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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094530
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】樹脂モールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/74 20160101AFI20240703BHJP
   B30B 9/00 20060101ALI20240703BHJP
   B29C 53/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60J10/74
B30B9/00 C
B29C53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211130
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】504339310
【氏名又は名称】東和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】長原 裕
【テーマコード(参考)】
3D201
4F209
【Fターム(参考)】
3D201AA26
3D201AA37
3D201CA19
3D201CA20
3D201CB04
3D201DA10
3D201DA31
3D201DA34
3D201FA01
3D201FA04
4F209AG14
4F209AH23
4F209NA01
4F209NB01
4F209NG07
4F209NH07
4F209NK07
4F209NK10
(57)【要約】
【課題】曲げ加工の際に樹脂モールに付与する塑性変形荷重が大きい場合でも、樹脂モールに与える影響が小さく、かつ、押し跡や押しキズ等も与え難く曲げ加工した樹脂モールを製造する。
【解決手段】樹脂モールMの長手方向の少なくとも曲げ予定部分に当該樹脂モールMとは異なる素材からなる芯材3を介してダイ1の上にセットするステップと、ダイ1に対し昇降するパンチ2を降下させて樹脂モールMの曲げ予定部分に芯材3を介して樹脂モールMに塑性変形を与える大きさの曲げ荷重を与えるステップと、曲げ加工の終了した樹脂モールMから芯材3を取り除くステップとを備え、芯材3は、ダイ1が当接するダイ側芯材31と、パンチ2が当接するパンチ側芯材32とに分割して構成し、樹脂モールMの曲げ予定部分をダイ側芯材31とパンチ側芯材32とで挟むことにより樹脂モールMの曲げ予定部分にダイ1とパンチ2が当接しないようにする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂モールの曲げ予定部分を当該樹脂モールは異なる素材からなる芯材で覆い、前記曲げ予定部分の曲がりに応じて湾曲したダイの湾曲面の上に前記芯材を介してセットするステップと、
前記ダイに向けてパンチを降下させ、前記ダイと前記パンチとが前記芯材を介し前記樹脂モールの曲げ予定部分を押圧することにより前記樹脂モールの曲げ予定部分に塑性変形を与えて曲げ加工を行うステップと、
曲げ加工が終了した前記樹脂モールから前記芯材を取り除くステップとを備え、
前記芯材は、分割して構成されていることを特徴とする樹脂モールの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂モールの製造方法において、
前記芯材は、前記ダイが当接するダイ側芯材と、前記パンチが当接するパンチ側芯材とに分割して構成されていることを特徴とする樹脂モールの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の樹脂モールの製造方法において、
前記樹脂モールは、
車両のドア等のフランジ部に装着される樹脂モール本体と、
前記樹脂モール本体から突出するように設けられ、車両のガラスに擦接するリップ部とを備え、
前記ダイ側芯材は、
前記ダイが当接するダイ当接部と、
前記樹脂モール本体の形状に応じた凹凸面が設けられたダイ側樹脂モール本体押圧部と、
前記ダイ側樹脂モール本体押圧部から前記リップ部の側方への突出長さ以上、突出して設けられたダイ側リップ部下方保護壁部と、
前記ダイ側リップ部下方保護壁部における前記ダイ側樹脂モール本体押圧部とは反対側の端部から起立して前記リップ部の高さ以上、延びるダイ側リップ部先端保護壁縦部とを有する一方、
前記パンチ側芯材は、
前記パンチが当接するパンチ当接部と、
前記樹脂モール本体の形状に応じた凹凸面が設けられ、前記ダイ側樹脂モール本体押圧部との間で前記樹脂モール本体を挟み押圧して塑性変形させるパンチ側樹脂モール本体押圧部と、
前記パンチ当接部と前記パンチ側樹脂モール本体押圧部との間であって前記ダイ側リップ部先端保護壁縦部に対向するように設けられ、前記リップ部の上面が前記パンチのパンチ側押圧部に接触しないよう前記リップ部の高さ以上、延びるパンチ側リップ部上方保護縦壁部とを有し、
前記パンチが降下して前記芯材を介して前記樹脂モールを前記ダイの前記湾曲凹溝部で押圧して塑性変形させる際、前記パンチは前記樹脂モールの前記リップ部に接触しないように構成したことを特徴とする樹脂モールの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の樹脂モールの製造方法において、
前記ダイ側芯材と前記パンチ側芯材とにより前記樹脂モールを挟んだ際、前記リップ部の上方は、開放していることを特徴とする樹脂モールの製造方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4記載の樹脂モールの製造方法において、
前記ダイ側芯材と前記パンチ側芯材とにより前記樹脂モールを挟んだ際、前記ダイ側芯材におけるダイ側リップ部先端保護壁縦部の高さと、前記パンチ側芯材におけるパンチ当接部の高さは、前記樹脂モールの前記樹脂モール本体から前記リップ部が起立した場合でも前記リップ部先端の高さよりも高くなるように形成されていることを特徴とする樹脂モールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂モールの製造方法に関し、特に、自動車のドアやバックドア等の車両の開口部周縁のフランジに装着する樹脂モールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアやバックドア等の車両の開口部周縁のフランジに装着する樹脂モールは、樹脂を押出成形して製造するが、押出成形品は直線形状をなしており、直線形状のまま装着されるものと、曲げ形状に装着されるものに層別され、押出成形後、装着する自動車のドアやバックドア等の車両の開口部周縁の形状に合わせて曲げ加工を行う。
曲げ形状を有する樹脂モールの製造方法として、加熱装置によって加熱した直線形状ベルトモールの曲げ予定部分に芯材をセットし、直線形状ベルトモール芯材のセット材に対しダイスとパンチで曲げ荷重を与えて曲げ加工を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-157437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1の樹脂モールの製造方法では、パンチで直接、樹脂モールを押圧して塑性変形荷重を付与して曲げ加工を行うため、塑性変形荷重が大きくなると、樹脂モールの断面骨格が変形するという問題がある。
【0005】
また、塑性変形荷重を均一にするため上方から押圧して塑性変形荷重を付与するパンチの形状を樹脂モールの断面形状に同形状にすると、双方の当接部(接触部)面積が小さい部位では、押し跡や押し傷等が発生して外観不良となり、商品性を損なうという問題もあった。
【0006】
特に、自動車の車内側に設ける樹脂インナーベルトモールの場合、通常、ドアパネルの内側にドアトリムカバーを設けるため、樹脂インナーベルトモールの断面骨格(断面形状)は樹脂アウターベルトモールの断面骨格(断面形状)と比較して複雑な形状となり、また、断面積も大きくなるので、自動車で要求されている性能や外観品質を満足できる加工方法が困難であった。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、曲げ加工の際に樹脂モールに付与する塑性変形荷重が大きい場合でも、樹脂モールの断面骨格に与える影響が小さく、かつ、押し跡や押しキズ等も与え難く曲げ加工した樹脂モールの製造方法を供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る樹脂モールの製造方法は、樹脂モールの曲げ予定部分を当該樹脂モールは異なる素材からなる芯材で覆い、前記曲げ予定部分の曲がりに応じて湾曲したダイの湾曲面の上に前記芯材を介してセットするステップと、前記ダイに向けてパンチを降下させ、前記ダイと前記パンチとが前記芯材を介し前記樹脂モールの曲げ予定部分を押圧することにより前記樹脂モールの曲げ予定部分に塑性変形を与えて曲げ加工を行うステップと、曲げ加工が終了した前記樹脂モールから前記芯材を取り除くステップとを備え、前記芯材は、分割して構成されていることを特徴とする。
また、本発明に係る1記載の樹脂モールの製造方法では、前記芯材は、前記ダイが当接するダイ側芯材と、前記パンチが当接するパンチ側芯材とに分割して構成されていることも特徴とする。
また、本発明に係る樹脂モールの製造方法では、前記樹脂モールは、車両のドア等のフランジ部に装着される樹脂モール本体と、前記樹脂モール本体から突出するように設けられ、車両のガラスに擦接するリップ部とを備え、前記ダイ側芯材は、前記ダイが当接するダイ当接部と、前記樹脂モール本体の形状に応じた凹凸面が設けられたダイ側樹脂モール本体押圧部と、前記ダイ側樹脂モール本体押圧部から前記リップ部の側方への突出長さ以上、突出して設けられたダイ側リップ部下方保護壁部と、前記ダイ側リップ部下方保護壁部における前記ダイ側樹脂モール本体押圧部とは反対側の端部から起立して前記リップ部の高さ以上、延びるダイ側リップ部先端保護壁縦部とを有する一方、前記パンチ側芯材は、前記パンチが当接するパンチ当接部と、前記樹脂モール本体の形状に応じた凹凸面が設けられ、前記ダイ側樹脂モール本体押圧部との間で前記樹脂モール本体を挟み押圧して塑性変形させるパンチ側樹脂モール本体押圧部と、前記パンチ当接部と前記パンチ側樹脂モール本体押圧部との間であって前記ダイ側リップ部先端保護壁縦部に対向するように設けられ、前記リップ部の上面が前記パンチのパンチ側押圧部に接触しないよう前記リップ部の高さ以上、延びるパンチ側リップ部上方保護縦壁部とを有し、前記パンチが降下して前記芯材を介して前記樹脂モールを前記ダイの前記湾曲凹溝部で押圧して塑性変形させる際、前記パンチは前記樹脂モールの前記リップ部に接触しないように構成したことも特徴とする。
また、本発明に係る樹脂モールの製造方法では、前記ダイ側芯材と前記パンチ側芯材とにより前記樹脂モールを挟んだ際、前記リップ部の上方は、開放していることも特徴とする。
また、本発明に係る樹脂モールの製造方法では、前記ダイ側芯材と前記パンチ側芯材とにより前記樹脂モールを挟んだ際、前記ダイ側芯材におけるダイ側リップ部先端保護壁縦部の高さと、前記パンチ側芯材におけるパンチ当接部の高さは、前記樹脂モールの前記樹脂モール本体から前記リップ部が起立した場合でも前記リップ部先端の高さよりも高くなるように形成されていることも特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る樹脂モールの製造方法では、樹脂モールの曲げ予定部分を分割して構成された芯材によって覆ってダイ上にセットし、ダイとパンチとが芯材を介し樹脂モールの曲げ予定部分を押圧して樹脂モールの曲げ予定部分に塑性変形を与え曲げ加工を行う。
そのため、樹脂モールの曲げ予定部分をダイとパンチで曲げて塑性変形させる際、パンチおよびダイが直接、樹脂モール本体に接触することを防止できるので、樹脂モールに付与する塑性変形荷重が大きい場合でも、樹脂モールの断面骨格に与える影響が小さくなると共に、押し跡や押しキズ等も与え難くすることができ、外観品質が良好で曲げ加工された樹脂モールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)~(c)それぞれ、押出成形後の直線形状の樹脂モールの状態を簡略化して示す図、本発明に係る樹脂モールの製造方法によって製造した樹脂モールを装着するドアパネルの一例を示す図、本発明に係る樹脂モールの製造方法によって製造した樹脂モールの状態を簡略化して示す図である。
図2】本発明に係る樹脂モールの製造方法によって製造した樹脂モールの一例をドアパネルに装着した状態を示す要部拡大断面図である。
図3】本発明に係る樹脂モールの製造方法において芯材を使用して直線形状の樹脂モールの曲げ予定部分をダイとパンチで挟む直前の状態を示す正面図である。
図4図3におけるA-A線断面図である。
図5】本発明に係る樹脂モールの製造方法において直線形状の樹脂モールの曲げ予定部分を、芯材を介してダイとパンチで挟み曲げた状態を示す正面図である。
図6】(a)~(c)それぞれ、本発明に係る樹脂モールの製造方法において使用する芯材を構成するダイ側芯材とパンチ側芯材とを組み合わせた状態を示す断面図、パンチ側芯材の断面図、ダイ側芯材の断面図である。
図7】樹脂モールの曲げ予定部分に本発明に係る芯材をセットした状態を示す断面図である。
図8】本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法によって曲げた曲げ量狙い90mmの試験品10個の曲げ量測定結果を示す表1である。
図9】本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法によって曲げた試験品のリップ部のドアガラスに対する上、下リップのラップ量(たわみ量)を示す表2である。
図10】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法によって曲げ加工して製造した他の断面形状を有する樹脂モールの試験品の断面形状を示す図である。
図11】本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法(同一パンチおよびダイ)によって曲げた図10(a),(b)に示す試験品の曲げ評価を示す表3である。
図12】本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法において使用する芯材の変形例であって、その短手方向に所定間隔でスリットを設けた芯材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る樹脂モールの製造方法の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記に説明する実施形態はあくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0012】
本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法によって曲げ加工を行う前の樹脂モールMは、図1(a)に示すように直線形状であり、図1(b)に示すような自動車のドア4のドアパネル42における装着箇所Pとドアガラス41との境界等は湾曲していることがあるため、直線形状の樹脂モールMでは確実かつ綺麗な状態で装着できない。
【0013】
そのため、押出成形後の直線形状の樹脂モールMを、図1(c)に示すようにドアパネル42における装着箇所Pの湾曲形状に合わせて曲げ加工を行なう。
【0014】
このような自動車のドア4等に装着する樹脂モールMには、車外側に設ける樹脂アウターベルトモール、車内側に設ける樹脂インナーベルトモールがある。樹脂インナーベルトモールの場合、図2に示すようにドアパネル42の内側にドアトリムカバー43を設けるため、樹脂アウターベルトモールよりも複雑な断面形状になる場合が多い。
【0015】
(樹脂モールMの断面構造)
図2に示す樹脂インナーベルトモールの樹脂モールMは、通常、車両のドアパネル42のフランジ部42aおよびドアトリムカバー43のフランジ部43aの両側および先端部を覆うように内側立設部M11、中央立設部M12、リップ側立設部M13、上壁部M14および下壁部M15とにより凹凸を形成して断面が概略、S字形状となる樹脂モール本体M1と、樹脂モール本体M1のドアガラス41側であるリップ側立設部M13からドアガラス41の方向に向かって突出して延び、ドアガラス41に擦接する複数(ここでは、例えば、2つとする。)のリップ部M21,M22等を有して構成される。
【0016】
ここで、リップ部M21,M22はドアガラス41が上下動した場合でも、常に擦接した状態を保つ必要がある。そのため、樹脂モール本体M1との連結部位であるリップ部連結端M21a,M22aは、リップ部M21,M22が樹脂モール本体M1に対し自在に動くようにリップ部M21,M22中央部よりも肉薄(幅狭)に形成すると共に、リップ部M21,M22の先端部であるリップ部先端M21b,M22bも先細形状に形成している。尚、図2では、樹脂モールMにリップ部M21,M22を2つ設けているが、1つでも良いし、3つ以上設けても勿論良い。
【0017】
(ダイ1の構成)
ダイ1は、図3図5に示すようにパンチ2の下方に設けられ、安定した床面に設置されるダイベース部11と、そのダイベース部11の上に曲げる樹脂モールMの曲げ予定部分を覆う芯材3の幅だけ間隔を空けて立設したダイ側縦壁部12,12と、ダイ側縦壁部12,12の内壁間に設けられ、樹脂モールMの曲げ予定部分に合わせて湾曲させたダイ側湾曲面13aを有するダイ側押圧部13とによって構成されており、ダイ側縦壁部12,12の内壁とダイ側湾曲面13aとの間に芯材3で覆われた樹脂モールMが押し込まれるダイ側湾曲凹溝部14を設けている。
【0018】
(パンチ2の構成)
パンチ2は、図3図5に示すようにパンチベース部21の下面に樹脂モールMの曲げ予定部分の湾曲面に応じて湾曲させたパンチ側湾曲面22aを有するパンチ側押圧部22を有し、パンチベース部21が図示しない昇降機構部(図示せず。)に取付けられて昇降するように構成されており、樹脂モールMの曲げ予定部分をパンチ側湾曲面22aによって上方から芯材3を介し押圧してダイ1のダイ側押圧部13のダイ側湾曲面13aとの間で挟み樹脂モールMを塑性変形させる塑性変形荷重を加えることにより、樹脂モールMの曲げ予定部分を塑性変形させる。
【0019】
尚、本実施形態では、樹脂モールM曲げ予定部分を後述するようにダイ側芯材31およびパンチ側芯材32からなる芯材3で覆った後に、図5に示すようにダイ側芯材31およびパンチ側芯材32を介してパンチ側押圧部22のパンチ側湾曲面22aとダイ側押圧部13のダイ側湾曲面13aとの間で挟み塑性変形荷重を加えるように構成されており、パンチ側湾曲面22aおよびダイ側湾曲面13aは直接、樹脂モールMには当接しないようにしている。
【0020】
(芯材3の構成)
芯材3は、図4図6(a)~(c)、図7等に示すようにダイ1が当接するダイ側芯材31と、パンチ2が当接するパンチ側芯材32とに分割して構成している。
【0021】
芯材3を構成するダイ側芯材31とパンチ側芯材32の素材は、パンチ2の塑性変形荷重によって弾性変形するものの塑性変形はせずに原形に復元できる素材が好ましく、本発明に係る実施形態では、例えば、UPE(超高分子量ポリエチレン)を使用している。また、芯材3の肉厚は0.5~6.0mmであれば曲げることができるため、0.5~6.0mmの肉厚になるように形成する。
【0022】
(ダイ側芯材31)
ダイ側芯材31は、図6(a),(c)に示すようにダイ1のダイ側湾曲面13a(図3図5参照。)が当接するダイ当接部31aと、樹脂モール本体M1の形状に応じた凹凸面が設けられたダイ側樹脂モール本体押圧部31bと、ダイ側樹脂モール本体押圧部31bからリップ部M21,M22の側方の突出長さ以上、水平方向に突出して設けられ、後述する図7に示すようにリップ部M21,M22を押圧しないように保護するダイ側リップ部下方保護壁部31cと、ダイ側リップ部下方保護壁部31cにおけるダイ側樹脂モール本体押圧部31bとは反対側の端部から起立し、リップ部M21,M22の先端に接触せず、かつ、上側のリップ部(上リップ部)M21の高さ以上、上方に向かって延びるダイ側リップ部先端保護壁縦部31d等を有する。
【0023】
ここで、ダイ側リップ部下方保護壁部31cは、ダイ側樹脂モール本体押圧部31の高さと同じ高さのダイ側リップ部下方保護壁高部31c1と、ダイ側リップ部下方保護壁高部31c1よりも一段下がって低くなったダイ側リップ部下方保護壁低部31c2とを有しており、ダイ側樹脂モール本体押圧部31b側の高さよりもダイ側リップ部先端保護壁縦部31dの高さの方を低く形成している。尚、本発明では、ダイ側リップ部下方保護壁高部31c1よりも一段下がって低くなったダイ側リップ部下方保護壁低部31c2を設けずに、ダイ側樹脂モール本体押圧部31b側の高さよりもダイ側リップ部先端保護壁縦部31dの高さの方が低くなるようにダイ側リップ部下方保護壁部31cを傾斜させても良いし、ダイ側リップ部下方保護壁高部31c1とダイ側リップ部下方保護壁低部31c2とを設けずにダイ側リップ部下方保護壁部31cを水平の面一に構成しても良い。
【0024】
ダイ側リップ部下方保護壁部31cにダイ側樹脂モール本体押圧部31b側の高さよりも低いダイ側リップ部下方保護壁低部31c2を設けた理由は、ダイ側芯材31とパンチ側芯材32によって挟んだ樹脂モール本体M1に塑性変形荷重が加えられ、仮に樹脂モール本体Mの変形につられてリップ部M21,M22の先端(先端)が倒れるように変形した際に、下側のリップ部M22の下側面がダイ側リップ部下方保護壁部31cに極力、接触せずに押し跡や押しキズ等が発生しないようにするためである。
【0025】
(パンチ側芯材32)
パンチ側芯材32は、図6(a),(b)等に示すようにパンチ2のパンチ側押圧部22のパンチ側湾曲面22a(図3図5参照。)が当接するパンチ当接部32aと、樹脂モール本体M1の形状に応じた凹凸面が設けられ、ダイ側樹脂モール本体押圧部31bとの間で樹脂モール本体M1を挟み押圧して塑性変形させるパンチ側樹脂モール本体押圧部32bと、パンチ当接部32aとパンチ側樹脂モール本体押圧部32bとの間であってダイ側芯材31のダイ側リップ部先端保護壁縦部31dに対向するように設けられ、リップ部M21,M22の上面がパンチ2のパンチ側押圧部22に接触しないよう上側のリップ部(上リップ部)M21の高さ以上、パンチ側樹脂モール本体押圧部32bからパンチ当接部32aに向かって起立したパンチ側リップ部上方保護縦壁部32cとを有しており、ダイ側芯材31と組み合わせた場合は、図6(a)や図7等に示すようにダイ側芯材31のダイ側リップ部下方保護壁部31cの上方を開放したリップ部収容空間部33を形成するように構成している。
【0026】
つまり、図7に示すようにダイ側芯材31とパンチ側芯材32とを樹脂モールMの曲げ予定部分に装着した際には、樹脂モール本体M1はダイ側芯材31のダイ側樹脂モール本体押圧部31bとパンチ側芯材32のパンチ側樹脂モール本体押圧部32bとに挟まれるものの、リップ部M21,M22はダイ側芯材31とパンチ側芯材32とに当たらずにリップ部収容空間部33に自由に動けるように収容され、リップ部M21,M22が自由に動いた場合でもリップ部M21がパンチ2のパンチ側湾曲面22a(図5等参照。)に接触しないように構成している。
【0027】
そのため、ダイ1とパンチ2とによりダイ側樹脂モール本体押圧部31bとパンチ側樹脂モール本体押圧部32bを介し樹脂モール本体M1に塑性変形荷重がかけられ、樹脂モール本体M1の変形につられてリップ部M21,M22が鉛直方向に起立した場合でも、ダイ側芯材31におけるダイ側リップ部先端保護壁縦部31d上端の高さと、パンチ側芯材32のパンチ当接部32aの高さは、上側のリップ部(上リップ部)M21の先端よりも高くなるように形成している。
【0028】
具体的には、ダイ側芯材31では、図7に示すように上側のリップ部(上リップ部)M21の長さをH1、樹脂モール本体M1のリップ側立設部M13(図2参照。)下端から上側のリップ部(上リップ部)M21の連結端M21aまでの高さをH2とすると、ダイ側リップ部下方保護壁高部31c1からダイ側リップ部先端保護壁縦部31d上端までの高さh1は、図7に示す状態から上側のリップ部(上リップ部)M21が鉛直方向に起立した場合でも、上側のリップ部(上リップ部)M21先端がパンチ2のパンチ側湾曲面22a(図3図5参照。)に接触しないために、少なくとも(H1+H2)<h1の式が成立するようにパンチ側リップ部上方保護縦壁部32cの高さh1を決定している。
【0029】
また、パンチ側芯材32では、図7に示すようにパンチ側リップ部上方保護縦壁部32cの長さをh2、上側のリップ部(上リップ部)M21の連結端M21aから樹脂モール本体M1のリップ側立設部M13(図2参照。)上端までの高さをH3とすると、図7に示す状態から上側のリップ部(上リップ部)M21が鉛直方向に起立した場合でも、上側のリップ部(上リップ部)M21先端がパンチ2のパンチ側湾曲面22a(図3図5参照。)に接触しないために、少なくとも(H1+H2)<(H2+H3+h2)、つまりH1<(H3+h2)の関係が成立するようにパンチ側リップ部上方保護縦壁部32cの長さh2を決定している。
【0030】
また、本実施形態では、上記2つの式を満たす関係だけでなく、ダイ側芯材31とパンチ側芯材32とを樹脂モールMの曲げ予定部分に装着した際に図7に示すようにダイ側芯材31におけるダイ側リップ部先端保護壁縦部31dの高さと、パンチ側芯材32のパンチ当接部32aの高さとが一致するように、h1=(H2+H3+h2)の関係が成立するようにダイ側芯材31とパンチ側芯材32の高さを決めている。
【0031】
<本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法>
次に、本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法について説明する。
【0032】
(樹脂モールMの加熱処理)
図1(a)に示すような押出成形後の直線形状の樹脂モールMは、ダイ1およびパンチ2による曲げ加工前に製品性能及び外観品質を損なわないよう加熱処理を行う。
【0033】
塑性変形を行う曲げ荷重を与える前の加熱処理は、空気加熱、電磁波、温水など樹脂モール本体M1が所定の温度、例えば100℃~130℃に設定した加熱炉(図示せず。)の内部に直線形状の樹脂モールMを送り出してセットする。
【0034】
その際、樹脂モールMの加熱処理は、曲げ予定部分のみ行う。また、曲げ予定部分の樹脂モールMであっても、樹脂モールMの骨格部分である樹脂モール本体M1のみ加熱処理を行えば十分であり、必ずしもリップ部M21,M22については加熱処理を行う必要性は無い。しかし、曲げ予定部分の樹脂モール本体M1だけでなくリップ部M21,M22を含め曲げ予定部分の樹脂モールM全体について加熱処理を行うことが好ましい。
【0035】
ここで、加熱処理際の設定温度は、樹脂モールMの曲げ予定部分の曲げ量の大きさによって異なる。例えば、加工する曲げ量の狙い値が例えば90mmの場合、加熱炉の設定温度は例えば100℃~130℃位が適している。但し、樹脂モールMの曲げ量が小さい場合には、樹脂モールMの加熱処理は省いても良い。
【0036】
(加熱処理された樹脂モールMを芯材3にセット)
次に、以上のように加熱処理された直線形状の樹脂モールMに芯材3をセットする。具体的には、加熱処理された直線形状の樹脂モールMをダイ側芯材31の上に置いた後、その上からパンチ側芯材32を被せる。
【0037】
すると、図7に示すように、樹脂モール本体M1はその下面側の凹凸形状に応じた凹凸面が設けられたダイ側芯材31のダイ側樹脂モール本体押圧部31bとパンチ側芯材32のパンチ側樹脂モール本体押圧部32bとによって上下方向から挟まれるような形でセットされる。
【0038】
これに対し、リップ部M21,M22は、図6(a)や図7に示すようにダイ側芯材31とパンチ側芯材32によって形成された上部開放のリップ部収容空間部33に収容され、ダイ側芯材31のダイ側樹脂モール本体押圧部31bおよびパンチ側芯材32のパンチ側樹脂モール本体押圧部32bに接触しないようにセットされる。
【0039】
(芯材3にセットした樹脂モールMをダイ1にセットし、パンチ2で押圧)
上述のようにダイ側芯材31とパンチ側芯材32との間に挟んだ樹脂モールMをダイ1にセットし、セットされたパンチ側芯材32の上面をパンチ2で押圧し、パンチ2のパンチ側押圧部22によってダイ側芯材31とパンチ側芯材32で覆われた樹脂モールMの曲げ予定部分をダイ1のダイ側湾曲凹溝部14(図3図4等参照。)に押し込み、ダイ側湾曲面13aとパンチ側湾曲面22aとでダイ側芯材31とパンチ側芯材32を介して樹脂モールMを塑性変形荷重で押圧し、その押圧状態を一定時間保持する。
【0040】
ここで、樹脂モールMに塑性変形荷重を加える一定時間も、樹脂モールMの曲げ予定部分の曲げ量の大きさによって異なる。例えば、加工する曲げ量の狙い値が例えば90mmの場合、ダイ1のダイ側湾曲凹溝部14内でダイ側芯材31とパンチ側芯材32によって覆った樹脂モールMの曲げ予定部分に対しダイ側湾曲面13aとパンチ側湾曲面22aとで塑性変形荷重を加える一定時間は、例えば80~100秒位が適している。
【0041】
樹脂モールMの曲げ予定部分に対する塑性変形荷重での一定時間の押圧が完了すると、パンチ2を上昇させ、その後、ダイ1からダイ側芯材31とパンチ側芯材32で覆われた樹脂モールMを取り出し、次いで樹脂モールMからダイ側芯材31とパンチ側芯材32とを取り外して、塑性変形荷重で曲げ加工された樹脂モールMを取り出す。
【0042】
すると、樹脂モールMは、ダイ1のダイ側湾曲凹溝部14内でのダイ1とパンチ2によって塑性変形荷重で押圧され、しかもその押圧状態が80~100秒位の所定時間継続するため、塑性変形して曲げ加工される。
【0043】
これに対し、ダイ1のダイ側湾曲凹溝部14内でのダイ1とパンチ2によって塑性変形荷重で押圧されていた芯材3のダイ側芯材31とパンチ側芯材32は、UPE(超高分子量ポリエチレン)等の素材によって形成されているため、芯材3自身の弾性で直線形状の元形状に復元して再利用される。
【0044】
<実施形態の樹脂モールの製造方法によって製造した実施例(試験品)の評価>
次に、本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法によってダイ側芯材31およびパンチ側芯材32に分割した芯材3を使用して曲げ加工して製造した実施例(試験品)の評価について説明する。
【0045】
(曲げ量および戻り量の評価)
図8は、本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法によって曲げ量狙い90mmで曲げ加工したNo.1~No.10の試験品の曲げ量の測定結果で、それぞれ、1時間(1h)後の曲げ量、3日後の曲げ量、5日後の曲げ量と、5日後の戻り量と、曲げ量狙い90mmに対する変形量を示す表1である。
【0046】
例えば、No.1の試験品の場合、図8に示す表1のように、1時間(1h)後の曲げ量は93.5mm、3日後の曲げ量は91.4mm、5日後の曲げ量は91.1mm、5日後の戻り量平均値は2.4mm、曲げ量狙い90mmに対する変形量平均値は1.1mmとなった。
【0047】
その結果、No.1~No.10の試験品の平均値は、図8に示す表1の通り、1時間(1h)後の曲げ量平均値は平均93.8mm、3日後の曲げ量平均値は91.6mm、5日後の曲げ量平均値は91.3mm、5日後の戻り量平均値は2.5mm、曲げ量狙い90mmに対する変形量平均値は1.3mmとなった。
【0048】
また、最大値(max)は、1時間(1h)後の曲げ量は96.5mm、3日後の曲げ量は94.3mm、5日後の曲げ量は94.0mm、5日後の戻り量平均値は3.1mm、曲げ量狙い90mmに対する変形量は4.0mmとであり、最小値(min)は、それぞれ、91.9mm、89.9mm、89.4mm、1.9mm、-0.6mmであった。尚、分散(δ)および中央値(MEDIAN)は、図8の表1に示す通りである。
【0049】
その結果、No.1~No.10の試験品の曲げ量の測定結果より、芯材3としてダイ側芯材31とパンチ側芯材32とに分割したセパレート構造を採用することにより、曲げ量狙い値90mmに対し平均で+1.3mm、最大4.0mm、最小-0.6mmで、試験品毎のバラツキも小さく加工出来ていることが分かった。
【0050】
(リップ部M21,M22の形状のラップ量および評価)
図9は、本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法によって曲げ量狙い90mmで曲げ加工したNo.1~No.10の試験品の樹脂モールMの上側のリップ部(上リップ部)M21および下側リップ部(下リップ部)M22それぞれにおけるドアガラス41に対する形状のラップ量の測定結果を示す表2である。
【0051】
図9の表2に示すように、上リップ部M21では、上リップ部M21先端から0mm、300mm、600mm、730mmそれぞれにおいてドアガラス41に対する形状のラップ量が+6.41mm、+5.51mm、+5.78mm、+4.76mmである一方、下リップ部M22では、下リップ部M22先端から0mm、300mm、600mm、730mmそれぞれにおいてドアガラス41に対する形状のラップ量が+2.96mm、+2.45mm、+2.45mm、+2.53mmであった。
【0052】
その結果、上リップ部M21と下リップ部M22とは共に、それぞれのリップ部M21,M22先端から0mm、300mm、600mm、730mmの全ての位置において、ドアガラス41と樹脂モールMのリップ部M21,M22が接触する公差最小距離の0mmを上回る結果が得られた。これにより、本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法によってダイ側芯材31およびパンチ側芯材32に分割した芯材3を使用して曲げ加工して製造した樹脂モールMは、自動車のドア4のドアガラス41に対し上リップ部M21および下リップ部M22が接触する場合でも、ドアガラス41に対する十分なラップ量が確保できることが証明されたため、製品性能に影響はないことも分かった。
【0053】
また、本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法におけるダイ側芯材31およびパンチ側芯材32に分割した芯材3を使用して曲げ加工して製造した図10(a),(b)に示す断面形状の樹脂モールM’,M”について、同様に曲げ量を90mmで曲げ試験を行って外観検査をすると、図11に示す表3のように上リップ部M21および下リップ部M22にて外観品質に変化は無く、また押し跡も押しキズも発見されなかった。
【0054】
これにより、図10(a),(b)に示す断面形状の樹脂モールM’,M”は共に、樹脂モールMに対して断面積、断面骨格(断面形状)等により曲げ条件にある程度の違いはあるものの、その他評価は特に差異は見当たらなかった。
【0055】
<本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法のまとめ>
以上説明したように、本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法は、樹脂モールMの長手方向の少なくとも曲げ予定部分に当該樹脂モールMとは異なる素材からなる芯材3を介してダイ側湾曲凹溝部14を有するダイ1の上にセットするステップと、昇降するパンチ2を降下させて樹脂モールMの曲げ予定部分を、芯材3を介しダイ1のダイ側湾曲凹溝部14に押し付けて樹脂モールMの曲げ予定部分に塑性変形を与える大きさの曲げ荷重を与えるステップと、曲げ加工の終了した樹脂モールMから芯材3を取り除くステップとを備え、芯材3は、パンチ2が当接するパンチ側芯材32と、ダイ1が当接するダイ側芯材31とに分割して構成している。
【0056】
そのため、ダイ1とパンチ2により樹脂モールMの曲げ予定部分に対し塑性変形荷重を加えて曲げる際、ダイ1およびパンチ2が樹脂モールMに直接、接触することがなくなるので、樹脂モールMの曲げ予定部分に付与する塑性変形荷重が大きい場合でも、樹脂モールMに与える影響が小さくなり、樹脂モールMに対し押し跡や押しキズ等も与え難くすることができ、外観品質が良好で曲げ加工された樹脂モールMを製造することができる。
【0057】
また、本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法では、ダイ側芯材31は、ダイ1のダイ側湾曲面13aが当接するダイ当接部31aと、樹脂モール本体M1の形状に応じた凹凸面が設けられたダイ側樹脂モール本体押圧部31bと、ダイ側樹脂モール本体押圧部31bからリップ部M21,M22の側方への突出長さ以上、水平方向に突出させたダイ側リップ部下方保護壁部31cと、ダイ側リップ部下方保護壁部31cにおけるダイ側樹脂モール本体押圧部31bとは反対側の端部から起立し、リップ部M21,M22の先端に接触せず、かつ、上側のリップ部(上リップ部)M21の高さ以上、上方に向かって延びるダイ側リップ部先端保護壁縦部31dとを有し、パンチ側芯材32は、パンチ2のパンチ側押圧部22のパンチ側湾曲面22aが当接するパンチ当接部32aと、樹脂モール本体M1の形状に応じた凹凸面が設けられ、ダイ側樹脂モール本体押圧部31bとの間で樹脂モール本体M1を挟み押圧して塑性変形させるパンチ側樹脂モール本体押圧部32bと、パンチ当接部32aとパンチ側樹脂モール本体押圧部32bとの間であってダイ側芯材31のダイ側リップ部先端保護壁縦部31dに対向するように設けられ、リップ部M21,M22の上面がパンチ2のパンチ側押圧部22に接触しないよう上側のリップ部(上リップ部)M21の高さ以上、パンチ側樹脂モール本体押圧部32bからパンチ当接部32aに向かって起立したパンチ側リップ部上方保護縦壁部32cとを有しており、ダイ側芯材31とパンチ側芯材32と組み合わせた場合は、図6(a)や図7等に示すようにダイ側芯材31のダイ側リップ部下方保護壁部31cの上方を開放したリップ部収容空間部33を形成するように構成している。
【0058】
そのため、ダイ1とパンチ2により樹脂モールMの曲げ予定部分に対し塑性変形荷重を加えて曲げる際、塑性変形荷重はダイ側樹脂モール本体押圧部31bとパンチ側樹脂モール本体押圧部32bを介し樹脂モールMの曲げ予定部分の樹脂モール本体M1のみに付与され、リップ部M21,M22はダイ側リップ部下方保護壁部31cとダイ側リップ部先端保護壁縦部31dとパンチ側リップ部上方保護縦壁部32c等で囲まれたリップ部収容空間部33に収容され、ダイ側芯材31とパンチ側芯材32とによって塑性変形荷重が加わることが無い。その結果、ダイ1およびパンチ2が樹脂モールMに直接、接触せずに樹脂モールMに対し押し跡や押しキズ等も与え難くすることができると共に、リップ部M21,M22の中央部よりも肉薄(幅狭)で樹脂モール本体M1に連結されるリップ部連結端M21a,M22aに与える負荷も少なり、リップ部連結端M21a,M22aが切断される等の不具合も確実に防止できるので、外観品質が良好で曲げ加工された樹脂モールMを製造することができる。
【0059】
特に、本発明に係る実施形態の樹脂モールの製造方法では、リップ部収容空間部33の上方にはパンチ側芯材32は位置せず、開放している。
【0060】
そのため、パンチ側芯材32の部材容量を削減することができ、コストを低減することができると共に、仮にリップ部収容空間部33の上方に蓋のようなパンチ側芯材32を設ける場合、薄板の蓋のようになり強度が弱くなり、パンチ側芯材32に塑性変形荷重が繰り返し加えられることによって破損する可能性が増大するので、リップ部収容空間部33の上方を開放してパンチ側芯材32を設けないことによりパンチ側芯材32の耐久性等を向上させることができ、この点でもコストを低減することができる。
【0061】
尚、上記実施形態の説明では、芯材3を構成するダイ側芯材31におけるダイ1とのダイ側当接部31およびパンチ側芯材32におけるパンチ2とのパンチ側当接部32aは平面的に構成して説明したが、樹脂モールMの曲げ予定部分の曲げ量、つまり曲率が大きい場合、芯材3を構成するダイ側芯材31およびパンチ側芯材32が破損したり、さらには塑性変形荷重の繰り返しによって元形状に復元しないおそれがある。
【0062】
そのため、芯材3の曲げ予定部分の曲げ量が大きい場合は、ストレート部、仮想曲率部の曲率によっては、図12に示すように芯材3の長手方向に所定間隔で、短手方向に延びるスリットを取り入れることが好ましく、断面形状や曲げ率等によってはスリットのピッチ(間隔)を変更する場合もある。図12に示す例では、芯材3がその長手方向に全長500mmあった場合に3mm間隔でスリットSを設けている。
【0063】
また、本実施形態の説明では、図6図7等に示すように芯材3を構成するパンチ側芯材32では、リップ部収容空間部33の上方を開放してパンチ側芯材32を設けないように構成して説明したが、本発明では、これに限らず、パンチ側芯材32のパンチ側リップ部上方保護縦壁部32c上端部からダイ側リップ部先端保護壁縦部31d上端まで水平に延びリップ部収容空間部33を塞ぐようなダイ側リップ部下方保護壁部31cに対向する部位を設け、パンチ2が樹脂モールMにより確実に接触しなくなるように構成しても勿論良い。
【0064】
また、本実施形態の説明では、芯材3をダイ側芯材31とパンチ側芯材32の2つに分割して説明したが、芯材3を3つ以上に分割して構成しても勿論良いし、さらにはダイ側芯材31とパンチ側芯材32のように2つに分割する場合でも、上下方向の分割ではなく、左右(水平)方向に分割されるように構成して、例えばその2つに分割された芯材それぞれの下面がダイ1に当接し、2つに分割された芯材それぞれの上面がバンチ2に当接するように構成しても勿論良い。
【符号の説明】
【0065】
1 ダイ
11 ダイベース部
12 ダイ側縦壁部
13 ダイ側押圧部
13a ダイ側湾曲面
14 ダイ側湾曲凹溝部
2 パンチ
21 パンチベース部
22 パンチ側押圧部
22a パンチ側湾曲面
3 芯材
31 ダイ側芯材
31a ダイ当接部
31b ダイ側樹脂モール本体押圧部
31c ダイ側リップ部下方保護壁部
31c1 ダイ側リップ部下方保護壁高部
31c2 ダイ側リップ部下方保護壁低部
31d ダイ側リップ部先端保護壁縦部
32 パンチ側芯材
32a パンチ当接部
32b パンチ側樹脂モール本体押圧部
32c パンチ側リップ部上方保護縦壁部
33 リップ部収容空間部
4 ドア
41 ドアガラス
42 ドアパネル
42a フランジ部
43 ドアトリムカバー
43a フランジ部
M,M’,M” 樹脂モール
M1,M1’,M1” 樹脂モール本体
M11 内側立設部
M12 中央立設部
M13 リップ側立設部
M14 上壁部
M15 下壁部
M21,M21’,M21” 上リップ部
M22,M22’,M22” 下リップ部
M21a,M22a リップ部連結端
M21b,M22b リップ部先端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12