(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094550
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】近赤外線吸収性組成物、光学フィルタ、赤外線カメラ、固体撮像素子、赤外線センサ、および積層体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20240703BHJP
G03B 11/00 20210101ALI20240703BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20240703BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G02B5/22
G03B11/00
H04N23/55
C09B67/20 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211170
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田川 文菜
(72)【発明者】
【氏名】平佐 美幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄太
【テーマコード(参考)】
2H083
2H148
5C122
【Fターム(参考)】
2H083AA04
2H083AA26
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA17
5C122DA03
5C122DA04
5C122DA09
5C122EA12
5C122FB17
5C122FB20
5C122FC01
5C122FC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の目的は、保存安定性に優れ、膜の凝集異物が少なく、膜厚均一性に優れた特性を示す近赤外線吸収性組成物、光学フィルタ、赤外線カメラ、固体撮像素子、赤外線センサ、および積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題は、近赤外線吸収性色素(A)と、塩基性樹脂型分散剤(B)と、バインダ樹脂(C)と、有機溶剤とを含む近赤外線吸収性組成物であり、
塩基性樹脂型分散剤(B)が、A-Bブロックポリマー、またはB-A-Bブロックポリマーであり、
Bブロックが、(メタ)アクリル酸エステル単位(b1)と、ブロックイソシアネート基を有する単量体単位(b2)を含むポリマーブロックである、
近赤外線吸収性組成物によって、解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線吸収性色素(A)と、塩基性樹脂型分散剤(B)と、バインダ樹脂(C)と、有機溶剤とを含む近赤外線吸収性組成物であり、
塩基性樹脂型分散剤(B)が、A-Bブロックポリマー、またはB-A-Bブロックポリマーであり、
Bブロックが、(メタ)アクリル酸エステル単位(b1)と、ブロックイソシアネート基を有する単量体単位(b2)とを含むポリマーブロックである、
近赤外線吸収性組成物。
【請求項2】
Aブロックが、(1)~(3)の全てを有するアミノ単位(a1)を含むポリマーブロックである、請求項1に記載の近赤外線吸収性組成物。
(1)2価の連結基であるエステル結合、またはアリール基
(2)水素結合性を有する連結基であるウレタン結合、またはウレア結合
(3)複素環アミノ基、脂肪族アミノ基、およびこれらの4級塩からなる群から選ばれる1種のアミノ基
【請求項3】
ブロックイソシアネート基を有する単量体単位(b2)のモル比率が、Bブロック100モル%中、5モル%以上70モル%以下である、請求項1または2に記載の近赤外線吸収性組成物。
【請求項4】
アミノ単位(a1)中のアミノ基が、芳香族性を有する複素環アミノ基、およびこの4級塩からなる群から選ばれる1種のアミノ基である、請求項1または2に記載の近赤外線吸収性組成物。
【請求項5】
バインダ樹脂(C)の酸価が、30mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である、請求項1または2に記載の近赤外線吸収性組成物。
【請求項6】
近赤外線吸収性色素(A)が、ピロロピロール化合物、インジゴ化合物、フタロシアニン化合物、およびナフタロシアニン化合物からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1または2に記載の近赤外線吸収性組成物。
【請求項7】
さらに波長400nm以上700nm未満に極大吸収波長を有する有機色素(D)を含む、請求項1に記載の近赤外線吸収性組成物。
【請求項8】
さらに光重合性単量体および/または光重合開始剤を含む、請求項1または7に記載の近赤外線吸収性組成物。
【請求項9】
基材上に、請求項1または7に記載の近赤外線吸収性組成物により形成されてなる被膜を有する、光学フィルタ。
【請求項10】
請求項9に記載の光学フィルタを有する、赤外線カメラ。
【請求項11】
請求項9に記載の光学フィルタを有する、固体撮像素子。
【請求項12】
請求項9に記載の光学フィルタを有する、赤外線センサ。
【請求項13】
波長400nm以上700nm未満の範囲に吸収極大波長を有する有機色素(D)を含む層と、請求項1または2に記載の近赤外線吸収性組成物を含む層とを有する、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収性組成物、光学フィルタ、赤外線カメラ、固体撮像素子、赤外線センサ、および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルカメラ、およびスマートフォン等には、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)といった固体撮像素子が用いられている。これら固体撮像素子の受光部には、人間の目では感知できない近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用しているため視感度補正を行うことが必要であり、感度を有さない波長範囲の近赤外線を遮断するための光学フィルタ等が配置される。光学フィルタは、例えば、近赤外線吸収性色素を含む組成物を用いて製造される。
【0003】
近赤外線吸収性色素を含む組成物として、特許文献1には、スクアリリウム化合物を含む組成物が開示されている。また、特許文献2には、波長600nm以上850nm以下の範囲内に極大吸収波長を有する色素を含有する硬化性樹脂組成物が開示されている。さらに、特許文献3には、極大吸収波長の異なる少なくとも2種のシアニン化合物を含む近赤外線吸収性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019―210453号公報
【特許文献2】特開2014-130343号公報
【特許文献3】特開2009-185161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近赤外線を遮断するための光学フィルタは、幅広い波長範囲を遮断することが求められている。また、光学フィルタ中の欠陥は、近赤外線の遮断性に影響を与えるため、異物等の発生を抑制することや、膜厚に凹凸がないことが求められる。
【0006】
本発明の目的は、保存安定性に優れ、膜の凝集異物が少なく、膜厚均一性に優れた特性を示す近赤外線吸収性組成物、光学フィルタ、赤外線カメラ、固体撮像素子、赤外線センサ、および積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記諸問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、近赤外線吸収性色素(A)と、特定構造を有する塩基性樹脂型分散剤(B)と、バインダ樹脂(C)と、有機溶剤とを含む近赤外線吸収性組成物が優れた特性を示すことを見出し、この知見に基づいて本発明をなしたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、近赤外線吸収性色素(A)と、塩基性樹脂型分散剤(B)と、バインダ樹脂(C)と、有機溶剤とを含む近赤外線吸収性組成物であり、
塩基性樹脂型分散剤(B)が、A-Bブロックポリマー、またはB-A-Bブロックポリマーであり、
Bブロックが、(メタ)アクリル酸エステル単位(b1)と、ブロックイソシアネート基を有する単量体単位(b2)とを含むポリマーブロックである、
近赤外線吸収性組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、Aブロックが、(1)~(3)の全てを有するアミノ単位(a1)を含むポリマーブロックである、前記近赤外線吸収性組成物に関する。
(1)2価の連結基であるエステル結合、またはアリール基
(2)水素結合性を有する連結基であるウレタン結合、またはウレア結合
(3)複素環アミノ基、脂肪族アミノ基、およびこれらの4級塩からなる群から選ばれる1種のアミノ基
【0010】
また、本発明は、ブロックイソシアネート基を有する単量体単位(b2)のモル比率が、Bブロック100モル%中、5モル%以上70モル%以下である、前記近赤外線吸収性組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、アミノ単位(a1)中のアミノ基が、芳香族性を有する複素環アミノ基、およびこの4級塩からなる群から選ばれる1種のアミノ基である、前記近赤外線吸収性組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、バインダ樹脂(C)の酸価が、30mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である、前記近赤外線吸収性組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、近赤外線吸収性色素(A)が、ピロロピロール化合物、インジゴ化合物、フタロシアニン化合物、およびナフタロシアニン化合物からなる群から選ばれる1種以上である、前記近赤外線吸収性組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、さらに波長400nm以上700nm未満に極大吸収波長を有する有機色素(D)を含む、前記近赤外線吸収性組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、さらに光重合性単量体および/または光重合開始剤を含む、前記近赤外線吸収性組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、基材上に、前記近赤外線吸収性組成物により形成されてなる被膜を有する、光学フィルタに関する。
【0017】
また、本発明は、前記光学フィルタを有する、赤外線カメラに関する。
【0018】
また、本発明は、前記光学フィルタを有する、固体撮像素子に関する。
【0019】
また、本発明は、前記光学フィルタを有する、赤外線センサに関する。
【0020】
また、本発明は、波長400nm以上700nm未満に極大吸収波長を有する有機色素を含む層と、前記近赤外線吸収性組成物を含む層とを有する、積層体に関する
【発明の効果】
【0021】
上記の本発明によれば、保存安定性に優れ、凝集異物の少ない、膜厚均一性に優れた近赤外線吸収性組成物、光学フィルタ、赤外線カメラ、固体撮像素子、赤外線センサ、および積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の近赤外線吸収性組成物を用いた膜を備えた赤外線センサの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の近赤外線吸収性組成物を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、課題を解決可能な範囲内で変形して実施できる。
【0024】
本明細書において、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、又は「(メタ)アクリルアミド」とは、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイルおよび/又はメタアクリロイル」、「アクリルおよび/又はメタアクリル」、「アクリル酸および/又はメタアクリル酸」、「アクリレートおよび/又はメタクリレート」、又は「アクリルアミドおよび/又はメタアクリルアミド」を意味する。また、「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 発行)を意味する。
【0025】
<近赤外線吸収性組成物>
本発明の一実施形態である近赤外線吸収性組成物は、近赤外線吸収性色素(A)と、塩基性樹脂型分散剤(B)と、バインダ樹脂(C)と、有機溶剤とを含む近赤外線吸収性組成物であり、
塩基性樹脂型分散剤(B)が、A-Bブロックポリマー、またはB-A-Bブロックポリマーであり、
Bブロックが、(メタ)アクリル酸エステル単位(b1)と、ブロックイソシアネート基を有する単量体単位(b2)を含むポリマーブロックである。これにより、保存安定性、凝集異物低減、および膜厚均一性に優れた近赤外線吸収性組成物を得ることができる。
【0026】
<色素>
本明細書において、色素とは、波長700nm以上2000nm以下に極大吸収波長を有する近赤外線吸収性色素(A)と、波長400nm以上700nm未満に極大吸収波長を有する有機色素(D)を意味する。
【0027】
<近赤外線吸収性色素(A)>
近赤外線吸収性色素(A)は、波長700nm以上2000nm以下に極大吸収波長を有する化合物であり、顔料(近赤外線吸収性顔料ともいう)であってもよく、染料(近赤外線吸収性染料ともいう)であってもよい。また、近赤外線吸収性顔料と近赤外線吸収性染料を併用してもよい。さらに、近赤外線吸収性色素(A)の合成過程で生成する目的物以外の色素、例えば二量体と、三量体等の多量体との混合物(以下、近赤外吸収性色素組成物(A)ともいう)であってもよい。耐熱性の観点から、近赤外線吸収性顔料が好ましい。
本発明において、近赤外線吸収性顔料は、25℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに対する溶解度が、2g未満が好ましく、1g未満であることがより好ましく、0.5g以下であることが特に好ましい。
【0028】
近赤外線吸収性色素(A)は、耐溶剤性の観点から、単環又は縮合環の芳香環を含むπ共役平面を有することが好ましい。芳香環同士のπ-π相互作用により、近赤外線吸収性色素(A)同士が会合し、有機溶剤への溶出を抑制する。
【0029】
近赤外線吸収性色素(A)が有するπ共役平面は、単環又は縮合環の芳香環を2~100個含むことが好ましく、3~50個含むことがより好ましく、4~40個含むことが更に好ましく、5~30個含むことが特に好ましい。芳香環は、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ペプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、クアテリレン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾリン環、ピラジン環、キノキサリン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、トリアジン環、ピロール環、インドール環、インドール環、イソインドール環、カルバゾール環、およびこれらの環を有する縮合環が挙げられる。
【0030】
近赤外線吸収性色素(A)は、例えば、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、インジゴ化合物、インモニウム化合物、アントラキノン化合物、ピロロピロール化合物、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、トリアリールメタン化合物、ベンゾジフラノン化合物等が挙げられる。これらの中でも耐熱性の観点から、ピロロピロール化合物、インジゴ化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、インジゴ化合物、又は/およびナフタロシアニン化合物がより好ましい。
【0031】
(シアニン化合物)
シアニン化合物は、特に制限がなく、公知の化合物を用いることができる。
例えば、国際公開第2006/006573号、国際公開第2010/073857号、特開2013-241598号公報、特開2016-113501号公報、特開2016-113504号公報等;フタロシアニン化合物は、特開平4-23868号公報、特開平06-192584号公報、特開2000-63691号公報、国際公開第2014/208514号等;ナフタロシアニン化合物は、特開平11-152414号公報、特開2000-86919号公報、特開2009-29955号公報、国際公開第2017/002920号、国際公開第2018/186490号等;インジゴ化合物は、特開2012-224593号公報、特開2013-87233号公報、特開2013-230412号公報等;インモニウム化合物は、特開2005-336150号公報、特開2007-197492号公報、特開2008-88426号公報等;アントラキノン化合物は、特開昭62-903号公報、特開平1-172458号公報等;ピロロピロール化合物は、特開2009-263614号公報、特開2010-90313号公報、特開2011-068731号公報;スクアリリウム化合物は、特開2011-132361号公報、特開2016-142891号公報、国際公開第2017/135359号、国際公開第2018/225837号、特開2019-001987号公報、国際公開第2020/054718号等;クロコニウム化合物は、国際公開第2019/021767号等に記載の化合物が挙げられる。
また、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0032】
【0033】
一般式(1)中、R1~R5は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表し、R1~R5のうち、2つが結合して環を形成してもよい。nxは、0~2の整数を表し、2の場合、複数のR4およびR5は同一であってもよく、異なっていてもよい。Ar1およびAr2は、それぞれ独立してアリール基または複素環基を表す。Xで表される部分がカチオンを示す場合、Yは対アニオンを表し、mxは電荷のバランスをとるために必要な数を表し、Xで表される部分がアニオンを示す場合、Yは対カチオンを表し、mxは電荷のバランスをとるために必要な数を表し、Xで表される部分の電荷が0の場合、mxは0である。
【0034】
R1~R5が表す置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、-OZ1、-COZ1、-COOZ1、-OCOZ1、-NZ1Z2、-NHCOZ1、-CONZ1Z2、-NHCONZ1Z2、-NHCOOZ1、-SZ1、-SO2Z1、-SO2Z1、-NHSO2Z1または-SO2NZ1Z2等が挙げられる。Z1およびZ2は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアラルキル基を表す。Z1とZ2が結合して環を形成してもよい。なお、-COOZ1と-SO2OZ1のZ1が水素の場合、水素原子が解離してもよく、塩の状態であってもよい。
R1~R5のうち、2つが結合して環を形成する場合、連結基としては、-CO-、-O-、-NH-、炭素原子数1~10のアルキレン基およびそれらの組合せからなる群から選ばれる2価の連結基が好ましい。連結基としてのアルキレン基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。
【0035】
「置換基」としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OZ10、-COZ11、-COOZ12、-OCOZ13、-NZ14Z15、-NHCOZ16、-CONZ17Z18、-NHCONZ19Z20、-NHCOOZ21、-SZ22、-SO2Z23、-SO2OZ24、-NHSO2Z25または-SO2NZ26Z27が挙げられる。
Z10~Z27は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアラルキル基を表す。なお、-COOZ12のZ12が水素の場合(すなわち、カルボキシル基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また-SO2OZ24のZ24が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。
【0036】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~12がさらに好ましく、1~8が特に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでも良い。
アルケニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がさらに好ましく、2~8が特に好ましい。アルケニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでも良い。
アルキニル基の炭素数は、2~20が好ましく、2~12がさらに好ましく、2~8が特に好ましい。アルキニル基は直鎖、分岐、環状のいずれでも良い。
アリール基の炭素数は、6~25が好ましく、6~15がさらに好ましく、6~10が特に好ましい。
アラルキル基のアルキル部分は、上記アルキル基と同様である。アラルキル基のアリール部分は、上記アリール基と同様である。アラルキル基の炭素数は、7~40が好ましく、7~30がさらに好ましく、7~25が特に好ましい。
ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2~8の縮合環がさらに好ましく、単環または縮合数が2~4の縮合環が特に好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子が好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロアリール基の環を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がさらに好ましく、3~12が特に好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基は置換基を有していても良く、無置換であっても良い。置換基としては上述した「置換基」が挙げられる。
【0037】
nxは、0または1が好ましい。
【0038】
Ar1およびAr2が表すアリール基の炭素原子数は、6~48が好ましく、6~22がより好ましく、6~12が特に好ましい。Ar1およびAr2が表す複素環基は、5員環または6員環の複素環基が好ましい。また、複素環基は、単環の複素環基または縮合数が2~8の縮合環の複素環基が好ましく、単環の複素環基または縮合数が2~4の縮合環の複素環基がより好ましく、単環の複素環基または縮合数が2の縮合環の複素環基が特に好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられ、酸素原子、硫黄原子が好ましい。複素環基の環を構成するヘテロ原子数は、1~3が好ましく、1または2がより好ましい。Ar1およびAr2が表す基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した「置換基」が挙げられる。
【0039】
Xで表される部分がカチオンを示す場合、Yは対アニオンを表し、mxは電荷のバランスをとるために必要な数を表す。対アニオンは、例えば、Cl-、Br-、I-、p-トルエンスルホン酸イオン、エチル硫酸イオン、PF6
-、BF4
-、ClO4
-、トリス(ハロゲノアルキルスルホニル)メチドアニオン、ジ(ハロゲノアルキルスルホニル)イミドアニオン、テトラシアノボレートアニオン等が挙げられる。
Xで表される部分がアニオンを示す場合、Yは対カチオンを表し、mは電荷のバランスをとるために必要な数を表す。対カチオンは、例えば、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Ba2+、Ag2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等の金属イオン、アンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、グアニジニウムイオン、テトラメチルグアニジニウムイオン、ジアゾビシクロウンデセニウム等が挙げられる。
なお、Xで表される部分の電荷が0の場合、Yは存在しない(mxは0である)。
【0040】
以下、シアニン化合物の具体例を示す。なお、本発明はこれらに限定されない。
【0041】
【0042】
(スクアリリウム化合物)
スクアリリウム化合物は、特に制限がなく、公知の化合物を用いることができる。
スクアリリウム化合物は、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
一般式(2)
【化3】
【0043】
一般式(2)中、R6~R9はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OZ30、-COZ31、-COOZ32、-OCOZ33、-NZ34Z35、-NHCOZ36、-CONZ37Z38、-NHCONZ39Z40、-NHCOOZ41、-SZ42、-SO2Z43、-SO2OZ44、-NHSO2Z45、-SO2NZ46Z47、-B(OZ48)2、および-NHBZ49Z50を表す。Z30~Z50は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基を表す。
また、R6とR7、R8とR9はお互いに結合して環を形成しても良い。
【0044】
置換基としては、上述した「置換基」が挙げられる。
【0045】
スクアリリウム化合物は、耐光性、耐熱性の観点から、下記一般式(3)で表される化合物がより好ましい。
【0046】
【0047】
一般式(3)中、R10~R13はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、-OZ51、-COZ52、-COOZ53、-OCOZ54、-NZ55Z56、-NHCOZ57、-CONZ58Z59、-NHCONZ60Z61、-NHCOOZ62、-SZ63、-SO2Z64、-SO2OZ65、-NHSO2Z66または-SO2NZ67Z68、-B(OZ69)2、および-NHBZ70Z71を表す。Z51~Z71は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアラルキル基を表す。なお、-COOZ53のZ53が水素の場合(すなわち、カルボキシル基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、カルボネート基)、塩の状態であってもよい。また、-SO2OZ65のZ65が水素原子の場合(すなわち、スルホ基)は、水素原子が解離してもよく(すなわち、スルホネート基)、塩の状態であってもよい。また、R10とR11、R12とR13はお互いに結合して環を形成しても良い。
【0048】
「置換基」は、上述の「置換基」と同様の意義である。
【0049】
以下、スクアリリウム化合物の具体例を示す。なお、本発明はこれらに限定されない。
【0050】
【0051】
【0052】
(ピロロピロール化合物)
ピロロピロール化合物は、特に制限がなく、公知の化合物を用いることができる。
ピロロピロール化合物は、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0053】
【0054】
一般式(4)中、R1xおよびR1yは、各々独立に、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R14およびR15は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、R14およびR15は、互いに結合して環を形成してもよく、R16は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-BR4xR4y又は金属原子を表し、R16は、R1x、R1yおよびR15からなる群から選ばれる少なくとも1つと共有結合又は配位結合してもよく、R4xR4yは各々独立に、置換基を表す。一般式(4)は、特開2009-263614号公報、特開2011-68731号公報、国際公開第2015/166873号に記載されている。
【0055】
R1xおよびR1yは、各々独立に、アリール基又はヘテロアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。また、R1xおよびR1yが表すアルキル基、アリール基がおよびヘテロアリール基は、置換基を有してもよく、無置換であってもよい。置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OCOZ80、-SOZ81、-SO2Z82等が挙げられる。Z80~Z82は、各々独立に、炭化水素基又はヘテロアリール基を表す。また、置換基としては、特開2009-263614号公報の段落0020~0022に記載の置換基が挙げられる。これらの中でも、置換基としては、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OCOZ80、-SOZ81、-SO2Z82が好ましい。R1xおよびR1yで表される基としては、分岐アルキル基を有するアルコキシ基、又は-OCOZ80で表される基を置換基として有するアリール基が好ましい。分岐アルキル基の炭素数は、3~30が好ましく、3~20がより好ましい。
【0056】
R14およびR15の少なくとも一方は電子吸引性基が好ましく、R14は電子吸引性基を表し、R15はヘテロアリール基を表すことがより好ましい。電子吸引性基としては、Hammettのσp値が0.2以上の電子吸引基を表し、例えばシアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、これらの電子吸引性基はさらに置換されていてもよい。ヘテロアリール基は、5員環又は6員環が好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環又は縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~8の縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~4の縮合環がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。ヘテロ原子は、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。ヘテロアリール基は、窒素原子を1個以上有することが好ましい。一般式(4)における2個のR14同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、一般式(4)における2個のR15同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0057】
R16は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又は-BR4xR4yで表される基が好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基、又は-BR4xR4yで表される基がより好ましく、-BR4xR4yで表される基が特に好ましい。R4xR4yが表す置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基が好ましく、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基がより好ましく、アリール基が特に好ましい。これらの基は、更に置換基を有してもよい。一般式(4)における2個のR16同士は同一または異なっていてもよい。
【0058】
以下、ピロロピロール化合物の具体例を示す。以下の構造式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を表す。また、ピロロピロール化合物としては、特開2009-263614号公報の段落0016~0058、特開2011-68731号公報の段落0037~0052、特開2014-130343号公報の段落0014~0027、国際公開第2015/166873号の段落0010~0033に記載の化合物が挙げられる。なお、本発明はこれらに限定されない。
【0059】
【0060】
(ナフタロシアニン化合物)
ナフタロシアニン化合物は、特に制限がなく、下記一般式(5)で表される化合物や下記一般式(9)で表される化合物を用いることができる。
【0061】
【0062】
一般式(5)中、Q1~Q8、Yl~Y8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいフタルイミドメチル基、または、置換基を有してもよいスルファモイル基を表す。また、Q1~Q8は、それぞれ独立に、互いに結合して置換基を有してもよい芳香環を形成しても良い。ただし、Q1とQ2、Q3とQ4、Q5とQ6、Q7とQ8のいずれか1つ以上は互いに結合して置換基を有してもよい芳香環を形成する。
Zは、下記一般式(6)で示す単量体単位を含む重合体部位、または下記一般式(7)で表すリン化合物部位であり、*は、Alとの結合手である。
【0063】
置換基を有してもよいアルキル基の「アルキル基」は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-オクチル基、ステアリル基、2-エチルへキシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。「置換基を有するアルキル基」は、例えば、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2-エトキシエチル基、2-ブトキシエチル基、2-ニトロプロピル基、ベンジル基、4-メチルベンジル基、4-tert-プチルベンジル基、4-メトキシベンジル基、4-ニトロベンジル基、2,4-ジクロロベンジル基等が挙げられる。
【0064】
置換基を有してもよいアリール基の「アリール基」は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基等が挙げられる。
「置換基を有するアリール基」は、例えば、p-メチルフェニル基、p-ブロモフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-メトキシフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2-アミノフェニル基、2-メチル-4-クロロフェニル基、4-ヒドロキシ-1-ナフチル基、6-メチル-2-ナフチル基、4,5,8-トリクロロ-2-ナフチル基、アントラキノニル基、2-アミノアントラキノニル基等が挙げられる。
【0065】
置換基を有してもよいシクロアルキル基の「シクロアルキル基」は、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
「置換基を有するシクロアルキル基」は、例えば、2,5-ジメチルシクロペンチル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0066】
置換基を有してもよい複素環基の「複素環基」としては、ピリジル基、ピラジル基、ピペリジノ基、ピラニル基、モルホリノ基、アクリジニル基等が挙げられ、「置換基を有する複素環基」としては、3-メチルピリジル基、N-メチルピペリジル基、N-メチルピロリル基等が挙げられる。
【0067】
置換基を有してもよいアルコキシル基の「アルコキシル基」は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、2,3-ジメチル-3-ペンチルオキシ、n-へキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、ステアリルオキシ基、2-エチルへキシルオキシ基等の直鎖又は分岐アルコキシル基が挙げられる。
「置換基を有するアルコキシル基」は、例えば、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ基、2,2-ジトリフルオロメチルプロポキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-ブトキシエトキシ基、2-ニトロプロポキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0068】
置換基を有してもよいアリールオキシ基の「アリールオキシ基」は、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基、アンスリルオキシ基等が挙げられ、
「置換基を有するアリールオキシ基」は、例えば、p-メチルフェノキシ基、p-ニトロフェノキシ基、p-メトキシフェノキシ基、2,4-ジクロロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、2-メチル-4-クロロフェノキシ基等が挙げられる。
【0069】
置換基を有してもよいアルキルチオ基の「アルキルチオ基」は、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基等が挙げられる。
「置換基を有するアルキルチオ基」は、例えば、メトキシエチルチオ基、アミノエチルチオ基、ベンジルアミノエチルチオ基、メチルカルボニルアミノエチルチオ基、フェニルカルボニルアミノエチルチオ基等が挙げられる。
【0070】
置換基を有してもよいアリールチオ基の「アリールチオ基」は、例えば、フェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基、9-アンスリルチオ基等が挙げられる。
「置換基を有するアリールチオ基」は、例えば、クロロフェニルチオ基、トリフルオロメチルフェニルチオ基、シアノフェニルチオ基、ニトロフェニルチオ基、2-アミノフェニルチオ基、2-ヒドロキシフェニルチオ基等が挙げられる。
【0071】
置換基を有してもよい芳香環の置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、カルボキシル基、スルホン基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基が挙げられる。
【0072】
【0073】
一般式(6)中、Xは、-CONH-R25-、-COO-R26-、-CONH-R27-O-、-COO-R28-O-、R25~R28は、炭素原子と炭素原子の間が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良いアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。R31は水素またはメチル基を表す。
【0074】
アルキレン基は、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。アリーレン基は、例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン基、ターフェニレン基、アンスリレン基があげられる。
【0075】
一般式(6)で示す単量体単位を含む重合体部位は、例えば、(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート、(2-(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)アシッドホスフェート等の単量体を重合して得る。また、これらの単量体以外の単量体(以下、その他単量体ともいう)を併用し共重合することもできる。
【0076】
その他単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコールのエステル類、スチレン類、(メタ)アクリロニトリル、酸性基含有モノマー、熱架橋性基含有モノマー等が挙げられる。
【0077】
重合体部位の重量平均分子量は、5000~20000が好ましく、8000~15000が好ましい。適度な分子量を有することで光学特性と耐熱性が向上する。
【0078】
重合体部位のガラス転移温度(Tg)は、-50~150℃が好ましく、20~80℃がより好ましい。適度なTgにより光学特性が向上する。
【0079】
【0080】
一般式(7)中、R29およびR30は、それぞれ独立に、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R29とR30は、互いに結合して環を形成しても良い。
【0081】
置換基を有してもよいアルキル基の「アルキル基」、置換基を有してもよいアリール基の「アリール基」、置換基を有してもよいアルコキシル基の「アルコキシル基」、置換基を有してもよいアリールオキシ基の「アリールオキシ基」は、上記一般式(5)の説明で例示したものと同じものがあげられる。
【0082】
一般式(7)は、分散性や色特性の観点から、R29とR30のうちの少なくとも1つが、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアリールオキシ基が好ましく、R29とR30がいずれもアリール基、またはアリールオキシ基であることがより好ましく、R29とR30がいずれもフェニル基またはフェノキシ基であることがさらに好ましい。
【0083】
下記一般式(8)で表される化合物がより好ましい。
【0084】
【0085】
一般式(8)中、Y9~Y16、Q9~Q22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいフタルイミドメチル基、または、置換基を有してもよいスルファモイル基を表す。
Zは、一般式(6)で示す単量体単位を含む重合体部位、または一般式(7)で表すリン化合物部位であり、*は、Alとの結合手である。
【0086】
置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいフタルイミドメチル基、または、置換基を有してもよいスルファモイル基は、上述した一般式(5)での説明の通りである。
【0087】
一般式(8)中、Y9~Y16、Q9~Q22は、分散性や色特性の観点から、水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよいアルコキシル基が好ましい。
【0088】
【0089】
一般式(9)中、Q30~Q53は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、-OZ90または-SZ91を表し、Z90およびZ91は、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基を表す。M1は、2個の水素原子、金属原子、金属酸化物または金属ハロゲンを表す。ただし、金属はAlを除く。
【0090】
ハロゲン原子は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0091】
Q30~Q53が表す置換基を有してもよいアルキル基の「アルキル基」は、炭素原子数1~20が好ましく、1~12がより好ましく、1~8が特に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでも良く、直鎖または分岐が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-オクチル基、ステアリル基、2-エチルへキシル基、3-メチル-1-イソプロピルブチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基等が挙げられる。
【0092】
Q30~Q53が表す置換基を有してもよいアルキル基の「置換基」は、例えば、アルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0093】
Q30~Q53が表す置換基を有してもよいアリール基の「アリール基」は、炭素原子数6~30が好ましく、6~20がより好ましい。具体的には、フェニル基、フェネチル基、o-、m-若しくはp-トリル基、2,3-若しくは2,4-キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基等が挙げられる。
【0094】
Q30~Q53が表す置換基を有してもよいアリール基の「置換基」は、例えば、アルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0095】
Q30~Q53が表す置換基を有してもよい複素環基の「複素環基」は、5員環または6員環の複素環基が好ましい。具体的には、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
【0096】
Q30~Q53が表す置換基を有してもよい複素環基の「置換基」は、例えば、アルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0097】
Z90およびZ91が表す置換基を有してもよいアルキル基は、Q30~Q53が表す置換基を有してもよいアルキル基と同じものが挙げられる。
【0098】
Z90およびZ91が表す置換基を有してもよいアリール基は、Q30~Q53が表す置換基を有してもよいアリール基と同じものが挙げられる。
【0099】
M1が、2個の水素原子を表す場合、一般式(9)中のN-M1-Nの部分が2つのN-Hとして示される構造を形成する。
M1が表す金属原子は、例えば、鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、および錫等が挙げられる。
M1が表す金属酸化物は、例えば、チタニル、およびバナジル等が挙げられる。
M1が表す金属ハロゲン化物は、塩化インジウム、塩化ゲルマニウム、塩化錫(II)、塩化錫(IV)、および塩化珪素等が挙げられる。
ただし、M1が表す金属原子、金属酸化物および金属ハロゲン化物の金属は、アルミニウムを除く。
これらの中でも、M1としては、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、鉄、バナジル、チタニル、塩化インジウム、塩化錫(II)であることが好ましく、銅、亜鉛、バナジル、チタニルであることがより好ましく、バナジルであることが特に好ましい。
【0100】
以下、ナフタロシアニン化合物の具体例を示す。なお、本発明はこれらに限定されない。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
(フタロシアニン化合物)
フタロシアニン化合物は、特に制限がなく、公知の化合物を用いることができる。例えば、下記一般式(10)で表される化合物が挙げられる。
【0105】
【0106】
一般式(10)中、複数のZxは、それぞれ独立して置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。複数のZyは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、または置換基を有してもよいアルキル基を表す。M2は、2個の水素原子、2価の金属原子、または3若しくは4価の金属原子の誘導体を表す。複数のnyは、それぞれ独立して3~6の整数を表す。
【0107】
Zxが表す置換基を有してもよいアルキル基の「アルキル基」は、炭素原子数1~20が好ましく、1~12がより好ましく、1~8が特に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでも良く、直鎖または分岐が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-オクチル基、ステアリル基、2-エチルへキシル基、3-メチル-1-イソプロピルブチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基等が挙げられる。
【0108】
Zxが表す置換基を有してもよいアルキル基の「置換基」は、例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルボキシル基、チオール基、ハロゲン基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0109】
Zxが表す置換基を有してもよいアリール基の「アリール基」は、炭素原子数6~30が好ましく、6~20がより好ましい。具体的には、フェニル基、フェネチル基、o-、m-若しくはp-トリル基、2,3-若しくは2,4-キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基等が挙げられる。
【0110】
Zxが表す置換基を有してもよいアリール基の「置換基」は、例えば、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルボキシル基、チオール基、ハロゲン基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0111】
複数のZxは、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0112】
Zyが表す置換基を有してもよいアルキル基は、R1が表す置換基を有していてもよいアルキル基と同じものが挙げられる。
【0113】
複数のZyは、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0114】
Zyは、水素原子が好ましい。
【0115】
M2が、2個の水素原子を表す場合、一般式(10)中のN-M-Nの部分が2つのN-Hとして示される構造を形成する。
M2が表す2価の金属原子は、例えば、鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、マンガン、および錫等が挙げられる。
M2が表す3若しくは4価の金属原子の誘導体は、例えば、AlCl、AlBr、AlOH、InCl、InBr、InI、SiCl2、SiBr2、Si(OH)2、GeCl2、GeBr2、GeI2、SnCl2、SnBr2、SnI2、Sn(OH)2、VO、TiO2等が挙げられる。
これらの中でも、M2としては、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、鉄、錫、インジウム、SnCl2、AlCl、VO、TiO2が好ましく、VOがより好ましい。
【0116】
(インジゴ化合物)
インジゴ化合物は、下記一般式(11)、又は/および一般式(12)で表される化合物が好ましい。
【0117】
【0118】
一般式(11)、および一般式(12)中、X1~X40はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、アミノ基、置換基を有していてもよいアルキルアミノ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、-SO3H;-COOH;およびこれら酸性基の1価~3価の金属塩;アルキルアンモニウム塩を表す。Mは、金属原子を表す。
【0119】
置換基を有してもよいアルキル基の「アルキル基」は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-オクチル基、ステアリル基、2-エチルへキシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。「置換基を有するアルキル基」は、例えば、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2-エトキシエチル基、2-ブトキシエチル基、2-ニトロプロピル基、ベンジル基、4-メチルベンジル基、4-tert-プチルベンジル基、4-メトキシベンジル基、4-ニトロベンジル基、2,4-ジクロロベンジル基等が挙げられる。
【0120】
置換基を有してもよいアリール基の「アリール基」は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基等が挙げられる。
「置換基を有するアリール基」は、例えば、p-メチルフェニル基、p-ブロモフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-メトキシフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2-アミノフェニル基、2-メチル-4-クロロフェニル基、4-ヒドロキシ-1-ナフチル基、6-メチル-2-ナフチル基、4,5,8-トリクロロ-2-ナフチル基、アントラキノニル基、2-アミノアントラキノニル基等が挙げられる。
【0121】
置換基を有してもよいアルコキシル基の「アルコキシル基」は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、2,3-ジメチル-3-ペンチルオキシ、n-へキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、ステアリルオキシ基、2-エチルへキシルオキシ基等の直鎖又は分岐アルコキシル基が挙げられる。
「置換基を有するアルコキシル基」は、例えば、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ基、2,2-ジトリフルオロメチルプロポキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-ブトキシエトキシ基、2-ニトロプロポキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0122】
置換基を有してもよいアリールオキシ基の「アリールオキシ基」は、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基、アンスリルオキシ基等が挙げられ、「置換基を有するアリールオキシ基」は、例えば、p-メチルフェノキシ基、p-ニトロフェノキシ基、p-メトキシフェノキシ基、2,4-ジクロロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、2-メチル-4-クロロフェノキシ基等が挙げられる。
【0123】
「置換基を有してもよいアリールアルキル基」は、例えば、ベンジル基、2―フェニルプロパン―イル基、スチリル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基等が挙げられる。
【0124】
置換基を有してもよいシクロアルキル基の「シクロアルキル基」は、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。「置換基を有するシクロアルキル基」は、例えば、2,5-ジメチルシクロペンチル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0125】
置換基を有してもよいアルキルチオ基の「アルキルチオ基」は、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基等が挙げられる。
「置換基を有するアルキルチオ基」は、例えば、メトキシエチルチオ基、アミノエチルチオ基、ベンジルアミノエチルチオ基、メチルカルボニルアミノエチルチオ基、フェニルカルボニルアミノエチルチオ基等が挙げられる。
【0126】
置換基を有してもよいアリールチオ基の「アリールチオ基」は、例えば、フェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基、9-アンスリルチオ基等が挙げられる。
「置換基を有するアリールチオ基」は、例えば、クロロフェニルチオ基、トリフルオロメチルフェニルチオ基、シアノフェニルチオ基、ニトロフェニルチオ基、2-アミノフェニルチオ基、2-ヒドロキシフェニルチオ基等が挙げられる。
【0127】
置換基を有していてもよいアルキルアミノ基の「アルキルアミノ基」は、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基、イソプロピルアミノ基、イソブチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、sec-ペンチルアミノ基、tert-ペンチルアミノ基、tert-オクチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、シクロブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、シクロヘプチルアミノ基、シクロオクチルアミノ基、シクロドデシルアミノ基、1-アダマンタミノ基、2-アダマンタミノ基等が挙げられる。
【0128】
置換基を有していてもよいアリールアミノ基の「アリールアミノ基」は、例えば、アニリノ基、1-ナフチルアミノ基、2-ナフチルアミノ基、o-トルイジノ基、m-トルイジノ基、p-トルイジノ基、2-ビフェニルアミノ基、3-ビフェニルアミノ基、4-ビフェニルアミノ基、1-フルオレンアミノ基、2-フルオレンアミノ基、2-チアゾールアミノ基、p-ターフェニルアミノ基等が挙げられる
【0129】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0130】
酸性基としては、-SO3H、-COOHが挙げられる。これら酸性基の1価~3価の金属塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、アルミニウム塩等が挙げられる。また、酸性基のアルキルアンモニウム塩は、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン等の長鎖モノアルキルアミンのアンモニウム塩、パルミチルトリメチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム、ジラウリルジメチルアンモニウム、ジステアリルジメチルアンモニウム塩等の4級アルキルアンモニウム塩が挙げられる。
【0131】
上記の置換基の内、X1~X40として好ましい置換基としては、水素原子、メチル基、メトキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、-SO3Hが挙げられる。
【0132】
Mは、金属原子を表す。金属原子としてはZn、Co、Ni、Ru、Pt、Mn、Sn、Ti等が挙げられる。これらの中でも2価金属原子が好ましく、Zn、Co、Niがより好ましい。
【0133】
以下、インジゴ化合物の具体例を示す。なお、本発明はこれらに限定されない。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
近赤外線吸収性色素(A)は、単独または2種類以上を併用して使用できる。2種類以上併用して用いる場合、極大吸収波長の異なる2種以上の化合物を用いることが好ましい。これにより、1種類の近赤外線吸収性色素(A)を使用した場合に比べて、吸収スペクトルの波形が広がり、幅広い波長範囲の近赤外線を遮断できる。
【0139】
近赤外線吸収性色素(A)の含有量は、近赤外線吸収性の観点から、近赤外線吸収性組成物の不揮発分100質量%中、0.5~80質量%が好ましく、1~70質量%がより好ましい。
【0140】
<波長400nm以上700nm未満に極大吸収波長を有する有機色素(D)>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、波長400nm以上700nm未満に極大吸収波長を有する有機色素(D)を含むことができる。これにより、光学フィルタの可視光領域の透過率を制御することができる。
【0141】
有機色素(D)は、カラーインデックスにおいてピグメントに分類されている化合物が好ましい。
有機色素(D)としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,12,14,15,16,17,21,22,23,31,32,37,38,41,47,48,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53,53:1,53:2,53:3,57,57:1,57:2,58:4,60,63,63:1,63:2,64,64:1,68,69,81,81:1,81:2,81:3,81:4,83,88,90:1,101,101:1,104,108,108:1,109,112,113,114,122,123,144,146,147,149,151,166,168,169,170,172,173,174,175,176,177,178,179,181,184,185,187,188,190,193,194,200,202,206,207,208,209,210,214,216,220,221,224,230,231,232,233,235,236,237,238,239,242,243,245,247,249,250,251,253,254,255,256,257,258,259,260,262,263,264,265,266,267,268,269,270,271,272,273,274,275,276,277,278,279,280,281,282,283,284,285,286,287,291,295,296、特開2014-134712号公報、特許第6368844号公報等に記載された赤色顔料;
C.I.ピグメントオレンジ36,38,43,64,71,73、76等の橙色顔料;
C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,10,12,13,14,15,16,17,18,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,126,127,128,129,138,139,147,150,151,152、153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,192,193,194,196,198,199,213,214,231,233、特開2012-226110号公報、特開2017-171912号公報、特開2017-171913号公報、特開2017-171914号公報、特開2017-171915号公報等に記載された黄色顔料;
C.I.ピグメントグリーン1,2,4,7,8,10,13,14,15,17,18,19,26,36,37,45,48,50,51,54,55,58,59,62,63等の緑色顔料;
C.I.ピグメントブルー1,1:2,9,14,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,17,19,25,27,28,29,33,35,36,56,56:1,60,61,61:1,62,63,66,67,68,71,72,73,74,75,76,78,79、80等の青色顔料;
C.I.ピグメントバイオレット1,1:1,2,2:2,3,3:1,3:3,5,5:1,14,15,16,19,23,25,27,29,31,32,37,39,42,44,47,49,50等の紫色顔料が挙げられる。
【0142】
本発明の近赤外線吸収性組成物は、赤外線透過フィルタに用いる際には、有機色素(D)として、赤色顔料、橙色顔料、黄色顔料、青色顔料、緑色顔料および紫色顔料からなる群から選ばれる2種以上の顔料を含み、黒色を呈することが好ましい。
【0143】
有機色素(D)は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0144】
有機色素(D)の含有量は、色素の合計100質量%中、1質量%以上70質量%以下が好ましく、5質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0145】
近赤外線吸収性色素(A)、有機色素(D)が顔料の場合、微細化して用いることができる。微細化方法は、特に限定されるものではなく、例えば、湿式磨砕、乾式磨砕、溶解析出法いずれも使用できる。これらの中でも、湿式磨砕の1種であるニーダー法によるソルトミリング処理が好ましい。微細化顔料のTEM(透過型電子顕微鏡)により求められる平均一次粒子径は、5nm以上90nm以下が好ましい。なお、分散性、安定性の観点から、平均一次粒子径は10nm以上70nm以下がより好ましい。
【0146】
<樹脂型分散剤>
樹脂型分散剤は、例えば、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物;ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩等の油性分散剤;(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、燐酸エステル系等が挙げられる。
【0147】
樹脂型分散剤は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0148】
[塩基性樹脂型分散剤(B)]
本発明の近赤外線吸収性組成物は、樹脂型分散剤として塩基性樹脂型分散剤(B)を含む。塩基性樹脂型分散剤(B)は、リビングラジカル重合で合成されてなる、A-Bブロックポリマー、またはB-A-Bブロックポリマーである。
【0149】
(ブロックポリマー)
ブロックポリマーの合成は、例えば、先にAブロックを合成し、その後にBブロックを合成することで、A-Bブロックポリマーを製造することができる。なお、Bブロックは、Aブロックよりも先に合成しても良い。
【0150】
ブロックポリマーの重合方法は、公知の方法を用いることができる。本明細書では、反応制御が容易なリビングラジカル重合が好ましい。
リビング重合法は、例えば、特開平9-62002号公報、特開2002-31713号公報や、P.Lutz,P.Masson et al,Polym.Bull.12,79 (1984),B.C.Anderson,G.D.Andrews et al,Macromolecules,14,1601(1981),K.Hatada,K.Ute,et al,Polym.J.17,977(1985),18,1037(1986),右手浩一、畑田耕一、高分子加工、36,366(1987),東村敏延、沢本光男、高分子論文集、46,189(1989),M.Kuroki,T.Aida,J.Am.Chem.Soc,109,4737(1987)、相田卓三、井上祥平、有機合成化学、43,300(1985),D.Y.Sogoh,W.R.Hertler et al,Macromolecules,20,1473(1987)等に記載された方法が挙げられる。これらの中でも、可逆的付加開裂連鎖移動重合(以下、RAFT重合)、原子移動ラジカル重合(以下、ATRP)、ヨウ素化合物を用いたリビングラジカル重合、有機テルル化合物を用いたリビングラジカル重合(以下、TERP)が好ましく、簡便な操作法で、かつ重金属を含む化合物を必要としない点でRAFT重合がより好ましい。
【0151】
RAFT重合は、RAFT剤の存在下、単量体をラジカル重合する方法であり、ポリマーの分子量および分子量分布を制御しやすい。
【0152】
単量体は、未反応状態であり、単量体単位は、単量体が重合後に樹脂を形成している状態である。
【0153】
RAFT剤は、例えば、ジチオベンゾエート型、トリチオカーボネート型、ジチオカルバメート型、およびキサンテート型等、ならびにこれらの前駆体であるジスルフィド型が挙げられる。
ジチオベンゾエート型は、例えば、ジチオ安息香酸2-シアノ-2-プロピル、4-シアノ-4-(チオベンゾイルチオ)ペンタン酸、ベンゾジチオ酸2-フェニル-2-プロピル、トリチオカーボネート型は、例えば、4-[(2-カルボキシエチルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]-4-シアノペンタン酸、2-{[(2-カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル等が挙げられる。
ジチオカルバメート型は、例えば、4-クロロ-3,5-ジメチルピラゾ-ル-1-カルボジチオ酸2'-シアノブタン-2'-イル、3,5-ジメチルピラゾ-ル-1-カルボジチオ酸2'-シアノブタン-2'-イル、3,5-ジメチルピラゾ-ル-1-カルボジチオ酸シアノメチル、N-メチル-N-フェニルジチオカルバミン酸シアノメチル等が挙げられる。
ジスルフィド型としては、ビス(ドデシルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィド、ビス(チオベンゾイル)ジスルフィド等が挙げられる。これらはA-Bブロックポリマーの製造に好ましい。
トリチオカーボネート型は、例えば、S,S-ジベンジルトリチオ炭酸、トリチオ炭酸=ビス[4-(アリルオキシカルボニル)ベンジル]、トリチオ炭酸=ビス[4-(2,3-ジヒドロキシプロポキシカルボニル)ベンジル]、トリチオ炭酸=ビス{4-[エチル-(2-アセチルオキシエチル)カルバモイル]ベンジル}、トリチオ炭酸ビス{4-[エチル-(2-ヒドロキシエチル)カルバモイル]ベンジル}、トリチオ炭酸=ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンジル]、トリチオ炭酸=ビス[4-(アリルオキシカルボニル)ベンジル]等が挙げられる。これらは対称なB-A-Bブロックポリマーの製造に好ましい。
【0154】
これらの中でも、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル、ジチオ安息香酸2-シアノ-2-プロピル、ビス(チオベンゾイル)ジスルフィド、S,S-ジベンジルトリチオ炭酸は、A-BおよびB-A-Bブロックポリマーを制御性良く合成できる。
【0155】
(Aブロック)
塩基性樹脂型分散剤(B)のAブロックは、(1)~(3)の全てを有するアミノ単位(a1)を含むポリマーブロックであることが好ましい。
(1)2価の連結基であるエステル結合、またはアリール基
(2)水素結合性を有する連結基であるウレタン結合、またはウレア結合
(3)複素環アミノ基、脂肪族アミノ基、およびこれらの4級塩からなる群から選ばれる1種のアミノ基
【0156】
Aブロック中の全構成単位におけるアミノ単位(a1)の割合は、近赤外線吸収性組成物の分散性、および保存安定性の観点から、Aブロック100モル%中、30モル%以上100モル%以下が好ましく、50モル%以上100モル%以下がより好ましく、80モル%以上100モル%以下がさらに好ましい。
【0157】
(アミノ単位(a1))
アミノ単位(a1)は、上述した(1)~(3)の全てを有する。
前記アミノ単位(a1)は、色素への吸着部位として機能する。これにより分散後の初期粘度が低く、かつ保存安定性が向上する。
水素結合性を有する連結基、およびアミノ基がAブロック中の1つの構成単位に含まれることにより、色素に容易に吸着する。
【0158】
アミノ単位(a1)の合成は、例えば、(1)イソシアネート基を有する単量体単位にイソシアネート基反応性官能基およびアミノ基を有する化合物を反応させる方法、(2)イソシアネート基を有する単量体にイソシアネート基反応性官能基およびアミノ基を有する化合物を反応させた単量体を重合する方法が挙げられる。
【0159】
((1)イソシアネート基を有する単量体)
イソシアネート基を有する単量体は、例えば、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート、2-(2-イソシアナトエトキシ)エチルメタクリレート、イソシアン酸3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジル等が挙げられる。これらの中でも重合性とイソシアネート基の反応性の観点から2-イソシアナトエチルメタクリレート、および2-イソシアナトエチルアクリレートが好ましく、2-イソシアナトエチルアクリレートが最も好ましい。
【0160】
((2)イソシアネート基反応性官能基およびアミノ基を有する化合物)
イソシアネート基反応性官能基およびアミノ基を有する化合物のイソシアネート基反応性官能基は、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、水酸基、チオール基、カルボキシ基等が挙げられる。
【0161】
イソシアネート基反応性官能基およびアミノ基を有する化合物のうち、芳香族性を有する複素環アミノ基を有する単量体は、例えば、芳香族性を有する複素環アミノ基およびイソシアネート基またはならびにエポキシ基と反応可能な官能基を有する化合物は、例えば、2-アミノピリジン、3-アミノピリジン、4-アミノピリジン、2-ピコリルアミン、3-ピコリルアミン、4-ピコリルアミン、1-(2-ピリジル)ピペラジン、1-(4-ピリジル)ピペラジン、1-(2-ピリミジル)ピペラジン、ビス-2-ピコリルアミン、2-アミノ-1H-イミダゾール、1H-イミダゾール-4-エタンアミン、2-アミノ-1H-ベンゾイミダゾール、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール、5-アミノ-2-ベンゾイミダゾリノン、2-アミノ-N-エチルカルバゾール、3-アミノ-9H-カルバゾール、3-(アミノエチル)-9-メチル-9H-カルバゾール、3-(アミノメチル)-9-メチル-9H-カルバゾール、8-アミノキノリン、9-アミノアクリジン、1-(3-アミノプロピル)-2-ピロリドン、イミダゾール、ピラゾール、1,2,4-トリアゾール、2-ピリジンメタノール、3-ピリジンメタノール、3-ピリジンメタノール、2-ピリジンエタノール、3-ピリジンエタノール、4-ピリジンエタノール等が挙げられる。これらの中でも色素への吸着性が向上する面で2-アミノピリジン、3-アミノピリジン、4-アミノピリジン、2-ピコリルアミン、3-ピコリルアミン、4-ピコリルアミンが好ましい。
【0162】
イソシアネート基反応性官能基およびアミノ基を有する化合物のうち、芳香族性を有さない複素環アミノ基を有する単量体は、例えば、N-メチルピペラジン、N-メチル-3-ピペリジンメタノール、N-メチル-2-ピペリジンエタノール、4-アミノメチル-1-ブチルピペリジン、4―アミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、N-ベンジル-3-アミノピロリジン、N-メチル-3-ピロリジノール、N-ベンジル-3-ピロリジノール、N-アリルピペラジン、N-イソブチルピペラジン、1-シクロペンチルピペラジン、1-アミノ-4-シクロペンチルピペラジン、1-ピペリジル-4-メチルピペラジン、N-メチルホモピペラジン、1-(2-アミノエチル)ピペリジン、N-(2-アミノエチル)-4-ピペコリン、N-(3-アミノプロピル)ピペリジン、N-(3-アミノプロピル)-2-ピペコリン、N-(3-アミノプロピル)-4-ピペコリン、N-アミノピペリジン、N-アミノ-4-ピペコリン、1-(2-アミノエチル)ピロリジン、2-ヒドロキシメチルトリエチレンジアミン等が挙げられる。これらの中でも色素への吸着性が向上する面でN-メチルピペラジンが好ましい。
【0163】
イソシアネート基反応性官能基およびアミノ基を有する化合物のうち、脂肪族アミノ基を有する単量体は、例えば、N-ベンジル-N-メチルアミノエタノール、N, N-ジベンジルエタノールアミン、4-ジメチルアミノピペリジン、ジメチルアミノプロパノール、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、2-ジイソプロピルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、3-ジブチルアミノプロピルアミン、ジイソプロピルアミノプロピルアミン、3-(ジイソブチルアミノ)プロピルアミン、3-(2-ジメチルアミノエトキシ)プロピルアミン、3-ジエタノールアミノプロピルアミン等が挙げられる。これらの中でも色素への吸着性が向上する面でジメチルアミノプロパノール、ジメチルアミノプロピルアミンが好ましい。
【0164】
Aブロックは、色素への吸着性に優れる面で、芳香族性を有する複素環アミノ基を有するアミノ単位が好ましい。
【0165】
アミノ基のうち、芳香族性を有する複素環アミノ基の4級塩の合成は、芳香族性を有する複素環アミノ基に対して、4級化剤を反応させて4級アンモニウム塩を合成する方法が挙げられる。合成の操作に特に制限はないが、例えば、先にAブロックのアミノ単位を合成してから4級化剤を反応させる方法が挙げられる。
【0166】
4級化剤は、例えば、塩化メチル、塩化ブチル、臭化メチル、臭化ブチル、ヨウ化メチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル等のハロゲン化アルキル;塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル等のハロゲン化ベンジル;硫酸ジメチル、硫酸ジブチル等の硫酸ジアルキル等が挙げられる。
【0167】
原料の安全性、および近赤外線吸収性組成物の保存安定性の観点から、ハロゲン化アルキルが好ましく、ヨウ化プロピル、またはヨウ化ブチルがより好ましい。
【0168】
アミノ単位に含まれる2価の連結基は、エステル結合、またはアリール基であり、エステル結合が好ましい。
【0169】
アミノ単位に含まれる水素結合性を有する連結基は、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合、またはチオウレタン結合であり、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合が好ましく、ウレア結合がより好ましい。
【0170】
Aブロックの合成に使用できる上記以外のモノマーは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=1~5)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=1~5)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=1~5)プロピルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=1~5)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=1~5)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=1~5)プロピルエーテル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メタクリロイルモルホリンなどの(メタ)アクリルアミド系モノマー;酢酸ビニル等のその他ビニルモノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の3級アミノ基含有モノマー等が挙げられる。なお、nは、例えば、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等アルキレノキシ基の繰り返し単位数を示す。
【0171】
(Bブロック)
Bブロックは、(メタ)アクリル酸エステル単位(b1)と、ブロックイソシアネート基を有する単量体単位(b2)を含むポリマーブロックである。
【0172】
((メタ)アクリル酸エステル単位(b1))
(メタ)アクリル酸エステル単位(b1)を構成するアクリル酸エステルは、反応性官能基を含まない単量体である。(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の鎖状および脂環状アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等の芳香環(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0173】
(メタ)アクリル酸エステルは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0174】
(ブロックイソシアネート基を有する単量体単位(b2))
ブロックイソシアネート基を有する単量体単位(b2)を構成するブロックイソシアネート基を有する単量体は、例えば、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、3-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、2-イソシアナト-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-イソシアナト-1,1-ジメチルエチル(メタ)アクリレート、4-イソシアナトシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メタクリロイルイソシアネート等が挙げられる。また、2-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとジイソシアネート化合物との等モル反応生成物も使用できる。こられの中でも、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0175】
ブロック剤は、オキシム化合物、ラクタム化合物、フェノール化合物、アルコール化合物、アミン化合物、活性メチレン化合物、ピラゾール化合物、メルカプタン化合物、イミダゾール化合物、イミド化合物、尿素化合物、イミン化合物、および重亜硫酸塩化合物等が挙げられる。
【0176】
オキシム化合物としては、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等が挙げられる。これらの中でも、メチルエチルケトオキシムが好ましい。
ラクタム化合物としては、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等が挙げられる。
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、2,6-キシレノール、3,5-キシレノール、エチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、ノニルフェノール、2-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ナフトール、p-ニトロフェノール等が挙げられる。これらの中でも、3,5-キシレノール、2-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸メチルが好ましい。
アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ベンジルアルコール、フェニルセロソルブ、フルフリルアルコールが挙げられる。
アミン化合物としては、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、アニリン、カルバゾール等が挙げられる。
活性メチレン化合物としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等が挙げられ、マロン酸ジエチルが好ましい。
ピラゾール化合物としては、ピラゾール、メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等が挙げられ、3,5-ジメチルピラゾールが好ましい。
メルカプタン化合物としては、ブチルメルカプタン、チオフェノール、tert-ドデシルメルカプタン等が挙げられる。
イミダゾール化合物としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。
イミド化合物としては、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、マレイミド、フタルイミド等が挙げられる。
尿素化合物としては、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等が挙げられる。
イミン化合物としては、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
重亜硫酸塩化合物としては、重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリウム等が挙げられる。
【0177】
ブロック剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0178】
ブロック剤は、オキシム化合物、ラクタム化合物、フェノール化合物、アルコール化合物、アミン化合物、活性メチレン化合物、ピラゾール化合物、メルカプタン化合物、イミダゾール化合物、およびイミド化合物からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、保護反応、脱保護反応の観点から、オキシム化合物、フェノール化合物、活性メチレン化合物、ピラゾール化合物からなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0179】
ブロックイソシアネート基を有する単量体は、例えば、以下の化合物が挙げられる。なお、本発明はこれらに限定されない。
【0180】
【0181】
ブロックイソシアネート基を有する単量体の市販品としては、昭和電工社製のカレンズMOI-DEM(ブロック剤の脱離温度:85~95℃),MOI-BP(ブロック剤の脱離温度:105~115℃),MOI-BM(125~135℃)等が挙げられる。
【0182】
塩基性樹脂型分散剤(B)のBブロックにブロックイソシアネート基を有する単量体単位(b2)を含むことで、色素の吸着を阻害しない範囲で、色素の近傍に存在できるため、効率的に膜の凝集異物を低減し、優れた膜厚均一性を得ることができる。
【0183】
ブロックイソシアネート基を有する単量体単位(b2)の含有量は、Bブロック100モル%中、5モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上60モル%以下がより好ましい。5モル%より少ないと、膜の凝集異物を低減できず、70モル%より多いと近赤外線吸収性組成物の保存安定性が悪化する。
【0184】
Bブロックは、さらに、反応性官能基を有する単量体単位を含むことができる。
反応性官能基を有する単量体単位を形成できる反応性官能基を有する単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル等のオキセタン基を有する(メタ)アクリレート;tert-ブチル(メタ)アクリレート等のtert-ブチル基を有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸等のカルボキシ基含有(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも耐熱性が向上する面で(メタ)アクリル酸(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル、t-ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0185】
Bブロックは、さらにアルキレンオキシ基を有する単量体単位を含むことができる。アルキレンオキシ基は、例えば、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基等が挙げられる。これらの中でも現像性や解像性が向上する面でエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基がより好ましい。
アルキレンオキシ基含有モノマー単位を形成できるアルキレンオキシ基含有モノマーは、例えば、ポリエチレングリコール(n=1~30)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=1~30)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=1~30)プロピルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=1~30)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=1~30)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=1~30)プロピルエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも保存安定性が向上する面でエチレンオキシ基を1~30個有するポリエチレングリコール(n=1~30)メチルエーテル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、nは、アルキレンオキシ基の平均数を示す。
【0186】
Bブロックは、カルボキシ基を有する単位、およびフェノール性水酸基を有する単位からなる群より選択される1種以上を有することができる。カルボキシ基を有する単位は、カルボキシ基含有モノマーから形成できる。カルボキシ基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、2-メタクリロイルオキシエチルサクシネート等が挙げられる。フェノール性水酸基を有する単位は、フェノール性水酸基含有モノマーから形成できる。フェノール性水酸基含有モノマーは、例えば、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシスチレン等が挙げられる。これらの中でも良好な現像性が得られる面で(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0187】
Bブロックは、その他単量体単位を含むことができる。その他単量体単位は、その他モノマーから形成できる。その他モノマーは、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系モノマー;酢酸ビニル;N-メタクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0188】
塩基性樹脂型分散剤(B)のAブロックとBブロックのモル比率は、A-Bブロックポリマーの場合、A/(A+B)=5モル%以上70モル%以下が好ましく、15モル%以上50モル%以下がより好ましい。また、同じくB-A-Bブロックポリマーの場合、A/(A+B)=10モル%以上70モル%以下が好ましく、20モル%以上50モル%以下がより好ましい。適切な比率で使用すると初期粘度を抑制できる上、保存安定性がより向上する。
【0189】
塩基性樹脂型分散剤(B)は保存安定性の観点から、A-Bブロックポリマーが好ましい。
【0190】
塩基性樹脂型分散剤(B)のアミン価は、10mgKOH/g以上200mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以上150mgKOH/g以下がより好ましく、30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下が特に好ましい。適度なアミン価を有すると、分散性、および保存安定性がより向上する。
【0191】
塩基性樹脂型分散剤(B)の質量平均分子量は、3000~60000が好ましく、10000~50000がより好ましい。適度な分子量を有すると濾過性、および保存安定性がより向上する。
【0192】
塩基性樹脂型分散剤(B)は、色素の合計100質量%に対し、好ましくは0.1~200質量%、さらに好ましくは0.1~150質量%である。適量使用すると良好な分散性が得られる。
【0193】
[酸性樹脂型分散剤]
本発明の近赤外線吸収性組成物は、酸性樹脂型分散剤も併用することができる。例えば、酸性樹脂型分散剤として、下記(S1)又は(S2)を含有することも好ましい。
(S1)水酸基を有する重合体の水酸基と、トリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物である樹脂型分散剤。
(S2)水酸基を有する化合物の水酸基と、トリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物の存在下に、エチレン性不飽和単量体を重合した重合体である樹脂型分散剤。
【0194】
{樹脂型分散剤(S1)}
樹脂型分散剤(S1)は、WO2008/007776号公報、特開2008-029901号公報、特開2009-155406号公報等の公知の方法で製造することができる。水酸基を有する重合体(p)は、末端に水酸基を有する重合体であることが好ましく、例えば、水酸基を有する化合物(q)の存在下に、エチレン性不飽和単量体(r)を重合した重合体として得ることができる。水酸基を有する化合物(q)としては、分子内に水酸基とチオール基を有する化合物であることが好ましい。末端の水酸基は複数であることが好ましいため、中でも、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(q1)が好適に用いられる。
【0195】
すなわち、より好ましい一例である、片末端に2つの水酸基を有する重合体は、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(q1)の存在下に、単量体(r1)を含むエチレン性不飽和単量体(r)を重合した重合体(p1)として得ることができる。水酸基を有する重合体(p)の水酸基は、トリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基と反応してエステル結合を形成する一方、無水環は開環し、カルボン酸を生じる。
【0196】
{樹脂型分散剤(S2)}
樹脂型分散剤(S2)は、特開2009-155406号公報、特開2010-185934号公報、特開2011-157416号公報等の公知の方法で製造することができ、例えば、水酸基を有する化合物(q)の水酸基と、トリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物の存在下に、エチレン性不飽和単量体(r)を重合することで得られる。中でも、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(q1)の水酸基と、トリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基との反応生成物の存在下に、単量体(r1)を含むエチレン性不飽和単量体(r)を重合した重合体であることが好ましい。
【0197】
(S1)と(S2)は、エチレン性不飽和単量体(r)を重合した重合体部位の導入を先に行うか後で行うかの違いである。諸条件により分子量等が若干異なることがあるが、原料と反応条件が同じであれば、理論上は同じものができる。
【0198】
<バインダ樹脂(C)>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、バインダ樹脂(C)を含む。バインダ樹脂(C)は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エチレン性不飽和二重結合等を有する活性エネルギー線硬化性樹脂などが挙げられる。また、活性エネルギー線硬化性樹脂は、熱硬化性を有することも好ましい。バインダ樹脂(C)は、現像性の観点からアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
【0199】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、およびポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0200】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、およびフェノール樹脂等が挙げられる。
【0201】
バインダ樹脂(C)としては、可視光領域の400nm以上700nm以下の全波長領域において分光透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の樹脂であることが好ましい。
【0202】
アルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基、スルホン基等の酸性基を有する樹脂である。アルカリ可溶性樹脂は、例えば、酸性基を有するアクリル樹脂、α-オレフィン/(無水)マレイン酸共重合体、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、またはイソブチレン/(無水)マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、透明性がより向上する酸性基を有するアクリル樹脂、およびスチレン/スチレンスルホン酸共重合体が好ましく、酸性基を有するアクリル樹脂がより好ましい。これにより、塩基性分散剤(B)に含まれるブロックイソシアネートを有する単量体単位(b2)との硬化、および架橋反応が効率的に進み、塗膜の凝集異物低減や膜厚均一が向上する。
【0203】
アルカリ可溶性樹脂に光反応性を付与するためエチレン性不飽和活性二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂を使用することが好ましい。これにより硬化後の被膜は、耐溶剤性がより向上する。
【0204】
エチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂としては、たとえば以下に示す(a)~ (c)の方法により不飽和エチレン性二重結合を導入した樹脂が挙げられる。
【0205】
[方法(a)]
方法(a)としては、例えば、エポキシ基を有する不飽和エチレン性単量体と、他の1種類以上の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖エポキシ基に、不飽和エチレン性二重結合を有する不飽和一塩基酸のカルボキシル基を付加反応させ、更に、生成した水酸基に、多塩基酸無水物を反応させ、不飽和エチレン性二重結合およびカルボキシル基を導入する方法がある。
【0206】
エポキシ基を有する不飽和エチレン性単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-グリシドキシエチル(メタ)アクリレート、3,4エポキシブチル(メタ)アクリレート、および3,4エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。次工程の不飽和一塩基酸との反応性の観点で、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0207】
不飽和一塩基酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o-、m-、p-ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のα位ハロアルキル、アルコキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体等のモノカルボン酸等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。
【0208】
多塩基酸無水物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。カルボキシル基の数を増やす等、必要に応じて、トリメリット酸無水物等のトリカルボン酸無水物を用いたり、ピロメリット酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物を用いたりして、残った無水物基を加水分解すること等もできる。また、多塩基酸無水物として、不飽和エチレン性二重結合を有する、テトラヒドロ無水フタル酸、または無水マレイン酸を用いると、更に不飽和エチレン性二重結合を増やすことができる。
【0209】
[方法(b)]
方法(a)の類似の方法として、例えば、カルボキシル基を有する不飽和エチレン性単量体と、他の1種類以上の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖カルボキシル基の一部に、エポキシ基を有する不飽和エチレン性単量体を付加反応させ、不飽和エチレン性二重結合およびカルボキシル基を導入する方法がある。
この方法では、方法(a)に比べ、エポキシ基を有する不飽和エチレン性単量体由来の水酸基が多く生成する。本発明の造塩化合物を得る際に使用する、側鎖にカチオン性基を有する樹脂に、熱架橋性官能基としてオキセタニル基、t-ブチル基が含まれている場合は、バインダ樹脂(C)として方法(b)によって得られる樹脂を使用すると、より高い耐熱性を発現するため、好ましい。
【0210】
[方法(c)]
方法(c)としては、水酸基を有する不飽和エチレン性単量体を使用し、他のカルボキシル基を有する不飽和一塩基酸の単量体や、他の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖水酸基に、イソシアネート基を有する不飽和エチレン性単量体のイソシアネート基を反応させる方法がある。
【0211】
水酸基を有する不飽和エチレン性単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-若しくは3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-若しくは3-若しくは4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレー
ト、またはシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。また、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、および/またはブチレンオキシド等を付加重合させたポリエーテルモノ(メタ)アクリレートや、(ポリ)γ-バレロラクトン、(ポリ)ε-カプロラクトン、および/または(ポリ)12-ヒドロキシステアリン酸等を付加した(ポリ)エステルモノ(メタ)アクリレートも使用できる。塗膜異物抑制の観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、またはグリセロール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0212】
イソシアネート基を有する不飽和エチレン性単量体としては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、または1,1-ビス〔(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定することなく、2種類以上併用することもできる。
【0213】
バインダ樹脂(C)の酸価は、30mgKOH/g以上150mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以上130mgKOH/g以下がより好ましい。30mgKOH/gより低いと、塩基性分散剤(B)に含まれるブロックイソシアネートを含む単量体単位(b2)と、バインダ樹脂(C)に含まれる酸性基や水酸基との、硬化・架橋反応が効率的に進まないため凝集異物の発生を防止しにくく、さらに現像性が悪化する。150mgKOH/gより高いと、保存安定性が悪化する。
【0214】
バインダ樹脂(C)の重量平均分子量(Mw)は、現像性の観点から、5000~40000が好ましく、5000~35000がより好ましい。
【0215】
バインダ樹脂(C)は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0216】
バインダ樹脂(C)の含有量は、現像性、凝集異物低減、保存安定性の観点から、樹脂型分散剤とバインダ樹脂(C)の合計100質量%中、10質量%以上が好ましく、10~90質量%がより好ましい。
【0217】
<分散助剤>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、分散助剤を含むことができる。分散助剤は、例えば、色素の一部を、酸性基、塩基性基、中性基、塩構造を有する基等で置換した構造を有する化合物が挙げられる。分散助剤は、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基などの酸性置換基を有する化合物およびこれらのアミン塩や、スルホンアミド基や末端に3級アミノ基などの塩基性置換基を有する化合物、フェニル基やフタルイミドアルキル基などの中性置換基を有する化合物が挙げられる。
【0218】
色素は、ピロロピロール化合物、フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、ジオキサジン化合物、ペリノン化合物、ペリレン化合物、チアジンインジゴ化合物、トリアジン化合物、ベンズイミダゾロン化合物、ベンゾイソインドール等のインドール化合物、イソインドリン化合物、イソインドリノン化合物、キノフタロン化合物、ナフトール化合物、キナクリドン化合物、スレン化合物、金属錯体化合物、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ化合物、スクアリリウム化合物、ナフタロシアニン化合物等が挙げられる。アントラキノン化合物、トリアジン化合物等の色素以外の構造の一部を酸性基、塩基性基、中性基、塩構造を有する基等で置換した構造を有する化合物を使用することもできる。
【0219】
酸性基は、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基およびそれらの塩が挙げられる。塩を構成する原子又は原子団は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスフォニウムイオン等が挙げられる。
【0220】
塩基性基は、アミノ基、ピリジル基およびそれらの塩、アンモニウム基の塩が挙げられる。アミノ基は、-NH2、ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、環状アミノ基等が挙げられる。ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、環状アミノ基は、更に置換基を有してもよい。置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、複素環基等が挙げられる。塩を構成する原子又は原子団は、水酸化物イオン、ハロゲンイオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、フェノキシドイオン等が挙げられる。
【0221】
具体的には、ピロロピロール系分散助剤としては、特開2001-220520号公報、国際公開第2009/081930号、国際公開第2011/052617号、国際公開第2012/102399号、特開2017-156397号公報、国際公開2017/146092号、フタロシアニン系分散助剤としては、特開2007-226161号公報、国際公開第2016/163351号、特開2017-165820号公報、特許第5753266号公報、アントラキノン系分散助剤としては、特開昭63-264674号公報、特開平09-272812号公報、特開平10-245501号公報、特開平10-265697号公報、特開2007-079094号公報、国際公開第2009/025325号、キナクリドン系分散助剤としては、特開昭48-54128号公報、特開平03-9961号公報、特開2000-273383号公報、ジオキサジン系分散助剤としては、特開2011-162662号公報、チアジンインジゴ系分散助剤としては、特開2007-314785号公報、トリアジン系分散助剤としては、特開昭61-246261号公報、特開平11-199796号公報、特開2003-165922号公報、特開2003-168208号公報、特開2004-217842号公報、特開2007-314681号公報、ベンゾイソインドール系分散助剤としては、特開2009-57478号公報、キノフタロン系分散助剤としては、特開2003-167112号公報、特開2006-291194号公報、特開2008-31281号公報、特開2012-226110号公報、ナフトール系分散助剤としては、特開2012-208329号公報、特開2014-5439号公報、アゾ系分散助剤としては、特開2001-172520号公報、特開2012-172092号公報、スクアリリウム系分散助剤としては、国際公開2018/230387号等に記載の化合物が挙げられる。
【0222】
分散助剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0223】
分散助剤は、色素100質量部に対し、1~100質量部添加することが好ましく、3~70質量部添加することがより好ましく、5~50質量部添加することがさらに好ましい。
【0224】
前記色素が顔料である場合には、分散助剤を添加し、アシッドペースティング、アシッドスラリー、ドライミリング、ソルトミリング、ソルベントソルトミリング等の顔料化処理を行う事で、顔料表面に分散助剤が吸着し、分散助剤を添加しない場合と比較して顔料の一次粒子をより微細化することができる。
【0225】
顔料に分散助剤を添加し二本ロール、三本ロール、ビーズを用いた湿式分散などの分散処理を行うことで、分散助剤が顔料表面に吸着し顔料表面が極性を持ち樹脂型分散剤の吸着が促進され、顔料、分散助剤、樹脂型分散剤、溶媒、その他添加剤との相溶性が向上し、近赤外線吸収性組成物の分散性、および保存安定性が向上する。また、相溶性が向上することで近赤外線吸収性組成物をガラス基板等に塗工した際の塗膜経時安定性に優れ、近赤外線吸収性組成物の塗布から露光までの待ち時間(PCD:Post Coating Delay)や露光から熱処理までの待ち時間(PED:Post Exposure Delay)に対するパターン形状などの安定性・特性依存性や、線幅感度安定性が良好となる。また顔料表面が分散助剤および樹脂型分散剤で吸着・被覆されることで、塗膜を加熱焼成した際の顔料の凝集や昇華による結晶析出を抑制できる。さらに現像時間ばらつきや現像残渣も抑制される。
【0226】
<光重合性単量体>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、光重合性単量体および/または光重合開始剤を含むことによって感光性近赤外線吸収性組成物とすることができる。光重合性単量体には、紫外線や熱などにより硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれる。
【0227】
光重合性単量体は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0228】
(酸性基を有する光重合性単量体)
光重合性単量体は、酸性基を有する光重合性単量体を含むことができる。酸性基は、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基等が挙げられる。
【0229】
酸性基を有する光重合性単量体は、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との遊離水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート類と、ジカルボン酸類とのエステル化物;多価カルボン酸と、モノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類とのエステル化物等が挙げられる。具体例は、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のモノヒドロキシオリゴアクリレート又はモノヒドロキシオリゴメタクリレート類と、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸等のジカルボン酸類との遊離カルボキシル基含有モノエステル化物;プロパン-1,2,3-トリカルボン酸(トリカルバリル酸)、ブタン-1,2,4-トリカルボン酸、ベンゼン-1,2,3-トリカルボン酸、ベンゼン-1,3,4-トリカルボン酸、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸等のトリカルボン酸類と、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート等のモノヒドロキシモノアクリレート又はモノヒドロキシモノメタクリレート類との遊離カルボキシル基含有オリゴエステル化物等が挙げられる。
【0230】
(ウレタン結合を有する光重合性単量体)
光重合性単量体は、エチレン性不飽和結合とウレタン結合を有する光重合性単量体を含むことができる。前記光重合性単量体は、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレートに多官能イソシアネートを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレートや、アルコールに多官能イソシアネートを反応させ、さらに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0231】
水酸基を有する(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルプロピルメタクリレート、エポキシ基含有化合物とカルボキシ(メタ)アクリレートの反応物、水酸基含有ポリオールポリアクリレート等が挙げられる。
【0232】
また、多官能イソシアネートは、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0233】
光重合性単量体は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0234】
光重合性単量体の配合量は、近赤外線吸収性組成物の不揮発分100質量%中、1~50質量%が好ましく、2~40質量%がより好ましい。適量配合すると硬化性および現像性がより向上する。
【0235】
<光重合開始剤>
光重合開始剤は、例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリノ)フェニル]-2-(フェニルメチル)-1-ブタノン、又は2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、又はベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、又は3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、又は2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペロニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、又は2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン等のトリアジン系化合物;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、又はエタノン,1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、又はジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキサイド等のホスフィン系化合物;9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等のキノン系化合物;ボレート系化合物;カルバゾール系化合物;イミダゾール系化合物;あるいは、チタノセン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0236】
光重合開始剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0237】
(オキシムエステル系化合物)
オキシムエステル系化合物は、紫外線を吸収することによってオキシムのN-O結合の解裂がおこり、イミニルラジカルとアルキロキシラジカルを生成する。これらのラジカルは更に分解することにより活性の高いラジカルを生成するため、少ない露光量でパターンを形成させることができる。近赤外線吸収性組成物の色素濃度が高い場合、塗膜の紫外線透過率が低くなり塗膜の硬化度が低くなることがあるが、オキシムエステル系化合物は高い量子効率を持つため好適に使用される。
【0238】
オキシムエステル系化合物は、特開2007-210991号公報、特開2009-179619号公報、特開2010-037223号公報、特開2010-215575号公報、特開2011-020998号公報等に記載のオキシムエステル系光重合開始剤が挙げられる。
【0239】
光重合開始剤の含有量は、色素の合計100質量%に対し、2~200質量%が好ましく、2~150質量%がより好ましい。適量配合すると光硬化性および現像性がより向上する。
【0240】
<オキセタン化合物>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、オキセタン化合物を含むことができる。オキセタン化合物は、オキセタン基を1官能、2官能、および3官能以上の化合物が挙げられる。
【0241】
オキセタン基が1官能の化合物は、例えば、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート、 (3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート、3-エチル
-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-メタクリロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-{[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン等が挙げられる。
【0242】
オキセタン基が2官能の化合物は、例えば、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、ジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル-3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-フェノキシメチル)オキセタン、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコースビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ポリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、エチレンオキシド(EO)変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、プロピレンオキシド(PO)変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0243】
オキセタン基が3官能以上の化合物は、例えば、ペンタエリスリトールトリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサ(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、オキセタン基を含む樹脂(例えば、特許第3783462号記載のオキセタン変性フェノールノボラック樹脂等)や(メタ)アクリルモノマーをラジカル重合させて得られる重合体が挙げられる。
【0244】
オキセタン化合物は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0245】
オキセタン化合物の含有量は、近赤外線吸収性組成物の不揮発分100質量%中、0.5~50質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましい。適量含むと耐熱性がより向上する。
【0246】
<増感剤>
さらに、本発明の近赤外線吸収性組成物には、増感剤を含むことができる。
増感剤としては、カルコン誘導体、ジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等に代表される1,2-ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノ-ル誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体、又はミヒラーケトン誘導体、α-アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’-ジエチルイソフタロフェノン、3,3’又は4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0247】
上記増感剤の中で、特に好適に増感しうる増感剤としては、チオキサントン誘導体、ミヒラーケトン誘導体、カルバゾール誘導体が挙げられる。さらに具体的には、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノン、N-エチルカルバゾール、3-ベンゾイル-N-エチルカルバゾール、3,6-ジベンゾイル-N-エチルカルバゾール等が用いられる。
【0248】
さらに具体的には、大河原信ら編、「色素ハンドブック」(1986年、講談社)、大河原信ら編、「機能性色素の化学」(1981年、シーエムシー)、池森忠三朗ら編、および「特殊機能材料」(1986年、シーエムシー)に記載の増感剤が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、その他、紫外から近赤外域にかけての光に対して吸収を示す増感剤を含むこともできる。
【0249】
増感剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0250】
増感剤の含有量は、光重合開始剤100質量%に対し、3~60質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。適量含むと硬化性、現像性がより向上する。
【0251】
<チオール系連鎖移動剤>
本発明の近赤外線吸収性組成物は連鎖移動剤として、チオール系連鎖移動剤を含むことが好ましい。チオールを光重合開始剤とともに使用することにより、光照射後のラジカル重合過程において、連鎖移動剤として働き、酸素による重合阻害を受けにくいチイルラジカルが発生するので、得られる近赤外線吸収性組成物は高感度となる。
【0252】
また、チオール基が2個以上あるメチレン、エチレン基等の脂肪族基に結合した多官能脂肪族チオールが好ましい。より好ましくは、チオール基が4個以上ある多官能脂肪族チオールである。官能基数が増えることで、重合開始機能が向上し、パターンにおける表面から基材付近まで硬化させることができる。
【0253】
多官能チオールとしては、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4-ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン等が挙げられ、好ましくは、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートが挙げられる。
【0254】
チオール系連鎖移動剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0255】
チオール系連鎖移動剤の含有量は、近赤外線吸収性組成物の不揮発分100質量%中、0.1~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましい。適量含むと光感度、テーパー形状が向上し、被膜表面にシワが発生し難くなる。
【0256】
<重合禁止剤>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、重合禁止剤を含むことができる。これによりフォトリソグラフィー法の露光時にマスクの回折光による感光を抑制できるため、所望の形状のパターンが得やすくなる。
【0257】
重合禁止剤としては、例えば、カテコール、レゾルシノール、1,4-ヒドロキノン、2-メチルカテコール、3-メチルカテコール、4-メチルカテコール、2-エチルカテコール、3-エチルカテコール、4-エチルカテコール、2-プロピルカテコール、3-プロピルカテコール、4-プロピルカテコール、2-n-ブチルカテコール、3-n-ブチルカテコール、4-n-ブチルカテコール、2-tert-ブチルカテコール、3-tert-ブチルカテコール、4-tert-ブチルカテコール、3,5-ジ-tert-ブチルカテコール等のアルキルカテコール系化合物、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、2-エチルレゾルシノール、4-エチルレゾルシノール、2-プロピルレゾルシノール、4-プロピルレゾルシノール、2-n-ブチルレゾルシノール、4-n-ブチルレゾルシノール、2-tert-ブチルレゾルシノール、4-tert-ブチルレゾルシノール等のアルキルレゾルシノール系化合物、メチルヒドロキノン、エチルヒドロキノン、プロピルヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン等のアルキルヒドロキノン系化合物、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン等のホスフィン化合物、トリオクチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド化合物、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等のホスファイト化合物、ピロガロール、フロログルシンなどが挙げられる。
【0258】
重合禁止剤の含有量は、近赤外線吸収性組成物の不揮発分100質量%中、0.01~0.4質量%が好ましい。この範囲において、重合禁止剤の効果が大きくなり、テーパーの直線性や塗膜のシワ、パターン解像性等が良好になる。
【0259】
<紫外線吸収剤>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、紫外線吸収剤を含んでも良い。本発明における紫外線吸収剤とは、紫外線吸収機能を有する有機化合物であり、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、およびサリシレート系化合物などが挙げられる。
【0260】
紫外線吸収剤の含有量は、光重合開始剤と紫外線吸収剤との合計100質量%中、5~70質量%が好ましい。適量含むと現像後の解像性がより向上する。
【0261】
また、光重合開始剤と紫外線吸収剤の合計含有量は、近赤外線吸収性組成物の不揮発分100質量%中、1~20質量%が好ましい。適量含むと基板と被膜の密着性がより向上し、良好な解像性が得られる。
【0262】
ベンゾトリアゾール系化合物は、例えば、2-(5メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α, α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、5%の2-メトキシ-1-メチルエチルアセテートと95%のベンゼンプロパン酸,3-(2H-ベンゾトリアゾール2-イル)-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-9側鎖および直鎖アルキルエステルの混合物、2-(2H-ベンゾトリアゾール2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、メチル 3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-(2H-ベンゾトリアゾール2-イル)-p-クレゾール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール2-イル)-6-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール2-イル)フェニル]プロピオネート、2-エチルヘキシル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール2-イル)フェニル]プロピオネートが挙げられる。
【0263】
トリアジン系化合物としては、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2‐[4,6‐ビス(2,4‐ジメチルフェニル)‐1,3,5‐トリアジン‐2‐イル]‐5‐[3‐(ドデシルオキシ)‐2‐ヒドロキシプロポキシ]フェノール、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルの反応生成物、2,4-ビス「2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル」-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。その他トリアジン構造を有するオリゴマータイプおよびポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
【0264】
ベンゾフェノン系化合物としては、2,4-ジ-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2,2’-ジ-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。その他ベンゾフェノン構造を有するオリゴマータイプおよびポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
【0265】
サリチル酸エステル系化合物としては、サリチル酸フェニル、サリチル酸p-オクチルフェニル、サリチル酸p-tertブチルフェニル等が挙げられる。その他サリチル酸エステル構造を有するオリゴマータイプおよびポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
【0266】
<酸化防止剤>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤は、近赤外線吸収性組成物に含まれる光重合開始剤や熱硬化性化合物が、熱硬化やITOアニール時の熱工程によって酸化し黄変することを防ぐため、塗膜の透過率を向上できる。特に近赤外線吸収性組成物の色素濃度が高い場合、塗膜架橋成分量が少なくなるため高感度の架橋成分の使用や、光重合開始剤の増量といった対応を取るため熱工程の黄変が強くなる現象が見られる。そのため、酸化防止剤を含むことで、加熱工程時の酸化による黄変を防止し、高い塗膜の透過率を得る事ができる。
【0267】
酸化防止剤は、例えば、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系、およびヒドロキシルアミン系の化合物が挙げられる。なお、本発明で酸化防止剤は、ハロゲン原子を含まない化合物が好ましい。
【0268】
これらの中でも、塗膜の透過率と感度の両立の観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が好ましい。
【0269】
酸化防止剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0270】
また酸化防止剤の含有量は、近赤外線吸収性組成物の固形分100質量%中、0.5~5.0質量%の場合、透過率、分光特性、および感度が良好であるためより好ましい。
【0271】
<アミン系化合物>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、溶存している酸素を還元するためアミン系化合物を含むことができる。
アミン系化合物は、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、およびN,N-ジメチルパラトルイジン等が挙げられる。
【0272】
<レベリング剤>
本発明の近赤外線吸収性組成物には、透明基板上での組成物の塗布性、被膜の乾燥性を良好することを目的として、レベリング剤を添加することが好ましい。レベリング剤としては、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
【0273】
シリコン系界面活性剤としては、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマーや、側鎖や末端に有機基を導入した変性シロキサンポリマーが挙げられる。
【0274】
さらに具体的には、ビックケミー社製BYK-300、306、310、313、315N、320、322、323、330、331、333、342、345/346、347、348、349、370、377、378、3455、UV3510、3570、東レ・ダウコーニング株式会社製FZ-7002、2110、2122、2123、2191、5609、信越化学工業株式会社製X-22-4952、X-22-4272、X-22-6266、KF-351A、KF-354L、KF-355A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、X-22-4515、KF-6004、KP-341等が挙げられる。
【0275】
フッ素系界面活性剤としては、フルオロカーボン鎖を有する界面活性剤又はレべリング剤が挙げられる。
【0276】
さらに具体的には、AGCセイミケミカル株式会社製サーフロンS-242、S-243、S-420、S-611、S-651、S-386、DIC株式会社製メガファックF-253、F-477、F-551、F-552、F-555、F-558、F-560、F-570、F-575,F-576、R-40-LM、R-41、RS-72-K、DS-21、住友スリーエム株式会社製FC-4430、FC-4432、三菱マテリアル電子化成株式会社製EF-PP31N09、EF-PP33G1、EF-PP32C1、株式会社ネオス製フタージェント602A等が挙げられる。
【0277】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンミリステルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシフェニレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキイエチレンソルビタントリイソステアレート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、アルキルイミダゾリン等が挙げられる。
【0278】
さらに具体的には、花王株式会社製エマルゲン103、104P、106、108、109P、120、123P、130K、147、150、210P、220、306P、320P、350、404、408、409PV、420、430、705、707、709、1108、1118S-70、1135S-70、1150S-60、2020G-HA、2025G、LS-106、LS-110、LS-114、MS-110、A-60、A-90、B-66、PP-290、ラテムルPD-420、PD-430、PD-430S、PD450、レオドールSP-L10、SP-P10、SP-S10V、SP-S20、SP-S30V、SP-O10V、SP-O30V、スーパーSP-L10、AS-10V、AO-10V、AO-15V、TW-L120、TW-L106、TW-P120、TW-S120V、TW-S320V、TW-O120V、TW-O106V、TW-IS399C、スーパーTW-L120、430V、440V、460V、MS-50、MS-60、MO-60、MS-165V、エマノーン1112、3199V、3299V、3299RV、4110、CH-25、CH-40、CH-60(K)、アミート102、105、105A、302、320、アミノーンPK-02S、L-02、ホモゲノールL-95、株式会社ADEKA社製アデカプルロニック(登録商標)L-23、31、44、61、62、64、71、72、101、121、TR-701、702、704、913R、共栄社化学株式会社製(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95等が挙げられる。
【0279】
カチオン性界面活性剤としてはアルキルアミン塩やラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0280】
さらに具体的には、花王株式会社製アセタミン24、コータミン24P、60W、86Pコンク等が挙げられる。
【0281】
アニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン-アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン-アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
【0282】
さらに具体的には、株式会社ネオス製フタージェント100、150、株式会社ADEKA社製アデカホープYES-25、アデカコールTS-230E、PS-440E、EC-8600等が挙げられる。
【0283】
両性界面活性剤としてはラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ステアリルベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0284】
さらに具体的には、花王株式会社製アンヒトール20AB、20BS、24B、55AB、86B、20Y-B、20N等が挙げられる。
【0285】
本発明の近赤外線吸収性組成物に界面活性剤を含む場合、界面活性剤の添加量は、本発明の組成物の全固形分に対して、0.001~2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005~1.0質量%である。この範囲内であることで、近赤外線吸収性組成物の塗布性とパターン密着性、透過率のバランスが良好となる。
本発明の近赤外線吸収性組成物は、界面活性剤を、1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0286】
<貯蔵安定剤>
本発明の近赤外線吸収性組成物には、組成物の経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含むことができる。貯蔵安定剤としては、例えば、ベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸、シュウ酸などの有機酸およびそのメチルエーテル、t-ブチルピロカテコール、テトラエチルホスフィン、テトラフェニルフォスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩等が挙げられる。貯蔵安定剤は、色素の全量を基準(100質量%)として、0.1~10質量%の量で用いることができる。
【0287】
<密着向上剤>
本発明の近赤外線吸収性組成物には、基材との密着性を高めるためにシランカップリング剤等の密着向上剤を含むことができる。密着向上剤による密着性が向上することにより、細線の再現性が良好となり解像度が向上する。
【0288】
密着向上剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン類、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等のアミノシラン類、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト類、p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル類、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド類、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド類、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート類などのシランカップリング剤が挙げられる。密着向上剤は、近赤外線吸収性組成物中の色素100質量%に対し、0.01~10質量%、好ましくは0.05~5質量%の量で用いることができる。この範囲内で効果が大きくなり、密着性、解像性、感度のバランスが良好であるためより好ましい。
【0289】
<有機溶剤>
本発明の近赤外線吸収性組成物には、ガラス等の基板上に乾燥膜厚が0.2~5μmとなるように塗布して膜を形成することを容易にするために有機溶剤を含む。有機溶剤は、近赤外線吸収性組成物の塗布性が良好であることに加え、近赤外線吸収性組成物の各成分の溶解性、さらには安全性を考慮して選定される。
【0290】
有機溶剤としては、当該分野で通常使用される溶剤を用いることが出来、沸点、SP値、蒸発速度、粘度などの性能を勘案し、塗布条件(速度、乾燥条件など)に合わせて適宜、単独または混合して使用される。
【0291】
使用される有機溶剤としては、例えば、エステル溶剤(分子内に-COO-を含み、-O-を含まない溶剤)、エーテル溶剤(分子内に-O-を含み、-COO-を含まない溶剤)、エーテルエステル溶剤(分子内に-COO-と-O-とを含む溶剤)、ケトン溶剤(分子内に-CO-を含み、-COO-を含まない溶剤)、アルコール溶剤(分子内にOHを含み、-O-、-CO-およびCOO-を含まない溶剤)、芳香族炭化水素溶剤、アミド溶剤、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0292】
上記の有機溶剤のうち、塗布性、乾燥性の点から、1atmにおける沸点が120℃以上180℃以下である有機溶剤を含むことが好ましい。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等がより好ましい。
【0293】
<その他成分>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、上記以外のその他成分を含むことができる。その他成分は、例えば、染料、無機顔料、熱架橋剤、硬化剤、硬化促進剤、酸発生剤、硬化触媒、および連鎖移動剤等が挙げられる。その他成分の含有量は、本発明の課題を解決できる範囲において、適宜設定することができる。
【0294】
<水の含有量>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、安定性の観点から、近赤外線吸収性組成物に含まれる水の含有量が2.0質量%以下であることが好ましい。
【0295】
近赤外線吸収性組成物に含まれる水の含有量は、1.5質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下が特に好ましい。また、水の含有量の下限は、少ないほど好ましく、特に制限はない。
【0296】
水の含有量を制御する方法は、特に制限がなく、公知の方法を使用できる。例えば、上述した各成分について十分に乾燥等を行い、成分に含まれる水分量を減らしたもの使用する。また、乾燥した空気や不活性ガス、それらの混合ガスを吹き込みながら、近赤外線吸収性組成物を製造する方法や、製造後、モレキュラーシーブを投入し脱水する方法等が挙げられる。
【0297】
水の含有量は、カールフィッシャー法などの公知の方法により測定することができる。
【0298】
<特定金属原子>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、色素の構成成分以外に少量のLi、Na、Mg、K、Cs、Co、Ca、Fe、SiおよびZr(以下、特定金属原子ともいう)を含む金属成分が存在する場合がある。これら特定金属原子を含む金属成分が多く存在すると、保存安定性が阻害される場合、耐熱性が低下する場合、感光性近赤外線吸収性組成物の形態で調製した際の感度低下を引き起こす場合がある。
また、このような特定金属原子を含む金属成分が多く存在する近赤外線吸収性組成物を用いて作成した光学フィルタは、異物が発生する場合があり、結果として透過率低下を引き起こしやすい。本発明の近赤外線吸収性組成物に含まれる該金属成分中の特定金属原子の合計含有量は、近赤外線吸収性組成物全体に対し、1~1000質量ppmであることが好ましい。
【0299】
本発明の近赤外線吸収性組成物に含まれる特定金属原子の合計量は、近赤外線吸収性組成物全体に対し、300質量ppm以下がより好ましく、200質量ppm以下が特に好ましい。また、特定金属原子の合計量の下限は、特に限定されないが、近赤外線吸収性組成物全体に対し、1質量ppm以上が好ましく、5質量ppm以上がより好ましい。上記範囲内であれば、コストも抑制でき、保存安定性に優れ、かつ異物の発生が少なく、膜厚均一性に優れた光学フィルタを形成できる近赤外線吸収性組成物を得ることができる。
【0300】
本発明の近赤外線吸収性組成物に含まれる各特定金属原子の含有量は、近赤外線吸収性組成物全体に対し、各々100質量ppm以下であることが好ましく、各々50質量ppm以下であることがより好ましい。
【0301】
近赤外線吸収性組成物に含まれる各種原料あるいは製造過程において装置から混入した金属原子を除去する方法としては、特開2010-83997号公報、特開2018-36521号公報、特開平7-198928号公報、特開平8-333521号公報、特開2009-7432号公報等による水洗による方法、特開2011-48736号公報に記載のマグネットによる磁性異物の除去等の方法が挙げられ、単独または複数の方法を適宜使用する。
【0302】
特定金属原子の含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)によって、測定できる。
【0303】
<トルエン量>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、トルエンを含んでいても良く、含む場合はトルエンの含有量が0.1~10質量ppmであることが好ましい。トルエンの含有量の上限は、9質量ppm以下であることが好ましく、8質量ppm以下であることがより好ましく、7質量ppm以下であることが更に好ましい。下限は、0.2質量ppm以上であることが好ましく、0.3質量ppm以上であることがより好ましく、0.4質量ppm以上であることが更に好ましい。
【0304】
<近赤外線吸収性組成物の製造方法>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、上述の各成分を混合して調製できる。調製に際しては、各成分を一括配合してもよいし、各成分を有機溶剤に溶解や分散した後に逐次配合してもよい。例えば、近赤外線吸収性色素(A)、塩基性樹脂型分散剤(B)、バインダ樹脂(C)、および有機溶剤等を加え、分散処理を行う。その後、必要に応じて、光重合性単量体、光重合開始剤等を配合・混合することで製造できる。なお、各成分を配合するタイミングは、任意である。また、分散処理を複数回行うこともできる。
【0305】
分散処理を行う分散機は、例えば、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、又はアトライター等が挙げられる。
【0306】
近赤外線吸収性組成物中の粒子の平均分散粒子径(二次粒子径)は、30~200nmが好ましく、40~200nmがより好ましい。適度な粒子径を有すると分散安定性が高い近赤外線吸収性組成物が得やすい。
【0307】
平均分散粒子径(二次粒子径)の測定方法は、例えば、動的光散乱法(FFTパワースペクトル法)を採用した日機装社のマイクロトラックUPA-EX150を用い、粒子透過性を吸収モード、粒子形状を非球形とし、D50粒子径を平均径とする。測定用の希釈溶剤は分散に使用した有機溶剤をそれぞれ用い、超音波で処理したサンプルについてサンプル調製直後に測定するとバラツキが少ない結果が得られやすく好ましい。
【0308】
近赤外線吸収性組成物は、遠心分離、焼結フィルタやメンブレンフィルタによる濾過等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粗大粒子、および混入した塵の除去を行うことが好ましい。本発明の近赤外線吸収性組成物は、実質的に0.5μm以上の粒子を含まないことが好ましく、0.3μm以下の粒子を含まないことがより好ましい。
【0309】
<膜>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、被膜(以後、単に膜ともいう)を形成し、光学フィルタ等に用いることができる。膜は、基材上に積層した状態で用いてもよく、膜を基材から剥離してもよい。また、膜は、平坦膜であってもパターンを形成した膜のいずれでもよいが、パターンを形成した膜が好ましい。
【0310】
<膜の製造方法>
膜の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を使用できる。例えば、本発明の近赤外線吸収性組成物を基材上に塗工する工程を経て製造できる。
【0311】
基材は、例えば、ガラス、樹脂、シリコン等の材質で構成された基板が挙げられる。これらの基材上には有機発光層が形成されてもよい。また、基材には、CCD、CMOS等の撮像素子が形成されていてもよい。また、基材上には、必要に応じて、上部との層との密着改良、物質の拡散防止、基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
【0312】
塗工方法は、公知の方法を使用できる。例えば、滴下法、スリットコート法、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法、流延塗布法、インクジェット法、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等が挙げられる。
【0313】
膜の厚さは、目的に応じて適宜調節できる。膜の厚さは、0.05~20.0μmが好ましく、0.3~10.0μmがより好ましい。
【0314】
次に、パターンを形成する。パターンを形成する方法は、フォトリソグラフィー法やドライエッチング法が挙げられる。なお、平坦膜として使用する場合は、パターンを形成する工程を行わなくてよく、塗工後、必要に応じて乾燥する。
【0315】
以下、パターンを形成する方法について詳細に説明する。
【0316】
(フォトリソグラフィー法でパターンを形成する場合)
フォトリソグラフィー法でパターンを形成する場合、基板上に本発明の近赤外線吸収性組成物を塗工して形成した層を、必要に応じて乾燥(プレベーク)した後、マスクを介してパターン状に露光し(露光工程)、未露光部分をアルカリ現像により除去(現像工程)後、必要に応じてパターンを加熱処理(ポストベーク工程)する。
【0317】
〔露光工程〕
露光工程は、塗工で形成した層を、例えば、ステッパー等の露光装置を用い、マスクを介して特定のパターンを露光する。これにより、露光部分を硬化することができる。露光に用いる活性エネルギー線は、例えば、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、i線(波長365nm)等の紫外線が挙げられる。また、波長300nm以下の光を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF(波長193nm)などが挙げられる。
また、露光に際しては、光を連続的に照射して露光してもよく、短時間(例えば、ミリ秒レベル以下)のサイクルで光の照射と休止を繰り返して露光(パルス露光)してもよい。
【0318】
〔現像工程〕
次に、アルカリ現像処理を行うことで、未露光部分の層がアルカリ水溶液に溶出し、硬化部分のみが残りパターン状の膜が得られる。
アルカリ現像液は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ-〔5.4.0〕-7-ウンデセン等のアルカリ性化合物が挙げられる。
アルカリ現像液の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。アルカリ現像液のpHは、11~13が好ましく、11.5~12.5がより好ましい。適度なpHで使用するとパターンの荒れや剥離を抑制し、現像後の残膜率が向上する。
現像方法は、例えば、ディップ法、スプレー法、パドル法等が挙げられる。現像温度は15~40℃が好ましい。なお、アルカリ現像後は、純水で洗浄することが好ましい。
【0319】
〔ポストベーク工程〕
現像後、必要に応じて加熱処理(ポストベーク)を行うこともできる。ポストベークにより、膜の耐性が向上する。
温度は、80~300℃が好ましい。また、時間は、2分間~1時間程度が好ましい。基材に耐熱性の低い素材を用いた場合や、光源として有機エレクトロルミネッセンス素子を用いた場合などは、温度は、150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。
【0320】
(ドライエッチング法でパターンを形成する場合)
ドライエッチング法でパターンを形成する場合、例えば、基板上に本発明の近赤外線吸収性組成物を塗工して形成した層を加熱し硬化させる。次いで、硬化膜上にパターニングされたフォトレジスト層を形成後、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして硬化膜に対しエッチングガスを用いてドライエッチングを行う。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013-064993号公報の記載された方法を参酌できる。
【0321】
<光学フィルタ>
本発明の光学フィルタは、本発明の近赤外線吸収性組成物により形成されてなる被膜を有する。光学フィルタは、例えば、赤外線カットフィルタ、赤外線透過フィルタ等が好ましい。本発明の光学フィルタの製造は、上述の膜と同様の方法で製造できる。
【0322】
<赤外線カメラ、赤外線センサ>
本発明の赤外線カメラおよび赤外線センサは、本発明の光学フィルタを有する。赤外線カメラの種類としては、近赤外線カメラ、監視カメラ、車載用カメラ、医療用カメラ、検査・分析カメラ、などが挙げられ、赤外線センサの種類としては、温度センサ、距離センサ、医療用センサ、ディスプレイなどのタッチセンサ、生体認証センサなどが挙げられる。赤外線カメラおよび赤外線センサの構成としては、本発明の光学フィルタを有する構成であり、赤外線カメラ、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。
【0323】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、本発明の光学フィルタを有する。固体撮像素子に用いる光学フィルタの形態は、特に制限されないが、例えば、基板上に、固体撮像素子(CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口した遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、フィルタを有する構成である。さらに、デバイス保護膜上であってフィルタの下(基材に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、フィルタ上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、フィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各着色画素を形成する硬化膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は、各着色画素に対して低屈折率であることが好ましい。
本発明の固体撮像素子を備えた撮像装置は、例えば、デジタルカメラ、撮像機能を有する電子機器(スマートフォン、タブレット端末等)、車載カメラ、監視カメラ、光センサ等様々な用途に使用できる。
【0324】
<積層体>
本発明の積層体は、波長400nm以上700nm未満の範囲に極大吸収波長を有する有機色素(D)を含む層と、本発明の近赤外線吸収性組成物を含む層とを有する積層体であり、赤外線透過フィルタとして用いることができる。
【0325】
積層体の厚みは1~5μmが好ましく、1つの層の厚みは0.5~4μmが好ましい。
積層体における各層の積層順序は特に限定はない。
【0326】
積層体における各層の積層順序は特に限定はない。支持体側から、第1の層、第2の層
の順に配置してもよく、第2の層、第1の層の順に配置してもよい。第3の層をさらに有してもよい。
【実施例0327】
以下、実施例で本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。なお、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
また、本発明において、不揮発分もしくは不揮発分濃度は、200℃で30分間オーブン静置後の質量残分をいう。
【0328】
実施例に先立ち、各測定方法について説明する。
【0329】
分散剤およびバインダ樹脂の質量平均分子量(Mw)、酸価(mgKOH/g)、アミン価(mgKOH/g)の測定は、以下の通りである。
【0330】
(酸性樹脂型分散剤およびバインダ樹脂の質量平均分子量(Mw))
酸性樹脂型分散剤およびバインダ樹脂の質量平均分子量(Mw)は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC-8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)である。
【0331】
(塩基性樹脂型分散剤の質量平均分子量(Mw))
塩基性樹脂型分散剤の質量平均分子量(Mw)は、カラムに「TSK-GEL SUPER AW-4000」、「AW-3000」、及び「AW-2500」(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC-8320GPC)で、展開溶媒に30mMトリエチルアミン及び10mM LiBrのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を用いて測定したポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)である。移動相流量は0.6mL/min、試料注入量は10μL、試料濃度は約0.1質量%、測定温度は40℃で行った。
【0332】
(アミン価)
アミン価(mgKOH/g)は、0.1Nの塩酸エタノール溶液を用い、電位差滴定法によって求めた後、水酸化カリウムの当量に換算した。
【0333】
(酸価)
酸価(mgKOH/g)は、0.1Nの水酸化カリウム・エタノール溶液を用い、電位差滴定法によって求めた。
【0334】
<近赤外線吸収性色素(A)の製造>
(近赤外線吸収性色素(A-1))
国際公開第2006/006573号の記載に従い、下記化学式(1)で表される近赤外線吸収性色素(A-1)を得た。
【0335】
【0336】
(近赤外線吸収性色素(A-2))
トルエン400部に、1,8-ジアミノナフタレン40.0部、3,5-ジメチルシクロヘキサノン32.2部、p-トルエンスルホン酸一水和物0.087部を混合し、窒素ガスの雰囲気中で加熱攪拌し、3時間還流させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により反応系中から除去した。反応終了後、トルエンを蒸留して得られた暗茶色固体をアセトンで抽出し、アセトンとエタノールの混合溶媒から再結晶することにより精製した。得られた茶色固体を、トルエン240部とn-ブタノール160部の混合溶媒に溶解させ、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン13.8部を加えて、窒素ガスの雰囲気中で加熱撹拌し、8時間還流反応させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により反応系中から除去した。
反応終了後、溶媒を蒸留し、得られた反応混合物を攪拌しながら、ヘキサン200部を加えた。得られた黒茶色沈殿物を濾別した後、順次ヘキサン、エタノールおよびアセトンで洗浄を行い、減圧下で乾燥させ、下記化学式(2)で表される近赤外線吸収性色素(A―2a)を得た。
得られた近赤外線吸収性色素(A―2a)50部、塩化ナトリウム500部、ジエチレングリコール60部をステンレス製ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、60℃で12時間混練した。次に、混練した混合物を温水に投入し、約80℃に加熱しながら1時間攪拌してスラリー状として、濾過および水洗をして塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ粉砕することにより、微細化した近赤外線吸収性色素(A-2)を得た。
【0337】
【0338】
(近赤外線吸収性色素(A-3))
トルエン400部に、1,8-ジアミノナフタレン40.0部、2-ヒドロキシ-9-フルオレノン50.1部、p-トルエンスルホン酸一水和物0.087部を混合し、窒素ガスの雰囲気中で加熱攪拌し、3時間還流させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により系中から除去した。反応終了後、トルエンを蒸留して得られた暗茶色固体をアセトンで抽出し、アセトンとエタノールの混合溶媒から再結晶することにより精製した。得られた茶色固体を、トルエン240部とn-ブタノール160部の混合溶媒に溶解させ、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン13.8部を加えて、窒素ガスの雰囲気中で加熱撹拌し、8時間還流反応させた。反応中に生成した水は共沸蒸留により系中から除去した。反応終了後、溶媒を蒸留し、得られた反応混合物を攪拌しながら、ヘキサン200部を加えた。得られた黒茶色沈殿物を濾別した後、順次ヘキサン、エタノールおよびアセトンで洗浄を行い、減圧下で乾燥させ、下記化学式(3)で表される近赤外線吸収性色素(A-3a)を得た。
近赤外線吸収性色素(A-2)と同様の方法で、微細化した近赤外線吸収性色素(A-3)を得た。
【0339】
【0340】
(近赤外線吸収性色素(A-4))
国際公開第2019/058882の記載に従い、下記化学式(4)で表される近赤外線吸収性色素(A-4a)を得た。
近赤外線吸収性色素(A-2)と同様の方法で、微細化した近赤外線吸収性色素(A-4)を得た。
【0341】
【0342】
(近赤外線吸収性色素(A-5))
反応容器中で、アニリン10.7部、ブロモベンゼン120部、およびジアザビシクロオクタン25.7部を加え、攪拌した。その後、四塩化チタンの1mol/lトルエン溶液95.2部を滴下した。滴下後、インジゴ10.0部を加え、10時間還流した。反応終了後、メタノールを加え、濾過し、緑色粉末を得た。これをジクロロメタンと水で分液を行い、有機層を濃縮することで、化合物aを14.6部得た。
反応容器中で、化合物aを13.5部、ビス(2、4-ペンタンジオナト)亜鉛(II)を25.0部、とテトラヒドロフラン120部を混合攪拌し、昇温後40℃で5時間攪拌した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール500部へ攪拌しながら注入し、青色のスラリーを得た。このスラリーを濾過し、メタノール500部で洗浄後、水500部で洗浄し、乾燥して、下記化学式(5)で表される11.1部の近赤外線吸収性色素(A-5a)を得た。
近赤外線吸収性色素(A-2)と同様の方法で、微細化した近赤外線吸収性色素(A-5)を得た。
【0343】
【0344】
(近赤外線吸収性色素(A-6))
近赤外線吸収性色素組成物(A-5)の化合物aの合成で使用したアニリン10.7部を、3-メトキシアニリン14.2部に変更した以外は、化合物aの合成と同様の操作を行い、化合物bを17.3部得た。
近赤外線吸収性色素組成物(A-5)の合成で使用した化合物a13.5部を、化合物b14.5部に変更した以外は、近赤外線吸収性色素組成物(A-5)の合成と同様の操作を行い、下記化学式(6)で表される近赤外線吸収性色素(A-6a)を12.3部得た。
近赤外線吸収性色素(A-2)と同様の方法で、微細化した近赤外線吸収性色素組成物(A-6)を得た。
【0345】
【0346】
(近赤外線吸収性色素組成物(A-7))
反応容器中で、フタロニトリル26部、2,3―ジシアノナフタレン143部、n-アミルアルコール890部、DBU(1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)137部と三塩化アルミニウム34部を混合攪拌し、昇温後136℃で5時間還流した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール5,000部、イオン交換水10,000部からなる混合溶媒中へ攪拌しながら注入し、青色のスラリーを得た。このスラリーを濾過し、メタノール2,000部、イオン交換水4,000部からなる混合溶媒で洗浄、乾燥して、化合物cを得た。
次いで、反応容器中で、濃硫酸1,500部に140部の化合物cを氷浴下にて加え、1時間攪拌を行った。続けて、この硫酸溶液を3℃の冷水1,000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗、2.5%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、水洗の順で処理を行い、乾燥して、化合物dを得た。
N-メチルピロリドン200部に5部のジフェニルリン酸を添加し、十分に攪拌混合を行った後、50℃に加熱した。この溶液に、10部の化合物dを少しずつ添加した後、90℃で120分攪拌した。反応の終点確認は、例えば、濾紙に反応液を滴下して、にじみがなくなったところを終点とした。続けて、この反応溶液をイオン交換水2,000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗の順で処理を行い、乾燥して、下記化学式(7)で表される化合物の混合物(混合比率は、n1:n2:n3:n4=7:19:59:15)である近赤外線吸収性色素組成物(A-7)を得た。
【0347】
【0348】
(近赤外線吸収性色素(A-8))
近赤外線吸収性色素組成物(A―7)の合成で使用した、フタロニトリル26部、2,3―ジシアノナフタレン143部を、2,3―ジシアノナフタレン178部に変更した以外は、近赤外線吸収性色素組成物(A―7)と同様の操作を行い、下記化学式(8)で表される近赤外線吸収性色素(A-8)を得た。
【0349】
【0350】
(近赤外線吸収性色素(A-9))
国開公開第2017/002920号の記載に従い、下記化学式(9)で表される近赤外線吸収性色素(A-9a)を得た。
近赤外線吸収性色素(A-2)と同様の方法で、微細化した近赤外線吸収性色素組成物(A-9)を得た。
【0351】
【0352】
(近赤外線吸収性色素(A-10))
特開2021-47216号公報の記載に従い、下記化学式(10)で表される近赤外線吸収性色素(A-10a)を得た。
近赤外線吸収性色素(A-2)と同様の方法で、微細化した近赤外線吸収性色素組成物(A-10)を得た。
【0353】
【0354】
<塩基性樹脂型分散剤(B)の製造>
(塩基性樹脂型分散剤(B-1))
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、ブチルメタクリレート24.8部、2-メトキシエチルアクリレート49.5部、マロン酸-2-[[[2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル]オキシ]エチル]アミノ]カルボニル]-1,3ジエチルエステル5.7部、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル1.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80部を仕込み、窒素を流しながら70℃まで加熱撹拌した。ここに2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.11部を仕込みBブロックの重合を開始した。
重合開始から6時間後、および8時間にそれぞれ2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.01部を仕込んだ後、さらに1時間後に重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行った。不揮発分から換算して重合転化率が95%以上であることを確認し、Bブロック前駆体の重合を完了した。
次に、この反応槽に、2-イソシアナトエチルアクリレート20部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート23部を仕込み、70℃窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.09部を仕込みAブロックの重合を開始した。重合開始から2時間後、および3時間にそれぞれ2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.01部を仕込んだ後、さらに1時間後に重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行った。不揮発分から換算して重合転化率が95%以上であることを確認し、Aブロックの重合を完了した。
さらにこの反応槽を5℃に冷却し、1-メチルピペラジン14部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50部の混合溶液を1時間かけて滴下し、2価の連結基としてエステル結合、水素結合性を有する連結基としてウレア結合、アミノ基として芳香族性を有さない複素環アミノ基をもつアミノ単位を含むAブロックを作製した。この時の質量平均分子量31,000、分子量分布1.3であった。
最後にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート加えて不揮発分40%に調製した。このようにして、アミン価68.0mgkOH/gの塩基性樹脂型分散剤(B-1)の溶液を得た。
【0355】
(塩基性樹脂型分散剤(B-2)~(B-6)、(B-10)~(B-16)、(B-23)~(B-33)、(B-37)~(B-41)、(B-43)~(B-45)、(B―49)~(B―51))
塩基性樹脂型分散剤(B-1)の配合を、表1~表5に示す原料、および配合量に変更した以外は、(B-1)と同様に反応を行い、塩基性樹脂型分散剤((B-2)~(B-6)、(B-10)~(B-16)、(B-23)~(B-33)、(B-37)~(B-41)、(B-43)~(B-45)、(B―49)~(B―51)をそれぞれ作製した。
【0356】
(塩基性樹脂型分散剤(B-7))
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、ブチルメタクリレート24.5部、2-メトキシエチルアクリレート48.9部、マロン酸-2-[[[2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル]オキシ]エチル]アミノ]カルボニル]-1,3ジエチルエステル5.6部、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル1.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80部を仕込み、窒素を流しながら70℃まで加熱撹拌した。ここに2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.11部を仕込みBブロックの重合を開始した。
重合開始から6時間後、および8時間にそれぞれ2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.01部を仕込んだ後、さらに1時間後に重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行った。不揮発分から換算して重合転化率が95%以上であることを確認し、Bブロック前駆体の重合を完了した。
次に、この反応槽に、2-イソシアナトエチルアクリレート21部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート23部を仕込み、70℃窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.09部を仕込みAブロックの重合を開始した。重合開始から2時間後、および3時間にそれぞれ2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.01部を仕込んだ後、さらに1時間後に重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行った。不揮発分から換算して重合転化率が95%以上であることを確認し、Aブロックの重合を完了した。
さらにこの反応槽を5℃に冷却し、3-ピコリルアミン16部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50部の混合溶液を1時間かけて滴下し、2価の連結基としてエステル結合、水素結合性を有する連結基としてウレア結合、アミノ基として芳香族性を有する複素環アミノ基を有するアミノ単位を含むAブロックを作製した。この時の質量平均分子量31,000、分子量分布1.4であった。
さらにこの反応槽に塩化ベンジル1.9部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2部を加えた後、60℃で3時間反応させ、アミノ基の一部を4級化した。
最後にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート加えて不揮発分40%に調製した。このようにして、アミン価63.7mgkOH/gの塩基性樹脂型分散剤(B-7)の溶液を得た。
【0357】
(塩基性樹脂型分散剤(B-8)~(B―9)、(B-17)~(B-22)、(B-34)~(B-36))
表1~表4に示す原料、組成になるように変更し、表中のスペックが得られるように適宜条件を調整した以外は塩基性樹脂型分散剤(B-7)と同様にして塩基性樹脂型分散剤(B-8)~(B―9)、(B-17)~(B-22)、(B-34)~(B-36)の溶液を得た。
【0358】
(塩基性樹脂型分散剤(B-42))
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、ブチルメタクリレート13.3部、2-メトキシエチルアクリレート13.3部、マロン酸-2-[[[2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル]オキシ]エチル]アミノ]カルボニル]-1,3ジエチルエステル20部、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル1.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40部を仕込み、窒素を流しながら70℃まで加熱撹拌した。ここに2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.11部を仕込みBブロックの重合を開始した。
重合開始から6時間後、および8時間にそれぞれ2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.01部を仕込んだ後、さらに1時間後に重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行った。不揮発分から換算して重合転化率が95%以上であることを確認し、Bブロック前駆体の重合を完了した。
次に、この反応槽に、2-イソシアナトエチルアクリレート20部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート23部を仕込み、70℃窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.09部を仕込みAブロックの重合を開始した。重合開始から2時間後、および3時間にそれぞれ2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.01部を仕込んだ後、さらに1時間後に重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行った。不揮発分から換算して重合転化率が95%以上であることを確認し、Aブロックの重合を完了した。
さらにこの反応槽に、2-メトキシエチルアクリレート13.4部、マロン酸-2-[[[2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル]オキシ]エチル]アミノ]カルボニル]-1,3ジエチルエステル20部、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル1.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40部を仕込み、窒素を流しながら70℃まで加熱撹拌した。ここに2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.11部を仕込みBブロックの重合を開始した。重合開始から6時間後、および8時間にそれぞれ2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.01部を仕込んだ後、さらに1時間後に重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行った。不揮発分から換算して重合転化率が95%以上であることを確認し、Bブロックの重合を完了した。
さらにこの反応槽を5℃に冷却し、1-メチルピペラジン14部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50部の混合溶液を1時間かけて滴下し、2価の連結基としてエステル結合、水素結合性を有する連結基としてウレア結合、アミノ基として芳香族性を有さない複素環アミノ基をもつアミノ単位を含むAブロックを作製した。この時の質量平均分子量35,000、分子量分布1.5であった。
最後にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート加えて不揮発分40%に調製した。このようにして、不揮発分40%、アミン価67.8mgkOH/gの塩基性樹脂型分散剤(B-42)の溶液を得た。
【0359】
(塩基性樹脂型分散剤(B-46))
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、ブチルメタクリレート13.3部、2-メトキシエチルアクリレート26.7部、マロン酸-2-[[[2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル]オキシ]エチル]アミノ]カルボニル]-1,3ジエチルエステル40部、N,N,N’、N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン0.6部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80部を仕込み、窒素を流しながら50℃で1時間撹拌し、系内を窒素置換した。ここに臭化銅(I)0.5部と2-ブロモイソ酪酸エチル0.6部を仕込みAブロックの重合を開始した。重合開始から6時間後、窒素気流下で重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行った。不揮発分から換算して重合転化率が95%以上であることを確認し、Bブロック前駆体の重合を完了した。
次に、この反応槽に2-イソシアナトエチルアクリレート20部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20部を仕込み、110℃窒素雰囲気下を保持したまま撹拌しBブロックの重合を開始した。重合開始から6時間後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行った。不揮発分から換算して重合転化率が95%以上であることを確認し、大気下で冷却しAブロックの重合を完了した。
さらにこの反応槽を5℃に冷却し、4-アミノピリジン13部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50部の混合溶液を1時間かけて滴下して、Aブロック前駆体のイソシアネート基に反応させて、2価の連結基としてエステル結合、水素結合性を有する連結基としてウレア結合、アミノ基として芳香族性を有する複素環アミノ基を有するアミノ単位を含むAブロックを作製した。最後にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート加えて不揮発分40%に調製した。このようにして不揮発分40%、アミン価68.6mgkOH/g、質量平均分子量36000、分子量分布1.5の塩基性樹脂型分散剤(B-46)の溶液を得た。
【0360】
(塩基性樹脂型分散剤(B-47))
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、ブチルメタクリレート13.3部、2-メトキシエチルアクリレート26.7部、マロン酸-2-[[[2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル]オキシ]エチル]アミノ]カルボニル]-1,3ジエチルエステル40部、2-ヨード-2-メチルプロピオニトリル0.5部、4-t-ブチル-2,6-キシレノール0.1部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80部を仕込み、窒素を流しながら90℃まで加熱した。ここに2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.5部を仕込みBブロックの重合を開始した。重合開始から6時間後、窒素気流下で重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行った。不揮発分から換算して重合転化率が95%以上であることを確認し、Bブロック前駆体の重合を完了した。
次に、この反応槽に2-イソシアナトエチルアクリレート20部、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.5部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20部を仕込み、110℃窒素雰囲気下を保持したまま撹拌しAブロックの重合を開始した。重合開始から6時間後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行った。不揮発分から換算して重合転化率が95%以上であることを確認し、大気下で冷却しBブロックの重合を完了した。
さらにこの反応槽を5℃に冷却し、4-アミノピリジン13部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50部の混合溶液を1時間かけて滴下して、Aブロック前駆体のイソシアネート基に反応させて、2価の連結基としてエステル結合、水素結合性を有する連結基としてウレア結合、アミノ基として芳香族性を有する複素環アミノ基を有するアミノ単位を含むAブロックを作製した。最後にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート加えて不揮発分40%に調製した。このようにして不揮発分40%、アミン価68.0mgkOH/g、質量平均分子量35000、分子量分布1.4の塩基性樹脂型分散剤(B-47)の溶液を得た。
【0361】
(塩基性樹脂型分散剤(B-48))
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、ブチルメタクリレート13.3部、2-メトキシエチルアクリレート26.7部、マロン酸-2-[[[2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル]オキシ]エチル]アミノ]カルボニル]-1,3ジエチルエステル40部、エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート1.6部、ジブチルジテルリド1部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80部を仕込み、窒素を流しながら60℃まで加熱した。ここに2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.3部を仕込みBブロックの重合を開始した。重合開始から24時間後、窒素気流下で重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行った。不揮発分から換算して重合転化率が95%以上であることを確認し、Bブロック前駆体の重合を完了した。
次に、この反応槽に2-イソシアナトエチルアクリレート20部、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.3部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20部を仕込み、60℃窒素雰囲気下を保持したまま撹拌しAブロックの重合を開始した。重合開始から24時間後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行った。不揮発分から換算して重合転化率が95%以上であることを確認し、大気下で冷却しAブロックの重合を完了した。
さらにこの反応槽を5℃に冷却し、4-アミノピリジン13部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50部の混合溶液を1時間かけて滴下して、Aブロック前駆体のイソシアネート基に反応させて、2価の連結基としてエステル結合、水素結合性を有する連結基としてウレア結合、アミノ基として芳香族性を有する複素環アミノ基を有するアミノ単位を含むAブロックを作製した。最後にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート加えて不揮発分40%に調製した。このようにして不揮発分40%、アミン価68.2mgkOH/g、質量平均分子量36000、分子量分布1.5の塩基性樹脂型分散剤(B-48)の溶液を得た。
【表1】
【0362】
【0363】
【0364】
【0365】
【0366】
表1~表5中の略語について示す。
AOI:2-イソシアナトエチルアクリレート
TMI:イソシアン酸3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジル
BMA:n-ブチルメタクリレート
2-MTA:2-メトキシエチルアクリレート
AME-400:メトキシポリエチレングリコールアクリレート(エチレンオキシ基平均付加数9)
MMA:メチルメタクリレート
tBA:t-ブチルアクリレート
DMAEMA:ジメチルアミノエチルメタクリレート
b2-1:マロン酸-2-[[[2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル]オキシ]エチル]アミノ]カルボニル]-1,3ジエチルエステル
b2-2:メタクリル酸2-[O-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル
b2-3:メタクリル酸2-(3,5-ジメチルピラゾール-1-イル)カルボニルアミノエチル
RAFT剤1:4-シアノ-4-[ (ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル
RAFT剤2:ジ(チオベンゾイル)ジスルフィド
RAFT剤3:S,S-ジベンジルトリチオ炭酸
PMDETA:N,N,N’、N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン
CuBr:臭化銅(I)
EBiB:2-ブロモイソ酪酸エチル
CP-I:2-ヨード-2-メチルプロピオニトリル
IA:4-t-ブチル-2,6-キシレノール
有機テルル化合物:エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート
ジテルリド:ジブチルジテルリド
PGMAc:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
V601:2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル
アミン化合物1:1-メチルピペラジン
アミン化合物2:N,N-ジメチルアミノプロピルアミン
アミン化合物3:3-(ジメチルアミノ)-1-プロパノール
アミン化合物4:4-アミノピリジン
アミン化合物5:4ピリジンエタノール
アミン化合物6:3-ピコリルアミン
アミノ基1:芳香族性を有さない複素環アミノ基
アミノ基2:脂肪族アミノ基
アミノ基3:芳香族性を有する複素環アミノ基
【0367】
(塩基性樹脂型分散剤(B-52))
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、ブチルメタクリレート13.2部、2-メトキシエチルアクリレート26.3部、2-イソシアナトエチルアクリレート21部、マロン酸-2-[[[2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル]オキシ]エチル]アミノ]カルボニル]-1,3ジエチルエステル39.5部、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル1.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート103部を仕込み、窒素を流しながら70℃まで加熱撹拌した。ここに2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.11部を仕込み重合を開始した。
重合開始から6時間後、および8時間にそれぞれ2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.01部を仕込んだ後、さらに1時間後に重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行った。不揮発分から換算して重合転化率が95%以上であることを確認し、ランダム共重合体の重合を完了した。
さらにこの反応槽を5℃に冷却し、3-(ジメチルアミノ)-1-プロパノール15部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50部の混合溶液を1時間かけて滴下し、2価の連結基としてエステル結合、脂肪族アミノ基をもつアミノ単位を含むランダム共重合体を作製した。この時の質量平均分子量31,000、分子量分布1.3であった。
最後にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート加えて不揮発分40%に調製した。このようにして、アミン価70.2mgkOH/gの塩基性樹脂型分散剤(B-52)の溶液を得た。
【0368】
<バインダ樹脂(C)の製造>
(バインダ樹脂(C-1))
温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管及び撹拌装置を備えたセパラブル4口フラスコにシクロヘキサノン70.0部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管よりn-ブチルメタクリレート16.7部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸0.9部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亞合成株式会社製「アロニックスM110」)7.4部、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続して樹脂溶液を得た。その後、樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにメトキシプロピルアセテートを添加してバインダ樹脂(C-1)を調製した。バインダ樹脂(C-1)は、質量平均分子量(Mw)は11000、酸価は20mgKOH/gであった。
【0369】
(バインダ樹脂(C-2))
バインダ樹脂(C-1)の、n-ブチルメタクリレート16.7部と、メタクリル酸0.9部を、それぞれ10.2部と、7.4部に変更した以外は、バインダ樹脂(C-1)と同様にして、バインダ樹脂(C-2)を得た。その後、不揮発分が20重量%になるようにメトキシプロピルアセテートを添加してバインダ樹脂(C-2)を調製した。バインダ樹脂(C-2)は、酸価160mgKOH/g、質量平均分子量(Mw)は10000であった。
【0370】
(バインダ樹脂(C-3))
バインダ樹脂(C-1)のn-ブチルメタクリレート16.7部と、メタクリル酸0.9部を、それぞれ13.3部と、4.3部に変更した以外は、バインダ樹脂(C-1)と同様にして、バインダ樹脂(C-3)を得た。その後、不揮発分が20重量%になるようにメトキシプロピルアセテートを添加してバインダ樹脂(C-3)を調製した。バインダ樹脂(C-3)は、酸価94mgKOH/g、質量平均分子量(Mw)は9900であった。
【0371】
(バインダ樹脂(C-4))
温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管及び撹拌装置を備えたセパラブル4口フラスコにシクロヘキサノン370部を仕込み、80℃に昇温し、フラスコ内を窒素置換した後、滴下管より、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成社製アロニックスM110)18部、ベンジルメタクリレート10部、グリシジルメタクリレート18.2部、メタクリル酸メチル25部、及び2,2'-アゾビスイソブチロニトリル2.0部の混合物を2 時間かけて滴下した。滴下後、更に100℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル1.0部をシクロヘキサノン50部で溶解させたものを添加し、更に100℃で1時間反応を続けた。次に、容器内を空気置換に替え、アクリル酸9.3部(グリシジル基の100%)にトリスジメチルアミノフェノール0.5部及びハイドロキノン0.1部を上記容器内に投入し、120℃ で6時間反応を続け固形分酸価0.5となったところで反応を終了し、共重合体溶液を得た。更に、引き続きテトラヒドロ無水フタル酸19.5部(生成した水酸基の100%)、トリエチルアミン0.5部を加え120℃で3.5時間反応させカルボキシ基と、共重合体溶液を得た。その後、不揮発分が20重量%になるようにシクロヘキサノンを添加してバインダ樹脂(C-4)を調製した。バインダ樹脂(C-4)は、質量平均分子量(Mw)は9900、酸価は72であった。
【0372】
(バインダ樹脂(C-5))
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、257.3部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを入れた後、窒素置換しながら攪拌し、78℃に昇温した。次に、ジシクロペンタニルメタクリレートを22.4部、メチルメタクリレートを49.8部、メタクリル酸を17.2部、2―ヒドロキシエチルメタクリレートを10.3部、及びブロックイソシアネート基を有する単量体単位(b2)を形成する単量体であるカレンズMOI-DEM(昭和電工社製のマロン酸-2-[[[2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル]オキシ]エチル]アミノ]カルボニル]-1,3-ジエチルエステル)を40.0部の混合物と、11.0部の2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を78.7部のPGMAcに添加し溶解させたものをそれぞれ滴下ロートからフラスコ中に滴下した。滴下終了後、78℃で3時間攪拌した。
その後、不揮発分が20質量%になるようにPGMAcを添加して、バインダ樹脂(C-5)を調製した。バインダ樹脂(C-5)は、酸価111mgKOH/g、質量平均分子量10000であった。
【0373】
<近赤外線吸収性組成物の製造>
[実施例1]
(近赤外線吸収性組成物(PP-1)の製造)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM-250 MKII」)で5時間分散した後、近赤外線吸収性組成物(PP-1a)を得た。
近赤外線吸収性色素(A-1) :12.0部
塩基性樹脂型分散剤(B-1) :20.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc) :68.0部
さらに下記の混合物を均一になるように攪拌混合し、0.5μmのフィルタで濾過して、不揮発成分が20質量部の近赤外線吸収性組成物(PP-1)を作製した。
近赤外線吸収性組成物(PP-1a) :75.0部
バインダ樹脂(C-1) :25.0部
【0374】
[実施例2~81、比較例1~4]
(近赤外線吸収性組成物(PP-2)~(PP-85)の製造)
以下、表6-1、および6-2に示す組成に変更した以外は近赤外線吸収性組成物(PP-1)と同様にして、近赤外線吸収性組成物(PP-2)~(PP-85)を得た。
【0375】
【0376】
【0377】
<近赤外線吸収性組成物の評価>
得られた近赤外線吸収性組成物(PP-1)~(PP-85)について、下記の通り、保存安定性、塗膜の凝集異物、膜厚均一性の評価を行った。
【0378】
(保存安定性の評価)
得られた近赤外線吸収性組成物の調製直後と10℃で1ケ月保管した後の粘度を、E型粘度計を用いて測定した。|(1ケ月保管後の粘度)-(調製直後の粘度)|/(調製直後の粘度)の比を算出して下記判定基準で評価した。尚、◎は非常に良好なレベル、○は良好なレベル、△は実用可能なレベル、×は実用には適さないレベルである。
◎:粘度比が0.04未満
〇:粘度比が0.04以上、0.07未満
△:粘度比が0.07以上、0.10未満
×:粘度比が0.10以上
【0379】
(凝集異物の評価)
得られた近赤外線吸収性組成物を、100mm×100mm、0.5mm厚のガラス基板上にスピンコーターを用いて塗布、オーブンにて230℃で20分焼成して熱処理後の塗膜の膜厚が1.0μmとなるように塗布基板を作製した。膜厚の測定にはDEKTAKを用いて測定した。その後、得られた基板を250℃で1時間加熱して表面観察を行った。評価にはオリンパスシステム社製金属顕微鏡「BX60」を用いた。倍率は500倍とし、透過にて任意の5視野で観測可能な粒子の数をカウントして評価した。尚、◎は非常に良好なレベル、○は良好なレベル、△は実用可能なレベル、×は実用には適さないレベルである。
◎ :異物の数が5個未満
○ :異物の数が5個以上、20個未満
△ :異物の数が20個以上、60個未満
× :異物の数が60個以上
【0380】
(膜厚均一性の評価)
得られた近赤外線吸収性組成物を100mm×100mm、0.5mm厚のガラス基板上に中心部の膜厚(Aとする)が2.5μmとなるようにスピンコートし、230℃で20分焼成した後、中心部の膜厚Aと対角線上で中心から40mm部分の膜厚4点の平均値(Bとする)を測定し、下記式により塗膜の膜厚均一性を評価した。
(A-B)×100/{(A+B)/2} [%]
◎:1%未満
○:1%以上2%未満
△:2%以上5%未満
×:5%以上
【0381】
以上の方法で評価した結果を表7-1、および7-2に示す。
【0382】
【0383】
【0384】
実施例1~81で示した通り、本発明の近赤外線吸収性組成物は、すべての評価項目で優れた特性を示した。
【0385】
比較例1~4においては、すべての項目を満足する結果が得られず、本発明の効果が証明された。
【0386】
<感光性近赤外線吸収性組成物の製造>
[実施例82]
(感光性近赤外線吸収性組成物(PR-1)の作製)
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1.0μmのフィルタで濾過して、感光性近赤外線吸収性組成物(PR-1)を得た。
近赤外線吸収性組成物(PP-22) :50.0部
バインダ樹脂(C-4) :7.5部
光重合性単量体(東亞合成社製「アロニックスM-402」) :1.0部
光重合性単量体( 東亞合成社製「アロニックスM350」) :1.0部
光重合開始剤(BASFジャパン社製「OXE-02」) :1.5部
増感剤( 日本化薬社製「KAYACURE DETX-S」) :0.05 部
チオール化合物(ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート) :0.20 部
レべリング剤(ビックケミー社製「BYK-330 」) :0.05 部
酸化防止剤(BASF社製「IRGANOX1010 」 :0.10 部
PGMAc :38.6部
【0387】
[実施例83~128、比較例5~8]
(感光性近赤外線吸収性組成物(PR-2)~(PR-51)の作製)
近赤外線吸収性組成物を表9に示す組成に変更した以外は(PR-1)と同様にして、感光性近赤外線吸収性組成部(PR-2)~(PR-51)を作成した。
【0388】
<感光性近赤外線吸収性組成物の評価>
得られた感光性近赤外線吸収性組成物(PR-1)~(PR-51)について、近赤外線吸収性組成物(PP-1)~(PP-85)と同様の評価を行った。
【0389】
(保存安定性の評価)
得られた感光性近赤外線吸収性組成物の調製直後と10℃で1ケ月保管した後の粘度を、E型粘度計を用いて測定した。|(1ケ月保管後の粘度)-(調製直後の粘度)|/(調製直後の粘度)の比を算出して下記判定基準で評価した。尚、◎は非常に良好なレベル、○は良好なレベル、△は実用可能なレベル、×は実用には適さないレベルである。
◎:粘度比が0.04未満
〇:粘度比が0.04以上、0.07未満
△:粘度比が0.07以上、0.10未満
×:粘度比が0.10以上
【0390】
(凝集異物の評価)
得られた感光性近赤外線吸収性組成物を、100mm×100mm、0.5mm厚のガラス基板上にスピンコーターを用いてスピンコートし、90℃で5分乾燥した後、超高圧水銀ランプを用いて100mJ/cm2の紫外線を照射し、0.2質量%の炭酸ナトリウム水溶液からなるアルカリ現像液によりスプレー現像し、その後230℃で20分焼成して熱処理後の塗膜の膜厚が1.0μmとなるように塗布基板を作製した。膜厚の測定にはDEKTAKを用いて測定した。その後、得られた基板を250℃で1時間加熱して表面観察を行った。評価にはオリンパスシステム社製金属顕微鏡「BX60」を用いた。倍率は500倍とし、透過にて任意の5視野で観測可能な粒子の数をカウントして評価した。尚、◎は非常に優れたレベル、◎○は非常に良好なレベル、○は良好なレベル、△は実用可能なレベル、×は実用には適さないレベルである。
◎ :異物の数が5個未満
○ :異物の数が5個以上、20個未満
△ :異物の数が20個以上、60個未満
× :異物の数が60個以上
【0391】
(膜厚均一性の評価)
得られた感光性近赤外線吸収性組成物を100mm×100mm、0.5mm厚のガラス基板にスピンコーターを用いてスピンコートし、90℃で5分乾燥した後、超高圧水銀ランプを用いて100mJ/cm2の紫外線を照射し、0.2質量%の炭酸ナトリウム水溶液からなるアルカリ現像液によりスプレー現像し、その後230℃で20分焼成して熱処理後の塗膜の膜厚が2.5μmとなるように塗布基板を作製した。中心部の膜厚と対角線上で中心から40mm部分の膜厚4点の平均値(Bとする)を測定し、下式により膜厚の塗布均一性を評価した。
(A-B)×100/{(A+B)/2} [%]
◎;1%未満
○;1%以上2%未満
△;2%以上5%未満
×;5%以上
【0392】
以上の方法で評価した結果を表8に示す。
【0393】
【0394】
表8の結果から、実施例82~128で示した通り、感光性近赤外線吸収性組成物(PR-1)~(PR-47)は、近赤外線吸収性組成物の結果と同様、保存安定性、凝集異物低減、および、塗膜の膜厚均一性に優れている。
【0395】
比較例5~8で示した、感光性近赤外線吸収性組成物(PR-48)~(PR-51)においては、すべての項目を満足する結果が得られず、本発明の効果が証明された。
【0396】
<波長400nm以上700nm未満に極大吸収波長を有する有機色素(D)を含む近赤外線吸収性組成物(可視光領域吸収性組成物)の製造>
(青色着色組成物)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散した後、0.5μmのフィルタで濾過し、青色着色組成物を作製した。
C.I.ピグメントブルー PB15:6 :10.0部
塩基性樹脂型分散剤(B-49) :20.0部
バインダ樹脂(C-4) :20.0部
PGMAc :50.0部
【0397】
(紫色着色組成物)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散した後、0.5μmのフィルタで濾過し、紫色着色組成物を作製した。
C.I.ピグメントバイオレット PV23 :10.0部
塩基性樹脂型分散剤(B-49) :20.0部
バインダ樹脂(C-4) :20.0部
PGMAc :50.0部
【0398】
(黄色着色組成物)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散した後、0.5μmのフィルタで濾過し、黄色着色組成物を作製した。
C.I.ピグメントイエロー PY139 :10.0部
塩基性樹脂型分散剤(B-49) :20.0部
バインダ樹脂(C-4) :20.0部
PGMAc :50.0部
【0399】
[実施例129]
(可視光領域吸収性組成物(IR-1))
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1.0μmのフィルタで濾過して、可視光領域吸収性組成物(IR-1)を得た。
近赤外線吸収性組成物(PP-22) :10.0部
青色顔料組成物 :20.0部
紫色顔料組成物 :10.0部
黄色顔料組成物 :10.0部
バインダ樹脂(C-4) : 7.5部
光重合性単量体(東亞合成社製「アロニックスM-402」) : 1.0部
光重合性単量体( 東亞合成社製「アロニックスM350」) : 1.0部
光重合開始剤(BASFジャパン社製「OXE-02」) : 1.5部
PGMAc :39.0部
【0400】
[実施例130~175]
(可視光領域吸収性組成物(IP-2)~(IP-47))
以下、近赤外線吸収性組成物を表9に示す近赤外線吸収性組成物の種類に変更した以外は可視光領域吸収性組成物(IR-1)と同様にして可視光領域吸収性組成物(IP-2)~(IP-47)を得た。
【0401】
得られた可視光領域吸収性組成物(IP-1)~(IP-47)について、感光性近赤外線吸収性組成物(PR-1)~(PR-51)と同様の評価を行った。
【0402】
【0403】
表9の結果から可視光領域吸収性組成物(IR-1)~(IR-47)は、感光性近赤外線吸収性組成物(PR-1)~(PR-47)の結果と同様、保存安定性、凝集異物低減、および、塗膜の膜厚均一性に優れている。
【0404】
<積層体での評価>
上記の結果から、実施例で作成した近赤外線吸収性組成物を含む層を有する積層体は、凝集異物が少なく、膜厚均一性に優れている。
【0405】
<各種の用途でのフィルム作製>
上記の結果から、実施例で作成した近赤外線吸収性組成物を用いた光学フィルムは、その優れた特性により、近赤外線カメラ、監視カメラ、車載用カメラ、医療用カメラ、検査・分析カメラ、温度センサ、距離センサ、医療用センサ、ディスプレイなどのタッチセンサ、生体認証センサなどに用いた場合に好適に使用できることが予想される。