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特開2024-9452活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009452
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/26 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
C08F220/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110982
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】金谷 亜希
(72)【発明者】
【氏名】犬伏 良祐
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL66R
4J100AL66S
4J100AL74P
4J100AL74Q
4J100AL74R
4J100BA02P
4J100BA02R
4J100BA03R
4J100BA03S
4J100BA15P
4J100BA15Q
4J100BC45R
4J100BC45S
4J100BC53R
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA22
4J100JA01
4J100JA03
4J100JA07
4J100JA38
4J100JA44
4J100JA52
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】高い耐熱性を有し、優れた密着性や機械特性を付与できる、硬化性組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】下記式(1)で表される官能基を有する単量体を2種以上含む硬化性組成物である。
【化1】
(式(1)において、nは1以上の数であり、Zはn価の有機基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を2種以上含む硬化性組成物。
【化1】
(式(1)において、nは1以上の数であり、Zはn価の有機基を表す。)
【請求項2】
下記(i)または(ii)の少なくとも1つを満たす、請求項1に記載の硬化性組成物。
(i)上記一般式(1)において、nが1であり、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃未満である化合物を1種以上と、上記一般式(1)において、nが1であり、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上である化合物を1種以上とを含む。
(ii)上記一般式(1)において、nが1である化合物を1種以上と、上記一般式(1)において、nが2以上である化合物を1種以上とを含む。
【請求項3】
微粒子を含む請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記微粒子の含有量が、上記一般式(1)で表される化合物の合計100質量部に対し、1質量部以上、9900質量部以下である請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の硬化性組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の用途において高性能化が求められる中、硬化性組成物は、硬化後の耐熱性が低いという問題が存在している。そのような問題に対して、耐熱性などの機能を高めるために、硬化性組成物に含まれる単量体の組み合わせや添加剤などの組成について検討されていることが知られている。例えば、特許文献1には、1分子内に複数のエチレン性不飽和基を含むエポキシアクリレート化合物及びエポキシメタクリレート化合物の少なくとも1種に、光重合性モノマー、光重合開始剤、絶縁性無機粒子を含む光硬化性ペーストが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-37986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、1分子内に複数のエチレン性不飽和基を含む(メタ)アクリレートと無機粒子とを組み合わせた硬化性組成物でも、硬化物の耐熱性を改善する余地はあった。よって、本発明は、高い耐熱性を有し、優れた密着性や機械特性を発現することができる、硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するために種々検討をおこない、本発明に想到した。すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される化合物を2種以上含む硬化性組成物である。
【0006】
【化1】
(式(1)において、nは1以上の数であり、Zはn価の有機基を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本開示の硬化性組成物は、耐熱性に優れ、高い密着性を付与することができる。
よって、耐熱性や密着性を活用することによって、例えば、各種コーティング、塗料、インク、量子ドットインク、粘着剤、接着剤、電材用接着剤、プリプレグ、増粘剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光学フィルム、レジスト、電子情報材料、絶縁材、断熱材、導電接着剤、熱伝導材料、圧電材料、制振材、遮音材、防音剤、脱吸湿剤、アンチブロッキング剤、空孔形成剤、吸油剤、抗菌剤、歯科材料、セラミック成形用材料、細胞培養材料、3Dプリンティング用材料、建築用部材などの各種分野への応用が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0009】
[本開示の硬化性組成物]
<下記式(1)で表される化合物>
本開示の硬化性組成物には、下記式(1)で表される官能基(α-アリルオキシメチルアクリロイル基(以下、AMA基という場合がある))を有する化合物を含む。
【0010】
【化2】
(式(1)において、nは1以上の数であり、Zはn価の有機基を表す。)
【0011】
すなわち、同一分子内に、アクリレート中の二重結合を構成するα位の炭素原子に、アリルオキシメチル基が結合した構造を有する。
【0012】
(n=1)
上記式(1)において、Zはn価の有機基を表す。nが1である場合は、Zは1価の有機基を表すが、-OR1(R1は水素原子または炭素数1~40の有機基。)で表される基であることが好ましい。
【0013】
本開示の有機基に含まれる炭素数は、1以上であることが好ましい。一方、30以下であることが好ましく、より好ましくは25以下であり、さらに好ましくは20以下である。
【0014】
本開示の有機基としては、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また、環状であってもよい。
【0015】
本開示の有機基は、炭化水素骨格を有することが好ましい。炭化水素骨格としては、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、環状の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれであってもよい。これらの基は、置換基を有していてもよく、例えば、芳香族炭化水素基は、芳香環を有する基であって、脂肪族部分を有していてもよく、脂環式炭化水素基は、環状の脂肪族炭化水素部分を有する基であって、直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素部分を有していてもよい。本開示の炭化水素基には、その他置換基を有していてもよい。その他置換基としては特に限定されないが、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、エーテル基が挙げられる。
【0016】
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、トリアコンチル基、テトラコンチル基等が挙げられる。
【0017】
分岐状の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、イソアミル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、tert-アミル基、1,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1-メチルペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、2-エチル-2-メチルプロピル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、イソオクチル基、1-エチルヘキシル基、1-プロピルペンチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、等が挙げられる。
【0018】
環状の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。その他官能基を有する、テトラヒドロフルフリル基等も挙げられる。
【0019】
芳香族の炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、2,6-ジエチルフェニル基、2-メチル-6-エチルフェニル基などが挙げられる。
【0020】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、2-アリルオキシメチルアクリル酸メチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸エチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸n-プロピル、2-アリルオキシメチルアクリル酸イソプロピル、2-アリルオキシメチルアクリル酸n-ブチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸sec-ブチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸tert-ブチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸n-アミル、2-アリルオキシメチルアクリル酸sec-アミル、2-アリルオキシメチルアクリル酸tert-アミル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ネオペンチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸n-ヘキシル、2-アリルオキシメチルアクリル酸sec-ヘキシル、2-アリルオキシメチルアクリル酸n-ヘプチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸n-オクチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸sec-オクチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸tert-オクチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸2-エチルヘキシル、2-アリルオキシメチルアクリル酸カプリル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ノニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸デシル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ウンデシル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ラウリル、2-アリルオキシメチルアクリル酸トリデシル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ミリスチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ペンタデシル、2-アリルオキシメチルアクリル酸セチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ヘプタデシル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ノナデシル、2-アリルオキシメチルアクリル酸エイコシル、2-アリルオキシメチルアクリル酸セリル、2-アリルオキシメチルアクリル酸メリシル、2-アリルオキシメチルアクリル酸クロチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸1,1-ジメチル-2-プロペニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸2-メチルブテニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸3-メチル-2-ブテニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸3-メチル-3-ブテニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸2-メチル-3-ブテニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸オレイル、2-アリルオキシメチルアクリル酸リノール、2-アリルオキシメチルアクリル酸リノレン、2-アリルオキシメチルアクリル酸シクロペンチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸シクロペンチルメチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシル、2-アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルメチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸4-メチルシクロヘキシル、2-アリルオキシメチルアクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、2-アリルオキシメチルアクリル酸トリシクロデカニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸イソボルニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸アダマンチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンタニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンテニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸フェニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸メチルフェニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ジメチルフェニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸トリメチルフェニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸4-tert-ブチルフェニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ベンジル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ジフェニルメチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ジフェニルエチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸トリフェニルメチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸シンナミル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ナフチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸アントラニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトキシエチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸メトキシエトシキエトキシエチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸3-メトキシブチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸エトキシエトキシエチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸シクロペントキシエチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルオキシエチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸シクロペントキシエトキシエチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸シクロヘキシルオキシエトキシエチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸フェノキシエトキシエチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸グリシジル、2-アリルオキシメチルアクリル酸β-メチルグリシジル、2-アリルオキシメチルアクリル酸β-エチルグリシジル、2-アリルオキシメチルアクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸2-オキセタンメチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸3-メチル-3-オキセタンメチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸3-エチル-3-オキセタンメチル、2-アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフラニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリル、2-アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロピラニル、ジオキサゾラニル、2-アリルオキシメチルアクリル酸ジオキサニル、等が挙げられる。
【0021】
(nが2以上)
上記式(1)において、nが2以上である場合、Zはn価の連結基を表す。このような、nが2以上の数である形態もまた、好適な実施形態の一つである。
【0022】
上記式(1)において、nが2以上であれば特に制限されないが、合成の容易さや保存安定性の点で、2~100であることが好ましく、より好ましくは2~50である。上記式(1)で表される化合物が、反応性希釈剤のような低粘度を要する用途に用いられる場合には、更に好ましくは2~10、最も好ましくは2~6である。
【0023】
上記式(1)において、nが2以上である場合、Zは、結合しているカルボニル基と共有結合を2個以上形成できる連結基、すなわち共有結合性の2価以上の連結基であれば特に限定されず、ただ1つの原子を介して結合する2価以上の連結基でもよく、2つ以上の原子を介して結合する2価以上の連結基でもよいが、合成の容易さ、化学的安定性の点で、2つ以上の原子を介して結合する2価以上の連結基であることが好ましい。
【0024】
上記Zが、2つ以上の原子を介して結合する2価以上の連結基である場合、Zとしては、低分子構造でもよく高分子構造でもよい。低分子構造や後述する低分子骨格との用語は、一般に単量体単位による繰り返し単位を有さない構造や骨格を意味し、その逆に高分子構造や後述する高分子骨格との用語は、一般に単量体単位による繰り返し単位を有する構造や骨格を意味する。高分子化合物とは、一般的な技術用語としては分子量1000以上の化合物、重合体を意味するが、「低分子」、「高分子」との用語は、本発明においてはそのような分子量によって区別され、限定されるものではない。
【0025】
上記Zとして、2個以上の水酸基を有する化合物から、2個以上の水素原子を除去した構造の連結基が例示される。好ましくは、2個以上の水酸基を有する化合物から、水酸基を構成する水素原子を2個以上除去した構造の連結基が例示される。2個以上の水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、キシリレングリコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレンなどの低分子2価アルコール;グリセロール、トリメチロールプロパン、イソシアヌル酸のエチレンオキシド付加物などの低分子3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパンなどの低分子4価アルコール;ジペンタエリスリトールなどの低分子6価アルコール;フェノールノボラック樹脂、などの多価フェノール化合物;ポリビニルアルコール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル共重合体などの水酸基含有重合体;上記低分子多価アルコールにエチレンオキシド、プロピレンオキシドブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを1分子以上開環付加させた化合物;上記低分子多価アルコールにε-カプロラクトンなどの環状エステル化合物1分子以上開環付加させた化合物;ブドウ糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、ラクトース、麦芽糖、セロビオース、デンプン、セルロース等の糖類;などが挙げられる。
上記Zは、X(-O-)(ただしXは、Zからn個の酸素原子を除外した残基を表す)で表される構造であっても良い。
【0026】
上記一般式(1)で表され、nが2以上である化合物は、多官能性化合物と単官能α-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート等とを反応させることによって、製造することができる。そのような方法としては、例えば多価水酸基含有化合物とα-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートとをエステル交換する方法、多価水酸基含有化合物とα-(不飽和アルコキシアルキル)アクリル酸とを脱水縮合する方法、多価水酸基含有化合物とα-アリルオキシメチルアクリル酸グリジシル等のエポキシ基を有するα-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートとを付加する方法、多価カルボン酸含有化合物とα-アリルオキシメチルアクリル酸ヒドロキシエチル等の水酸基を有するα-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートとを脱水縮合する方法、多価カルボン酸含有化合物とエポキシ基を有するα-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートとを付加する方法、多官能エポキシ化合物とα-(不飽和アルコキシアルキル)アクリル酸とを付加する方法、多価イソシアナート化合物に水酸基を有するα-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートを反応させる方法、多価イソシアナート化合物にα-(不飽和アルコキシアルキル)アクリル酸とを付加エステル化する方法、多価無水カルボン酸化合物に水酸基を有するα-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートを反応させる方法、が挙げられる。好ましくは多価アルコール化合物とα-(不飽和アルコキシアルキル)アクリレートとをエステル交換する方法が用いられる。
【0027】
本開示の硬化性組成物は、nが1以上の数である上記式(1)で表される化合物を2種以上含んでいればよい。
【0028】
本開示の硬化性組成物は、上記式(1)において、nが1である化合物を2種以上含んでいてもよく、nが1である化合物を1種以上かつnが2以上の化合物を1種以上含んでいてもよく、nが2以上の化合物を2種以上含んでいてもよい。
【0029】
本開示の硬化性組成物は、少なくとも上記式(1)において、nが1である化合物を1種以上含むことがより好ましい。
【0030】
本開示の硬化性組成物は、硬化物の耐熱性の観点から、以下の(i)または(ii)を満たすことが好ましい。
(i)上記一般式(1)において、nが1であり、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃未満である化合物を1種以上と、上記一般式(1)において、nが1であり、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上である化合物を1種以上とを含む。
(ii)上記一般式(1)において、nが1である化合物を1種以上と、上記一般式(1)において、nが2以上である化合物を1種以上とを含む。
【0031】
上記(i)において、nが1であり、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上である化合物として、ホモポリマーのガラス転移温度は51℃以上であることが好ましく、より好ましくは52℃以上であり、さらに好ましくは53℃以上である。一方、100℃以下であることが好ましく、より好ましくは95℃以下であり、さらに好ましくは90℃以下である。
【0032】
上記(i)において、nが1であり、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃未満である化合物として、ホモポリマーのガラス転移温度は49℃以下であることが好ましく、より好ましくは48℃以下であり、さらに好ましくは47℃以下である。一方、-100℃以上であること好ましく、より好ましくは-95℃以上であり、さらに好ましくは-90℃以上である。
【0033】
上記(ii)において、nが1である化合物として好ましくは、Zは炭素数が1以上である有機基であることが好ましい。一方、Zが炭素数が30以下である有機基であることが好ましく、より好ましくは炭素数が20以下である有機基である。
【0034】
上記(ii)において、nが1である化合物として、ホモポリマーのガラス転移温度が-100℃以上であることが好ましく、より好ましくは-95℃以上であり、さらに好ましくは-90℃以上である。一方、100℃以下であることが好ましく、より好ましくは95℃以下であり、さらに好ましくは90℃以下である。
【0035】
上記(ii)において、nが2である化合物として好ましくは、Zは炭素数が2以上である有機基であることが好ましく、より好ましくは、炭素数が3以上である有機基である。一方、Zは炭素数が30以下である有機基であることが好ましく、より好ましくは炭素数が20以下である有機基である。
【0036】
本開示の硬化性組成物に含まれる、上記式(1)に記載の化合物を製造する方法は、特開2011-74068号公報の[0057]~[0084]の記載を参照できる。
【0037】
本開示の硬化性組成物は、上記一般式(1)で表される化合物を例えば、0.1質量%以上、100質量%以下含むことが好ましく、1質量%以上、99質量%以下含むことがより好ましく、5質量%以上、98質量%以下含むことがさらに好ましい。
【0038】
<その他成分>
本開示の硬化性組成物は、上記式(1)で表される化合物以外の成分を含んでいてもよい。
(微粒子)
本開示の硬化性組成物は、無機粒子、有機粒子、有機無機複合粒子などの微粒子を含むことが好ましく、無機粒子がさらに好ましい。本開示の微粒子の体積平均粒子径は、1000μm以下であることが好ましく、より好ましくは500μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下である。一方、0nm以上であることが好ましく、より好ましくは1nmであり、さらに好ましくは5nm以上である。
【0039】
本開示の無機粒子の種類は特に限定されない。例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素系粒子;シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄などの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ニオブ酸リチウム、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウムなどの複合金属酸化物;タルク、マイカ、ベントナイトなどの粘土鉱物;窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの窒化物;ホウ酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩等;銅粒子、アルミニウム粒子、銀粒子、金粒子、シリコン粒子等の金属粒子;シリカフューム、フラーアッシュ、高炉ダスト、転炉ダスト、高炉スラグ(の粉砕物)等の産業上発生する粒子;等を挙げることができる。好ましくは、金属酸化物、複合金属酸化物、金属粒子、窒化物であり、より好ましくは、金属酸化物、複合金属酸化物である。本開示の硬化性組成物には、無機粒子を1種のみ含んでいても良く、2種以上含んでいてもよい。
【0040】
本開示の無機粒子は、上記一般式(1)で表される化合物の合計100質量に対し、1質量部以上含むことが好ましく、より好ましくは5質量部以上であり、さらに好ましくは、10質量部以上である。一方、9900質量部以下含むことが好ましく、より好ましくは5000質量部以下であり、さらに好ましくは2500質量部以下である。本開示の硬化物の耐熱性や機械特性が高くなる傾向にある。
【0041】
上記微粒子の形状は特に制限はない。球状、多面体状、アスペクト比の大きい形状、中空粒子、突起を有する粒子、ボイドを有する粒子等が例示される。微粒子は、特に制限されないが、合成的手法により所望の粒子径に調整した微粒子であっても良く、粉砕や成形等その他の手法によって所望の粒子径に調整した微粒子であってもよい。
【0042】
本開示の無機粒子を含む上記一般式(1)で表される化合物(以下、無機粒子分散体という場合もある)は、その他単量体、例えば、1分子内に複数のエチレン性不飽和基を含むアクリレートやメタクリレートに対して、低い粘度を維持する傾向にある。そのため、各種用途への展開が期待される。
【0043】
本開示の無機粒子分散体には、上記一般式(1)で表される化合物は1種以上であってもよく、2種以上(本開示の硬化性組成物)含んでいてもよい。
【0044】
本開示の無機粒子分散体に含まれる上記一般式(1)で表される化合物としては、nが2~10の数である化合物であることが好ましく、より好ましくはnが2~8であり、さらに好ましくは、2~6である。なお、nは整数であることが好ましい。
【0045】
本開示の無機粒子分散体に上記一般式(1)で表される化合物としては、Zの炭素数が、2以上である有機基であることが好ましく、より好ましくは、炭素数が3以上である有機基である。一方、Zは炭素数が30以下である有機基であることが好ましく、より好ましくは炭素数が20以下である有機基である。
【0046】
本開示の無機粒子分散体に含まれる上記一般式(1)で表される化合物として、具体的には上記した化合物が挙げられる。よりさらに好ましくは、多価水酸基含有化合物が、トリプロピレングリコールと、α-(不飽和アルコキシアルキル)アクリル酸と組み合わせてエステルが構成された構造を有する化合物(以下、AOMA―TPGという場合もある)が挙げられる。なお、エステル構造を有していれば、特に原料として、多価水酸基含有化合物とα-(不飽和アルコキシアルキル)アクリル酸を用いることを限定するものではない。
【0047】
本開示の無機粒子分散体に含まれる、無機粒子の含有量は、無機粒子分散体の総量に対して、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは、3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。
【0048】
本開示の無機粒子分散体の粘度は、好ましくは、1mPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上であり、さらに好ましくは3mPa・s以上である。一方、2500mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2000mPa・s以下であり、さらに好ましくは1500mPa・s以下である。
【0049】
本開示の無機粒子分散体は、付与又は向上させたい機能に応じて、無機粒子と上記一般式(1)で表される化合物を適宜選択することで、例えば、各種コーティング、塗料、インク、量子ドットインク、粘着剤、接着剤、電材用接着剤、プリプレグ、増粘剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光学フィルム、レジスト、電子情報材料、絶縁材、断熱材、導電接着剤、熱伝導材料、圧電材料、制振材、遮音材、防音剤、脱吸湿剤、アンチブロッキング剤、空孔形成剤、吸油剤、抗菌剤、歯科材料、セラミック成形用材料、細胞培養材料、3Dプリンティング用材料、建築用部材などの各種分野への応用が可能となる。
【0050】
(その他単量体)
本開示の硬化性組成物は、上記一般式(1)で表される化合物以外に、任意の単量体を含んでも良い(以下、その他の単量体とも言う)。
【0051】
本開示の硬化性組成物に含まれるその他単量体としては、エチレン性不飽和結合を1つ有する単官能単量体や2以上有する多官能単量体が挙げられる。
【0052】
単官能単量体としては、例えば、(メタ)アクリレート;スチレン、4-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸等のカルボキシ基含有単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体が挙げられる。
【0053】
(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
水酸基含有単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体;エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどのオキソ基含有単量体;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、等のフッ素原子含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有単量体、等が挙げられる。
【0055】
多官能単量体としては、ジビニルベンゼン;1,3-ブタジエン;トリビニルベンゼン;ジビニルナフタレン;トリビニルシクロヘキサン;ジビニルエーテル;ジアリルエーテル;多価(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
多価(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0057】
本開示のその他単量体は、上記一般式(1)で表される化合物の合計100質量に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であり、さらに好ましくは、1質量部以上である。一方、1500質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1000質量部以下であり、さらに好ましくは800質量部以下である。
【0058】
(その他添加剤)
ラジカル重合開始剤、界面活性剤、硬化剤、硬化促進剤、着色剤、内部離型剤、カップリング剤、反応性希釈剤、可塑剤、安定化剤、難燃助剤、架橋剤、低収縮剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、揺変化剤、増粘剤等が挙げられる。
【0059】
本開示の硬化性組成物は、任意であるが、ラジカル重合開始剤を含んでも良い。ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、光ラジカル重合開始剤であってもよく、熱ラジカル重合開始剤であってもよく、両者を併用してもよい。
【0060】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等のアセトフェノン化合物;2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン等のアントラキノン化合物;2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、[3-(3,4-ジメチル-9-オキソチオキサンテン-2-イル)オキシ-2-ヒドロキシプロピル]-トリメチルアザニウムクロリド等のチオキサントン化合物;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール化合物;ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、4,4’-ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、等のホスフィンオキシド化合物等が挙げられる。
【0061】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、4-(1-t-ブチルジオキシ-1-メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4-(1-t-ブチルジオキシ-1-メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラキス(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オンや2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1;アシルホスフィンオキサイド類およびキサントン類等が挙げられる。
【0062】
本開示の硬化性組成物は、ラジカル重合開始剤を、上記一般式(1)の化合物100質量部に対し、0.01質量部以上、30質量部以下含むことが好ましく、0.05質量部以上、20質量部以下含むことがより好ましく、0.1質量部以上、15質量部以下含むことがさらに好ましい。上記範囲でラジカル重合開始剤を含有することにより、本開示の硬化性組成物の硬化性が向上する傾向にある。
【0063】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、p-メトキシフェノール、6-t-ブチル-2,4-キシレノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のフェノール系禁止剤、有機酸銅塩やフェノチアジンを挙げることができる。これらの中では、低着色、重合防止能力の点でフェノール系禁止剤が好ましく、入手性、経済性から、中でもp-メトキシフェノール、6-t-ブチル-2,4-キシレノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノールが好ましい。
【0064】
重合禁止剤は、1種であってもよく、2種以上混合して用いても良い。
本開示の硬化性組成物は、重合禁止剤を、上記一般式(1)の化合物100質量部に対し、0.001質量部以上、20質量部以下含むことが好ましく、0.01質量部以上、10質量部以下含むことがより好ましく、0.05質量部以上、5質量部以下含むことがさらに好ましい。上記範囲で重合禁止剤を含有することにより、本開示の硬化性組成物の保存安定性が向上する傾向にある。
【0065】
本開示の硬化性組成物の粘度は、好ましくは、1mPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上であり、さらに好ましくは3mPa・s以上である。一方、2500mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2000mPa・s以下であり、さらに好ましくは1500mPa・s以下である。
【0066】
<本開示の硬化性組成物の好ましい形態の例示>
[1]下記一般式(1)で表される化合物を2種以上含む硬化性組成物。
【0067】
【化3】
(式(1)において、nは1以上の数であり、Zはn価の有機基を表す。)
[2]下記(i)または(ii)の少なくとも1つを満たす、前記[1]に記載の硬化性組成物。
(i)上記一般式(1)において、nが1であり、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃未満である化合物を1種以上と、上記一般式(1)において、nが1であり、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上である化合物を1種以上とを含む。
(ii)上記一般式(1)において、nが1である化合物を1種以上と、上記一般式(1)において、nが2以上である化合物を1種以上とを含む。
[3]微粒子を含む前記[1]または[2]に記載の硬化性組成物。
[4]微粒子の含有量が、上記一般式(1)で表される化合物の合計100質量部に対し、1質量部以上、9900質量部以下である[3]に記載の硬化性組成物。
[5]前記[1]または[2]に記載の硬化性組成物の硬化物。
【0068】
[本開示の硬化物]
本発明には、本開示の硬化性組成物の硬化物も含まれる。上記硬化物からなる物品は、各種コーティング、塗料、インク、量子ドットインク、粘着剤、接着剤、電材用接着剤、プリプレグ、増粘剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光学フィルム、レジスト、電子情報材料、絶縁材、断熱材、導電接着剤、熱伝導材料、圧電材料、制振材、遮音材、防音剤、脱吸湿剤、アンチブロッキング剤、空孔形成剤、吸油剤、抗菌剤、歯科材料、セラミック成形用材料、細胞培養材料、3Dプリンティング用材料、建築用部材などの用途に好適に用いられる。
【0069】
本開示の硬化性組成物は硬化性が良好、すなわち小さい照射エネルギーで硬化でき、また得られる硬化物は熱安定性にも優れている。
【0070】
本開示の硬化物は、実施例に示した要領で熱重量分析(TG)をおこなった際の5%質量減少温度が、150℃以上であることが好ましく、より好ましくは、170℃以上であり、さらに好ましくは200℃以上である。
本開示の硬化物の-20℃における貯蔵弾性率は、1.0×10Pa以上であることが好ましく、より好ましくは5.0×10Pa以上であり、さらに好ましくは1.0×10Pa以上である。一方、1.0×1010Pa以下であることが好ましく、より好ましくは5.0×10Pa以下であり、さらに好ましくは2.5×10Pa以下である。
【0071】
本開示の硬化物の60℃における貯蔵弾性率は、1.0×10Pa以上であることが好ましく、より好ましくは5.0×10Pa以上であり、さらに好ましくは1.0×10Pa以上である。一方、1.0×10Pa以下であることが好ましく、より好ましくは5.0×10Pa以下であり、さらに好ましくは1.0×10Pa以下である。
ここで、貯蔵弾性率が大きいほど、硬化物の硬さが優れた傾向にある。本開示の貯蔵弾性率は、実施例に示した要領で、測定することができる。
【0072】
[本開示の硬化物の製造方法]
本開示の硬化性組成物を硬化させる方法は特に限定されないが、例えば、加熱や電磁波や電子線などの活性エネルギー線(以下、照射エネルギーという場合もある)の照射により硬化させることができる。本開示の硬化させる方法は、加熱による硬化方法及び/又は活性エネルギー線の照射による硬化方法と併用してもよい。本開示の活性エネルギー線としては、特に限定されないが、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線などの電磁波や、電子線、中性子線、陽子線などの粒子線などが挙げられる。これらの中では、エネルギーの強さ、エネルギー線の発生装置などの点から、ガンマ線、X線、紫外線、可視光線、電子線が好ましく、紫外線、可視光線、電子線がより好ましく、紫外線が最も好ましい。
【0073】
本開示の重合開始剤の添加量は、本開示の硬化性組成物の総量に対して、0.01~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05~20質量%であり、さらに好ましくは0.1~15質量%である。
【実施例0074】
以下に実施例を掲げて本開示を更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。本実施例において、各種物性の測定は以下の方法により行った。
【0075】
<粘度測定方法>
硬化性樹脂組成物の粘度について、コーンプレート型粘度計(TV-20L、東機産業社製)を用いて25℃の温度条件下で測定した。
【0076】
<熱分解温度>
(評価サンプル)
硬化性樹脂組成物をアルミパンに入れ、下記条件で紫外線を照射し、硬化物の評価サンプルを得た。
UV照射装置:HCT400B-28HB(セン特殊光源株式社製)
雰囲気:大気下
積算光量:15J/cm2
(評価方法)
硬化物の熱分解温度について、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA2010SA、ブルカー社製)を用いて下記条件で5%重量減少温度を測定した。
測定温度範囲:室温~500℃
昇温速度:10℃/min
雰囲気及び流量:窒素-100ml/min
【0077】
<薄膜硬化性・密着性の評価>
(評価サンプル)
硬化性組成物をバーコーター#4を用いて、銅板(標準試験板)に塗布し、下記条件で紫外線照射を行い硬化させた。
UV照射装置:HCT400B-28HB(セン特殊光源株式社製)
雰囲気:大気下
積算光量:15J/cm2
(評価方法)
得られた硬化膜の薄膜硬化性を評価した。硬化レベルの分類は以下とした。
〇:べたつきなし
△:ややべたつきあり
×:べたつきあり
得られた硬化膜の密着性について、JIS K 5600-5-6(クロスカット法)に従い、0~5の6段階に評価した。密着性レベルの分類についての一覧を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
<ガラス転移温度・貯蔵弾性率>
(評価サンプル)
硬化性樹脂組成物を型枠に流し込み、下記条件で紫外線を照射し、硬化物の評価サンプル(厚み1.5mm×幅4.0mm)を得た。
UV照射装置:365nmLED
雰囲気:大気下
積算光量:6J/cm2
(評価方法)
得られた硬化物の動的粘弾性を下記条件にて測定し、各温度に対する貯蔵弾性率、損失弾性率を測定した。損失弾性率を貯蔵弾性率で除することによって得られる値(tanδ)が極大になるときの温度をガラス転移温度とした。
装置:RSA-G2(TA instruments社製)
測定モード:引っ張り
周波数:1Hz
昇温速度:5℃/min
【0080】
<α-アリルオキシメチルアクリル酸エステルの製造>
(製造例1)AOMA-TPGの製造
セパラブルフラスコにスターラーバー、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)2.27g(8mmol)、トリプロピレングリコール38.5g(200mmol)、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル(AOMA)124.9g(800mmol)、重合禁止剤(6-t-ブチル-2,4-キシレノール、東京化成工業株式社製)120mg(AOMAに対して1000ppmとなる量)、重合禁止剤(ポリストップ7300P、伯東株式社製)60mg(AOMAに対して500ppmとなる量)、共沸剤トルエン60.0gを秤量した。混合ガス(N2/O2=92/8(v/v))をバブリングさせつつ、系内を300Torrに減圧しながら、100℃まで昇温した。適宜留分を取り除き、それと同質量のトルエンを新たに系中に添加しながら反応させ、トリプロピレングリコールの転化率が>99%になるまで加熱を続けた。
反応後、混合ガス(N2/O2=92/8(v/v))をバブリングさせながら系内を減圧して、トルエン・残存AOMAを留去後、中圧分取液体クロマトグラフ装置(YFLC AI-580、山善株式会社製)によって目的フラクションを分取し、分取したフラクションに、重合禁止剤(6-t-ブチル-2,4-キシレノール、東京化成工業株式社製)を目的サンプルに対して300ppm、重合禁止剤(亜リン酸トリフェニル、ADEKA社製)を目的サンプルに対して500ppmを添加して溶媒を留去し、目的サンプルAOMA-TPGを単離した。
【0081】
(製造例2)AOMA-THFの製造
製造例1において、トリプロピレングリコールの代わりにテトラヒドロフルフリルアルコールを使用した点以外は、製造例1と同様の方法により、AOMA-THFを得た。
【0082】
(製造例3)AOMA-Lの製造
製造例1において、トリプロピレングリコールの代わりにラウリルアルコールを使用した点以外は、製造例1と同様の方法により、AOMA-Lを得た。
【0083】
(実施例1、比較例1~2)
表2に示される組成にて、モノマー、フィラーを混合し、得られた硬化性樹脂組成物について、粘度を評価した。
【0084】
【表2】
表2より、AMA基を有する組成物含む硬化性樹脂組成物は、類似の連結基を有する化合物や同程度の分子量の構造の化合物と比較して、粘度が低く作業性に優れることが確認された。
【0085】
(実施例2~5、比較例3~4)
表3に示される組成にて、モノマー、オリゴマー、フィラー及び重合開始剤を混合して、硬化性樹脂組成物を調製し、当該サンプルの粘度を測定した。さらに、硬化物の熱分解温度、硬化膜の薄膜硬化性・密着性を評価した。結果を表3に示す。
【0086】
【表3】
表3の結果より、本開示の硬化性組成物は、耐熱性に優れ、高い密着性を付与できることが明らかとなった。
【0087】
(実施例6、比較例5)
表4に示される処方に従って、モノマー及び重合開始剤を混合して、硬化性樹脂組成物を調製し、当該サンプルの粘度を測定した。さらに、硬化物の熱分解温度、ガラス転移温度、貯蔵弾性率を評価した。結果を表4に示す。
【0088】
【表4】
表4の結果から、本開示の硬化性組成物は、耐熱性と弾性率に優れることが明らかとなった。