図、図3は同畳表折曲げ装置の側面図である。図1図2図3に示すように、畳表折曲げ装置10は、架台フレーム12と、上前側畳表折曲げユニット16と、下前側畳表折曲げユニット18と、を主要な構成として備えている。この架台フレーム12上に2本の案内レール14が設けられている。
【0057】
図1図3に示すように、架台フレーム12上の畳表の巾方向(A方向)における一方の端部には、架台フレーム12に設けられている案内レール14上に、上前側畳表折曲げユニット16が設けられていて、上前側畳表折曲げユニット16が下前側畳表折曲げユニット18に対して接離する方向(A方向)に移動可能となっている。
【0058】
また、架台フレーム12上のA方向における他方の端部には、架台フレーム12に設けられている案内レール14上に、下前側畳表折曲げユニット18が設けられていて、下前側畳表折曲げユニット18が上前側畳表折曲げユニット16に対して接離する方向(A方向)に移動可能となっている。
【0059】
なお、本実施形態においては、上前側畳表折曲げユニット16が移動可能な構成としているが、A方向に移動しない固定された構成とすることもできる。
【0060】
また、図2図3に示すように、案内レール14の下方には、ギヤードモーター22aと、これに接続される案内レール14に添ったボールネジ22bとエンコーダ22cとを備える駆動機構22が、架台フレーム12に固定されている。
【0061】
また、下前側畳表折曲げユニット18は、案内レール14上を水平移動する移動フレーム24を備えていて、駆動機構22によって、移動フレーム24を畳表の巾方向(A方向)に水平移動させることで、下前側畳表折曲げユニット18が上前側畳表折曲げユニット16に対して接離する方向に移動可能となっている。
【0062】
(3.上前側折曲げユニット)
上前側畳表折曲げユニット16は、図3に示すように、畳表を載置するテーブル30と、このテーブル30に固定される畳表を上方から押さえて保持する畳表押さえ機構100と、畳表の端辺を裁断する裁断機構140と、裁断後の畳表の端辺を折曲げる畳表折曲げ機構120と、を主要な構成として備える。
【0063】
テーブル30は、載置する畳表の長さ方向(B方向)に伸びていて、畳表の上前側が載置されるようになっている。また、テーブル30の上方には、畳表を上方から押さえて保持する畳表押さえ機構100が配されている。
【0064】
上前側畳表折曲げユニット16におけるテーブル30の、畳表の巾方向(図1図3のA方向)の下前側畳表折曲げユニット18側には、後述する中間押さえ機構150が配されている。一方、テーブル30の、畳表の巾方向の下前側畳表折曲げユニット18側と反対側には、畳表折曲げ機構120がテーブル30の端部に近接して配されている(図4参照)。
【0065】
畳表押さえ機構100は、畳表を上方から押さえて保持するもので、折曲げ支持部材102と、これを昇降移動させるための駆動シリンダー104と、駆動シリンダーを回動させる旋回シリンダー106とを主要な構成として備える。
【0066】
図3図4に示すように、折曲げ支持部材102は、駆動シリンダー104の先端に連結されており、駆動シリンダー104の作動によって、先端に連結された折曲げ支持部材102が、昇降するように構成されている。
【0067】
また、この駆動シリンダー104は、旋回シリンダー106によって回動するように構成されている。この駆動シリンダー104の回動に伴って、折曲げ支持部材102が、旋回するように構成されている。
【0068】
また、折曲げ支持部材102は、折曲げ支持部材本体102aと、テーブル30の折曲げ側端部30d側に形成された傾斜支持部102bとを備えている。この傾斜支持部102bには、折曲げ側端部30d側に傾斜した、すなわち、折曲げ側端部30dから離間する方向に傾斜した傾斜案内面102cが形成されている。
【0069】
また、図4図5に示すように、後述する折曲げ機構120を構成する折曲げ部材101のテーパー傾斜面108と水平面のなす角度αと、折曲げ支持部材102の傾斜案内面102cと水平面のなす角度βが、α>βの関係になるように設定されている。
【0070】
なお、折曲げ支持部材102は、畳表200の側辺202に沿うように、畳表折曲げ装置10の横方向(B方向)に延びている。また、畳表折曲げ機構120の折曲げ部材101は、昇降駆動シリンダー110の駆動によって、テーブル30の折曲げ側端部30dに対して、上下方向に移動できるように構成されている。
【0071】
この折曲げ部材101は、図3図4図5に示すように、断面視において、折曲げ作用部112と、折曲げ作用部112の下方に形成され、折曲げ作用部112の幅よりも幅が狭くなった中間部114を備えている。さらに、この中間部114の下方には、中間部114の幅よりも幅が広くなった基端部116を備えている。これにより、中間部114のテーブル30側に、進入用凹部115が形成されている。
【0072】
また、図5に示すように、折曲げ作用部112は、平坦に形成された上端面118を備えている。そして、折曲げ部材101の折曲げ作用部112のテーブル30側には、立ち上げ部を構成する畳表立ち上げ面117が、テーブル30の上面に対して垂直な方向に形成されている。
【0073】
なお、この場合、上端面118と畳表立ち上げ面117との間の隅角部は丸くR部が形成されており、後述する立ち上げの際に、畳表200の被折曲げ側辺202を損傷しないよう構成されている。
【0074】
また、畳表の端部を立ち上げる際は、まず折曲げ部材101が上昇して、畳表の下面に接地している折曲げ部材101の上端面118が端部を持ち上げる。そして、折曲げ部材101が上昇しながら、上端面118の先端を通過して、畳表立ち上げ面117と折曲げ支持部材102の先端102d(テーブル30の端部位置)とで、畳表を挟むように端部を立ち上げていく。
【0075】
なお、この実施例では、立ち上げ部を構成する畳表立ち上げ面117を、テーブル30の上面に対して垂直な方向に形成したが、畳表200の被折曲げ側辺202を損傷しないように立ち上げる面であれば良く、傾斜面やR面で形成することも可能である。
【0076】
すなわち、この畳表立ち上げ面117では、畳表200の被折曲げ側辺202を損傷しないように立ち上げることが出来ればよく、上記した形状以外でも様々な他の形状を採用することもできる。
【0077】
また、折曲げ部材101の折曲げ作用部112には、この畳表立ち上げ面117の下方に、畳表立ち上げ面117から下方に延設され、テーブル30の折曲げ側端部30dから離間する方向に傾斜した、プレス面を構成するテーパー傾斜面108が形成されている。
【0078】
また、折曲げ部材101の基端部116には、折曲げ部材101を加熱するための、例えば、シーズヒーターなどからなるヒーター119を備えている。
【0079】
このヒーター119は、畳表200が、例えば、樹脂製のイ草から構成されている場合に、後述するように、畳表200の被折曲げ側辺202を折曲げる際に、折曲げ線203の近傍を加熱して柔らかくして、この折曲げ線203からの折曲げを容易にするためのものである。
【0080】
なお、このヒーター119としては、特に限定されるものではなく、公知のヒーターを採用することができる。この場合、加熱温度も特に限定されるものでなく、樹脂製のイ草の種類に応じて適宜設定すればよく、例えば、120℃に設定することができる。
【0081】
なお、このように構成される折曲げ部材101は、畳表200の側辺202に沿うように、畳表折曲げ装置10の横方向(B方向)に延びている。
【0082】
一方、図6に示すように、畳表の端辺を裁断する裁断機構140は、裁断刃141と筋付刃142と伝熱コテ143とを主要な構成として備えている。裁断刃141と筋付刃142および伝熱コテ143は、畳表の巾方向に所定の間をあけて略平行に配されている。
【0083】
そして、裁断機構140が、畳表の長さ方向(B方向)に沿って移動可能に構成されているとともに、裁断刃141と筋付刃142および伝熱コテ143が昇降可能に構成されている。
【0084】
この構成によって、裁断刃141と筋付刃142が降下して畳表に接した状態で、裁断刃141を回転させる駆動モータ144が駆動して裁断刃141が回転し、裁断機構140が畳表の長さ方向に沿って移動することで、畳表の端部を裁断刃141が裁断すると同時に、筋付刃142が裁断後の畳表の端部の折曲げ位置に筋付けを行う。また、筋付刃142の後を追うように伝熱コテ143が折曲げ位置に沿って走行する。
【0085】
これにより、畳表の端部の裁断と、折曲げを確実に行うための折曲げ線が折曲げ位置につけられる。また、伝熱コテ143を折曲げ位置にあてることで、畳表が樹脂製の場合など樹脂を溶かして折り目を付けやすくして、筋付けを効果的に行うことができる。なお、畳表が天然素材や和紙製の場合には、表面に焦げ目を付けてしまうため、伝熱コテ143は原則使用しない。
【0086】
なお、本実施形態の筋付刃142は、例えば伝熱コテからなる加熱けびき部材を設けているが、伝熱コテを備えないけびき部材やその他の筋付け可能な部材を用いることも可能である。
【0087】
また、畳表が、例えば、天然のイ草からなる畳表や、和紙製のイ草からなる畳表の場合には、けびき部材による折りぐせ線の形成で十分であるが、樹脂製のイ草からなる畳表200などでは、けびき部材と加熱けびき部材を併用するのが望ましい。
【0088】
(4.下前側折曲げユニット)
図1図2図3に示すように、下前側畳表折曲げユニット18は、水平方向に旋回可能に構成された畳表を載置するテーブル30と、このテーブル30に固定され畳表の端辺を裁断する裁断機構140と、同じくテーブル30に固定され畳表の長さ方向(B方向)に並び配されて隣り合う、第1畳表折曲げユニット18Aと第2畳表折曲げユニット18Bと、を主要な構成として備える。
【0089】
第1畳表折曲げユニット18Aと第2畳表折曲げユニット18Bは、畳表を上方から押さえて保持する第1畳表押さえ機構100Aと第2畳表押さえ機構100Bと、裁断後の畳表の端辺を折曲げる第1畳表折曲げ機構120Aと第2畳表折曲げ機構120Bとを、それぞれ備えている。
【0090】
なお、畳表を載置するテーブル30と、畳表の端辺を裁断する1の裁断機構140とは、第1畳表折曲げユニット18Aと第2畳表折曲げユニット18Bとで共有して用いられる。
【0091】
テーブル30は、畳表の長さ方向(B方向)に伸びていて、畳表の下前側が載置されるようになっている。テーブル30の上方には、畳表を上方から押さえて保持する第1畳表押さえ機構100Aと第2畳表押さえ機構100Bとが並び配されている。
【0092】
下前側畳表折曲げユニット18におけるテーブル30の、畳表の巾方向の上側畳表折曲げユニット16側には、後述する中間押さえ機構150が配されている。一方、テーブル30の、畳表の巾方向の上前側畳表折曲げユニット16側と反対側には、第1畳表折曲げ機構100Aと第2畳表折曲げ機構100Bとが、それぞれテーブル30の端部に近接して並び配されている(図7参照)。
【0093】
なお、中間押さえ機構150は、畳表を載置するテーブル30と、畳表の端辺を裁断する裁断機構140と、畳表の長さ方向(B方向)に並び配されて隣り合う第1畳表折曲げユニット18Aと、第2畳表折曲げユニット18Bなどとともに、移動フレーム24上に配されている。
【0094】
そのため、これらが畳表の巾方向(A方向)に移動する際に、同様に移動する構成となっており、移動後もこれらと中間押さえ機構150との距離が遠ざかることなく一定の距離を保っているので、中間押さえ機構150が畳表をしっかりと押さえて保持できるようになっている。
【0095】
第1畳表押さえ機構100Aと第2畳表押さえ機構100Bは、畳表の長さ方向における左右をそれぞれ上方から押さえて保持するもので、それぞれが折曲げ支持部材102と、これを昇降移動させるための駆動シリンダー104と、これを回動させる旋回シリンダー106とを主要な構成として備える。
【0096】
なお、各折曲げ支持部材102は、駆動シリンダー104の先端に連結されており、駆動シリンダー104の作動によって、先端に連結された折曲げ支持部材102が、昇降するように構成されている。
【0097】
これらの構成により、第1畳表押さえ機構100Aの折曲げ支持部材102と、第2畳表押さえ機構100Bの折曲げ支持部材102が、それぞれ個別に昇降可能となっている。
【0098】
また、この各駆動シリンダー104は、旋回シリンダー106によって回動するように構成されている。そして、この各駆動シリンダー104の回動に伴って、各折曲げ支持部材102が、それぞれ個別に旋回するように構成されている。
【0099】
また、各折曲げ支持部材102は、折曲げ支持部材本体102aと、テーブル30の折曲げ側端部30d側に形成された傾斜支持部102bとを備えている。この傾斜支持部102bには、折曲げ側端部30d側に傾斜した、すなわち、折曲げ側端部30dから離間する方向に傾斜した傾斜案内面102cが形成されている。
【0100】
また、折曲げ部材101のテーパー傾斜面108と水平面のなす角度αと、折曲げ支持部材102の傾斜案内面102cと水平面のなす角度βが、α>βの関係になるように設定されている。
【0101】
なお、左右の折曲げ支持部材102は、畳表200の側辺202に沿うように、畳表折曲げ装置10の横方向(B方向)に延びていて、これらの折曲げ支持部材102がテーブル30の横方向の寸法と同程度になるよう構成されている。
【0102】
また、第1畳表折曲げ機構120Aと第2畳表折曲げ機構120Bの各折曲げ部材101は、各昇降駆動シリンダー110の駆動によって、テーブル30の折曲げ側端部30dに対して、それぞれ個別に上下方向に移動できるように構成されている。
【0103】
このように、第1畳表折曲げ機構120Aと第2畳表折曲げ機構120Bの各折曲げ部材101がそれぞれ個別に上下方向(C方向)に移動可能で、かつ、第1畳表押さえ機構100Aと第2畳表押さえ機構100Bの各折曲げ支持部材102がそれぞれ個別に上下方向に移動可能であるので、畳表の長さ方向の間中位置を境に、左右それぞれの畳表の端部の処理が可能となっている。
【0104】
また、各折曲げ部材101は、図5に示すように、断面視において、折曲げ作用部112と、折曲げ作用部112の下方に形成され、折曲げ作用部112の幅よりも幅が狭くなった中間部114を備えている。さらに、この中間部114の下方には、中間部114の幅よりも幅が広くなった基端部116を備えている。これにより、中間部114のテーブル30側に、進入用凹部115が形成されている。
【0105】
また、折曲げ作用部112は、平坦に形成された上端面118を備えている。そして、各折曲げ部材101の折曲げ作用部112のテーブル30側には、立ち上げ部を構成する畳表立ち上げ面117が、テーブル30の上面に対して垂直な方向に形成されている。
【0106】
なお、この場合、上端面118と畳表立ち上げ面117との間の隅角部は丸くR部が形成されており、後述する立ち上げの際に、畳表200の被折曲げ側辺202を損傷しないよう構成されている。
【0107】
なお、本実施形態では、立ち上げ部を構成する畳表立ち上げ面117を、テーブル30の上面に対して垂直な方向に形成したが、畳表200の被折曲げ側辺202を損傷しないように立ち上げる面であれば良く、傾斜面やR面で形成することも可能である。
【0108】
すなわち、この畳表立ち上げ面117では、畳表200の被折曲げ側辺202を損傷しないように立ち上げることが出来ればよく、上記した形状以外でも様々な他の形状を採用することもできる。
【0109】
また、折曲げ部材101の折曲げ作用部112には、この畳表立ち上げ面117の下方に、畳表立ち上げ面117から下方に延設され、テーブル30の折曲げ側端部30dから離間する方向に傾斜した、プレス面を構成するテーパー傾斜面108が形成されている。
【0110】
また、折曲げ部材101の基端部116には、折曲げ部材101を加熱するための、例えば、シーズヒーターなどからなるヒーター119を備えている。
【0111】
このヒーター119は、畳表200が、例えば、樹脂製のイ草から構成されている場合に、後述するように、畳表200の被折曲げ側辺202を折曲げる際に、折曲げ線203の近傍を加熱して柔らかくして、この折曲げ線203からの折曲げを容易にするためのものである。
【0112】
なお、このヒーター119としては、特に限定されるものではなく、公知のヒーターを採用することができる。この場合、加熱温度も特に限定されるものでなく、樹脂製のイ草の種類に応じて適宜設定すればよく、例えば、120℃に設定することができる。
【0113】
なお、このように構成される各折曲げ部材101は、畳表200の側辺202に沿うように、畳表折曲げ装置10の横方向(B方向)に延びている。
【0114】
さらに、第1畳表折曲げ機構120Aと第2畳表折曲げ機構120Bは、各折曲げ部材101を上下に昇降する各昇降駆動シリンダー110に接続され、各折曲げ部材101を畳表の巾方向に水平方向させる各駆動シリンダー132、133をそれぞれ備えている。なお、駆動シリンダー132は、後述する畳表の端部の折曲げ(本曲げ)時に用いるシリンダーであり、駆動シリンダー133は、後述する仮曲げ時に用いるシリンダーである。
【0115】
そして、第1畳表折曲げ機構120Aと第2畳表折曲げ機構120Bの各昇降駆動シリンダー110は、畳表の端部を折曲げる時の位置よりも低い位置で停止可能に構成されている。また、各駆動シリンダー133は、畳表の端部を折曲げる時の位置よりも遠ざかった位置、すなわちテーブルの端部と折曲げ部材101との間に隙間をあけた位置で停止可能に構成されている。
【0116】
この構成により、第1畳表折曲げ機構120Aと第2畳表折曲げ機構120Bの各折曲げ部材101を、テーブル30の端部との間に水平方向に隙間をあけた位置で、畳表の端部を折曲げる時の位置よりも低い位置で停止することにより、畳表の端部を完全に折曲げるに先立って、仮曲げを行うことがそれぞれ可能となっている(図8参照)。
【0117】
仮曲げは、後述する本実施形態の折曲げ工程に示すように、側辺が一直線状でなく折曲した畳に対応するため、畳表が硬い場合などに側辺の一部を仮曲げを行わずいきなり本曲げを行うと、他部を折曲げる際に、折曲げが重なる中間位置などで畳表の破れなどが生じるおそれがある場合に、仮曲げを先立って行うことでこのような破れを抑制することができる。
【0118】
一方、畳表の端辺を裁断する裁断機構140は、1の裁断機構で構成されており、この裁断機構140が第1畳表折曲げユニット18Aと第2畳表折曲げユニット18Bを横断可能に構成されている。この裁断機構140は、裁断刃141と筋付刃142と伝熱コテ143とを主要な構成として備えている。裁断刃141と筋付刃142および伝熱コテ143は、畳表の巾方向に所定の隙間をあけて略平行に配されている。
【0119】
そして、裁断機構140が、畳表の長さ方向(B方向)に沿って移動可能に構成されているとともに、裁断刃141と筋付刃142および伝熱コテ143が昇降可能に構成されている。
【0120】
この構成によって、裁断刃141と筋付刃142が降下して畳表に接した状態で、裁断刃141を回転させる駆動モータ144が駆動して裁断刃141が回転し、裁断機構140が畳表の長さ方向(B方向)に沿って移動することで、畳表の端部を裁断刃141が裁断すると同時に、筋付刃142が裁断後の畳表の端部の折曲げ位置に筋付けを行う。また、筋付刃142の後を追うように伝熱コテ143が折曲げ位置に沿って走行する。
【0121】
これにより、畳表200の端部の裁断と、折曲げを確実に行うための折曲げ線203が折曲げ位置につけられる。また、伝熱コテ143を折曲げ位置にあてることで、畳表が樹脂製の場合など樹脂を溶かして折り目を付けやすくして、筋付けを効果的に行うことができる。なお、畳表が天然素材や和紙製の場合には、表面に焦げ目を付けてしまうため、伝熱コテ143は原則使用しない。
【0122】
なお、この裁断機構140と、第1畳表折曲げユニット18Aと第2畳表折曲げユニット18Bとの関係については、下記の畳表の折曲げ工程にて詳述する。
【0123】
また、前述の通り、下前側畳表折曲げユニット18は、水平方向に旋回可能に構成されている。具体的には、移動フレーム24上に配されたテーブル30が、仮想軸Xを中心に旋回可能に構成されている。この仮想軸Xの位置は、畳表の長さ方向が第1畳表折曲げユニット18Aと第2畳表折曲げユニット18Bの間の位置で、畳表の巾方向が上前側畳表折曲げユニット16と反対側のテーブル30の端部の位置となっている。
【0124】
より詳細には、仮想軸Xの位置は、畳表の長さ方向における第1畳表折曲げ機構120Aの折曲げ部材101と第2畳表折曲げ機構120Bの折曲げ部材101の間の中間位置と、畳表の巾方向における各折曲げ部材101の端部の位置となっている(図1参照)。
【0125】
また、テーブル30の旋回とともに、裁断機構140、第1畳表折曲げユニット18A(第1畳表押さえ機構100A及び第1畳表折曲げ機構120A)、第2畳表折曲げユニット18B(第2畳表押さえ機構100B及び第2畳表折曲げ機構120B)も旋回する。なお、中間押さえ機構150は旋回しない構成としている。
【0126】
具体的には、図9に示すように、移動フレーム24上には、駆動モータなどの駆動装置34が設けられている。この駆動装置34の駆動軸34aの歯車34bと噛合して、回転する回転歯車36が、移動フレーム24上に回転可能に軸支されている。
【0127】
そして、この回転歯車36の回転軸36aに、略L字形状の第1のカム38が連結されている。この第1のカム38の一方の端部には、連結ピン40を介して第1のリンク部材42の一端が連結されている。
【0128】
また、第1のリンク部材42の他端部に設けられた軸形状の第1の結合部42aが、テーブル30の第1の結合部30aに結合されている。
【0129】
一方、第1のカム38の他方の端部には、連結ピン41を介して第2のリンク部材44の一端が連結されている。この第2のリンク部材44の他方の端部には、連結ピン43を介して略L字形状の第2のカム46の一端が連結されている。
【0130】
そして、この第2のカム46には、軸部材46aが設けられており、第2のカム46が、この軸部材46aを中心に、移動フレーム24上に回転可能に軸支されている。また、第2のカム46の他端には、連結ピン48を介して第3のリンク部材50の一端が連結されている。
【0131】
また、第3のリンク部材50の他端部に設けられた軸形状の第2の結合部50aが、テーブル30の第2の結合部30bに結合されている。
【0132】
さらに、移動フレーム24上には、鉛直方向の仮想軸Xを中心に、2つの仮想円弧上に配置された第1のガイドローラー52と第2のガイドローラー54を備えている。
【0133】
すなわち、第1のリンク部材42の近傍には、仮想軸Xを中心に、半径r1の第1の仮想円弧G1上に、一定間隔離間して配置された複数(本実施形態では2個)の第1のガイドローラー52が配置されている。
【0134】
また、第3のリンク部材50の近傍には、仮想軸Xを中心に、半径r2の第2の仮想円弧G2上に、一定間隔離間して配置された複数(本実施形態では2個)の第2のガイドローラー54が配置されている。
【0135】
また、テーブル30の第1の結合部30aの近傍には、第1の仮想円弧G1に対応するように、仮想軸Xを中心に半径r1の円弧状に第1の案内突設部56が形成されている。
【0136】
そして、このテーブル30の第1の案内突設部56の外周に、第1のガイドローラー52が回転摺動可能に嵌合されている。
【0137】
同様に、テーブル30の第2の結合部50aの近傍には、第2の仮想円弧G2に対応するように、仮想軸Xを中心に、半径r2の円弧状に第2の案内突設部58が形成されている。
【0138】
そして、このテーブル30の第2の案内突設部58の外周に、第2のガイドローラー54が回転摺動可能に嵌合されている。
【0139】
このように構成することによって、図9に示すように、駆動装置34を駆動することによって、テーブル30が、移動フレーム24上の第1のガイドローラー52と、テーブル30の第1の案内突設部56とに案内されて、また、第2の案内突設部58の第2のガイドローラー54と、テーブル30の第2の案内突設部58とに案内されて、仮想軸Xを中心に、旋回可能に構成されている。
【0140】
なお、この場合、駆動装置34を駆動することによって、第2のリンク部材44を介して、第1のカム38と第2のカム46とが、同じ角度で回転する。そして、第1のカム38と第2のカム46は、第1の案内突設部56の外周と、第2の案内突設部58の外周のガイド円弧の仮想軸Xからの半径比r1:r2に基づいて、支点と作用点を設定してある。
【0141】
これにより、仮想軸Xがずれることなく、仮想軸Xを中心にテーブル30が、水平方向に旋回可能に構成されている。
【0142】
以上の構成により、テーブル30及び裁断機構140とともに、第1畳表折曲げユニット18A(第1畳表押さえ機構100A及び第1畳表折曲げ機構120A)と第2畳表折曲げユニット18B(第2畳表押さえ機構100B及び第2畳表折曲げ機構120B)が同調して仮想軸Xを支点に旋回駆動する。
【0143】
一方、第1畳表折曲げユニット18Aの第1畳表押さえ機構100A及び第1畳表折曲げ機構120Aと、第2畳表折曲げユニット18Bの第2畳表押さえ機構100B及び第2畳表折曲げ機構120Bは、それぞれ個別に駆動する。
【0144】
これにより、第1畳表折曲げユニット18Aと第2畳表折曲げユニット18Bは、旋回は同調して動作するとともに、折曲げは個別に動作することができる。
【0145】
<畳表の折曲げ工程>
次に、図10乃至図15に基づき、畳表を所定の畳床に取り付けられるように、畳表を裁断して折曲げる工程について説明する。図10乃至図15は、畳表折曲げ装置の折曲げ工程を示すフロー図である。
【0146】
(1)畳表の巾寸法の設定
図10-1は開始前の原点を示し、2に示すように、畳床の巾寸法に合わせた畳表とすべく、所望する畳表200の巾寸法に合わせるため、まず下前側畳表折曲げユニット18を上前側畳表折曲げユニット16から接離する方向に移動させる。
【0147】
具体的には、畳表200に合わせる畳床206の上前側の中間位置と、下前側の中間位置との巾寸法を基準として、駆動機構22を作動することによって、架台フレーム12上に配置された案内レール14上に沿って、下前側畳表折曲げユニット18を上前側畳表折曲げユニット16から接離する方向に移動させる。
【0148】
(2)畳表の下前側側辺の傾斜合わせ
次に、図10-3に示すように、畳床の下前側の側辺の右側206Aの傾斜(クセ)に、畳表200の下前側の右側側辺202Aの傾斜を合わせるため(図17参照)、仮想軸Xを中心に下前側畳表折曲げユニット18を回転させ、畳表200の下前側の右側側辺202Aの傾斜と、第1畳表折曲げユニット18Aの第1畳表押さえ機構100A及び第1畳表折曲げ機構120Aの傾斜が平行になるようにする。
【0149】
具体的には、操作パネル160で旋回角度を設定した後スタートさせると、駆動装置34の駆動モータが作動して、下前側畳表折曲げユニット18の中間位置、すなわち、第1畳表折曲げユニット18Aと第2畳表折曲げユニット18Bの間の位置を仮想軸Xとして、この仮想軸Xを中心として、設定した旋回角度分、下前側畳表折曲げユニット18が旋回して停止する。
【0150】
(3)畳表の載置(上前側)
この状態で、畳表200を裏面が上に向いた状態で、畳表の目がずれて斜めにならないようにして、テーブル30の上面に載せ置く。
【0151】
なお、折曲げ部材101の昇降駆動シリンダー110を駆動することによって、テーブル30の上面と、折曲げ部材101の上端面118との高さ位置が一致するようにしておく。
【0152】
そして、畳表200をテーブル30に載置した状態で、上前側畳表折曲げユニット16の畳表押さえ機構100の駆動シリンダー104を作動させて、折曲げ支持部材102を下降させる。これにより、折曲げ支持部材102の下面とテーブル30の上面との間で、畳表200を挟持して、畳表200の位置ずれが発生しないように固定する。
【0153】
また、折曲げ支持部材102とは別に、架台フレーム12に上下動可能に構成された中間押さえが設けられている。そして、中間押さえ機構150を駆動させて、中間押さえ151を下降させ、中間押さえ151の下面とテーブル30の上面との間で、畳表200を挟持することで、中間押さえ151でも畳表200の位置ずれが発生しないように固定する。
【0154】
これらにより、折曲げ支持部材102と中間押さえ151との両方でしっかりと畳表200の上前側を保持して、位置ずれが発生しないようにする。
【0155】
なお、畳表200の被折曲げ側の側辺202、特に折曲げ線203の近傍に、折曲げ促進剤を塗布、浸漬、または噴射するようにして、折曲げやすくしてもよい。
【0156】
このような折曲げ促進剤としては、例えば、水、高温の水蒸気、高浸透性の界面活性剤などを用いることができる。これにより、畳表200の被折曲げ側辺202を、畳表200の折曲げ線203を支点として内側に折曲げる際に折曲げが容易となり、畳表の被折曲げ側辺が破損損傷するのが防止でき、見栄えが良好で商品価値が高い縁無し畳を製造することができる。
【0157】
(4)畳表の載置(下前側)
次に、畳表200の下前側を固定する。詳しくは、上前側の固定後、作業者が下前側に回り込み、上前側が固定された状態の畳表200がたわまないよう軽く引っ張る。なお、このとき畳表の目がずれて斜めにならないよう注意する。
【0158】
そして、この状態で、図11-4に示すように、下前側の左右の第1畳表押さえ機構100A、第2畳表押さえ機構100Bの各駆動シリンダー104を作動させて、各折曲げ支持部材102が下降する。これにより、各折曲げ支持部材102の下面とテーブル30の上面との間で、畳表200を挟持して、畳表200の位置ずれが発生しないように固定される。
【0159】
また、各折曲げ支持部材102とは別に、架台フレーム12に上下動可能に構成された中間押さえ151が配されている。そして、中間押さえ駆動機構152を駆動させて、中間押さえ151を下降させ、中間押さえ151の下面とテーブル30の上面との間で、畳表200を挟持することで、中間押さえ151でも畳表200の位置ずれが発生しないように固定する。
【0160】
これらにより、各折曲げ支持部材102と中間押さえ151との両方でしっかりと畳表200の下前側も保持して、位置ずれが発生しないようにする。
【0161】
(5)畳表の上前側の裁断と折曲げ
上記のように、畳表200の上前側と下前側が、これらの折曲げ支持部材102と中間押さえ151とにより保持された状態で、畳表200の上前側の端部の処理を行う。なお、ここで端部の処理とは、畳表200の上前側の端部を裁断すると同時に、予め設定した端部の所定位置に折りぐせ線をつけること(筋付け)を言う。また、本実施形態の畳表折曲げ装置10は、畳表200を設置した後、スタートスイッチを押して装置を作動させれば、畳表200の上前側及び下前側の端部処理が完成するまで、全て自動で行うことができる。
【0162】
具体的には、操作パネル160のスタートスイッチを押して装置を作動させると、図11-4に示すように、裁断機構140が駆動して、裁断刃141を回転させる駆動モータ144が駆動して裁断刃141が回転し、裁断刃141と筋付刃142および伝熱コテ143が降下して畳表に接した状態となる。そして、裁断刃141と筋付刃142および伝熱コテ143が、畳表200の長さ方向の一方端部から、他方端部まで、畳表200の長さ方向(B方向)に沿って移動する。
【0163】
これにより、畳表200の端部を裁断刃141が裁断すると同時に、筋付刃142が、裁断後の畳表200の端部の予め設定された折曲げ線203となる位置に筋付けを行う。そして、畳表200の上前側の端部の裁断及び筋付けが終わると、裁断機構140が他方端部から一方端部に戻る。
【0164】
その後、裁断後の上前側端部の折曲げが行われる。具体的には、図4に示すように、上前側畳表折曲げユニット16の畳表折曲げ機構120の昇降駆動シリンダー110が駆動して、折曲げ部材101が上昇し、畳表200との接地面である上端面118により畳表の端部を押し上げる。そして、上端面118の先端のRに形成された面を通過して、折曲げ部材101の立ち上げ部を構成する畳表立ち上げ面117が上昇するとともに、立ち上げ面117と、折曲げ支持部材102の先端102dとが、畳表200の端部を挟み込むように畳表200の端部を立ち上げる。
【0165】
これにより、畳表立ち上げ面117によって、畳表200の折曲げ線203を支点として、畳表200の被折曲げ側辺202が鉛直方向に立ち上げる。これによって、畳表200の表面を損傷することなく、畳表200のみを予め、イ草の織目方向(イ草の向き)に対して垂直な方向に予めある程度折曲げることができる。
【0166】
この場合、テーブル30の折曲げ側端部30dと、折曲げ部材101の立ち上げ部を構成する畳表立ち上げ面117との間の幅は、畳表200の厚さと同じか、僅かに小さく設定することで、畳表200の被折曲げ側辺202が鉛直方向に立ち上げるのが容易となる。
【0167】
また、上前側畳表折曲げユニット16の畳表折曲げ機構120の昇降駆動シリンダー110を駆動による折曲げ部材101の上昇程度は、折曲げ部材101の畳表立ち上げ面117を超えて、プレス面を構成するテーパー傾斜面108の途中の高さ位置に、テーブル30の折曲げ側端部30dが位置する程度である。
【0168】
このように、折曲げ部材101の畳表立ち上げ面117による畳表200の被折曲げ側辺202の鉛直方向への立ち上げが完了した後、畳表折曲げ機構120の駆動シリンダー132が駆動する。
【0169】
すなわち、テーブル30の折曲げ側端部30dに対して、折曲げ部材101を接近する方向に移動する。この場合、折曲げ部材101の中間部114のテーブル30側に、進入用凹部115が形成されているので、テーブル30の折曲げ側端部30dが進入用凹部115内に進入して、この移動が阻害されることがないように構成されている。
【0170】
これによって、畳表200の被折曲げ側辺202と折曲げ部材101のプレス面を構成するテーパー傾斜面108とを当接させて、畳表200の被折曲げ側辺202を、畳表200の折曲げ線203を支点として内側に折曲げる。
【0171】
この場合、上前側畳表折曲げユニット16の折曲げ部材101のテーパー傾斜面108と水平面のなす角度αと、折曲げ支持部材102の傾斜案内面102cと水平面のなす角度βが、α>βの関係になるように設定されている(図5参照)。
【0172】
このような関係に折曲げ部材101のテーパー傾斜面108と水平面のなす角度αと、折曲げ支持部材102の傾斜案内面102cと水平面のなす角度βが設定されていれば、畳表200の被折曲げ側辺202を、畳表200の折曲げ線203を支点として内側に折曲げる際に、折曲げ部材101のテーパー傾斜面108によって、折曲げ支持部材102の傾斜案内面102cとの間に、畳表200の被折曲げ側辺202が強固に挟み込まれることがない。
【0173】
また、上記のように角度がα>βの関係になるように設定されていれば、テーパー傾斜面108によって、畳表200の折曲げの圧力が折曲げ支持部材102の先端102dに確実にかかることとなるので、寸法精度の良い畳表の折曲げが可能となる。
【0174】
したがって、畳表200の折曲げ線203を支点として内側に折曲げる際に、畳表200の被折曲げ側辺202が破損損傷するのが防止でき、見栄えが良好で商品価値が高い縁無し畳を製造することができる。
【0175】
次に、この状態から、折曲げ支持部材102が畳表200の被折曲げ側辺202から離間する方向に移動する。これにより、旋回シリンダー106が回動し、この旋回シリンダー106の回動に伴って、折曲げ支持部材102が、畳表200の被折曲げ側辺202から離間する方向に旋回する。
【0176】
また、これと同時に、上前側畳表折曲げユニット16の畳表押さえ機構100の駆動シリンダー104が作動して、折曲げ支持部材102が上昇する。これによって、図4-4に示すように、折曲げ支持部材102が、畳表200の被折曲げ側辺202から離間する方向に移動する。
【0177】
この場合、上前側畳表折曲げユニット16の畳表押さえ機構100の折曲げ支持部材102の移動量は、次の工程において、畳表200の被折曲げ側辺202と畳表折曲げ機構120の折曲げ部材101のプレス面を構成するテーパー傾斜面108とのプレスの邪魔にならない程度に構成している。
【0178】
次に、この状態で、畳表折曲げ機構120の昇降駆動シリンダー110が駆動して、折曲げ部材101が下降する。
【0179】
すなわち、折曲げ部材101がテーブル30に対してさらに下方の位置となるように移動することにより、畳表200の被折曲げ側辺202を、畳表200の折曲げ線203を支点としてさらに内側に折曲げる。
【0180】
このように構成することによって、畳表200の被折曲げ側辺202を、畳表200の折曲げ線203を支点として内側にさらに折曲げることができ、折り目(折り癖)がしっかりと付き、角が丸くなってしまうことがない(図16参照)。
【0181】
これにより、畳床の側面に折曲げた部分を固定する際にも、いわゆる浮いた状態となることなくしっかりと固定でき、見栄えが良好で商品価値が高い縁無し畳を製造することができる。
【0182】
(6)畳表の下前側の右半分の裁断、筋付け
以上のように畳表200の上前側の裁断及び折曲げ処理が完了した後、次に畳表200の下前側の端部の処理が行われる。本実施形態の畳表200は、下前側が中間位置(間中位置)で傾斜した畳に対応するものであるため、下前側の端部については、下前側の右半分の処理と、左半分の処理とをそれぞれ行うこととなる。
【0183】
ここで端部の処理とは、畳表200の上前側の端部を裁断すると同時に、予め設定した端部の所定位置に折りぐせ線(筋付け)をつけることを言う。また、本実施形態においては、上前側の折曲げを完了させてから下前側の裁断・筋付けに移っているが、上前側畳表折曲げユニット16の作動後すぐに、下前側畳表折曲げユニット18を同時に作動させても良く、もしくはその逆でも構わない。
【0184】
なお、現状の上前側の裁断及び折曲げ処理が完了した状態では、図11-5に示すように、下前側畳表折曲げユニット18の中間位置、すなわち、第1畳表折曲げユニット18Aと第2畳表折曲げユニット18Bの間の位置を仮想軸Xとして、この仮想軸Xを中心として、設定された旋回角度分、下前側畳表折曲げユニット18(第1畳表折曲げユニット18A及び第2畳表折曲げユニット18B)が旋回した状態にあり、かつ、下前側畳表折曲げユニット18及び上前側畳表折曲げユニット16の折曲げ支持部材102と中間押さえ151が、畳表200を保持した状態にある。
【0185】
この状態で、裁断機構140が駆動されると、裁断刃141を回転させる駆動モータ144が駆動して裁断刃141が回転し、裁断刃141と筋付刃142および伝熱コテ143が降下する。そして、裁断刃141と筋付刃142および伝熱コテ143が、畳表200の長さ方向(B方向)の一方端部、すなわち第1畳表折曲げユニット18Aの一方端部から、第1畳表折曲げユニット18Aの他方端部まで、すなわち下前側畳表折曲げユニット18の中間位置(仮想軸Xの位置)まで、畳表200の長さ方向に沿って移動する。これにより、畳表200の下前側の右側端部を裁断刃141が裁断すると同時に、筋付刃142が裁断後の畳表200の端部の折曲げ位置に筋付けを行う。また、筋付刃142の後を追うように伝熱コテ143が折曲げ位置に沿って走行する。
【0186】
この際、筋付刃142の方が第1下前側畳表折曲げユニット18Aの他方端部に到達する前であって、裁断刃141が仮想軸Xから畳表200の巾方向に向けた延長線上に到達した時点で、裁断刃141が上方に跳ね上がる(図6参照)。
【0187】
これにより、裁断刃141が畳表200の不用意な裁断を行わないようになっている。具体的には、裁断刃141を上方に跳ね上がる構成とすることで、図17図18に示す畳表200の下前側の不用意な裁断(203X部分)を防ぐことができる。
【0188】
このように、畳表200を誤って裁断することがなく、不用意な畳表200の損傷を防止できるので、特に畳床が薄くて厚み寸法が短い、すなわち筋付け位置と裁断位置とが近い場合に、不用意な裁断により、側辺部分の損傷を防ぐ効果がある。
【0189】
また、筋付刃142についても筋付刃142が仮想軸Xから畳表200の巾方向に向けた延長線上に到達した時点で、筋付刃142が上方に跳ね上がる。これにより、筋付刃142が畳表200の不用意な筋付けを行わないようになり、畳表の美観を損なわない。なお、伝熱コテ143についても同様に跳ね上がる。
【0190】
そして、畳表200の下前側の右側端部の裁断及び筋付けが終わると、裁断機構140が元の位置、すなわち第1畳表折曲げユニット18Aの一方端部側に戻る。
【0191】
(7)畳表の下前側の左半分の裁断、筋付け
次に、畳表200の端部の左半分について裁断と筋付けが行われる。なお、右半分の工程と異なり、この工程では折曲げ(本曲げ)までは行わない。具体的には、図11-6に示すように、下前側畳表折曲げユニット18及び上前側畳表折曲げユニット16の折曲げ支持部材102と中間押さえ151が、畳表200を保持した状態から、下前側畳表折曲げユニット18の折曲げ支持部材102のみが上昇して、畳表200の保持を解放する。
【0192】
その後、図12-7に示すように、畳床の下前側の側辺の左側206Bの傾斜と、畳表200の下前側の左側側辺202Bの傾斜を合わせるため(図17参照)、仮想軸Xを中心に下前側畳表折曲げユニット18が回転し、畳表200の下前側の左側側辺202Bの傾斜と、畳表押さえ第2畳表折曲げユニット18Bの第2畳表押さえ機構100B及び第2畳表折曲げ機構120Bの傾斜が平行になるように旋回駆動する。
【0193】
具体的には、駆動装置34の駆動モータが作動して、下前側畳表折曲げユニット18の中間位置、すなわち、第1畳表折曲げユニット18Aと第2畳表折曲げユニット18Bの間の位置を仮想軸Xとして、この仮想軸Xを中心として、設定された旋回角度分、下前側畳表折曲げユニット18が旋回して停止する。
【0194】
そして、この状態で、下前側の左右の畳表押さえ機構100Aと畳表押さえ機構100Bの駆動シリンダー104が作動して、左右の折曲げ支持部材102が下降する。これにより、折曲げ支持部材102の下面とテーブル30の上面との間で、畳表200が挟持され、中間押さえ151とともに畳表200の折り曲げ位置のずれが発生しないように固定される。
【0195】
そして、図12-8に示すように、この状態で裁断機構140が駆動するが、このとき、裁断機構140が畳表200の下前側の右半分の部分を移動する間は、裁断刃141と筋付刃142ともに跳ね上げた状態で、畳表200を裁断等しないように移動する。そして、裁断機構140が第1畳表折曲げユニット18Aの他方端部に到達した時、すなわち第2畳表折曲げユニット18Bの一方端部に到達した時に、裁断機構140が駆動して、裁断刃141が回転するとともに、裁断刃141と筋付刃142および伝熱コテ143が降下される。
【0196】
そして、裁断刃141と筋付刃142および伝熱コテ143が、第2畳表折曲げユニット18Bの一方端部から、第2畳表折曲げユニット18Bの他方端部(下前側畳表折曲げユニット18の他方端部)まで、畳表200の長さ方向に沿って移動する。これにより、畳表200の下前側の左側端部を裁断刃141が裁断すると同時に、筋付刃142および伝熱コテ143が裁断後の畳表200の端部の折曲げ位置に筋付けを行う。
【0197】
なお、この際、裁断刃141と筋付刃142および伝熱コテ143は同時に降下しない。具体的には、筋付刃142および伝熱コテ143の方が先に降下して第2畳表折曲げユニット18Aの他方端部に筋付けを行い、そのすぐ後、裁断刃141が仮想軸Xから畳表の巾方向に向けた延長線上に到達した時点で、裁断刃141が降下する。これにより、裁断刃141が畳表200の不用意な裁断を行わないようになっている。
【0198】
そして、畳表200の下前側の左側端部の裁断及び筋付けが終わると、裁断機構140が元の位置、すなわち第1畳表折曲げユニット18Aの一方端部側(下前側畳表折曲げユニット18の一方端部)に戻る(図12-9参照)。
【0199】
(8)畳表の下前側の左半分の仮曲げ
その後、裁断後の下前側の左側端部の仮曲げが行われる。具体的には、図8に示すように、畳表折曲げ機構120の第2前後駆動シリンダー133を駆動させて、折曲げ部材101をテーブル30の折曲げ側端部30dから、離間した位置、例えば10ミリ程度離間した位置に移動される。
【0200】
そして、昇降駆動シリンダー110が駆動して、第2畳表折曲げユニット18Bの折曲げ部材101が上昇し、畳表200の端部を上昇させる。このとき、完全に端部を折曲げる本曲げの時よりも、折曲げ部材101が低い位置で停止するように、昇降駆動シリンダー110を停止する。
【0201】
これにより、畳表200の端部が折曲げ線203を支点として、畳表200の左半分の被折曲げ側辺202が少し立ち上がった仮曲げ状態となる。
【0202】
このように、本曲げに先立って仮曲げを行うことで、次に右半分の被折曲げ側辺202の本曲げを行う際に、折曲げが重なる中間位置(仮想軸X付近)で、素材や厚さ、堅さ等によっては畳表の破れなどが生じるおそれがあるところ、この破れ等を抑制することができる。なお、この仮曲げの工程は必須の工程でなく、畳表の素材が薄い場合や柔らかい場合など、破れのおそれが少ない場合は、仮曲げを行わない構成としてもよい。この場合、本実施形態の下前左側の裁断・筋付け後、左仮曲げ→右本曲げ→左本曲げの工程は、例えば下前左側の裁断・筋付け後→左本曲げ→右本曲げの工程となる。
【0203】
仮曲げ後は、第2畳表折曲げユニット18Bの折曲げ部材101が下降して元の位置に戻り、折曲げ支持部材102が上昇して元の位置に戻り、畳表200の保持を解放する。すなわち、下前側畳表折曲げユニット18の中間押さえ151と、上前側畳表折曲げユニット16の折曲げ支持部材102及び中間押さえ151が畳表を保持した状態となる(図13-10参照)。
【0204】
(9)畳表の下前側の右半分の折曲げ
上記の状態で、再び畳床の下前側の側辺の右側206Aの傾斜(クセ)に、畳表200の下前側の右側側辺202Aの傾斜を合わせるため(図17参照)、仮想軸Xを中心に下前側畳表折曲げユニット18が回転して、畳表200の下前側の右側側辺202Aの傾斜と、第1畳表折曲げユニット18Aの第1畳表押さえ機構100A及び第1畳表折曲げ機構120Aの傾斜が平行になるようにする(図13-11参照)。
【0205】
具体的には、駆動装置34の駆動モータが作動して、下前側畳表折曲げユニット18の中間位置、すなわち、第1下前側畳表折曲げユニット18Aと第2下前側畳表折曲げユニット18Bの間の位置を仮想軸Xとして、この仮想軸Xを中心として、設定した旋回角度分、下前側畳表折曲げユニット18が旋回して停止する。
【0206】
この状態で、下前側畳表折曲げユニット18の右側に位置する第1畳表折曲げユニット18Aの第1畳表押さえ機構100の駆動シリンダー104が作動して、下前側の右側の折曲げ支持部材102のみが下降する。これにより、折曲げ支持部材102の下面とテーブル30の上面との間で、畳表200が挟持され、畳表200の位置ずれが発生しないように固定する。
【0207】
その後、下前側端部の右半分の折曲げが行われる。具体的には、図7に示すように、下前側端部右側の第1畳表折曲げ機構120Aの昇降駆動シリンダー110が駆動して、折曲げ部材101が上昇し、折曲げ部材101の立ち上げ部を構成する畳表立ち上げ面117を上昇させる。
【0208】
これにより、畳表立ち上げ面117によって、畳表200の折曲げ線203を支点として、畳表200の下前側端部右側の被折曲げ側辺202Aが鉛直方向に立ち上げる。これによって、畳表200の表面を損傷することなく、畳表200のみを予め、イ草の織目方向(イ草の向き)に対して垂直な方向にある程度折曲げることができる。
【0209】
この場合、図5に示すように、テーブル30の折曲げ側端部30dと、下前側端部右側の折曲げ部材101の立ち上げ部を構成する畳表立ち上げ面117との間の幅は、畳表200の厚さと同じか、僅かに小さく設定するのが、畳表200の下前側端部右側の被折曲げ側辺202Aが鉛直方向に立ち上げるのが容易となる。
【0210】
また、この場合、下前側端部右側の第1畳表折曲げ機構120Aの昇降駆動シリンダー110の駆動による折曲げ部材101の上昇程度は、折曲げ部材101の畳表立ち上げ面117を超えて、プレス面を構成するテーパー傾斜面108の途中の高さ位置に、テーブル30の折曲げ側端部30dが位置する程度である。
【0211】
このように、下前側端部右側の第1畳表折曲げ機構120Aの折曲げ部材101の畳表立ち上げ面117による畳表200の下前側端部右側の被折曲げ側辺202Aの鉛直方向への立ち上げが完了した後、第1畳表折曲げ機構120Aの駆動シリンダー132を駆動する。
【0212】
すなわち、テーブル30の折曲げ側端部30dに対して、折曲げ部材101を接近する方向に移動する。この場合、下前側端部右側の折曲げ部材101の中間部114のテーブル30側に進入用凹部115が形成されているので、テーブル30の折曲げ側端部30dが進入用凹部115内に進入して、この移動が阻害されることがないように構成されている。
【0213】
これによって、畳表200の下前側端部右側の被折曲げ側辺202Aと、下前側端部右側の折曲げ部材101のプレス面を構成するテーパー傾斜面108とを当接させて、畳表200の被折曲げ側辺を、折曲げ線203を支点として内側に折曲げる。
【0214】
この場合、下前側端部右側の折曲げ部材101のテーパー傾斜面108と水平面のなす角度αと、折曲げ支持部材102の傾斜案内面102cと水平面のなす角度βが、α>βの関係になるように設定されている。
【0215】
このような関係に下前側端部右側の折曲げ部材101のテーパー傾斜面108と水平面のなす角度αと、折曲げ支持部材102の傾斜案内面102cと水平面のなす角度βが設定されていれば、畳表200の下前側端部右側の被折曲げ側辺202Aを、畳表200の下前側端部右側の折曲げ線203Aを支点として内側に折曲げる際に、折曲げ部材101のテーパー傾斜面108によって、折曲げ支持部材102の傾斜案内面102cとの間に、畳表200の被折曲げ側辺202が強固に挟み込まれることがない。
【0216】
また、上記のように角度がα>βの関係になるように設定されていれば、テーパー傾斜面108によって、畳表200の折曲げの圧力が折曲げ支持部材102の先端102dに確実にかかることとなるので、寸法精度の良い畳表の折曲げが可能となる。
【0217】
したがって、畳表200の折曲げ線203を支点として内側に折曲げる際に、畳表200の被折曲げ側辺202が破損損傷するのが防止でき、見栄えが良好で商品価値が高い縁無し畳を製造することができる。
【0218】
次に、この状態から、第1畳表折曲げ機構120Aの折曲げ支持部材102が畳表200の下前側端部右側の被折曲げ側辺202Aから離間する方向に移動する。
【0219】
これにより、旋回シリンダー106が回動し、この旋回シリンダー106の回動に伴って、第1畳表折曲げ機構120Aの折曲げ支持部材102が、畳表200の下前側端部右側の被折曲げ側辺202Aから離間する方向に旋回する。
【0220】
また、これと同時に、下前側端部右側の第1畳表押さえ機構100Aの駆動シリンダー104が作動して、折曲げ支持部材102を上昇させる。これによって、折曲げ支持部材102が、畳表200の下前側端部右側の被折曲げ側辺202Aから離間する方向に移動される。
【0221】
この場合、折曲げ支持部材102の移動量は、次の工程において、畳表200の下前側端部右側の被折曲げ側辺202Aと折曲げ部材101のプレス面を構成するテーパー傾斜面108とのプレスの邪魔にならない程度に構成している。
【0222】
次に、この状態で、下前側端部右側の第1畳表折曲げ機構120Aの昇降駆動シリンダー110が駆動して、折曲げ部材101を下降させる。
【0223】
すなわち、下前側端部右側の折曲げ部材101がテーブル30に対してさらに下方の位置となるように移動することにより、畳表200の下前側端部右側の被折曲げ側辺202Aが、畳表200の折曲げ線203Aを支点としてさらに内側に折曲げる。
【0224】
このように構成することによって、畳表200の下前側端部右側の被折曲げ側辺202Aを、畳表200の折曲げ線203Aを支点として内側にさらに折曲げることができ、折り目(折り癖)がしっかりと付き、角が丸くなってしまうことがない(図19参照)。
【0225】
これにより、畳床の側面に折曲げた部分を固定する際にも、いわゆる浮いた状態となることなくしっかりと固定でき、見栄えが良好で商品価値が高い縁無し畳を製造することができる。
【0226】
なお、畳表200の下前側端部右側の折曲げ後は、下前側端部右側の折曲げ部材101が下降して元の位置に戻り、下前側端部右側の折曲げ支持部材102が上昇して元の位置に戻り、畳表200の保持を解放する。すなわち、下前側畳表折曲げユニット18の中間押さえ151と、上前側畳表折曲げユニット16の折曲げ支持部材102及び中間押さえ151が畳表を保持した状態となる(図14-13参照)。
【0227】
(10)畳表の下前側の左半分の折曲げ
この状態で、図14-13に示すように、再び畳床の下前側の側辺の左側206Bの傾斜(クセ)に、畳表の下前側の左側側辺202Bの傾斜を合わせるため(図17参照)、仮想軸Xを中心に下前側畳表折曲げユニット18が回転して、畳表200の下前側の左側側辺202Bの傾斜と、第2畳表折曲げユニット18Bの第2畳表押さえ機構及び第2畳表折曲げ機構の傾斜が平行になる。
【0228】
具体的には、駆動装置34の駆動モータが作動して、下前側畳表折曲げユニット18の中間位置、すなわち、第1畳表折曲げユニット18Aと第2畳表折曲げユニット18Bの間の位置を仮想軸Xとして、この仮想軸Xを中心として、設定した旋回角度分、下前側畳表折曲げユニット18が旋回して停止する。
【0229】
この状態で、下前側畳表折曲げユニット18の左側に位置する第2畳表折曲げユニット18Bの第2畳表押さえ機構100Bの駆動シリンダー104が作動して、下前側の左側の折曲げ支持部材102のみが下降する。これにより、下前端部左側の折曲げ支持部材102の下面とテーブル30の上面との間で、畳表200が挟持して、畳表200の位置ずれが発生しないように固定される(図14-14参照)。
【0230】
その後、下前側端部の左半分の折曲げが行われる。なお、この工程は、畳表200の下前側端部左側の被折曲げ側辺202Bを、下前側畳表折曲げユニット18の左側に位置する第2畳表折曲げユニット18Bの第2畳表押さえ機構100Bと第2畳表折曲げ機構120B
とを用いて折曲げる工程である。そのため、上述した畳表200の下前側端部右側の被折曲げ側辺202Aを折曲げる工程と同様のため、説明を省略する。
【0231】
(11)畳表の取り出し
そして、畳表200の下前側端部左側の折曲げ後は、図15に示すように、下前側端部左側の折曲げ部材101が下降して元の位置に戻り、下前側端部左側の折曲げ支持部材102が上昇して元の位置に戻り、畳表200の保持を解放する。また、下前側畳表折曲げユニット18の中間押さえ151と、上前側畳表折曲げユニット16の折曲げ支持部材102及び中間押さえ151も全て上昇する。そして、下前側畳表折曲げユニット18が元の位置まで旋回し、畳表200が解放され、完成した畳表を取り出すことができる。
【0232】
<その他の実施形態>
以上の通り、本発明は前述の実施形態をとりうることができるが、本発明は前述した実施の形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱せずに、様々な変更を行うことができ、均等物を実施形態の要素の代わりに用いることができる。加えて、本発明の基本的な範囲から逸脱せずに、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるための多くの変形がなされてもよい。
【0233】
例えば、上記の実施形態では、上前側畳表折曲げユニット16が、水平移動や旋回移動しない構成としているが、これに限られず、下前側畳表折曲げユニット18と同様に水平移動、旋回移動可能に構成することも可能である。
【0234】
また、上記の実施形態では、下前が間中位置で折曲した1畳用の畳表に用いる例を説明したが、例えば下前が小間中位置で折曲した半畳用の畳表について、半畳用の畳表の小間中位置を第1畳表折曲げユニット18Aと第2畳表折曲げユニット18Bの中間位置となるよう載置することで、このような半畳用の畳表にも適用することが可能である。
【0235】
また、上前側畳表折曲げユニット16、第1畳表折曲げユニット18A、第2畳表折曲げユニット18Bの長さ方向の寸法を上記の実施形態よりも長くすることで、畳表の載置位置を調整することで、間中位置以外で折曲した畳表にも適用することが可能である。したがって、本発明は、前述した実施の形態に限定されることがなく、特許請求の範囲に収まるすべての実施形態を含む。
【符号の説明】
【0236】
10 畳表折曲げ装置
12 架台フレーム
14 案内レール
16 上前側畳表折曲げユニット
18 下前側畳表折曲げユニット
18A 第1畳表折曲げユニット
18B 第2畳表折曲げユニット
20 折曲げ機構
22 駆動機構
22a ギヤードモーター
22b ボールネジ
22c エンコーダ
24 移動フレーム
30 テーブル
30d 折曲げ側端部
34 駆動装置
34a 駆動軸
34b 歯車
36 回転歯車
36a 回転軸
38 第1のカム
40 連結ピン
41 連結ピン
42 第1のリンク部材
42a 結合部
43 連結ピン
44 第2のリンク部材
46 第2のカム
46a 軸部材
48 連結ピン
50 第3のリンク部材
50a 結合部
52 第1のガイドローラー
54 第2のガイドローラー
56 第1の案内突設部
58 第2の案内突設部
100 畳表押さえ機構(上前側)
100A 第1畳表押さえ機構(下前側)
100B 第2畳表押さえ機構(下前側)
101 折曲げ部材
102 折曲げ支持部材
102a 折曲げ支持部材本体
102b 傾斜支持部
102c 傾斜案内面
102d 先端
104 駆動シリンダー
106 旋回シリンダー
108 テーパー傾斜面
110 昇降駆動シリンダー
112 折曲げ作用部
114 中間部
115 進入用凹部
116 基端部
117 畳表立ち上げ面
118 上端面
119 ヒーター
120 畳表折曲げ機構(上前側)
120A 第1畳表折曲げ機構(下前側)
120B 第2畳表折曲げ機構(下前側)
132 駆動シリンダー
133 駆動シリンダー
140 裁断機構
141 裁断刃
142 筋付刃
143 伝熱コテ
144 駆動モータ
150 中間押さえ機構
151 中間押さえ
160 操作パネル
200 畳表
202 側辺(上前側)
202A 側辺(下前側)
202B 側辺(下前側)
203 折曲げ線
203A 折曲げ線(下前側)
203B 折曲げ線(下前側)
204 框側の側辺
206 畳床
206a、206b 側辺
206c 框
208 側面
212 裏面
A 畳表における巾方向
B 畳表における長さ方向
C 畳表における高さ方向
G1 第1の仮想円弧
G2 第2の仮想円弧
r1 半径
r2 半径
X 仮想軸
α 旋回角度
β 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20