(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094494
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】杭打機および杭打方法
(51)【国際特許分類】
E02D 7/08 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
E02D7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211064
(22)【出願日】2022-12-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年7月にパンフレット「SPACE ZERO スペースゼロ工法」において公開
(71)【出願人】
【識別番号】500435470
【氏名又は名称】有限会社丸高重量
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 節夫
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA06
2D050CB13
2D050EE11
2D050FF02
(57)【要約】
【課題】狭い空間においても中空杭(鋼管杭)を施工しやすい杭打機および杭打方法を提案する。
【解決手段】中空杭1に固定される固定部3と、固定部3に立設された支柱4と、支柱4に対して昇降する昇降ロッド5と、昇降ロッド5を上昇させる動力源6と、昇降ロッド5の上端に設けられたプーリ7と、プーリ7にかけ回された索条体8と、中空杭1を打撃する重錘9とを備える杭打機2である。索条体8の基端側は支柱4または固定部3に取り付けられており、索条体8の先端には重錘9が取り付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭を地盤に打ち込む杭打機であって、
地面の上方において前記杭に固定されることを特徴とする、杭打機。
【請求項2】
前記杭を打撃する重錘と、
前記重錘を上昇させる手段と、を備えることを特徴とする、請求項1に記載の杭打機。
【請求項3】
杭に固定される固定部と、
前記固定部に立設された支柱と、
前記支柱に対して昇降する昇降ロッドと、
前記昇降ロッドを上昇させる動力源と、
前記昇降ロッドの上端に設けられたプーリと、
前記プーリにかけ回された索条体と、
前記杭を打撃する重錘と、を備える杭打機であって、
前記索条体の基端側は前記支柱または前記固定部に取り付けられており、前記索条体の先端には前記重錘が取り付けられていることを特徴とする、杭打機。
【請求項4】
請求項3に記載の杭打機を使用して有底の中空杭を地盤に打ち込む杭打方法であって、
地盤に立設された前記中空杭に前記重錘を挿入するとともに、前記中空杭に前記固定部を固定する取付工程と、
前記杭打機を作動させて前記中空杭を地盤に打込む打込工程と、を備えており、
前記打込工程では、前記昇降ロッドを延ばして、前記重錘を上昇させた後、前記昇降ロッドを落下させることで前記重錘を落下させて前記中空杭に下向きの打撃を加えることを特徴とする、杭打方法。
【請求項5】
前記中空杭を所定の深さまで打込んだ後、前記固定部を前記中空杭から取り外す取外し工程と、
前記中空杭の上端に延長用の中空杭を連結するとともに、前記重錘の上端に重錘部材を連結する延長工程と、を備えており、
前記延長工程後に前記取付工程および前記打込工程を繰り返すことを特徴とする、請求項4に記載の杭打方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機および杭打方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭を施工する場合において、鋼管杭にハンマーを落下させて打撃することにより、鋼管杭を地盤に打ち込む場合がある。このような鋼管杭の施工には、ハンマーと、ハンマーを案内するガイドと、ガイドを支持する重機とを備える杭打機を使用するのが一般的である。
【0003】
なお、建物の増築や設備の増設等の伴い、既存建物の内部や既存建物に近接した狭隘な空間で新たに鋼管杭を施工する必要が生じた場合には、重機の搬入や、重機を据え付ける用地を確保できない場合があり、このような場合には鋼管杭を施工することができなかった。
【0004】
そのため、本出願人は、特許文献1に示すように、狭い場所でも杭の施工を可能とした杭打機を開発した。特許文献1の杭打機は、上下端にプーリをそれぞれ有していて、地盤に載置される支柱と、両プーリに掛け渡される索条体と、索条体の一端に固定されたハンマーと、索条体の他端に設けられて杭に固定される固定部とを有している。この杭打機によれば、重機を必要としないため、狭い空間であっても鋼管杭を施工可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の杭打機は、支柱が地盤に載置されているため、施工の進捗に伴い、上昇させたハンマーの高さと鋼管杭との位置が変化する。そのため、鋼管に作用する力(打撃力)も変化してしまう。また、施工に伴って鋼管杭が下降することで、固定部と下端側のプーリとの距離が近づく結果、索条体にゆるみが生じるおそれがある。索条体にゆるみがあると、ハンマーの打撃位置にブレが生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、狭い空間においても杭を施工しやすい杭打機および杭打方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の杭打機は、杭を地盤に打ち込む杭打機であって、地面の上方において前記杭に固定されるものである。杭打機は、好ましくは、前記杭を打撃する重錘と、前記重錘を上昇させる手段とを備える。本発明の一形態に係る杭打機は、杭に固定される固定部と、前記固定部に立設された支柱と、前記支柱に対して昇降する昇降ロッドと、前記昇降ロッドを上昇させる動力源と、前記昇降ロッドの上端に設けられたプーリと、前記プーリにかけ回された索条体(チェーン、ワイヤー等)と、前記杭を打撃する重錘とを備えている。前記索条体の基端側は前記支柱または前記固定部に取り付けられており、前記索条体の先端には前記重錘が取り付けられている。
【0009】
前記杭打機を使用して有底の中空杭を地盤に打ち込む杭打方法は、地盤に立設された前記中空杭に前記重錘を挿入するとともに、前記中空杭に前記固定部を固定する取付工程と、前記杭打機を作動させて前記中空杭を地盤に打込む打込工程とを備えている。前記打込工程では、前記昇降ロッドを延ばして、前記重錘を上昇させた後、前記昇降ロッドを落下させることで前記重錘を落下させて前記中空杭に下向きの打撃を加える。
【0010】
かかる杭打機は、固定部を介して中空杭に固定されているため、中空杭の打込みに伴って杭と一緒に下降する。そのため、中空杭に対するプーリの位置が施工の進捗に伴って変化することがない。そのため、一定の力で中空杭を打撃することができる。そのため、打撃数による施工管理が可能となり、高品質に施工できる。
【0011】
なお、前記杭打方法が、前記中空杭を所定の深さまで打込んだ後、前記固定部を前記中空杭から取り外す取外し工程と、前記中空杭の上端に中空杭を連結するとともに前記重錘の上端に重錘部材を連結する延長工程とを備えている場合には、前記延長工程後に前記取付工程および前記打込工程を繰り返すことで、より長い杭を打ち込むことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の杭打機および杭打方法によれば、狭い空間でも簡易かつ高品質に杭を打ち込むことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る杭打機の概要を示す正面図である。
【
図3】杭打方法の手順を示すフローチャートである。
【
図4】準備工程の概要を示す断面図であって、(a)は削孔時、(b)は中空杭挿入時である。
【
図5】打込工程の概要を示す断面図であって、(a)は重錘上昇時、(b)は重錘落下時である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態では、有底の中空杭(鋼管杭)を地盤に打ち込む杭打工事について説明する。中空杭1は、複数の鋼管を連結することにより所定の深さ(支持層)まで打込まれる支持杭である。なお、中空杭の用途はこれに限定されるものではなく、例えば、地盤改良を目的とするものであってもよい。本実施形態では、中空杭1を構成する鋼管として、φ139.8mm(t=6mm)または165.2mm(t=6mm)を使用するが、中空杭の寸法はこれに限定されない。
【0015】
中空杭1の施工は、杭打機2を使用して行う。杭打機2は、
図1に示すように、固定部3と、支柱4と、昇降ロッド5と、動力源6と、プーリ7と、索条体8と、重錘9とを備えている。中空杭1を打ち込む際は、中空杭1に固定部3を固定した状態で、重錘9を上昇させる手段(昇降ロッド5、動力源6、プーリ7および索条体8)によって重錘9を上方に移動させ、重錘9を落下させることにより中空杭1を打撃する。
【0016】
固定部3は、中空杭1の上部に固定される部分である。本実施形態の固定部3は、バンド固定式であって、
図2に示すように、中空杭1の外面に添設される固定部本体31と、固定部本体31から延設されて、中空杭1の外面に周設されるバンド32と、支柱4の下端が固定された土台33と、固定部本体31から延設されて支柱4に周設された支柱周設材34と、固定部本体31の上端に形成された台座35とを有している。
【0017】
固定部本体31は、内径が中空杭1の外径と同等の平面視弧状の構成部材からなる。本実施形態の固定部本体31は、半円筒状を呈する半割管により構成されている。固定部本体31の内面には、係止部36が固定されている。固定部本体31は、所定の高さを有していて、固定部3を中空杭1に固定した状態で、ブレが生じることが無いように構成されている。
【0018】
バンド32は、一端が固定部本体31に固定されていて、他端が固定部本体31に着脱可能である。バンド32は、中空杭1に巻き付けた状態で他端を固定部本体31に取り付けることで、固定部3を中空杭1に固定する。バンド32の他端は、バンド32を中空杭1に締め付けた状態で、固定部本体31に取り付けることが可能である。
【0019】
土台33は、固定部本体31の外面(中空杭1と反対側の面)から側方に張り出している。土台33には、支柱4の下端が固定されている。
支柱周設材34は、両端が固定部本体31の外面に固定された帯状部材であって、支柱4に周設されている。
台座35は、固定部本体31の外面と支柱4との間に介設されている。
係止部46は、中空杭1の上端縁に載置される部位であり、固定部本体31の内周面に沿って湾曲する帯板からなる。
【0020】
支柱4は、固定部3の土台33に立設されているとともに、支柱周設材34により固定部本体31に固定されている。支柱4は、中空の筒状部材(例えば、鋼管)からなり、上端において、昇降ロッド5を上方向に進退可能に支持している。すなわち、支柱4は、昇降ロッド5のシリンダとして機能する。
図1に示すように、支柱4の上端部および下端部には、動力源6から延設されたホース61がそれぞれ接続されている。動力源6は、ホース61を介して昇降ロッド5に油圧、水圧または空気圧を作用させる。
【0021】
昇降ロッド5は、支柱4に対して昇降する棒状部材である。昇降ロッド5は、支柱4に支持されており、上下方向に進退可能である。昇降ロッド5の上端にはプーリ7が設けられている。昇降ロッド5は、ホース61を介して支柱4内に送り込まれた油圧または空気圧によって支柱4をガイドとして上昇し、動力源6からの圧力を急減圧すると落下する。
【0022】
プーリ7は、昇降ロッド5の上端に設けられている。プーリ7は、円盤状を呈しており、横軸を中心に回転可能である。プーリ7には、索条体8がかけ回されている。本実施形態の索条体8は、チェーンからなる。索条体8の先端は、重錘9を取り付けるための重錘取付具81に固定されていて、索条体の他端は、支柱4の上部に固定された索条体保持具82により保持されている。
【0023】
重錘9は、中空杭1の底部12を打撃する。重錘9は、
図1示すように、中空杭1の内径よりも小さい外径を有した柱状部材であって、鋼管杭の内部に挿入される。重錘9は、例えば、鋼鉄、鉛、鋳鉄または、その他合金等により構成すればよい。重錘9は、複数の重錘部材91,91,…を連結することにより中空杭1よりも長く形成された柱状部材である。重錘9の上端部は、重錘9の下端が中空杭1の底部12に当接した状態で、中空杭1の上端から突出する。重錘9の上端には、索条体8の先端に設けられた重錘取付具81が接続されている。
【0024】
以下、杭打機2を利用した杭打方法について説明する。
杭打方法は、
図3に示すように、準備工程S1と、取付工程S2と、打込工程S3と、取外し工程S4と、延長工程S5とを備えている。
【0025】
準備工程S1は、中空杭1を地盤にセットする工程である。準備工程では、
図4(a)に示すように、まず、削孔手段Dにより地盤Gに杭挿入用の掘削孔(縦穴)Hを形成する。所定の深さの掘削孔Hを形成したら、
図4(b)に示すように、1本目の中空杭1(1節目の鋼管)の下部を掘削孔Hに挿入し、上部を露出させた状態で地盤Gに建て込む。掘削孔Hを削孔するための削孔手段Dは限定されるものではなく、例えば、バックホーのブレーカー、手持ちのホールディガーやハンドオーガー等を利用すればよい。
【0026】
取付工程S2は、地盤Gに立設された中空杭1に杭打機2を取り付ける工程である(
図1参照)。このとき、中空杭1は、地盤Gに所定長挿入された状態で、立設している。杭打機2を中空杭1に取り付ける場合には、中空杭1に挿入された重錘9の上部に重錘取付具81を取り付けるとともに、係止部36を中空杭1の上端縁に載置した状態で中空杭1の外周にバンド32を巻き付けて、固定部3を中空杭1に固定する。すなわち、取付工程S2では、油圧ポンプなどの動力源6や制御装置を除く機器(支柱4、昇降ロッド5、プーリ7、索状体8および重錘9)を、固定部3を介して中空杭1に取り付ける。
【0027】
打込工程S3は、
図5(a)および(b)に示すように、杭打機2を作動させて中空杭1を地盤Gに打込む工程である。
打込工程S3では、
図5(a)に示す第一工程と、
図5(b)に示す第二工程を繰り返す。第一工程では、動力源6を作動させて、昇降ロッド5を上方に伸長(すなわち、重錘9を上昇)させる。第二工程では、動力源6の圧力を解除して、昇降ロッド5を落下させる。昇降ロッド5の落下に伴い、重錘9が落下し、重錘9が中空杭1の底部12を打撃する。中空杭1の打撃により中空杭1が地盤Gに押し込まれる。第一工程と第二工程を繰り返し、中空杭1を繰り返し打撃することにより、所定の深さまで中空杭1を押し込む。
【0028】
取外し工程S4は、
図6に示すように、中空杭1から杭打機2を取り外す工程である。中空杭1を所定の深さまで打込んだら、固定部3を中空杭1から取り外すとともに、重錘9の上端から重錘取付具81を取り外す。
【0029】
延長工程S5は、
図7に示すように、中空杭1の上端に延長用の鋼管(延長用の中空杭)11を連結するとともに、重錘9の上端に重錘部材91を連結する工程である。延長工程S5では、鋼管11を中空杭1の上端に連結して中空杭1の長さを延長し、重錘9の上端に重錘部材91を連結して重錘9の長さを延長する。
【0030】
中空杭1および重錘9を所定の長さに延長したら、取付工程S2および打込工程S3を繰り返し実行する。
前記のとおり、取付工程S2~延長工程S5を繰り返すことにより、所定の長さの杭を形成する。
【0031】
本実施形態の杭打機2によれば、固定部3を介して中空杭1に固定されているため、中空杭1の打込みに伴って杭打機2が中空杭1と一緒に下降する。そのため、プーリ7の上昇位置(
図5(a))から中空杭1の上端までの距離が施工の進捗に伴って変化することがなく、同様に、プーリ7の下降位置(
図5(b))から中空杭1の上端までの距離が施工の進捗に伴って変化することがない。そのため、施工の進捗に伴って重錘9の落下高さが変化することがなく、一定の力で中空杭1を打撃することができる。ゆえに、打撃数による施工管理が可能となり、高品質に施工できる。
また、中空杭1に対するプーリ7の位置が変化しないため、施工に伴って索条体8の緩みが生じることを抑制でき、その結果、プーリ7から索条体8が外れ難い
【0032】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、支柱4がエアシリンダまたは油圧シリンダを構成する場合について説明したが、シリンダの形式(動力源の駆動形式)は限定されるものではない。例えば、モータにより昇降ロッド5を伸長させてもよい。
また、前記実施形態では、支柱4がシリンダを構成する場合について説明したが、支柱4は、柱状の支柱本体の上にシリンダが固定された物であってもよい。
索条体8は、チェーンに限定されるものではなく、例えば、ロープやワイヤーであってもよい。また、索条体8がロープやワイヤーの場合には、プーリ7は必ずしも回転可能である必要はない。
【符号の説明】
【0033】
1 中空杭(杭)
11 鋼管(中空部材)
2 杭打機
3 固定部
4 支柱
5 昇降ロッド
6 動力源
7 プーリ
8 索条体
9 重錘
91 重錘部材