(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094493
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形体およびその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240703BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20240703BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240703BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240703BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240703BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20240703BHJP
C09K 5/06 20060101ALI20240703BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/10
C08K3/36
C08K3/22
C08K3/04
C08K3/01
C09K5/06 J
C08J3/20 B CER
C08J3/20 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211060
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉井 寛明
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AA16
4F070AC23
4F070AC43
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC03
4J002AA011
4J002BB001
4J002BB021
4J002BB031
4J002BB051
4J002BB121
4J002BB141
4J002BB151
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4J002BB171
4J002BB191
4J002BC021
4J002BD031
4J002BG021
4J002CF001
4J002CF181
4J002CG001
4J002CJ001
4J002CL001
4J002CM041
4J002CN031
4J002DA017
4J002DE147
4J002DJ017
4J002EH036
4J002FA097
4J002FD206
4J002FD207
4J002GC00
4J002GG01
4J002GL00
4J002GN00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】相転移材として、比較的高い温度で樹脂と溶融混練した場合であっても対応可能なプロセス耐熱性を有し、かつ、成形体とした際に樹脂から漏れ出ない特性を有する蓄熱性化合物を含むとともに、温感制御が可能であり、成形性、耐脆性および軽量性に優れた成形体を得ることができる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)と、引火点が155℃以上である蓄熱性化合物(B)と、吸油量が4.0g/g以上である多孔質無機化合物(C)とを含み、前記(A)が、密度、MFRおよびデュロメーターD硬度が特定の範囲にある樹脂(A1)0~80質量部と、密度、デュロメーターA硬度および引張破断伸び率が特定の範囲にある樹脂(A2)100~20質量部とを含み、前記(C)の含有量を100質量部とした場合、前記(B)の含有量が700質量部未満である、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)100質量部と、
引火点が155℃以上である蓄熱性化合物(B)(前記成分(A)とは異なる。)10~100質量部と、
吸油量が4.0g/g以上である多孔質無機化合物(C)1.5~20質量部と
を含み、
前記熱可塑性樹脂(A)が、
下記要件(a-1)~(a-3)を満たす熱可塑性樹脂(A1)0~80質量部と、
下記要件(a-1)、(a-4)および(a-5)を満たす熱可塑性樹脂(A2)100~20質量部とを含み(前記熱可塑性樹脂(A1)および(A2)の合計量を100質量部とする。)、
前記多孔質無機化合物(C)の含有量を100質量部とした場合、前記蓄熱性化合物(B)の含有量が700質量部未満である、樹脂組成物:
(a-1)ASTM D 1505に記載の方法に準拠して測定した密度が0.80~1.0g/cm3の範囲である;
(a-2)ISO 1133に記載の方法に準拠して、190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が10~40g/10minの範囲である;
(a-3)ISO 7619に記載の方法に準拠して測定したデュロメーターD硬度(瞬間値)が30~90の範囲である;
(a-4)ISO 7619に記載の方法に準拠して測定したデュロメーターA硬度(瞬間値)が30~90の範囲である;
(a-5)JIS K6251に記載の方法に準拠して測定した引張破断伸び率が800~1200%の範囲である。
【請求項2】
前記蓄熱性化合物(B)が脂肪酸エステルである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記多孔質無機化合物(C)が、シリカ、アルミナ、およびカーボンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記多孔質無機化合物(C)の吸油量が4.5g/g以上10.0g/g以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記多孔質無機化合物(C)が疎水性シリカである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記蓄熱性化合物(B)の結晶融解熱量ΔHmが150J/g以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記多孔質無機化合物(C)の含有量が1.5質量部以上14質量部未満である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる成形体。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる建材用品。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる枕用充填材。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、熱可塑性樹脂(A)、蓄熱性化合物(B)および多孔質無機化合物(C)を、150℃以上の温度で混練する工程を有する、樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形体およびその用途に関し、より詳しくは温感御制可能な熱可塑性樹脂組成物、その成形体およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂に熱容量の大きな相転移材を添加することで、真夏の高温時や真冬の低温下でも温度変化し難く、触った時に熱さや冷たさを感じ難くするというコンセプトがある。これは、相転移(固体→液体、液体→固体)にエネルギーが費やされて、相転移温度に一定時間保たれることで、温度の上昇や降下を遅らせることが可能になるというメカニズムによるものである。このようなコンセプトに基づく例としては、冷感を感じるシーツや、夏場に車内で高温になるハンドルおよびインパネ部の温度上昇を抑制する材料などが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、上記のような相転移材を含む樹脂組成物として、結晶融解熱量(ΔHm)が100J/g以下である熱可塑性樹脂と、蓄熱性マイクロカプセルとを含み、結晶融解熱量(ΔHm)が50J/g以上である蓄熱性樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂中に分散し、蓄熱物質を含む蓄熱材粒子とからなり、前記蓄熱材粒子の粒子径等が特定の条件を満たす、蓄熱材粒子含有樹脂ペレットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-116570号公報
【特許文献2】特開2019-218518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蓄熱性化合物などの相転移材を含有する樹脂組成物には、用途によっては、高い耐熱性が求められるが、特許文献1および2の発明では、いずれも熱可塑性樹脂の融点が高くないため耐熱性が不十分であるという問題があった。また、耐熱性の高い熱可塑性樹脂を用いる場合、相転移材と熱可塑性樹脂を比較的高い温度(例えば、150℃以上の温度)で溶融混練する必要性が生じることがあるため、相転移材には、樹脂と溶融混練する際のプロセス温度に対応できる耐熱性が求められている。さらに、用途に応じた種々の形状の成形体を製造することができる、優れた成形性も求められている。また、得られる成形体には、相転移材が樹脂から漏れ出ない(ブリードアウトしない)という特性とともに、耐脆性および軽量性などが求められる。しかしながら、従来技術では、そのような検討が十分になされていなかった。
【0007】
本発明は、相転移材として、比較的高い温度で樹脂と溶融混練した場合であっても対応可能なプロセス耐熱性を有し、かつ、成形体とした際に樹脂から漏れ出ない(ブリードアウトしない)特性を有する蓄熱性化合物を含むとともに、温感制御が可能であり、成形性、耐脆性および軽量性に優れた成形体を得ることができる樹脂組成物、該樹脂組成物からなる成形体、およびその用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、特定の熱可塑性樹脂、蓄熱性化合物および多孔質無機化合物を特定の量で含む樹脂組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の態様例を以下に示す。
【0009】
[1] 熱可塑性樹脂(A)100質量部と、
引火点が155℃以上である蓄熱性化合物(B)(前記成分(A)とは異なる。)10~100質量部と、
吸油量が4.0g/g以上である多孔質無機化合物(C)1.5~20質量部と
を含み、
前記熱可塑性樹脂(A)が、
下記要件(a-1)~(a-3)を満たす熱可塑性樹脂(A1)0~80質量部と、
下記要件(a-1)、(a-4)および(a-5)を満たす熱可塑性樹脂(A2)100~20質量部とを含み(前記熱可塑性樹脂(A1)および(A2)の合計量を100質量部とする。)、
前記多孔質無機化合物(C)の含有量を100質量部とした場合、前記蓄熱性化合物(B)の含有量が700質量部未満である、樹脂組成物:
(a-1)ASTM D 1505に記載の方法に準拠して測定した密度が0.80~1.0g/cm3の範囲である;
(a-2)ISO 1133に記載の方法に準拠して、190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が10~40g/10minの範囲である;
(a-3)ISO 7619に記載の方法に準拠して測定したデュロメーターD硬度(瞬間値)が30~90の範囲である;
(a-4)ISO 7619に記載の方法に準拠して測定したデュロメーターA硬度(瞬間値)が30~90の範囲である;
(a-5)JIS K6251に記載の方法に準拠して測定した引張破断伸び率が800~1200%の範囲である。
【0010】
[2] 前記蓄熱性化合物(B)が脂肪酸エステルである、項[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記多孔質無機化合物(C)が、シリカ、アルミナ、およびカーボンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、項[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
【0011】
[4] 前記多孔質無機化合物(C)の吸油量が4.5g/g以上10.0g/g以下である、項[1]~[3]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[5] 前記多孔質無機化合物(C)が疎水性シリカである、項[1]~[4]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0012】
[6] 前記蓄熱性化合物(B)の結晶融解熱量ΔHmが150J/g以上である、項[1]~[5]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[7] 前記多孔質無機化合物(C)の含有量が1.5質量部以上14質量部未満である、項[1]~[6]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0013】
[8] 項[1]~[7]のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる成形体。
[9] 項[1]~[7]のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる建材用品。
[10] 項[1]~[7]のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる枕用充填材。
【0014】
[11] 項[1]~[7]のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、熱可塑性樹脂(A)、蓄熱性化合物(B)および多孔質無機化合物(C)を、150℃以上の温度で混練する工程を有する、樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の樹脂組成物は、比較的高い温度で溶融混練して製造することが可能である。また、本発明の樹脂組成物を用いれば、蓄熱性化合物(相転移材)が樹脂から漏れ出ない(ブリードアウトしない)特性を有するとともに、温感制御が可能であり、成形性、耐脆性および軽量性に優れた成形体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
[樹脂組成物]
本発明に係る樹脂組成物は、
後述する熱可塑性樹脂(A)100質量部と、
引火点が155℃以上である蓄熱性化合物(B)(前記成分(A)とは異なる。)10~100質量部と、
吸油量が4.0g/g以上である多孔質無機化合物(C)1.5~20質量部と
を含み、
前記多孔質無機化合物(C)の含有量を100質量部とした場合、前記蓄熱性化合物(B)の含有量が700質量部未満であることを特徴とする。
【0017】
<熱可塑性樹脂(A)>
本発明で用いられる熱可塑性樹脂(A)は、下記要件(a-1)~(a-3)を満たす熱可塑性樹脂(A1)0~80質量部と、下記要件(a-1)、(a-4)および(a-5)を満たす熱可塑性樹脂(A2)100~20質量部とを含む(前記熱可塑性樹脂(A1)および(A2)の合計量を100質量部とする。)。
(a-1)ASTM D 1505に記載の方法に準拠して測定した密度が、0.80~1.0g/cm3の範囲である。
(a-2)ISO 1133に記載の方法に準拠して、190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が、10~40g/10minの範囲である。
(a-3)ISO 7619に記載の方法に準拠して測定したデュロメーターD硬度(瞬間値)が、30~90の範囲である。
(a-4)ISO 7619に記載の方法に準拠して測定したデュロメーターA硬度(瞬間値)が30~90の範囲である。
(a-5)JIS K6251に記載の方法に準拠して測定した引張破断伸び率が800~1200%の範囲である。
【0018】
要件(a-1)における密度は、好ましくは0.81~0.97g/cm3、より好ましくは0.82~0.96g/cm3である。熱可塑性樹脂(A1)および(A2)の密度が前記範囲内であることにより、軽量性に優れた成形体を得ることができる。
【0019】
要件(a-2)におけるMFRは、好ましくは11~39g/10min、より好ましくは12~38g/10minである。熱可塑性樹脂(A1)のMFRが前記範囲内であることにより、得られる樹脂組成物の成形加工性が優れる。
【0020】
要件(a-3)におけるデュロメーターD硬度(瞬間値)は、好ましくは35~85、より好ましくは38~82、さらに好ましくは40~80である。熱可塑性樹脂(A1)のデュロメーターD硬度(瞬間値)が前記範囲内であることにより、樹脂組成物を二軸押出機で加熱混練し、ストランドカットを行い、ペレット造粒をする時に、速やかにストランドが冷却され、カッティング不良が生じにくくなる。
【0021】
要件(a-4)におけるデュロメーターA硬度(瞬間値)は、好ましくは35~85、より好ましくは38~82、さらに好ましくは40~80である。熱可塑性樹脂(A2)のデュロメーターA硬度(瞬間値)が前記範囲内であることにより、前記多孔質無機化合物(C)を規定する範囲内で添加しても脆化しにくくなる。
【0022】
要件(a-5)における引張破断伸び率は、好ましくは800~1200%、より好ましくは850~1150%、さらに好ましくは900~1100%である。熱可塑性樹脂(A2)の引張破断伸び率が前記範囲内であることにより、前記多孔質無機化合物(C)を規定する範囲内で添加しても脆化しにくくなる。
【0023】
上記熱可塑性樹脂(A1)としては上記要件(a-1)~(a-3)を満たす熱可塑性樹脂であれば、また上記熱可塑性樹脂(A2)としては上記条件(a-1)、(a-4)および(a-5)を満たす熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、芳香族ポリケトン系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができ、市販品を用いてもよい。上記の中ではオレフィン系樹脂が好ましく、オレフィン系熱可塑性エラストマーがより好ましい。
【0024】
オレフィン系熱可塑性エラストマーの好ましい例としては、エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I](以下「エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]」ともいう。)とポリオレフィン樹脂[II]の動的架橋体が挙げられる。
【0025】
前記動的架橋体は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]やポリオレフィン樹脂[II]をそれぞれ一種ずつ動的架橋したものであってもよく、複数のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]や複数のポリオレフィン樹脂[II]を動的架橋したものであってもよい。
【0026】
本明細書において、動的架橋とは、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]およびポリオレフィン樹脂[II]を溶融状態で混練することにより、少なくともエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]が有する炭素・炭素二重結合の一部を架橋反応させることを意味する。
【0027】
・エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、エチレン由来の構成単位(a)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン由来の構成単位(b)と、非共役ポリエン由来の構成単位(c)とを含む。
【0028】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]中での構成単位(a)および構成単位(b)の含有モル比(a)/(b)は、50/50~95/5が好ましく、60/40~80/20がより好ましく、65/35~75/25がさらに好ましい。
【0029】
一方、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]中の非共役ポリエン由来の構成単位(c)の具体的な量は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]の総量に対して、2~20質量%が好ましい。
【0030】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]を構成する炭素原子数3~20のα-オレフィンの具体例には、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等が含まれる。
【0031】
中でも、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンが含まれる。エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、α-オレフィン由来の構成単位(b)を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0032】
また、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]を構成する非共役ポリエンは、共役構造を有さず、かつ炭素・炭素二重結合を2つ以上有する化合物であればよい。その具体例には、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;メチルテトラヒドロインデン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-イソブテニル-2-ノルボルネン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ナノジエン等のトリエン;が含まれる。
【0033】
これら非共役ポリエンの中でも、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)および5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)が特に好ましい。エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、非共役ポリエン由来の構成単位(c)を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0034】
なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、その製造の際に軟化剤、好ましくは鉱物油系軟化剤を配合した、いわゆる油展ゴムであってもよい。鉱物油系軟化剤は、従来公知の鉱物油系軟化剤とすることができ、その例には、パラフィン系プロセスオイル等が含まれる。
【0035】
上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、従来公知の方法により製造できる。
【0036】
・ポリオレフィン樹脂[II]
ポリオレフィン樹脂[II]は、実質的に主鎖に不飽和結合を有さないポリオレフィン系の樹脂であればよい。その具体例には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等のα-オレフィンの単独重合体;これらの共重合体;が含まれる。なお、ポリオレフィン樹脂[II]が共重合体である場合、いずれか一種のα-オレフィンの含有量が90モル%以上であることが好ましい。
【0037】
また特に、ポリオレフィン樹脂[II]は、プロピレンを主成分とするプロピレン系重合体(II-1)、もしくはエチレンを主成分とするエチレン系重合体(II-2)が特に好ましい。
【0038】
プロピレン系重合体(II-1)の例には、プロピレンの単独重合体;プロピレンと炭素原子数2~10のα-オレフィン(例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン等)とのランダム共重合体;プロピレンの単独重合体と非晶性あるいは低結晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体とのブロック共重合体;等が含まれる。ただし、プロピレン以外の構成単位の量は、全構成単位量に対して10モル%以下であることが好ましい。
【0039】
なお、プロピレン系重合体(II-1)は、公知の重合方法によって重合したものであってもよく、ポリプロピレン樹脂として、製造・販売されているものであってもよい。
【0040】
さらに、プロピレン系重合体(II-1)は、立体構造がアイソタクチック構造であることが好ましいが、シンジオタクチック構造のものやこれらの構造の混ざったもの、あるいは、一部アタクチック構造を含むものであってもよい。
【0041】
一方、エチレン系重合体(II-2)の例には、エチレンの単独重合体;エチレンと炭素原子数3~10のα-オレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン等)とのランダム共重合体が含まれる。エチレン系重合体(II-2)において、エチレン以外の構成単位の量は、全構成単位量に対して10モル%以下が好ましい。
【0042】
エチレン系重合体(II-2)は、公知の重合方法によって重合したものであってもよく、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等として、製造・販売されたものであってもよい。
【0043】
・動的架橋体の調製方法
前記動的架橋体は、上述のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]およびポリオレフィン樹脂[II]と、必要に応じて、公知の架橋剤、架橋助剤および軟化剤を加え、混練(動的架橋)することにより調製することができる。また、市販品を用いてもよい。動的架橋する際には、非開放型の装置、開放型の装置のいずれを用いてもよいが、非開放型の装置を用いることが好ましい。
【0044】
動的架橋は、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。動的架橋を行う際の温度は、通常、ポリオレフィン樹脂[II]の融点から300℃の範囲であり、好ましくは150~270℃、より好ましくは170~250℃である。混練時間は、好ましくは1~20分間、より好ましくは1~10分間である。また、このときの剪断速度は、好ましくは10~50,000sec-1、より好ましくは100~20,000sec-1である。
【0045】
動的架橋に使用する混練装置の例には、ミキシングロール、インテンシブミキサー(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機等が含まれるが、非開放型の装置が好ましく、二軸押出機が特に好ましい。
【0046】
<蓄熱性化合物(B)>
本発明で用いられる蓄熱性化合物(B)は、相転移材として用いられ、引火点が155℃以上、好ましくは156℃以上300℃以下、より好ましくは157℃以上290℃以下、さらに好ましくは158℃以上280℃以下の化合物である(ただし、前記成分(A)以外の化合物である。)。引火点が前記範囲であることにより、150℃以上の高温で成分(A)等とともに溶融混練しても熱分解することなく樹脂組成物に含有させることができ、優れた相転移効果を発揮することができる。
【0047】
蓄熱性化合物(B)の結晶融解熱量ΔHmは、好ましくは150J/g以上、より好ましくは160J/g以上300J/g以下、さらに好ましくは170J/g以上290J/g以下、特に好ましくは180J/g以上280J/g以下である。蓄熱性化合物(B)の結晶融解熱量ΔHmが前記範囲内であることにより、上述した効果が高くなる。
【0048】
上記のような蓄熱性化合物(B)としては、例えば、環状や多重結合を含まず嵩高くない鎖状の構造、炭化水素を持つ構造、カルボニル基、ヒドロキシ基などの水素結合ユニットを持つ構造などを有する化合物が挙げられる。より具体的には、脂肪酸エステル、脂肪族アルコール、脂肪酸などが挙げられ、これらの中では脂肪酸エステルが好ましく、エステル両端の置換基が鎖状である脂肪酸エステルがより好ましい。
【0049】
脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソセチル、2-エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸イソセチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソトリデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸へキサデシル、ステアリン酸ステアリル、ドコサン酸ドコシルなどが挙げられる。これらの中では、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸メチル、ドコサン酸ドコシルが好ましい。
【0050】
脂肪族アルコールとしては、炭素数が20以上のものが好ましく、例えば、ベヘニルアルコールなどが挙げられ、脂肪酸としては、炭素数が20以上のものが好ましく、例えば、ベヘン酸などが挙げられる。
【0051】
蓄熱性化合物(B)は、所望とする相転移温度(保温温度)に応じて、適宜、化合物を使い分けることができ、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
<多孔質無機化合物(C)>
本発明で用いられる多孔質無機化合物(C)の吸油量は、4.0g/g以上、好ましくは4.5g/g以上10.0g/g以下、より好ましくは5.0g/g以上9.5g/g以下、さらに好ましくは5.0g/g以上9.0g/g以下である。多孔質無機化合物(C)の吸油量が前記範囲内であることにより、蓄熱性化合物(B)をより多く保持することができるため、成形体とした際に蓄熱性化合物(B)が樹脂から漏れだすブリードアウトを抑制することができる。
【0053】
多孔質無機化合物(C)の平均粒子径は、好ましくは1μm以上100μ以下である。多孔質無機化合物(C)の平均粒子径が前記範囲内にあることにより、上述した効果がより高くなる。なお、前記平均粒子径は、粒子径に適した装置および解析法にて測定した値であり、例えばレーザ回折/散乱法により測定される値である。
【0054】
多孔質無機化合物(C)としては、上記吸油量を有する多孔質無機化合物であれば特に限定されないが、優れた耐熱性を有する観点から、例えば、シリカ、アルミナおよびカーボンなどが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。上記の中ではシリカが好ましく、吸油効果をより高めることができる観点から、疎水性シリカがより好ましい。
【0055】
また、多孔質無機化合物(C)としては、蓄熱性化合物(B)を保持した状態で蓄熱性化合物(B)の融点(融解ピーク温度)以上となった場合、蓄熱性化合物(B)が単体の場合と比べて揮発し難く、引火し難くなるものが好ましい。このような好ましい多孔質無機化合物(C)としては、例えば、THILIUM社製「AEROS」、トクヤマ社製「エアリカ」が挙げられる。
【0056】
<組成>
本発明の樹脂組成物における各成分の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、
蓄熱性化合物(B)の含有量は10~100質量部、好ましくは12~80質量部、より好ましくは15~50質量部であり、
多孔質無機化合物(C)の含有量は1.5~20質量部、好ましくは2.0~18質量部、より好ましくは2.5~16質量部である。また、多孔質無機化合物(C)の含有量を1.5質量部以上14質量部未満、2.0質量部以上14質量部未満または2.5質量部以上14質量部未満とすることもできる。
【0057】
上記熱可塑性樹脂(A)において、前記熱可塑性樹脂(A1)および(A2)の合計量を100質量部とした場合、熱可塑性樹脂(A1)が0~80質量部、好ましくは5~75質量部、さらに好ましくは10~70質量部の範囲で用いられ、熱可塑性樹脂(A2)が100~20質量部、好ましくは95~25質量部、さらに好ましくは90~30質量部の範囲で用いられる。熱可塑性樹脂(A1)は任意成分であるが、樹脂組成物を二軸押出機で加熱混練し、ストランドカットを行い、ペレット造粒をする時に、速やかにストランドが冷却され、カッティング不良が生じにくくなる観点から、配合することが好ましい。
【0058】
また、多孔質無機化合物(C)の含有量を100質量部とした場合、蓄熱性化合物(B)の含有量は、700質量部未満、好ましくは100質量部以上700質量部未満、より好ましくは200質量部以上700質量部未満である。
【0059】
各成分の含有量が上記条件を満たすことにより、成形体とした際に、蓄熱性化合物(B)が樹脂から漏れ出さず(ブリードアウトせず)、十分な相転移効果が得られるとともに、耐脆性および軽量性に優れた成形体を得ることができる。
【0060】
<任意成分>
本発明の樹脂組成物は、上述した成分(A)~(C)以外に、任意成分として、スリップ剤、核剤、充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、着色剤(サーモクロミック材を含む)、発泡剤、顔料、染料、帯電防止剤、難燃剤等の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
【0061】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂(A)、蓄熱性化合物(B)、多孔質無機化合物(C)、および必要に応じて任意成分を、150℃以上、好ましくは152℃以上300℃以下、より好ましくは154℃以上260℃以下の温度で混練する工程を有する。混練時間は、通常1~20分間、好ましくは1~10分間である。
【0062】
混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー(例えばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸又は二軸押出機等を用いることができるが、非開放型の装置が好ましい。
【0063】
[成形体]
本発明の成形体は、上述した本発明の樹脂組成物からなる。成形方法としては、種々公知の方法を採用することができる。具体的には、押出成形、プレス成形、射出成形、カレンダー成形、中空成形等が挙げられる。また、前記成形方法で得られたシートなどの成形体を熱成形などで二次加工、あるいは、他の材料と積層して成形体とすることもできる。また、ビーズ状等の粒状成形体、筒状成形体とすることもできる。
【0064】
本発明の成形体の用途は、特に限定されないが、例えば、自動車用部品、土木・建材用品、電気・電子部品、生活用品、衛生用品、フィルム・シート、発泡体など種々公知の用途に好適である。特に、夏場に車内で高温になるハンドル部やインパネ部の材料、内壁材、浴槽用材料、ウェアラブル素材、アパレル素材、シューズ、各種の保冷材、保冷容器、保温材、保冷首枕用充填材、枕用充填材、および保温容器としても有用である。
【実施例0065】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0066】
[材料]
実施例および比較例で製造した樹脂組成物の各成分は以下のとおりである。
<熱可塑性樹脂>
・A1-1:(株)プライムポリマー製「ネオゼックス(登録商標)20201J」(直鎖状中密度ポリエチレン、密度:0.919g/cm3、MFR(190℃、2.16kg荷重):20g/10min、デュロメーターD硬度(瞬間値):49)
・A2-1:三井化学(株)製「ミラストマー(登録商標)6010NST」(オレフィン系ゴム(EPT)、オレフィン系樹脂(PP)を主成分とした架橋タイプの熱可塑性エラストマー、密度:0.88g/cm3、デュロメーターA硬度(瞬間値):70、引張破断伸び率:1000%)
・A2-2:三井化学(株)製「タフマー(登録商標)DF7350」(密度:0.870g/cm3、デュロメーターA硬度(瞬間値):70、引張破断伸び率:1000%)
・A’-1:ポリ塩化ビニル(密度:1.2g/cm3、デュロメーターA硬度(瞬間値):70)
【0067】
<蓄熱性化合物(相転移材)>
・B-1:花王(株)製「エキセパールSS」(ステアリン酸ステアリル、引火点:258℃、ΔHm:234J/g)
・B-2:花王(株)製「エキセパールMY-M」(ミリスチン酸ミリスチル、引火点:239℃、ΔHm:229J/g)
・B-3:日油(株)製「スパームアセチ」(ミリスチン酸セチル、引火点:228℃、ΔHm:241J/g)
・B-4:日油(株)製「ユニスターM-2222SL」(ドコサン酸ドコシル、引火点:270℃、ΔHm:224J/g)
・B-5:当栄ケミカル(株)製「TOENOL#2018-65」(ステアリン酸メチル、引火点:172℃、ΔHm:206J/g)
【0068】
<多孔質無機材料>
・C-1:疎水性シリカ(THILIUM社製「AEROS」、吸油量:7g/g)
・C’-2:活性炭化物(谷口商会(株)製「スミレイ」、吸油量:3.4g/g)
【0069】
[実施例1~10および比較例1~10]
表1に示す量(質量部)の熱可塑性樹脂、蓄熱性化合物(相転移材)および多孔質無機材料を、ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製「80C100」)を用いて、温度150℃およびトルク回転数30rpmの条件で5分間混練した。混練後、速やかに混練物を回収した。得られた混練物を、ハサミで約0.5cm×0.5cm×0.5cmのサイズを目安に、細かく裁断した。
【0070】
ステンレス製の板(以下「SUS板」ともいう。)の上に、テフロン(登録商標)シート、金型を順に載せ、金型の孔部に、上記で得られた裁断物を敷き詰めた。裁断物を敷き詰めた後、テフロン(登録商標)シート、SUS板の順に積み重ねた。なお、テフロン(登録商標)シートは、熱プレスによってSUS板に混練物がつかない様にするために使用した。上記金型は、長さ6.5cm、幅6.5cm、厚みは3種(1mm、2mm、および5mm)を用いた。
【0071】
得られた積層物を圧縮成型機((株)神藤金属工業所製「ASF-10」)で、温度150℃、圧力10MPaで5分間、熱プレスを行った。その後、SUS板で挟んだ状態で、圧縮成型機((株)神藤金属工業所製「NSF-37」)に速やかに移し、圧力10MPaで5分間冷却した。冷却後、SUS板とテフロン(登録商標)シートを金型から取り外し、表1に記載の厚みの熱プレスシートサンプルを得た。作製した熱プレスシートサンプルについて、以下の評価を行った。
【0072】
<ブリードアウト>
上記で得られた熱プレスシートサンプルの上下を、クリーンペーパーで、6.5cm×6.5cmの面とクリーンペーパーが平行になるように挟み、その上下をSUS板でさらに挟んだ後、圧縮成型機((株)神藤金属工業所製「ASF-10」)で、温度100℃および圧力10MPaの条件で5分間熱プレスを行った。熱プレス後、熱プレスシートサンプルを速やかにクリーンペーパーから剥がした。クリーンペーパーの状態を確認し、シートを置いたエリアに跡が無い場合は「〇:漏れなし」、跡がある場合は「×:漏れあり」と評価した。
【0073】
<耐脆性>
上記で得られた熱プレスシートサンプルを、長さ1.0cm、幅6.5cmのサイズにカットして引張試験用の試験片とし、テンシロン万能試験機(形式:RTG-1225)を用いて、引張速度300mm/分およびチャック間距離50mmの条件で、試験片の引張伸びを測定した。試験片が破断した時の引張伸びの値に対して、伸び率(%)=伸び値(mm)/チャック間距離(mm)とし、測定された伸び率に基づいて、以下の基準で評価した。
〇:10%より大きい
△:5~10%
×:5%未満
【0074】
<保温性>
上記で得られた熱プレスシートサンプルから約5mgを切り取り、示差走査熱量計(DSC)を用いて以下の条件で測定を行った。
・測定装置:X-DSC7000(SII製)
・温度:-40℃からスタートし、100℃まで昇温した後、100℃で1分間保持し、その後-40℃まで降温
・昇温速度および降温速度:いずれも3℃/分
・測定雰囲気:窒素
・前処理:無し
・パン:簡易密封パン
【0075】
測定で得られた融解ピークより、蓄熱性化合物(相転移材)の融解エンタルピーΔH(J/g)の情報を得た。得られたΔHの値に基づいて、以下の基準で評価した。
〇:50J/gより大きい
△:25~50J/g
×:25J/g未満
【0076】
<軽量性>
上記で得られた熱プレスシートサンプルの重量を精密天秤で測定し、得られた熱プレスシートの体積で割った値を密度とした。得られた密度の値に基づいて、以下の基準で評価した。
〇:0.9g/cm3未満
△:0.9g/cm3以上1g/cm3未満
×:1g/cm3以上
【0077】
<総合評価>
上記評価で、少なくとも1つ×があるものは総合評価を×(適さない)とした。
【0078】
【0079】
実施例の総合評価は、いずれも「○」となったが、比較例の総合評価は、いずれも「×」という結果になった。