(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094489
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】繊維用の熱可塑性樹脂組成物、その組成物を使用した熱可塑性樹脂繊維
(51)【国際特許分類】
C08L 1/10 20060101AFI20240703BHJP
D01F 2/28 20060101ALI20240703BHJP
C08B 3/06 20060101ALI20240703BHJP
C08B 11/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C08L1/10
D01F2/28 Z
C08B3/06
C08B11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211054
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】510043560
【氏名又は名称】株式会社ヘミセルロース
(74)【代理人】
【識別番号】110003018
【氏名又は名称】弁理士法人プロテクトスタンス
(72)【発明者】
【氏名】北川 明子
(72)【発明者】
【氏名】前田 裕平
(72)【発明者】
【氏名】森田 成二
(72)【発明者】
【氏名】安藤 啓太
(72)【発明者】
【氏名】加茂 陽子
(72)【発明者】
【氏名】茄子川 仁
【テーマコード(参考)】
4C090
4J002
4L035
【Fターム(参考)】
4C090AA10
4C090BA26
4C090BB52
4C090BC01
4C090BD36
4C090DA28
4J002AB021
4J002AB032
4J002EH156
4J002EH157
4J002GK01
4L035AA02
4L035AA05
4L035BB31
4L035BB33
4L035BB55
4L035EE01
4L035EE05
4L035EE20
4L035GG03
4L035HH01
4L035HH10
4L035JJ14
4L035KK05
4L035KK08
(57)【要約】
【課題】 バイオマス由来の材料から抽出される材料を用い、繊維に加工した際に良好な機械的特性、耐熱性、繊度を備えたバイオマス由来熱可塑性樹脂組成物およびそれからなる繊維を提供することである。
【解決手段】 繊維用の熱可塑性樹脂組成物は、(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体、及び(C)単糖の誘導体を含む。(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体、及び(C)単糖の誘導体の質量の総和を100重量%としたときに、(B)オリゴ糖の誘導体を5-25重量%、前記(C)単糖の誘導体を5-25重量%含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体、及び(C)単糖の誘導体を含み、前記(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体、及び(C)単糖の誘導体の質量の総和を100重量%としたときに、前記(B)オリゴ糖の誘導体を5-25重量%、前記(C)単糖の誘導体を5-25重量%含んでなる繊維用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂組成物は、さらに(D)セルロースエーテルを含み、
前記(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体、及び(C)単糖の誘導体の質量の総和を100重量%としたときに、前記(D)セルロースエーテルを1-20重量%含む請求項1に記載の繊維用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂組成物は、さらに(E)他の熱可塑性樹脂を含み、
前記(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体、及び(C)単糖の誘導体の質量の総和を100重量%としたときに、前記(E)他の熱可塑性樹脂を1-100重量%含む請求項2に記載の繊維用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(E)他の熱可塑性樹脂がバイオマス由来熱可塑性樹脂である請求項3に記載の繊維用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)セルロースエステルが、セルロースアセテート又はセルロースアセテートプロピオネートの1種である請求項1に記載の繊維用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)オリゴ糖の誘導体の糖部分がキシロオリゴ糖であり炭素数2-12のエステル誘導体である請求項1に記載の繊維用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C)単糖の誘導体の糖部分がグルコース、キシロースであり芳香環を含む炭素数2-12のエステル誘導体またはエーテル誘導体である請求項1に記載の繊維用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1記載の繊維用の熱可塑性樹脂組成物を溶融紡糸してなり、引張伸度を3-70%とすることができる請求項1に記載の繊維用の熱可塑性樹脂繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオマスの材料を用いた繊維用の熱可塑性樹脂組成物及び該熱可塑性樹脂組成物を溶融紡糸して得られる熱可塑性樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化を抑制する点から、大気中の二酸化炭素を光合成により吸収して生産するバイオマスを用いたバイオマス由来、特に木質材料を使用した材料が注目されている。木質材料中には主に、セルロース、ヘミセルロース、リグニンが知られており、この中でもセルロースポリマーが繊維として利用されてきた。
【0003】
セルロースポリマーは、分子内、分子間に水素結合による相互作用力が高く熱可塑性がないため、繊維化に際しては二硫化炭素などの特殊な溶媒で溶解させ湿式紡糸法で製糸を行うことが多い。またはセルロースアセテートのようにセルロースエステルとし、アセトンや塩化メチレン/アルコール混合液などの有機溶媒に溶解させた後、この溶媒を蒸発させながら紡糸する乾式紡糸法で製糸を行う方法が一般的である。これらの場合には、溶媒を使用することから環境に影響を与えるデメリットがある。
【0004】
溶融紡糸の改良技術として、スルホラン(特許文献1)、水溶性多価アルコール(特許文献2)、ポリエチレングリコール(特許文献3)、トリアセチン(特許文献4)、アジピン酸ジオクチル(特許文献5)、ジグリセリンの脂肪酸エステル(特許文献6)、炭水化物有機エステルやポリオールエステル(特許文献7)などを可塑剤として配合する技術が開示されている。
【0005】
しかし、いずれの特許文献においても、成形時の比表面積が極めて大きい溶融紡糸の場合には、多量の可塑剤添加により多量の発煙を生じたり繊維が着色するなどの耐熱性が不良となったり、可塑剤のブリードアウトによる繊維のヌメリ感が問題となる。また、水環境下で可塑剤が溶出する、高品質の繊維を得ることができないなどの問題があった。また特許文献7は、溶融押出、溶融成形、又は溶融圧縮などの加工より難度の高い溶融紡糸に関する記載がなく、溶融紡糸により50dtex(デシテックス)以下でかつ十分な機械的特性を有する繊維を製造することは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭44-14215号公報
【特許文献2】特開昭51-70316号公報
【特許文献3】特開昭56-91006号公報
【特許文献4】特表平11-506175号公報
【特許文献5】特開2004-27378号公報
【特許文献6】特開2004-131670号公報
【特許文献7】特表2005-515285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、バイオマス由来材料からなり生産性良く溶融紡糸することが可能な熱可塑性樹脂組成物を提供することである。また、繊維としたときに細く機械的性質が良好な繊維を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の繊維用の熱可塑性樹脂組成物は、(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体、及び(C)単糖の誘導体を含む。(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体、及び(C)単糖の誘導体の質量の総和を100重量%としたときに、(B)オリゴ糖の誘導体を5-25重量%、前記(C)単糖の誘導体を5-25重量%含んでいる。
【0009】
また繊維用の熱可塑性樹脂組成物は、さらに(D)セルロースエーテルを含んでもよく、(D)セルロースエーテルを1-20重量%含んでもよい。
また繊維用の熱可塑性樹脂組成物は、さらに(E)他の熱可塑性樹脂を含んでもよく、(E)他の熱可塑性樹脂を1-100重量%含んでもよい。他の熱可塑性樹脂がバイオマス由来熱可塑性樹脂であってもよい。
【0010】
(A)セルロースエステルが、セルロースアセテート又はセルロースアセテートプロピオネートの1種であることが好ましい。 (B)オリゴ糖の誘導体の糖部分がキシロオリゴ糖であり炭素数2-12のエステル誘導体であることが好ましい。 (C)単糖の誘導体の糖部分がグルコース、キシロースであり芳香環を含む炭素数2-12のエステル誘導体またはエーテル誘導体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、バイオマス由来材料からなり溶融紡糸性が良好で、且つ繊維として良好な機械的特性を備えた繊維を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1-実施例15及び比較例1-比較例4を示した図表1である。(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体、(C)単糖の誘導体、(D)セルロースエーテル及び(E)他の熱可塑性樹脂に示される数字は、重量%である。また、(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体、及び(C)単糖の誘導体の質量の総和を100重量%としている。繊度に関しては、実施例1のみが測定されている。
【
図2】(A) 実施例16-実施例18を示した図表2である。(B) 実施例19-実施例21を示した図表3である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<熱可塑性樹脂組成物の構成>>
実施形態の繊維用の熱可塑性樹脂組成物は、(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体、(C)単糖の誘導体を主に有する。
【0014】
本実施形態の(A)セルロースエステルの含有量は、繊維用の熱可塑性樹脂組成物中の(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体及び(C)単糖の誘導体の質量の総和を100重量%としたときに60-90重量%であることが好ましい。(A)セルロースエステルの含有量が60重量%以上であると、セルロースエステルが有する吸湿性や発色性などの特徴が維持される。また(A)セルロースエステルの含有量が90重量%以下であると、十分な熱可塑性が付与され溶融紡糸が良好なものとなる。
【0015】
また本実施形態の繊維用の熱可塑性樹脂組成物は、(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体、及び(C)単糖の誘導体の質量の総和を100重量%としたときに、(B)オリゴ糖の誘導体を5-25重量%、(C)単糖の誘導体を5-25重量%含んでいる。
【0016】
<セルロースエステルの構成>
本実施形態の(A)セルロースエステルは、セルロースのグルコースユニットに存在する3つの水酸基が1種または2種以上のアシル基により置換されたものをいう。セルロースエステルとしては、同時に配合される(B)オリゴ糖の誘導体及び(C)単糖の誘導体との混和性、熱可塑性、製糸安定性、繊維物性又はコスト面等の観点から以下のセルロースエステルが挙げられる。
【0017】
セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートヘキサノエート、セルロースアセテートオクタノエート、セルロースアセテートデカノエート。特に、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートの1種であることが好ましく、さらにセルロースアセテートプロピオネートが好ましい。
【0018】
本実施形態で用いられるセルロースエステルの平均置換度(平均DS)は、1.0-3.0であり、2.4-2.8であることが好ましい。平均置換度が2.4-2.8の範囲内にすることでセルロースエステルの熱可塑性が良好となり、溶融紡糸法による安定した繊維化が可能となる。
【0019】
本実施形態のセルロースエステルの重量平均分子量は、繊維としたときの機械的特性、製糸操業性およびポリマーの耐熱分解性の観点から5-30万であることが好ましく、より好ましくは8-27万であり、更に好ましくは10-25万である。
【0020】
<オリゴ糖の誘導体の構成>
本実施形態の(B)オリゴ糖の誘導体は、単糖がグリコシド結合によって2-10個結合した糖類のオリゴマーであるオリゴ糖の誘導体である。オリゴ糖の分子量は300-2000程度である。ここでいう単糖は、多糖類の構成成分あるいは遊離の状態で植物界および微生物界に分布する三炭糖、四炭糖、五炭糖、六炭糖、七炭糖であり、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、リボース、フルクトース、ソルボースなどである。
【0021】
また誘導体は、オリゴ糖の水酸基の一部又は全部が下記式(1)または(2)のいずれかで表される官能基に置換されたものであり、混合エステルであってもよい。
-OCO-R1 (1)
-O-R2 (2)
(式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1-11のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、又はフェネチル基を表す。式(2)中、R2は、炭素数1-12のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、又はフェネチル基を表す。フェニル基、ベンジル基、及びフェネチル基のベンゼン環の水素原子は、炭素数1-4のアルキル基で置換されていてもよい。)
【0022】
これらのうち、糖部分がキシロオリゴ糖であり式(1)の炭素数2-12のエステル誘導体である場合(エステル誘導体の炭素数はカルボニル炭素を含む)、本実施形態の繊維用の熱可塑性樹脂組成物中の(A)セルロースエステル及び(C)単糖の誘導体を均一かつ流動性高く混合することができる。さらに熱可塑性樹脂組成物を使って繊維としたときの物性を向上させることができる。R1がアセチル基あるいはフェニル基である式(1)のエステル誘導体が、より好ましく用いられる。
【0023】
本実施形態の(B)オリゴ糖の誘導体の置換率は、50%以上であることが好ましい。置換率を50%以上にすることで、オリゴ糖の誘導体の熱可塑性が良好となり、溶融紡糸法による安定した繊維化が可能となる。また誘導体の置換率は、水酸基価を測定し、その値から計算することができる。水酸基価は無水酢酸を用いて試料中のOH基をアセチル化し、使われなかった酢酸を水酸化カリウムで滴定することで得られる。
【0024】
<単糖の誘導体の構成>
本実施形態の(C)単糖の誘導体は、(B)オリゴ糖の誘導体の糖を単糖に置き換えたものであり、繊維用の熱可塑性樹脂組成物の熱可塑性を向上するために必須の成分である。
【0025】
本実施形態の(C)単糖の誘導体の糖部分は、グルコース又はキシロースであり、かつ炭素数2-12のエステル誘導体またはエーテル誘導体であることが好ましい。また芳香環を含む炭素数2-12のエステル誘導体またはエーテル誘導体であることがより好ましい。
【0026】
<セルロースエーテルの構成>
本実施形態では、(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体、及び(C)単糖の誘導体を含む熱可塑性樹脂組成物に、さらに(D)セルロースエーテルを含んでも良い。ここで(D)セルロースエーテルは、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース(エツロース)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC又はヒプロメロース)、カルボキシメチルセルロース(CMC)を含む。
【0027】
本実施形態の(D)セルロースエーテルの重量平均分子量は、熱可塑性樹脂組成物を繊維としたときの機械的特性、製糸操業性およびポリマーの耐熱分解性の観点から、5-30万であることが好ましく、より好ましくは5-20万であり、更に好ましくは5-15万である。
【0028】
(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体及び(C)単糖の誘導体の質量の総和を100重量%とした場合、熱可塑性樹脂組成物に、(D)セルロースエーテルは1-20重量%含まれることが好ましい。
【0029】
<他の熱可塑性樹脂の構成>
本実施形態は、(A)セルロースエステル、(B)オリゴ糖の誘導体、(C)単糖の誘導体及び(D)セルロースエーテルを含む熱可塑性樹脂組成物に、さらに(E)他の熱可塑性樹脂を1-100重量%含むことが好ましい。(E)他の熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなどが挙げられる。(E)他の熱可塑性樹脂を1重量%以上含むことにより機械的特性が向上し、100重量%以下とすることにより本実施形態の特徴である木質材料を使用することの効果を発揮することができる。(E)他の熱可塑性樹脂は、3重量%以上50重量%以下が好ましく、さらに5重量%以上30重量%以下がより好ましい。
【0030】
さらに、本実施形態の(E)他の熱可塑性樹脂が、リサイクルされた樹脂であることが好ましい。なぜなら、地球温暖化を抑制するという本実施形態の趣旨に沿うからである。ここで言うリサイクルとはマテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルを指す。
【0031】
また、(E)他の熱可塑性樹脂は、バイオマス由来の熱可塑性樹脂であることが好ましい。バイオマス由来の熱可塑性樹脂の具体例としては、バイオマスポリエチレン、バイオマスポリプロピレン、バイオマスポリエステル、バイオマスナイロンなどが挙げられる。これらのバイオマス由来熱可塑性樹脂のバイオマス由来成分の比率は任意の比率で使用される。高い比率であるほど本実施形態の趣旨に沿ったものとなる。バイオマスポリエステルとしては、部分バイオマスまたは完全バイオマスポリエチレンテレフタレート、部分バイオマスまたは完全バイオマスポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンアジペートコテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートコヒドロキシバリレート、ポリヒドロキシブチレートコヘキサノエート等が挙げられる。また、バイオマスナイロンとしては、バイオマスナイロン66、ナイロン610、ナイロン1010、ナイロン1012、ナイロン56等が挙げられる。
【0032】
<<熱可塑性樹脂組成物を使用した繊維の構成>>
本実施形態の繊維用の熱可塑性樹脂組成物は、通常の方法により溶融紡糸し必要に応じて延伸することにより単糸繊度が約5dtexの繊維を得ることができ、かつ該繊維の引張強度を0.3-5cN/dtex、引張伸度を10-70%とすることができることが好ましい。なお、ここでいう通常の方法とは、溶融紡糸機を用い、紡糸温度230℃、紡糸速度1000m/minの条件で行う紡糸方法を指す。
【0033】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を使用した繊維は、熱可塑性樹脂組成物を公知の溶融紡糸機を用い、加熱溶融した後、紡糸口金から押出し、必要に応じて冷却、延伸、熱処理して巻き取ることができる。
【0034】
熱可塑性樹脂組成物は、(A)-(C)の各成分又は(A)-(E)の各成分を分散化させるため、溶融紡糸前または溶融紡糸時に1軸または2軸エクストルーダを使用して適度な剪断が加えられることが好ましい。また、熱可塑性樹脂組成物を溶融紡糸するに際して、紡糸温度は190℃-240℃が好ましく、より好ましくは210℃-230℃である。紡糸温度を190℃以上とすることにより、溶融粘度が低くなり溶融紡糸性が向上する。また240℃以下にすることにより、組成物の熱分解が抑制されるため好ましい。熱劣化を防ぎ、かつ吐出を安定化させるため、口金周囲温度がやや高めに設定されることが好ましい。
【0035】
また、分散化をより十分なものとするため、また異物を除去するために、吐出直前に濾過精度の高い紡糸フィルター、例えばろ過径が40μm以下、好ましくは20μm以下の金属繊維製の焼結フィルターや金網フィルターが使用されることが好ましい。口金から吐出した繊維は、均一な冷却空気流の下で室温付近まで冷却され、引き取られる。
【0036】
引取速度は、500m/分から5000m/分が適切である。高速にするほど、繊維の配向および結晶化が促進され、強伸度曲線に降伏点(極大値)がなくなるため、引取速度は1500m/分以上がより好ましい。一方で、組成によっては、変形追随性は高くないため、引取速度は3000m/分以下がより好ましい。
【0037】
引き取られた繊維はそのままで使用することも可能だが、引き続き延伸することも可能である。延伸を容易にするため、60℃以上、120℃以下に加熱した後に引き取られた繊維は延伸されることが好ましく、得られる繊維の伸度が5%以上50%以下の適切な範囲となるよう、1.01倍以上、2.0倍以下で延伸されることが好ましい。
【0038】
長繊維として使用する場合には、引き取った後に必要に応じて延伸した後、巻取機により長繊維が巻き取られる。長繊維は、織物、編物等の繊維構造物や、スパンボンド法による不織布として用いてもよい。
【0039】
短繊維として使用する場合には、引き取った繊維に必要に応じて捲縮付与した後に常法に従って切断される。短繊維として、紡績糸に加工し織物、編物等の繊維構造物、又はスパンレース法・ニードルパンチ法による不織布として用いられてもよい。またメルトブロー法不織布やモノフィラメントへの加工、樹脂補強用繊維などにも利用されてもよい。いずれの場合にも、紡糸工程を円滑にするとともに、後工程において糸を安定的に加工するために、適切な紡糸油剤が付与されることが好ましい。
本実施形態により得られる繊維は、公知の繊維と同様、農業(マルチシート、農業ポットなど)、漁業(漁網、釣り糸など)、林業(防獣ネットなど)、鉱工業、衣料、非衣料製品(カーテン、カーペット、カバン、靴など)、日用品(タオル、排水ネット、ワイパーなど)衛生品(マスク、生理用品など)、自動車部材(防音材など)、土木建築(土壌シートなど)、医療、食品産業(ティーバッグ、フィルターなど)、包装材、その他の分野において好適に使用することができる。
【0040】
本実施形態によれば、繊維用の熱可塑性樹脂組成物を使用した繊維は、優れた機械的特性を有し、海洋、河川、土壌、コンポストなどでの生分解性や耐熱水溶出性に優れる。また、繊維を製造する際に熱流動性が優れるため紡糸時の断糸率が極めて少なく、生産性に優れる。
【0041】
熱可塑性樹脂組成物を使用した繊維は、単糸繊度が0.1-50dtexであることが好ましい。0.1dtex以上であれば、製織や製編時など高次加工工程の通過性や取扱性が良好である。良好な通過性の観点から、単糸繊度は0.3-30dtexであることがより好ましく、0.8-10dtexであることがさらに好ましい。
【0042】
熱可塑性樹脂組成物を使用した繊維は、引張強度が0.3-5cN/dtex以上であることが好ましい。強度が0.3cN/dtex以上であれば、製織や製編時など高次加工工程の通過性が良好であり、また最終製品の強力も不足することがない。良好な強度特性の観点から、強度は0.7-3.8cN/dtexであることがより好ましく、1.0-3.5cN/dtexであることがさらに好ましい。
【0043】
熱可塑性樹脂組成物を使用した繊維の伸度は、3-70%であることが好ましい。伸度が3%以上である場合には製織や製編時など高次加工工程において糸切れが多発することがない。また、70%以下の繊維は低い応力であれば変形することがなく、製織時の緯ひけなどにより最終製品の染色欠点を生じることがない。良好な伸度は、15-55%であることがより好ましく、20-45%であることがさらに好ましい。
【0044】
熱可塑性樹脂組成物を使用した繊維の沸騰水収縮率は、0-10%であることが好ましい。沸騰水収縮率が前記範囲であることにより、製織や製編時など高次加工工程において糸切れが多発することがない。より好ましくは2-6%である。また、乾熱収縮率は、0-15%であることが好ましい。この範囲にあることにより、製織や製編時など高次加工工程において糸切れの多発やムラの発生を抑制することができる。より好ましくは2-10%である。
【実施例0045】
次に、実施例に基づき本実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(物性の測定)
(1)繊維直径
ハイロックス社製デジタルマイクロスコープRX-100を用いて、繊維直径がサブミクロンの桁まで測定された。
(2)繊度
長さ90cmの試料20本(または長さ45cmの試料40本)をとり、質量を0.1mgのオーダーまで測定し、次の式により算出した。
繊度(dtex)=質量(mg)/1.8
【0046】
(3)紡糸性
溶融紡糸し、繊維が1000m/分で安定して30分巻き取れた場合、巻き取り繊維からランダムに抽出した20本の単糸直径の標準偏差が3%以下の場合をGreen、3%を超えた場合をYellow、30分以上の巻き取りが困難だった場合をRedと区別した。
【0047】
(4)引張強度 引張伸度
強度及び伸度を測定する繊維の直径が3か所測定され、平均値を用いて初期断面積が求められた。
温度20℃、湿度65%の環境下において、島津製作所社製オートグラフを用いて、フィラメントの場合はJIS L-1013、短繊維の場合はJIS L-1015に準じて引張試験が行われ、真応力が最大を示す点の荷重[N]を初期断面積[μm2]で除した値を強度[MPa]とした。同様に、真応力が最大を示す点の伸びを、たるみを考慮した試料長で除した百分率を伸度[%]とした。測定回数は5回とし、その平均値が求められた。
なお、真応力は強度×(1+伸度/100)である。
【0048】
(5)熱収縮率
A.沸騰水収縮率
つかみ間隔を100mmとした以外はJIS L-1015の熱水寸法変化率の測定方法に準拠し、熱水温度98℃で沸騰水収縮率が測定された。
B.乾熱収縮率
つかみ間隔を100mmとした以外はJIS L-1015の乾熱寸法変化率の測定方法に準拠し、乾燥機温度130℃で乾熱収縮率が測定された。
【0049】
(オリゴ糖の誘導体の製造例)
<ベンゾイル化キシロオリゴ糖誘導体:BX63>
とうもろこしの芯から抽出・精製した後の触媒による分解の条件を調整すると、キシロオリゴ糖が得られる。このキシロオリゴ糖は市販品として購入できる。このキシロオリゴ糖のOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化キシロオリゴ糖が作成される。ベンゾイル化キシロオリゴ糖は、以下に記述した<ベンゾイル化キシロース:BX6X>と同様の方法によって作成される。発明者が、得られたベンゾイル化キシロオリゴ糖の水酸基価を測定したところ、測定下限値であり、全置換されていることが分かった。
【0050】
<アセチル化キシロオリゴ糖誘導体:AX43>
キシロオリゴ糖のOH基のH部がアセチル基となったアセチル化キシロオリゴ糖(AX43)が作成できる。アセチル化キシロオリゴ糖は、以下に記述した<アセチル化キシロース:AX4X>と同様の方法によって作成できる。発明者が、得られたアセチル化キシロオリゴ糖の水酸基価を測定したところ、測定下限値であり、全置換されていることが分かった。
【0051】
<プロピオニル化キシロオリゴ糖誘導体:PX33>
発明者は、市販のキシロオリゴ糖60gをピリジン400ml中に入れ攪拌した。さらに発明者は無水プロピオン酸250gをゆっくり滴下し、3時間撹拌した。
【0052】
次に、3リットルの純水に上記反応溶液がゆっくり滴下された。すると、水に不溶の結晶が析出し沈殿した。この沈殿物が生じた溶液が吸引濾過された。濾過された沈殿物がアセトン400mlに溶解され、3リットルの純水に上記溶液が滴下された。すると、白色の結晶が析出し沈殿した。この沈殿物が生じた溶液が吸引濾過された。このようにして得られた沈殿物の白色固体は真空乾燥機に入れて50℃で一晩乾燥された。こうしてプロピオニル化キシロオリゴ糖の白色粉体80gが得られた。発明者が、得られたプロピオニル化キシロオリゴ糖の水酸基価を測定したところ、測定下限値であり、全置換されていることが分かった。
【0053】
(単糖の誘導体の製造例)
<ベンゾイル化キシロース:BX6X>
発明者は、原料としてD-キシロースを用意した。このD-キシロースは、β―D-キシロースとα―D-キシロースとが混合されているものである。このD-キシロースは、とうもろこしの芯から抽出・精製後に酵素を使って分解したものであり、市販品として入手できる。
【0054】
発明者は、このD-キシロースの粉体60gをピリジン400ml中に入れ攪拌し、D-キシロースがピリジンに溶解されることでキシロース溶液を得た。なお、ピリジンはガラスビーカーに入れてあり、ビーカーは周囲に冷却のための保冷剤を置いて氷浴状態としている。そして、発明者は、市販の塩化ベンゾイル220mlをキシロース溶液にゆっくりと滴下した後、12時間攪拌し、反応溶液を得た。
【0055】
次に発明者は、3リットルの純水に上記反応溶液をゆっくり滴下した。すると、水に不溶の結晶が析出し沈殿した。この沈殿物が生じた溶液を吸引濾過した。その後、純水で3回洗浄された。洗浄した沈殿物に酢酸エチル200mlが加えられ、溶液が得られた。そして、この溶液にメタノール2.5リットルが加えられた。すると、白色の結晶が析出し沈殿した。この沈殿物が生じた溶液を吸引濾過し、濾過した沈殿物がメタノールで洗浄された。このようにして得られた沈殿物の白色固体は真空乾燥機に入れて50℃で一晩乾燥された。こうしてベンゾイル化キシロース(BX6X)の白色粉体150gが得られた。
【0056】
<ベンジル化グルコース:BG5R>
発明者は、原料としてD-グルコースを用意した。このD-グルコースは、β―D-グルコースとα―D-グルコースが混合されているものである。このグルコースは、とうもろこしから抽出・精製後に酵素を使って分解したものであり市販品として入手できる。
【0057】
発明者は、このD-グルコース60gを50重量%水酸化ナトリウム水溶液300mlに溶解した。この溶液に、テトラメチルアンモニウムヨージドが触媒量添加された。この混合溶液がオイルバス40℃で2時間撹拌された。オイルバスが停止され、混合溶液が室温まで放冷され、その後、混合溶液に、塩化ベンジルが6.5当量添加された。
【0058】
発明者は、塩化ベンジルの反応性を上げるためヨウ化ナトリウムを触媒量だけ混合溶液に添加した。発明者は、窒素ガスで置換しながら徐々に混合溶液の温度を110℃まで上げ、5時間撹拌した。反応終了後、混合溶液は放冷された後、氷浴で冷却された。その後混合溶液にジエチルエーテルが添加され、撹拌された。撹拌が止められてしばらく静置すると、混合溶液は上澄み液と沈点物との2層に分かれる。そして上澄み液がデカンテーションされ、混合溶液が吸引濾過された。濾過された沈殿物は、再度ジエチルエーテルが添加され、洗浄された。ジエチルエーテルが加えられた溶液が透明になるまでデカンテーションと吸引濾過とが繰り返えされた。溶液が透明になった後、さらに吸引濾過した沈殿物がメタノールで洗浄された。メタノール溶液が透明になるまで洗浄し、メタノール溶液が吸引濾過された。その沈殿物がアセトンに溶解され、水で沈殿させて沈殿物が回収された。沈殿物は真空乾燥機にて50℃で一晩乾燥させることでベンジル化グルコースが150g得られた。
【0059】
<アセチル化キシロース:AX4X>
発明者は、D-キシロースの粉体60gを無水酢酸400ml中に入れ攪拌し、酢酸ナトリウムを40g添加した。この混合溶液がオイルバス65℃で4時間撹拌された。撹拌後、白い結晶が析出した。
【0060】
次に、3リットルの純水に上記反応溶液がゆっくり滴下された。すると、水に不溶の結晶が析出し沈殿した。この沈殿物が生じた溶液が吸引濾過された。濾過された沈殿物をアセトン400mlに溶解し、3リットルの純水に上記溶液が滴下された。すると、白色の結晶が析出し沈殿した。この沈殿物が生じた溶液が吸引濾過された。このようにして得られた沈殿物の白色固体は真空乾燥機に入れて50℃で一晩乾燥された。こうしてアセチル化キシロースの白色粉体80gが得られた。
【0061】
(実施例1)
(A)セルロースエステルとしてイーストマン・ケミカル社製セルロースエステル樹脂CAP-482-20を700g(70重量%)、(B)オリゴ糖の誘導体として<ベンゾイル化キシロオリゴ糖誘導体:BX63>を200g(20重量%)、(C)単糖誘導体として<ベンゾイル化キシロース:BX6X>を100g(10重量%)、及び(D)セルロースエーテルとしてニュートリション&バイオサイエンス社製のエチルセルロース100g(10重量%)が、図示しない二軸エクストルーダーを用いて180℃の温度で混練された。そして二軸エクストルーダーで得られたガットが5mm程度にカッティングされて、熱可塑性樹脂組成物のペレットが得られた。
【0062】
ペレットが100℃で24時間真空乾燥された後、図示しない一軸エクストルーダーに供給され溶融され、一軸エクストルーダーから紡出糸条が吐出された。一軸エクストルーダーは、紡糸温度220℃、口金周囲温度230℃で吐出量3g/分、紡糸口金(吐出孔径1.0mm、孔長3.0mm、1ホール)に設定された。この紡出糸条が冷却され、図示しない第1ゴデットローラー及び第2ゴデットローラーを介して、紡糸速度1000m/分で引き取られ、巻取機で繊維が巻き取られた。発明者が、製糸操業性評価を行ったところ、糸切れは0回であり、製糸操業性は極めて良好であった。
【0063】
図1の図表1に示されているように、実施例1の繊維は、繊維径57.1μm、繊度30dtex、強度105Mpa、強度0.95cN/dtex、伸度25%、沸騰水収縮率3.3%、乾熱収縮率4.5%であり、良好な特性を有している。
【0064】
(実施例2、実施例3、比較例1、比較例2)
実施例2、実施例3、比較例1及び比較例2は、(D)セルロースエーテルの配合量を0gにし、(C)単糖の誘導体の重量比率を変化させた例である。実施例2、実施例3、比較例1及び比較例2において、(A)セルロースエステルと(B)オリゴ糖の誘導体との比率は約7:2にしたまま、(C)単糖の誘導体の配合量が、0g(比較例1)、50g(5重量%:実施例2)、230g(23重量%:実施例3)、340g(34重量%:比較例2)に変更されている。熱可塑性樹脂組成物のペレットの製法、繊維の巻き取り製法は、実施例1と同様である。
図1の図表1に示されているように、実施例2、実施例3で得られた繊維は良好な特性を有している。但し紡糸性に関しては、単糸直径の標準偏差が3%以上であった(Yellow)。一方、比較例1、比較例2は糸切れが多発し巻取機で繊維を巻き取ることはできなかった。
【0065】
(実施例4、実施例5、比較例3、比較例4)
実施例4、実施例5、比較例3及び比較例5は、(D)セルロースエーテルの配合量を0gにして、(B)オリゴ糖の誘導体の重量比率を変化させた例である。実施例4、実施例5、比較例3及び比較例5において、(A)セルロースエステルと(C)単糖の誘導体との比率は約7:1にしたまま、(B)オリゴ糖の誘導体の配合量が0g(比較例3)、50g(5重量%:実施例4)、230g(23重量%:実施例5)、300g(30重量%:比較例4)に変更されている。熱可塑性樹脂組成物のペレットの製法、繊維の巻き取り製法は、実施例1と同様である。
図1の図表1に示されているように、実施例4、実施例5で得られた繊維は良好な特性を有している。但し紡糸性に関しては、単糸直径の標準偏差が3%以上であった(Yellow)。比較例3、比較例4は糸切れが多発し巻取機で繊維を巻き取ることはできなかった。
【0066】
(実施例6、実施例7)
実施例6及び実施例7は、(D)セルロースエーテルの量を実施例1と比較するため、セルロースエーテルの配合量をそれぞれ50g(5重量%)、200g(20重量%)に変更させた。それ以外は実施例1と同様な製法である。
図1の図表1に示されているように、実施例6及び実施例7で得られた繊維は良好な特性を有している。
【0067】
(実施例8、実施例9、実施例10)
実施例8、実施例9及び実施例10は、実施例1の熱可塑性樹脂組成物と同じ材料・割合に、さらに他の熱可塑性樹脂を100重量%加えた例である。実施例1の混練と同様にして、さらにプライムポリマー社製Y2005GPのポリプロピレン(実施例8)、ベルポリエステルプロダクツ社製PRIT30のポリエステル(実施例9)、NatureWorks社製6204Dのポリ乳酸(実施例11)をそれぞれ1.0kg(100重量%)追加して混練し、紡糸を行った。
実施例8-10で得られた繊維物性は図表1に示すとおり、紡糸性、強度、沸騰水収縮率等は良好な特性を有していた。
【0068】
(実施例11)
実施例1の(A)セルロースエステルを、イーストマン・ケミカル社製セルロースエステル樹脂CAP-482-20からダイセル社製VYSのセルロースアセテートに変更した例である。他の材料及び重量%は実施例1と同じであり製法も同じである。実施例11で得られた繊維物性は図表1に示すとおり、良好な特性を有していた。但し紡糸性に関しては、単糸直径の標準偏差が3%以上であった(Yellow)。
【0069】
(実施例12、実施例13)
実施例12は、実施例1の(B)オリゴ糖の誘導体を、ベンゾイル化キシロオリゴ糖誘導体:BX63からアセチル化キシロオリゴ糖誘導体:AX43に変更した例である。実施例13は、実施例1の(B)オリゴ糖の誘導体を、ベンゾイル化キシロオリゴ糖誘導体:BX63からプロピオニル化キシロオリゴ糖誘導体:PX33に変更した例である。他の材料及び重量%は実施例1と同じであり製法も同じである。実施例12及び実施例13で得られた繊維物性は図表1に示すとおり、良好な特性を有していた。
【0070】
(実施例14、実施例15)
実施例12は、実施例1の(C)単糖の誘導体を、ベンゾイル化キシロース:BX6Xからベンジル化グルコース:BG5Rに変更した例である。実施例13は、実施例1の(B)オリゴ糖の誘導体を、ベンゾイル化キシロース:BX6Xからアセチル化キシロース:AX4Xに変更した例である。他の材料及び重量%は実施例1と同じであり製法も同じである。実施例14及び実施例15で得られた繊維物性は図表1に示すとおり、良好な特性を有していた。
【0071】
(実施例16、実施例17、実施例18)
実施例16、実施例17及び実施例18は、実施例1の熱可塑性樹脂組成物と同じ材料・割合である。但し、紡糸口金が吐出孔径1.0mmから吐出孔径0.2mmに、孔長3.0mmから孔長0.5mmに、1ホールから24ホールに変更された。そして、繊維は吐出量を1g/分(実施例16)、3g/分(実施例17)、及び5g/分(実施例18)に変更されている。これ以外は実施例1と同じ製法で紡糸が行われた。
実施例16、実施例17及び実施例18で得られた繊維の繊度(総繊度=単糸繊度*24)はそれぞれ、0.4(10.5)dtex、1.3(31.0)dtex、2.2(52.1)dtexとなり、また他の繊維物性も
図2(A)の図表2に示すとおり、良好な特性を有している。
【0072】
(実施例19、実施例20、実施例21)
実施例19、実施例20及び実施例21は、実施例1の熱可塑性樹脂組成物と同じ材料・割合である。但し、実施例1では紡糸速度1000m/分で引き取られたが、実施例19では紡糸速度を500m/分、実施例20では紡糸速度を2000m/分、実施例21では紡糸速度を3000m/分で引き取られた。これ以外は実施例1と同じ製法で紡糸が行われた。実施例19、実施例20及び実施例21で得られた繊維の単糸繊度はそれぞれ59.7、15.6、11.0dtexで、また他の繊維物性も
図2(B)の図表3に示すとおり、良好な特性を有している。
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