(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094498
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
B41J2/14 501
B41J2/14 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211072
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】水野 泰介
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF01
2C057AF21
2C057AG15
2C057AG16
2C057AG31
2C057AG32
2C057AG44
2C057AN05
2C057BA04
2C057BA14
2C057DB04
(57)【要約】
【課題】高い駆動周波数かつ高い記録解像度で、記録に十分な量の液滴を吐出させる。
【解決手段】プリンタは、ノズルとノズルに連通する圧力室とを含む個別流路を有する流路部材と、圧力室内のインクに圧力を付与してノズルからインク滴を吐出させる圧電素子とを備えている。個別流路の固有周波数Frは120~160kHzであり、インク滴により記録される画像の解像度である記録解像度は1200dpi以上である。さらに、ノズルの径D[μm]と個別流路の固有周波数Fr[kHz]とは、D≧0.0343×Fr+6.6979を満たす。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルと前記ノズルに連通する圧力室とを含む流路を有する流路部材と、
前記流路部材に固定され、前記圧力室内の液体に圧力を付与して前記ノズルから液滴を吐出させる圧電素子と、を備え、
前記流路内の液体の固有周波数Frが120~160kHzであり、
前記液滴により記録される画像の解像度である記録解像度が1200dpi以上であり、
前記ノズルの径D[μm]と前記固有周波数Fr[kHz]とがD≧0.0343×Fr+6.6979を満たすことを特徴とする、液滴吐出装置。
【請求項2】
前記ノズルの径D[μm]と前記固有周波数Fr[kHz]とがD≦0.0453×Fr+10.261を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記ノズルが一列300dpi以上のピッチで配置されたことを特徴とする、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記圧電素子は薄膜圧電素子であることを特徴とする、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記薄膜圧電素子の厚みが1.5μm以下であることを特徴とする、請求項4に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記圧力室の幅が70μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記圧力室の長さが550μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記ノズルからの液滴の吐出初速度が7m/s以上であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液滴を吐出させる液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ノズルピッチ180dpiのヘッドを25~40kH程度の駆動周波数で駆動することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高速記録を行うため、駆動周波数をより高くすることが考えられる。駆動周波数を高めるための手段の1つは、流路の固有周波数Frを高めることである。
【0005】
また、高画質化のため、記録解像度を1200dpi以上にすることが考えられる。
【0006】
しかしながら、固有周波数Frが高くなるにつれて、一般に、ノズルから吐出される液滴の量は減少する。したがって、固有周波数Frを高めた場合、ノズルの径によっては、記録に十分な量の液滴を吐出させることができない。
【0007】
本発明の目的は、高い駆動周波数かつ高い記録解像度で、記録に十分な量の液滴を吐出させることができる、液滴吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る液滴吐出装置は、ノズルと前記ノズルに連通する圧力室とを含む流路を有する流路部材と、前記流路部材に固定され、前記圧力室内の液体に圧力を付与して前記ノズルから液滴を吐出させる圧電素子と、を備え、前記流路内の液体の固有周波数Frが120~160kHzであり、前記液滴により記録される画像の解像度である記録解像度が1200dpi以上であり、前記ノズルの径D[μm]と前記固有周波数Fr[kHz]とがD≧0.0343×Fr+6.6979を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固有周波数Frが120~160kHzであることで、駆動周波数を高めることができる。さらに、1200dpi以上と高い記録解像度である。この場合において、ノズルの径D[μm]と固有周波数Fr[kHz]とがD≧0.0343×Fr+6.6979を満たすことで、後述の解析結果のとおり、記録に十分な量の液滴を吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプリンタ100の平面図である。
【
図2】プリンタ100の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】プリンタ100のヘッドユニット1xを構成する4つのヘッド1の1つを示す平面図である。
【
図4】
図3のIV-IV線に沿ったヘッド1の断面図である。
【
図5】ノズルの径D、固有周波数Fr及びインク滴の量Vの関係を示すグラフである。
【
図6】ノズルの径Dと固有周波数Frとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<プリンタ100の全体構成>
本発明の一実施形態に係るプリンタ100は、
図1に示すように、筐体100aと、ヘッドユニット1xと、プラテン3と、搬送機構4と、制御部5とを備えている。ヘッドユニット1x、プラテン3、搬送機構4及び制御部5は、筐体100a内に配置されている。プリンタ100は、さらに、筐体100aの外面に配置されたボタンで構成される、入力部を備えている。
【0012】
ヘッドユニット1xは、主走査方向に長い。主走査方向は、用紙9の幅に沿った方向であり、鉛直方向と直交する。ヘッドユニット1xは、位置が固定された状態で用紙9に対してインクを吐出するライン式である。ヘッドユニット1xは、4つのヘッド1を含む。4つのヘッド1は、それぞれ主走査方向に長く、主走査方向に千鳥状に配置されている。
【0013】
プラテン3は、鉛直方向と直交する平面に沿った板であり、ヘッドユニット1xの下方に配置されている。プラテン3の上面に用紙9が支持される。
【0014】
搬送機構4は、2つのローラ対41,42と、
図2に示す搬送モータ43とを含む。搬送方向において、ヘッドユニット1xとプラテン3との間に、2つのローラ対41,42が配置されている。搬送方向は、鉛直方向及び主走査方向と直交する。制御部5の制御により搬送モータ43が駆動されると、ローラ対41,42が回転する。ローラ対41,42が回転することによって、ローラ対41,42に挟持された用紙9が搬送方向に搬送される。
【0015】
制御部5は、
図2に示すように、CPU51と、ROM52と、RAM53とを含む。
【0016】
CPU51は、外部装置や入力部から入力されたデータに基づいて、ROM52やRAM53に記憶されているプログラム及びデータにしたがい、各種制御を実行する。外部装置は、例えばPCである。
【0017】
ROM52には、CPU51が各種制御を行うためのプログラム及びデータが格納されている。RAM53は、CPU51がプログラムを実行する際に用いるデータを一時的に記憶する。
【0018】
<ヘッド1の構成>
ヘッド1は、
図4に示すように、流路部材12と、アクチュエータ部材13とを含む。
【0019】
流路部材12の上面には、
図3に示すように、2つの供給口121及び2つの帰還口122が開口している。2つの供給口121は、流路部材12における主走査方向の一端に配置されている。2つの帰還口122は、流路部材12における主走査方向の他端に配置されている。供給口121及び帰還口122は、チューブを介してインクタンクと連通している。
【0020】
流路部材12は、2つの共通流路12Aと、複数の個別流路12Bとを有する。
【0021】
2つの共通流路12Aは、搬送方向に並び、かつ、それぞれ主走査方向に延びている。各共通流路12Aにおける主走査方向の一端に供給口121が接続し、各共通流路12Aにおける主走査方向の他端に帰還口122が接続している。各共通流路12Aは、供給口121及び帰還口122を介してインクタンクに連通し、かつ、複数の個別流路12Bに連通している。
【0022】
各個別流路12Bは、ノズル12Nと、ノズル12Nに連通する圧力室12Pとを含む。個別流路12Bは、本発明の「流路」に該当する。
【0023】
流路部材12の下面に複数のノズル12Nが開口し、流路部材12の上面に複数の圧力室12Pが開口している。鉛直方向と直交する平面において、ノズル12Nの開口は略円形状であり、圧力室12Pの開口は略矩形状である。
【0024】
圧力室12Pの幅Wは、70μm以下である。圧力室12Pの長さLは、550μm以下である。幅Wは主走査方向の長さであり、長さLは搬送方向の長さである。
【0025】
ノズル12Nは、
図3に示すように、主走査方向に千鳥状に配置され、4つのノズル列R1~R4を構成している。各ノズル列R1~R4は、主走査方向に並ぶ複数のノズル12Nで構成されている。
【0026】
各ノズル列R1~R4において、複数のノズル12Nは、主走査方向に300dpi以上のピッチPで配置されている。例えば、各ノズル列R1~R4における記録解像度が300dpiの場合、ピッチPは約84μmである。記録解像度とは、ノズル12Nから吐出されたインク滴により記録される画像の解像度である。
【0027】
搬送方向に互いに隣接する2つのノズル列間では、主走査方向におけるノズル12Nの位置が、ピッチPの半分ずれている。これにより、各ノズル列R1~R4における記録解像度が300dpiの場合、4つのノズル列R1~R4により1200dpiの記録解像度が実現される。本実施形態のヘッド1は、主走査方向及び搬送方向において1200dpi×1200dpiの記録解像度を有する。
【0028】
インクタンク内のインクは、制御部5の制御により
図2に示すポンプ10が駆動されることで、供給口121を介して共通流路12Aに供給され、共通流路12Aから複数の個別流路12Bに分配される。
【0029】
各個別流路12B内のインクは、後述する圧電素子13Xの駆動により圧力室12Pの容積が減少することで、ノズル12Nからインク滴として吐出される。
【0030】
共通流路12A内を主走査方向の一端から他端に向けて移動し、帰還口122に至ったインクは、チューブを介してインクタンクに戻される。
【0031】
アクチュエータ部材13は、
図4に示すように、流路部材12の上面に固定されている。アクチュエータ部材13は、金属製の振動板13Aと、圧電層13Bと、複数の個別電極13Cとを含む。
【0032】
アクチュエータ部材13は、振動板13Aの上面に圧電層13Bとなる薄膜及び個別電極13Cとなる薄膜を順に成膜することで形成された、薄膜圧電素子である。薄膜圧電素子とは、いわゆるmicro electro mechanical systems(MEMS)である。薄膜圧電素子の厚みは、1.5μm以下である。
【0033】
振動板13Aは、流路部材12の上面に、複数の圧力室12Pを覆うように配置されている。圧電層13Bは、振動板13Aの上面に配置されている。個別電極13Cは、圧電層13Bの上面に、圧力室12Pと鉛直方向に重なるように配置されている。
【0034】
振動板13A及び圧電層13Bにおいて個別電極13Cと圧力室12Pとで挟まれた部分が、圧電素子13Xとして機能する。圧電素子13Xは、個別電極13Cに付与される電位に応じて独立して変形可能である。
【0035】
振動板13A及び複数の個別電極13Cは、ドライバIC14と電気的に接続されている。ドライバIC14は、振動板13Aの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極13Cの電位を変化させる。振動板13Aは、複数の圧電素子13Xに共通の電極である共通電極として機能する。ドライバIC14は、制御部5からの制御信号に基づいて駆動信号を生成し、当該駆動信号を個別電極13Cに供給する。駆動信号は、個別電極13Cの電位を所定の駆動電位とグランド電位との間で変化させる。
【0036】
<解析>
本願発明者は、2000個のヘッド1の解析モデルを用い、個別流路12Bの固有周波数Frと、ノズル12Nの径Dと、ノズル12Nから吐出されるインク滴の量Vとの関係を解析した。
【0037】
2000個の解析モデルは、個別流路12Bの構成が互いに異なる。個別流路12Bの構成は、圧力室12Pの幅W、圧力室12Pの長さL、及び、ノズル12Nの径Dを含む。固有周波数Frは、少なくとも個別流路12Bの構成に依存する。したがって、2000の解析モデルにおいて、固有周波数Frは様々ある。
【0038】
図5は、各解析モデルにおいて、圧電素子13Xに対して駆動信号を付与することで吐出されたインク滴の量Vを、グレースケールでプロットしたものである。なお、2000個の解析モデルにおいて、インク滴の吐出速度が互いに同じになるように、駆動電位を調整した。
【0039】
駆動信号に含まれるパルスの幅は、Acoustic Length(AL)と等しい。ALは、個別流路12Bにおける圧力波の片道伝搬時間である。2000個の解析モデルは、個別流路12Bの構成が互いに異なるため、ALが互いに異なる。したがって、解析モデル毎にパルス幅を異ならせた。
【0040】
図5から、固有周波数Frが高いほど、インク滴の量Vが少ないことが分かる。また、ノズル12Nの径Dが小さいほど、インク滴の量Vが少ないことが分かる。
【0041】
本実施形態では、駆動周波数を高めるため、固有周波数Frを120~160kHzとする。また、記録解像度を1200dpi以上とする。当該記録解像度において良質な画像を記録するには、ノズル12Nから2pl以上のインク滴を吐出させる必要がある。
【0042】
図5において、「D=0.0343×Fr+6.6979」の直線よりも上側は、インク滴の量Vが2pl以上の範囲である。したがって、
図5に破線で囲まれた領域Aとその近傍が、本実施形態に該当する。即ち、本実施形態では、ノズル12Nの径D[μm]と固有周波数Fr[kHz]とがD≧0.0343×Fr+6.6979を満たすようなヘッド1の構成とする。
【0043】
ただし、ノズル12Nから吐出されるインク滴の量Vが過剰になると、ノズル12Nへのインクの供給が不安定になり得る。また、用紙9上においてインク滴の濡れ拡がりが大きくなり、画質が悪化し得る。そこで、本願発明者は、量Vの上限を4pl前後と推定し、2000個の解析モデルから3.5~4.5plのインク滴を吐出する解析モデルを抽出した。
【0044】
図6は、2000個の解析モデルから3.5~4.5plのインク滴を吐出する解析モデルを抽出し、各解析モデルにおけるノズル12Nの径Dと固有周波数Frとの関係をプロットしたものである。
図6から、「D=0.0453×Fr+10.261」の近似直線が得られた。当該結果から、本実施形態では、ノズル12Nの径D[μm]と固有周波数Fr[kHz]とがD≦0.0453×Fr+10.261を満たすようなヘッド1の構成とする。
【0045】
さらに、本実施形態では、ノズル12Nからのインク滴の吐出初速度を7m/s以上とする。吐出初速度とは、ノズル12Nのメニスカスがノズル12Nから分離して飛翔するときの速度である。吐出初速度を7m/s以上とするため、制御部5がドライバIC14に生成させる駆動信号の波形及び駆動電位を調整する。
【0046】
特に用紙9の搬送速度が70m/分以上の場合において、用紙9の搬送に伴って生じる気流の影響による着弾位置のズレを防ぐには、吐出初速度が7m/s以上であることが好ましい。着弾位置とは、用紙9においてインク滴が着弾する位置である。
【0047】
<本実施形態の効果>
以上に述べたように、本実施形態によれば、固有周波数Frが120~160kHzであることで、駆動周波数を高めることができる。さらに、1200dpi以上と高い記録解像度である。この場合において、ノズル12Nの径D[μm]と固有周波数Fr[kHz]とがD≧0.0343×Fr+6.6979を満たすことで、上述の解析結果のとおり、記録に十分な量Vのインク滴を吐出させることができる。ここで、「記録に十分な量」とは、単位面積当りの液滴の密度である吐出デューティを100%にすることができる量を意味する。
【0048】
なお、固有周波数Frは、圧電素子13Xの剛性と関連する。圧電素子13Xの剛性が小さいと、固有周波数Frは低い。固有周波数Frが120kHz未満の場合、圧電素子13Xの剛性が小さいことで、ALが長くなり、駆動周波数を高めることができない。
【0049】
一方、固有周波数Frが160kHzを超える場合、圧電素子13Xの剛性が大きいことで、圧電素子13Xの変形に過大なエネルギーが必要となり得る。ひいては、圧電素子13Xの発熱量が大きく、圧電素子13Xの熱がインクに伝わることで、吐出に悪影響が出得る。さらに、ドライバIC14が熱により故障し得る。
【0050】
本実施形態によれば、固有周波数Frが120~160kHzであることで、上記のような圧電素子13Xの発熱を防止しつつ、駆動周波数を高めることができる。
【0051】
ノズル12Nの径Dと固有周波数Fr[kHz]とがD>0.0453×Fr+10.261を満たす場合、ノズル12Nから吐出されるインク滴の量Vが過剰になる。量Vが過剰になると、ノズル12Nへのインクの供給が不安定になり得る。また、用紙9上においてインク滴の濡れ拡がりが大きくなり、画質が悪化し得る。この点、本実施形態では、ノズル12Nの径Dと固有周波数Fr[kHz]とがD≦0.0453×Fr+10.261を満たすことで、ノズル12Nから吐出されるインク滴の量Vが過剰にならない。これにより、ノズル12Nへ安定してインクを供給できると共に、濡れ拡がりによる画質の悪化を防止できる。
【0052】
ノズル12Nは、
図3に示すように、一列300dpi以上のピッチPで配置されている。これにより、ヘッド1を小さくでき、かつ、高画質が得られる。
【0053】
圧電素子13Xは、薄膜圧電素子である。薄膜圧電素子は、厚みが薄いため変形し易く、圧力室12Pが小さくても十分に変形できる。したがって、圧電素子13Xが薄膜圧電素子である場合、圧力室12Pを小さくすることで固有周波数Frを高めて固有周波数Frが120~160kHzという要件を満たすことと、圧電素子13Xを十分に変形させることとを両立できる。
【0054】
薄膜圧電素子の厚みは、1.5μm以下である。この場合、上記のような両立をより確実に実現できる。
【0055】
圧力室12Pの幅Wは、70μm以下である。この場合、圧力室12Pのサイズが小さいことで、固有周波数Frが高まり、固有周波数Frが120~160kHzという要件をより確実に満たすことができる。
【0056】
圧力室12Pの長さLは、550μm以下である。この場合、圧力室12Pのサイズが小さいことで、固有周波数Frが高まり、固有周波数Frが120~160kHzという要件をより確実に満たすことができる。
【0057】
ノズル12Nからのインク滴の吐出初速度が7m/s未満の場合、用紙9の搬送に伴って生じる気流の影響で、インク滴の飛翔方向が所望の方向からズレ易く、着弾位置が所望の位置からズレ易い。この点、本実施形態では、吐出初速度が7m/s以上であることで、着弾位置が安定する。
【0058】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0059】
上述の実施形態において、圧電素子を構成する電極は、個別電極及び共通電極を含む2層構成であるが、3層構成であってもよい。例えば、3層構成とは、高電位及び低電位が選択的に付与される駆動電極と、高電位に保持される高電位電極と、低電位に保持される低電位電極とを含む構成である。
【0060】
ノズルの開口は、上述の実施形態では略円形状であるが、矩形状であってもよい。ノズルの開口が矩形状の場合、当該矩形の面積と同じ面積の円の径をノズルの径Dとする。
【0061】
ヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式であってもよい。
【0062】
吐出対象は、用紙に限定されない。例えば、吐出対象は、布、基板又はプラスチックであってもよい。
【0063】
ノズルから吐出される液滴は、インク滴に限定されない。例えば、液滴は、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液の液滴であってもよい。
【0064】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機及び複合機にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液滴吐出装置にも適用可能である。例えば、本発明は、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液滴吐出装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 ヘッド
5 制御部
12 流路部材
12B 個別流路(流路)
12N ノズル
12P 圧力室
13X 圧電素子
100 プリンタ(液滴吐出装置)