(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094488
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】防振部材
(51)【国際特許分類】
F16F 15/08 20060101AFI20240703BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
F16F15/08 A
F16F15/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211051
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 明雄
(72)【発明者】
【氏名】大坪 繁宏
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048AD16
3J048BA04
3J048CB21
3J048EA01
3J048EA37
(57)【要約】
【課題】防振ゴム本体の圧縮ばねの増大を抑制して剪断ばねを大きく確保できると共に、耐久性に優れた、新規な構造の防振部材を提供する。
【解決手段】上取付部材26と下取付部材28との対向面に、ブロック状の防振ゴム本体30の上下方向の両端面がそれぞれ固着された防振部材24において、防振ゴム本体30の表面の形状が周方向で異ならされており、表面の上下方向における両端部分から中間部分に向けて外方に膨らみ、且つ上下方向に直交する直交方向における両端部分に対する中間部分の外方への膨らみ寸法αが他の周方向部分の中間部分よりも大きい湾曲凸状部36が防振ゴム本体30の周方向で部分的に形成されており、防振ゴム本体30の表面の上下方向の両端部分には、それぞれ外周側に湾曲して広がるフィレット42が設けられており、フィレット42の曲率半径Rが、湾曲凸状部36の直交方向の外方への最大の膨らみ寸法αの1/2以上の大きさである。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上取付部材と下取付部材との対向面に、ブロック状の防振ゴム本体の上下方向の両端面がそれぞれ固着された防振部材において、
前記防振ゴム本体の表面の形状が周方向で異ならされており、前記表面の前記上下方向における両端部分から中間部分に向けて外方に膨らみ、且つ前記上下方向に直交する直交方向における該両端部分に対する該中間部分の前記外方への膨らみ寸法が他の周方向部分の該中間部分よりも大きい湾曲凸状部が該防振ゴム本体の周方向で部分的に形成されており、
前記防振ゴム本体の前記表面の前記上下方向の前記両端部分には、それぞれ外周側に湾曲して広がるフィレットが設けられており、前記フィレットの曲率半径が、前記湾曲凸状部の前記直交方向の前記外方への最大の前記膨らみ寸法の1/2以上の大きさである、防振部材。
【請求項2】
前記直交方向が、前記上下方向に直交する第一の直交方向と、該上下方向と該第一の直交方向に直交する第二の直交方向を含み、
前記防振ゴム本体の横断面形状が、前記第一の直交方向で最大外寸を有し、前記第二の直交方向で最小外寸を有する、扁平状とされており、
前記第二の直交方向の両側部分に前記湾曲凸状部が設けられている一方、
前記第一の直交方向の両側部分では前記両端部分に対する前記中間部分の膨らみ寸法が最も小さくされている、請求項1に記載の防振部材。
【請求項3】
前記防振ゴム本体において、前記両端部分に対する前記中間部分の前記膨らみ寸法が最も小さい部分では、前記膨らみ寸法0mm以下とされている、請求項1又は2に記載の防振部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン等の振動部材を、車体や船体等の基体に対して防振支持する防振部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、船舶において、振動部材であるエンジンを船体に対して防振支持する防振部材が知られている。例えば、特開2014-59004号公報(特許文献1)には、エンジンや発電機を共通の台床に載置し、台床が据え付けられる船体の据付面と台床との間に複数の防振部材を介在させて防振連結した防振構造が開示されている。そして、各防振部材は、台床と船体とにそれぞれ取り付けられる上下の取付鋼板の対向面にブロック状の防振ゴム本体の上下面が固着された構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような防振部材では、振動部材の特性や載置される基体の特性等に応じて、支持荷重が及ぼされる上下方向である軸方向とそれに直交する軸直方向のばね比を適宜設定する必要がある。たとえば、船舶に搭載されるエンジンや発電機等の振動部材を、防振部材を介して船体に防振連結する場合には、船舶の横揺れなどに起因して大型で重量が大きいエンジンや発電機に及ぼされる軸直方向の荷重を支持するために、剪断ばねを大きくしたい要求がある。これに対して、単純にブロック状の防振ゴム本体を太くすれば、防振部材の軸直方向の剪断ばねを大きくすることはできる。
【0005】
しかしながら、ブロック状の防振ゴム本体を単に太くすると、防振ゴム本体の圧縮ばねも大きくなり、軸方向で硬いばね特性が発揮されることとなる。このような防振ゴム本体の圧縮ばねの過度な増大は、防振部材の防振性能の悪化を招くことから、望ましい対応とは言い難かった。
【0006】
本発明の解決課題は、防振ゴム本体の圧縮ばねの増大を抑制して剪断ばねを大きく確保できると共に、耐久性に優れた、新規な構造の防振部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第一の態様は、上取付部材と下取付部材との対向面に、ブロック状の防振ゴム本体の上下方向の両端面がそれぞれ固着された防振部材において、前記防振ゴム本体の表面の形状が周方向で異ならされており、前記表面の前記上下方向における両端部分から中間部分に向けて外方に膨らみ、且つ前記上下方向に直交する直交方向における該両端部分に対する該中間部分の前記外方への膨らみ寸法が他の周方向部分の該中間部分よりも大きい湾曲凸状部が該防振ゴム本体の周方向で部分的に形成されており、前記防振ゴム本体の前記表面の前記上下方向の前記両端部分には、それぞれ外周側に湾曲して広がるフィレットが設けられており、前記フィレットの曲率半径が、前記湾曲凸状部の前記直交方向の前記外方への最大の前記膨らみ寸法の1/2以上の大きさである、ものである。
【0009】
本態様に従う構造とされた防振部材によれば、ブロック状の防振ゴム本体が、剪断ばねに支配的となる上下方向の中間部分が上下方向の両端部分よりも膨らまされてなる湾曲凸状部を有している。これにより、防振ゴム本体の剪断ばねを大きく確保することができる。さらに、防振ゴム本体によって発揮される圧縮ばねは、高さ方向(上下方向)の両端部分の支配率が、剪断ばねに比して大きいことから、両端部分を膨らませないことにより、圧縮ばねの過度の増大を抑制することができる。加えて、防振ゴム本体の上下方向の中間部分では、周方向の自由表面も湾曲凸状部の膨らみによって大きく確保でき、かかる特徴によっても、圧縮ばねの過度の増大を抑制することができる。それ故、防振ゴム本体の圧縮ばねの増大を抑制しつつ剪断ばねを大きく確保することができる、防振部材を有利に提供できるのである。
【0010】
さらに、防振ゴム本体の高さ方向の中間部分を単に太くしただけでは、新たな問題として、相対的に細くなる高さ方向の上下両端部分への剪断変形に伴う応力集中に起因する耐久性の低下が懸念される。そこで、本態様によれば、かかる新たな問題に対処するために、防振ゴム本体の上下方向の中間部分を太くする湾曲凸状部を、周方向で部分的に設けるという構成を組み合わせて採用することとした。これにより、防振ゴム本体の上下方向の中間部分を太くすることで、上下方向の両端側に移行される剪断変形による歪みや応力を周方向にも移行分散させることが可能となる。その結果、両端部分における集中的な応力や歪みを軽減でき、防振部材の耐久性の確保につなげることができた。また、圧縮変形時の歪みや応力も、外径の大きい膨らみ部分である湾曲凸状部の外周面で過大になるおそれもあるが、このような歪みや応力も、湾曲凸状部を周方向で部分的に設けることにより、周方向に分散してピークを抑えることができ、耐久性の向上も図ることができる。
【0011】
加えて、防振ゴム本体の表面の上下方向の両端部分には、それぞれ外周側に湾曲して広がるフィレットが設けられ、それらフィレットの曲率半径が、湾曲凸状部において上下方向に直交する方向である直交方向の外方への最大の膨らみ寸法の1/2以上の大きさに設定されている。これにより、防振ゴム本体に湾曲凸状部を設けたことに起因して、上下方向の両端側に移行される剪断変形による歪みや応力を、フィレットによっても緩和することができる。その結果、防振ゴム本体の上下方向の中間部分を太くすることによる耐久性低下等の悪影響も未然に防止または抑制することができる。以上により、本態様によれば、防振ゴム本体の圧縮ばねの増大を抑制して剪断ばねを大きく確保できると共に、耐久性に優れた、防振部材を提供できるのである。
【0012】
なお、「湾曲凸状部の直交方向の外方への最大の膨らみ寸法」とは、防振ゴム本体の表面において、上下方向両端部分から、中間部分に向けて直交方向の外方への膨らみが開始される変曲点を両端部分の基準点とし、当該基準点に対して直交方向の外方への膨らみ寸法が最大となる上下方向部位における、直交方向における基準点からの離隔寸法をいう。
【0013】
第二の態様は、第一の態様に記載された防振部材において、前記直交方向が、前記上下方向に直交する第一の直交方向と、該上下方向と該第一の直交方向に直交する第二の直交方向を含み、前記防振ゴム本体の横断面形状が、前記第一の直交方向で最大外寸を有し、前記第二の直交方向で最小外寸を有する、扁平状とされており、前記第二の直交方向の両側部分に前記湾曲凸状部が設けられている一方、前記第一の直交方向の両側部分では前記両端部分に対する前記中間部分の膨らみ寸法が最も小さくされている、ものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた防振部材によれば、横断面形状が、上下方向に直交する直交2方向である第一の直交方向と第二の直交方向で最大外寸と最小外寸となる扁平状とされた防振ゴム本体において、第二の直交方向(最小外寸方向)の両側部分に湾曲凸状部を設ける一方、特に圧縮変形時における表面の歪み(応力)が最大となる第一の直交方向(最大外寸方向)の両側部分では中央部分の膨らみ量が抑えられている。これにより、防振ゴム本体の圧縮変形時における過大な歪み(応力)の発生を軽減することができ、耐久性のさらなる向上に寄与し得る。
【0015】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された防振部材において、前記防振ゴム本体における、前記両端部分に対する前記中間部分の前記膨らみ寸法が最も小さい部分では、前記膨らみ寸法が0mm以下とされている、ものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた防振部材によれば、防振ゴム本体において、上下方向での両端部分に対する中間部分の膨らみ寸法が最も小さい部分で、膨らみ寸法が0mm以下となっていることから、かかる条件を満たす部位の周方向位置における防振ゴム本体の表面形状は、上下方向の両端部分から中間部分に向かって直線(膨らみ量が0)に延びている、又は、上下方向の両端部分から中間部分に向かって径方向内方に湾曲した湾曲凹状部(膨らみ量がマイナス)となる。これにより、防振ゴム本体の圧縮変形時における過大な歪み(応力)の発生を軽減することができ、耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、防振ゴム本体の圧縮ばねの増大を抑制して剪断ばねを大きく確保できると共に、耐久性に優れた防振部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一の実施形態としての船舶用の防振部材を用いて構成した複数の防振支持装置を介して、船舶に搭載される振動部材を船体に防振連結する防振支持構造を示す概念図
【
図2】
図1の防振支持構造における発電機側を支持する防振支持装置を概略的に示す平面図
【
図5】
図1の防振支持装置を構成する防振部材を拡大して示す平面図
【
図10】
図7のXa-Xa断面における防振ゴム本体の端面と、
図7のXb-Xb断面における防振ゴム本体の端面を上下方向で投影した図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1には、本発明に従う構造とされた防振部材の第一の実施形態である、
図2~
図11に示す後述する船舶用の防振部材24を用いて構成された防振支持装置10を利用した、船舶における防振支持構造が示されている。すなわち、
図1には、船舶に搭載される振動部材である、ガスタービンエンジン12および発電機14が設置された台床16を、複数の防振支持装置10を介して船体18に対して防振連結した防振支持構造が概念的に示されている。
図1に示す防振支持構造により、ガスタービンエンジン12や発電機14から生じる振動が船体に伝達されることが防止され、船体が外部から受ける衝撃を吸収してガスタービンエンジン12や発電機14の設置状態を安定して保持することが可能となる。なお、以下の説明において、原則として、上下方向とは後述する上取付部材26と下取付部材28の対向方向となる
図1および
図3中の上下方向を、前後方向とは船舶の前後方向となる
図2および
図3中の左右方向を、左右方向とは
図2中の上下方向を、それぞれ言う。また、以下の説明において、後述する防振ゴム本体30の寸法や曲率半径等の形態的特徴に関する記載は、防振ゴム本体30に外力が及ぼされていない静置状態におけるものである。
【0021】
図2には、発電機14の直下に配置される防振支持装置10の平面図が示され、
図3および
図4には、かかる防振支持装置10の正面図および側面図が示されている。これらに図示されているように、防振支持装置10は、台床16に固定される上板金具20と船体18に固定される下板金具22を備えている。上板金具20と下板金具22は、それぞれ平面視で略正方形状に形成された同一形状の金属平板で構成されている。上板金具20と下板金具22は、上下方向で相互に離隔して配置されており、上下方向の投影で完全にオーバーラップしている。上板金具20と下板金具22との上下方向の対向面間には、6つの防振部材24が所定の配置パターンに従って配設されている。例えば、本実施形態では、防振部材24の長手方向を船体18の前後方向(
図2中、左右方向)に配向した4つの防振部材24を、上板金具20と下板金具22の4つの角部に配置し、長手方向を船体18の左右方向(
図2中、上下方向)に配向した2つの防振部材24を、上板金具20と下板金具22の中央部分に前後方向で相互に離隔して整列配置している。尤も、上板金具20と下板金具22の対向面間に介在する複数の防振部材24の配置パターンは、要求される防振特性に応じて任意に設定可能であり、例示の配列に限定されない。なお、所定の配置パターンに従って上板金具20と下板金具22の対向面間に配設された各防振部材24は、締結ボルト29によって上板金具20と下板金具22に対して着脱自在にボルト固定されている。また、
図2~
図4においては、各防振部材24は概略的に示されているに過ぎず、実際の具体的な形状は、
図5~
図11に示すとおりである。
【0022】
次に、防振支持装置10の上板金具20と下板金具22の対向面間に介在する本実施形態に係る船舶用の防振部材24について、
図5~
図11に基づいて詳述する。
図5~
図7に示すように、防振部材24は、防振支持装置10の上板金具20の下面に重ね合されて取り付けられる上取付部材26と、防振支持装置10の下板金具22の上面に重ね合されて取り付けられる下取付部材28を含んでいる。さらに、上取付部材26と下取付部材28との対向面間には、防振ゴム本体30が配設されている。
【0023】
上取付部材26および下取付部材28は、それぞれ平面視で略矩形状に形成された同一形状の金属平板で構成されている。上取付部材26と下取付部材28は、上下方向で相互に離隔して配置されており、上下方向の投影で完全にオーバーラップしている。上取付部材26の上面26aには、四角近傍に設けられた4つのボルト穴32が開口している。上取付部材26を上板金具20にボルト締結する際には、上板金具20を挿通する締結ボルト29が上板金具20の下面に重ね合された上取付部材26のボルト穴32に螺合されることにより、上取付部材26が上板金具20に着脱自在に取り付けられるようになっている。同様に、下取付部材28の下面28bには、四角近傍に設けられた4つのボルト穴34が開口している。下取付部材28を下板金具22にボルト締結する際には、下板金具22を挿通する締結ボルト29が下板金具22の上面に重ね合された下取付部材28のボルト穴34に螺合されることにより、下取付部材28が下板金具22に着脱自在に取り付けられるようになっている。このように、防振支持装置10においては、複数の防振部材24が各別にボルト締結により着脱自在に固定されていることから、破損等の不具合が発生した場合に、問題となる防振部材24のみを交換することができ、メンテナンス性に優れている。
【0024】
上取付部材26と下取付部材28との対向面間に配設された防振ゴム本体30は、横断面形状が、上下方向に直交する直交2方向の一方である第一の直交方向A(
図5中、左右方向)で最大外寸を有し、上下方向に直交する直交2方向の他方である第二の直交方向B(
図5中、上下方向)で最小外寸となる扁平状とされた、ゴム弾性体によって構成されている。本実施形態では、防振ゴム本体30は、矩形ブロック形状を呈しており、第一の直交方向Aが、上取付部材26および下取付部材28の長手方向となるように配向されている。このような形状とされた防振ゴム本体30の上下方向の両端面が、上取付部材26の下面26bと下取付部材28の上面28aにそれぞれ加硫接着により固着されている。これにより、上取付部材26と下取付部材28が防振ゴム本体30によって相互に弾性連結されている。
【0025】
図6~
図9に示すように、防振ゴム本体30の表面形状は、周方向で異ならされている。具体的には、第二の直交方向B(最小外寸方向)で対向する両側部分である側面37,37(
図7参照)では、防振ゴム本体30の上下方向の両端部分から中間部分に向けて上下方向に直交する直交方向の外方に膨らんでおり、一対の湾曲凸状部36,36が第二の直交方向Bで対向する周方向の2か所において形成されている。また、第一の直交方向Aで対向する両側部分である側面38,38では、防振ゴム本体30の上下方向の両端部分から中間部分に向けて上下方向に直交する直交方向の内方に湾曲した湾曲凹状部40,40が構成されている。一対の湾曲凹状部40,40が、第一の直交方向Aで対向する周方向の他の2か所において形成されている。
図8および
図9から明らかなように、湾曲凸状部36(側面37)の上下方向の両端部分に対する中間部分の最大の膨らみ寸法αが(
図9参照)、他の周方向部分である湾曲凹状部40(側面38)の上下方向の両端部分に対する中間部分の最大の膨らみ寸法β(
図8参照)よりも大きくなっている。
【0026】
ここで、防振ゴム本体30の上下方向の両端部分とは、上下方向の両端およびその近傍を含む概念であり、本実施形態のように、防振ゴム本体30の上下方向の両端部分に後述するフィレット42が施される場合には、フィレット42を含む領域が防振ゴム本体30の上下方向の両端部分となる。そして、防振ゴム本体30の上下方向の両端部分に対する中間部分の膨らみ寸法は、
図8のβおよび
図9のαとして示されるように、防振ゴム本体30の表面において、上下方向の両端部分から、中間部分に向けて直交方向の外方への膨らみが開始される変曲点を両端部分の基準点Pとし、直交方向における基準点Pからの離隔寸法として、把握することができる。
【0027】
図10には、防振ゴム本体30の上側の基準点Pにおける横断面(
図7におけるXb-Xb断面)と、防振ゴム本体30の膨らみ寸法が最大/最小となる上下方向の中間部分における横断面(
図7におけるXa-Xa断面)とが、上下方向で投影された状態で示されている。なお、
図10において防振ゴム本体30の上側の基準点Pにおける横断面(
図7におけるXb-Xb断面)を二点鎖線で示す。
図10からも、第二の直交方向Bで対向する側面37,37によって最大の膨らみ寸法αで直交方向外方に突出する湾曲凸状部36,36が構成され、第一の直交方向Aで対向する側面38,38によって最小の膨らみ寸法βで直交方向内方に湾曲する湾曲凹状部40,40が構成されていることが、把握できる。
【0028】
さらに、防振ゴム本体30の表面において、上下方向の両端部分には、それぞれ外周側に湾曲して広がるフィレット42が設けられている。特に、本実施形態では、フィレット42の曲率半径R(
図8,9参照)が、湾曲凸状部36の最大の膨らみ寸法αの1/2以上の大きさになるように、調整されている。
【0029】
このような構成とされた本実施形態の防振部材24によれば、防振ゴム本体30が湾曲凸状部36を有することにより、剪断ばねに支配的となる上下方向の中間部分が上下方向の両端部分よりも膨らまされている。これにより、防振ゴム本体30の剪断ばねを大きく確保することができる。さらに、防振ゴム本体30の両端部分を膨らませていないことにより、上下方向の両端部分の支配率が剪断ばねに比して大きい圧縮ばねの過度の増大が抑えられている。加えて、防振ゴム本体30の上下方向の中間部分では、周方向の自由表面も湾曲凸状部の膨らみによって大きく確保できるため、さらに圧縮ばねの過度の増大を抑制することができる。
【0030】
また、防振ゴム本体30において、湾曲凸状部36は対向する一対の側面37,37において設けられており、対向する他の一対の側面38,38には、湾曲凹状部40,40が設けられている。すなわち、防振ゴム本体30の中間部分を全周に亘って膨らませるのではなく、湾曲凸状部36を周方向で部分的に設ける構成としている。これにより、防振ゴム本体30の上下方向の中間部分を太くすることで、上下方向の両端側に移行される剪断変形による歪みや応力を周方向にも移行分散させることが可能となる。その結果、防振ゴム本体30の中間部分を全周に亘って膨らませる場合に比して、両端部分における集中的な応力や歪みを軽減でき、防振部材24の耐久性を確保することも可能となる。また、湾曲凸状部36を周方向で部分的に設けることにより、防振ゴム本体30の圧縮変形時に湾曲凸状部36の外周面で過大となる歪みや応力を、周方向に分散してピークを抑えることができる。これによっても、防振部材24の耐久性の向上が図られ得る。
【0031】
また、防振ゴム本体30の表面の上下方向の両端部分には、それぞれ外周側に湾曲して広がるフィレット42が設けられており、フィレット42の曲率半径Rが、湾曲凸状部36の最大の膨らみ寸法αの1/2以上の大きさになるように設定されている。これにより、防振ゴム本体30に湾曲凸状部36を設けたことに起因して、上下方向の両端側に移行される剪断変形による歪みや応力を、フィレット42によっても有利に緩和することができる。防振ゴム本体30において、周方向に部分的に設けられる湾曲凸状部36および上下方向両端部分のフィレット42を組み合わせて採用したことにより、防振ゴム本体30の圧縮ばねの増大を抑制して剪断ばねを大きく確保できると共に、耐久性に優れた、防振部材24を提供できるのである。
【0032】
加えて、防振ゴム本体30は、矩形ブロック形状を有しており、その横断面形状が、第一の直交方向Aで最大外寸を有し、第二の直交方向Bで最小外寸を有する、扁平状とされ、第二の直交方向Bの両側部分となる側面37,37に一対の湾曲凸状部36が設けられている一方、第一の直交方向Aの両側部分となる側面38,38に一対の湾曲凹状部40,40が設けられている。これにより、圧縮変形時における表面の歪み(応力)が最大となる第一の直交方向A(最大外寸方向)の両側部分で、上下方向の中間部分の膨らみ量が抑えられている。その結果、防振ゴム本体30の圧縮変形時における過大な歪み(応力)の発生を軽減することができ、耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0033】
また、防振ゴム本体30における、上下方向の両端部分に対する中間部分の膨らみ寸法が最も小さい部分である湾曲凹状部40において、膨らみ寸法が0mm以下となるマイナスの値に設定されている。これにより、防振ゴム本体30の圧縮変形時における過大な歪み(応力)の発生を軽減することができ、防振部材24の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、上述の実施形態では、本発明の防振部材を船舶用の防振部材24として適用した例を示したが、本発明の防振部材は、振動部材を基体に防振支持するものであれば、船舶以外の車両やその他の防振連結される部材間に適用可能である。
【0035】
上述の実施形態では、本発明の防振部材24を用いて構成した防振支持装置10を介して、ガスタービンエンジン12および発電機14が船体18に防振連結される例を示したが、防振支持装置10を介して船体18に防振連結される防振対象は、これらに限定されない。例えば、振動を発生する船舶搭載機器であればいずれでもよく、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の推進用エンジンや発電用エンジンを含むその他の原動機等であってもよい。
【0036】
防振部材24の防振ゴム本体30は、矩形ブロック形状とされていたが、これに限定されない。防振ゴム本体30の横断面形状は、正方形やその他の多角形、円形等の任意の形状が採用可能である。防振ゴム本体30の横断面形状が、第一の直交方向Aで最大外寸を有し、第二の直交方向Bで最小外寸を有する、扁平状とされる場合には、楕円形のブロック形状も含まれる。同様に、防振部材24の上取付部材26と下取付部材28の形状も例示のものに限定されず、防振ゴム本体30の形状に応じて任意の形状が採用可能である。
【0037】
上述の実施形態では、防振ゴム本体30において、湾曲凸状部36が設けられない他の周方向部分には、湾曲凹状部40が設けられていたが、これに限定されない。湾曲凸状部36が設けられない他の周方向部分は、中間部分の膨らみ寸法が湾曲凸状部36の中間部分の膨らみ寸法よりも小さければよく、上下方向の両端部分に対する中間部分の膨らみ寸法が0mm以上であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 防振支持装置
12 ガスタービンエンジン
14 発電機
16 台床
18 船体
20 上板金具
22 下板金具
24 防振部材
26 上取付部材
26a 上面
26b 下面
28 下取付部材
28a 上面
28b 下面
29 締結ボルト
30 防振ゴム本体
32 ボルト穴
34 ボルト穴
36 湾曲凸状部
37 側面(第二の直交方向Bで対向)
38 側面(第一の直交方向Aで対向)
40 湾曲凹状部
42 フィレット
A 第一の直交方向
B 第二の直交方向
α 膨らみ寸法(最大)
β 膨らみ寸法(最小)
P 基準点