(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094522
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】吸収性物品個包装体パッケージ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20240703BHJP
B65D 85/07 20170101ALI20240703BHJP
【FI】
A61F13/15 220
B65D85/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211118
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 湧太
(72)【発明者】
【氏名】藁谷 顕吾
(72)【発明者】
【氏名】奥田 富美子
【テーマコード(参考)】
3B200
3E068
【Fターム(参考)】
3B200AA03
3B200BA16
3B200BB20
3B200CA11
3B200DF08
3B200DF09
3E068AA40
3E068AB04
3E068CC22
3E068CE03
3E068DE01
(57)【要約】
【課題】本発明は、包装シートにテカリを抑制すると共に吸収性物品個包装体間の摩擦を低減することが可能な吸収性物品個包装体パッケージに関する。
【解決手段】本発明の一形態に係る個包装体パッケージは、複数の個包装体が収容袋に収容されたものであり、個包装体は、開封端が位置する第1面と、第1面とは反対側の第2面を有し、接合シートの積層数が多い多積層部が形成され、第1面及び第2面の多積層部の表面である多積層領域はそれぞれ、包装シートに粘着剤層が接合されている接合領域と、包装シートに粘着剤層が接合されていない非接合領域を含み、個包装体は、所定の方向に整列した状態で記収容袋に収納され、個包装体の第2面における接合領域と、隣接する個包装体の第1面における非接合領域が接する隣接面が形成され、隣接面の非接合領域における包装シートは、規則的に配置された複数の第1凹部及び第1凸部を有し、第1凸部は中空構造を有する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸収性物品個包装体が収容袋に収容された吸収性物品個包装体パッケージであって、
前記吸収性物品個包装体は、吸収性物品及び包装シートが互いに離間した複数の粘着剤層を介して接合された接合シートの両端部が前記吸収性物品の長手方向に折りたたまれることにより形成され、前記両端部のうち一端である開封端が位置する第1面と、前記第1面とは反対側の第2面を有し、前記接合シートの積層数が最少である少積層部と、前記接合シートの積層数が前記少積層部より多い多積層部が形成され、前記吸収性物品は、表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートの間に配置された吸収体を備え、
前記第1面及び前記第2面はそれぞれ、前記多積層部の表面である多積層領域を有し、前記第1面の前記多積層領域は前記開封端を含み、
前記第1面及び前記第2面の前記多積層領域はそれぞれ、前記包装シートに前記粘着剤層が接合されている接合領域と、前記包装シートに前記粘着剤層が接合されていない非接合領域を含み、
複数の前記吸収性物品個包装体は、所定の方向に整列した状態で前記収容袋に収納され、前記吸収性物品個包装体の前記第2面における前記接合領域と、隣接する前記吸収性物品個包装体の前記第1面における前記非接合領域が接する隣接面が形成され、前記隣接面の前記非接合領域における前記包装シートは、規則的に配置された複数の第1凹部及び第1凸部を有し、前記第1凸部は中空構造を有する
吸収性物品個包装体パッケージ。
【請求項2】
前記表面シートは使用者の肌側に位置し、
前記裏面シートは液不透過性シートであり、
前記粘着剤層は前記裏面シートのうち、前記吸収体とは反対側の面上に形成されている
請求項1に記載の吸収性物品個包装体パッケージ。
【請求項3】
前記吸収性物品個包装体の前記第1面における前記多積層領域において、前記非接合領域の面積は前記接合領域の面積よりも大きい
請求項1又は2に記載の吸収性物品個包装体パッケージ。
【請求項4】
前記吸収性物品個包装体の前記第2面における前記多積層領域において、前記接合領域と前記非接合領域は交互に配置され、前記第2面の前記非接合領域における前記包装シートは、規則的に配置された複数の第2凹部及び第2凸部を有し、前記第2凸部は中空構造を有する
請求項1又は2に記載の吸収性物品個包装体パッケージ。
【請求項5】
前記吸収性物品個包装体の前記第2面における前記多積層領域において、前記第2面の前記接合領域における前記包装シートは、複数の第3凸部を有し、前記第3凸部は前記第1凹部よりも面積が大きい
請求項1又は2に記載の吸収性物品個包装体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の個包装体を収容した吸収性物品個包装体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキンやおりものシートといった吸収性物品は、表面シートと、裏面シートと、それらの間に配置された吸収体とを備え、下着に固定して用いられる。このため、吸収性物品には下着側の表面に固定用の粘着部が設けられたものがある(特許文献1参照)。このような吸収性物品は、1つずつが包装シートによって包装された個包装体が収容袋に複数整列して収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように吸収性部物品の個包装体が収容袋に収容される際、一般に収容袋は複数の個包装体に対して、ジャストサイズとなるように設計されるため、収容袋に収容された個包装体には圧縮力がかかる。この際、個包装体のうち最も厚みが大きい部分において最も強い圧力がかかる。
【0005】
このため、包装シートと、それに接合される粘着剤との接着が過度に進行し、包装シートに接する粘着剤の面積が大きくなる。また、粘着剤に接する領域において、包装シートが圧縮力を緩和するように引き延ばされる。これにより、圧縮前と比較して、薄い包装シートに粘着剤が多く接するため、包装シートにテカリが発生してしまう。
【0006】
また、個包装体のうち最も厚い部分において、最も圧縮力が強くかかり、特に粘着剤に接する領域においては、粘着剤の厚み分だけ圧縮力が強くなる。そのため、粘着剤に接する領域を有する個包装体裏面と、隣接する個包装体表面との接着面積が高くなり、個包装体を収容袋から取り出す際の摩擦力が高くなってしまう。さらには、包装シートが、粘着剤に接する領域において薄くなることで破れやすくなり、その破れた箇所から露出した粘着剤が、隣接する個包装体にくっついてしまい、摩擦力が上がる事で取り出しにくくなってしまうことがあった。
【0007】
本発明は、包装シートにテカリを抑制すると共に個包装体間の摩擦を低減することが可能な吸収性物品個包装体パッケージに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る吸収性物品個包装体パッケージは、複数の吸収性物品個包装体が収容袋に収容された吸収性物品個包装体パッケージである。
前記吸収性物品個包装体は、吸収性物品及び包装シートが互いに離間した複数の粘着剤層を介して接合された接合シートの両端部が前記吸収性物品の長手方向に折りたたまれることにより形成され、前記両端部のうち一端である開封端が位置する第1面と、前記第1面とは反対側の第2面を有し、前記接合シートの積層数が最少である少積層部と、前記接合シートの積層数が前記少積層部より多い多積層部が形成され、前記吸収性物品は、表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートの間に配置された吸収体を備える。
前記第1面及び前記第2面はそれぞれ、前記多積層部の表面である多積層領域を有し、前記第1面の前記多積層領域は前記開封端を含む。
前記第1面及び前記第2面の前記多積層領域はそれぞれ、前記包装シートに前記粘着剤層が接合されている接合領域と、前記包装シートに前記粘着剤層が接合されていない非接合領域を含む。
複数の前記吸収性物品個包装体は、所定の方向に整列した状態で前記収容袋に収納され、前記吸収性物品個包装体の前記第2面における前記接合領域と、隣接する前記吸収性物品個包装体の前記第1面における前記非接合領域が接する隣接面が形成され、前記隣接面の前記非接合領域における前記包装シートは、規則的に配置された複数の第1凹部及び第1凸部を有し、前記第1凸部は中空構造を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吸収性物品個包装体パッケージによれば、吸収性物品個包装体が収容袋に収容されると多積層領域に圧縮力が印加されるが、第1面の非接合領域に第1凹部及び第1凸部を設けることにより圧縮力を緩和し、包装シートにおけるテカリの抑制及び吸収性物品個包装体にかかる摩擦力の低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る吸収性物品の平面図である。
【
図3】上記吸収性物品及び粘着剤層の平面図である。
【
図4】上記吸収性物品の裏面シート及び粘着剤層の断面図である。
【
図5】上記吸収性物品と包装シートが接合された接合シートの平面図である。
【
図7】上記接合シートの一部構成の拡大断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る個包装体の断面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る個包装体パッケージの断面図である。
【
図13】上記個包装体パッケージのうち隣接する2つの個包装体を離間させて示す断面図である。
【
図14】上記離間させて示す2つの個包装体の一部構成の断面図である。
【
図15】上記2つの個包装体の一部構成の断面図である。
【
図16】上記2つの個包装体の一部構成の断面図である。
【
図17】上記個包装体が有する第1面の非接合領域において包装シートに設けれられた第1凹部及び第1凸部を示す断面図である。
【
図18】上記個包装体パッケージにおいて個包装体に係る1対の圧縮力を示す模式図である。
【
図19】包装シートにおけるテカリの発生を示す模式図である。
【
図20】上記第1凹部及び第1凸部の効果を示す模式図である。
【
図21】上記個包装体が有する第2面の接合領域及び非接合領域において包装シートに設けれられた第2凹部及び第2凸部を示す断面図である。
【
図22】上記第2凹部及び第2凸部の効果を示す模式図である。
【
図23】上記個包装体が有する第2面の接合領域に設けられた第3凸部を示す平面図である。
【
図26】本発明の変形例に係る吸収性物品の断面図である。
【
図27】本発明の変形例に係る個包装体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。本実施形態に係る個包装体パッケージは複数の個包装体をパッケージ化したものであり、個包装体は吸収性物品を個別に包装したものである。
【0012】
[吸収性物品の構成]
本実施形態に係る吸収性物品は例えばパンティライナーである。パンティライナーは、一般に生理後期の経血量が少なくなる時期から非生理期間においてショーツ等の下着のクロッチ部に取り付けられ、おりもの等の排泄液を吸収するために用いられる。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る吸収性物品1は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、着用者の左右方向に対応し縦方向Xに直交する横方向Yとを有する。さらに、吸収性物品1は、縦方向X及び横方向Yの双方に直交する厚み方向Zを有する。なお、本明細書において、「平面視」とは、吸収性物品1をX-Y平面上に引き伸ばして、厚み方向Zから見た平面視を意味する。また、本明細書において、「平面形状」とは、平面視における形状を意味する。
【0014】
図2に示すように、吸収性物品1は、表面シート2、裏面シート3、吸収体4及び吸収シート5を備え、裏面シート3、吸収体4、吸収シート5及び表面シート2がこの順に厚み方向Zに積層された構成を有する。吸収性物品1の各部材は、例えば、接着剤やヒートシール等による接合、及びエンボス加工等によって、適宜接合されている。
【0015】
表面シート2は、吸収性物品1の肌対向面1aを形成する。表面シート2は、液透過性を有するシート材として構成される。表面シート2としては、パンティライナー、生理用ナプキンなどの吸収性物品において通常用いられているものを特に制限なく用いることができる。表面シート2は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等を含んでいてもよい。また、表面シート2は、コットン繊維等の天然繊維を含んでいてもよい。
【0016】
図1に示すように、表面シート2は、例えば、吸収性物品1の全面に配置されている。
なお、
図1に示す例において、表面シート2は、ドットパターンのエンボス加工を施されているが、エンボスのパターンはこれに限定されない。また、表面シート2はエンボスを有していなくてもよい。
【0017】
裏面シート3は、吸収性物品1の非肌対向面1bを形成する。裏面シート3は、液不透過シートが好適であり、例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、当該フィルムと不織布とのラミネート等からなるシート材等で形成される。さらに、裏面シート3は、装着快適性を高める観点から、通気性及び透湿性を有するものが好適である。
図1に示すように、裏面シート3は、例えば吸収性物品1の全面に配置され、表面シート2と同一の平面形状を有する。
【0018】
吸収体4は、表面シート2と裏面シート3との間に配置され、排泄液を吸収する。吸収体4は、排泄液を吸収可能な吸収性の材料を含み、例えば、吸収性を有するシート材により構成される。当該シート材としては、例えば、吸収紙、各種不織布等を用いることができ、吸収性ポリマーを含んでいてもよい。
図2に示す例では、1枚の折り畳まれたシート材によって、吸収体4が形成されている。吸収体4の平面形状は、表面シート2、裏面シート3及び吸収シート5よりも小さい形状であることが好ましく、例えば
図1に示す矩形状とすることができる。
【0019】
吸収シート5は、表面シート2及び吸収体4の間に配置される。吸収シート5は、吸収性を有するシート材により構成される。吸収シート5は、排泄液を吸収して保持する機能を有する。これにより、吸収シート5は、例えば、表面シート2を透過した排泄液を一時的に保持することや、吸収体4に吸収された排泄液の表面シート2への液戻りを低減させることが可能となる。また、吸収シート5は、表面シート2からの排泄液の引き込みを促進する機能を有していてもよい。
【0020】
吸収シート5には、パンティライナー、生理用ナプキンなどの吸収性物品において通常用いられているものを特に制限なく用いることができる。吸収シート5として、例えば親水性不織布や親水性の繊維集合体を用いることができる。また、吸収シート5は、十分な保液機能を発揮する観点から、吸収体4よりも大きい平面形状を有することが好ましい。例えば、吸収シート5は、表面シート2及び裏面シート3と同一の平面形状を有し、吸収性物品1の全面に配置されていてもよい。
【0021】
[粘着剤層について]
粘着剤層6は、下着に対して吸収性物品1を固定する。粘着剤層6は
図2に示すように裏面シート3の非肌対向面1b上、即ち吸収体4とは反対側の面上に形成されている。粘着剤層6は製造コストを低減させ、かつ粘着剤層6を所望の形状で容易に形成する観点から、ホットメルト粘着剤から構成される。粘着剤層6は
図3及び
図4に示すように、非肌対向面1b上に複数が離間して形成されている。個々の粘着剤層6の平面形状は
図3に示すように矩形状とすることができるが、他の形状であってもよい。
【0022】
[個包装体について]
本実施形態に係る個包装体は、
図5に示すように吸収性物品1、粘着剤層6及び包装シート8から構成されている。
図6に示すように包装シート8は粘着剤層6上に配置され、粘着剤層6によって吸収性物品1と接合されている。以下、吸収性物品1、粘着剤層6及び包装シート8を合わせて接合シート9とする。
【0023】
包装シート8としては、例えば、熱可塑性樹脂繊維から形成される不織布や樹脂フィルム等を用いることができ、個包装体を外部から目視した際に粘着剤を見えにくくする観点から、使用者に対向する面がインク印刷により着色された樹脂フィルムを用いることが好ましい。また、包装シート8にはエンボス加工により微細な凹凸が形成されている。
図7及び
図8に示すように、包装シート8が有する凹部を凹部8aとし、包装シート8が有する凸部を凸部8bとする。複数の凹部8aは規則的に配置され、凸部8bは中空構造を有する。
【0024】
凹部8aの面積は、光学顕微鏡(例えば、キーエンス株式会社製VHX-5000)を用い、500倍率での観察下、光学顕微鏡に付属のソフトウェアが有する面積計測ツール(例えば、キーエンス株式会社製「VHX-5000」のソフトフェアにデフォルトで付属される面積計測ツール)を用いて測定される。
【0025】
凹部8aの面積は、後述するテカリ抑制及び圧縮力低減の効果を発現する観点から、50μm2以上であることが好ましく、75μm2以上であることがより好ましく、100μm2以上であることがさらにより好ましい。また、使用者から見えにくくする観点から、6000μm2以下であることが好ましく、5000μm2以下であることがより好ましく、4000μm2以下であることがさらにより好ましい。凹部8aの形状は特に限定されず、三角形、四角形、五角等の多角形状や、円形、楕円形、星形等の任意の形状とすることができる。
【0026】
接合シート9は両端部が吸収性物品1の長手方向(X方向)に折りたたまれる。
図5において接合シート9の長手方向(X方向)の一端を端9a、同方向(X方向)の多端を端9bとして示す。また、第1折り線L1及び第2折り線L2を示す。接合シート9は第1折り線L1に沿って折りたたまれた後、第2折り線L2に折りたたまれる。これにより、
図9に示すように、本実施形態に係る個包装体10が形成される。
【0027】
この際、端9aは個包装体10の内部に折り込まれる。端9bは個包装体10の外部に露出し、開封端となる。以下、個包装体10の表面のうち端9bが位置する面を第1面10aとし、第1面10aとは反対側の面を第2面10bとする。第1面10aには端9bを固定し、個包装体10の折りたたみ形状を維持するためのタブテープ11が貼付されている。
【0028】
個包装体10は少積層部12と多積層部13を有する。少積層部12は接合シート9の積層数が最少である部分であり、
図9においては接合シート9の積層数が2の部分である。多積層部13は接合シート9の積層数が少積層部12より多い部分であり、
図9においては接合シート9の積層数が3の部分である。個包装体10では2つの少積層部12が長手方向(X方向)の両端部に位置し、多積層部13は2つの少積層部12の間に位置する。
【0029】
また、
図9及び
図10に示すように第1面10aは多積層領域10cを有し、
図9及び
図11に示すように第2面10bは多積層領域10dを有する。多積層領域10cは第1面10aのうち多積層部13の表面に該当する領域であり、多積層領域10dは第2面10bのうち多積層部13の表面に該当する領域である。多積層領域10cは開封端である端9bを含む。
【0030】
さらに、
図10に示すように第1面10aは接合領域10e及び非接合領域10fを含む。接合領域10eは、包装シート8に粘着剤層6が接合されている領域であり、上述のように粘着剤層6に複数が離間して形成されている(
図3参照)ため、接合領域10eも複数が離間して配置されている。非接合領域10fは包装シート8に粘着剤層6が接合されていない領域であり、第1面10aのうち接合領域10e以外の領域である。
図10に示すように多積層領域10cは接合領域10e及び非接合領域10fを含む。多積層領域10cにおいて、非接合領域10fの面積は接合領域10eの面積よりも大きい。
【0031】
多積層領域10c中における非接合領域10fの面積の割合は、後述するテカリ抑制及び圧縮力低減の効果を確実に発現させる観点から、55%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることがさらにより好ましい。また、吸収性物品1と包装シート8を接合させる観点から、98%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましく、90%以下であることがさらにより好ましい。
【0032】
また、
図11に示すように第2面10bは接合領域10g及び非接合領域10hを含む。接合領域10gは、包装シート8に粘着剤層6が接合されている領域であり、上述のように粘着剤層6に複数が離間して形成されている(
図3参照)ため、接合領域10gも複数が離間して配置されている。非接合領域10hは包装シート8に粘着剤層6が接合されていない領域であり、第2面10bのうち接合領域10g以外の領域である。
図11に示すように多積層領域10dは接合領域10g及び非接合領域10hを含み、接合領域10g及び非接合領域10hは多積層領域10dにおいて交互に配置されている。
【0033】
[個包装体パッケージの構成]
本実施形態に係る個包装体パッケージ20は、
図12に示すように複数の個包装体10が収容袋21に収容されて構成されている。個包装体10は、所定の方向に整列した状態で収容袋21に収納され、隣接する個包装体10の間で第1面10aと第2面10bが接触する。
図13は、個包装体パッケージ20のうち隣接する2つの個包装体10を離間させて示す。同図に示すように、個包装体10の間では第1面10aの多積層領域10cと第2面10bの多積層領域10dが隣接する。
【0034】
これにより、
図15及び
図16に示すように、多積層領域10cの非接合領域10fと多積層領域10dの接合領域10gが接する。以下、
図16に示すように、非接合領域10fと接合領域10gが隣接する面を隣接面22とする。
【0035】
第1面10aの非接合領域10fにおける包装シート8は、上述のように凹部8a及び凸部8b(
図7参照)を有する。以下、
図17に示すように、非接合領域10fにおける凹部8aを第1凹部22aとし、凸部8bを第1凸部22bとする。
【0036】
[個包装体パッケージの効果]
個包装体パッケージ20においては、上記のように収容袋21に複数の個包装体10が収容される。一般に収容袋21は所定数の個包装体10に対して、ジャストサイズとなるように設計されるため、収容袋21に収容された個包装体10には、
図18中矢印Fで示すように一対の圧縮力がかかる。この際、各個包装体10では最も厚みが大きい多積層部13において最も強い圧縮力がかかる。
【0037】
このため、多積層領域10dにおいて粘着剤層6に由来のテカリが発生するおそれがある。
図19は個包装体10が包装シート8に替えて包装シート30を備える場合のテカリの発生を示す。包装シート30は包装シート8のような凹凸が設けられていない包装シートである。
【0038】
図19(a)に示すように多積層部13において圧縮力(図中矢印F)が印加されると、
図19(b)に示すように包装シート30と包装シート8に接合された粘着剤層6との接着が過度に進行し、包装シート30に接合された粘着剤層6の面積が大きくなる。また、包装シート30のうち粘着剤層6に接する領域において、包装シート30が圧縮力を緩和するように引き延ばされ、薄くなる。これにより、圧縮力の印加前と比較して、薄い包装シート30に粘着剤層6が多く接するため、包装シート30にテカリが発生してしまう。
【0039】
また、多積層部13において最も圧縮力が強くかかり、特に接合領域10gにおいては粘着剤層6の厚み分だけ、非接合領域10hよりもかかる圧縮力が強くなる。そのため、接合領域10gを有する多積層領域10dと、隣接する個包装体10の多積層領域10cの接触面積が大きくなり、個包装体10を収容袋21から取り出す際の摩擦力が高くなってしまう。さらには、包装シート30が、粘着剤層6に接する領域において薄くなることで破れやすくなり、その破れた箇所から露出した粘着剤が、隣接する個包装体10にくっつき、摩擦力が上がる事で取り出しにくくなってしまうことがあった。
【0040】
これに対し個包装体10が、第1凹部22a及び第1凸部22b(
図17参照)が設けられた包装シート8を備えることにより、テカリの抑制が可能である。
図20に示すように多積層領域10cの包装シート8は粘着剤層6により固定されておらず、自由に動ける。そのため、1対の圧縮力(図中矢印F)が印加されると第1凹部22a及び第1凸部22bが圧縮力の方向と直交する方向へと延びる(図中矢印S)ように優先的に動き、1対の圧縮力が低減される。
【0041】
これにより、多積層領域10dの接合領域10gにおいてかかる圧縮力を低減することができ、テカリを抑制することができる。さらに隣接面22において、摩擦力を低減することができ、個包装体10を収容袋21から取り出しやすくすることが可能である。
【0042】
加えて、個包装体10では多積層領域10cにおいて、非接合領域10fの面積は接合領域10eの面積よりも大きい(
図10参照)。これにより隣接面22の面積が大きくなるため、圧縮力を緩和する第1凹部22a及び第1凸部22bの数が増え、上記テカリ抑制及び摩擦力の低減効果をより大きくすることが可能である。
【0043】
[第2凹部及び第2凸部について]
個包装体10では、第2面10bの接合領域10g及び非接合領域10hにおける包装シート8も上述のように凹部8a及び凸部8b(
図7参照)を有する。以下、
図21に示すように、隣接面22の接合領域10g及び非接合領域10hにおける凹部8aを第2凹部23aとし、凸部8bを第2凸部23bとする。
【0044】
凹部23aの面積は、光学顕微鏡(例えば、キーエンス株式会社製VHX-5000)を用い、500倍率での観察下、光学顕微鏡に付属のソフトウェアが有する面積計測ツール(例えば、キーエンス株式会社製「VHX-5000」のソフトフェアにデフォルトで付属される面積計測ツール)を用いて測定される。
【0045】
凹部23aの面積は、後述する圧縮力低減及び摩擦量低減効果を発現する観点から、50μm2以上であることが好ましく、75μm2以上であることがより好ましく、100μm2以上であることがさらにより好ましい。また、使用者から見えにくくする観点から、6000μm2以下であることが好ましく、5000μm2以下であることがより好ましく、4000μm2以下であることがさらにより好ましい。凹部23aの形状は特に限定されず、三角形、四角形、五角等の多角形状や、円形、楕円形、星形等の任意の形状とすることができる。
【0046】
図22に示すように多積層領域10d側においても、非接合領域10hの包装シート8は粘着剤層6により固定されておらず、自由に動ける。そのため、1対の圧縮力(図中矢印F)が印加されると第2凹部23a及び第2凸部23bが圧縮力の方向と直交する方向へと延びる(図中矢印S)ように優先的に動き、1対の圧縮力が低減される。また、多積層領域10cと多積層領域10dが接する面において、第1凸部22b(
図17参照)と第2凸部23bのみが接するため、摩擦力が低減される。
【0047】
[第3凸部について]
個包装体10では、第2面10bの接合領域10gにおける包装シート8により大きい凸部を設けてもよい。
図23及び
図24に示すように、接合領域10gには第3凸部24が設けられている。第3凸部24は、第1凹部22aより面積が大きい凸部である。
【0048】
第3凸部24の面積は、光学顕微鏡(例えば、キーエンス株式会社製VHX-5000)を用い、20倍率での観察下、光学顕微鏡に付属のソフトウェアが有する面積計測ツール(例えば、キーエンス株式会社製「VHX-5000」のソフトフェアにデフォルトで付属される面積計測ツール)を用いて測定される。
【0049】
第3凸部24の面積は、第1凹部22aへの入り込みを抑制する観点から、0.5mm2以上であることが好ましく、1mm2以上であることがより好ましく、2mm2以上であることがさらにより好ましい。また、使用者に視覚的な不快感を与えないようにする観点から、40mm2以下であることが好ましく、30mm2以下であることがより好ましく、20mm2以下であることがさらにより好ましい。第3凸部24の形状は特に限定されず、任意の形状とすることができる。
【0050】
第3凸部24の形成方法としては、接合シート9を作製する際、包装シート8上に加熱した粘着剤層6を配置し、その上に吸収性物品1を配置する。粘着剤層6が冷却され、常温に戻る際に収縮し、包装シート8に第3凸部24が形成される。したがって、粘着剤層6が接合される接合領域10gに第3凸部24が形成され、非接合領域10hには第3凸部24が形成されない。
【0051】
接合領域10gに第3凸部24を設けることにより、
図25に示すように第3凸部24が第1凹部22aに入り込みにくくなり、隣接面22をより低減できるため、圧縮力が低減し、テカリ抑制及び摩擦力の低減効果をより大きくすることが可能である。
【0052】
[変形例]
本実施形態に係る吸収性物品1においては、
図2に示すように粘着剤層6が裏面シート3の非肌対向面1b上、即ち吸収体4とは反対側の面上に形成されるものとしたがこれに限られない。
図26に示すように非肌対向面1b上には粘着剤層31を介して剥離シート32が積層され、粘着剤層6はこの剥離シート32上に形成されていてもよい。しかしながら、この構成の場合、粘着剤層31及び剥離シート32の分、個包装体10の厚みが大きくなり圧縮力が増加する。このため、
図2に示すように粘着剤層6が裏面シート3の非肌対向面1b上に形成されている方が圧縮力を抑制でき、より好適である。
【0053】
本実施形態に係る個包装体10は、接合シート9が
図9に示すように3つ折りにされて形成されるものとしたがこれに限られず、
図27に示すように4つ折りにされて形成されるものであってもよい。この場合、少積層部12は接合シート9の積層数が2の部分であり、多積層部13は接合シート9の積層数が3及び4の部分である。この構成においても個包装体10を収容袋21に収容すると、多積層部13の圧縮力が最も大きくなるが、上記構成によりテカリ抑制及び摩擦力の低減が可能である。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【実施例0055】
上記実施形態に係る個包装体を複数作製し、収容袋に収容した。また、比較例に係る個包装体を複数作製し、収容袋に収容した。比較例に係る個包装体は包装シートに凹凸が設けられていないものとした。下記表1に、実施例と比較例における構成の違いと、光沢度および動摩擦係数の測定結果を記載する。
【0056】
【0057】
それぞれの個包装体を収容袋から取り出し、包装シート表面の光沢度を測定した。測定方法としては、光沢度測定機(コニカミノルタ株式会社製「RHOPOINT IQ(製品名)」)を用い、個包装体の第2面の上に光沢度測定機を静置し、入射角度85度における光沢度の測定を行った。かかる測定を、個包装体の第2面内の異なる接合領域の箇所で3回行い、その平均値を光沢度の値とした。上記実施形態に係る個包装体は光沢度2.1(n=3の平均)であり、比較例に係る個包装体は光沢度7.7(n=3の平均)であった。したがって、上記実施形態に係る個包装体の包装シートはテカリの発生が抑制されるといえる。
【0058】
また、それぞれの個包装体の包装シート表面同士の動摩擦係数を測定した。測定方法としては、テンシロン試験機(AND Company Limited製RTG-1310)を用い、個包装体から剥がした包装シートを、個包装体の第2面に相当する面を上向きにして試験機の土台に固定し、別の個包装体から剥がした包装シートのうち、個包装体の第1面における多積層領域に相当する部分を切り出し、重さ202.95g、幅65mm、長さ65mm、および高さ7mmの直方体型金属プレート平面に貼り付けた(以下、試験体と略記)。
【0059】
試験体の面のうち包装シートを貼りつけた面を、土台に固定された包装シートの上に静置させた。その状態から、試験体とテンシロン試験機とを紐で結び、試験速度200mm/分で試験体を開始点から50mm移動させた。このときに試験体に貼り付けられた包装シートと土台に貼りつけられた包装シートとの間に生じる動摩擦係数を測定した。
【0060】
この測定を異なるサンプルを用いて5回行い、その平均値を動摩擦係数の値とした。上記実施形態に係る個包装体は動摩擦係数0.4134(n=5の平均)であり、比較例に係る個包装体は動摩擦係数0.4860(n=5の平均)であった。したがって、上記実施形態に係る個包装体の包装シートは摩擦力が低減されるといえる。